説明

情報表示用パネル製造時の粒子配置方法

【課題】粒子充填部材の構成する弾性シート部材として厚さが2mm以下の弾性シート部材を用いた場合であっても、弾性シート部材とマスク表面との平行度調整を精確に行うことができ、粒子充填不良による不良パネルの発生のない情報表示用パネル製造時の粒子配置方法を提供する。
【解決手段】情報表示用パネル製造時の粒子配置方法であって、粒子群配置ステップを実行するに先立ち、粒子充填手段23に固定された弾性シート部材21とマスク表面との平行度調整を行うに際し、弾性シート部材の長さ方向の少なくとも2箇所について、弾性シート部材下端部の位置をレーザー装置34、35で求め、得られた位置情報に基づき、前記弾性シート部材下端部と前記マスク表面との平行度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方の表示画面領域が透明な、2枚の基板を対向させた空間に配置した粒子群を表示媒体として駆動させて情報表示を行う情報表示用パネル製造時の粒子配置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した情報表示用パネルを製造する際に実行される粒子配置工程で、マスクおよび粒子充填部材を用いて粒子を配置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、情報表示用パネルのパネル基板に形成した隔壁上にマスクを配置し、マスク上に載せた表示媒体を構成する粒子群を粒子充填部材でマスク上を移動させながらマスクの開口部から落下させる。これにより、パネル基板上の隔壁で囲まれたセル内に粒子群を配置する技術である。このようにマスクおよび粒子充填部材による粒子配置を行えば、情報表示用パネルを製造する際に、効率良くセル内に粒子を配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−148381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9(a)、(b)はそれぞれ従来の粒子充填配置工程の一例を説明するための正面図および側面図である。図9(a)、(b)に示す例では、隔壁54上にマスク61を配置し、マスク61上に載せた白色粒子群53Wを粒子充填部材62でマスク61上で移動させる。マスク61の開口部61−1から落下した白色粒子群53Wは、パネル基板51上で隔壁54で囲まれて形成されたセル57内に配置される。粒子充填部材62をマスク61に押し付けた状態で移動することで、粒子充填部材62で押された白色粒子群53Wがマスク61の開口部61−1から落下する。なお、図9(a)における左端の図は、粒子充填部材62が移動した後の状態を示し、また、図9(a)における中央の図は、粒子充填部材62が移動することで押された白色粒子群53Wがマスク61の開口部61−1からセル57内に落下して配置されている状態を示す。さらに、図9(a)における右端の図は、粒子充填部材62が通過する前のマスク61と隔壁54との関係を示す。さらにまた、図9(b)は、粒子充填部材62の進行方向手前のマスク上に白色粒子群53Wがある様子を、進行方向手前側から見た様子を示している。
【0005】
粒子充填部材62は、図9(a)、(b)に示されるように、薄くて長尺な部材である。そのため、粒子充填配置を実施する際、図10に示すように、互いに接する粒子充填部材62の下端部62aとマスク61の表面とが平行となるように、粒子充填部材62の左右方向のバランス調整(図中両矢印で示す方向)を行う必要があり、従来は、人為的に目視で行っていた。
【0006】
しかしながら、人為的な平行度の調整では、粒子充填部材62の下端部62aとマスク61の表面との平行度を精確に調整することはできなかった。そのため、粒子充填部材62からマスク61の表面に加わる圧力が粒子充填部材62の左右方向(幅方向)で不均一となり、粒子群の充填にバラツキが生じ、粒子充填不良に起因して不良パネルが発生する場合があった。
【0007】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、粒子充填部材として厚さが2mm以下の弾性シート部材を用いた場合であっても、弾性シート部材とマスクとの平行度調整を精確に行うことができ、粒子充填不良による不良パネルの発生のない情報表示用パネル製造時の粒子配置方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法は、少なくとも一方の表示画面領域が透明な、2枚の基板を対向させた空間に配置した粒子群を表示媒体として駆動させて情報表示を行う情報表示用パネル製造時の粒子配置方法であって、前記基板上に設けられた隔壁上にマスクを配置するマスク配置ステップと、前記マスク上に前記粒子群を載置する粒子群載置ステップと、前記マスク上に載置された前記粒子群を、弾性シート部材を備える粒子充填手段を用いて前記基板上に配置する粒子群配置ステップと、を含み、前記粒子群配置ステップを実行するに先立ち、前記粒子充填手段に固定された前記弾性シート部材と前記マスク表面との平行度調整を行うに際し、前記弾性シート部材の長さ方向の少なくとも2箇所について、前記弾性シート部材下端部の位置をレーザー装置で求め、得られた位置情報に基づき、前記弾性シート部材下端部と前記マスク表面との平行度を調整することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法の好適例としては、前記弾性シート部材が、幅5mm〜100mm、長さ300mm〜1200mm、厚さ0.5mm〜1.5mmで、JIS−A硬度30°〜60°の1枚のゴムシートで構成されたことが挙げられる。また、前記ゴムシートの一方の面側に調整補助具を当接配置したことが挙げられる。さらに、前記弾性シート部材が、幅5mm〜100mm、長さ300mm〜1200mm、厚さ0.4mm〜1.5mmで、JIS−A硬度30°〜60°のゴムシートと、幅5mm〜100mm、長さ300mm〜1200mm、厚さ0.1mm〜0.3mmで、弾性材料シートである補強用シートとを重ね合わせた構造であることが挙げられる。
【0010】
本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法の他の好適例としては、前記弾性シート部材の幅方向先端部の位置をレーザー装置で求めるにあたり、マスク表面と平行移動可能に設置したレーザー装置1基を、前記弾性シート部材の長さ方向の少なくとも2箇所に順番に移動させ、各位置に配置された前記レーザー装置を用いて、前記各位置における前記弾性シート部材の幅方向先端部の位置を求め、得られた位置情報に基づき、前記粒子充填手段のマスク表面に対する平行度を調整し、前記各位置における前記弾性シート部材の幅方向先端部の位置が同じになった場合に、前記弾性シート部材の幅方向先端部が、前記マスク表面に対して平行であると判断することが挙げられる。また、前記弾性シート部材の幅方向先端部の位置を2基のレーザー装置で求めるにあたり、前記2基のレーザー装置を、それぞれ結ぶ線がマスク表面と平行になるように設置し、前記弾性シート部材をマスク表面に近づけた際に、前記弾性シート部座の幅方向先端部の2箇所の位置を、前記2基のレーザー装置で同時に検知した場合に、前記弾性シート部材の幅方向先端部が、前記マスク表面に対して平行であると判断することが挙げられる。さらに、前記レーザー装置として、透過型のレーザー変位計または反射型のレーザー変位計を用いることが挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄くてたわみ易い弾性シート部材であってもその弾性シート部材とマスク面との平行度を調整する際に、弾性シート部材の長さ方向の、少なくとも2箇所の位置において、弾性シート部材下端部の位置をレーザー装置で求め、求めた位置情報に基づき弾性シート部材とマスク表面との平行度を調整するようにしたので、弾性シート部材とマスク表面との平行度調整を精確に行うことができる。また、本発明によれば、弾性シート部材に薄くてたわみやすいゴムシートを用いた場合であっても、調整補助具を用いることで、上記平行度調整を精確に行うことができる。したがって、情報表示用パネル製造時に粒子充填不良の発生を防止して、不良パネルの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の対象となる帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として駆動する情報表示用パネルの一例を説明するための図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明の対象となる帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として駆動する情報表示用パネルの他の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法の対象となる粒子群配置ステップの一例を説明するための図である。
【図4】(a)、(b)はそれぞれ本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法の対象となる粒子群配置ステップの他の例を説明するための図である。
【図5】(a)、(b)はそれぞれ本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法で用いる調整補助具取り付けの一例を説明するための図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法で用いる調整補助具取り付けの他の例を説明するための図である。
【図7】(a)、(b)は、それぞれ、本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法において、弾性シート部材とマスク面との平行度調整の一例を説明するための図である。
【図8】(a)、(b)は、それぞれ、本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法において、弾性シート部材とマスク面との平行度調整方法を説明するための図である。
【図9】(a)、(b)はそれぞれ従来の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法の対象となる粒子群配置ステップの一例を説明するための図である。
【図10】従来の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法の対象となる粒子群配置ステップにおけるバランス調整の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の対象となる帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として駆動する情報表示用パネルについて>
まず、本発明の対象となる情報表示用パネルの一例である帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として駆動する情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。この情報表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に配置した帯電性粒子を含んだ粒子群に電界が付与される。付与された電界方向にそって、表示媒体となる粒子群が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、電界方向の変化によって粒子群の移動方向が切り換わることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体となる粒子群が、均一に移動し、かつ、表示情報を書き換える時あるいは表示した情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、基板間内面との電気鏡像力や分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0014】
本発明の対象となる帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として駆動する情報表示用パネルの例を、図1(a)、(b)〜図2(a)、(b)に基づき説明する。
【0015】
図1(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ白色粒子群3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ黒色粒子群3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セル7において、背面側のパネル基板1に設けた電極5(ストライプ電極)と観察側の透明なパネル基板2に設けた透明電極6(ストライプ電極)とが対向直交交差して形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と略垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色粒子群3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図1(b)に示すように黒色粒子群3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図1(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。また、8は接着剤である。さらに、ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示している。
【0016】
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ白色粒子群3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ黒色粒子群3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT(薄膜トランジスタ)付き画素電極)と基板2に設けた電極6(共通電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と略垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色粒子群3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図2(b)に示すように黒色粒子群3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。また、8は接着剤である。さらに、ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示している。
【0017】
<本発明の対象となる粒子群配置ステップについて>
図3および図4(a)、(b)はそれぞれ本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法の対象となる粒子群配置ステップの一例を説明するための図である。
【0018】
図3に示す例では、開口部11−1、マスク部11−2を有するマスク11のマスク部11−2と隔壁4の頂上とが接触するように、マスク11を隔壁4上に載せて配置し、単層の弾性シート部材13(ゴムシート)を固定治具14で固定して構成した粒子充填部材12を、上下可動式粒子充填部材押し付け装置16および左右可動式粒子充填部材移動装置17を備える粒子充填装置100に装着して作動して、右方向(図中移動方向)に移動させる。このとき、弾性シート部材13は、マスク面に押し当てられ撓んだ状態で、マスク上の白色粒子群3Wを右方向(図中移動方向)に押すようにして移動させる。白色粒子群3Wはマスク11上を移動しながら、マスク11の開口部11−1から落下してパネル基板1上に配置される。マスク11は、図3に示すように隔壁4の頂上に載せた状態が好ましい。
【0019】
図4(a)、(b)に示す例では、二層構造の弾性シート部材13を固定治具14で粒子充填装置100に取り付けている。このとき、弾性シート部材13のそれぞれがマスク面に対して所定の角度θを形成するように、2つの固定治具14の取付角度を調整する。また、図4(a)、(b)に示す例では、弾性シート部材13を、低弾性のゴムシート13−1とゴムシート13−1より高弾性材料である補強用シート13−2とを重ね合わせて、構成している。固定治具14を上下移動するための上下可動式粒子充填部材押し付け装置16は、それぞれの粒子充填部材12に対して独立に機能するように構成している。
【0020】
図4(a)、(b)に示す例では、一方の弾性シート部材13をマスク面に押し当てた状態とし、もう一方の弾性シート部材をマスク面とは離した状態として、もう一方の弾性シート部材13をマスク面とは離した状態として、左右可動式粒子充填部材移動装置17を作動して2枚の弾性シート部材13をともに移動させる。2枚の弾性シート部材13は丁度カタカナの「ハ」の字型に配置され、マスク面上を移動させる白色粒子群3Wは、この「ハ」の字型に配置された2枚の弾性シート部材13の間に配置されて、一方の弾性シート部材13によって移動させられる。
【0021】
図4(a)に示す例では、一方の弾性シート部材13をマスク面に角度θで押し当てて撓めた状態で右方向(図中移動方向)に移動させて、マスク11上の白色粒子群3Wを右方向(図中移動方向)に移動させている。図4(b)に示す例では、もう一方の弾性シート部材13をマスク面に角度θで押し当てて撓めた状態で左方向(図中移動方向)に移動させている。図4(a)、(b)に示すように、2枚の弾性シート部材13をマスク面に対して所定の角度θで配置しておき、それぞれの弾性シート部材13を上下可動式に構成されている固定治具14に取り付けておくことで、粒子充填装置100の移動方向を切り替える度に弾性シート部材13をマスク面とが形成する角度を調整する工程が不要となる。
【0022】
上述した図4(a)、(b)において、粒子充填装置100は、固定治具14に取り付けられた弾性シート部材13をマスク面に対して押し付けるための上下可動式の粒子充填部材押し付け装置16と、固定治具14に取り付けられた弾性シート部材13をマスク面に対して平行に移動させるための左右可動式粒子充填部材移動装置17とを備えており、弾性シート部材13をマスクに押し付けた状態で左右方向の一方向に移動させることができるようになっている。
図3に示す例は、粒子充填部材12を1個備える粒子充填装置100であり、図4(a)、(b)に示す例は、粒子充填部材12を2個備える粒子充填装置100であり、固定治具14に取り付けられた弾性シート部材13をマスク面に対して押し付けるための上下可動式粒子充填部材押し付け装置16は、各粒子充填部材別に上下可動になっている。固定治具14は、取り付けられた弾性シート部材13とマスク表面とが形成する角度θを調整した後固定できる機構を備えている。
【0023】
<本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法における粒子群配置ステップで使用する弾性シート部材13について>
本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法における粒子群配置ステップで使用する弾性シート部材13としては、好適な具体例として、単層のゴムシートで構成した弾性シート部材、ゴムシートに、このゴムシートよりも高弾性のシートである補強用シートを重ね合わせて構成した弾性シート部材や、ゴムシートよりも高弾性のシートを単層で構成した弾性シート部材を挙げることができる。
【0024】
(単層のゴムシートで構成した弾性シート部材について)
上述した粒子群配置ステップにおいて好適に用いられる弾性シート部材13の一例は、幅5mm〜100mm、長さ100mm〜1200mm、厚さ0.5mm〜1.5mmの形状であり、JIS−A硬度30°〜60°のゴムシートを用いて形成されている。弾性シート部材13を構成するゴムシート材料としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴムのほか、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム(EPゴム、EPDMゴム)、ブチルゴム、塩化ビニルゴムなどのゴム弾性を有する、いわゆる、ゴム材料を用いることができる。この中でも、低摩擦性に優れたシリコーンゴム、ブタジエンゴムおよび耐摩耗性に優れたウレタンゴムが好ましく用いられる。後述するレーザー装置による平行度測定の際、単層のゴムシートで構成した弾性シート部材13を用いる場合は、弾性シート部材13がたわみ易いため、弾性シート部材13の一方の面、すなわち、弾性シート部材を配置角度θに傾けたときに、この弾性シート部材を支える側に調整補助具を、この弾性シート部材に当接させた状態で平行度測定を行うことが好ましい。
【0025】
(ゴムシートと補強用シートとを重ね合わせて構成される弾性シート部材について)
上述した粒子群配置ステップにおいて好適に用いられる弾性シート部材13の他の例は、このゴムシートよりも高弾性の材料の弾性シートを一方の面側に裏打ち用として重ね合わせた二重構造の弾性シート部材とする。マスク上の粒子群と接する面となるゴムシートはJIS−A硬度が30°〜60°の範囲にある弾性材料であり、上述したシリコーンゴムやウレタンゴム、ブタジエンゴムなどの弾性材料を好適に用いることができる。二重重ね合わせ構造の弾性シート部材において、ゴムシートの裏打ちとして当接配置される補強用シートの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、アクリル樹脂などの樹脂シートやステンレス鋼(SUS)シートなどの弾性材料が好適である。2枚の弾性シートで構成する二重構造は、全面で貼り合わせたり、下端部領域面で貼り合わせたり、重ねるだけで貼り合わせなかったりすることができるが、弾性シート部材がたわむときに2枚のシートが互いにずれないようにできる前二者の構造が好ましい。
【0026】
二重構造の弾性シート部材を構成するゴムシートをJIS−A硬度30°〜60°で、厚さを0.4mm〜1.2mmの範囲とし、このゴムシートよりも高弾性の補強用シートの厚さを0.1mm〜0.3mmの範囲とし、弾性シート部材の総厚を0.5mm〜1.5mmの範囲とする。ゴムシートと補強用シートを重ね合わせる場合、ゴムシートと補強用シートを同じ形状にするが、わずかにゴムシートの方を大きくして、マスクと接する部分が露出しないようにする。
【0027】
図5(a)、(b)および図6(a)、(b)は、それぞれ、本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法における粒子群配置ステップで用いる調整補助具の取り付けの一例を説明するための図である。図5(a)、図6(a)に粒子充填部材12を構成する固定治具14に弾性シート部材13および調整補助具24を取り付けた構成の側面図を示すとともに、図5(b)、図6(b)にその正面図を示す。図5(a)、(b)および図6(a)、(b)では、その先端がマスクと直接接触する弾性シート部材13と、弾性シート部材13を固定する固定治具14、弾性シート部材13に当接させている調整補助具24を示している。図5(a)、(b)に示す例では、調整補助具24をネジ25で固定治具14に着脱可能に取り付けている。図6(a)、(b)に示す例では、調整補助具24を粘着材を介して固定治具14に着脱可能に取り付けている。いずれの方法でも平行度調整後に、調整補助具24を取り外すことができる。
【0028】
図5(a)、(b)および図6(a)、(b)に示す例において、本発明における弾性シート部材とマスクとの平行度調整では、弾性シート部材13をマスクに押し当てる前に、弾性シート部材13の撓みを防止して、平行度調整を補助するための調整補助具24を固定治具14に取り付けている。弾性シート部材13として単層のゴムシートを用いる場合、このゴムシートは低弾性で薄いため、そのまま平行度調整を行うと、弾性シート部材13(ゴムシート)の下端部13aが撓んで直線状になり難い。この撓みを防止して、弾性シート部材13(ゴムシート)の下端部13aが直線状となるように、調整補助具24を用いている。弾性シート部材13を、ゴムシートと補強用シートとの二重構造とした場合には、補強用シートが支えとなってゴムシートが撓むことを防止できるので調整補助具24を用いなくてもよいが、もちろん、二重構造の弾性シート部材13に対して調整補助具24を用いなくてもよい。図5(a)、(b)および図6(a)、(b)に示すように、調整補助具24は、弾性シート部材13(ゴムシート)に沿って下端部13aが少しはみ出るように(図5(a)、(b)、図6(a)、(b)参照)、長手方向の全長に対し設けられている。調整補助具24としては、弾性シート部材13よりも高弾性の材料であれば剛性材料であっても補強用シートと同様の弾性材料であってもその機能を果たすことができる。
【0029】
調整補助具24は、弾性シート部材13とするゴムシートの一方の面側に当接するように、弾性シート部材13が装着された固定治具14に対して、取り付ける。取付方法としては、ねじ25を用いたねじ止め(図5(a)、(b)の例)、粘着材による貼り合わせ(図6(a)、(b)の例)などを用い、固定治具14に取り付けた弾性シート部材13とマスク面との平行度調整を終了した後に容易に取り外せるようにする。すなわち、この調整補助具24は、弾性シート部材13とマスク面との平行度を調整するとき固定治具14に取り付けられ、弾性シート部材13とマスク面との平行度を調整した後、固定治具14から取り外される。調整補助具24は長尺のシート状であるが、平面視において長方形であったり櫛歯形であったりしてよく、側面視において階段型であったり、段差型であったりしてよい。側面視において先端ほど幅を狭くし、平行度調整時に粒子充填部材12を角度θにした時に弾性シート部材より先端に出ないようにする。薄い弾性シート部材13がたわまないように当接して支え、粒子充填部材12を構成する固定治具14に取り外し可能に取り付けられる形状になっていればよい。
【0030】
弾性シート部材13の先端が、調整補助具24の先端より100μm〜1mmの範囲で出るように双方の配置がなされる。弾性シート部材13の先端突出長さをこの範囲にすることで、平行度調整時にレーザー光が調整補助具に当たることによる、正しい弾性シート部材13先端の平行度調整の妨げになることがない。
【0031】
<本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法における平行度調整方法について>
次に、本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法の特徴となる、弾性シート部材とマスクとの平行度調整の一例について、図7(a)、(b)および図8(a)、(b)を参照して説明する。なお、ここでは弾性シート部材13としては、単層の弾性材料シート(ゴムシート)に調整補助具を当接配置して平行度調整を行っている。単層の弾性材料シートであるゴムシートではなく、ゴムシートに補強用シートを重ね合わせた構成の弾性シート部材の場合には、調整補助具24を用いないで平行度調整を行うこともできる。
【0032】
図7(a)、(b)は、それぞれ、本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法において、粒子充填部材12を構成する固定治具14に取り付けた弾性シート部材13とマスク面との平行度調整の一例を説明するための図である。図7(a)、(b)に示す例では、まず、図7(a)に示すように、ステージ31上に、情報表示用パネルの基板32を載置するとともに、基板32に形成された隔壁上に、マスク33を載置する。また、固定治具14に調整補助具24を取り付けた後、粒子充填部材12を角度θにして、弾性シート部材13の長さ方向の少なくとも2箇所に対応する位置、ここでは、弾性シート部材13の長さ方向の両端近傍の2箇所に対応する位置であって、マスク33上の離れた位置に、レーザー装置34、35を設ける。本例では、各レーザー装置34、35を透過型とし、一対の投光部34−1(35−1)および受光部34−2(35−2)を、弾性シート部材13を挟んで設ける。もちろん、一方の側に反射型のレーザー装置を設けても良い。レーザー装置34、35としてはレーザー変位計を好適に用いることができる。さらに、レーザー装置34、35とマスク33との位置は、レーザー装置34、35のそれぞれの位置を結んだ線Lとマスク33の表面とが平行になるようにセットされている。
【0033】
上述した構成において、粒子充填部材12を構成する固定治具14を介して粒子充填装置100に取り付けられた弾性シート部材13とマスク33との平行度調整を行うには、まず、図7(a)に示すように、調整補助具24および弾性シート部材13が取り付けられた固定治具14を上方から下方に移動させる。そして、図7(b)に示すように、レーザー装置34、35が同時に弾性シート部材13の下端部13aを検知した場合に、弾性シート部材13がマスク33に対し平行であると判断している。このとき、図8(a)に一例を示すように、レーザー装置34のみ弾性シート部材13の下端部13aを検知し、レーザー装置35は弾性シート部材13の下端部13aを検知しない場合は、弾性シート部材13がマスク33に対し平行でないと判断する。平行でないと判断した場合は、一旦弾性シート部材13を上方に移動し、図8(b)に示すように、弾性シート部材13の図中右側の端部を下方に移動させ、上述した平行度調整を、レーザー装置34、35が同時に弾性シート部材13の下端部13aを検知して平行であると判断するまで、繰り返す。
【0034】
以上の操作により、粒子充填装置100に取り付けられた弾性シート部材13とマスク33との平行度調整を行うことができる。その後、調整補助具24を固定治具14から取り外して、粒子群配置ステップを実行する。マスク上に粒子群を載置し、粒子充填部材12を下方に移動させて、弾性シート部材がマスク面に当たるようにし、次に、粒子充填部材12の弾性シート部材13をマスク33に押し当てながら移動させ、マスク33上の粒子群を、マスク上で移動させることによって、粒子群をマスク開口を介して基板32上に配置することができる。
【0035】
なお、上述した平行度調整では、2基のレーザー装置34、35を使用したが、1基のレーザー装置により平行度調整をすることもできる。その場合は、弾性シート部材の幅方向先端部の位置をレーザー装置で求めるにあたり、マスク表面と平行移動可能に設置したレーザー装置1基を、弾性シート部材の長さ方向の少なくとも2箇所に順番に移動させ、各位置に配置されたレーザー装置を用いて、各位置における弾性シート部材の幅方向先端部の位置を求め、得られた位置情報に基づき、粒子充填手段のマスク表面に対する平行度を調整し、各位置における弾性シート部材の幅方向先端部の位置が同じになった場合に、弾性シート部材の幅方向先端部が、前記マスク表面に対して平行であると判断する。
【0036】
<本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法において、粒子群配置ステップで使用するマスク、情報表示用パネルのセル、電極、表示媒体とする粒子について>
次に、本発明の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法で用いるマスク、情報表示用パネルの電極、表示媒体とする粒子、について説明する。
【0037】
(情報表示用パネルのセルおよび粒子群配置ステップで使用するマスクについて>
本発明に係る情報表示用パネルにおけるセル開口の大きさは、長方形であれば、1辺の長さが50μm〜1000μm程度、好ましくは100μm〜300μm程度であり、ハニカム(六角形)形状の場合は、向かい合う頂点の距離が100μm〜1000μm程度、好ましくは100μm〜300μm程度である。
【0038】
基板間空間をセルに仕切るための隔壁の配置は、格子状、ハニカム状、網目状などにすることができる。セルの横断面形状は、四角形、三角形、六角形、階段型八角形等の多角形や、円形、楕円形、レーストラック形等いずれでも良いし、複数の形状を組み合わせても良い。非表示部となる隔壁の占める割合を小さくできる点からは四角形、階段型八角形や六角形が好ましく、表示媒体を構成する粒子を移動しやすくできる点からは曲線を有する形状が好ましい。前記二つの点から角丸付きの四角形や角丸付きの六角形、角丸付きの階段型八角形が好ましく用いられる。
【0039】
隔壁の形成材料としては、レジスト材が好適であり、液状レジスト材やドライフィルムレジスト材が用いられる。ドライフィルムレジスト材の一例として、アルフォNIT2(ニチゴーモートン社製)やPDF300(新日鐵化学社製)を使用することができる。
【0040】
粒子群配置ステップで用いるマスク(マスク本体)は、材料にステンレス鋼(SUS)、ニッケル、アルミニウム、鉄、銅等の金属やこれらの合金を用いたメタルマスクや、汎用プラスチックを用いた樹脂製マスクおよびメタルと樹脂とを組み合わせた積層マスクなどが用いられる。メタルマスクの一部に絶縁部材を設けて部分的に絶縁性部材を有する導電性メタルマスクとしたり、樹脂製マスクの一部に導電部材を設けて部分的に導電性部分を有する樹脂製マスクとしたりすることができる。マスクの厚さは10μm〜200μmの薄いものが好ましく強度的に優れたメタルマスクが好適である。
【0041】
マスクの開口は、セルを囲む隔壁がマスクの開口部に露出しなければよく、その形状はどのような形状であっても良い。マスク目詰まりが起きにくい角丸付き四角形、角丸付き六角形、楕円形、円形、レーストラック形などが好ましく用いられる。さらにその形状はセル開口形状に合わせるか円形状、楕円形状、レーストラック形状のいずれかにするのが好ましい。
【0042】
(情報表示用パネルの電極について)
必要に応じて配置する電極用の導電膜としては、観察側基板の透明な情報表示画面領域には透明な導電膜を設ける必要があり、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly-(styrenesulfonate)(PEDOT:PSS)などのポリチオフェン類等の透明導電性高分子類で形成した導電膜が挙げられ、必要に応じてパターニングして用いる。
【0043】
情報表示画面領域外や背面側基板に設ける電極用の導電膜は透明であってもよいし、透明でなくてもよく、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly-(styrenesulfonate)(PEDOT:PSS)などのポリチオフェン類等の導電性高分子類や、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム等の金属や、これらの金属を主成分とする合金が挙げられ、必要に応じてパターニングして用いる。
【0044】
電極用の導電膜の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や金属箔(例えば圧延銅箔)をラミネートする方法、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。パターン形成可能で導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、観察側基板の透明な情報表示画面領域に設ける透明な導電膜の厚さは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmがより好ましい。また、情報表示画面領域外や背面側基板に設ける導電膜の厚さは、導電性が確保できれば良く、0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmがより好ましい。
【0045】
<表示媒体とする粒子について>
本発明の粒子充填方法を適用する情報表示用パネルにおいて表示媒体を構成する粒子群は、平均粒子径d(0.5)が、1μm〜20μmの範囲であり、一種類の粒子で構成したり、複数種類の粒子を組み合せて構成したりする。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0046】
さらに、表示媒体を構成する粒子(粒子群)の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、表示媒体を構成する粒子のサイズが揃い、表示媒体としての均一な移動が可能となる。
【0047】
さらにまた、表示媒体として複数の粒子群を使用する場合には、使用した粒子群の内、最大の平均粒子径d(0.5)を示す粒子群の平均粒子径d(0.5)に対する、最小の平均粒子径d(0.5)を示す粒子群の平均粒子径d(0.5)の比を10以下とする。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、複数の粒子群は表示媒体として互いに反対方向に動くので、互いの粒子群を構成している粒子サイズが近い方が表示媒体として容易に移動できるようになるので好適であり、それがこの範囲となる。
【0048】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子群を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、平均粒子径および粒子径分布の測定を行うことができる。
【0049】
さらに、帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として、気体中空間(真空を含む)で駆動させる方式とする場合には、パネル基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、対向する2枚の基板に挟まれる部分から、電極、表示媒体の占有部分、隔壁の占有部分、パネル基板間のシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるようにパネル基板間に封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール剤、シール方法を施すことが肝要である。
【0050】
本発明の対象とする情報表示用パネルの基板と基板との間隔は、表示媒体が駆動できて、表示コントラストを維持できればよく、表示媒体とする粒子群を構成する粒子の大きさや充填量に合わせて調整される。
表示媒体とする粒子群に帯電性粒子を用いる場合は、基板と基板との間隔は10μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μmの範囲で調整される。さらに、基板間の気体中空間(真空を含む)における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体としての粒子の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【0051】
本発明に係る情報表示用パネルに用いる表示媒体とする粒子群は、帯電性粒子を含む粒子群としたり、導電性粒子を含む粒子群としたり、半導体性粒子を含む粒子群としたりすることができる。これらの粒子群に対して、例えば、電界を付与したり、電荷を注入したり、正孔を注入したりすることによってこれらの粒子群を表示媒体として移動させることができ、この表示媒体を視認することによって表示された情報を認識する。
【実施例】
【0052】
以下に示す実験例1および実験例2を実施して、本発明の範囲内の実施例および参考例と本発明の範囲外の比較例とを比較した。以下、実験例1および実験例2における共通の構成である、白色粒子、黒色粒子、マスクの構成、弾性シート部材の構成、調整補助具を説明した後、実験例1、実験例2を説明する。
【0053】
(白色粒子群:白色表示媒体となる)
ポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100重量部と、着色剤として二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)100重量部と、負帯電の荷電制御剤としてフェノール系縮合物(ボントロンE89:オリエント化学製)5重量部とを2軸混練機により溶融混練し、ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック(株)製)で細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニュ−マチック工業)を用いて分級し、溶融球状化装置(MR−10:日本ニュ−マチック工業)を用いて溶融球状化し、平均粒子径が9.5μm、飛球1.2の負帯電性の白色粒子群を得た。
【0054】
(黒色粒子:黒色表示媒体となる)
メチルメタクリレートモノマー(関東化学試薬)60重量部、及び、1分子中に重合反応基を複数持つ多官能性モノマーとしてエチレングリコールジメタクリレート(和光純薬試薬)40重量部(約25mol%)に、正帯電の荷電制御剤としてニグロシン化合物(ボントロンN07:オリエント化学製)3重量部、及び、黒色顔料として、カーボンブラック(スペシャルブラック:デグッサ製)5重量部をサンドミルにより分散させ、(アクリル系及びメタクリル系)樹脂−炭化水素系樹脂ブロックコポリマー(モディパーF600:日本油脂製)5重量部を溶解させた後、さらに2重量部のラウリルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂製)を溶解させた液を、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(ラテムルE−118B:花王製)を0.5%添加した精製水に懸濁、重合させ、濾過、乾燥させた後、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業)を用いて平均粒子径9.2μm、比重1.0の正帯電性黒色粒子を得た。
【0055】
(マスクの構成)
実施例、参考例および比較例で用いたマスクは、マスク本体を枠体に張力付与部材で取り付けた構成であり、枠体には、厚さが1mmのステンレス鋼板(SUS304)を中空になるように折り曲げたパイプ構造のものを採用し、張力付与部材には、線径50μmのステンレス繊維メッシュを採用した。マスクの枠体を上下に移動する昇降装置に固定してパネル基板上の隔壁頂上に対するマスク本体の配置位置を調整した。
【0056】
(弾性シート部材の構成について)
実施例、参考例および比較例で用いた弾性シート部材は、以下の表1に示すように、ゴムシートにJIS−A硬度30°のシリコーンゴムシートを単層に構成した弾性シート部材(単層構造)、および、JIS−A硬度30°のシリコーンゴムシートにPETシート(シリコーンゴムシートよりも高弾性シート)を貼り合わせて二重に構成した弾性シート部材(二層構造)のいずれかとした。二層構造は、一方の面の全面に粘着剤が付いているPETシートを用いて、PETシートとシリコーンゴムシートとを貼り合わせた場合(全面貼り合わせ)、および、一方の面の下端部領域部分にだけ粘着剤が付いているPETを用いて、PETシートとシリコーンゴムシートとを貼り合わせた場合(下端部面貼り合わせ)との2通りの重ね合わせ構造について検討した。弾性シート部材は、幅30mm、長さ500mmとし、二層構造とする場合には下端部とする辺においてそれぞれのシート下端部が揃うように形成した。
【0057】
(調整補助具について)
実施例で用いて調整補助具は、SUS304製の段差付き平板で、図5(a)、(b)に示した形状、構成のものを、図5(a)、(b)に示すように配置して、粒子充填部材を構成する固定治具に取り付けて用いた。なお、図5(a)に示される各部材の寸法、特に厚さに関しては、実際の寸法を正確には示していない。この固定治具に、JIS−A硬度30°のシリコーンゴムシートを弾性材料シートとして用いた弾性シート部材(単層構造または二層構造)を取り付けた後、調整補助具を取り付けた。調整補助具と弾性シート部材とは、図5(a)、(b)に示すように、弾性シート部材が100μm〜1mmの範囲ではみ出すようにした。調整補助具は実施例において平行度調整を行う場合のみ装着し、粒子群配置ステップでは、調整補助具を外した粒子充填部材を充填に使用した。
【0058】
<実験例1>
縦方向の長さが30mmで、横方向の長さが450mmの弾性シート部材を用いてA4判相当の画面サイズを有する情報表示用パネルが2枚取れるサイズの基板に格子状に設けられた隔壁が形成する300μm×300μmのセル内に前述した白色粒子群を配置した。粒子群を配置する前に、基板の隔壁上に載せたマスクと、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート部材端部との平行度調整を実施例1〜7、比較例1、2に従って実行した。
【0059】
比較例1、2では、目視による人為的な方法で平行度調整を行った。具体的には、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート部材端部を、基板上にセットしたマスク面すれすれまで下降させ、マスク面と弾性シート部材の端部との間の隙間間隔が、弾性シート部材の横の長さ方向で同じであることを目視によって感覚的に確認する方法を採った。
【0060】
実施例1〜5では、弾性シート部材の横の長さ方向の端部付近の位置2箇所にそれぞれ設置した2基のレーザー装置を作動させた状態で、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート端部を下降させ、弾性シート部材の端部位置の2箇所を、2基のレーザー装置で検出する方法を採った。
【0061】
実施例6、7では、弾性シート部材の横の長さ方向の端部付近の位置2箇所に移動可能に設置した1基のレーザー装置を作動させた状態で、まず、第1の位置に配置した後、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート部材端部を下降させ、第1の位置における弾性シート部材の端部位置情報を取り、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材を上昇させた後、第2の位置にレーザー装置を移動させて、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート部材端部をもう一度下降させ、第2の位置における弾性シート部材の端部位置情報を取り、2つの端部位置情報を用いて平行度調整を行った。実施例6、7ではいずれも、この調整作業を2回実行して平行度調整を終了した。
【0062】
結果を以下の表1に示す。なお、表1の「評価」の欄において、スジムラが見られず、配置粒子量のばらつきも見られなかった場合を「Good」と表示し、スジムラが見られ、配置粒子量のばらつきも見られた場合を「No Good」と表示した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果から、比較例1、2の目視による平行度調整では精確な平行度が得られていないため、良好な粒子配置が行なえないことがわかった。実施例6、7の1基のレーザー装置による平行度調整では、若干調整時間が掛かるようになるが、精確な平行度が得られるようになるため、良好な粒子配置が行なえることがわかった。実施例1〜5の2基のレーザー装置による平行度調整では、精確な平行度が得られるようになるため、良好な粒子配置が行なえるだけでなく、調整時間も短時間で済むようになることがわかった。
【0065】
<実験例2>
縦方向の長さが30mmで、横方向の長さが450mmの弾性シート部材を用いてA4判相当の画面サイズを有する情報表示用パネルが2枚取れるサイズの基板に格子状に設けられた隔壁が形成する300μm×300μmのセル内に前述した白色粒子群を配置した。粒子群を配置する前に、基板の隔壁上に載せたマスクと、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート部材端部との平行度調整を実施例11〜17、参考例11に従って実行した。
【0066】
参考例11では、厚さ0.5mmで単層のシリコーンゴムを弾性シート部材とした場合に、粒子充填部材に調整補助具を取り付けずに、基板の隔壁上に載せたマスクと、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート部材端部との平行度調整を行った。弾性シート部材の横の長さ方向の端部付近の位置2箇所にそれぞれ設置した2基のレーザー装置を作動させた状態で、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材を下降させ、粒子充填部材の弾性シート部材端部位置の2箇所を、2基のレーザー装置で検出する方法を採った。
【0067】
実施例11〜14では、厚さ0.5mmで単層のシリコーンゴムシートを弾性シート部材とした場合も含めて、いずれの場合においても、粒子充填部材に調整補助具を取り付けて、基板の隔壁上に載せたマスクと、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート部材端部との平行度調整を行った。
【0068】
実施例15〜17では、シリコーンゴムシートとPETシートとの二層の弾性シート部材とした場合に、粒子充填部材に調整補助具を取り付けずに、基板の隔壁上に載せたマスクと、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材の弾性シート部材端部との平行度調整を行った。弾性シート部材の横の長さ方向の端部付近の位置2箇所にそれぞれ設置した2基のレーザー装置を作動させた状態で、粒子充填装置に取り付けた粒子充填部材を下降させ、弾性シート部材の端部位置の2箇所を、2基のレーザー装置で検出する方法を採った。
【0069】
結果を以下の表2に示す。なお、表2の「評価」の欄において、スジムラが見られず、配置粒子量のばらつきも見られなかった場合を「Good」と表示し、スジムラが若干見られ、配置粒子量のばらつきも若干見られたが、実用上問題ない場合を「OK」と表示した。
【0070】
【表2】

【0071】
表2の結果から以下のことがわかった。参考例11では、たわみ易い0.5mm厚のシリコーンゴムシート単層の調整補助具を用いない平行度調整を実行したため、マスク面に対して角度を付けた状態は、弾性シート部材が大きくたわんだ状態で平行度を調整することになったためか精確な平行度が得られていない可能性がある。そのため、粒子配置量においてややばらつきがでてしまったものと考えられる。この参考例11に従って前述した黒色粒子群も配置して、情報表示用パネルとした後、表示動作させて得た画像評価でこの程度の粒子配置量のばらつきは実用上問題にはならないことを確認した。
【0072】
実施例11〜14の調整補助具を用いた平行度調整は、薄い単層のゴムシートで構成された弾性シート部材を、マスク面に対して角度を付けた状態で実行した場合(実施例14)であっても精確な平行度が得られるようになるため、良好な粒子配置が行なえることがわかった。実施例15〜17の調整補助具を用いない平行度調整は、シリコーンゴムシートとPET製の補強用シートとの二層で構成された弾性シート部材を、マスク面に対して角度を付けた状態で実行した場合であるが、弾性シート部材が然程たわまない状態で平行度を調整することができるため、調整補助具がなくても精確な平行度が得られ、良好な粒子配置が行なえることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明を用いて製造する情報表示用パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板(ホワイトボード)等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence, Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部に好適に用いられる。他に、リライタブルペーパー(外部電界形成手段を用いて書換えできるものや、外部の表示書換え手段に接続して情報を書き換えた後、接続を解放しても情報を表示したままにすることができるもの)としても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
1、2 パネル基板
3W 白色粒子群
3Wa 負帯電性白色粒子
3B 黒色粒子群
3Ba 正帯電性黒色粒子
4 隔壁
5、6 電極
7 セル
8 接着剤
11 マスク
11−1 マスクの開口部
11−2 マスク部
12 粒子充填部材
13 弾性シート部材
13−1 ゴムシート(低弾性)
13−2 補強用シート(高弾性)
13a 弾性シート部材下端部
14 固定治具
16 粒子充填部材押し付け装置
17 粒子充填部材移動装置
24 調整補助具
25 ネジ
31 ステージ
32 基板
33 マスク
34、35 レーザー装置
34−1、35−1 投光部
34−2、35−2 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表示画面領域が透明な、2枚の基板を対向させた空間に配置した粒子群を表示媒体として駆動させて情報表示を行う情報表示用パネル製造時の粒子配置方法であって、
前記基板上に設けられた隔壁上にマスクを配置するマスク配置ステップと、
前記マスク上に前記粒子群を載置する粒子群載置ステップと、
前記マスク上に載置された前記粒子群を、弾性シート部材を備える粒子充填手段を用いて前記基板上に配置する粒子群配置ステップと、を含み、
前記粒子群配置ステップを実行するに先立ち、前記粒子充填手段に固定された前記弾性シート部材と前記マスク表面との平行度調整を行うに際し、
前記弾性シート部材の長さ方向の少なくとも2箇所について、前記弾性シート部材下端部の位置をレーザー装置で求め、得られた位置情報に基づき、前記弾性シート部材下端部と前記マスク表面との平行度を調整する、情報表示用パネル製造時の粒子配置方法。
【請求項2】
前記弾性シート部材が、幅5mm〜100mm、長さ300mm〜1200mm、厚さ0.5mm〜1.5mmで、JIS−A硬度30°〜60°の1枚のゴムシートで構成された、請求項1に記載の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法。
【請求項3】
前記ゴムシートの一方の面側に調整補助具を当接配置した、請求項2に記載の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法。
【請求項4】
前記弾性シート部材が、幅5mm〜100mm、長さ300mm〜1200mm、厚さ0.4mm〜1.5mmで、JIS−A硬度30°〜60°のゴムシートと、幅5mm〜100mm、長さ300mm〜1200mm、厚さ0.1mm〜0.3mmで、弾性シートである補強用シートと、を重ね合せた二重構造である、請求項1に記載の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法。
【請求項5】
前記弾性シート部材の幅方向先端部の位置をレーザー装置で求めるにあたり、マスク表面と平行移動可能に設置したレーザー装置1基を、前記弾性シート部材の長さ方向の少なくとも2箇所に順番に移動させ、各位置に配置された前記レーザー装置を用いて、前記各位置における前記弾性シート部材の幅方向先端部の位置を求め、得られた位置情報に基づき、前記粒子充填手段のマスク表面に対する平行度を調整し、前記各位置における前記弾性シート部材の幅方向先端部の位置が同じになった場合に、前記弾性シート部材の幅方向先端部が、前記マスク表面に対して平行であると判断する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法。
【請求項6】
前記弾性シート部材の幅方向先端部の位置を2基のレーザー装置で求めるにあたり、前記2基のレーザー装置を、それぞれ結ぶ線がマスク表面と平行になるように設置し、前記弾性シート部材をマスク表面に近づけた際に、前記弾性シート部座の幅方向先端部の2箇所の位置を、前記2基のレーザー装置で同時に検知した場合に、前記弾性シート部材の幅方向先端部が、前記マスク表面に対して平行であると判断する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法。
【請求項7】
前記レーザー装置として、透過型のレーザー変位計または反射型のレーザー変位計を用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報表示用パネル製造時の粒子配置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−128093(P2012−128093A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278247(P2010−278247)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】