説明

情報表示装置の製造方法、情報表示装置用の散乱反射型表示体及び情報表示装置

【課題】表示状態の評価を、画素電極やカラーフィルタなどを作製する前の段階で行なうことができ、カラーフィルタ層と表示媒体層の間隔を狭めることで視差の発生を少なくした、散乱反射型の情報表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】溶解性成分を含む基板101、受容層102、透明導電膜103、マイクロカプセル層104、接着剤層105、シリコーン離型剤層106、透明導電膜107、PETフィルム108をこの順に積層した散乱反射型表示体120を作製し、透明導電膜103及び107間に検査用電圧を印加してマイクロカプセル層104の散乱反射状態を変化させて表示状態を検査した後、シリコーン離型剤層106と接着剤層105との界面を剥離し、画素電極201が形成された背面板202を、画素電極201と接着剤層105とが接するように接着する。そして、溶解性成分を含む基板101を溶解除去し受容層102表面に露出させた後、受容層102表面にカラーフィルタ層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱反射型の情報表示装置を対象とした、情報表示装置の製造方法、情報表示装置用の散乱反射型表示体及び情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背面にバックライトを設け、その発光を液晶パネルで制御して表示を行なう透過型LCD(Liquid Crystal Display)に対し、周囲の照明や環境光等の反射光を制御して表示を行なう反射型LCDが、低消費電力であること、また、直射日光下での視認性が良いことなどの理由から、主に携帯情報端末用に用いられるようになってきている。また、近年、LCDとは異なる表示原理を利用したディスプレイも報告されており、LCDにはない特徴を有する反射型ディスプレイとして期待されている。
【0003】
LCDの表示方式として、現在、TN(Twisted Nematic)方式及びSTN(Super Twisted Nematic)方式の2方式が主に用いられており、さらにIPS(In-Plane Switching)方式、MVA(MultidomainVertical Alignment)方式、及びOCB(Optical Compensated Birefringence)方式等も報告されている。これらのいずれの表示方式も、それ自体は光の透過状態を制御するものであり、表示色を変えることはできない。したがって、色表示をするためには、カラーフィルタを使用する必要がある。
【0004】
また、LCDに代わる他の表示方式として、帯電した微粒子を電場によって動かす電気泳動方式(例えば、特許文献1参照)、2色に塗り分けられた球体を電場で回転させるツイストボール方式(例えば、特許文献2参照)、樹脂中に分散した液晶の液滴内部の配向状態を電場で制御する高分子分散型液晶方式(PDLC Polymer Dispersion Liquid Crystal)(例えば、特許文献3参照)、その樹脂成分比が小さく液晶中に高分子が網目構造をとっている高分子ネットワーク型液晶方式(PNLCPolymer Network Liquid Crystal)(例えば、特許文献4参照)などがある。
【0005】
これらの表示方式は、いずれも散乱反射状態を電場で制御するものであり、それ自体は色を表示することが困難であるので、カラーフィルタを使用するのが現実的である。前記カラーフィルタを用いてカラー表示化する方式としては、複数の画素に相当する電極を有する基板と、カラーフィルタを有する基板とを、設定された画素の位置とカラーフィルタの位置とを正確に位置合わせして貼り合せるのが一般的である。しかし、表示する画素が細かくなり、また、画素が多くなればなるほど、要求される位置合わせ精度が高くなり大画面化・高精細化が困難となる。
【0006】
そこで、カラーフィルタを表示媒体上に直接形成することにより、カラーフィルタを高精度に形成し、且つ、2つの基板を貼り合せる際の位置合わせを必要としない構成を有する散乱反射型カラー表示体が提案されている(例えば、特許文献5参照)。この散乱反射型カラー表示体は次のような手順で形成される。すなわち、まず、TFT(Thin Film Transistor)などの複数の能動素子に接続された複数の画素電極を有する第1の基板上に、電圧を印加する事により散乱反射状態が制御できる表示媒体を形成する。
【0007】
次いで、前記表示媒体上の前記画素電極に対応する位置に、所定のパターンの複数の着色層からなるカラーフィルタを、スクリーン印刷により印刷したり、インクジェットプリンタにより印字したりすることにより形成する。前記着色層には、Red,Green,Blueの3色、またはCyan,Magenta,Yellowの3色が用いられる。次いで、対向電極となる面状に設けられた透明電極を有する第2の基板を、前記第1の基板に貼り合せることで散乱反射型カラー表示体を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−86116号公報
【特許文献2】特開平1−42683号公報
【特許文献3】特開2001−92383号公報
【特許文献4】特開2001−154219号公報
【特許文献5】特開2003−108035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述の散乱反射型カラー表示体を作製する際、表示媒体に発生する、不良箇所の発見が遅れるという問題がある。つまり、表示媒体に発生する不良として、導電性または絶縁性の異物の混入や表示媒体の層厚のムラが原因の、表示媒体に電圧を印加したときに正常に散乱反射状態を制御することができなくなるというものがある。
【0010】
この不良を発見することができるのは、対向電極となる透明電極を有する第2の基板を、画素電極を有する第1の基板に貼り合せた後の段階であり、実際に画素電極及びその対向電極としての透明電極間に所定の電圧を印加した後の時点でしか、不良を発見することができない。
【0011】
そのため、不良を発見することができたとしても、この時点では既に、第1の基板と第2の基板とを貼り合せた後であるため、画素電極や着色層など高価な部材を無駄にしてしまうことになる。
【0012】
そこで、本発明は、上記従来の問題に着目してなされたものであり、表示状態の評価を、画素電極やカラーフィルタなどを作製する前の段階で行なうことの可能な情報表示装置の製造方法、情報表示装置用の散乱反射型表示体及び情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、画素電極又はセグメント電極と対向電極との間に印加された電圧により、上記電極間に設けられた表示媒体の散乱反射状態を制御して表示を行なう情報表示装置の製造方法であって、可溶性成分を含む基板と、透明導電膜と、散乱反射型の表示媒体からなる表示媒体層と、をこの順に積層して第1の部材を生成する工程と、第一の基板と、導電膜と、離型剤層と、接着剤層とをこの順に積層して第2の部材を生成する工程と、上記表示媒体層と上記接着剤層とが接するように上記第1の部材と上記第2の部材とを接着して散乱反射型表示体を生成する工程と、上記透明導電膜及び上記導電膜間に検査用電圧を印加して上記表示媒体の散乱反射状態を変化させる検査工程と、当該検査工程後に、上記離型剤層と上記接着剤層との界面を剥離する工程と、上記画素電極又はセグメント電極が形成された第2の基板を、上記画素電極又はセグメント電極と上記接着剤層とが接するように接着する工程と、上記可溶性成分を含む基板を溶解除去し上記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜を露出する工程と、を備えることを特徴としている。
【0014】
また、上記製造方法において、上記可溶性成分を含む基板または第一の基板と、導電膜と、離型剤層と、接着剤層の少なくとも一方が透明であることを特徴としている。
【0015】
また、上記製造方法において、上記透明導電膜は、ITO膜(酸化インジウム・錫)、酸化亜鉛膜、酸化錫膜などの透明導電膜であることを特徴としている。
【0016】
また、上記製造方法において、上記導電膜は、ITO膜(酸化インジウム・錫)、酸化亜鉛膜、酸化錫膜などの透明導電膜またはアルミ薄膜などの金属薄膜の何れかであることを特徴としている。
【0017】
これらの特徴により、上記検査工程において上記可溶性成分を含む基板または第一の基板側から、上記透明導電膜及び上記導電膜間に検査用電圧を印加することにより上記表示媒体の散乱反射状態が変化したことを視認することができる。
【0018】
また、上記製造方法において、上記可溶性成分を含む基板を溶解除去し、上記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜を露出する工程の後に、当該工程により露出した上記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜に、上記画素電極又はセグメント電極と対向させてカラーフィルタを形成する工程を備え、上記カラーフィルタの上に透明な表面保護層を形成することを特徴としている。
【0019】
また、上記製造方法において、上記可溶性成分を含む基板は、溶解液に浸すことで溶解することを特徴としている。
【0020】
また、上記製造方法において、上記可溶性成分を含む基板が水に対して溶解し、上記溶解液が水であることを特徴としている。
【0021】
また、上記製造方法において、上記可溶性成分を含む基板が、ポリビニルアルコール系樹脂、澱粉系樹脂のいずれかであることを特徴としている。
【0022】
また、上記製造方法において、上記可溶性成分を含む基板が酵素に対して溶解し、上記溶解液が酵素を含むことを特徴としている。
【0023】
また、上記製造方法において、上記可溶性成分を含む基板が、セルロース系樹脂であることを特徴としている。
【0024】
また、上記製造方法において、上記溶解液が含む酵素が、セルラーゼであることを特徴としている。
【0025】
また、上記製造方法において、上記第一の基板が、ガラス基板であることを特徴としている。
【0026】
また、上記製造方法において、上記第一の基板が、樹脂基板であることを特徴としている。
【0027】
また、上記製造方法において、上記樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかであることを特徴としている。
【0028】
また、上記製造方法において、上記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂のいずれかであり、非水溶であることを特徴としている。
【0029】
また、上記製造方法において、上記透明な表面保護層が、樹脂膜であることを特徴としている。
【0030】
また、上記製造方法において、上記透明な表面保護層としての樹脂膜は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、のいずれかであることを特徴としている。
【0031】
また、上記製造方法において、上記表示媒体層は、中空構造体中に溶媒と光学特性及び帯電特性が異なる少なくとも2種類の分散性粒子とが分散した電気泳動液からなる電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0032】
また、上記製造方法において、上記表示媒体層は、高分子分散型液晶方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0033】
また、上記製造方法において、上記表示媒体層は、高分子ネットワーク型液晶方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0034】
また、上記製造方法において、上記表示媒体層は、マイクロカプセル型電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0035】
また、本発明は、可溶性成分を含む基板と、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜と、透明導電膜と、散乱反射型の表示媒体からなる表示媒体層と、接着剤層と、離型剤層と、導電膜と、第一の基板と、がこの順に積層されてなり、且つ情報表示装置に適用される散乱反射型表示体であって、上記透明導電膜と導電膜の間に印加した電圧により上記表示媒体の散乱反射状態を制御することを特徴としている。
【0036】
また、上記散乱反射型表示体において、上記可溶性成分を含む基板または第一の基板と、導電膜と、離型剤層と、接着剤層の少なくとも一方が透明であることを特徴としている。
【0037】
また、上記散乱反射型表示体において、上記透明導電膜は、ITO膜(酸化インジウム・錫)、酸化亜鉛膜、酸化錫膜などの透明導電膜であることを特徴としている。
【0038】
また、上記散乱反射型表示体において、上記導電膜は、ITO膜(酸化インジウム・錫)、酸化亜鉛膜、酸化錫膜などの透明導電膜またはアルミ薄膜などの金属薄膜の何れかであることを特徴としている。
【0039】
また、上記散乱反射型表示体において、上記可溶性成分を含む基板は、溶解液に浸すことで溶解することを特徴としている。
【0040】
また、上記散乱反射型表示体において、上記可溶性成分を含む基板が水に対して溶解し、上記溶解液が水であることを特徴としている。
【0041】
また、上記散乱反射型表示体において、上記可溶性成分を含む基板が、ポリビニルアルコール系樹脂、澱粉系樹脂のいずれかであることを特徴としている。
【0042】
また、上記散乱反射型表示体において、上記可溶性成分を含む基板が酵素に対して溶解し、上記溶解液が酵素を含むことを特徴としている。
【0043】
また、上記散乱反射型表示体において、上記可溶性成分を含む基板が、セルロース系樹脂であることを特徴としている。
【0044】
また、上記散乱反射型表示体において、上記溶解液が含む酵素が、セルラーゼであることを特徴としている。
【0045】
また、上記散乱反射型表示体において、上記第一の基板が、ガラス基板であることを特徴としている。
【0046】
また、上記散乱反射型表示体において、上記第一の基板が、樹脂基板であることを特徴としている。
【0047】
また、上記散乱反射型表示体において、上記樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかであることを特徴としている。
【0048】
また、上記散乱反射型表示体において、上記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂のいずれかであり、非水溶であることを特徴としている。
【0049】
また、上記散乱反射型表示体において、上記表示媒体層は、中空構造体中に溶媒と光学特性及び帯電特性が異なる少なくとも2種類の分散性粒子とが分散した電気泳動液からなる電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0050】
また、上記散乱反射型表示体において、上記表示媒体層は、高分子分散型液晶方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0051】
また、上記散乱反射型表示体において、上記表示媒体層は、高分子ネットワーク型液晶方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0052】
また、上記散乱反射型表示体において、上記表示媒体層は、マイクロカプセル型電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0053】
また、本発明は、一方の面に画素電極又はセグメント電極が形成された第2の基板を有すると共に、接着剤層と散乱反射型の表示媒体からなる表示媒体層と上記画素電極又はセグメント電極の対向電極となる透明導電膜と、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜に形成されたカラーフィルタと、透明な表面保護層とがこの順に積層され且つ上記接着剤層が上記画素電極又はセグメント電極を覆うように上記第2の基板上に積層されてなる情報表示装置であって、上記画素電極又はセグメント電極と、上記対向電極としての上記透明導電膜との間に印加した電圧により上記表示媒体の散乱反射状態を制御して情報表示を行なうことを特徴としている。
【0054】
また、上記情報表示装置において、上記表示媒体層は、中空構造体中に溶媒と光学特性及び帯電特性が異なる少なくとも2種類の分散性粒子とが分散した電気泳動液からなる電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0055】
また、上記情報表示装置において、上記表示媒体層は、高分子分散型液晶方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0056】
また、上記情報表示装置において、上記表示媒体層は、高分子ネットワーク型液晶方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【0057】
また、上記情報表示装置において、上記表示媒体層は、マイクロカプセル型電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0058】
本発明に係る情報表示装置の製造方法によれば、可溶性成分を含む基板と、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜と、透明導電膜と、散乱反射型の表示媒体からなる表示媒体層と、をこの順に積層した第1の部材と、第一の基板と、透明導電膜と、離型剤層と、接着剤層とをこの順に積層した第2の部材とを、前記表示媒体層と前記接着剤層とが接するように接着して散乱反射型表示体を生成し、この散乱反射型表示体の、透明導電膜及び導電膜との間に検査用電圧を印加して前記表示媒体の散乱反射状態を変化させた後、散乱反射型表示体の前記離型剤層と前記接着剤層との界面を剥離し、前記画素電極又はセグメント電極が形成された第2の基板を、前記画素電極又はセグメント電極と前記接着剤層とが接するように接着し、さらに前記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜を、前記可溶性成分を含む基板から溶解剥離して情報表示装置を生成する。
【0059】
さらに、前記可溶性成分を含む基板または第一の基板と、導電膜と、離型剤層と、接着剤層の少なくとも一方が透明であることから、透明導電膜及び導電膜との間に検査用電圧を印加した段階で、表示媒体の散乱反射状態から表示状態を検査することができるため、表示媒体に欠陥のある情報表示装置を作製するといった無駄な作業を行なうことを回避することができ、また、画素電極又はセグメント電極などのその後の工程で作製される部品などを無駄にすることを回避することができる。
【0060】
また、画素電極又はセグメント電極と対向電極となる透明導電膜とを形成した後に、透明導電膜の上に形成された、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜に直接カラーフィルタを形成するようにしているため、画素電極またはセグメント電極が形成された基板と、カラーフィルタが形成された基板とを位置合わせをしつつ貼り合せる場合に比較してより容易に且つ高精度に、カラーフィルタと画素電極又はセグメント電極との位置合わせを行なうことができる。
【0061】
さらに、可溶性成分を含む基板は、溶解液に浸すことで溶解し、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜から溶解剥離する特性を有するため、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜および透明導電膜を容易に表示媒体層に転写することができる。
【0062】
また、本発明に係る情報表示装置用の散乱反射型表示体は、可溶性成分を含む基板と顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜と散乱反射型の表示媒体からなる表示媒体層と接着剤層と導電膜と透明な基板とが積層されて構成されており、加えて、前記可溶性成分を含む基板または第一の基板と、導電膜と、離型剤層と、接着剤層の少なくとも一方が透明であることから、透明導電膜と導電膜との間に電圧を印加することにより表示媒体の散乱反射状態を変化させることができ変化状態から表示媒体層の欠陥の有無を検出することができる。
【0063】
さらに、本発明に係る情報表示装置は、画素電極又はセグメント電極が形成された第2の基板と接着剤層と散乱反射型表示媒体からなる表示媒体層と透明導電膜と顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜に形成されたカラーフィルタと表面保護層とが積層されて構成されるため、カラーフィルタと画素電極又はセグメント電極とが高精度に対向して配置された情報表示装置を得ることができ、良好な画質のカラー表示を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る情報表示装置用の散乱反射型表示体の一構成例を示す断面図。
【図2】本発明の実施形態に係る情報表示装置用の散乱反射型表示体の製造方法を説明するための製造工程の一例を示す断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る情報表示装置の製造方法を説明するための製造工程の一例を示す断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る情報表示装置の一構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0066】
まず、本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0067】
図1は、本発明を適用した情報表示装置用の散乱反射型表示体120の一構成例を示したものであって、マイクロカプセル型電気泳動方式の散乱反射型表示体の構成を示す断面図である。
【0068】
図1において、101は可溶性成分を含む基板、102は顔料を固定する受容層、103は透明導電膜(第1の透明導電膜)、104はマイクロカプセル層(表示媒体層)、105は接着剤層、106はシリコーン離型剤層(離型剤層)、107は前記透明導電膜103と対をなす透明導電膜(第2の透明導電膜)、108はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(第1の基板)である。
【0069】
図1に示す散乱反射型表示体120の製造方法を、図2を用いて説明する。まず、粒径0.1μmの酸化チタン粒子と粒径0.1μmのカーボンブラック粒子を、それぞれ白色粒子、黒色粒子として有機溶剤中に分散させた分散液を、尿素樹脂中に封じて、粒径100μmのマイクロカプセル109を形成した。
【0070】
次に、図2(a)に示すように、厚さ約35μmのPVA(ポリビニルアルコール)フィルム101に顔料インキを固定する受容層102を乾燥時の厚さが約15μmとなるように塗布形成した。前記PVAフィルムとして水溶性ポバールフィルム「VF−H」(株式会社クラレ)を用い、前記受容層としてインクジェット用インキ受容層「ダイアロマーIJ110APK」(大日精化株式会社)を用いた。
【0071】
次に、受容層102の表面に透明導電膜103として約1,000Åの厚さのITO(Indium Tin Oxide)層を形成し、続いて、透明導電膜103の表面に前記マイクロカプセル109を緻密に一層敷き詰めて前記マイクロカプセル層104を形成し、これら積層体からなるオープンインクシート501(第1の部材)を作製した。
【0072】
次に、図2(b)に示すように、厚さ約100μmのPETフィルム108の表面に透明導電膜107として約1,000Åの厚さのITO層を形成し、次に、透明導電膜107の表面に離型剤として透明なシリコーン離型剤を塗布してシリコーン離型剤層106を形成した。
【0073】
次にシリコーン離型剤層106の表面に透明な熱可塑性接着剤を塗布して接着剤層105を形成し、これら積層体からなる接着剤シート502(第2の部材)を作製した。
【0074】
次に、オープンインクシート501のマイクロカプセル層104の表面に、接着剤シート502の接着剤層105が接着されるように、約100℃に加熱したゴムロールでラミネートし、図1に示す散乱反射型表示体120を作製した。なお、接着剤層105には、導電性を付与してもよい。
【0075】
このようにして得た図1の散乱反射型表示体120において、マイクロカプセル層104を挟んで対向した透明導電膜103および107に導線を接続し、透明導電膜103側をグランド電位とした時に透明導電膜107に“+15V”または“−15V”となるように検査用電圧を印加したところ、PETフィルム108側から見て、PETフィルム108、透明導電膜107、シリコーン離型剤層106、接着剤層105を透かしてマイクロカプセル層104が、“+15V”印加時には黒色に、“−15V”印加時には白色に変化することが確認できた。また、周囲のマイクロカプセル109とは違った発色をした部分を確認したところ、マイクロカプセル層104と接着剤層105との間に混入物を確認できた。
【0076】
ここで、図1の散乱反射型表示体120では、表示媒体層としてのマイクロカプセル層104が、対向する透明導電膜103と107との2面の透明導電膜の間に設置されていることから、前記2面の透明導電膜103と107との間に電位差を与えることで表示媒体層の散乱反射状態を変化させることができ、表示媒体層への導電性または絶縁性の異物の混入や、表示媒体層の層厚のムラが原因の、表示媒体層に電圧を印加したときに正常に散乱反射状態が制御できないなどといった不良を発見することができる。
【0077】
次に、図1の散乱反射型表示体120において、接着剤層105とシリコーン離型剤層106との界面でこれらを剥離することにより、散乱反射型表示体120からシリコーン離型剤層106と透明導電膜107とPETフィルム108とを除去した。なお、散乱反射型表示体120からシリコーン離型剤層106と透明導電膜107とPETフィルム108とを除去した後の、可溶性成分を含む基板101と受容層102と透明導電膜103とマイクロカプセル層104と接着剤層105とからなる積層体を、第1の積層体121とする。
【0078】
さらに、図3aに示すように、図示しない能動素子に接続され且つ画素毎に対応して設けられた、線幅約150μmの画素電極201を配置した厚さ約1mmのガラス基板からなる背面板202(第2の基板)を、接着剤層105と画素電極201とが接着されるようにして、第1の積層体121に接着した。
【0079】
このようにして作製された、可溶性成分を含む基板101、受容層102、透明導電膜103、マイクロカプセル層104、接着剤層105、画素電極201、背面板202とからなる積層体を、第2の積層体122とする。
【0080】
なお、第1の積層体121と背面板202とを接着する際の位置合わせは高精度である必要はなく、例えば、6インチや8インチなどのディスプレイサイズで画素電極が配列した部分に貼り合せればよい。
【0081】
次に、図3bに示すように第2の積層体122における第1の積層体121の周辺部分に耐水性の封止剤301を塗布し、マイクロカプセル層104および接着剤層105を封止して第3の積層体123を得た。
【0082】
次に前記第3の積層体123を水を入れた容器に浸し、プロペラで攪拌して水流を作り可溶性成分を含む基板101を溶解除去し第4の積層体124を得た(図3c)。
【0083】
ここで、第3の積層体123から可溶性成分を含む基板101を水に溶解させて除去することにより、水に不溶な受容層102を第4の積層体122の表面に露出することができる。
【0084】
次に、図4に示すように、第4の積層体124の、背面板202とは逆側の表面に露出した受容層102の表面にインクジェットプリンタにより、Red,Green,Blueの3色のストライプ状の着色層からなるカラーフィルタ401を、画素電極201に対応させて形成した。
【0085】
また、形成したカラーフィルタ401の表面をアクリル樹脂で覆い表面保護層402を形成した。
【0086】
なお、前記透明な表面保護層402としての樹脂膜は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを適用することができる。
【0087】
これにより、透明導電膜103を対向電極として、画素電極201と透明導電膜103とを表示制御用の電極とする、散乱反射型の情報表示装置500が作製された。
【0088】
ここで、上述のように、可溶性成分を含む基板101を水に溶解させて受容層102から除去するようにしているため、図2のオープンインクシート501において、受容層102および透明導電膜103を表示媒体層であるマイクロカプセル層104に容易に転写することができる。その結果、受容層102の表面に直接カラーフィルタ401を形成することができる。
【0089】
なお、カラーフィルタ401を形成する際には、画素電極201に相当する位置に高精度に形成する。カラーフィルタ401の位置合わせを行なうには、背面板202にアライメントマークを予め設けておき、このアライメントマークを利用することにより行なう。或いは、画素電極201と透明導電膜103との間に電圧を実際に印加し、表示媒体の散乱反射状態を変化させて、実際にカラーフィルタの各色を形成する画素を確認することなどにより行なう。
【0090】
このようにして得た散乱反射型の情報表示装置500では、カラーフィルタ401が、画素電極201と対向する位置に、精度良く配置されていることが確認できた。
【0091】
また、画素電極201及び透明導電膜103間に所定の電圧を印加することにより、良好な白、黒、赤、緑、青、その他の色を表示できることが確認できた。ここで、図1の散乱反射型表示体120にあっては、透明導電膜103及び107に導線を接続して検査用電圧を印加することにより、マイクロカプセル層104の欠陥を検査することができる。
【0092】
したがって、図4に示す散乱反射型の情報表示装置500を作製する場合、カラーフィルタ401及び画素電極201を作製する前の図1の散乱反射型表示体120を作製した段階で、マイクロカプセル層104及びマイクロカプセル層104と隣接する接着剤層105や、透明導電膜103および受容層102の欠陥を検査することができる。したがって、これらマイクロカプセル層104や接着剤層105や透明導電膜103および受容層102に欠陥が生じている場合には、画素電極201を貼り合せる前の段階で不具合のあるマイクロカプセル層104や接着剤層105や透明導電膜103および受容層102を取り除くことができる。
【0093】
その結果、欠陥を有するマイクロカプセル層104や接着剤層105や透明導電膜103および受容層102を用いて情報表示装置500を作製するといった無駄な作業を回避することができると共に、画素電極201やカラーフィルタ401を無駄にすることを回避することができ、製造コストを削減することができる。
【0094】
また、このとき、表示媒体層であるマイクロカプセル層104を挟むように透明導電膜103と画素電極201とを形成した後に、受容層102の上にカラーフィルタ401を形成する構成としており、従来のように、カラーフィルタが形成された基板と、画素電極が形成された基板とを貼り合せる必要はないため、カラーフィルタと画素電極とが対向するように位置合わせをしつつ貼り合せるといった困難な作業を行なう必要がない。逆に、受容層102の上にカラーフィルタ401を直接形成することができるため、より容易に位置合わせを行なうことができすなわち高精度に位置合わせを行なうことができる。
【0095】
また、上記実施の形態においては、受容層102上にカラーフィルタ401を形成する際に、インクジェットプリンタにより印字しているが、これに限るものではない。例えば、複数色の着色層をフォトリソグラフィーにより形成することも可能であり、また、スクリーン印刷やフレキソ印刷などにより行なうことも可能である。複数色は、Red,Green,Blueの3色に限るものではなく、Cyan,Magenta,Yellowの3色を用いることもでき、また、これらの色を組み合わせて用いることも可能である。
【0096】
また、上記実施の形態において、電極パターンは、画素に対応した種々の形状とすることができる。また、セグメント電極であってもよい。
【0097】
なお、本発明は、従来のTN方式やSTN方式のようなLCDには、適用することができない。なぜなら、これらの表示媒体は準液体であり、その表面に透明導電膜を設けることが不可能だからである。一方、電気泳動方式、殊にマイクロカプセル型電気泳動方式は、媒体自体が固体であるため、媒体上に直接、透明導電膜および受容層を形成でき、その表面にカラーフィルタを容易に形成することができるので、本発明には好適である。
【0098】
このようにして作製した散乱反射型の情報表示装置500の画素電極201及び透明導電膜103間に所定の電圧を印加したところ、良好な白、黒、赤、緑、青、その他の色を表示することができることが確認できた。
【0099】
なお、上記実施の形態における散乱反射型の情報表示装置500は、温度や応力により変形したが、画素電極201とカラーフィルタ401との位置関係が変化することはないことが確認された。
【0100】
また、透明導電膜103の破断による電気抵抗値の変化に起因した発色の不具合もないことが確認された。
【0101】
なお、受容層102と透明導電膜103との間に、透明導電膜103補強用の透明な補強層452を設けてもよい。
【0102】
また、本発明の実施の形態における散乱反射型の情報表示装置500では、背面板202としてガラス基板を用いたが、前記背面板202としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの樹脂基板を適用することもできる。
【符号の説明】
【0103】
101…可溶性成分を含む基板、102…受容層、103…透明導電膜(第1の透明導電膜)、104…マイクロカプセル層(表示媒体層)、105…接着剤層、106…シリコーン離型剤層(離型剤層)、107…透明導電膜(第2の透明導電膜)、108…PETフィルム(第1の基板)、109…マイクロカプセル、120…散乱反射型表示体、121…第1の積層体、122…第2の積層体、123…第3の積層体、124…第4の積層体、201…画素電極、202…背面板(第2の基板)、301…封止剤、401…カラーフィルタ、402…表面保護層、500…情報表示装置、501…オープンインクシート(第1の積層体)、502…接着剤シート(第2の積層体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極又はセグメント電極と対向電極との間に印加された電圧により、前記電極間に設けられた表示媒体の散乱反射状態を制御して表示を行なう情報表示装置の製造方法であって、
可溶性成分を含む基板と、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜と、透明導電膜と、散乱反射型の表示媒体からなる表示媒体層と、をこの順に積層して第1の部材を生成する工程と、
第一の基板と、導電膜と、離型剤層と、接着剤層とをこの順に積層して第2の部材を生成する工程と、
前記表示媒体層と前記接着剤層とが接するように前記第1の部材と前記第2の部材とを接着して散乱反射型表示体を生成する工程と、
前記第1の導電膜及び前記第2の導電膜間に検査用電圧を印加して前記表示媒体の散乱反射状態を変化させる検査工程と、
当該検査工程後に、前記離型剤層と前記接着剤層との界面を剥離する工程と、
前記画素電極又はセグメント電極が形成された第二の基板を、前記画素電極又はセグメント電極と前記接着剤層とが接するように接着する工程と、
前記可溶性成分を含む基板を溶解除去し、前記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜を露出する工程と、
を備えることを特徴とする情報表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記可溶性成分を含む基板を溶解除去し、前記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜を露出する工程の後に、当該工程により露出した前記顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜に、前記画素電極又はセグメント電極と対向させてカラーフィルタを形成する工程を備え、前記カラーフィルタの上に透明な表面保護層を形成することを特徴とする請求項1に記載の情報表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記可溶性成分を含む基板は、水を溶解液として水溶解液に浸すことで溶解する、ポリビニルアルコール系樹脂、澱粉系樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の情報表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記可溶性成分を含む基板が、セルロース系樹脂であり、前記溶解液が含む酵素が、セルラーゼであることを特徴とする請求項1または2に記載の情報表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記表示媒体層は、中空構造体中に溶媒と光学特性及び帯電特性が異なる少なくとも2種類の分散性粒子とが分散した電気泳動液からなる電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報表示装置の製造方法。
【請求項6】
可溶性成分を含む基板と、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜と、透明導電膜と、散乱反射型の表示媒体からなる表示媒体層と、接着剤層と、離型剤層と、導電膜と、第一の基板と、がこの順に積層されてなり、且つ情報表示装置に適用される散乱反射型表示体であって、
前記透明導電膜と導電膜の間に印加した電圧により前記表示媒体の散乱反射状態を制御することを特徴とする情報表示装置用の散乱反射型表示体。
【請求項7】
前記可溶性成分を含む基板は、水を溶解液として溶解液に浸すことで溶解する、ポリビニルアルコール系樹脂、澱粉系樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の情報表示装置用の散乱反射型表示体。
【請求項8】
前記可溶性成分を含む基板が、セルロース系樹脂であり、前記溶解液が含む酵素が、セルラーゼであることを特徴とする請求項6または7に記載の情報表示装置用の散乱反射型表示体。
【請求項9】
前記表示媒体層は、マイクロカプセル型電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴とする請求項6に記載の情報表示装置用の散乱反射型表示体。
【請求項10】
一方の面に画素電極又はセグメント電極が形成された第2の基板を有すると共に、接着剤層と散乱反射型の表示媒体からなる表示媒体層と前記画素電極又はセグメント電極の対向電極となる透明導電膜と、顔料または染料などの着色成分を固定する樹脂膜に形成されたカラーフィルタと、透明な表面保護層とがこの順に積層され且つ前記接着剤層が前記画素電極又はセグメント電極を覆うように前記第2の基板上に積層されてなる情報表示装置であって、
前記画素電極又はセグメント電極と、前記対向電極としての前記透明導電膜との間に印加した電圧により前記表示媒体の散乱反射状態を制御して情報表示を行なうことを特徴とする情報表示装置。
【請求項11】
前記表示媒体層は、マイクロカプセル型電気泳動方式の表示媒体からなることを特徴とする請求項10に記載の情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−203375(P2012−203375A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71064(P2011−71064)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】