説明

情報表示装置

【課題】広視野角で、軽量で、携帯性に優れ、長時間電池駆動が可能な、情報表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の情報表示装置は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、少なくとも1種以上の粒子から構成される少なくとも1種類以上の光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネル7と、情報表示用パネル7を前面に搭載する筺体8と、筺体8の前面下部に順次配置される、ページ戻しボタン9、ページ選択ボタン10,ページ送りボタン11および入力切換ボタン12と、情報を格納するための記憶手段と、外部から情報を入力するための外部入力端子13と、前記各構成要素の動作を制御する制御回路とを具備して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、少なくとも1種以上の粒子から構成される少なくとも1種類以上の光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを備える情報表示装置であって、特に、画像等の情報を広い視野角で視認し得るようにした情報表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像等の情報を表示することができる情報表示装置の従来例としては、A4サイズ、B5サイズ等のノート型パソコンがある。ノート型パソコンを情報表示装置として使用する際には、例えばノート型パソコンの内部記憶手段に格納した商品データを用いて、カタログ等の商品説明資料などをノート型パソコンの画面に表示させて商品説明を行う、といった使い方ができる。
【0003】
一方、本願出願人は、画像等の情報を表示することができる情報表示用パネルとして、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、少なくとも1種以上の粒子から構成される少なくとも1種類以上の光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する可逆式の情報表示用パネル(例えば、特許文献1参照)を提案している。この情報表示用パネルは、電圧の印加や電荷供給に基づいて基板間に形成される電界や基板内に形成される電界に基づいて、表示媒体を移動させ、表示媒体を構成する表示媒体用粒子同士のクーロン力、電極との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力等によって、基板間の電界がなくなってもなお、表示情報を長期間にわたって維持できるという、優れた表示保存性を発揮できる利点を有しているので、情報の表示中には常に通電している必要もないため電力消費がなく、長時間の電池駆動が可能である。さらに、この情報表示用パネルを用いた情報表示装置は、表示面側に画像等の情報を長期間表示した後、簡単に消去して書き換えることができ、繰り返し使用することができる。
【0004】
【特許文献1】国際公開第03/050606号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
情報表示装置としてノート型パソコンを使用する場合、一般的にノート型パソコンは重いため、携帯性においてユーザに不満を抱かせることになる。
また、ノート型パソコンの画面は一般的に液晶表示式であり、視野角が狭いものが多いため、説明員と顧客とが向き合った状態で商品説明を行う際には、ノート型パソコンの画面に表示された商品説明資料を両者が見ることが困難である。
さらに、ノート型パソコンの画面は一般的に液晶表示式であり、情報の表示中は常に通電している必要があるため、搭載バッテリーでの長時間駆動は困難である。
【0006】
本発明は、広視野角で、軽量で、長時間電池駆動が可能な、情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の情報表示装置は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、少なくとも1種以上の粒子から構成される少なくとも1種類以上の光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを備える情報表示装置であって、前記情報表示用パネルを前面に搭載する筺体と、前記筺体の前面下部に順次配置される、ページ戻しボタン、ページ選択ボタンおよびページ送りボタンと、情報を格納するための記憶手段と、外部から情報を入力するための外部入力端子と、前記各構成要素の動作を制御する制御回路とを具備して成ることを特徴とする。
【0008】
本発明の情報表示装置の好適例としては、前記筺体の前面下部に、前記記憶手段に記憶された情報および外部から入力される情報の何れか一方を選択する入力切換ボタンを追設すること、がある。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明の情報表示装置によれば、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、少なくとも1種以上の粒子から構成される少なくとも1種類以上の光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを前面に搭載する筺体と、前記筺体の前面下部に順次配置される、ページ戻しボタン、ページ選択ボタンおよびページ送りボタンと、情報を格納するための記憶手段と、外部から情報を入力するための外部入力端子と、前記各構成要素の動作を制御する制御回路とを具備して成るから、表示媒体移動式かつ反射表示式の情報表示用パネルを搭載した本発明の情報表示装置は、情報表示装置として一般的なノート型パソコンを使用する場合に比べて、広視野角で、軽量で、電池駆動時間が長くなる。したがって、広視野角で、軽量で、長時間電池駆動が可能な、情報表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明の対象となる情報表示装置に搭載する情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、帯電した表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電位の切替による電界方向の変化によって移動方向を変えることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示を書き換える時あるいは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0012】
本発明の対象となる情報表示装置に搭載する情報表示用パネルの例を、図1(a),(b)〜図3(a),(b)に基づき説明する。
【0013】
図1(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図1(b)に示す例では、図1(a)に示す例に加えて、基板1、2の間に例えば格子状に隔壁4を設けセルを形成している。また、図1(b)において、手前にある隔壁は省略している。
【0014】
図2(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図2(b)に示す例では、図2(a)に示す例に加えて、基板1、2の間に例えば格子状に隔壁4を設けセルを形成している。また、図2(b)において、手前にある隔壁は省略している。
【0015】
図3(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電性を有する1種の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直方向に移動させ、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うか、あるいは、電極6または基板1の色を観察者に視認させて電極6または基板1の色の表示を行っている。なお、図3(b)に示す例では、図3(a)に示す例に加えて、基板1、2の間に例えば格子状の隔壁4を設けセルを形成している。また、図3(b)において、手前にある隔壁は省略している。
【0016】
以上の説明は、粒子群からなる白色表示媒体3Wを粉流体からなる白色表示媒体に、粒子群からなる黒色表示媒体3Bを粉流体からなる黒色表示媒体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することができる。粉流体については後述する。
【0017】
以下、本発明の情報表示装置の構成を図4に基づき説明する。この情報表示装置は、図2または図3に示す情報表示用パネルを搭載するように構成されており、図4に示すように、情報表示用パネル7を前面に搭載する筺体8と、筺体8の前面下部に順次配置される、ページ戻しボタン9、ページ選択ボタン10,ページ送りボタン11および入力切換ボタン12と、情報を格納するための記憶手段(図示せず)と、外部から情報を入力するための外部入力端子13と、前記各構成要素の動作を制御する制御回路(図示せず)とを具備して成る。
【0018】
上記情報表示用パネル7は、例えば2枚の基板としてA4サイズのガラス製基板を用いることにより、ほぼA4サイズに構成することができる。
上記筺体8は、上記情報表示用パネル7および後述するボタン類を収容するため、上記情報表示用パネル7よりも一回り大きいサイズで、かつ、上下方向にボタン類の収容スペース分拡張したサイズに構成する。また、その厚みは、上記情報表示用パネル7および後述するボタン類等を収容し得る最小限の厚みとすることにより、薄型に構成することができる。
上記ページ戻しボタン9は、現在表示しているページの前のページを表示する場合に操作するボタンであり、上記ページ送りボタン11は、現在表示しているページの次のページを表示する場合に操作するボタンである。上記ページ選択ボタン10は、0,1,・・・,9の10個の数字ボタンから成り、表示を希望するページを直接指定する場合に操作するボタンである。
上記入力切換ボタンは、上記記憶手段に記憶された情報および外部から入力される情報の何れか一方を選択して表示する場合に操作するボタンである。
上記記憶手段としては、表示すべき情報を記憶可能なものであればどのようなメモリ類を用いてもよく、筺体8に内蔵したRAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等を用いたり、あるいは、筺体8にスロットを設けた場合にそのスロットに装着可能なメモリーカード類(SDカード、メモリースティック、データチップ等)を用いたりすることができる。
上記外部入力端子13としては、例えばパソコンを接続するためのUSB端子やIEEE1394端子を用いることができる。
上記制御回路は、少なくとも上記情報表示用パネル7によって情報を表示する機能および表示すべき情報を上記記憶手段に格納する機能を有していればよく、例えばCPU(演算処理装置)を含んで構成する。
【0019】
本発明の情報表示装置に搭載した情報表示用パネル7に表示する情報の書き換えは、情報表示用パネル7の基板間に封入した表示媒体(粒子)に電界を付与することによって行う。その際、情報表示用パネル7に設けた電極5,6を用いて電界を付与することもできるし、情報表示用パネル7の外側筺体部分に配置した電極を用いて、情報表示用パネル7の外側から外部電界を付与することもできる。
【0020】
次に、上記情報表示装置における「画像等の情報の表示」について説明する。
図4は本発明の情報表示装置の記憶手段として用いたメモリ(データチップ)に予め記憶させておいた情報(この場合、カタログ等の商品説明資料である)を筺体8の前面に搭載した情報表示用パネル7の表示面に表示させた様子を示しており、図示例の場合、情報として、白色の背景と、1段目が「○○説明資料」で、2段目が「1.△△について」で、3段目および4段目が「・・・・・・・・・・・・・・・・(所定の文字情報)」で、5段目が「2.□□について」で、6〜8段目が「・・・・・・・・・・・・・・・・(所定の文字情報)」である、黒色の文字とから成る情報が表示されている。このような情報を表示する際には、入力切換ボタン12で「記憶手段(メモリ)の情報」を選択する操作を行い、現在表示しているページの前のページを表示する場合にはページ戻しボタン9を押下し、現在表示しているページの次のページを表示する場合にはページ送りボタン11を押下し、直接ページ番号を指定してそのページにジャンプして表示する場合にはページ選択ボタン10を用いて希望するページの数字になるように0,1,・・・,9の数字ボタンを組み合わせて押下すればよい。
【0021】
本発明の情報表示装置によれば、情報表示用パネルとして表示媒体移動式かつ反射表示式の情報表示用パネルを用いたことにより、視野角が大幅に広くなり、例えば1〜3人程度での打合せにおいて説明員が顧客に商品の内容を説明する際に用いる説明内容表示装置として使用する場合には、説明員と顧客とが向かい合った状況で、情報表示装置の表示画面を見ることができる。また、上記本発明の情報表示装置によれば、情報表示用パネルとして表示媒体移動式で表示メモリ性を有する反射型の情報表示用パネルを用いたことにより、情報の書き換え時のみの電力消費で済まされるので、搭載電池での長時間使用ができるようになる。また、それに伴い、情報表示装置に搭載する電池の小型軽量化ができるので、携帯性も改善される。また、情報表示用パネルとして用いる表示媒体移動式かつ反射表示式の情報表示用パネルは薄型なので、情報表示装置も薄型情報表示装置となり、ノート型パソコンや紙製の資料集に比べて携帯性に優れている。さらに、説明したい商品に関するデータや学習したい教材データ等を搭載した記憶手段(例えばデータチップ)に予め記憶させておいた情報表示装置として持ち運ぶ使用形態を取ることもできる。
【0022】
以下、本発明の対象となる情報表示装置に搭載する情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0023】
基板については、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体の色が確認できる透明な基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。もう一方の基板となる背面基板は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0024】
情報表示用パネル7の基板や情報表示用パネル7を収納する筺体側に設ける電極の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法が用いられる。視認側(表示面側)基板に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0025】
必要に応じて基板に設ける隔壁については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、図5に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0026】
次に、本発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルで表示媒体として用いる粉流体について説明する。なお、本発明の情報表示用パネルで用いる粉流体の名称については、本出願人が「電子粉流体(登録商標):登録番号4636931」の権利を得ている。
【0027】
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0028】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の情報表示用パネルで固体状物質を分散質とするものである。
【0029】
本発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、小さな電界の力でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の情報表示用パネルでは、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で表示媒体として用いられる。
【0030】
次に、本発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルにおいて表示媒体を構成する表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)について説明する。表示媒体用粒子は、そのまま該表示媒体用粒子だけで構成して表示媒体としたり、その他の粒子と合わせて構成して表示媒体としたり、粉流体となるように調整、構成して表示媒体としたりして用いられる。
粒子には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0031】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0032】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0033】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0034】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0035】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0036】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0037】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0038】
また、本発明の表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0039】
さらに本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な表示媒体としての移動が可能となる。
【0040】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0041】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0042】
さらに、表示媒体用粒子で構成する粒子群や粉流体等の表示媒体を乾式の情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1(a),(b)〜図3(a),(b)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示媒体3の占有部分、隔壁4の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示用パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0043】
本発明の対象となる情報表示装置に搭載する情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
A4サイズのガラス製基板で構成した情報表示用パネル7を搭載するように図4に示す情報表示装置を作製した。この情報表示装置に搭載した記憶手段(メモリ)に、外部のパソコンで作成したカタログ情報(図4内に示してある)を予め記憶しておき、そのカタログ情報を表示画面に表示させたところ、どの方向からでも視認性の良い情報(画像)表示ができた。互いに向かい合った説明側と相手とがともに十分に視認できる表示状態が得られた。
【0046】
<実施例2>
A4サイズのガラス製基板で構成した情報表示用パネル7を搭載するように図6に示す情報表示装置を作製した。この情報表示装置に搭載した記憶手段(メモリ)に予め記憶させておいた情報とは異なる情報を格納したパソコン14を、接続ケーブル15で情報表示装置の外部入力端子13に接続し、入力切換ボタン12を「外部入力側」に切り換えておくことにより、パソコン14の画面に表示された図示のような情報を情報表示装置の表示画面にも表示したところ、どの方向からでも視認性の良い情報(画像)表示ができた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の情報表示装置は、画像ムラがなく、販売員が営業時に携帯する商品カタログ、個人指導型の各種学習における教材データを収納して表示させる学習用表示装置、1〜3人程度での打合せにおいて説明員が顧客に商品の内容を説明する際に用いる説明内容表示装置などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、本発明の対象となる情報表示装置に搭載する情報表示用パネルの一例を示す図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、本発明の対象となる情報表示装置に搭載する情報表示用パネルの他の例を示す図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、本発明の対象となる情報表示装置に搭載する情報表示用パネルのさらに他の例を示す図である。
【図4】本発明の情報表示装置の構成および実施例1を説明するための図である。図である。
【図5】本発明の対象となる情報表示装置に搭載する情報表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【図6】本発明の情報表示装置の実施例2を説明するための図である。
【符号の説明】
【0049】
1 基板(背面側基板)
2 基板(表示面側透明基板)
3 表示媒体(粒子群、粉流体)
3W 白色表示媒体
3B 黒色表示媒体
3Wa 白色表示媒体用粒子
3Ba 黒色表示媒体用粒子
4 隔壁
5 電極
6 電極
7 情報表示用パネル
8 筺体
9 ページ戻しボタン
10 ページ選択ボタン
11 ページ送りボタン
12 入力切換ボタン
13 外部入力端子
15 接続ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、少なくとも1種以上の粒子から構成される少なくとも1種類以上の光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを備える情報表示装置であって、
前記情報表示用パネルを前面に搭載する筺体と、前記筺体の前面下部に順次配置される、ページ戻しボタン、ページ選択ボタンおよびページ送りボタンと、情報を格納するための記憶手段と、外部から情報を入力するための外部入力端子と、前記各構成要素の動作を制御する制御回路とを具備して成ることを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
前記筺体の前面下部に、前記記憶手段に記憶された情報および外部から入力される情報の何れか一方を選択する入力切換ボタンを追設することを特徴とする請求項1に記載の情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−156240(P2007−156240A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353410(P2005−353410)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】