説明

情報記録体の製造方法

【課題】文字情報および画像情報が記録された情報記録体を製造する方法において、画像情報の画質を維持しつつプリンタ装置を高速化および小型化できる情報記録体の製造方法を提供する。
【解決手段】ICモジュールを内部に備えたカード基材と、画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層と、を備えた被記録体1を準備し、画像情報記録用熱転写シートを用いて、画像情報を印画し、画像情報形成部以外の部分に、文字情報記録用熱転写シートを用いて、文字情報を印画する。その後、画像情報形成部の加熱を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字情報および画像情報が記録された情報記録体の製造方法に関し、さらに詳細には、文字情報と画像情報とが同一面上に記録された、IDカードやキャッシュカード等の情報記録体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードにおいて、個別認識できるように、その一方の面に、人物の顔写真等の画像情報とその人物の住所や名前等の文字情報とが記録されたものが使用されている。このようなIDカードや銀行等のキャッシュカード等の情報記録体は、プラスチック等のカードの一方の面に画像情報と文字情報とを記録することにより製造されている。このような情報記録体は、画像情報の鮮明性や文字情報を印字する際の簡便性を考慮して、熱転写シートを用いて製造されている。例えば、基材上にイエロー、マゼンタおよびシアン等の色材層を設けた熱転写シートを用いて、カード上にカラーの人物画像を記録し、次いで、ブラックの色材層を設けた熱転写シートを用いて、基材上の人物画像を形成した以外の部分に文字等を記録することにより製造されている。熱転写シートを用いて得られる画像は、中間色の再現性や階調性に優れ、フルカラー写真画像に匹敵する高品質な画像を形成できるため、特に身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードのような、記録画像により個別認識を必要とするような情報記録体においては、熱転写シートを用いて製造することが一般的となっている。
【0003】
近年、プリンタの高速化に伴い、より低いエネルギーで画像の濃淡を表現でき、かつ優れた画像耐久性を実現できる、いわゆるポストキレート方式による熱転写方法が提案されている。ポストキレート方式とは、受像層中に特定の金属イオン化合物を含有させた被記録体と、その特定金属イオンとキレート錯体を形成し得る染料を色材層とした熱転写シートとを用いて、熱転写後に、それらを反応させてキレート錯体を形成させることにより画像を形成する方法である(例えば、特開平4−89292号公報や特開平4−292989号公報等)。このポストキレート方式により形成された画像は、染料の褪色や滲みが生じにくく耐光性にも優れることから、上記したようなカード類等の情報記録体にも適用され始めている。
【0004】
ポストキレート方式を用いて画像情報を情報記録体に形成する場合、色材を熱転写シートから情報記録体の受像層へ移行させる際の熱エネルギーだけでは、受像層中の金属イオン化合物と色材との反応が不十分な場合があり、良好な色調が得られない場合がある。特にプリンタの高速化により、熱転写時のエネルギーだけではキレート反応を十分に進めることができないという問題がある。この問題を解決するために、例えば特開2003−58847号公報には、画像情報と文字情報とを記録した後に、画像情報が記録された部分に透明保護転写箔を転写して、転写時の熱エネルギーにより、画像情報が記録された部分を再加熱してキレート反応を完全ならしめることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−89292号公報
【特許文献2】特開平4−292989号公報
【特許文献3】特開2003−58847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリンタの更なる高速化が希求されており、キレート反応を完全ならしめるための再加熱工程が高速化の障害となっており、また、ICカードの偽造対策として、近年、カードへのプリント時に変造防止手段が組み込まれるようになったため、この工程の複雑化もプリンタの高速化の障害となる。
【0007】
また、上記の特開2003−58847号公報に開示されている方法においては、図11に示すように、イエロー、マゼンタおよびシアンの各色材層を面順次の設けた熱転写シートを用いて、先ず画像情報部分を形成し、次いで、図12に示すような、ブラック色材層と透明保護転写箔とが面順位に設けられた熱転写シートを用いて、文字情報を画像形成部分以外の部分に形成した後に、画像形成部分に透明保護転写箔を転写することが行われていた。そのため、転写工程が複雑となりプリンタ装置自体を小型化することが困難であった。また、プリンタ装置を高速化すると、熱転写シートに付着しているゴミ等がプリンタ装置内で舞いやすくなるため、画像形成部分にゴミが付着したまま透明保護転写箔が転写されてしまう場合があった。
【0008】
本発明者らは、今般、ICモジュールを内部に備えた情報記録体に文字情報および画像情報を記録して情報記録体を製造する際に、ポストキレート熱転写方式により基材上に画像を形成した後からICモジュールに電子情報の読出し/書込みを行うまでの間の被記録体の搬送工程において、画像形成部分を徐々に加熱して熱エネルギーを付与することにより、ポストキレート反応を進行させて画像情報の画質を維持しつつプリンタ装置を高速化および小型化できる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、文字情報および画像情報が記録された情報記録体を製造する方法において、画像情報の画質を維持しつつプリンタ装置を高速化および小型化できる情報記録体の製造方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の別の目的は、上記の方法により得られた情報記録体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による情報記録体の製造方法は、非接触で電子情報の書込みおよび/または読出しが可能なICモジュールを内部に備え、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体、を製造する方法であって、
前記ICモジュールを内部に備えたカード基材と、そのカード基材の一方の面に設けられた、画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層と、を備えた被記録体を準備し、
前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画し、
前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画し、
前記文字情報を印画する前および/または後に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う、
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の態様においては、前記被記録体の前記画像情報が印画された部分に、透明保護層を熱転写することをさらに含んでなることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様においては、前記画像情報形成部の加熱が、前記画像情報の印画後から前記文字情報の印画までの間、前記文字情報の印画後から前記透明保護層の熱転写までの間、および、前記透明保護層の熱転写の後から前記被記録体のICモジュールへの書込みおよび/または読出しまでの間、の少なくとも1箇所以上で行われることが好ましい。
【0014】
また、本発明の態様においては、前記画像情報形成部の加熱が、画像情報の印画後から前記文字情報の印画までの間に設けられた搬送ローラーから熱エネルギーにより行われることが好ましい。
【0015】
また、本発明の態様においては、前記画像情報形成部の加熱が、前記文字情報の印画後から前記透明保護層の熱転写までの間に設けられた搬送ローラーから熱エネルギーにより行われることが好ましい。
【0016】
また、本発明の態様においては、前記画像情報形成部の加熱が、前記被記録体のICモジュールへの書込みおよび/または読出しの際に、ヒートローラーまたは端面ヘッドにより被記録体を接圧することにより行われることが好ましい。
【0017】
また、本発明の態様においては、前記画像情報記録用熱転写シートが、基材上に、シアン染料層、マゼンタ染料層およびイエロー染料層を面順位に設けた色材層を備え、前記シアン染料層、前記マゼンタ染料層および前記イエロー染料層の順に色材を熱転写して、画像情報を印画することが好ましい。
【0018】
また、本発明の態様においては、前記被記録体へ前記画像情報および/または前記文字情報を印画した後、前記被記録体上へ光学変化素子層を熱転写することをさらに含んでなることが好ましい。
【0019】
また、本発明の態様においては、前記透明保護層および前記光学変化素子層の熱転写の後に、前記受像層上の画像情報形成部にエンボス加工を行うことをさらに含んでなることが好ましい。
【0020】
また、本発明の態様においては、前記画像情報形成部の加熱が、前記エンボス加工の際の熱エネルギーにより行われることが好ましい。
【0021】
本発明においては、上記の方法により得られた情報記録体も提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によれば、ポストキレート熱転写方式により基材上に画像を形成した後からICモジュールに電子情報の読出し/書込みを行うまでの間の被記録体の搬送工程において、画像形成部分を徐々に加熱して熱エネルギーを付与することにより、従来のポストキレート方式による熱転写のように、別途、画像情報形成部を再加熱する必要がなくなるため、その結果、情報記録体を連続して製造するような場合の工程の高速化を図ることができとともに、製造装置自体も小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に用いられる被記録体の一実施形態を示した断面概略図である。
【図2】本発明に用いられる被記録体の別の実施形態を示した断面概略図である。
【図3】本発明に用いられる画像情報記録用熱転写シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図4】本発明に用いられる画像情報記録用熱転写シートの別の実施形態を示した斜視概略図である。
【図5】本発明による情報記録体の製造方法に用いられる製造装置の一実施形態を示した概略構成図である。
【図6】本発明による情報記録体の製造方法に使用されるヒートローラーの一実施形態を示した概略斜視図である。
【図7】透明保護層転写箔シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図8】光学変化素子転写箔シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図9】本発明による情報記録体の製造方法に用いられる製造装置の一実施形態を示した概略構成図である。
【図10】本発明による情報記録体の一実施形態を示した断面概略図である。
【図11】従来の情報記録体の製造に用いられていた画像情報記録用熱転写シートを示した断面概略図である。
【図12】従来の情報記録体の製造に用いられていた文字情報記録用熱転写シートを示した断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による情報記録体の製造方法は、
1)ICモジュールを内部に備えたカード基材と、そのカード基材の一方の面に設けられた、画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層と、を備えた被記録体を準備する工程と、
2)前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画する工程と、
3)前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画する工程と、
4)前記文字情報を印画する前および/または後に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う工程と、
を少なくとも含むものである。
本発明による製造方法によれば、非接触で電子情報の書込みおよび/または読出しが可能なICモジュールを内部に備え、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体が得られるとともに、情報記録体を連続して製造するような場合の工程の高速化と製造装置自体の小型化も実現できる。以下、本発明による情報記録体の製造方法を、図面を参照しながら各工程順に説明する。
【0025】
<被記録体の準備工程>
本発明による情報記録体の製造方法においては、受像層を一方の面に備えた被記録体に文字情報および画像情報を印画することにより、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体が製造される。本発明においては、身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードのような情報記録体を製造することを目的とするものであり、従って、被記録体として、ICチップを供えたIDカード基材に文字情報や画像情報等を印画することを一例に、被記録体について、まず説明する。
【0026】
図1は、ICカード基材2と受像層3とを備えた被記録体1の断面図を示したものである。ICカード基材2は、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間に所定の厚みの電子部品8とを備えており、電子部品8は、アンテナ体8a、ICチップ8b等からなり、この電子部品8のICモジュールはインレット7に備えられている。第1のシート部材4と第2のシート部材5との間にインレット7を配置し、接着剤6を介在して、各部材を積層した積層構造である。また、被記録体は、図2に示すように、電子部品8を接着剤6中に備えた構造としてもよい。
【0027】
被記録体1は、ICカード基材2の第2シート部材5側に受像層3が設けられている。受像層3は、熱転写記録方式で昇華もしくは熱拡散性染料画像を受容して、被記録体1に文字情報および画像情報を印画するためのものである。受像層を形成するための材料としては、昇華性染料または熱溶融性インキ等の熱移行性の色材を受容し易い従来公知の樹脂材料を使用することができる。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、特に、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂またはポリエステル樹脂が好ましい。
【0028】
本発明においては、受像層3は、後記する色材である色素化合物と反応してキレートを形成し得る金属イオン含有化合物を含有している。すなわち、本発明においては、色材である色素化合物を受像層へ熱転写した後、受像層中の金属イオン含有化合物と色素化合物とを反応させてキレート錯体を形成する、いわゆるポストキレート方式により、画像情報および/または文字情報を被記録体に転写して画像形成するものである。ポストキレート方式を採用することにより、被記録体へ転写された画像や文字の耐光性を向上させることができる。
【0029】
受像層中に含有させる金属イオン含有化合物としては、従来公知のものを使用することができ、第I、第VIII族に属する2価および多価の金属の無機または有機の塩および金属錯体を好適に使用することができる。例えば、Ni2+、Cu、Co2+、Cr2+およびZn2+を含有する、下記一般式:
[M(Q1)k(Q2)m (Q3)n]pp(L
(式中、Mは金属イオンを表し、Q1、Q2、Q3は各々Mで表される金属イオンと配位結合可能な配位化合物を表わし、Lは錯体を形成しうる対アニオンを表し、kは1、2または3の整数を表し、mは1、2または0を表し、nは1または0を表すが、これらは前記一般式で表される錯体が4座配位か、6座配位かによって決定されるか、あるいはQ1、Q2、Q3の配位子の数によって決定され、pは1、2または3を表す。)で表される錯体が好ましく用いられる。これらの中でも、金属と配位結合する少なくとも一個のアミノ基を有する配位化合物が好ましく、具体的にはエチレンジアミンおよびその誘導体、グリシンアミドおよびその誘導体、ピコリンアミドおよびその誘導体が挙げられる。また、錯体を形成しうる対アニオンLとしては、Cr、SO、ClO等の無機化合物アニオンやベンゼンスルホン酸誘導体、アルキルスルホン酸誘導対等の有機化合物アニオンが挙げられるが、特に好ましくはテトラフェニルホウ素アニオンおよびその誘導体、ならびにアルキルベンゼンスルホン酸アニオンおよびその誘導体である。このような金属イオン含有化合物としては、米国特許第4,987,049号明細書に例示されたものを挙げることができる。
【0030】
金属イオン含有化合物の樹脂中への添加量は0.5〜20g/mが好ましく、1〜15g/mがより好ましい。
【0031】
受像層には、離型剤が添加されていてもよい。離型剤としては、用いるバインダーと相溶性のあるものが好ましく、具体的には変性シリコーンオイル、変性シリコーンポリマーが代表的であり、例えばアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂等が挙げられる。このなかでもポリエステル変性シリコーンオイルはインクシートとの融着を防止するが、受像層の2次加工性を妨げないという点で特に優れている。その他の離型剤として、シリカ等の微粒子や硬化型シリコーン化合物等を使用することもできる。
【0032】
上記した各成分を溶媒に分散あるいは溶解させた受像層用塗工液を調製し、受像層用塗工液をICカード基材の一方のシート部材上に塗布し、乾燥することよって受像層を形成することができる。受像層の厚みは、一般的に1〜50μm、好ましくは2〜10μm程度である。
【0033】
受像層には、画像情報や文字情報を印画する前に、予め、罫線等のフォーマット印刷がされていてもよい。フォーマット印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式等のいずれの方式によって形成することができる。
【0034】
ICカード基材2は、図1および2に示したように、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間に所定の厚みの電子部品8とを備えており、電子部品8は、アンテナ体8a、ICチップ8b等からなり、この電子部品8のICモジュールはインレット7または接着層6に備えられている。ICカード基材2は、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間にインレット7を配置し、接着剤6を介在して、各部材を積層した積層構造を有する。ICカード基材に用いられるシート部材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、生分解性脂肪族ポリエステル、生分解性ポリカーボネート、生分解性ポリ乳酸、生分解性ポリビニルアルコール、生分解性セルロースアセテート、生分解性ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、または上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体あるいはこれら2層以上の積層体が挙げられる。
【0035】
シート部材の厚みは30〜300μm、好ましくは50〜200μmである。50μm以下であるとシート部材1,2を互いに貼り合わせる際に熱収縮等を起こす場合がある。なお、熱収縮率を低減させるシート部材のアニール処理を行ってもよい。
【0036】
また、シート部材上に後加工上密着性向上のため易接処理を行っていても良く、チップ保護のために帯電防止処理を行っていても良い。具体的には、帝人デュポンフィルム株式会社製のU2シリーズ、U4シリーズ、ULシリーズ、東洋紡績株式会社製クリスパーGシリーズ、東レ株式会社製のE00シリーズ、E20シリーズ、E22シリーズ、X20シリーズ、E40シリーズ、E60シリーズQEシリーズを好適に用いることができる。
【0037】
電子部品8は、一般的に、電子カードの利用者の情報を電気的に記憶するICチップ8bおよびICチップ8bに接続されたコイル状のアンテナ体8aとから構成される。ICチップはメモリのみやそれに加えてマイクロコンピューターなどである。場合により電子部品にコンデンサーを含んでもよい。この発明はこれに限定はされず情報記録部材に必要な電子部品であれば特に限定はない。電子部品で構成されるICモジュールは、アンテナコイルを有するものであるが、アンテナパターンを有する場合、導電性ペースト印刷加工、または銅箔エッチング加工、巻線溶着加工等のいずれかの方法を用いてもよい。プリント基板としては、ポリエステル等の熱可塑性のフィルムが用いられ、更に耐熱性が要求される場合はポリイミドが有利である。ICチップとアンテナパターンとの接合は銀ペースト、銅ペースト、カーボンペースト等の導電性接着剤(日立化成工業のEN−4000シリーズ、東芝ケミカルのXAPシリーズ等)や、異方性導電フィルム(日立化成工業製アニソルム等)を用いる方法、あるいは半田接合を行う方が知られているが、いずれの方法を用いてもよい。
【0038】
予めICチップを含む部品を所定の位置に載置してから樹脂を充填するために、樹脂の流動による剪断力で接合部が外れたり、樹脂の流動や冷却に起因して表面の平滑性を損なったりと安定性に欠けることを解消するため、インレットが用いられる。インレットは、予め基板シートに樹脂層を形成しておいて前記樹脂層内に部品を封入するために電子部品を多孔質の樹脂フィルム、多孔質の発泡性樹脂フィルム、可撓性の樹脂シート、多孔性の樹脂シートまたは不織布シート状にして使用されることが好ましい。樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、アクリル等のシートを好適に使用することができるが、機械的強度や寸法安定性、耐溶剤性の観点から、PET、PET−GまたはPENが好ましい。また、これらの中でも、透明性、加工適性およびコストの観点から、PETまたはPET−Gが特に好ましい。
【0039】
例えば、不織シート部材として、不織布などのメッシュ状織物や、平織、綾織、繻子織の織物などがある。また、モケット、プラッシュベロア、シール、ベルベット、スウェードと呼ばれるパイルを有する織物などを用いることができる。材質としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン8等のポリアミド系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系、ポリシアン化ビニリデン系、ポリフルオロエチレン系、ポリウレタン系等の合成樹脂、絹、綿、羊毛、セルロース系、セルロースエステル系等の天然繊維、再生繊維(レーヨン、アセテート)、アラミド繊維の中から選ばれる1種または2種以上を組み合わせた繊維が上げられる。これらの繊維材料において好ましくは、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアイド等のアクリル系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、再生繊維としてのセルロース系、セルロースエステル系であるレーヨン及びアセテート、アラミド繊維があげられる。
【0040】
また、電子部品8を含むインレット7または接着剤6中には、ICチップは点圧強度が弱いためにICチップ近傍に補強板9を備えていてもよい。インレットを含む電子部品の全厚さは100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、特に好ましくは、150〜450μmである。
【0041】
第1のシート部材と第2のシート部材との間に所定の電子部品と設けた積層構造を形成する方式としては、熱貼合法、接着剤貼合法、接着剤塗布法及び射出成形法が挙げられるが、いずれの方法で各部材を貼り合わせてもよい。貼り合わせに接着剤を使用する場合、特に制限されることなく従来公知の接着剤を用いることができるが、本発明においては、ホットメルト接着剤等を好適に使用することができ、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系や、ポリエステル系、ポリアミド系、熱可塑性エラストマー系、ポリオレフィン系の接着剤を挙げることができる。これらのなかでも、湿気硬化型の接着剤が好ましい。上記したもの以外でも、湿気硬化型接着剤として、特開2000−036026号公報、特開2000−211278号公報、特開2000−219855号公報等に開示されている接着剤を好適に使用することができる。なお、接着剤を用いて、各部材を貼り合わせる場合、接着剤の層と電子部品の層(インレットの厚み)との合計の厚みで100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、特に好ましくは、150〜450μmである。
【0042】
また、接着剤には、ワックス、熱可塑性樹脂、無機微粒子、レベリング剤、ゴム弾性粒子、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、粘着剤、硬化剤、硬化触媒、流展剤、平板状粒子、針状粒子等のその他添加剤等を含有させてもよい。
【0043】
インレット(電子部品)の裏表、あるいは第1および第2シート部材の一方の面に、接着剤を、所定厚となるように塗布し、各部材を貼り合わせることにより、ICカード基材を作製することができる。接着剤の塗布方法としては、ローラー方式、Tダイ方式、ダイス方式等の従来公知の方式を用いることができるが、これらの塗工方法に限定されるものではなく、ストライプ状に接着剤を塗布したり、特開2000−036026号公報、特開2000−219855号公報、特開2000−211278号公報、特開平10−316959号公報、特開平11−5964号公報等で提案されている塗布方法を採用してもよい。
【0044】
また、本発明においては、図1に示した被記録体のように、受像層3と第2シート部材2との間にクッション層10が設けられていてもよい。クッション層を設けると、熱転写の際の表面の凹凸の影響を緩和することができ画像や文字を再現性良く転写記録することができる。上記したように、インレット内にはICチップ等の電子部品が含まれているため、その表面に凹凸を生じ易い。被記録体であるカード基材の表面に凹凸があると、後記する文字/画像情報の記録の際に、文字や画像がかすれて記録される場合がある。本発明においては、クッション層を設けることにより、被記録体の面内傾斜は0.004以下となるようにしている。なお、面内傾斜とは、被記録体の表面の中立面に対して、隆起した部分の頂上から、その隆起部分の裾までのあらゆる点において接線をひいた時に、その接線と中立面との傾斜角度(傾き)と定義する。
【0045】
クッション層を形成する材料としては、ポリオレフィンが好ましい。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−水素添加イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、光硬化型樹脂層のような柔軟性を有し、熱伝導性の低いものが適する。具体的には、特願平2001−16934等のクッション層を使用することができる。
【0046】
また、IC基材カード1の受像層3を設ける側とは反対の面に位置する第1シート部材4表面(すなわち、画像情報等が印画される面とは反対側の面)には、筆記層(図示せず)が設けられていてもよい。筆記層とは、IDカードの裏面に筆記をすることができるようにした層である。筆記層としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、ケイソウ土、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機微細粉末を含有させた熱可塑性樹脂(ポリエチレン等のポリオレフィン類や、各種共重合体等)フィルムを第1シートの最表面に設けることにより、形成することができる。
【0047】
各部材を貼り合わせる際には、シート基材の表面平滑性や、第1のシート部材と第2のシート部材との間に設ける電子部品の密着性を向上させるために、加熱及び加圧を行うことが好ましく、上下プレス方式、ラミネート方式等で製造することが好ましい。加圧によるIC部品の破損を考慮して、ローラプレスよりも平面プレス型とするのが好ましい。加熱は、10〜180℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃である。加圧は、1〜300kgf/cmが好ましく、より好ましくは1〜200kgf/cmである。これより圧が高いとICチップが破損する場合がある。加熱および加圧時間は、加熱および加圧条件にもよるが、概ね0.001〜90秒が好ましく、より好ましくは0.001〜60秒である。
【0048】
ICカード基材は、接着剤貼合法や樹脂射出法で連続シートとして形成された貼り合わせた枚葉シートまたは連続塗工ラミロールとして形成してもよく、それらシートないしラミロールを所定のカードサイズに成形して所望の大きさのICカード基材を作製することができる。なお、ICカード基材を作製した後、受像層を設ける前又は後に、他方の面上に、個人識別情報ではない一般的な書誌事項を印刷することもできるが、シートないしラミロール状の状態で、連続して一般的な書誌事項を印刷しておく方が好ましい。所定のカードサイズに成形する方法としては、打ち抜く方法、断裁する方法等を主として採用できる。
【0049】
<画像情報印画工程>
本発明においては、上記した被記録体の受像層に、画像情報記録用熱転写シートを用いて、画像情報を印画する。上記したような被記録体と画像情報記録用熱転写シートとを、被記録体の受像層と画像情報記録用熱転写シートの色材層とが対抗するように重ね合わせて、画像情報記録用熱転写シート側から、サーマルヘッド等の加熱手段により加熱して、色材層中の色材を、被記録体の受像層へ熱転写することにより、画像情報を被記録体へ画像情報を印画する。
【0050】
画像情報記録用熱転写シート10は、図3に示すように、基材11の一方の面に設けた色材層12を備えたものである。基材11の前記色材層12を設けた面とは反対側の面に耐熱滑性層13を設けてもよい。色材層12は、従来公知の熱転写シートと同様に、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層とから構成されていてよいが、本発明においては、図4に示すように、シアン染料層(C)、マゼンタ染料層(M)およびイエロー染料層(Y)が面順位に設けられた画像情報記録用熱転写シートを用い、シアン、マゼンタ、およびイエローの順で、各染料を被記録体の受像層へ熱転写して画像情報の印画を行うことが好ましい。後記するように、画像情報記録用熱転写シートに使用される昇華性染料として、いわゆるポストキレート色素を用いる場合、ポストキレート色素は、上記の被記録体の受像層中のメタルソースと反応して発色する。そのため、必ずしも画像情報記録用熱転写シート上に設けた色材層の色(シアン、マゼンタ、イエロー)と、被記録体へ画像情報を熱転写した後の色(すなわち、受像層で色素染料がメタルソースと反応した後の色)とが同じように発色せず、むしろ全く異なる色となる場合がある。熱転写時の熱量が不十分で、色素とメタルソースとの反応が不完全な場合、未反応のポストキレート色素の色が、被転写体の受像層に形成された画像部分に残存するため、画像の色濁りが生じやすくなる。特に、メタルソースと反応する前のポストキレートシアン染料やポストキレートマゼンタ染料の濃度は、ポストキレートイエロー染料の濃度と比べて高くなる傾向があるため、ポストキレート反応が不完全であると、被記録体の受像層に熱転写した際に、イエロー染料からなる色成分にシアンやマゼンタ染料が混入して、印画部分に色濁りが生ずる場合がある。本発明においては、染料層において染料濃度が高くなる順に、画像情報記録用熱転写シート上に、シアン染料層(C)、マゼンタ染料層(M)およびイエロー染料層(Y)を面順位に設けて、画像形成の際に、シアン、マゼンタ、イエローの順で熱転写を行うことにより、熱転写時に、染料濃度の高い染料ほどより多くの熱エネルギーを付与することができる。その結果、染料濃度の高いシアンやマゼンタ染料が受像層中でのメタルソースとより完全に反応し、所望の染料の発色が得られるため、形成画像の色濁りが生じにくくなる。特に、上記のような順で各染料層を設けることにより、シアン染料が熱転写された印画部分のマゼンタ濁りが解消する。
【0051】
上記したようなポストキレート色素としては、従来公知のものを使用することができ、このようなキレート形成可能な昇華性色素としては、例えば特開昭59−78893号、同59−109349号、特願平2−213303号、同2−214719号、同2−203742号に記載されている、少なくとも2座のキレートを形成することができるシアン色素、マゼンタ色素およびイエロー色素を挙げることができる。キレートの形成可能な好ましい昇華性色素は、下記一般式で表わすことができる。
X1−N=N−X2−G
(式中、X1は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族の炭素環、または複素環を完成するのに必要な原子の集まりを表わし、アゾ結合に結合する炭素原子の隣接位の少なくとも一つが、窒素原子またはキレート化基で置換された炭素原子であり、X2は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族複素環または、芳香族炭素環を表わし、Gはキレート化基を表わす。)
【0052】
上記したようなポストキレート昇華性色素の使用量は、通常、基材1m当たり0.1〜20g、好ましくは0.2〜5gである。
【0053】
色材層を構成するバインダーとしては、特に制限がなく従来から公知のものを使用することができる。さらに前記インク層には、従来から公知の各種添加剤を適宜に添加することができる。
【0054】
画像情報記録用熱転写シートは、インク層を形成する前記各種の成分を溶媒に分散ないし溶解させた塗工液を調製し、これを基材表面に塗工し、乾燥することにより作製することができる。色材層の厚さは、通常0.2〜10μmであり、好ましくは、0.3〜3μmである。
【0055】
<文字情報印画工程>
画像情報記録用熱転写シートを用いて画像情報が被記録体に印画した後、続いて、被記録体と文字情報記録用熱転写シートとを、被記録体の受像層と文字情報記録用熱転写シートの色材層とが対抗するように重ね合わせて、文字情報記録用熱転写シート側から、サーマルヘッド等の加熱手段により加熱して、色材層中の色材を、被記録体の受像層へ熱転写することにより、文字情報を被記録体へ印画する。文字情報記録用熱転写シートとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、基材上に熱溶融ブラック色材層を備えた熱転写シートを好適に使用することができる。
【0056】
本発明においては、文字情報の印画時に、サーマルヘッド等の加熱手段により加熱する際、加熱手段を利用して、被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行ってもよい。この加熱により、画像情報が印画された被記録体において、被記録体の受像層中の金属イオン含有化合物と画像情報を形成する色材(シアン染料、マゼンタ染料およびイエロー染料)とのキレート反応がより進行して反応率が向上し、優れた発色性と耐光性とを有する画像を得ることができる。
【0057】
上記の画像情報記録用熱転写シートおよび文字情報記録用熱転写シートは、従来公知の熱転写シートと同様に、転写保護層として、接着層、剥離層、離型層、下引き層等のその他の層が設けられていてもよい。
【0058】
<搬送加熱工程>
上記のようにして画像情報が印画された被記録体において、被記録体の受像層中の金属イオン含有化合物と、画像情報を形成する色材(シアン染料、マゼンタ染料およびイエロー染料)とのキレート反応が進行して反応率が向上し、画像の発色性と耐光性とが向上する。このキレート反応を完全ならしめるために、本発明においては、前記文字情報を印画する前および/または後に、被記録体に印画された画像情報形成部の加熱を行うものである。従来は、上記したように、画像情報と文字情報とを記録した後に画像情報形成部分に透明保護転写箔を転写し、転写時の熱エネルギーによって、画像情報形成部の再加熱を行っていため、プリンタの高速化や小型化の障害となっていた。本発明においては、上記のように、情報記録体の製造過程中の被記録体の搬送工程において、画像情報形成部に徐々に熱を加えて、キレート反応の進行を完全ならしめている。この加熱は、例えば、後記するように、画像情報の印画後から文字情報の印画までの間、文字情報の印画後から透明保護層の熱転写までの間、あるいは、透明保護層の熱転写の後から被記録体のICモジュールへの書込みおよび/または読出しまでの間、に行われる。以下、情報記録体の製造過程を説明しながら、画像情報形成部の加熱について詳細に説明する。
【0059】
<情報記録体の製造方法>
上記した情報記録体の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
【0060】
図5は、本発明による方法の一実施形態を実施するための情報記録体製造装置の概略構成図を示したものである。情報記録体製造装置30は、上方位置にカード基材供給部40及び情報記録部50が配置され、下方位置に、透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部70、非接触リーダ/ライタ装置80、エンボス加工装置90が配置され、上位置と下方位置の間に、情報記録部50とリーダ/ライタ装置80とをつなぐ搬送ローラー60が配置されている。なお、本実施形態においては、一例として、カード状の情報記録体を製造する方法を説明するが、情報記録体としてシート状のものを製造できることは言うまでもない。
【0061】
カード基材供給部40には、カード使用者の個人情報を書き込むために予め枚葉状にカットされた複数枚の被記録体1が、顔写真等の画像情報を記録する面(即ち受像層を設けた面)を上に向けてストックされている。本実施形態においては、受像層を備えた被記録体1が1枚ずつ、カード基材供給部40から所定のタイミングで自動供給される。
【0062】
情報記録部50は、図4に示したようなイエロー染料層、マゼンタ染料層およびシアン染料層が面順次に設けられた画像情報記録用熱転写シート10が配置され、その位置に対応してサーマルヘッド51が配置された画像情報記録部52と、熱溶融ブラック色材層を備えた文字情報記録用熱転写シート20が配置され、その位置に対応してサーマルヘッド53が配置された文字情報記録部54とから構成されている。また、画像情報記録部52と文字情報記録部54とをつなぐ搬送ライン中に、搬送と加熱とを兼ねる搬送ヒートローラー55が配置されている。
【0063】
カード基材供給部40から供給された被記録体1は、先ず画像情報記録部52において、被記録体1が移動している間に、その受像層の所定領域にカード使用者の顔写真等の諧調を有する画像情報が、画像情報記録用熱転写シート10によりイエロー、マゼンタ、シアンの順に記録される。
【0064】
次いで、画像情報が記録された被記録体は、搬送ラインを通過して文字情報記録部54へ運ばれる。その際、搬送ライン中に設けられた搬送ヒートローラー55を被記録体1が通過することにより、受像層の画像情報が記録されている領域にも搬送ヒートローラー55からの熱エネルギーが付与され、画像情報が記録された受像層中の色材(イエロー染料、マゼンタ染料およびシアン染料)と金属イオン含有化合物とがポストキレート反応が促進されて、所望の発色及び階調を有する画像情報が形成される。ポストキレート反応を促進させる観点からは、搬送ヒートローラーの温度は、50〜300℃、好ましくは150〜250℃であることが好ましい。搬送ヒートローラーの温度が50℃よりも低温であると搬送工程でポストキレート反応を促進させることは難しくなり、一方、300℃を超える温度では、反応が部分的に促進されてムラになる恐れがある。また、複数の搬送ヒートローラーがある場合に、各ローラーの温度は同じであってもよいが、被記録体の搬送方向側のローラーほど高温になるように温度設定することが好ましい。このような温度設定とすることにより、被記録体表面の温度が徐々に高くなるため、ポストキレート反応が表面から厚さ方向に均一に反応が進み、反応によるムラが生じるのを防ぐことができる。
【0065】
免許証やIDカード等の文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体においては、人物の顔等が画像情報として記録されることが多いが、一般的に、画像部分は情報記録体の全面積に対して比較的小さい割合である。そのため、通常は、画像部分の周辺まで文字情報が書き込まれている場合が多い。このよう情報記録体を製造する場合、文字情報を被記録体に熱転写する際に、文字情報記録用熱転写シート用のサーマルヘッドで、先に形成された画像部分の再加熱が行われることがある。しかしながら、被転写体への文字情報の記録と同時に、先に形成された画像部分の再加熱行う場合、画像の発色性を向上させるために再加熱を充分にすると、熱溶融ブラック色材により記録した文字情報が影響を受けることがあり、例えば、情報記録体の画像部分の周辺の文字潰れが生じる場合がある。特に、再加熱した画像部分の周縁部は熱が伝わりやすくなるため文字記録部分が受ける影響も顕著である。そのため、文字潰れが生じないような熱量で熱溶融ブラック色材の転写を行う必要があり、同じサーマルヘッド等の加熱手段を用いて先に形成した画像部分を再加熱する場合に、再加熱の熱量が不足することがある。
【0066】
本発明においては、同じ加熱手段(すなわち、文字情報を記録する際の画像情報記録用熱転写シートへのサーマルヘッド等の熱源)を用いて、文字潰れの解消と再加熱時の熱量増加を行うために、以下のような方法が好ましく適用できる。例えば、文字情報を熱転写する際の印画速度を高速化するとともに、熱転写時の熱エネルギーの付与を、高温化かつ短時間化することができる。例えば、従来の情報記録体を製造する際の印画速度は6.8mm/s程度であったが、これを15〜30mm/s、より好ましくは20mm/s程度とし、熱転写時の熱エネルギーの付与時間を、従来7.5ms/lであったのを、0.5〜5ms/l、より好ましくは1〜3ms/lとする。なお、「ms/l」とは、1ライン印画(加熱)するのに要する時間(秒数)を意味する。印画速度の高速化は、熱転写シートの巻き取り装置の速度を上げることにより行われるが、巻き取り装置のモーターは、精度が高くかつ高出力で小型のものを使用することが好ましい。
【0067】
また、上記のように、印画速度を上げ、再加熱の熱量を上げることに伴い、文字情報記録用熱転写シートの基材の厚みを薄くして熱伝導性を良くしたり、基材が熱で変形したりしないよう、熱転写シートの背面層を熱に対し最適化することが好ましい。例えば、基材の厚みは2〜10μm、好ましくは2〜6μm、より好ましくは2〜4μmである。基材は薄い方が好ましいが、2μm未満では張力により、熱転写シートが変形し易くなる。また、熱転写シートの背面層が、メチルメタアクリレートモノマーと疎水性モノマーとを共重合した樹脂からなることが好ましく、メチルメタアクリレートモノマー100質量部に対して、疎水性モノマーを25〜100質量部含む共重合樹脂がより好ましい。疎水性モノマーの割合が25質量部よりも少ないと染料色素の定着性が低下して、画像形成に悪影響を与える。一方、疎水性モノマーの割合が50質量%を超えると、基材フィルムとの密着性が低下する。熱伝動性の観点から、背面層の厚みは0.1〜0.5μmの範囲とするのが好ましい。
【0068】
また、熱転写シートの背面層の最適化とともに、剥離層を最適化してもよい。剥離層は、熱溶融ブラックインク色材の基材への膜付性や膜強度などの機械的性質を維持し、かつ熱転写時に熱溶融ブラック色材層が基材から離脱する際に、熱溶融性インク層が剥離して、速やかに被転写体の受容層へ転写する機能を有している。この剥離層の成分である熱可塑性樹脂として、融点もしくは軟化点が、50〜150℃、特に60〜120℃の範囲にあるもの、や2種以上の混合によって上記の温度範囲になるものを好適に使用できる。また、熱可塑性樹脂の他に、必要に応じて、パルミチン酸、ステアリン酸、マルガリン酸およびベヘン酸等の高級脂肪酸;パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、マルガニルアルコール、ミリシルアルコールおよびエイコサノール等の高級アルコール;バルミチン酸セチル、バルミチン酸ミリシル、ステアリン酸セチルおよびステアリン酸ミリシル等の高級脂肪酸エステル;アセトアミド、プロピオン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドおよびアミドワックス等のアミド類;ならびにステアリルアミン、ベヘニルアミンおよびパルチミルアミン等の高級アミン類などを添加してもよい。これら添加成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、剥離性を調節するため界面活性剤を含んでいてもよく、好適な界面活性剤として、ポリオキシエチレン鎖含有化合物が挙げられる。さらに、無機あるいは有機の微粒子(金属粉、シリカゲルなど)や、オイル類(アマニ油鉱油など)を添加することもできる。また、剥離層の厚みを、0.2〜4μm、好ましくは0.5〜2.5μmとするのが好ましい。
【0069】
さらに本発明においては、文字潰れの解消と再加熱時の熱量増加を行うために、印画速度や再加熱時の熱量を増加させることの他、画像情報が形成された部分へ供給する熱量を補うため、画像情報形成時にサーマルヘッド周囲の環境温湿度を高めたり、基材の裏面から熱を加える装置を備え付けて、ポストキレート反応を促進させる方法が好ましく用いられる。
【0070】
受像層に画像および文字情報が記録された被記録体1は、次いで、搬送部60に移動する。本工程では、文字情報と画像情報が記録された被記録体1が、搬送ローラー61、62、63により搬送されて、後記する非接触リーダ/ライタ装置80に送られる。この際、搬送ローラー61、62、63のいずれか一つ以上が、加熱手段を備えることにより、被記録体中の画像情報が形成された部分に付与される熱量を増やすことができる。搬送ローラー61、62、63の全てが加熱手段を備えていてもよく、この場合、被記録体1に付与される熱の総量を増やすことができるため、より、画像情報形成部のポストキレート反応を促進させることができる。加熱手段を備える搬送ローラーとしては、上記したものと同様のものを使用することができる。また、ポストキレート反応を促進させる観点からは、搬送ヒートローラーの温度は、50〜300℃、好ましくは150〜250℃であることが好ましい。搬送ヒートローラーの温度が50℃よりも低温であると搬送工程でポストキレート反応を促進させることは難しくなり、一方、300℃を超える温度では、反応が部分的に促進されてムラになる恐れがある。また、複数の搬送ヒートローラー61、62、63の各ローラーの温度は同じであってもよいが、被記録体の搬送方向側のローラーほど高温になるように温度設定することが好ましい。このような温度設定とすることにより、被記録体表面の温度が徐々に高くなるため、ポストキレート反応が表面から厚さ方向に均一に反応が進み、反応によるムラが生じるのを防ぐことができる。
【0071】
搬送部60から運ばれてきた被記録体1は、非接触リーダ/ライタ装置80に移動し、ここで被記録体1中の非接触ICモジュールへの電子情報の書込み/読出しが行われる。この書込み/読出しの操作を確実に行うためには、被記録体1と非接触リーダ/ライタ装置80とを近接させる必要がある。したがって、被記録体が搬送されてきた際に、被記録体が搬送ラインから浮き上がったりずれたりしないようにする被記録体位置制御手段が必要とされる場合がある。本発明において、この被記録体位置制御は、ヒートローラー81Aを被記録体1に圧接することにより行う。すなわち、非接触リーダ/ライタ装置80によって、ICモジュールへの電子情報の書込み/読出しが行われている際に、被記録体の表面をヒートローラー81Aによって加熱することにより、画像情報が形成された部分に付与される熱量を増やすことができる。その結果、上記した搬送ライン中での再加熱や文字情報記録用のヘッドによる再加熱に加えて、ポストキレート反応をより効率的に促進することができる。また、ヒートローラー81Aの代わりに、ホットスタンプや端面ヘッド(図示せず)のような、画像情報が形成された部分のみを加熱できる手段を用いてもよい。さらに、図6に示すように、被記録体1の画像情報が形成された部分101のみが加熱できるような、表面の一部分82のみを加熱できるヒートローラーを用いてもよい。この場合、表面の一部分のみ確実に加熱して他の部分に影響を与えないように、被記録体1の位置を制御するための位置検出機構(図示せず)を設けることが好ましい。
【0072】
被記録体1は、非接触リーダ/ライタ装置80によるICモジュールへの電子情報の書込み/読出しが行われた後、透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部70に移動する。透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部には、保護層転写箔シート71および/または光学変化素子転写箔シート72が配置され、その位置に対応してヒートローラー73が配置されている。
【0073】
透明保護層転写箔シート71は、図7に示すように、支持体711と、その支持体711の一方の面に設けられた透明保護転写層712とから構成され、透明保護転写層712は、支持体711側から順に、離型層713、透明保護層714および接着層715が積層した構造を有する。この透明保護層転写箔シート71は、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプ等の加熱手段により、透明保護層転写層712が支持体711から剥離して被記録体である被記録体1に転写されるものである。また、光学変化素子転写箔シート72は、図8に示すように、支持体721とその支持体721の一方の面に設けられた光学変化素子転写層722とから構成され、光学変化素子転写層722は、支持体721側から順に、離型層723、光学変化素子層724および接着層725が積層した構造を有する。この光学変化素子転写箔シート72は、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプ等の加熱手段により、光学変化素子転写層722が支持体721から剥離して被記録体1に転写されるものである。
【0074】
透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部70に移動した被記録体1は、この工程において、適宜必要に応じて、透明保護転写層および/または光学変化素子転写層が転写される。例えば、被記録体1上の画像情報を記録した部分にのみ透明保護転写層71を設けたり、被記録体1上の任意の位置に光学変化素子転写層72を設けたりすることができる。被記録体1の画像情報記録部分に透明保護転写層71を設ける際には、上記したように、サーマルヘッド、ヒートロール、ホットスタンプ等の加熱手段を利用して透明保護転写層が被記録体1に熱転写されるため、画像情報部分の再加熱を兼ねることになる。その結果、受像層中の色材と金属イオン含有化合物とのキレート反応がさらに促進することになり、より優れた発色と階調を有する画像情報を被記録体上に形成することができる。また、光学変化素子転写層を被記録体上に転写することにより、情報記録体の偽変造を抑制することができる。
【0075】
上記した透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートは、従来公知のものを使用することができる。例えば、透明保護層としては、被記録体に記録された画像情報を保護するために、耐久性や透明性に優れた樹脂であれば、従来公知の何れの樹脂も使用でき、例えば、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。透明保護層は、例えば、適当な溶剤又は分散液に、上記の樹脂を溶解又は分散させた保護層塗工液を、支持体又は離型層の表面に、厚みが0.5〜5g/m(乾燥基準)程度となるように塗布し、乾燥させることにより形成することができる。透明保護層の厚みは0.3〜50μmが好ましく、より好ましくは0.3〜30μm、特に好ましくは0.3〜20μmである。
【0076】
光学変化素子層としては、従来公知の光学変化素子を用いることができ、例えば、キネグラムのような回折格子の2次元のCG画像であって線画像構成の画像が移動、回転、膨張、縮小等事由に動き、変化する点に特徴があるもの、ピクセルグラムのような画像がポジとネガに変化する点に特徴があるもの、OSD(Optical Security Device)のような色が金色から緑色に変化する点に特徴があるもの、LEAD(Long Economical Anticopy Device)のような画像が変化して見える点に特徴を有するもの、ストライプ型OVD(Optical VariableDevice)、金属箔、および日本印刷学会誌(1998年)第35巻第6号第482〜496頁に記載されているような素材、特殊な印刷法、特殊なインキ等により形成されたもの、を用いることができる。また、ホログラム等も好適に使用できる。
【0077】
また、上記の透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、又は上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体またはこれら2層以上の積層体が挙げられる。支持体の厚みは10〜200μm、好ましくは15〜80μmである。
【0078】
透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの離型層としては、高ガラス転移温度を有するアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ボリビニルブチラール樹脂などの樹脂、ワックス類、シリコンオイル類、フッ素化合物、水溶性を有するポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、Si変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース樹脂、ヒドロキシセルロース樹脂、シリコン樹脂、パラフィンワックス、アクリル変性シリコーン、ポリエチレンワックス、エチレン酢酸ビニルなどの樹脂、ポリジメチルシロキサンやその変性物、フッ素化オレフィン、パーフルオロ燐酸エステル系化合物等のフッ素系化合物が挙げられる。
【0079】
透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの接着層としては、熱貼着性樹脂としてエチレン酢酸ビニル樹脂、エチンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、アイオノマー樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、粘着付与剤などが挙げられ、それらの共重合体や混合物でもよい。具体的には、ハイテックS−6254、S−6254B、S−3129等(東邦化学工業(株)製)、ジュリマーAT−210、AT−510、AT−613等(日本純薬(株)製)、プラスサイズL−201、SR−102、SR−103、J−4等(互応化学工業(株)製)の市販のものを使用することができる。接着層の厚みは0.1〜1.0μm程度である。
【0080】
また、透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートは、支持体、離型層、透明保護層または光学変化素子層、ならびに接着層の各層の接着性を向上させるため、各層の間に中間層としてプライマー層やバリア層が設けられていてもよい。
【0081】
透明保護転写層71および/または光学変化素子転写層72が転写された被記録体1は、続いて、エンボス加工部90に移動する。本工程においては、画像/文字情報が記録され、透明保護転写層等が転写された被記録体1の表面に活性放射線硬化液が塗布され、次いで、表面に所望の模様を施したエンボスローラー91と支持ローラー92の隙間に被記録体1を通過させて、被記録体1の塗布面にエンボスローラー91を圧接して、活性放射線による露光を行うことにより、被記録体の表面にエンボス加工された活性放射線硬化層を形成する。活性放射線硬化層は、被記録体の表面に記録された文字/画像情報や光学変化素子層等を保護するとともに、エンボス加工によって偽造防止を図るために設けられる任意の層である。
【0082】
エンボス加工の際、エンボスローラー91を加熱手段として用いることにより、被記録体1の画像情報形成部分に熱エネルギーを付与することができ、この熱エネルギーによって、画像情報が記録された受像層中の色材(イエロー染料、マゼンタ染料およびシアン染料)と金属イオン含有化合物とがポストキレート反応が促進されて、所望の発色及び階調を有する画像情報が形成される。ポストキレート反応を促進させる観点からは、エンボスローラーの温度は、200〜500℃であることが好ましい。200℃未満の温度でもポストキレート反応は促進されるもののエンボスの効果が得られにくい。一方、500℃よりも高温では被記録体であるカード自体が曲がり損傷してしまう可能性がある。なお、エンボスローラーの温度が300℃以上になると、部分的にポストキレート反応が促進されるために画像形成部分に発色ムラが発生してしまうおそれもあるが、エンボス加工部分であるためエンボスと組み合わさり目視で違和感のないレベルに仕上げることができる。
【0083】
エンボス加工は、上記したエンボスローラーを用いてもよく、また、所望の模様が表面に形成されたエンボス板(図示せず)を用いて、被記録体表面にエンボス賦型してもよい。このエンボス板は、ヒートスタンプのように加熱手段を兼ね備えるものを使用することにより、上記と同様にして、画像情報形成部のポストキレート反応を進行させることができる。
【0084】
エンボス賦型に使用される活性放射線硬化層は、紫外線や電子線等の活性放射線の照射により硬化する樹脂であれば従来公知のものを使用することができ、例えばエポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等に光重合開始剤、光増感剤を添加した電離放射線硬化性樹脂を使用できる。電離放射線硬化樹脂は、これらの樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイを含む)であっても良い。
【0085】
上記したように、透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部70において、被記録体1に透明保護層等が設けられた後、エンボス加工部90においてエンボス加工を施す工程を説明したが、エンボス加工を行わないような場合、図9に示すように、搬送部60から直接、被記録体を透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部70に移動させ、ここで被記録体1に透明保護層等を形成した後、次いで、非接触リーダ/ライタ装置80によって、被記録体1中の非接触ICモジュールへの電子情報の書込み/読出しを行ってもよい。この非接触リーダ/ライタ装置80に、被記録体の位置制御手段を兼ねるヒートローラーを設けて、上記と同様にして、ポストキレート反応をより効率的に促進することができる。また、ヒートローラーの代わりに、ホットスタンプや端面ヘッド81Bのような、画像情報が形成された部分のみを加熱できる手段を用いてもよい。
【0086】
<情報記録体>
上記のようにして得られた情報記録体100は、図10に示すように、被記録体1の受像層3中に画像情報101および文字情報102が記録され、画像情報101が記録された部分には、透明保護転写層71が設けられ、また、被記録体表面の任意の位置に光学変化素子転写層72が設けられている。さらに、これら文字情報102、透明保護転写層71、および光学変化素子転写層72を覆うように、エンボス賦型層(活性放射線硬化層)93が設けられている。また、被記録体1の受像層3を設けていない側の面には、任意の層として、筆記層や帯電防止層(図示せず)を設けてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 被記録体(ICカード)
2 カード基材
3 受像層
10 画像情報記録用熱転写シート
11 基材
12 色材層(YMC)
13 耐熱滑性層
30 情報記録体製造装置
40 カード基材供給部
50 情報記録部
60 搬送部
70 透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部
71 透明保護層転写箔シート
72 光学変化素子転写箔シート
80 リーダ/ライタ装置
81A,81B 加熱手段
90 エンボス加工部
93 エンボス賦型層(活性放射線硬化層)
100 情報記録体
101 画像情報
102 文字情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で電子情報の書込みおよび/または読出しが可能なICモジュールを内部に備え、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体、を製造する方法であって、
前記ICモジュールを内部に備えたカード基材と、そのカード基材の一方の面に設けられた、画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層と、を備えた被記録体を準備し、
前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画し、
前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画し、
前記文字情報を印画する前および/または後に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う、
ことを含んでなり、
前記画像情報形成部の加熱が、前記画像情報の印画後から前記文字情報の印画までの間、前記文字情報の印画後から前記透明保護層の熱転写までの間、および、前記透明保護層の熱転写の後から前記被記録体のICモジュールへの書込みおよび/または読出しまでの間、の少なくとも1箇所以上で行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記被記録体の前記画像情報が印画された部分に、透明保護層を熱転写することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像情報形成部の加熱が、画像情報の印画後から前記文字情報の印画までの間に設けられた搬送ローラーから熱エネルギーにより行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記画像情報形成部の加熱が、前記文字情報の印画後から前記透明保護層の熱転写までの間に設けられた搬送ローラーから熱エネルギーにより行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記画像情報形成部の加熱が、前記被記録体のICモジュールへの書込みおよび/または読出しの際に、ヒートローラーまたはホットスタンプにより被記録体を接圧することにより行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記画像情報記録用熱転写シートが、基材上に、シアン染料層、マゼンタ染料層およびイエロー染料層を面順位に設けた色材層を備え、前記シアン染料層、前記マゼンタ染料層および前記イエロー染料層の順に色材を熱転写して、画像情報を印画する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記被記録体へ前記画像情報および/または前記文字情報を印画した後、前記被記録体上へ光学変化素子層を熱転写することをさらに含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記透明保護層および前記光学変化素子層の熱転写の後に、前記受像層上の画像情報形成部にエンボス加工を行うことをさらに含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記画像情報形成部の加熱が、前記エンボス加工の際の熱エネルギーにより行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法により得られた、情報記録体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−196903(P2012−196903A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62844(P2011−62844)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】