説明

情報記録媒体、情報記録媒体に情報を記録、再生する装置

【課題】 従来の光ディスクでは、一つのディスクには単一の規格フォーマットの情報を記録することしかできず、異なる規格フォーマットで情報を記録する場合には、複数のメディアに記録する必要があった。本発明の目的は、異なる規格フォーマットのデータを、一つの情報記録媒体に混在させて記録することが可能な情報記録媒体、記録、再生装置及び方法を提供することである。
【解決手段】 フォーマット、記録タイミングによりデータを記録するディレクトリを変更することにより、フォーマットの混在を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は読み書き可能な情報記録媒体であって、特に、動画像データおよび静止画データおよびオーディオデータ等の種々のフォーマットのデータを含むマルチメディアデータが記録される情報記録媒体に関する。さらに、本発明はそのような情報記録媒体に対して情報の記録、再生を行う装置に関する。
【0002】
【従来の技術】650MB程度が上限であった書き換え型光ディスクの分野で数GBの容量を有する相変化型ディスクDVD−RAMが出現した。デジタルAVデータの符号化規格であるMPEG(MPEG2)の実用化とあいまってDVD−RAMは、コンピュータ用途だけでなくオーディオ・ビデオ(AV)技術分野における記録・再生メディアとして期待されている。
【0003】これらの大容量化を目指す光ディスクを用いて如何に画像データを含むAVデータを記録し、従来のAV機器を大きく超える性能や新たな機能を実現するかが今後の大きな課題である。また、AV機器はパーソナルコンピュータに比べ、メモリ搭載容量の抑制や、コンピュータ技術に精通しない一般ユーザにとって使い易く、理解し易い機能の実現も課題である。PC用のデータではなくAVデータを記録する場合、従来の光ディスクでは、一つのディスクには単一の規格フォーマットの情報を記録することしかできず、異なる規格フォーマットで情報を記録する場合には、複数のメディアに記録する必要があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、異なる規格フォーマットのデータを、一つの情報記録媒体に混在させて記録することが可能な情報記録媒体を提供し、さらに、そのような情報記録媒体に対してデータの記録、再生を行う装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明における情報記録媒体は、ビデオオブジェクトと前記ビデオオブジェクトの再生を管理する管理情報とを記録する情報記録媒体であって、異なるフォーマットのデータを混在して記録することが可能であることを特徴とする。
【0006】また、前記情報記録媒体における前記異なるフォーマットとは、DVD VIDEO規格フォーマットと、DVD Video Recording規格フォーマットと、DVD Stream Recording規格フォーマットと、DVD AUDIO規格フォーマット、及びその他の映像情報記録フォーマットと、その他の音声情報記録フォーマットと、その他の映像音声情報記録フォーマットと、その他のストリーム記録フォーマットとであることを特徴としてもよい。
【0007】また、本発明の記録装置は、前記情報記録媒体に情報を記録する記録装置であって、前記ビデオオブジェクトを生成する手段と、前記ビデオオブジェクト管理情報を生成する手段と、生成された前記ビデオオブジェクトを記録する手段と、生成された前記ビデオオブジェクト管理情報を記録する手段と、異なるフォーマットのデータを混在して記録する手段とを備えることを特徴とする。
【0008】また、前記記録装置における前記異なるフォーマットとは、DVD VIDEO規格フォーマットと、DVD Video Recording規格フォーマットと、DVD Stream Recording規格フォーマットと、DVD AUDIO規格フォーマット、及びその他の映像情報記録フォーマットと、その他の音声情報記録フォーマットと、その他の映像音声情報記録フォーマットと、その他のストリーム記録フォーマットとであることを特徴としてもよい。
【0009】また、本発明の再生装置は、前記情報記録媒体を再生する再生装置であって、前記ビデオオブジェクト管理情報を読み出す読み出し手段と、読み出された前記ビデオオブジェクト管理情報を基に前記ビデオオブジェクトを読み出す読み出し手段と、読み出された前記ビデオオブジェクト管理情報を基に、読み出された前記ビデオオブジェクトを再生する手段と、混在する異なるフォーマットのデータを読み出す手段と、前記混在する異なるフォーマットのデータを再生する手段とを備えることを特徴とする。
【0010】また、前記再生装置における前記異なるフォーマットとは、DVD VIDEO規格フォーマットと、DVD Video Recording規格フォーマットと、DVD Stream Recording規格フォーマットと、DVD AUDIO規格フォーマット、及びその他の映像情報記録フォーマットと、その他の音声情報記録フォーマットと、その他の映像音声情報記録フォーマットと、その他のストリーム記録フォーマットとであることを特徴としてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を用いて本発明に係る情報記録媒体、記録装置及び再生装置の実施形態であるDVDディスク、DVDレコーダ及びDVDプレーヤについて下記の順序で説明する。特に、発明のポイントは「8.発明の概要」及び「9.詳細な実施形態」で説明する。なお、関連の度合いは異なるが、全て本発明の実施形態である。
【0012】
1.DVDレコーダ装置のシステム概要2.DVDレコーダ装置の機能概要3.DVDディスクの概要4.再生されるAV情報の概要5.AV情報の管理情報と再生制御の概要6.再生機能の基本動作7.記録機能の基本動作8.発明の概要9.詳細な実施形態(1.DVDレコーダ装置のシステム概要)図1は、DVDレコーダ装置の外観と関連機器とのインタフェースの一例を説明する図である。図1に示すように、DVDレコーダには光ディスクであるDVDが装填され、ビデオ情報の記録再生を行う。操作は一般的にはリモコンで行われる。
【0013】DVDレコーダに入力されるビデオ情報にはアナログ信号とデジタル信号の両者があり、アナログ信号としてはアナログ放送があり、デジタル信号としてデジタル放送がある。一般的にはアナログ放送は、テレビジョン装置に内蔵され受信機により受信、復調され、NTSC等のアナログビデオ信号としてDVDレコーダに入力され、デジタル放送は、受信機であるSTB(Set Top Box)でデジタル信号に復調され、DVDレコーダに入力され記録される。
【0014】一方、ビデオ情報が記録されたDVDディスクはDVDレコーダにより再生され外部に出力される。出力も入力同様に、アナログ信号とデジタル信号の両者があり、アナログ信号であれば直接テレビジョン装置に入力され、デジタル信号であればSTBを経由し、アナログ信号に変換された後にテレビジョン装置に入力されテレビジョン装置で映像表示される。
【0015】また、DVDディスクにはDVDレコーダ以外のDVDカムコーダや、パーソナルコンピュータでビデオ情報が記録再生される場合がある。DVDレコーダ外でビデオ情報が記録されたDVDディスクであっても、DVDレコーダに装填されれば、DVDレコーダはこれを再生する。
【0016】なお、上述したアナログ放送やデジタル放送のビデオ情報には通常、音声情報が付随している。付随している音声情報も同様にDVDレコーダで記録再生される。またビデオ情報は一般的には動画であるが、静止画の場合もある。例えば、DVDカムコーダの写真機能で静止画が記録される場合がそうなる。なお、STBとDVDレコーダの間のデジタルI/FはIEEE1394、ATAPI、SCSI等がありうる。
【0017】なお、DVDレコーダとテレビジョン装置との間はコンポジットビデオ信号であるNTSCと例示したが、輝度信号と色差信号を個別に伝送するコンポーネント信号でもよい。さらには、AV機器とテレビジョン装置の間の映像伝送I/FはアナログI/FをデジタルI/F、例えば、DVIに置きかえる研究開発が進められており、DVDレコーダとテレビジョン装置がデジタルI/Fで接続されることも当然予想される。
【0018】(2.DVDレコーダ装置の機能概要)図2R>2は、DVDレコーダ装置の機能を示すブロック図である。ドライブ装置は、DVD−RAMディスク100のデータを読み出す光ピックアップ101、ECC(Error Correcting Code)処理部102、トラックバッファ103、トラックバッファへ103の入出力を切り替えるスイッチ104、エンコーダ部105及びデコーダ部106を備える。図に示すように、DVD−RAMディスク100には、1セクタ=2KBを最小単位としてデータが記録される。 また、16セクタ=1ECCブロックとして、ECCブロックを単位としてECC処理部102でエラー訂正処理が施される。
【0019】なお、DVDレコーダ装置はデータの蓄積媒体として、DVDディスクに加え、半導体メモリカードやハードディスクドライブ装置を備えても良い。図3は、半導体メモリカードとハードディスクドライブ装置を備える場合のDVDレコーダのブロック図を示す。なお、1セクタは512Bでも良いし、8KB等でも良い。また、ECCブロックも1セクタ、16セクタ、32セクタ等でも良い。記録できる情報容量の増大に伴い、セクタサイズ及びECCブロックを構成するセクタ数は増大すると予想される。
【0020】トラックバッファ103は、DVD−RAMディスク100にAVデータをより効率良く記録するため、AVデータを可変ビットレート(VBR)で記録するためのバッファである。DVD−RAMディスク100への読み書きレート(Va)が固定レートであるのに対して、AVデータはその内容(ビデオであれば画像)の持つ複雑さに応じてビットレート(Vb)が変化するため、このビットレートの差を吸収するためのバッファである。
【0021】このトラックバッファ103を更に有効利用すると、DVD−RAMディスク100上にAVデータを離散配置することが可能になる。図4を用いてこれを説明する。図4(a)は、ディスク上のアドレス空間を示す図である。図4(a)に示す様にAVデータが[a1,a2]の連続領域と[a3,a4]の連続領域に分かれて記録されている場合、a2からa3へシークを行っている間、トラックバッファに蓄積してあるデータをデコーダ部106へ供給することでAVデータの連続再生が可能になる。この時の状態を示したのが図4(b)である。
【0022】位置a1で読み出しを開始したAVデータは、時刻t1からトラックバッファ103へ入力されると共に、トラックバッファ103からデータの出力が開始される。これにより、トラックバッファへの入力レート(Va)とトラックバッファからの出力レート(Vb)のレート差(Va−Vb)の分だけトラックバッファへデータが蓄積されていく。この状態が、検索領域がa2に達するまで、即ち、時刻t2に達するまで継続する。この間にトラックバッファ103に蓄積されたデータ量をB(t2)とすると、時間t2から、領域a3のデータの読み出しを開始する時刻t3までの間、トラックバッファ103に蓄積されているB(t2)を消費してデコーダ106へ供給し続けられれば良い。
【0023】言い方を変えれば、シーク前に読み出すデータ量([a1,a2])が一定量以上確保されていれば、シークが発生した場合でも、AVデータの連続供給が可能である。AVデータの連続供給が可能な連続領域のサイズはECCブロック数(N_ecc)に換算すると次の式で示される。式において、N_secはECCブロックを構成するセクタ数であり、S_sizeはセクタサイズ、Tjはシーク性能(最大シーク時間)である。
【0024】N_ecc = Vb*Tj/((N_sec*8*S_size)*(1−Vb/Va))
また、連続領域の中には欠陥セクタが生じる場合がある。この場合も考慮すると連続領域は次の式で示される。式において、dN_eccは容認する欠陥セクタのサイズであり、Tsは連続領域の中で欠陥セクタをスキップするの要する時間である。このサイズもECCブロック数で表される。
【0025】N_ecc = dN_ecc+Vb*(Tj+Ts)/((N_sec*8*S_size)*(1−Vb/Va))
なお、ここでは、DVD−RAMからデータを読み出す、即ち再生の場合の例を説明したが、DVD−RAMへのデータの書き込み、即ち録画の場合も同様に考えることができる。上述したように、DVD−RAMでは一定量以上のデータが連続記録さえされていればディスク上にAVデータを分散記録しても連続再生/録画が可能である。DVDでは、この連続領域をCDAと呼称する。
【0026】(3.DVDディスクの概要)図5は、記録可能な光ディスクであるDVD−RAMディスクの外観と物理構造を表した図である。なお、DVD−RAMは一般的にはカートリッジに収納された状態でDVDレコーダに装填される。記録面を保護するのが目的である。但し、記録面の保護が別の構成で行われたり、容認できる場合にはカートリッジに収納せずに、DVDレコーダに直接装填できるようにしてももちろん良い。DVD−RAMディスクは相変化方式によりデータを記録する。ディスク上の記録データはセクタ単位で管理され、アクセス用のアドレスが付随する。16個のセクタは誤り訂正の単位となり、誤り訂正コードが付与され、ECCブロックと呼称される。
【0027】図5(a)は、記録可能な光ディスクであるDVD−RAMディスクの記録領域を表した図である。同図のように、DVD−RAMディスクは、最内周にリードイン領域を、最外周にリードアウト領域を、その間にデータ領域を配置している。リードイン領域は、光ピックアップのアクセス時においてサーボを安定させるために必要な基準信号や他のメディアとの識別信号などが記録されている。リードアウト領域もリードイン領域と同様の基準信号などが記録される。データ領域は、最小のアクセス単位であるセクタ(2048バイトとする)に分割されている。また、DVD−RAMは、記録・再生時においてZ−CLV(ZoneConstant Linear Velocity)と呼ばれる回転制御を実現するために、データ領域が複数のゾーン領域に分割されている。
【0028】図5(a)は、DVD−RAMに同心円状に設けられた複数のゾーン領域を示す図である。同図のように、DVD−RAMは、ゾーン0〜ゾーン23の24個のゾーン領域に分割されている。DVD−RAMの回転角速度は、内周側のゾーン程速くなるようにゾーン領域毎に設定され、光ピックアップが1つのゾーン内でアクセスする間は一定に保たれる。これにより、DVD−RAMの記録密度を高めると共に、記録・再生時における回転制御を容易にしている。
【0029】図5(b)は、図5(a)において同心円状に示したリードイン領域と、リードアウト領域と、ゾーン領域0〜23を横方向に配置した説明図である。リードイン領域とリードアウト領域は、その内部に欠陥管理領域(DMA:Defect Management Area)を有する。欠陥管理領域とは、欠陥が生じたセクタの位置を示す位置情報と、その欠陥セクタを代替するセクタが上記代替領域の何れに存在するかを示す代替位置情報とが記録されている領域をいう。
【0030】各ゾーン領域はその内部にユーザ領域を有すると共に、境界部に代替領域及び未使用領域を有している。ユーザ領域は、ファイルシステムが記録用領域として利用することができる領域をいう。代替領域は、欠陥セクタが存在する場合に代替使用される領域である。未使用領域は、データ記録に使用されない領域である。未使用領域は、2トラック分程度設けられる。未使用領域を設けているのは、ゾーン内では隣接するトラックの同じ位置にセクタアドレスが記録されているが、Z−CLVではゾーン境界に隣接するトラックではセクタアドレスの記録位置が異なるため、それに起因するセクタアドレス誤判別を防止するためである。
【0031】このようにゾーン境界にはデータ記録に使用されないセクタが存在する。そのためデータ記録に使用されるセクタのみを連続的に示すように、DVD−RAMは、内周から順に論理セクタ番号(LSN:Logical Sector Number)をユーザ領域の物理セクタに割り当てている。
【0032】図6は、論理セクタにより構成されるDVD−RAMの論理的なデータ空間を示す。論理的なデータ空間はボリューム空間と呼称され、ユーザデータを記録する。ボリューム領域は、記録データをファイルシステムで管理する。即ち、データを格納する1群のセクタをファイルとして、さらには1群のファイルをディレクトリとして管理するボリューム構造情報がボリューム領域の先頭と終端に記録される。本実施の形態のファイルシステムはUDFと呼称され、ISO13346規格に準拠している。
【0033】なお、上記1群のセクタはボリューム空間で必ずしも連続的には配置されず、部分的に離散配置される。このため、ファイルシステムは、ファイルを構成するセクタ群のうち、ボリューム空間で連続的に配置される1群のセクタをエクステントとして管理し、ファイルを関連のあるエクステントの集合として管理する。
【0034】図7は、DVD−RAMに記録されるディレクトリとファイルの構造を示す。ルートの下に、ディスク全体を管理するDISC_Managerファイルがあり、それと同じ階層に各規格フォーマット用のディレクトリがあり、それぞれのディレクトリの下に、それぞれの規格に従ったフォーマットで再生用オブジェクトファイルと、これらの再生順序や各種属性を示す管理情報ファイルが記録される。
【0035】VRディレクトリのオブジェクトはMPEG規格に準拠したデータであり、PS_VOB、AOB、POBがある。PS_VOB、AOB、POBはMPEGのプログラムストリーム(PS)である。SRディレクトリのオブジェクトはMPEG規格に準拠したデータであり、TS2_VOBがある。これはMPEGのトランスポートストリーム(TS)である。PRIVTはアプリケーション特定のナビゲーションデータや、機器に接続されたアプリケーションに特定の情報が記録される。
【0036】VIDEOディレクトリのオブジェクトはMPEG規格に準拠したデータであり、VIDEO_TS.VOB、VTS.VOBがある。これはMPEGのPSである。SELFディレクトリのオブジェクトは、TS1−VOBであり、これは記録装置が自己エンコードを行ったMPEG−TSである。
【0037】図7には描かれていないが、AUDIOディレクトリには、DVD−AUDIOに準拠したデータが記録される。また、その他の規格のデータはETCディレクトリに記録される。プログラムストリームは、パッケージメディアにAV情報を格納することを考慮されたデータ構造を有し、一方、トランスポートストリームは通信メディアを考慮したデータ構造を有する。
【0038】PS_VOB、TS1_VOB、TS2−VOBは、いずれも映像情報と音声情報を共に有し映像情報が主体となるオブジェクトである。このうち、TS1_VOBは原則、DVDレコーダによりエンコードが行われ、内部のピクチャ構造が詳細に管理されているオブジェクトであり、TS2_VOBはDVDレコーダ外でエンコードされたオブジェクトであり、内部のピクチャ構造等のデータ構造が一部不明なオブジェクトである。
【0039】典型的には、TS1_VOBは外部から入力されるアナログビデオ信号をDVDレコーダがトランスポートストリームにエンコードしたオブジェクトであり、TS2_VOBは外部から入力されるデジタルビデオ信号をエンコードすることなく直接ディスクに記録したオブジェクトである。
【0040】AOB、POBはMPEGのプログラムストリームであり、AOBは音声情報が主体となるオブジェクトであり、POBは静止画が主体となるオブジェクトである。
【0041】上述した、映像情報主体、音声情報主体とは、ビットレートの割り当てが大きいことを意味する。VOBは映画等のアプリケーションに用いられ、AOBは音楽アプリケーションに用いられる。
【0042】(4.再生されるAV情報の概要)図8は、DVDディスクに各種AVオブジェクトとして記録されるMPEGデータの構造を示す図である。図8が示すようにビデオストリーム及びオーディオストリームは、それぞれ分割され多重される。MPEG規格においては、多重化後のストリームをシステムストリームと呼称する。DVDの場合、DVD固有の情報が設定されたシステムストリームをVOB(Video Object)と呼称している。分割の単位は、パック・パケットと称され、約2KByteのデータ量を有する。
【0043】ビデオストリームはMPEG規格で符号化されており、可変ビットレートで圧縮されており、動きが激しい等の複雑な映像であればビットレートが高くなっている。MPEG規格では、映像の各ピクチャは、Iピクチャ、Pピクチャ、Bピクチャに種類分けして符号化される。このうち、Iピクチャはフレーム内で完結する空間的な圧縮符号化が施されており、Pピクチャ、Bピクチャはフレーム間の相関を利用した時間的な圧縮符号化が施されている。MPEGでは少なくともIピクチャを含む区間をGOP(Group of Picture)として管理する。GOPは早送り再生等の特殊再生におけるアクセスポイントになる。フレーム内圧縮されたIピクチャを有するためである。
【0044】一方、音声ストリームの符号化には、DVDの場合、MPEGオーディオであるAAC、MP3に加え、AC3やLPCMの符号化が用いられる。図8が示すように、GOPを構成するビデオ情報とそれに付随する音声情報とを含む多重化後のデータ単位はVOBU(Video Object Unit)と称される。VOBUには、当該動画区間の管理用の情報をヘッダ情報として含ませる場合がある。図8で説明したシステムストリームには、プログラムストリーム(PS)とトランスポートストリーム(TS)がある。前者はパッケージメディアを考慮したデータ構造を有し、後者は通信メディアを考慮したデータ構造を有する。
【0045】図9は、プログラムストリームとトランスポートストリームのデータ構造の概要を説明する図である。プログラムストリームは、伝送及び多重化の最小単位である固定長のパックからなり、パックはさらに、1つ以上のパケットを有する。パックもパケットもヘッダ部とデータ部を有する。MPEGではデータ部をペイロードと称する。DVDの場合はパックの固定長はセクタサイズと整合性をとり2KBになる。パックは複数のパケットを有することができるが、DVDの映像や音声を格納するパックは1パケットのみを有するため、特別な場合を除いて1パック=1パケットになる。
【0046】一方、トランスポートストリームの伝送及び多重化の単位は固定長のTSパケットからなる。TSパケットのサイズは188Bであり、通信用規格であるATM伝送との整合性をとっている。TSパケットは1つ以上が集まりPESパケットを構成する。PESパケットはプログラムストリームとトランスポートストリームで共通する概念であり、データ構造は共通である。プログラムストリームのパックに格納されるパケットはPESパケットを直接構成し、トランスポートストリームのTSパケットは1つ以上が集まりPESパケットを構成する。
【0047】また、PESパケットは符号化の最小単位であり、符号化が共通するビデオ情報、オーディオ情報をそれぞれ格納する。即ち、一つのPESパケット内に符号化方式の異なるビデオ情報、オーディオ情報が混在して格納されることはない。但し、同じ符号化方式であればピクチャバウンダリやオーディオフレームのバウンダリは保証せずとも良い。図9に示すように複数のPESパケットで1つのIピクチャを格納したり、1つのPESパケットに複数のピクチャデータを格納するケースもありうる。
【0048】図10と図11に、トランスポートストリームとプログラムストリームの個別のデータ構造を示す。図10、図12に示すように、TSパケットは、TSパケットヘッダと、適用フィールドと、ペイロード部から構成される。TSパケットヘッダにはPID(Packet Identification)が格納され、これにより、TSパケットが所属するビデオストリームまたはオーディオストリーム等の各種ストリームが識別される。
【0049】適用フィールドにはPCR(Program Clock Reference)が格納される。PCRはストリームをデコードする機器の基準クロック(STC)の参照値である。機器は典型的にはPCRのタイミングでシステムストリームをデマルチプレクスし、ビデオストリーム等の各種ストリームに再構築する。
【0050】PESヘッダには、DTS(Decoding Time Stamp)とPTS(Presentation Time Stamp)が格納される。DTSは当該PESパケットに格納されるピクチャ/オーディオフレームのデコードタイミングを示し、PTSは映像音声出力等のプレゼンテーションタイミングを示す。なお、全てのPESパケットヘッダにPTS、DTSを有する必要はなく、Iピクチャの先頭データが格納開始されるPESパケットのヘッダにPTS、DTSがあればデコード及び出力に支障はない。
【0051】TSパケットの構造の詳細は図12に示される。図12に示すように、適用フィールドにはPCRに加えて、ランダムアクセス表示フラグが格納され、当該フラグにより、対応するペイロード部にビデオ・オーディオのフレーム先頭であってアクセスポイントとなりうるデータを格納するか否かを示す。また、TSパケットのヘッダ部には前述したPIDに加えて、PESパケットの開始を示すユニット開始表示フラグ、適用フィールドが後続するか否かを示す適用フィールド制御情報も格納される。
【0052】図11には、プログラムストリームを構成するパックの構造を示す。パックはパックヘッダにSCRとStreamIDを有する。SCRはトランスポートストリームのPCRと、StreamIDはPIDと実質同じである。またPESパケットのデータ構造はトランスポートストリームと共通なため、PESヘッダにPTSとDTSが格納される。
【0053】プログラムストリームとトランスポートストリームの大きな違いの1つに、トランスポートストリームではマルチプログラムが許される点がある。即ち、番組という単位では1つの番組しかプログラムストリームは伝送できないが、トランスポートストリームは複数の番組を同時に伝送することを想定している。このため、トランスポートストリームでは、番組毎に番組を構成するビデオストリームとオーディオストリームがいずれかを再生装置が識別することが必要になる。
【0054】図13に、番組を構成するオーディオストリームとビデオストリームの構成情報を伝送するPATテーブル、PMAPテーブルを示す。図13に示すように、番組毎に使用されるビデオストリームとオーディオストリームの組み合わせに関する情報をPMAPテーブルが格納し、番組とPMAPテーブルの組み合わせに関する情報をPATテーブルが格納する。再生装置は、PATテーブル、PMAPテーブルにより出力が要求された番組を構成するビデオストリームとオーディオストリームを検出することができる。
【0055】次に上述してきたプログラムストリームのパックと、トランスポートストリームのTSパケットのディスク上の配置に関して、図14を用いて説明する。図14(a)に示すように、16個のセクタはECCブロックを構成する。プログラムストリームの形式をとるビデオオブジェクト(PS_VOB)を構成するパック(PS Pack)は、図14(b)が示すように、セクタバウンダリで配置される。パックサイズもセクタサイズも2KBだからである。
【0056】一方、トランスポートストリームの形式をとるビデオオブジェクト(TS1−VOB/TS2−VOB)はカプセル(Capsule)という8KBのサイズを有する単位でECCブロック内に配置される。カプセルは18Bのヘッダ領域を有し、データ領域にはATS情報が付加されたTSパケットが43個配置される。ATS情報(Arrival Time Stamp Information)は、DVDレコーダにより生成し付加される情報であって、当該パケットがDVDレコーダに外部より伝送されてきたタイミングを示す情報である。
【0057】(5.AV情報の管理情報と再生制御の概要)図15、図16は図7が示すところの管理情報(* Manager、*はVR、SR、SELF、ETCなど)と称されるファイルのデータ構造を示す図である、特にVR_Managerについての構造を示している。管理情報ファイルは、各種オブジェクトのディスク上の記録位置等の管理情報を示すオブジェクト情報と、オブジェクトの再生順序等を示す再生制御情報とを有する。
【0058】図15はディスクに記録されるオブジェクトとして、PS−VOB#1〜PS−VOB#nがある場合を示す。図15が示すように、PS−VOB用の情報テーブルが存在し、情報テーブルはオブジェクト毎のVOB情報を有している。VOB情報は、対応するオブジェクトの一般情報と、オブジェクトの属性情報と、オブジェクトの再生時刻をディスク上のアドレスに変換するためのアクセスマップ、当該アクセスマップの管理情報を有している。一般情報は、対応するオブジェクトの識別情報、オブジェクトの記録時刻等を有し、属性情報は、ビデオストリームのコーディングモードをはじめとするビデオストリーム情報(V_ATR)と、オーディオストリームの本数(AST_Ns)と、オーディオストリームのコーディングモードをはじめとするオーディオストリーム情報(A_ATR)とから構成される。
【0059】アクセスマップを必要とする理由は2つある。まず1つは、再生経路情報がオブジェクトのディスク上での記録位置をセクタアドレス等で直接的に参照するのを避け、オブジェクトの再生時刻で間接的に参照できるようにするためである。RAM媒体の場合、オブジェクトの記録位置が編集等で変更される場合がおこりうるが、再生経路情報がセクタアドレス等で直接的にオブジェクトの記録位置を参照している場合、更新すべき再生経路情報が多くなるためである。一方、再生時刻で間接的に参照している場合は、再生経路情報の更新は不要で、アクセスマップの更新のみ行えば良い。
【0060】2つ目の理由は、AVストリームが一般に時間軸とデータ(ビット列)軸の二つの基準を有しており、この二つの基準間には完全な相関性がないためである。例えば、ビデオストリームの国際標準規格であるMPEG−2ビデオの場合、可変ビットレート(画質の複雑さに応じてビットレートを変える方式)を用いることが主流になりつつあり、この場合、先頭からのデータ量と再生時間との間に比例関係がないため、時間軸を基準にしたランダムアクセスができない。この問題を解決するため、オブジェクト情報は、時間軸とデータ(ビット列)軸との間の変換を行うためのアクセスマップを有している。
【0061】図15が示すように再生制御情報は、ユーザ定義再生経路情報テーブル、オリジナル再生経路情報テーブル、タイトルサーチポインタを有する。
【0062】図16が示すように、再生経路には、DVDレコーダがオブジェクト記録時に記録された全てのオブジェクトを示すように自動生成するオリジナル定義再生経路情報と、ユーザが自由に再生シーケンスを定義できるユーザ定義再生経路情報の2種類がある。再生経路はDVDではPGC情報(Program Chain Information)と統一的呼称され、また、ユーザ定義再生経路情報はU−PGC情報、オリジナル再生経路情報はO−PGC情報と呼称される。O−PGC情報、U−PGC情報はそれぞれ、オブジェクトの再生区間であるセルを示す情報であるセル情報をテーブル形式で列挙する情報である。O−PGC情報で示されるオブジェクトの再生区間はオリジナルセル(O−CELL)と呼称され、U−PGC情報で示されるオブジェクトの再生区間はユーザセル(U−CELL)と呼称される。
【0063】セルは、オブジェクトの再生開始時刻と再生終了時刻でオブジェクトの再生区間を示し、再生開始時刻と再生終了時刻は前述したアクセスマップにより、オブジェクトの実際のディスク上の記録位置情報に変換される。
【0064】図16(b)が示すように、PGC情報により示されるセル群は、テーブルのエントリー順序に従って順次再生される一連の再生シーケンスを構成する。
【0065】図17は、オブジェクト、セル、PGC、アクセスマップの関係を具体的に説明する図である。図1717に示すように、オリジナルPGC情報50は少なくとも1つのセル情報60、61、62、63を含む。セル情報60…は再生するオブジェクトを指定し、かつ、そのオブジェクトタイプ、オブジェクトの再生区間を指定する。PGC情報50におけるセル情報の記録順序は、各セルが指定するオブジェクトが再生されるときの再生順序を示す。
【0066】一のセル情報60には、それが指定するオブジェクトの種類を示すタイプ情報(Type)60aと、オブジェクトの識別情報であるオブジェクトID(Object ID)60bと、時間軸上でのオブジェクト内の開始時刻情報(Start_PTM)60cと、時間軸上でのオブジェクト内の終了時刻情報(End_PTM)60dとが含まれる。
【0067】データ再生時は、PCG情報50内のセル情報60が順次読み出され、各セルにより指定されるオブジェクトが、セルにより指定される再生区間分再生されることになる。アクセスマップ80cは、セル情報が示す開始時刻情報と終了時刻情報とをオブジェクトのディスク上での位置情報に変換する。
【0068】上述したマップ情報であるが、オブジェクトの記録時に共に生成され記録される。マップを生成するためには、オブジェクトのデータ内のピクチャ構造を解析する必要がある。具体的には図9で示すIピクチャの位置の検出と、図10、図11に示す当該Iピクチャの再生時刻であるPTS等のタイムスタンプ情報の検出が必要になる。以上のような構造の管理情報ファイルが、VRだけでなく、SR、SELF、ETCなどのフォーマットについても構成される。
【0069】ここで、PS−VOBとTS1−VOBとTS2−VOBのマップ情報を生成する際に生じる問題について以下説明する。PS−VOB、TS−VOB1は、図1で説明したように主として、受信されたアナログ放送をDVDレコーダがMPEGストリームにエンコードすることにより生成される。このため、Iピクチャや各種タイムスタンプの情報は自らが生成しており、DVDレコーダにとってストリーム内部のデータ構造は明確であり、マップ情報の生成に何の問題も生じない。
【0070】次に、TS2−VOBであるが、図1で説明したように主として、受信されたデジタル放送をDVDレコーダがエンコードすることなく直接ディスクに記録する。このため、PS−VOBのようにIピクチャの位置とタイムスタンプ情報を自ら生成するわけではないため、DVDレコーダにとってストリーム内部のデータ構造は明確ではなく、記録するデジタルストリームからこれら情報を検出することが必要になる。このため、DVDレコーダは、レコーダ外部にてエンコードされたストリームを記録しているTS2−VOBのマップ情報については下記のようにIピクチャとタイムスタンプを検出する。
【0071】まず、Iピクチャの検出は、図12に示すTSパケットの適用フィールドのランダムアクセス表示情報を検出することにより行う。また、タイムスタンプの検出については、PESヘッダのPTSを検出することにより行う。タイムスタンプについては、PTSの代わりに、適用フィールドのPCRや、TSパケットがDVDレコーダに伝送されてきた到着タイミングであるATSで代用することもある。いずれにせよ、DVDレコーダはMPEGストリームのビデオ層のデータ構造を解析することなく、その上位層であるシステム層の情報により、Iピクチャの位置を検出する。これは、マップ情報を生成するためにビデオ層の解析まで行うのはシステムの負荷が大きいためである。
【0072】また、システム層の検出が不可能な場合もありうるが、この場合は、マップ情報が生成できないため、有効なマップ情報が無いことを示すことが必要になる。DVDレコーダでは図15(b)に示すマップ管理情報によりこれらが示される。図15(b)に示すようにマップ管理情報は、マップ有効性情報と自己エンコーディングフラグとを有する。自己エンコーディングフラグは、DVDレコーダ自らがエンコードしたオブジェクトであることを示し、内部のピクチャ構造が明確であり、マップ情報のタイムスタンプ情報やIピクチャの位置情報等が正確であることを示している。また、マップ有効性情報は、有効なアクセスマップがあるか無いかを示す。
【0073】なお、システム層の検出が不可能な例としては、適用フィールドが設定されていない場合や、そもそもMPEGトランスポートストリームで無いデジタルストリームの場合が考えうる。デジタル放送が世界各国で各種方式が成立しうるため、DVDレコーダがマップを生成できないオブジェクトを記録するケースも当然予想される。例えば、日本のデジタル放送を想定したDVDレコーダを米国で使用し、米国のデジタル放送を記録した場合、マップを生成できないオブジェクトを記録するケースが出てくる。
【0074】但し、DVDレコーダはマップ情報が生成されないオブジェクトについても、先頭から順次再生することは可能である。この場合、記録されたデジタルストリームをデジタルI/Fを介して、当該ストリームに対応したSTBに出力することでこれを映像再生することができる。
【0075】(6.再生機能の基本動作)次に、図18を用いて上記光ディスクを再生するDVDレコーダプレーヤの再生動作について説明する。図18に示すように、プレーヤは、DVD−RAMディスク100からデータを読み出す光ピックアップ201と、読み出したデータのエラー訂正等を行うECC処理部202と、エラー訂正後の読み出しデータを一時的に格納するトラックバッファ203と、動画オブジェクト(PS_VOB)等のプログラムストリームを再生するPSデコーダ205と、デジタル放送オブジェクト(TS1_VOB)のトランスポートストリームを再生するTSデコーダ206と、オーディオ・オブジェクト(AOB)を再生するオーディオデコーダ207と、静止画オブジェクト(POB)をデコードする静止画デコーダ208と、各デコーダ205、206…へのデータ入力を切り替えるスイッチ210と、プレーヤの各部を制御する制御部211とを備える。
【0076】DVD−RAMディスク100上に記録されているデータは、光ピックアップ201から読み出され、ECC処理部202を通してトラックバッファ203に格納される。トラックバッファ203に格納されたデータは、PSデコーダ205、TSデコーダ206、オーディオデコーダ207、静止画デコーダ208の何れかに入力されデコードおよび出力される。
【0077】このとき、制御部211は読み出すべきデータを図16が示す再生経路情報(PGC)が示す再生シーケンスに基づき決定する。即ち、図16の例であれば、制御部211は、VOB#1の部分区間(CELL#1)を最初に再生し、次いで、VOB#3の部分区間(CELL#2)を再生し、最後にVOB#2(CELL#3)と再生する制御を行う。
【0078】また、制御部211は、図17が示す再生経路情報(PGC)のセル情報により、再生するセルのタイプ、対応するオブジェクト、オブジェクトの再生開始時刻、再生終了時刻を獲得することができる。制御部211は、セル情報により特定されるオブジェクトの区間のデータを、適合するデコーダに入力する。
【0079】この際、制御部211は、セル情報のObject IDにより再生対象のオブジェクトを特定する。さらに、制御部211は、特定したオブジェクトの再生区間であるセルの特定を、セル情報のStartPTMとEndPTMを、対応するVOB情報のアクセスマップでディスク情報のアドレスに変換することにより行う。
【0080】また、本実施形態のプレーヤは、さらに、AVストリームを外部に供給するためのデジタルインターフェース204を有している。これにより、AVストリームをIEEE1394やIEC958などの通信手段を介して外部に供給することも可能である。これは、特に、自らがエンコードしていないTS2−VOBについては、プレーヤ内部に該当するデコーダが存在しないケースもありうるため、デコードすることなく、直接、デジタルインターフェース204を通じて外部のSTBに出力し、そのSTBで再生させることができる。
【0081】外部にデジタルデータを直接出力する際には、制御部211は図15(b)のマップ管理情報に基づき、ランダムアクセス再生が可能か否かを判断する。アクセスポイント情報フラグが有効であれば、アクセスマップはIピクチャの位置情報を有する。このため、制御部211は外部機器から早送り再生等の要求があればこれに応じて、Iピクチャを含むデジタルデータをデジタルI/Fを介して外部機器に出力することができる。また、タイムアクセス情報フラグが有効であれば、タイムアクセスが可能である。このため制御部211は、外部の機器からのタイムアクセスの要求に応じて、指定された再生時刻に相当するピクチャデータを含むデジタルデータをデジタルI/Fを介して外部機器に出力することができる。
【0082】(7.記録機能の基本動作)次に、図19を用いて上記光ディスクに対して記録、再生を行う本発明に係るDVDレコーダの構成および動作について説明する。図19に示すように、DVDレコーダは、ユーザへの表示およびユーザからの要求を受け付けるユーザI/F部222、DVDレコーダ全体の管理および制御を司るシステム制御部212、VHFおよびUHFを受信するアナログ放送チューナ213、アナログ信号をデジタル信号に変換しMPEGプログラムストリームにエンコードするエンコーダ214、デジタル衛星放送を受信するデジタル放送チューナ215、デジタル衛星で送られるMPEGトランスポートストリームを解析する解析部216、テレビおよびスピーカなどの表示部217、AVストリームをデコードするデコーダ218とを備える。
【0083】デコーダ218は、図18に示した第1及び第2のデコーダ等からなる。さらに、DVDレコーダは、デジタルI/F部219と、書き込みデータを一時的に格納するトラックバッファ220と、DVD−RAM100にデータを書き込むドライブ221とを備える。デジタルI/F部219はIEEE1394等の通信手段により外部機器にデータを出力するインタフェースである。
【0084】このように構成されるDVDレコーダにおいては、ユーザI/F部222が最初にユーザからの要求を受ける。ユーザI/F部222はユーザからの要求をシステム制御部212に伝え、システム制御部212はユーザからの要求を解釈すると共に各モジュールへの処理要求を行う。
【0085】録画には、入力されるデジタルデータを自らエンコードするセルフエンコーディングと、エンコード済みのデジタルデータをエンコードすることなくディスクに記録するアウトサイドエンコーディングがある。
【0086】(7.1 セルフエンコーディングによる録画動作)最初にセルフエンコーディングの録画について、アナログ放送をPS−VOBにエンコードして記録する動作を以下、具体的に説明する。システム制御部212はアナログ放送チューナ213への受信とエンコーダ部214へのエンコードを要求する。エンコーダ部214はアナログ放送チューナ213から送られるAVデータをビデオエンコード、オーディオエンコードおよびシステムエンコードしてトラックバッファ220に送出する。
【0087】エンコーダ部214は、エンコード開始直後に、エンコードしているMPEGプログラムストリームの先頭データが有するタイムスタンプ情報を再生開始時刻(PS_VOB_V_S_PTM)としてシステム制御部212に送り、続いてアクセスマップを作成するために必要な情報をエンコード処理と平行してシステム制御部212に送る。この値は、後に生成される図17に示すセル情報のStart_PTMに設定される。タイムスタンプ情報は、一般的にはPTSになるがSCRで代用しても良い。
【0088】次にシステム制御部212は、ドライブ221に対して記録要求を出し、ドライブ221はトラックバッファ220に蓄積されているデータを取り出しDVD−RAMディスク100に記録する。この際、前述した連続領域(CDA)をディスク上の記録可能領域から検索し、検索した連続領域にデータを記録していく。
【0089】録画終了はユーザからのストップ要求によって指示される。ユーザからの録画停止要求は、ユーザI/F部222を通してシステム制御部212に伝えられ、システム制御部212はアナログ放送チューナ213とエンコーダ部214に対して停止要求を出す。
【0090】エンコーダ214はシステム制御部212からのエンコード停止要求を受けエンコード処理を止め、最後にエンコードを行ったMPEGプログラムストリームの終端データが有するタイムスタンプ情報を再生終了時刻(PS_VOB_V_E_PTM)として、システム制御部212に送る。この値は、図17に示すセル情報のEnd_PTMに設定される。タイムスタンプ情報は通常PTSが設定されるが、SCRで代用しても良い。
【0091】システム制御部212は、エンコード処理終了後、エンコーダ214から受け取った情報に基づき、図15に示すPS−VOB用のVOB情報(PS−VOBI)と再生制御情報を生成する。ここで、生成されるVOB情報はオブジェクト種類に適合したアクセスマップとマップ管理情報とを含む。システム制御部212は、マップ管理情報のマップ有効性情報を有効に設定すると共に、自己エンコーディングフラグをONにする。
【0092】また、再生制御情報は、記録されるオブジェクトを再生対象の1つとする図16に示すオリジナル再生経路(O−PGC情報)が生成される。生成されたO−PGC情報はオリジナル再生経路テーブルに追記される。オリジナル再生経路(O−PGC情報)はセル情報を有する。セル情報のタイプ情報には「PS−VOB」が設定される。
【0093】最後にシステム制御部212は、ドライブ221に対してトラックバッファ220に蓄積されているデータの記録終了と、PS−VOB用のVOB情報(PS_VOBI)および再生制御情報の記録を要求し、ドライブ221がトラックバッファ220の残りデータと、これらの情報をDVD−RAMディスク100に記録し、DISC_Managerファイルに作成したVOB情報を追加して録画処理を終了する。
【0094】なお、アナログ放送をTS1−VOBにエンコードしてももちろん良い。この場合、エンコーダ214はアナログ信号をデジタル信号に変換しMPEGトランスポートストリームにエンコードするエンコーダである必要があり、セル情報内のタイプ情報は「TS1−VOB」に設定される。この場合のStart_PTMおよびEnd_PTMは、PTSでも良いしPCRを用いても良い。
【0095】(7.2 アウトサイドエンコーディングによる録画動作)次にアウトサイドエンコーディングによる録画について、デジタル放送を録画する動作を通して以下、具体的に説明する。この場合、記録されるオブジェクトの種類はTS2−VOBになる。ユーザによるデジタル放送録画要求は、ユーザI/F部222を通してシステム制御部212に伝えられる。システム制御部212はデジタル放送チューナ215への受信と解析部216へのデータ解析を要求する。
【0096】デジタル放送チューナ215から送られるMPEGトランスポートストリームは解析部216を通してトラックバッファ220へ転送される。解析部216は、最初にデジタル放送として受信されたエンコード済みのMPEGトランスポートストリーム(TS2−VOB)のVOB情報(TS2_VOBI)の生成に必要な情報として、トランスポートストリームの先頭データが有するタイムスタンプ情報を開始時刻情報(TS2_VOB_V_S_PTM)として抽出し、システム制御部212に送る。開始時刻情報は、後に生成される図17R>7に示すセル情報のStart_PTMに設定される。このタイムスタンプ情報は、PCR又はPTSになる。また、オブジェクトがDVDレコーダに伝送されてくるタイミングであるATSで代用しても良い。
【0097】解析部216は、さらに、MPEGトランスポートストリームのシステム層を解析し、アクセスマップ作成に必要な情報を検出する。Iピクチャのオブジェクト内での位置については、前述したようにTSパケットヘッダ中の適用フィールド(adaptation field)内のランダムアクセスインジケータ(randam_access_indicator)をもとに検出する。
【0098】次にシステム制御部212は、ドライブ221に対して記録要求を出力し、ドライブ221はトラックバッファ220に蓄積されているデータを取り出しDVD−RAMディスク100に記録する。この時、システム制御部212はファイルシステムのアロケーション情報からディスク上のどこに記録するかをあわせてドライブ221に指示する。この際、前述した連続領域(CDA)をディスク上の記録可能領域から検索し、検索した連続領域にデータを記録していく。
【0099】録画終了はユーザからのストップ要求によって指示される。ユーザからの録画停止要求は、ユーザI/F部222を通してシステム制御部212に伝えられ、システム制御部212はディジタルチューナ215と解析部216に停止要求を出す。
【0100】解析部216はシステム制御部212からの解析停止要求を受け解析処理を止め、最後に解析を行ったMPEGトランスポートストリームの終了区間のデータが有するタイムスタンプ情報を表示終了時刻(TS2_VOB_V_E_PTM)としてシステム制御部212に送る。この値は、図17に示すセル情報のEnd_PTMに設定される。このタイムスタンプ情報は、PCR又はPTSになる。また、オブジェクトがDVDレコーダに伝送されてくるタイミングであるATSで代用しても良い。
【0101】システム制御部212は、デジタル放送の受信処理終了後、解析部216から受け取った情報に基づき、図15に示すTS2−VOB用のVOB情報(TS2_VOBI)と再生制御情報を生成する。
【0102】ここで、生成されるVOB情報はオブジェクト種類に適合したアクセスマップとマップ管理情報とを含む。システム制御部212は、Iピクチャのオブジェクト内での位置等を検出でき有効なアクセスマップを生成した場合にはマップ管理情報のマップ有効性情報を有効に設定する。また自己エンコーディングフラグはOFF設定をする。有効なアクセスマップを生成できなかった場合にはマップ有効性情報を無効に設定する。なお、有効なアクセスマップを生成できないケースとしては、対応していないデジタル放送を受信した場合や、適用フィールドにランダムアクセス情報が無い場合等が考えられる。また、デジタルI/Fから直接入力された場合は、MPEGトランスポートストリームでないケースもありえ、この場合も当然、マップ有効性情報は無効に設定される。
【0103】また、再生制御情報は、記録されるオブジェクトを再生対象の1つとする図16に示すオリジナル再生経路(O−PGC情報)が生成される。生成されたO−PGC情報はオリジナル再生経路テーブルに追記される。オリジナル再生経路(O−PGC情報)はセル情報を有する。セル情報のタイプ情報には「TS2−VOB」が設定される。
【0104】最後にシステム制御部212は、ドライブ221に対してトラックバッファ220に蓄積されているデータの記録終了と、TS2−VOB用のVOB情報(TS2_VOBI)および再生制御情報の記録を要求し、ドライブ221がトラックバッファ220の残りデータと、これらの情報をDVD−RAMディスク100に記録し、DISC_Managerファイルに作成したVOB情報を追加して録画処理を終了する。
【0105】以上、ユーザからの録画開始および終了要求をもとに動作を説明したが、例えば、VTRで使用されているタイマー録画の場合では、ユーザの代わりにシステム制御部が自動的に録画開始および終了要求を発行するだけであって、本質的にDVDレコーダの動作が異なるものではない。
【0106】(8.発明の概要)本発明は、一枚のディスクに対して異なるフォーマットのデータを混在して記録することを可能とするものである。従来のDVD−RAM等におけるデータ構造では、一枚のディスクに対して単一のフォーマットのデータしか記録することが出来ず、異なるフォーマットのデータを記録する場合には別々のディスクに記録する必要があった。しかし本発明では、異なるフォーマットのデータを混在して記録することが可能であるため、ディスクを有効利用することが出来、特にHDDなどの大容量記録媒体において非常に有効である。
【0107】(9.詳細な実施形態)次に、本発明の実施形態を説明する。再生、記録機器における基本的な再生、記録動作は、それぞれ(6.再生機能の基本動作)、(7.記録機能の基本動作)で示した通りである。
【0108】ここで、DISC_Managerファイル構造を図20に示す。図20において、DISC一般情報にはその他の各情報に対するサーチポインタ情報などが記録されており、その他の情報として、VR情報、SR情報、VIDEO情報、SELF情報、ETC情報などがある。これらの情報は、各ディレクトリにおける各フォーマットの管理情報ファイルへのサーチポインタや、再生経路情報へのサーチポインタなどが記録されている。
【0109】まず、記録動作についてのフローチャートを図21に示す。図21において、記録動作が開始されたときに、記録用のディレクトリを作成する(ステップ501)。次にそのディレクトリ内において、記録用オブジェクトが順次生成、記録され(ステップ502)、続いて記録されたオブジェクト情報の生成、記録が行われ(ステップ503)、さらに再生経路情報の生成、記録が行われる(ステップ504)。その後、ルートディレクトリにおいて、DISC_Managerファイルに、記録されたオブジェクトに対するManagerサーチポインタ、O_PGCサーチポインタ、U_PGCサーチポインタなどを記録し(ステップ505)、記録動作が終了される(ステップ506)。
【0110】次に、再生動作についてのフローチャートを図22に示す。図22において最初に、再生されるディスクのDISC_Managerファイルを読み込み、再生対象のデータを選択する(ステップ601)。選択されたデータに対して、DISC_Manager内のサーチポインタ情報を参照することにより、再生経路情報を読み込み(ステップ602)、再生されるべき再生経路を選択する(ステップ603)。次に、再生されるオブジェクトに着いてのオブジェクト情報読み込み(ステップ605)、再生されるオブジェクトの読み込み(ステップ606)、再生(ステップ607)というループを、再生終了まで繰り返すことにより、再生が行われる。
【0111】なお、本実施の形態では主にDVD−RAMディスクについての説明を行ったが、他の光ディスク、ハードディスクドライブ、磁気記録装置、半導体メモリに対して実施してもよい。
【0112】なお、本実施の形態では、VR、DVD−VIDEO、SR、SELF、ETCというフォーマットについて説明を行ったが、その他のフォーマット(DVD−AUDIOなど)を記録してもよい。
【0113】なお、本発明におけるファイル構造は、本実施の形態で説明したもの以外でも、同様の効果を得られる場合、異なるファイル構造をとってもよい。
【0114】
【発明の効果】本発明により、異なるフォーマットのデータを一枚のディスクに混在して記録することが可能となり、ディスクを有効利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DVDレコーダ装置の外観と関連機器とのインタフェースの一例を説明する図
【図2】DVDレコーダのドライブ装置のブロック図
【図3】HDD、半導体メモリを持つDVDレコーダのドライブ装置のブロック図
【図4】ディスク上の連続領域及びトラックバッファ内データ蓄積量を説明する図
【図5】ディスクの外観と物理構造を説明する図
【図6】ディスクの論理的なデータ空間を説明する図
【図7】ディスクのディレクトリとファイル構造を説明する図
【図8】ビデオオブジェクトの構成を示す図
【図9】MPEGシステムストリームを説明する図
【図10】MPEG−TSストリームを説明する図
【図11】MPEG−PSストリームを説明する図
【図12】TSパケットを説明する図
【図13】PATテーブルを説明する図
【図14】ビデオオブジェクトのディスク上への配置を説明する図
【図15】ビデオ管理情報のデータ構造を説明する図
【図16】ビデオ管理情報のデータ構造を説明する図
【図17】ビデオ管理情報のPGC情報とオブジェクト情報とオブジェクトとの関係を説明する図
【図18】再生装置の機能の構成を示すブロック図
【図19】記録装置の機能の構成を示すブロック図
【図20】DISC_Managerファイル構造図
【図21】記録装置の動作フローチャート
【図22】再生装置の動作フローチャート
【符号の説明】
100 DVD−RAMディスク
101,201 光ピックアップ
102,202 ECC処理部
103,203,220 トラックバッファ
104,210 スイッチ
105,214 エンコーダ
106,205,206,218 デコーダ
207 オーディオデコーダ
208 静止画デコーダ
211 制御部
212 システム制御部
213 アナログ放送チューナ
215 デジタル放送チューナ
216 解析部
217 表示部
219 デジタルI/F部
221 ドライブ
222 ユーザI/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ビデオオブジェクトと前記ビデオオブジェクトの再生を管理する情報をビデオ管理情報として記録する情報記録媒体であって、異なるフォーマットのデータを混在して記録することが可能であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】 前記異なるフォーマットとは、DVD VIDEO規格フォーマットと、DVD Video Recording規格フォーマットと、DVD Stream Recording規格フォーマットと、DVD AUDIO規格フォーマット、及びその他の映像情報記録フォーマットと、その他の音声情報記録フォーマットと、その他の映像音声情報記録フォーマットと、その他のストリーム記録フォーマットとであることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】 請求項1に記載の情報記録媒体に情報を記録する記録装置であって、前記ビデオオブジェクトを生成する手段と、前記ビデオオブジェクト管理情報を生成する手段と、生成された前記ビデオオブジェクト管理情報を記録する手段と、異なるフォーマットのデータを混在して記録する手段とを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項4】 前記異なるフォーマットとは、DVD VIDEO規格フォーマットと、DVD Video Recording規格フォーマットと、DVD Stream Recording規格フォーマットと、DVD AUDIO規格フォーマット、及びその他の映像情報記録フォーマットと、その他の音声情報記録フォーマットと、その他の映像音声情報記録フォーマットと、その他のストリーム記録フォーマットとであることを特徴とする請求項3記載の記録装置。
【請求項5】 請求項1に記載の情報記録媒体を再生する再生装置であって、前記ビデオオブジェクト管理情報を読み出す読み出し手段と、読み出された前記ビデオオブジェクト管理情報を基に前記ビデオオブジェクトを読み出す読み出し手段と、読み出された前記ビデオオブジェクト管理情報を基に、読み出された前記ビデオオブジェクトを再生する手段と、混在する異なるフォーマットのデータを読み出す手段と、前記混在する異なるフォーマットのデータを再生する手段とを備えることを特徴とする再生装置。
【請求項6】 前記異なるフォーマットとは、DVD VIDEO規格フォーマットと、DVD Video Recording規格フォーマットと、DVD Stream Recording規格フォーマットと、DVD AUDIO規格フォーマット、及びその他の映像情報記録フォーマットと、その他の音声情報記録フォーマットと、その他の映像音声情報記録フォーマットと、その他のストリーム記録フォーマットとであることを特徴とする請求項5記載の再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図21】
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【図22】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2002−358728(P2002−358728A)
【公開日】平成14年12月13日(2002.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−160285(P2001−160285)
【出願日】平成13年5月29日(2001.5.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】