説明

情報記録媒体、情報記録装置および情報記録方法

【課題】着色繰り返し特性に優れ,光透過率が高い情報記録媒体およびそれを用いた記録再生方法,記録再生装置が得る。
【解決手段】絶縁性基板上の,互いに絶縁された第1、第2の電極と、前記第1、第2の電極間に電圧を印加するための電源と、前記第1、第2の電極と導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む導電層を有する情報記録媒体。
【効果】着色繰り返し特性に優れ,光透過率が高い情報記録媒体およびそれを用いた記録再生方法,記録再生装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報記録媒体,情報記録装置,及び光を用いて情報を記録する情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願明細書中では,たとえば光ディスクのように,情報を記録・再生するための媒体を,情報記録媒体と称する。
従来から、DVD−RAMのように、記録膜に相変化膜を用いるものや、CD−RやDVD−Rのように、有機材料を情報層とした光ディスクが存在している。有機材料を情報層とした光ディスクは,記録光源の波長に吸収を有する色素を含む情報層を有し,それに接する基板表面をレーザ照射で変質させて記録を行う。
【0003】
従来、例えば,特許文献1(特開昭63−122032号)に記載されている通り、記録膜に電界を印加した状態でレーザ光を照射することによって,相変化記録膜に情報の記録を行う,電界効果型光ディスクが知られている。これは,上下の電極間にGeSbTe系などの相変化情報層をサンドイッチにした素子構造で使用される。記録膜に電界がかかることにより,レーザ光照射だけよりも相変化(結晶化)が促進されることを狙ったものである。
【0004】
相変化膜などを用いた光ディスクの記録容量を大きくする方法として,多層化が知られている。特許文献2(特開2004−30878号:対応US2004/0001418A1)には,相変化材料からなる記録層を2層積層する,2層構成型光記録媒体が記載されている。
発明者らは,エレクトロクロミズムの原理を用いて,積層した記録層を可逆的に着色させることにより,記録層をさらに数多く積層できる光記録媒体を,非特許文献1(Proceedings SPIE 5069巻 p.300)に提案している。
【0005】
また、エレクトロクロミズムの原理を用いた表示デバイスに関する発明が特許文献3(特開2002−82360号)に記載されている。
また、エレクトロクロミズムにより反射層を着色することで情報を記録する光ディスクに関する発明が特許文献4(特開平11−185288号)に記載されている。
また、エレクトロクロミズムにより着色される記録層の上下に電圧を印加し、情報記録を行う情報記録媒体に関する発明が特許文献5(特開2003−346378号:対応US2003/218941A1)に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−122032号
【0007】
【特許文献2】特開2004−30878号
【特許文献3】特開2002−82360号
【特許文献4】特開平11−185288号
【特許文献5】特開2003−346378号
【非特許文献1】Proceedings SPIE 5069巻 p.300
【非特許文献2】http://www.sanyovac.co.jp/Englishweb/products/EITOonglass.html
【非特許文献3】J. C. StreetらによるPhysical Review B,第28巻,No. 4,p. 2140-2145
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2004−30878号では,記録層に,定常的に光吸収を持つ相変化膜を用いており,記録層を3層以上に増やす場合には,記録レーザ光が奥の記録層に届かず,記録再生が困難になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために行った検討の結果を以下に示す。
(1)非特許文献1(Proceedings SPIE 5069巻 p.300)の方法では,エレクトロクロミック性の記録層を挟み,記録層を着色させるために電圧を印加する,透明電極がわずかながら吸収を有するので,層数を多くすると,奥の層に届く光量が減衰する。透明電極層には,光の利用効率をできる限り高くするために,光透過率が100%に近いことと,記録層を高速かつ均一に着色させるために,50Ω/sq以下の低抵抗値が要求される。しかし,実際には透明電極といっても可視域に吸収があることが知られ,高透過率と低抵抗は両立しないことが知られている。これは以下に述べるように,透明電極材料の導電性発現の原理によって説明できる。
ITOのような透明電極に用いられる化合物の導電性は,電気伝導率の定義式(式1)によって与えられる。ここでは電子伝導を考察する。
【0010】
σ = neμ (式1)
σは電気伝導率,nはキャリヤ濃度,eは電子の電気量,μはキャリヤの移動度である。電子伝導を考察するので,ここでキャリヤは自由電子である。
ここで透明電極の光吸収に関与するのは,キャリヤ濃度nである。酸化インジウム(In23),酸化スズ(SnO)などの電気抵抗を低減させるには,それぞれにスズ(Sn),アルミニウム(Al)などをドーパントとして添加し,酸化物の結晶格子中に欠陥をつくることによってキャリヤ密度を高めることが行われる。しかし,透明電極中におけるキャリヤである自由電子の増加はプラズマ振動数より低い振動数の光を吸収するので,電極の透明性とは明らかにトレードオフの関係がある。プラズマ振動数ωは,
ω = ne/εε (式2)
ここで,nはキャリヤ濃度,εは光学的誘電率,mは光学的有効質量である。nが大きくなるに従って,ωが大きくなり,近赤外から可視域の光が吸収されるようになる。
【0011】
本質的に電気伝導性と透明性がトレードオフの関係にあることに加えて,キャリヤ濃度の増大には限界があり,たとえばシート抵抗値で30Ω/sq以下にまで透明電極の抵抗を下げるためには,電極層の厚さを大きくする必要があり,さらに透明性を犠牲にしなければならないという課題がある。非特許文献2(http://www.sanyovac.co.jp/Englishweb/products/EITOonglass.html)には,ITO膜のシート抵抗値・透過率・膜厚の関係が示されている。例えば,シート抵抗値が150Ω/sqのITO膜は厚さ20〜30nmで波長550nmにおける光透過率は88%であるが,2.5Ω/sqのITO膜は厚さ580〜620nmで波長550nmにおける光透過率は75%であることが報告されている。
【0012】
これに対して、本発明の情報記録媒体は,図1の断面構造に示すようなエレクトロクロミック素子を基本単位とする。基本単位は,絶縁性基板1上に形成された,第1の電極2および第2の電極3の両方に接するように形成されたエレクトロクロミック材料を含む導電層7から構成される。つまり本発明の情報記録媒体は、絶縁部材と、前記絶縁部材の一の平面内に形成された第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極と導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む導電層を有し、前記第1、第2の電極間は絶縁されていることを特徴とする。これにより本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子は,従来の,透明電極でエレクトロクロミック層と電解質層を挟む構造のエレクトロクロミック素子と比較して,単位エレクトロクロミック構造あたり1層の透明電極層が少ない。よって本発明によれば、エレクトロクロミック素子を多層化した場合においても,光の利用効率が高いという利点がある。
【0013】
(2)また,発明者らの実験によるエレクトロクロミック素子積層プロセスの検討で,固体高分子電解質を用いた電解質層,および導電性高分子エレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック層の上に直接ITOなどの透明電極層をRFマグネトロンスパッタリングで形成すると,電解質層およびエレクトロクロミック層にスパッタ時のダメージによる劣化で,エレクトロクロミック素子の駆動電圧上昇と着色繰り返し特性の悪化が起こることを見出した。
【0014】
一方、本発明による積層法によれば,エレクトロクロミック層や電解質層に直接ITO電極を形成する必要がないので,スパッタ時のダメージによる素子の劣化を回避できる。以下具体的に説明する。エレクトロクロミック層を多層化する場合には,図11に示すように,透明電極,エレクトロクロミック層,および電解質層を順次積み重ねる方法で作ることが望ましい。例えば,絶縁性のポリカーボネート基板311上に,互いに電気的に分離されたITO電極312およびITO電極313を形成する。ポリカーボネート基板311,ITO電極312およびITO電極313に接するように,エレクトロクロミック層314を塗布で形成する。このエレクトロクロミック層の上に,電解質層315を塗布などで形成する。ここまでで,エレクトロクロミック素子の1単位ができたことになる。エレクトロクロミック素子を積層して多層化するには,電解質層315の上に絶縁層316を設ける。ここで,絶縁層に用いる材料としては,ポリイミド,ポリビニルアルコール,ポリカーボネート,ポリエチレン,SiOなどがある。絶縁層316の上に,同様にエレクトロクロミック層319,電解質層320,を順次形成すると,エレクトロクロミック素子の2単位目ができる。以後,さらにエレクトロクロミック素子の積層数を増やすには,電解質層320の上に,絶縁層,ITO電極,エレクトロクロミック層,電解質層,と重ねればよい。また,エレクトロクロミック層と電解質層の積層順は逆であっても動作する素子となるので,積層順を任意に選択することができる。この積層法によれば,エレクトロクロミック層や電解質層に直接ITO電極を形成する必要がないので,スパッタ時のダメージによる素子の劣化を回避できる。
【0015】
本発明の具体的構成を以下に述べる。上述した通り、本発明の情報記録媒体は,図1の断面構造に示すようなエレクトロクロミック素子を基本単位とし、基本単位は絶縁性基板1上に形成された,第1の電極2および第2の電極3の両方に接するように形成されたエレクトロクロミック材料を含む導電層7から構成される。つまり本発明の情報記録媒体は、絶縁部材と、前記絶縁部材の一の平面内に形成された第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極と導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む導電層を有し、前記第1、第2の電極間は絶縁されていることを特徴とする。さらに,導電層7は,第1の電極2および第2の電極3の配置に対して平行な層の方向に対して,エレクトロクロミック層および電解質層の2層からなる構造を有する。この2層構造に関しては,2つの互いに異なる構造が可能である。具体的には,第1の構造とは,図2の断面構造に示すように,第1の電極52および第2の電極53の両方に接するように,エレクトロクロミック層54が形成されている。
【0016】
さらに,絶縁性基板1,第1の電極2および第2の電極3には接しないようにして,エレクトロクロミック層4上に電解質層55が形成されている。第1の電極52と第2の電極53の間は,電源56から配線され,電圧供給が可能になっている。導電層57の2層構造に関しては,積層順が逆である,図3の構造も可能である。ここで,図2の構造を第1の構造,図3の構造を第2の構造とそれぞれ称する。図3に示す,第2の構造の素子では,絶縁性基板101上に形成された,第1の電極102および第2の電極103の両方に接するように,電解質層104が形成されている。さらに,第1の電極102および第2の電極103には接しないようにして,電解質層104上にエレクトロクロミック層105が形成されている。第1の電極102と第2の電極103の間は,電源106から配線され,電圧供給が可能になっている。
【0017】
図2の断面構造に示した素子を,電解質層55の上方から見ると,図4のような構造になっている。絶縁性基板11上に第1の電極12と第2の電極13があり,その上に,エレクトロクロミック層,電解質層14が積層されている。ここでは,エレクトロクロミック層は電解質層14の下部に存在する。第1の電極12と第2の電極13の間は,電源15から配線されている。
ここで,絶縁性基板には,光ディスクに一般的に用いる,ポリカーボネートの他,ポリオレフィン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタラート(PET),ポリオレフィン,アクリル樹脂などの高分子材料,ガラス,石英,サファイアなどの無機材料,が用いられる。
【0018】
第1の電極と第2の電極には,ITO(indium tin oxide),酸化インジウム (In2O3),フッ素ドープ酸化インジウム(fluorine-doped indium oxide, FTO),酸化スズ (SnO2),IZO (indium zinc oxide)などの金属酸化物,アルミニウム,金,銀,銅,パラジウム,クロム,プラチナ,ロジウムなどの金属が使用される。これらのうち,ITOのような金属酸化物系化合物は光透過率が高いので,透明な絶縁性基板を用いれば,素子全体に透明性を持たせることができる。また,アルミニウム,金,クロムなどの金属は可視光反射率が高く,反射型のエレクトロクロミック素子を作製することが可能となる。第1の電極と第2の電極は,互いに電気的に分離されており,1μmから1cmの距離を有する。
エレクトロクロミック層には,導電性高分子エレクトロクロミック材料,遷移金属酸化物エレクトロクロミック材料,有機低分子エレクトロクロミック材料の中から少なくとも1種類の選ばれた材料が用いられる。エレクトロクロミック層は,厚さ10nmから10μmの範囲で用いる。
【0019】
ここで,導電性高分子エレクトロクロミック材料とは,半導体的な導電性を有する高分子であり,かつ,電圧の印加により可逆的に色(吸収スペクトル)が変化する材料である。導電性高分子エレクトロクロミック材料としては,共役二重結合または三重結合でつながった共役系高分子であるポリアセチレン,ポリアニリン,ポリピロール,ポリチオフェン,ポリアセチレン,ポリフェニレンビニレン,およびそれらの誘導体が挙げられる。これらの導電性高分子エレクトロクロミック材料のエレクトロクロミズムは以下のような原理による。ここで,ポリチオフェンを例として説明する。図5はポリチオフェンの基底状態における電子共鳴構造を表したものであり,アロマティック型構造21とキノイド型構造22の2つの構造が可能である。アロマティック型構造21とキノイド型構造22では,アロマティック型構造21の方がエネルギーが低く,両者はエネルギー的に等価でないので,ポリチオフェンの基底状態は縮退していない。そのような,ポリチオフェンにおけるπ電子の共鳴は可視光の波長に相当するため,互いに縮退していない構造は色の違いとして観測される。
【0020】
ポリチオフェン以外のポリアニリン,ポリピロール,ポリチオフェン,ポリフェニレンビニレンなども,同様に基底状態が縮退していない,非縮退系導電性高分子である。非縮退系導電性高分子のエレクトロクロミズムは,以下のようなポーラロン,バイポーラロンによって説明されることが,非特許文献3(J. C. StreetらによるPhysical Review B,第28巻,No. 4,p. 2140-2145)に記されている。図6は,ポリチオフェンのドーピングに伴う分子構造の変化を表したものである。ポリチオフェンの中性状態23にアクセプタをドープすると,まず1電子酸化24がおこり,1電子酸化状態25となる。ここで,ドーピングに用いるアクセプタとしては,Br2,I2,Cl2などのハロゲン類,BF3,PF5,AsF5,SbF5,SO3,BF4,PF6,AsF6,SbF6などのルイス酸,HNO3,HCl,H2SO4,HClO4,HF,CF3SO3Hなどのプロトン酸,FeCl3,MoCl3,WCl5などの遷移金属ハロゲン化物,テトラシアノエチレン(TCNE),7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などの有機物質が挙げられる。1電子酸化状態25は,緩和過程26を経て正に荷電したポーラロン状態27となる。ポーラロンとは,理化学辞典第5版(1998年,岩波書店)によれば,結晶中の伝導電子がそのまわりの結晶格子の変形を伴って運動している状態をいう。
【0021】
ここでのポーラロン状態では,“結晶”を“ポリチオフェン分子の中性状態”と置き換え,“結晶格子の変形”を,“1電子酸化によるポリチオフェン分子の部分的なキノイド構造の出現”と考える。ポーラロン状態27のポリチオフェンにさらにアクセプタをドープすると,さらに酸化が進み,正の,バイポーラロン状態28となる。一方,ドナードーピングによっても,還元反応29により,負に荷電したポーラロン,バイポーラロンが生成する。ここで,ドーピングに用いるドナーとしては,Li,Na,K,Csのようなアルカリ金属,テトラエチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウムなどの4級アンモニウムイオンが挙げられる。ポーラロンとバイポーラロンはともに,高分子鎖の上を移動するので,電流に寄与する。上記のドーパントのほかに,ポリマードーパントとよばれる高分子電解質を用いることも可能である。たとえば,ポリスチレンスルホン酸,ポリビニルスルホン酸,スルホン化ポリブタジエンがある。これらの高分子電解質の存在下,ポリアニリン,ポリチオフェン,ポリピロールを重合すると,生成する導電性高分子は用いた高分子電解質とのイオン複合体として得られる。ポリマードーパントの使用により,溶剤に不溶な導電性高分子を可溶化できるなど,加工性の改善に有効である。
【0022】
ポーラロンおよびバイポーラロンとエレクトロクロミズムとの関係は,非縮退系導電性高分子の電子状態をバンド構造によって表した,図7によって説明される。ここでは,アクセプタドーピングに伴う電子状態の変化を示す。ドーピングを行なっていない中性状態のバンド構造32では,価電子帯33の底のエネルギーと伝導帯34の頂上のエネルギーとの差として,禁制帯幅35と呼ばれる電子のエネルギー36の差が存在し,許容遷移37として,禁制帯幅35に対応したエネルギーの光が吸収される。吸収される光の波長が可視光の波長域にあるときには,着色して見える。ここで,非縮退系導電性高分子の禁制帯幅35は,一般的に無機半導体と同様に,0.1 eVから3 eVである。アクセプタドーピングの結果生成した正のポーラロン状態におけるバンド構造38では,価電子帯33と伝導帯34との間に,バイポーラロン準位P39およびバイポーラロン準位P-40の2つのポーラロン準位が生成し,ポーラロン状態における許容遷移41が中性状態における許容遷移37と異なることから,光の吸収特性が変化し,可視光域での変化は色の変化として観測される。さらにドーピングが進んだバイポーラロン状態におけるバンド構造42では,価電子帯33と伝導帯34との間に,新たにバイポーラロン準位BP+43およびバイポーラロン準位BP-44の2つのバイポーラロン準位が生成し,バイポーラロン状態における許容遷移45がさらに変化することから,光吸収特性もさらに変化する。非縮退系導電性高分子のドナードーピングによっても,同様に,ポーラロン準位およびバイポーラロン準位の生成に伴うバンド構造の変化に起因する許容遷移挙動の変化がエレクトロクロミズムとして観測される。
【0023】
非縮退系導電性高分子のドーピングに伴うエレクトロクロミック特性をエレクトロクロミック素子に利用するので,ここでは特に,非縮退系導電性高分子を“導電性高分子エレクトロクロミック材料”と称する。
遷移金属酸化物エレクトロクロミック材料としては,酸化タングステン,酸化イリジウム,酸化ニッケル,酸化チタン,五酸化バナジウムなどから選ばれた化合物が用いられる。例として,酸化タングステンのエレクトロクロミズムについて説明する。酸化タングステンは,それ自体は無色あるいは淡黄色であるが,一部を還元することによって,可逆的に濃青色になる。このような酸化タングステンのエレクトロクロミズムは(式3)で表される。
【0024】
WO + xM + xe ⇔ MWO (式3)
ここで,xは0から1の任意の値,Mはプロトンまたはリチウムイオンなどのカチオン,eは電子,をそれぞれ表す。(式3)の酸化還元反応は,電気化学的に起こる。(式3)右辺の,酸化タングステンが一部還元された状態では,5価と6価のタングステン原子が共存した「混合原子価状態」となり,原子価が異なるタングステン原子間の遷移である,「原子価間遷移吸収(intervalence transition absorption)によって発色が起こる。一般に遷移金属酸化物のエレクトロクロミズムは,混合原子価の現象と密接に関連している。
【0025】
電解質層は,エレクトロクロミック層を電圧印加により可逆的に着色させるために必要な,リチウムイオンに代表されるカチオンを含み,かつ,イオン伝導性を有する。相状態の違いによる分類では,液体電解質,ゲル電解質,固体電解質が知られているが,情報記録媒体では,固体電解質を用いる。電解質層は,厚さ50nmから5mmの範囲で用いる。光を用いた情報記録媒体の場合では,厚さ50nmから200nmが特に望ましい。液体電解質およびゲル電解質の場合には素子の電解質層の周囲にスペーサーや隔壁を設ける。電解質の代表的な構成要素は,エレクトロクロミック層に可逆的に出入りするリチウムイオンの供給源である,リチウム塩と,リチウム塩を溶解するマトリクスである,イオン伝導性を有する有機溶剤あるいは高分子材料である。
【0026】
また,電解質のイオン伝導度は,25℃付近で10−5S/cm以下であることが望ましい。マトリクスとなる材料それ自身は光吸収が無いことが望ましい。マトリクスとなる高分子材料としては,ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリビニルブチラール(PVP),ポリエチレンオキサイド(PEO),オリプロピレンオキサイド(PPO),ポリアクリロニトリル(PAN),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリエチレンカーボネート(PEC),ポリプロピレンカーボネート(PPC)が使用できる。これらの高分子は,単独あるいは複数の組み合わせのいずれの形態でも用いることができる。
【0027】
リチウム塩としては,リチウムテトラフルオロボレート(LiBF),過塩素酸リチウム(LiClO),リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF),リチウムヘキサフルオロアルセネート(LiAsF),リチウムヘキサフルオロアンチモネート(LiSbF),リチウムトリフレート(LiCFSO),N−リチオトリフルオロメタンスルホンイミド(Li(CFSON)が用いられる。リチウム塩は,前記高分子材料に対し,重量比で0.1%から50%の範囲で添加される。
【0028】
ここで,図8を用いて,本発明の,情報記録媒体を構成する第1の構造のエレクトロクロミック素子の動作原理について説明する。ここでは,ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸複合体や酸化タングステンのように,定常状態ではほぼ無色で,リチウムイオンをドープすると濃く着色するエレクトロクロミック化合物を用いた素子を用いる。絶縁性基板201上に形成された第1の電極202と第2の電極203の間に,電源210を接続し,電圧を印加する。ここでの印加電圧は,2Vから20Vである。このとき,絶縁性基板201上と,第1の電極202および第2の電極203に接するように設けられたエレクトロクロミック層204,エレクトロクロミック層に積層された電解質層205の内部には,電極間に形成された電界208が存在する。電界208は,エレクトロクロミック層204を超えて電解質層205内にも形成され,電位勾配が,相対的に高電位の電解質層205から,低電位のエレクトロクロミック層204へ生じる領域で,リチウムイオンの移動207が発生する。エレクトロクロミック層204において,リチウムイオン206が挿入された部分では,着色208が起こる。この着色208は,電圧印加をとめるか,あるいは極性が逆向きの電圧を短時間印加することによって消去が可逆的に可能である。
【0029】
次に,図9を用いて,本発明の,情報記録媒体を構成する第2の構造のエレクトロクロミック素子の動作原理について説明する。ここでも,ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸複合体や酸化タングステンのように,定常状態ではほぼ無色で,リチウムイオンをドープすると濃く着色するエレクトロクロミック化合物を用いた素子を用いる。絶縁性基板221上に形成された第1の電極222と第2の電極223の間に,電源230を接続し,電圧を印加する。ここでの印加電圧は,2Vから20Vである。このとき,絶縁性基板221上と,第1の電極222および第2の電極223に接するように設けられた電解質層224,電解質層に積層されたエレクトロクロミック層225の内部には,電極間に形成された電界228が存在する。電界228は,電解質層224を超えてエレクトロクロミック層225内にも形成され,電位勾配が,相対的に高電位の電解質層224から,低電位のエレクトロクロミック層225へ生じる領域で,リチウムイオンの移動227が発生する。エレクトロクロミック層225において,リチウムイオン226が挿入された部分では,着色228が起こる。この着色228は,電圧印加をとめるか,あるいは極性が逆向きの電圧を短時間印加することによって消去が可逆的に可能である。
【0030】
次に,本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子に外部から電圧を印加して駆動する方式について説明する。定電圧方式はもっとも容易に実現できる方式である。リチウムイオンのドープで着色するエレクトロクロミック材料を用いた場合の,図2に示す素子を定電圧駆動したときの,素子へ供給する電圧と,第2の電極3上に観測されるエレクトロクロミック層の着色の時間変化は,図10のようになる。この素子は,第1の電極2に対する第2の電極3の電位が―V(V)のときに着色し,+V(V)のときに消色する。時刻T1に着色させるための,着色パルス301を与えると,第2の電極上が着色状態303になる。その後,時刻T2に,消色パルス302を与えると,消去状態304となる。また,時刻T3に再び着色パルス305を与えると,素子は再び着色する。図3に示した素子についても,同様な印加電圧のパルスシーケンスによって着色と消色を行うことができる。
【0031】
次に、図12の単層構造を用いて,記録の原理を説明する。図12は基板321上に形成された,第1の透明電極322と第2の透明電極323の間に電源327から電圧を印加して,エレクトロクロミック層の326の部分が着色している状態を示す。実際には電源327は媒体の上下には設置されていないので,レーザ光328によって記録再生を行う。レーザとしては,赤色半導体レーザ,青色半導体レーザのいずれかを使用する。青色半導体レーザは波長が400 nmから410 nmであり,波長が650 nm から660 nmである赤色半導体レーザと比較して高密度記録が可能になるという利点がある。ここで用いるエレクトロクロミック材料は,レーザの発光波長で透過率変化が10%以上得られる材料を選択する。
【0032】
第1の透明電極322および第2の電極323の間に,電源327を用いて電圧を印加すると,生じる電界の電位勾配に沿って移動する,電解質層325中のリチウムイオンなどのイオンがエレクトロクロミック層326へ拡散する。電解質層325中のイオンをエレクトロクロミック層326へ拡散させることを以下,ドーピングと言う。電圧制御により,エレクトロクロミック層326の光吸収特性,すなわち色が可逆的に変化し,記録用のレーザ光328に対して吸収を有する状態すなわち着色状態と吸収がない状態すなわち消色状態とを任意に選択できる。記録用のレーザ光328に対して吸収を有する状態では,レーザ光328を照射すると,照射した領域において,発生した熱による記録,すなわち熱記録が行なわれ,エレクトロクロミック性が減少する。ここでのエレクトロクロミック性の減少とは,もともと着色状態と消色状態の両方をとることができていたのが,着色しなくなることを言う。記録を行なう際に,情報層を着色するべく印加する,一定の電圧印加条件において,記録後の情報層の光透過率(百分率%)から,記録前の着色状態での情報層の光透過率(百分率%)を差し引いた値が10%以上であること,と定義される。記録のためのレーザ光328の照射は,逆向きの電解質層325の側から行なっても良い。なお、情報の記録は,レーザ照射またはレーザ加熱により行われる。
【0033】
一度記録した領域では,記録を行っていない領域を着色状態にするような条件下でも,もはや着色しない。従って,記録の再生は,第1の透明電極322および第2の透明電極323の間に,電源327を用いて,記録前のエレクトロクロミック層326を着色させたのと同じ条件で電圧印加を行なうと,記録した領域が着色しないので,再生のためのレーザ光328の透過率,反射率の検出によって行うことができる。ここで,再生は,エレクトロミック性の減少が起こらないような光強度で行なう必要があり,記録に必要な光強度の30%以下である。記録および再生に必要な,第1の透明電極322および第2の透明電極323の間の電圧は,第1の電極322の側を正とすると,3 Vから20 Vである。印加する電圧の極性を反転させれば,第1の透明電極322側のエレクトロクロミック層324を着色させることができるが,エレクトロクロミック層324のこの部分にも記録を行うことができる。
【0034】
熱によりエレクトロクロミック性が減少する,記録のメカニズムとしては以下の4種類が可能である。
a. 情報層におけるエレクトロクロミック性を有する導電性高分子の共役部分の切断,二重結合から単結合への変換,酸化などにより,ドーピングによるポーラロン状態,バイポーラロン状態への変化率が減少する。
b. 電解質層内での,架橋や重合反応による硬化反応,結晶化反応などにより,局所的に抵抗値が高くなり,情報層への可逆的なドーピングが行なわれにくくなる。
c. 情報層と,それに隣接する電極層との界面で熱硬化などの化学反応が起こり,抵抗値が高くなる。
d. 情報層と,それに隣接する電解質層との界面で熱硬化などの化学反応が起こり,抵抗値が高くなる。
以上のaからdのうち,少なくともどれか一つだけが起これば記録が可能であるが,同時に複数が起こると記録の高感度化が達成できる。
【0035】
本発明の情報保持媒体は,情報層に電流を供給する機構を記録再生装置に持たせて,CD-RやDVD-Rのような,光ディスクの形態で使用するのに適している。このときの媒体の構成を図13に示す。光は図面の上側から入射するように図示した。媒体は,光入射側341から,貼り合わせ保護基板338,保護層331,電解質層333,エレクトロクロミック層334,透明電極である電極層335,紫外線硬化樹脂層336,貼り合せ保護基板337から構成され,339はグルーブ部,340はランド部に相当する。
【0036】
本発明では,基板の凹部で溝となっている部分をグルーブと呼ぶ。グルーブとグルーブの間をランドと呼ぶ。ランドとグルーブの一方だけに記録する,いわゆるイングルーブ記録の場合,光入射が基板側からの場合も基板と反対側からの場合も光入射側から見て凸部に記録した方が記録特性が良い場合が多いが,大きな差ではないので光入射側から見て凹部に記録しても良い。
【0037】
次に本発明の情報記録媒体を多層光記録に用いた場合について説明する。前述した通り本願発明では、従来のエレクトロクロミック素子と比較して,単位エレクトロクロミック構造あたり1層の透明電極層が少ないため、多層光記録に適している。図13の単位構造を複数積層して,多層構造とすれば,記録密度向上による媒体の大容量化を達成できる。従来の媒体では,実効的記録密度(実効的面密度)を高めるには多層化が望ましいが,3層以上では各層の透過率と記録感度とがトレードオフの関係にあり,再生信号品質または記録感度のどちらかが犠牲にならざるを得なかった。透明有機材料に厚さ方向も含めて3次元記録するものも知られているが,2光子吸収を利用するものでは記録感度が非常に悪く,光重合を利用するものでは保存安定性と記録感度が悪い。しかし,本発明では,記録・再生時だけ,対象となる情報層が光吸収を有するので,対象以外の情報層が記録・再生の障害とならない。記録用あるいは読み出し用レーザ光の焦点移動で層選択を行なう,従来の複数層DVDのように,スペーサ層も必要ないので,多くの層を絞込みレンズの焦点深度内に配置することもでき,従来の複数層ディスクより多層・大容量化できる。焦点深度内に入らない情報層については,焦点位置を移動して記録・再生してもよい。その場合,多層積層するとアドレス情報を表わすピットや溝が変形する場合が有るが,場合によってはピットや溝を転写した層をたとえば中間に再度設けることにより,移動した焦点位置で焦点深度内の少なくとも一部の層のアドレスが読めるようにしておく必要が有る。
積層は,図2の構造,および図3の2種類の構造から選ばれた同種の構造の媒体で多層化しても良いし,異なる構造の媒体を組み合わせて多層化しても良い。
【0038】
本発明の情報保持媒体を光ディスクとして用いる際には,記録線速度15m/s以上の条件でも記録レーザパワーを0.2mW以上2mW以下に設定することが可能となる。このように高感度化することにより,高線速度記録の場合でも,また,情報保持媒体上の複数の場所に同時に光照射を行う手段として,アレイレーザや面発光レーザを用いた場合でもパワー不足とならずに高い転送速度を実現できる。情報記録媒体の複数の電極対に対し,少なくとも2対同時に電圧を印加しても良い。これは,低い維持電圧を印加しておかないと色が変化する材料を用いた場合に必要となる。
【0039】
記録層を複数有する情報保持媒体を用い,多くの電極対間に電圧を印加するが,記録または読出し時に,それらを行う層の電極間だけに他の電極間とは異なった電圧を印加するようにしても良い。
また,記録または読み出しを行う際に,ある情報層から別の情報層に移動する場合には,記録または読み出しのためのレーザ照射をいったん止めてから電極に印加する電圧を変化させ,それまで記録または読み出しを行っていた層の消色と,新たに記録または読み出しを行う層の着色を行う。
【0040】
高速化のためには,記録または読み出し用のレーザ入射方向から見て手前側から奥側に移動する場合に限り,層切り替えによる待機時間短縮のために,手前側の層の記録または再生が終了して消色を行う以前に奥側の層の着色を開始してもよい。
装置としては,ディスク回転モータの回転軸または回転軸に取付けられたディスク受け部品に,ディスク取り付け時にディスクの電極が,ディスク受け部品上の所定の各電極と相対するように位置決めする手段,およびディスク受け部品側電極とディスク側電極が接触する手段とを設ける。これによって,各電極に所定の電圧を印加することができる。
【0041】
本発明は2.6GB DVD−RAMの規格以上の記録密度(トラックピッチ
,ビットピッチ)の場合に効果を発揮し,4.7GB DVD−RAMの規格以上の記録密度の場合に特に効果を発揮する。光源の波長が660nm付近でない場合や,集光レンズの開口数(NA)が0.6でない場合は,これらから半径方向,円周方向ともに波長比,NA比で換算した記録密度以上で効果を発揮し,発光波長約410 nmの青紫レーザを用いる場合においても効果がある。
【発明の効果】
【0042】
上記構成によれば,着色繰り返し特性に優れ,光透過率が高い情報記録媒体およびそれを用いた記録再生方法,記録再生装置が得られる。
【実施例1】
【0043】
(構成および製法)
図14は,この発明の第1実施例のディスク状情報記録媒体の中心部の断面構造を示す図である。351はディスクの中心線,352はディスク中心の穴,353はディスク受けに設置したときに,ディスク受け側の電極に接してエレクトロクロミック層を着色させるために電圧を印加するのに用いる電極,354はポリカーボネートからなる絶縁部分,355は透明電極,356は記録時に着色するエレクトロクロミック層,357は電解質層,358は絶縁部分,359は透明電極を分離するための絶縁部分である。電極から電圧を印加し,着色させて記録を行う部分360は,実際にはランド,グルーブ構造を有するが,図14では省略してある。図15にはディスクの記録部分の一部の拡大図を示す。図24は,図14に示す情報記録媒体の下側の面361から見た時の図である。情報記録媒体はDVDなどの光ディスクと同様な形状をしており,ディスク中央の穴の部分511,ディスク内周部分外周に向かって,絶縁部分513,電極514,絶縁部分515,電極516の順であり,電極514と電極516は絶縁部分515によって電気的に分離絶縁され,互いに対になって,電圧の印加により記録層の着色および消色を行う。さらに外周に向かって,絶縁部分517,電極518,絶縁部分519,電極520の順になっている。
記録・再生光は上方から基板を通して入射する。通常は光スポットから見て凸の,グルーブと呼ばれる部分に記録・再生する場合が多いが,本実施例ではランド部に記録する場合を示す。
【0044】
この媒体は次のようにして製作された。まず,図16に示すとおり,直径12cm,厚さ0.6mmのダミー基板371の上にモールドで,表面に,トラックピッチが0.74μmで深さ23nmのイングルーブ記録(ここでは光スポットから見てランド記録)用のトラッキング用の溝(幅0.35μm)を有し,溝のウォブルによってアドレスが表現されたポリカーボネートの絶縁部分372を厚さ50μm形成した。この上に,厚さ1μmのポジ型レジストパターン373を,塗布とマスクを用いたUV(波長248nm)露光,アルカリ現像を経て得た。そのあと,ドライエッチングによるエッチング工程374,(In90(SnO10の組成の透明電極スパッタ工程375,リフトオフによるレジスト除去工程376,ITOの電極形成工程377を経て,記録を行うために,エレクトロクロミック層を着色させるときに用いる電極を形成した。この電極上に,塗布法を用いたエレクトロクロミック層・電解質層形成工程378により,厚さ100nmのエレクトロクロミック層379,厚さ150nmの電解質層380をそれぞれ設けた。以後,同様に,絶縁部分および電極形成工程381経てディスクを得た。
【0045】
エレクトロクロッミック層に用いたエレクトロクロミック材料は,ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(0.5 重量%)とポリビニルスルホネート(0.8 重量%)の分散水溶液であった。
電解質層には,ポリメチルメタクリレート(数平均分子量3万)(5重量%),プロピレンカーボネート(15重量%),過塩素酸リチウム(7重量%)のアセトニトリル溶液を用いた。
透明電極とエレクトロクロミック材料層との間には1から5nm程度の膜厚のSiO2,GeO2など,Liよりもイオン半径が小さい元素の化合物膜を設けると,Liの透明電極中への侵入,透過を抑制できる点では好ましい。ただし,印加電圧は数ボルト高くする必要が有る。
【0046】
ディスクの下面に引き出された電極は表面に露出しており,ディスク受けに設けられた電極と位置合わせをし,接触させる。ディスク受け側の電極には複数のブラシとリングとの組み合わせにより,記録装置の回路基板より給電される。給電方法は他の方法を用いても良い。 記録・再生レーザ光は,図15の401の側から入射した。
【0047】
(エレクトロクロミック特性)
前記のようにして製作した情報記録媒体のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック特性を評価した。図17は,情報層の可視域(波長500 nmから700 nm)の吸収スペクトルである。電極間に電圧を印加し始めてから1分後の,十分に定常状態に達した状態で測定した。電圧印加の方向は,ディスク中央部側の電極を正とする。図17中,点線411で示した,電圧を印加していない時には,波長550nmから700nmにかけてほぼ完全に透明であるが,+3.0V印加時には,実線412で示した波長660nmを極大とする吸収帯が現れた。このときの波長660nmにおける透過率は30%であった。
【0048】
図18は,+3Vおよび−3Vの印加電圧切り替えに伴う波長660 nmにおける情報層の光透過率の時間変化を示す。この電圧切換は、10秒毎に行った。破線421は,記録・再生に最低限必要な着色濃度である光透過率60%を示し,製作した情報保持媒体の情報層の着色濃度が十分であることが示された。消色の状態から,記録・読み出しに必要な着色濃度に達するまでの時間および着色状態から消色状態に戻るのに必要な時間はともに,約1秒であった。
【0049】
(記録・再生)
上記情報保持媒体に対して,情報の記録再生を行った。以下に,図19を用いて,本情報記録再生の動作を説明する。まず,記録再生を行う際のモータ制御方法としては,記録再生を行うゾーン毎にディスクの回転数を変化させるZCAV(Zoned Constant Linear Ve1ocity)方式を採用したものについて述べる。図19中、437はプリアンプ回路、438はL/Gサーボ回路、439はモータ、440は信号入力、441は信号出力を示す。
【0050】
記録装置外部からの情報は8ビットを1単位として,8−16変調器432に伝送される。情報記録媒体(以下,光ディスクと呼ぶ)431上に情報を記録する際には,情報8ビットを16ビットに変換する変調方式,いわゆる8−16変調方式を用いて記録が行われた。この変調方式では媒体上に,8ビットの情報に対応させた3T〜14Tのマーク長の情報の記録を行っている。図中の8−16変調器432はこの変調を行っている。なお,ここでTは情報記録時のクロックの周期を表している。ディスクは光スポットとの相対速度が約8m/sの線速度となるよう回転させた。
8−16変調器432により変換された3T〜14Tのデジタル信号は記録波形発生回路433に転送され,マルチパルス記録波形が生成される。
【0051】
この際,記録マークを形成するためのパワーレベルを5mW,記録マークの消去が可能な中間パワーレベルを2mW,パワーを下げたパワーレベルを0.1mWとした。記録マーク形成のレーザパワーは,印加電圧を上げてゆくと下げることができ,0.5mW以上5mW以下の範囲で良好な記録が行えた。線速度を8m/sから変えても,この範囲に大きな変化は無かった。読出しは,電圧を印加せずに1mWで行った。0.2mW以上2mW以下の範囲で実用的な読出しが行えた。2mWを越えるパワーで長時間読むと,記録されているデータの劣化が生じた。また,上記記録波形発生回路内において,3T〜14Tの信号を時系列的に交互に「0」と「1」に対応させるようにしている。この際,高パワーレベルのパルスが照射された領域はエレクトロクロミック性が低下し,着色が起こりにくくなる。また,上記記録波形発生回路433内は,マーク部を形成するための一連の高パワーパルス列を形成する際に,マーク部前後のスペース部の長さに応じてマルチパルス波形の先頭パルス幅と最後尾のパルス幅を変化させる方式(適応型記録波形制御)に対応したマルチパルス波形テーブルを有しており,これによりマーク間に発生するマーク間熱干渉の影響を極力排除できるマルチパルス記録波形を発生している。
【0052】
記録波形発生回路433により生成された記録波形は,レーザ駆動回路434に転送され,レーザ駆動回路434はこの記録波形をもとに,光ヘッド435内の半導体レーザを発光させる。
本記録装置に搭載された光ヘッド435には,情報記録用のレーザビームとして光波長660nmの半導体レーザが使用されている。また,このレーザ光をレンズNA0.65の対物レンズにより上記光ディスク160の情報層上に絞り込み,レーザビームを照射することにより情報の記録を行った。
【0053】
また,導電性高分子系のエレクトロクロミック材料を用いた情報層の場合,媒体の反射率は着色状態の方が高く,記録されて着色しなくなった状態の領域の反射率が低くなっている。レーザ光照射による記録の間,電極間には3ボルトの電圧が継続的に印加される。
また,本実施例の情報保持媒体では,記録マークとそれ以外の部分とで約2:1の光反射率のコントラスト比が得られた。コントラスト比がこれ以下になると,再生信号のノイズによる揺らぎが上限値の9%を越えてしまい,実用的な再生信号品質の範囲を外れる。透明電極にSiOを含有させて(SiO40(In55(SnOとすると,電極層の屈折率が低下して光学的に有利になり,コントラスト比は2.5:1にできた。
【0054】
同一,または別々の記録トラックに,単一の光ヘッドからまたは複数の光ヘッドから複数の光スポットを形成し,同時に記録することも容易に行えた。
本記録装置はグルーブとランドのうちランドに情報を記録する方式(いわゆるイングルーブ記録方式の変則版)に対応している。
【0055】
記録された情報の再生も上記光ヘッドを用いて行った。レーザビームを記録されたマーク上に照射し,マークとマーク以外の部分からの反射光を検出することにより,再生信号を得る。この再生信号の振幅をプリアンプ回路により増大させ,8−16復調器436では16ビット毎に8ビットの情報に変換する。以上の動作により,記録されたマークの再生が完了する。
【0056】
以上の条件でマークエッジ記録を行った場合,最短マークである3Tマークのマーク長は約0.20μm,最長マークである14Tマークのマーク長は約1.96μmとなる。記録信号には,情報信号の始端部,終端部に4Tマークと4Tスペースの繰り返しのダミーデータが含まれている。始端部にはVFOも含まれている。
【0057】
(マークエッジ記録)
DVD−RAMおよびDVD−RWには高密度記録が実現できるマークエッジ記録方式が採用されている。マークエッジ記録とは,記録膜に形成する記録マークの両端の位置をディジタルデータの1に対応させるもので,これにより,最短記録マークの長さを基準クロック1個でなく2〜3個分に対応させて高密度化することもできる。DVD−RAMでは8−16変調方式を採用しており,基準クロック3個分に対応させている。マークエッジ記録方式は,円形記録マークの中心位置をディジタルデータの1に対応させるマークポジション記録に比べると,記録マークを極端に小さくしなくても高密度記録できるという長所がある。ただし,記録マークの形状歪みが小さいことが情報記録媒体に要求される。
【0058】
(ZCLV記録方式,CAV記録方式)
エレクトロクロミック材料を用いた情報記録媒体では,記録波形を変えない場合,良好な記録再生特性を得るために,最適線速度で記録するのが望ましい。しかし,ディスク上の半径の異なる記録トラック間をアクセスする時,線速度を同じにするために回転数を変えるのには時間がかかる。そこでDVD−RAMでは,アクセス速度が小さくならないようにディスクの半径方向を24のゾーンに分け,ゾーン内では一定回転数とし,別のゾーンにアクセスしなければならない時だけ回転数を変えるZCLV(Zoned Constant Linear Velocity)方式を採用している。この方式では,ゾーン内の1番内周のトラックと一番外周のトラックで線速度が少し異なるので記録密度も少し異なるが,ディスク全域にわたってほぼ最大の密度で記録することができる。
【0059】
一方,半径方向に大きくアクセスしても回転数を変えなくても良い点では回転数一定のCAV記録方式が好ましく,回転数を変える際の電力消費を抑制できるのでモバイル機器にも適している。本発明は既に述べたように半径方向位置によらず一定の加熱時間が得られるので,CAV記録も容易にする効果が有る。
【0060】
(電極材料)
電極材料としては,記録レーザ光の波長において吸収がない,すなわち透明であるという光学特性が重要である。透明電極の材料としては,(In)x(SnO)1−xの組成で,xが5%から99%の範囲の材料,抵抗値の面でより好ましくは,xが90%から98%の範囲の材料,これにモル%で50%以下のSiOを添加したもの,SnOにモル%で2から5%のSbなどの他の酸化物を添加したものが使用可能である。また,フッ素をドープしたSnOは,低抵抗かつ光透過率も高く,使用できる。あるいは,IZO(indium zinc oxide)は,表面の凹凸が少なく製膜できる利点があるので,電極層に使用可能である。レーザ光の情報保持媒体への入射側から見て奥側の電極層には,高い透明性は必ずしも要求されないので,光ディスク用に好ましい金属も使用可能である。反射率と熱伝導率が高い金属層は,AlあるいはAl合金の場合,Cr,Tiなどの添加元素が4原子%以下の高熱伝導率材料であるのが,基板表面の温度上昇を防止する効果があって好ましい。次いで,Au,Ag,Cu,Ni,Fe,Co,Cr,Ti,Pd,Pt,W,Ta,Mo,Sb,Bi,Dy,Cd,Mn,Mg,Vの元素単体,またはAu合金,Ag合金,Cu合金,Pd合金,Pt合金,Sb−Bi,SUS,Ni−Cr,などこれらを主成分とする合金,あるいはこれら同志の合金よりなる層を用いてもよい。このように,電極兼反射層は,金属元素,半金属元素,これらの合金,混合物,からなる。この中で,Cu,Ag,Au単体あるいはCu合金,Ag合金,特にPd,Cuなどの添加元素が8原子%以下のもの,Au合金等のように熱伝導率が大きいものは,有機材料の熱劣化を抑制する。可視域に吸収帯を持たない,狭バンドギャップ構造を有するポリチオフェン誘導体,ポリピロール誘導体,ポリアセチレンなどの導電性有機材料も使用可能である。
【0061】
(基板)
本実施例では,表面に直接,トラッキング用の溝を有するポリカーボネート基板を用いた。トラッキング用の溝を有する基板とは,基板表面全面または一部に,記録・再生波長をλとしたとき,λ/15n(nは基板材料の屈折率)以上の深さの溝を持つ基板である。溝は一周で連続的に形成されていても,途中分割されていてもよい。溝深さが約λ/12nの時,トラッキングとノイズのバランスの面で好ましいことがわかった。また,その溝幅は場所により異なっていてもよい。溝部とランド部の両方に記録・再生が行えるフォーマットを有する基板でも,どちらか一方に記録を行うフォーマットの基板でも良い。グルーブのみに記録するタイプでは,トラックピッチが波長/絞込みレンズのNAの0.7倍付近,グルーブ幅がその1/2付近のものが好ましい。
【0062】
(記録レーザパワー)
本実施例の情報保持媒体では,例えば,記録線速度8m/s以上の条件では,記録レーザパワーを10mWに設定した。
【0063】
(読出しレーザパワー)
読出しレーザパワーは,1mWに設定した。
レーザ光源に,例えば4素子のアレーレーザを用いた場合,データ転送速度を4倍高速化することができる。
【0064】
(エレクトロクロミック材料)
記録層に用いるエレクトロクロミック材料として,ポリ(3,4−エチレンジオキシピロール),ポリ(3−ヘキシルピロール),酸化タングステンを用いた場合でも,記録,再生を行なうことができた。
しかし,導電性高分子エレクトロクロミック材料としては,Liに代表されるドナーのドーピングを受けやすく,かつ,中性状態での酸化に対する安定性に優れているポリチオフェンおよびポリチオフェン誘導体がより優れている。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の代わりに,ポリチオフェン,ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン),ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン),ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を用いた情報保持媒体の場合でも,同様に記録・再生を行なうことができた。
【0065】
(電解質層の材料)
電解質層に用いる高分子として,ポリ(メチルメタクリレート)の代わりに,ポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイド,エチレンオキサイドとエピクロロヒドリン(70:30)共重合体,ポリエチレンカーボネート,ポリプロレンカーボネート,ポリシロキサンを用いた情報保持媒体の場合でも,同様に,記録・再生を行なうことができた。
電解質塩として,過塩素酸リチウムの代わりに,リチウムトリフレート,リチウムヘキサフルオロホスフェート,リチウムテトラフルオロボレート,N-リチオトリフルオロメタンスルホンイミドを用いた場合でも,同様に,記録・再生を行なうことができた。
【0066】
<比較例1>
実施例1と同様の材料と方法を用いて,記録部分の断面図が,図23のような,従来から知られたエレクトロクロミック素子の構造を有する光ディスクを作成した。この光ディスクは,エレクトロクロミック層494の上に透明電極である電極層495をマグネトロンスパッタリングで形成した。この光ディスクは,実施例1の,図15の構造と比較して電極層が1層多い。電極層の光透過率は92%であったので,比較例の光ディスクでは電極層による光透過率は84.6%であり,本発明の,実施例1の情報記録媒体は光透過率が高く,光の利用効率が大きくなることがわかった。
【0067】
本発明の構造の光ディスクの効果は光透過率の向上だけではない。図31は,実施例1の光ディスクと,比較例1の光ディスクの,5V印加で着色した時と,−1Vの印加で消色した時の光透過率の差の絶対値(透過率変調度)を,着色繰り返しの初期(2回目)の値(これを初期値という)で規格化し,初期値701と,着色繰り返し1000回後の透過率変調度702を比較したものである。実施例1の光ディスクでは,1000回の着色繰り返しの後でも劣化が無いが,比較例1の光ディスクでは,1000回後には透過率変調度が初期値に対して10%と,劣化を示した。
【0068】
また実施例1の光ディスクはエレクトロクロミック層の着色・消色を1万回繰り返した後も,記録再生に用いることができた。一方,比較例1の光ディスクでは,100回の着色・消色繰り返し後には記録再生ができなかった。これは,比較例の光ディスクでは,エレクトロクロミック層の上に,スパッタリングで電極層を形成したのでエレクトロクロミック層の劣化が起こったためである。実施例1の光ディスクは,ディスクの耐久性に関しても比較例の光ディスクより優れていることが明らかになった。
【実施例2】
【0069】
本実施例は,短波長レーザを記録・読み出しに使用可能にした情報記録媒体に関するものである。媒体の構造および作製方法は実施例1と同じである。

エレクトロクロミック層には,ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)(0.5 重量%)とポリビニルスルホネート(0.8 重量%)の分散水溶液を用いた。
電解質層には,ポリメチルメタクリレート(数平均分子量3万)(5重量%),プロピレンカーボネート(15重量%),過塩素酸リチウム(7重量%)のシクロヘキサノン溶液を用いた。電解質層の上に,W80Ti20膜よりなる反射層を膜厚50nmで形成した。積層膜の形成は,マグネトロン・スパッタリング装置を用いて行った。第2の電極の上には,UV樹脂を用いて厚さ0.5mmの保護層を形成した。
【0070】
図20は,本実施例の情報記録媒体のエレクトロクロミック層の吸収スペクトルである。電圧を印加し始めてから1分後の,十分に定常状態に達した状態で測定した。図20中で点線451は電圧を印加していない時のスペクトルであり,実線452は,+3.0V印加で着色している時のスペクトルである。+3.0V印加時には,波長400nm付近に吸収帯が現れた。従って,本媒体は波長400nmの青紫半導体レーザを用いた記録に適している。
【0071】
実施例1と同様に,図19の方法に従って,作製した情報保持媒体の記録再生を行った。
情報記録用のレーザビームとして光波長400nmの半導体レーザを使用した。また,このレーザ光をレンズNA0.65の対物レンズによって情報層上に絞り込み,強度6mWのレーザビームを照射することにより情報の記録を行った後,強度0.5mWのレーザビームによって再生を行うことができた。
導電性高分子エレクトロクロミック材料に,ポリ(3,4−エトキシチオフェン),ポリ(3−ブチルチオフェン)を用いた情報保持媒体の場合にも同様に記録・再生を行なうことができた。
【実施例3】
【0072】
本実施例は多層構造情報保持媒体およびそれを用いる記録装置に関するものである。
図21に記録装置制御回路のブロック図を示した。記録装置からは,回転軸の3本のスリップリングに,電圧と,情報保持媒体の層の選択信号が供給される。コンデンサを含む図21の回路はディスク受け部品の中空内部に内蔵されており,印加電圧切替え・制御回路を経て回路ブロック図の右端の各層への配線は,ディスク受けの電極に接続されている。図21中、461は層選択信号、462は可変電源、463は層選択回路、464は電流制御器、465は第1層選択の信号、466は第2層選択の信号、467は第3層選択の信号、468は第4層選択の信号である。
【0073】
情報記録媒体は,実施例1と基本構造は同じである。記録を行う部分を拡大した,図22に示したように,直径12cm,厚さ0.6mm,表面にトラックピッチが0.74μmで深さ23nm,溝幅0.35μmのイングルーブ記録用のトラッキング用の溝を有し,ポリカーボネート基板471上に,SiO層(10nm)472,IZO透明電極(30nm)473,エレクトロクロミック層(80nm)474,電解質層(80nm)475,の順で第1層478を形成した。その上に,ZnS・SiO絶縁層(100nm)476を形成した後,同様にして第2層479,第3層480,および第4層481を形成し,さらにこの上に直径120mm厚さ0.6mmのポリカーボネート基板471を貼り付けた。光はこの貼り合せ基板側から入射させた。エレクトロクロミック層474,電解質層475に使用した材料は,実施例1と同じである。
【0074】
記録・再生方法は実施例1と同様である。波長660nmのレーザ光を照射しながら,記録または読出しをしたい情報層の両側の透明電極に電圧を印加すると,その層だけが着色し,レーザ光を吸収,反射するようになるので,選択的に情報の記録や読出しができた。
多層膜はすべて絞り込みレンズの焦点深度内に有っても良いが,厚さ20〜40μmのスペーサ層を数層毎(例えば3層おき)に挟んで焦点位置を変えて各層に記録・再生してもよい。この場合,スペーサ層を2層以上用いる場合は,光学系に球面収差を補償する素子を設けた方が良い。
【実施例4】
【0075】
本実施例はエレクトロクロミック層の多層構造を有する,カード型の光メモリに関する。
電解質層およびエレクトロクロミック層に用いた材料とそれらの形成法は,実施例1と同じものである。
本実施例の多層光メモリは図26のような構造であり,図25(A)および(B)に示すエレクトロクロミック単位セルを3次元に配置している。図25(A)に示すエレクトロクロミック単位セルとは,絶縁性のガラス基板531上に透明電極である,幅200nm,長さ10ミクロンの第1の電極532と,第1の電極532への配線533(幅100nm)とを電気的に接続して形成している。この配線533はアルミニウムである。第1の電極532と500nm離れて,1mm四方の第2の電極534および第2の電極への配線535(幅500nm)を形成した。この配線535もアルミニウムである。
このエレクトロクロミック単位セルの中心横断線における断面図が図25(B)である。
【0076】
ガラス基板541上に第1の電極542,第2の電極543および配線を形成した後,電解質層544(厚さ200nm),エレクトロクロミック層545(厚さ100nm)の順で回転塗布とそれに続く加熱工程により形成した。その上に,厚さ300nmのポリビニルアルコール層を絶縁保護層546として,形成した。第1の電極542は着色,消色のための参照電極として用い,記録情報は,相対的に面積が大きい第2の電極543上に書き込まれる。
【0077】
図25に示すエレクトロクロミック単位セルは,図26に示すように,同一層内で二次元配置されている。図26は同一層内に,1列当たり6セルの配列を2列有するエレクトロクロミック素子を4層積層した光メモリの構造を示すものである。図26で,横方向の6セルの配列は,第1の電極群については配線552および配線553によって,電源より電気を供給する。第2の電極群については配線555および配線556によって,電源より電気を供給する。4層積層したさらに下側にはアルミニウムの反射層(厚さ50nm)およびポリカーボネートの下部保護層(厚さ500ミクロン)561を形成した。
【0078】
図26の多層光メモリの,貫通線563の部位における断面図が図27である。絶縁層571,透明電極層572,電解質層573,およびエレクトロクロミック層574から構成される層構造は,第1層581,第2層582,第3層583,第4層584のように積層されている。レーザ光入射方向585の側にはポリカーボネートの上部保護層575,反対側には反射層577および下部絶縁保護層576が形成されている。
【0079】
この多層光メモリに対し,記録および再生を行う層(第1層)において,第1の電極に対して第2の電極の電位が+5Vになるように電圧を印加し,第2の電極が全て着色した状態で,波長660nm,強度10mWのレーザ光をスキャンすることによって記録を行った。記録再生時には,層内の配線,電極配置をアドレス情報とした。記録の再生は,同様に対象とする層(第1層)を着色させて,波長660nm,強度3mWのレーザ光をスキャンし,反射光強度をモニタすることによって行うことができ,記録再生に成功した。また,第1層は全体を消色させた状態で,第2層において,第1層と同様に記録再生を行うことができた。
【実施例5】
【0080】
〈並列〉
本実施例はエレクトロクロミック層の多層構造を有する,カード型の光メモリに関する。
電解質層およびエレクトロクロミック層に用いた材料とそれらの形成法は,実施例1と同じものである。
本実施例の多層光メモリは図30のような構造であり,図28(A)および(B)に示すエレクトロクロミック単位セルを3次元に配置している。図28(A)に示すエレクトロクロミック単位セルとは,絶縁性のガラス基板601上に透明電極である,幅200nm,長さ1mmの第1の電極602と,第1の電極602への配線603(幅200nm)とを電気的に接続して形成している。この配線603はアルミニウムである。第1の電極602と200nm離れて,幅0.3mm,長さ1mmの第2の電極604を形成した。さらに,200nm間隔で,第3の電極605,第4の電極606,および第5の電極607を形成した。第2の電極604,第3の電極605,第4の電極606,および第5の電極607にはそれぞれ配線608を接続した。この配線608もアルミニウムである。
【0081】
このエレクトロクロミック単位セルの中心横断線における断面図が図28(B)である。
ガラス基板611上に,第1の電極612,第2の電極613,第3の電極614,第4の電極615,第5の電極616および配線を形成した後,電解質層617(厚さ200nm),エレクトロクロミック層618(厚さ100nm)の順で回転塗布とそれに続く加熱工程により形成した。その上に,厚さ300nmのポリビニルアルコール層を絶縁保護層619として,形成した。第1の電極612は着色,消色のための参照電極として用い,記録情報は,相対的に面積が大きい第2の電極613,第3の電極613,第4の電極615,および第5の電極616上に書き込まれる。
【0082】
図28のエレクトロクロミック単位セルは,第2から第5の,4つの電極が等電位になるように作られている。図28(A)において,第1の電極602に対して,第2から第5の電極の電位が6Vになるように,電圧を印加すると,図29(A)に示すように,第2の電極624,第3の電極625,第4の電極626,および第5の電極627の上の部分のエレクトロクロミック層が着色した。その様子は図29(B)の断面図にも示されている。電圧印加を止めるか,または極性が逆向きの6V以下の電圧印加によって,着色部分は無色に戻った。このような着色・消色は,±6Vで,それぞれ1秒ずつの電圧印加のときに,100万回繰り返すことができた。
図28のエレクトロクロミック単位セルにおいて,第2から第5の電極への配線628は並列配置になっていたが,それぞれ電源から独立した配置の配線にした場合,および配線628から各電極の途中にTFTのようなスイッチ素子を設けた場合には,第2から第5の,4つの電極上の着色・消色をそれぞれ独立して行うことができた。
【0083】
図28に示すエレクトロクロミック単位セルは,図30に示すように,同一層内で二次元配置されている。図30は同一層内に,セルを2個有するエレクトロクロミック素子を4層積層した光メモリの構造を示すものである。電源からの電気の供給は,実施例4と同様に行う。4層積層したさらに下側にはアルミニウムの反射層(厚さ50nm)およびポリカーボネートの下部保護層(厚さ500ミクロン)561を形成した。
図30の多層光メモリの,貫通線673の部位における断面図は実施例4の断面図と同様で,図27に示した。
【0084】
この多層光メモリに対し,記録および再生を行う層(第1層)において,第1の電極に対して第2の電極の電位が+5Vになるように電圧を印加し,第2の電極が全て着色した状態で,波長660nm,強度10mWのレーザ光をスキャンすることによって記録を行った。記録再生時には,層内の配線,電極配置をアドレス情報とした。記録の再生は,同様に対象とする層(第1層)を着色させて,波長660nm,強度3mWのレーザ光をスキャンし,反射光強度をモニタすることによって行うことができ,記録再生に成功した。また,第1層は全体を消色させた状態で,第2層において,第1層と同様に記録再生を行うことができた。第3層,および第4層についても同様に記録再生を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は情報記録媒体,情報記録装置,及び光を用いて情報を記録する情報記録方法に関する産業分野において利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子の断面図である。
【図2】本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子の断面図である。
【図3】本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子の断面図である。
【図4】本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子の鳥瞰図である。
【図5】ポリチオフェンの異性体の構造を示す図である。
【図6】ポリチオフェンのエレクトロクロミズムの原理を説明する図である。
【図7】導電性高分子のポーラロン,バイポーラロンを電子バンドを用いて説明する図。
【図8】本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子の動作原理を示す図。
【図9】本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子の動作原理を示す図。
【図10】本発明の情報記録媒体を構成するエレクトロクロミック素子への電圧印加に伴う透過率の時間変化を示す図。
【図11】本発明の情報記録媒体の作製法を示す図。
【図12】本発明の情報記録媒体への記録を説明する図。
【図13】本発明の情報記録媒体の断面図。
【図14】本発明の情報記録媒体の断面図。
【図15】本発明の情報記録媒体の断面図。
【図16】本発明の実施例の情報記録媒体の作製法を示す図。
【図17】本発明の実施例の情報記録媒体の可視光透過スペクトル。
【図18】本発明の実施例の情報記録媒体の電圧印加に伴う着色応答を示す図。
【図19】本発明の実施例の印加電圧制御回路のブロック図。
【図20】本発明の実施例の情報記録媒体の可視光透過スペクトル。
【図21】本発明の実施例における媒体への印加電圧制御回路のブロック図。
【図22】本発明の実施例の情報記録媒体の断面図。
【図23】本発明の実施例の情報記録媒体の断面図。
【図24】本発明の情報記録媒体を下から見た図。
【図25】本発明の実施例の情報記録媒体の鳥瞰図および断面図。
【図26】本発明の実施例の情報記録媒体の構成を示す図。
【図27】本発明の実施例の情報記録媒体の断面図。
【図28】本発明の実施例の情報記録媒体の鳥瞰図および断面図。
【図29】本発明の実施例の情報記録媒体の鳥瞰図および断面図。
【図30】本発明の実施例の情報記録媒体の構成を示す図。
【図31】本発明の実施例の情報記録媒体と、従来の記録媒体の劣化度の比較図。
【符号の説明】
【0087】
1:絶縁性基板
2:第1の電極
3:第2の電極
4:エレクトロクロミック層
5:電解質層
6:電源
7:導電層
11:絶縁性基板
12:第1の電極
13:第2の電極
14:電解質層
15:電源
21:ポリチオフェンのアロマティック型構造
22:ポリチオフェンのキノイド型構造
23:ポリチオフェンの中性状態の分子構造
24:ポリチオフェンへのアクセプタドーピングによる1電子酸化反応
25:ポリチオフェンの1電子酸化状態の分子構造
26:緩和過程
27:ポーラロン状態
28:バイポーラロン状態
29:ポリチオフェンへのドナードーピングによる1電子還元反応
30:ポリチオフェンへのアクセプタドーピングによる1電子酸化反応
31:ポリチオフェンへのドナードーピングによる1電子還元反応
32:中性状態におけるバンド構造
33:価電子帯
34:伝導帯
35:禁制帯幅
36:電子のエネルギー
37:許容遷移
38:正のポーラロン状態におけるバンド構造
39:ポーラロン準位P+
40:ポーラロン準位P-
41:ポーラロン状態における許容遷移
42:バイポーラロン状態におけるバンド構造
43:バイポーラロン準位BP+
44:バイポーラロン準位BP-
45:バイポーラロン状態における許容遷移
51:絶縁性基板
52:第1の電極
53:第2の電極
54:エレクトロクロミック層
55:電解質層
56:電源
57:導電層
101:絶縁性基板
102:第1の電極
103:第2の電極
104:電解質層
105:エレクトロクロミック層
106:電源
107:導電層
201:絶縁性基板
202:第1の電極
203:第2の電極
204:エレクトロクロミック層
205:電解質層
206:リチウムイオン
207:リチウムイオンの移動方向
208:電極間に形成された電界
209:着色
210:電源
221:絶縁性基板
222:第1の電極
223:第2の電極
224:電解質層
225:エレクトロクロミック層
226:リチウムイオン
227:リチウムイオンの移動方向
228:電極間に形成された電界
229:着色
230:電源
301:着色パルス
302:消色パルス
303:着色状態
304:消色状態
305:着色パルス
311:ポリカーボネート基板
312:ITO電極
313:ITO電極
314:エレクトロクロミック層
315:電解質層
316:絶縁層
317:ITO電極
318:ITO電極
319:エレクトロクロミック層
320:電解質層
321:基板
322:第1の透明電極
323:第2の透明電極
324:エレクトロクロミック層
325:電解質層
326:エレクトロクロミック層の着色部分
327:電源
328:レーザ光
331:保護層
333:電解質層
334:エレクトロクロミック層
335:電極層
336:紫外線硬化樹脂層
337:貼り合せ保護基板
338:基板
339:グルーブ部
340:ランド部
341:入射レーザ光
351:中心線
352:ディスク中心の穴部分
353:電極
354:絶縁部分
355:電極
356:エレクトロクロミック層
357:電解質層
358:絶縁部分
359:電極を分離するための絶縁部分
360:情報記録部分
361:ディスク下面
371:ダミー基板
372:絶縁部分
373:レジストパターン
374:エッチング工程
375:電極スパッタ工程
376:レジスト除去工程
377:電極形成工程
378:エレクトロクロミック層・電解質層形成工程
379:エレクトロクロミック層
380:電解質層
381:絶縁部分および電極形成工程とダミー基板除去
391:保護層
393:電解質層
394:エレクトロクロミック層
395:電極層
396:紫外線硬化樹脂層
397:貼り合せ保護基板
398:基板
399:グルーブ部
400:ランド部
401:入射レーザ光
411:消色時のスペクトル
412:着色時のスペクトル
421:記録・再生に必要な着色濃度
431:光ディスク
432:8−16変調器
433:記録波形発生回路
434:レーザ駆動回路
435:光ヘッド
436:8−16復調器
437:プリアンプ回路
438:L/Gサーボ回路
439:モータ
440:信号入力
441:信号出力
451:消色時のスペクトル
452:着色時のスペクトル
461:層選択信号
462:可変電源
463:層選択回路
464:電流制御器
465:第1層選択の信号
466:第2層選択の信号
467:第3層選択の信号
468:第4層選択の信号
471:ポリカーボネート基板
472:SiO
473:IZO透明電極
474:エレクトロクロミック層
475:電解質層
476:ZnS・SiO絶縁層
477:ポリカーボネート基板
478:第1層
479:第2層
480:第3層
481:第4層
491:保護層
492:第1の電極層
493:電解質層
494:エレクトロクロミック層
495:第2の電極層
496:紫外線硬化樹脂層
497:貼り合せ保護基板
498:基板
499:グルーブ部
500:ランド部
511:ディスク中心の穴部分
512:記録領域
513:絶縁部分
514:電極
515:絶縁部分
516:電極
517:絶縁部分
518:電極
519:絶縁部分
520:電極
531:ガラス基板
532:第1の電極
533:第1の電極への配線
534:第2の電極
535:第2の電極への配線
536:中心横断線
541:ガラス基板
542:第1の電極
543:第2の電極
544:電解質層
545;エレクトロクロミック層
546:絶縁保護層
551:第1層のガラス基板
552:第1の電極(第1列)への配線
553:第1の電極(第2列)への配線
554:第1の電極
555:第2の電極(第1列)への配線
556:第2の電極(第2列)への配線
557:第2の電極
558:第2層
559:第3層
560:第4層
561:反射層および下部保護層
562:レーザ光の入射方向
563:貫通方向線
571:絶縁層
572:透明電極層
573:電解質層
574:エレクトロクロミック層
575:上部絶縁保護層
576:下部絶縁保護層
577:反射層
581:第1層
582:第2層
583:第3層
584:第4層
585:レーザ光の入射方向
601:基板
602:第1の電極
603:第1の電極への配線
604:第2の電極
605:第3の電極
606:第4の電極
607:第5の電極
608:第2から第5の電極への配線
609:中心横断線
611:基板
612:第1の電極
613:第2の電極
614:第3の電極
615:第4の電極
616:第5の電極
617:電解質層
618:エレクトロクロミック層
619:保護層
621:基板
622:第1の電極
623:第1の電極への配線
624:第2の電極
625:第3の電極
626:第4の電極
627:第5の電極
628:第2から第5の電極への配線
629:中心横断線
631:基板
632:第1の電極
633:第2の電極
634:第3の電極
635:第4の電極
636:第5の電極
637:電解質層
638:エレクトロクロミック層
639:保護層
641:着色部分
642:着色部分
643:着色部分
644:着色部分
661:第1層のガラス基板
662:配線
663:配線
664:第1のエレクトロクロミック単位セル
665:配線
666:配線
667:電極
668:第2層
669:第3層
670:第4層
671:反射層および下部保護層
672:レーザ光の入射方向
673:貫通方向線
701:規格化された透過率変調度の初期値
702:規格化された1000回後の透過率変調度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁部材と、
前記第1の絶縁部材の一の平面内に形成された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極と導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む第1の導電層を有し、
前記第1、第2の電極間は絶縁されていることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1の導電層は、
前記第1および第2の電極に接して形成された、前記エレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック層と、
前記エレクトロクロミック層に接し、前記エレクトロクロミック層へ拡散するイオンを含む電解質層とを有することを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記第1の導電層は、
前記第1および第2の電極に接して形成された電解質層と、
前記電解質層に接し、前記エレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック層とを有することを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記第1の導電層は、導電性高分子エレクトロクロミック材料である、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリ(トリメチルシリルフェニルアセチレン)、ポリ(ジアルコキシフェニレンビニレン)、の中から選ばれた少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記第1の導電層は、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化チタン、五酸化バナジウムから選ばれた少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記第1の導電層は、ビオローゲン、炭素数1から20のアルキル基を有するアルキルビオローゲン、金属フタロシアニン錯体、ポルフィリン誘導体、バソフェナントロリン錯体から選ばれた少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記第1および第2の電極は、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、酸化スズSnO2のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記第1の導電層上に第2の絶縁部材を有し、
前記第2の絶縁部材の一の平面内に形成された第3および第4の電極と、
前記第3および第4の電極と導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む第2の導電層を有し、
前記第3、第4の電極間は絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記第1の導電層は、
前記第1および第2の電極に接して形成された、前記エレクトロクロミック材料を含む第1のエレクトロクロミック層と、
前記第1のエレクトロクロミック層に接し、前記エレクトロクロミック層へ拡散するイオンを含む第1の電解質層とを有し、
前記第2の導電層は、
前記第3および第4の電極に接して形成された、前記エレクトロクロミック材料を含む第2のエレクトロクロミック層と、
前記第2のエレクトロクロミック層に接し、前記エレクトロクロミック層へ拡散するイオンを含む第2の電解質層とを有することを特徴とする請求項8記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記第1の導電層は、
前記第1および第2の電極に接して形成された第1の層と、
前記電解質層に接し、前記エレクトロクロミック材料を含む第1のエレクトロクロミック層とを有し、
前記第2の導電層は、
前記第3および第4の電極に接して形成された第2の層と、
前記電解質層に接し、前記エレクトロクロミック材料を含む第2のエレクトロクロミック層とを有することを特徴とする請求項8記載の情報記録媒体。
【請求項11】
絶縁部材と、
前記絶縁部材の一の平面内に形成された第1および第2および第3の電極と、
前記第1および第2の電極との間および、前記第1および第3の電極との間を導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む導電層を有し、
前記第1の電極と前記第2の電極と前記第3の電極の間はそれぞれ絶縁されていることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項12】
前記第1の電極に正の電圧がかけられ、前記第2および第3の電極には負の電圧がかけられることを特徴とする請求項11記載の情報記録媒体。
【請求項13】
前記第1の電極に負の電圧がかけられ、前記第2および第3の電極には正の電圧がかけられることを特徴とする請求項11記載の情報記録媒体。
【請求項14】
前記第1および第2の電極間、または前記第1および第3の電極間の少なくとも一方に電圧がかけられることを特徴とする請求項11記載の情報記録媒体。
【請求項15】
前記導電層は、
前記第1および第2および第3の電極に接して形成された、前記エレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック層と、
前記エレクトロクロミック層に接し、前記エレクトロクロミック層へ拡散するイオンを含む電解質層とを有することを特徴とする請求項11記載の情報記録媒体。
【請求項16】
前記導電層は、
前記第1および第2および第3の電極に接して形成された電解質層と、
前記電解質層に接し、前記エレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック層とを有することを特徴とする請求項11記載の情報記録媒体。
【請求項17】
第1の絶縁部材と、前記絶縁部材の一の平面内に形成された第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極と導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む第1の導電層を有し、前記第1、第2の電極間は絶縁されている情報記録媒体に対して、情報を記録し、または前記情報記録媒体から情報を読み出すための情報記録装置であって、
前記第1および第2の電極間に電圧を印加する電源と、
前記情報記録媒体に光を照射する光源とを有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項18】
前記情報記録媒体は、前記第1の導電層上に第2の絶縁部材を有し、前記第2の絶縁部材の一の平面内に形成された第3および第4の電極と、前記第3および第4の電極と導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む第2の導電層を有し、前記第3、第4の電極間は絶縁されており、
前記電源は、前記第1および第2の電極間、または前記第3および第4の電極間の少なくとも一方に電圧を印加することを特徴とする請求項17記載の情報記録装置。
【請求項19】
前記光源から照射され、前記情報記録媒体で反射された光を検出する検出器を有することを特徴とする請求項17記載の情報記録装置。
【請求項20】
絶縁部材と、絶縁部材の一の平面内に形成された第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極と導通するように設けられたエレクトロクロミック材料を含む導電層を有し、前記第1、第2の電極間は絶縁されている情報記録媒体に対して、前記第1および第2の電極間に電圧を印加し、前記導電層を着色するステップと、
着色された前記導電層に対して光を照射し情報を記録するステップとを有することを特徴とする情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2006−31889(P2006−31889A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212461(P2004−212461)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】