説明

情報記録媒体、磁気記録再生装置及び光記録再生装置

【課題】高密度情報記録媒体において、データ記録領域の容量をほとんど低下させることなく、情報記録再生装置に対してトラッキング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な情報記録媒体を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体3は、磁気記録媒体3の半径方向に等しい間隔で同心円状に配置された複数のトラックを有している。また、磁気記録媒体3の磁気記録セル1は、複数のトラックに形成されると共に、隣接するトラックに形成された磁気記録セル1と互い違いになるように配置されている。そして、磁気記録媒体3は、トラックTr2の磁気記録セル1が形成されていない欠陥領域2aと、トラックTr3に形成された磁気記録セル1aとを含む第1の領域31、及び、トラックTr3の磁気記録セル1が形成されていない欠陥領域2bと、トラックTr2に形成された磁気記録セル1bとを含む第2の領域32、を少なくとも1組有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンドメディアのような高密度に情報を記録可能な情報記録媒体に関する。また、本発明は、上記情報記録媒体に対して情報の記録再生を行うことが可能な磁気記録再生装置及び光記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像又は映像の高画質化が進み、ユーザが扱う情報量は益々増加している。このため、HDD(Hard Disk Drive)と呼ばれる磁気記録装置の大容量化に向けて、面記録密度の高密度化検討が広く行われている。この検討において、高密度磁気記録における有望な技術の一つとして、孤立した磁気記録セルを配列した磁気記録媒体(すなわち、非磁性材料の中に磁性粒子を等間隔で規則正しく並べた磁気記録媒体)であるパターンドメディアが挙げられる。このパターンドメディアの構成によれば、粒子間の磁気的な相互作用が少なくなるため、媒体雑音が低減し、記録密度の大幅な向上を図ることが可能である。
【0003】
従来の磁気記録媒体では、媒体面内方向に一様に(連続的に)形成された磁性層においては、記録マークのエッジが結晶粒の粒界位置となる。このため、微小な記録マークで高いS/N比(Signal to Noise Ratio)を確保するためには、結晶粒の大きさを小さくする必要がある。しかしながら、結晶粒の大きさを小さくすることに伴って磁化の最小単位体積が減少することにより、結晶粒内での磁化量が小さくなってしまう。この結果、従来の磁気記録媒体では、物性的な限界を示す熱揺らぎ等による磁化反転が生じやすくなるため、磁気情報が消失しやすくなってしまうという問題があった。すなわち、従来の磁気記録媒体では、記録された情報を安定状態に保つことが困難であった。
【0004】
一方、パターンドメディアでは、互いに磁気的に分離された磁気記録セルに磁気情報が記録されており、記録マークのエッジが磁気記録セルのエッジとなる。従って、上述した従来の磁気記録媒体とは異なり、高いS/N比を確保するために、磁化の最小単位体積を特別に小さくする必要がない。このため、パターンドメディアでは、熱揺らぎ等を回避しやすくなる(すなわち、熱揺らぎ等による磁化反転が生じにくくなる)ため、従来の磁気記録媒体よりも高い記録密度を実現できる。
【0005】
このようなパターンドメディアの技術として、例えば特許文献1、2が挙げられる。特許文献1には、データ信号記憶領域とトラッキングサーボ信号記憶領域とを含むパターンドメディアが開示されている。また、特許文献2には、ナノホールの規則配列の複数が交互に隣接してなり、隣接する該規則配列が互いに異なる構成を有するパターンドメディアが開示されている。
【0006】
特に、特許文献2の技術では、上記のようにナノホールが配列されたパターンドメディアに記録する磁気記録装置が、該パターンドメディアに対してトラッキング制御を行うことができる。また、特許文献2では、上記磁気記録装置がトラッキング制御をより容易に行うことを可能とするために、任意の規則配列をデータ領域とし、該規則配列に隣接する他の規則配列をガードバンド領域とした構成を有するパターンドメディアについても開示している。この構成の場合、ガードバンド領域がトラッキング制御用の領域として機能している。
【特許文献1】特開2003−196815号公報(平成15年7月11日公開)
【特許文献2】特開2006−346820号公報(平成18年12月28日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パターンドメディアのような微小な磁気記録セルを有した高密度磁気記録媒体に形成された各トラック間のトラックピッチは、例えば50nm程度と非常に狭い。このため、パターンドメディアに記録再生を行う磁気記録再生装置に備えられた記録再生ヘッド(記録素子又は再生素子)が、所望のトラックに対してわずかなズレを生じただけで、記録エラー又は再生エラーが発生しやすくなってしまうという虞がある。
【0008】
一般に、磁気記録再生装置が磁気記録媒体に対してトラッキング制御を行うときの、磁気記録媒体の半径方向における記録再生ヘッドの位置決め要求精度は、トラックピッチの10%以下とされている。このため、パターンドメディアのように面記録密度が1Tb/in程度の場合には、上記位置決め要求精度として、数nm程度の精度が要求されると考えられる。
【0009】
この要求を実現するために、上記磁気記録再生装置においてより正確なトラッキング制御を行う方法として、トラッキング用サーボパターンでの信号検出頻度を高くすることが考えられる。しかしながら、上記信号検出頻度を高くするために、磁気記録媒体に単純にサーボパターンを形成する領域を増加させることは、データ記録領域の容量(磁気記録媒体に記録される情報量)を低下させてしまう虞がある。
【0010】
上記特許文献1の技術では、トラッキングサーボ信号記憶領域がデータ信号記憶領域とは別途設けられている。すなわち、特許文献1の技術では、上述のように、データ記録領域の容量を低下させてしまう虞がある。
【0011】
一方、上記特許文献2の技術では、磁気記録装置がより容易にトラッキング制御を行うためには、トラッキング制御用の領域としてガードバンド領域を設ける必要がある。すなわち、この場合にも特許文献1と同様、データ記録領域の容量を低下させてしまう虞がある。また、特許文献2の技術においてガードバンド領域を設けない構成の場合、磁気記録装置によるトラッキング制御の精度は、ガードバンド領域を設けた構成の場合よりも低下してしまう。このため、特許文献2の技術では、ガードバンド領域を設けずにトラッキング制御の精度をより向上させることは困難である。
【0012】
また、上記では磁気記録媒体について説明したが、光を照射することによって情報の記録再生が行われる光記録媒体についても、面記録密度の高密度化を検討する場合には、磁気記録媒体と同様の問題が生じる。また、この光記録媒体に対しては、光記録再生装置が情報の記録再生を行っているものとする。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターンドメディアのような高密度情報記録媒体において、データ記録領域の記録容量をほとんど低下させることなく、情報記録再生装置に対してトラッキング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な情報記録媒体を提供することにある。また、本発明の目的は、この情報記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)磁気記録再生装置又は光記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る情報記録媒体は、上記課題を解決するため、互いに孤立した複数の情報記録セルが配列されたデータ記録領域を有する情報記録媒体であって、上記情報記録媒体の半径方向に等しい間隔で同心円状に配置された複数のトラックを有し、上記情報記録セルは、上記複数のトラックに形成されると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、上記複数のトラックのうちの注目する1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックに隣接するトラックを第2のトラック及び第3のトラックとするとき、上記第2のトラックの上記情報記録セルが形成されていない特定領域と、上記第3のトラックに形成された情報記録セルとを含む第1の領域、及び、上記第3のトラックの上記情報記録セルが形成されていない特定領域と、上記第2のトラックに形成された情報記録セルとを含む第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴としている。
【0015】
ここで、情報記録セルが「隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されて」いるとは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、第1のトラックに形成された情報記録セルの円周方向における周方向位置と、該第1のトラックと隣接する第2のトラック又は第3のトラックに形成された情報記録セルの周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、第1のトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル1間の任意の周方向位置に、第2のトラック及び第3のトラックの何れかには情報記録セルが1つ形成されていることである。なお、上記「円周方向における周方向位置」とは、情報記録媒体の周方向における位置を指す。
【0016】
これにより、情報記録媒体は、該情報記録媒体に情報の記録再生を行う情報記録再生装置に対して、データ記録領域内に特定領域を含む第1の領域及び第2の領域から検出させる信号をもとに第1のトラックに対する高精度なトラッキング制御を行わせることができる。よって、情報記録媒体は、トラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がない。このため、情報記録媒体は、データ記録領域の記録容量をほとんど低下させることなく、情報記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを高精度に行わせることができる。
【0017】
従って、情報記録媒体は、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【0018】
また、情報記録媒体は、第1の領域及び第2の領域を複数有する構成でもある。この場合には、情報記録媒体は、情報記録再生装置に対して、第1の領域及び第2の領域からのトラッキング制御用の信号を高頻度で検出させることが可能になるため、記録再生ヘッドに生じるオフトラックの検出頻度を高めることができる。すなわち、情報記録媒体は、情報記録再生装置に対して高頻度にトラッキング制御を行わせることができる。
【0019】
なお、上記記録再生ヘッドは、情報記録再生装置に備えられており、情報記録媒体に記録された情報の記録再生を行うために、情報記録セルから信号を検出するものである。また、上記オフトラックとは、情報記録媒体の半径方向における記録再生ヘッドの半径位置が、該記録再生ヘッドが追従する第1のトラックの半径方向における半径位置の中心からずれて、情報記録再生装置が所定の情報記録セルから記録された情報を正しく読み出すことが難しい状態を指す。
【0020】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、上記複数のトラックにおいて、上記情報記録媒体の中心に向かって一定の周方向に上記特定領域の周方向位置が異なるように形成されていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、上記情報記録再生装置が情報記録媒体の第1の領域及び第2の領域からトラッキング制御用の信号を検出することによって第1のトラックに対してトラッキング制御を行うときに、記録再生ヘッドにオフトラックが生じた場合であっても、該オフトラックの方向を容易に特定することができる。
【0022】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、上記第2のトラック又は上記第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をDとし、該第1のトラックに形成された、周方向において最も近接した2つの情報記録セルとの距離をPとし、0以上の整数をnとするとき、上記情報記録セルは、上記複数のトラックにおいて、上記特定領域の周方向位置がn×P+Dだけ異なるように形成されていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、複数のトラックにおいて、第1の領域及び第2の領域の周方向における間隔が等しくなる。このため、情報記録媒体は、情報記録再生装置が該情報記録媒体のどのトラックに記録再生を行う場合であっても、該情報記録再生装置に対して、第1の領域及び第2の領域から検出するトラッキング制御用の信号を、同じ順序で、かつ等しいタイミングで検出させることができる。
【0024】
従って、情報記録媒体は、情報記録再生装置が該情報記録媒体に対して記録再生を行うときに、第1の領域及び第2の領域以外から検出する信号(すなわち誤った信号)でトラッキング制御を行うといった誤動作を抑制することができる。すなわち、情報記録媒体は、情報記録再生装置に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0025】
なお、上述のように、第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、第2のトラック又は第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をDとしているので、該距離Dの範囲は、0<D<P/2となる。
【0026】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記nが0であってもよい。
【0027】
上記構成によれば、複数のトラックにおいて、第1の領域及び第2の領域の周方向における間隔が等しくなる。このため、情報記録媒体は、情報記録再生装置が該情報記録媒体のどのトラックに記録再生を行う場合であっても、第1の領域及び第2の領域から検出するトラッキング制御用の信号を、同じ順序で、かつ等しいタイミングで検出させることができる。また、情報記録媒体は、複数のトラックにおいて、第1の領域及び第2の領域の間隔が短くなるので、情報記録再生装置が該第1の領域及び第2の領域からのトラッキング制御用の信号の検出タイミングを短くさせることができる。
【0028】
従って、情報記録媒体は、情報記録再生装置が情報記録媒体に対して記録再生を行うときに、第1の領域及び第2の領域以外から検出する信号(すなわち誤った信号)でトラッキング制御を行うといった誤動作をより確実に抑制することができる。すなわち、情報記録媒体は、情報記録再生装置に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0029】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、上記第2のトラック又は上記第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をDとし、該第1のトラックに形成された、周方向において最も近接した2つの情報記録セルとの距離をPとし、自然数をmとするとき、上記情報記録セルは、上記複数のトラックにおいて、上記特定領域の周方向位置がm×P−Dだけ異なるように形成されていてもよい。
【0030】
上記構成によれば、複数のトラックにおいて、第1の領域及び第2の領域の周方向における間隔が等しくなる。このため、情報記録媒体は、情報記録再生装置が該情報記録媒体のどのトラックに記録再生を行う場合であっても、該情報記録再生装置に対して、第1の領域及び第2の領域から検出するトラッキング制御用の信号を、同じ順序で、かつ等しいタイミングで検出させることができる。
【0031】
従って、情報記録媒体は、情報記録再生装置が該情報記録媒体に対して記録再生を行うときに、第1の領域及び第2の領域以外から検出する信号(すなわち誤った信号)でトラッキング制御を行うといった誤動作を抑制することができる。すなわち、情報記録媒体は、情報記録再生装置に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0032】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記mが1であってもよい。
【0033】
上記構成によれば、複数のトラックにおいて、第1の領域及び第2の領域の周方向における間隔が等しくなる。このため、情報記録媒体は、情報記録再生装置が該情報記録媒体のどのトラックに記録再生を行う場合であっても、第1の領域及び第2の領域から検出するトラッキング制御用の信号を、同じ順序で、かつ等しいタイミングで検出させることができる。また、情報記録媒体は、複数のトラックにおいて、第1の領域及び第2の領域の間隔が短くなるので、情報記録再生装置が該第1の領域及び第2の領域からのトラッキング制御用の信号の検出タイミングを短くさせることができる。
【0034】
従って、情報記録媒体は、情報記録再生装置が情報記録媒体に対して記録再生を行うときに、第1の領域及び第2の領域以外から検出する信号(すなわち誤った信号)でトラッキング制御を行うといった誤動作をより確実に抑制することができる。すなわち、情報記録媒体は、情報記録再生装置に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0035】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルであってもよい。
【0036】
上記構成によれば、情報記録媒体は、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルを備えた磁気記録媒体である。情報記録媒体は、磁気記録媒体であっても、上記と同様、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。なお、ここでの情報記録再生装置とは、磁気記録セルに対して情報の記録再生を行うことが可能な、例えば磁気記録再生装置である。
【0037】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記に記載の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気記録素子及び磁気再生素子を含む記録再生ヘッドを備えた磁気記録再生装置であって、上記第1のトラックに形成された情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の領域に含まれる情報記録セルから検出する信号の信号振幅と、該磁気再生素子が上記第2の領域に含まれる情報記録セルから検出する信号の信号振幅とをもとに、該第1のトラックに対するトラッキング制御を行うことを特徴としている。
【0038】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、磁気再生素子が第1の領域及び第2の領域から検出する信号の信号振幅をもとに、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックに対するトラッキング制御を行う。すなわち、磁気記録再生装置は、第1の領域及び第2の領域から検出する信号をトラッキング制御用の信号として検出する。
【0039】
これにより、磁気記録再生装置は、上述の情報記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設けていなくても、該情報記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。従って、磁気記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度にトラッキング制御を行うことができ、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができる。
【0040】
また、上述の情報記録媒体は、第1の領域及び第2の領域を複数有する構成でもある。この場合には、磁気記録再生装置は、上記第1の領域及び第2の領域からトラッキング制御用の信号を高頻度で検出することが可能になるため、記録再生ヘッドに生じるオフトラックの検出頻度を高めることができる。すなわち、磁気記録再生装置は、情報記録媒体に対して高頻度にトラッキング制御を行うことができる。
【0041】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記磁気再生素子において、該磁気再生素子が磁化を検出可能な半径方向の幅である磁化検出幅Sw1が、上記情報記録セルの直径をCw1とし、上記トラックピッチをTP1とするとき、2×TP1−Cw1<Sw1<2×TP1に設定されていてもよい。
【0042】
上記構成によれば、磁気再生素子の磁化検出幅Sw1を上記式となるように設定することで、磁気再生素子は、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックにおける情報記録セルからの信号を最も大きい信号として検出できる。また、磁気再生素子は、第1の領域及び第2の領域における情報記録セルからの信号を、トラッキング制御用の信号として確実に検出することができる。
【0043】
従って、磁気記録再生装置は、第1のトラックに隣接する第2のトラック又は第3のトラックにおける情報記録セルからの信号を適切な大きさで検出することができるので、該信号がクロストークしても、再生エラーを生じにくくすることができる。すなわち、磁気記録再生装置は、情報記録媒体に対して高精度なトラッキング制御を行うことができる。
【0044】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記磁気再生素子の周方向における空間分解可能幅をSt1とし、上記第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、上記第2のトラック又は上記第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をDとするとき、St1<Dであってもよい。
【0045】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、トラッキング制御用の信号を検出するときに、各々の情報記録セルから検出される信号を分離しやすくなるため、トラッキングエラーを生じにくくすることができる。
【0046】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行ってもよい。
【0047】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、磁気記録素子と磁気再生素子との半径方向における距離が、所定の値(例えば、磁気記録素子と磁気再生素子との距離が0)とは異なる場合であっても、記録時に磁気記録素子がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、磁気記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した磁気記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0048】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記距離検出動作は、上記磁気記録素子による記録動作、上記磁気再生素子による再生動作、及び該磁気再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記情報記録媒体の半径方向における半径位置毎に繰り返し行う動作と、上記再生動作時においてオントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置をr1とし、上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r2とするとき、上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離をr1−r2と決定する動作と、を含んでいてもよい。
【0049】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、決定した上記距離r1−r2を記憶しておくことにより、磁気再生素子がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、磁気記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した磁気記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0050】
なお、上記オントラックとは、情報記録媒体の半径方向における記録再生ヘッドの半径位置がトラックの半径位置の中心とほぼ一致して、情報記録再生装置が所定の情報記録セルから記録された情報を読み出すことが可能な状態を指す。
【0051】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルであってもよい。
【0052】
上記構成によれば、情報記録媒体は、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルを備えた光記録媒体である。情報記録媒体は、光記録媒体であっても、上記と同様、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。なお、ここでの情報記録再生装置とは、光記録セルに対して情報の記録再生を行うことが可能な、例えば光記録再生装置である。
【0053】
さらに、本発明に係る光記録再生装置は、上記に記載の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う発光素子及び受光素子を含む記録再生ヘッドを備えた光記録再生装置であって、上記第1のトラックに形成された情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第1の領域に含まれる情報記録セルから検出する信号の信号振幅と、該受光素子が上記第2の領域に含まれる情報記録セルから検出する信号の信号振幅とをもとに、該第1のトラックに対するトラッキング制御を行うことを特徴としている。
【0054】
上記構成によれば、光記録再生装置は、受光素子が第1の領域及び第2の領域から検出する信号の信号振幅をもとに、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックに対するトラッキング制御を行う。すなわち、光記録再生装置は、第1の領域及び第2の領域から検出する信号をトラッキング制御用の信号として検出する。
【0055】
これにより、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設けていなくても、該情報記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。従って、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度にトラッキング制御を行うことができ、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができる。
【0056】
また、上述の情報記録媒体は、第1の領域及び第2の領域を複数有する構成でもある。この場合には、光記録再生装置は、上記第1の領域及び第2の領域からトラッキング制御用の信号を高頻度で検出することが可能になるため、記録再生ヘッドに生じるオフトラックの検出頻度を高めることができる。すなわち、光記録再生装置は、情報記録媒体に対して高頻度にトラッキング制御を行うことができる。
【0057】
さらに、本発明に係る光記録再生装置は、上記受光素子において、該受光素子が光情報を検出可能な半径方向の幅である光検出幅Sw2が、上記情報記録セルの直径をCw2とし、上記トラックピッチをTP2とするとき、2×TP2−Cw2<Sw2<2×TP2に設定されていてもよい。
【0058】
上記構成によれば、受光素子の光検出幅Sw2を上記式となるように設定することで、受光素子は、記録再生ヘッドが追従する第1のトラックにおける情報記録セルからの信号を最も大きい信号として検出できる。また、受光素子は、第1の領域及び第2の領域における情報記録セルからの信号を、トラッキング制御用の信号として確実に検出することができる。
【0059】
従って、光記録再生装置は、第1のトラックに隣接する第2のトラック又は第3のトラックにおける情報記録セルからの信号を適切な大きさで検出することができるので、該信号がクロストークしても、再生エラーを生じにくくすることができる。すなわち、光記録再生装置は、情報記録媒体に対して高精度なトラッキング制御を行うことができる。
【0060】
さらに、本発明に係る光記録再生装置は、上記受光素子の周方向における空間分解可能幅をSt2とし、上記第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、上記第2のトラック又は上記第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をRとするとき、St2<Rであってもよい。
【0061】
上記構成によれば、光記録再生装置は、トラッキング制御用の信号を検出するときに、各々の情報記録セルから検出される信号を分離しやすくなるため、トラッキングエラーを生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明に係る情報記録媒体は、以上のように、互いに孤立した複数の情報記録セルが配列されたデータ記録領域を有する情報記録媒体であって、上記情報記録媒体の半径方向に等しい間隔で同心円状に配置された複数のトラックを有し、上記情報記録セルは、上記複数のトラックに形成されると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、上記複数のトラックのうちの注目する1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックに隣接するトラックを第2のトラック及び第3のトラックとするとき、上記第2のトラックの上記情報記録セルが形成されていない特定領域と、上記第3のトラックに形成された情報記録セルとを含む第1の領域、及び、上記第3のトラックの上記情報記録セルが形成されていない特定領域と、上記第2のトラックに形成された情報記録セルとを含む第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴としている。
【0063】
これにより、情報記録媒体は、該情報記録媒体に情報の記録再生を行う情報記録再生装置に対して、第1の領域及び第2の領域から検出させる信号をもとに第1のトラックに対する高精度なトラッキング制御を行わせることができる。よって、情報記録媒体は、データ記録領域内に特定領域を含む第1の領域及び第2の領域が有する構成であるので、トラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がない。このため、情報記録媒体は、データ記録領域の記録容量をほとんど低下させることなく、情報記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを高精度に行わせることができる。
【0064】
従って、情報記録媒体は、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図7に基づいて説明すると以下の通りである。
【0066】
〔磁気記録再生装置4の概略構成〕
図2は、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体(情報記録媒体)3に対して記録再生を行う磁気記録再生装置4の概略構成を示す図である。磁気記録再生装置4は、図2に示すように、サスペンション5と、スピンドル6と、ボイスコイルモーター7と、ランプ機構8と、記録再生ヘッド9とを備えている。また、図2では、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3を備えた構成となっている。なお、磁気記録媒体3の構造、及び磁気記録再生装置4による磁気記録媒体3の記録再生方法については、後に詳述する。
【0067】
サスペンション5は、後述のボイスコイルモーター7に固定されており、ボイスコイルモーター7と反対側の先端に、磁気記録媒体3に対して磁界を印加する記録再生ヘッド9を備えている。
【0068】
スピンドル6は、磁気記録再生装置4が磁気記録媒体3に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体3を反時計周り(図2の矢印方向)に回転させるものである。なお、磁気記録媒体3の中心部にはスピンドル6と嵌合可能なように穴部が形成されている。
【0069】
ボイスコイルモーター7は、サスペンション5に備えられた記録再生ヘッド9が磁気記録媒体3の半径方向に磁気記録媒体3上を移動できるように、サスペンション5を移動させるものである。すなわち、記録再生ヘッド9は、ボイスコイルモーター7の作動に応じて、磁気記録媒体3に対する半径方向における半径位置を変更させることができる。
【0070】
ランプ機構8は、磁気記録媒体3に情報の記録再生を行わないときに、記録再生ヘッド9が退避する場所(すなわち、記録再生ヘッド9が固定される場所)である。
【0071】
記録再生ヘッド9は、磁気記録媒体3に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体3に対して磁界を印加するものである。これにより、例えば磁気記録媒体3の磁気記録セル1(後述)の磁化方向を決定したり、該磁化方向を磁化情報として読み出すことができる。具体的には、記録再生ヘッド9は、図3に示すように、磁気記録媒体3に近い面に、垂直磁気記録媒体用の磁気記録素子10と磁気再生素子11とを備えている。図3は、磁気記録再生装置4の記録再生ヘッド9の概略構成を示す図である。
【0072】
磁気記録素子10は、磁気記録媒体3に情報を記録するときに記録可能な強度の磁界を、磁気記録媒体3に印加するものである。同様に、磁気再生素子11は、磁気記録媒体3の磁気記録セル1から磁化情報を読み出すものである。
【0073】
なお、磁気記録素子10と磁気再生素子11との磁気記録媒体3から見た円周方向における位置関係は、記録再生ヘッド9が回転する磁気記録媒体3の任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を磁気再生素子11が先に通過し、磁気記録素子10がその後に通過するような位置関係となっている。
【0074】
以上のように、磁気記録再生装置4は、スピンドル6及びサスペンション5の動作と、記録再生ヘッド9による磁界の印加とを制御することにより、磁気記録媒体3の所定の位置に記録再生を行うことができる。
【0075】
すなわち、磁気記録再生装置4は、サスペンション5、スピンドル6等の各種機能を制御するための所定の演算処理を行う制御部41を備えており、制御部41は例えばCPU(Central Processing Unit)等によって実現されている。さらに、制御部41は、本実施形態に係る磁気記録媒体3に対して記録再生を行うときの記録再生ヘッド9の制御を行うために、例えば信号特定部411と、差分算出部412と、ヘッド位置制御部413とを備えている。
【0076】
信号特定部411は、磁気再生素子11が磁気記録媒体3から読み出した磁化情報、すなわち磁気記録媒体3から検出した磁化情報を示す信号の振幅を、後述の予め設定された信号振幅と比較する。そして、信号特定部411は、比較した結果に基づいて、磁気記録媒体3からの検出信号が、記録再生ヘッド9が追従するトラックにおける磁気記録セル1からの信号であるか、該トラックに隣接するトラックにおける磁気記録セル1からの信号であるかを特定する。
【0077】
また、信号特定部411は、後述の予め記憶された領域判別用の信号振幅を参照することによって、磁気再生素子11が検出した信号が第1の領域31又は第2の領域32からの検出信号であると判定すると、両検出信号の振幅を差分算出部412に供給する。
【0078】
差分算出部412は、第1の領域31及び第2の領域32からの検出信号の振幅の差分を求め、該差分をヘッド位置制御部413に供給する。
【0079】
ヘッド位置制御部413は、ボイスコイルモーター7を制御することによって記録再生ヘッド9の位置制御を行うものであり、所定のトラック(追従して記録再生を行うトラック)へのトラッキングを実現するものである。ヘッド位置制御部413は、例えば磁気記録再生装置4の初期動作時に、後述の距離検出動作を行うことによって記録再生ヘッド9の位置制御を行う。
【0080】
また、ヘッド位置制御部413は、差分算出部412から供給される差分に基づいて、記録再生ヘッド9の半径方向への移動量を決定する。ヘッド位置制御部413は、上記差分が0である場合には、現在の記録再生ヘッド9の位置を変更しない(記録再生ヘッド9に対する移動制御を行わない)。一方、ヘッド位置制御部413は、上記差分が0でない場合には、例えば上記差分と上記移動量とが対応付けられたテーブルを参照することによって、記録再生ヘッド9を移動させるための移動量を決定する(記録再生ヘッド9に対する移動制御を行う)。すなわち、ヘッド位置制御部413は、記録再生ヘッド9に対するフィードバック制御(トラッキング制御)を行う。なお、ヘッド位置制御部413は、フィードバック制御を行うとき、例えば配置情報、識別情報を参照することによってオフトラック方向を判定している。
【0081】
さらに磁気記録再生装置4は、制御部41で利用される各種データ、プログラムの実行によって得られたデータ等を記憶する記憶部42を備えている。記憶部42は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、および、ROM(Read-Only Memory)やフラッシュメモリなどの不揮発性メモリで実現される。
【0082】
記憶部42は、各種データ又はプログラムとして、磁気再生素子11が追従するトラックであることを判別可能な信号振幅、領域判別用の信号振幅、配置情報、上記差分と記録再生ヘッド9の半径方向への移動量とを対応付けたテーブル等が記憶している。
【0083】
なお、磁気記録媒体3に対する磁気記録再生装置4の具体的な制御については、以下の磁気記録媒体3の記録再生方法において説明する。この記録再生方法での説明において、磁気記録再生装置4が行う制御は、制御部41が記憶部42に記憶された情報を参照することによって実現されている。
【0084】
〔磁気記録媒体3の概略構成及び製造方法〕
次に、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体3について図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体3の概略構成を示す図である。
【0085】
磁気記録媒体3は、孤立した磁気記録セル(情報記録セル)1を配列したパターンドメディアであり、例えば媒体面内方向に対して垂直方向に磁化されることで情報が記録されるタイプの媒体である。また、磁気記録媒体3には、複数のトラックが該磁気記録媒体3の半径方向に等しい間隔(所定のトラックピッチ(例えば50nm))で同心円状に配置されており、該複数のトラックには上記磁気記録セル1が配置されている(すなわち、磁気記録セル1は、各トラックに一列に配置されている)。さらに、磁気記録セル1は、円柱状のセルであり、磁気記録再生装置4によって磁気情報が記録再生されるものであり、隣接するトラックに形成された磁気記録セル1と互い違いになるように配置されている。
【0086】
但し、磁気記録媒体3の最外周及び最内周のトラックに関しては、このトラックの外側又は内側に隣接するトラックが存在しない。また、本実施形態に係る磁気記録媒体3の磁気記録セル1の大きさは、直径25nm及び高さ40nmとなっているが、これに限らず、直径5nm〜45nm及び高さが10nm〜60nmとなっていればよい。
【0087】
ここで、磁気記録セル1が「隣接するトラックに形成された磁気記録セル1と互い違いになるように配置されている」とは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、磁気記録セル1の円周方向における周方向位置(磁気記録媒体3の円周方向における位置)と、該磁気記録セル1が形成されたトラックと隣接するトラックに形成された磁気記録セル1の周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、同じトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル1間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接するトラックの何れかには磁気記録セル1が1つ形成されていることである。すなわち、磁気記録セル1が互い違いになるように配置された構成としては、同じトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル1間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接する両トラックに磁気記録セル1が存在する場合と、該トラックと隣接する一方のトラックには磁気記録セル1が存在するものの、もう一方のトラックには磁気記録セル1が存在しない場合とがある。なお、本実施形態に係る磁気記録媒体3では、任意の磁気記録セル1は、その周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル1の中心位置となるように形成されている。
【0088】
磁気記録媒体3の構成について、図1を用いてさらに具体的に説明する。磁気記録媒体3では、上記のように、磁気記録セル1が隣接するトラックに形成された磁気記録セル1と互い違いになるように配置されている。また、磁気記録媒体3では、各トラックにおいて規則的に磁気記録セル1が配置されている場合に該磁気記録セル1が存在するはずの領域に、該磁気記録セル1が存在しない領域が少なくとも1つある。「規則的に磁気記録セル1が配置されている」とは、図1に示すように、点線で囲まれた領域にも磁気記録セル1が存在し、各トラックでの磁気記録セル1の周方向位置の間隔が等しいことを指す。
【0089】
すなわち、本実施形態に係る磁気記録媒体3は、任意のトラック内で隣接した2つの磁気記録セル1間の周方向位置において、該トラックと隣接する一方のトラックには磁気記録セル1が存在せず、隣接するもう一方のトラックには磁気記録セル1が存在するといった第1の領域31及び第2の領域32が存在する。そして、磁気記録媒体3は、上記任意のトラックに対して上記第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを少なくとも1組有する構成となっている。
【0090】
例えば図1に示すトラックTr1(第1のトラック)を上記任意のトラックとした場合、図1に示す磁気記録媒体3は、第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを1組有する構成となっている。第1の領域31には、該トラックTr1内で隣接した磁気記録セル1間の周方向位置において、該トラックTr1と隣接する外周側(紙面上方)のトラックTr2(第2のトラック)に磁気記録セル1が存在せず、該トラックTr1と隣接する内周側(紙面下方)のトラックTr3(第3のトラック)には磁気記録セル1が存在する。一方、上記第2の領域32には、トラックTr1内で隣接した磁気記録セル1間の周方向位置において、トラックTr3には磁気記録セル1が存在せず、トラックTr2には磁気記録セル1が存在する。
【0091】
なお、本実施形態では、「規則的に磁気記録セル1が配置されている場合に該磁気記録セル1が存在するはずの領域に、該磁気記録セル1が存在しない領域」を以降「欠陥領域(特定領域)2」と称し、点線で囲んだ円で表すものとする。また、磁気記録媒体3において磁気記録セル1が存在しない領域(欠陥領域2を含む領域)は、非磁性体によって形成されている。さらに、磁気記録セル1は、磁気記録セルの総称であり、各磁気記録セルを示すときには、磁気記録セル1a、1b、・・・と称するものとする。また同様に、欠陥領域2は、欠陥領域の総称であり、各欠陥領域を示すときには、欠陥領域2a、2b、・・・と称するものとする。
【0092】
つまり、上記第1の領域31及び第2の領域32は、以下のように言い換えることができる。すなわち、第1の領域31には、トラックTr1と隣接する外周側のトラックTr2に欠陥領域2aが存在し、該トラックTr1と隣接する内周側のトラックTr3に磁気記録セル1aが存在するといえる。一方、第2の領域32には、トラックTr3に欠陥領域2bが存在し、トラックTr2に磁気記録セル1bが存在するといえる。なお、図1に示すように、トラックTr1には欠陥領域2cが含まれている。
【0093】
なお、磁気記録セル1の形状は、円柱状に限られるものではなく、例えば四角柱状、楕円柱状、球状等であってもよく、孤立した磁気記録セル1に磁気情報が記録できれば形状であればどのような形状であってもよい。
【0094】
また、磁気記録媒体3の回転方向は、図1に示すように、紙面左から右(矢印方向)となっているため、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3において、紙面右側の磁気記録セル1から順に信号検出していく。
【0095】
以下、磁気記録媒体3の製造方法の一例を示す。まず、ガラス基板上に軟磁性層を形成した後、この軟磁性層上にレジストを塗布する。次に、電子線リソグラフィー法によって、レジストに微細パターンを形成した後、磁気記録セル1を形成する材料を、この微細パターンが形成されたレジスト上に成膜する。その後、有機溶剤を用いて、レジストとレジスト上に堆積した磁気記録セル1を形成する材料とを除去した後、この基板上に非磁性層を成膜する。そして、この基板の非磁性層側から研磨を行うことで、磁気記録セル1を表面に露出させると共に、基板表面を平滑にする。最後に、磁気記録セル1が形成された基板に対して潤滑剤を塗布する。
【0096】
上記磁気記録媒体3の製造方法では、磁気記録セル1を形成する材料としては、例えばCo、Pt、Fe、Ni、Cr、Mn又はこれらの金属からなる合金が挙げられる。また、上記合金としては、例えばCoPt、SmCo、CoCr又はTbFeCo合金を用いることができる。さらに、レジストへの微細パターンの形成方法としては、例えば陽極酸化法、フォトリソグラフィー法、ナノインプリント法等を用いることが可能である。
【0097】
また、上記磁気記録媒体3の製造方法では、磁気記録媒体3の片面にのみ磁気記録面(すなわち、磁気記録セル1を有する面)を形成しているが、これに限らず、磁気記録媒体3の両面に磁気記録面を形成してもよい。この場合には、上記製造方法に示す工程が、磁気記録媒体3の両面に対して実施されればよい。なお、磁気記録媒体3の両面に形成される磁気記録面への潤滑剤の塗布については、同時に行うことも可能である。
【0098】
〔磁気記録媒体3の記録再生方法〕
次に、磁気記録再生装置4が磁気記録媒体3に対して磁気情報を記録再生する方法について説明する。
【0099】
本実施形態に係る磁気記録再生装置4の磁気再生素子11は、磁化検出領域に磁化が存在しない場合には、磁気記録媒体3から振幅の信号を検出する。また、磁気再生素子11は、図1に示す磁気記録媒体3において紙面手前から奥に向かう磁化が存在する場合には検出信号としてプラスの信号を検出する一方、紙面奥から手前に向かう磁化が存在する場合には検出信号としてマイナスの信号を検出する。さらに、磁気再生素子11は、周方向位置の等しい2つの磁気記録セル1の磁化の向きが反対で磁化の大きさが等しい場合には、異なる符号で振幅の大きさが等しい信号を検出する。
【0100】
また、磁気再生素子11が磁化を検出可能な半径方向の幅である磁化検出幅Sw1は、トラックピッチをTP1、磁気記録セル1の直径をCw1とすると、
Sw1=2×TP1−Cw1/2
に設定されている。つまり、磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1は、図1に示すように、記録再生ヘッド9がトラックTr1上を追従する場合、トラックTr2からトラックTr1側に直径Cw1の4分の1だけずれた位置と、トラックTr3からトラックTr1側に直径Cw1の4分の1だけずれた位置との間の距離となる。
【0101】
ここでは、磁気記録再生装置4の磁気再生素子11が、図1に示す磁気記録媒体3のトラックTr1に沿って、紙面右側の磁気記録セル1から左方向(図1に示す矢印とは反対方向)に向かって信号を検出する場合について説明する。なお、図4は、図3に示す磁気再生素子11が、図1に示す磁気記録媒体3のトラックTr1に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図であり、同図(a)は、図1に示すトラックTr1においてオントラックである時の検出信号の絶対値を示す図であり、同図(b)は、図3に示す記録再生ヘッド9が、図1に示すトラックTr1から内周側に僅かに位置ずれを起こしている場合の検出信号の絶対置を示す図であり、同図(c)は、記録再生ヘッド9が、図1に示すトラックTr1から外周側に僅かに位置ずれを起こしている場合の検出信号の絶対値を示す図である。
【0102】
なお、図4(a)〜図4(c)に示す符号S1a及びS1bは、磁気再生素子11がトラックTr2、Tr3に形成された磁気記録セル1a、1bから検出する信号を示す。また、図4(a)に示す符号S2cは、磁気再生素子11がトラックTr1における欠陥領域2c上を通過したときに検出する信号を示す。さらに、図4(b)及び図4(c)では、検出信号S1b及びS1bのみを示している。
【0103】
上述のように、欠陥領域2cは、磁気記録セル1が存在しない領域(磁化を持たない領域)であるので、磁気再生素子11が検出する信号S2cはゼロレベルである。なお、図4(a)〜図4(c)に示される直線12は、検出信号のゼロレベル(スライスレベル)を示すものである。
【0104】
磁気記録媒体3が磁気記録再生装置4に装着されると、該磁気記録再生装置4は、スピンドル6を制御して図1に示す矢印方向に該磁気記録媒体3を回転させる。その後、磁気記録再生装置4は、ボイスコイルモーター7を制御して、記録再生ヘッド9がトラックTr1上に位置するようにサスペンション5を移動させる。磁気再生素子11は、トラックTr1上を追従することにより、磁気記録セル1a、1b等の該トラックTr1に隣接したトラックTr2、Tr3に形成された磁気記録セル1と、該トラックTr1に形成された磁気記録セル1とを交互に検出することとなる。本実施形態に係る磁気記録媒体3において、トラックTr1に隣接した内外周2つのトラックTr2、Tr3における磁気記録セル1の周方向位置は等しい。このため、磁気再生素子11は、例えばトラックTr1に形成された磁気記録セル1を1つ検出した後、隣接した2つのトラックTr2、Tr3における磁気記録セル1を2つ同時に検出することを繰り返すように信号を検出していく。
【0105】
このとき、磁気再生素子11が検出する信号の大きさは、トラックTr1にオントラックであるか否かによって異なるものの、トラックTr1における磁気記録セル1とトラックTr2、Tr3における磁気記録セル1とでは異なる。このため、磁気記録再生装置4には、記録再生ヘッド9が追従するトラック(この場合はトラックTr1)における磁気記録セル1からの検出信号としての最小の信号振幅(オフトラックのときでも上記トラックにおける磁気記録セル1からの検出信号であることが判別可能な信号振幅)が予め設定されている。
【0106】
また、磁気記録再生装置4は、スピンドル6を制御して磁気記録媒体3を回転させ、一定速度になった後(または一定時間経過した後)に磁気再生素子11による信号検出を開始するように制御する。磁気記録再生装置4は、ゼロレベルでない信号を検出すると、該信号の信号振幅と上記予め設定された信号振幅と比較することによって、磁気再生素子11が追従するトラックTr1における磁気記録セル1であるか否かを判定する。
【0107】
従って、磁気記録再生装置4は、記録再生ヘッド9が例えばトラックTr1上を追従するときに、該トラックTr1に形成された磁気記録セル1からの検出信号と、トラックTr2、Tr3に形成された磁気記録セル1からの検出信号とを判別することができる。また、磁気記録再生装置4は、磁気再生素子11がトラックTr1に形成された磁気記録セル1から信号を検出する順番のときにゼロレベルの信号を検出した場合には、トラックTr1における欠陥領域2であると判別することができる。
【0108】
なお、オントラックとは、記録再生ヘッド9の半径位置がトラックの半径位置の中心とほぼ一致して、磁気記録再生装置4が所定の磁気記録セル1から記録された情報を読み出すことが可能な状態を指す。一方、オフトラックとは、記録再生ヘッド9の半径位置がトラックの半径位置の中心からずれて、磁気記録再生装置4が所定の磁気記録セル1から記録された情報を正しく読み出すことが難しい状態を指す。
【0109】
記録再生ヘッド9がトラックTr1上を追従するときに、該トラックTr1に対してオントラックである場合、図4(a)に示すように、磁気再生素子11は、該トラックTr1における磁気記録セル1から最も大きな振幅h1の信号を検出する。また、磁気再生素子11は、トラックTr2、Tr3における2つの磁気記録セル1が同じ磁化方向である場合には、該磁気記録セル1から振幅h2の信号を検出する。なお、トラックTr2、Tr3の2つの磁気記録セル1の磁化方向が逆方向である場合には、該磁気記録セル1からの検出信号はゼロレベルとなる。
【0110】
ここで、磁気記録再生装置4は、上述のように、記録再生ヘッド9が追従するトラックにおける磁気記録セル1(又は欠陥領域2)からの検出信号と、該トラックに隣接するトラックにおける磁気記録セル1(又は欠陥領域2)からの検出信号とを判別できる。つまり、磁気記録再生装置4は、トラックTr2、Tr3の2つの磁気記録セル1からの検出信号がゼロレベルであっても、該検出信号を、磁気再生素子11がトラックTr1における欠陥領域2上を通過したときのゼロレベルの検出信号と異なる信号と判別できる。
【0111】
具体的には、磁気記録再生装置4は、上述のように、磁気記録媒体3が一定速度で回転した後に信号検出を開始するように磁気再生素子11を制御し、信号検出を行っている間の該磁気記録媒体3の回転速度を一定に保つ。また、磁気記録媒体3の各トラックにおいて、磁気記録セル1又は欠陥領域2は、周方向に一定間隔で配置されている。すなわち、磁気再生素子11は、記録再生ヘッド9が追従しているトラック(再生トラック)から一定の周期で信号ピークを検出する一方で、該再生トラックから検出される信号ピーク間に、該再生トラックに隣接するトラックから信号ピークを検出する。
【0112】
つまり、磁気再生素子11は、再生トラックからの信号と隣接するトラックからの信号とを一定の時間間隔で検出している。また、磁気記録再生装置4は、上述のように、上記予め設定された信号振幅を参照することによって、再生トラックにおける磁気記録セル1からの検出信号であるか否かを判別している。このため、磁気記録再生装置4は、磁気再生素子11で検出される信号がゼロレベルであっても、再生トラックからの検出信号であるか否かを判別することができる。
【0113】
ここで、磁気再生素子11は、再生トラックに隣接する一方のトラックに欠陥領域2が存在し、隣接するもう一方のトラックに磁気記録セル1が存在する(第1の領域31又は第2の領域32上を通過する)場合には、図4(a)に示すように、振幅h3の信号を検出する。例えば磁気再生素子11は、トラックTr2に欠陥領域2aが存在し、トラックTr3に磁気記録セル1aが存在する第1の領域31上を通過するとき、磁気記録セル1aから振幅h3の信号S1aを検出する。一方、磁気再生素子11は、トラックTr2に磁気記録セル1bが存在し、トラックTr3に欠陥領域2bが存在する第2の領域32上を通過するとき、磁気記録セル1bから振幅h3の信号S1bを検出する。
【0114】
このように、記録再生ヘッド9がトラックTr1に対してオントラックである場合、磁気再生素子11が検出する信号S1aと信号S1bとの振幅は等しくなる。従って、この場合には、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3に対する記録再生ヘッド9の半径位置を調整することなく、トラックTr1に記録された情報の再生を行うことができる。
【0115】
また、上述のように、磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1が(2×TP1−Cw1/2)となっており、該磁気再生素子11は、再生トラックにおける磁気記録セル1からの信号振幅h1を最も大きく検出する。このため、磁気記録再生装置4では、トラックTr1に隣接するトラックTr2、Tr3における磁気記録セル1からの検出信号がクロストークしても、再生エラーが生じにくい。
【0116】
次に、記録再生ヘッド9がトラックTr1に対してオフトラックである場合、図4(b)及び図4(c)に示すように、磁気再生素子11がトラックTr3の磁気記録セル1aから検出する信号S1aの振幅と、トラックTr2の磁気記録セル1bからの信号S1bの振幅とが異なる。
【0117】
記録再生ヘッド9がトラックTr1から内周側(トラックTr3側)に僅かに位置ずれを起こした場合、図4(b)に示すように、磁気再生素子11がトラックTr3における磁気記録セル1aから検出する信号S1aの振幅h4は、振幅h3よりも大きくなる。一方、磁気再生素子11がトラックTr2における磁気記録セル1bから検出する信号S1bの振幅h5は、振幅h3よりも小さくなる。
【0118】
このため、磁気記録再生装置4は、磁気再生素子11がこれらの信号S1a、S1bを検出すると、該信号S1a、S1bの振幅差(h4−h5)を求める。そして、磁気記録再生装置4は、振幅h4と振幅h5とが等しく(すなわち、h4−h5=0)なるように、記録再生ヘッド9の半径位置を外周側(トラックTr2側)にずらしてトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0119】
一方、記録再生ヘッド9がトラックTr1から外周側(トラックTr2側)に僅かに位置ずれを起こした場合、図4(c)に示すように、磁気再生素子11がトラックTr3における磁気記録セル1aから検出する信号S1aの振幅h6は、振幅h3よりも小さくなる。一方、磁気再生素子11がトラックTr2における磁気記録セル1bから検出する信号S1bの振幅h7は、振幅h3よりも大きくなる。
【0120】
このため、磁気記録再生装置4は、磁気再生素子11がこれらの信号S1a、S1bを検出すると、該信号S1a、S1bの振幅差(h6−h7)を求める。そして、磁気記録再生装置4は、振幅h6と振幅h7とが等しく(すなわち、h6−h7=0)なるように、記録再生ヘッド9の半径位置を内周側(トラックTr3側)にずらしてトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0121】
ここで、記録再生ヘッド9がトラックTr1上を追従しているとき、該トラックTr1と隣接するトラックTr2、Tr3における磁気記録セル1又は欠陥領域2から検出する信号振幅の大きさは、オントラック時においてはh2、h3、0の何れかである。オフトラック時であっても、上記信号振幅の大きさは、h2に近い値、h3に近い値(h4、h5を含む)、0に近い値の何れかである。このため、磁気記録再生装置4は、例えば信号振幅の大きさh3に一定の幅を持たせた信号振幅を予め記憶している。つまり、磁気記録再生装置4は、第1の領域31又は第2の領域32からの検出信号であることを判別可能な領域判別用の信号振幅が予め記憶されている。
【0122】
すなわち、磁気記録再生装置4は、上記予め記憶された領域判別用の信号振幅を参照することによって、磁気再生素子11が検出した信号が第1の領域31又は第2の領域32からの検出信号であると判定した場合に、両検出信号の振幅(この場合は信号S1a及びS1bの振幅h3)の差分を求め、該差分が0であるか否かを判定する。磁気記録再生装置4は、上記差分が0であると判定した場合には、記録再生ヘッド9への移動制御を行わない。一方、磁気記録再生装置4は、上記差分が0でないと判定した場合には、例えば上記差分と記録再生ヘッド9の半径方向への移動量とを対応付けたテーブルを参照することによって、該差分に対応する移動量分だけ該記録再生ヘッド9を移動させる。このようにして、磁気記録再生装置4は、記録再生ヘッド9に対するフィードバック制御(位置調整)を行う。
【0123】
なお、上記移動量は、磁気記録再生装置4が、再生トラックの磁気記録セル1からの検出信号の振幅を上記予め設定された信号振幅よりも大きいと判断することが可能な範囲内に、記録再生ヘッド9を移動可能であればどのように設定されていてもよい。すなわち、磁気記録再生装置4は、再生トラックに対してトラッキング可能な半径位置に記録再生ヘッド9を制御できる範囲であれば、上記差分が0でなくてもよい。
【0124】
つまり、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3の第1の領域31及び第2の領域32から検出する信号をトラッキング制御用の信号とし、該信号の信号振幅をもとにトラックTr1に対してフィードバック制御(トラッキング制御)を行う。このため、磁気記録再生装置4は、記録再生ヘッド9がトラックTr1に対して僅かにオフトラックである場合であっても、該トラックTr1に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。すなわち、磁気記録再生装置4は、フィードバック制御を行うことにより、再生トラックに対するトラッキングを精度よく行うことができる。
【0125】
(磁気記録媒体3に対するオフトラック方向の特定方法)
次に、記録再生ヘッド9が追従するトラックTr1に対してオフトラックである場合、磁気記録再生装置4がそのオフトラック方向(すなわち、記録再生ヘッド9がトラックTr1の内周側にずれているのか、外周側にずれているのか)をどのように判定するかについて説明する。本実施形態に係る磁気記録媒体3には、図1に示すように、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が紙面右側(図1に示す矢印方向)になるように磁気記録セル1が形成されている。
【0126】
つまり、図1に示すように、磁気再生素子11は、
(1)再生トラックに隣接する外周側のトラックにおける磁気記録セル1のみからの信号(第2の領域32上を通過するときの信号;信号S1bに相当)
(2)再生トラックにおける欠陥領域2からの信号(欠陥領域2上を通過するときの信号;信号S2cに相当)
(3)再生トラックに隣接する内周側のトラックにおける磁気記録セル1のみからの信号(第1の領域31上を通過するときの信号;信号S1aに相当)
の順で検出する(但し、磁気再生素子11は、各信号(1)〜(3)の間に、その他の信号を検出する場合もある)。
【0127】
また、磁気記録媒体3の構成は上記構成に限らず、例えば磁気記録媒体3に、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が紙面左側(図1に示す矢印方向とは逆方向)になるように磁気記録セル1が形成されていてもよい。この場合、磁気再生素子11は、
(1)再生トラックに隣接する内周側のトラックにおける磁気記録セル1のみからの信号
(2)再生トラックにおける欠陥領域2からの信号
(3)再生トラックに隣接する外周側のトラックにおける磁気記録セル1のみからの信号
の順で検出する(但し、上記同様、磁気再生素子11は、各信号(1)〜(3)の間に、その他の信号を検出する場合もある)。
【0128】
ここで、磁気記録再生装置4は、該磁気記録再生装置4に載置される磁気記録媒体3の欠陥領域2の配置に関する配置情報を記憶している。つまり、磁気記録再生装置4は、配置情報を参照することによって、磁気再生素子11が上記どちらの順で信号を検出するのかを判定する。そして、磁気記録再生装置4は、上述のように、信号(2)を再生トラックにおける欠陥領域2からの検出信号であると判定すると、該信号(2)の次に検出される隣接するトラックからの磁気記録セル1のみからの信号を信号(3)であると判定する。なお、磁気記録再生装置4が記憶している配置情報は、信号の検出順序を特定可能な情報であれば、どのような情報であってもよい。
【0129】
従って、磁気記録再生装置4は、上記判定により、記録再生ヘッド9が追従するトラックに対してオフトラックであっても、該トラックから内周側にずれているのか、外周側にずれているのかを(すなわちオフトラック方向を)特定することができる。すなわち、磁気記録媒体3では、磁気記録セル1が、複数のトラックにおいて、該磁気記録媒体3の中心に向かって一定の周方向に欠陥領域2の周方向位置が異なるように形成されているため、磁気記録再生装置4の信号検出に規則性を持たせることができる。これにより、磁気記録媒体3は、記録再生ヘッド9にオフトラックが生じた場合であっても、該オフトラック方向を磁気記録再生装置4に容易に特定させることができる。
【0130】
(磁化検出幅Sw1について)
なお、上述では、磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1は、トラックピッチをTP1、磁気記録セル1の直径をCw1とすると、
Sw1=2×TP1−Cw1/2
に設定されていたが、これに限られたものではない。すなわち、上記磁化検出幅Sw1は、磁気再生素子11が、再生トラックにおける磁気記録セル1の磁化を、該再生トラックに隣接するトラックにおける磁気記録セル1の磁化と区別して検出することが可能な程度の幅に設定されていればよい。しかしながら、磁化検出幅Sw1が、
Sw1≦2×TP1−Cw1
である場合、磁気再生素子11は、再生トラックと隣接するトラックにおける磁気記録セル1からの磁化検出(磁化情報検出)が困難になる。このため、磁化検出幅Sw1は、
Sw1>2×TP1−Cw1
であることが望ましい。一方、磁化検出幅Sw1が、
Sw1≧2×TP1
である場合、再生トラックから検出される信号振幅よりも、該再生トラックと隣接するトラックから検出される信号振幅の方が大きくなる可能性がある。このため、磁化検出幅Sw1は、
Sw1<2×TP1
であることが望ましい。
【0131】
上述より、磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1は、
2×TP1−Cw1<Sw1<2×TP1 ・・・(1)
と設定されていることが望ましい。このように、磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1を式(1)となるように設定することで、磁気再生素子11は、再生トラックにおける磁気記録セル1からの信号を最も大きい信号として検出できる。また、磁気再生素子11は、第1の領域31及び第2の領域32における磁気記録セル1からの信号を、トラッキング制御用の信号として確実に検出することができる。
【0132】
従って、磁気記録再生装置4は、再生トラックに隣接するトラックにおける磁気記録セル1からの信号を適切な大きさで検出することができるので、該信号がクロストークしても、再生エラーを生じにくくすることができる。すなわち、磁気記録媒体3は、磁気記録再生装置4に対して高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0133】
(磁気記録媒体3に対する記録方法)
なお、上記磁気記録媒体3の構成により、磁気記録再生装置4は、該磁気記録媒体3への記録時も再生時と同様の制御を行うことが可能である。具体的には、磁気記録再生装置4は、磁気再生素子11が磁気記録セル1から信号を検出すると上述のようなトラッキング制御を行うと共に、磁気記録素子10を制御することによって、所定の磁気記録セル1への記録を行う。すなわち、磁気記録再生装置4は、トラッキング制御を行うことにより、記録再生ヘッド9を所定の磁気記録セル1が形成されているトラック上にあわせると、該磁気記録セル1の磁化方向を変更させるための磁界を磁気記録素子10からタイミングよく発生させることにより、該磁気記録セル1への記録を行う。
【0134】
このとき、磁気記録再生装置4は、磁気再生素子11が検出したトラッキング制御用の信号(第1の領域31又は第2の領域32から検出した信号)をもとに、磁気記録素子10から磁界を発生させる(すなわち情報を記録する)タイミングを調整する。すなわち、磁気記録再生装置4は、磁気再生素子11が第1の領域31を通過してから、磁気記録素子10が第1の領域31を通過するまでの時間t1、及び、磁気記録素子10が磁気記録セル1上を通過する周期t2を求め、磁気記録素子10から磁界を発生させるタイミングを調整する。この磁界発生のタイミング調整は、磁気記録再生装置4の制御部41に備えられたタイミング調整手段(図示しない)が行う。
【0135】
ここで、時間t1は、
(磁気再生素子11と磁気記録素子10との周方向への距離)/(線速度v1)
で与えられる。また、磁気記録再生装置4には、磁気再生素子11と磁気記録素子10との周方向への距離と、磁気記録媒体3が一定速度で回転するときの線速度v1とが予め記憶されている。よって、磁気記録再生装置4は、この周方向への距離と線速度v1とを参照することによって、時間t1を決めることができる。なお、磁気記録再生装置4は、線速度v1を予め記憶している構成であるが、これに限らず、該線速度を計測する構成であってもよい。
【0136】
また、第1の領域31からの信号を検出する地点から、第2の領域32からの信号を検出する地点までの周方向における距離は、同一トラック内で周方向において最も近接した2つの磁気記録セル1の距離Pの2倍となっている。このため、同一トラック内において磁気記録セル1上を通過する周期t2は、磁気記録再生装置4が第1の領域31からの信号を検出した後、第2の領域32から信号を検出するまでの時間の半分となる。つまり、磁気記録再生装置4は、第1の領域31からの信号を検出してから、第2の領域32の領域32からの信号を検出するまでの時間を計測し、その時間の1/2を周期t2として求める。
【0137】
磁気記録再生装置4は、このようにして得られる時間t1及び周期t2に基づき、磁界の発生タイミングを調整することができる。
【0138】
なお、磁界発生のタイミング調整(タイミング調整手段)は、上記に限られるものではなく、例えば、再生を行っているトラック(本実施形態ではトラックTr1)の磁気記録セル1からの信号を磁気再生素子11によって検出することによって、磁気記録素子10における磁界の発生タイミングを調整してもよい。この場合、磁気記録再生装置4は、再生を行っているトラックの周期t2をダイレクトに求めることが可能となり、上記の方法で求められる時間t1と合わせて磁界の発生タイミングを調整することが可能である。
【0139】
(空間分解可能幅St1について)
ここで、本実施形態に係る記録再生ヘッド9の磁気再生素子11において、該磁気再生素子11の円周方向における空間分解可能幅をSt1、任意のトラック(第1のトラック)に形成された磁気記録セル1と、周方向において該磁気記録セル1と最も近接した、該トラックと隣接したトラック(第2のトラック又は第3のトラック)に形成された磁気記録セル1との距離をDとするとき、St1<Dであることが好ましい。なお、空間分解可能幅St1とは、磁気再生素子11が単一の磁気記録セル1上を通過したときに得られる信号の半値幅(時間軸)をt1、通過時の線速度をv1としたとき、「t1×v1」で表される値を指す。
【0140】
上記関係の場合、磁気記録再生装置4は、トラッキング制御用の信号を検出するときに、各々の磁気記録セル1からの検出信号を分離しやすくなるため、トラッキングエラーを生じにくくすることができる。これは、この構成によれば、隣接する磁気記録セル1からの信号に起因した検出信号の歪みが小さくなるためである。
【0141】
(距離検出動作について)
また、磁気記録再生装置4は、その初期動作(例えば、磁気記録再生装置4の起動)において、記録再生ヘッド9の磁気記録素子10と磁気再生素子11との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことが好ましい。磁気記録再生装置4の記録再生ヘッド9には個体差があるため、該記録再生ヘッド9の磁気記録素子10と磁気再生素子11との半径方向における距離についても、記録再生ヘッド9毎に異なる可能性が高い。
【0142】
従って、磁気記録再生装置4の初期動作において上記距離を検出することにより、磁気記録再生装置4は、この距離が所定の値(磁気記録素子10と磁気再生素子11との距離が例えば0)とは異なる場合であっても、記録時に磁気記録素子10がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、磁気記録再生装置4は、記録再生ヘッド9の個体差に起因した磁気記録素子10のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。ここで、上記距離を検出する場合の磁気記録再生装置4の初期動作としては、例えば、以下の動作が考えられる。
【0143】
まず、磁気記録再生装置4は、再生時にオントラックとなる記録再生ヘッド9の位置(磁気記録媒体3の半径位置)における半径位置をr1として磁気記録再生装置4に記憶する。次に、磁気記録素子10による記録動作と磁気再生素子11による再生動作とを行い、磁気再生素子11が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置4は、上記記録動作、再生動作及びエラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド9の半径位置毎に繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置4は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド9の半径位置を記憶する。ただし、再生動作を行う際の記録再生ヘッドの半径位置は、r1である。
【0144】
次に、磁気記録再生装置4は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小のエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド9の半径位置r2を決定する。すなわち、磁気記録再生装置4は、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド9の半径位置r2とし、決定した半径位置r1、r2から、磁気記録素子10と磁気再生素子11との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する。
【0145】
そして、磁気記録再生装置4は、決定した上記距離(r1−r2)を記憶しておくことにより、磁気再生素子11がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。
【0146】
以上のように、本実施形態に係る磁気記録媒体3は、複数のトラックのうちの注目する1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックに隣接するトラックを第2のトラック及び第3のトラックとするとき、第2のトラックの磁気記録セル1が形成されていない欠陥領域2と、第3のトラックに形成された磁気記録セル1とを含む第1の領域31、及び、第3のトラックの磁気記録セル1が形成されていない欠陥領域2と、第2のトラックに形成された磁気記録セル1とを含む第2の領域32、を少なくとも1組有する構成である。
【0147】
これにより、磁気記録媒体3は、磁気記録再生装置4に対して、データ記録領域内に欠陥領域2を含む第1の領域31及び第2の領域32から検出させる信号をもとに第1のトラックに対する高精度なトラッキング制御を行わせることができる。よって、磁気記録媒体3は、トラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がない。このため、磁気記録媒体3は、データ記録領域の記録容量をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置4に記録再生ヘッド9の位置合わせを高精度に行わせることができる。
【0148】
従って、磁気記録媒体3は、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置4に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体3は、再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置4を提供することが可能となる。
【0149】
なお、図1に示す磁気記録媒体3は、各トラックに対して第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを1組有する構成となっているが、これに限られたものではない。すなわち、磁気記録媒体3は、各トラックに複数の欠陥領域2を形成する(すなわち各トラックにおける欠陥領域2の出現頻度を任意に設定する)ことによって、各トラックに対して第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを複数有する構成であってもよい。
【0150】
この場合、磁気記録再生装置4は、第1の領域31及び第2の領域32からの信号を高頻度で検出することが可能になるため、オフトラックの検出頻度を高めることができる。すなわち、磁気記録媒体3は、磁気記録再生装置4に対して高頻度にトラッキング制御を行わせることができる。
【0151】
また、磁気記録再生装置4に対して高頻度にトラッキング制御を行わせるために、磁気記録媒体3に従来のサーボパターン又はアドレスパターンに相当する領域が形成されていてもよい。この場合、磁気記録媒体3は、第1の領域31及び第2の領域32を少なくとも1組有しているので、上記パターンに相当する領域として従来と同様の面積を有する領域を形成する必要がない。このため、磁気記録媒体3にこれら領域が形成された場合であっても、該磁気記録媒体3は、記録容量の低下を抑制して、磁気記録再生装置4に対して高頻度にトラッキング制御を行わせることができる。なお、磁気記録セル1は、情報を記録可能なセルであって、トラッキングサーボ用としてだけ機能するものではない。
【0152】
〔磁気記録媒体3の変形例1(磁気記録媒体3a)〕
次に、本実施形態に係る磁気記録媒体3の変形例及びその記録再生方法について、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態に係る磁気記録媒体3の変形例及び検出される信号波形を示すものであり、同図(a)は、本実施形態に係る磁気記録媒体3の変形例(磁気記録媒体3a)の概略構成を示す図であり、同図(b)は、同図(a)に示す磁気記録媒体3aのトラックTr4に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図である。なお、図5(b)では、磁気記録再生装置4が図5(a)に示す磁気記録媒体3aから検出する信号のうち、特に信号S1e〜信号S1dの間の信号を示している。
【0153】
磁気記録媒体3aは、図5(a)に示すように、各トラックの欠陥領域2が形成される周方向位置に規則性がなく、該欠陥領域2がランダムに形成された構成となっている点で磁気記録媒体3の構成とは異なる。「各トラックの欠陥領域2が形成される周方向位置に規則性がなく、該欠陥領域2がランダムに形成された構成」とは、磁気記録媒体3の構成と異なり、各トラックに存在する欠陥領域2(すなわち第1の領域31または第2の領域32)の周方向位置が半径方向に対して一定の周方向にずれた構成ではないことを指す。その他、磁気記録媒体3aの構成及び製造方法は上記磁気記録媒体3と同様であるので、その説明については省略する。
【0154】
磁気記録媒体3aは、例えば図5(a)に示すトラックTr4(すなわち記録再生ヘッド9が追従するトラック;第1のトラック)に注目した場合、上記第1の領域31には、トラックTr4と隣接する外周側のトラックTr5(第2のトラック)に欠陥領域2eが存在し、該トラックTr4と隣接する内周側のトラックTr6(第3のトラック)に磁気記録セル1eが存在する。一方、上記第2の領域32には、トラックTr6に欠陥領域2dが存在し、トラックTr5に磁気記録セル1dが存在する。また、トラックTr4には欠陥領域2fが含まれている。そして、磁気記録媒体3aは、トラックTr4に対して上記第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを1組有する構成となっている。
【0155】
また、磁気記録媒体3aは、磁気記録媒体3とは異なり、磁気記録セル1がランダムに形成された構成となっているので、磁気記録再生装置4が記録再生ヘッド9のオフトラックを検知した場合にそのオフトラック方向を特定することが困難な場合が想定される。このため、磁気記録媒体3aには、例えば各トラックを識別するための識別情報が記録されたアドレスパターン等が作製されていてもよい。
【0156】
磁気記録再生装置4は、この磁気記録媒体3aに対する記録再生を行うときに、磁気再生素子11が磁気記録セル1の磁気情報を示す信号と識別情報とを検出する。そして、磁気記録再生装置4は、磁気情報を示す信号の振幅と識別情報とから、第1の領域31と第2の領域32とを特定すると共に、該両領域の出現順(両領域からの信号の検出順)を判別し、該出現順を記憶する。これにより、磁気記録再生装置4は、上記磁気記録媒体3aに対して記録再生を行う場合であっても、上記オフトラック方向を特定することができる。
【0157】
〔磁気記録媒体3aの記録再生方法〕
次に、磁気記録再生装置4が磁気記録媒体3aに対して磁気情報を記録再生する方法について説明する。なお、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3aを再生する場合には、磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1を、
Sw1=2×TP1−Cw1/3
に設定しているものとする。つまり、このときの磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1は、図5(a)に示すように、記録再生ヘッド9がトラックTr1上を追従する場合、トラックTr5からトラックTr1側に直径Cw1の6分の1だけずれた位置と、トラックTr6からトラックTr4側に直径Cw1の6分の1だけずれた位置との間の距離となる。また、磁気記録再生装置4の磁気再生素子11は、該磁気記録再生装置4が磁気記録媒体3を再生する場合と同様、図5(a)に示す磁気記録媒体3aのトラックTr4に沿って、紙面右側の磁気記録セル1から左方向(図5(a)に示す矢印とは反対方向)に向かって信号を検出する。
【0158】
磁気再生素子11は、トラックTr4上を追従することにより、磁気記録セル1d、1e等の該トラックTr4に隣接したトラックTr5、Tr6に形成された磁気記録セル1と、該トラックTr4に形成された磁気記録セル1とを交互に検出する。磁気記録媒体3aにおいても、トラックTr4に隣接した内外周2つのトラックTr5、6における磁気記録セル1の周方向位置は等しい。このため、磁気記録媒体3と同様、磁気再生素子11は、例えばトラックTr4に形成された磁気記録セル1を1つ検出した後、隣接した2つのトラックTr5、Tr6における磁気記録セル1を2つ同時に検出することを繰り返すように信号を検出していく。
【0159】
記録再生ヘッド9がトラックTr4に対してオントラックである場合、図5(b)に示すように、磁気再生素子11は、トラックTr4における磁気記録セル1から最も大きな振幅h1の信号を検出する。また、磁気再生素子11は、トラックTr5、Tr6における2つの磁気記録セル1が同じ磁化方向である場合には、該磁気記録セル1から振幅h2の信号を検出する。なお、トラックTr5、Tr6の2つの磁気記録セル1の磁化方向が逆方向である場合には、該磁気記録セル1からの検出信号はゼロレベルとなる。
【0160】
また、磁気再生素子11は、トラックTr4上を追従する場合に、トラックTr5に欠陥領域2eが存在し、トラックTr6に磁気記録セル1eが存在する第1の領域31上を通過するとき、磁気記録セル1eから振幅h3の信号S1eを検出する。一方、磁気再生素子11は、トラックTr5に磁気記録セル1dが存在し、トラックTr6に欠陥領域2dが存在する第2の領域32上を通過するとき、磁気記録セル1dから振幅h3の信号S1dを検出する。
【0161】
なお、図5(b)に示す符号S1d及びS1eは、磁気再生素子11がトラックTr5、Tr6に形成された磁気記録セル1d、1eから検出する各信号を示す。また、図5(b)に示す符号S2fは、磁気再生素子11がトラックTr4における欠陥領域2f上を通過したときに検出する信号を示す。
【0162】
このように、記録再生ヘッド9が追従するトラックTr4に対してオントラックである場合、磁気再生素子11が検出する信号S1dと信号S1eとの振幅は等しくなる。従って、この場合には、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3aに対する記録再生ヘッド9の半径位置を調整することなく、トラックTr4に記録された情報の再生を行うことができる。
【0163】
また、記録再生ヘッド9がトラックTr4に対してオフトラックである場合、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3の場合と同様、磁気記録セル1dから検出される信号S1dの振幅と、磁気記録セル1eから検出される信号S1eの振幅とが等しくなるように、記録再生ヘッド9の半径位置を内周側または外周側に調整する。すなわち、磁気記録再生装置4は、上述のように、磁気再生素子11によって検出される信号S1dと信号S1eとの差分を算出し、該差分に対応する移動量分だけ記録再生ヘッド9を半径方向に移動させる。
【0164】
すなわち、磁気記録再生装置4は、信号S1dの振幅が信号S1eの振幅よりも大きい場合には、記録再生ヘッド9が外周側にオフトラックしていると判断し、該記録再生ヘッド9を内周側に移動させる。一方、磁気記録再生装置4は、信号S1dの振幅が信号S1eの振幅よりも小さい場合には、記録再生ヘッド9が内周側にオフトラックしていると判断し、該記録再生ヘッド9を外周側に移動させる。
【0165】
つまり、磁気記録再生装置4は、記録再生ヘッド9がトラックTr4に対して僅かにオフトラックである場合であっても、トラックTr4に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。すなわち、磁気記録再生装置4は、フィードバック制御を行うことにより、再生トラックに対するトラッキングを精度よく行うことができる。
【0166】
また、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3の場合と同様、磁気再生素子11が磁気記録媒体3aに形成された磁気記録セル1から検出する信号をもとに、該磁気記録媒体3aへの記録時も再生時と同様の制御を行うことが可能である。すなわち、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3aに対する情報記録を行う場合にも、記録を行っているトラックに対して精度よくトラッキングを行うことができる。
【0167】
以上のように、磁気記録媒体3aは、各トラックに存在する欠陥領域2(すなわち第1の領域31または第2の領域32)がランダムに形成されているが、第1の領域31と第2の領域32とを少なくとも1組有した構成となっている。このため、磁気記録媒体3aは、磁気記録媒体3と同様、従来のようにデータ記憶領域に対して別途トラッキングサーボ用パターンのみの領域を設けることなく、磁気記録再生装置4にトラッキング制御を行わせることができる。
【0168】
従って、磁気記録媒体3aは、パターンドメディアのような狭トラックピッチの磁気記録媒体であっても、記録容量をほとんど低下させることなく、磁気記録再生装置4に対して高精度なトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体3aは、再生エラー及び記録エラーのより少ない磁気記録再生装置4を提供することが可能となる。
【0169】
また、磁気記録媒体3と同様、磁気記録媒体3aの各トラックに欠陥領域2が複数形成されている場合には、磁気記録再生装置4は、第1の領域31及び第2の領域32からの信号を高頻度で検出することとなるため、オフトラックの検出頻度を高めることができる。
【0170】
(磁気記録媒体3aの変形例)
なお、上記では、欠陥領域2がランダムに形成されている構成を有する磁気記録媒体3aを、図5(a)に示したが、これに限られたものではない。すなわち、磁気記録媒体3aは、図6に示すように、例えば任意のトラックにおいて欠陥領域2が周方向に2つ並ぶように形成された構成であってもよい。図6は、本実施形態に係る磁気記録媒体3の変形例(磁気記録媒体3a)の別の概略構成を示す図である。
【0171】
図6に示す磁気記録媒体3aは、例えばトラックTr7(第1のトラック)に注目した場合、上記第1の領域31には、トラックTr7と隣接する外周側のトラックTr8(第2のトラック)に欠陥領域2iが存在し、該トラックTr7と隣接する内周側のトラックTr9(第3のトラック)に磁気記録セル1iが存在する(図6に示す周方向位置C)。一方、磁気記録媒体3aは、上記第2の領域32として、トラックTr9に欠陥領域2gが存在し、トラックTr8に磁気記録セル1gが存在する領域(図6に示す周方向位置A)と、トラックTr9に欠陥領域2hが存在し、トラックTr8に磁気記録セル1hが存在する領域(図6に示す周方向位置B)との2つの領域を有している。また、トラックTr7には欠陥領域2jが含まれている。そして、図6に示す磁気記録媒体3aにおいても、トラックTr7に対して上記第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを1組有する構成となっている。
【0172】
従って、磁気記録再生装置4は、図6に示す周方向位置A及び/又はBに存在する磁気記録セル1g、1hからの検出信号と、周方向位置Cに存在する磁気記録セル1iからの検出信号との差分を求めることによって、上記と同様のトラッキング制御を行うことができる。すなわち、磁気記録媒体3aは、図6に示す構成であっても、上記と同様に磁気記録再生装置4に対して高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0173】
〔磁気記録媒体3の変形例2(磁気記録媒体3b)〕
次に、本実施形態に係る磁気記録媒体3のさらなる変形例及びその記録再生方法について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態に係る磁気記録媒体3のさらなる変形例及び検出される信号波形を示すものであり、同図(a)は、本実施形態に係る磁気記録媒体3のさらなる変形例(磁気記録媒体3b)の概略構成を示す図であり、同図(b)は、同図(a)に示す磁気記録媒体3bのトラックTr8に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図である。なお、図7(b)では、磁気記録再生装置4が図7(a)に示す磁気記録媒体3bから検出する信号のうち、特に信号S1l〜信号S1kの間の信号を示している。
【0174】
磁気記録媒体3bは、各トラックに一列に配置された円柱状の磁気記録セル1を有している。磁気記録媒体3bにおける磁気記録セル1は、所定のトラックピッチ(例えば45nm)で隣接するトラックに形成された磁気記録セル1と互い違いになるように配置されている。
【0175】
また、磁気記録媒体3bは、例えば図7(a)に示すトラックTr10(第1のトラック)に注目した場合、上記第1の領域31には、トラックTr8と隣接する外周側のトラックTr11(第2のトラック)に欠陥領域2kが存在し、該トラックTr8と隣接する内周側のトラックTr12(第3のトラック)に磁気記録セル1kが存在する。一方、上記第2の領域32には、トラックTr12に欠陥領域2lが存在し、トラックTr10に磁気記録セル1lが存在する。また、トラックTr10には欠陥領域2mが含まれている。そして、磁気記録媒体3bは、トラックTr10に対して上記第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを1組有する構成となっている。
【0176】
そして、磁気記録媒体3bは、図7(a)に示すように、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が(1×P+D)だけ紙面右側(図7(a)に示す矢印方向)になるように磁気記録セル1が形成されている。なお、図7(a)に示す符号Dは、上述したように、任意のトラックに形成された磁気記録セル1と、周方向において該磁気記録セル1と最も近接した、該トラックと隣接したトラックに形成された磁気記録セル1との距離を示すものであり、符号Pは、磁気記録セル1の周方向における2つの磁気記録セル1の距離を示すものである。また、磁気記録媒体3bでは、上記距離DがD=P/2となるように磁気記録セル1が形成されている。その他、磁気記録媒体3bの構成及び製造方法は上記磁気記録媒体3と同様であるので、その説明については省略する。
【0177】
〔磁気記録媒体3bの記録再生方法〕
次に、磁気記録再生装置4が磁気記録媒体3bに対して磁気情報を記録再生する方法について説明する。
【0178】
磁気再生素子11は、トラックTr10上を追従することにより、磁気記録セル1k、1l等の該トラックTr10に隣接したトラックTr11、Tr12に形成された磁気記録セル1と、該トラックTr10に形成された磁気記録セル1とを交互に検出する。磁気記録媒体3bにおいても、トラックTr10に隣接した内外周2つのトラックTr11、12における磁気記録セル1の周方向位置は等しい。このため、磁気記録媒体3、3aと同様、磁気再生素子11は、例えばトラックTr10に形成された磁気記録セル1を1つ検出した後、隣接した2つのトラックTr11、Tr12における磁気記録セル1を2つ同時に検出することを繰り返すように信号を検出していく。なお、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3bを再生する場合には、磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1を、
Sw1=2×TP1−Cw1/2
に設定しているものとする。
【0179】
記録再生ヘッド9がトラックTr10に対してオントラックである場合、図7(b)に示すように、磁気再生素子11は、トラックTr10における磁気記録セル1から最も大きな振幅h1の信号を検出する。また、磁気再生素子11は、トラックTr11、Tr12における2つの磁気記録セル1が同じ磁化方向である場合には、該磁気記録セル1から振幅h2の信号を検出する。なお、トラックTr11、Tr12の2つの磁気記録セル1の磁化方向が逆方向である場合には、該磁気記録セル1からの検出信号はゼロレベルとなる。
【0180】
また、磁気再生素子11は、トラックTr10を追従する場合に、トラックTr11に欠陥領域2kが存在し、トラックTr12に磁気記録セル1kが存在する第1の領域31上を通過するとき、磁気記録セル1kから振幅h3の信号S1kを検出する。一方、磁気再生素子11は、トラックTr11に磁気記録セル1lが存在し、トラックTr12に欠陥領域2lが存在する第2の領域32上を通過するとき、磁気記録セル1lから振幅h3の信号S1lを検出する。
【0181】
なお、図7(b)に示す符号S1k及びS1lは、磁気再生素子11がトラックTr11、Tr12に形成された磁気記録セル1k、1lから検出する各信号を示す。また、図7(b)に示す符号S2mは、磁気再生素子11がトラックTr10における欠陥領域2m上を通過したときに検出する信号を示す。
【0182】
このように、記録再生ヘッド9が走査するトラックTr10に対してオントラックである場合、磁気再生素子11が検出する信号S1kと信号S1lとの振幅は等しくなる。従って、この場合には、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3bに対する記録再生ヘッド9の半径位置を調整することなく、トラックTr10に記録された情報の再生を行うことができる。
【0183】
また、記録再生ヘッド9がトラックTr10に対してオフトラックである場合、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3、3aの場合と同様、磁気記録セル1kから検出される信号S1kの振幅と、磁気記録セル1lから検出される信号S1lの振幅とが等しくなるように、記録再生ヘッド9の半径位置を内周側または外周側に調整する。すなわち、磁気記録再生装置4は、上述のように、磁気再生素子11によって検出される信号S1kと信号S1lとの差分を算出し、該差分に対応する移動量分だけ記録再生ヘッド9を半径方向に移動させる。
【0184】
すなわち、磁気記録再生装置4は、信号S1kの振幅が信号S1lの振幅よりも大きい場合には、記録再生ヘッド9が外周側にオフトラックしていると判断し、該記録再生ヘッド9を内周側に移動させる。一方、磁気記録再生装置4は、信号S1kの振幅が信号S1lの振幅よりも小さい場合には、記録再生ヘッド9が内周側にオフトラックしていると判断し、該記録再生ヘッド9を外周側に移動させる。
【0185】
つまり、磁気記録再生装置4は、記録再生ヘッド9がトラックTr10に対して僅かにオフトラックである場合であっても、該トラックTr10に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。すなわち、磁気記録再生装置4は、フィードバック制御を行うことにより、再生トラックに対するトラッキングを精度よく行うことができる。
【0186】
また、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3、3aの場合と同様、磁気再生素子11が磁気記録媒体3bに形成された磁気記録セル1から検出する信号をもとに、該磁気記録媒体3bへの記録時も再生時と同様の制御を行うことが可能である。すなわち、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3bに対する情報記録を行う場合にも、記録を行っているトラックに対して精度よくトラッキングを行うことができる。
【0187】
(磁気記録媒体3bに対するオフトラック方向の特定方法)
次に、記録再生ヘッド9が追従するトラックTr10に対してオフトラックである場合、磁気記録再生装置4がそのオフトラック方向をどのように判定するかについて説明する。
【0188】
上述のように、磁気記録媒体3bは、各トラックに存在する欠陥領域2(すなわち第1の領域31または第2の領域32)の周方向位置が、該磁気記録媒体3の半径方向に対して一定の周方向にずれている構成である。さらに、磁気記録媒体3bは、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が(1×P+D)だけ紙面右側になるように磁気記録セル1が形成されている。
【0189】
つまり、図7(a)に示すように、磁気再生素子11は、
(1)再生トラックに隣接する外周側のトラックにおける磁気記録セル1のみからの信号(第2の領域32上を通過するときの信号;信号S1lに相当)
(2)再生トラックにおける欠陥領域2からの信号(欠陥領域2上を通過するときの信号;信号S2mに相当)
(3)再生トラックに隣接する内周側のトラックにおける磁気記録セル1のみからの信号(第1の領域31上を通過するときの信号;信号S1kに相当)
の順で検出する(但し、上記同様、磁気再生素子11は、各信号(1)〜(3)の間に、その他の信号を検出する場合もある)。さらに、磁気再生素子11は、磁気記録媒体3bの構成により、該磁気記録媒体3bの上記トラックにおいて、信号(1)を検出した後、信号(2)及び信号(3)を等しいタイミングで(等しい時間間隔で)検出する。つまり、磁気記録再生装置4において、再生トラックがどのトラックであっても、該トラックにおける信号(1)〜(3)の検出順序、及び上記検出タイミングが等しくなる。
【0190】
上述のように、磁気記録再生装置4は、上記予め設定された信号振幅を参照することによって、再生トラックからの検出信号であるか否かを判定する。そして、磁気記録再生装置4は、信号(2)を再生トラックにおける欠陥領域2からの検出信号であると判定することによって、信号(3)を特定する。すなわち、磁気記録再生装置4は、信号(2)を基準として信号(1)と信号(3)とを判別することができる。
【0191】
以上のように、磁気記録媒体3bの構成により、磁気記録再生装置4は、該磁気記録媒体3bのどのトラックに記録再生を行う場合であっても、信号(1)〜(3)を上記順序で、かつ等しいタイミングで検出する。従って、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3bに対して記録再生を行う場合には、信号(1)及び信号(3)以外の信号(すなわち誤った信号)でトラッキング制御を行うといった誤動作を抑制することができる。すなわち、磁気記録媒体3bは、磁気記録再生装置4に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0192】
なお、磁気記録媒体3bは、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が(1×P+D)だけ紙面右側になるように磁気記録セル1が形成されていたが、これに限らず、紙面左側(図7(a)の矢印方向とは逆方向)になるように該磁気記録セル1が形成されていてもよい。また、磁気記録媒体3bは、上記構成に限らず、nを0以上の整数(n=0、1、2、・・・)とするとき、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が(n×P+D)だけ紙面右側になるように該磁気記録セル1が形成されていてもよい。但し、このときのnは一定の値とする。
【0193】
さらに、磁気記録媒体3bは、mを自然数(m=1、2、・・・)とするとき、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が(m×P−D)だけ紙面右側になるように該磁気記録セル1が形成されていてもよい。すなわち、磁気記録媒体3において、2つの欠陥領域2の周方向位置における距離を(m×P−D)となるように、該欠陥領域2が形成されていてもよい。
【0194】
この場合、nが0以上の整数(n=0、1、2、・・・)、mが自然数(m=1,2,3,・・・)であるので、2つの欠陥領域2の周方向位置間の距離である上記(n×P+D)及び(m×P−D)は、
P/2(n=0、m=1)、3P/2(n=1、m=2)、5P/2(n=2、m=3)、・・・
となり等しい値を示す。
【0195】
ここで、上記では距離DがD=P/2となるように磁気記録セル1が形成されているが、これに限らず、D<P/2(D>0)となるように該磁気記録セル1が形成されてもよい。なお、距離Dは、上述のように、任意のトラックに形成された磁気記録セル1と、周方向において該磁気記録セル1と最も近接した、該トラックと隣接したトラックに形成された磁気記録セル1との距離であるので、距離DがD>P/2となることはない。
【0196】
この場合、上述のように、上記(n×P+D)及び(m×P−D)の値が等しくなることはない、しかしながら、この場合であっても、磁気記録媒体3bにおいて、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が、
(n×P+D)又は(m×P−D)で示される分だけ(但し、n、mは一定の値)
紙面左側又は紙面右側になるように磁気記録セル1が形成されることとなる。
【0197】
従って、磁気記録媒体3bにおいて、D<P/2となるように磁気記録セル1が形成されている場合であっても、該磁気記録媒体3bは、D=P/2の場合と同様、磁気記録再生装置4に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0198】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について図8〜図11に基づいて説明すると以下の通りである。なお、実施形態1と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明は省略する。
【0199】
〔磁気記録媒体3cの概略構成及び製造方法〕
本実施形態に係る磁気記録媒体3cは、実施形態1に係る磁気記録媒体3bの構成において、所定のトラックピッチを50nmとし、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が距離Dだけ紙面右側(図8(a)に示す矢印方向)になるように磁気記録セル1が形成された場合の構成である。すなわち、磁気記録媒体3cは、上記磁気記録媒体3bにおいて、隣接する2つのトラックにおける周方向に隣り合う2つの欠陥領域2の距離を(n×P+D)と表すときn=0((m×P−D)と表すときm=1)となる場合の構成である。また、この磁気記録媒体3cに対して磁気記録再生装置4が記録再生を行う場合、該磁気記録再生装置4が検出する信号波形が実施形態1に係る磁気記録媒体3、3a、3bの場合とは異なる。
【0200】
なお、図8は、本実施形態に係る磁気記録媒体3cの概略構成及び検出される信号波形を示すものであり、同図(a)は、本実施形態に係る磁気記録媒体3cの概略構成を示す図であり、同図(b)は、同図(a)に示す磁気記録媒体3cのトラックTr13に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図である。なお、図8(b)では、磁気記録再生装置4が図7(a)に示す磁気記録媒体3cから検出する信号のうち、特に信号S1o〜信号S1nの間の信号を示している。
【0201】
磁気記録媒体3cは、各トラックに一列に配置された円柱状の磁気記録セル1を有している。磁気記録媒体3cにおける磁気記録セル1は、所定のトラックピッチ(例えば50nm)で隣接するトラックに形成された磁気記録セル1と互い違いになるように配置されている。
【0202】
また、磁気記録媒体3cは、例えば図8(a)に示すトラックTr13(第1のトラック)に注目した場合、上記第1の領域31には、トラックTr13と隣接する外周側のトラックTr14(第2のトラック)に欠陥領域2nが存在し、該トラックTr13と隣接する内周側のトラックTr15(第3のトラック)に磁気記録セル1nが存在する。一方、上記第2の領域32には、トラックTr13に欠陥領域2oが存在し、トラックTr14に磁気記録セル1oが存在する。また、トラックTr13には欠陥領域2pが含まれている。そして、磁気記録媒体3cは、トラックTr13に対して上記第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを1組有する構成となっている。
【0203】
そして、磁気記録媒体3cは、図8(a)に示すように、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が距離Dだけ紙面右側(図8(a)に示す矢印方向)になるように磁気記録セル1が形成されている。なお、磁気記録媒体3cでは、上記距離DがD=P/2となるように磁気記録セル1が形成されている。その他、磁気記録媒体3cの構成及び製造方法は上記磁気記録媒体3bと同様であるので、その説明については省略する。
【0204】
〔磁気記録媒体3cの記録再生方法〕
次に、磁気記録再生装置4が磁気記録媒体3cに対して磁気情報を記録再生する方法について説明する。
【0205】
磁気再生素子11は、トラックTr13上を追従することにより、磁気記録セル1o、1n等の該トラックTr13に隣接したトラックTr14、Tr15に形成された磁気記録セル1と、該トラックTr13に形成された磁気記録セル1とを交互に検出する。磁気記録媒体3cにおいても、トラックTr13に隣接した内外周2つのトラックTr14、15における磁気記録セル1の周方向位置は等しい。このため、実施形態1に係る磁気記録媒体3、3a、3bと同様、磁気再生素子11は、例えばトラックTr13に形成された磁気記録セル1を1つ検出した後、隣接した2つのトラックTr14、Tr15における磁気記録セル1を2つ同時に検出することを繰り返すように信号を検出していく。なお、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3cを再生する場合には、磁気再生素子11の磁化検出幅Sw1を、
Sw1=2×TP1−Cw1/2
に設定しているものとする。
【0206】
記録再生ヘッド9がトラックTr13に対してオントラックである場合、図8(b)に示すように、磁気再生素子11は、トラックTr14に欠陥領域2nが存在し、トラックTr15に磁気記録セル1nが存在する第1の領域31上を通過するとき、磁気記録セル1nから振幅h3の信号S1nを検出する。一方、磁気再生素子11は、トラックTr14に磁気記録セル1oが存在し、トラックTr15に欠陥領域2oが存在する第2の領域32上を通過するとき、磁気記録セル1oから振幅h3の信号S1oを検出する。
【0207】
このように、記録再生ヘッド9が追従するトラックTr13に対してオントラックである場合、磁気再生素子11が検出する信号S1nと信号S1oとの振幅は等しくなる。従って、この場合には、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3cに対する記録再生ヘッド9の半径位置を調整することなく、トラックTr13に記録された情報の再生を行うことができる。
【0208】
なお、図8(b)に示す符号S1n及びS1oは、磁気再生素子11がトラックTr14、Tr15に形成された磁気記録セル1n、1oから検出する各信号を示す。また、図8(b)に示す符号S2pは、磁気再生素子11がトラックTr13における欠陥領域2p上を通過したときに検出する信号を示す。
【0209】
また、図8(b)には示されていないが、実施形態1と同様、磁気再生素子11は、トラックTr13における磁気記録セル1から最も大きな振幅h1の信号を検出する。また磁気再生素子11は、トラックTr14、Tr15における2つの磁気記録セル1が同じ磁化方向である場合には、該磁気記録セル1から振幅h2の信号を検出する。なお、トラックTr14、Tr15の2つの磁気記録セル1の磁化方向が逆方向である場合には、該磁気記録セル1からの検出信号はゼロレベルとなる。
【0210】
また、記録再生ヘッド9がトラックTr13に対してオフトラックである場合、磁気記録再生装置4は、実施形態1に係る磁気記録媒体3、3a、3bの場合と同様、磁気記録セル1nから検出される信号S1nの振幅と、磁気記録セル1oから検出される信号S1oの振幅とが等しくなるように、記録再生ヘッド9の半径位置を内周側または外周側に調整する。すなわち、磁気記録再生装置4は、磁気再生素子11によって検出される信号S1nと信号S1oとの差分を算出し、該差分に対応する移動量分だけ記録再生ヘッド9を半径方向に移動させる。
【0211】
すなわち、磁気記録再生装置4は、信号S1nの振幅が信号S1oの振幅よりも大きい場合には、記録再生ヘッド9が外周側にオフトラックしていると判断し、該記録再生ヘッド9を内周側に移動させる。一方、磁気記録再生装置4は、信号S1nの振幅が信号S1oの振幅よりも小さい場合には、記録再生ヘッド9が内周側にオフトラックしていると判断し、該記録再生ヘッド9を外周側に移動させる。
【0212】
つまり、磁気記録再生装置4は、記録再生ヘッド9がトラックTr13に対して僅かにオフトラックである場合であっても、トラックTr13に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行うことが可能である。すなわち、磁気記録再生装置4は、フィードバック制御を行うことにより、再生トラックに対するトラッキングを精度よく行うことができる。
【0213】
また、磁気記録再生装置4は、実施形態1の場合と同様、磁気再生素子11が磁気記録媒体3cに形成された磁気記録セル1から検出する信号をもとに、該磁気記録媒体3cへの記録時も再生時と同様の制御を行うことが可能である。すなわち、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3cに対する情報記録を行う場合にも、記録を行っているトラックに対して精度よくトラッキングを行うことができる。
【0214】
(磁気記録媒体3cに対するオフトラック方向の特定方法)
次に、記録再生ヘッド9が走査するトラックTr13に対してオフトラックである場合、磁気記録再生装置4がそのオフトラック方向をどのように判定するかについて説明する。
【0215】
上述のように、磁気記録媒体3cは、各トラックに存在する欠陥領域2(すなわち第1の領域31または第2の領域32)の周方向位置が、該磁気記録媒体3の半径方向に対して一定の周方向にずれている構成である。さらに、磁気記録媒体3cは、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が距離Dだけ紙面右側になるように磁気記録セル1が形成されている。
【0216】
つまり、図8(a)に示すように、磁気再生素子11は、
(1)再生トラックに隣接する外周側のトラックにおける磁気記録セル1のみからの信号(第2の領域32上を通過するときの信号;信号S1oに相当)
(2)再生トラックにおける欠陥領域2からの信号(欠陥領域2上を通過するときの信号;信号S2pに相当)
(3)再生トラックに隣接する内周側のトラックにおける磁気記録セル1のみからの信号(第1の領域31上を通過するときの信号;信号S1nに相当)
の順で検出する。さらに、磁気再生素子11は、磁気記録媒体3cの構成により、該磁気記録媒体3cの上記トラックにおいて、信号(1)を検出した後、信号(2)及び信号(3)を等しいタイミングで検出する。つまり、磁気記録再生装置4において、再生トラックがどのトラックであっても、該トラックにおける信号(1)〜(3)の検出順序、及び上記検出タイミングが等しくなる。
【0217】
さらに、磁気記録媒体3cは、磁気記録媒体3bにおいてn=0(すなわち、隣接する2つのトラックにおける最近接の欠陥領域2の距離が距離D)とした構成であるので、磁気記録再生装置4は、上記信号(1)〜(3)を連続して検出することができる。つまり、磁気記録再生装置4は、実施形態1に係る磁気記録媒体3、3a、3bに対して記録再生を行う場合に比べて、上記差分を求めるまでの時間(すなわち、記録再生ヘッド9の移動制御を行うか否かの判定するまでの時間、該移動制御を行うまでの時間等)を短縮することができる。
【0218】
以上のように、磁気記録媒体3cの構成により、磁気記録再生装置4は、該磁気記録媒体3cのどのトラックに記録再生を行う場合であっても、信号(1)〜(3)を上記順序で、かつ等しいタイミングで検出すると共に、信号(1)〜(3)を連続して検出する。従って、磁気記録再生装置4は、磁気記録媒体3cに対して記録再生を行う場合、信号(2)の直前又は直後に検出する信号を信号(1)又は信号(3)であると特定することができる。このため、磁気記録再生装置4は、信号(1)及び信号(3)以外の信号(すなわち誤った信号)でトラッキング制御を行うといった誤動作を確実に抑制することができる。すなわち、磁気記録媒体3cは、磁気記録再生装置4に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0219】
なお、磁気記録再生装置4に対して高頻度にトラッキング制御を行わせるために、実施形態1と同様、磁気記録媒体3cに従来のサーボパターン又はアドレスパターンに相当する領域が形成されていてもよい。
【0220】
また、磁気記録再生装置4に対して高頻度にトラッキング制御を行わせるために、実施形態1と同様、磁気記録媒体3cは、各トラックに対して第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを複数有する構成となっていてもよい。
【0221】
例えば図9に示すように、磁気記録媒体3cは、周方向において、欠陥領域2を含む第1の磁気記録セル群13と欠陥領域2を含まない(すなわち磁気記録セル1だけで構成された)第2の磁気記録セル群14とが交互に形成されていてもよい。この場合、磁気記録媒体3cは、各トラックに対して第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを複数有する構成となるので、該第1の領域31及び第2の領域32からの信号を高頻度で検出することができ、オフトラックの検出頻度を高めることができる。また、磁気記録媒体3cは、第2の磁気記録セル群14の周方向の幅が任意に設定されることにより、上記組み合わせの数を適宜変更することができる。なお、図9は、第1の磁気記録セル群13と第2の磁気記録セル群14とが交互に形成された、本実施形態に係る磁気記録媒体3cの変形例の概略構成を示す図である。
【0222】
さらに、図9に示す磁気記録媒体3cには、図10に示すように、複数の磁気記録セル1をセクタに分けるためのセクタ分離パターン15が設けられていてもよい。セクタ分離パターン15は、第1の磁気記録セル群13と第2の磁気記録セル群14との間に設けられていても、任意の周方向位置に設けられていてもよい。さらに、セクタ分離パターン15は、図9に示す磁気記録媒体3cだけでなく、図8に示す磁気記録媒体3c、及び実施形態1に係る磁気記録媒体3、3a、3bに設けられていてもよい。なお、図10は、図9に示す磁気記録媒体3cにセクタ分離パターン15が形成された、本実施形態に係る磁気記録媒体3cのさらなる変形例の概略構成を示す図である。
【0223】
〔磁気記録媒体3cの変形例2(磁気記録媒体3d)〕
次に、本実施形態に係る磁気記録媒体3cの変形例ついて、図11を用いて説明する。図11(a)〜図11(c)は、本実施形態に係る磁気記録媒体3cのさらなる変形例を示す図である。
【0224】
図11(a)に示す磁気記録媒体3dは、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が距離D(上記n×P+Dにおいてn=0の場合)だけ紙面左側(図11(a)に示す矢印方向と逆方向)になるように磁気記録セル1が形成されている。なお、磁気記録媒体3dは、上述の距離DがD=P/3となるように磁気記録セル1(又は欠陥領域2)が形成されている。磁気記録媒体3dの構成であっても、磁気記録媒体3cと同様、磁気記録再生装置4に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0225】
図11(b)に示す磁気記録媒体3eは、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置がD(上記n×P+Dにおいてn=0の場合)だけ紙面右側(図11(b)に示す矢印方向)になるように磁気記録セル1が形成されている。また、磁気記録媒体3eは、各トラックにおいて2つの欠陥領域2の間に磁気記録セル1が1つ形成された構成となっている。
【0226】
磁気記録媒体3eは、上述の距離DがD=P/3となるように磁気記録セル1(又は欠陥領域2)が形成されている。すなわち、磁気記録媒体3eにおいて、各トラックにおける2つの欠陥領域2のうち、例えば紙面左側の欠陥領域2に注目すると、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が2P/3(m×P−Dにおいてm=1の場合)だけ紙面右側になるように磁気記録セル1が形成されている。上記紙面左側の欠陥領域2とは、記録再生ヘッド9が先に追従する欠陥領域2を指す。なお、紙面右側の欠陥領域2についても紙面左側の欠陥領域2と同様の配置となっている。
【0227】
磁気記録媒体3eの構成であっても、磁気記録媒体3cと同様、磁気記録再生装置4に対してより高精度なトラッキング制御を行わせることができる。また、磁気記録媒体3eは、各トラックに対して第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを複数有しているので、該両領域からの信号を高頻度で検出することができ、オフトラックの検出頻度を高めることができる。すなわち、磁気記録媒体3eは、磁気記録再生装置4に対して高頻度にトラッキング制御を行わせることができる。
【0228】
図11(c)に示す磁気記録媒体3fは、内周側のトラックほど欠陥領域2の周方向位置が距離Dだけ紙面右側(図11(c)に示す矢印方向)になるように磁気記録セル1が形成されている。また、磁気記録媒体3fは、各トラックにおける欠陥領域2が2つ連続するように磁気記録媒体3が形成された構成となっている。
【0229】
磁気記録媒体3fは、各トラックに対して第1の領域31及び第2の領域32の組み合わせを複数有しているので、磁気記録媒体3eと同様、該両領域からの信号を高頻度で検出することができ、オフトラックの検出頻度を高めることができる。すなわち、磁気記録媒体3fについても、磁気記録再生装置4に対して高頻度にトラッキング制御を行わせることができる。
【0230】
なお、例えば磁気記録媒体3eの各トラックにおいて、2つの欠陥領域2の間に形成される磁気記録セル1の個数を変更することによって、磁気記録再生装置4に各トラックを識別させることも可能となる。
【0231】
また、実施形態1に係る磁気記録媒体3〜3b、本実施形態に係る磁気記録媒体3c〜3fにおいて、欠陥領域2の個数及び配置方法を変更することによって、磁気記録再生装置4に再生を行っているトラックを識別させたり、該欠陥領域2の周方向位置を特定させることも可能となる。
【0232】
さらに、本発明は、実施形態1、2に係る磁気記録媒体3〜3f及び磁気記録再生装置4の構成に限らず、例えば誘電体記録媒体及び誘電体記録再生装置についても同様に提供することができる。この場合、記録媒体としては誘電体記録セルを備えた誘電体記録媒体を用いればよく、記録再生装置は、分極方向を検出する素子(再生素子)及び分極方向を変化させる素子(記録素子)を備えた記録再生ヘッドを具備していればよい。
【0233】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について図12〜図16に基づいて説明すると以下の通りである。なお、実施形態1及び2と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明は省略する。
【0234】
〔光記録再生装置17の概略構成〕
図12は、本発明に係る光記録媒体(情報記録媒体)16に対して記録再生を行う光記録再生装置17の概略構成を示す図である。光記録再生装置17は、図12に示すように、サスペンション5と、スピンドル6と、ボイスコイルモーター7と、ランプ機構8と、記録再生ヘッド18とを備えている。また、図12では、光記録再生装置17は、光記録媒体16を備えた構成となっている。光記録再生装置17は、サスペンション5に備えられた記録再生ヘッド9の代わりに記録再生ヘッド18が備えられていること、及び光記録媒体16に対して光情報を記録再生する点で磁気記録再生装置4とは異なる。
【0235】
スピンドル6は、磁気記録再生装置4と同様、光記録再生装置17が光記録媒体16に情報の記録再生を行うときに、光記録媒体16を反時計周り(図11の矢印方向)に回転させるものである。なお、光記録媒体16の中心部にはスピンドル6と嵌合可能なように穴部が形成されている。
【0236】
また、サスペンション5は、該サスペンション5に備えられた記録再生ヘッド18を光記録媒体16の半径方向に移動させるボイスコイルモーター7に固定され、その反対側の先端に、光記録媒体16に対して情報の記録再生を行う記録再生ヘッド18を備えている。すなわち、記録再生ヘッド18は、ボイスコイルモーター7の作動に応じて、光記録媒体16に対する半径位置を変更させることができる。さらに、ランプ機構8は、光記録媒体16に情報の記録再生を行わないときに、記録再生ヘッド18が退避する場所である。
【0237】
次に、図13を用いて、記録再生ヘッド18の概略構成について説明する。図13は、記録再生ヘッド18の概略構成を示す図である。
【0238】
図13に示すように、記録再生ヘッド18は、受光素子19及び近接場光発生部(発光素子)20を備えている。受光素子19は、光記録媒体16に記録された情報を再生するときに、光記録セル(情報記録セル)25からの散乱光を受光するものである。また、受光素子19は、トラッキング制御用の信号を検出する。
【0239】
近接場光発生部20は、半導体レーザ光源24(図14(a)にて図示)から光が照射されることによって、近接場光を発生させるものである。具体的には、近接場光発生部20は、微小開口部21を備えており、半導体レーザ光源24から出射された光が該微小開口部21に照射されることにより、微小開口部21付近に近接場光を発生させる。なお、近接場光とは、物質に光を照射したときに物質表面に生じる光であって、伝播せず物質表面のごく限られた近傍にのみ局在する光である。
【0240】
また、受光素子19と近接場光発生部20との光記録媒体16から見た円周方向における位置関係は、記録再生ヘッド18が回転する光記録媒体16の任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を受光素子19が先に通過し、近接場光発生部20がその後に通過するような位置関係となっている。
【0241】
なお、本実施形態に係る記録再生ヘッド18では、近接場光発生部20が、例えば金薄膜からなっている。また、微小開口部21の平面サイズは、200nm×300nmとなるように形成されている。
【0242】
次に、図14を用いて、記録再生ヘッド18の製造方法について説明する。図14は、記録再生ヘッド18の製造方法を示す図であり、同図(a)は、半導体レーザ光源24が形成された様子を示す図であり、同図(b)は、受光素子19と近接場光発生部20とが形成された様子を示す図である。
【0243】
まず、図14(a)に示すように、GaAs基板22上に、波長650nmの光を出射可能な半導体レーザ光源24を形成する。その後、図14(b)に示すように、半導体レーザ光源24が形成されたGaAs基板22上に、例えばSiN(窒化シリコン)又はAlN(窒化アルミニウム)からなる透明薄膜層23を形成すると共に、透明薄膜層23上に、受光素子19と、微小開口部21を有した近接場光発生部20とを形成する。このとき、微小開口部21を有した近接場光発生部20は、半導体レーザ光源24から出射された光が照射される位置となるように形成されている。
【0244】
なお、図14(b)では、近接場光発生部20における微小開口部21の形状は、四角形となっているが、これに限らず、円形、三角形等、微小開口部21付近に近接場光を発生させる構成であればどのような構成であってもよい。
【0245】
また、近接場光を発生させる構成についても、上記記録再生ヘッド18に限らず、光ファイバー等を用いて近接場光を発生させてもよい。さらに、半導体レーザ光源24、受光素子19及び近接場光発生部20を備えた記録再生ヘッド18を、例えば半導体レーザ光源24、受光素子19及びSIL(Solid Immersion Lens)型の近接場光発生素子を具備した、光ピックアップタイプの記録再生ヘッドに置き換えてもよい。
【0246】
以上のように、光記録再生装置17は、スピンドル6及びサスペンション5の動作と、記録再生ヘッド18による近接場光の発生及び散乱光の受光とを制御することにより、光記録媒体16の所定の位置に記録再生を行うことができる。
【0247】
すなわち、光記録再生装置17は、サスペンション5、スピンドル6等の各種機能を制御するための所定の演算処理を行う制御部51を備えており、該制御部51は例えばCPU(Central Processing Unit)等によって実現されている。さらに、制御部51は、本実施形態に係る光記録媒体16に対して記録再生を行うときの記録再生ヘッド18の制御を行うために、信号特定部511と、差分算出部512と、ヘッド位置制御部513とを備えている。また、光記録再生装置17は、制御部51で利用される各種データ、プログラムの実行によって得られたデータ等を記憶する記憶部52を備えている。
【0248】
なお、上記制御部51(信号特定部511、差分算出部512及びヘッド位置制御部513)及び記憶部52は、実施形態1に係る磁気記録再生装置4に備えられた制御部41(信号特定部411、差分算出部412及びヘッド位置制御部413)及び記憶部42と同様の機能を有しているので、ここではその説明を省略する。
【0249】
また、実施形態1と同様、光記録媒体16に対して光記録再生装置17が行う制御は、制御部51が記憶部52に記憶された情報を参照することによって実現されている。
【0250】
〔光記録媒体16の概略構成及び製造方法〕
次に、図15を用いて、本実施形態に係る光記録媒体16の概略構成及び製造方法について説明する。図15は、本実施形態に係る光記録媒体16の概略構成を示す図である。
【0251】
光記録媒体16は、孤立した光記録セル(情報記録セル)25を配列したパターンドメディアである。また、光記録媒体25は、例えば照射されるレーザ光によって光記録セル25(後述の光記録セル25a、25bを含む)の結晶性を変化させることで、光記録再生装置17の近接場光発生部20で発生した再生時の近接場光による散乱光の強度を変化させるタイプの媒体である。さらに、光記録媒体16には、複数のトラックが該光記録媒体16の半径方向に等しい間隔(所定のトラックピッチ(例えば70nm))で同心円状に配置されており、該複数のトラックには上記光記録セル25が配置されている(すなわち、光記録セル25は、各トラックに一列に配置されている)。また、光記録セル25は、円柱状のセルであり、光記録再生装置17によって磁気情報が記録再生されるものであり、隣接するトラックに形成された光記録セル25と互い違いになるように配置されている。
【0252】
なお、本実施形態に係る光記録媒体16の光記録セル25の大きさは、直径40nm及び高さ40nmとなっているが、これに限らず、直径5nm〜100nm及び高さ10nm〜60nmとなっていればよい。また、光記録セル25は、光記録セルの総称であり、後述の光記録セル25a、25bを含むものである。
【0253】
ここで、光記録セル25が「隣接するトラックに形成された光記録セル25と互い違いになるように配置されている」とは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、光記録セル25の円周方向における周方向位置(光記録媒体16の円周方向における位置)と、該光記録セル25が形成されたトラックと隣接するトラックに形成された光記録セル25の周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、同じトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル1間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接するトラックの何れかには光記録セル25が1つ形成されていることである。すなわち、光記録セル25が互い違いになるように配置された構成としては、同じトラックにおいて隣り合った2つの光記録セル25間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接する両方のトラックに光記録セル25が存在する場合と、該トラックと隣接する一方のトラックには光記録セル25が存在するものの、もう一方のトラックには光記録セル25が存在しない場合とがある。なお、本実施形態に係る光記録媒体16では、任意の光記録セル25は、その周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの光記録セル25の中心位置となるように形成されている。
【0254】
光記録媒体16の構成について、図15を用いてさらに具体的に説明する。光記録媒体16では、上記のように、光記録セル25が隣接するトラックに形成された光記録セル25と互い違いになるように配置されている。また、光記録媒体16では、各トラックにおいて規則的に光記録セル25が配置されている場合に該光記録セル25が存在するはずの領域に、該光記録セル25が存在しない領域が少なくとも1つある。「規則的に光記録セル25が配置されている」とは、図15に示すように、点線で囲まれた領域にも光記録セル25が存在し、各トラックでの光記録セル25の周方向位置の間隔が等しいことを指す。
【0255】
すなわち、本実施形態に係る光記録媒体16には、任意のトラック内で隣接した2つの光記録セル25間の周方向位置において、該トラックと隣接する一方のトラックには光記録セル25が存在せず、隣接するもう一方のトラックには光記録セル25が存在するといった第1の領域61及び第2の領域62が存在する。そして、光記録媒体16は、上記任意のトラックに対して上記第1の領域61及び第2の領域62の組み合わせを少なくとも1組有する構成となっている。
【0256】
例えば図15に示すトラックTr16(第1のトラック)を上記任意のトラックとした場合、図15に示す光記録媒体16は、第1の領域61及び第2の領域62の組み合わせを1組有する構成となっている。第1の領域61には、該トラックTr16内で隣接した光記録セル25間の周方向位置において、該トラックTr16と隣接する外周側のトラックTr17(第2のトラック)に光記録セル25が存在せず、該トラックTr16と隣接する内周側のトラックTr18(第3のトラック)には光記録セル25が存在する。一方、第2の領域62には、トラックTr16内で隣接した光記録セル25間の周方向位置において、トラックTr18には光記録セル25が存在せず、トラックTr17には光記録セル25が存在する。
【0257】
なお、本実施形態でも、実施形態1と同様、「規則的に光記録セル25が配置されている場合に該光記録セル25が存在するはずの領域に、該光記録セル25が存在しない領域」を以降「欠陥領域(特定領域)26(後述の欠陥領域26a〜26eを含む)」と称し、点線で囲んだ円で表すものとする。
【0258】
つまり、上記第1の領域61及び第2の領域62は、以下のように言い換えることができる。すなわち、第1の領域61には、トラックTr16と隣接する外周側のトラックTr17に欠陥領域26aが存在し、該トラックTr16と隣接する内周側のトラックTr18に光記録セル25aが存在するといえる。一方、第2の領域62には、トラックTr18に欠陥領域26bが存在し、トラックTr17に光記録セル25bが存在するといえる。なお、図15に示すように、トラックTr14、Tr15、Tr16にはそれぞれ、欠陥領域26c、26d、26eが含まれている。
【0259】
また、光記録媒体16において、光記録セル25が形成されていない領域(欠陥領域26を含む領域)は、再生時に、散乱光の強度が変化しない金属によって形成されている。さらに、光記録媒体16は、受光素子19が、光記録セル25からの散乱光の強度を2値の信号として検出する一方、上記散乱光の強度が変化しない金属領域からの信号を上記2値(信号振幅)の平均値(中央値)として検出するように設計されている。
【0260】
また、光記録セル25の形状は、円柱状に限られるものではなく、例えば四角柱状、楕円柱状、球状等であってもよく、孤立した光記録セル25に光情報が記録できれば形状であればどのような形状であってもよい。
【0261】
さらに、光記録媒体16の回転方向は、図15に示すように、紙面左から右(矢印方向)となっているため、光記録再生装置17は、光記録媒体16において、紙面右側の光記録セル25から順に信号検出していく。
【0262】
以下、光記録媒体16の製造方法の一例を示す。まず、ガラス基板上にレジストを塗布し、電子線リソグラフィー法によって、レジストに微細パターンを形成した後、光記録セル25を形成する材料を、この微細パターンが形成されたレジスト上に成膜する。その後、有機溶剤を用いて、レジストとレジスト上に堆積した光記録セル25を形成する材料とを除去した後、この基板上に金属層を成膜する。そして、この基板の金属層側から研磨を行うことで、光記録セル25を表面に露出させると共に、基板表面を平滑にする。最後に、光記録セル25が形成された基板に対して潤滑剤を塗布する。
【0263】
なお、光記録セル25を形成する材料としては、光記録再生装置17から光が照射されることによって(熱を加えられることによって)、その結晶性が変化する材料であればどのような材料であってもよい。光記録セル25を形成する材料としては、例えばGeSb、GeSbTe、AgInSbTe合金等を用いることができる。また、レジストへの微細パターンの形成方法としては、例えば陽極酸化法、フォトリソグラフィー法、ナノインプリント法等を用いることが可能である。
【0264】
また、上記光記録媒体16の製造方法では、光記録媒体16の片面にのみ光記録面(すなわち、光記録セル25を有する面)を形成しているが、これに限らず、光記録媒体16の両面に光記録面を形成してもよい。この場合には、上記製造方法に示す工程が、光記録媒体16の両面に対して実施されればよい。なお、光記録媒体16の両面に形成される光記録面への潤滑剤の塗布については、同時に行うことも可能である。
【0265】
〔光記録媒体16の記録再生方法〕
次に、光記録再生装置17が光記録媒体16に対して光情報を記録再生する方法について説明する。なお、光記録再生装置17が光記録媒体16に対して実施形態1に係る磁気記録再生装置4と同様の制御を行う場合には、その説明を省略する。
【0266】
光記録再生装置17は、光記録媒体16に記録された情報を再生するときには、記録再生ヘッド18の半導体レーザ光源24が、近接場光発生部20に対して、比較的弱いパワー(例えば0.5mW)のレーザ光を照射する。そして、記録再生ヘッド18の受光素子19は、近接場光発生部20において発生した近接場光による、光記録媒体16の光記録セル25からの散乱光を検出する。光記録再生装置17は、受光素子19が検出する、光記録媒体16からの散乱光の強度を検出することで、該光記録媒体16に記録された情報を再生することができる。
【0267】
一方、光記録再生装置17は、光記録媒体16に情報を記録するときには、半導体レーザ光源24は、近接場光発生部20に対して、上記再生時におけるレーザ光のパワーよりも強いパワー(例えば5mW)のレーザ光を照射する。このレーザ光が光記録媒体16の光記録セル25に照射されることにより、該光記録セル25を形成する材料の結晶性が変化する。これにより、光記録再生装置17は、光記録セル25に情報を記録することができる。そして、光記録媒体16は、光記録セル25の結晶性を変化させることで、光記録再生装置17の近接場光発生部20で発生した再生時の近接場光による散乱光の強度を、該光記録セル25毎に変化させることができる。
【0268】
また、本実施形態に係る光記録再生装置17の受光素子19は、再生時において、光検出領域が散乱光の強度が変化しない金属である場合には、光記録媒体16から振幅0の信号を検出する。つまり、受光素子19が検出する信号のゼロレベルは、光記録セル25からの散乱光の強度を2値の信号として検出する場合、これら2値の平均値となるように設定されている。
【0269】
さらに、受光素子19が光情報を検出可能な半径方向の幅である光検出幅Sw2は、トラックピッチをTP2、光記録セル25の直径をCw2とすると、
Sw2=2×TP2−Cw2/2
に設定されている。つまり、受光素子19の光検出幅Sw2は、図15に示すように、記録再生ヘッド18がトラックTr16上を走査する場合、トラックTr17からトラックTr16側に直径Cw2の4分の1だけずれた位置と、トラックTr18からトラックTr16側に直径Cw2の4分の1だけずれた位置との間の距離となる。
【0270】
ここでは、光記録再生装置17の受光素子19が、図15に示す光記録媒体16のトラックTr16に沿って、紙面右側の光記録セル25から左方向(図1に示す矢印とは反対方向)に向かって信号を検出する場合について説明する。なお、図16は、図13に示す受光素子19が、図15に示す光記録媒体16のトラックTr16に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図であり、同図(a)は、図15に示すトラックTr16においてオントラックである時の検出信号の絶対値を示す図であり、同図(b)は、図13に示す記録再生ヘッド18が、図15に示すトラックTr16から内周側に僅かに位置ずれを起こしている場合の検出信号の絶対置を示す図であり、同図(c)は、記録再生ヘッド18が、図15に示すトラックTr16から外周側に僅かに位置ずれを起こしている場合の検出信号の絶対値を示す図である。
【0271】
なお、図15(a)〜図15(c)に示す符号S25a及びS25bは、受光素子19がトラックTr17、Tr18に形成された光記録セル25a、25bから検出する信号を示す。また、図15(a)に示すS26c〜S26eは、受光素子19が欠陥領域26c〜26e上を通過したときに検出する信号を示す。
【0272】
光記録媒体16が光記録再生装置17に装着されると、実施形態1と同様、該光記録再生装置17は、サスペンション5、スピンドル6及びボイスコイルモーター7を制御して、記録再生ヘッド18がトラックTr16上に位置するように移動させる。そして、受光素子19は、トラックTr16における光記録セル25と該トラックTr16に隣接するトラックTr17、Tr18における光記録セル25とを交互に検出する。本実施形態に係る光記録媒体16において、トラックTr17、Tr18における光記録セル25の周方向位置が等しいので、受光素子19は、例えばトラックTr16における光記録セル25を1つ検出した後、トラックTr17、Tr18における光記録セル25を2つ同時に検出していく。
【0273】
また、光記録再生装置17には、記録再生ヘッド18が追従するトラック(この場合はトラックTr16)における光記録セル25からの検出信号として最小の信号振幅(オフトラックのときでも上記トラックにおける光記録セル25からの検出信号であることが判別可能な信号振幅)が予め設定されている。そして、光記録再生装置17は、実施形態1と同様の制御を行うことによって、記録再生ヘッド18が追従するトラックにおける光記録セル25と、該トラックに隣接するトラックにおける光記録セル25とを判別することができる。
【0274】
記録再生ヘッド18がトラックTr16上を追従するときに、該トラックTr16に対してオントラックである場合、図16(a)に示すように、受光素子19は、該トラックTr16における光記録セル25から最も大きな振幅h8の信号を検出する。また、受光素子19は、トラックTr17、Tr18における2つの光記録セル25からの散乱光の強度が同じである場合には、該光記録セル25から振幅h9の信号を検出する。なお、トラックTr17、Tr18の2つの光記録セル25からの散乱光の強度が異なる場合には、該光記録セル25からの検出信号はゼロレベルとなる。
【0275】
また、受光素子19は、再生トラックに隣接する一方のトラックに欠陥領域26が存在し、隣接するもう一方のトラックに光記録セル25が存在する(第1の領域61又は第2の領域62上を通過する)場合には、図16(a)に示すように、振幅h10の信号を検出する。例えば受光素子19は、トラックTr17に欠陥領域26aが存在し、トラックTr18に光記録セル25aが存在する第1の領域61上を通過するとき、光記録セル25aから振幅h10の信号S25aを検出する。一方、受光素子19は、トラックTr17に光記録セル25bが存在し、トラックTr18に欠陥領域26bが存在する第2の領域62上を通過するとき、光記録セル25bから振幅h10の信号S25bを検出する。
【0276】
このように、記録再生ヘッド18が追従するトラックTr14に対してオントラックである場合、受光素子19が検出する信号S25aと信号S25bとの振幅は等しくなる。従って、この場合には、光記録再生装置17は、光記録媒体16に対する記録再生ヘッド18の半径位置を調整することなく、トラックTr14に記録された情報の再生を行うことができる。
【0277】
また、上述のように、受光素子19の光検出幅Sw2が(2×TP2−Cw2/2)となっており、該受光素子19は、再生トラックにおける光記録セル25からの信号振幅h8を最も大きく検出する。このため、光記録再生装置17では、トラックTr16に隣接するトラックTr17、Tr18における光記録セル25からの検出信号がクロストークしても、再生エラーが生じにくい。
【0278】
次に、記録再生ヘッド18がトラックTr16に対してオフトラックである場合、図16(b)及び図16(c)に示すように、受光素子19がトラックTr18の光記録セル25aから検出する信号S25aの振幅と、トラックTr17の光記録セル25bからの信号S25bの振幅とが異なる。
【0279】
記録再生ヘッド9がトラックTr16から内周側(トラックTr18側)に僅かに位置ずれを起こした場合、図16(b)に示すように、受光素子19がトラックTr18における光記録セル25aから検出する信号S25aの振幅h11は、振幅h10よりも大きくなる。一方、受光素子19がトラックTr17における光記録セル25bから検出する信号S25bの振幅h12は、振幅h10よりも小さくなる。従って、光記録再生装置17は、受光素子19がこれらの信号S25a、S25bを検出すると、該信号S25a、S25bの振幅差(h11−h12)を求める。そして、光記録再生装置17は、振幅h11と振幅h12とが等しく(すなわち、h11−h12=0)なるように、記録再生ヘッド18の半径位置を外周側(トラックTr17側)にずらしてトラックTr16に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0280】
一方、記録再生ヘッド18がトラックTr16から外周側(トラックTr17側)に僅かに位置ずれを起こした場合、図16(c)に示すように、受光素子19がトラックTr18における光記録セル25aから検出する信号S25aの振幅h13は、振幅h10よりも小さくなる。一方、受光素子19がトラックTr17における光記録セル25bから検出する信号S25bの振幅h14は、振幅h10よりも大きくなる。従って、光記録再生装置17は、受光素子19がこれらの信号S25a、S25bを検出すると、該信号S25a、S25bの振幅差(h13−h14)を求める。そして、光記録再生装置17は、振幅h13と振幅h14とが等しく(すなわち、h13−h14=0)なるように、記録再生ヘッド18の半径位置を内周側(トラックTr18側)にずらしてトラックTr16に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0281】
なお、光記録再生装置17には、例えば第1の領域61と第2の領域62との振幅差(差分)と記録再生ヘッド18の移動量とを対応付けたテーブルが記憶されている。そして、光記録再生装置17は、実施形態1に係る磁気記録再生装置4と同様のフィードバック制御を行うことによって、上記記録再生ヘッド18のフィードバック制御を行う。
【0282】
また、実施形態1、2と同様、光記録再生装置17には、載置される光記録媒体16の欠陥領域26の配置に関する配置情報が記憶されている。つまり、光記録再生装置17は、この配置情報を参照すると共に、実施形態1に係る磁気記録再生装置4と同様の制御を行うことによって、受光素子19は、
(1)再生トラックに隣接する外周側のトラックにおける光記録セル25のみからの信号
(2)再生トラックにおける欠陥領域26からの信号
(3)再生トラックに隣接する内周側のトラックにおける光記録セル25のみからの信号
の順で検出することができる。すなわち、光記録媒体16は、記録再生ヘッド18にオフトラックが生じた場合に、該オフトラック方向を光記録再生装置17に判別させることができる。
【0283】
また、上記光記録媒体16の構成により、光記録再生装置17は、該光記録媒体16への記録時も再生時と同様の制御を行うことが可能であり、この記録時の制御についても実施形態1に係る磁気記録再生装置4の記録時の制御と同様である。
【0284】
以上のように、本実施形態に係る光記録媒体16は、実施形態1と同様、第2のトラックの光記録セル25が形成されていない欠陥領域26と、第3のトラックに形成された光記録セル25とを含む第1の領域61、及び、第3のトラックの光記録セル25が形成されていない欠陥領域26と、第2のトラックに形成された光記録セル25とを含む第2の領域62、を少なくとも1組有する構成である。
【0285】
これにより、光記録媒体16は、光記録再生装置17に対して、データ記録領域内に欠陥領域26を含む第1の領域61及び第2の領域62から検出させる信号をもとに第1のトラックに対する高精度なトラッキング制御を行わせることができる。よって、光記録媒体16は、トラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がない。このため、光記録媒体16は、データ記録領域の記録容量をほとんど低下させることなく、光記録再生装置17に記録再生ヘッド18の位置合わせを高精度に行わせることができる。
【0286】
従って、光記録媒体16は、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記録領域をほとんど低下させることなく、光記録再生装置17に対して、高精度にトラッキング制御を行わせることができる。すなわち、光記録媒体16は、再生エラー及び記録エラーの少ない光記録再生装置17を提供することが可能となる。
【0287】
(光検出幅Sw2について)
なお、上述では、受光素子19の光検出幅Sw2は、トラックピッチをTP2、光記録セル25の直径をCw1とすると、
Sw2=2×TP2−Cw2/2
に設定されていたが、これに限られたものではない。すなわち、上記光検出幅Sw2は、受光素子19が再生トラックにおける光記録セル25からの光の散乱強度変化を、該再生トラックに隣接するトラックにおける光記録セル25からの光の散乱強度変化と区別して検出することが可能な程度の幅に設定されていればよい。しかしながら、光検出幅Sw2が、
Sw2≦2×TP2−Cw2
である場合、受光素子19は、再生トラックと隣接するトラックにおける光記録セル25からの光の散乱強度変化の検出が困難になる。このため、光検出幅Sw2は、
Sw2>2×TP2−Cw2
であることが望ましい。一方、光検出幅Sw2が、
Sw2≧2×TP2
である場合、再生トラックから検出される信号振幅よりも、該再生トラックと隣接するトラックから検出される信号振幅の方が大きくなる可能性がある。このため、光検出幅Sw2は、
Sw2<2×TP2
であることが望ましい。
【0288】
上述より、受光素子19の光検出幅Sw2は、
2×TP2−Cw2<Sw2<2×TP2 ・・・(2)
と設定されていることが望ましい。このように、受光素子19の光検出幅Sw2を式(2)となるように設定することで、受光素子19は、再生トラックにおける光記録セル25からの信号を最も大きい信号として検出できる。また、受光素子19は、第1の領域61及び第2の領域62における光記録セル25からの信号を、トラッキング制御用の信号として検出することができる。
【0289】
従って、光記録再生装置17は、再生トラックに隣接するトラックにおける光記録セル25からの信号を適切な大きさで検出することができるので、該信号がクロストークしても、再生エラーを生じにくくすることができる。すなわち、光記録媒体16は、光記録再生装置17に対して高精度なトラッキング制御を行わせることができる。
【0290】
(空間分解可能幅Sw2について)
ここで、本実施形態に係る記録再生ヘッド18の受光素子19において、該受光素子19の円周方向における空間分解可能幅をSt2、任意のトラック(第1のトラック)に形成された光記録セル25と、周方向において該光記録セル25と最も近接した、該トラックと隣接したトラック(第2のトラック又は第3のトラック)に形成された光記録セル25との距離をRとするとき、St2<Rであることが好ましい。なお、空間分解可能幅St2とは、受光素子19が単一の光記録セル25上を通過したときに得られる信号の半値幅(時間軸)をt2、通過時の線速度をv2としたとき、「t2×v2」で表される値を指す。
【0291】
上記関係の場合、光記録再生装置17は、トラッキング制御用の信号を検出するときに、各々の光記録セル25からの検出信号を分離しやすくなるため、トラッキングエラーを生じにくくすることができる。これは、この構成によれば、隣接する光記録セル25からの信号に起因した検出信号の歪みが小さくなるためである。
【0292】
〔光記録媒体16の変形例について〕
なお、光記録媒体16は、図9に示す磁気記録媒体3cと同様、周方向において、欠陥領域26を含む第1の磁気記録セル群と欠陥領域26を含まない(すなわち光記録媒体16だけで構成された)第2の磁気記録セル群とが交互に形成されていてもよい。この場合、光記録媒体16は、各トラックに対して第1の領域61及び第2の領域62の組み合わせを複数有する構成となるので、該第1の領域61及び第2の領域62からの信号を高頻度で検出することができ、オフトラックの検出頻度を高めることができる。また、光記録媒体16は、第2の磁気記録セル群の周方向の幅が任意に設定されることにより、上記組み合わせの数を適宜変更することができる。
【0293】
また、光記録媒体16は、図10に示す磁気記録媒体3cと同様、複数の光記録セル25をセクタに分けるためのセクタ分離パターンが設けられていてもよい。セクタ分離パターンは、上記第1の磁気記録セル群と第2の磁気記録セル群との間に設けられていても、任意の周方向位置に設けられていてもよい。
【0294】
さらに、光記録媒体16には、実施形態1と同様、各トラックを識別するための識別情報が記録されたアドレスパターンが作製されていてもよい。
【0295】
その他、光記録媒体16における光記録セル25及び欠陥領域26の配置についても、任意のトラックに対して第1の領域と第2の領域との組み合わせを少なくとも1組有する構成であればよく、例えば実施形態1、2に係る磁気記録媒体3〜3fと同様の配置及びこれらを組み合わせた配置であってもよい。
【0296】
〔補足〕
最後に、本発明に係る磁気記録再生装置4の各ブロック、特に信号特定部411、差分算出部412、ヘッド位置制御部413、及び本発明に係る光記録再生装置17の各ブロック、特に信号特定部511、差分算出部512、ヘッド位置制御部513は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0297】
すなわち、本実施形態に係る磁気記録再生装置4および光記録再生装置17は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである磁気記録再生装置4および光記録再生装置17の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記磁気記録再生装置4および光記録再生装置17に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0298】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0299】
また、本実施形態に係る磁気記録再生装置4および光記録再生装置17を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話機網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0300】
〔本発明の別の表現〕
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
【0301】
すなわち、本発明に係る情報記録媒体は、互いに孤立した複数の情報記録セルが配列され、該情報記録セルは、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、各トラックはそれぞれ、欠陥部を少なくとも1つ以上含む情報記録媒体であって、第1のトラックに対して隣接する両側2つの第2のトラック及び第3のトラックにおける欠陥部をそれぞれ第1の欠陥部及び第2の欠陥部とすると、上記第1のトラック内で隣接した2つの情報記録セルの間の周方向位置に、第1の欠陥部と第3のトラックにおける情報記録セルが存在し、上記第1のトラック内で隣接した2つの情報記録セルの間の周方向位置に、第2の欠陥部と第2のトラックにおける情報記録セルが存在する組み合わせが、少なくとも1組以上存在することを特徴としている。
【0302】
また、上記情報記録媒体において、上記欠陥部が、一定方向の隣接するトラックに移動するに従い、周方向位置が一定方向に移動するように備えられたことが好ましい。
【0303】
また、上記情報記録媒体において、情報記録セルの周方向における位置の隣接トラック間での差をD、情報記録セルの周方向へのピッチをP、nを0以上の整数(0,1,2,・・・)とするとき、一定方向の隣接するトラックに移動するに従い、上記欠陥部の周方向位置が、(n×P+D)で示される分だけ、一定の方向に移動し、上記nが一定の値であることが好ましい。
【0304】
また、上記情報記録媒体において、上記nが0であることが好ましい。
【0305】
また、上記情報記録媒体において、情報記録セルの周方向における位置の隣接トラック間での差をD、情報記録セルの周方向へのピッチをP、mを自然数(1,2,3,・・・)とするとき、一定方向の隣接するトラックに移動するに従い、上記欠陥部の周方向位置が、(m×P−D)で示される分だけ、一定の方向に移動し、上記mが一定の値であることが好ましい。
【0306】
また、上記情報記録媒体において、上記mが1であることが好ましい。
【0307】
また、上記情報記録媒体において、上記情報記録セルは、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルであることが好ましい。
【0308】
また、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気記録素子及び磁気再生素子を備えた記録再生ヘッドと、を備えた磁気記録再生装置であって、上記第2のトラック及び第3のトラックに隣接する上記第1のトラックの記録及び/再生において、上記第1のトラックにおいて隣接した2つの情報記録セルの間の周方向位置に、第1の欠陥部と第3のトラックにおける情報記録セルが存在する周方向位置と、上記第1のトラックにおいて隣接した2つの情報記録セルの間の周方向位置に、第2の欠陥部と第2のトラックにおける情報記録セルが存在する周方向位置との、少なくとも2箇所において検出される信号の波形をもとに、トラッキング制御を行うことを特徴としている。
【0309】
また、上記磁気記録再生装置において、上記情報記録セルの半径方向への幅をCw1、上記磁気再生素子の半径方向の検出幅をSw1、上記情報記録セルのトラックピッチをTP1としたとき、2×TP1−Cw1<Sw1<2×TP1であることが好ましい。
【0310】
また、上記磁気記録再生装置において、上記磁気再生素子の周方向における空間分解可能幅St1とし、上記第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの周方向における距離R1とするとき、St1<R1であることが好ましい。
【0311】
また、上記磁気記録再生装置において、上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことが好ましい。
【0312】
また、上記磁気記録再生装置において、上記距離検出動作は、上記磁気記録素子による記録動作、上記磁気再生素子による再生動作、及び該磁気再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記情報記録媒体の半径方向における半径位置毎に繰り返し行う動作と、再生時において、オントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置をr1とし、上記記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r2とするとき、該磁気記録素子と該磁気再生素子との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含むことが好ましい。
【0313】
また、上記情報記録媒体において、上記情報記録セルは、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルであることが好ましい。
【0314】
本発明に係る光記録再生装置は、上記情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う光記録素子及び受光素子を備えた記録再生ヘッドと、を備えた光記録再生装置であって、上記第2のトラック及び第3のトラックに隣接する上記第1のトラックの記録及び/再生において、上記第1のトラック内で隣接した2つの情報記録セルの間の周方向位置に、第1の欠陥部と第3のトラックにおける情報記録セルが存在する周方向位置と、上記第1のトラック内で隣接した2つの情報記録セルの間の周方向位置に、第2の欠陥部と第3のトラックにおける情報記録セルが存在する周方向位置との、少なくとも2箇所において検出される信号の波形をもとに、トラッキング制御を行うことを特徴としている。
【0315】
また、上記光記録再生装置において、上記情報記録セルの半径方向への幅をCw2、上記受光素子の半径方向の検出幅をSw2、上記情報記録セルのトラックピッチをTP2としたとき、2×TP2−Cw2<Sw2<2×TP2であることが好ましい。
【0316】
また、上記光記録再生装置において、上記受光素子の周方向における空間分解可能幅Sw2とし、上記第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離R2とするとき、Sw2<R2であることが好ましい。
【0317】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0318】
本発明に係る情報記録媒体は、例えばパターンドメディアのような高密度情報記録媒体に好適に利用できる。また、本発明に係る磁気記録再生装置及び光記録再生装置は、上記情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0319】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す磁気記録媒体に対して記録再生を行う磁気記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示す磁気記録再生装置の記録再生ヘッドの概略構成を示す図である。
【図4】図3に示す磁気再生素子が、図1に示す磁気記録媒体のトラックTr1に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図であり、同図(a)は、図1に示すトラックTr1においてオントラックである時の検出信号の絶対値を示す図であり、同図(b)は、図3に示す記録再生ヘッドが、図1に示すトラックTr1から内周側に僅かに位置ずれを起こしている場合の検出信号の絶対置を示す図であり、同図(c)は、図3に示す記録再生ヘッドが、図1に示すトラックTr1から外周側に僅かに位置ずれを起こしている場合の検出信号の絶対値を示す図である。
【図5】図1に示す磁気記録媒体の変形例及び検出される信号波形を示すものであり、同図(a)は、磁気記録媒体の変形例の概略構成を示す図であり、同図(b)は、同図(a)に示す磁気記録媒体のトラックTr4に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図である。
【図6】図1に示す磁気記録媒体の変形例の別の概略構成を示す図である。
【図7】図1に示す磁気記録媒体のさらなる変形例及び検出される信号波形を示すものであり、同図(a)は、図1に示す磁気記録媒体のさらなる変形例の概略構成を示す図であり、同図(b)は、同図(a)に示す磁気記録媒体のトラックTr10に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図である。
【図8】本発明の別の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成及び検出される信号波形を示すものであり、同図(a)は、本実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図であり、同図(b)は、同図(a)に示す磁気記録媒体のトラックTr13に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図である。
【図9】第1の磁気記録セル群と第2の磁気記録セル群とが交互に形成された、図8に示す磁気記録媒体の変形例の概略構成を示す図である。
【図10】図9に示す磁気記録媒体にセクタ分離パターンが形成された、図8に示す磁気記録媒体のさらなる変形例の概略構成を示す図である。
【図11】(a)〜(c)は、図8に示す磁気記録媒体のさらなる変形例を示す図である。
【図12】本発明のさらに別の一実施形態に係る光記録媒体に対して記録再生を行う光記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図13】図12に示す記録再生ヘッドの概略構成を示す図である。
【図14】図13に示す記録再生ヘッドの製造方法を示す図であり、同図(a)は、半導体レーザ光源が形成された様子を示す図であり、同図(b)は、受光素子と近接場光発生部とが形成された様子を示す図である。
【図15】本発明のさらに別の一実施形態に係る光記録媒体の概略構成を示す図である。
【図16】図15に示す受光素子が、図13に示す光記録媒体のトラックTr16に沿って信号を検出したときの検出信号の絶対値を示す図であり、同図(a)は、図15に示すトラックTr16においてオントラックである時の検出信号の絶対値を示す図であり、同図(b)は、図13に示す記録再生ヘッドが、図15に示すトラックTr16から内周側に僅かに位置ずれを起こしている場合の検出信号の絶対置を示す図であり、同図(c)は、図13に示す記録再生ヘッド18が、図15に示すトラックTr16から外周側に僅かに位置ずれを起こしている場合の検出信号の絶対値を示す図である。
【符号の説明】
【0320】
1 磁気記録セル(情報記録セル)
2、26 欠陥領域(特定領域)
3、3a〜3f 磁気記録媒体(情報記録媒体)
4 磁気記録再生装置
31、61 第1の領域
32、62 第2の領域
9、18 記録再生ヘッド
10 磁気記録素子
11 磁気再生素子
16 光記録媒体(情報記録媒体)
17 光記録再生装置
19 受光素子
20 近接場光発生部(発光素子)
25 光記録セル(情報記録セル)
Tr1、4、7、10、13、16 トラック(第1のトラック)
Tr2、5、8、11、14、17 トラック(第2のトラック)
Tr3、6、9、12、15、18 トラック(第3のトラック)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに孤立した複数の情報記録セルが配列されたデータ記録領域を有する情報記録媒体であって、
上記情報記録媒体の半径方向に等しい間隔で同心円状に配置された複数のトラックを有し、
上記情報記録セルは、上記複数のトラックに形成されると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、
上記複数のトラックのうちの注目する1つのトラックを第1のトラックとし、該第1のトラックに隣接するトラックを第2のトラック及び第3のトラックとするとき、
上記第2のトラックの上記情報記録セルが形成されていない特定領域と、上記第3のトラックに形成された情報記録セルとを含む第1の領域、及び、
上記第3のトラックの上記情報記録セルが形成されていない特定領域と、上記第2のトラックに形成された情報記録セルとを含む第2の領域、を少なくとも1組有することを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
上記情報記録セルは、上記複数のトラックにおいて、上記情報記録媒体の中心に向かって一定の周方向に上記特定領域の周方向位置が異なるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
上記第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、上記第2のトラック又は上記第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をDとし、該第1のトラックに形成された、周方向において最も近接した2つの情報記録セルとの距離をPとし、0以上の整数をnとするとき、
上記情報記録セルは、上記複数のトラックにおいて、上記特定領域の周方向位置がn×P+Dだけ異なるように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
上記nが0であることを特徴とする請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
上記第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、上記第2のトラック又は上記第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をDとし、該第1のトラックに形成された、周方向において最も近接した2つの情報記録セルとの距離をPとし、自然数をmとするとき、
上記情報記録セルは、上記複数のトラックにおいて、上記特定領域の周方向位置がm×P−Dだけ異なるように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
上記mが1であることを特徴とする請求項5に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
上記情報記録セルは、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルであることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の情報記録媒体。
【請求項8】
請求項7に記載の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気記録素子及び磁気再生素子を含む記録再生ヘッドを備えた磁気記録再生装置であって、
上記第1のトラックに形成された情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、
上記磁気再生素子が上記第1の領域に含まれる情報記録セルから検出する信号の信号振幅と、該磁気再生素子が上記第2の領域に含まれる情報記録セルから検出する信号の信号振幅とをもとに、該第1のトラックに対するトラッキング制御を行うことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項9】
上記磁気再生素子において、該磁気再生素子が磁化を検出可能な半径方向の幅である磁化検出幅Sw1が、上記情報記録セルの直径をCw1とし、上記トラックピッチをTP1とするとき、
2×TP1−Cw1<Sw1<2×TP1
に設定されていることを特徴とする請求項8に記載の磁気記録再生装置。
【請求項10】
上記磁気再生素子の周方向における空間分解可能幅をSt1とし、上記第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、上記第2のトラック又は上記第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をDとするとき、St1<Dであることを特徴とする請求項8又は9に記載の磁気記録再生装置。
【請求項11】
上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項12】
上記距離検出動作は、
上記磁気記録素子による記録動作、上記磁気再生素子による再生動作、及び該磁気再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記情報記録媒体の半径方向における半径位置毎に繰り返し行う動作と、
上記再生動作時においてオントラックであるときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置をr1とし、上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r2とするとき、上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離をr1−r2と決定する動作と、を含むことを特徴とする請求項11に記載の磁気記録再生装置。
【請求項13】
上記情報記録セルは、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルであることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の情報記録媒体。
【請求項14】
請求項13に記載の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う発光素子及び受光素子を含む記録再生ヘッドを備えた光記録再生装置であって、
上記第1のトラックに形成された情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、
上記受光素子が上記第1の領域に含まれる情報記録セルから検出する信号の信号振幅と、該受光素子が上記第2の領域に含まれる情報記録セルから検出する信号の信号振幅とをもとに、該第1のトラックに対するトラッキング制御を行うことを特徴とする光記録再生装置。
【請求項15】
上記受光素子において、該受光素子が光情報を検出可能な半径方向の幅である光検出幅Sw2が、上記情報記録セルの直径をCw2とし、上記トラックピッチをTP2とするとき、
2×TP2−Cw2<Sw2<2×TP2
に設定されていることを特徴とする請求項14に記載の光記録再生装置。
【請求項16】
上記受光素子の周方向における空間分解可能幅をSt2とし、上記第1のトラックに形成された情報記録セルと、周方向において該情報記録セルと最も近接した、上記第2のトラック又は上記第3のトラックに形成された情報記録セルとの距離をRとするとき、St2<Rであることを特徴とする請求項14又は15に記載の光記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−20851(P2010−20851A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181760(P2008−181760)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】