情報記録媒体および情報記録媒体の検査方法
【課題】偽造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、および情報記録媒体の媒体検査方法を提供する。
【解決手段】情報記録媒体は、基材6と、短波長光による一次励起を与えた後、長波長光の二次励起を与えることで、一次励起の状態に依存する発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、基材上に形成された付与情報4と、一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材7と、を備えている。
【解決手段】情報記録媒体は、基材6と、短波長光による一次励起を与えた後、長波長光の二次励起を与えることで、一次励起の状態に依存する発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、基材上に形成された付与情報4と、一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材7と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が記録される情報記録媒体、およびこの情報記録媒体を検査する媒体検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券や証明書類など、偽変造の危険性のある情報記録媒体では、耐偽変造性を高める為に種々の偽変造防止技術が搭載されている。搭載される偽変造防止技術には、補助具などを必要とせずに人間の感覚により即時判断が可能なアイテムと、簡単な補助具により即時判断が可能なアイテムと、検査装置などにより時間を掛けて判断するアイテムと、に分けることができる。
【0003】
簡単な補助具により真偽判別を行う偽変造防止技術の1つに、蛍光材料を用いるものがある。蛍光材料を用いた偽変造防止技術には、例えば、証明書類の一つである身分証において、身分証の持つ本人の顔画像と、顔画像とは別の領域に蛍光材料により情報を付与し、確認・検証時には蛍光材料に対する励起光を当て、発光光の有無、色、形状などを確認することにより、その真性を確認すると言った技術がある。
蛍光材料を用いた偽変造防止技術の一つとして、赤外光−可視光変換材料として、蛍光材料の一種である輝尽性蛍光材料を用いるような提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−062945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように、単に蛍光材料を用いた印刷を施す偽変造防止技術は、励起光を当てさえすれば存在が確認できること、蛍光材料自体の入手はそれ程難しくないことから、蛍光材料を用いた偽変造防止技術部分を模倣することは難しくない。その結果、蛍光材料を用いた偽変造防止媒体の耐偽変造性は高いとは言えない。
【0006】
上記の輝尽性蛍光材料を用いたセキュリティアイテムでは、輝尽性蛍光材料は、単なる赤外光−可視光の変換用に用いられ、発光時間が有限であるといった輝尽性を有効活用したものではない。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その課題は、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、および媒体の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、情報記録媒体は、基材と、短波長光による一次励起を与えた後、長波長光の二次励起を与えることで、一次励起の状態に依存する発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、前記一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、前記付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材と、を備えている。
【0009】
他の実施形態によれば、情報記録媒体の検査方法は、基材と、400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、前記一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、前記付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材と、を備える情報記録媒体の検査方法であって、
前記透過率が制限された前記付与情報の第1励起飽和状態となるように、一様、若しくは所望の強度分布で紫外光を照射し、前記付与情報に赤外光を照射して前記付与情報を前記一次励起状態に依存して発光させ、前記発光光を発光強度、発光時間を観察して、前記付与情報の有無および特性を判定する検査方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る身分証を模した情報記録媒体全体を示す平面図。
【図2】図2は、図1の線A−Aに沿った情報記録媒体の断面図。
【図3】図3は、図1の線B−Bに沿った情報記録媒体の断面図。
【図4】図4は、情報記録媒体を構成する材料個々の分光特性の一例を示す図。
【図5】図5は、前記情報記録媒体における局所コート層の有無による一次励起状態の変化を模式的に示す図。
【図6】図6は、前記情報記録媒体の検査工程を示すフローチャート。
【図7】図7は、適切な時間、強度で一次励起を行った後、二次励起を行うことで確認できる視覚情報を示す前記情報記録媒体の平面図。
【図8】図8は、適切な時間、強度で一次励起を行う場合の各信号のタイミングチャートを示す図。
【図9】図9は、適切な時間、強度で二次励起を行う場合の各信号のタイミングチャートを示す図。
【図10】図10は、正常な一次励起と過度の一次励起との状態の変化を模式的に示す図。
【図11】図11は、前記情報記録媒体の一次励起を適切な時間行った場合と過剰な時間行った場合との違いを示す図。
【図12】図12は、前記情報記録媒体の検査に用いる検査装置の一例を概略的に示す側面図。
【図13】図13は、前記情報記録媒体の検査に用いる検査装置の他の一例を概略的に示す側面図。
【図14】図14は、第2の実施形態に係る情報記録媒体を構成する材料個々の分光特性の一例を示す図。
【図15】図15は、第2の実施形態に係る情報記録媒体における、局所コート層の有無に応じた、二次励起による蛍光発光の変化を模式的に示す図。
【図16】図16は、前記情報記録媒体の一次励起を行った後、二次励起を行うことで確認できる視覚情報を示す前記情報記録媒体の平面図。
【図17】図17は、一次励起時の正常動作を示すタイミングチャート。
【図18】図18は、二次励起時の正常動作を示すタイミングチャート。
【図19】図19は、第3の実施形態に係る身分証を模した情報記録媒体全体を示す平面図。
【図20】図20は、図19の線C−Cに沿った情報記録媒体の断面図。
【図21】図21は、図19の線D−Dに沿った情報記録媒体の断面図。
【図22】図22は、前記情報記録媒体を構成する材料個々の分光特性の一例を示す図。
【図23】図23は、前記情報記録媒体におけるUV制限樹脂の有無による一次励起状態の変化を模式的に示す図。
【図24】図24は、前記情報記録媒体の検査工程を示すフローチャート。
【図25】図25は、適切な時間、強度で一次励起を行った後、二次励起を行うことで確認できる視覚情報を示す前記情報記録媒体の平面図。
【図26】図26は、適切な時間、強度で一次励起を行う場合の各信号のタイミングチャートを示す図。
【図27】図27は、適切な時間、強度で二次励起を行う場合の各信号のタイミングチャートを示す図。
【図28】図28は、第4の実施形態において、正常な一次励起と過度の一次励起との状態の変化を模式的に示す図。
【図29】図29は、前記情報記録媒体の一次励起を適切な時間行った場合と過剰な時間行った場合との違いを示す図。
【図30】図30は、第5の実施形態に係る情報記録媒体を構成する材料個々の分光特性の一例を示す図。
【図31】図31は、第5の実施形態に係る情報記録媒体における、局所コート層の有無に応じた、二次励起による蛍光発光の変化を模式的に示す図。
【図32】図32は、前記情報記録媒体の一次励起を行った後、二次励起を行うことで確認できる視覚情報を示す前記情報記録媒体の平面図。
【図33】図33は、第5の実施形態における、一次励起時の正常動作を示すタイミングチャート。
【図34】図34は、第5の実施形態における、二次励起時の正常動作を示すタイミングチャート。
【図35】図35は、第6の実施形態に係る情報記録媒体を示す平面図。
【図36】図36は、第6の実施形態に係る情報記録媒体における、蛍光体材料の印刷濃度に応じた、二次励起による蛍光発光の変化を模式的に示す図。
【図37】図37は、第6の実施形態に係る情報記録媒体の検査に用いる検査装置を概略的に示す図。
【図38】図38は、第7の実施形態に係る情報記録媒体を示す平面図。
【図39】図39は、第7の実施形態に係る情報記録媒体の検査時における励起光のオンオフタイミングおよび撮影タイミングを示すタイミングチャート。
【図40】図40は、第7の実施形態に係る情報記録媒体における第1および第2付与情報の一次励起状態および発光状態を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る情報記録媒体および媒体検査方法について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、情報記録媒体として、第1の実施形態に係るID証(身分証明証)を示し、図2は、蛍光材料が存在しない部分のID証の主構成材料の層構造を示し、図3は、蛍光材料が存在する部分のID証の層構造を示している。
【0012】
図1ないし図3に示すように、ID証10は、ほぼ矩形の基材6と、基材の一方の表面全体を覆って形成されたオーバーコート層5と、を有している。基材12は、例えば、紙、樹脂シート等により、薄いシート状あるいは板状に形成されている。オーバーコート層5は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の光透過性を有するフィルムにより形成されている。
【0013】
基材6の一方の表面上には、情報として、例えば、ID証10の所持人のカラーの顔画像2、所持人の氏名、生年月日、ID番号などの文字情報3が印刷されている。顔画像2、文字情報3は、溶融型熱転写方式、昇華型熱転写記録方式、インクジェット方式など種々の記録方式で形成可能である。更に、基材6の表面上に、蛍光材料(輝尽性蛍光体)により付与情報4が形成されている。そして、これら顔画像2、文字情報3、および付与情報4は、オーバーコート層5により覆われ、保護されている。付与情報4は、例えば楕円形に形成されている。オーバーコート層5は、たとえば、接着剤により基材12の表面に接合されている。オーバーコート層5は光透過性を有する材料で形成されていることから、このオーバーコート層5を通して、顔画像2、文字情報3、および付与情報4をID証10の外側から視認することができる。
【0014】
図1および図3に示すように、ID証10は、基材6とオーバーコート層5との間で、付与情報4に重ねて局所コート層7が形成されている。局所コート層7は、付与情報4に対応する楕円状(第1領域)に形成され、付与情報4の輪郭と局所コート層7の輪郭とが重なるように積層されている。局所コート層7は、一次励起波長の光、例えば、紫外光の透過をある割合で制限する特性を有するように形成されている。局所コート層7には、任意の形状、例えば、星型の開口(第2領域)8が形成され、この開口8は、付与情報4上に位置している。
【0015】
図4は、ID証10を構成する材料個々の分光特性の一例を示している。本図で示すように、付与情報4を形成する蛍光材料は、例えば、400nm以下の短波長の紫外光領域で一次励起を行い、例えば、700nm以上の長波長の赤外光領域で二次励起行うことにより、400〜700nmの可視光の領域で一次励起の状態に依存した発光をする輝尽蛍光特性を有している。図4において、一次励起波長が100、二次励起波長が101、蛍光材料の発光波長が102でそれぞれ示されている。特性線103は、基材6の透過特性を示し、波長全域に渡って光を透過しない特性を有している。特性線104は、オーバーコート層5の透過特性を示し、波長全域に渡って透過を制限しない特性を有している。特性線105は局所コート層7の透過特性を示し、蛍光材料の一次励起波長100となる紫外光の透過を、ある割合だけ制限し、二次励起波長101となる赤外光及び発光波長102の透過を制限しない、つまり、赤外光及び発光波長102を透過する、特性を有している。
【0016】
以下、第1の実施形態において、便宜的に局所コート層7を、UVコート層と呼ぶ。
まず、検査方法の具体的手順を説明する前に、UVコート層7による一次励起光の制限が、蛍光材料の蛍光発光にどのような影響を与えるかについて説明する。
【0017】
一次励起を行う際の影響について説明する。図5は、一次励起光となる紫外光を一定強度でID証10に照射した時の、照射時間と蛍光材料の一次励起状態とが、UVコート層7の有無によりどう異なるかを単純化して示している。尚、本実施例に於いてUVコート層7の紫外光透過率は50%としている。図中の特性線110は、蛍光材料上にUVコート層7が存在しない場合の一次励起状態を示し、特性線111は、蛍光材料上にUVコート層7が存在する場合の一次励起状態を示している。蛍光材料の一次励起の状態は、UVコート層7の有無に係らず照射時間と共に増加して行き、ある時間で飽和に至る。この時、UVコート層7がある場合は、無い場合に比べて飽和までの時間が倍となる。
【0018】
つまり、図5の紫外光(一次励起光)照射時間T0、T1、T2の区間においては、UVコート層7がある場所は、無い場所(開口8)と比べて、蛍光材料の一次励起量が少ない状態となる。また、UVコート層7の有無による一次励起状態の差は、照射時間T1に於いて最大となる。
【0019】
次に、二次励起を行うときの影響について説明する。二次励起光となる赤外光の蛍光材料に対する照射状態は、UVコート層7の有無で変化しない。そのため、UVコート層7の有無に係らず、蛍光材料は、一次励起の状態に依存した蛍光発光を示すこととなる。ここで、一次励起光の照射時間が、図5におけるT0〜T2の間であった場合、UVコート層7のある場所は、無い場所に比べて、発光時間、発光強度が一次励起の差分に応じて低減する。低減度合いは、照射時間T1に於いて最大となる。
【0020】
以上を受け、ID証10に形成された、蛍光材料と局所コート層7により付与された付与情報4の検査方法、及び、検査装置について説明する。図6は、検査フローを概略的に示している。
まず、太陽光などによって付与情報4の一次励起が生じてしまっている場合を考慮して、ID証10の検査に先立ち、二次励起光である赤外光をID証10の表面に所定時間照射する。これにより、付与情報4を形成する蛍光材料の一次励起状態をリセットすることができる。
【0021】
次に、一次励起光である紫外光を、一次励起の飽和に対して適切に設定した強度・時間でID証10の表面に照射する。この際、図7(a)に示すように、付与情報4の蛍光発光は生じない。続いて、二次励起光である赤外光をID証10の表面に照射する。二次励起により生じる付与情報4の蛍光発光の様子を、目視又は検査装置により確認する。この時、付与情報4の蛍光発光は、図7(b)に示すように、UVコート層7の無い開口8の部分(星型部分)が強調され、長時間発光が持続する形で確認される。
【0022】
図8および図9は、ID証10の真偽判定を行う際、真と判定される正常動作のタイムチャートを示している。図8から分かるように、一次励起時には蛍光発光は確認されず、図9に示すように、二次励起時には、有限な時間の蛍光発光が確認され、その発光強度と発光時間は、UVコート層7がある箇所の方が弱く、短い。
【0023】
また、偽であると判定される事例は、
<一次励起時>
・蛍光発光を示す。
<二次励起時>
・蛍光発光を示さない。
・蛍光発光が輝尽性を示さない(励起する限り持続する)。
・UVコート層の有無による発光強度等の差を示さない。
が挙げられる。
【0024】
図10および図11(a)に示すように、例えば、T1前後の適正な時間および適正な強度で一次励起光を付与情報4に照射した後、付与情報4に二次励起光を照射した場合、付与情報4は、UVコート層7で覆われた周囲部分に比較して、UVコート層7で覆われていない開口8と対向する部分(星型部分)が強調され、長時間発光が持続する。これに対して、図10および図11(b)に示すように、例えば、付与情報4のUVコート層7で覆われた部分も飽和に至るだけの時間(T2以上)、過剰な一次励起を行った場合、付与情報4の蛍光発光は、付与情報全体が同じ強度で同じ時間だけ発光を続け、UVコート層7により形成された情報(星型開口8)を読み取ることが不可能となる。このため、一次励起光の適切な強度及び照射時間を把握していない限り、UVコート層7による形成情報を読み取ることが出来なくなる。したがって、蛍光材料の励起、発光波長と言った特性以外の偽造し難い情報を、ID証上に形成することが可能となる。
【0025】
次に、ID証10を検査する検査装置の例について説明する。
検査装置は、上述した検査方法に必要な一次励起光を一定時間、一定強度で照射する機能および二次励起光を照射する機能を有する照明機構、並びに、蛍光発光光を観察可能な観察窓等を備えていればよい。検知を目視にて行う場合、図12に示すように、検査装置は、ID証10の表面に一次励起光として紫外光を照射する第1光源121、ID証10の表面に二次励起光として赤外光を照射する第2光源122、付与情報4からの蛍光発光の発光光を透過させるバンドパスフィルタやレンズといった光学系部品122、第1および第2光源121、122の照射強度、照射時間等を制御する制御部14を備えている。光学系部品122は、観察窓を構成している。そして、光学部材122を通して、外側から付与情報4の蛍光発光状態を視認することができる。
センサ等により蛍光発光を検知する場合、図13に示すように、検査装置は、光学系部品122に対向して設けられたCCDカメラ124等を備えていてもよい。CCDカメラ124は、付与情報4の発光状態を検出し、制御部14に検出信号を出力する。制御部14は、検出信号に基づいてID証10の真偽を判定する。
【0026】
以上のように構成されたID証および媒体検査方法によれば、輝尽蛍光特性を持った材料による情報形成層を設け、媒体を保護するコート層により、一次励起光の透過率を選択的に制限することにより、任意の蛍光発光特性を有する情報を形成することができる。一次励起光および二次励起光を適切に照射し、ID証に特徴付けられた蛍光発光の様子を確認することができる。この情報を検知することにより、簡便な真偽検知と、必要時の精密な真偽検知とを兼ね備えることができる。これにより、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、およびその検査方法が得られる。
【0027】
次に、他の実施形態について説明する。なお、他の実施形態において、上述した第1の実施形態と同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0028】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るID証10は、図1ないし図3に示した第1の実施形態と同一の構造を有し、局所コート層7の特性を、二次励起波長となる赤外光の透過を制限するものに変更した構成としている。
【0029】
図14は、ID証10を構成する材料個々の分光特性の一例を示している。本図で示すように、付与情報を形成する蛍光材料は、紫外光領域で一次励起を行い、赤外光領域で二次励起行うことにより、可視光の領域で一次励起の状態に依存した発光をする特性を有している。図14において、一次励起波長が100、二次励起波長が101、蛍光材料の発光波長が102でそれぞれ示されている。特性線103は、基材の透過特性を示し、波長全域に渡って光を透過しない特性を有している。特性線104は、オーバーコート層の透過特性を示し、波長全域に渡って透過を制限しない特性を有している。特性線200は局所コート層の透過特性を示し、蛍光材料の一次励起波長100となる紫外光および発光波長は透過を制限せず、二次励起波長となる赤外光の透過を、ある割合だけ制限する特性を有するコート層へ変更している。
【0030】
以下、第2の実施形態に係るID証における局所コート層7を、便宜的にIRコート層と称する。まず、検査方法の具体的手順を説明する前に、IRコート層7による励起光の制限が、蛍光材料の蛍光発光にどのような影響を与えるかについて説明する。
【0031】
一次励起を行うときの影響について説明する。一次励起光となる紫外光の照射状態は、IRコート層の有無で変化しない為、IRコート層の有無に係らず単純に照射時間に比例して一次励起量が増加し、ある時間で飽和へと達する結果となる。
【0032】
次に、二次励起を行う際の影響について説明する。図15は、二次励起光となる赤外光を一定強度でIRコート層7および付与情報に照射した時の、照射時間と蛍光発光量が、IRコート層の有無によりどの様に異なるかを単純化して示したものである。尚、本実施形態に於いてIRコート層の赤外光透過率は50%としている。図15において、特性線210は、IRコート層が存在しない場合、すなわち、IRコート層7の開口8と対向している部分の蛍光発光強度を示し、特性線211は、IRコート層が存在する場合、すなわち、IRコート層7で覆われている部分の蛍光発光強度を示している。付与情報4の蛍光発光量は、IRコート層の有無に係らず照射時間と共に減少して行き、ある時間で発光しなくなる。この時、IRコート層が存在する場合は、無い場合に比べて発光しなくなるまでの時間が倍となる。また、IRコート層が存在する場合は、蛍光発光開始時の蛍光発光量が、IRコート層が存在しない場合の蛍光発光量の半分となる。
【0033】
このように、赤外光照射時間T0〜T1の区間に於いては、IRコート層が存在する場所は、存在しない場所と比べて蛍光発光が少ない状態となる。時間T1〜T3の区間では、関係が逆転し、IRコート層が存在する場所の方が、蛍光発光量が多い状態となる。また、IRコート層の有無による差は、照射時間T2に於いて最大となる。
【0034】
以上のように構成されたID証上に形成された、蛍光材料からなる付与情報と、局所コート層により付与された情報の検査方法、及び、検査装置について説明する。
【0035】
検査工程は、第1の実施形態の図6に示した工程と基本的に同様であるが、一次励起光の照射時間は、蛍光材料の一次励起が飽和するまで行えばよい点が相違している。検査動作の違いは、付与情報に二次励起光である赤外光を照射したとき、蛍光発光の様子が、最初は図16(a)に示すようにIRコート層の無い箇所(星型部分)が強調されるが、赤外光の照射を続け、蛍光発光が弱くなって行く中で、IRコート層が存在する箇所の蛍光発光の方が強くなると言う形で確認される。
【0036】
以上から、蛍光材料の励起、発光波長と言った特性以外の情報を、ID証10上に形成することが可能となる。図17および図18は、ID証10の真偽判定を行う際、真と判定される正常動作のタイムミングチャートを示している。図17に示すように、一次励起については、励起光を一次励起が飽和するまで照射すれば良い。図18に示すように、二次励起時については、励起光照射開始直後はIRコート層7が存在する部分の発光が弱いが、照射開始から時間が経つにつれ、IRコート層が存在する部分が存在しない部分に比べて長時間強く蛍光発光を示す様子が現れる。
【0037】
上記のように構成されたID証10の検査装置は、図12あるいは図13に示した検査装置と同一の構成を備えていればよい。すなわち、検査装置は、上述した検査方法の実行に必要な一次励起光を照射する機能、二次励起光を照射する機能を有する照明機構、及び蛍光発光光を観察可能な観察窓を備えた構成であればよい。
【0038】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、前述の第1の実施形態および第2の実施形態で示したID証の局所コート層による一次励起光あるいは二次励起光の制限を、位置をずらして設ける構成としている。例えば、輝尽性を有する蛍光材料上に設けられ、一次励起光の透過を制限するUVコート層により形成される情報と、二次励起光の透過を制限するIRコート層により形成される情報とを、単語(文章)や、一つの図形を表す連続情報として形成する。これにより、一次励起光の照射時間と二次励起光の照射時間を適切に操作したときのみに、形成情報を読み取ることができるようなID証、つまり、偽変造防止媒体を作成可能となる。
【0039】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るID証について詳細に説明する。
図19は、情報記録媒体として、第4の実施形態に係るID証(身分証明証)を示し、図20は、蛍光材料が存在しない部分のID証の主構成材料の層構造を示し、図21は、蛍光材料が存在する部分のID証の層構造を示している。
【0040】
図19ないし図21に示すように、ID証10は、ほぼ矩形の基材6と、基材の一方の表面全体を覆って形成されたオーバーコート層5と、を有している。基材12は、例えば、紙、樹脂シート等により、薄いシート状あるいは板状に形成されている。オーバーコート層5は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の光透過性を有するフィルムにより形成されている。
【0041】
基材6の一方の表面上には、情報として、例えば、ID証10の所持人のカラーの顔画像2、所持人の氏名、生年月日、ID番号などの文字情報3が印刷されている。顔画像2、文字情報3は、溶融型熱転写方式、昇華型熱転写記録方式、インクジェット方式など種々の記録方式で形成可能である。更に、基材6の表面上に、蛍光材料(輝尽性蛍光体)により付与情報4が形成されている。そして、これら顔画像2、文字情報3、および付与情報4は、オーバーコート層5により覆われ、保護されている。オーバーコート層5は、たとえば、接着剤により基材12の表面に接合されている。オーバーコート層5は光透過性を有する材料で形成されていることから、このオーバーコート層5を通して、顔画像2、文字情報3、および付与情報4をID証10の外側から視認することができる。
【0042】
図19および図21に示すように、本実施形態において、付与情報4は、例えば楕円形に形成されている第1情報領域4aと、この第1情報領域4aの中央部に任意の造形、例えば、星型に形成された第2情報領域4bとを含んでいる。第1情報領域4aは、後述の一次励起光としての紫外光の透過量を制限する樹脂溶液と蛍光材料との混合物を印刷することにより形成されている。第2情報領域4bは、紫外線の透過量を制限しない樹脂溶液と蛍光材料との混合物を印刷することにより形成されている。紫外光の透過量を制限する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、又は、酸化アルミニウム等の紫外線反射材料を混合した樹脂材料を用いることができ、また、紫外光の透過量を制限しない樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂やシリコン等を用いることができる。
【0043】
図22は、ID証10を構成する材料個々の分光特性の一例を示している。本図で示すように、付与情報4を形成する蛍光材料は、例えば、400nm以下の紫外光領域で一次励起を行い、例えば、700nm以上の赤外光領域で二次励起行うことにより、400〜700nmの可視光の領域で一次励起の状態に依存した発光をする輝尽蛍光特性を有している。図22において、一次励起波長が100、二次励起波長が101、蛍光材料の発光波長が102でそれぞれ示されている。特性線103は、基材6の透過特性を示し、波長全域に渡って光を透過しない特性を有している。特性線104は、付与情報4の第2情報領域4bに用いられている樹脂の透過特性、およびオーバーコート層5の透過特性を示し、波長全域に渡って透過を制限しない特性を有している。特性線106は、付与情報4の第1情報領域4aに用いられている樹脂の透過特性を示し、蛍光材料の一次励起波長100となる紫外光の透過を、ある割合だけ制限し、二次励起波長101となる赤外光及び発光波長102の透過を制限しない、つまり、赤外光及び発光波長102を透過する、特性を有している。
【0044】
以下、第4の実施形態において、便宜的に第1情報領域4aに用いる樹脂を、UV制限樹脂と称する。
まず、検査方法の具体的手順を説明する前に、UV制限樹脂による一次励起光の制限が、蛍光材料の蛍光発光にどのような影響を与えるかについて説明する。
【0045】
一次励起を行う際の影響について説明する。図23は、一次励起光となる紫外光を一定強度でID証10に照射した時の、照射時間と蛍光材料の一次励起状態とが、UV制限樹脂の有無によりどう異なるかを単純化して示している。尚、本実施形態に於いてUV制限樹脂の紫外光透過率は50%としている。図中の特性線110は、蛍光材料にUV制限樹脂が混合されていない場合の一次励起状態、すなわち。第2情報領域4bの一次励起状態を示し、特性線111は、蛍光材料にUV制限樹脂が混合されている場合の一次励起状態、すなわち。第1情報領域4aの一次励起状態を示している。
【0046】
蛍光材料の一次励起の状態は、UV制限樹脂の有無に係らず照射時間と共に増加して行き、ある時間で飽和に至る。この時、UV制限樹脂がある場合は、無い場合に比べて飽和までの時間が倍となる。
【0047】
つまり、図23の紫外光(一次励起光)照射時間T0、T1、T2の区間においては、UV制限樹脂がある場所(第1情報領域4a)は、無い場所(第2情報領域4b)と比べて、蛍光材料の一次励起量が少ない状態となる。また、UV制限樹脂の有無による一次励起状態の差は、照射時間T1に於いて最大となる。
【0048】
次に、二次励起を行うときの影響について説明する。二次励起光となる赤外光の蛍光材料に対する照射状態は、UV制限樹脂の有無で変化しない。そのため、UV制限樹脂の有無に係らず、蛍光材料は、一次励起の状態に依存した蛍光発光を示すこととなる。ここで、一次励起光の照射時間が、図23におけるT0〜T2の間であった場合、UV制限樹脂のある場所は、無い場所に比べて、発光時間、発光強度が一次励起の差分に応じて低減する。低減度合いは、照射時間T1に於いて最大となる。
【0049】
以上を受け、ID証10に形成された付与情報4の検査方法、及び、検査装置について説明する。図24は、検査フローを概略的に示している。
まず、太陽光などによって付与情報4の一次励起が生じてしまっている場合を考慮して、ID証10の検査に先立ち、二次励起光である赤外光をID証10の表面に所定時間照射する(S1)。これにより、付与情報4を形成する蛍光材料の一次励起状態をリセットすることができる。
【0050】
次に、一次励起光である紫外光を、一次励起の飽和に対して適切に設定した強度・時間でID証10の表面に照射する(S2)。この際、図25(a)に示すように、付与情報4の蛍光発光は生じない。続いて、二次励起光である赤外光をID証10の表面に照射する(S3)。二次励起により生じる付与情報4の蛍光発光の様子を、目視又は検査装置により確認する。例えば、光センサにより、ID証10の蛍光発光強度を測定する(S4)。この時、付与情報4の蛍光発光は、図25(b)に示すように、UV制限樹脂の無い第2情報領域(星型部分)4bが強調され、長時間発光が持続する形で確認される。
【0051】
図26および図27は、ID証10の真偽判定を行う際、真と判定される正常動作のタイムチャートを示している。図26から分かるように、一次励起時には蛍光発光は確認されず、図27に示すように、二次励起時には、有限な時間の蛍光発光が確認され、その発光強度と発光時間は、UV制限樹脂がある箇所(第1情報領域)の方が弱く、短い。
【0052】
また、偽であると判定される事例は、
<一次励起時>
・蛍光発光を示す。
<二次励起時>
・蛍光発光を示さない。
・蛍光発光が輝尽性を示さない(励起する限り持続する)。
・UV制限樹脂の有無による発光強度等の差を示さない。
が挙げられる。
【0053】
図28および図29(a)に示すように、例えば、T1前後の適正な時間および適正な強度で一次励起光を付与情報4に照射した後、付与情報4に二次励起光を照射した場合、付与情報4は、UV制限樹脂を含む第1情報領域4aに比較して、UV制限樹脂の無い第2情報領域(星型部分)4bが強調され、長時間発光が持続する。これに対して、図28および図29(b)に示すように、例えば、付与情報4のUV制限樹脂を含む第1情報領域4aも飽和に至るだけの時間(T2以上)、過剰な一次励起を行った場合、付与情報4の蛍光発光は、付与情報全体が同じ強度で同じ時間だけ発光を続け、UV制限樹脂により形成された情報を読み取ることが不可能となる。このため、一次励起光の適切な強度及び照射時間を把握していない限り、UV制限樹脂による形成情報を読み取ることが出来なくなる。したがって、蛍光材料の励起、発光波長と言った特性以外の偽造し難い情報を、ID証上に形成することが可能となる。
【0054】
そこで、図24に示すように、判定回路により、正規品の蛍光発光データと、光センサで検出された蛍光発光強度および蛍光発光強度の時間変化データとを比較し、測定データの真偽性を確認する(S5)。そして、全てのデータが一致する場合、判定回路は真であるとあると判定し、真判定表示を出力する(S6)。また、正規品の蛍光発光データと測定データとが不一致の場合、判定回路は偽であると判定し、偽判定表示を出力する(S7)。
【0055】
次に、ID証10を検査する検査装置の例について説明する。
検査装置としては、図12および図13に示したように、第1の実施形態のID証10の検査に用いるものと同様の検査装置が用いられる。この検査装置は、上述した検査方法に必要な一次励起光を一定時間、一定強度で照射する機能および二次励起光を照射する機能を有する照明機構、並びに、蛍光発光光を観察可能な観察窓等を備えていればよい。検知を目視にて行う場合、CCDカメラ等の検知器を用いる場合のいずれでもよい。
【0056】
以上のように構成されたID証および媒体検査方法によれば、輝尽蛍光特性を持った材料と一次励起光の透過を制限する樹脂とによる情報形成層を設け、一次励起光の透過率を選択的に制限することにより、任意の蛍光発光特性を有する情報を形成することができる。これにより、一次励起光および二次励起光を適切に照射し、ID証に特徴付けられた蛍光発光の様子を確認することができる。この情報を検知することにより、簡便な真偽検知と、必要時の精密な真偽検知とを兼ね備えることができる。これにより、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、およびその検査方法が得られる。
【0057】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係るID証10は、図19ないし図21に示した第4の実施形態と同一の構造を有し、付与情報4の印刷に用いる樹脂の特性を、二次励起波長となる赤外光の透過を制限するものに変更した構成としている。
【0058】
図30は、ID証10を構成する材料個々の分光特性の一例を示している。本図で示すように、付与情報4を形成する蛍光材料は、紫外光領域で一次励起を行い、赤外光領域で二次励起行うことにより、可視光の領域で一次励起の状態に依存した発光をする輝尽蛍光特性を有している。図30において、一次励起波長が100、二次励起波長が101、蛍光材料の発光波長が102でそれぞれ示されている。特性線103は、基材の透過特性を示し、波長全域に渡って光を透過しない特性を有している。特性線104は、オーバーコート層の透過特性、および付与情報4の第2情報領域4bに含まれる樹脂の透過特性を示し、波長全域に渡って透過を制限しない特性を有している。特性線201は、付与情報4の第1情報領域4aに含まれる樹脂の透過特性を示し、蛍光材料の一次励起波長100となる紫外光および発光波長102は透過を制限せず、二次励起波長となる赤外光の透過を、ある割合だけ制限する特性を有している。
【0059】
以下、第5の実施形態に係るID証における第1情報領域4aに含まれる樹脂を、便宜的にIR制限樹脂と称する。まず、検査方法の具体的手順を説明する前に、IR制限樹脂による励起光の制限が、蛍光材料の蛍光発光にどのような影響を与えるかについて説明する。
【0060】
付与情報4を一次励起するときの影響を説明する。一次励起光となる紫外光の照射状態は、IR制限樹脂の有無で変化しないため、単純に紫外光の照射時間に比例して付与情報4を形成する蛍光材料の一次励起量が増加し、ある時間で飽和へと達する結果となる。
【0061】
次に、二次励起を行う際の影響について説明する。図31は、二次励起光となる赤外光を一定強度で付与情報4に照射した時の、照射時間と蛍光発光量が、IR制限樹脂の有無によりどう異なるかを単純化して示している。本実施形態において、IR制限樹脂の赤外光透過率は50%としている。図31において、特性線210は、IR制限樹脂が存在しない場合を、特性線211は、IR制限樹脂が存在する場合を示す。蛍光発光量は、IR制限樹脂の有無に係らず赤外光の照射時間と共に減少して行き、ある時間で発光しなくなる。この時、IR制限樹脂が存在する場合は、無い場合に比べて発光しなくなるまでの時間が倍となる。また、IR制限樹脂が存在する場合は、蛍光発光開始時の蛍光発光量が、存在しない場合に比べ半分となる。
【0062】
このように、赤外光照射時間T0〜T1の区間に於いては、IR制限樹脂が存在する第1情報領域4aは、存在しない第2情報領域4bと比べて蛍光発光が少ない状態となる。照射時間T1〜T3の区間では、関係が逆転し、IR制限樹脂が存在する領域の方が、蛍光発光量が多い状態となる。また、IR制限樹脂の有無による差は、照射時間T2に於いて最大となる。
【0063】
以上のように構成されたID証上に形成された、蛍光材料からなる付与情報4と、IR制限樹脂とにより付与された情報の検査方法、及び、検査装置について説明する。
【0064】
検査工程は、第4の実施形態の図24に示した工程と基本的に同様であるが、一次励起光の照射時間は、蛍光材料の一次励起が飽和するまで行えばよい点が相違している。検査動作の違いは、付与情報4に二次励起光である赤外光を照射したとき、蛍光発光の様子が、最初は図32(a)に示すようにIR制限樹脂の無い箇所(星型部分)が強調されるが、赤外光の照射を続け、蛍光発光が弱くなって行く中で、IR制限樹脂が存在する第1領域4aの蛍光発光の方が強くなると言う形で確認される。
【0065】
以上から、蛍光材料の励起、発光波長と言った特性以外の情報を、ID証10上に形成することが可能となる。図33および図34は、ID証10の真偽判定を行う際、真と判定される正常動作のタイムミングチャートを示している。図33に示すように、一次励起については、励起光を一次励起が飽和するまで照射すれば良い。図34に示すように、二次励起時については、励起光照射開始直後はIR制限樹脂が存在する第1情報領域4aの発光が弱いが、照射開始から時間が経つにつれ、IR制限樹脂が存在する第1情報領域4aが存在しない第2情報領域4bに比べて長時間強く蛍光発光を示す様子が現れる。
【0066】
上記のように構成されたID証10の検査装置は、図12あるいは図13に示した検査装置と同一の構成を備えていればよい。すなわち、検査装置は、上述した検査方法の実行に必要な一次励起光を照射する機能、二次励起光を照射する機能を有する照明機構、及び蛍光発光光を観察可能な観察窓を備えた構成であればよい。
【0067】
(第6の実施形態)
図35は、第6の実施形態に係るID証を示す平面図、図36は、このID証10における付与情報の赤外照射時間と蛍光発光強度との関係を示し、図37は、検査装置を示している。
【0068】
図35に示すように、ID証10は矩形状の基材6を有し、基材6の表面上に、顔画像2、文字情報3が印刷され、更に、それぞれ蛍光材料(輝尽性蛍光体)により第1付与情報11a、第2付与情報11bが形成されている。そして、これら顔画像2、文字情報3、および第1、第2付与情報11a、11bは、オーバーコート層5により覆われ、保護されている。
【0069】
本実施形態において、第1および第2付与情報11a、11bは、蛍光材料の印刷密度(インク中の材料濃度)を互いに異なる値とすることにより、発光時間、及び強度に差を持たせている。二次励起光が十分に照射される場合、印刷中の蛍光材料濃度と、蛍光発光時間および蛍光発光輝度とは比例する。
【0070】
図35に示すように、印刷濃度の異なる蛍光材料による第1付与情報11a、第2付与情報11bは、例えば、基材6上において互いに離れた位置に形成されている。両者を離れた位置に形成することにより、発光時間の差異を視覚的に意識し辛くする他、両者に等しい強度の二次励起光を照射することが難しくなり、付与情報の秘匿性が高まる。
【0071】
第1および第2付与情報11a、11bを検査は、これらの付与情報を十分に一次励起した後、等しい強度の二次励起光を照射したときの、両者の発光時間の差を取得することにより可能となる。例えば、第1付与情報11aの印刷密度を第2付与情報11bの3/4とした場合、図36に示すように、二次励起光照射時の発光強度を縦軸、照射時間を横軸とすると、両者の発光の様子は、それぞれ直線310、311のようになる。
【0072】
第1および第2付与情報11a、11bの発光時間の差(T2−T1)は、時間T2の1/4となる。両者の発光時間を比較することにより、真偽判定を行うことができる。比較方法については、時間T1における両者の発光状態を撮像した際、第2付与情報11bのみが発光していることの確認、あるいは、T1〜T2の時間を、光センサなどで取得することが挙げられる。
【0073】
上記のように構成されたID証10を検査する検査装置は、上記の手法に必要な一次励起光を照射する機能、二次励起光を照射する機能を有する照明機構、観察窓、および、蛍光発光光の発光時間を取得可能な機能を有していればよい。一例として、検査装置は、図37に示すように、ID証10の表面に一次励起光として紫外光を照射する第1光源121、ID証10の表面に二次励起光として赤外光を照射する第2光源122、第1および第2付与情報11a、11bからの蛍光発光の発光光を透過させるバンドパスフィルタやレンズといった光学系部品122、制御部14を備え、光学系部材122は、観察窓を構成している。また、検査装置は、光学系部品122に対向して設けられたCCDカメラ、フォトダイオード等の2つの光センサ15a、15bを備えている。光センサ15a、15bは、第1および第2付与情報11a、11bの形成個所の上方にそれぞれ設けられ、これら付与情報からの発光光を受光し検知する。制御部14は、第1光源121、第2光源122の照射強度、照射時間を制御するとともに、光センサ15a、15bからの検出信号に基づいて、ID証10の真偽を判定する。
【0074】
以上のように構成されたID証および媒体検査方法によれば、輝尽蛍光特性を持った材料の印刷濃度を変えて複数の付与情報を設け、発光強度、発光時間に差をつけることにより、簡便な真偽検知と、必要時の精密な真偽検知とを兼ね備えることができる。これにより、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、およびその検査方法が得られる。
【0075】
(第7の実施形態)
図38は、第7の実施形態に係る情報記録媒体としてのID証を示し、図39、図40は、ID証の検査手順を示すタイミングチャートである。
【0076】
第7の実施形態によれば、ID証10の基材6上に、それぞれ蛍光材料(輝尽性蛍光体)により第1付与情報11a、第2付与情報11bが形成されている。第1付与情報11a、第2付与情報11bはオーバーコート層5により覆われ保護されている。第1および第2付与情報11a、11bは、例えば、一方が四角形、他方が楕円に形成され、並んで配置されている。そして、第1付与情報11aおよび第2付与情報11bは、蛍光材料の印刷密度の差、樹脂あるいはコート層による励起光透過の制限を組み合わせて形成されている。
【0077】
そして、付与情報毎に、一次励起と二次励起の状態を特徴づけた媒体に対して、所定のタイミングで一次励起と二次励起を繰り返し、蛍光発光の様子を取得することで、形成情報を読み取るものである。
【0078】
第1付与情報11aと第2付与情報11bの蛍光材料の印刷濃度、一次励起光(UV)透過率、二次励起光(IR)透過率は例えば以下のように設定されている。
【表1】
【0079】
一次励起光の透過率制限(UV制限)は、蛍光材料にUV制限樹脂を混合するか、あるいは、蛍光材料に重ねてUV制限コート層を形成するか、いずれでもよい。また、二次励起光の透過率制限(IR制限)は、蛍光材料にUV制限樹脂を混合するか、あるいは、蛍光材料に重ねてIR制限コート層を形成するか、いずれでもよい。
【0080】
検査工程において、短波長の一次励起光、長波長の二次励起光は、第1および第2付与情報11a、11bに等しい強度で照射されるものとする。先ず、検査の前準備として、短波長の一次励起光となる紫外光を、全印刷個所の一次励起が飽和するまで照射しておく。続いて、図39および図40に示すように、第1および第2付与情報11a、11bに長波長の二次励起光として赤外光を照射する。
【0081】
二次励起光の照射開始時は、第1および第2付与情報11a、11b共に同程度の輝度で発光を示す。しかし、第1付与情報11aの発光は、第2付与情報11bの発光の1/4の時間で終了する。第2付与情報11bの発光が終了する時間(T1)まで二次励起光を照射した後、一次励起光を再度照射する。この時、第2付与情報11bは、第1付与情報11aの1/10の速度でしか一次励起光によるチャージが行われない。
【0082】
第1付与情報11aの一次励起が飽和する時間(T2)まで一次励起光を照射した後、再度、二次励起光を、第1付および第2付与情報11a、11bに照射すると、これらが発光し、第2付与情報11bの発光時間は、第1付与情報11aの発光時間の4割程度となる。
【0083】
以上の工程で一次、二次励起光を照射する際、図39に示した撮影タイミング(S1)、(S2)、(S3)それぞれで発光状態の撮影を行う。撮影タイミング(S1)では、第1および第2付与情報11a、11bの両方が発光し、撮影タイミング(S2)では、第2付与情報11bのみ発光が継続している。撮影タイミング(S3)では、第1付与情報11aのみ発光、といった撮影情報を得ることができる。
【0084】
以上のように構成されたID証によれば、蛍光材料による印刷情報を複雑化し、真偽をより高いレベルで判定することができる。本実施形態では、2つの蛍光情報のみの単純な例を示したが、印刷濃度、励起光の透過率の制限を、複数の割合で制限し、二つ以上の蛍光情報を設けることで、更に複雑で偽変造が困難な情報を設定可能となる。
【0085】
上記のように構成されたID証10の検査装置については、上記の手法に必要な一次励起光を照射する機能、二次励起光を照射する機能を有する照明機構、及び蛍光発光の発光時間を検知する機能を有していればよい。検査装置の構成例は、図37に示した装置構成が挙げられる。
以上のことから、本実施形態によれば、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、およびその検査方法が得られる。
【0086】
この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、情報記録媒体は、ID証に限らず、免許証、クレジットカードなどの他の個人認証用媒体、有価証券、貯金通帳等の冊子体、その他、種々の媒体としてもよい。情報記録媒体は、基材とオーバーコート層のみに限らず、他の中間層を有していてもよい。また、一次励起は、紫外光に限らず、X線を用いてもよい。二次励起は、励起光に限らず、熱による励起とすることも可能である。
【符号の説明】
【0087】
2…顔画像、3…文字情報、4…付与情報、4a…第1情報領域、
4b…第2情報領域、5…オーバーコート層、6…基材、10…ID証
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が記録される情報記録媒体、およびこの情報記録媒体を検査する媒体検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券や証明書類など、偽変造の危険性のある情報記録媒体では、耐偽変造性を高める為に種々の偽変造防止技術が搭載されている。搭載される偽変造防止技術には、補助具などを必要とせずに人間の感覚により即時判断が可能なアイテムと、簡単な補助具により即時判断が可能なアイテムと、検査装置などにより時間を掛けて判断するアイテムと、に分けることができる。
【0003】
簡単な補助具により真偽判別を行う偽変造防止技術の1つに、蛍光材料を用いるものがある。蛍光材料を用いた偽変造防止技術には、例えば、証明書類の一つである身分証において、身分証の持つ本人の顔画像と、顔画像とは別の領域に蛍光材料により情報を付与し、確認・検証時には蛍光材料に対する励起光を当て、発光光の有無、色、形状などを確認することにより、その真性を確認すると言った技術がある。
蛍光材料を用いた偽変造防止技術の一つとして、赤外光−可視光変換材料として、蛍光材料の一種である輝尽性蛍光材料を用いるような提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−062945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように、単に蛍光材料を用いた印刷を施す偽変造防止技術は、励起光を当てさえすれば存在が確認できること、蛍光材料自体の入手はそれ程難しくないことから、蛍光材料を用いた偽変造防止技術部分を模倣することは難しくない。その結果、蛍光材料を用いた偽変造防止媒体の耐偽変造性は高いとは言えない。
【0006】
上記の輝尽性蛍光材料を用いたセキュリティアイテムでは、輝尽性蛍光材料は、単なる赤外光−可視光の変換用に用いられ、発光時間が有限であるといった輝尽性を有効活用したものではない。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その課題は、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、および媒体の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、情報記録媒体は、基材と、短波長光による一次励起を与えた後、長波長光の二次励起を与えることで、一次励起の状態に依存する発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、前記一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、前記付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材と、を備えている。
【0009】
他の実施形態によれば、情報記録媒体の検査方法は、基材と、400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、前記一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、前記付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材と、を備える情報記録媒体の検査方法であって、
前記透過率が制限された前記付与情報の第1励起飽和状態となるように、一様、若しくは所望の強度分布で紫外光を照射し、前記付与情報に赤外光を照射して前記付与情報を前記一次励起状態に依存して発光させ、前記発光光を発光強度、発光時間を観察して、前記付与情報の有無および特性を判定する検査方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る身分証を模した情報記録媒体全体を示す平面図。
【図2】図2は、図1の線A−Aに沿った情報記録媒体の断面図。
【図3】図3は、図1の線B−Bに沿った情報記録媒体の断面図。
【図4】図4は、情報記録媒体を構成する材料個々の分光特性の一例を示す図。
【図5】図5は、前記情報記録媒体における局所コート層の有無による一次励起状態の変化を模式的に示す図。
【図6】図6は、前記情報記録媒体の検査工程を示すフローチャート。
【図7】図7は、適切な時間、強度で一次励起を行った後、二次励起を行うことで確認できる視覚情報を示す前記情報記録媒体の平面図。
【図8】図8は、適切な時間、強度で一次励起を行う場合の各信号のタイミングチャートを示す図。
【図9】図9は、適切な時間、強度で二次励起を行う場合の各信号のタイミングチャートを示す図。
【図10】図10は、正常な一次励起と過度の一次励起との状態の変化を模式的に示す図。
【図11】図11は、前記情報記録媒体の一次励起を適切な時間行った場合と過剰な時間行った場合との違いを示す図。
【図12】図12は、前記情報記録媒体の検査に用いる検査装置の一例を概略的に示す側面図。
【図13】図13は、前記情報記録媒体の検査に用いる検査装置の他の一例を概略的に示す側面図。
【図14】図14は、第2の実施形態に係る情報記録媒体を構成する材料個々の分光特性の一例を示す図。
【図15】図15は、第2の実施形態に係る情報記録媒体における、局所コート層の有無に応じた、二次励起による蛍光発光の変化を模式的に示す図。
【図16】図16は、前記情報記録媒体の一次励起を行った後、二次励起を行うことで確認できる視覚情報を示す前記情報記録媒体の平面図。
【図17】図17は、一次励起時の正常動作を示すタイミングチャート。
【図18】図18は、二次励起時の正常動作を示すタイミングチャート。
【図19】図19は、第3の実施形態に係る身分証を模した情報記録媒体全体を示す平面図。
【図20】図20は、図19の線C−Cに沿った情報記録媒体の断面図。
【図21】図21は、図19の線D−Dに沿った情報記録媒体の断面図。
【図22】図22は、前記情報記録媒体を構成する材料個々の分光特性の一例を示す図。
【図23】図23は、前記情報記録媒体におけるUV制限樹脂の有無による一次励起状態の変化を模式的に示す図。
【図24】図24は、前記情報記録媒体の検査工程を示すフローチャート。
【図25】図25は、適切な時間、強度で一次励起を行った後、二次励起を行うことで確認できる視覚情報を示す前記情報記録媒体の平面図。
【図26】図26は、適切な時間、強度で一次励起を行う場合の各信号のタイミングチャートを示す図。
【図27】図27は、適切な時間、強度で二次励起を行う場合の各信号のタイミングチャートを示す図。
【図28】図28は、第4の実施形態において、正常な一次励起と過度の一次励起との状態の変化を模式的に示す図。
【図29】図29は、前記情報記録媒体の一次励起を適切な時間行った場合と過剰な時間行った場合との違いを示す図。
【図30】図30は、第5の実施形態に係る情報記録媒体を構成する材料個々の分光特性の一例を示す図。
【図31】図31は、第5の実施形態に係る情報記録媒体における、局所コート層の有無に応じた、二次励起による蛍光発光の変化を模式的に示す図。
【図32】図32は、前記情報記録媒体の一次励起を行った後、二次励起を行うことで確認できる視覚情報を示す前記情報記録媒体の平面図。
【図33】図33は、第5の実施形態における、一次励起時の正常動作を示すタイミングチャート。
【図34】図34は、第5の実施形態における、二次励起時の正常動作を示すタイミングチャート。
【図35】図35は、第6の実施形態に係る情報記録媒体を示す平面図。
【図36】図36は、第6の実施形態に係る情報記録媒体における、蛍光体材料の印刷濃度に応じた、二次励起による蛍光発光の変化を模式的に示す図。
【図37】図37は、第6の実施形態に係る情報記録媒体の検査に用いる検査装置を概略的に示す図。
【図38】図38は、第7の実施形態に係る情報記録媒体を示す平面図。
【図39】図39は、第7の実施形態に係る情報記録媒体の検査時における励起光のオンオフタイミングおよび撮影タイミングを示すタイミングチャート。
【図40】図40は、第7の実施形態に係る情報記録媒体における第1および第2付与情報の一次励起状態および発光状態を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る情報記録媒体および媒体検査方法について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、情報記録媒体として、第1の実施形態に係るID証(身分証明証)を示し、図2は、蛍光材料が存在しない部分のID証の主構成材料の層構造を示し、図3は、蛍光材料が存在する部分のID証の層構造を示している。
【0012】
図1ないし図3に示すように、ID証10は、ほぼ矩形の基材6と、基材の一方の表面全体を覆って形成されたオーバーコート層5と、を有している。基材12は、例えば、紙、樹脂シート等により、薄いシート状あるいは板状に形成されている。オーバーコート層5は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の光透過性を有するフィルムにより形成されている。
【0013】
基材6の一方の表面上には、情報として、例えば、ID証10の所持人のカラーの顔画像2、所持人の氏名、生年月日、ID番号などの文字情報3が印刷されている。顔画像2、文字情報3は、溶融型熱転写方式、昇華型熱転写記録方式、インクジェット方式など種々の記録方式で形成可能である。更に、基材6の表面上に、蛍光材料(輝尽性蛍光体)により付与情報4が形成されている。そして、これら顔画像2、文字情報3、および付与情報4は、オーバーコート層5により覆われ、保護されている。付与情報4は、例えば楕円形に形成されている。オーバーコート層5は、たとえば、接着剤により基材12の表面に接合されている。オーバーコート層5は光透過性を有する材料で形成されていることから、このオーバーコート層5を通して、顔画像2、文字情報3、および付与情報4をID証10の外側から視認することができる。
【0014】
図1および図3に示すように、ID証10は、基材6とオーバーコート層5との間で、付与情報4に重ねて局所コート層7が形成されている。局所コート層7は、付与情報4に対応する楕円状(第1領域)に形成され、付与情報4の輪郭と局所コート層7の輪郭とが重なるように積層されている。局所コート層7は、一次励起波長の光、例えば、紫外光の透過をある割合で制限する特性を有するように形成されている。局所コート層7には、任意の形状、例えば、星型の開口(第2領域)8が形成され、この開口8は、付与情報4上に位置している。
【0015】
図4は、ID証10を構成する材料個々の分光特性の一例を示している。本図で示すように、付与情報4を形成する蛍光材料は、例えば、400nm以下の短波長の紫外光領域で一次励起を行い、例えば、700nm以上の長波長の赤外光領域で二次励起行うことにより、400〜700nmの可視光の領域で一次励起の状態に依存した発光をする輝尽蛍光特性を有している。図4において、一次励起波長が100、二次励起波長が101、蛍光材料の発光波長が102でそれぞれ示されている。特性線103は、基材6の透過特性を示し、波長全域に渡って光を透過しない特性を有している。特性線104は、オーバーコート層5の透過特性を示し、波長全域に渡って透過を制限しない特性を有している。特性線105は局所コート層7の透過特性を示し、蛍光材料の一次励起波長100となる紫外光の透過を、ある割合だけ制限し、二次励起波長101となる赤外光及び発光波長102の透過を制限しない、つまり、赤外光及び発光波長102を透過する、特性を有している。
【0016】
以下、第1の実施形態において、便宜的に局所コート層7を、UVコート層と呼ぶ。
まず、検査方法の具体的手順を説明する前に、UVコート層7による一次励起光の制限が、蛍光材料の蛍光発光にどのような影響を与えるかについて説明する。
【0017】
一次励起を行う際の影響について説明する。図5は、一次励起光となる紫外光を一定強度でID証10に照射した時の、照射時間と蛍光材料の一次励起状態とが、UVコート層7の有無によりどう異なるかを単純化して示している。尚、本実施例に於いてUVコート層7の紫外光透過率は50%としている。図中の特性線110は、蛍光材料上にUVコート層7が存在しない場合の一次励起状態を示し、特性線111は、蛍光材料上にUVコート層7が存在する場合の一次励起状態を示している。蛍光材料の一次励起の状態は、UVコート層7の有無に係らず照射時間と共に増加して行き、ある時間で飽和に至る。この時、UVコート層7がある場合は、無い場合に比べて飽和までの時間が倍となる。
【0018】
つまり、図5の紫外光(一次励起光)照射時間T0、T1、T2の区間においては、UVコート層7がある場所は、無い場所(開口8)と比べて、蛍光材料の一次励起量が少ない状態となる。また、UVコート層7の有無による一次励起状態の差は、照射時間T1に於いて最大となる。
【0019】
次に、二次励起を行うときの影響について説明する。二次励起光となる赤外光の蛍光材料に対する照射状態は、UVコート層7の有無で変化しない。そのため、UVコート層7の有無に係らず、蛍光材料は、一次励起の状態に依存した蛍光発光を示すこととなる。ここで、一次励起光の照射時間が、図5におけるT0〜T2の間であった場合、UVコート層7のある場所は、無い場所に比べて、発光時間、発光強度が一次励起の差分に応じて低減する。低減度合いは、照射時間T1に於いて最大となる。
【0020】
以上を受け、ID証10に形成された、蛍光材料と局所コート層7により付与された付与情報4の検査方法、及び、検査装置について説明する。図6は、検査フローを概略的に示している。
まず、太陽光などによって付与情報4の一次励起が生じてしまっている場合を考慮して、ID証10の検査に先立ち、二次励起光である赤外光をID証10の表面に所定時間照射する。これにより、付与情報4を形成する蛍光材料の一次励起状態をリセットすることができる。
【0021】
次に、一次励起光である紫外光を、一次励起の飽和に対して適切に設定した強度・時間でID証10の表面に照射する。この際、図7(a)に示すように、付与情報4の蛍光発光は生じない。続いて、二次励起光である赤外光をID証10の表面に照射する。二次励起により生じる付与情報4の蛍光発光の様子を、目視又は検査装置により確認する。この時、付与情報4の蛍光発光は、図7(b)に示すように、UVコート層7の無い開口8の部分(星型部分)が強調され、長時間発光が持続する形で確認される。
【0022】
図8および図9は、ID証10の真偽判定を行う際、真と判定される正常動作のタイムチャートを示している。図8から分かるように、一次励起時には蛍光発光は確認されず、図9に示すように、二次励起時には、有限な時間の蛍光発光が確認され、その発光強度と発光時間は、UVコート層7がある箇所の方が弱く、短い。
【0023】
また、偽であると判定される事例は、
<一次励起時>
・蛍光発光を示す。
<二次励起時>
・蛍光発光を示さない。
・蛍光発光が輝尽性を示さない(励起する限り持続する)。
・UVコート層の有無による発光強度等の差を示さない。
が挙げられる。
【0024】
図10および図11(a)に示すように、例えば、T1前後の適正な時間および適正な強度で一次励起光を付与情報4に照射した後、付与情報4に二次励起光を照射した場合、付与情報4は、UVコート層7で覆われた周囲部分に比較して、UVコート層7で覆われていない開口8と対向する部分(星型部分)が強調され、長時間発光が持続する。これに対して、図10および図11(b)に示すように、例えば、付与情報4のUVコート層7で覆われた部分も飽和に至るだけの時間(T2以上)、過剰な一次励起を行った場合、付与情報4の蛍光発光は、付与情報全体が同じ強度で同じ時間だけ発光を続け、UVコート層7により形成された情報(星型開口8)を読み取ることが不可能となる。このため、一次励起光の適切な強度及び照射時間を把握していない限り、UVコート層7による形成情報を読み取ることが出来なくなる。したがって、蛍光材料の励起、発光波長と言った特性以外の偽造し難い情報を、ID証上に形成することが可能となる。
【0025】
次に、ID証10を検査する検査装置の例について説明する。
検査装置は、上述した検査方法に必要な一次励起光を一定時間、一定強度で照射する機能および二次励起光を照射する機能を有する照明機構、並びに、蛍光発光光を観察可能な観察窓等を備えていればよい。検知を目視にて行う場合、図12に示すように、検査装置は、ID証10の表面に一次励起光として紫外光を照射する第1光源121、ID証10の表面に二次励起光として赤外光を照射する第2光源122、付与情報4からの蛍光発光の発光光を透過させるバンドパスフィルタやレンズといった光学系部品122、第1および第2光源121、122の照射強度、照射時間等を制御する制御部14を備えている。光学系部品122は、観察窓を構成している。そして、光学部材122を通して、外側から付与情報4の蛍光発光状態を視認することができる。
センサ等により蛍光発光を検知する場合、図13に示すように、検査装置は、光学系部品122に対向して設けられたCCDカメラ124等を備えていてもよい。CCDカメラ124は、付与情報4の発光状態を検出し、制御部14に検出信号を出力する。制御部14は、検出信号に基づいてID証10の真偽を判定する。
【0026】
以上のように構成されたID証および媒体検査方法によれば、輝尽蛍光特性を持った材料による情報形成層を設け、媒体を保護するコート層により、一次励起光の透過率を選択的に制限することにより、任意の蛍光発光特性を有する情報を形成することができる。一次励起光および二次励起光を適切に照射し、ID証に特徴付けられた蛍光発光の様子を確認することができる。この情報を検知することにより、簡便な真偽検知と、必要時の精密な真偽検知とを兼ね備えることができる。これにより、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、およびその検査方法が得られる。
【0027】
次に、他の実施形態について説明する。なお、他の実施形態において、上述した第1の実施形態と同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0028】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るID証10は、図1ないし図3に示した第1の実施形態と同一の構造を有し、局所コート層7の特性を、二次励起波長となる赤外光の透過を制限するものに変更した構成としている。
【0029】
図14は、ID証10を構成する材料個々の分光特性の一例を示している。本図で示すように、付与情報を形成する蛍光材料は、紫外光領域で一次励起を行い、赤外光領域で二次励起行うことにより、可視光の領域で一次励起の状態に依存した発光をする特性を有している。図14において、一次励起波長が100、二次励起波長が101、蛍光材料の発光波長が102でそれぞれ示されている。特性線103は、基材の透過特性を示し、波長全域に渡って光を透過しない特性を有している。特性線104は、オーバーコート層の透過特性を示し、波長全域に渡って透過を制限しない特性を有している。特性線200は局所コート層の透過特性を示し、蛍光材料の一次励起波長100となる紫外光および発光波長は透過を制限せず、二次励起波長となる赤外光の透過を、ある割合だけ制限する特性を有するコート層へ変更している。
【0030】
以下、第2の実施形態に係るID証における局所コート層7を、便宜的にIRコート層と称する。まず、検査方法の具体的手順を説明する前に、IRコート層7による励起光の制限が、蛍光材料の蛍光発光にどのような影響を与えるかについて説明する。
【0031】
一次励起を行うときの影響について説明する。一次励起光となる紫外光の照射状態は、IRコート層の有無で変化しない為、IRコート層の有無に係らず単純に照射時間に比例して一次励起量が増加し、ある時間で飽和へと達する結果となる。
【0032】
次に、二次励起を行う際の影響について説明する。図15は、二次励起光となる赤外光を一定強度でIRコート層7および付与情報に照射した時の、照射時間と蛍光発光量が、IRコート層の有無によりどの様に異なるかを単純化して示したものである。尚、本実施形態に於いてIRコート層の赤外光透過率は50%としている。図15において、特性線210は、IRコート層が存在しない場合、すなわち、IRコート層7の開口8と対向している部分の蛍光発光強度を示し、特性線211は、IRコート層が存在する場合、すなわち、IRコート層7で覆われている部分の蛍光発光強度を示している。付与情報4の蛍光発光量は、IRコート層の有無に係らず照射時間と共に減少して行き、ある時間で発光しなくなる。この時、IRコート層が存在する場合は、無い場合に比べて発光しなくなるまでの時間が倍となる。また、IRコート層が存在する場合は、蛍光発光開始時の蛍光発光量が、IRコート層が存在しない場合の蛍光発光量の半分となる。
【0033】
このように、赤外光照射時間T0〜T1の区間に於いては、IRコート層が存在する場所は、存在しない場所と比べて蛍光発光が少ない状態となる。時間T1〜T3の区間では、関係が逆転し、IRコート層が存在する場所の方が、蛍光発光量が多い状態となる。また、IRコート層の有無による差は、照射時間T2に於いて最大となる。
【0034】
以上のように構成されたID証上に形成された、蛍光材料からなる付与情報と、局所コート層により付与された情報の検査方法、及び、検査装置について説明する。
【0035】
検査工程は、第1の実施形態の図6に示した工程と基本的に同様であるが、一次励起光の照射時間は、蛍光材料の一次励起が飽和するまで行えばよい点が相違している。検査動作の違いは、付与情報に二次励起光である赤外光を照射したとき、蛍光発光の様子が、最初は図16(a)に示すようにIRコート層の無い箇所(星型部分)が強調されるが、赤外光の照射を続け、蛍光発光が弱くなって行く中で、IRコート層が存在する箇所の蛍光発光の方が強くなると言う形で確認される。
【0036】
以上から、蛍光材料の励起、発光波長と言った特性以外の情報を、ID証10上に形成することが可能となる。図17および図18は、ID証10の真偽判定を行う際、真と判定される正常動作のタイムミングチャートを示している。図17に示すように、一次励起については、励起光を一次励起が飽和するまで照射すれば良い。図18に示すように、二次励起時については、励起光照射開始直後はIRコート層7が存在する部分の発光が弱いが、照射開始から時間が経つにつれ、IRコート層が存在する部分が存在しない部分に比べて長時間強く蛍光発光を示す様子が現れる。
【0037】
上記のように構成されたID証10の検査装置は、図12あるいは図13に示した検査装置と同一の構成を備えていればよい。すなわち、検査装置は、上述した検査方法の実行に必要な一次励起光を照射する機能、二次励起光を照射する機能を有する照明機構、及び蛍光発光光を観察可能な観察窓を備えた構成であればよい。
【0038】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、前述の第1の実施形態および第2の実施形態で示したID証の局所コート層による一次励起光あるいは二次励起光の制限を、位置をずらして設ける構成としている。例えば、輝尽性を有する蛍光材料上に設けられ、一次励起光の透過を制限するUVコート層により形成される情報と、二次励起光の透過を制限するIRコート層により形成される情報とを、単語(文章)や、一つの図形を表す連続情報として形成する。これにより、一次励起光の照射時間と二次励起光の照射時間を適切に操作したときのみに、形成情報を読み取ることができるようなID証、つまり、偽変造防止媒体を作成可能となる。
【0039】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るID証について詳細に説明する。
図19は、情報記録媒体として、第4の実施形態に係るID証(身分証明証)を示し、図20は、蛍光材料が存在しない部分のID証の主構成材料の層構造を示し、図21は、蛍光材料が存在する部分のID証の層構造を示している。
【0040】
図19ないし図21に示すように、ID証10は、ほぼ矩形の基材6と、基材の一方の表面全体を覆って形成されたオーバーコート層5と、を有している。基材12は、例えば、紙、樹脂シート等により、薄いシート状あるいは板状に形成されている。オーバーコート層5は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の光透過性を有するフィルムにより形成されている。
【0041】
基材6の一方の表面上には、情報として、例えば、ID証10の所持人のカラーの顔画像2、所持人の氏名、生年月日、ID番号などの文字情報3が印刷されている。顔画像2、文字情報3は、溶融型熱転写方式、昇華型熱転写記録方式、インクジェット方式など種々の記録方式で形成可能である。更に、基材6の表面上に、蛍光材料(輝尽性蛍光体)により付与情報4が形成されている。そして、これら顔画像2、文字情報3、および付与情報4は、オーバーコート層5により覆われ、保護されている。オーバーコート層5は、たとえば、接着剤により基材12の表面に接合されている。オーバーコート層5は光透過性を有する材料で形成されていることから、このオーバーコート層5を通して、顔画像2、文字情報3、および付与情報4をID証10の外側から視認することができる。
【0042】
図19および図21に示すように、本実施形態において、付与情報4は、例えば楕円形に形成されている第1情報領域4aと、この第1情報領域4aの中央部に任意の造形、例えば、星型に形成された第2情報領域4bとを含んでいる。第1情報領域4aは、後述の一次励起光としての紫外光の透過量を制限する樹脂溶液と蛍光材料との混合物を印刷することにより形成されている。第2情報領域4bは、紫外線の透過量を制限しない樹脂溶液と蛍光材料との混合物を印刷することにより形成されている。紫外光の透過量を制限する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、又は、酸化アルミニウム等の紫外線反射材料を混合した樹脂材料を用いることができ、また、紫外光の透過量を制限しない樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂やシリコン等を用いることができる。
【0043】
図22は、ID証10を構成する材料個々の分光特性の一例を示している。本図で示すように、付与情報4を形成する蛍光材料は、例えば、400nm以下の紫外光領域で一次励起を行い、例えば、700nm以上の赤外光領域で二次励起行うことにより、400〜700nmの可視光の領域で一次励起の状態に依存した発光をする輝尽蛍光特性を有している。図22において、一次励起波長が100、二次励起波長が101、蛍光材料の発光波長が102でそれぞれ示されている。特性線103は、基材6の透過特性を示し、波長全域に渡って光を透過しない特性を有している。特性線104は、付与情報4の第2情報領域4bに用いられている樹脂の透過特性、およびオーバーコート層5の透過特性を示し、波長全域に渡って透過を制限しない特性を有している。特性線106は、付与情報4の第1情報領域4aに用いられている樹脂の透過特性を示し、蛍光材料の一次励起波長100となる紫外光の透過を、ある割合だけ制限し、二次励起波長101となる赤外光及び発光波長102の透過を制限しない、つまり、赤外光及び発光波長102を透過する、特性を有している。
【0044】
以下、第4の実施形態において、便宜的に第1情報領域4aに用いる樹脂を、UV制限樹脂と称する。
まず、検査方法の具体的手順を説明する前に、UV制限樹脂による一次励起光の制限が、蛍光材料の蛍光発光にどのような影響を与えるかについて説明する。
【0045】
一次励起を行う際の影響について説明する。図23は、一次励起光となる紫外光を一定強度でID証10に照射した時の、照射時間と蛍光材料の一次励起状態とが、UV制限樹脂の有無によりどう異なるかを単純化して示している。尚、本実施形態に於いてUV制限樹脂の紫外光透過率は50%としている。図中の特性線110は、蛍光材料にUV制限樹脂が混合されていない場合の一次励起状態、すなわち。第2情報領域4bの一次励起状態を示し、特性線111は、蛍光材料にUV制限樹脂が混合されている場合の一次励起状態、すなわち。第1情報領域4aの一次励起状態を示している。
【0046】
蛍光材料の一次励起の状態は、UV制限樹脂の有無に係らず照射時間と共に増加して行き、ある時間で飽和に至る。この時、UV制限樹脂がある場合は、無い場合に比べて飽和までの時間が倍となる。
【0047】
つまり、図23の紫外光(一次励起光)照射時間T0、T1、T2の区間においては、UV制限樹脂がある場所(第1情報領域4a)は、無い場所(第2情報領域4b)と比べて、蛍光材料の一次励起量が少ない状態となる。また、UV制限樹脂の有無による一次励起状態の差は、照射時間T1に於いて最大となる。
【0048】
次に、二次励起を行うときの影響について説明する。二次励起光となる赤外光の蛍光材料に対する照射状態は、UV制限樹脂の有無で変化しない。そのため、UV制限樹脂の有無に係らず、蛍光材料は、一次励起の状態に依存した蛍光発光を示すこととなる。ここで、一次励起光の照射時間が、図23におけるT0〜T2の間であった場合、UV制限樹脂のある場所は、無い場所に比べて、発光時間、発光強度が一次励起の差分に応じて低減する。低減度合いは、照射時間T1に於いて最大となる。
【0049】
以上を受け、ID証10に形成された付与情報4の検査方法、及び、検査装置について説明する。図24は、検査フローを概略的に示している。
まず、太陽光などによって付与情報4の一次励起が生じてしまっている場合を考慮して、ID証10の検査に先立ち、二次励起光である赤外光をID証10の表面に所定時間照射する(S1)。これにより、付与情報4を形成する蛍光材料の一次励起状態をリセットすることができる。
【0050】
次に、一次励起光である紫外光を、一次励起の飽和に対して適切に設定した強度・時間でID証10の表面に照射する(S2)。この際、図25(a)に示すように、付与情報4の蛍光発光は生じない。続いて、二次励起光である赤外光をID証10の表面に照射する(S3)。二次励起により生じる付与情報4の蛍光発光の様子を、目視又は検査装置により確認する。例えば、光センサにより、ID証10の蛍光発光強度を測定する(S4)。この時、付与情報4の蛍光発光は、図25(b)に示すように、UV制限樹脂の無い第2情報領域(星型部分)4bが強調され、長時間発光が持続する形で確認される。
【0051】
図26および図27は、ID証10の真偽判定を行う際、真と判定される正常動作のタイムチャートを示している。図26から分かるように、一次励起時には蛍光発光は確認されず、図27に示すように、二次励起時には、有限な時間の蛍光発光が確認され、その発光強度と発光時間は、UV制限樹脂がある箇所(第1情報領域)の方が弱く、短い。
【0052】
また、偽であると判定される事例は、
<一次励起時>
・蛍光発光を示す。
<二次励起時>
・蛍光発光を示さない。
・蛍光発光が輝尽性を示さない(励起する限り持続する)。
・UV制限樹脂の有無による発光強度等の差を示さない。
が挙げられる。
【0053】
図28および図29(a)に示すように、例えば、T1前後の適正な時間および適正な強度で一次励起光を付与情報4に照射した後、付与情報4に二次励起光を照射した場合、付与情報4は、UV制限樹脂を含む第1情報領域4aに比較して、UV制限樹脂の無い第2情報領域(星型部分)4bが強調され、長時間発光が持続する。これに対して、図28および図29(b)に示すように、例えば、付与情報4のUV制限樹脂を含む第1情報領域4aも飽和に至るだけの時間(T2以上)、過剰な一次励起を行った場合、付与情報4の蛍光発光は、付与情報全体が同じ強度で同じ時間だけ発光を続け、UV制限樹脂により形成された情報を読み取ることが不可能となる。このため、一次励起光の適切な強度及び照射時間を把握していない限り、UV制限樹脂による形成情報を読み取ることが出来なくなる。したがって、蛍光材料の励起、発光波長と言った特性以外の偽造し難い情報を、ID証上に形成することが可能となる。
【0054】
そこで、図24に示すように、判定回路により、正規品の蛍光発光データと、光センサで検出された蛍光発光強度および蛍光発光強度の時間変化データとを比較し、測定データの真偽性を確認する(S5)。そして、全てのデータが一致する場合、判定回路は真であるとあると判定し、真判定表示を出力する(S6)。また、正規品の蛍光発光データと測定データとが不一致の場合、判定回路は偽であると判定し、偽判定表示を出力する(S7)。
【0055】
次に、ID証10を検査する検査装置の例について説明する。
検査装置としては、図12および図13に示したように、第1の実施形態のID証10の検査に用いるものと同様の検査装置が用いられる。この検査装置は、上述した検査方法に必要な一次励起光を一定時間、一定強度で照射する機能および二次励起光を照射する機能を有する照明機構、並びに、蛍光発光光を観察可能な観察窓等を備えていればよい。検知を目視にて行う場合、CCDカメラ等の検知器を用いる場合のいずれでもよい。
【0056】
以上のように構成されたID証および媒体検査方法によれば、輝尽蛍光特性を持った材料と一次励起光の透過を制限する樹脂とによる情報形成層を設け、一次励起光の透過率を選択的に制限することにより、任意の蛍光発光特性を有する情報を形成することができる。これにより、一次励起光および二次励起光を適切に照射し、ID証に特徴付けられた蛍光発光の様子を確認することができる。この情報を検知することにより、簡便な真偽検知と、必要時の精密な真偽検知とを兼ね備えることができる。これにより、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、およびその検査方法が得られる。
【0057】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係るID証10は、図19ないし図21に示した第4の実施形態と同一の構造を有し、付与情報4の印刷に用いる樹脂の特性を、二次励起波長となる赤外光の透過を制限するものに変更した構成としている。
【0058】
図30は、ID証10を構成する材料個々の分光特性の一例を示している。本図で示すように、付与情報4を形成する蛍光材料は、紫外光領域で一次励起を行い、赤外光領域で二次励起行うことにより、可視光の領域で一次励起の状態に依存した発光をする輝尽蛍光特性を有している。図30において、一次励起波長が100、二次励起波長が101、蛍光材料の発光波長が102でそれぞれ示されている。特性線103は、基材の透過特性を示し、波長全域に渡って光を透過しない特性を有している。特性線104は、オーバーコート層の透過特性、および付与情報4の第2情報領域4bに含まれる樹脂の透過特性を示し、波長全域に渡って透過を制限しない特性を有している。特性線201は、付与情報4の第1情報領域4aに含まれる樹脂の透過特性を示し、蛍光材料の一次励起波長100となる紫外光および発光波長102は透過を制限せず、二次励起波長となる赤外光の透過を、ある割合だけ制限する特性を有している。
【0059】
以下、第5の実施形態に係るID証における第1情報領域4aに含まれる樹脂を、便宜的にIR制限樹脂と称する。まず、検査方法の具体的手順を説明する前に、IR制限樹脂による励起光の制限が、蛍光材料の蛍光発光にどのような影響を与えるかについて説明する。
【0060】
付与情報4を一次励起するときの影響を説明する。一次励起光となる紫外光の照射状態は、IR制限樹脂の有無で変化しないため、単純に紫外光の照射時間に比例して付与情報4を形成する蛍光材料の一次励起量が増加し、ある時間で飽和へと達する結果となる。
【0061】
次に、二次励起を行う際の影響について説明する。図31は、二次励起光となる赤外光を一定強度で付与情報4に照射した時の、照射時間と蛍光発光量が、IR制限樹脂の有無によりどう異なるかを単純化して示している。本実施形態において、IR制限樹脂の赤外光透過率は50%としている。図31において、特性線210は、IR制限樹脂が存在しない場合を、特性線211は、IR制限樹脂が存在する場合を示す。蛍光発光量は、IR制限樹脂の有無に係らず赤外光の照射時間と共に減少して行き、ある時間で発光しなくなる。この時、IR制限樹脂が存在する場合は、無い場合に比べて発光しなくなるまでの時間が倍となる。また、IR制限樹脂が存在する場合は、蛍光発光開始時の蛍光発光量が、存在しない場合に比べ半分となる。
【0062】
このように、赤外光照射時間T0〜T1の区間に於いては、IR制限樹脂が存在する第1情報領域4aは、存在しない第2情報領域4bと比べて蛍光発光が少ない状態となる。照射時間T1〜T3の区間では、関係が逆転し、IR制限樹脂が存在する領域の方が、蛍光発光量が多い状態となる。また、IR制限樹脂の有無による差は、照射時間T2に於いて最大となる。
【0063】
以上のように構成されたID証上に形成された、蛍光材料からなる付与情報4と、IR制限樹脂とにより付与された情報の検査方法、及び、検査装置について説明する。
【0064】
検査工程は、第4の実施形態の図24に示した工程と基本的に同様であるが、一次励起光の照射時間は、蛍光材料の一次励起が飽和するまで行えばよい点が相違している。検査動作の違いは、付与情報4に二次励起光である赤外光を照射したとき、蛍光発光の様子が、最初は図32(a)に示すようにIR制限樹脂の無い箇所(星型部分)が強調されるが、赤外光の照射を続け、蛍光発光が弱くなって行く中で、IR制限樹脂が存在する第1領域4aの蛍光発光の方が強くなると言う形で確認される。
【0065】
以上から、蛍光材料の励起、発光波長と言った特性以外の情報を、ID証10上に形成することが可能となる。図33および図34は、ID証10の真偽判定を行う際、真と判定される正常動作のタイムミングチャートを示している。図33に示すように、一次励起については、励起光を一次励起が飽和するまで照射すれば良い。図34に示すように、二次励起時については、励起光照射開始直後はIR制限樹脂が存在する第1情報領域4aの発光が弱いが、照射開始から時間が経つにつれ、IR制限樹脂が存在する第1情報領域4aが存在しない第2情報領域4bに比べて長時間強く蛍光発光を示す様子が現れる。
【0066】
上記のように構成されたID証10の検査装置は、図12あるいは図13に示した検査装置と同一の構成を備えていればよい。すなわち、検査装置は、上述した検査方法の実行に必要な一次励起光を照射する機能、二次励起光を照射する機能を有する照明機構、及び蛍光発光光を観察可能な観察窓を備えた構成であればよい。
【0067】
(第6の実施形態)
図35は、第6の実施形態に係るID証を示す平面図、図36は、このID証10における付与情報の赤外照射時間と蛍光発光強度との関係を示し、図37は、検査装置を示している。
【0068】
図35に示すように、ID証10は矩形状の基材6を有し、基材6の表面上に、顔画像2、文字情報3が印刷され、更に、それぞれ蛍光材料(輝尽性蛍光体)により第1付与情報11a、第2付与情報11bが形成されている。そして、これら顔画像2、文字情報3、および第1、第2付与情報11a、11bは、オーバーコート層5により覆われ、保護されている。
【0069】
本実施形態において、第1および第2付与情報11a、11bは、蛍光材料の印刷密度(インク中の材料濃度)を互いに異なる値とすることにより、発光時間、及び強度に差を持たせている。二次励起光が十分に照射される場合、印刷中の蛍光材料濃度と、蛍光発光時間および蛍光発光輝度とは比例する。
【0070】
図35に示すように、印刷濃度の異なる蛍光材料による第1付与情報11a、第2付与情報11bは、例えば、基材6上において互いに離れた位置に形成されている。両者を離れた位置に形成することにより、発光時間の差異を視覚的に意識し辛くする他、両者に等しい強度の二次励起光を照射することが難しくなり、付与情報の秘匿性が高まる。
【0071】
第1および第2付与情報11a、11bを検査は、これらの付与情報を十分に一次励起した後、等しい強度の二次励起光を照射したときの、両者の発光時間の差を取得することにより可能となる。例えば、第1付与情報11aの印刷密度を第2付与情報11bの3/4とした場合、図36に示すように、二次励起光照射時の発光強度を縦軸、照射時間を横軸とすると、両者の発光の様子は、それぞれ直線310、311のようになる。
【0072】
第1および第2付与情報11a、11bの発光時間の差(T2−T1)は、時間T2の1/4となる。両者の発光時間を比較することにより、真偽判定を行うことができる。比較方法については、時間T1における両者の発光状態を撮像した際、第2付与情報11bのみが発光していることの確認、あるいは、T1〜T2の時間を、光センサなどで取得することが挙げられる。
【0073】
上記のように構成されたID証10を検査する検査装置は、上記の手法に必要な一次励起光を照射する機能、二次励起光を照射する機能を有する照明機構、観察窓、および、蛍光発光光の発光時間を取得可能な機能を有していればよい。一例として、検査装置は、図37に示すように、ID証10の表面に一次励起光として紫外光を照射する第1光源121、ID証10の表面に二次励起光として赤外光を照射する第2光源122、第1および第2付与情報11a、11bからの蛍光発光の発光光を透過させるバンドパスフィルタやレンズといった光学系部品122、制御部14を備え、光学系部材122は、観察窓を構成している。また、検査装置は、光学系部品122に対向して設けられたCCDカメラ、フォトダイオード等の2つの光センサ15a、15bを備えている。光センサ15a、15bは、第1および第2付与情報11a、11bの形成個所の上方にそれぞれ設けられ、これら付与情報からの発光光を受光し検知する。制御部14は、第1光源121、第2光源122の照射強度、照射時間を制御するとともに、光センサ15a、15bからの検出信号に基づいて、ID証10の真偽を判定する。
【0074】
以上のように構成されたID証および媒体検査方法によれば、輝尽蛍光特性を持った材料の印刷濃度を変えて複数の付与情報を設け、発光強度、発光時間に差をつけることにより、簡便な真偽検知と、必要時の精密な真偽検知とを兼ね備えることができる。これにより、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、およびその検査方法が得られる。
【0075】
(第7の実施形態)
図38は、第7の実施形態に係る情報記録媒体としてのID証を示し、図39、図40は、ID証の検査手順を示すタイミングチャートである。
【0076】
第7の実施形態によれば、ID証10の基材6上に、それぞれ蛍光材料(輝尽性蛍光体)により第1付与情報11a、第2付与情報11bが形成されている。第1付与情報11a、第2付与情報11bはオーバーコート層5により覆われ保護されている。第1および第2付与情報11a、11bは、例えば、一方が四角形、他方が楕円に形成され、並んで配置されている。そして、第1付与情報11aおよび第2付与情報11bは、蛍光材料の印刷密度の差、樹脂あるいはコート層による励起光透過の制限を組み合わせて形成されている。
【0077】
そして、付与情報毎に、一次励起と二次励起の状態を特徴づけた媒体に対して、所定のタイミングで一次励起と二次励起を繰り返し、蛍光発光の様子を取得することで、形成情報を読み取るものである。
【0078】
第1付与情報11aと第2付与情報11bの蛍光材料の印刷濃度、一次励起光(UV)透過率、二次励起光(IR)透過率は例えば以下のように設定されている。
【表1】
【0079】
一次励起光の透過率制限(UV制限)は、蛍光材料にUV制限樹脂を混合するか、あるいは、蛍光材料に重ねてUV制限コート層を形成するか、いずれでもよい。また、二次励起光の透過率制限(IR制限)は、蛍光材料にUV制限樹脂を混合するか、あるいは、蛍光材料に重ねてIR制限コート層を形成するか、いずれでもよい。
【0080】
検査工程において、短波長の一次励起光、長波長の二次励起光は、第1および第2付与情報11a、11bに等しい強度で照射されるものとする。先ず、検査の前準備として、短波長の一次励起光となる紫外光を、全印刷個所の一次励起が飽和するまで照射しておく。続いて、図39および図40に示すように、第1および第2付与情報11a、11bに長波長の二次励起光として赤外光を照射する。
【0081】
二次励起光の照射開始時は、第1および第2付与情報11a、11b共に同程度の輝度で発光を示す。しかし、第1付与情報11aの発光は、第2付与情報11bの発光の1/4の時間で終了する。第2付与情報11bの発光が終了する時間(T1)まで二次励起光を照射した後、一次励起光を再度照射する。この時、第2付与情報11bは、第1付与情報11aの1/10の速度でしか一次励起光によるチャージが行われない。
【0082】
第1付与情報11aの一次励起が飽和する時間(T2)まで一次励起光を照射した後、再度、二次励起光を、第1付および第2付与情報11a、11bに照射すると、これらが発光し、第2付与情報11bの発光時間は、第1付与情報11aの発光時間の4割程度となる。
【0083】
以上の工程で一次、二次励起光を照射する際、図39に示した撮影タイミング(S1)、(S2)、(S3)それぞれで発光状態の撮影を行う。撮影タイミング(S1)では、第1および第2付与情報11a、11bの両方が発光し、撮影タイミング(S2)では、第2付与情報11bのみ発光が継続している。撮影タイミング(S3)では、第1付与情報11aのみ発光、といった撮影情報を得ることができる。
【0084】
以上のように構成されたID証によれば、蛍光材料による印刷情報を複雑化し、真偽をより高いレベルで判定することができる。本実施形態では、2つの蛍光情報のみの単純な例を示したが、印刷濃度、励起光の透過率の制限を、複数の割合で制限し、二つ以上の蛍光情報を設けることで、更に複雑で偽変造が困難な情報を設定可能となる。
【0085】
上記のように構成されたID証10の検査装置については、上記の手法に必要な一次励起光を照射する機能、二次励起光を照射する機能を有する照明機構、及び蛍光発光の発光時間を検知する機能を有していればよい。検査装置の構成例は、図37に示した装置構成が挙げられる。
以上のことから、本実施形態によれば、偽変造の有無を容易に確認でき、利便性を維持しつつ、偽変造耐性が向上した情報記録媒体、およびその検査方法が得られる。
【0086】
この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、情報記録媒体は、ID証に限らず、免許証、クレジットカードなどの他の個人認証用媒体、有価証券、貯金通帳等の冊子体、その他、種々の媒体としてもよい。情報記録媒体は、基材とオーバーコート層のみに限らず、他の中間層を有していてもよい。また、一次励起は、紫外光に限らず、X線を用いてもよい。二次励起は、励起光に限らず、熱による励起とすることも可能である。
【符号の説明】
【0087】
2…顔画像、3…文字情報、4…付与情報、4a…第1情報領域、
4b…第2情報領域、5…オーバーコート層、6…基材、10…ID証
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
短波長光による一次励起を与えた後、長波長光の二次励起を与えることで、一次励起の状態に依存する発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、
前記一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、前記付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材と、
を備える情報記録媒体。
【請求項2】
前記付与情報の少なくとも一部は、前記制限部材を構成する樹脂溶液に混合した前記蛍光材料で形成され、
前記蛍光材料は400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有し、
前記樹脂溶液中の樹脂は、前記紫外光の透過量を制限する請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記付与情報は、前記一次励起光の透過量を制限する樹脂と混合した前記蛍光材料により形成された第1情報領域と、制限する透過量が前記樹脂と異なる他種の樹脂と混合した前記蛍光材料により形成された第2情報領域と、を有し、前記第1および第2情報領域は所望の異なる位置に設けられている請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記付与情報の少なくとも一部は、前記制限部材を構成する樹脂溶液に混合した前記蛍光材料で形成され、
前記蛍光材料は400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有し、
前記樹脂溶液中の樹脂は、前記赤外光の透過量を制限する請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記付与情報は、前記一次励起光の透過量を制限する樹脂と混合した前記蛍光材料により形成された第1情報領域と、制限する透過量が前記樹脂と異なる他種の樹脂と混合した前記蛍光材料により形成された第2情報領域と、を有し、前記第1および第2情報領域は所望の異なる位置に設けられている請求項4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
基材と、
短波長光による一次励起を与えた後、長波長の二次励起を与えることで、一次励起の状態に依存する発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、を備え、
前記付与情報は、前記一次励起を行った後、所望の強度の二次励起光を照射した際、所望の時間、発光を持続するように前記蛍光材料の印刷濃度が設定されている情報記録媒体。
【請求項7】
前記蛍光材料は400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有する請求項6に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記付与情報は、第1印刷濃度で形成された第1付与情報と、前記第1印刷濃度と異なる第2印刷濃度で形成された第2付与情報と、を有し、前記第1付与情報および第2付与情報は、異なる位置に設けられている請求項7に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記蛍光材料は400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有し、
前記制限部材は、前記付与情報に重ねて設けられ、前記第1励起光および第2励起光の少なくとも一方の透過量を所定の割合で制限するとともに、前記蛍光材料の発光光を透過するコート層を備えている請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記コート層は、前記一次励起光の透過量を制限する第1領域と、制限する透過量が前記第1領域と異なる第2領域と、を有し、前記第1および第2領域は所望の異なる位置に設けられている請求項9に記載の情報記録媒体。
【請求項11】
前記コート層は、前記二次励起光の透過量を制限する第1領域と、制限する透過量が前記第1領域と異なる第2領域と、を有し、前記第1および第2領域は所望の異なる位置に設けられている請求項9に記載の情報記録媒体。
【請求項12】
基材と、400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、前記一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、前記付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材と、を備える情報記録媒体の検査方法であって、
前記透過率が制限された前記付与情報の第1励起飽和状態となるように、一様、若しくは所望の強度分布で紫外光を照射し、
前記付与情報に赤外光を照射して前記付与情報を前記一次励起状態に依存して発光させ、
前記発光光を発光強度、発光時間を観察して、前記付与情報の有無および特性を判定する情報記録媒体の検査方法。
【請求項13】
基材と、400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、を備え、前記付与情報は、前記一次励起を行った後、所望の強度の二次励起光を照射した際、所望の時間、発光を持続するように前記蛍光材料の印刷濃度が設定されている情報記録媒体の検査方法であって、
前記付与情報に一様、若しくは所望の強度分布で紫外光を照射し、
前記付与情報に赤外光を照射して前記付与情報を前記一次励起状態に依存して発光させ、
前記発光光を発光強度、発光時間を観察して、前記付与情報の有無および特性を判定する情報記録媒体の検査方法。
【請求項1】
基材と、
短波長光による一次励起を与えた後、長波長光の二次励起を与えることで、一次励起の状態に依存する発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、
前記一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、前記付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材と、
を備える情報記録媒体。
【請求項2】
前記付与情報の少なくとも一部は、前記制限部材を構成する樹脂溶液に混合した前記蛍光材料で形成され、
前記蛍光材料は400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有し、
前記樹脂溶液中の樹脂は、前記紫外光の透過量を制限する請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記付与情報は、前記一次励起光の透過量を制限する樹脂と混合した前記蛍光材料により形成された第1情報領域と、制限する透過量が前記樹脂と異なる他種の樹脂と混合した前記蛍光材料により形成された第2情報領域と、を有し、前記第1および第2情報領域は所望の異なる位置に設けられている請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記付与情報の少なくとも一部は、前記制限部材を構成する樹脂溶液に混合した前記蛍光材料で形成され、
前記蛍光材料は400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有し、
前記樹脂溶液中の樹脂は、前記赤外光の透過量を制限する請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記付与情報は、前記一次励起光の透過量を制限する樹脂と混合した前記蛍光材料により形成された第1情報領域と、制限する透過量が前記樹脂と異なる他種の樹脂と混合した前記蛍光材料により形成された第2情報領域と、を有し、前記第1および第2情報領域は所望の異なる位置に設けられている請求項4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
基材と、
短波長光による一次励起を与えた後、長波長の二次励起を与えることで、一次励起の状態に依存する発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、を備え、
前記付与情報は、前記一次励起を行った後、所望の強度の二次励起光を照射した際、所望の時間、発光を持続するように前記蛍光材料の印刷濃度が設定されている情報記録媒体。
【請求項7】
前記蛍光材料は400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有する請求項6に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記付与情報は、第1印刷濃度で形成された第1付与情報と、前記第1印刷濃度と異なる第2印刷濃度で形成された第2付与情報と、を有し、前記第1付与情報および第2付与情報は、異なる位置に設けられている請求項7に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記蛍光材料は400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有し、
前記制限部材は、前記付与情報に重ねて設けられ、前記第1励起光および第2励起光の少なくとも一方の透過量を所定の割合で制限するとともに、前記蛍光材料の発光光を透過するコート層を備えている請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記コート層は、前記一次励起光の透過量を制限する第1領域と、制限する透過量が前記第1領域と異なる第2領域と、を有し、前記第1および第2領域は所望の異なる位置に設けられている請求項9に記載の情報記録媒体。
【請求項11】
前記コート層は、前記二次励起光の透過量を制限する第1領域と、制限する透過量が前記第1領域と異なる第2領域と、を有し、前記第1および第2領域は所望の異なる位置に設けられている請求項9に記載の情報記録媒体。
【請求項12】
基材と、400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、前記一次励起光あるいは二次励起光の少なくとも一方の透過率を任意の割合で制限し、前記付与情報に任意の蛍光発光特性を与える制限部材と、を備える情報記録媒体の検査方法であって、
前記透過率が制限された前記付与情報の第1励起飽和状態となるように、一様、若しくは所望の強度分布で紫外光を照射し、
前記付与情報に赤外光を照射して前記付与情報を前記一次励起状態に依存して発光させ、
前記発光光を発光強度、発光時間を観察して、前記付与情報の有無および特性を判定する情報記録媒体の検査方法。
【請求項13】
基材と、400nm以下の紫外光による一次励起を受けた後、700nm以上の赤外光による二次励起を受けることで、前記一次励起の状態に依存する可視光発光を示す輝尽蛍光特性を有する蛍光材料で、前記基材上に形成された付与情報と、を備え、前記付与情報は、前記一次励起を行った後、所望の強度の二次励起光を照射した際、所望の時間、発光を持続するように前記蛍光材料の印刷濃度が設定されている情報記録媒体の検査方法であって、
前記付与情報に一様、若しくは所望の強度分布で紫外光を照射し、
前記付与情報に赤外光を照射して前記付与情報を前記一次励起状態に依存して発光させ、
前記発光光を発光強度、発光時間を観察して、前記付与情報の有無および特性を判定する情報記録媒体の検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2012−236323(P2012−236323A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106405(P2011−106405)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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