説明

情報記録媒体の提供装置

【課題】紙幣やチケット等の情報記録媒体を顧客に提供するセルフサービス端末における情報記録媒体を移動させる機構を提供する。
【解決手段】前面アクセス型又は背面アクセス型ディスペンサで使用可能な情報記録媒体の提供装置。情報記録媒体の提供装置は、中央ハンドル端と中央取得端とを画定する中央トラックを含むシャーシを備える。ノーズはシャーシの中央取得端に結合され、シャーシの遠位側の提供端と、中央トラックに結合するノーズトラックとを含む。着脱可能なトラックは、シャーシに結合され、シャーシのハンドル端から中央ハンドル端へ延在する。ノーズトラック、中央トラック、及び着脱可能なトラックを組み合わせてハンドル端から提供端へ延在する。提供装置は背面アクセス型ディスペンサ内で顧客に情報記録媒体アイテムを提供し、又はノーズとトラックの位置を入れ替え再構成して前面アクセス型ディスペンサ内で情報記録媒体アイテムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣やチケット等の情報記録媒体を顧客に提供するセルフサービス端末における情報記録媒体の提供装置に関し、特に装置内において情報記録媒体を移動させる機構の構成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体の提供装置は、情報記録媒体ディスペンサの一部として使用される。情報記録媒体の提供装置は、情報記録媒体アイテムを顧客に提供するディスペンサの一部である。一般的なタイプの情報記録媒体ディスペンサとしてシート形態の情報記録媒体アイテム(例えば、紙幣、チケット、クーポンなど)の束(又はスタック)をディスペンスするシート束情報記録媒体ディスペンサがある。
【0003】
束の情報記録媒体の提供装置は、通常、1つ又は複数の情報記録媒体ピックユニットに結合されている。各情報記録媒体ピックユニットは、内蔵の情報記録媒体カセット(又はホッパ)から個々の情報記録媒体アイテムを取得し、取得した情報記録媒体アイテムを情報記録媒体の提供装置へ搬送し、情報記録媒体アイテムを束に揃え(例えば、バリスティックスタッカ又はスタッキングホイールを用いて)、次に情報記録媒体アイテムの束を顧客に提供する。顧客が提供された束を取り出さない場合、提供装置は束を引っ込めてパージビンへ搬送する。
【0004】
幾つかの情報記録媒体ディスペンサは前面アクセス型である。これは、情報記録媒体アイテムが顧客にディスペンスされるのと同じ情報記録媒体ディスペンサの側に情報記録媒体カセットが挿入されるということを意味する。また、背面アクセス型の情報記録媒体ディスペンサもある。これは、情報記録媒体アイテムが顧客にディスペンスされるのと逆の情報記録媒体ディスペンサの側に情報記録媒体カセットが挿入されるということを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改良型の情報記録媒体アイテムの提供装置を提供することが望ましい。また、わずかな改造によって前面アクセス型又は背面アクセス型情報記録媒体ディスペンサのいずれとも併用でき、両者の情報記録媒体の提供装置に同一の部品を使用できる情報記録媒体アイテムの提供装置を提供することが望ましい。多数の共通部品を有することで部品の在庫が低減するため、製造及び保守コストが低減される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、一般に、反転可能な情報記録媒体の提供装置を提供する。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、前面アクセス型又は背面アクセス型で使用するように構成可能な情報記録媒体の提供装置であって、中央ハンドル端と中央取得端とを画定する中央トラックを含むシャーシと、シャーシの中央取得端に結合されたノーズであって、(i)シャーシの遠位側の提供端と、(ii)中央トラックに結合するように構成されたノーズトラックと、(iii)シャーシの中央取得端から取得端へ延在する重なり部とを含むノーズと、シャーシに結合され、シャーシのハンドル端から中央ハンドル端へ延在する着脱可能なトラックとを備え、ノーズトラック、中央トラック、及び着脱可能なトラックが組み合わさってハンドル端から提供端へ延在する提供トラックを提供し、ハンドル端と中央ハンドル端との間の距離が中央取得端と取得端との間の距離にほぼ等しく、したがって提供装置が背面アクセス型ディスペンサ内で顧客に情報記録媒体アイテムを提供でき、ノーズと着脱可能なトラックの位置を入れ替えることで提供装置を再構成して前面アクセス型ディスペンサ内で顧客に情報記録媒体アイテムを提供できる情報記録媒体の提供装置が提供される。
【0008】
情報記録媒体の提供装置は、提供トラック上に装着され、それに沿って移動し、キャリッジ板に結合されたキャリッジ本体を備えるキャリッジであって、(i)情報記録媒体アイテムのスタックをキャリッジ本体とキャリッジ板との間に維持し、(ii)キャリッジのハンドル側の前面アクセス型提供経路又はキャリッジの取得側の背面アクセス型提供経路を介して情報記録媒体アイテムのスタックをキャリッジから搬送するように構成されたキャリッジをさらに備えてもよい。
【0009】
シャーシは、各々が中央のハンドル端と中央の取得端とを画定する1対の対向する中央トラックを備えてもよい。ノーズは、1対の対向するノーズトラックを含んでもよい。さらに、1対の着脱可能なトラックを提供でき、したがって、キャリッジの両側に1つずつ、計2つの平行な提供トラックが提供される。
【0010】
ノーズは、ノーズトラックに結合し、背面アクセス型ディスペンサのために前面アクセス型ディスペンサの場合と比べてより長いノーズが必要な時に提供端を延在する着脱可能なスナウトをさらに備えてもよい。
【0011】
情報記録媒体の提供装置は、第1の停止位置に着脱可能なトラックに着脱可能に結合された第1のバッファと、提供端の近位側の第2の停止位置にノーズトラックに着脱可能に結合された第2のバッファとをさらに備えてもよく、第1及び第2のバッファの各々を取り外してキャリッジをそれぞれ第1又は第2の停止位置より先へ移動させてキャリッジをトラックから取り外すことができる。
【0012】
キャリッジは、キャリッジが提供トラックに沿って動く際に提供トラック上に装着されたターゲットを検知するための提供トラックに整列したセンサを含んでもよい。
【0013】
この態様によって、情報記録媒体の提供装置を前面アクセス型ディスペンサ又は背面アクセス型ディスペンサ上で使用できるように、情報記録媒体の提供装置をシャーシの両端にノーズを有する(またノーズと反対側のシャーシの端部に着脱可能なトラックを有する)構成にすることができる。
【0014】
第2の態様によれば、前面アクセス型又は背面アクセス型ディスペンサと併用するために反転可能な情報記録媒体の提供装置であって、第1の端部と第2の端部を画定する中央トラックを含むシャーシと、中央トラックの第1又は第2の端部でシャーシに結合されたノーズであって、(i)シャーシの遠位側の提供端と、(ii)中央トラックに結合してシャーシから提供端へ連続するトラックを提供するように構成されたノーズトラックとを含むノーズと、中央トラックの第1又は第2の端部とは逆のシャーシの端部に結合された着脱可能なトラックとを備え、中央トラック、ノーズトラック、及び着脱可能なトラックの組み合わせが協働してシャーシの一端からシャーシの反対側の端部を通って提供端へ延在する提供トラックを提供する情報記録媒体の提供装置が提供される。
【0015】
提供トラックは、可動式キャリッジ上の歯車に係合する直線の歯付きラックを備えてもよい。
【0016】
中央トラックは、ノーズと反対側のシャーシの端部(ブランク端)からシャーシのノーズ端まで延在してもよい。あるいは、情報記録媒体の提供装置は、ブランク端でシャーシに装着され、中央トラックに結合して整列してシャーシのブランク端からシャーシのノーズ端を通ってノーズの提供端へ延在する提供トラックを提供する着脱可能なトラックを備えてもよい。着脱可能なトラックは、シャーシに接触するノーズの部分と同様の寸法であってもよい。これによって、情報記録媒体の提供装置を前面アクセス型ディスペンサ又は背面アクセス型ディスペンサ上で使用できるように、情報記録媒体の提供装置をシャーシの両端にノーズを有する(またノーズと反対側のシャーシの端部に着脱可能なトラックを有する)構成にすることができる。
【0017】
情報記録媒体の提供装置は、提供トラック上に装着され、それに沿って移動するキャリッジであって、リンク機構によってキャリッジ板に結合されたキャリッジ本体を備え、情報記録媒体アイテムをキャリッジ板上に配置できる開位置と、キャリッジ板とキャリッジ本体との間に情報記録媒体アイテムをクランプする閉位置との間でキャリッジ板が移動可能なキャリッジをさらに備えてもよい。
【0018】
キャリッジ本体は、キャリッジシャーシと、キャリッジシャーシ上に装着され、キャリッジ板側に弾性的に付勢された上板と、上板に装着され、複数の伸縮ベルトを含む上部搬送部と、シャーシ上に装着され、上板の上方に位置するモータとを備えてもよい。
【0019】
キャリッジ板は、複数の伸縮ベルトを含む下部搬送部をさらに備えてもよく、モータは、上部搬送部及び下部搬送部を制御してキャリッジの取得端又は取得端と反対側のキャリッジのハンドル端から情報記録媒体アイテムの束を搬送させるように動作可能である。
【0020】
モータは、(i)情報記録媒体アイテムの束をパージ容器へ搬送する時にはハンドル端から、(ii)情報記録媒体アイテムの束を顧客に提供する時には取得端から、情報記録媒体アイテムの束を搬送するように動作可能であってもよい。
【0021】
リンク機構は、(i)キャリッジ板を情報記録媒体入口端でキャリッジ本体に結合する第1の1対のリンクアームと、(ii)キャリッジ板を入口端と反対側の非入口端でキャリッジ本体に結合する第2の1対のリンクアームとを備えてもよい。
【0022】
モータは、キャリッジの情報記録媒体入口端の遠位側で、キャリッジの非入口端の近位側の装着ポイントでシャーシに装着可能である。
【0023】
キャリッジシャーシは、キャリッジシャーシを反転すると、モータ装着位置が情報記録媒体入口端の近位側で、キャリッジの非入口端の遠位側になるように反転可能であってもよい。
【0024】
ノーズトラック、中央トラック、及び着脱可能なトラックは各々、キャリッジの一部を支持するように構成されたトラックシェルフ部分を提供してもよい。キャリッジの上記部分は、カムフォロワ(例えば、ピン、棒、又はその他のシャフト上に装着された軸受(すべり軸受又は玉軸受など)であってキャリッジ板から横方向に延在する軸受の形態)を含んでもよい。
【0025】
情報記録媒体の提供装置は、シャーシに結合され、キャリッジ板が開位置にある時にキャリッジ板上に配置された情報記録媒体アイテムを整列状態に維持する位置合わせデバイスをさらに備えてもよい。
【0026】
位置合わせデバイスは、キャリッジ板が開位置にある時にキャリッジ板の上方に延在する複数のフィンガを備えてもよく、該複数のフィンガは、(i)シャーシに枢動自在に結合され、(ii)キャリッジ板側へ弾性的に付勢されている。
【0027】
キャリッジ板は、キャリッジ板が開位置へ移動した時に複数のフィンガを偏向させて情報記録媒体アイテムを複数のフィンガの上方で搬送し、キャリッジ板上に配置するように構成されたバンパーを情報記録媒体入口端にさらに備えてもよい。
【0028】
フィンガは、バンパーによって完全に偏向させられた時に、フィンガが情報記録媒体アイテムがキャリッジ板上に配置された後に対向する位置合わせ縁部を提供するように配置され構成されてもよい。
【0029】
キャリッジ板は、閉鎖位置に戻る時に閉鎖経路を横切ってもよく、フィンガはバンパーに付勢され、閉鎖経路の第1の部分中にキャリッジ板上に位置合わせしたスタックとして情報記録媒体アイテムを維持してもよい。フィンガは、閉鎖経路の第2の部分中にバンパー及び情報記録媒体アイテムスタックとの接触を停止してもよい。
【0030】
リンク機構は、(i)閉鎖経路の第1の部分中の情報記録媒体アイテムが重力によって滑落する比較的急峻な角度から(ii)閉鎖経路の第2の部分中の情報記録媒体アイテムが重力によって滑落しない比較的浅い角度へキャリッジ板を移動させてもよい。
【0031】
また、中央トラックは、そのトラックシェルフ部内にカムブロックギャップを画定してもよい。
【0032】
情報記録媒体の提供装置は、キャリッジ板が開位置にある時にピックユニットから取得された情報記録媒体アイテムを受け取り、取得された情報記録媒体アイテムをキャリッジへ搬送するように構成された情報記録媒体アイテム搬送ユニットをさらに備えてもよい。情報記録媒体アイテム搬送ユニットは、情報記録媒体アイテムが許容判定基準を満足しない場合に(例えば、情報記録媒体アイテムが許容限度より厚く、すなわち、複数の重畳された情報記録媒体アイテムが単一のアイテムとして搬送される場合、情報記録媒体アイテムが傾いている場合、情報記録媒体アイテムが破れている場合など)搬送された情報記録媒体アイテムをパージビンのパージ区画へ方向転換するように動作してもよい。
【0033】
情報記録媒体アイテム搬送ユニットは、複数の重畳された情報記録媒体アイテム、傾いた情報記録媒体アイテムなどを検出する情報記録媒体アイテム厚さセンサをさらに備えてもよい。情報記録媒体アイテム厚さセンサは、情報記録媒体アイテムの厚さを検出する光学的、機械的及び/又は磁気的システムを使用してもよい。情報記録媒体アイテム厚さセンサは周知である。
【0034】
情報記録媒体アイテムは、紙幣、チケット、クーポンなどを含んでもよい。
【0035】
第3の態様によれば、第1の態様の情報記録媒体の提供装置に結合されたピックユニットを備える情報記録媒体ディスペンサが提供される。
【0036】
第4の態様によれば、第3の態様の情報記録媒体ディスペンサを組み込むセルフサービス端末が提供される。セルフサービス端末は現金自動預払機であってもよい。
【0037】
第5の態様によれば、前面アクセス型又は背面アクセス型ディスペンサと併用するために反転可能な情報記録媒体の提供装置であって、2つの対向する端部の各々に連結器を画定する中央トラックを含むシャーシと、それに沿って延在し、2つの中央トラック連結器のいずれかに係合する一端の連結器を画定するトラックを含む着脱可能な提供装置と、2つの中央トラック連結器のいずれかに係合する一端の連結器を画定する着脱可能なトラックとを備える情報記録媒体の提供装置が提供される。
【0038】
中央トラック連結器は、1つ又は複数の突起を有してもよい。着脱可能な提供装置連結器は、1つ又は複数の中央トラックの突起と相補的な1つ又は複数の凹部を含んでもよい。着脱可能なトラック連結器は、1つ又は複数の中央トラックの突起と相補的な1つ又は複数の凹部を含んでもよい。
【0039】
相補的な連結器は、例えば、スナップ嵌め、締り嵌めを提供してもよく、又はねじで固定してもよい。
【0040】
説明を分かりやすく簡潔にするために、上記の態様で提供された要素はそのすべての組合せを明示しているわけではない。それにもかかわらず、技術的に不可能でない限り、又はその逆の内容が明示されていない限り、1つの態様を指すコンシストリクローズ(consistory clause)は、それらのコンシストリクローズが関連する可能性があるすべての他の態様のオプションの特徴として準用されることを当業者であれば直接かつ明確に認識することができるであろう。
【0041】
上記及びその他の態様は、添付の図面を参照しながら以下の具体的な説明を読むことで明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態による背面アクセス型情報記録媒体アイテムの提供装置の簡単な概略図である。
【図2】3つの異なる動作位置にある図1の情報記録媒体アイテムの提供装置の一部(カムブロック)を示す図である。
【図3A】4つの異なる位置にある図1の情報記録媒体アイテムの提供装置の別の部分(提供トラック、カムブロック及びキャリッジ)を示す図である。
【図3B】4つの異なる位置にある図1の情報記録媒体アイテムの提供装置の別の部分(提供トラック、カムブロック及びキャリッジ)を示す図である。
【図3C】4つの異なる位置にある図1の情報記録媒体アイテムの提供装置の別の部分(提供トラック、カムブロック及びキャリッジ)を示す図である。
【図3D】4つの異なる位置にある図1の情報記録媒体アイテムの提供装置の別の部分(提供トラック、カムブロック及びキャリッジ)を示す図である。
【図3E】レッジ位置のカムブロックと提供トラックの一部を示す図である。
【図4】開位置にある図1の情報記録媒体の提供装置の一部(キャリッジ)の斜視図である。
【図5】閉位置にある図4のキャリッジと図1の情報記録媒体の提供装置の別の一部(位置合わせデバイス)の側面図である。
【図6】図5のキャリッジ(閉位置)と位置合わせデバイスの斜視図である。
【図7】図5のキャリッジ(開位置)と位置合わせデバイスの側面図である。
【図8】図5のキャリッジ(開位置で位置合わせデバイスと係合状態)と位置合わせデバイスの斜視図である。
【図9】情報記録媒体アイテムの束を作成するための図1の情報記録媒体の提供装置の上記部分(キャリッジ、カムブロック、位置合わせデバイス、及び情報記録媒体搬送ユニット)の斜視図である。
【図10】図1の情報記録媒体の提供装置の側面図である。
【図11】本発明の別の実施形態による図1の背面アクセス型情報記録媒体アイテムの提供装置から再構成された前面アクセス型情報記録媒体アイテムの提供装置の簡単な概略図である。
【図12】閉位置にある図11の情報記録媒体の提供装置の一部(キャリッジ)の上側斜視図である。
【図13】閉位置にある図12のキャリッジの下側斜視図である。
【図14】開位置にある図12のキャリッジの左側面図である。
【図15】開位置にある図12のキャリッジの右側面図である。
【図16】開位置にある図12のキャリッジの前面及び一側面の図である。
【図17】開位置にある図12のキャリッジの背面及び一側面の図である。
【図18】開位置にある図12のキャリッジの背面図である。
【0043】
提供された図面の幾つかは実際の物理的実施形態を生成できるコンピュータレンダリングに基づいていることに留意されたい。したがって、これらの図面の幾つかは、これらの実施形態の理解には必須でないが当業者に有用な情報を伝える複雑な詳細を含んでいる。したがって、図面に示すすべての部分について具体的に言及はしない。さらに、図を見やすくし、多数の引出し線によって図面を煩雑にすることを回避するため、一部の図面では参照番号を一部割愛している。さらに、幾つかの図面では特徴の一部を取り除いてさらに見やすさを高めている。
【発明を実施するための形態】
【0044】
まず図1について説明する。図1は、本発明の一実施形態による背面アクセス型情報記録媒体アイテムの提供装置10(紙幣提供装置の形態)の簡単な概略図である。
【0045】
紙幣提供装置10は、シャーシ12と、着脱可能なノーズ14と、ディスペンサ(図示せず)のピックユニット(図示せず)に結合する紙幣搬送ユニット16と、多区画パージビン18と、キャリッジ20と、カムブロック22と、位置合わせデバイス24と、着脱可能なトラック26と、制御盤(点線28で示す)とを備える。
【0046】
シャーシ12は、ハンドル端30(通貨カセットハンドルが位置する端部)から取得端32(ピックユニット(図示せず)からの搬送物に整列する端部)へ延在する。シャーシ12は、その上部の中央に位置し、中央のハンドル端36から中央の取得端38へ延在する中央トラック34を含む。
【0047】
着脱可能なノーズ14は、ノーズ14の連結端40からノーズ14の提供端42へ延在して、中央トラック34に整列してそれに沿って連続するトラックを提供するノーズトラック39を含む。
【0048】
所定位置に装着された着脱可能なトラック26は、ハンドル端30から中央のハンドル端36へ延在する。ハンドル端30と中央のハンドル端36との間の距離は、中央取得端38と取得端32との間の距離にほぼ等しい。
【0049】
背面アクセス型提供装置10では、着脱可能なトラック26はシャーシ12のハンドル側に装着され、前面アクセス型提供装置(下記)では、着脱可能なトラック26はシャーシ12の取得端側に装着されている。
【0050】
着脱可能なトラック26、中央トラック34、及びノーズトラック39はすべて直線的に整列して結合し、組み合わさってシャーシ12のハンドル端30からノーズ14の提供端42へ延在する提供トラック(矢印48で示す)を提供する。キャリッジ20は、提供トラック48の全長にわたって直線的に移動可能である。
【0051】
提供トラック48は1つしか示していないが、提供装置10は2つの着脱可能なトラック26と2つの中央トラック34とを含み、着脱可能なノーズ14は2つのノーズトラック39を含むため、シャーシ12は各々がシャーシ12の反対側に位置する2つの平行な提供トラック48を含む。キャリッジ20は、両方の提供トラック48に同時に係合する(キャリッジ20の対向する側の各々は別々の提供トラック48に係合する)。しかし、図を見やすくするために、図1では1つの提供トラック48だけを示している。
【0052】
次に、3つの異なる操作位置のカムブロック22を示す3つの図である図2A〜図2Cについて説明する。
【0053】
カムブロック22は、プラスチック製の円形ブロックを含む。カムブロック22は、制御盤28によって駆動されるカムモータ(図示せず)からの駆動力を受ける歯付きの円周60を含む。これによって、カムブロック22は必要に応じて時計回り又は反時計回りに回転できる。
【0054】
カムブロック22は、湾曲したカムトラック62と、カムブロック22の円周上の1点から湾曲したトラック62へ延在する直線のリードイントラック64と、カムブロック22の円周上の1点からカムブロック22の円周上の反対側の点へ延在するレッジトラック66(すなわち、レッジトラック66は弦である)とを画定する。湾曲したカムトラック62は、オフセット中心点68で終了する。湾曲したカムトラック62は、上向きカム表面62b(カムフォロワを上昇させる)の反対側に下向きカム表面62a(カムフォロワを下降させる)を含む。
【0055】
4つの異なる位置にある提供トラック48と、カムブロック22と、キャリッジ20とを示す図3A〜図3Dについて説明する。4つの位置とは、提供パージ位置(図3A)と、積載位置、キャリッジ閉(図3B)と、積載位置、キャリッジ開(図3C)と、提供位置(図3D)とである。
【0056】
図3A〜図3Dは、提供トラック48(ノーズトラック32と、中央トラック34と、着脱可能なトラック26とによって形成される)と、カムブロック22と、カムブロック位置センサ70と、それに沿って直線移動する提供トラック48上に装着されたキャリッジ20とを示す。カムブロック位置センサ70は、カムブロック22が装着されたシャフト上に装着された磁性ターゲットと協働する磁気センサを使用できる。これによって、カムブロック位置センサ70は、シャフトの回転位置を検知してカムブロック22の回転位置を推定することができる。
【0057】
図3Aは、紙幣の束をパージビン18に搬送するための提供パージ位置にあるキャリッジ20を示す。以下に詳述するように、この位置で紙幣の束が顧客に提供されたが顧客によって取り出されなかった。
【0058】
図3Bは、キャリッジ20が閉位置にある積載位置のキャリッジ20を示す。図2Aに示すように、積載位置で、カムブロック22は、カムブロック22がカム開始位置に達するまでカムブロックモータ(図示せず)によって回転できる。
【0059】
図3Cは、キャリッジ20が開位置にある積載位置のキャリッジ20を示す。図2Bに示すように、キャリッジ20を閉位置から開位置へ移動させるために、カムブロック22はキャリッジ開位置に達するまで回転する。
【0060】
開位置のキャリッジ20の斜視図である図4を参照しながらキャリッジ20について詳述する。
【0061】
キャリッジ20は、キャリッジ本体72と、紙幣をキャリッジ板74上に配置できる開位置と、キャリッジ板74とキャリッジ本体72との間に紙幣をクランプする閉位置との間で移動可能なキャリッジ板74とを備える。
【0062】
キャリッジ本体72は、キャリッジシャーシ76と、上板78をキャリッジ板74側に弾性的に付勢する4つのばね入りアーム80によってキャリッジシャーシ76に結合された上板78と、第1の紙幣センサ82と、第2の紙幣センサ83(図4には図示せず)と、第3の紙幣センサ84と、上板78に装着され、複数の伸縮ベルト92を含む上部搬送部(全体を矢印90で示す)と、キャリッジ20を提供トラック48に沿って移動させ(モータ94a)また上部搬送部90を作動させる(モータ94b)キャリッジシャーシ76上に装着された1対のモータ94a、bとをさらに備える。
【0063】
キャリッジ本体72は、リンク機構(全体を矢印96で示す)によってキャリッジ板74に結合される。リンク機構96は、キャリッジ板74をキャリッジ本体72の一端(情報記録媒体入口端)100に結合する1対のリンクアーム(入口リンクアーム)98と、キャリッジ板74をキャリッジ本体72の反対側の端部(非入口端)104に結合する1対のリンクアーム(非入口リンクアーム)102とを備える。
【0064】
入口リンクアーム98は非入口リンクアーム102より長く、そのためキャリッジが開いている時に入口端100は非入口端104より確実に低くなる。
【0065】
紙幣センサ82、83、84の各々は、対応するプリズム86(図には2つのプリズムのうち1つだけを示す)に整列した光源を含む。第1及び第3の紙幣センサ82、84は、情報記録媒体入口端100又は非入口端104に存在するいかなる紙幣も検出できる。
【0066】
また、キャリッジ本体72は、各々の対がキャリッジシャーシ76の各々の側からキャリッジシャーシ76の他方の側へ延在するシャフト上に装着された2対の駆動コグ106を含む。駆動コグ106は提供トラック48に係合し、1対のモータ94の1つ(キャリッジ移動モータ94a)によって回転して、キャリッジ移動モータ94aの回転方向に応じて、提供トラック48に沿ってキャリッジ20を順方向(提供端42側)又は逆方向(ハンドル端30側)に移動させる。さらに、提供トラック48に係合する2つの横方向にオフセットされた安定化コグ107がシャーシの各側に1つずつ提供される。安定化コグ107は駆動されないが、キャリッジ20が提供トラック48に沿って移動する時に傾くことを防止する。
【0067】
キャリッジ板74は、上面108と、下部搬送部110(1対の伸縮性無端ベルト112を含む)と、下部搬送部(全体を矢印110で示す)から直立した1対の側壁114と、側壁114から横方向に延在して提供トラック48に至るカムフォロワ(ピン上に装着されたすべり軸受の形態)116とをさらに備える。実際には、キャリッジ板74の各側に1つずつ、2つのピン装着軸受116a、bがある。しかし、その片方(ピン装着軸受116a)だけがカムフォロワとして使用される。他方のピン装着軸受116bは、カムフォロワとしては使用されないが、キャリッジ20が提供トラック48に沿って移動する時に閉位置(積載位置以外)にキャリッジ板74を維持するために使用される。
【0068】
キャリッジ板74は、複数の凹部122を画定する情報記録媒体入口端100にバンパー120をさらに備える。
【0069】
キャリッジ20と位置合わせデバイス24を様々な視点から見た図である図5〜図8について説明する。
【0070】
位置合わせデバイス24は、シャーシ12に結合されたブラケット130と、1対の枢動ポイント134によってブラケット130に枢動自在に結合された支持板132と、前縁フィンガ136を枢動ポイント134側へ付勢するばね(図示せず)によって支持板132に摺動自在に結合されるベース138に相互に結合された複数のフィンガ(前縁フィンガ)136とを備える。さらに、図5に示すように、枢動ポイント134は、全体に水平の位置へ向けて支持板132を付勢するばね(図示せず)を含む。
【0071】
前縁フィンガ136は、キャリッジ板74の凹部122に整列するようにベース130上に配置される。
【0072】
キャリッジ板74が開位置へ移動すると、前縁フィンガ136がバンパー凹部122に進入することでバンパー120と組み合わされる(図8に最もよく示されている)。
【0073】
キャリッジ20上に駆動回路144が提供されてモータ94を制御する。駆動回路144は、可撓性アンビリカルコネクタ(図示せず)によって制御盤28に接続される。
【0074】
図3A〜図3D、図3Eを再度参照し、さらに位置合わせデバイス24と組み合わさり、紙幣搬送ユニット16に整列した開位置のキャリッジ20を示す図9及び図10について説明する。
【0075】
提供トラック48は、提供端42からカムブロックギャップ152(図3E)以外のハンドル端30へ延在するトラックシェルフ150(図10に最もよく示されている)を含む。
【0076】
図3Eに示すように、中央トラック34は中央のハンドル端36に1対の突起154を画定し、中央の取得端38に1対の突起156を画定する。突起154は、着脱可能なトラック26と着脱可能なノーズ14の相補的な凹部(図示せず)内に収容される寸法である。同様に、突起156も、着脱可能なトラック26と着脱可能なノーズ14の相補的な凹部(図示せず)内に収容される寸法である。突起154、156は着脱可能なトラック26と着脱可能なノーズ14の開口(図示せず)に整列するねじ切りされた開口158を含むので、取付ねじ(図示せず)を挿入して中央トラック34を着脱可能なトラック26と着脱可能なノーズ14の両方に固定して安定した単一の提供トラック48を提供できる。
【0077】
さらに図2A〜図2Cについて説明する。キャリッジ20が提供トラック48に沿って移動すると、トラックシェルフ150はキャリッジ板74が開くのを防止する。しかし、トラックシェルフ150内にはギャップ(カムブロックギャップ152)がある。このギャップは、レッジトラック66をトラックシェルフ150に整列させることで充填できる。これは、図2Cに示すように、カムブロック22が直線トラック(又はレッジ)位置まで回転した時に実現する。レッジ位置は、カムブロック22を開始位置(図2A)から約55度反時計回りに回転させることで達成される。
【0078】
カムブロック22がレッジ位置にある時には(図2C)、キャリッジ板74を開かずにキャリッジ20を提供端42からハンドル端30へ移動させることができる。
【0079】
しかし、カムブロック22を開始位置まで回転させた場合(図2Aに示すように)、トラックシェルフ150はリードイントラック64によって部分的にしか完了しない。キャリッジ20がハンドル端30へ向けて十分に移動すると、カムフォロワ116aはカムトラック62内に落ち込む。しかし、キャリッジ板74の閉位置から開位置への移動はカムトラック62とリードイントラック64との結合部でキャリッジ20を停止させることでより正確に制御できるため、これは望ましくない。カムフォロワ116aがカムトラック62とリードイントラック64との結合部にある時には、キャリッジ20は積載位置にある。
【0080】
キャリッジ20が積載位置にある時には、カムブロック22を約270度時計回りに回転させることで、カムフォロワ116aがキャリッジ20が開位置にあるオフセット中央ポイント68に達するまでカムフォロワ116aを下方に移動させることができる(カムフォロワ116aの上面を押し下げる下向きカム表面62aの作用によって)(図2B、図3C、図4及び図7〜図10に示すように)。
【0081】
キャリッジ板74がキャリッジの開位置の方へ移動すると、バンパー120が位置合わせデバイス24と係合し、バンパー凹部122を前縁フィンガ136と組み合わせる。さらにキャリッジ板74を開位置へ移動させると、バンパー120は支持板132を下方に枢動し(図7に最もよく示されている)、ベース138を枢動ポイント134から引き離す。これによって、前縁フィンガ136は、紙幣を積み上げる際の壁となる位置合わせ縁部160(図8に破線で示す)を提供する。
【0082】
開位置のキャリッジ20に整列した紙幣搬送ユニット16とバンパー120によって完全に偏向した位置合わせデバイス24とを示す図9及び図10を参照しながら、キャリッジ板74上の紙幣の積み上げについて説明する。
【0083】
紙幣搬送ユニット16は、協働する伸縮性無端ベルト及びローラ(個々に言及しない)を用いて主紙幣経路162(図10に矢印の線で示す)を画定する。
【0084】
紙幣搬送ユニット16は、搬送中の各紙幣の厚さを検知し、搬送中の紙幣の傾きを検出する従来の紙幣(銀行券)厚さセンサ(NTS)164を含む。また紙幣搬送ユニット16は、方向転換ゲート166(概略が図1に最もよく示されている)を含む。方向転換ゲート166は、作動して紙幣厚さセンサ試験(NTS164によって実施される)に不合格になった紙幣をすべて出口開口167を通してパージビン18の単一の紙幣パージ区画168内へ方向転換する。紙幣は、例えば、紙幣に許容できない大きさの穴が開いているために、又は紙幣が許容できないほど傾いているために紙幣厚さセンサ試験に不合格になることがある。
【0085】
紙幣が主搬送経路162から方向転換されない場合、主紙幣経路162の出口ポート170からキャリッジ板74上に排出される。紙幣搬送ユニット16は、紙幣が主紙幣経路162から排出される時にキャリッジ20の情報記録媒体入口端100の方へ情報記録媒体アイテムをフリックする第1の紙幣フリッカ172(図では見えにくいが図10に示す)を出口ポート170に含む。第1の紙幣フリッカ172は比較的短く、紙幣搬送ユニット16から排出される紙幣に順方向加速を付与する。
【0086】
また、紙幣搬送ユニット16は、第1の紙幣フリッカ172よりも長い第2の紙幣フリッカ174を出口ポート170に含む。第2の紙幣フリッカ174は、紙幣が主紙幣経路162から排出された後にキャリッジ板74上へ紙幣を下方にフリックする。
【0087】
出口ポート170からキャリッジ板74上へ排出される各々の紙幣は、一部分は紙幣に作用する重力の力によって、しかし大部分は排出される紙幣を位置合わせ縁部160の方へ付勢する第2の紙幣フリッカ174によって位置合わせ縁部160に下側の長い縁部を整列させている。
【0088】
所望の紙幣がすべてキャリッジ板74上へ排出されると、カムブロック22を回転させて開始位置まで戻すことができる(図2Aに示すように)。この処理では、カムブロックモータ(図示せず)がカムブロック22を約270度反時計回りに回転させる。これが実行されると、上向きカム表面62bがカムフォロワ116aがカムトラック62とリードイントラック64との結合部に達するまでカムフォロワ116aの下面を押し上げる。カムフォロワ116aが上昇するにつれて、支持板132が全体に水平の位置(枢動ポイント134内のばねのために)へ向けて戻り、ベース138はベースばね(図示せず)によって枢動ポイント134の方へ付勢される。これによって、前縁フィンガ136はキャリッジ板74を追跡し、閉位置から開位置へのキャリッジ板の経路(本明細書では閉鎖経路と呼ぶ)の一部(第1の部分)で位置合わせ縁部160をキャリッジ板74上の紙幣のスタックに接触させた状態に保つ。
【0089】
入口リンクアーム98及び非入口リンクアーム102は、閉鎖経路の第2の部分中にキャリッジ板74(及びその上の紙幣のスタック)が浅い角度で上板78に確実に接近するようにする寸法である。これによって、前縁フィンガ136が紙幣のスタックに位置合わせ縁部160を提供することを停止した時に紙幣のスタックがキャリッジ板74から滑落しないようにする。前縁フィンガ136が紙幣のスタックへの接触を停止するポイントは、閉鎖経路の第1の部分の終点と閉鎖経路の第2の部分の始点とを画定する。
【0090】
閉鎖経路の終点で、キャリッジ板74が上板78に接近すると、ばね入りアーム80が、上板78によってスタックの最上部の紙幣の上面の大半又は全部に適切な力が確実に加わるようにする。これによって、紙幣のスタックの縁部が挟持されることが防止される。スタックの縁部の挟持によって、スタックははみ出し、顧客にスタックを確実に提供することがより困難になる。
【0091】
キャリッジ板74が閉位置に達すると、提供装置10はいつでも紙幣の束(又はスタック)を顧客に提供することができる。
【0092】
これは、キャリッジシャーシ76の各側の駆動コグ106を回転させてキャリッジ20を提供位置へ移動させるキャリッジ移動モータ94aによって実施される(図3D)。キャリッジ20が提供位置に達すると(位置センサ(図示せず)によって確認されるように)、ベルト搬送モータ94bが上部及び下部搬送部90、110を駆動して、顧客が取り出せるように情報記録媒体入口端100から部分的に突き出るように紙幣の束(図3Dで束176として示す)を搬送する。
【0093】
顧客が紙幣の束を取り出した場合、それが第1の紙幣センサ82によって検出され(センサ82は情報記録媒体入口の紙幣の存在の検出を停止する)、図3Bに示すように、キャリッジ移動モータ94aはキャリッジ20を積載位置まで戻す。
【0094】
顧客が紙幣の束を取り出さない場合(又は束になった紙幣の一部だけを取り出した場合)、それが第1の紙幣センサ82によって検出される(センサ82は情報記録媒体入口の紙幣の検出を継続する)。ベルト搬送モータ94bは、紙幣の束176がキャリッジ20内に満杯になるように上部及び下部搬送部90、110を逆方向に駆動して紙幣の束176を戻す。
【0095】
次に、制御盤28はキャリッジ移動モータ94a及び駆動コグ106を用いて提供パージ位置(図3A)へキャリッジ20を移動させる。
【0096】
これを実施するため、キャリッジ20は、ブランク端44へ向けて積載位置の先まで提供トラック48に沿って移動しなければならない。これを可能にするために、カムブロックギャップ152は閉じていなければならない。図2Cに示すように、これはカムブロック22をレッジ位置まで回転させることで達成できる。これが実行されると、キャリッジ20は積載位置を過ぎて提供パージ位置へ移動できる。
【0097】
提供パージ位置で、上部及び下部搬送部90、110はキャリッジ20から非入口端104を介してパージビン18の上面に画定された提供束スロット182からパージビン18の提供束パージ区画180(図1及び図10に最もよく示されている)内へ紙幣の束を搬送する。第3の紙幣センサ84は、紙幣の束176がいつキャリッジ20から排出されたかを検出する。これが起こると、紙幣の束176は提供束スロット182に入り、キャリッジ20は制御盤28がキャリッジ移動モータ94aを駆動して駆動コグ106を回転させることで積載位置に戻る。
【0098】
この実施形態では、提供パージ位置よりもハンドル端30に近い第2のパージ位置(非提供パージ位置)がある。これは、紙幣の束176が顧客に提供されない(したがって、顧客の不正の可能性がない)パージ動作に使用される。非入口端がパージビン18の上面によって画定された非提供束スロット184に整列した時にキャリッジ20は第2のパージ位置にある。非提供束スロット184は、非提供束パージ区画186の上方に位置する。非提供束パージ区画186を使用する理由は幾つかある。例えば、一束の紙幣を完成するのに紙幣が足りない場合、スタック動作中に停電になった場合、単一の紙幣パージ区画168が満杯で、紙幣搬送ユニット16内の搬送された紙幣をパージビン18へ方向転換する必要がある場合、束を提供する前に顧客が取引を取り消した場合、構成要素の1つに障害があって自動復旧工程を実施する必要がある場合、又は束を提供する前に不正が試みられた場合がそれにあたる。
【0099】
顧客によって取り出されなかったためにパージされた紙幣の束、又はキャッシュディスペンサの内部的な問題のためにパージされた紙幣の束のために別の区画を用意することで、顧客の不正による可能性がある(すなわち、束の紙幣の一部を取り出したが全部は取り出さない場合)取引を識別し調停することが容易になる。
【0100】
上記の提供装置10によって制御された形で紙幣の束をキャリッジ20内に積載することができ、キャリッジ20を提供位置(図3D)へ移動させて紙幣の束を顧客へ提供でき、又は顧客が束の紙幣を全部取り出さない場合には、提供パージ位置(図3A)へキャリッジ20を移動させることができる。
【0101】
本発明の別の実施形態による前面アクセス型紙幣提供装置210の簡単な概略図である図11を参照しながら以下に説明するように、上記の提供装置10は前面アクセス型ディスペンサ内で使用するように再構成できるという利点を有する。
【0102】
提供装置210内で使用する構成部分は、紙幣提供装置10の構成部分とほぼすべてが同じである。
【0103】
提供装置210内で、シャーシ12、紙幣搬送ユニット16、パージビン18、カムブロック22、位置合わせデバイス24、及び中央トラック34は提供装置10内の対応する構成部分と同じである。構成部分が同じであるため、同じ参照番号を用いている。
【0104】
提供装置210と提供装置10との間の相違点は、(i)提供装置210内のキャリッジ220は提供装置10内のキャリッジ20とは異なった構成である、(ii)提供装置210内の着脱可能なノーズ14は提供装置10内の着脱可能なノーズ14とは逆のシャーシ12の側に位置する、(iii)提供装置210内の着脱可能なトラック26は提供装置10内の着脱可能なトラック26とは逆のシャーシ12の側に位置する、という点である。
【0105】
着脱可能なノーズ14と着脱可能なトラック26は提供装置10内の対応する構成部分と同じであり、それらの位置が入れ替わっているだけであるため、本明細書では詳述しない。しかし、これは、提供端42が提供装置10の提供端42とは逆の提供装置210の側にあるということを意味する。新しい提供トラック248は、提供トラック48と長さは同じであるが提供トラック48とは逆の提供装置の側から突き出ている。
【0106】
同一の構成部分を使用していても、キャリッジ220はキャリッジ20とは異なった構成である。
【0107】
異なった視点からのキャリッジ220の図である図12〜図18について説明する。キャリッジ板74は変化がないが、キャリッジ本体272は180度回転している(キャリッジ本体72に対して)。さらに、リンク機構は再構成されている。
【0108】
キャリッジ20では、入口リンクアーム98が非入口リンクアーム102よりも1対のモータ94から離れた位置に装着されている。これに対して、キャリッジ220では、入口リンクアーム298が非入口リンクアーム302よりも1対のモータ94に近い位置に装着されている(図14及び図15を図7と比較して最もよく分かる)。これは、キャリッジ20内の入口端100が1対のモータ94の遠位側にあり、キャリッジ220内の入口端300が1対のモータ94の近位側にあることによる。
【0109】
リンクアーム98はリンクアーム298と同一であり、唯一の相違点はそれらがキャリッジ本体72、272の異なる場所に接続されているということである。同様に、リンクアーム102はリンクアーム302と同一であり、唯一の相違点はリンクアーム102がキャリッジ本体72の1つの場所に結合し、リンクアーム302がキャリッジ板272の別の場所に結合しているということである。
【0110】
伸縮性無端ベルト92を駆動するベルトの幾つかの引き回しのために、上部搬送部290は上部搬送部90とは多少異なった構成になっている。キャリッジ板74上には2つのピン装着軸受116a、bが提供されているが、片方のピン装着軸受116aだけがカムフォロワとして使用される。他方のピン装着軸受116bは、キャリッジ板74を閉位置に保持し、新しい提供トラック248に沿ったキャリッジ220の搬送を容易にするために使用される。
【0111】
キャリッジ220の動作はキャリッジ20の動作と同じであるため詳述しない。
【0112】
同一の構成部分を用いて前面アクセス型ディスペンサ又は背面アクセス型ディスペンサで使用する提供装置を製造できることを理解されたい。さらに、着脱可能なノーズと着脱可能なトラックの位置を入れ替え、キャリッジを再構成することで、提供装置を前面アクセス型提供装置から背面アクセス型提供装置へ、またその逆に変換することができる。
【0113】
本発明の範囲内で上記実施形態に様々な変更を加えることができる。例えば、別の実施形態では、クーポン、チケット、パス、引換券などの紙幣以外の情報記録媒体アイテムに提供装置を使用してもよい。
【0114】
別の実施形態では、上記のリンク機構とは異なるリンク機構、例えば、摺動アームを使用してもよい。
【0115】
別の実施形態では、カムブロックは、上記の形状とは異なる形状、例えば、四角形を有していてもよい。
【0116】
別の実施形態では、提供装置はその間にキャリッジが装着される1対の提供トラックではなく、単一の提供トラックを含んでもよい。
【0117】
上記実施形態では、キャリッジ板の両側にカムフォロワが提供されているので、180度回転した時もキャリッジを使用できる。しかし、別の実施形態では、1つの構成でしかキャリッジを使用しない場合、1つのカムフォロワだけを提供してもよい。そのようなカムフォロワはカムブロックに最も近いキャリッジ板の側に装着される。
【0118】
上記実施形態では、単一の紙幣パージ区画が壁を分割することで、提供束紙幣パージ区画及び非提供束紙幣パージ区画から分離される。別の実施形態では、パージビンは、単一の紙幣パージ動作のための1つの入口スロットと両方の束紙幣パージ動作のための別のスロットとを有する単一領域を含んでもよい。
【0119】
別の実施形態では、必要な長さのノーズを使用できるように長さが異なる一組の着脱可能なノーズを提供してもよい。これは、情報記録媒体の提供装置を異なるセルフサービス端末で使用する場合、またセルフサービス端末によってフェーシア上のディスペンサ開口と情報記録媒体ディスペンサシャーシとの間の距離が異なる場合に有用である。
【0120】
本明細書に記載する方法ステップは、適宜任意の適切な順序で、又は同時に実行することができる。
【0121】
本明細書では、「備える」、「含む」、「組み込む」及び「有する」という用語は、限定されたリストではなく、1つ又は複数の要素又はステップの拡張可能なリストを記載するために使用される。そのような用語が使用される時には、リスト内に記載した要素又はステップはリストに追加できる他の要素又はステップを除外するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面アクセス型又は背面アクセス型で使用するように構成可能な情報記録媒体の提供装置であって、
中央ハンドル端と中央取得端とを画定する中央トラックを含むシャーシと、
前記シャーシの前記中央取得端に結合されたノーズであって、
(i)前記シャーシの遠位側の提供端と、
(ii)前記中央トラックに結合するように構成されたノーズトラックと、
(iii)前記シャーシの前記中央取得端から取得端へ延在する重なり部と、
を含むノーズと、
前記シャーシに結合され、前記シャーシのハンドル端から前記中央ハンドル端へ延在する着脱可能なトラックと、
を備え、
前記ノーズトラック、前記中央トラック、及び前記着脱可能なトラックが組み合わさって前記ハンドル端から前記提供端へ延在する提供トラックを提供し、前記ハンドル端と前記中央ハンドル端との間の距離が前記中央取得端と前記取得端との間の距離にほぼ等しく、したがって前記提供装置が背面アクセス型ディスペンサ内で顧客に情報記録媒体アイテムを提供でき、前記ノーズと前記着脱可能なトラックの位置を入れ替えることで前記提供装置を再構成して前面アクセス型ディスペンサ内で顧客に情報記録媒体アイテムを提供する情報記録媒体の提供装置。
【請求項2】
前記情報記録媒体の提供装置が、前記提供トラック上に装着され、それに沿って移動し、前記キャリッジ板に結合されたキャリッジ本体を備えるキャリッジであって、(i)情報記録媒体アイテムのスタックを前記キャリッジ本体と前記キャリッジ板との間に維持し、(ii)前記キャリッジのハンドル側の前面アクセス型提供経路又は前記キャリッジの取得側の背面アクセス型提供経路を介して情報記録媒体アイテムのスタックをキャリッジから搬送するように構成されたキャリッジをさらに備える、請求項1に記載の情報記録媒体の提供装置。
【請求項3】
前記シャーシが、各々が中央ハンドル端と中央取得端とを画定する1対の対向する中央トラックを備え、前記ノーズが、1対の対向するノーズトラックを備え、2つの着脱可能なトラックが提供されて、2つの平行な提供トラックが前記キャリッジの両側に1つずつ提供される、請求項2に記載の情報記録媒体の提供装置。
【請求項4】
前記ノーズが、前記ノーズトラックに結合してより長いノーズが必要な時に前記提供端を延長する着脱可能なスナウトをさらに備える、請求項1に記載の情報記録媒体の提供装置。
【請求項5】
前記情報記録媒体の提供装置が、第1の停止位置に前記着脱可能なトラックに着脱可能に結合された第1のバッファと、前記提供端の近位側の第2の停止位置に前記ノーズトラックに着脱可能に結合された第2のバッファとをさらに備え、前記第1及び第2のバッファの各々を取り外して前記キャリッジをそれぞれ前記第1又は第2の停止位置より先へ移動させて前記キャリッジを前記トラックから取り外すことができる、請求項1に記載の情報記録媒体の提供装置。
【請求項6】
前記情報記録媒体の提供装置が、ピックユニットから取得された情報記録媒体アイテムを受け取るように構成された情報記録媒体アイテム搬送ユニットをさらに備える、請求項1に記載の情報記録媒体の提供装置。
【請求項7】
前記情報記録媒体アイテム搬送ユニットが、紙幣搬送ユニットを備える、請求項6に記載の情報記録媒体の提供装置。
【請求項8】
前面アクセス型又は背面アクセス型ディスペンサと併用するために反転可能な情報記録媒体の提供装置であって、
第1の端部と第2の端部を画定する中央トラックを含むシャーシと、
前記中央トラックの前記第1又は第2の端部で前記シャーシに結合されたノーズであって、
(i)前記シャーシの遠位側の提供端と、
(ii)前記中央トラックに結合して前記シャーシから前記提供端へ連続するトラックを提供するように構成されたノーズトラックと、
を含むノーズと、
前記中央トラックの前記第1又は第2の端部とは逆の前記シャーシの端部に結合された着脱可能なトラックと、
を備え、
前記中央トラック、前記ノーズトラック、及び前記着脱可能なトラックの組み合わせが協働して前記シャーシの一端から前記シャーシの反対側の端部を通って前記提供端へ延在する提供トラックを提供する情報記録媒体の提供装置。
【請求項9】
前記提供トラックが、可動式キャリッジ上の歯車に係合する直線の歯付きラックを備える、請求項8に記載の情報記録媒体の提供装置。
【請求項10】
前面アクセス型又は背面アクセス型ディスペンサと併用するために反転可能な情報記録媒体の提供装置であって、
2つの対向する端部の各々に連結器を画定する中央トラックを含むシャーシと、
それに沿って延在し、前記2つの中央トラック連結器のいずれかに係合する一端の連結器を画定するトラックを含む着脱可能な提供装置と、
前記2つの中央トラック連結器のいずれかに係合する一端の連結器を画定する着脱可能なトラックと、
を備える情報記録媒体の提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−133776(P2012−133776A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270766(P2011−270766)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(391007161)エヌ・シー・アール・コーポレイション (85)
【氏名又は名称原語表記】NCR CORPORATION
【Fターム(参考)】