説明

情報記録媒体及び情報読取装置

【課題】 例えばスワイプ型の情報読取装置に代表されるように、搬送方向の走行ジッターが大きい情報読取装置おいて、二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ることができ、ひいては情報記録媒体の利便性を高めることが可能な情報記録媒体及び情報読取装置を提供することにある。
【解決手段】 略コ字形状のフレームの底部を走行基準面として形成してなる情報読取装置(スワイプ式イメージスキャナ1)に使用される情報記録媒体(カード2)において、情報読取装置によって情報が読み取られる領域(読み取り領域3)に、符号化情報部(二次元バーコード31)と特徴部(顔写真32)の各部が含まれることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の情報を記録する紙やプラスチックなどの情報記録媒体、及び、その情報記録媒体に記録された情報を読み取る情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば免許証,キャッシュカード又はクレジットカードなど、様々な個人情報が記録された情報記録媒体がある。情報記録媒体では、個人情報を記録するにあたって、磁気ストライプ,ICチップ又はバーコードなどが使用される。このうち、最も簡易かつ安価に個人情報を記録できるのが、バーコードである。バーコードは、商品の流通分野を含む多方面で広く使用されており、例えば、米国運転免許証では、PDF417と呼ばれる符合体系のスタック型バーコードが使用されている。なお、近年になって、一次元バーコードを積み重ねることによって情報量を増加させた二次元バーコードが広く普及している。
【0003】
二次元バーコードに記録された個人情報を読み取る手法としては、種々ある。例えば、二次元イメージセンサが組み込まれたカメラを用いて対象物(二次元バーコード)を撮像し、得られた二次元画像データを解析して個人情報を読み取る手法や、フラットベットスキャナを用いて、ガラス上に載置された対象物(の二次元バーコード)を反対側から光学的に読み取る手法などがある。しかし、これらの手法は、いずれも高価な機器や広い設置環境が必要になることから、例えばデパートの受付や個人ユースには不向きである。そのため、受付や個人ユースでは、カードの端を手に持ち(手でつまみ)、カードをスワイプさせて二次元バーコードに記録された情報を読み取るスワイプ型の情報読取装置が広く使用されている。
【0004】
ところで、情報記録媒体の中には、二次元バーコードが印刷されているのみならず、顔写真が一緒に掲載されたカードがある。例えば、図6に示すプラスチック製のカード100は、下方に二次元バーコード101が印刷されるとともに、左上隅に顔写真102が掲載されている。また、例えば特許文献1に開示されたIDカード(特許文献1の図5参照)は、下方にバーコード(顔写真内容コード)が印刷されるとともに、左方に上半身の写真が掲載されている。
【0005】
このように、顔写真,指紋又はサインなどの視覚上の特徴が掲載されたカードは、セキュリティ面での信頼性が高くなる。例えば、カードに顔写真を掲載し、その顔写真の特徴(目・口・鼻の中心位置や大きさなど)を符号化して二次元バーコードの中に埋め込んでおく。そうすると、顔写真が他人のものと差し替えられたとしても、二次元バーコードと顔写真を光学的に読み取って、その顔写真の特徴と、その二次元バーコードに埋め込まれた顔写真の特徴とを照合することによって、偽造犯罪を簡易に防止することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−52142号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、二次元バーコード及び顔写真を備え、偽造犯罪の防止にも寄与し得るカードであっても、受付や個人ユースで使用されるスワイプ型の情報読取装置によって情報を読み取られる場合には、その効果を十分に発揮することができない。
【0008】
すなわち、上述した従来のカードは、図6に示すように、顔写真などの視覚上の特徴が、カードをスワイプさせたときに個人情報が読み取られる読み取り領域(図6中の斜線部)以外の領域(左上隅)に掲載されていることから、スワイプ型の情報読取装置によっては、顔写真などの視覚上の特徴を光学的に一緒に読み取ることができない。その結果、上述した偽造犯罪などを簡易に防止することができず、カードの利便性に乏しい面がある。
【0009】
一方で、受付や個人ユースにおいて、スワイプ型の情報読取装置以外の二次元イメージセンサやフラットベットスキャナを利用すれば、二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ることは可能であるが、コスト上昇を招いたり、広い設置環境が必要になったりと、市場普及の妨げとなる要因を数多く含む。そのため、スワイプ型の情報読取装置のみで、二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ることができるカードの登場が望まれる。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、情報読取装置において、二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ることができ、ひいては情報記録媒体の利便性を高めることが可能な情報記録媒体及び情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するために、本発明は、情報読取装置に使用される情報記録媒体において、情報読取装置によって情報が読み取られる領域に、符号化情報部と特徴部の各部が含まれることを特徴とする。
【0012】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1) 情報読取装置に使用される情報記録媒体において、前記情報記録媒体は、前記情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有し、前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部と、前記情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴を有する特徴部と、が含まれることを特徴とする情報記録媒体。
【0014】
本発明によれば、情報読取装置に使用される情報記録媒体において、その情報記録媒体は、情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有しており、その読み取り領域には、例えば二次元バーコードなど、情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部と、例えば顔写真,指紋又はサインなど、情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴を有する特徴部と、が含まれることとしたから、従来のカードとは異なり、二次元バーコードなどの符号化情報部だけでなく、顔写真などの特徴部も、上述した読み取り領域に含まれることとなる。
【0015】
従って、従来は、二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ろうとすると、二次元イメージセンサやフラットベットスキャナなど、広い設置環境を要し、かつ、高価な装置が必要であったが、本発明によれば、例えば受付や個人ユースで広く使用されている手動式(スワイプ型の)情報読取装置さえあれば、上述の高価な装置を必要とすることなく、これらを光学的に一緒に(1回のスワイプで)読み取ることができるので、情報記録媒体の利便性を高めることができる。
【0016】
ここで、「情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部」としては、例えば一次元バーコードや二次元バーコード(スタック式又はマトリックス式)などが挙げられるが、その他、符号化された所定の情報(特に個人情報)を有するコード全てを含む。また、「符号化情報部」は、「情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報」以外の情報を有していてもよい。なお、「情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報」としては、例えば、情報記録媒体所有者の氏名,住所,電話番号,生年月日,家族構成,口座番号など、様々なものが挙げられる。
【0017】
一方で、「情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴を有する特徴部」としては、例えば顔写真,指紋又はサインなどが挙げられるが、視覚上の特徴として認識しうるものであれば、如何なるものであっても構わない。
【0018】
(2) 前記符号化情報部は、前記特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報が符号化された情報を有することを特徴とする(1)記載の情報記録媒体。
【0019】
本発明によれば、上述した符号化情報部は、上述した特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報が符号化された情報を有することとしたから、セキュリティ面での信頼性を向上させることができる。
【0020】
すなわち、符号化情報部に、顔写真の中の目や鼻など、視覚上の特徴を抽出した情報が符号化された情報を予め埋め込んでおくことで、仮に、情報記録媒体に掲載された視覚上の特徴が他人のものと差し替えられた場合であっても、その視覚上の特徴と、予め符号化情報部に埋め込んだ視覚上の特徴とを照合することによって、偽造犯罪を防止することができ、ひいてはセキュリティ面での信頼性を向上させることができる。
【0021】
一方で、符号化情報部が改竄された場合であっても、同様に照合することで、偽造犯罪を防止することができる。このように、本発明によれば、符号化情報部と特徴部との整合性の有無が判断できるようになるので、セキュアな情報記録媒体を提供することができる。
【0022】
(3) 前記読み取り領域には、前記情報読取装置において前記特徴部における視覚上の特徴を光学的に読み取る際に発生する幾何学的歪みを補正するためのマークを有するマーク部が含まれることを特徴とする(1)又は(2)記載の情報記録媒体。
【0023】
本発明によれば、上述した読み取り領域には、情報読取装置において特徴部における視覚上の特徴を光学的に読み取る際に発生する幾何学的歪みを補正するためのマークを有するマーク部が含まれるので、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することが可能になる。
【0024】
すなわち、顔写真,指紋又はサインなどの視覚上の特徴を上述の読み取り領域に掲載すると、スワイプに起因した搬送方向のジッターが生じ、顔画像,指紋画像又はサイン画像が歪む場合があるが、本発明によれば、上述したマーク部を光学的に読み取ることによって得られる補正情報を基にして、その歪みを補正することができる。
ここで、読み取り領域内におけるマーク部の位置については、特に限定されない。例えば、符号化情報部に隣接していてもよいし、符号化情報部の内部にあってもよい。このようにすることで、情報読取装置において符号化情報部を光学的に読み取る際に、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することができる。特に、PDF417の符号体系以外のバーコードは、搬送方向のジッターによって悪影響を受けやすいが、本発明によれば、このジッターによる悪影響を低減することができる。
【0025】
(4) 前記マーク部は、前記特徴部に隣接していることを特徴とする(3)記載の情報記録媒体。
【0026】
本発明によれば、上述したマーク部は、特徴部に隣接していることとしたので、スワイプ時に、イメージセンサの正面を通過するマーク部と特徴部の移動速度が同じになり、その結果、情報読取装置において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を向上させることができる。
【0027】
(5) 前記符号化情報部は、前記特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報及び前記マーク部の特徴を抽出した情報が符号化された情報を有することを特徴とする(3)又は(4)記載の情報記録媒体。
【0028】
本発明によれば、上述した符号化情報部は、特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報及びマーク部の特徴を抽出した情報が符号化された情報を有することとしたので、仮に、特徴部やマーク部が改竄された(例えば写真が貼り替えられた)としても、その改竄を適切に検出することができ、ひいてはセキュリティ面での信頼性を向上させることができる。
【0029】
(6) 前記マーク部は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、当該搬送方向に対して当該幅が変化する図形を有することを特徴とする(3)から(5)のいずれか記載の情報記録媒体。
【0030】
本発明によれば、上述したマーク部は、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、搬送方向に対してその幅が変化する図形を有することとしたから、このマーク部は連続的な位置情報となり、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正するのに必要な情報を、高い分解能で取り出すことができる。その結果、情報読取装置において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を向上させることができる。
【0031】
(7) 前記図形は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで複数個配置され、これら複数個の図形の位置的位相は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることを特徴とする(6)記載の情報記録媒体。
【0032】
本発明によれば、上述した図形は、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで複数個配置され、これら複数個の図形の位置的位相は、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることとしたから、情報記録媒体上のレイアウトを考慮して、情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向の幅をある程度小さくし、複数のセグメントをもつ複数個の図形を考えた場合であっても、情報読取装置において搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正するのに必要な情報を、精度良く取り出すことができる。
【0033】
(8) 前記符号化情報部は、暗号化処理されていることを特徴とする(1)から(7)のいずれか記載の情報記録媒体。
【0034】
本発明によれば、上述した符号化情報部は、暗号化処理されていることとしたから、例えば、符号化情報部から、特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報を取り出すことが不可能になり、情報記録媒体の違法複製を防止することができ、ひいてはセキュアな媒体を提供することができる。
【0035】
ここで、符号化情報部が「暗号化処理されている」とは、特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報が既に組み込まれた符号化情報部に於いて暗号化処理が施されているのは勿論のこと、予め特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報を暗号化しておき、その暗号化されたものが、符号化情報部に対して組み込まれることをも含む趣旨である。
【0036】
なお、暗号化方式については、その種類の如何を問わない。例えば、特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報が既に組み込まれた符号化情報部において暗号化処理を施す場合には、EAN/JAN,UPC,ITF,CODE39,CODE128,EAN128,NW−7,Code2of5など、様々なものが挙げられる。一方で、予め特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報を暗号化しておき、その暗号化されたものが符号化情報部に対して組み込まれる場合には、共通鍵暗号による暗号化方式、公開鍵暗号による暗号化方式、メッセージ認証方式、デジタル署名方式、電子透かしによる埋め込み方式など、様々なものを採用することができる。さらに、特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報が既に組み込まれた符号化情報部に於いて、共通鍵暗号による暗号化方式、公開鍵暗号による暗号化方式、メッセージ認証方式、デジタル署名方式、電子透かしによる埋め込み方式などの暗号化処理を施すこともできる。更に、暗号化する対象は、「所有者に関する符号化された情報」の全て又は一部と、特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報とを含むものであってもよい。
【0037】
(9) (1)から(8)のいずれか記載の情報記録媒体に記録された情報を読み取る読み取り手段を備えることを特徴とする情報読取装置。
【0038】
本発明によれば、情報読取装置に、上述した情報記録媒体に記録された情報を読み取る読み取り手段を設けることとしたので、例えば二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ることができる。
(10) 走行路を形成するフレームを有し、当該フレームの一部が走行基準面として形成され、当該走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取ることを特徴とする(9)記載の情報読取装置。
本発明によれば、例えば略コ字形状のフレームの一部(例えば底部)が走行基準面として形成され、その走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取る情報読取装置において、例えば二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る情報記録媒体及び情報読取装置は、以上説明したように、例えば二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ることができ、ひいては情報記録媒体の利便性を高めることができる。また、視覚上の特徴を抽出した情報が符号化された情報が符号化情報部に組み込まれることで、セキュリティ面での信頼性を向上させることができる。さらに、上述したマークを読み取り領域に設けることで、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0041】
[外観構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1及びカード2の外観構成の概要を示す模式図である。図1(a)は、カード2をスワイプ式イメージスキャナ1に通している様子を示しており、図1(b)は、カード2を正面から見て拡大した様子を示している。
【0042】
図1(a)において、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1は、断面形状がほぼコ字形状をなすフレームを有しており、このフレームの底部をカード走行基準面として形成されている。また、この底部を挟んで対向する2つの側板部の間に、カード通路1aが形成されている。なお、スワイプ式イメージスキャナ1の電気的構成については後述する。
【0043】
一方で、図1(b)において、本発明の実施の形態に係るカード2は、JISに準拠している一般的なカードであって、例えば、幅86mm,高さ54mm,厚み0.76mmというサイズのプラスチックカードである。なお、ここではプラスチックカードを採用したが、例えば、スタンプカードなどの紙カード,カード内部にICチップが内蔵されたICカード,カード表面に特殊な塗工を施してデータの書き換えが可能なリライトカードなど、その種類の如何は問わない。また、サイズに関しても、如何なるサイズであってもよい。さらに、ISU100対象の情報記録媒体を採用することもできる。
【0044】
カード2は、スワイプ式イメージスキャナ1によって情報が読み取られる読み取り領域3を有しており、その読み取り領域3には、カード2の所有者に関する符号化された情報を有する二次元バーコード31と、カード2の所有者に関する視覚上の特徴を有する顔写真32と、が含まれている。このうち、二次元バーコード31は、1次元バーコードを拡張したものであり、例えば、ソフト又はハードによって情報を二次元コードに変換(エンコード)し、その2次元コードをプリンタによってカード2に印刷することで、作成される。
【0045】
なお、ここでは顔写真32を二次元バーコード31の右方に掲載(配置)することとしたが、読み取り領域3の内部であれば、種々配置変更可能である。また、図1(b)では、読み取り領域3は、およそ下半分(1/2)となっているが、下から3/1であっても2/3であっても、その面積の如何は問わない。更に、場合によっては、図1(b)の縦方向に読み取り領域3が設けられていてもよい。
【0046】
このように、カード2の所有者に関する符号化された情報(例えば氏名や住所など)を有する二次元バーコード31と、カード2の所有者に関する視覚上の特徴(目,鼻又は口など)を有する顔写真32とを、図1(b)に示すように読み取り領域3の内部に配置することによって、二次元バーコード31と顔写真102とを光学的に一緒に(1回のスワイプで)読み取ることができるようになる。その結果、カード2の利便性を高めることが可能になる。
【0047】
また、二次元バーコード31には、顔写真32が有する目,鼻又は口の中心位置や大きさが符号化された情報が含まれる場合がある。これにより、仮に、カード2の顔写真32が他人のものと差し替えられた(偽造された)場合であっても、その他人の顔写真の特徴と、二次元バーコード31に含まれている自分の顔写真の特徴とを照合することによって、偽造犯罪を防止することができ、ひいてはセキュリティ面での信頼性を向上させることができる。
【0048】
さらに、二次元バーコード31は、単に符号化されたものだけではなく、暗号化処理されているものであってもよい。すなわち、顔写真32における視覚上の特徴を抽出した情報(目や鼻の大きさ・位置など)が既に組み込まれた二次元バーコード31に、UPC,ITF,CODE39などの暗号化処理が施されていてもよい。これにより、よりセキュアな媒体を提供することができる。
一方で、予め顔写真32における視覚上の特徴を抽出した情報(目や鼻の大きさ・位置など)を暗号化しておき、その暗号化されたものが二次元バーコード31に組み込まれていてもよい。例えば、予め情報を暗号化しておいて、その後、二次元バーコード31にエンコードしてカード2に印刷する。そして、カード2をスワイプ式イメージスキャナ1で読み取ってデコードしてから、暗号化されたデータを復号化する、という共通鍵暗号による暗号化方式を採用することができる。また、予め情報を公開鍵暗号の公開鍵で暗号化してから二次元バーコード31にエンコードし、その二次元バーコード31をスワイプ式イメージスキャナ1で読み取ってデコードしてから、公開鍵暗号の秘密鍵によって復号化する、という公開鍵暗号による暗号化方式を採用することもできる。また、共通鍵暗号により、二次元バーコード31にする前の元情報のメッセージ認証子を作成しておき、元情報とメッセージ認証子を一緒に二次元バーコード31にエンコードする。そして、二次元バーコード31をデコードした後に、データ中のメッセージ認証子の正当性を検証する、というメッセージ認証方式を採用することもできる。さらに、公開鍵方式を用いて、二次元バーコード31にする前の元情報のデジタル署名を作成しておき、元情報とデジタル署名を一緒に二次元バーコード31にエンコードする。そして、二次元バーコード31をデコードした後に、データ中のデジタル署名の正当性を検証する、というデジタル署名方式を採用することもできる。その他、電子透かしによる埋め込み方式を採用することもできる。
[電気的構成]
【0049】
図2は、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1の電気的構成を示す模式図である。
【0050】
図2において、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1は、密着型のイメージセンサ11と、カード2がカード通路1aを通過するときに、カード2と接触して回転するパッドローラ12と、パッドローラ12の回転を検出してカード2の位置情報を取得するエンコーダ13と、を有する。また、イメージセンサ11は、撮像された二次元バーコード31や顔写真32の画像データを記憶する画像メモリ14と電気的に接続され、その画像メモリ14は、画像メモリ14から取り込んだ画像データに対して様々な処理を施す画像処理手段15と電気的に接続されている。
【0051】
以上のような電気的構成に基づき、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1の動作について説明する。
【0052】
まず、イメージセンサ(撮像素子)11は、カード通路1aを通過するカード2の二次元バーコード31及び顔写真32を光電変換によって撮像する。そして、撮像された二次元バーコード31の画像データは、画像メモリ14において記憶される。なお、この画像メモリ14は、RAM,SDRAM,DDRSDRAM,RDRAMなど、画像データを記憶しうるものであれば如何なるものであってもよい。その後、画像処理手段15は、画像メモリ14に記憶されている画像データを読み込んで、位置検出処理,構造解析処理,復号処理などの信号処理を行う。これにより、二次元バーコード31の読み取りが完了する。
【0053】
一方で、イメージセンサ11によって撮像された顔写真32の画像データも、画像メモリ14(他の画像メモリでもよい)に記憶された後、画像処理手段15(他の画像処理手段でもよい)において種々の信号処理が行われる。なお、顔写真32の視覚上の特徴を抽出する手法としては、例えば、最短距離法,判別分析,ベイズの決定境界,マハラノビスの汎距離,決定木法,ニューラルネットワークなど様々な手法があるが、その種類の如何を問わない。
【0054】
このように、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1によれば、二次元バーコード31と、顔写真32の視覚上の特徴とを光学的に1回のスワイプで読み取ることができる。なお、本発明は、二次元バーコード31と、顔写真32の視覚上の特徴とを、必ずしも1回のスワイプで読み取らなければならない趣旨ではない。例えば、1回目のスワイプで二次元バーコード31を読み取り、2回目のスワイプで顔写真32の視覚上の特徴を読み取るようにすることも可能である。
【0055】
また、上述のとおり、カード2の二次元バーコード31に、顔写真32が有する視覚上の特徴を埋め込んでおくことで、顔写真を差し替えて偽造するなどの犯罪を防止することができ、ひいてはカード認識のセキュリティ性を向上させることができる。
【0056】
[変形例]
図3は、本発明の他の実施の形態に係るカード2の外観構成の概要を示す模式図である。なお、図1(b)と同じ要素については、同符号で示すものとする。
【0057】
図3(a)において、本発明の他の実施の形態に係るカード2の特徴としては、その読み取り領域3に三角形のマーク4が含まれている点である。これは、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15(図2参照)において、顔写真32の幾何学的な歪みを補正するために設けられたものである。
【0058】
すなわち、スワイプ式イメージスキャナ1では、人間がカード2をもってスワイプする、という人為的動作が介在するため、カード2がカード通路1aを一定速度で通過しない場合がある。かかる場合には、画像メモリ14(図2参照)に記憶された画像データに搬送方向のジッターが生じ、顔画像が歪んでしまう。読み取り領域3に含まれるマーク4は、この幾何学的歪みを補正するために設けられたものである。このマーク3を用いた歪み補正の仕組みについては、図4を用いて後述する。
【0059】
なお、図3(a)では、カード2の所有者に関する視覚上の特徴を有するものとして顔写真32を採用したが、例えば、図3(b)に示すように指紋32'を採用してもよいし、図3(c)に示すようにサイン32''を採用してもよい。
【0060】
また、図3(a)では、三角形のマーク4は、顔写真32の真下に掲載(配置)されているが、本発明は、かかる配置構成に限定される趣旨ではない。カード2の読み取り領域3内であれば、如何なる位置であっても構わない。例えば、二次元バーコード31に隣接する位置であっても、二次元バーコード31と重なっていても構わない。特に、図3(a)に示すように、顔写真32に隣接する位置に掲載することによって、スワイプ時に、イメージセンサ11の正面を通過するマーク4と顔写真32の移動速度が同じになり、その結果、スワイプ式イメージスキャナ1において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0061】
さらに、図3(a)において、二次元バーコード31に、マーク4の視覚上の特徴(例えば三角形の周囲の長さ・面積など)が符号化された情報を埋め込んでもよい。これにより、マーク4が改変されたとしても、その改変を適切に検出することが可能になり、ひいてはセキュリティ面での信頼性を向上させることができる。
【0062】
図4は、スワイプ式イメージスキャナ1において、マーク4の画像データを用いた歪み補正が実行される仕組みを説明するための説明図である。図4には、顔写真32の任意の一部分に相当する真円部32aと、顔写真32の下方に掲載されたマーク4と、が示されている。
【0063】
まず、スワイプ式イメージスキャナ1において、画像メモリ14の画像データに搬送方向のジッターが生じていない場合(図4(a))のマーク4の所定寸法を予め記憶させておく。例えば、図4(a)では、マーク4の高さがB(1個又は数個の数値からなる)になるときの水平方向の長さをAとして記憶させておく。
【0064】
そして、画像メモリ14に記憶された画像データに、例えば図4(b)に示すような搬送方向のジッターが生じたと仮定する。すなわち、真円部32aの画像データが搬送方向(図中の水平方向)に歪むとともに、マーク4の画像データも同様に搬送方向に歪んだと仮定する。
【0065】
この場合、スワイプ式イメージスキャナ1(の画像処理手段15)では、マーク4の高さがB'(=B)になるときの水平方向の長さA'が検出され、水平方向の長さA'の区間では、真円部32a及びマーク4の画像データが搬送方向にA'/Aの倍率で歪んでいることが認識される(上述したA'/Aの倍率が1になるときは、搬送方向のジッターは生じておらず、1以外になるときは、搬送方向のジッターが生じている、と認識される)。
【0066】
このようにして、マーク4の高さB'を適宜変更し、複数個の水平方向の長さA'を検出する。そうすると、搬送方向に歪んでいる長さA'の区間のうち、実際に歪んでいる区間Hを特定することができる。また、同様にして、実際に歪んでいる区間Hも特定することができる。従って、スワイプ式イメージスキャナ1(の画像処理手段15)は、かかる補正情報(歪んでいる区間や歪んでいる倍率)を基にして、その歪みを補正することが可能になる。
【0067】
図5は、マーク4の外観の変更した様子を説明するための説明図である。
【0068】
図5(a)において、三角形のマーク4aは、図4(a)に示すマーク4と同様の図形である。このように、スワイプ式イメージスキャナ1におけるカード2の搬送方向と垂直な方向(図5中の縦方向)に幅をもつ図形とすることで、図4を用いて上述したように、歪んでいる区間を特定することが可能になる。
【0069】
ここで、スワイプ式イメージスキャナ1におけるカード2の搬送方向と垂直な方向に幅をもつ図形としては、様々なものが挙げられる。例えば、図5(a)において、マーク4bやマーク4cに示すように、マーク4aと線対称の図形としてもよいし、マーク4dに示すように、マーク4aとマーク4bを結合したような図形としてもよい。また、図示しないが、四角形,二本の非平行な直線などであってもよいし、顔写真32の形成する輪郭(四角枠)や、顔写真32の中に含まれている線図部分や、それに付帯させた線図との組合せなどであってもよい。さらに、図5(b)において、マーク4eが示すように、サイン32''を囲むような三角形の図形としてもよい。加えて、コントラストにて分別できれば、図柄が重なっている図形であってもよい。
【0070】
また、歪み補正の精度(分解能)を上げるには、マーク4(マーク4a〜4e)において、カード2の搬送方向と垂直な方向に対する変化量を大きくすればよい。例えば、図5(a)又は図5(b)では、横長の三角形となっているが、これを縦長の三角形にしたり、一本の縦長の直線にしたりする等である。しかし、例えば45度の変化量で三角形のマーク4を作成すると、カード2の規定の範囲内(例えば高さ54mmの範囲内)にレイアウトできなくなる場合がある。そこで、図5(c)において、マーク4fが示すように、45度の変化量を維持しながら幾つかのセグメントに分割した図形が考えられる。これにより、マークの高さをある程度抑えた上で、歪み補正の精度を上げることができる。
【0071】
一方で、セグメント化されたマーク4fは、単調増加又は単調減少を繰り返す図形となるため、その変化点(例えばX部分)では、図5(d)に示すように円くなったりする。従って、これを改善すべく、マーク4fと線対称な図形であるマーク4gを組合せ、両者の位置的位相をカード2の搬送方向にずらして配置する。これにより、マーク4fの図形が直線的でない部分であっても、マーク4gの直線的な部分を用いることによって、精度良く歪み補正を行うことができる。
【0072】
なお、歪み補正は、マーク4を止め、エンコーダ等の機器を用いて行うことも考えられるが、かかる方法は、エンコーダ等の機器を用いることが原因でコスト上昇や容積増大を招く結果、小型化・コンパクト化の時代の流れに逆らうことになる。この点、本発明を用いた歪み補正よれば、カード2に所定のマーク4を配置するだけで、搬送方向のジッターよる歪みを補正することができ、ひいてはスワイプ式イメージスキャナ1やカード2の信頼性を簡易に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る情報記録媒体及び情報読取装置は、二次元バーコードと、顔写真などの視覚上の特徴とを光学的に一緒に読み取ることが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ及びカードの外観構成の概要を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナの電気的構成を示す模式図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係るカードの外観構成の概要を示す模式図である。
【図4】スワイプ式イメージスキャナにおいて、マークの画像データを用いた歪み補正が実行される仕組みを説明するための説明図である。
【図5】マークの外観の変更した様子を説明するための説明図である。
【図6】従来例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0075】
1 スワイプ式イメージスキャナ
2 カード
3 読み取り領域
4 マーク
11 イメージセンサ
12 パッドローラ
13 エンコーダ
14 画像メモリ
15 画像処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報読取装置に使用される情報記録媒体において、
前記情報記録媒体は、前記情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有し、
前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部と、前記情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴を有する特徴部と、が含まれることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記符号化情報部は、前記特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報が符号化された情報を有することを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記読み取り領域には、前記情報読取装置において前記特徴部における視覚上の特徴を光学的に読み取る際に発生する幾何学的歪みを補正するためのマークを有するマーク部が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記マーク部は、前記特徴部に隣接していることを特徴とする請求項3記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記符号化情報部は、前記特徴部における視覚上の特徴を抽出した情報及び前記マーク部の特徴を抽出した情報が符号化された情報を有することを特徴とする請求項3又は4記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記マーク部は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、当該搬送方向に対して当該幅が変化する図形を有することを特徴とする請求項3から5のいずれか記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記図形は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで複数個配置され、これら複数個の図形の位置的位相は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることを特徴とする請求項6記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記符号化情報部は、暗号化処理されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか記載の情報記録媒体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか記載の情報記録媒体に記録された情報を読み取る読み取り手段を備えることを特徴とする情報読取装置。
【請求項10】
走行路を形成するフレームを有し、当該フレームの一部が走行基準面として形成され、当該走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取ることを特徴とする請求項9記載の情報読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−209852(P2006−209852A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18947(P2005−18947)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】