情報記録媒体及び情報読取装置
【課題】識別情報を記録する配列を小さな領域で構成することを容易とし、識別情報が不正に読取られるリスクを小さくする。
【解決手段】本発明の情報記録媒体10は、散乱反射層120と、これと向き合うと共に固化された液晶材料からなり、第1情報として潜像を保持している潜像形成層150と、潜像形成層150と向き合い、潜像形成層と向き合った主面は複数の単位配向領域を含み、前記複数の単位配向領域は潜像形成層150中に潜像を形成している光透過性の配向層140と、潜像形成層150及び配向層140の少なくとも一方を間に挟んで又はそれらを間に挟まずに散乱反射層120の一部と向き合い、複数の単位配向領域の一部に対応して配列した複数の光吸収部を含み、これら光吸収部の配列は第1情報とは異なる第2情報を構成している像形成層130とを具備したことを特徴とする。
【解決手段】本発明の情報記録媒体10は、散乱反射層120と、これと向き合うと共に固化された液晶材料からなり、第1情報として潜像を保持している潜像形成層150と、潜像形成層150と向き合い、潜像形成層と向き合った主面は複数の単位配向領域を含み、前記複数の単位配向領域は潜像形成層150中に潜像を形成している光透過性の配向層140と、潜像形成層150及び配向層140の少なくとも一方を間に挟んで又はそれらを間に挟まずに散乱反射層120の一部と向き合い、複数の単位配向領域の一部に対応して配列した複数の光吸収部を含み、これら光吸収部の配列は第1情報とは異なる第2情報を構成している像形成層130とを具備したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、偽造防止に利用可能な情報記録技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ID(identification)カードなどの情報記録媒体には、その偽造を防止する目的で、複数の回折格子からなる配列を設けることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の条件下で回折光が1点に集光するように設計された複数の回折格子から各々がなる複数の回折格子群を含んだ情報記録媒体が記載されている。この情報記録媒体は、これら回折格子群が表示する可視像を確認することにより、真正品であるか否かを判別することができる。
【0004】
この情報記録媒体では、真正品であるか否かを判断するための識別情報を、回折格子を用いて記録している。回折格子を使用した場合、記録した情報が肉眼による観察で知覚される可能性がある。そのため、識別情報が記録されていることを悟られ難くするには、例えば、回折格子を小さな寸法とする必要がある。また、情報を記録した部分を隠蔽するには、回折格子の配置を考慮する必要がある。
【0005】
特許文献2及び3には、コレステリック液晶材料を用いた情報記録媒体が記載されている。これら情報記録媒体が真正品であるか否かを判別する場合には、円偏光フィルタを使用する。
【特許文献1】特開2006−155292号公報
【特許文献2】特開平11−42875号公報
【特許文献3】特開2000−211300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1種のコレステリック液晶材料を使用して識別情報を記録する場合、コレステリック液晶材料を含んだ部分と、コレステリック液晶材料を含んでいない部分とに、それぞれ情報“0”及び“1”を割り当てることとなる。このような二値記録を行った場合、識別情報の読取りは容易である反面、識別情報が不正に読取られるリスクが大きい。
【0007】
また、メソゲン基が形成しているヘリカル構造の捩れ方向が互いに異なる2種のコレステリック液晶材料を使用して識別情報を記録することも可能である。この場合、コレステリック液晶材料の有無に加え、ヘリカル構造の捩れ方向の相違を利用して、識別情報を記録することができる。しかしながら、微細な領域に複数種のコレステリック液晶材料を精度よく塗り分けることは極めて難しい。それゆえ、この技術によると、個々の領域を十分に小さくすることが困難である。複数の領域の配列を用いて識別情報を記録する場合、各領域の寸法が大きいと、識別情報が不正に読取られ易い。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、識別情報を記録する配列を小さな領域で構成することを容易とし、識別情報が不正に読取られるリスクを小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、偏光性を有している光を一方の主面に照射した場合に偏光性を有している散乱光を前記主面から射出する散乱反射層と、前記主面と向き合うと共に固化された液晶材料からなり、第1情報として潜像を保持している潜像形成層と、前記潜像形成層と向き合い、前記潜像形成層と向き合った主面は複数の単位配向領域を含み、前記複数の単位配向領域は前記潜像形成層中に前記潜像を形成している光透過性の配向層と、前記潜像形成層及び前記配向層の少なくとも一方を間に挟んで又はそれらを間に挟まずに前記散乱反射層の一部と向き合い、前記複数の単位配向領域の一部に対応して配列した複数の光吸収部を含み、前記複数の光吸収部の配列は前記第1情報とは異なる第2情報を構成している像形成層とを具備したことを特徴とする情報記録媒体が提供される。
【0010】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る情報記録媒体が保持している情報を読み取る情報読取装置であって、照明光を射出する照明装置と、撮像装置と、前記照明光を偏光に変換して前記情報記録媒体へと導き、これにより前記情報記録媒体が射出する再生光のうち一方の直線偏光を前記撮像装置へと導く光学系と、前記撮像装置の出力から得られる情報を色の相違に基いて処理して前記第1情報を再生する処理部とを具備したことを特徴とする情報読取装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、識別情報を記録する配列を小さな領域で構成することを容易とし、識別情報が不正に読取られるリスクを小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す情報記録媒体のII−II線に沿った断面図である。図3乃至図6は、図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図である。図7は、図3乃至図6に示す単位配向領域の図1に示す情報記録媒体における配置を概略的に示す平面図である。図8は、図1に示す情報記録媒体が含んでいる像形成層を概略的に示す平面図である。
【0014】
この情報記録媒体10は、図2に示すように、基材110と、散乱反射層120と、像形成層130と、配向層140と、潜像形成層150とを含んでいる。この情報記録媒体10には潜像形成層150側から照明光を照射して像を表示させ、これを潜像形成層150側から観察する。以下の説明では、観察者側を前面側と呼び、その反対側を背面側と呼ぶ。なお、図1乃至図8では、基材110の前面側の主面に各々が平行であり且つ互いに交差する方向をX方向及びY方向とし、それらに垂直な方向をZ方向としている。
【0015】
基材110は、例えば、層形状を有している。基材110は、光透過性を有していてもよく、光透過性を有していなくてもよい。即ち、基材110の材料を選択するに当り、複屈折性などを考慮する必要はない。従って、機材110の材料として、例えば、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの比較的安価な材料を用いることが可能である。
【0016】
散乱反射層120は、基材110の前面上に設けられている。散乱反射層120は、偏光性を有している光を一方の主面に照射した場合に偏光性を有している散乱光をその主面から射出する。即ち、散乱反射層120は、入射光を、その偏光性を略維持したまま散乱性を付与して反射するものである。
【0017】
散乱反射層120は、例えば、表面に微細な凹凸構造が設けられた金属層である。このような散乱反射層120は、例えば、微細な凹凸構造が設けられた下地上にアルミニウム等の金属を蒸着することによって得られる。例えば、基材110の前面に微細な凹凸構造を設けておき、この上にアルミニウム等の金属を蒸着することにより、散乱反射層120を得ることができる。
【0018】
散乱反射層120として、微細凹凸構造が設けられた1層又は多層の誘電体層を使用してもよい。散乱反射層120として多層の誘電体層を使用する場合、例えば、基材110などの下地上に微細な凹凸構造を設けておき、その上に硫化亜鉛等の高屈折率材料とフッ化マグネシウム等の低屈折率材料とを交互に蒸着することによって散乱反射層120を得ることができる。
【0019】
像形成層130は、散乱反射層120の前面上に設けられている。像形成層130は、散乱反射層120の前面の一部のみと向き合っている。即ち、像形成層130には開口が設けられている。
【0020】
像形成層130は、図8に示すように、複数の光吸収部130aを含んでいる。像形成層130に設けられた開口は、複数の光透過部130bで構成されている。光吸収部130aの配列は、「B」字形のパターンを形成している。光透過部130bの配列は、その反転パターンを形成している。これら光吸収部130a及び光透過部130bは、図7に示す複数の単位配向領域140a乃至140dに対応して配列している。
【0021】
以下、情報記録媒体10のうち、単位配向領域140a乃至140dによって規定される複数の領域の各々を単位領域又は画素と呼ぶ。図1では、これら単位領域に、参照符号PX11乃至PX16、PX21乃至PX26、PX31乃至PX36、PX41乃至PX46、PX51乃至PX56及びPX61乃至PX66を付している。
【0022】
光吸収部130aは、典型的には、光吸収性と光反射性とを有している遮光性の層であるか、又は、有色透明の層である。ここでは、一例として、光吸収部130aは、光吸収性と光反射性とを有している遮光層であるとする。
【0023】
光吸収部130aは、例えば、散乱反射層120上に、有色インキを印刷することにより得られる。この印刷には、例えば、オフセット印刷法、凸版印刷法又はスクリーン印刷法を利用することができる。
【0024】
像形成層130は、配向層140と潜像形成層150との間に介在させてもよい。或いは、像形成層130は、潜像形成層150上に設けてもよい。後者の場合、典型的には、光吸収部130aは光透過性とする。
【0025】
配向層140は、像形成層130及び散乱反射層120を被覆している。配向層140は、透明であり、典型的には光学的に略等方性である。配向層140は、例えば、アクリル樹脂などの樹脂からなる。
【0026】
配向層140の前面は、図3乃至図6に示す複数の単位配向領域140a乃至140dを含んでいる。単位配向領域140a乃至140dの各々には長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられている。単位配向領域140a乃至140dの各々は、潜像形成層14内のメソゲン基の配向方向を溝の長さ方向に略平行に制御する。
【0027】
単位配向領域140aに設けられた溝の長さ方向と単位配向領域140bに設けられた溝の長さ方向とは略直交している。単位配向領域140cに設けられた溝の長さ方向と単位配向領域140dに設けられた溝の長さ方向とは略直交している。そして、単位配向領域140cに設けられた溝の長さ方向及び単位配向領域140dに設けられた溝の長さ方向は、単位配向領域140aに設けられた溝の長さ方向及び単位配向領域140bに設けられた溝の長さ方向に対して斜めである。
【0028】
具体的には、図3に示す単位配向領域140aでは、溝は、長さ方向がY方向に対して略平行である。図4に示す単位配向領域140bでは、溝は、長さ方向がX方向に対して略平行である。図5に示す単位配向領域140cでは、溝は、前面側から見て、長さ方向がY方向に対して反時計回りに約45°の角度を為している。図6に示す単位配向領域140dでは、溝は、前面側から見て、長さ方向がY方向に対して時計回りに約45°の角度を為している。
【0029】
単位配向領域140a乃至140dは、図7に示すように二次元的に配列している。単位配向領域140a及び14bの配列は、「A」字形のパターンを形成している。単位配向領域140c及び14dの配列は、その反転パターンを形成している。単位配向領域140a乃至140dは、二次元的に配列させる代わりに、一次元的に配列させてもよい。
【0030】
単位配向領域140a乃至140dの各々において、溝は、互いに平行であってもよく、互いに平行でなくてもよい。但し、これらの溝が平行に近いほど、単位配向領域140a乃至140dに対応した潜像形成層150の各々の部分において、それらのメソゲン基の長軸が揃い易くなる。これらの溝が為す角度は、例えば5°以下とし、典型的には3°以下とする。
【0031】
単位配向領域140a乃至140dの各々において、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。更に、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0032】
溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。或いは、例えば、様々な長さの溝を或る程度ランダムでありながら、平均的には一方向に配置するように並べた場合、これら溝で一方向性拡散パターンを形成することができる。なお、この一方向性拡散パターンは、溝の長さ方向に垂直な面内での拡散能が、配向層140の主面に垂直であり且つ溝の長さ方向に平行な面内での拡散能と比較してより大きい光拡散特性、即ち、光散乱異方性を示すパターンである。ここでは、簡略化のため、単位配向領域140a乃至140dに設けられた溝は一方向性拡散パターンを構成していないこととする。
【0033】
これら溝の深さは、例えば、0.05μm乃至1μmの範囲とする。また、溝の長さは、例えば、0.5μm以上とする。溝のピッチは、例えば0.1μm以上であり、典型的には0.75μm以上である。又、溝のピッチは、例えば10μm以下であり、典型的には2μm以下である。メソゲン基を高い秩序度で配向させるには、溝のピッチは小さいことが有利である。
【0034】
単位配向領域140a乃至140dの各々の溝の長さ方向に垂直な断面は、例えば、三角波形状を有している。この断面は、正弦波形状、方形波形状、矩形波形状、台形波形状及び鋸波形状などの他の形状を有していてもよい。
【0035】
単位配向領域140a乃至140dの各々に溝を設ける代わりに、単位配向領域140a乃至140dの各々に、光配向処理などの配向処理を施してもよい。例えば、マスクを用いた配向処理を行うことにより、潜像形成層150の単位配向領域140a乃至140dと隣接した領域で、メソゲン基を互いに異なる方向に配向させることができる。
【0036】
但し、単位配向領域140a乃至140dの各々に溝を設けた場合、転写を利用して配向層140を形成することができる。
【0037】
単位配向領域140a乃至140dの各々の平面形状は、例えば、正方形及び長方形などの平行四辺形である。この場合、単位配向領域140a乃至140dの各々の一辺の長さは、典型的には1mm以下、例えば約0.5mmとする。単位配向領域140a乃至140dの各々は、他の平面形状を有していてもよい。例えば、単位配向領域140a乃至140dの各々の平面形状は、円形又は楕円形であってもよい。この場合、円形の直径又は楕円形の長軸の長さは、例えば1mm以下とする。
【0038】
配向層140は、例えば、感光性樹脂材料に、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法や、電子ビームによってパターンを描画する方法により形成することができる。或いは、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な線状の凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、配向層140は、基材110と散乱反射層120との積層体上に形成された熱可塑性樹脂層に、線状の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、配向層140は、基材110と散乱反射層120との積層体上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材110側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0039】
なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造と、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0040】
これらの方法によれば、1つの面内に溝の長さ方向が異なる複数の単位配向領域を形成することができる。また、これらの方法によると、1つの面内に溝の深さ、幅、及び/又は溝などが異なる複数の単位配向領域を形成することもできる。
【0041】
先の原版は、例えば、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法、電子ビームによってパターンを描画する方法、又はバイトによって切削する方法により得られた母型の電鋳を行うことにより得られる。
【0042】
潜像形成層150は、図2に示すように、配向層140を被覆している。潜像形成層150は、固化された液晶材料からなる。
【0043】
潜像形成層150は、例えば、高分子ネマチック液晶若しくはスメクチック液晶材料からなる。この場合、潜像形成層150は、配向層140上に光重合性の液晶材料を塗布し、塗膜に紫外線などのエネルギー線を照射することにより得られる。
【0044】
潜像形成層150の単位配向領域140a乃至140dと隣接した領域の各々では、メソゲン基は溝の長さ方向に対して略平行に配向している。即ち、各領域において、潜像形成層150は、メソゲン基の配向方向が互いに異なる4種の複屈折性領域で構成されている。そして、これら複屈折性領域は、図7に示す単位配向領域140a乃至140dに対応して配列しており、偏光子を用いることによって可視化する潜像を形成している。なお、各複屈折性領域の遅相軸は、溝の長さ方向に対して略平行である。
【0045】
上記の通り、単位配向領域140a及び14bの配列は「A」字形のパターンを形成しており、単位配向領域140c及び14dの配列はその反転パターンを形成している。そして、潜像形成層150は、単位配向領域140c及び140dにそれぞれ対応した4種の複屈折性領域を含んでおり、これら複屈折性領域は潜像を形成している。即ち、潜像形成層150は、第1情報として、文字情報「A」を潜像の形態で保持している。第1情報は、文字情報「A」以外の文字情報であってもよい。また、第1情報は、1次元コード、2次元コード及び図形情報などの文字情報以外の情報であってもよい。
【0046】
また、光吸収部130aの配列は「B」字形のパターンを形成しており、光透過部130bの配列はその反転パターンを形成している。即ち、像形成層130は、第1情報とは異なる第2情報として文字情報「B」を保持している。第2情報は、文字情報「B」以外の文字情報であってもよい。また、第2情報は、1次元コード、2次元コード及び図形情報などの文字情報以外の情報であってもよい。
【0047】
この情報記録媒体10では、像形成層130に設けた単位配向領域140c及び140dによってメソゲン基の配向方向を制御している。そして、単位配向領域140c及び140dは、エンボス又は光学的手法により形成することができる。従って、この情報記録媒体10では、識別情報を記録する配列を小さな領域で構成することが容易である。それゆえ、この情報記録媒体10は、識別情報が不正に読取られるリスクを小さくすることにある。
【0048】
光吸収部130aの配列が形成しているパターン及び光透過部130bの配列が形成しているパターンと、単位配向領域140a及び140bの配列が形成しているパターン及び単位配向領域140c及び140dの配列が形成しているパターンとを重ね合わせている。従って、この情報記録媒体10は、潜像を保持していることが悟られ難い。
【0049】
次に、情報記録媒体10が表示する像について説明する。まず、法線方向から観察した場合に情報記録媒体10が表示する像について説明する。
【0050】
図9は、偏光子を用いて法線方向から観察した場合に図1に示す情報記録媒体が表示する像の一例を示す平面図である。
【0051】
図9では、一例として、偏光子として直線偏光板220を使用している。そして、情報記録媒体10と偏光板220とを、情報記録媒体10の前面が偏光板220と向き合い、偏光板220の透過軸ATが前面側から見てY方向に対して時計回りに45°の角度を為すように配置し、観察方向を情報記録媒体10の前面に対して略垂直としている。
【0052】
このような観察条件下で情報記録媒体10を略垂直方向から観察した場合、情報記録媒体10は、例えば図9に示す像を表示する。この理由を、以下に説明する。
【0053】
直線偏光板220に照明光として白色光を照射すると、偏光板220は、その透過軸ATに平行な偏光面(電場ベクトルの振動面)を有する直線偏光を透過させ、その透過軸に垂直な偏光面を有する直線偏光を吸収する。ここで、白色光は、可視光域内の全ての波長成分を含んだ連続スペクトル光を意味する。
【0054】
単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域に入射した直線偏光は、図2に示す潜像形成層150を透過する。第1単位領域では、潜像形成層150の遅相軸はX方向に対して45°の角度を為している。従って、例えば、先の直線偏光のうち、或る特定波長λ0の光成分は、潜像形成層150を透過することにより右円偏光へと変換され、残りの光成分は、潜像形成層150を透過することにより右楕円偏光へと変換される。
【0055】
これら右円偏光及び右楕円偏光は、配向層140に入射する。
配向層140を透過した回折光としての右円偏光及び右楕円偏光は、散乱反射層120によって反射される。右円偏光及び右楕円偏光は、それぞれ、反射層120によって反射されることにより、左円偏光及び左楕円偏光へと変換される。また、散乱反射層120は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
【0056】
この散乱光としての左円偏光及び左楕円偏光は、配向層140を透過する。配向層140の前面には回折格子が設けられているが、散乱反射層120からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、散乱反射層120からの反射光は、散乱光として潜像形成層150に入射する。
【0057】
この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。正面方向へ進行する光成分のうち、特定波長λ0の左円偏光は、潜像形成層150を透過することにより偏光面が偏光板220の透過軸ATに対して垂直な直線偏光へと変換される。そして、残りの光成分は、潜像形成層150を透過することにより、左楕円偏光若しくは左円偏光又は右楕円偏光若しくは円偏光へと変換される。
【0058】
即ち、偏光板220の透過軸ATに対して平行な偏光面を有する光成分のみに着目した場合、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域では、この単位領域に入射する光成分の強度に対するこの単位領域が射出する光成分の強度の比は、波長依存性を有することとなる。換言すれば、偏光板220に入射する照明光の強度に対する偏光板220が射出する表示光の強度の比は、波長依存性を有することとなる。従って、第1単位領域は、着色して見える。なお、第1単位領域が着色して見える理由については、後で数式を参照しながら説明する。
【0059】
単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域と、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域とは、回折格子を構成している溝の長さ方向が90°異なっている点でのみ相違している。それゆえ、第2単位領域は、円偏光又は楕円偏光の偏光面の回転方向が逆であること以外は、第1単位領域について説明したのと同様に振舞う。従って、第2単位領域は、第1単位領域と同様に着色して見える。
【0060】
単位配向領域140cと光透過部130bとを含んだ第3単位領域では、潜像形成層150の遅相軸は、偏光板220の透過軸ATに対して垂直である。それゆえ、理想的には、第3単位領域に入射した全ての光成分は、吸収されることなしに偏光板220を透過する。従って、第3単位領域は銀白色に見える。
【0061】
単位配向領域140dと光透過部130bとを含んだ第4単位領域は、潜像形成層150の遅相軸が90°異なること以外は、第3単位領域と同様である。従って、第4単位領域は銀白色に見える。
【0062】
光吸収部130aが光吸収性と光反射性とを有している遮光性の層である場合、光吸収部130aを含んだ単位領域では、散乱反射層120は表示に寄与しない。即ち、光吸収部130aを含んだ単位領域では、光吸収部130aからの反射光のみが表示に寄与し得る。
【0063】
従って、単位配向領域140aと光吸収部130aとを含んだ第5単位領域は、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域と比較してより暗く見え、単位配向領域140bと光吸収部130aとを含んだ第6単位領域は、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域と比較してより暗く見える。そして、即ち、第5単位領域と第6単位領域とは、明るさ、色相及び/又は彩度がほぼ等しい。即ち、第5単位領域と第6単位領域とは、ほぼ同じ色に見える。例えば、第5及び第6単位領域は、灰色乃至黒色に見える。
【0064】
また、単位配向領域140cと光吸収部130aとを含んだ第7単位領域は、単位配向領域140cと光透過部130bとを含んだ第3単位領域と比較してより暗く見え、単位配向領域140dと光吸収部130aとを含んだ第8単位領域は、単位配向領域140dと光透過部130bとを含んだ第4単位領域と比較してより暗く見える。そして、第7単位領域と第8単位領域とはほぼ同じ色に見える。例えば、第7及び第8単位領域は、光透過部140d自体の色とほぼ等しい色に見える。
【0065】
以上の説明から明らかなように、偏光板220を使用して観察すると、情報記録媒体10は、色が異なる4種の領域で構成された像、即ち、図9に示す像を表示する。
【0066】
ここで、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域と、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域とが着色して見える理由について、数式を参照しながら説明する。なお、これら単位領域において、潜像形成層150は、波長λ0の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすとする。
【0067】
偏光板220が法線方向に射出した波長λ0の直線偏光は、偏光面がX方向に垂直な直線偏光成分と偏光面がY方向に垂直な直線偏光成分との和であると考えることができる。上記の通り、第1又は第2単位領域では、潜像形成層150のX方向についての屈折率は異常光線屈折率neであり、Y方向についての屈折率は常光線屈折率noである。従って、潜像形成層150は、これら直線偏光成分に、往路と復路との各々でλ0/4の位相差を与える。即ち、潜像形成層150は、これら直線偏光成分に合計でλ0/2の位相差を与える。そのため、第1又は第2単位領域が法線方向に射出する波長λ0の光は、偏光板220を透過できない。
【0068】
ところで、リターデイションReは、下記等式(1)に示すように、液晶層の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存する。
Re=Δn×d …(1)
ここで、Δn=ne−noである。
【0069】
一対の直線偏光板をそれらの透過軸が直交するように向かい合わせ、それらの間に液晶層をその光学軸が直線偏光板の透過軸に対して45°の角度を為すように介在させる。一方の直線偏光板をその法線方向から波長λの光で照明した場合、液晶層に入射する光の強度をI0とし、他方の直線偏光板を透過する光の強度をIとすると、強度Iは、下記等式(2)で表すことができる。
I=I0×sin2(Re×π/λ) …(2)
複屈折性Δnは波長依存性を有しており、複屈折性Δnと波長nとは比例関係にはない。それゆえ、等式(2)から明らかなように、透過光のスペクトルは、入射光のスペクトルとは異なるプロファイルを有することとなる。
【0070】
このように、液晶層を一対の直線偏光板で挟むと、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる透過光を得ることができる。これと同様に、液晶層を直線偏光板と反射層とで挟んだ場合にも、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる反射光を得ることができる。このような理由で、第1及び第2単位領域は着色して見える。
【0071】
上記の通り、情報記録媒体10は、偏光板220を使用して観察すると、色が異なる4種の領域で構成された像、即ち、図9に示す像を表示する。例えば、以下の方法により、この再生像から文字情報「A」を読み出すことができる。
【0072】
図10は、図9に示す像から読み出すことが可能な情報を示す平面図である。
偏光板220を使用せずに情報記録媒体10を観察した場合、情報記録媒体10は、図8に示す光吸収部130aの配列からなる文字情報「B」を含んだ像を表示する。そして、偏光板220を使用せずに情報記録媒体10を観察した場合、図9に示すように、情報記録媒体10は、色が異なる4種の領域で構成された像を表示する。従って、これらの像を用いた画像処理を行うことにより、図10に示す文字情報「A」を読み出すことができる。
【0073】
例えば、偏光板220を使用した場合に情報記録媒体10が表示する像を、偏光板220を使用しない場合に情報記録媒体10が表示する像と比較する。そして、色が相違している単位領域からなる配列と、色が殆ど変化していない単位領域からなる配列とで像を構成する。これにより、図10示す文字情報「A」を読み出すことができる。
【0074】
或いは、単位配向領域140a又は140bと光吸収部130aとを含んだ単位領域が偏光板220を使用したときに表示する色と、単位配向領域140c又は140dと光吸収部130aとを含んだ単位領域が偏光板220を使用したときに表示する色とを予め調べておく。そして、偏光板220を使用した場合に情報記録媒体10が表示する像を先の色に参照して、これら色を呈している単位領域を選択する。選択した単位領域からなる配列と、それら以外の単位領域からなる配列とで像を構成すると、図10示す文字情報「A」を読み出すことができる。
【0075】
或いは、単位配向領域140a又は140bと光透過部130bとを含んだ単位領域が偏光板220を使用したときに表示する色と、単位配向領域140c又は140dと光透過部130bとを含んだ単位領域が偏光板220を使用したときに表示する色とを予め調べておく。そして、偏光板220を使用した場合に情報記録媒体10が表示する像を先の色に参照して、これら色を呈している単位領域を選択する。選択した単位領域からなる配列と、それら以外の単位領域からなる配列とで像を構成すると、図10示す文字情報「A」を読み出すことができる。
【0076】
次に、偏光板220を用いて斜め方向から観察した場合に情報記録媒体10が表示する像について説明する。
【0077】
図9を参照しながら説明した観察条件からX方向に垂直な面内で観察方向を傾けると、各単位領域で潜像形成層150の光路長が長くなり、単位配向領域140a、140c及び140dを含んだ単位領域では更に複屈折性Δnが変化する。即ち、観察方向を傾けると、各単位領域で潜像形成層150のリターデイションが変化する。
【0078】
その結果、偏光板220を用いて情報記録媒体10を法線方向から観察した場合に同じ色に見えた単位領域は、観察方向を傾けることにより異なる色を表示する可能性がある。例えば、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域は赤色を表示し、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域は緑色を表示する。
【0079】
但し、偏光板220を用いて情報記録媒体10を法線方向から観察した場合に異なる色に見えた単位領域は、観察方向を傾けても異なる色を表示する。従って、斜め方向から観察する場合も、法線方向から観察する場合とほぼ同様の方法により、文字情報「A」を読み出すことができる。
【0080】
また、偏光板220を用いて正面方向から観察した場合に同じ色に見え、観察方向を傾けると異なる色に見えることを利用して、潜像形成層150に記録する情報量をより多くすることができる。従って、この場合、より高度な偽造防止効果を達成することが可能となる。
【0081】
情報の読み取りには、例えば、以下の情報読取装置を利用することができる。
図11は、情報読取装置の一例を概略的に示す図である。
この情報読取装置20は、照明装置と、光学系と、撮像装置230と、処理部240とを含んでいる。
【0082】
照明装置は、1つの光源210からなる。この光源210は、情報記録媒体10の前面を照明する照明光Liとして、例えば白色光を、情報記録媒体10に対して斜め方向に射出する。光源210は、情報記録媒体10の前面全体を照明できるように、情報記録媒体10から十分に離間させる。
【0083】
光源210は、点光源であってもよく、線光源であってもよく、面光源であってもよい。光源210としては、例えば、ハロゲンランプ、発光ダイオード又は蛍光管を使用することができる。
【0084】
光学系は、偏光子220を含んでいる。偏光子220は、ここでは、直線偏光板であり、光源210が射出した照明光Liを自然光から直線偏光へと変換して情報記録媒体10へと導き、これにより情報記録媒体10が射出する再生光Lrを直線偏光へと変換した後に撮像装置230へと導く光学系を構成している。偏光板220は情報記録媒体10の前面と向き合っている。偏光板220の透過軸ATは、光源210側から見てY方向に対して時計回りに45°の角度を為している。
【0085】
撮像装置230は、偏光板220によって直線偏光へと変換された再生光Lrを受光する。撮像装置230は、カラー撮像装置であって、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含んでいる。撮像装置230及び光源210は、典型的には、情報記録媒体10の表面が正反射した照明光Liを撮像装置230が受光しないように配置する。
【0086】
処理部240は、撮像装置230に接続されている。処理部240は、撮像装置230が出力する画像情報を処理して、情報記録媒体10が保持している文字情報「A」を再生する。
【0087】
この情報読取装置20は、典型的には、処理部240に接続された出力装置を更に含んでいる。出力部は、処理部240が再生した情報を、オペレータが例えば光学的に又は音響学的に知覚できるように出力する。出力部としては、例えば、処理部240が再生した文字情報「A」を表示する表示装置を使用することができる。
【0088】
この情報読取装置20では、撮像装置230は、例えば、以下の像を検出する。即ち、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域に対応した部分は赤色であり、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域に対応した部分は緑色である。単位配向領域140aと光吸収部130aとを含んだ第5単位領域に対応した部分は赤色と光吸収部130aの色との減法混色により得られる色であり、単位配向領域140bと光吸収部130aとを含んだ第6単位領域に対応した部分は緑色と光吸収部130aとの減法混色に対応した色である。そして、単位配向領域140bを含んだ第3、第4、第7及び第8単位領域に対応した部分は、第1、第2、第5及び第6単位領域に対応した部分とは異なる色である。従って、処理部240にこれらの色を参照情報として記憶させておけば、撮像装置230が出力した画像情報と参照情報とから、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。
【0089】
この情報読取装置20には、情報記録媒体10をその法線の周りで回転させる駆動機構を設けてもよい。即ち、情報記録媒体10が保持している文字情報「A」を再生する場合、情報記録媒体10をその法線の周りで回転させてもよい。情報記録媒体10の回転角度と表示色の変化とを利用して、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。例えば、図11に示す状態から、情報記録媒体10のみをZ方向に平行な軸の周りで90°回転させる。こうすると、第1単位領域に対応した部分と第2単位領域に対応した部分との間及び第5単位領域に対応した部分と第6単位領域に対応した部分との間で表示色の入れ替わりを生じ、第3、第4、第7及び第8単位領域に対応した部分では表示色の変化を生じない。即ち、単位配向領域140a又は140bに対応した部分では表示色の入れ替わりを生じ、単位配向領域140c又は140dに対応した部分では表示色の変化を生じない。従って、これに基いて、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。
【0090】
図12は、情報読取装置の他の例を概略的に示す図である。
この情報読取装置20は、以下の構成を採用したこと以外は、図11を参照しながら説明した情報読取装置20と同様である。
【0091】
即ち、図12に示す情報読取装置20では、照明装置及び光学系が、光源210及び偏光子220の代わりに、複数の光源210a及び210bと複数の偏光子220a乃至220cとを含んでいる。
【0092】
光源210a及び210bの各々は、情報記録媒体10の前面を照明する照明光Liとして、例えば白色光を射出する。光源210a及び210bは、情報記録媒体10の前面全体を照明できるように、情報記録媒体10から十分に離間させる。光源210a及び210bとしては、例えば、光源210について例示したものを使用することができる。
【0093】
偏光子220a乃至220cは、ここでは、直線偏光板であり、光源210a及び210bが射出した照明光Liを自然光から直線偏光へと変換して情報記録媒体10へと導き、これにより情報記録媒体10が射出する再生光Lrを直線偏光へと変換した後に撮像装置230へと導く光学系を構成している。
【0094】
偏光子220aは、光源210aが射出した照明光Liを自然光から直線偏光へと変換して情報記録媒体10へと導く。偏光子220aは、例えば、偏光面がZ方向に対して垂直であり且つY方向に対して+45°の角度を為している直線偏光を透過させる。
【0095】
偏光子220bは、光源210bが射出した照明光Liを自然光から直線偏光へと変換して情報記録媒体10へと導く。偏光子220bは、例えば、偏光面がZ方向に対して垂直であり且つY方向に対して−45°の角度を為している直線偏光を透過させる。
【0096】
偏光子220cは、情報記録媒体10が射出した再生光Lrを、直線偏光へと変換して撮像装置230へと導く。偏光子220cは、例えば、偏光面がZ方向に対して垂直であり且つY方向に対して+45°の角度を為している直線偏光を透過させる。
【0097】
この情報読取装置20では、以下の方法により、情報記録媒体10が保持している情報を読み取る。
【0098】
情報読取装置20で情報記録媒体10が保持している情報を読み取る場合、まず、光源210bを消灯した状態で、光源210aを点灯する。このとき、撮像装置230が検出する像は、図11に示す情報読取装置20の撮像装置230が撮影する像と等しい。
【0099】
次に、光源210aを消灯し、光源210bを点灯する。このとき、撮像装置230が検出する像は、単位配向領域140aと光吸収部130bとを含んだ第1単位領域に対応した部分と、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域に対応した部分との間で色が入れ替わり、単位配向領域140aと光吸収部130aとを含んだ第5単位領域に対応した部分と、単位配向領域140bと光吸収部130aとを含んだ第6単位領域に対応した部分との間で色が入れ替わり、更に、単位配向領域140c又は140dを含んだ第3、第4、第7及び第8単位領域に対応した部分は黒色へと変化する。
【0100】
即ち、照明光源を光源210aから光源210bへと切り替えることにより、単位配向領域140a又は140bに対応した部分では表示色の入れ替わりを生じ、単位配向領域140c又は140dに対応した部分では表示色が黒色へと変化する。従って、例えば、処理部240に、撮像装置230が出力した画像情報を、潜像を構成している単位領域が照明光源を光源210aから光源210bへと切り替えることにより表示色の入れ替わりを生じる部分に対応していること、潜像を構成している単位領域が照明光源を光源210aから光源210bへと切り替えることにより表示色が黒色へと変化しない部分に対応していること、又はそれらの双方に基いて処理させることにより、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。
【0101】
なお、ここでは、偏光子220aが透過させる直線偏光の偏光面と、偏光子220cが透過させる直線偏光の偏光面とを平行とする配置を採用しているが、それらが斜めに交差する配置を採用してもよい。
【0102】
また、この情報読取装置20では、2つの光源210a及び210bと2つの偏光子220a及び220bとを使用しているが、光源210b及び偏光子220bを省略した場合も、上述したのと同様の方法により、文字情報「A」を再生することができる。例えば、情報読取装置20に、偏光子220a又は220cの透過軸を回転させる駆動機構を設ける。偏光子220a又は220cの透過軸を回転させると、単位配向領域140c又は140dに対応した部分では表示色が黒色へと変化するので、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。
【0103】
なお、ここでは、情報記録媒体10に直線偏光を照射する構成について説明したが、情報記録媒体10に自然光を照射可能な構成を追加してもよい。こうすると、これが無くても、文字情報「B」に対応した画像情報を読み取ることは可能であるが、自然光を照射可能とすると、文字情報「B」に対応した画像情報を容易に得ることができる。この画像情報は、例えば、文字情報「A」に対応した画像情報と組み合わせて情報記録媒体10が真正品であることを確認するために利用可能である。また、この画像情報は、情報記録媒体10の位置合わせにも利用することができる。
【0104】
以上、情報記録媒体10に図1及び図2を参照しながら説明した構造を採用した場合を例に説明したが、情報記録媒体10には、様々な変形が可能である。
例えば、先の説明では、情報記録媒体10を36個の単位領域で構成したが、情報記録媒体10は、より多くの又はより少ない単位領域で構成してもよい。情報記録媒体10には、直線偏光子を使用して潜像を可視化する構成を採用する代わりに、円偏光子又は楕円偏光子を使用して潜像を可視化する構成を採用してもよい。
【0105】
情報記録媒体10は、潜像形成層150を被覆した保護層、及び/又は、基材150を支持した支持体を更に含んでいてもよい。また、潜像形成層150の厚さを不均一にしてもよい。
【0106】
図13は、一変形例に係る情報記録媒体を概略的に示す断面図である。
【0107】
この情報記録媒体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図1及び図2を参照しながら説明した情報記録媒体10と同様の構造を有している。即ち、この情報記録媒体10では、単位領域PX34は、単位領域PX14、PX24、PX44、PX54及びPX64と比較して、配向層140がより厚い。また、単位領域PX34は、単位領域PX14、PX24、PX44、PX54及びPX64と比較して、潜像形成層150がより薄い。
【0108】
潜像形成層150の厚さは、リターデイションに影響を及ぼす。従って、このように、潜像形成層150の厚さに不均一性を導入すると、潜像形成層150に記録する情報量をより多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す情報記録媒体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図。
【図4】図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図。
【図5】図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図。
【図6】図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図。
【図7】図3乃至図6に示す単位配向領域の図1に示す情報記録媒体における配置を概略的に示す平面図。
【図8】図1に示す情報記録媒体が含んでいる像形成層を概略的に示す平面図。
【図9】偏光子を用いて法線方向から観察した場合に図1に示す情報記録媒体が表示する像の一例を示す平面図。
【図10】図9に示す像から読み出すことが可能な情報を示す平面図。
【図11】情報読取装置の一例を概略的に示す図。
【図12】情報読取装置の他の例を概略的に示す図。
【図13】一変形例に係る情報記録媒体を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0110】
10…情報記録媒体、20…情報読取装置、110…基材、120…散乱反射層、130…像形成層、130a…光吸収部、130b…光透過部、140…配向層、140a乃至140d…単位配向領域、150…潜像形成層、210…光源、210a…光源、210b…光源、220…偏光子、220a乃至220c…偏光子、230…撮像装置、240…処理部、AT…透過軸、Li…照明光、Lr…再生光、PX11乃至PX16…単位領域、PX21乃至PX26…単位領域、PX31乃至PX36…単位領域、PX41乃至PX46…単位領域、PX51乃至PX56…単位領域、PX61乃至PX66…単位領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、偽造防止に利用可能な情報記録技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ID(identification)カードなどの情報記録媒体には、その偽造を防止する目的で、複数の回折格子からなる配列を設けることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の条件下で回折光が1点に集光するように設計された複数の回折格子から各々がなる複数の回折格子群を含んだ情報記録媒体が記載されている。この情報記録媒体は、これら回折格子群が表示する可視像を確認することにより、真正品であるか否かを判別することができる。
【0004】
この情報記録媒体では、真正品であるか否かを判断するための識別情報を、回折格子を用いて記録している。回折格子を使用した場合、記録した情報が肉眼による観察で知覚される可能性がある。そのため、識別情報が記録されていることを悟られ難くするには、例えば、回折格子を小さな寸法とする必要がある。また、情報を記録した部分を隠蔽するには、回折格子の配置を考慮する必要がある。
【0005】
特許文献2及び3には、コレステリック液晶材料を用いた情報記録媒体が記載されている。これら情報記録媒体が真正品であるか否かを判別する場合には、円偏光フィルタを使用する。
【特許文献1】特開2006−155292号公報
【特許文献2】特開平11−42875号公報
【特許文献3】特開2000−211300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1種のコレステリック液晶材料を使用して識別情報を記録する場合、コレステリック液晶材料を含んだ部分と、コレステリック液晶材料を含んでいない部分とに、それぞれ情報“0”及び“1”を割り当てることとなる。このような二値記録を行った場合、識別情報の読取りは容易である反面、識別情報が不正に読取られるリスクが大きい。
【0007】
また、メソゲン基が形成しているヘリカル構造の捩れ方向が互いに異なる2種のコレステリック液晶材料を使用して識別情報を記録することも可能である。この場合、コレステリック液晶材料の有無に加え、ヘリカル構造の捩れ方向の相違を利用して、識別情報を記録することができる。しかしながら、微細な領域に複数種のコレステリック液晶材料を精度よく塗り分けることは極めて難しい。それゆえ、この技術によると、個々の領域を十分に小さくすることが困難である。複数の領域の配列を用いて識別情報を記録する場合、各領域の寸法が大きいと、識別情報が不正に読取られ易い。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、識別情報を記録する配列を小さな領域で構成することを容易とし、識別情報が不正に読取られるリスクを小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、偏光性を有している光を一方の主面に照射した場合に偏光性を有している散乱光を前記主面から射出する散乱反射層と、前記主面と向き合うと共に固化された液晶材料からなり、第1情報として潜像を保持している潜像形成層と、前記潜像形成層と向き合い、前記潜像形成層と向き合った主面は複数の単位配向領域を含み、前記複数の単位配向領域は前記潜像形成層中に前記潜像を形成している光透過性の配向層と、前記潜像形成層及び前記配向層の少なくとも一方を間に挟んで又はそれらを間に挟まずに前記散乱反射層の一部と向き合い、前記複数の単位配向領域の一部に対応して配列した複数の光吸収部を含み、前記複数の光吸収部の配列は前記第1情報とは異なる第2情報を構成している像形成層とを具備したことを特徴とする情報記録媒体が提供される。
【0010】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る情報記録媒体が保持している情報を読み取る情報読取装置であって、照明光を射出する照明装置と、撮像装置と、前記照明光を偏光に変換して前記情報記録媒体へと導き、これにより前記情報記録媒体が射出する再生光のうち一方の直線偏光を前記撮像装置へと導く光学系と、前記撮像装置の出力から得られる情報を色の相違に基いて処理して前記第1情報を再生する処理部とを具備したことを特徴とする情報読取装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、識別情報を記録する配列を小さな領域で構成することを容易とし、識別情報が不正に読取られるリスクを小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す情報記録媒体のII−II線に沿った断面図である。図3乃至図6は、図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図である。図7は、図3乃至図6に示す単位配向領域の図1に示す情報記録媒体における配置を概略的に示す平面図である。図8は、図1に示す情報記録媒体が含んでいる像形成層を概略的に示す平面図である。
【0014】
この情報記録媒体10は、図2に示すように、基材110と、散乱反射層120と、像形成層130と、配向層140と、潜像形成層150とを含んでいる。この情報記録媒体10には潜像形成層150側から照明光を照射して像を表示させ、これを潜像形成層150側から観察する。以下の説明では、観察者側を前面側と呼び、その反対側を背面側と呼ぶ。なお、図1乃至図8では、基材110の前面側の主面に各々が平行であり且つ互いに交差する方向をX方向及びY方向とし、それらに垂直な方向をZ方向としている。
【0015】
基材110は、例えば、層形状を有している。基材110は、光透過性を有していてもよく、光透過性を有していなくてもよい。即ち、基材110の材料を選択するに当り、複屈折性などを考慮する必要はない。従って、機材110の材料として、例えば、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの比較的安価な材料を用いることが可能である。
【0016】
散乱反射層120は、基材110の前面上に設けられている。散乱反射層120は、偏光性を有している光を一方の主面に照射した場合に偏光性を有している散乱光をその主面から射出する。即ち、散乱反射層120は、入射光を、その偏光性を略維持したまま散乱性を付与して反射するものである。
【0017】
散乱反射層120は、例えば、表面に微細な凹凸構造が設けられた金属層である。このような散乱反射層120は、例えば、微細な凹凸構造が設けられた下地上にアルミニウム等の金属を蒸着することによって得られる。例えば、基材110の前面に微細な凹凸構造を設けておき、この上にアルミニウム等の金属を蒸着することにより、散乱反射層120を得ることができる。
【0018】
散乱反射層120として、微細凹凸構造が設けられた1層又は多層の誘電体層を使用してもよい。散乱反射層120として多層の誘電体層を使用する場合、例えば、基材110などの下地上に微細な凹凸構造を設けておき、その上に硫化亜鉛等の高屈折率材料とフッ化マグネシウム等の低屈折率材料とを交互に蒸着することによって散乱反射層120を得ることができる。
【0019】
像形成層130は、散乱反射層120の前面上に設けられている。像形成層130は、散乱反射層120の前面の一部のみと向き合っている。即ち、像形成層130には開口が設けられている。
【0020】
像形成層130は、図8に示すように、複数の光吸収部130aを含んでいる。像形成層130に設けられた開口は、複数の光透過部130bで構成されている。光吸収部130aの配列は、「B」字形のパターンを形成している。光透過部130bの配列は、その反転パターンを形成している。これら光吸収部130a及び光透過部130bは、図7に示す複数の単位配向領域140a乃至140dに対応して配列している。
【0021】
以下、情報記録媒体10のうち、単位配向領域140a乃至140dによって規定される複数の領域の各々を単位領域又は画素と呼ぶ。図1では、これら単位領域に、参照符号PX11乃至PX16、PX21乃至PX26、PX31乃至PX36、PX41乃至PX46、PX51乃至PX56及びPX61乃至PX66を付している。
【0022】
光吸収部130aは、典型的には、光吸収性と光反射性とを有している遮光性の層であるか、又は、有色透明の層である。ここでは、一例として、光吸収部130aは、光吸収性と光反射性とを有している遮光層であるとする。
【0023】
光吸収部130aは、例えば、散乱反射層120上に、有色インキを印刷することにより得られる。この印刷には、例えば、オフセット印刷法、凸版印刷法又はスクリーン印刷法を利用することができる。
【0024】
像形成層130は、配向層140と潜像形成層150との間に介在させてもよい。或いは、像形成層130は、潜像形成層150上に設けてもよい。後者の場合、典型的には、光吸収部130aは光透過性とする。
【0025】
配向層140は、像形成層130及び散乱反射層120を被覆している。配向層140は、透明であり、典型的には光学的に略等方性である。配向層140は、例えば、アクリル樹脂などの樹脂からなる。
【0026】
配向層140の前面は、図3乃至図6に示す複数の単位配向領域140a乃至140dを含んでいる。単位配向領域140a乃至140dの各々には長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられている。単位配向領域140a乃至140dの各々は、潜像形成層14内のメソゲン基の配向方向を溝の長さ方向に略平行に制御する。
【0027】
単位配向領域140aに設けられた溝の長さ方向と単位配向領域140bに設けられた溝の長さ方向とは略直交している。単位配向領域140cに設けられた溝の長さ方向と単位配向領域140dに設けられた溝の長さ方向とは略直交している。そして、単位配向領域140cに設けられた溝の長さ方向及び単位配向領域140dに設けられた溝の長さ方向は、単位配向領域140aに設けられた溝の長さ方向及び単位配向領域140bに設けられた溝の長さ方向に対して斜めである。
【0028】
具体的には、図3に示す単位配向領域140aでは、溝は、長さ方向がY方向に対して略平行である。図4に示す単位配向領域140bでは、溝は、長さ方向がX方向に対して略平行である。図5に示す単位配向領域140cでは、溝は、前面側から見て、長さ方向がY方向に対して反時計回りに約45°の角度を為している。図6に示す単位配向領域140dでは、溝は、前面側から見て、長さ方向がY方向に対して時計回りに約45°の角度を為している。
【0029】
単位配向領域140a乃至140dは、図7に示すように二次元的に配列している。単位配向領域140a及び14bの配列は、「A」字形のパターンを形成している。単位配向領域140c及び14dの配列は、その反転パターンを形成している。単位配向領域140a乃至140dは、二次元的に配列させる代わりに、一次元的に配列させてもよい。
【0030】
単位配向領域140a乃至140dの各々において、溝は、互いに平行であってもよく、互いに平行でなくてもよい。但し、これらの溝が平行に近いほど、単位配向領域140a乃至140dに対応した潜像形成層150の各々の部分において、それらのメソゲン基の長軸が揃い易くなる。これらの溝が為す角度は、例えば5°以下とし、典型的には3°以下とする。
【0031】
単位配向領域140a乃至140dの各々において、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。更に、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0032】
溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。或いは、例えば、様々な長さの溝を或る程度ランダムでありながら、平均的には一方向に配置するように並べた場合、これら溝で一方向性拡散パターンを形成することができる。なお、この一方向性拡散パターンは、溝の長さ方向に垂直な面内での拡散能が、配向層140の主面に垂直であり且つ溝の長さ方向に平行な面内での拡散能と比較してより大きい光拡散特性、即ち、光散乱異方性を示すパターンである。ここでは、簡略化のため、単位配向領域140a乃至140dに設けられた溝は一方向性拡散パターンを構成していないこととする。
【0033】
これら溝の深さは、例えば、0.05μm乃至1μmの範囲とする。また、溝の長さは、例えば、0.5μm以上とする。溝のピッチは、例えば0.1μm以上であり、典型的には0.75μm以上である。又、溝のピッチは、例えば10μm以下であり、典型的には2μm以下である。メソゲン基を高い秩序度で配向させるには、溝のピッチは小さいことが有利である。
【0034】
単位配向領域140a乃至140dの各々の溝の長さ方向に垂直な断面は、例えば、三角波形状を有している。この断面は、正弦波形状、方形波形状、矩形波形状、台形波形状及び鋸波形状などの他の形状を有していてもよい。
【0035】
単位配向領域140a乃至140dの各々に溝を設ける代わりに、単位配向領域140a乃至140dの各々に、光配向処理などの配向処理を施してもよい。例えば、マスクを用いた配向処理を行うことにより、潜像形成層150の単位配向領域140a乃至140dと隣接した領域で、メソゲン基を互いに異なる方向に配向させることができる。
【0036】
但し、単位配向領域140a乃至140dの各々に溝を設けた場合、転写を利用して配向層140を形成することができる。
【0037】
単位配向領域140a乃至140dの各々の平面形状は、例えば、正方形及び長方形などの平行四辺形である。この場合、単位配向領域140a乃至140dの各々の一辺の長さは、典型的には1mm以下、例えば約0.5mmとする。単位配向領域140a乃至140dの各々は、他の平面形状を有していてもよい。例えば、単位配向領域140a乃至140dの各々の平面形状は、円形又は楕円形であってもよい。この場合、円形の直径又は楕円形の長軸の長さは、例えば1mm以下とする。
【0038】
配向層140は、例えば、感光性樹脂材料に、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法や、電子ビームによってパターンを描画する方法により形成することができる。或いは、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な線状の凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、配向層140は、基材110と散乱反射層120との積層体上に形成された熱可塑性樹脂層に、線状の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、配向層140は、基材110と散乱反射層120との積層体上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材110側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0039】
なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造と、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0040】
これらの方法によれば、1つの面内に溝の長さ方向が異なる複数の単位配向領域を形成することができる。また、これらの方法によると、1つの面内に溝の深さ、幅、及び/又は溝などが異なる複数の単位配向領域を形成することもできる。
【0041】
先の原版は、例えば、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法、電子ビームによってパターンを描画する方法、又はバイトによって切削する方法により得られた母型の電鋳を行うことにより得られる。
【0042】
潜像形成層150は、図2に示すように、配向層140を被覆している。潜像形成層150は、固化された液晶材料からなる。
【0043】
潜像形成層150は、例えば、高分子ネマチック液晶若しくはスメクチック液晶材料からなる。この場合、潜像形成層150は、配向層140上に光重合性の液晶材料を塗布し、塗膜に紫外線などのエネルギー線を照射することにより得られる。
【0044】
潜像形成層150の単位配向領域140a乃至140dと隣接した領域の各々では、メソゲン基は溝の長さ方向に対して略平行に配向している。即ち、各領域において、潜像形成層150は、メソゲン基の配向方向が互いに異なる4種の複屈折性領域で構成されている。そして、これら複屈折性領域は、図7に示す単位配向領域140a乃至140dに対応して配列しており、偏光子を用いることによって可視化する潜像を形成している。なお、各複屈折性領域の遅相軸は、溝の長さ方向に対して略平行である。
【0045】
上記の通り、単位配向領域140a及び14bの配列は「A」字形のパターンを形成しており、単位配向領域140c及び14dの配列はその反転パターンを形成している。そして、潜像形成層150は、単位配向領域140c及び140dにそれぞれ対応した4種の複屈折性領域を含んでおり、これら複屈折性領域は潜像を形成している。即ち、潜像形成層150は、第1情報として、文字情報「A」を潜像の形態で保持している。第1情報は、文字情報「A」以外の文字情報であってもよい。また、第1情報は、1次元コード、2次元コード及び図形情報などの文字情報以外の情報であってもよい。
【0046】
また、光吸収部130aの配列は「B」字形のパターンを形成しており、光透過部130bの配列はその反転パターンを形成している。即ち、像形成層130は、第1情報とは異なる第2情報として文字情報「B」を保持している。第2情報は、文字情報「B」以外の文字情報であってもよい。また、第2情報は、1次元コード、2次元コード及び図形情報などの文字情報以外の情報であってもよい。
【0047】
この情報記録媒体10では、像形成層130に設けた単位配向領域140c及び140dによってメソゲン基の配向方向を制御している。そして、単位配向領域140c及び140dは、エンボス又は光学的手法により形成することができる。従って、この情報記録媒体10では、識別情報を記録する配列を小さな領域で構成することが容易である。それゆえ、この情報記録媒体10は、識別情報が不正に読取られるリスクを小さくすることにある。
【0048】
光吸収部130aの配列が形成しているパターン及び光透過部130bの配列が形成しているパターンと、単位配向領域140a及び140bの配列が形成しているパターン及び単位配向領域140c及び140dの配列が形成しているパターンとを重ね合わせている。従って、この情報記録媒体10は、潜像を保持していることが悟られ難い。
【0049】
次に、情報記録媒体10が表示する像について説明する。まず、法線方向から観察した場合に情報記録媒体10が表示する像について説明する。
【0050】
図9は、偏光子を用いて法線方向から観察した場合に図1に示す情報記録媒体が表示する像の一例を示す平面図である。
【0051】
図9では、一例として、偏光子として直線偏光板220を使用している。そして、情報記録媒体10と偏光板220とを、情報記録媒体10の前面が偏光板220と向き合い、偏光板220の透過軸ATが前面側から見てY方向に対して時計回りに45°の角度を為すように配置し、観察方向を情報記録媒体10の前面に対して略垂直としている。
【0052】
このような観察条件下で情報記録媒体10を略垂直方向から観察した場合、情報記録媒体10は、例えば図9に示す像を表示する。この理由を、以下に説明する。
【0053】
直線偏光板220に照明光として白色光を照射すると、偏光板220は、その透過軸ATに平行な偏光面(電場ベクトルの振動面)を有する直線偏光を透過させ、その透過軸に垂直な偏光面を有する直線偏光を吸収する。ここで、白色光は、可視光域内の全ての波長成分を含んだ連続スペクトル光を意味する。
【0054】
単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域に入射した直線偏光は、図2に示す潜像形成層150を透過する。第1単位領域では、潜像形成層150の遅相軸はX方向に対して45°の角度を為している。従って、例えば、先の直線偏光のうち、或る特定波長λ0の光成分は、潜像形成層150を透過することにより右円偏光へと変換され、残りの光成分は、潜像形成層150を透過することにより右楕円偏光へと変換される。
【0055】
これら右円偏光及び右楕円偏光は、配向層140に入射する。
配向層140を透過した回折光としての右円偏光及び右楕円偏光は、散乱反射層120によって反射される。右円偏光及び右楕円偏光は、それぞれ、反射層120によって反射されることにより、左円偏光及び左楕円偏光へと変換される。また、散乱反射層120は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
【0056】
この散乱光としての左円偏光及び左楕円偏光は、配向層140を透過する。配向層140の前面には回折格子が設けられているが、散乱反射層120からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、散乱反射層120からの反射光は、散乱光として潜像形成層150に入射する。
【0057】
この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。正面方向へ進行する光成分のうち、特定波長λ0の左円偏光は、潜像形成層150を透過することにより偏光面が偏光板220の透過軸ATに対して垂直な直線偏光へと変換される。そして、残りの光成分は、潜像形成層150を透過することにより、左楕円偏光若しくは左円偏光又は右楕円偏光若しくは円偏光へと変換される。
【0058】
即ち、偏光板220の透過軸ATに対して平行な偏光面を有する光成分のみに着目した場合、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域では、この単位領域に入射する光成分の強度に対するこの単位領域が射出する光成分の強度の比は、波長依存性を有することとなる。換言すれば、偏光板220に入射する照明光の強度に対する偏光板220が射出する表示光の強度の比は、波長依存性を有することとなる。従って、第1単位領域は、着色して見える。なお、第1単位領域が着色して見える理由については、後で数式を参照しながら説明する。
【0059】
単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域と、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域とは、回折格子を構成している溝の長さ方向が90°異なっている点でのみ相違している。それゆえ、第2単位領域は、円偏光又は楕円偏光の偏光面の回転方向が逆であること以外は、第1単位領域について説明したのと同様に振舞う。従って、第2単位領域は、第1単位領域と同様に着色して見える。
【0060】
単位配向領域140cと光透過部130bとを含んだ第3単位領域では、潜像形成層150の遅相軸は、偏光板220の透過軸ATに対して垂直である。それゆえ、理想的には、第3単位領域に入射した全ての光成分は、吸収されることなしに偏光板220を透過する。従って、第3単位領域は銀白色に見える。
【0061】
単位配向領域140dと光透過部130bとを含んだ第4単位領域は、潜像形成層150の遅相軸が90°異なること以外は、第3単位領域と同様である。従って、第4単位領域は銀白色に見える。
【0062】
光吸収部130aが光吸収性と光反射性とを有している遮光性の層である場合、光吸収部130aを含んだ単位領域では、散乱反射層120は表示に寄与しない。即ち、光吸収部130aを含んだ単位領域では、光吸収部130aからの反射光のみが表示に寄与し得る。
【0063】
従って、単位配向領域140aと光吸収部130aとを含んだ第5単位領域は、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域と比較してより暗く見え、単位配向領域140bと光吸収部130aとを含んだ第6単位領域は、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域と比較してより暗く見える。そして、即ち、第5単位領域と第6単位領域とは、明るさ、色相及び/又は彩度がほぼ等しい。即ち、第5単位領域と第6単位領域とは、ほぼ同じ色に見える。例えば、第5及び第6単位領域は、灰色乃至黒色に見える。
【0064】
また、単位配向領域140cと光吸収部130aとを含んだ第7単位領域は、単位配向領域140cと光透過部130bとを含んだ第3単位領域と比較してより暗く見え、単位配向領域140dと光吸収部130aとを含んだ第8単位領域は、単位配向領域140dと光透過部130bとを含んだ第4単位領域と比較してより暗く見える。そして、第7単位領域と第8単位領域とはほぼ同じ色に見える。例えば、第7及び第8単位領域は、光透過部140d自体の色とほぼ等しい色に見える。
【0065】
以上の説明から明らかなように、偏光板220を使用して観察すると、情報記録媒体10は、色が異なる4種の領域で構成された像、即ち、図9に示す像を表示する。
【0066】
ここで、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域と、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域とが着色して見える理由について、数式を参照しながら説明する。なお、これら単位領域において、潜像形成層150は、波長λ0の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすとする。
【0067】
偏光板220が法線方向に射出した波長λ0の直線偏光は、偏光面がX方向に垂直な直線偏光成分と偏光面がY方向に垂直な直線偏光成分との和であると考えることができる。上記の通り、第1又は第2単位領域では、潜像形成層150のX方向についての屈折率は異常光線屈折率neであり、Y方向についての屈折率は常光線屈折率noである。従って、潜像形成層150は、これら直線偏光成分に、往路と復路との各々でλ0/4の位相差を与える。即ち、潜像形成層150は、これら直線偏光成分に合計でλ0/2の位相差を与える。そのため、第1又は第2単位領域が法線方向に射出する波長λ0の光は、偏光板220を透過できない。
【0068】
ところで、リターデイションReは、下記等式(1)に示すように、液晶層の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存する。
Re=Δn×d …(1)
ここで、Δn=ne−noである。
【0069】
一対の直線偏光板をそれらの透過軸が直交するように向かい合わせ、それらの間に液晶層をその光学軸が直線偏光板の透過軸に対して45°の角度を為すように介在させる。一方の直線偏光板をその法線方向から波長λの光で照明した場合、液晶層に入射する光の強度をI0とし、他方の直線偏光板を透過する光の強度をIとすると、強度Iは、下記等式(2)で表すことができる。
I=I0×sin2(Re×π/λ) …(2)
複屈折性Δnは波長依存性を有しており、複屈折性Δnと波長nとは比例関係にはない。それゆえ、等式(2)から明らかなように、透過光のスペクトルは、入射光のスペクトルとは異なるプロファイルを有することとなる。
【0070】
このように、液晶層を一対の直線偏光板で挟むと、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる透過光を得ることができる。これと同様に、液晶層を直線偏光板と反射層とで挟んだ場合にも、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる反射光を得ることができる。このような理由で、第1及び第2単位領域は着色して見える。
【0071】
上記の通り、情報記録媒体10は、偏光板220を使用して観察すると、色が異なる4種の領域で構成された像、即ち、図9に示す像を表示する。例えば、以下の方法により、この再生像から文字情報「A」を読み出すことができる。
【0072】
図10は、図9に示す像から読み出すことが可能な情報を示す平面図である。
偏光板220を使用せずに情報記録媒体10を観察した場合、情報記録媒体10は、図8に示す光吸収部130aの配列からなる文字情報「B」を含んだ像を表示する。そして、偏光板220を使用せずに情報記録媒体10を観察した場合、図9に示すように、情報記録媒体10は、色が異なる4種の領域で構成された像を表示する。従って、これらの像を用いた画像処理を行うことにより、図10に示す文字情報「A」を読み出すことができる。
【0073】
例えば、偏光板220を使用した場合に情報記録媒体10が表示する像を、偏光板220を使用しない場合に情報記録媒体10が表示する像と比較する。そして、色が相違している単位領域からなる配列と、色が殆ど変化していない単位領域からなる配列とで像を構成する。これにより、図10示す文字情報「A」を読み出すことができる。
【0074】
或いは、単位配向領域140a又は140bと光吸収部130aとを含んだ単位領域が偏光板220を使用したときに表示する色と、単位配向領域140c又は140dと光吸収部130aとを含んだ単位領域が偏光板220を使用したときに表示する色とを予め調べておく。そして、偏光板220を使用した場合に情報記録媒体10が表示する像を先の色に参照して、これら色を呈している単位領域を選択する。選択した単位領域からなる配列と、それら以外の単位領域からなる配列とで像を構成すると、図10示す文字情報「A」を読み出すことができる。
【0075】
或いは、単位配向領域140a又は140bと光透過部130bとを含んだ単位領域が偏光板220を使用したときに表示する色と、単位配向領域140c又は140dと光透過部130bとを含んだ単位領域が偏光板220を使用したときに表示する色とを予め調べておく。そして、偏光板220を使用した場合に情報記録媒体10が表示する像を先の色に参照して、これら色を呈している単位領域を選択する。選択した単位領域からなる配列と、それら以外の単位領域からなる配列とで像を構成すると、図10示す文字情報「A」を読み出すことができる。
【0076】
次に、偏光板220を用いて斜め方向から観察した場合に情報記録媒体10が表示する像について説明する。
【0077】
図9を参照しながら説明した観察条件からX方向に垂直な面内で観察方向を傾けると、各単位領域で潜像形成層150の光路長が長くなり、単位配向領域140a、140c及び140dを含んだ単位領域では更に複屈折性Δnが変化する。即ち、観察方向を傾けると、各単位領域で潜像形成層150のリターデイションが変化する。
【0078】
その結果、偏光板220を用いて情報記録媒体10を法線方向から観察した場合に同じ色に見えた単位領域は、観察方向を傾けることにより異なる色を表示する可能性がある。例えば、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域は赤色を表示し、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域は緑色を表示する。
【0079】
但し、偏光板220を用いて情報記録媒体10を法線方向から観察した場合に異なる色に見えた単位領域は、観察方向を傾けても異なる色を表示する。従って、斜め方向から観察する場合も、法線方向から観察する場合とほぼ同様の方法により、文字情報「A」を読み出すことができる。
【0080】
また、偏光板220を用いて正面方向から観察した場合に同じ色に見え、観察方向を傾けると異なる色に見えることを利用して、潜像形成層150に記録する情報量をより多くすることができる。従って、この場合、より高度な偽造防止効果を達成することが可能となる。
【0081】
情報の読み取りには、例えば、以下の情報読取装置を利用することができる。
図11は、情報読取装置の一例を概略的に示す図である。
この情報読取装置20は、照明装置と、光学系と、撮像装置230と、処理部240とを含んでいる。
【0082】
照明装置は、1つの光源210からなる。この光源210は、情報記録媒体10の前面を照明する照明光Liとして、例えば白色光を、情報記録媒体10に対して斜め方向に射出する。光源210は、情報記録媒体10の前面全体を照明できるように、情報記録媒体10から十分に離間させる。
【0083】
光源210は、点光源であってもよく、線光源であってもよく、面光源であってもよい。光源210としては、例えば、ハロゲンランプ、発光ダイオード又は蛍光管を使用することができる。
【0084】
光学系は、偏光子220を含んでいる。偏光子220は、ここでは、直線偏光板であり、光源210が射出した照明光Liを自然光から直線偏光へと変換して情報記録媒体10へと導き、これにより情報記録媒体10が射出する再生光Lrを直線偏光へと変換した後に撮像装置230へと導く光学系を構成している。偏光板220は情報記録媒体10の前面と向き合っている。偏光板220の透過軸ATは、光源210側から見てY方向に対して時計回りに45°の角度を為している。
【0085】
撮像装置230は、偏光板220によって直線偏光へと変換された再生光Lrを受光する。撮像装置230は、カラー撮像装置であって、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含んでいる。撮像装置230及び光源210は、典型的には、情報記録媒体10の表面が正反射した照明光Liを撮像装置230が受光しないように配置する。
【0086】
処理部240は、撮像装置230に接続されている。処理部240は、撮像装置230が出力する画像情報を処理して、情報記録媒体10が保持している文字情報「A」を再生する。
【0087】
この情報読取装置20は、典型的には、処理部240に接続された出力装置を更に含んでいる。出力部は、処理部240が再生した情報を、オペレータが例えば光学的に又は音響学的に知覚できるように出力する。出力部としては、例えば、処理部240が再生した文字情報「A」を表示する表示装置を使用することができる。
【0088】
この情報読取装置20では、撮像装置230は、例えば、以下の像を検出する。即ち、単位配向領域140aと光透過部130bとを含んだ第1単位領域に対応した部分は赤色であり、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域に対応した部分は緑色である。単位配向領域140aと光吸収部130aとを含んだ第5単位領域に対応した部分は赤色と光吸収部130aの色との減法混色により得られる色であり、単位配向領域140bと光吸収部130aとを含んだ第6単位領域に対応した部分は緑色と光吸収部130aとの減法混色に対応した色である。そして、単位配向領域140bを含んだ第3、第4、第7及び第8単位領域に対応した部分は、第1、第2、第5及び第6単位領域に対応した部分とは異なる色である。従って、処理部240にこれらの色を参照情報として記憶させておけば、撮像装置230が出力した画像情報と参照情報とから、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。
【0089】
この情報読取装置20には、情報記録媒体10をその法線の周りで回転させる駆動機構を設けてもよい。即ち、情報記録媒体10が保持している文字情報「A」を再生する場合、情報記録媒体10をその法線の周りで回転させてもよい。情報記録媒体10の回転角度と表示色の変化とを利用して、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。例えば、図11に示す状態から、情報記録媒体10のみをZ方向に平行な軸の周りで90°回転させる。こうすると、第1単位領域に対応した部分と第2単位領域に対応した部分との間及び第5単位領域に対応した部分と第6単位領域に対応した部分との間で表示色の入れ替わりを生じ、第3、第4、第7及び第8単位領域に対応した部分では表示色の変化を生じない。即ち、単位配向領域140a又は140bに対応した部分では表示色の入れ替わりを生じ、単位配向領域140c又は140dに対応した部分では表示色の変化を生じない。従って、これに基いて、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。
【0090】
図12は、情報読取装置の他の例を概略的に示す図である。
この情報読取装置20は、以下の構成を採用したこと以外は、図11を参照しながら説明した情報読取装置20と同様である。
【0091】
即ち、図12に示す情報読取装置20では、照明装置及び光学系が、光源210及び偏光子220の代わりに、複数の光源210a及び210bと複数の偏光子220a乃至220cとを含んでいる。
【0092】
光源210a及び210bの各々は、情報記録媒体10の前面を照明する照明光Liとして、例えば白色光を射出する。光源210a及び210bは、情報記録媒体10の前面全体を照明できるように、情報記録媒体10から十分に離間させる。光源210a及び210bとしては、例えば、光源210について例示したものを使用することができる。
【0093】
偏光子220a乃至220cは、ここでは、直線偏光板であり、光源210a及び210bが射出した照明光Liを自然光から直線偏光へと変換して情報記録媒体10へと導き、これにより情報記録媒体10が射出する再生光Lrを直線偏光へと変換した後に撮像装置230へと導く光学系を構成している。
【0094】
偏光子220aは、光源210aが射出した照明光Liを自然光から直線偏光へと変換して情報記録媒体10へと導く。偏光子220aは、例えば、偏光面がZ方向に対して垂直であり且つY方向に対して+45°の角度を為している直線偏光を透過させる。
【0095】
偏光子220bは、光源210bが射出した照明光Liを自然光から直線偏光へと変換して情報記録媒体10へと導く。偏光子220bは、例えば、偏光面がZ方向に対して垂直であり且つY方向に対して−45°の角度を為している直線偏光を透過させる。
【0096】
偏光子220cは、情報記録媒体10が射出した再生光Lrを、直線偏光へと変換して撮像装置230へと導く。偏光子220cは、例えば、偏光面がZ方向に対して垂直であり且つY方向に対して+45°の角度を為している直線偏光を透過させる。
【0097】
この情報読取装置20では、以下の方法により、情報記録媒体10が保持している情報を読み取る。
【0098】
情報読取装置20で情報記録媒体10が保持している情報を読み取る場合、まず、光源210bを消灯した状態で、光源210aを点灯する。このとき、撮像装置230が検出する像は、図11に示す情報読取装置20の撮像装置230が撮影する像と等しい。
【0099】
次に、光源210aを消灯し、光源210bを点灯する。このとき、撮像装置230が検出する像は、単位配向領域140aと光吸収部130bとを含んだ第1単位領域に対応した部分と、単位配向領域140bと光透過部130bとを含んだ第2単位領域に対応した部分との間で色が入れ替わり、単位配向領域140aと光吸収部130aとを含んだ第5単位領域に対応した部分と、単位配向領域140bと光吸収部130aとを含んだ第6単位領域に対応した部分との間で色が入れ替わり、更に、単位配向領域140c又は140dを含んだ第3、第4、第7及び第8単位領域に対応した部分は黒色へと変化する。
【0100】
即ち、照明光源を光源210aから光源210bへと切り替えることにより、単位配向領域140a又は140bに対応した部分では表示色の入れ替わりを生じ、単位配向領域140c又は140dに対応した部分では表示色が黒色へと変化する。従って、例えば、処理部240に、撮像装置230が出力した画像情報を、潜像を構成している単位領域が照明光源を光源210aから光源210bへと切り替えることにより表示色の入れ替わりを生じる部分に対応していること、潜像を構成している単位領域が照明光源を光源210aから光源210bへと切り替えることにより表示色が黒色へと変化しない部分に対応していること、又はそれらの双方に基いて処理させることにより、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。
【0101】
なお、ここでは、偏光子220aが透過させる直線偏光の偏光面と、偏光子220cが透過させる直線偏光の偏光面とを平行とする配置を採用しているが、それらが斜めに交差する配置を採用してもよい。
【0102】
また、この情報読取装置20では、2つの光源210a及び210bと2つの偏光子220a及び220bとを使用しているが、光源210b及び偏光子220bを省略した場合も、上述したのと同様の方法により、文字情報「A」を再生することができる。例えば、情報読取装置20に、偏光子220a又は220cの透過軸を回転させる駆動機構を設ける。偏光子220a又は220cの透過軸を回転させると、単位配向領域140c又は140dに対応した部分では表示色が黒色へと変化するので、文字情報「A」に対応した画像情報を得ることができる。
【0103】
なお、ここでは、情報記録媒体10に直線偏光を照射する構成について説明したが、情報記録媒体10に自然光を照射可能な構成を追加してもよい。こうすると、これが無くても、文字情報「B」に対応した画像情報を読み取ることは可能であるが、自然光を照射可能とすると、文字情報「B」に対応した画像情報を容易に得ることができる。この画像情報は、例えば、文字情報「A」に対応した画像情報と組み合わせて情報記録媒体10が真正品であることを確認するために利用可能である。また、この画像情報は、情報記録媒体10の位置合わせにも利用することができる。
【0104】
以上、情報記録媒体10に図1及び図2を参照しながら説明した構造を採用した場合を例に説明したが、情報記録媒体10には、様々な変形が可能である。
例えば、先の説明では、情報記録媒体10を36個の単位領域で構成したが、情報記録媒体10は、より多くの又はより少ない単位領域で構成してもよい。情報記録媒体10には、直線偏光子を使用して潜像を可視化する構成を採用する代わりに、円偏光子又は楕円偏光子を使用して潜像を可視化する構成を採用してもよい。
【0105】
情報記録媒体10は、潜像形成層150を被覆した保護層、及び/又は、基材150を支持した支持体を更に含んでいてもよい。また、潜像形成層150の厚さを不均一にしてもよい。
【0106】
図13は、一変形例に係る情報記録媒体を概略的に示す断面図である。
【0107】
この情報記録媒体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図1及び図2を参照しながら説明した情報記録媒体10と同様の構造を有している。即ち、この情報記録媒体10では、単位領域PX34は、単位領域PX14、PX24、PX44、PX54及びPX64と比較して、配向層140がより厚い。また、単位領域PX34は、単位領域PX14、PX24、PX44、PX54及びPX64と比較して、潜像形成層150がより薄い。
【0108】
潜像形成層150の厚さは、リターデイションに影響を及ぼす。従って、このように、潜像形成層150の厚さに不均一性を導入すると、潜像形成層150に記録する情報量をより多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す情報記録媒体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図。
【図4】図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図。
【図5】図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図。
【図6】図1に示す情報記録媒体が含んでいる配向層の単位配向領域を概略的に示す平面図。
【図7】図3乃至図6に示す単位配向領域の図1に示す情報記録媒体における配置を概略的に示す平面図。
【図8】図1に示す情報記録媒体が含んでいる像形成層を概略的に示す平面図。
【図9】偏光子を用いて法線方向から観察した場合に図1に示す情報記録媒体が表示する像の一例を示す平面図。
【図10】図9に示す像から読み出すことが可能な情報を示す平面図。
【図11】情報読取装置の一例を概略的に示す図。
【図12】情報読取装置の他の例を概略的に示す図。
【図13】一変形例に係る情報記録媒体を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0110】
10…情報記録媒体、20…情報読取装置、110…基材、120…散乱反射層、130…像形成層、130a…光吸収部、130b…光透過部、140…配向層、140a乃至140d…単位配向領域、150…潜像形成層、210…光源、210a…光源、210b…光源、220…偏光子、220a乃至220c…偏光子、230…撮像装置、240…処理部、AT…透過軸、Li…照明光、Lr…再生光、PX11乃至PX16…単位領域、PX21乃至PX26…単位領域、PX31乃至PX36…単位領域、PX41乃至PX46…単位領域、PX51乃至PX56…単位領域、PX61乃至PX66…単位領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光性を有している光を一方の主面に照射した場合に偏光性を有している散乱光を前記主面から射出する散乱反射層と、
前記主面と向き合うと共に固化された液晶材料からなり、第1情報として潜像を保持している潜像形成層と、
前記潜像形成層と向き合い、前記潜像形成層と向き合った主面は複数の単位配向領域を含み、前記複数の単位配向領域は前記潜像形成層中に前記潜像を形成している光透過性の配向層と、
前記潜像形成層及び前記配向層の少なくとも一方を間に挟んで又はそれらを間に挟まずに前記散乱反射層の一部と向き合い、前記複数の単位配向領域の一部に対応して配列した複数の光吸収部を含み、前記複数の光吸収部の配列は前記第1情報とは異なる第2情報を構成している像形成層とを具備したことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記複数の単位配向領域は、各々が前記液晶材料のメソゲン基を第1方向に配向させる1つ以上の第1単位配向領域と、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第1方向と略直交する第2方向に配向させる1つ以上の第2単位配向領域と、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第1方向に対して斜めに交差する第3方向に配向させる1つ以上の第3単位配向領域とを含み、前記1つ以上の第1単位配向領域と前記1つ以上の第2単位配向領域とが形成しているパターンとその反転パターンとは前記潜像を構成しているパターンに対応していることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記複数の単位配向領域は、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第3方向と略直交する第4方向に配向させる1つ以上の第4単位配向領域を更に含み、前記1つ以上の第1単位配向領域と前記1つ以上の第2単位配向領域とが形成しているパターンと、前記1つ以上の第3単位配向領域と前記1つ以上の第4単位配向領域とが形成しているパターンとは、前記潜像を構成しているパターンに対応していることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記複数の単位配向領域の各々には長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記複数の単位配向領域の少なくとも1つにおいて、前記複数の溝は回折格子を形成していることを特徴とする請求項4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記複数の単位配向領域の少なくとも1つにおいて、前記複数の溝は一方向性拡散パターンを形成していることを特徴とする請求項4又は5に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記複数の単位配向領域は、前記長さ方向が互いに等しい1つ以上の単位配向領域から各々がなり、前記長さ方向が互いに異なる複数の配向領域群を形成していることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記複数の単位配向領域は、前記配向層の前記主面からの高さが互いに等しい1つ以上の単位配向領域から各々がなり、前記高さが互いに異なる複数の配向領域群を形成していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記散乱反射層は、凹凸構造が設けられた金属反射層又は凹凸構造が設けられた1層若しくは多層の誘電体層であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載された情報記録媒体が保持している情報を読み取る情報読取装置であって、
照明光を射出する照明装置と、
撮像装置と、
前記照明光を偏光に変換して前記情報記録媒体へと導き、これにより前記情報記録媒体が射出する再生光のうち一方の直線偏光を前記撮像装置へと導く光学系と、
前記撮像装置の出力から得られる情報を色の相違に基いて処理して前記第1情報を再生する処理部とを具備したことを特徴とする情報読取装置。
【請求項11】
前記撮像装置は、前記潜像を構成しているパターンの1つを第1パターン、その反転パターンを第2パターン、前記複数の光吸収部が形成しているパターンを第3パターン、その反転パターンを第4パターンとしたときに、前記第1パターンと前記第3パターンとの重複部、前記第1パターンと前記第4パターンとの重複部、前記第2パターンと前記第3パターンとの重複部、及び前記第2パターンと前記第4パターンとの重複部の表示色を互いから識別可能であり、前記処理部はそれら表示色の相違に基いて前記第1情報を再生することを特徴とする請求項10に記載の情報読取装置。
【請求項12】
前記複数の単位配向領域は、各々が前記液晶材料のメソゲン基を第1方向に配向させる1つ以上の第1単位配向領域と、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第1方向と略直交する第2方向に配向させる1つ以上の第2単位配向領域と、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第1方向に対して斜めに交差する第3方向に配向させる1つ以上の第3単位配向領域とを含み、前記1つ以上の第1単位配向領域と前記1つ以上の第2単位配向領域とが形成しているパターンとその反転パターンとは前記第1パターンに対応しており、前記情報読取装置は、前記情報記録媒体がその前面に対して斜め方向に前記再生光を射出するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の情報読取装置。
【請求項13】
前記情報記録媒体を前記主面に垂直な軸の周りで回転させる駆動機構を更に具備し、前記処理部は、前記情報記録媒体の回転角度と表示色の変化とを利用して前記第1情報を再生することを特徴とする請求項10乃至12の何れか1項に記載の情報読取装置。
【請求項14】
前記照明装置は複数の光源を含み、前記光学系は、それら光源が射出する照明光を偏光面が互いに異なる直線偏光へとそれぞれ変換する複数の直線偏光子と、前記再生光のうち一方の直線偏光を前記撮像装置へ向けて透過させる直線偏光子とを含んだことを特徴とする請求項10に記載の情報読取装置。
【請求項15】
前記照明装置は第1及び第2光源を含み、前記光学系は、前記第1光源が射出する照明光を第1直線偏光へと変換して前記情報記録媒体へと導く第1直線偏光子と、前記第2光源が射出する照明光を前記第1直線偏光とは偏光面が異なる第2直線偏光へと変換して前記情報記録媒体へと導く第2直線偏光子と、前記再生光のうち偏光面が前記第1直線偏光の偏光面に平行な第3直線偏光を前記撮像装置へ向けて透過させる第3直線偏光子とを含んだことを特徴とする請求項10に記載の情報読取装置。
【請求項1】
偏光性を有している光を一方の主面に照射した場合に偏光性を有している散乱光を前記主面から射出する散乱反射層と、
前記主面と向き合うと共に固化された液晶材料からなり、第1情報として潜像を保持している潜像形成層と、
前記潜像形成層と向き合い、前記潜像形成層と向き合った主面は複数の単位配向領域を含み、前記複数の単位配向領域は前記潜像形成層中に前記潜像を形成している光透過性の配向層と、
前記潜像形成層及び前記配向層の少なくとも一方を間に挟んで又はそれらを間に挟まずに前記散乱反射層の一部と向き合い、前記複数の単位配向領域の一部に対応して配列した複数の光吸収部を含み、前記複数の光吸収部の配列は前記第1情報とは異なる第2情報を構成している像形成層とを具備したことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記複数の単位配向領域は、各々が前記液晶材料のメソゲン基を第1方向に配向させる1つ以上の第1単位配向領域と、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第1方向と略直交する第2方向に配向させる1つ以上の第2単位配向領域と、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第1方向に対して斜めに交差する第3方向に配向させる1つ以上の第3単位配向領域とを含み、前記1つ以上の第1単位配向領域と前記1つ以上の第2単位配向領域とが形成しているパターンとその反転パターンとは前記潜像を構成しているパターンに対応していることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記複数の単位配向領域は、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第3方向と略直交する第4方向に配向させる1つ以上の第4単位配向領域を更に含み、前記1つ以上の第1単位配向領域と前記1つ以上の第2単位配向領域とが形成しているパターンと、前記1つ以上の第3単位配向領域と前記1つ以上の第4単位配向領域とが形成しているパターンとは、前記潜像を構成しているパターンに対応していることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記複数の単位配向領域の各々には長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記複数の単位配向領域の少なくとも1つにおいて、前記複数の溝は回折格子を形成していることを特徴とする請求項4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記複数の単位配向領域の少なくとも1つにおいて、前記複数の溝は一方向性拡散パターンを形成していることを特徴とする請求項4又は5に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記複数の単位配向領域は、前記長さ方向が互いに等しい1つ以上の単位配向領域から各々がなり、前記長さ方向が互いに異なる複数の配向領域群を形成していることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記複数の単位配向領域は、前記配向層の前記主面からの高さが互いに等しい1つ以上の単位配向領域から各々がなり、前記高さが互いに異なる複数の配向領域群を形成していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記散乱反射層は、凹凸構造が設けられた金属反射層又は凹凸構造が設けられた1層若しくは多層の誘電体層であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載された情報記録媒体が保持している情報を読み取る情報読取装置であって、
照明光を射出する照明装置と、
撮像装置と、
前記照明光を偏光に変換して前記情報記録媒体へと導き、これにより前記情報記録媒体が射出する再生光のうち一方の直線偏光を前記撮像装置へと導く光学系と、
前記撮像装置の出力から得られる情報を色の相違に基いて処理して前記第1情報を再生する処理部とを具備したことを特徴とする情報読取装置。
【請求項11】
前記撮像装置は、前記潜像を構成しているパターンの1つを第1パターン、その反転パターンを第2パターン、前記複数の光吸収部が形成しているパターンを第3パターン、その反転パターンを第4パターンとしたときに、前記第1パターンと前記第3パターンとの重複部、前記第1パターンと前記第4パターンとの重複部、前記第2パターンと前記第3パターンとの重複部、及び前記第2パターンと前記第4パターンとの重複部の表示色を互いから識別可能であり、前記処理部はそれら表示色の相違に基いて前記第1情報を再生することを特徴とする請求項10に記載の情報読取装置。
【請求項12】
前記複数の単位配向領域は、各々が前記液晶材料のメソゲン基を第1方向に配向させる1つ以上の第1単位配向領域と、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第1方向と略直交する第2方向に配向させる1つ以上の第2単位配向領域と、各々が前記液晶材料のメソゲン基を前記第1方向に対して斜めに交差する第3方向に配向させる1つ以上の第3単位配向領域とを含み、前記1つ以上の第1単位配向領域と前記1つ以上の第2単位配向領域とが形成しているパターンとその反転パターンとは前記第1パターンに対応しており、前記情報読取装置は、前記情報記録媒体がその前面に対して斜め方向に前記再生光を射出するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の情報読取装置。
【請求項13】
前記情報記録媒体を前記主面に垂直な軸の周りで回転させる駆動機構を更に具備し、前記処理部は、前記情報記録媒体の回転角度と表示色の変化とを利用して前記第1情報を再生することを特徴とする請求項10乃至12の何れか1項に記載の情報読取装置。
【請求項14】
前記照明装置は複数の光源を含み、前記光学系は、それら光源が射出する照明光を偏光面が互いに異なる直線偏光へとそれぞれ変換する複数の直線偏光子と、前記再生光のうち一方の直線偏光を前記撮像装置へ向けて透過させる直線偏光子とを含んだことを特徴とする請求項10に記載の情報読取装置。
【請求項15】
前記照明装置は第1及び第2光源を含み、前記光学系は、前記第1光源が射出する照明光を第1直線偏光へと変換して前記情報記録媒体へと導く第1直線偏光子と、前記第2光源が射出する照明光を前記第1直線偏光とは偏光面が異なる第2直線偏光へと変換して前記情報記録媒体へと導く第2直線偏光子と、前記再生光のうち偏光面が前記第1直線偏光の偏光面に平行な第3直線偏光を前記撮像装置へ向けて透過させる第3直線偏光子とを含んだことを特徴とする請求項10に記載の情報読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−73103(P2009−73103A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245583(P2007−245583)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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