説明

情報記録媒体及び真偽判定方法

【課題】セキュリティパターンの存在を悟られ難くすることにある。
【解決手段】本発明の情報記録媒体10は、基材110と、前記基材110に支持され、テラヘルツ波領域内に吸収ピークを有している非金属材料である第1テラヘルツ波応答材料120とを具備し、テラヘルツ波を用いた吸収特性の測定により前記第1テラヘルツ波応答材料120の存在を確認可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止に利用可能な情報記録に関する。
【背景技術】
【0002】
株券、債権、小切手、商品券、宝くじ及び定期券などの情報記録媒体の多くには、機械読取可能な情報がセキュリティパターンとして記録されている。このセキュリティパターンとしては、例えば、一次元コード、二次元コード及びOCR(optical character reader)フォントなどの印刷パターンが利用されている。
【0003】
このセキュリティパターンは、通常、近赤外線領域の光を反射する基材面に、近赤外領域の光を吸収する赤外光吸収インキを用いて形成している。一般に、赤外光吸収インキとしてはカーボンブラックなどの黒色顔料を含んだ黒色インキを使用し、近赤外光反射性の基材面は白色インキを用いて形成している。このセキュリティパターンが保持している情報は、証券類に赤外光を照射し、反射赤外光を測定することにより読み取る。
【0004】
情報記録媒体の偽造及び変造は、セキュリティパターンの存在が悟られ難いほど、その偽造及び変造は困難である。そのため、セキュリティパターンを形成した部分を、可視光を遮断し且つ赤外光を透過させる隠蔽層で被覆することがある。
【0005】
しかしながら、隠蔽層の隠蔽力が不十分であると、セキュリティパターンが透けて見え、赤外吸収パターンの存在が容易に悟られる。そこで、不可視領域において大きな吸収を示し且つ可視領域の光に対する吸収が小さい材料を用いてセキュリティパターンを形成することが考えられてきた。
【0006】
例えば、特許文献1に記載されているように、熱線吸収ガラス又は赤外線吸収ガラスを粉砕してなる顔料を含んだインキを用いてセキュリティパターンを形成することがある。この顔料は可視光吸収が小さいので、セキュリティパターンの形状を目視で判別することは困難である。
【0007】
しかしながら、このセキュリティパターンは、その形状を目視で判別することは困難であるものの、それ自体の存在を目視で確認することは可能である。そのため、セキュリティパターンの存在が悟られるのを防止するべく、その上に赤外線吸収が小さい顔料を含んだインキを用いて迷彩模様を形成するか、又は、赤外線吸収が小さい顔料を比較的高い濃度で含んだインキを用いてセキュリティパターンを隠蔽する必要がある。
【0008】
このような理由で、この技術を用いた場合、セキュリティパターンを形成した部分では、そこに表示させることが可能な可視像が制限される。
【0009】
また、熱線吸収ガラス又は赤外線吸収ガラスからなる顔料は、広い赤外領域で比較的大きな吸収を示すため、これを用いて形成したセキュリティパターンは、広い赤外領域で容易に検出することができる。逆に言えば、このセキュリティパターンは、一般的な赤外線カメラを用いて容易に読み取ることができる。そのため、熱線吸収ガラス又は赤外線吸収ガラスからなる顔料を利用した場合、偽造等が極めて困難となる訳ではない。
【0010】
特許文献2及び3には、赤外蛍光材料が記載されている。この赤外蛍光材料には、励起波長が近赤外域にあり、発光波長が励起光の波長より長いという特徴がある。この赤外蛍光材料を用いて白色の基材面上に形成したセキュリティパターンは、その形状を目視で判別することは困難であるものの、それ自体の存在を目視で確認することは可能である。そのため、このセキュリティパターンも、熱線吸収ガラス又は赤外線吸収ガラスを用いて形成したセキュリティパターンと同様に、その上に迷彩模様を形成するか又は隠蔽層を形成する必要があり、そこに表示させる可視像への制約が大きい。
【0011】
しかも、この赤外蛍光材料は、粒径を小さくすると発光輝度が小さくなるため、比較的大きな粒径で使用しなければならない。そのため、このセキュリティパターンを隠蔽層などで被覆したとしても、これが情報記録媒体の表面に形成する凹凸に起因して、赤外蛍光パターンの存在が悟られる可能性がある。
【0012】
特許文献4には、励起波長が紫外域にあり、発光波長が可視域にある可視蛍光材料が記載されている。この可視蛍光材料は無色透明乃至白色であるため、これを用いて白色の基材面上に形成したセキュリティパターンは、その形状を目視で判別することは困難である。そして、このセキュリティパターンは、ブラックライトなどを用いて紫外光を照射すると発光するため、読み取りが容易である。
【0013】
しかしながら、ブラックライトは入手し易く、可視蛍光材料も入手し易い。それゆえ、この技術を用いて高い偽造防止効果を達成することは難しい。
【0014】
光学的に機械読み取り可能なセキュリティパターンを形成する代わりに、磁気的な機械読み取りを利用することがある。例えば、磁性材料を含んだ磁気インキを用いて文字を印刷する(MICR:magnetic ink character recognition)か又は磁気インキを用いて一次元又は二次元コードを印刷すると、磁性材料の有無を検出することにより情報を読み取ることができる。或いは、強磁性体を含んだ層を形成し、これを所定のパターンに磁化すると、磁化の向きを検出することにより情報を読み取ることができる。
【0015】
しかしながら、磁気インキは比較的入手が容易である。また、磁性材料は黒色又は濃色であり、磁気的な機械読み取りでは、一般に、磁気ヘッドを磁性材料に近接させなければならない。そのため、磁性材料を使用した場合、磁性層の隠蔽は困難である。
【特許文献1】特開2000−309736号公報
【特許文献2】特開昭53−106686号公報
【特許文献3】特開昭54−100991号公報
【特許文献4】特開平6−297888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、セキュリティパターンの存在を悟られ難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1側面によると、基材と、前記基材に支持され、テラヘルツ波領域内に吸収ピークを有している非金属材料である第1テラヘルツ波応答材料とを具備し、テラヘルツ波を用いた吸収特性の測定により前記第1テラヘルツ波応答材料の存在を確認可能であることを特徴とする情報記録媒体が提供される。
【0018】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る情報記録媒体を真正品とし、真正品であるか否かが未知の情報記録媒体を検査対象品とし、前記検査対象品に対するテラヘルツ波を用いた吸収特性の測定により前記第1テラヘルツ波応答材料の存在を確認できなかった場合に前記検査対象品を非真正品であると判定することを特徴とする真偽判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、セキュリティパターンの存在を悟られ難くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全ての図面を通じて同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の一態様に係る情報記録媒体の一部を概略的に示す平面図である。
この情報記録媒体10は、例えば、有価証券及び証拠証券などの証券又は身分証明書である。情報記録媒体10は、有価証券及び証拠証券などの証券又は身分証明書に使用する用紙などのブランク媒体であってもよい。
【0022】
この情報記録媒体10は、基材110と印刷層120とを含んでいる。
【0023】
基材110は、典型的には、層形状を有している。基材110は、テラヘルツ波を投下させる材料からなる。基材110は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材110の材料としては、例えば、紙、プラスチック又はそれらの組み合わせを使用することができる。
【0024】
印刷層120は、基材110上に形成されている。図1に示す例では、印刷層120は、基材110の一部のみを被覆している印刷パターンである。印刷層120は、基材110の全面を被覆していてもよい。
【0025】
印刷層120は、無色透明であってもよく、着色透明であってもよく、無色不透明であってもよく、着色不透明であってもよい。印刷層120が基材110の一部のみを被覆している場合、典型的には、印刷層120は無色透明とするか又は基材110の印刷層120で被覆されていない部分とほぼ等しい色とする。
【0026】
印刷層120は、テラヘルツ波応答材料を含有している。典型的には、印刷層120は、このテラヘルツ波応答材料と熱可塑性樹脂などの樹脂とを含有した混合物からなる。
【0027】
テラヘルツ波応答材料は、テラヘルツ波領域内に吸収ピークを有している非金属材料である。なお、テラヘルツ波領域は、0.01×1012Hz乃至10×1012Hzの周波数領域を意味している。テラヘルツ波領域の電磁波は、電波のように物質を透過し、光のように直進する性質を持っている。
【0028】
典型的には、テラヘルツ波応答材料は、蛍光を示さないか又は可視領域及び近赤外領域において蛍光を示さない。そして、典型的には、テラヘルツ波応答材料は、可視領域及び近紫外領域における吸収が小さい光透過性材料である。テラヘルツ波応答材料としては、例えば、炭酸カルシウム、澱粉、乳糖又はそれらの2つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0029】
印刷層120に占めるテラヘルツ波応答材料の割合は、例えば、約0.1質量%乃至約50質量%の範囲内とする。測定装置の性能にも依存するが、この割合が小さいと、情報記録媒体10に対してテラヘルツ波を用いた吸収特性の測定を行った場合に、テラヘルツ波応答材料の存在を確認することが困難となる。この割合が大きいと、基材110からの印刷層120の脱落が生じ易くなる。
【0030】
樹脂としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法及びフレキソ印刷法などの各種印刷法で用いられるインキメジウムを使用することができる。この樹脂としては、テラヘルツ波応答材料との反応を生じないものを選定する。なお、熱可塑性樹脂は、テラヘルツ波領域において吸収を殆ど示さない。従って、これを使用することに起因して、テラヘルツ波応答材料の検出が阻害されることは殆どない。
【0031】
印刷層120は、一般的な印刷法により形成することができる。例えば、テラヘルツ波応答材料と樹脂とを含有したインキを使用し、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷又はフレキソ印刷を行うことにより、印刷層120を形成することができる。
【0032】
図2は、図1に示す情報記録媒体の一変形例を概略的に示す平面図である。この情報記録媒体10は、印刷層130を更に含んでいること以外は、図1を参照しながら説明した情報記録媒体10と同様である。
【0033】
印刷層130は、一部のみを被覆している印刷パターンである。印刷層130は、基材110のうち、印刷層120が被覆している部分とは異なる部分を被覆している。印刷層130は、印刷層120と部分的に重なり合っていてもよく、重なり合っていなくてもよい。
【0034】
印刷層130は、無色透明であってもよく、着色透明であってもよく、無色不透明であってもよく、着色不透明であってもよい。典型的には、印刷層130は無色透明とするか又は基材110の印刷層130で被覆されていない部分若しくは印刷層120とほぼ等しい色とする。
【0035】
印刷層130は、テラヘルツ波応答材料を含有している。典型的には、印刷層130は、このテラヘルツ波応答材料と熱可塑性樹脂などの樹脂とを含有した混合物からなる。テラヘルツ波応答材料及び樹脂としては、印刷層120について説明した材料を使用することができる。
【0036】
この情報記録媒体10において、印刷層130が含んでいるテラヘルツ波応答材料は、テラヘルツ領域内であって印刷層120が含んでいるテラヘルツ波応答材料とは異なる位置に吸収ピークを有している。例えば、印刷層130が含んでいるテラヘルツ波応答材料の各成分は、印刷層120が含んでいるテラヘルツ波応答材料の成分とは異なっていてもよい。或いは、印刷層130が含んでいるテラヘルツ波応答材料は、印刷層120が含んでいるテラヘルツ波応答材料と同一の成分とこれとは異なる成分との双方を含有していてもよい。
【0037】
印刷層130は、印刷層120について説明したのと同様の方法により形成することができる。印刷層130に占めるテラヘルツ波応答材料の割合は、例えば、印刷層120について説明したのと同様とする。
【0038】
図1を参照しながら説明した情報記録媒体10には、他の変形も可能である。例えば、印刷層120を設ける代わりに、テラヘルツ波応答材料を基材110の少なくとも一部に混合してもよい。或いは、印刷層120及び/又は130を設けるのに加え、テラヘルツ波応答材料を基材110の少なくとも一部に混合してもよい。また、テラヘルツ波応答材料を含有していない印刷層、例えば印刷パターンを更に含んでいてもよい。
【0039】
図3は、図1又は図2に示す情報記録媒体に記録された情報を読み取る読取装置の一例を概略的に示す図である。
【0040】
この読取装置50は、レーザ510と、ビームスプリッタ520と、送信用のフォトコンダクタアンテナ530と、分光器である放物面鏡540と、マスク550と、集光器である放物面鏡560と、受信用のフォトコンダクタアンテナ570と、処理部580と、遅延装置590とを含んでいる。
【0041】
レーザ510は、パルス波としてのレーザビームを、一定時間、例えば80fm(フェムト秒)だけ放射する。ビームスプリッタ520は、このレーザビームを2つのビームへと分割する。
【0042】
ビームスプリッタ520が射出した一方のレーザビームは、アンテナ530のフォトコンダクタに照射される。このフォトコンダクタにはバイアス電圧が印加されており、レーザビームが照射されている期間だけ電流が流れる。これにより、アンテナ530は、周波数がテラヘルツ領域内にある電磁波、即ちテラヘルツ波を放射する。なお、このテラヘルツ波の周波数はレーザ510がレーザビームを出力する時間に対応している。
【0043】
放物面鏡540は、アンテナ530が放射したテラヘルツ波を、マスク550へ向けて反射すると共に、平行ビームとする。マスク550は、その窓部でのみテラヘルツ波を透過させる。
【0044】
マスク550の背後には、図示しないホルダが設置されている。このホルダは、図1又は図2に示す情報記録媒体10を着脱可能に保持している。より詳細には、このホルダは、印刷層120がマスク550の窓部と向き合うように、図1に示す情報記録媒体10を着脱可能に保持している。或いは、このホルダは、印刷層120又は130がマスク550の窓部と向き合うように、図2に示す情報記録媒体130を着脱可能に保持している。
【0045】
放物面鏡560は、情報記録媒体130が透過させたテラヘルツ波を、アンテナ570へ向けて反射すると共に、アンテナ570上に集束させる。
【0046】
アンテナ570は、テラヘルツ波を受信すると、このテラヘルツ波のエネルギーに対応した大きさの信号を発生する。
【0047】
ビームスプリッタ520が射出した他方のレーザビームは、遅延装置590へと導かれる。遅延装置590は、アンテナ570がテラヘルツ波を受信するのと同期して、このレーザビームをアンテナ570のフォトコンダクタに照射し、アンテナ570に先の信号を出力させる。
【0048】
処理部580は、アンテナ570が出力した信号を記憶する。このようにして、或る周波数のテラヘルツ波に関する測定データを得る。
【0049】
以上の測定を、例えばパルス幅を0.03ps(ピコ秒)の増分で変化させて再度行う。これを例えば1000回繰り返すことにより、時間と吸収率との関係が得られる。更に、これをフーリエ変換することにより、周波数と吸収率との関係を得ることができる。
【0050】
なお、テラヘルツ波は、様々な方法で発生及び検出することができる。テラヘルツ波は、上述した以外の方法で発生及び/又は検出してもよい。
【0051】
図4は、テラヘルツ波領域における炭酸カルシウムの吸収スペクトルを示すグラフである。図5は、テラヘルツ波領域における澱粉の吸収スペクトルを示すグラフである。図6は、テラヘルツ波領域における乳糖の吸収スペクトルを示すグラフである。図4乃至図6において、横軸はテラヘルツ波の周波数を示しており、縦軸は吸収率(任意単位)を示している。
【0052】
図4乃至図6に示すように、炭酸カルシウム、澱粉及び乳糖のテラヘルツ波領域における吸収スペクトルは、特徴的な形状を有している。従って、例えば、図1又は図2に示す情報記録媒体10を真正品とし、真正品であるか否かが未知の情報記録媒体を検査対象品として、この検査対象品に対してテラヘルツ波を用いた吸収特性の測定を行い、その結果、テラヘルツ波応答材料に特徴的な吸収特性を確認できなかった場合には、この検査対象品は非真正品であると判断することができる。
【0053】
なお、吸収特性の測定は、テラヘルツ波領域内の全周波数について行う必要はない。例えば、図4乃至図6にそれぞれ示すピークP1乃至P3に対応した周波数における検査対象品の吸収特性を真正品の吸収特性と比較することにより、検査対象品におけるテラヘルツ波応答材料の有無を判別することや、検査対象品が含んでいるテラヘルツ波応答材料の種類を特定することができる。即ち、1回乃至数回の測定で、検査対象品の真偽を判定することができる。
【0054】
また、上述したテラヘルツ波応答材料は、無色透明乃至無色不透明(即ち、白色)である。そして、これらテラヘルツ波応答材料は、粒径を小さくした場合であっても、テラヘルツ波領域における吸収特性が変化することはない。従って、これらテラヘルツ波応答材料を用いて形成した印刷パターンは、それ自体の存在を目視で確認することは極めて困難である。
【0055】
そして、これらテラヘルツ波応答材料は、近赤外域における吸収が小さい。それゆえ、これらテラヘルツ波応答材料を用いて形成した印刷パターンは、赤外線カメラ又は赤外線写真で撮影することは不可能であるか又は極めて困難である。
【0056】
更に、これらテラヘルツ波応答材料は非金属材料であるので、これらテラヘルツ波応答材料を用いて形成した印刷パターンが金属センサに反応することはない。
即ち、これらテラヘルツ波応答材料を用いて形成した印刷パターンは、その存在を悟られ難い。
【0057】
このように、上述した技術によると、セキュリティパターンの存在を悟られ難くすることができる。それゆえ、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の例を記載する。
(例1)
坪量が120g/m2の上質紙の全面に、オフセット印刷法により、以下に組成を示す紫外線硬化型オフセットインキI1を1μm乃至2μmの厚さに塗布した。これにより、テラヘルツ波応答材料を含有したインキ層を形成した。
【0059】
次に、このインキ層上に、オフセット印刷法により、テラヘルツ波応答材料を含有しておらず、着色顔料を含有した紫外線硬化型オフセットインキであるプロセスインキを印刷した。これにより、着色パターンを形成した。
【0060】
以上のようにして、情報記録媒体を完成した。以下、この情報記録媒体を、「情報記録媒体M1」と呼ぶ。
【0061】
<紫外線硬化型オフセットインキI1の組成>
・紫外線硬化型オフセットインキメジウム 80質量部
(東洋インキ製造株式会社製FDSメジウムTPロ)
・テラヘルツ波応答材料 20質量部
(炭酸カルシウム)
比較のために、紫外線硬化型オフセットインキI1を塗布しなかったこと以外は情報記録媒体M1について説明したのと同様の方法により情報記録媒体を製造した。以下、この情報記録媒体を「情報記録媒体M2」と呼ぶ。
【0062】
情報記録媒体M1及びM2を肉眼で観察したところ、それらを互いから判別することはできなかった。
【0063】
次に、情報記録媒体M1及びM2の各々について、図3に示す読取装置50を用いた測定を行った。その結果、情報記録媒体M1については、図4に示したのと同様の吸収ピークを確認することができた。これに対し、情報記録媒体M2については、図4に示す吸収ピークを確認することはできなかった。
【0064】
(例2)
本例では、まず、プロセスインキを用いて形成した印刷パターンを更に含んでいること以外は図2に示したのと同様の構造を有する情報記録媒体10を以下の方法により製造した。
【0065】
坪量が120g/m2の上質紙110上に、オフセット印刷法により、上記の紫外線硬化型オフセットインキI1を1μm乃至2μmの厚さに塗布した。これにより、テラヘルツ波応答材料を含有したインキ層120を形成した。
【0066】
次に、この上質紙110上に、オフセット印刷法により、以下に組成を示す紫外線硬化型オフセットインキI2を1μm乃至2μmの厚さに塗布した。これにより、テラヘルツ波応答材料を含有したインキ層130を形成した。
【0067】
その後、上質紙110上に、オフセット印刷法により、テラヘルツ波応答材料を含有しておらず、着色顔料を含有した紫外線硬化型オフセットインキであるプロセスインキを、インキ層120及び130と部分的に重なり合うように印刷した。これにより、着色パターンを形成した。
【0068】
以上のようにして、情報記録媒体10を完成した。以下、この情報記録媒体10を、「情報記録媒体M3」と呼ぶ。
【0069】
<紫外線硬化型オフセットインキI2の組成>
・紫外線硬化型オフセットインキメジウム 90質量部
(東洋インキ製造株式会社製FDSメジウムTPロ)
・テラヘルツ波応答材料 10質量部
(乳糖)
比較のために、紫外線硬化型オフセットインキI1及びI2を塗布しなかったこと以外は情報記録媒体M3について説明したのと同様の方法により情報記録媒体を製造した。以下、この情報記録媒体を「情報記録媒体M4」と呼ぶ。
【0070】
情報記録媒体M3及びM4を肉眼で観察したところ、それらを互いから判別することはできなかった。
【0071】
次に、情報記録媒体M3及びM4の各々について、図3に示す読取装置50を用いた測定を行った。その結果、情報記録媒体M3の一部については、図4に示したのと同様の吸収ピークを確認することができ、情報記録媒体M3の他の部分については、図5に示したのと同様の吸収ピークを確認することができた。これに対し、情報記録媒体M4については、図4及び図5に示す吸収ピークを確認することはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一態様に係る情報記録媒体の一部を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す情報記録媒体の一変形例を概略的に示す平面図。
【図3】図1又は図2に示す情報記録媒体に記録された情報を読み取る読取装置の一例を概略的に示す図。
【図4】テラヘルツ波領域における炭酸カルシウムの吸収スペクトルを示すグラフ。
【図5】テラヘルツ波領域における澱粉の吸収スペクトルを示すグラフ。
【図6】テラヘルツ波領域における乳糖の吸収スペクトルを示すグラフ。
【符号の説明】
【0073】
10…情報記録媒体、110…基材、120…印刷層、130…印刷層、50…読取装置、510…レーザ、520…ビームスプリッタ、530…アンテナ、540…放物面鏡、550…マスク、560…放物面鏡、570…アンテナ、580…処理部、590…遅延装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に支持され、テラヘルツ波領域内に吸収ピークを有している非金属材料である第1テラヘルツ波応答材料とを具備し、テラヘルツ波を用いた吸収特性の測定により前記第1テラヘルツ波応答材料の存在を確認可能であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1テラヘルツ波応答材料は前記基材上に形成された第1印刷層中に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
テラヘルツ波領域内であって前記第1テラヘルツ波応答材料とは異なる位置に吸収ピークを有している非金属材料である第2テラヘルツ波応答材料を更に具備し、前記第2テラヘルツ波応答材料は前記基材上であって前記第1印刷層が形成された位置とは異なる位置に形成された第2印刷層中に含まれており、テラヘルツ波を用いた吸収特性の測定により前記第2テラヘルツ波応答材料の存在を確認可能であることを特徴とする請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記第1テラヘルツ波応答材料は前記基材の少なくとも一部に混合されていることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記第1テラヘルツ波応答材料は、炭酸カルシウム、澱粉及び乳糖からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
請求項1に記載の情報記録媒体を真正品とし、真正品であるか否かが未知の情報記録媒体を検査対象品とし、前記検査対象品に対するテラヘルツ波を用いた吸収特性の測定により前記第1テラヘルツ波応答材料の存在を確認できなかった場合に前記検査対象品を非真正品であると判定することを特徴とする真偽判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−226635(P2009−226635A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72090(P2008−72090)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】