説明

情報記録媒体用基板に供するためのガラス、情報記録媒体用基板および情報記録媒体とそれらの製造方法

【課題】高記録密度化に対応した情報記録媒体用基板を提供する。
【解決手段】mol%表示にて、SiO2とAl2O3を合計で70〜85%(ただし、SiO2の含有量が50%以上)、Al2O3の含有量が3%以上、Li2O、Na2OおよびK2Oを合計で10%以上、CaOとMgOを合計で1〜6%(ただし、CaOの含有量がMgOの含有量よりも多い)、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計で0%を超えて4%以下含み、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量のmol比が0.28以下、である、情報記録媒体用基板に供するためのガラスとする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2006年6月8日出願の日本特願2006−159223号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、磁気ディスク等の情報記録媒体用基板として使用されるガラス、前記ガラスからなる情報記録媒体用基板および前記基板を備える情報記録媒体、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エレクトロニクス技術、特にコンピュータに代表される情報関連技術の進展に伴い、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどの情報記録媒体の需要は急速に伸びている。コンピュータなどの磁気記憶装置の主要構成要素は、磁気記録媒体と磁気記録再生用の磁気ヘッドである。磁気記録媒体としてはフレキシブルディスクとハードディスクとが知られている。このうちハードディスク(磁気ディスク)用の基板材料としては、例えば、アルミニウム基板、ガラス基板、セラミック基板、カーボン基板等があり、実用的には、サイズや用途に応じて、主に、アルミニウム基板とガラス基板とが使用されている。しかし、ノートパソコン用ハードディスクドライブの小型化や磁気記録の高密度化に伴いディスク基板の表面平滑性や薄型化への要求は更に厳しくなっているため、加工性、強度、剛性に劣るアルミニウム基板で対応するには限界がある。そこで、近年、高強度、高剛性、高耐衝撃性、高表面平滑性を有する磁気ディスク用ガラス基板が登場してきた(例えば特公昭47−1949号公報、特開平5−32431号公報、特開平10−1329号公報参照、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される)。
【0004】
発明の開示
近年、情報記録媒体のより一層の高記録密度化を図るため(例えば100Gビット/インチ2以上の高記録密度化)、垂直磁気記録方式が採用されている。垂直磁気記録方式の採用により記録密度を格段に向上することができる。一方、高記録密度化のためにはデータの書き込み、読み取りのためのヘッド(例えば磁気ヘッド)と媒体表面との距離(磁気記録媒体の場合はフライングハイトという。)を8nm以下と極めて近接させる必要がある。しかし、基板表面の平滑性が低いと、媒体表面に基板表面の凹凸が反映され、前記ヘッドと媒体表面の距離を近づけることができず、線記録密度向上の妨げとなる。そのため、垂直磁気記録方式の採用による高記録密度化に対応するために、従来よりも格段に高い平滑性を有する情報記録媒体用ガラス基板が求められている。具体的には、例えば、基板の主表面の粗さが、0.25nm以下のような非常に厳しい要求がなされている。
【0005】
一方、情報記録媒体用ガラス基板には異物の付着が許されないため、十分な洗浄が施される。洗浄には酸、アルカリなどが洗剤として使用される。しかし、基板を構成するガラスの化学的耐久性(耐酸性、耐アルカリ性、耐水性)が十分優れていないと、製造工程において基板表面を平滑に仕上げたとしても表面粗れが生じてしまう。この表面粗れが僅かなものであっても、垂直記録方式の媒体用基板として必要とされるレベルの平滑性を実現することは困難となる。そのため、情報記録媒体の線記録密度の向上するために、優れた化学的耐久性を有する基板材料が求められている。
【0006】
ところで、高記録密度化を達成するには、線記録密度の向上に加えて、トラック密度もあわせて向上させることが好ましい。ディスク状の情報記録媒体では、媒体を中心軸の周りに高速回転させつつ、中心軸からの距離を僅かに変化させながら、回転方向に沿ってデータの記録、読取を行う。前述の線記録密度は回転方向の単位長さあたり、どれだけのデータを記録できるかという指標である。それに対し、トラック密度は媒体の動径方向の記録密度に対応する。ディスク状の情報記録媒体では、予め、中心軸からの距離に応じてデータを記録するポジションが割り当てられる。しかし、トラック密度が高い媒体では、前記距離の僅かなずれもエラーの原因となる。そのため、媒体を回転するための回転軸を取り付ける中心孔は、基板の中心に精密に形成されなければならず、その孔の内径寸法公差も小さいものでなければならない。また、磁気ディスクおける内径寸法誤差も厳しい精度管理が求められる理由としては他にも、磁気ディスクの内周端面の寸法誤差が、磁気ディスクをHDDのスピンドルモータに嵌設する際の設置精度に直接影響するからである。内径寸法誤差が大きいと、HDD等の磁気ディスク装置に磁気ディスクが組み付けられる前に実施されるスタッキングサーボ(サーボ情報の磁気ディスクへの書き込み)における機械的な誤差を誘発する可能性や、ディスクスタッキング時のスピンドルとの嵌め合い不具合を誘発する可能性が生じる。そして、このような不具合が起きた場合には、データの記録/再生ができなくなってしまう。特に、近年、情報の高記録密度化が進むにつれて、磁気ディスクのトラック間距離は狭くなっている。具体的には、トラック間距離(ライトトラック)が例えば、0.2μm以下のようにトラック間距離が狭くなると、基板がわずかにずれただけで情報の記録トラックがずれてしまい、情報を正しく読み出せないことになってしまう。
現在の内径寸法公差規格は、φ65mm(直径65mm)基板については、20.025mm±0.025mm以内、φ48mm基板では、12.025mm±0.025mm以内である。しかし、今後、高記録密度化に伴い、更にスペックが厳しくなることが予想される。
【0007】
一方、情報記録媒体用ガラス基板は、情報記録媒体の製造過程や前記媒体を情報記録装置に組み込む際、破損しないよう化学強化が施される場合がある。化学強化では、一般にアルカリ成分を含むガラスを、前記アルカリ成分よりもイオン半径の大きいアルカリを含む熔融塩に浸漬し、基板表面のアルカリイオンと熔融塩中のアルカリイオンのイオン交換によって、基板表面に圧縮応力層を形成する。化学強化の際、多量の基板を次々に熔融塩に浸漬してイオン交換を行うが、基板の処理枚数が多くなるにつれて、ガラス中から熔融塩への放出されるアルカリイオンの濃度が高まる。そのため、処理条件を一定にしても当初化学強化した基板と多量の枚数を処理した後の熔融塩を使って化学強化した基板では、化学強化によって形成される応力分布が僅かに異なる。ガラス基板は化学強化によって形成される内部応力により、強化処理の前後で僅かな寸法変化をおこす。そのため、応力分布が僅かに異なる基板間では、その寸法変化にもばらつきが生じる。このような寸法変化のばらつきが生じると、僅かながら個々の基板で中心孔の位置がずれたり、中心孔の内径寸法公差が大きくなる原因になり得る。高記録密度化された情報記録媒体では、このような僅かなずれでも、データの記録ができなくなってしまうという問題が生じる場合がある。情報記録媒体の中心孔の内径寸法公差が大きいと、中心孔にクランプ機構を入れて固定した後、動作中の衝撃によって媒体が動き、芯ずれを起こしてしまう。この芯ずれが極めてわずかであっても、垂直記録型磁気記録媒体等の高記録密度情報基板では、重大な問題となる。
【0008】
また、ガラス基板にイオン交換性を持たせるためやガラスの溶融性を向上させるために、ガラスにアルカリ金属を含有させることが行われている。しかし、アルカリ金属の含有量によっては、ガラス基板から上記アルカリ金属イオンが溶出する場合がある。アルカリ金属イオンが溶出してガラス基板の表面に移動した場合、このアルカリ金属イオンが、磁性膜を成膜する際の加熱工程時に表面に移動して溶出したり、あるいは磁性膜を侵食したり、磁性膜の付着強度を劣化させたりするという問題がある。
【0009】
かかる状況下、本発明の第一の目的は、耐酸性および耐アルカリ性がともに優れた情報記録媒体用基板に供するためのガラス、および前記ガラスにより構成される情報記録媒体用ガラス基板を提供することにある。
【0010】
本発明の第二の目的は、アルカリ金属成分の溶出が少なく、化学強化により優れた耐衝撃性を付与可能な情報記録媒体用基板に供するためのガラス、および前記ガラスにより構成される情報記録媒体用ガラス基板を提供することにある。
【0011】
本発明の第三の目的は、平滑性が極めて高く、表面が極めて清浄な情報記録媒体用基板を実現可能にするガラス、および前記ガラスにより構成される情報記録媒体用ガラス基板を提供することにある。
【0012】
本発明の第四の目的は、化学的耐久性が高く、洗浄後も優れた表面平滑性を有する情報記録媒体用基板を作製することができるガラスを提供することにある。
更に、本発明は、化学強化処理後の形状安定性が高いガラス基板材料を提供することも目的とする。
加えて、本発明は、上記各情報記録媒体用ガラス基板の製造方法、および前記ガラス基板を備える情報記録媒体とその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、
mol%表示にて、
SiO2とAl2O3を合計で70〜85%、ただし、SiO2の含有量が50%以上、Al2O3の含有量が3%以上、
Li2O、Na2OおよびK2Oを合計で10%以上、
CaOとMgOを合計で1〜6%、ただし、CaOの含有量がMgOの含有量よりも多い、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計で0%を超えて4%以下、
含み、
SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量のmol比((Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+Al2O3+ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2))が0.28以下、
である、情報記録媒体用基板に供するためのガラス(以下、「ガラスI」という)、
に関する。
【0014】
一態様によれば、前記ガラスは、SiO2の含有量が60 mol%以上であり、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が75mol%以上である。
【0015】
一態様によれば、前記ガラスは、mol%表示したときにCaOおよびMgOの合計含有量がSrOおよびBaOの合計含有量よりも多く、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上である。
【0016】
一態様によれば、前記ガラスは、mol%表示にて、SiO2を50〜75%、Al2O3を3〜15%、Li2Oを5〜15%、Na2Oを5〜15%、K2Oを0〜3%、CaOを0.5%を超えて5%以下、MgOを0%以上、3%未満、ZrO2を0.3〜4%含む。
【0017】
本発明の別の態様は、
mol%表示にて、
SiO2を50〜75%、
Al2O3を3〜15%、
Li2Oを5〜15%、
Na2Oを5〜15%、
K2Oを0〜3%、
CaOを0.5%を超えて5%以下、
MgOを0%以上、3%未満、ただし、CaOの含有量がMgOの含有量よりも多い、
ZrO2を0.3〜4%、
含み、
SiO2、Al2O3およびZrO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量のmol比((Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+Al2O3+ZrO2))が0.28以下、
である、情報記録媒体用基板に供するためのガラス(以下、「ガラスII」という)、
に関する。
【0018】
本発明の更なる態様は、
SiO2と、Al2O3と、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
SiO2の含有量が50mol%以上、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が70mol%以上、
前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量が8mol%以上、
前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の前記合計含有量に対する前記酸化物の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上、
である情報記録媒体用基板に供するためのガラス(以下、「ガラスIII」という)、
に関する。
【0019】
一態様によれば、前記ガラスは、SiO2の含有量が60mol%以上であり、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が75mol%以上である。
【0020】
一態様によれば、前記ガラスは、Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方を含有し、かつLi2OとNa2Oの合計含有量が24mol%未満である。
【0021】
一態様によれば、前記ガラスは、Li2OとNa2Oの合計含有量が22mol%以下である。
【0022】
一態様によれば、前記ガラスは、mol表示にて、SiO2を60〜75%、Al2O3を3〜15%、ZrO2を0.3〜4%含む。
【0023】
本発明の更なる態様は、
Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
Li2OとNa2Oの合計含有量が10〜22mol%、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量が0 mol%を超えて4 mol%以下、
前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対する前記酸化物の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.15以上、
である、情報記録媒体用基板に供するための化学強化用アルミノシリケートガラス(以下、「ガラスIV」という)、
に関する。
【0024】
一態様によれば、前記ガラスは、SiO2の含有量が50 mol%以上、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が70mol%以上である。
【0025】
一態様によれば、前記ガラスは、SiO2とAl2O3の合計含有量が75mol%以上である。
【0026】
一態様によれば、前記ガラスは、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上である。
【0027】
一態様によれば、前記ガラスは、mol%表示にて、Al2O3を3%以上、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で8%以上、MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で0%を超え、5%以下含む。
【0028】
本発明の更なる態様は、
SiO2と、Al2O3と、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
50℃に保たれた0.5Vol%のケイフッ酸(H2SiF)水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが3.0nm/分以下となる耐酸性と、
50℃に保たれた1質量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが0.1nm/分以下となる耐アルカリ性と、
を備える、情報記録媒体用基板に供するためのガラス(以下、「ガラスV」という)、
に関する。
【0029】
一態様によれば、前記ガラスは、SiO2の含有量が50 mol%以上、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が70mol%以上である。
【0030】
一態様によれば、前記ガラスは、SiO2とAl2O3の合計含有量が75mol%以上である。
【0031】
一態様によれば、前記ガラスは、上記アルカリ金属酸化物と上記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量が8mol%以上、かつ上記アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対する上記酸化物の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上となる組成を有する。
【0032】
一態様によれば、前記ガラスは、Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方を含有し、かつLi2OとNa2Oの合計含有量が24mol%以下である。
【0033】
一態様によれば、前記ガラスは、Li2OとNa2Oの合計含有量が22mol%以下である。
【0034】
一態様によれば、前記ガラスは、mol表示にて、SiO2を60〜75%、Al2O3を3〜15%、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計で0.3〜4%含有する。
【0035】
本発明の更なる態様は、
質量%表示にて、
SiO2を57〜75%、
Al2O3を5〜20%、ただし、SiO2とAl2O3の合計量が74%以上、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計で0%を超え、6%以下、
Li2Oを1%を超え、9%以下、
Na2Oを5〜18%、ただし、質量比Li2O/Na2Oが0.5以下、
K2Oを0〜6%、
MgOを0〜4%、
CaOを0%を超え、5%以下、ただし、MgOとCaOの合計量は5%以下であり、かつCaOの含有量はMgOの含有量よりも多く、
SrOおよびBaOを合計で0〜3%、
含む、情報記録媒体用基板に供するためのガラス(以下、「ガラスVI」という);ならびに、
質量%表示にて、
SiO2を57〜75%
Al2O3を5〜20%、ただし、SiO2とAl2O3の合計量が74%以上、
ZrO2を0%を超え、5.5%以下
Li2Oを1%を超え、9%以下
Na2Oを5〜18%、ただし、質量比Li2O/Na2Oが0.5以下、
K2Oを0〜6%、
MgOを0〜4%、
CaOを0%を超え、5%以下、ただし、MgOとCaOの合計量は5%以下であり、かつCaOの含有量はMgOの含有量よりも多く、
SrOおよびBaOを合計で0〜3%、
TiO2を0〜1%、
含む、情報記録媒体用基板に供するためのガラス(以下、「ガラスVII」という)、
に関する。
【0036】
一態様によれば、前記ガラスは、SiO2とAl2O3の合計含有量が79%を超える。
【0037】
一態様によれば、前記ガラスは、Al2O3を11%以上含む。
【0038】
一態様によれば、前記ガラスは、MgOを0.1〜4%含む。
【0039】
一態様によれば、前記ガラスは、SiO2、Al2O3、ZrO2、Li2O、Na2O、K2O、MgOおよびCaOの合計含有量が99%以上である。
【0040】
一態様によれば、前述の各ガラスは、Feを更に含有し得る。
【0041】
本発明の更なる態様は、前記ガラスに化学強化処理を施すことにより得られた情報記録媒体用基板に供するための化学強化ガラスに関する。
【0042】
本発明の更なる態様は、前記ガラスにより構成される情報記録媒体用ガラス基板に関する。
【0043】
一態様によれば、前記ガラス基板は、主表面の粗さRaが0.25nm未満である。
【0044】
一態様によれば、前記ガラス基板は、化学強化処理が施されている。
【0045】
一態様によれば、前記ガラス基板は、抗折強度が10kg以上である。
【0046】
一態様によれば、前記ガラス基板は、厚みが1mm以下である。
【0047】
一態様によれば、前記ガラス基板は、厚みが0.3mm以上である。
【0048】
一態様によれば、前記ガラス基板は円盤状であり、中心部に開口を有し得る。
【0049】
本発明の更なる態様は、
前記ガラスを鏡面研磨加工する工程と、鏡面加工した後に酸洗浄およびにアルカリ洗浄を施す洗浄工程とを含む、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法
に関する。
【0050】
一態様によれば、前記製造方法は、上記研磨加工工程と洗浄工程との間に、化学強化処理を行うことを更に含む。
【0051】
一態様によれば、上記酸洗浄とアルカリ洗浄とが連続して行われる。
【0052】
一態様によれば、上記酸洗浄の後、アルカリ洗浄が行われる。
【0053】
本発明の更なる態様は、前記情報記録媒体用ガラス基板上に情報記録層を有する情報記録媒体、に関する。
【0054】
一態様によれば、前記情報記録媒体は、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体である。
【0055】
一態様によれば、前記情報記録媒体は、上記基板上に、軟磁性下地層、アモルファス下地層、結晶性下地層、垂直磁気記録層、保護層および潤滑層をこの順に有する。
【0056】
一態様によれば、前記情報記録媒体は、記録密度が130Gbit/inch2以上である。
【0057】
本発明の更なる態様は、前記方法により情報記録媒体用ガラス基板を製造し、上記ガラス基板上に情報記録層を形成する情報記録媒体の製造方法、に関する。
【0058】
本発明によれば、耐酸性および耐アルカリ性がともに優れた情報記録媒体用基板に供するためのガラス、前記ガラスにより構成される情報記録媒体用ガラス基板とその製造方法、および前記基板を備えた情報記録媒体とその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、アルカリ金属成分の溶出が少なく、化学強化により優れた耐衝撃性を付与可能な情報記録媒体用基板に供するためのガラス、前記ガラスにより構成される情報記録媒体用ガラス基板とその製造方法、および前記基板を備えた情報記録媒体とその製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、平滑性が極めて高く、表面が極めて清浄な情報記録媒体用基板を実現可能にするガラス、前記ガラスにより構成される情報記録媒体用ガラス基板とその製造方法、および前記基板を備えた情報記録媒体とその製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、例えば、トラック間距離が0.2μm以下、より好ましくは0.15μm以下、さらに好ましくは0.12μm以下のような高記録密度化に対応し得る優れた表面平滑性を備えるガラス製の情報記録媒体用基板とその製造方法および前記基板を備える情報記録媒体とその製造方法を提供することができる。
【0059】
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0060】
本発明は、情報記録媒体用基板に供するためのガラスに関する。本発明の情報記録媒体用基板に供するためのガラス(以下、「情報記録媒体基板用ガラス」ともいう)は、前述のガラスI〜VIIの7つに大別される。以下、これらガラスについて、順次、詳説する。ガラスI、VI、およびVIIは、本発明における参考態様である。
【0061】
[ガラスI]
ガラスIは、mol%表示にて、
SiO2とAl2O3を合計で70〜85%、ただし、SiO2の含有量が50%以上、Al2O3の含有量が3%以上、
Li2O、Na2OおよびK2Oを合計で10%以上、
CaOとMgOを合計で1〜6%、ただし、CaOの含有量がMgOの含有量よりも多い、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計で0%を超えて4%以下、
含み、
SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対する Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量のmol比((Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+Al2O3+ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2))が0.28以下、
である、情報記録媒体用基板に供するためのガラスである。
ガラスIによれば、耐酸性および耐アルカリ性がともに優れた情報記録媒体用基板を提供することができる。
以下、特記しない限り、ガラスIの説明において、各成分の含有量、合計含有量はmol%により表示し、含有量同士の比率はmol比により表示するものとする。ガラスIは、酸化物ガラスであり、各成分の含有量は酸化物に換算した値で示してある。
【0062】
SiO2はガラスのネットワーク形成成分であり、ガラス安定性、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させ、基板の熱拡散を低下させ、輻射による基板の加熱効率を高める働きをする必須成分である。
Al2O3もガラスのネットワーク形成に寄与し、ガラス安定性、化学的耐久性を向上させる働きをする。
ガラスIでは、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させるために、SiO2とAl2O3の合計含有量を70%以上、好ましくは74%以上、より好ましくは75%以上とする。ガラスの熔融性を考慮し、SiO2とAl2O3の合計含有量を85%以下、好ましくは80%以下とする。
【0063】
SiO2の含有量は、ガラス安定性を良好にする上から、50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは63%以上、一層好ましくは65%以上とする。ただし、SiO2を過剰に導入するとガラス中に未熔解物が生じるため、SiO2量を75%以下とすることが好ましく、72%以下とすることがより好ましく、70%以下とすることが更に好ましい。未熔解物が存在するガラスを加工して基板を作製すると、未熔解物の一部が基板表面に露出し、突起を形成することがある。このような突起がある基板は、高い平滑性が求められる情報記録媒体用基板としては使用することができない。したがって、情報記録媒体用基板に使用するガラスにおける熔融性は、重要な特性となる。
【0064】
Al2O3の含有量は3%以上、好ましくは5%以上、更に好ましくは7%以上とする。ただし、Al2O3を過剰に導入するとガラスの熔融性が低下するため、Al2O3の含有量を15%以下にすることが好ましく、12%以下にすることがより好ましい。
【0065】
Li2O、Na2OおよびK2Oは、熔融性および成形性を向上させるとともに、熱膨張係数を増加させて情報記録媒体用基板、特に磁気記録媒体用基板に好適な熱膨張特性を付与する上で有用な成分である。また、Li2OおよびNa2Oは、化学強化ガラスとして使用する場合は、化学強化時のイオン交換を担う成分となる。こうした効果を得る上から、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量を10%以上とする。ただし、アルカリ金属酸化物の量が過剰になると化学的耐久性、特に耐酸性が低下する傾向を示す。そこでガラスIでは、化学的耐久性を向上させる観点から、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量の上限を、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量との関係で定める。その詳細は後述する。化学的耐久性を一層向上させる上から、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量を22%以下とすることが好ましく、21.5%以下にすることがより好ましく、21%以下にすることがさらに好ましく、20%以下にすることが一層好ましい。
なお、混合アルカリ効果によるアルカリ金属成分の溶出低減、防止効果を得る上から、Li2OおよびNa2Oをガラス成分として導入することが好ましい。
【0066】
上記各特性を良好にする上から、Li2Oの含有量の好ましい下限は5%、より好ましい下限は6%、更に好ましい下限は7%、好ましい上限は15%、より好ましい上限は13%、更に好ましい上限は10%である。Na2Oの含有量の好ましい下限は5%、より好ましい下限は7%、更に好ましい下限は10%であり、好ましい上限は15%、より好ましい上限は13%である。
なお、Li2OおよびNa2Oを含むガラスを化学強化ガラスとして使用する場合、化学強化時のイオン交換に直接寄与するガラス成分はLi2OとNa2Oであり、熔融塩中、イオン交換に寄与するあるアルカリイオンはNaイオンおよび/またはKイオンである。化学強化処理する基板の枚数が増えるにつれて、熔融塩中のLiイオン濃度が増加するが、Na2O量に対するLi2O量のmol比(Li2O/Na2O)が1.04を超えるガラスを多量に処理すると、熔融塩中のLiイオン濃度の上昇が顕著になり、イオン交換に寄与するアルカリイオンとイオン交換に寄与しないアルカリイオンのバランスが処理開始時から大きく変化することになる。その結果、処理開始時に最適化した処理条件が処理枚数が多くなるにつれて最適範囲からずれてしまい、前述のように、基板によって形状にばらつきが生じ、基板の中心孔の内径寸法公差が大きくなる原因となり、しかも圧縮応力層の形成が不十分になったり、基板にうねりが生じるなどの問題も生じる場合がある。このような問題を解消するためにNa2O量に対するLi2O量のmol比(Li2O/Na2O)を1.04以下にすることが好ましく、0.936以下にすることがより好ましく、0.832以下にすることが更に好ましく、0.7904以下とすることが一層好ましい。
【0067】
K2Oは、熔融性を高め、熱膨張係数を大きくする働きがある任意成分である。K2O含有量の好ましい範囲は0〜3%、より好ましい範囲は0〜2%、更に好ましい範囲は0〜1%である。K2Oを少量導入すると多数の基板を化学強化する際、基板相互の圧縮応力層のばらつきを低減する効果があるので、上記範囲内で0.1%以上導入することが好ましく、0.2%以上導入することがより好ましい。
【0068】
CaOおよびMgOは、熔融性、成形性およびガラス安定性を良化し、剛性および硬度を高め、熱膨張係数を大きくする働きをする。しかし、過剰の導入により化学的耐久性が低下するため、CaOとMgOの合計含有量を1〜6%とする。CaOとMgOの合計含有量の好ましい下限は1.5%、より好ましい下限は2%であり、好ましい上限は5.5%、より好ましい上限は5%、更に好ましい上限は4%である。なお、CaOおよびMgOには、化学強化時のイオン交換スピードを低下させる機能がある。したがって、これら成分を適量導入したガラスにより構成される基板を化学強化して、化学強化ガラス基板を量産する際、過剰な化学強化によって引き起こされる基板の内外径寸法公差の増大を抑制することができる。ただし、これら成分を過剰に導入すると、イオン交換スピードが大幅に低下し、化学強化による効果を得ることが難しくなる。CaOとMgOの合計含有量を上記範囲にすることによって、化学強化の効果を得つつ、基板の内外径寸法公差の増大を抑制することもできる。
【0069】
ガラスIでは、耐失透性を一層高め、化学的耐久性も高める上から、CaOの含有量をMgOの含有量より多くする。耐失透性を高めたり、化学的耐久性を高める上から、CaOの含有量に対するMgOの含有量のmol比(MgO/CaO)を0.14〜0.97の範囲にすることが好ましく、0.4〜0.97の範囲にすることがより好ましい。
【0070】
CaOの好ましい含有量は0.5%を超え5%以下であり、CaO含有量のより好ましい下限は0.8%、更に好ましい下限は1%であり、より好ましい上限は4%、更に好ましい上限は3%である。
【0071】
MgOの好ましい含有量は0%以上、3%未満であり、MgO含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%であり、更に好ましい下限は0.5である。好ましい上限は2.5%、より好ましくは2%である。なお、MgOの含有量は、CaOの含有量を定めた上で、上記好ましい範囲内でmol比(MgO/CaO)を定め、CaOの含有量と前記mol比とから定めてもよい。
【0072】
CaOおよびMgOと同様にアルカリ土類金属酸化物であるSrOおよびBaOも、熔融性を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きを有する。ただし、SrOおよびBaOの添加により、化学的耐久性が低下しガラスの比重が増加し、原料コストが増加する傾向がある。そのため、CaOおよびMgOの合計含有量を、SrOおよびBaOの合計含有量よりも多くすることが好ましい。
SrOおよびBaOの合計含有量は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%、更に好ましくは0〜1%とする。SrOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、SrOを導入しないことが更に好ましい。BaOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、BaOを導入しないことが更に好ましい。
【0073】
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2は、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きをする。ただし、過剰導入により熔融性が悪化する。したがって、熔融性を維持しつつ、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる上から、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量を0%を超えて4%以下とする。前記合計含有量の好ましい下限は0.3%、より好ましい下限は0.5%、更に好ましい下限は0.7%であり、好ましい上限は3%、より好ましい上限は2%であり、更に好ましい上限は1.5%である。
【0074】
化学的耐久性、特に耐アルカリ性を一層向上させるには、熔融性を良化するが、化学的耐久性を低下させる傾向のあるアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の合計量と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量の関係を次の範囲にすることが望ましい。
すなわち、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3、およびTiO2の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))を0.035以上にすることが好ましく、0.040以上とすることがより好ましい。ただし、前記mol比が過大になると熔融性の低下および/またはガラス安定性の低下の傾向を示すので、前記mol比を0.18以下にすることが好ましく、0.15以下にすることがより好ましく、0.13以下にすることが更に好ましく、0.12以下にすることが一層好ましい。
【0075】
なお、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2のうち、TiO2を含むガラスは水に浸漬したときにガラス表面にガラスと水の反応生成物が付着することがあるため、耐水性に関しては他の成分のほうが有利である。したがって、耐水性を維持する上から、TiO2の含有量を0〜2%とすることが好ましく、0〜1%とすることがより好ましく、0〜0.5%とすることが更に好ましく、TiO2を導入しないことが特に好ましい。
【0076】
HfO2、Nb2O5、Ta2O5およびLa2O3は、ガラスの比重を増大させ、基板の重量を増加させるため、基板を軽量化する上から、HfO2、Nb2O5、Ta2O5およびLa2O3の合計含有量を0〜2%の範囲にすることが好ましく、0〜1%の範囲にすることがより好ましく、HfO2、Nb2O5、Ta2O5およびLa2O3を導入しないことが更に好ましい。HfO2、Nb2O5、Ta2O5およびLa2O3のそれぞれの好ましい含有量は、0〜2%、より好ましい含有量は0〜1%であり、HfO2、Nb2O5、Ta2O5およびLa2O3を導入しないことが更に好ましい。
【0077】
Y2O3はガラス安定性を維持しつつ、上記所望の効果を得る上から、その含有量を0〜2%の範囲にすることが好ましく、0〜1%の範囲にすることがより好ましい。Y2O3を導入しないことがさらに好ましい。
【0078】
ZrO2は、ガラス安定性を維持しつつ、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きが強く、剛性や靭性を高めるとともに、化学強化の効率を高める働きを有する。また、Y2O3に比べて原料コストが安いため、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対するZrO2の含有量のmol比(ZrO2/(ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2))を0.5〜1の範囲にすることが好ましく、0.8〜1の範囲にすることがより好ましく、0.9〜1の範囲にすることが更に好ましく、0.95〜1の範囲にすることが一層好ましく、1にすることが特に好ましい。
【0079】
ZrO2の含有量は、0.3%以上にすることが好ましく、0.5%以上にすることがより好ましく、0.7%以上にすることが更に好ましい。一方、熔融性、ガラス安定性を良好に維持する上から、ZrO2の含有量は4%以下にすることが好ましく、3%以下にすることがより好ましく、2%以下にすることが更に好ましく、1.5%以下にすることが一層好ましい。
【0080】
前述のガラス成分で、化学的耐久性を向上させる働きがあるものは、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2であり、化学的耐久性を低下させやすいものは、Li2O、Na2OおよびK2Oである。そこで、ガラスIでは、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量のmol比((Li2O+Na2O+K2O )/(SiO2+Al2O3+ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2))の上限を0.28以下に制限する。前記mol比の好ましい範囲は0.27以下、より好ましい範囲は0.26以下である。
【0081】
ガラスIには必要に応じてSb2O3、SnO2、CeO2など清澄剤を添加してもよいが、フロート法によりガラスを成形する場合は、Sb2O3の添加は好ましくなく、SnO2、CeO2の添加が好ましく、SnO2の添加がより好ましい。
【0082】
以上説明したガラスIの好ましい態様としては、mol%表示にて、SiO2を50〜75%、Al2O3を3〜15%、Li2Oを5〜15%、Na2Oを5〜15%、K2Oを0〜3%、CaOを0.5%を超えて5%以下、MgOを0%以上、3%未満、ZrO2を0.3〜4%含むガラスを挙げることができる。
【0083】
[ガラスII]
ガラスIIは、mol%表示にて、
SiO2を50〜75%、
Al2O3を3〜15%、
Li2Oを5〜15%、
Na2Oを5〜15%、
K2Oを0〜3%、
CaOを0.5%を超えて5%以下、
MgOを0%以上、3%未満、ただし、CaOの含有量がMgOの含有量よりも多い、
ZrO2を0.3〜4%、
含み、
SiO2、Al2O3およびZrO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量のmol比((Li2O+Na2O+K2O )/(SiO2+Al2O3+ZrO2))が0.28以下、
である、情報記録媒体用基板に供するためのガラスである。
ガラスIIによれば、耐酸性および耐アルカリ性がともに優れた情報記録媒体用基板を提供することができる。
以下、特記しない限り、ガラスIIの説明において、各成分の含有量、合計含有量はmol%により表示し、含有量同士の比率はmol比により表示するものとする。ガラスIIは、酸化物ガラスであり、各成分の含有量は酸化物に換算した値で示してある。
【0084】
SiO2はガラスのネットワーク形成成分であり、ガラス安定性、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させ、基板の熱拡散を低下させ、輻射による基板の加熱効率を高める働きをする必須成分である。ガラス安定性を良好にする上から、SiO2の含有量を50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは63%以上、一層好ましくは65%以上とする。ただし、SiO2を過剰に導入するとガラス中に未熔解物が生じるため、SiO2量を75%以下とするが、72%以下とすることが好ましく、70%以下とすることがより好ましい。未熔解物が存在するガラスを加工して基板を作製すると、未熔解物の一部が基板表面に露出し、突起を形成することがある。このような突起がある基板は、高い平滑性が求められる情報記録媒体用基板としては使用することができない。したがって、情報記録媒体用基板に使用するガラスにおける熔融性は、重要な特性となる。
【0085】
Al2O3もガラスのネットワーク形成に寄与し、ガラス安定性、化学的耐久性を向上させる働きをする。こうした効果を得るため、Al2O3の含有量は3%以上、好ましくは5%以上、更に好ましくは7%以上とする。ただし、Al2O3を過剰に導入するとガラスの熔融性が低下するため、Al2O3の含有量を15%以下にする。好ましくは12%以下である。
【0086】
ガラスIIでは、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させるために、SiO2とAl2O3の合計含有量を70%以上とすることが好ましく、74%以上とすることがより好ましく、75%以上とすることが更に好ましい。ガラスの熔融性を考慮し、SiO2とAl2O3の合計含有量を85%以下とすることが好ましく、80%以下とすることがより好ましい。
【0087】
Li2O、Na2OおよびK2Oは、熔融性および成形性を向上させるとともに、熱膨張係数を増加させて情報記録媒体用基板、特に磁気記録媒体用基板に好適な熱膨張特性を付与する上で有用な成分である。また、Li2OおよびNa2Oは、化学強化ガラスとして使用する場合は、化学強化時のイオン交換を担う成分となる。こうした効果を得る上から、Li2Oの含有量を5〜15%、Na2Oの含有量を5〜15%、K2Oの含有量を0〜3%とする。Li2Oの含有量の好ましい下限は6%、より好ましい下限は7%であり、好ましい上限は13%、より好ましい上限は10%である。Na2Oの含有量の好ましい下限は7%、より好ましい下限は10%であり、好ましい上限は13%である。
このようにLi2OおよびNa2Oをガラス成分として導入することにより混合アルカリ効果によるアルカリ金属成分の溶出低減、防止効果を得ることもできる。
【0088】
なお、Li2OおよびNa2Oを含むガラスを化学強化ガラスとして使用する場合、化学強化時のイオン交換に直接寄与するガラス成分はLi2OとNa2Oであり、熔融塩中、イオン交換に寄与するあるアルカリイオンはNaイオンおよび/またはKイオンである。化学強化処理する基板の枚数が増えるにつれて、熔融塩中のLiイオン濃度が増加するが、Na2O量に対するLi2O量のmol比(Li2O/Na2O)が1.04を超えるガラスを多量に処理すると、熔融塩中のLiイオン濃度の上昇が顕著になり、イオン交換に寄与するアルカリイオンとイオン交換に寄与しないアルカリイオンのバランスが処理開始時から大きく変化することになる。その結果、処理開始時に最適化した処理条件が処理枚数が多くなるにつれて最適範囲からずれてしまい、前述のように、基板によって形状にばらつきが生じ、基板の中心孔の内径寸法公差が大きくなる原因となり、しかも圧縮応力層の形成が不十分になったり、基板にうねりが生じるなどの問題も生じる場合がある。このような問題を解消するためにNa2O量に対するLi2O量のmol比(Li2O/Na2O)を1.04以下にすることが好ましく、0.936以下にすることがより好ましく、0.832以下にすることが更に好ましく、0.7904以下とすることが一層好ましい。
【0089】
K2Oは、上記のように熔融性を高め、熱膨張係数を大きくする働きがある任意成分である。K2O含有量は0〜3%とするが、好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%である。K2Oを少量導入すると多数の基板を化学強化する際、基板相互の圧縮応力層のばらつきを低減する効果があるので、上記範囲内で0.1%以上導入することが好ましく、0.2%以上導入することがより好ましい。
【0090】
アルカリ金属酸化物の量が過剰になると化学的耐久性、特に耐酸性が低下する傾向を示す。そこでガラスIIでは、化学的耐久性を向上させる観点から、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量の上限を、SiO2、Al2O3およびZrO2の合計含有量との関係で定める。その詳細は後述する。化学的耐久性を一層向上させる上から、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量を22%以下とすることが好ましく、21.5%以下にすることがより好ましく、21%以下にすることがさらに好ましく、20%以下にすることが一層好ましい。
【0091】
CaOおよびMgOは、熔融性、成形性およびガラス安定性を良化し、剛性および硬度を高め、熱膨張係数を大きくする働きをする。特に、CaOは熔融性、成形性およびガラス安定性を良化する働きに優れている。しかし、いずれの成分も過剰の導入により化学的耐久性が低下するため、CaOの含有量を0.5%を超え5%以下とする。CaO含有量の好ましい下限は0.8%、より好ましい下限は1%であり、好ましい上限は4%、より好ましい上限は3%である。
MgOの含有量は0%以上、3%未満であり、MgO含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%であり、更に好ましい下限は0.5である。好ましい上限は2.5%、より好ましくは2%である。
【0092】
ガラスIIでは、耐失透性を一層高め、化学的耐久性も高める上から、CaOの含有量をMgOの含有量より多くする。耐失透性を高めたり、化学的耐久性を高める上から、CaOの含有量に対するMgOの含有量のmol比(MgO/CaO)を0.14〜0.97の範囲にすることが好ましく、0.4〜0.97の範囲にすることがより好ましい。
なお、MgOの含有量は、CaOの含有量を定めた上で、上記好ましい範囲内でmol比(MgO/CaO)を定め、CaOの含有量と前記mol比とから定めてもよい。
【0093】
ガラスの熔融性、成形性、耐失透性を一層良化しつつ、化学的耐久性を向上させる上から、CaOとMgOの合計含有量を1〜6%とすることが好ましい。CaOとMgOの合計含有量の好ましい下限は1.5%、より好ましい下限は2%であり、好ましい上限は5.5%、より好ましい上限は5%、更に好ましい上限は4%である。なお、CaOおよびMgOには、化学強化時のイオン交換スピードを低下させる機能がある。したがって、これら成分を適量導入したガラスにより構成される基板を化学強化して、化学強化ガラス基板を量産する際、過剰な化学強化によって引き起こされる基板の内外径寸法公差の増大を抑制することができる。ただし、これら成分を過剰に導入すると、イオン交換スピードが大幅に低下し、化学強化による効果を得ることが難しくなる。CaOとMgOの合計含有量を上記範囲にすることによって、化学強化の効果を得つつ、基板の内外径寸法公差の増大を抑制することもできる。
【0094】
CaOおよびMgOと同様にアルカリ土類金属酸化物であるSrOおよびBaOも、熔融性を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きを有する。ただし、SrOおよびBaOの添加により、化学的耐久性が低下しガラスの比重が増加し、原料コストが増加する傾向がある。そのため、CaOおよびMgOの合計含有量を、SrOおよびBaOの合計含有量よりも多くすることが好ましい。
SrOおよびBaOの合計含有量は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%、更に好ましくは0〜1%とする。SrOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、SrOを導入しないことが更に好ましい。BaOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、BaOを導入しないことが更に好ましい。
【0095】
ZrO2は、ガラス安定性を維持しつつ、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きが強く、剛性や靭性を高めるとともに、化学強化の効率を高める働きを有する。ただし、過剰導入により熔融性が悪化する。したがって、熔融性を維持しつつ、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる上から、ZrO2の含有量を0.3〜4%とする。ZrO2の含有量の好ましい下限は0.5%、より好ましい下限は0.7%であり、好ましい上限は3%、より好ましい上限は2%であり、更に好ましい上限は1.5%である。
【0096】
前述のガラス成分で、化学的耐久性を向上させる働きがあるものは、SiO2、Al2O3、ZrO2であり、化学的耐久性を低下させやすいものは、Li2O、Na2OおよびK2Oである。そこでガラスIIでは、化学的耐久性を維持するために、SiO2、Al2O3およびZrO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量のmol比((Li2O+Na2O+K2O )/(SiO2+Al2O3+ZrO2))の上限を0.28以下にする。前記mol比の好ましい範囲は0.27以下、さらに好ましい範囲は0.26以下である。前記mol比の好ましい下限は0.1、より好ましい下限は0.15、更に好ましい下限は0.2である。
【0097】
ガラスIIには必要に応じてSb2O3、SnO2、CeO2など清澄剤を添加してもよいが、フロート法によりガラスを成形する場合は、Sb2O3の添加は好ましくなく、SnO2、CeO2の添加が好ましく、SnO2の添加がより好ましい。
【0098】
[ガラスIII]
ガラスIIIは、
SiO2と、Al2O3と、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
SiO2の含有量が50mol%以上、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が70mol%以上、
前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量が8mol%以上、
前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の前記合計含有量に対する前記酸化物の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上、
である、情報記録媒体用基板に供するためのガラスである。
ガラスIIIによれば、耐酸性および耐アルカリ性がともに優れた情報記録媒体用基板を提供することができる。
以下、特記しない限り、ガラスIIIの説明において、各成分の含有量、合計含有量はmol%により表示し、含有量同士の比率はmol比により表示するものとする。ガラスIIIは、酸化物ガラスであり、各成分の含有量は酸化物に換算した値で示してある。
【0099】
SiO2はガラスのネットワーク形成成分であり、ガラス安定性、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させ、基板の熱拡散を低下させ、輻射による基板の加熱効率を高める働きをする必須成分である。
Al2O3もガラスのネットワーク形成に寄与し、ガラス安定性、化学的耐久性を向上させる働きをする。
ガラスIIIでは、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させるために、SiO2とAl2O3の合計含有量を70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは76%以上とする。ガラスの熔融性を考慮すると、SiO2とAl2O3の合計含有量を85%以下とすることが好ましく、80%以下とすることがより好ましい。
【0100】
ガラス安定性を良好にする上から、SiO2の含有量を50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは63%以上、更に好ましくは65%以上とする。ただし、SiO2を過剰に導入するとガラス中に未熔解物が生じるため、SiO2量を75%以下とすることが好ましく、72%以下とすることがより好ましく、70%以下とすることが更に好ましい。未熔解物が存在するガラスを加工して基板を作製すると、未熔解物の一部が基板表面に露出し、突起を形成することがある。このような突起がある基板は、高い平滑性が求められる情報記録媒体用基板としては使用することができない。したがって、情報記録媒体用基板に使用するガラスにおける熔融性は、重要な特性となる。
【0101】
Al2O3の含有量の好ましい範囲は3%以上、より好ましい範囲は5%以上、更に好ましい範囲は7%以上である。ただし、Al2O3を過剰に導入するとガラスの熔融性が低下するため、Al2O3の含有量を15%以下にすることが好ましく、12%以下にすることがより好ましい。
【0102】
前述のように、ガラスIIIは、SiO2とAl2O3を合計量で比較的多く含有する。このようなガラスIIIの熔融性を高めるために、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物とMgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を合計で8%以上導入する。これらアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物はガラスの熔融性を向上させるとともに、熱膨張特性を情報記録媒体用基板に適した範囲にすることができる。しかし、アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の上記合計含有量が過剰となるとと化学的耐久性の低下傾向を示すため、化学的耐久性を維持するためには、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量を24%以下とすることが好ましい。熔融性を良化するとともに熱膨張係数を大きくする上から、前記合計含有量の好ましい範囲は10%以上、より好ましい範囲は15%以上、更に好ましい範囲は20%以上である。
【0103】
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2は、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きをする。ただし、過剰導入により熔融性が悪化する。そこで、ガラスIIIでは、化学的耐久性と熔融性を両立するために、上記酸化物の合計含有量を、熔融性を良化するが、化学的耐久性を低下させやすいアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の合計量との関係により定める。
すなわち、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、およびTiO2の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))を0.035以上とする。これにより、熔融性を維持しつつ、耐アルカリ性を向上させることができる。前記mol比の好ましい範囲は0.040以上である。前記mol比が過大になると熔融性が低下したり、ガラス安定性が低下する傾向を示すので、前記mol比を0.18以下にすることが好ましく、0.15以下にすることがより好ましく、0.13以下にすることが更に好ましく、0.12以下にすることが一層好ましい。
【0104】
化学的耐久性、特に耐アルカリ性を一層向上させる上から、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量を0.3%以上にすることが好ましく、0.5%以上にすることがより好ましく、0.7%以上にすることが更に好ましい。一方、熔融性、ガラス安定性を良好に維持する上からは、前記合計含有量を4%以下にすることが好ましく、3%以下にすることがより好ましく、2%以下にすることが更に好ましく、1.5%以下にすることが一層好ましい。
【0105】
ガラスIIIにおけるZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の含有量の詳細、ならびにZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対するZrO2の含有量のmol比(ZrO2/(ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2))については、先にガラスIについて述べた通りである。
【0106】
ガラスIIIの好ましい態様は、Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方を含有し、かつLi2OとNa2Oの合計含有量が24%以下であるガラスである。Li2OおよびNa2Oは熔融性をより向上させる成分である。また、ガラスIIIを化学強化する際、Li2OおよびNa2Oは重要な成分である。更に、熱膨張係数を高めて情報記録媒体用基板、特に磁気記録媒体用基板に好適な熱膨張特性を付与する働きも強い。
【0107】
混合アルカリ効果によるアルカリ金属成分の溶出低減ないしは防止効果を得る上から、Li2OおよびNa2Oをガラス成分として導入することが好ましい。ただし、Li2OおよびNa2Oを過剰に導入すると化学的耐久性が低下傾向を示すことから、Li2OとNa2Oの合計含有量を24%以下に制限することが好ましい。化学的耐久性をより一層向上させるとともに、ガラス基板からのアルカリ金属イオンの溶出を低減ないしは防止する上から、Li2OとNa2Oの合計含有量を22%以下に制限することが好ましい。
【0108】
ガラスIIIにおけるLi2OおよびNa2Oの含有量、Na2O量に対するLi2O量のmol比(Li2O/Na2O)、ならびにK2Oの含有量の詳細は、先にガラスIについて述べた通りである。
【0109】
MgOは熔融性、剛性および硬度を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きをする。また、CaOと共存させることによりガラスとしての安定性を高める効果もある。更に、化学強化時のイオン交換スピードを減少させる働きもするので、適量導入すればイオン交換スピードを平坦性が低下しないように制御することもできる。しかし、過剰の導入により、化学的耐久性が低下するため、その含有量を0%以上、5%未満とすることが好ましい。MgO含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%、更に好ましい下限は0.5%である。また、MgO含有量を3%未満にすることが好ましく、2%以下にすることがより好ましい。
【0110】
CaOは熔融性、剛性および硬度を向上させ、熱膨張係数を大きくし、適量導入することで耐失透性を良好にする働きをする。更に、MgOと同様、化学強化時のイオン交換スピードを制御する働きもする。しかし、過剰の導入により、化学的耐久性が低下するため、その含有量を0〜5%とすることが好ましい。CaO含有量のより好ましい下限は0.1%、更に好ましい下限は0.5%であり、より好ましい上限は4%、更に好ましい上限は3%である。
【0111】
ガラスIIIにおいても、ガラスIと同様、耐失透性を一層高め、化学的耐久性も高める上から、CaOの含有量をMgOの含有量より多くすることが好ましい。耐失透性を高めたり、化学的耐久性を高める上から、ガラスIIにおいてもガラスIと同様、CaOの含有量に対するMgOの含有量のmol比(MgO/CaO)を0.14〜0.97の範囲にすることが好ましく、0.4〜0.97の範囲にすることがより好ましい。
更に上記観点からMgOとCaOの合計含有量を1〜6%にすることが好ましい。MgOとCaOの合計含有量の好ましい下限は1.5%、より好ましい下限は2%、好ましい上限は5.5%、より好ましい上限は5%、更に好ましい上限は4%である。
【0112】
SrOおよびBaOも熔融性を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きを有する。ただし、SrOおよびBaOの添加により、化学的耐久性が低下し、ガラスの比重が増加し、原料コストが増加する傾向がある。そのため、SrOおよびBaOの合計含有量を好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%、更に好ましくは0〜1%とする。SrOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、SrOを導入しないことが更に好ましい。BaOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、BaOを導入しないことが更に好ましい。
【0113】
以上の観点を総合して、ガラスIIIのより好ましい態様は、mol表示にて、SiO2を60〜75%、Al2O3を3〜15%、ZrO2を0.3〜4%含むガラスであり、より好ましい態様は、上記組成を有し、更にZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3およびTiO2を合計で0.3〜4%含有するガラスであり、
更に好ましい態様は、前述のようにアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の各成分の量が配分されているガラスである。
なお、ガラスIIIには必要に応じてSb2O3、SnO2、CeO2など清澄剤を添加してもよいが、フロート法によりガラスを成形する場合は、Sb2O3の添加は好ましくなく、SnO2、CeO2の添加が好ましく、SnO2の添加がより好ましい。
【0114】
[ガラスIV]
ガラスIVは、
Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、 CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、 ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
Li2OとNa2Oの合計含有量が10〜22mol%、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量が0 mol%を超えて4 mol%以下、
前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対する前記酸化物の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.15以上、
である、情報記録媒体用基板に供するための化学強化用アルミノシリケートガラス、である。
ガラスIVは化学強化用ガラス、即ち化学強化が施されるガラスであり、化学強化に必要なLi2OおよびNa2Oの少なくとも一方、好ましくはLi2OおよびNa 2Oの両方を含むガラスであって、アルカリ金属イオンの溶出を低減、防止可能なアルミノシリケートガラスである。アルカリの溶出を低減ないしは防止するため、Li2OとNa2Oの合計含有量を制限した上で、熔融性を低下させないために、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を導入する。しかし、これらアルカリ土類金属酸化物は化学強化時のイオン交換を妨げる働きをする。また、化学強化によって抗折強度を向上させる上から、イオン交換の対象となるLi2OおよびNa2Oの合計含有量が制限されていることもマイナスに働く。そこでガラスIVでは、イオン交換を促進させるとともに、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きのあるZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3およびTiO2からなる群から選ばれる酸化物を少なくとも一種導入する。これにより、良好に化学強化することができるガラスを提供することができる。
以下、特記しない限り、ガラスIVの説明において、各成分の含有量、合計含有量はmol%により表示し、含有量同士の比率はmol比により表示するものとする。ガラスIVは、酸化物ガラスであり、各成分の含有量は酸化物に換算した値で示してある。
【0115】
Li2OおよびNa2Oは化学強化時のイオン交換に必要な成分であるとともに、ガラスの熔融性を良化し、熱膨張係数を情報記録媒体用基板、特に磁気記録媒体用基板に好適な範囲にする上で有効な成分でもある。
こうした効果を得るため、Li2OとNa2Oの合計含有量を10%以上とし、アルカリ金属イオンの溶出低減ないしは防止の観点から前記合計含有量を22%以下とする。Li2OとNa2Oの合計含有量の好ましい下限は15%であり、好ましい上限は21%である。更に、混合アルカリ効果によりアルカリ金属成分の溶出を低減、防止する上から、Li2OとNa2Oとをともに含有させることが好ましい。
【0116】
ガラスIVにおけるLi2OおよびNa2Oの含有量、Na2O量に対するLi2O量のmol比
(Li2O/Na2O)、ならびにK2Oの含有量の詳細は、先にガラスIについて述べた通りである。
【0117】
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2は、化学強化時のアルカリのイオン交換を促進させるとともに、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きをする。ただし、過剰の導入により熔融性が低下し、未熔解物が生じるおそれがある。前述のように、情報記録媒体用基板、特に磁気記録媒体用基板に用いるガラス中に未熔解物が含まれると、未熔解物が極めて微小であっても基板表面に未熔解物の一部が露出して突起を形成し、基板表面の平滑性を損なうおそれがある。したがって、ガラスIVでは、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量は0%を越え4%以下とする。前記合計含有量の好ましい上限は3%、より好ましい上限は2%、更に好ましい上限は1.5%、好ましい下限は0.3%、より好ましい下限は0.5%、更に好ましい下限は0.7%である。
【0118】
ガラスIVにおけるZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3および
TiO2の含有量の詳細、ならびにZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対するZrO2の含有量のmol比(ZrO2/(ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2))については、先にガラスIについて述べた通りである。
【0119】
ガラスIVは、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を一種以上を含む。これら成分は、熔融性を維持し、熱膨張係数を調整する働きをする反面、化学強化時のイオン交換を妨げる働きをする。そこで、ガラスIVでは、化学強化時のイオン交換を促進させるとともに、化学的耐久性を向上させる働きを備えるZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量とMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量のバランスをとることで、良好な化学強化を可能にする。具体的には、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3およびTiO2の合計含有量のモル比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(MgO+CaO+SrO+BaO))を0.015以上にする。
【0120】
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量の好ましい範囲は、0%を越え5%以下である。前記合計量が5%以下であれば化学強化を良好に行うことができ、基板の抗折強度を十分向上させることが可能となる。MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.5%、更に好ましい下限は1%、一層好ましい範囲は1.5%、より好ましい上限は4.5%、更に好ましい上限は4%である。
【0121】
SiO2はアルミノシリケートガラスであるガラスIVのネットワーク形成成分であり、
ガラス安定性、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させ、基板の熱拡散を低下させ、輻射による基板の加熱効率を高める働きをする必須成分である。
Al2O3もガラスのネットワーク形成に寄与し、ガラス安定性、化学的耐久性を向上させる働きをする。
ガラスIVでは、ガラス安定性を良好にしつつ、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させるために、SiO2とAl2O3の合計含有量を70%以上にすることが好ましい。耐酸性を一層向上させる上から、前記合計含有量を75%以上にすることが好ましく、76%以上とすることが更に好ましい。ガラスの熔融性を考慮すると、SiO2とAl2O3の合計含有量を85%以下とすることが好ましく、80%以下とすることがより好ましい。
【0122】
SiO2の含有量は、ガラス安定性を良好にする上から、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは62%以上、一層好ましくは65%以上とする。ただし、SiO2を過剰に導入するとガラス中に未熔解物が生じるため、SiO2量を75%以下とすることが好ましく、72%以下とすることがより好ましく、70%以下とすることが更に好ましい。未熔解物が存在するガラスを加工して基板を作製すると、未熔解物の一部が基板表面に露出し、突起を形成することがある。このような突起がある基板は、高い平滑性が求められる情報記録媒体用基板としては使用することができない。したがって、情報記録媒体用基板に使用するガラスにおける熔融性は、重要な特性となる。
【0123】
Al2O3の含有量の好ましい範囲は0%超、より好ましい範囲は3%以上、更に好ましい範囲は5%以上、一層好ましい範囲は7%以上である。ただし、Al2O3を過剰に導入するとガラスの熔融性が低下するため、Al2O3の含有量を15%以下にすることが好ましく、12%以下にすることがより好ましい。
【0124】
化学的耐久性、特に耐アルカリ性の良化と熔融性の維持を両立する上から、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))を0.035以上とすることが好ましい。前記mol比の好ましい範囲は0.040以上である。前記mol比が過大になると熔融性が低下したり、ガラス安定性が低下する傾向を示すので、前記mol比を0.18以下にすることが好ましく、0.15以下にすることがより好ましく、0.13以下にすることが更に好ましく、0.12以下にすることが一層好ましい。
【0125】
MgOは熔融性、剛性および硬度を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きをする。また、CaOと共存させることによりガラスとしての安定性を高める効果もある。しかし、過剰の導入により、化学的耐久性が低下するため、その含有量を0%以上5%未満とすることが好ましい。好ましくはMgO含有量を3%未満とし、より好ましは2%以下とする。MgO含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%、更に好ましい下限は0.5%である。
【0126】
CaOは熔融性、剛性および硬度を向上させ、熱膨張係数を大きくし、適量導入することで耐失透性を良好にする働きをする。しかし、過剰の導入により、化学的耐久性が低下するため、その含有量を0〜5%とすることが好ましい。CaO含有量のより好ましい下限は0.1%、更に好ましい下限は0.5%であり、より好ましい上限は4%、更に好ましい上限は3%である。
【0127】
SrOおよびBaOも熔融性を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きを有する。ただし、SrOおよびBaOの添加により、化学的耐久性が低下し、ガラスの比重が増加し、原料コストが増加する傾向がある。そのため、SrOおよびBaOの合計含有量を好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%、更に好ましくは0〜1%とする。SrOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、SrOを導入しないことが更に好ましい。BaOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、BaOを導入しないことが更に好ましい。
【0128】
以上の観点を総合して、ガラスIVのより好ましい態様は、mol表示にて、Al2O3を3%以上、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で8%以上、MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で0%を超え、5%以下、含むガラスであり、更に、前述のようにアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の各成分の量が配分されているガラスがより好ましい。
なお、ガラスIVには、必要に応じてSb2O3、SnO2、CeO2など清澄剤を添加してもよいが、フロート法によりガラスを成形する場合は、Sb2O3の添加は好ましくなく、SnO2、CeO2の添加が好ましく、SnO2の添加がより好ましい。
【0129】
[ガラスV]
ガラスVは、
SiO2と、Al2O3と、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
50℃に保たれた0.5Vol%のケイフッ酸(H2SiF)水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが3.0nm/分以下となる耐酸性と、
50℃に保たれた1質量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが0.1nm/分以下となる耐アルカリ性と、
を備える、情報記録媒体用基板に供するためのガラス、である。
ガラスVは優れた耐酸性と耐アルカリ性を同時に供えるため、ガラスVより基板を構成し、酸処理でガラス表面の汚れである有機物を除去した後、アルカリ処理で異物の付着を防止することにより、優れた平滑性を維持しつつ極めて清浄な状態の基板を得ることができる。
また、上記ガラスVは、50℃に保たれた0.5%(Vol%)のケイフッ酸(H2SiF)水溶
液に浸漬した場合のエッチングレートが3.0nm/分以下、より好ましくは2.5nm/分以下、さらに好ましくは2.0nm/分以下、特に好ましくは1.8nm/分以下となる耐酸性を有している。さらに上記ガラスVは、50℃に保たれた1質量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが0.1nm/分以下、より好ましくは0.09nm/分以下、さらに好ましくは0.08nm/分以下となる耐アルカリ性を有している。
本発明において、エッチングレートは、単位時間あたりに削られるガラス表面の深さで定義される。例えば、ガラス基板の場合は、単位時間あたりに削られるガラス基板の深さとなる。上記エッチングレートの測定方法については、特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、上記ガラスVを基板形状(平板状)に加工した後、エッチングされない部分を作るために上記ガラス基板の一部にマスク処理を施し、その状態のガラス基板を上記ケイフッ酸水溶液または水酸化カリウム水溶液に浸漬する。そして、単位時間浸漬した後、ガラス基板を上記各水溶液から引き上げ、マスク処理を施した部分と施していない部分との差分(エッチングの差)を求める。これにより、単位時間あたりのエッチング量(エッチングレート)が求められる。
以下、特記しない限り、ガラスVの説明において、各成分の含有量、合計含有量はmol%により表示し、含有量同士の比率はmol比により表示するものとする。ガラスVは、酸化物ガラスであり、各成分の含有量は酸化物に換算した値で示してある。
【0130】
ガラスVの好ましい態様は、アルミノシリケートガラスであり、SiO2の含有量が50%以上、SiO2とAl2O3の合計含有量が70%以上のガラスである。
SiO2はアルミノシリケートガラスである上記ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラス安定性、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させ、基板の熱拡散を低下させ、輻射による基板の加熱効率を高める働きをする必須成分である。
Al2O3もガラスのネットワーク形成に寄与し、ガラス安定性、化学的耐久性を向上させる働きをする。
上記ガラスでは、ガラス安定性を良好にしつつ、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させるために、SiO2とAl2O3の合計含有量を70%以上にすることが好ましい。耐酸性を一層向上させる上から、前記合計含有量を75%以上にすることが好ましく、76%以上とすることが更に好ましい。ガラスの熔融性を考慮すると、SiO2とAl2O3の合計含有量を85%以下とすることが好ましく、80%以下とすることがより好ましい。
【0131】
SiO2の含有量は、ガラス安定性を良好にするとともに、耐酸性を一層向上させる上から、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上、一層好ましくは63%以上、より一層好ましくは65%以上とする。ただし、SiO2を過剰に導入するとガラス中に未熔解物が生じるため、SiO2量を75%以下とすることが好ましく、72%以下とすることがより好ましく、70%以下とすることが更に好ましい。未熔解物が存在するガラスを加工して基板を作製すると、未熔解物の一部が基板表面に露出し、突起を形成することがある。このような突起がある基板は、高い平滑性が求められる情報記録媒体用基板としては使用することができない。したがって、情報記録媒体用基板に使用するガラスにおける熔融性は、重要な特性となる。
【0132】
ガラスVは、ガラス成分として、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物、ならびにZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物を含む。好ましくは、前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量が8mol%以上、前記アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対する前記酸化物(ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2)の合計含有量のモル比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上となる組成を有する。
【0133】
上記アルミノシリケートは、SiO2およびAl2O3を合計量で比較的多く含むため、熔融性を維持するためにLi2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物、およびMgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含む。アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物はともに熱膨張係数を大きくして情報記録媒体用基板、特に磁気記録媒体用基板に好適な範囲にするのに役立つ成分でもある。しかし、これら成分は化学的耐久性を低下させる作用を示すため、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きの強いZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物を導入する。しかし、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を過剰に導入すると、熔融性が低下したり、ガラス安定性が低下するため、アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とのバランスにより導入量を定めることが好ましい。具体的には、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、、Y2O3およびTiO2の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))を0.035以上とすることが好ましい。前記mol比のより好ましい範囲は0.040以上である。前記mol比が過大になると熔融性が低下したり、ガラス安定性が低下する傾向を示すので、前記mol比を0.18以下にすることが好ましく、0.15以下にすることがより好ましく、0.13以下にすることが更に好ましく、0.12以下にすることが一層好ましい。
【0134】
化学的耐久性、特に耐アルカリ性を一層向上させる上から、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量を0.3%以上にすることが好ましく、0.5%以上にすることがより好ましく、0.7%以上にすることが更に好ましい。一方、熔融性、ガラス安定性を良好に維持する上からは、前記合計含有量を4%以下にすることが好ましく、3%以下にすることがより好ましく、2%以下にすることが更に好ましく、1.5%以下にすることが一層好ましい。
【0135】
ガラスVにおけるZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の含有量の詳細、ならびにZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対するZrO2の含有量のmol比(ZrO2/(ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2))については、先にガラスIについて述べた通りである。
【0136】
ガラスV好ましい態様は、Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方を含有し、Li2OとNa2Oの合計含有量が24%以下、好ましくは22%以下に制限されているガラスである。Li2OおよびNa2Oは熔融性をより向上させる成分であり、ガラスVを化学強化する際にも、必要である。更に、熱膨張係数を高めて情報記録媒体用基板、特に磁気記録媒体用基板に好適な熱膨張特性を付与する働きも強い。
混合アルカリ効果によるアルカリ金属成分の溶出低減ないしは防止効果を得る上から、Li2OおよびNa2Oをガラス成分として導入することが好ましい。ただし、Li2OおよびNa2Oを過剰に導入すると化学的耐久性が低下傾向を示すことから、Li2OとNa2Oの合計含有量を24%以下に制限することが好ましく、22%以下に制限することがより好ましい。
また、化学的耐久性をより一層向上させるとともに、ガラス基板からのアルカリ金属イオンの溶出を低減ないしは防止する上から、Li2OとNa2Oの合計含有量を22%以下に制限することが好ましい。
【0137】
ガラスVにおけるLi2OおよびNa2Oの含有量、Na2O量に対するLi2O量のmol比(Li2O/Na2O)、ならびにK2Oの含有量の詳細は、先にガラスIについて述べた通りである。
【0138】
MgOは熔融性、剛性および硬度を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きをする。また、CaOと共存させることによりガラスとしての安定性を高める効果もある。更に、化学強化時のイオン交換スピードを減少させる働きもするので、適量導入すればイオン交換スピードを平坦性が低下しないように制御することもできる。しかし、過剰の導入により、化学的耐久性が低下するため、その含有量を0%以上、5%未満とすることが好ましい。好ましくはMgO含有量は3%未満、より好ましい上限は2%であり、好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%、更に好ましい下限は0.5%である。
【0139】
CaOは熔融性、剛性、硬度を向上させ、熱膨張係数を大きくし、適量導入することで耐失透性を良好にする働きをする。更に、MgOと同様、化学強化時のイオン交換スピードを制御する働きもする。しかし、過剰の導入により、化学的耐久性が低下するため、その含有量を0〜5%とすることが好ましい。CaO含有量のより好ましい下限は0.1%、更に好ましい下限は0.5%であり、より好ましい上限は4%、更に好ましい上限は3%である。
【0140】
SrOおよびBaOも熔融性を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きを有する。ただし、SrOおよびBaOの添加により、化学的耐久性が低下し、ガラスの比重が増加し、原料コストが増加する傾向がある。そのため、SrOおよびBaOの合計含有量を好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%、更に好ましくは0〜1%とする。SrOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、SrOを導入しないことが更に好ましい。BaOの含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%であり、BaOを導入しないことが更に好ましい。
【0141】
以上の観点を総合して、ガラスIVより好ましい態様は、mol表示にて、
SiO2を60〜75%、
Al2O3を3〜15%、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計で0.3〜4%、含有するガラスであり、更に、前述のようにアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の各成分の量が配分されているガラスがより好ましい。
なお、ガラスVは、必要に応じてSb2O3、SnO2、CeO2など清澄剤を添加してもよいが、フロート法によりガラスを成形する場合は、Sb2O3の添加は好ましくなく、SnO2、CeO2の添加が好ましく、SnO2の添加がより好ましい。
【0142】
[ガラスVI、VII]
ガラスVIは、質量%表示にて、
SiO2を57〜75%、
Al2O3を5〜20%、ただし、SiO2とAl2O3の合計量が74%以上、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計で0%を超え、6%以下、
Li2Oを1%を超え、9%以下、
Na2Oを5〜18%、ただし、質量比Li2O/Na2Oが0.5以下、
K2Oを0〜6%、
MgOを0〜4%、
CaOを0%を超え、5%以下、ただし、MgOとCaOの合計量は5%以下であり、かつCaOの含有量はMgOの含有量よりも多く、
SrOおよびBaOを合計で0〜3%、
含む、情報記録媒体用基板に供するためのガラス、である。
ガラスVIIは、質量%表示にて、
SiO2を57〜75%
Al2O3を5〜20%、ただし、SiO2とAl2O3の合計量が74%以上、
ZrO2を0%を超え、5.5%以下
Li2Oを1%を超え、9%以下
Na2Oを5〜18%、ただし、質量比Li2O/Na2Oが0.5以下、
K2Oを0〜6%、
MgOを0〜4%、
CaOを0%を超え、5%以下、ただし、MgOとCaOの合計量は5%以下であり、かつCaOの含有量はMgOの含有量よりも多く、
SrOおよびBaOを合計で0〜3%、
TiO2を0〜1%、
含む、情報記録媒体用基板に供するためのガラス、である。
ガラスVIおよびVIIによれば、化学的耐久性が高く、洗浄後も優れた表面平滑性を有する情報記録媒体用基板を作製することができる。
ガラスVIは、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計含有量で規定し、ガラスVIIは、ZrO2とTiO2の含有量をそれぞれ別個に規定するが、その他に点については共通するので、以下に、ガラスVIおよびVIIの組成について併せて詳説する。ガラスVI、VIIはともに酸化物ガラスであり、各成分の含有量は酸化物に換算した値で示してある。特記しない限り、ガラスVI、VIIにおいて、ガラス成分の含有量、前記含有量の合計量は質量%にて表示するとともに、含有量の比については質量比にて表示するものとする。
【0143】
SiO2はガラスのネットワーク形成成分であり、ガラス安定性、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させ、基板の熱拡散を低下させ、輻射による基板の加熱効率を高める働きをする必須成分である。その含有量が57%未満では上記効果が得にくくなり、上記の目的を達成することが困難になる。一方、75%を超えると熔融性が低下し、ガラス中に未熔解物が生じる。したがって、SiO2の含有量を57〜75%、好ましくは63〜70%、より好ましくは63〜68%とする。
【0144】
Al2O3もガラスのネットワーク形成に寄与し、ガラス安定性、化学的耐久性を向上させる働きをする。その含有量が5%未満では上記効果を得にくくなり、20%を超えると熔融性が低下し、ガラス中に未熔解物が生じる。したがって、Al2O3の含有量を5〜20%、好ましくは7〜20%、より好ましくは11〜20%、更に好ましくは12〜20%、一層好ましくは13〜20%、より一層好ましくは13〜18%、なおいっそう好ましくは13〜16%とする。
【0145】
SiO2とAl2O3は相互に置換可能であるが、ガラス安定性と化学的耐久性を良好に維持する上からSiO2とAl2O3の合計含有量を74%以上とする。前記合計量の好ましい範囲は76%以上、より好ましい範囲は78%以上、更に好ましい範囲は79%を超える範囲であり、一層好ましくは80%以上である。
【0146】
ガラスVIにおいて、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2は、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させ、剛性や靭性を高める成分である。そのため、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量を0%超とする。しかし、上記合計含有量が6%を越えると、ガラス安定性が低下したり、熔融性が低下したり、比重が増大するため、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量を0%を超え6%以下とする。前記合計含有量の好ましい範囲は5.5%以下、より好ましい範囲は4%以下、更に好ましい範囲は3%以下である。前記含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.2%、更に好ましい下限は0.5%、一層好ましい下限は1%、より一層好ましい下限は1.4%である。
【0147】
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3、TiO2のうち、TiO2を含むガラスは水に浸漬したときにガラス表面にガラスと水の反応生成物が付着することがあるため、耐水性に関しては他の成分のほうが有利である。したがって、耐水性を維持する上からTiO2の含有量を0〜1%とすることが好ましく、0〜0.5%とすることがより好ましく、TiO2を導入しないことが更に好ましい。
【0148】
HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3はガラスの比重を増大させ、基板の重量を増加させるため、基板を軽量化する上からHfO2、Nb2O5、Ta2O5およびLa2O3の合計含有量を0〜3%の範囲にすることが好ましく、0〜2%の範囲にすることがより好ましく、0〜1%の範囲にすることが更に好ましく、導入しないことが一層好ましい。HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3のそれぞれの好ましい含有量は0〜3%、より好ましい含有量は0〜2%、更に好ましく0〜1%、導入しないことが特に好ましい。
【0149】
Y2O3はガラス安定性を維持しつつ、上記所望の効果を得る上から、その含有量を0〜2%の範囲にすることが好ましく、0〜1%の範囲にすることがより好ましい。Y2O3を導入しないことがさらに好ましい。
【0150】
ZrO2は、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きが強く、剛性や靭性を高めるとともに、化学強化の効率を高める働きを有する。また、Y2O3に比べて原料コストを安いため、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量に対するZrO2の含有量の質量比を0.8〜1の範囲にすることが好ましく、0.9〜1の範囲にすることがより好ましく、0.95〜1にすることが更に好ましく、1にすることが一層好ましい。
【0151】
ガラスVIIでは、ZrO2は微量でも導入することにより、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させ、剛性や靭性を高めるとともに、化学強化の効率を高める働きを有する必須成分である。しかし、薄肉化された基板でZrO2を多く導入しすぎると化学強化の効率が高くなりすぎ、過剰な圧縮応力層が形成され、基板のうねりが生じやすくなる。したがって、ZrO2の含有量を0%を超え、5.5%以下とする。ZrO2含有量の好ましい範囲は0.1〜5.5%である。ZrO2含有量の好ましい下限は0.2%、より好ましい下限は0.5%、更に好ましい下限は1%、一層好ましい下限は1.4%であり、好ましい上限は5%、より好ましい上限は4%、更に好ましい上限は3%である。
【0152】
Li2O、Na2O、K2Oといったアルカリ金属酸化物は、ガラスの熔融性を高めるとともに、熱膨張係数を高めて情報記録媒体用基板、特に磁気記録媒体用基板に好適な熱膨張特性を付与する働きをする。ガラスVIおよびVIIでは、上記アルカリ金属酸化物のうち、Li2OおよびNa2Oが必須成分、K2Oは任意成分である。
【0153】
Li2Oは前記働きに加え、化学強化時のイオン交換に寄与する成分であり、1%より多く導入する。しかし、過剰の導入によって化学的耐久性が低下するので、その含有量を1%を超え9%以下とする。Li2O含有量の好ましい下限は1.5%、より好ましい下限は2%であり、好ましい上限は7%、より好ましい上限5%、更に好ましい上限は4.5%、一層好ましい上限は4.0%である。
【0154】
Na2Oも前記働きに加え、化学強化時のイオン交換に寄与する成分であり、5%以上導入する。しかし18%を超えて導入すると化学的耐久性が低下するので、その含有量を5〜18%とする。Na2O含有量の好ましい下限は6%、より好ましい下限は7%、更に好ましい下限は8%、一層好ましい下限は9%であり、好ましい上限は17%、より好ましい上限は16%、更に好ましい上限は15%である。
【0155】
ただし、Na2O量に対するLi2O量の割合(Li2O/Na2O)を0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.38以下とする。化学強化時のイオン交換に直接寄与するガラス成分はLi2OとNa2Oであり、熔融塩中、イオン交換に寄与するアルカリイオンはNaイオンおよび/またはKイオンである。化学強化処理する基板の枚数が増えるにつれて、熔融塩中のLiイオン濃度が増加するが、(Li2O/Na2O)が0.5を超えるガラスを多量に処理すると、、熔融塩中のLiイオン濃度の上昇が顕著になり、イオン交換に寄与するアルカリイオンとイオン交換に寄与しないアルカリイオンのバランスが処理開始時から大きく変化することになる。その結果、処理開始時に最適化した処理条件が処理枚数が多くなるにつれて最適範囲からずれてしまい、前述のように、基板によって形状にばらつきが生じ、中心孔の内径寸法公差が大きくなる原因となり、しかも圧縮応力層の形成が不十分になったり、基板にうねりが生じるなどの問題も生じる。このような問題を解消するためにLi2O/Na2Oを上記範囲に設定する。なお、混合アルカリ効果によりアルカリ金属成分の溶出を低減ないしは防止する上から、Li2OおよびNa2Oをともに含むガラスが好ましい。
【0156】
K2Oにも前記アルカリ金属酸化物としての働きがあるが、6%を超えて導入すると化学的耐久性が低下するため、その含有量を0〜6%、好ましくは0〜3%、より好ましくは0〜2%、更に好ましくは0〜1%、一層好ましくは0.1〜0.9%とする。なお、K2Oを少量導入すると多数の基板を化学強化する際、基板相互の圧縮応力層のばらつきを低減する効果がある。
【0157】
基板からのアルカリ金属成分の溶出を低減するとともに、化学的耐久性を一層向上させる上から、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量を24mol%以下にすることが好ましく、22mol%以下にすることがより好ましい。
【0158】
MgOは熔融性、剛性、硬度を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きをする。また、CaOと共存させることによりガラスとしての安定性を高める効果もある。更に、化学強化時のイオン交換スピードを減少させる働きもするので、適量導入すればイオン交換スピードを平坦性が低下しないように制御することもできる。しかし、4%を超えて導入すると、化学的耐久性が低下するため、その含有量を0〜4%とする。MgO含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.2%であり、好ましい上限は3.5%である。
【0159】
CaOは熔融性、剛性、硬度を向上させ、熱膨張係数を大きくし、適量導入することで耐失透性を良好にする働きをする。更に、MgOと同様、化学強化時のイオン交換スピードを制御する働きもする。しかし、5%を超えて導入すると、化学的耐久性が低下するため、その含有量を0%を超え、5%以下とする。CaO含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%、更に好ましい下限は0.5%、一層好ましい下限は1%であり、好ましい上限は4%、より好ましい上限は3.5%である。
【0160】
また、MgOとCaOの合計量が5%を超えると化学的耐久性が低下するので、MgOとCaOの合計量を5%以下、好ましくは4.5%以下、より好ましくは4%以下とする。更に、耐失透性を良好にするために、CaOの含有量をMgOの含有量よりも多くする。化学的耐久性をより高める上からは、MgOおよびCaOをガラス成分として共存させることが好ましい。そして、CaO量に対するMgO量の割合(MgO/CaO)を0.1〜0.9、より好ましくは0.3〜0.7とすることにより、より一層化学的耐久性を高めることができ、ガラス安定性を高めることもできる。
【0161】
SrO、BaOも熔融性を向上させ、熱膨張係数を大きくする働きを有するが、化学的耐久性を低下させ、ガラスの比重が増加し、原料コストも増加するので、SrO、BaOの合計含有量を0〜3%、好ましくは0〜2%、より好ましくは0〜1%とする。SrOを導入しないことが更に好ましい。BaOについても導入しないことが更に好ましい。
【0162】
ガラスVIIにおいて、TiO2は剛性を高める働きをするが、過剰の導入により耐水性が低下するので、その含有量を0〜1%、好ましくは0〜0.5%、より好ましくは導入しない。ガラスVIにおいてのTiO2含有量は前述のとおりである。
【0163】
ZnOも熔融性を向上させるなどアルカリ土類金属酸化物と同様の働きをするが、過剰導入により耐失透性が低下する。また、揮発性があり、ガラス熔融時に耐火物を侵蝕することがあるので、その含有量は、例えば1%未満、好ましくは0〜0.9%、より好ましくは0〜0.5%とし、導入しないことが更に好ましい。
【0164】
B2O3は熔融性を向上させる働きをするが、揮発性があり、ガラス熔融時に耐火物を侵蝕することがあるので、その含有量は、例えば2%未満、好ましくは0〜1.5%、より好ましくは0〜1%、更に好ましくは0〜0.4%とし、導入しないことがより好ましい。
【0165】
ガラスVIにおいて、剛性を高め、化学的耐久性を向上させるため、Gd、Yb、Er、Nd、Dy、Ho、Tm、Tb、Pm、Prを導入することができる。但し、過剰に導入すると耐失透性が低下したり、比重や原料コストも増加するため、その合計含有量は、例えば2%未満、好ましくは0〜1.8%、より好ましくは0〜1.5%、更に好ましくは0〜1%、一層好ましくは0〜0.8%とする。より一層好ましくは導入しない。
【0166】
Ln2O3はランタノイド金属酸化物であり、ガラスVIIにおけるその含有量はガラス中に含まれるランタノイド金属酸化物の合計量とする。Ln2O3は剛性を高め、化学的耐久性を高める働きをするので、剛性を高め、化学的耐久性を向上させる目的で導入してもよい。Lnとしては、La、Gd、Y、Yb、Er、Nd、Dy、Ho、Tm、Tb、Pm、Prを挙げることができる。但し、過剰に導入すると耐失透性が低下したり、比重や原料コストも増加するため、その含有量は、例えば2%未満、好ましくは0〜1.8%、より好ましくは0〜1.5%、更に好ましくは0〜1%、一層好ましくは0〜0.8%とする。より一層好ましくは導入しない。
【0167】
Sb2O3、As2O3、SnO2、CeO2を清澄剤として導入してもよい。ただし、As2O3は環境への負荷がかかることから、特にフロート法を経て基板を製造する場合には使用しないことが望ましい。
【0168】
Sb2O3はAs2O3同様、フロート法を経て基板を製造する場合には使用を避けるべきである。しかし、プレス成形やキャスト成形によって基板の母材となるガラス成形品を作製する場合には効果的な清澄剤として使用することができる。その添加量は、例えば0〜1%、好ましくは0〜0.7%とする。
【0169】
SnO2、CeO2はSb2O3、As2O3と異なりフロート法を経て基板を製造する場合にも使用可能である。その添加量は、例えば0〜1.0%、好ましくは0〜0.7%である。
【0170】
ガラスVIIにおいて、Al2O3とZrO2の含有量については、以下の点を配慮することが好ましい。ガラスVII中の成分を大別すると、SiO2、Al2O3、ZrO2、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、その他に分けることができる。SiO2は、化学的耐久性の向上、基板の加熱効率アップに必要な量を割り当てる必要がある。アルカリ金属酸化物については膨張係数の調整、熔融性の向上、化学強化のために、またアルカリ土類金属酸化物については、膨張係数の調整、熔融性の向上、化学強化の進むスピードの制御のためにそれぞれ必要量を割り当てる。残りのAl2O3とZrO2については、耐アルカリ性を向上させるとともに、耐失透性も向上させる上から、ZrO2含有量に対するAl2O3含有量の割合(Al2O3/ZrO2)を160以下にすることが好ましく、100以下にすることがより好ましく、50以下にすることが更に好ましく、20以下にすることが一層好ましい。
【0171】
ガラスI〜VIIのSiO2を含有する態様は、SiO2の含有量を所定以上にすることにより、ガラスの熱拡散を低下させることができる。磁気記録媒体などの情報記録基板では真空チャンバ内で基板上に情報記録層を含む膜をスパッタリングにより形成する。そのため基板の加熱は輻射により行うことが好ましい。熱拡散の小さいガラスから基板を構成すれば赤外線を吸収し、発熱した基板から熱が拡散しにくくなるので加熱効率を高めることができる。
また、枚葉式成膜装置では、多数の基板を同期しながら順次次の工程へ移送して成膜するので、加熱ポジションで加熱効率が低いと、この工程が全工程のスループットを低下させてしまう。そのため、基板の加熱効率を高めることは高い生産性のもとで情報記録媒体を製造する上でも好ましい。
【0172】
ガラスI〜VIIにおいて、基板の熱拡散を低減するだけでなく、赤外線を吸収する添加物をガラスに導入してガラスの赤外線吸収を高めることも有効である。このような赤外線吸収添加剤としては、Fe、Cu、Co、Yb、Mn、Nd、Pr、V、Cr、Ni、Mo、Ho、Er、水分を例示できる。Fe、Cu、Co、Yb、Mn、Nd、Pr、V、Cr、Ni、Mo、Ho、Erはガラス中でイオンとして存在するが、これらイオンが還元されるとガラス中または表面に析出し、基板表面の平滑性を損なうおそれがあるので、その含有量は合計で0〜1%に抑えるべきであり、0〜0.5%にすることが好ましく、0〜0.2%にすることがより好ましい。Feの導入量は、Fe2O3に換算して、1%以下にすることが好ましく、0.5%以下にすることがより好ましく、0.2%以下にすることが更に好ましく、0.1%以下とすることが一層好ましく、0.05%以下とすることがより一層好ましい。好ましい下限量は0.01%、より好ましい下限量は0.03%である。特に好ましい範囲は0.03〜0.02%である。上記添加剤を使用する場合、赤外線吸収が大きいFeを導入することが望ましい。いずれにしてもこれら添加剤は微量の導入で効果が得られるため、これら添加剤を不純物として含むガラス原料、例えばシリカ原料を使用してもよい。ただし、不純物であってもその量は一定であることが求められるから、原料の選定にあたっては前記の点に留意すべきである。なお、Feはガラスの熔融容器の一部や攪拌棒、ガラスを流すための管を構成する白金または白金合金と合金化して前記容器、攪拌棒、管にダメージを与えるので、これら器具を使用する場合は、Feの添加量を抑えることが好ましい。こうした場合、Fe2O3を導入しないことがより好ましい。
【0173】
PbOは環境への負荷が大きく、ガラスの比重を増加させるので導入しないことが望ましい。
【0174】
上記ガラスVIおよびVIIは、基本的にガラス成分としてSiO2、Al2O3、ZrO2、Li2O、Na2O、K2O、MgOおよびCaO、必要に応じて清澄剤を加えたもので構成することができる。前記成分以外のものを加えることにより、比重が増加したり、原料コストが上昇するなどして、最適なガラスから外れる傾向を示すことから、SiO2、Al2O3、ZrO2、Li2O、Na2O、K2O、MgOおよびCaOの合計含有量を99%以上とすることが好ましく、本質的に前記成分からなることがより好ましい。
【0175】
前記ガラスI〜VIIの製造方法について説明する。まず、所要の組成が得られるよう、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物などのガラス原料を秤量、混合し、調合原料とする。この原料を耐火物炉内で加熱し、例えば1400〜1600℃の温度で熔融し、清澄、均質化する。このようにして泡や未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作り、流出し、所定形状に成形することにより、前記ガラスを得ることができる。
【0176】
更に本発明は、本発明の情報記録媒体基板用ガラスに化学強化処理を施すことにより得られた情報記録媒体用基板に供するための化学強化ガラスに関する。
上記化学強化ガラスは、先に説明した本発明の情報記録媒体基板用ガラスの特徴を有する。しかも、先に説明したように、本発明の情報記録媒体基板用ガラスによれば、化学強化処理により基板によって形状にばらつきが生じ、基板の中心孔の内径寸法公差が大きくなるという問題を回避することができる。よって、本発明の情報記録媒体基板用ガラスを化学強化処理することにより得られる化学強化ガラスは、中心孔の内径寸法公差が小さく、高記録密度化された情報記録媒体用基板として好適である。その上、化学強化処理を施し化学強化層を備えることにより情報記録媒体の製造、出荷過程で基板の破損防止に有効であるばかりでなく、装置に組み込んだ後の信頼性も向上させることができる。
【0177】
ガラスI〜VIIの化学強化は、例えばディスク形状に加工したガラスをアルカリ熔融塩に浸漬することにより行う。熔融塩としては硝酸ナトリウム熔融塩、硝酸カリウム熔融塩、または前記2種の熔融塩を混合したものを使用することができる。なお、化学強化処理とは、化学強化処理液(熔融塩)にガラス基板を接触させることにより、ガラス基板中に含まれる一部のイオンを、該化学強化処理液中に含まれている上記イオンよりも大きなイオンに置換して該ガラス基板を化学強化することである。ガラスを熔融塩に浸漬するとガラス表面近傍のLiイオンが熔融塩中のNaイオン、Kイオンと、ガラス表面近傍のNaイオンが熔融塩中のKイオンとそれぞれイオン交換し、基板表面に圧縮応力層が形成される。なお、化学強化時の熔融塩温度はガラスの歪点より高温かつガラス転移温度よりも低温で、熔融塩が熱分解しない温度範囲とすることが好ましい。熔融塩は繰り返し使用するため、次第に熔融塩中の各アルカリイオン濃度が変化するとともに、Li、Na以外のガラス成分も微量ながら溶け出す。その結果、前述のように処理条件が最適範囲からずれる。このような熔融塩の経時変化による化学強化のばらつきは前述のように基板を構成するガラスの組成を調整することによって低減できるが、その上で熔融塩中のKイオンの濃度を高く設定することによっても、上記ばらつきを低減することができる。なお、化学強化処理が施されていることは、ガラスの断面(処理層を切る面)をバビネ法により観察して確認する方法、ガラス表面からアルカリイオン(例えばLi+、Na+、K+)の深さ方向の分布を測定する方法等によって確認することができる。
【0178】
更に、本発明は前記ガラスI〜VIIのいずれかによって構成される情報記録媒体用ガラス基板に関する。
本発明の情報記録媒体用ガラス基板は、前述のように化学的耐久性に優れたガラスI〜VIIからなるものであるため、異物除去のため洗浄を行った後にも高い表面平滑性を維持することができる。更に、本発明の情報記録媒体用ガラス基板は、化学強化処理後も基板による形状のばらつきが少ないため、中心孔の内径寸法公差を小さくすることが可能であり、高記録密度化された情報記録媒体用基板として好適である。本発明によれば、例えば現在の内径寸法公差規格(±0.025mm以内)を満たす情報記録媒体を得ることができ、更には内径寸法公差±0.010mm以内という、より厳しいスペックに対応し得る情報記録媒体を得ることも可能である。
また、例えばガラスVのようにアルカリ金属成分の溶出が少ないガラスによれば、化学強化によるアルカリ溶出が少なく、耐衝撃性に優れた基板を得ることができる。
【0179】
情報記録媒体用基板の耐衝撃性の指標としては、一般に抗折強度が用いられている。本発明の情報記録媒体基板用ガラスによれば、例えば10kg以上、好ましくは15kg以上、更には20kg以上の抗折強度を有する情報記録媒体用ガラス基板を得ることができる。抗折強度は、図2に示すようにホルダー上に配置した基板の中心孔に鋼球を載せ、ロードセルによって荷重を加えていき、基板が破壊したときの荷重値として求めることができる。測定は、例えば抗折強度測定試験機(島津オートグラフDDS-2000)を用いて行うことができる。
【0180】
情報記録媒体には記録再生方式により、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体などがある。この中で高度な平坦性、平滑性が求められる磁気記録媒体用基板として、本発明の基板は特に好適である。磁気記録媒体は磁気ディスク、ハードディスクなどと呼ばれ、ディスクトップパソコン、サーバ用コンピュータ、ノート型パソコン、モバイル型パソコンなどの内部記憶装置(固定ディスクなど)、画像および/または音声を記録再生する携帯記録再生装置の内部記憶装置、車載オーディオの記録再生装置などに好適である。
【0181】
本発明の基板は、例えば厚みが1.5mm以下、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは1mm以下であり、下限は好ましくは0.3mmである。このように薄肉化された基板は化学強化によりうねりを生じやすいが、本発明のガラス、特にガラスVI、VIIは各成分のバランスによって化学強化によるうねりを生じにくい範囲に調整されているので、化学強化処理後であっても平坦性の優れた薄肉基板を得ることができる。また、本発明の基板は、円盤状(ディスク状)であって、中心部に開口(中心孔)を有するものであることができる。本発明のガラスによれば、化学強化処理後の基板による形状のばらつきを低減できるため、中心孔の内径寸法公差が小さいディスク状基板を量産することができる。
【0182】
更に本発明は、本発明の情報記録媒体基板用ガラスを鏡面研磨する工程と、鏡面研磨した後に酸洗浄およびアルカリ洗浄を施す洗浄工程を含む、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法に関する。前記製造方法は、本発明の基板の製造方法として好適である。以下に、その具体的態様を説明する。
まず、耐熱性の金型に熔融ガラスを鋳込んで円柱状のガラスを成形し、アニールした後に側面をセンターレス加工などによって研削し、次いで所定の厚さでスライスして薄肉円盤状の基板ブランクを作製する。
または、流出する熔融ガラスを切断し、所要の熔融ガラス塊を得て、これをプレス成形型でプレス成形して薄肉円盤状の基板ブランクを作製する。
更には、熔融ガラスをフロートバスに流出してシート状に成形し、アニールした後に円盤状の基板ブランクをくり貫いて基板ブランクを作製する。
このようにして作製した基板ブランクに中心孔を設けたり、内外周加工、ラッピング、ポリッシングを施して、ディスク状基板に仕上げる。その後、基板を酸、アルカリなどの洗剤を使用して洗浄し、すすいだ後、乾燥させてから、必要に応じて前述の化学強化を施す。また、化学強化処理は、鏡面研磨加工工程後かつ洗浄工程前に行うことも可能である。
このように一連の工程で基板は酸、アルカリ、水に晒されるが、本発明の情報記録媒体基板用ガラスは優れた耐酸性、耐アルカリ性、耐水性を有するため、基板表面が荒れることなく、平坦かつ平滑な表面を有する基板を得ることができる。以下に、平滑性を向上させるとともに、付着物が少ない基板ができることについて詳細に説明する。
【0183】
情報記録媒体用ガラス基板(磁気ディスク用ガラス基板)は、上記したように、ラッピングおよびポリッシングが施されることにより、情報を記録するための面である基板表面(主表面)の表面形状が形成される。しかしながら、例えば、ポリッシングのうち、仕上げ研磨(鏡面研磨加工)を施した直後の上記主表面には、研磨砥粒や付着物が存在している。これらを除去するためには、鏡面研磨加工を施した後で、上記主表面を洗浄する必要がある。また、例えば、鏡面研磨加工を施した後で、化学強化処理を施す場合には、当該化学強化処理によって、主表面の表面形状が変わってしまい、また、強化塩が上記主表面上に付着しているため、洗浄を行う必要がある。この洗浄としては、酸洗浄および/またはアルカリ洗浄が挙げられ、この両者を行うことが多い。このとき、情報記録媒体用ガラス基板が耐酸性および耐アルカリ性が悪いと、洗浄によって基板表面が荒れてしまう。一方、洗浄による基板表面の荒れを防ぐために洗剤を弱くした場合には、基板表面に付着している研磨砥粒や付着物、強化塩等が十分に除去できない。従って、研磨砥粒を含む付着物を少なくし、かつ、基板表面の平滑性を向上させるためには、上記情報記録媒体用ガラス基板に、十分な耐酸性および耐アルカリ性が求められる。
【0184】
近年、記録密度の高密度化が進行しており、例えば、記録密度130Gbit/inch2以上、より好ましくは200Gbit/inch2以上、といった高記録密度の情報記録媒体が求められている。高密度記録化のためには、情報記録媒体に対する記録再生ヘッドの浮上量を小さくすることが有効である。このためには、情報記録媒体用基板として、表面平滑性の高い基板を使用することが好ましい。例えば、記録密度が130Gbit/inch2以上の情報記録媒体を製造するためには、情報記録媒体用ガラス基板の主表面の表面粗さ(Ra)は、0.25nm以下であることが好ましく、0.2nm以下であることがより好ましく、0.15nm以下であることがさらに好ましい。上記表面粗さを実現することで、記録再生ヘッドの情報記録媒体に対する浮上量をより小さくすることできるので高記録密度を実現できる。なお、本発明において「主表面」とは、情報記録層が設けられる面または設けられている面である。こうした面は、情報記録媒体の表面のうち、最も面積の広い面であることから、主表面と呼ばれ、ディスク状の情報記録媒体の場合、ディスクの円形状の表面(中心穴がある場合は中心穴を除く。)に相当する。
【0185】
上記鏡面研磨加工において使用される研磨砥粒としては、情報記録媒体用ガラス基板の主表面を例えば、粗さRaが0.25nm以下を達成できるようなものであれば特に限定されるものではないが、二酸化ケイ素がより好ましい。そして、この二酸化ケイ素がコロイド状になっているコロイド状シリカを用いて、酸性研磨またはアルカリ性研磨を行うことにより、ガラス基板の表面形状を作りだすことがより好ましい。
なお、上記洗浄において、酸性洗浄は、主に基板表面に付着している有機物を除去する点で好適である。一方、アルカリ洗浄は、基板表面に付着している無機物(例えば鉄)を除去する点で好適である。つまり、酸性洗浄とアルカリ洗浄とで、除去する対象が異なるため、情報記録媒体用ガラス基板を製造する上で、両方を併用することが好ましく、また、酸性洗浄工程とアルカリ洗浄工程を連続して行うことがより好ましい。そして、洗浄後のガラス基板上の電荷を制御する観点から、酸洗浄を行った後アルカリ洗浄を行うことがさらに好ましい。
【0186】
以下に、上記情報記録媒体用ガラス基板に求められる耐酸性、耐アルカリ性について説明する。上記ガラス基板は、50℃に保たれた0.5%(Vol%)のケイフッ酸(H2SiF)水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが3.0nm/分以下、より好ましくは2.5nm/分以下、さらに好ましくは2.0nm/分以下、特に好ましくは1.8nm/分以下となる耐酸性と、50℃に保たれた1質量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが0.1nm/分以下、より好ましくは0.09nm/分以下、さらに好ましくは0.08nm/分以下となる耐アルカリ性とを備えることが好ましい。
上記ガラス基板が、高い耐酸性および耐アルカリ性を有することで、平滑な表面であり、かつ、基板表面に付着した付着物の量が低減されたガラス基板を製造することができる。そして、このガラス基板を構成しているガラスとしては、例えば、ガラスVが挙げられる。
【0187】
更に本発明は、前記情報記録媒体用ガラス基板上に情報記録層を有する情報記録媒体に関する。
更に本発明は、本発明の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法により情報記録媒体用ガラス基板を製造し、前記ガラス基板上に情報記録層を形成する情報記録媒体の製造方法に関する。
先に説明した本発明のガラスによれば、表面平滑性が高く、しかも化学強化処理後の形状安定性に優れる基板を作製することができる。上記基板を有する情報記録媒体は、高密度記録化に好適である。しかも、前述のように加熱効率が高い基板を得ることができるため、情報記録媒体を高い生産性のもとで製造可能である。
【0188】
上記情報記録媒体は情報記録層を適宜選択することによって、種々の情報記録媒体として使用することができる。このような媒体として、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体などを例示することができる。
前述のように、本発明の情報記録媒体は、高記録密度化に対応し得るものであり、特に、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体として好適に用いることができる。垂直磁気記録方式の情報記録媒体によれば、より高記録密度化に対応可能な情報記録媒体を提供することができる。即ち、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体は、従来の長手磁気記録方式の磁気記録媒体の面記録密度(100GBit/(2.5cm)2あるいはそれ以上)よりも高記録密度(例えば1TBit/(2.5cm)2)であるため、更なる高密度記録化を図ることができる。
【0189】
次に、本発明の情報記録媒体およびその製造方法について具体的に説明する。
本発明の情報記録媒体は、前述の情報記録媒体用基板上に情報記録層を有するものである。例えば、前述のガラス基板の上に順次、下地層、磁性層、保護層、潤滑層などを設けることにより、磁気ディスクなどの情報記録媒体を作製することができる。
【0190】
情報記録層は媒体の種類に応じて適宜選択することができ特に限定されないが、例えば、Co-Cr系(ここで系とは、表記された物質を含む材料であることを意味する)、Co-Cr-Pt系、Co-Ni-Cr系、Co-Ni-Pt系、Co-Ni-Cr-Pt系、およびCo-Cr-Ta系などの磁性層であることができる。下地層としては、Ni層、Ni-P層、Cr層などを採用することができる。高記録密度化に好適な磁性層(情報記録層)用の材料としては特に、CoCrPt系合金材料、取り分けCoCrPtB系合金材料を挙げることができる。また、FePt系合金材料も好適である。これら磁性層は、特に垂直磁気記録方式用の磁性材料として用いると有用性が高い。CoCrPt系合金材料は300℃〜500℃、FePt系合金材料が500℃〜600℃の高温で成膜または成膜後熱処理を行うことにより、結晶配向性または結晶構造を調整し、高記録密度化に適した構成とすることが可能である。
【0191】
下地層としては非磁性下地層および/または軟磁性下地層を用いることができる。非磁性下地層は主に、磁性層の結晶粒(結晶グレイン)を微細化するため、または磁性層の結晶配向性を制御する目的で設けられる。bcc系の結晶性の下地層、例えば、Cr系下地層は面内配向性を促進する作用があるので面内(長手)記録方式用磁気ディスクに好ましく、hcp系の結晶性の下地層、例えば、Ti系下地層、Ru系下地層は、垂直配向性を促進する作用があるので、垂直磁気記録方式用磁気ディスクとして用いることができる。また、アモルファス下地層は磁性層の結晶粒を微細化する作用を有する。
【0192】
軟磁性下地層は、主に垂直磁気記録ディスクに用いられる下地層であって、磁気ヘッドの垂直磁気記録層(磁性層)への磁化パターン記録を促進する作用を有する。軟磁性下地層としての作用を十分に発揮するためには、飽和磁束密度が大きく、透磁率の高い層であることが好ましい。このため、高温の成膜または成膜後熱処理を行うことが好ましい。このような軟磁性層材料としては、例えばFeTa系軟磁性材料、FeTaC系軟磁性材料などのFe系軟磁性材料を挙げることができる。CoZr系軟磁性材料、CoTaZr系軟磁性材料も好ましい。
【0193】
保護層としては、カーボン膜などを使用することができ、潤滑層を形成するためにはパーフルオロポリエーテル系などの潤滑剤を使用することができる。
【0194】
垂直磁気記録ディスクとして好ましい態様は、本発明の基板上に、軟磁性下地層、アモルファスの非磁性下地層、結晶性の非磁性下地層、垂直磁気記録層(磁性層)、保護層、潤滑層がこの順で成膜された磁気ディスクを挙げることができる。
【0195】
垂直磁気記録方式の磁気記録媒体の場合、基板状に形成される膜構成は、非磁性材料であるガラス基板上に垂直磁気記録層を形成した単層膜、軟磁性層と磁気記録層を順次に積層した二層膜、及び硬磁性層、軟磁性層及び磁気記録層を順次に積層した三層膜などを好適なものとして例示できる。その中で二層膜と三層膜は単層膜よりも高記録密度化及び磁気モーメントの安定維持に適しているので好ましい。
【0196】
本発明による情報記録媒体用ガラス基板によれば、1平方インチ当たり200ギガビット、或いはそれ以上の面情報記録密度での記録再生に供される磁気ディスクを好適に製造することが可能である。
1平方インチ当たり200ギガビット、或いはそれ以上の面情報記録密度に対応する磁気ディスクとしては、垂直磁気記録方式に対応する磁気ディスクが挙げられる。
ハードディスクドライブにおいて、1平方インチ当たり200ギガビット、或いはそれ以上の面情報記録密度で情報の記録再生を行う場合、磁気ディスクの主表面に対向して浮上走行し、信号を記録再生する磁気ヘッドの、磁気ディスクに対する浮上量は8nm或いは、それ以下の浮上量とされる。これに対応するための磁気ディスクの主表面は、通常鏡面状態とされている。また、磁気ディスクの主表面は、通常、表面粗さRaを0.25nm以下にする必要がある。本発明の情報記録媒体用ガラス基板によれば、浮上量が8nm、或いはそれ以下とされる磁気ヘッドに対応する磁気ディスクを好適に製造することができる。
1平方インチ当たり200ギガビット、或いはそれ以上の面情報記録密度で情報の記録再生を行う場合、磁気ヘッドに搭載される記録再生素子は、Dynamic Flying Height型ヘッド(以下DFH型ヘッド)と呼ばれる浮上量能動制御型素子が採用される場合がある。
DFH型ヘッドでは素子周囲を加熱することで、磁気ヘッドの素子部を熱膨張させ、磁気ヘッドと磁気ディスクとの間隙をよりいっそう狭隘にするので、磁気ディスクの主表面を、表面粗さRaが0.25nm以下の鏡面とする必要がある。本発明の情報記録媒体用ガラス基板によれば、DFH型ヘッドに対応する磁気ディスクを好適に製造することができる。
【0197】
本発明の情報記録媒体用ガラス基板は、アモルファスガラスであり得る。アモルファスガラスであれば、好適な表面粗さの鏡面を創生することが可能である。
【0198】
本発明の情報記録媒体用ガラス基板を利用した情報記録媒体である磁気ディスクの一実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気ディスク10の構成の一例を示す。本実施形態において、磁気ディスク10は、ガラス基板12、付着層14、軟磁性層16、下地層18、微細化促進層20、磁気記録層22、保護膜24、および潤滑層26をこの順に有する。
【0199】
磁気記録層22は、情報を記録再生するための情報記録層として機能する。
尚、磁気ディスク10は、軟磁性層16と下地層18との間に、アモルファスのシード層を更に備えてもよい。シード層とは、下地層18の結晶配向性を向上させるための層である。例えば、下地層18がRuの場合、シード層は、hcp結晶構造のC軸配向性を向上させるための層である。
【0200】
ガラス基板12は、磁気ディスク10の各層を形成するためのガラス基板である。このガラス基板として前述した本発明の情報記録媒体用ガラス基板を利用する。
【0201】
ガラス基板の主表面の表面粗さはRaで0.25nm以下である鏡面であると好ましい。表面粗さRmaxは3nm以下である鏡面であると好ましい。
このような平滑鏡面とすることにより、垂直磁気記録層である磁気記録層22と、軟磁性層16との間の離間距離を一定にすることができる。そのため、ヘッド−磁気記録層22−軟磁性層16間に好適な磁気回路を形成することができる。
【0202】
付着層14は、ガラス基板12と軟磁性層16との間の付着性を向上させるための層であり、ガラス基板12と軟磁性層16との間に形成される。付着層14を用いることにより、軟磁性層16の剥離を防止することができる。付着層14の材料としては、例えばTi含有材料を用いることができる。実用上の観点から、付着層14の膜厚は、1nm〜50nmとすることが好ましい。付着層14の材料としてはアモルファス材料であることが好ましい。
【0203】
軟磁性層16は、磁気記録層22の磁気回路を調整するための層である。軟磁性層16は、軟磁気特性を示す磁性体により形成されていれば特に制限はないが、例えば、保磁力(Hc)で0.01〜80エルステッド、好ましくは0.01〜50エルステッドの磁気特性であることが好ましい。また、飽和磁束密度(Bs)は500emu/cc〜1920emu/ccの磁気特性であることが好ましい。軟磁性層16の材料としては、Fe系、Co系等が挙げられる。例えば、FeTaC系合金、FeTaN系合金、FeNi系合金、FeCoB系合金、FeCo系合金等のFe系軟磁性材料、CoTaZr系合金、CoNbZr系合金等のCo系軟磁性材料、或いはFeCo系合金軟磁性材料等を用いることができる。軟磁性層16の材料としてはアモルファス材料が好適である。
【0204】
軟磁性層16の膜厚は例えば30nm〜1000nm、より好ましくは50nm〜200nmである。30nm未満では、ヘッド−磁気記録層22−軟磁性層16間に好適な磁気回路を形成を形成することが困難になる場合があり、1000nmを超えると表面粗さが増加する場合がある。また、1000nmを超えるとスパッタリング成膜が困難となる場合がある。
【0205】
下地層18は、微細化促進層20および磁気記録層22の結晶方向を制御するための層であり、例えばルテニウム(Ru)を含む。本実施形態において、下地層18は、複数の層により形成されている。そして、下地層18において、微細化促進層20と接する界面を含む層は、Ru結晶粒子により形成されている。
【0206】
微細化促進層20は、グラニュラー構造を有する非磁性層である。本実施形態において、微細化促進層20は、グラニュラー構造を有する非磁性のCoCrSiO材料からなる。
微細化促進層20は、SiOを含む酸化物粒界部と、この粒界部に区画されてなるCoCrを含む金属粒子部とから構成されるグラニュラー構造を有している。
【0207】
磁気記録層22は、強磁性層32、磁気的結合制御層34、交換エネルギー制御層36を、微細化促進層20上にこの順で有する。強磁性層32は、グラニュラー構造を有するCoCrPtSiO層であり、磁性結晶粒子として、CoCrPtの結晶粒子を有する。
強磁性層32は、SiOを含む酸化物粒界部と、この粒界部に区画されてなるCoCrPtを含む金属粒子部とから構成されるグラニュラー構造を有している。
【0208】
磁気的結合制御層34は、強磁性層32と交換エネルギー制御層36との磁気的な結合を制御するためのカップリング制御層である。磁気的結合制御層34は、例えばパラジウム(Pd)層または白金(Pt)層からなる。また、磁気的結合制御層34の膜厚は、例えば2nm以下であり、より好ましくは、0.5〜1.5nmである。
【0209】
交換エネルギー制御層36は、磁化容易軸が強磁性層32と略同一方向に揃った磁性層(Continuous層)である。強磁性層32との交換結合により、交換エネルギー制御層36は、磁気ディスク10の磁気記録特性を向上させる。交換エネルギー制御層36は、例えば、コバルト(Co)若しくはその合金とパラジウム(Pd)との交互積層膜([CoX/Pd]n)、または、コバルト(Co)若しくはその合金と白金(Pt)との交互積層膜([CoX/Pt]n)からなる多層膜で構成され、その膜厚は、1〜8nmが好ましい。より好ましくは、3〜6nmが好適である。
【0210】
保護膜24は、磁気ヘッドの衝撃から磁気記録層22を防護するための保護層である。また、潤滑層26は、磁気ヘッドと磁気ディスク10との間の潤滑性を高めるための層である。
【0211】
潤滑層26、保護膜24を除く磁気ディスク10の各層の製造方法として、スパッタリング法で成膜することが好ましい。特にDCマグネトロンスパッタリング法で形成すると均一な成膜が可能となるので好ましい。
保護膜24は、炭化水素を材料ガスとするCVD法による成膜を好ましく例示できる。潤滑層26はディップ法により成膜することができる。
【0212】
本態様では、鏡面状態のアモルファスガラス基板に接してアモルファス層(例えば付着層14)を形成することが好適である。また軟磁性層16をアモルファス材料とすることが好適である。本発明によれば、例えばRaが0.25nm以下である鏡面状態にあるガラス基板の表面粗さを反映し、例えばRaが0.25nm以下である鏡面状態の磁気ディスク表面を得ることができる。
【0213】
本発明の情報記録媒体用基板(例えば磁気ディスク基板)や、情報記録媒体(例えば磁気ディスク)の寸法に特に制限はないが、高記録密度化が可能であるため媒体および基板を小型化することができる。例えば、公称直径2.5インチは勿論、更に小径(例えば1インチ)の磁気ディスク基板または磁気ディスクとして好適である。
【0214】
実施例
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0215】
(1)熔融ガラスの作製
表1に示す例1、例1’、例2、例2’、例3、例3’例4〜15の組成のガラスが得られるように酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物などの原料を秤量し、混合して調合原料とした。この原料を熔融容器に投入して1400〜1600℃の範囲で6時間、加熱、熔融し、清澄、攪拌して泡、未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製した。なお、例1〜4、例1’〜例3’、例7〜15は、ガラスI〜IV、VI、VIIに相当し、例5はガラスIII、IV、VI、VIIに相当し、例6はガラスI〜IVに相当する。
【0216】
(2)ガラスの成形
次に熔融ガラスをパイプから一定流量で流出するとともにプレス成形用の下型で受け、下型上に所定量の熔融ガラス塊が得られるよう流出した熔融ガラスを切断刃で切断した。そして熔融ガラス塊を載せた下型をパイプ下方から直ちに搬出し、下型と対向する上型および胴型を用いて、直径66mm、厚さ1.2mmの薄肉円盤状にプレス成形した。プレス成形品を変形しない温度にまで冷却した後、型から取り出してアニールし、基板ブランクを得た。なお、上記成形では複数の下型を用いて流出する熔融ガラスを次々に成形した。
【0217】
(3)基板ブランクの作製
次に、下記方法AまたはBにより、円盤状の基板ブランクを作製した。
(方法A)
上記熔融ガラスを円筒状の貫通孔が設けられた耐熱性鋳型の貫通孔に上部から連続的に鋳込み、円柱状に成形して貫通孔の下側から取り出した。取り出したガラスをアニールした後、マルチワイヤーソーを用いて円柱軸に垂直な方向に一定間隔でガラスをスライス加工し、円盤状の基板ブランクを作製した。
(方法B)
上記熔融ガラスをフロートバス上に流し出し、シート状のガラスに成形した。次いでアニールした後にシートガラスから円盤状のガラスをくり貫いて基板ブランクを得た。
【0218】
(4)基板の作製
上記各方法で得られた基板ブランクの中心に貫通孔をあけて、外周、内周の研削加工を行い、円盤の主表面をラッピング、ポリッシング(鏡面研磨加工)して直径65mm、厚さ0.7mmの磁気ディスク用基板に仕上げた。
【0219】
(5)洗浄
次に、これら基板を酸、アルカリなどの洗剤を用いて洗浄し、純水ですすいだ後、乾燥させた。これら基板の表面を拡大観察したところ、表面粗れなどは認められず、平滑な表面であった。
【0220】
(5)化学強化処理
乾燥した基板を380℃に加熱された硝酸ナトリウム、硝酸カリウムの混合熔融塩に240分、浸漬させて化学強化を行った後、洗浄、乾燥させた。化学強化した基板には、化学強化によるうねりは見られず、高い平坦性を有していた。また、ディスク状ガラス基板の中心孔の内径寸法は、20.025mm±0.010mm以内の範囲におさまっており、現在の内径寸法公差規格(公差±0.025mm)より公差を小さくすることができた。
【0221】
(6)磁気ディスクの作製
化学強化した基板を用いて、基板上に下地層、軟磁性層、磁性層、潤滑層などを形成し、垂直磁気記録方式の磁気ディスクを作製した。
【0222】
評価方法
1.液相温度
白金ルツボにガラス試料を入れ、所定温度にて3時間保持し、炉から取り出し冷却後、結晶析出の有無を顕微鏡により観察し、結晶の認められない最低温度を液相温度(L.T.)とした。結果を表1に示す。
液相温度は、ガラス安定性、耐失透性の指標であり、情報記録媒体基板用ガラスとして好ましい液相温度は、1000℃以下、より好ましくは970℃以下、更に好ましくは950℃以下、一層好ましくは930℃以下の範囲である。下限は特に限定されないが、800℃以上を目安に考えればよい。
【0223】
2.酸エッチングレートおよびアルカリエッチングレート
例1〜例4のガラスについて、上記(1)〜(4)と同様の方法で基板を作製した。作製された基板の一部に、エッチングされない部分を作るためにマスク処理を施し、その状態のガラス基板を50℃に維持した0.5Vol%ケイフッ酸水溶液または50℃に維持した1質量%水酸化カリウム水溶液に所定時間浸漬した。その後、ガラス基板を上記各水溶液から引き上げ、マスク処理を施した部分と施していない部分との差分(エッチングの差)を求め、浸漬時間で割ることにより、単位時間あたりのエッチング量(エッチングレート)を求めた。結果を表2に示す。
【0224】
【表1】























【0225】
表1中、各成分の含有量、合計含有量はmol%表示と質量%表示による。R2OはLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量、ROはMgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量、MはZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量を示す。Li2O/Na2OはNa2O含有量に対するLi2O含有量の割合はmol比と質量比により示す。MgO/CaOはCaO含有量に対するMgO含有量の割合はmol比と質量比により示す。
【0226】
【表2】

【0227】
[磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの作製−2−]
次に、上記例3に記載のガラスを用いて磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクを製造した例について説明する。
(1)形状加工工程
例3に記載の組成のガラスをダイレクトプレス法で成形し、アモルファス状態のディスク状ガラス基板とした。その後、得られたガラス基板の中央部分に砥石を用いて孔をあけ、中心部に円孔を有するディスク状のガラス基板とした。さらに、外周端面および内周端面に面取加工を施した。
(2)端面研磨工程
続いて、ガラス基板を回転させながら、ブラシ研磨によりガラス基板の端面(内周、外周)の表面粗さを、最大高さ(Rmax)で1.0μm程度、算術平均粗さ(Ra)で0.3μm程度になるように研磨した。
(3)研削工程
続いて、#1000の粒度の砥粒を用いて、主表面の平坦度が3μm、Rmaxが2μm程度、Raが0.2μm程度となるようにガラス基板表面を研削した。ここで平坦度とは、基板表面の最も高い部分と、最も低い部分との上下方向(表面に垂直な方向)の距離(高低差)であり、平坦度測定装置で測定した。また、RmaxおよびRaは、原子間力顕微鏡(AFM)(デジタルインスツルメンツ社製ナノスコープ)にて5μm×5μmの矩形領域を測定した。
(4)予備研磨工程
続いて、一度に100枚〜200枚のガラス基板の両主表面を研磨できる研磨装置を用いて予備研磨工程を実施した。研磨パッドには、硬質ポリッシャを用いた。研磨パッドには、予め酸化ジルコニウムと酸化セリウムとを含ませてあるものを使用した。
予備研磨工程における研磨液は、水に、平均粒径が1.1μmの酸化セリウム研磨砥粒を混合することにより作製した。なお、グレイン径が4μmを越える研磨砥粒は予め除去した。研磨液を測定したところ、研磨液に含有される研磨砥粒の最大値は3.5μm、平均値は1.1μm、D50値は1.1μmであった。
その他、ガラス基板に加える荷重は80〜100g/cm2とし、ガラス基板の表面部の除去厚は20〜40μmとした。
(5)鏡面研磨工程
続いて、一度に100枚〜200枚のガラス基板の両主表面を研磨できる遊星歯車方式の研磨装置を用いて、鏡面研磨工程を実施した。研磨パッドには、軟質ポリシャを用いた。
鏡面研磨工程における研磨液は、超純水に、硫酸と酒石酸とを加え、さらにグレイン径が40nmのコロイド状シリカ粒子を加えて作製した。この際、研磨液中の硫酸濃度を0.15質量%とし、研磨液のpH値を2.0以下とした。また、酒石酸の濃度は0.8質量%とし、コロイド状シリカ粒子の含有量は10質量%とした。
なお、鏡面研磨処理に際して、研磨液のpH値には変動がなく、略一定に保持できた。本実施例においては、ガラス基板の表面に供給した研磨液を、ドレインを用いて回収し、メッシュ状フィルタで異物を除去して清浄化し、その後再びガラス基板に供給することにより再利用した。
鏡面研磨工程における研磨加工速度は0.25μm/分であり、上述の条件において有利な研磨加工速度を実現できることが判った。なお、研磨加工速度とは、所定鏡面に仕上げるために必要なガラス基板の厚さの削減量(加工取代)を、所要研磨加工時間で割ることにより求めた。
(6)鏡面研磨処理後の洗浄工程
続いて、ガラス基板を、濃度3〜5質量%のNaOH水溶液に浸漬してアルカリ洗浄を行った。なお、洗浄は超音波を印加して行った。さらに、中性洗剤、純水、純水、イソプロピルアルコール、イソプロピルアルコール(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。洗浄後のガラス基板の表面をAFM(デジタルインスツルメンツ社製ナノスコープ)(5μm×5μmの矩形領域を測定)により観察したところ、コロイダルシリカ研磨砥粒の付着は確認されなかった。また、ステンレスや鉄などの異物も発見されなかった。また、洗浄前後における基板表面の粗さの増大は見られなかった。
(7)化学強化処理工程
続いて、硝酸カリウム(60質量%)と硝酸ナトリウム(40質量%)とを混合して375℃に加熱した化学強化塩の中に、300℃に予熱した洗浄済みガラス基板を約3時間浸漬することにより化学強化処理を行った。この処理により、ガラス基板の表面のリチウムイオン、ナトリウムイオンは、化学強化塩中のナトリウムイオン、カリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板は化学的に強化される。なお、ガラス基板の表面に形成された圧縮応力層の厚さは、約100〜200μmであった。化学強化の実施後は、ガラス基板を20℃の水槽に浸漬して急冷し、約10分維持した。
(8)化学強化後の洗浄工程
続いて、上記急冷を終えたガラス基板を、約40℃に加熱した硫酸に浸漬し、超音波を掛けながら洗浄した。その後、0.5%(Vol%)のケイフッ酸(H2SiF)水溶液を用いてガラス基板を洗浄した後、1質量%の水酸化カリウム水溶液を用いてガラス基板の洗浄を行った。以上の工程により、磁気ディスク用ガラス基板12を製造した。
(9)磁気ディスク用ガラス基板の検査工程
続いて、磁気ディスク用ガラス基板について検査を行った。磁気ディスク用ガラス基板の表面の粗さをAFM(原子間力顕微鏡)(5μm×5μmの矩形領域を測定)で測定したところ、最大山高さ(Rmax)は1.5nm、算術平均粗さ(Ra)は0.15nmであった。また、表面は清浄な鏡面状態であり、磁気ヘッドの浮上を妨げる異物や、サーマルアスペリティ障害の原因となる異物は存在しなかった。また、洗浄前後における基板表面の粗さの増大は見られなかった。次に、抗折強度を測定した。抗折強度は、抗折強度測定試験機(島津オートグラフDDS-2000)を用いて、図2に示すようにガラス基板上に荷重を加えていったときに、ガラス基板が破壊したときの荷重値として求めた。求められた抗折強度は、24.15kgで満足すべき値であった。
なお、上記説明では、化学強化後に酸洗浄およびアルカリ洗浄を行っているが、鏡面研磨工程後の洗浄において酸洗浄およびアルカリ洗浄を行ってもよい。
次に、例3のガラスからなる基板12を用いて磁気ディスク10を製造し、ハードディスクドライブの試験を行った。図1に、基板12上の膜構成(断面)を模式的に示す。
まず、真空引きを行った成膜装置を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法にて、Ar雰囲気中で、付着層14、および軟磁性層16を順次成膜した。
【0228】
このとき、付着層14は、20nmのアモルファスCrTi層となるように、CrTiターゲットを用いて成膜した。また、軟磁性層16は、200nmのアモルファスCoTaZr(Co:88原子%、Ta:7原子%、Zr:5原子%)層となるように、CoTaZrターゲットを用いて成膜した。
【0229】
軟磁性層16までの成膜を終えた磁気ディスク10を、成膜装置から取り出し、表面粗さを同様に測定したところ、Rmaxが2.1nm、Raが0.20nmという平滑鏡面であった。VSM(振動試料型磁化測定装置)で磁気特性を測定したところ、保磁力(Hc)は2エルステッド、飽和磁束密度は810emu/ccであり、好適な軟磁性特性を示していた。
【0230】
続いて枚葉・静止対向型成膜装置を用いて、Ar雰囲気中で、下地層18、グラニュラー構造の微細化促進層20、グラニュラー構造の強磁性層32、磁気的結合制御層34、交換エネルギー制御層36、および保護膜24を順次成膜した。本実施例において、下地層18は、第1層および第2層を有する2層構造である。
【0231】
この工程においては、最初に、ディスク基板上に、下地層18の第1層として、アモルファスのNiTa(Ni:40原子%、Ta:10原子%)からなる10nm厚の層を形成し、第2層として、10〜15nm厚のRu層を形成した。
【0232】
次に、非磁性CoCr-SiO2からなるターゲットを用いて、2〜20nmのhcp結晶構造からなる微細化促進層20を形成した。更に、CoCrPt-SiO2からなる硬磁性体のターゲットを用いて、15nmのhcp結晶構造からなる強磁性層32を形成した。強磁性層32作成のための、ターゲットの組成は、Co:62原子%、Cr:10原子%、Pt:16原子%、SiO2:12原子%であった。更に、Pd層からなる磁気的結合制御層34を形成し、[CoB/Pd]n層からなる交換エネルギー制御層36を形成した。
【0233】
次に、エチレンを材料ガスとしたCVD法により、水素化カーボンからなる保護膜24を形成した。水素化カーボンとすることで、膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対して磁気記録層22を防護することができる。
【0234】
この後、PFPE(パーフロロポリエーテル)からなる潤滑層26をディップコート法により形成した。潤滑層26の膜厚は1nmである。以上の製造工程により、垂直磁気記録媒体である垂直磁気記録方式の磁気ディスク10が得られた。得られた表面粗さを前述同様に測定したところ、Rmaxが2.2nm、Raが0.21nmという平滑鏡面であった。
【0235】
得られた磁気ディスク10を2.5インチ型ロードアンロード型ハードディスクドライブに搭載した。このハードディスクドライブに搭載されている磁気ヘッドは、Dynamic Flying Height(略称:DFH)型磁気ヘッドである。この磁気ヘッドの磁気ディスクに対する浮上量は8nmである。
このハードディスクドライブにより磁気ディスクの主表面上の記録再生用領域に、1平方インチ当たり200ギガビットの記録密度で記録再生試験を行ったところ、良好な記録再生特性を示した。また試験中、クラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害が生じることもなかった。
次にハードディスクドライブによりロードアンロード(Load Unload、以下LUL)試験を実施した。
LUL試験は、5400rpmで回転する2.5インチ型ハードディスクドライブと、浮上量が8nmの磁気ヘッドにより行う。磁気ヘッドは前述のものを利用した。シールド部はNiFe合金からなる。磁気ディスクをこの磁気ディスク装置に搭載し、前述の磁気ヘッドによりLUL動作を連続して行い、LULの耐久回数を測定する。
LUL耐久性試験後に、磁気ディスク表面および磁気ヘッド表面の観察を肉眼および光学顕微鏡で行い、傷や汚れなどの異常の有無を確認する。このLUL耐久性試験は40万回以上のLUL回数に故障無く耐久することが求められ、特に、60万回以上耐久すれば好適である。なお、通常に使用されるHDD(ハードディスクドライブ)の使用環境では、LUL回数が60万回を超えるには、概ね10年程度の使用が必要であると云われている。
このLUL試験を実施したところ、磁気ディスク10は60万回以上耐久し合格した。また、LUL試験後に磁気ディスク10を取り出して検査したが、傷や汚れなどの異常は検出されなかった。アルカリ金属成分の析出も認められなかった。
【0236】
(比較例)
次に、比較例1〜3として、表1に示す3つのガラスを作製した。比較例1は特開2001−236634号公報に記載の実施例5のガラス、比較例2は特開平11−232627号公報に記載の比較例1のガラス、比較例3は特開平11−314931号公報に記載の比較例2のガラスである。
比較例1のガラスは、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3、TiO2を含まないため、化学的耐久性、特に耐アルカリ性が十分でなかった。比較例2、3のガラスは、CaOの量がMgOの量よりも少なく、また、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3、TiO2の合計含有量のmol比が小さいことから、化学的耐久性が十分でなかった。
【0237】
本発明によれば、高記録密度化に適した垂直磁気記録方式などの磁気記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る磁気ディスクの構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、抗折強度の測定方法の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
mol%表示にて、
SiO2を50〜75%、
Al2O3を3〜15%、
Li2Oを5〜15%、
Na2Oを5〜15%、
K2Oを0〜3%、
CaOを0.5%を超えて5%以下、
MgOを0%以上、3%未満、ただし、CaOの含有量がMgOの含有量よりも多い、
ZrO2を0.3〜4%、
含み、
SiO2、Al2O3およびZrO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量のmol比((Li2O+Na2O+K2O )/(SiO2+Al2O3+ZrO2))が0.28以下、
である、情報記録媒体用基板に供するためのガラス。
【請求項2】
SiO2と、Al2O3と、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
SiO2の含有量が50mol%以上、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が70mol%以上、
前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量が8mol%以上、
前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の前記合計含有量に対する前記酸化物の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上、
である、情報記録媒体用基板に供するためのガラス。
【請求項3】
SiO2の含有量が60mol%以上であり、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が75mol%以上である請求項2に記載のガラス。
【請求項4】
Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方を含有し、かつLi2OとNa2Oの合計含有量が24mol%未満である請求項2または3に記載のガラス。
【請求項5】
Li2OとNa2Oの合計含有量が22mol%以下である請求項2〜4のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項6】
mol表示にて、
SiO2を60〜75%、
Al2O3を3〜15%、
ZrO2を0.3〜4%、
含む請求項2〜5のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項7】
Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
Li2OとNa2Oの合計含有量が10〜22mol%、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量が0 mol%を超えて4 mol%以下、
前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対する前記酸化物の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.15以上、
である、情報記録媒体用基板に供するための化学強化用アルミノシリケートガラス。
【請求項8】
SiO2の含有量が50 mol%以上、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が70mol%以上である請求項7に記載のガラス。
【請求項9】
SiO2とAl2O3の合計含有量が75mol%以上である請求項7または8に記載のガラス。
【請求項10】
Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上である請求項7〜9のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項11】
mol%表示にて、
Al2O3を3%以上、
Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で8%以上、
MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で0%を超え、5%以下、
含む請求項7〜10のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項12】
SiO2と、Al2O3と、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ金属酸化物と、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物と、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2からなる群から選ばれる一種以上の酸化物と、を含み、
50℃に保たれた0.5Vol%のケイフッ酸(H2SiF)水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが3.0nm/分以下となる耐酸性と、
50℃に保たれた1質量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが0.1nm/分以下となる耐アルカリ性と、
を備える、情報記録媒体用基板に供するためのガラス。
【請求項13】
SiO2の含有量が50 mol%以上、かつSiO2とAl2O3の合計含有量が70mol%以上である請求項12に記載のガラス。
【請求項14】
SiO2とAl2O3の合計含有量が75mol%以上である請求項12または13に記載のガラス。
【請求項15】
前記アルカリ金属酸化物と前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量が8mol%以上、かつ
前記アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対する前記酸化物の合計含有量のmol比((ZrO2+HfO2+Nb2O5+Ta2O5+La2O3+Y2O3+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO))が0.035以上となる組成を有する請求項12〜14のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項16】
Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方を含有し、かつLi2OとNa2Oの合計含有量が24mol%以下である請求項12〜15のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項17】
Li2OとNa2Oの合計含有量が22mol%以下である請求項12〜16のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項18】
mol表示にて、
SiO2を60〜75%、
Al2O3を3〜15%、
ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を合計で0.3〜4%、
含有する請求項12〜17のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項19】
Feを更に含有する請求項1〜18のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のガラスに化学強化処理を施すことにより得られた情報記録媒体用基板に供するための化学強化ガラス。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のガラスにより構成される情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項22】
主表面の粗さRaが0.25nm未満である請求項21に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項23】
化学強化処理が施されている請求項21または22に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項24】
抗折強度が10kg以上である請求項21〜23のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項25】
厚みが1mm以下である請求項21〜24のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項26】
厚みが0.3mm以上である請求項21〜25のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項27】
円盤状である請求項21〜26のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項28】
中心部に開口を有する請求項27に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項29】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のガラスを鏡面研磨加工する工程と、鏡面加工した後に酸洗浄およびにアルカリ洗浄を施す洗浄工程とを含む、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項30】
前記研磨加工工程と洗浄工程との間に、化学強化処理を行うことを更に含む請求項29に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項31】
上記酸洗浄とアルカリ洗浄とを連続して行う請求項29または30に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項32】
上記酸洗浄の後、アルカリ洗浄を行う請求項29〜31のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項33】
請求項21〜28のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板上に情報記録層を有する情報記録媒体。
【請求項34】
垂直磁気記録方式の磁気記録媒体である請求項33に記載の情報記録媒体。
【請求項35】
前記基板上に、軟磁性下地層、アモルファス下地層、結晶性下地層、垂直磁気記録層、保護層および潤滑層をこの順に有する請求項34に記載の情報記録媒体。
【請求項36】
記録密度が、130Gbit/inch2以上である請求項33〜35のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項37】
請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法により情報記録媒体用ガラス基板を製造し、前記ガラス基板上に情報記録層を形成する情報記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−106927(P2012−106927A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6438(P2012−6438)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【分割の表示】特願2008−520633(P2008−520633)の分割
【原出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】