説明

情報記録媒体移送用包装具および移送方法

【課題】テープ状情報記録媒体が巻回されていないハブを、傷付けずに、しかも低コストで移送する。
【解決手段】中心孔2aが設けられたハブ2の周囲にテープ状情報記録媒体が巻回された巻回体をテープ状情報記録媒体の幅方向で複数積層した積層体を挟んで対向配置される一対の板状部材11と、ハブ2の中心孔2aに挿通させられると共に両端部が両板状部材11にそれぞれ係合させられる軸部材12とを備え、板状部材11は、積層体の包装時に軸部材12を係合可能な係合用凹部21と、他の軸部材12を係合可能な複数の係合用凹部22,23とが設けられて構成され、係合用凹部22は、それぞれの少なくとも一部分が巻回体の収納範囲内に位置すると共に、各係合用凹部22,23の中心同士がハブ2の直径よりも互いに離間するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブの周囲にテープ状情報記録媒体が巻回された巻回体を積層した積層体を包装可能に構成された情報記録媒体移送用包装具、およびその情報記録媒体移送用包装具を使用して積層体やハブを移送する移送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平6−40486号公報には、プラスチックコア(以下、単に「コア」ともいう)と、一対のプラスチックディスク(以下、単に「ディスク」ともいう)とを備え、中間フィルムを挟んで積層された2個のパンケーキリール(以下、単に「パンケーキ」ともいう)における各々の端面にスポンジパッドを配設した状態のものを梱包可能に構成されたパンケーキの梱包ユニットが開示されている。この場合、両ディスクは、平面視略正方形に形成されると共に、その中央部にコアの端部を係合することができるように構成されている。また、コアは、両パンケーキのハブに形成された中央透孔に挿入できるように中空円筒形に形成されている。さらに、中間フィルムは、両パンケーキの間に配置された状態でコアを挿通可能に形成され、スポンジパッドは、パンケーキとディスクとの間に配置された状態でコアを挿通可能に形成されている。
【0003】
この場合、上記公開公報には、2個のパンケーキ、中間フィルムおよびスポンジパッドの各中央透孔に挿通させた状態のコアにおける両端部にディスクをそれぞれ係合させ、その状態の梱包ユニットを包装フィルムで包装したものを、運搬用パッケージに収容して任意の場所に運搬(移送)する方法が開示されている。また、上記公開公報には、パンケーキの運搬(移送)が完了したときに、両ディスクおよびコアを運搬用パッケージに収容して回収する方法も開示されている。この場合、この梱包ユニットでは、回収に際して分離させた状態の両ディスクおよびコアを効率良く運搬用パッケージに収容することができるように、両ディスクおよびコアにおける各部のサイズが最適化されている。これにより、両ディスクおよびコアの回収に要するコストの低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−40486号公報(第3−4頁、第1−6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の梱包ユニットには、以下の解決すべき問題点が存在する。すなわち、従来の梱包ユニットでは、両ディスクおよびコアの回収に際して運搬用パッケージに効率良く収容することができるように両ディスクおよびコアにおける各部のサイズが最適化されている。一方、この種の梱包ユニット(移送用包装具)によって包装する対象物として、磁気テープなどのテープ状情報記録媒体の巻回体(パンケーキ)が挙げられる。
【0006】
この場合、今日のテープ状情報記録媒体は、記録密度の向上や一巻当りの記録容量の増大を目的として、その厚みが非常に薄厚となっている。このため、パンケーキの製作(ハブに対するテープ状情報記録媒体の巻回)に際して、周面に歪みや傷が生じたハブにテープ状情報記録媒体を巻回したときには、テープ状情報記録媒体に対して局所的なストレスが加わって、テープ状情報記録媒体に変形や傷付きが生じ、正常な記録再生が困難な状態となるおそれがある。したがって、テープ状情報記録媒体のパンケーキには、周面に歪みや傷が生じていないハブを使用する必要があるため、ハブの製作コストの低減が困難となっている。このため、テープ状情報記録媒体の巻回体(パンケーキ)の移送が完了した後に、テープ状情報記録媒体が巻回されていない空のハブを回収するのが好ましい。
【0007】
しかしながら、従来の梱包ユニットでは、両ディスクおよびコアについては、運搬用パッケージへの収容を考慮してサイズの最適化が図られているものの、両ディスクおよびコアと共にハブを回収しようとした場合には、これらとは別個に、ハブだけをまとめて、運搬用パッケージや、その他の容器(箱体や袋)に収容して移送する必要がある。したがって、テープ状情報記録媒体の変形や傷付きが生じることのないように製作したハブが、その回収過程(移送過程)において、容器の内壁に当接したり、容器内において互いに当接したりして、その周面が傷付くおそれがある。
【0008】
一方、従来の梱包ユニットをパンケーキの移送時と同じように組み立てた状態で、空のハブを移送するための梱包具として使用する方法も考えられる。これにより、ハブの周面が傷付く事態を回避することができる可能性がある。しかしながら、このような使用方法では、1つの梱包ユニットにつき2個のハブしか移送することができず、しかも、パンケーキの移送時と同じ数の梱包ユニットしか運搬用パッケージに収容することができない。このため、ハブの回収に要するコストの低減が困難となるだけでなく、梱包ユニットの回収に要するコストも高騰するという問題点が存在する。
【0009】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、テープ状情報記録媒体が巻回されていないハブを、傷付けずに、しかも低コストで移送し得る情報記録媒体移送用包装具、およびその情報記録媒体移送用包装具を用いた積層体やハブの移送方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係る情報記録媒体移送用包装具は、中心孔が設けられたハブの周囲にテープ状情報記録媒体が巻回された巻回体を当該テープ状情報記録媒体の幅方向で複数積層した積層体を包装可能に構成された情報記録媒体移送用包装具であって、前記積層体を挟んで対向配置される一対の板状部材と、前記ハブの前記中心孔に挿通させられると共に両端部が前記両板状部材にそれぞれ係合させられる軸部材とを備え、前記板状部材は、前記積層体の包装時に前記軸部材としての第1軸部材を係合可能な第1係合部と、前記第1軸部材以外の前記軸部材としての第2軸部材をそれぞれ係合可能な複数の第2係合部とが設けられて構成され、前記各第2係合部は、それぞれの少なくとも一部分が前記巻回体の収納範囲内に位置すると共に、当該各第2係合部の中心同士が前記ハブの直径よりも互いに離間するように形成されている。
【0011】
また、本発明に係る情報記録媒体移送用包装具は、前記板状部材は、前記第1係合部の中心に対して前記各第2係合部の中心が前記ハブの直径よりもそれぞれ離間するように形成されて構成されている。
【0012】
また、本発明に係る情報記録媒体移送用包装具は、前記板状部材は、前記第1係合部の中心を中心として前記各第2係合部が等角度間隔で形成されて構成されている。
【0013】
また、本発明に係る移送方法は、上記のいずれかの情報記録媒体移送用包装具を使用して前記積層体を包装して当該積層体を任意の移送先に移送すると共に、当該任意の移送先において前記テープ状情報記録媒体が巻回されていない前記ハブの前記中心孔に挿通させた前記各軸部材を前記各係合部に係合させることで当該テープ状情報記録媒体が巻回されていない当該ハブを包装して他の任意の移送先に当該ハブを移送する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る情報記録媒体移送用包装具では、中心孔が設けられたハブの周囲にテープ状情報記録媒体が巻回された巻回体をテープ状情報記録媒体の幅方向で複数積層した積層体を挟んで対向配置される一対の板状部材と、ハブの中心孔に挿通させられると共に両端部が両板状部材にそれぞれ係合させられる軸部材とを備え、板状部材は、積層体の包装時に軸部材としての第1軸部材を係合可能な第1係合部と、第1軸部材以外の軸部材としての第2軸部材をそれぞれ係合可能な複数の第2係合部とが設けられて構成され、各第2係合部は、それぞれの少なくとも一部分が巻回体の収納範囲内に位置すると共に、各第2係合部の中心同士がハブの直径よりも互いに離間するように形成されている。
【0015】
このため、本発明に係る情報記録媒体移送用包装具によれば、各第2係合部に係合させた第2軸部材を中心孔に挿通させるようにして、複数のハブを積層した状態で情報記録媒体移送用包装具によって包装することで、第2係合部に係合している第2軸部材が挿通させられたハブを、他の第2係合部に係合している第2軸部材が挿通させられたハブに対して離間させた状態で移送することができるため、ハブの周面に傷付きや変形を生じさせることなく移送することができる。したがって、この情報記録媒体移送用包装具によれば、情報記録媒体移送用包装具によって包装して移送したハブを再利用する際に、テープ状情報記録媒体に変形や傷付きが生じる事態を回避することができる結果、テープ状情報記録媒体を使用して製造される情報記録媒体(テープカートリッジ等)の製造コストを十分に低減することができる。また、複数の第2係合部を設けたことにより、積層体の移送時に包装したハブ(第1係合部に係合させた第1軸部材を中心孔に挿通させたハブ)よりも多くのハブを包装して移送することができるため、空のハブの移送に要するコストを十分に低減することができる。さらに、それぞれの少なくとも一部分が巻回体の収納範囲内に位置するように各第2係合部を形成したことにより、例えば、巻回体の収納範囲外に複数の第2係合部を形成する構成と比較して、巻回体(積層体)の包装に際して必要のない第2係合部を形成するために板状部材を過剰に大きくする必要がないため、情報記録媒体移送用包装具を十分に小形化することができる。
【0016】
また、本発明に係る情報記録媒体移送用包装具によれば、第1係合部の中心に対して各第2係合部の中心がハブの直径よりもそれぞれ離間するように板状部材を形成したことにより、第1係合部に係合させた第1軸部材、および第2係合部に係合させた第2軸部材を中心孔に挿通させるようにして、複数のハブを積層した状態で情報記録媒体移送用包装具によって包装することで、第2係合部に係合している第2軸部材が挿通させられたハブを、第1係合部に係合している第1軸部材が挿通させられたハブに対して離間させた状態で移送することができる。このため、ハブの周面に傷付きや変形を生じさせることなく、さらに多くのハブを移送することができる結果、空のハブの移送に要するコストを一層低減することができる。
【0017】
また、本発明に係る情報記録媒体移送用包装具によれば、第1係合部の中心を中心として各第2係合部を等角度間隔で形成して板状部材を構成したことにより、各第2係合部に係合させた第2軸部材が板状部材の中心に対して等角度間隔で配置されるため、空のハブを包装した情報記録媒体移送用包装具を包装材によって包装するときなどに、対向している板状部材に傾きが生じる事態を回避して、その荷姿を包装時の姿に維持することができる。
【0018】
また、本発明に係る移送方法によれば、上記のいずれかの情報記録媒体移送用包装具を使用して積層体を包装して積層体を任意の移送先に移送すると共に、任意の移送先においてテープ状情報記録媒体が巻回されていないハブの中心孔に挿通させた各軸部材を各係合部に係合させることでテープ状情報記録媒体が巻回されていないハブを包装して他の任意の移送先にハブを移送することにより、積層体の移送に使用した情報記録媒体移送用包装具を使用して空のハブを移送することで、空のハブを移送するための専用の包装具を別途用意する必要がなくなるため、空のハブを移送するのに要するコストを十分に低減することができる。また、この情報記録媒体移送用包装具によって包装した空のハブを、積層体の移送元に移送する場合には、空のハブの移送が完了した情報記録媒体移送用包装具を、積層体の移送時に再利用することができるため、積層体の移送に要するコストも十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】パンケーキ5の積層体6を包装した状態の磁気テープ移送用包装具1,1a,1b,1A,1Aa,1Abの側面図である。
【図2】パンケーキ5の積層体6を包装した状態の磁気テープ移送用包装具1,1aの断面図である。
【図3】磁気テープ移送用包装具1の分解斜視図である。
【図4】磁気テープ移送用包装具1の板状部材11における各係合用凹部21〜23の位置関係について説明するための平面図である。
【図5】図4におけるA−A線で磁気テープ移送用包装具1を切断した切断面、および図6におけるB−B線で磁気テープ移送用包装具1aを切断した切断面の図である。
【図6】磁気テープ移送用包装具1aの板状部材11aにおける各係合用凹部21,22の位置関係について説明するための平面図である。
【図7】磁気テープ移送用包装具1bの板状部材11bにおける各係合用凹部21,22の位置関係について説明するための平面図である。
【図8】磁気テープ移送用包装具1Aの板状部材11Aにおける各係合用凹部21〜23の位置関係について説明するための平面図である。
【図9】図8におけるC−C線で磁気テープ移送用包装具1Aを切断した切断面、および図10におけるD−D線で磁気テープ移送用包装具1Aaを切断した切断面の図である。
【図10】磁気テープ移送用包装具1Aaの板状部材11Aaにおける各係合用凹部21,22の位置関係について説明するための平面図である。
【図11】磁気テープ移送用包装具1Abの板状部材11Abにおける各係合用凹部21〜23の位置関係について説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る情報記録媒体移送用包装具および移送方法の実施の形態について説明する。
【0021】
図1,2に示す磁気テープ移送用包装具1は、「情報記録媒体移送用包装具」の一例であって、中心孔2aが設けられたハブ2の周囲に磁気テープ3(「テープ状情報記録媒体」の一例)が巻回されたパンケーキ5(「巻回体」の一例:図2,3参照)を磁気テープ3の幅方向で複数(この例では、8巻)積層した積層体6を包装(収納)可能に構成されている。なお、積層体6(パンケーキ5)の包装に際しては、図1,2に示す状態でシュリンクフィルム等の包装材で磁気テープ移送用包装具1の全体が覆われるが、本明細書において参照する各図では、各部の構成についての理解を容易とするために、この包装材の図示を省略する。この磁気テープ移送用包装具1は、図2,3に示すように、上記の積層体6を挟んで対向配置される一対の板状部材11と、ハブ2の中心孔2aに挿通させられると共に両端部が板状部材11にそれぞれ係合させられる軸部材12とを備えている。
【0022】
板状部材11は、図3,4に示すように、一例として、発泡スチロール等の各種発泡樹脂で平板状に形成されると共に、軸部材12を係合可能な係合用凹部21(「第1係合部」の一例)と、他の軸部材12を係合可能な4つの係合用凹部22および4つの係合用凹部23(「第2係合部」の一例)とが形成されている。なお、発泡樹脂に代えて、紙片の積層体や段ボール等で板状部材11を形成したり、スチロール、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどの各種樹脂材料で板状部材11を成形したりすることもできる(図示せず)。また、軸部材12は、一例として、ポリプロピレンやポリエチレン等の各種樹脂材料で円筒形に形成されている。なお、樹脂製の軸部材12に代えて、紙製の「軸部材」(図示せず)を使用することもできる。
【0023】
この場合、係合用凹部21は、板面中央部に形成されており、後述するように積層体6を磁気テープ移送用包装具1によって包装して移送する際や、空のハブ2(磁気テープ3が巻回されていないハブ2)を磁気テープ移送用包装具1によって包装して移送する際に、軸部材12が係合させられる。また、係合用凹部22,23は、係合用凹部21の周囲に形成されており、空のハブ2を磁気テープ移送用包装具1によって包装して移送する際に、軸部材12が係合させられる。
【0024】
また、係合用凹部22は、図4に示すように、係合用凹部21に係合させられる軸部材12(「第1軸部材」の一例)以外の4本の軸部材12(「第2軸部材」の一例)を係合可能に係合用凹部21の中心O1を中心として90°の等角度間隔で形成されている。この場合、各係合用凹部22は、その中心O2が係合用凹部21の中心O1に対してその中心O2がハブ2の直径よりも離間し、かつ、その中心O2同士がハブ2の直径よりも互いに離間するように形成されている。
【0025】
係合用凹部23は、係合用凹部21や係合用凹部22に係合させられる軸部材12以外の4本の軸部材12(「第2軸部材」の他の一例)を係合可能に係合用凹部21の中心O1を中心として90°の等角度間隔で形成されている。この場合、各係合用凹部23は、その中心O3が係合用凹部21の中心O1および各係合用凹部22の中心O2に対してハブ2の直径よりも離間するようにそれぞれ形成されている。
【0026】
また、本例の磁気テープ移送用包装具1では、各係合用凹部22の方が各係合用凹部23よりも板状部材11の板面中央部寄り(すなわち、係合用凹部21寄り)に位置するように、係合用凹部22および係合用凹部23が係合用凹部21の中心O1を中心として45°の等角度間隔で交互に配置されている。この場合、各係合用凹部22,23は、それぞれの一部分がパンケーキ5の収納範囲内(同図に示す領域A5の範囲内:本例では、パンケーキ5の半径の範囲内)に位置するように形成されている。
【0027】
この磁気テープ移送用包装具1を使用して、例えば、磁気テープ3の製造工場から、磁気テープ3を内装する磁気テープカートリッジの製造工場(「任意の移送先」の一例)まで積層体6(複数のパンケーキ5)を移送する際には、まず、磁気テープ移送用包装具1およびスペーサ13を使用して積層体6を包装する。この場合、スペーサ13は、パンケーキ5における磁気テープ3の端部に変形や傷付きが生じるのを防止すると共に、パンケーキ5に巻き崩れが生じるのを回避するための緩衝材であって、図2,3に示すように、パンケーキ5の直径よりも大径の円形状に形成されると共に、ハブ2の直径よりもやや小径の中心孔13aが中心部に形成されている。このスペーサ13は、一例として、厚み5mm程度の発泡無架橋ポリエチレンの板材の表裏両面に、厚み20μm程度の高密度ポリエチレンフィルムをホットプレートによって圧着した樹脂板で製作されている。
【0028】
包装作業に際しては、まず、一例として、係合用凹部21〜23の形成面を上向きにして一対の板状部材11のうちの一方を作業台の上に載置した後に、係合用凹部21に軸部材12の一端部を係合させる。次いで、中心孔13a,2aに軸部材12を挿通させるようにして、スペーサ13およびパンケーキ5を板状部材11の上に交互に積層し、さらに、8巻目のパンケーキ5の上にスペーサ13を積層する。これにより、板状部材11の上に積層体6が形成される。続いて、図2に示すように、積層体6を貫通させられている軸部材12の端部を一対の板状部材11のうちの他方における係合用凹部21に係合させるようにして積層体6の上に板状部材11を配設する。これにより、スペーサ13およびパンケーキ5を積層した積層体6が一対の板状部材11によって挟まれるようにして包装される。
【0029】
次いで、図示しないシュリンクフィルム等の包装材を使用して、積層体6を包装している磁気テープ移送用包装具1の全体を覆う。これにより、磁気テープ移送用包装具1による積層体6の包装作業が完了する。この後、包装作業が完了した複数の磁気テープ移送用包装具1を図示しない移送用の箱体に収容して、磁気テープカートリッジの製造工場まで移送する。
【0030】
また、移送先においては、箱体から各磁気テープ移送用包装具1を取り出して包装材を取り除いた後に、軸部材12から両板状部材11,11を取り外し、積層体6(パンケーキ5)から軸部材12を取り外して、図示しないテープ巻回装置に磁気テープ3を巻き取らせる。これにより、磁気テープ3の製造工場から磁気テープカートリッジの製造工場まで磁気テープ3を移送するのに使用した磁気テープ移送用包装具1(板状部材11および軸部材12)やハブ2が不要となる。したがって、磁気テープ移送用包装具1やハブ2を積層体6(パンケーキ5)の移送時に再利用するために、これらを磁気テープカートリッジの製造工場から磁気テープ3の製造工場(「他の任意の移送先」の一例)に移送(返送)する。なお、スペーサ13についても再利用することができるが、スペーサ13の製作コストが比較的安価であることと、傷付きや変形が生じたスペーサ13の再利用によってパンケーキ5(磁気テープ3)に与えるにダメージが大きいことから、本例では、スペーサ13を再利用することなく、磁気テープカートリッジの製造工場において破棄するものとする。
【0031】
具体的には、磁気テープカートリッジの製造工場から磁気テープ3の製造工場まで、板状部材11、軸部材12およびハブ2を移送する際には、まず、複数の磁気テープ移送用包装具1のうちの1つを使用して複数のハブ2および複数の軸部材12を包装する。具体的には、一例として、係合用凹部21〜23の形成面を上向きにして1枚の板状部材11を作業台の上に載置した後に、係合用凹部21〜23に軸部材12の一端部をそれぞれ係合させる。次いで、中心孔2aに軸部材12を挿通させるようにして、1本の軸部材12につき8個のハブ2を積層する。続いて、図5に示すように、他の1枚の板状部材11における係合用凹部21〜23に各軸部材12の端部をそれぞれ係合させるようにして各ハブ2の上に板状部材11を配設する。これにより、8×9=72個のハブ2と、8本の軸部材12とが1つの磁気テープ移送用包装具1によって包装される。
【0032】
次いで、図示しないシュリンクフィルム等の包装材を使用して、ハブ2や軸部材12を包装している磁気テープ移送用包装具1の全体を覆う。これにより、磁気テープ移送用包装具1によるハブ2および軸部材12の包装作業が完了する。この後、包装作業が完了した磁気テープ移送用包装具1を、図示しない移送用の箱体に収容して、磁気テープ3の製造工場まで移送する。なお、上記の磁気テープ移送用包装具1によって空のハブ2と共に軸部材12が包装された8個の磁気テープ移送用包装具1における板状部材11については、一例として、8枚ずつ2組に分けて積層して、空のハブ2を包装している磁気テープ移送用包装具1と共に移送用の箱体に収容して、磁気テープ3の製造工場まで移送する。
【0033】
この場合、前述したように、この磁気テープ移送用包装具1では、各係合用凹部22の中心O2が係合用凹部21の中心O1に対してハブ2の直径よりも離間し、かつ、各係合用凹部22の中心O2同士がハブ2の直径よりも互いに離間するように形成されている。したがって、この磁気テープ移送用包装具1によって各ハブ2を包装した状態においては、図4,5に示すように、係合用凹部22に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2が、係合用凹部21に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2に対して離間した状態が維持される。
【0034】
また、この磁気テープ移送用包装具1では、各係合用凹部23の中心O3が係合用凹部21の中心O1および各係合用凹部22の中心O2に対してハブ2の直径よりも離間するように形成されている。したがって、この磁気テープ移送用包装具1によって各ハブ2を包装した状態においては、図4に示すように、係合用凹部23に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2が、係合用凹部21に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2、および係合用凹部22に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2に対して離間した状態が維持される。これにより、磁気テープ移送用包装具1によって包装した状態の空のハブ2の移送中に、そのハブ2の周面に傷付きや変形が生じる事態が回避される。
【0035】
このように、この磁気テープ移送用包装具1では、中心孔2aが設けられたハブ2の周囲に磁気テープ3が巻回されたパンケーキ5を磁気テープ3の幅方向で複数積層した積層体6を挟んで対向配置される一対の板状部材11と、ハブ2の中心孔2aに挿通させられると共に両端部が両板状部材11にそれぞれ係合させられる軸部材12とを備え、板状部材11は、積層体6の包装時に軸部材12を係合可能な係合用凹部21と、他の軸部材12をそれぞれ係合可能な複数の係合用凹部22,23(本例では、4つの係合用凹部22、および4つの係合用凹部23)とが設けられて構成され、各係合用凹部22,23は、それぞれの少なくとも一部分がパンケーキ5の収納範囲内(領域A5内)に位置すると共に、各係合用凹部22,23の中心O2,O3同士がハブ2の直径よりも互いに離間するように形成されている。
【0036】
このため、この磁気テープ移送用包装具1によれば、各係合用凹部22,23に係合させた軸部材12を中心孔2aに挿通させるようにして、複数のハブ2(本例では、1本の軸部材12につき8個のハブ2)を積層した状態で磁気テープ移送用包装具1によって包装することで、係合用凹部22、または、係合用凹部23に係合している軸部材12が挿通させられたハブ2を、他の係合用凹部22,23に係合している軸部材12が挿通させられたハブ2に対して離間させた状態で移送することができるため、ハブ2の周面に傷付きや変形を生じさせることなく移送することができる。したがって、この磁気テープ移送用包装具1によれば、例えば磁気テープカートリッジの製造工場から磁気テープ3の製造工場まで磁気テープ移送用包装具1によって包装して移送したハブ2を再利用する際に、磁気テープ3に変形や傷付きが生じる事態を回避することができる結果、磁気テープ3を使用して製造される磁気テープカートリッジの製造コストを十分に低減することができる。また、複数の係合用凹部22,23を設けたことにより、積層体6の移送時に包装したハブ2(係合用凹部21に係合させた軸部材12を中心孔2aに挿通させたハブ2:本例は8個のハブ2)よりも多くのハブ2を包装して移送することができるため、空のハブ2の移送に要するコストを十分に低減することができる。さらに、それぞれの少なくとも一部分がパンケーキ5の収納範囲内(領域A5内)に位置するように各係合用凹部22,23を形成したことにより、例えば、パンケーキ5の収納範囲外(領域A5外)に複数の「第2係合部」を形成する構成と比較して、パンケーキ5(積層体6)の包装に際して必要のない「第2係合部」を形成するために「板状部材」を過剰に大きくする必要がないため、磁気テープ移送用包装具1を十分に小形化することができる。
【0037】
また、この磁気テープ移送用包装具1によれば、係合用凹部21の中心O1に対して各係合用凹部22,23の中心O2,O3がハブ2の直径よりもそれぞれ離間するように板状部材11を形成したことにより、係合用凹部21に係合させた軸部材12、および係合用凹部22,23に係合させた軸部材12を中心孔2aに挿通させるようにして、複数のハブ2を積層した状態で磁気テープ移送用包装具1によって包装することで、係合用凹部22,23に係合している軸部材12が挿通させられたハブ2を、係合用凹部21に係合している軸部材12が挿通させられたハブ2に対して離間させた状態で移送することができる。このため、ハブ2の周面に傷付きや変形を生じさせることなく、さらに多くのハブ2を包装することができる結果、空のハブ2の移送に要するコストを一層低減することができる。
【0038】
また、この磁気テープ移送用包装具1によれば、複数の係合用凹部22,23(本例では、4つの係合用凹部22,および4つの係合用凹部23)を、係合用凹部21の中心O1を中心として等角度間隔(本例では、45°間隔)で形成して板状部材11を構成したことにより、各係合用凹部22,23に係合させた軸部材12が板状部材11の中心に対して等角度間隔で配置されるため、空のハブ2を包装した磁気テープ移送用包装具1を包装材によって包装するときなどに、対向している板状部材11に傾きが生じる事態を回避して、その荷姿を包装時の姿に維持することができる。
【0039】
また、この磁気テープ移送用包装具1を使用した積層体6やハブ2の移送方法によれば、磁気テープ移送用包装具1を使用して積層体6を包装して積層体6を任意の移送先に移送すると共に、その任意の移送先において磁気テープ3が巻回されていないハブ2の中心孔2aに挿通させた各軸部材12を各係合用凹部21〜23に係合させることで磁気テープ3が巻回されていないハブ2を包装して他の任意の移送先にハブ2を移送することにより、積層体6の移送に使用した磁気テープ移送用包装具1を使用して空のハブ2を移送することで、空のハブ2を移送するための専用の包装具を別途用意する必要がなくなるため、空のハブ2を移送するのに要するコストを十分に低減することができる。また、この磁気テープ移送用包装具1によって包装した空のハブ2を、積層体6の移送元に移送する場合には、空のハブ2の移送が完了した磁気テープ移送用包装具1を、積層体6の移送時に再利用することができるため、積層体6の移送に要するコストも十分に低減することができる。
【0040】
なお、「第1係合部」に相当する係合用凹部21、「第2係合部」に相当する4つの係合用凹部22および4つの係合用凹部23が形成された板状部材11を備えて構成した磁気テープ移送用包装具1を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、図6に示す磁気テープ移送用包装具1aのように、係合用凹部23を形成せずに、「第1係合部」に相当する係合用凹部21、および「第2係合部」に相当する係合用凹部22だけを形成した板状部材11aを備えて「情報記録媒体移送用包装具」を構成することもできる。この場合、この磁気テープ移送用包装具1aでは、係合用凹部23が形成されていない点を除き、その構成および使用方法は、前述した磁気テープ移送用包装具1と同様であるため、詳細な説明を省略する。同様にして、係合用凹部22を形成せずに、「第1係合部」に相当する係合用凹部21、および「第2係合部」に相当する係合用凹部23だけを形成した「板状部材(図示せず)」を備えて「情報記録媒体移送用包装具」を構成することもできる。また、以下、磁気テープ移送用包装具1の各構成要素と同じ機能を有するものについては、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0041】
また、8つの「第2係合部」が形成された板状部材11、および4つの「第2係合部」が形成された板状部材11aを有する磁気テープ移送用包装具1,1aを例に挙げて説明したが、「板状部材」に形成する「第2係合部」の数はこれらの例示に限定されない。例えば、図7に示す磁気テープ移送用包装具1bのように、「第2係合部」に相当する3つの係合用凹部22を、係合用凹部21の中心O1を中心として等角度間隔(この例では、120°間隔)で、かつ、各係合用凹部22の中心O2同士がハブ2の直径よりも互いに離間するように板状部材11bに形成することもできる。また、2つの係合用凹部22(または、2つの係合用凹部23)を形成した「板状部材」や、5つ以上の係合用凹部22(または、5つ以上の係合用凹部23)を形成した「板状部材」を備えて「情報記録媒体移送用包装具」を構成することもできる。これらの構成を採用した場合においても、係合用凹部21に係合させる軸部材12以外の軸部材12を係合用凹部22に係合させることができるため、より多くのハブ2を包装することができる結果、空のハブ2の移送に要するコストを十分に低減することができる。
【0042】
また、積層体6を包装して移送する際に軸部材12を係合させる係合用凹部21を、空のハブ2を包装して移送する際にも使用する構成の磁気テープ移送用包装具1,1a,1bの構成、およびその使用方法を例に挙げて説明したが、本発明に係る情報記録媒体移送用包装具および移送方法はこれに限定されない。具体的には、図1,8,9に示す磁気テープ移送用包装具1Aは、「情報記録媒体移送用包装具」の他の一例であって、前述した磁気テープ移送用包装具1,1a,1bと同様にして、中心孔2aが設けられたハブ2の周囲に磁気テープ3が巻回されたパンケーキ5を磁気テープ3の幅方向で複数(この例では、8巻)積層した積層体6を包装(収納)可能に構成されている。この磁気テープ移送用包装具1Aは、前述した磁気テープ移送用包装具1,1a,1bにおける板状部材11,11a,11bに代えて、一対の板状部材11Aを備え、「第1係合部」に相当する係合用凹部21を使用せずに空のハブ2を包装して移送する構成が採用されている。
【0043】
この場合、板状部材11Aは、各係合用凹部22の中心O2が係合用凹部21の中心O1に対してハブ2の直径よりも離間していない位置に形成されている点を除き、前述した磁気テープ移送用包装具1における板状部材11と同様に構成されている。また、軸部材12は、前述した磁気テープ移送用包装具1の軸部材12と同様に構成されている。したがって、この磁気テープ移送用包装具1Aの構成についての詳細な説明を省略する。また、この磁気テープ移送用包装具1Aを使用して磁気テープ3の製造工場から磁気テープカートリッジの製造工場まで積層体6(複数のパンケーキ5)を移送する際の包装作業については、前述した磁気テープ移送用包装具1による積層体6の移送時における一連の手順と同様のため、その説明を省略する。
【0044】
一方、磁気テープカートリッジの製造工場から磁気テープ3の製造工場まで、板状部材11A、軸部材12およびハブ2を移送(返送)する際には、まず、複数の磁気テープ移送用包装具1Aのうちの1つを使用して複数のハブ2および複数の軸部材12を包装する。具体的には、一例として、係合用凹部21〜23の形成面を上向きにして1枚の板状部材11Aを作業台の上に載置した後に、係合用凹部21には軸部材12を係合させずに、係合用凹部22〜23に軸部材12の一端部をそれぞれ係合させる。次いで、中心孔2aに軸部材12を挿通させるようにして、1本の軸部材12につき8個のハブ2を積層する。続いて、図9に示すように、他の1枚の板状部材11Aにおける係合用凹部22〜23に各軸部材12の端部をそれぞれ係合させるようにして各ハブ2の上に板状部材11Aを配設する。これにより、8×8=64個のハブ2と、7本の軸部材12とが1つの磁気テープ移送用包装具1Aによって包装される。
【0045】
次いで、図示しないシュリンクフィルム等の包装材を使用して、ハブ2や軸部材12を包装している磁気テープ移送用包装具1Aの全体を覆う。これにより、磁気テープ移送用包装具1Aによるハブ2および軸部材12の包装作業が完了する。この後、包装作業が完了した磁気テープ移送用包装具1Aを、図示しない移送用の箱体に収容し、磁気テープ3の製造工場まで移送する。なお、上記の磁気テープ移送用包装具1Aによって空のハブ2と共に軸部材12が包装された7個の磁気テープ移送用包装具1Aにおける板状部材11Aについては、一例として、7枚ずつ2組に分けて積層して、空のハブ2を包装している磁気テープ移送用包装具1Aと共に移送用の箱体に収容して、磁気テープ3の製造工場まで移送する。
【0046】
この場合、この磁気テープ移送用包装具1Aでは、各係合用凹部22の中心O2同士がハブ2の直径よりも互いに離間するように形成されている。したがって、この磁気テープ移送用包装具1Aによって各ハブ2を包装した状態においては、図8,9に示すように、係合用凹部22に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2が、他の係合用凹部22に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2に対して離間した状態が維持される。また、この磁気テープ移送用包装具1Aでは、各係合用凹部23の中心O3が各係合用凹部22の中心O2に対してハブ2の直径よりも離間するように形成されている。したがって、この磁気テープ移送用包装具1Aによって各ハブ2を包装した状態においては、図8に示すように、係合用凹部23に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2が、係合用凹部22に係合している軸部材12が挿通させられた8個のハブ2に対して離間した状態が維持される。これにより、磁気テープ移送用包装具1Aによって包装した状態の空のハブ2の移送中にハブ2の周面に傷付きや変形が生じる事態が回避される。
【0047】
このように、この磁気テープ移送用包装具1Aでは、中心孔2aが設けられたハブ2の周囲に磁気テープ3が巻回されたパンケーキ5を磁気テープ3の幅方向で複数積層した積層体6を挟んで対向配置される一対の板状部材11Aと、ハブ2の中心孔2aに挿通させられると共に両端部が両板状部材11Aにそれぞれ係合させられる軸部材12とを備え、板状部材11Aは、積層体6の包装時に軸部材12を係合可能な係合用凹部21と、他の軸部材12をそれぞれ係合可能な複数の係合用凹部22,23本例では、4つの係合用凹部22、および4つの係合用凹部23)とが設けられて構成され、各係合用凹部22,23は、それぞれの少なくとも一部分がパンケーキ5の収納範囲内(領域A5内)に位置すると共に、各係合用凹部22,23の中心O2,O3同士がハブ2の直径よりも互いに離間するように形成されている。
【0048】
したがって、この磁気テープ移送用包装具1Aによれば、各係合用凹部22,23に係合させた軸部材12を中心孔2aに挿通させるようにして、複数のハブ2(本例では、1本の軸部材12につき8個のハブ2)を積層した状態で磁気テープ移送用包装具1Aによって包装することで、係合用凹部22、または、係合用凹部23に係合している軸部材12が挿通させられたハブ2を、他の係合用凹部22,23に係合している軸部材12が挿通させられたハブ2に対して離間させた状態で移送することができるため、ハブ2の周面に傷付きや変形を生じさせることなく移送することができる。したがって、この磁気テープ移送用包装具1Aによれば、例えば磁気テープカートリッジの製造工場から磁気テープ3の製造工場まで磁気テープ移送用包装具1Aによって包装して移送したハブ2を再利用する際に、磁気テープ3に変形や傷付きが生じる事態を回避することができる結果、磁気テープ3使用して製造される磁気テープカートリッジの製造コストを十分に低減することができる。また、複数の係合用凹部22,23を設けたことにより、積層体6の移送時に包装したハブ2(係合用凹部21に係合させた軸部材12を中心孔2aに挿通させたハブ2:本例は8個のハブ2)よりも多くのハブ2を包装して移送することができるため、空のハブ2の移送に要するコストを十分に低減することができる。さらに、それぞれの少なくとも一部分がパンケーキ5の収納範囲内(領域A5内)に位置するように各係合用凹部22,23を形成したことにより、例えば、パンケーキ5の収納範囲外(領域A5外)に複数の「第2係合部」を形成する構成と比較して、パンケーキ5(積層体6)の包装に際して必要のない「第2係合部」を形成するために「板状部材」を過剰に大きくする必要がないため、磁気テープ移送用包装具1Aを十分に小形化することができる。
【0049】
また、この磁気テープ移送用包装具1Aによれば、係合用凹部21の中心O1を中心として各係合用凹部22,23を等角度間隔(本例では、45°間隔)で形成して板状部材11Aを構成したことにより、各係合用凹部22,23に係合させた軸部材12が板状部材11Aの中心に対して等角度間隔で配置されるため、空のハブ2を包装した磁気テープ移送用包装具1Aを包装材によって包装するときなどに、対向している板状部材11Aに傾きが生じる事態を回避して、その荷姿を包装時の姿に維持することができる。
【0050】
また、この磁気テープ移送用包装具1Aを使用した積層体6やハブ2の移送方法によれば、磁気テープ移送用包装具1Aを使用して積層体6を包装して積層体6を任意の移送先に移送すると共に、任意の移送先において磁気テープ3が巻回されていないハブ2の中心孔2aに挿通させた各軸部材12を各係合用凹部22〜23に係合させることで磁気テープ3が巻回されていないハブ2を包装して他の任意の移送先にハブ2を移送することにより、積層体6の移送に使用した磁気テープ移送用包装具1Aを使用して空のハブ2を移送することで、空のハブ2を移送するための専用の包装具を別途用意する必要がなくなるため、空のハブ2を移送するのに要するコストを十分に低減することができると共に、この磁気テープ移送用包装具1Aによって包装した空のハブ2を、積層体6の移送元に移送する場合には、空のハブ2の移送が完了した磁気テープ移送用包装具1Aを、積層体6の移送時に再利用することができるため、積層体6の移送に要するコストも十分に低減することができる。
【0051】
なお、「第1係合部」に相当する係合用凹部21、「第2係合部」に相当する係合用凹部22,23が形成された板状部材11Aを備えて構成した磁気テープ移送用包装具1Aを例に挙げて説明したが、例えば、図10に示す磁気テープ移送用包装具1Aaのように、係合用凹部23を形成せずに、「第1係合部」に相当する係合用凹部21、および「第2係合部」に相当する係合用凹部22だけを形成した板状部材11Aaを備えて「情報記録媒体移送用包装具」を構成することもできる。この場合、この磁気テープ移送用包装具1Aaでは、係合用凹部23が形成されていない点を除き、その構成および使用方法は、前述した磁気テープ移送用包装具1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。同様にして、係合用凹部22を形成せずに、「第1係合部」に相当する係合用凹部21、および「第2係合部」に相当する係合用凹部23だけを形成した「板状部材(図示せず)」を備えて「情報記録媒体移送用包装具」を構成することもできる。
【0052】
また、8つの「第2係合部」が形成された板状部材11A、および4つの「第2係合部」が形成された板状部材11Aaを有する磁気テープ移送用包装具1A,1Aaを例に挙げて説明したが、「板状部材」に形成する「第2係合部」の数はこれらの例示に限定されない。例えば、図11に示す磁気テープ移送用包装具1Abのように、「第2係合部」に相当する3つの係合用凹部22を、係合用凹部21の中心O1を中心として等角度間隔(この例では、120°間隔)で、かつ、各係合用凹部22の中心O2同士がハブ2の直径よりも互いに離間するように板状部材11Abに形成することもできる。また、2つの係合用凹部22(または、2つの係合用凹部23)を形成した「板状部材」や、5つ以上の係合用凹部22(または、5つ以上の係合用凹部23)を形成した「板状部材」を備えて「情報記録媒体移送用包装具」を構成することもできる。これらの構成を採用した場合においても、より多くのハブ2を包装することができる結果、空のハブ2の移送に要するコストを十分に低減することができる。
【0053】
さらに、「第1係合部」および「第2係合部」として、係合用の凹部(係合用凹部21〜23)を形成した例について説明したが、この凹部に代えて、係合用の孔(例えば丸孔)を「第1係合部」および「第2係合部」として「板状部材」に形成して情報記録媒体移送用包装具を構成することもできる。また、「テープ状情報記録媒体」の一例である磁気テープ3(磁気テープ3を巻回したパンケーキ5の積層体6)を包装可能に構成した例について説明したが、包装対象の「テープ状情報記録媒体」は「磁気テープ」に限定されず、撮像情報を記録する「テープ状の光学フィルム」などの各種の情報記録媒体がこれに含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1,1a,1b,1A,1Aa,1Ab 磁気テープ移送用包装具
2 ハブ
2a 中心孔
3 磁気テープ
5 パンケーキ
6 積層体
11,11a,11b,11A,11Aa,11Ab 板状部材
12 軸部材
13 スペーサ
13a 中心孔
21〜23 係合用凹部
A5 領域
O1〜O3 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔が設けられたハブの周囲にテープ状情報記録媒体が巻回された巻回体を当該テープ状情報記録媒体の幅方向で複数積層した積層体を包装可能に構成された情報記録媒体移送用包装具であって、
前記積層体を挟んで対向配置される一対の板状部材と、前記ハブの前記中心孔に挿通させられると共に両端部が前記両板状部材にそれぞれ係合させられる軸部材とを備え、
前記板状部材は、前記積層体の包装時に前記軸部材としての第1軸部材を係合可能な第1係合部と、前記第1軸部材以外の前記軸部材としての第2軸部材をそれぞれ係合可能な複数の第2係合部とが設けられて構成され、
前記各第2係合部は、それぞれの少なくとも一部分が前記巻回体の収納範囲内に位置すると共に、当該各第2係合部の中心同士が前記ハブの直径よりも互いに離間するように形成されている情報記録媒体移送用包装具。
【請求項2】
前記板状部材は、前記第1係合部の中心に対して前記各第2係合部の中心が前記ハブの直径よりもそれぞれ離間するように形成されて構成されている請求項1記載の情報記録媒体移送用包装具。
【請求項3】
前記板状部材は、前記第1係合部の中心を中心として前記各第2係合部が等角度間隔で形成されて構成されている請求項1または2記載の情報記録媒体移送用包装具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の情報記録媒体移送用包装具を使用して前記積層体を包装して当該積層体を任意の移送先に移送すると共に、当該任意の移送先において前記テープ状情報記録媒体が巻回されていない前記ハブの前記中心孔に挿通させた前記各軸部材を前記各係合部に係合させることで当該テープ状情報記録媒体が巻回されていない当該ハブを包装して他の任意の移送先に当該ハブを移送する移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−136246(P2012−136246A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289466(P2010−289466)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】