情報記録媒体
【課題】カードだけでなく種々の高付加価値商品に転写あるいは貼り付けで簡単に付加できる偽造防止機能を有する情報記録媒体を提供する。
【解決手段】本発明による情報記録媒体は、基材と、該基材の表面上に規則的または不規則的に設けた回折格子の凹凸が該回折格子の凹凸からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域と、該ホログラム領域の上にアモルファス強磁性材料で形成された強磁性体薄膜とを備え、偽造防止のための管理情報として該強磁性体薄膜に該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させたことを特徴とする構成を有している。この特徴的な磁気特性は、ホログラムパターンに応じた信号パターンとして読み取ることができる。
【解決手段】本発明による情報記録媒体は、基材と、該基材の表面上に規則的または不規則的に設けた回折格子の凹凸が該回折格子の凹凸からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域と、該ホログラム領域の上にアモルファス強磁性材料で形成された強磁性体薄膜とを備え、偽造防止のための管理情報として該強磁性体薄膜に該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させたことを特徴とする構成を有している。この特徴的な磁気特性は、ホログラムパターンに応じた信号パターンとして読み取ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリペイドカード・金券・債券・プログラムソフトのパッケージ等の高付加価値商品を、偽造防止のための管理情報を付加して実現することができる情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録媒体カードとしては(1)プリペイドカードや(2)キャシュカードが用いられている。(1)の例としてはNTT(日本電信電話株式会社)の発行するテレホンカードや日本カードシステムの発行するパチンコ遊技カードあるいは交通機関の発行する定期・切符・プリペイドカードなどがある。(2)の例としては銀行のキャッシュカードや信販会社のクレジットカードがある。これらが真正品であるかどうかは、カードに内蔵されていた磁気データを読み取り照合するか、またはカードに貼られた顔写真やホログラム等で真正品であるかどうか判定している。さらに、製造年月日または利用度数や暗証番号など製造・利用上の種々の管理情報をカード内に磁気データとして記録し、書き換えを行なっている。また、(3)商品券、ビール券などの金券類、(4)株式や公債などの証券類においても、偽造防止を目的に高度な印刷技術やホログラムなどを利用し、管理情報の書き込みにはバーコードなどを利用している。さらに、最近では、(5)コンピュータ用のプログラムソフトなどにも、それが真正品の証としてホログラムなどが利用されている。
【0003】
上記の高付加価値商品は変造・改ざんされ易く大きな社会問題となっている。これらのうちカード類((1)〜(2))については変造・改ざん防止対策として平成5年3月31日提出の特願平5−094846号「記録担体カードとその真偽判定装置」(出願人:岩崎通信機(株))が提案されている。この従来技術1では、記録担体カードは従来からある第一の磁気記録領域と、アモルファス強磁性体層からなる第二の記録領域とを備え、この第二の記録領域にはセキュリティコードを記録し、かつ、度数等を表示するパンチ穴を磁気的に検出できる構造を有している。従って、パンチ穴を隠す遮蔽材による改ざんを容易に検出できる優れた利点を有し、さらに前記第二の記録領域に設けたセキュリティコードは書換・消去が不可能で、常にそのコードを参照し真偽を判定できることになる。
【0004】
また、情報記録媒体としてアモルファス強磁性薄膜とホログラムを組み合わせた平成8年9月30日提出の特願平8−276878号「情報記録媒体」(出願人:岩崎通信機(株))が提案されている。この従来技術2は、ホログラムとアモルファス強磁性材とを備えることで、ホログラムが本来持つ機能に加え、アモルファスに記録された情報を磁気的に読み取ることができる。
【0005】
さらに、これらの磁性体に対し簡単に信号を付加する方法として、平成8年8月14日提出の特願平8−231288号「磁気パターンニングされた磁性体板とその製造方法」(出願人:岩崎通信機(株))が提案されている。この従来技術3では、平坦な基板上にインクの塗布または科学的・物理的手法により凹凸を設け、平坦な領域と凹凸を設けた領域とで磁気特性を変化させ、その違いにより記録した情報を磁気的に読みとることができるようにしている。
【特許文献1】特願平5−094846号公報
【特許文献2】特願平8−276878号公報
【特許文献3】特願平8−231288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、ホログラムは例えばミクロオーダの凹凸(回折格子)をフィルム表面に設け、この上に金属薄膜を形成し、立体映像や干渉色などその特徴的な模様を再生し偽造防止に利用している。このとき用いる金属は光を適度に反射すればよく、安価なアルミニウムなどが用いられ、磁性金属は一般に用いられていない。このミクロンオーダの凹凸を作製するには非常に高度な技術を要し簡単には偽造できないが、近年では偽造されるケースも生じてきた。
【0007】
磁気データを書き込む手法として前記の従来技術2(特願平8−276878号「情報記録媒体」)では材質の異なる磁性体を用いるか、または磁性体の有無によって情報を記録するようにしていた。従って、磁性材にはアモルファスを用い、かつホログラムとは別に磁性体に信号を書き込む必要があった。
【0008】
本発明の目的は、従来のプリペイドカードやキャシュカードさらには金券類などの高付加価値商品が比較的容易に偽造・変造できるという欠点を排除し、カードだけでなく種々の高付加価値商品に転写あるいは貼り付けで簡単に付加できる偽造防止機能を有する情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明による情報記録媒体は、基材と、該基材の表面上に規則的または不規則的に設けた回折格子の凹凸が該回折格子の凹凸からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域と、該ホログラム領域の上にアモルファス強磁性材料で形成された強磁性体薄膜とを備え、偽造防止のための管理情報として該強磁性体薄膜に該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させたことを特徴とする構成を有している。
【発明の効果】
【0010】
以上詳細に説明したように、本発明によるホログラム領域と磁性体を組み合わせることでセキュリティ性の高い情報記録媒体が得られ、磁気的に信号を読み取り真偽判定を行なうことができ、かつ、目視による画像認識あるいは機械読み取りといった光学的にも真偽判定することができる。さらには、必要に応じてホログラムで磁気信号を付加することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、光学的に真偽判定するホログラムと磁気的に信号読み取り及び真偽判定する磁性体膜とからなり、磁性体膜はホログラムの回折格子上に直接又は非磁性金属膜を介在させて形成されている。本発明で利用する磁性体は基本的には蒸着またはスパッタ等の気相成長による薄膜であるため、その磁気特性は表面状態、特に表面の凹凸に大きく左右される。強磁性体薄膜は、回折格子の凹凸の表面に沿って同様の凹凸形状に反射層として形成されており、場合により、基材と強磁性体薄膜の間又は強磁性体薄膜の次に、光の反射層として非磁性金属膜をさらに形成してもよい。このようにした場合には、強磁性体薄膜の色に影響されることなしに、非磁性金属の光沢色が反射光として外部から観測されるようになり、外見上は一般的なホログラムと変わらない情報記録媒体が与えられる。基材としては、通常樹脂フィルムが用いられるが、その表面上にホログラムパターンを形成することができ、種々の媒体に貼り付け・転写・挿入などで付加することができれば、金属・ガラス等の如き他の材料を用いることができる。なお、本発明で用いる強磁性体薄膜の材料としては、軟磁性材料,硬磁性材料を用いることができ、また、結晶性強磁性材料に限らずアモルファス(非結晶性)強磁性材料を用いることができる。さらに、本発明の情報記録媒体を種々の対象物体に貼付け・転写するときには、基板に透明な樹脂フィルム・ガラスなどを用いれば、強磁性体薄膜側を下に基材側を上にし、基材をホログラムの保護層として利用することができる。また、基材側を下に強磁性体薄膜を上にして、種々の対象
物に貼付け・転写するときには、透明な樹脂保護層を強磁性体層の上にさらに設けた方がよい。一般には、平坦な基板上に一方向に傷(スクラッチ)を入れるかあるいは、パターンニングによって微細な長方形に加工すると、形状磁気異方性が生じ、その傷あるいはパターンに沿って磁化容易軸を持つということが知られている。前述の従来技術3「磁気パターンニングされた磁性体板とその製造方法」(特願平8−231288号)では平坦な基板上にインクの塗布または化学的・物理的手法により凹凸を設け、平坦な領域と凹凸を設けた領域とで磁気特性を変化させ、その違いにより記録した情報を磁気的に読み取るとしていた。これに対し、本発明では例えば樹脂等の基材の表面にミクロン(μm)オーダの凹凸を規則的又は不規則的に設けた回折格子からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域を含ませ、このホログラム領域の上に強磁性体の薄膜を形成することで、この磁性膜にホログラムパターンまたはホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させている。なお、磁気特性の変化とは具体的には保持力、飽和磁束密度、角形比などの変化である。本発明による情報記録媒体の磁気特性は、本来の磁性材料が持つ磁気特性とホログラムパターンの形状効果との組合せによって特徴づけられている。
【0012】
第1番目の形態は、樹脂フィルムを基材とし、その表面に規則的に凹凸を設けた回折格子からなるホログラム領域が存在し、ホログラム領域は全面がひとつの決まった規則で回折格子が配列され、この回折格子上に強磁性体薄膜が直接形成されている。これを所定の形状に切り抜き、紙やプラスチックでできている高付加価値商品に接着で貼り付けるかまたは挿入することでその高付加価値商品の偽造を防止することができる。挿入など高付加価値商品の中に埋め込む場合には、磁気的に読み取れるように情報記録媒体を表面近傍に埋め込むか、あるいは光学的にホログラムを確認したい場合には磁気ホログラム情報記録媒体の少なくとも一部を表面に露出させる必要がある。また、ホログラムを形成する基材を薄くして、より厚い基材に予め貼り合わせておき、磁性体を成膜した後に接着層を設けておけば、任意の形状にホログラムを転写で貼り付けることができる。
【0013】
この第1番目の形態ではホログラム領域が情報記録媒体の全面もしくは一部に形成されている。例えば、ホログラムパターンを情報記録媒体の全面もしくは一部に形成するとき、ホログラムの回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが平行になるように一様に配置した場合において、その上に直接強磁性材料を形成したときに、全ホログラム領域で磁化容易軸が強く配向し、PET(ポリエステル)フィルムや鏡面非磁性金属板などの平坦な表面に強磁性材料を形成した場合と異なる磁気特性を示す。また、ホログラム領域内をいくつかに分割し、分割された各領域で回折格子の向きを変化させ異方性がなくなるように配置し、その上に強磁性材料を形成すると、面内磁気異方性がなくなり、どの方向から読み取っても同じ磁気特性を示す情報記録媒体が得られる。この情報記録媒体は磁気的に信号を読み取り、その磁気特性から真偽判定を行なうことができ、かつ、目視によりホログラムを確認することで光学的にも真偽判定ができるようになる。
【0014】
次に、第2番目の形態は、樹脂フィルムを基材としその表面に規則的に回折格子の凹凸を設けたホログラム領域が存在する有り区域とホログラム領域が無い無し区域が存在し、ホログラム領域では全面がひとつの決まった規則で回折格子が配列され、これらのホログラム領域が存在する有り区域と存在しない無し区域の両方の表面上に強磁性体薄膜が直接形成されている。こうすることで、ホログラム領0の有無に応じた2種類の磁気特性を情報記録媒体に保持させ、この磁気特性の違いを利用しデータを書き込むことができる。高付加価値商品へは、第1番目の形態の場合と同様に、貼り付け・挿入・転写により、付加することができる。
【0015】
この第2番目の形態では情報記録媒体にホログラム領域の有無に対応する有り区域と無し区域が所定の規則に則り設けてある。ホログラム領域の有無によって磁気信号を変化さ
せ、これをデータして利用する。例えば、強磁性材料を用いホログラムの回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが平行になるようにホログラム領域を配置した場合、ホログラム領域では磁化容易軸が強く配向し、ホログラム領域の有無で磁気特性が変化し、これを読み分け、信号を付与することができる。この情報記録媒体は磁気的に信号を読み取り、その磁気特性から真偽判定を行なうことができ、かつ、目視によりホログラムパターンを確認することで光学的にも真偽判定ができるようになり、さらには製造年月日または暗証番号など製造・利用上の種々の管理情報を高付加価値商品に磁気データとして記録できるようになる。
【0016】
さらに、第3番目の形態は、例えば回折格子の角度を変えるなどして少なくとも2種類以上の互いにパターンの異なるホログラム領域を存在させ、これらの上に軟磁性体の薄膜が直接形成されている。こうすることで、ホログラムのパターンに応じた2種類以上の磁気特性を情報記録媒体に保持させ、この磁気特性の違いを利用しデータを書き込むことができる。高付加価値商品へは、第1番目の形態の場合と同様に、貼りつけ・挿入・転写により、付加することができる。
【0017】
この第3番目の形態は2種類以上のパターンの異なるホログラムパターンを存在させてあり、ホログラムパターンが異なることで磁気特性も変化する。これをデータとして利用することができる。ここで云うパターンの異なるホログラムとは、回折格子のストライプの角度(方向)・ライン−ギャップの寸法が異なる回折格子のことである。パターンを変えることで磁気特性が変化する。例えば、強磁性材料を用いホログラムの回折格子を90°回転させながら交互にホログラムを配置した場合、ホログラムの回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが平行になった領域は回折格子が90°回転した領域と比べ、磁化容易軸が強く配向し、ホログラムパターンにより磁気特性が変化し、これを読み分け、信号を付与することができる。この情報記録媒体は磁気的に信号を読み取り、その磁気特性から真偽判定を行なうことができ、かつ、目視によりホログラムパターンを確認することで光学的にも真偽判定ができるようになり、さらには製造年月日または暗証番号など製造・利用上の種々の管理情報を高付加価値商品に磁気データとして記録できるようになる。
【0018】
また、第4番目の形態は、ホログラム領域内に肖像、立体画像、文字などの画像情報が書き込まれ、これらの上に強磁性体の薄膜が直接形成されている。こうすることで、ホログラム領域にパターンの形で書き込まれた画像情報に応じた磁気特性の変化が情報記録媒体に記録される。高付加価値商品へは第1番目の形態の場合と同様に、貼りつけ・挿入・転写により、付加することができる。
【0019】
この第4番目の形態は、一様なホログラム領域の一部に肖像、立体画像、文字などの画像情報を設けてある。この場合、画像情報の有無でも磁気特性が変化し、画像が設けられた領域内でも画像の形・画像情報の形成の仕方で磁気特性は連続的にあるいは不連続的に変化する。こうすることでホログラムに書き込まれた画像情報に応じた磁気特性の変化が磁気ホログラム情報記録媒体に記録される。例えば、ある一様なホログラム領域内に丸い図柄で別の回折格子パターンを設け、強磁性材料を用いた場合を考える。ある一様なホログラム領域内は回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが45°になるようにする。このホログラム領域内に設ける丸い図柄はホログラムの回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが平行になるようにする。これを磁気ヘッドで一方の端から他方の端まで読み取ると、回折格子が45°の一様な領域と回折格子が平行な丸い図柄の領域とでは磁気特性が異なり、丸い図柄固有の磁気特性変化を検出することができる。こうして図柄に応じた磁気特性の変化を読み分け、ある図柄を持つ情報記録媒体に固有の磁気特性変化を付与することができる。この情報記録媒体は磁気的に信号を読み取り、その磁気特性から真偽判定を行なうことができ、かつ、目視によりホログラムパターンを確認することで光学的にも真偽判定ができるようになり、さらにはホログラム領域内に書き込まれた画像情報に応じた磁気特
性の変化を読み取り、真正品の磁気特性の変化と参照しさらに高度な真偽判定が可能となる。
【0020】
本発明によれば、磁気信号を書き込むためにホログラムのパターンを直接利用しているため、別途信号の書き込みが不要であるという利点を有している。と同時にホログラム技術と組み合わせることで、従来にないセキュリティ素子が得られ、これを偽造することは甚だ困難となる。
【0021】
本発明によればアモルファス磁性体であっても結晶性強磁性体であっても、ホログラムの回折格子パターンを工夫することにより特徴的な磁気特性を保持させ、これを読み取り、真偽判定が可能となる。また、回折格子パターンを変えるか、あるいはホログラム領域にパターンの形で画像を予め書き込むことで、それらに応じた磁気データを情報記録媒体に保持させることが可能となる。また、この情報記録媒体の磁気特性を評価することは磁性体とホログラムの両方の出来映えを評価することになる。従って、仮に本発明による情報記録媒体を偽造した場合には、その偽造品の磁気特性を評価することでホログラムの出来映えと磁性体の出来映えの両方を評価することができ、両者が満たされていないと偽造品であることが簡単にわかるため、偽造が甚だ困難となり高いセキュリティを実現することができる。
【0022】
(実施例1)
図1(a)のように、ホログラムパターンを形成する回折格子4を情報記録媒体1用の基材2の全表面に設け、その上にFe系強磁性薄膜3を膜厚0.2μmで形成し、磁気信号を調べた。ここで云う磁気信号は図2のブロック図に示される読み取り装置で交流励磁したときに得られる波形をさす。なお、図1(b)は図1(a)に示す情報記録媒体1の端面の一部拡大図である。図2において、11は図1に示す情報記録媒体1の如き被判定物、12は交流の励磁電源、13は励磁コイル、8は磁気ヘッド、9は増幅器、10はオシロスコープであり、5は読み取り方向(励磁磁界の向き)である。情報記録媒体1および磁気ヘッド8の一方を他方に対して走査の方向と直交する方向に沿って走行させる走行駆動機構には、通常の適宜の走行駆動機構を用いることができるので、図2でも図示を省略している。本実施例は磁気的挙動を確認するためシリコンウェハの鏡面を基材2として用い、回折格子4は半導体プロセス用ポジ型レジストで形成した。セキュリティで用いられる実際のホログラムは、基材・回折格子ともに同一材料の樹脂で形成される場合が多いが、磁気特性に対する基材材質効果は低く、むしろその形状に大きく左右されるので、実際のホログラムでも同様なパルス波が得られる。ホログラムを形成する回折格子4の凹凸の配置方向は励磁の磁束と平行になるように形成し、回折格子4のラインの幅αは2μm,スペースの幅βは1μm,高さγは0.4μmとした。このパターンによりホログラム固有の干渉色がみられた。磁気特性はホログラムの回折格子4の区域Aに影響を受けパルス波が図3(a)に示すように現れた。図3(b)は図3(a)の部分拡大図である。ホログラム領域がない図14に示す比較例1では、実施例1と同様に磁性体を形成しても波高値の小さいパルスが図15に示すように得られるだけであって、図3に示すような波高値の大きいパルスは現れない。図4は、図1(a)の変形例であり、図4(a)は回折格子4に規則的湾曲部4aを設けた例であり、図4(b)はこの場合の図3(a)に相当するパルス波であり、回折格子4に設けられた規則的な湾曲部4aの位置でパルス波の波高値が若干低下する。図5に示すようにホログラムを形成する回折格子4の凹凸配列が多くの方向に向いていれば、それら各方向に沿って読み取っても磁気信号は同一となり、ほぼ異方性がなく読み取り方向を選ばない磁気ホログラム情報記録媒体が得られる。
【0023】
(実施例2)
実施例1と同様に基材2としてシリコンウェハを用い、ホログラムを形成したが、この実施例2では図6(a)に示す通り、ホログラム領域がある区域6(A領域)とホログラ
ム領域がない区域7(平坦な領域X)が存在し、それらが交互に配置されている。その上にFe系強磁性薄膜3を膜厚0.2μmで形成し、磁気信号の変化を調べた。このときホログラム領域がある区域6では回折格子4が励磁の磁束と平行になるようにした。図6(b)の一部拡大図に示すホログラム領域がある区域6と図6(c)の一部拡大図に示すホログラム領域がない区域7で磁気信号がどうなるかを調べた。読み取り装置は、図2のブロック図に示される装置で、実施例1と同様である。回折格子4のラインは1μm,スペースは1μm,高さは0.4μmとした。このパターンによりホログラム固有の干渉色がみられ、ストライプ状に存在していることがわかる。この実施例2において、磁気特性はホログラム領域の有無に対応してパルス波の波高が図7(a)とその拡大図である図7(b)に示すように変化した(図7)。すなわち、ホログラム領域がある区域6(A領域)では図7(b)に示すように大きなパルスが現れ、ホログラム領域がない区域7(X領域)では図7(c)に示すようにパルスもブロードになり波高値も小さくなった。このように目視あるいは光学読み取り装置でホログラムパターンを読み取ることができると同時にそれに対応した磁気信号も読み取ることができる。
【0024】
(実施例3)
実施例1と同様に基材2としてシリコンウェハを用い、図8(a)と図8(b)(c)の一部拡大図に示すように、ホログラムパターンを形成する回折格子4の凹凸の配列方向の角度を変えた回折格子4を同一面内に設け、その上にFe系強磁性薄膜3を膜厚0.2μmで形成し、磁気信号の変化を調べた。このときホログラムパターンは2種類で互いに角度が90°回転している。磁気読み取り信号は、図2のブロック図に示される読み取り装置で交流励磁したときに得られる波形である。回折格子4のラインは1μm,スペースは1μm,高さは0.4μmで共通で角度のみが異なる。このパターンによりホログラム固有の干渉色がみられ、角度の異なるホログラム領域間で色合いが異なり、ストライプを確認することができる。磁気特性はホログラムパターンを形成する回折格子4の凹凸の配列方向の角度に対応してパルス波が、図9(a)及び図9(b)(c)の一部拡大図に示すように、現れた。すなわち、パターンが0°(読み取り方向と回折格子4が平行:A領域)のときには図9(b)に示すように大きなパルスが現れ、90°(読み取り方向と回折格子が直交:B領域)のときには図9(c)に示すようにパルスもブロードになり波高値も小さくなった。目視あるいは光学読み取り装置でホログラムパターンが読み取れると同時にそれに対応した磁気信号を読み取ることができる。
【0025】
(実施例4)
実施例1と同様に基材2としてシリコンウェハを用いた、円形の図柄を持つホログラムの例である。図10(a)及び一部拡大図である図10(b)に示すように、ホログラム回折格子4の角度が励磁の磁束と45°である一様なホログラム領域内に励磁の磁束と平行な回折格子4の角度を持つ円形のホログラム領域を設けた。その上にFe系強磁性薄膜を膜厚0.2μmで形成し、磁気信号の変化を調べた。磁気信号は図2のブロック図に示される読み取り装置で交流励磁したときに得られる波形である。なお、本実施例では、磁気ヘッド8の読み取り幅を情報記録媒体の幅より大きくしておくことにより、ホログラムの図柄を磁気信号出力により読み取ることができる。回折格子4のラインは1μm,スペース1μm,高さは0.4μmで共通の角度のみが異なる。これらのパターンによりホログラム固有の干渉色がみられ、円形のホログラム領域Aと他の領域Cは異なる色合いとなった。磁気特性はホログラムパターンに対応してパルス波が、図11(a)とその拡大図である図11(b)(c)に示すように現れた。すなわち、パターンが45°(読み取り方向と回折格子4が45°)のときは小さなパルスが現れ、0°(読み取り方向と回折格子4が平行:A領域)である円形の図柄が現れるにしたがってパルスは次第に大きくなりやがて減少し、図柄を通り過ぎると図11(c)に示すように元の小さいなパルスとなった。このように目視あるいは光学読み取り装置で円形のホログラムパターンが読み取れると同時にそれに対応した磁気信号を読み取ることができる。
【0026】
上記実施例では単純なホログラムパターンについてのみ磁気特性を確認したが、セキュリティでよく用いられる立体画像を再生するホログラムパターンなどの複雑なパターンについても本発明による情報記録媒体がそのパターンに特徴づけられる磁気気性を有し、特殊な材料を用いなくても他磁性膜とは識別可能なものとすることが可能であることは容易に推察できる。
【0027】
(実施例5)
実施例1と同様に基材2としてシリコンウェハを用い、文字「A」の図柄を持つホログラムパターンの例である。図12に示すようにホログラム回折格子4の凹凸の配列角度が励磁の磁束と45°である一様なホログラム領域内に励磁の磁束と平行な回折格子4の凹凸の配列角度を持つ文字「A」の形をしたホログラム領域を設けた。その上にFe系強磁性薄膜を膜厚0.2μmで形成した。回折格子4のラインの幅は1μm、スペースの幅は1μm、高さは0.4μmで共通で角度のみが異なる。これらパターンによりホログラム固有の干渉色がみられ、「A」の形をしたホログラム領域と他の領域は異なる色合いとなる。図2のブロック図に示される読み取り装置を用い、図12に示すように磁気ヘッドの読み取り幅を例えば、文字「A」より充分小さくし情報記録媒体1の例えば幅方向の如き一定方向に対し20分割となるようにCH1 〜CH20の磁気ヘッド8を配置し、例えば(1)(2)(3)……(14)のように一定間隔毎に情報記録媒体1を一時停止させる調歩的又は連続的な走行駆動をして、図2では図示されていない適宜のスイッチング回路を用いて、その一時停止中に磁気ヘッド8のCH1 〜CH20を順次切り換える走査を行って読み取り出力パルス出力を発生させるように読み取り装置を動作させれば、図13に示すように「A」の形に対応してパルス波が現れる。すなわち、パターンが45°(読み取り方向と回折格子が45°)のときは小さなパルスが現れ、パターンが0°(読み取り方向と回折格子が平行)である文字「A」の図柄が現れる領域ではパルスは大きくなり、文字「A」を通り過ぎると元の小さなパルスとなる。なお、単一の磁気ヘッド8を前記一定方向に沿って移動させる構成により前記の走査をしてもよく、さらに情報記録媒体1の走行駆動は前記一定の方向の走査速度より例えば1/10程度以上低い走行速度であって、前の調歩的駆動に限らず連続的駆動を採用することができる。情報記録媒体1および磁気ヘッド8の一方を他方に対して走査の方向と直交する方向に沿って走行させる走行駆動機構には、通常の適宜の走行駆動機構を用いることができるので、図2でも図示を省略している。このように目視あるいは光学読み取り装置で「A」のホログラムパターンが読み取れると同時にそれぞれに対応した磁気信号を読み取ることができる。
【0028】
すなわち、このような構成により、基材(2)と、該基材の表面上に規則的または不規則的に設けた回折格子(4)の凹凸が該回折格子の凹凸からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域(A)と、該ホログラム領域の上に形成された強磁性体薄膜(3)とを備え、偽造防止のための管理情報として該強磁性体薄膜に該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させた情報記録媒体(1)を対象として、該情報記録媒体の前記ホログラム領域を一定の方向(5)に沿って交流励磁する励磁手段(12,13)と、該情報記録媒体からの前記交流励磁による出力信号を該ホログラム領域の前記一定の方向に沿って順次走査して取り出す磁気ヘッド手段(8)と、該情報記録媒体および前記磁気ヘッド手段の一方を、他方に対して前記走査の方向と直交する送り方向に沿って該走査の速度より十分低い走行速度で連続的にもしくは調歩的に走行駆動する走行駆動手段と、前記磁気ヘッド手段からの前記出力信号を前記順次走査と前記走行駆動に同期して可視表示する可視表示手段(10)とを備え、前記該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた信号パターンが該可視表示手段により観測されるように形成された情報読み取り装置が実現される。
【0029】
(比較例1)
回折格子4を形成していない基材2に、図14(a)とその一部拡大図である図14(b)に示すように、シリコンウェハと磁性体にはFe系強磁性材料を用い、膜厚0.2μmの磁性膜を形成し(X領域)、磁気特性を確認した。実施例1と同一方向の磁気信号を図15(a)とその一部拡大図である図15(b)に示す。得られるX領域の磁気信号はブロードなパルスであり、ホログラム領域が存在する場合とは明らかに異なることがわかる。
【0030】
図16(a)(b)はプリペイドカード、金券類などのプラスチック、紙からなる薄くて四角い高付加価値商品の表面に本発明の情報記録媒体を接着し、転写などの方法で貼り付けた例である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の模式図(a)と一部拡大図(b)である。
【図2】実施例1〜4および比較例1における読み取り装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】実施例1の記録媒体から得られる磁気信号(a)とその一部拡大図である。
【図4】実施例1の変形例を示す斜視図(a)とその磁気信号(b)である。
【図5】実施例1で多数方向にホログラムパターンを配置した例を示す斜視略図である。
【図6】実施例2の模式図(a)と一部拡大図(b)(c)である。
【図7】実施例2の記録媒体から得られる磁気信号(a)とその一部拡大図(b)(c)である。
【図8】実施例3の模式図(a)と一部拡大図(b)(c)である。
【図9】実施例3の記録媒体から得られる磁気信号(a)と一部拡大図(b)(c)である。
【図10】実施例4の模式図(a)と拡大図(b)である。
【図11】実施例4の記録媒体から得られる磁気信号(a)と一部拡大図(b)(c)である。
【図12】実施例5の記録媒体とその磁気信号を読み出すための読み取り装置の構造を説明するための斜視図である。
【図13】実施例5から得られる磁気信号例を示す図である。
【図14】比較例1の模式図(a)と一部拡大図(b)である。
【図15】比較例1の記録媒体から得られる磁気信号と一部拡大図(b)である。
【図16】本発明による情報記録媒体をカード(a)、金券類(b)に貼り付けたときの例を示す斜視略図である。
【符号の説明】
【0032】
1 情報記録媒体
2 基材
3 強磁性膜(強磁性体薄膜)
4 回折格子
4a,4b 湾曲部
5 読み取り方向(励磁磁界の向き)
6 ホログラムがある領域(有り区域)
7 ホログラムがない領域(無し区域)
8 磁気ヘッド
9 増幅器
10 オシロスコープ
11 被判定物(情報記録媒体)
12 励磁電源
13 励磁コイル
14 プリペイドカード
15 金券類
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリペイドカード・金券・債券・プログラムソフトのパッケージ等の高付加価値商品を、偽造防止のための管理情報を付加して実現することができる情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録媒体カードとしては(1)プリペイドカードや(2)キャシュカードが用いられている。(1)の例としてはNTT(日本電信電話株式会社)の発行するテレホンカードや日本カードシステムの発行するパチンコ遊技カードあるいは交通機関の発行する定期・切符・プリペイドカードなどがある。(2)の例としては銀行のキャッシュカードや信販会社のクレジットカードがある。これらが真正品であるかどうかは、カードに内蔵されていた磁気データを読み取り照合するか、またはカードに貼られた顔写真やホログラム等で真正品であるかどうか判定している。さらに、製造年月日または利用度数や暗証番号など製造・利用上の種々の管理情報をカード内に磁気データとして記録し、書き換えを行なっている。また、(3)商品券、ビール券などの金券類、(4)株式や公債などの証券類においても、偽造防止を目的に高度な印刷技術やホログラムなどを利用し、管理情報の書き込みにはバーコードなどを利用している。さらに、最近では、(5)コンピュータ用のプログラムソフトなどにも、それが真正品の証としてホログラムなどが利用されている。
【0003】
上記の高付加価値商品は変造・改ざんされ易く大きな社会問題となっている。これらのうちカード類((1)〜(2))については変造・改ざん防止対策として平成5年3月31日提出の特願平5−094846号「記録担体カードとその真偽判定装置」(出願人:岩崎通信機(株))が提案されている。この従来技術1では、記録担体カードは従来からある第一の磁気記録領域と、アモルファス強磁性体層からなる第二の記録領域とを備え、この第二の記録領域にはセキュリティコードを記録し、かつ、度数等を表示するパンチ穴を磁気的に検出できる構造を有している。従って、パンチ穴を隠す遮蔽材による改ざんを容易に検出できる優れた利点を有し、さらに前記第二の記録領域に設けたセキュリティコードは書換・消去が不可能で、常にそのコードを参照し真偽を判定できることになる。
【0004】
また、情報記録媒体としてアモルファス強磁性薄膜とホログラムを組み合わせた平成8年9月30日提出の特願平8−276878号「情報記録媒体」(出願人:岩崎通信機(株))が提案されている。この従来技術2は、ホログラムとアモルファス強磁性材とを備えることで、ホログラムが本来持つ機能に加え、アモルファスに記録された情報を磁気的に読み取ることができる。
【0005】
さらに、これらの磁性体に対し簡単に信号を付加する方法として、平成8年8月14日提出の特願平8−231288号「磁気パターンニングされた磁性体板とその製造方法」(出願人:岩崎通信機(株))が提案されている。この従来技術3では、平坦な基板上にインクの塗布または科学的・物理的手法により凹凸を設け、平坦な領域と凹凸を設けた領域とで磁気特性を変化させ、その違いにより記録した情報を磁気的に読みとることができるようにしている。
【特許文献1】特願平5−094846号公報
【特許文献2】特願平8−276878号公報
【特許文献3】特願平8−231288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、ホログラムは例えばミクロオーダの凹凸(回折格子)をフィルム表面に設け、この上に金属薄膜を形成し、立体映像や干渉色などその特徴的な模様を再生し偽造防止に利用している。このとき用いる金属は光を適度に反射すればよく、安価なアルミニウムなどが用いられ、磁性金属は一般に用いられていない。このミクロンオーダの凹凸を作製するには非常に高度な技術を要し簡単には偽造できないが、近年では偽造されるケースも生じてきた。
【0007】
磁気データを書き込む手法として前記の従来技術2(特願平8−276878号「情報記録媒体」)では材質の異なる磁性体を用いるか、または磁性体の有無によって情報を記録するようにしていた。従って、磁性材にはアモルファスを用い、かつホログラムとは別に磁性体に信号を書き込む必要があった。
【0008】
本発明の目的は、従来のプリペイドカードやキャシュカードさらには金券類などの高付加価値商品が比較的容易に偽造・変造できるという欠点を排除し、カードだけでなく種々の高付加価値商品に転写あるいは貼り付けで簡単に付加できる偽造防止機能を有する情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明による情報記録媒体は、基材と、該基材の表面上に規則的または不規則的に設けた回折格子の凹凸が該回折格子の凹凸からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域と、該ホログラム領域の上にアモルファス強磁性材料で形成された強磁性体薄膜とを備え、偽造防止のための管理情報として該強磁性体薄膜に該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させたことを特徴とする構成を有している。
【発明の効果】
【0010】
以上詳細に説明したように、本発明によるホログラム領域と磁性体を組み合わせることでセキュリティ性の高い情報記録媒体が得られ、磁気的に信号を読み取り真偽判定を行なうことができ、かつ、目視による画像認識あるいは機械読み取りといった光学的にも真偽判定することができる。さらには、必要に応じてホログラムで磁気信号を付加することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、光学的に真偽判定するホログラムと磁気的に信号読み取り及び真偽判定する磁性体膜とからなり、磁性体膜はホログラムの回折格子上に直接又は非磁性金属膜を介在させて形成されている。本発明で利用する磁性体は基本的には蒸着またはスパッタ等の気相成長による薄膜であるため、その磁気特性は表面状態、特に表面の凹凸に大きく左右される。強磁性体薄膜は、回折格子の凹凸の表面に沿って同様の凹凸形状に反射層として形成されており、場合により、基材と強磁性体薄膜の間又は強磁性体薄膜の次に、光の反射層として非磁性金属膜をさらに形成してもよい。このようにした場合には、強磁性体薄膜の色に影響されることなしに、非磁性金属の光沢色が反射光として外部から観測されるようになり、外見上は一般的なホログラムと変わらない情報記録媒体が与えられる。基材としては、通常樹脂フィルムが用いられるが、その表面上にホログラムパターンを形成することができ、種々の媒体に貼り付け・転写・挿入などで付加することができれば、金属・ガラス等の如き他の材料を用いることができる。なお、本発明で用いる強磁性体薄膜の材料としては、軟磁性材料,硬磁性材料を用いることができ、また、結晶性強磁性材料に限らずアモルファス(非結晶性)強磁性材料を用いることができる。さらに、本発明の情報記録媒体を種々の対象物体に貼付け・転写するときには、基板に透明な樹脂フィルム・ガラスなどを用いれば、強磁性体薄膜側を下に基材側を上にし、基材をホログラムの保護層として利用することができる。また、基材側を下に強磁性体薄膜を上にして、種々の対象
物に貼付け・転写するときには、透明な樹脂保護層を強磁性体層の上にさらに設けた方がよい。一般には、平坦な基板上に一方向に傷(スクラッチ)を入れるかあるいは、パターンニングによって微細な長方形に加工すると、形状磁気異方性が生じ、その傷あるいはパターンに沿って磁化容易軸を持つということが知られている。前述の従来技術3「磁気パターンニングされた磁性体板とその製造方法」(特願平8−231288号)では平坦な基板上にインクの塗布または化学的・物理的手法により凹凸を設け、平坦な領域と凹凸を設けた領域とで磁気特性を変化させ、その違いにより記録した情報を磁気的に読み取るとしていた。これに対し、本発明では例えば樹脂等の基材の表面にミクロン(μm)オーダの凹凸を規則的又は不規則的に設けた回折格子からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域を含ませ、このホログラム領域の上に強磁性体の薄膜を形成することで、この磁性膜にホログラムパターンまたはホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させている。なお、磁気特性の変化とは具体的には保持力、飽和磁束密度、角形比などの変化である。本発明による情報記録媒体の磁気特性は、本来の磁性材料が持つ磁気特性とホログラムパターンの形状効果との組合せによって特徴づけられている。
【0012】
第1番目の形態は、樹脂フィルムを基材とし、その表面に規則的に凹凸を設けた回折格子からなるホログラム領域が存在し、ホログラム領域は全面がひとつの決まった規則で回折格子が配列され、この回折格子上に強磁性体薄膜が直接形成されている。これを所定の形状に切り抜き、紙やプラスチックでできている高付加価値商品に接着で貼り付けるかまたは挿入することでその高付加価値商品の偽造を防止することができる。挿入など高付加価値商品の中に埋め込む場合には、磁気的に読み取れるように情報記録媒体を表面近傍に埋め込むか、あるいは光学的にホログラムを確認したい場合には磁気ホログラム情報記録媒体の少なくとも一部を表面に露出させる必要がある。また、ホログラムを形成する基材を薄くして、より厚い基材に予め貼り合わせておき、磁性体を成膜した後に接着層を設けておけば、任意の形状にホログラムを転写で貼り付けることができる。
【0013】
この第1番目の形態ではホログラム領域が情報記録媒体の全面もしくは一部に形成されている。例えば、ホログラムパターンを情報記録媒体の全面もしくは一部に形成するとき、ホログラムの回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが平行になるように一様に配置した場合において、その上に直接強磁性材料を形成したときに、全ホログラム領域で磁化容易軸が強く配向し、PET(ポリエステル)フィルムや鏡面非磁性金属板などの平坦な表面に強磁性材料を形成した場合と異なる磁気特性を示す。また、ホログラム領域内をいくつかに分割し、分割された各領域で回折格子の向きを変化させ異方性がなくなるように配置し、その上に強磁性材料を形成すると、面内磁気異方性がなくなり、どの方向から読み取っても同じ磁気特性を示す情報記録媒体が得られる。この情報記録媒体は磁気的に信号を読み取り、その磁気特性から真偽判定を行なうことができ、かつ、目視によりホログラムを確認することで光学的にも真偽判定ができるようになる。
【0014】
次に、第2番目の形態は、樹脂フィルムを基材としその表面に規則的に回折格子の凹凸を設けたホログラム領域が存在する有り区域とホログラム領域が無い無し区域が存在し、ホログラム領域では全面がひとつの決まった規則で回折格子が配列され、これらのホログラム領域が存在する有り区域と存在しない無し区域の両方の表面上に強磁性体薄膜が直接形成されている。こうすることで、ホログラム領0の有無に応じた2種類の磁気特性を情報記録媒体に保持させ、この磁気特性の違いを利用しデータを書き込むことができる。高付加価値商品へは、第1番目の形態の場合と同様に、貼り付け・挿入・転写により、付加することができる。
【0015】
この第2番目の形態では情報記録媒体にホログラム領域の有無に対応する有り区域と無し区域が所定の規則に則り設けてある。ホログラム領域の有無によって磁気信号を変化さ
せ、これをデータして利用する。例えば、強磁性材料を用いホログラムの回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが平行になるようにホログラム領域を配置した場合、ホログラム領域では磁化容易軸が強く配向し、ホログラム領域の有無で磁気特性が変化し、これを読み分け、信号を付与することができる。この情報記録媒体は磁気的に信号を読み取り、その磁気特性から真偽判定を行なうことができ、かつ、目視によりホログラムパターンを確認することで光学的にも真偽判定ができるようになり、さらには製造年月日または暗証番号など製造・利用上の種々の管理情報を高付加価値商品に磁気データとして記録できるようになる。
【0016】
さらに、第3番目の形態は、例えば回折格子の角度を変えるなどして少なくとも2種類以上の互いにパターンの異なるホログラム領域を存在させ、これらの上に軟磁性体の薄膜が直接形成されている。こうすることで、ホログラムのパターンに応じた2種類以上の磁気特性を情報記録媒体に保持させ、この磁気特性の違いを利用しデータを書き込むことができる。高付加価値商品へは、第1番目の形態の場合と同様に、貼りつけ・挿入・転写により、付加することができる。
【0017】
この第3番目の形態は2種類以上のパターンの異なるホログラムパターンを存在させてあり、ホログラムパターンが異なることで磁気特性も変化する。これをデータとして利用することができる。ここで云うパターンの異なるホログラムとは、回折格子のストライプの角度(方向)・ライン−ギャップの寸法が異なる回折格子のことである。パターンを変えることで磁気特性が変化する。例えば、強磁性材料を用いホログラムの回折格子を90°回転させながら交互にホログラムを配置した場合、ホログラムの回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが平行になった領域は回折格子が90°回転した領域と比べ、磁化容易軸が強く配向し、ホログラムパターンにより磁気特性が変化し、これを読み分け、信号を付与することができる。この情報記録媒体は磁気的に信号を読み取り、その磁気特性から真偽判定を行なうことができ、かつ、目視によりホログラムパターンを確認することで光学的にも真偽判定ができるようになり、さらには製造年月日または暗証番号など製造・利用上の種々の管理情報を高付加価値商品に磁気データとして記録できるようになる。
【0018】
また、第4番目の形態は、ホログラム領域内に肖像、立体画像、文字などの画像情報が書き込まれ、これらの上に強磁性体の薄膜が直接形成されている。こうすることで、ホログラム領域にパターンの形で書き込まれた画像情報に応じた磁気特性の変化が情報記録媒体に記録される。高付加価値商品へは第1番目の形態の場合と同様に、貼りつけ・挿入・転写により、付加することができる。
【0019】
この第4番目の形態は、一様なホログラム領域の一部に肖像、立体画像、文字などの画像情報を設けてある。この場合、画像情報の有無でも磁気特性が変化し、画像が設けられた領域内でも画像の形・画像情報の形成の仕方で磁気特性は連続的にあるいは不連続的に変化する。こうすることでホログラムに書き込まれた画像情報に応じた磁気特性の変化が磁気ホログラム情報記録媒体に記録される。例えば、ある一様なホログラム領域内に丸い図柄で別の回折格子パターンを設け、強磁性材料を用いた場合を考える。ある一様なホログラム領域内は回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが45°になるようにする。このホログラム領域内に設ける丸い図柄はホログラムの回折格子と読み取り励磁の磁束の向きが平行になるようにする。これを磁気ヘッドで一方の端から他方の端まで読み取ると、回折格子が45°の一様な領域と回折格子が平行な丸い図柄の領域とでは磁気特性が異なり、丸い図柄固有の磁気特性変化を検出することができる。こうして図柄に応じた磁気特性の変化を読み分け、ある図柄を持つ情報記録媒体に固有の磁気特性変化を付与することができる。この情報記録媒体は磁気的に信号を読み取り、その磁気特性から真偽判定を行なうことができ、かつ、目視によりホログラムパターンを確認することで光学的にも真偽判定ができるようになり、さらにはホログラム領域内に書き込まれた画像情報に応じた磁気特
性の変化を読み取り、真正品の磁気特性の変化と参照しさらに高度な真偽判定が可能となる。
【0020】
本発明によれば、磁気信号を書き込むためにホログラムのパターンを直接利用しているため、別途信号の書き込みが不要であるという利点を有している。と同時にホログラム技術と組み合わせることで、従来にないセキュリティ素子が得られ、これを偽造することは甚だ困難となる。
【0021】
本発明によればアモルファス磁性体であっても結晶性強磁性体であっても、ホログラムの回折格子パターンを工夫することにより特徴的な磁気特性を保持させ、これを読み取り、真偽判定が可能となる。また、回折格子パターンを変えるか、あるいはホログラム領域にパターンの形で画像を予め書き込むことで、それらに応じた磁気データを情報記録媒体に保持させることが可能となる。また、この情報記録媒体の磁気特性を評価することは磁性体とホログラムの両方の出来映えを評価することになる。従って、仮に本発明による情報記録媒体を偽造した場合には、その偽造品の磁気特性を評価することでホログラムの出来映えと磁性体の出来映えの両方を評価することができ、両者が満たされていないと偽造品であることが簡単にわかるため、偽造が甚だ困難となり高いセキュリティを実現することができる。
【0022】
(実施例1)
図1(a)のように、ホログラムパターンを形成する回折格子4を情報記録媒体1用の基材2の全表面に設け、その上にFe系強磁性薄膜3を膜厚0.2μmで形成し、磁気信号を調べた。ここで云う磁気信号は図2のブロック図に示される読み取り装置で交流励磁したときに得られる波形をさす。なお、図1(b)は図1(a)に示す情報記録媒体1の端面の一部拡大図である。図2において、11は図1に示す情報記録媒体1の如き被判定物、12は交流の励磁電源、13は励磁コイル、8は磁気ヘッド、9は増幅器、10はオシロスコープであり、5は読み取り方向(励磁磁界の向き)である。情報記録媒体1および磁気ヘッド8の一方を他方に対して走査の方向と直交する方向に沿って走行させる走行駆動機構には、通常の適宜の走行駆動機構を用いることができるので、図2でも図示を省略している。本実施例は磁気的挙動を確認するためシリコンウェハの鏡面を基材2として用い、回折格子4は半導体プロセス用ポジ型レジストで形成した。セキュリティで用いられる実際のホログラムは、基材・回折格子ともに同一材料の樹脂で形成される場合が多いが、磁気特性に対する基材材質効果は低く、むしろその形状に大きく左右されるので、実際のホログラムでも同様なパルス波が得られる。ホログラムを形成する回折格子4の凹凸の配置方向は励磁の磁束と平行になるように形成し、回折格子4のラインの幅αは2μm,スペースの幅βは1μm,高さγは0.4μmとした。このパターンによりホログラム固有の干渉色がみられた。磁気特性はホログラムの回折格子4の区域Aに影響を受けパルス波が図3(a)に示すように現れた。図3(b)は図3(a)の部分拡大図である。ホログラム領域がない図14に示す比較例1では、実施例1と同様に磁性体を形成しても波高値の小さいパルスが図15に示すように得られるだけであって、図3に示すような波高値の大きいパルスは現れない。図4は、図1(a)の変形例であり、図4(a)は回折格子4に規則的湾曲部4aを設けた例であり、図4(b)はこの場合の図3(a)に相当するパルス波であり、回折格子4に設けられた規則的な湾曲部4aの位置でパルス波の波高値が若干低下する。図5に示すようにホログラムを形成する回折格子4の凹凸配列が多くの方向に向いていれば、それら各方向に沿って読み取っても磁気信号は同一となり、ほぼ異方性がなく読み取り方向を選ばない磁気ホログラム情報記録媒体が得られる。
【0023】
(実施例2)
実施例1と同様に基材2としてシリコンウェハを用い、ホログラムを形成したが、この実施例2では図6(a)に示す通り、ホログラム領域がある区域6(A領域)とホログラ
ム領域がない区域7(平坦な領域X)が存在し、それらが交互に配置されている。その上にFe系強磁性薄膜3を膜厚0.2μmで形成し、磁気信号の変化を調べた。このときホログラム領域がある区域6では回折格子4が励磁の磁束と平行になるようにした。図6(b)の一部拡大図に示すホログラム領域がある区域6と図6(c)の一部拡大図に示すホログラム領域がない区域7で磁気信号がどうなるかを調べた。読み取り装置は、図2のブロック図に示される装置で、実施例1と同様である。回折格子4のラインは1μm,スペースは1μm,高さは0.4μmとした。このパターンによりホログラム固有の干渉色がみられ、ストライプ状に存在していることがわかる。この実施例2において、磁気特性はホログラム領域の有無に対応してパルス波の波高が図7(a)とその拡大図である図7(b)に示すように変化した(図7)。すなわち、ホログラム領域がある区域6(A領域)では図7(b)に示すように大きなパルスが現れ、ホログラム領域がない区域7(X領域)では図7(c)に示すようにパルスもブロードになり波高値も小さくなった。このように目視あるいは光学読み取り装置でホログラムパターンを読み取ることができると同時にそれに対応した磁気信号も読み取ることができる。
【0024】
(実施例3)
実施例1と同様に基材2としてシリコンウェハを用い、図8(a)と図8(b)(c)の一部拡大図に示すように、ホログラムパターンを形成する回折格子4の凹凸の配列方向の角度を変えた回折格子4を同一面内に設け、その上にFe系強磁性薄膜3を膜厚0.2μmで形成し、磁気信号の変化を調べた。このときホログラムパターンは2種類で互いに角度が90°回転している。磁気読み取り信号は、図2のブロック図に示される読み取り装置で交流励磁したときに得られる波形である。回折格子4のラインは1μm,スペースは1μm,高さは0.4μmで共通で角度のみが異なる。このパターンによりホログラム固有の干渉色がみられ、角度の異なるホログラム領域間で色合いが異なり、ストライプを確認することができる。磁気特性はホログラムパターンを形成する回折格子4の凹凸の配列方向の角度に対応してパルス波が、図9(a)及び図9(b)(c)の一部拡大図に示すように、現れた。すなわち、パターンが0°(読み取り方向と回折格子4が平行:A領域)のときには図9(b)に示すように大きなパルスが現れ、90°(読み取り方向と回折格子が直交:B領域)のときには図9(c)に示すようにパルスもブロードになり波高値も小さくなった。目視あるいは光学読み取り装置でホログラムパターンが読み取れると同時にそれに対応した磁気信号を読み取ることができる。
【0025】
(実施例4)
実施例1と同様に基材2としてシリコンウェハを用いた、円形の図柄を持つホログラムの例である。図10(a)及び一部拡大図である図10(b)に示すように、ホログラム回折格子4の角度が励磁の磁束と45°である一様なホログラム領域内に励磁の磁束と平行な回折格子4の角度を持つ円形のホログラム領域を設けた。その上にFe系強磁性薄膜を膜厚0.2μmで形成し、磁気信号の変化を調べた。磁気信号は図2のブロック図に示される読み取り装置で交流励磁したときに得られる波形である。なお、本実施例では、磁気ヘッド8の読み取り幅を情報記録媒体の幅より大きくしておくことにより、ホログラムの図柄を磁気信号出力により読み取ることができる。回折格子4のラインは1μm,スペース1μm,高さは0.4μmで共通の角度のみが異なる。これらのパターンによりホログラム固有の干渉色がみられ、円形のホログラム領域Aと他の領域Cは異なる色合いとなった。磁気特性はホログラムパターンに対応してパルス波が、図11(a)とその拡大図である図11(b)(c)に示すように現れた。すなわち、パターンが45°(読み取り方向と回折格子4が45°)のときは小さなパルスが現れ、0°(読み取り方向と回折格子4が平行:A領域)である円形の図柄が現れるにしたがってパルスは次第に大きくなりやがて減少し、図柄を通り過ぎると図11(c)に示すように元の小さいなパルスとなった。このように目視あるいは光学読み取り装置で円形のホログラムパターンが読み取れると同時にそれに対応した磁気信号を読み取ることができる。
【0026】
上記実施例では単純なホログラムパターンについてのみ磁気特性を確認したが、セキュリティでよく用いられる立体画像を再生するホログラムパターンなどの複雑なパターンについても本発明による情報記録媒体がそのパターンに特徴づけられる磁気気性を有し、特殊な材料を用いなくても他磁性膜とは識別可能なものとすることが可能であることは容易に推察できる。
【0027】
(実施例5)
実施例1と同様に基材2としてシリコンウェハを用い、文字「A」の図柄を持つホログラムパターンの例である。図12に示すようにホログラム回折格子4の凹凸の配列角度が励磁の磁束と45°である一様なホログラム領域内に励磁の磁束と平行な回折格子4の凹凸の配列角度を持つ文字「A」の形をしたホログラム領域を設けた。その上にFe系強磁性薄膜を膜厚0.2μmで形成した。回折格子4のラインの幅は1μm、スペースの幅は1μm、高さは0.4μmで共通で角度のみが異なる。これらパターンによりホログラム固有の干渉色がみられ、「A」の形をしたホログラム領域と他の領域は異なる色合いとなる。図2のブロック図に示される読み取り装置を用い、図12に示すように磁気ヘッドの読み取り幅を例えば、文字「A」より充分小さくし情報記録媒体1の例えば幅方向の如き一定方向に対し20分割となるようにCH1 〜CH20の磁気ヘッド8を配置し、例えば(1)(2)(3)……(14)のように一定間隔毎に情報記録媒体1を一時停止させる調歩的又は連続的な走行駆動をして、図2では図示されていない適宜のスイッチング回路を用いて、その一時停止中に磁気ヘッド8のCH1 〜CH20を順次切り換える走査を行って読み取り出力パルス出力を発生させるように読み取り装置を動作させれば、図13に示すように「A」の形に対応してパルス波が現れる。すなわち、パターンが45°(読み取り方向と回折格子が45°)のときは小さなパルスが現れ、パターンが0°(読み取り方向と回折格子が平行)である文字「A」の図柄が現れる領域ではパルスは大きくなり、文字「A」を通り過ぎると元の小さなパルスとなる。なお、単一の磁気ヘッド8を前記一定方向に沿って移動させる構成により前記の走査をしてもよく、さらに情報記録媒体1の走行駆動は前記一定の方向の走査速度より例えば1/10程度以上低い走行速度であって、前の調歩的駆動に限らず連続的駆動を採用することができる。情報記録媒体1および磁気ヘッド8の一方を他方に対して走査の方向と直交する方向に沿って走行させる走行駆動機構には、通常の適宜の走行駆動機構を用いることができるので、図2でも図示を省略している。このように目視あるいは光学読み取り装置で「A」のホログラムパターンが読み取れると同時にそれぞれに対応した磁気信号を読み取ることができる。
【0028】
すなわち、このような構成により、基材(2)と、該基材の表面上に規則的または不規則的に設けた回折格子(4)の凹凸が該回折格子の凹凸からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域(A)と、該ホログラム領域の上に形成された強磁性体薄膜(3)とを備え、偽造防止のための管理情報として該強磁性体薄膜に該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させた情報記録媒体(1)を対象として、該情報記録媒体の前記ホログラム領域を一定の方向(5)に沿って交流励磁する励磁手段(12,13)と、該情報記録媒体からの前記交流励磁による出力信号を該ホログラム領域の前記一定の方向に沿って順次走査して取り出す磁気ヘッド手段(8)と、該情報記録媒体および前記磁気ヘッド手段の一方を、他方に対して前記走査の方向と直交する送り方向に沿って該走査の速度より十分低い走行速度で連続的にもしくは調歩的に走行駆動する走行駆動手段と、前記磁気ヘッド手段からの前記出力信号を前記順次走査と前記走行駆動に同期して可視表示する可視表示手段(10)とを備え、前記該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた信号パターンが該可視表示手段により観測されるように形成された情報読み取り装置が実現される。
【0029】
(比較例1)
回折格子4を形成していない基材2に、図14(a)とその一部拡大図である図14(b)に示すように、シリコンウェハと磁性体にはFe系強磁性材料を用い、膜厚0.2μmの磁性膜を形成し(X領域)、磁気特性を確認した。実施例1と同一方向の磁気信号を図15(a)とその一部拡大図である図15(b)に示す。得られるX領域の磁気信号はブロードなパルスであり、ホログラム領域が存在する場合とは明らかに異なることがわかる。
【0030】
図16(a)(b)はプリペイドカード、金券類などのプラスチック、紙からなる薄くて四角い高付加価値商品の表面に本発明の情報記録媒体を接着し、転写などの方法で貼り付けた例である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の模式図(a)と一部拡大図(b)である。
【図2】実施例1〜4および比較例1における読み取り装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】実施例1の記録媒体から得られる磁気信号(a)とその一部拡大図である。
【図4】実施例1の変形例を示す斜視図(a)とその磁気信号(b)である。
【図5】実施例1で多数方向にホログラムパターンを配置した例を示す斜視略図である。
【図6】実施例2の模式図(a)と一部拡大図(b)(c)である。
【図7】実施例2の記録媒体から得られる磁気信号(a)とその一部拡大図(b)(c)である。
【図8】実施例3の模式図(a)と一部拡大図(b)(c)である。
【図9】実施例3の記録媒体から得られる磁気信号(a)と一部拡大図(b)(c)である。
【図10】実施例4の模式図(a)と拡大図(b)である。
【図11】実施例4の記録媒体から得られる磁気信号(a)と一部拡大図(b)(c)である。
【図12】実施例5の記録媒体とその磁気信号を読み出すための読み取り装置の構造を説明するための斜視図である。
【図13】実施例5から得られる磁気信号例を示す図である。
【図14】比較例1の模式図(a)と一部拡大図(b)である。
【図15】比較例1の記録媒体から得られる磁気信号と一部拡大図(b)である。
【図16】本発明による情報記録媒体をカード(a)、金券類(b)に貼り付けたときの例を示す斜視略図である。
【符号の説明】
【0032】
1 情報記録媒体
2 基材
3 強磁性膜(強磁性体薄膜)
4 回折格子
4a,4b 湾曲部
5 読み取り方向(励磁磁界の向き)
6 ホログラムがある領域(有り区域)
7 ホログラムがない領域(無し区域)
8 磁気ヘッド
9 増幅器
10 オシロスコープ
11 被判定物(情報記録媒体)
12 励磁電源
13 励磁コイル
14 プリペイドカード
15 金券類
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の表面上に規則的または不規則的に設けた回折格子の凹凸が該回折格子の凹凸からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域と、該ホログラム領域の上にアモルファス強磁性材料で形成された強磁性体薄膜とを備え、偽造防止のための管理情報として該強磁性体薄膜に該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させたことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記基材の表面上には、前記ホログラム領域を形成した有り区域と前記ホログラム領域を形成しない無し区域とが存在し、前記有り区域と前記無し区域とによる前記ホログラム領域の形状パターンにより前記強磁性体薄膜に前記磁気特性の変化を有せしめたことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記ホログラム領域内に前記回折格子の前記規則的な凹凸の配置角度の変化を含む2種以上のホログラムパターンが形成され、前記強磁性体薄膜に該ホログラムパターンの種類に対応する前記磁気特性の変化を有せしめたことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記ホログラム領域内に肖像、立体画像、文字などの画像情報が書き込まれた前記ホログラムパターンが形成され、前記強磁性体薄膜に該ホログラムパターンに応じた前記磁気特性の変化を有せしめたことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記強磁性体薄膜が軟磁性材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記強磁性体薄膜が硬磁性材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の情報記録媒体。
【請求項1】
基材と、該基材の表面上に規則的または不規則的に設けた回折格子の凹凸が該回折格子の凹凸からの反射光でホログラムパターンとして観測されるように形成されたホログラム領域と、該ホログラム領域の上にアモルファス強磁性材料で形成された強磁性体薄膜とを備え、偽造防止のための管理情報として該強磁性体薄膜に該ホログラムパターンまたは該ホログラム領域の形状パターンに応じた特徴的な磁気特性を保持させたことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記基材の表面上には、前記ホログラム領域を形成した有り区域と前記ホログラム領域を形成しない無し区域とが存在し、前記有り区域と前記無し区域とによる前記ホログラム領域の形状パターンにより前記強磁性体薄膜に前記磁気特性の変化を有せしめたことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記ホログラム領域内に前記回折格子の前記規則的な凹凸の配置角度の変化を含む2種以上のホログラムパターンが形成され、前記強磁性体薄膜に該ホログラムパターンの種類に対応する前記磁気特性の変化を有せしめたことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記ホログラム領域内に肖像、立体画像、文字などの画像情報が書き込まれた前記ホログラムパターンが形成され、前記強磁性体薄膜に該ホログラムパターンに応じた前記磁気特性の変化を有せしめたことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記強磁性体薄膜が軟磁性材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記強磁性体薄膜が硬磁性材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の情報記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−213094(P2007−213094A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110292(P2007−110292)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【分割の表示】特願平10−88237の分割
【原出願日】平成10年3月18日(1998.3.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【分割の表示】特願平10−88237の分割
【原出願日】平成10年3月18日(1998.3.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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