説明

情報記録媒体

【課題】ユーザーが繰り返し、情報記録層に記録された情報に影響を与えることなく、筆記や筆記跡の消色を行なうことが可能なレーベル層を有する情報記録媒体を提供する。
【解決手段】光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層102と、レーベル層106とを有する情報記録媒体であって、前記レーベル層が、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含み、且つ、水により消色可能なインキによる筆記及び前記インキによる筆記跡の水による消色のために用いられることを特徴とする情報記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報記録媒体に関する。詳細には、レーベル層が水により消色可能なインキを用いての筆記、及び該筆記跡の消色のために用いられる情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子データを記録する際には情報記録媒体が広く用いられており、これらの情報記録媒体には、記録した内容やインデックス等を表記するレーベル部が設けられる。
前記レーベル部は、情報記録媒体の種類によって態様が異なる。例えば、ハードケースに収容されたMOやDVD−RAM等には、ユーザー等がシールを貼付する態様が一般的である。
また、CDやDVD等の情報記録媒体においては、ディスク表面に直接レーベル印刷する方法が、一般的である。
【0003】
また例えばCD−R、DVD−R、Blu−rayディスク等の書き込み型の情報記録媒体等においては、ディスク表面に設けられたレーベル層に情報記録媒体の内容等に応じて、ユーザーが文字等を書き込んだり、書き込んだ文字等を消去、さらには書き込み及び消去を繰り返し行なうことが求められている。そこで、レーベル層への筆記のためのマーキングペンが例えば特許文献1等に提案されている。該マーキングペンインキ組成物は、可逆熱変色組成を内包するマイクロカプセル顔料を含有しており、該インキ組成物による筆記跡は、加熱により消色可能である。
【0004】
また、ユーザーがレーベル層に、油性筆記具により筆記することも一般的に行なわれており、該筆記跡を消去する方法としては、例えばアルコール系の汎用溶媒により消去する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−299895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のマーキングペンインキ組成物を加熱により消色する際には、熱がレーベル層のみならず情報記録層にも伝わる可能性があり、レーベル層に繰り返し筆記及び消色を行なう場合には、情報記録層に記録したデータを損なう可能性があった。
また、油性筆記具により筆記された箇所を汎用溶媒を用いて消去する場合には、ディスクエッジより該汎用溶媒が情報記録層に浸透する可能性があり、情報記録データを失う可能性がある、という課題があった。
そこで、ユーザーが繰り返し、情報記録層に記録された情報に影響を与えることなく、筆記や筆記跡の消去を行なうことが可能な方法や、該方法に用いられるためのレーベル層を有する情報記録媒体の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らが鋭意研究を行なった結果、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含む、水により消色可能なインキによってレーベル層に筆記を行なうことにより、該インキにより筆記された箇所を水により消色することが可能であり、またこれらの操作を複数回繰り返した場合であっても、情報記録層に影響を与えることがないことを見出した。
【0008】
本発明の要旨は、光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層と、レーベル層とを有する情報記録媒体であって、前記レーベル層が、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含み、且つ、水により消色可能なインキによる筆記及び前記インキによる筆記跡の水による消色のために用いられることを特徴とする情報記録媒体に存する。
【0009】
また、前記レーベル層は、下記の方法により測定される表面のスクラッチ硬度が100g以上であることが好ましい。
(スクラッチ硬度の測定方法)
荷重が調整可能な先端半径0.2mmのサファイア製針に所定の荷重をかけた状態で前記レーベル層表面と前記針とを当接させ、前記針を速度100mm/minで移動させる。前記針のスクラッチ痕を目視にて確認し、スクラッチ痕が確認されなければ、前記荷重以上の硬度を有すると判定する。
【0010】
また、前記レーベル層が、芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である単官能モノマー、及び/または芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である多官能モノマーを一種以上含有し、前記単官能モノマー及び/または前記多官能モノマーの含有量の総量が50重量%以上である混合物を用いて形成されたことが好ましい。また前記混合物が、芳香環を構造中に含まず、且つウレタン系オリゴマー以外の紫外線硬化性オリゴマー、及び/または芳香環を構造中に含まないエポキシ樹脂モノマーを含有することが好ましい。
【0011】
また前記レーベル層の色相が、L*a*b*表色系のL*値が60以上であり、a*値の絶対値が15以下であり、且つb*値の絶対値が15以下であることが好ましく、前記L*値が60以上、90以下であることがより好ましい。
【0012】
また本発明の別の要旨は、光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層と、レーベル層とを有する情報記録媒体であって、前記レーベル層は、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含み、且つ、水により消色可能なインキによって筆記可能であり、前記インキによる筆記跡の水による消色及び前記水の乾燥後、前記筆記跡に前記インキによる再発色がないことを特徴とする情報記録媒体に存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の情報記録媒体によれば、ユーザーが水により消色可能なインキを用いて、容易にレーベル層に筆記が可能なものとすることができ、また該レーベル層に筆記した文字等が鮮明に保持されるものとすることができる。また該筆記跡は、水により消色可能であり、筆記跡を消色した箇所への再筆記も可能である。したがって、ユーザーが、情報記録媒体のレーベル層への筆記及び筆記跡の消色を容易な方法で確実に行なうことができる。
また、本発明においては筆記跡の消色に水を用いることから、消色の際、情報記録層に記録された情報に何ら影響を与えることがないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の情報記録媒体の層構成の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に記載する例示物等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に特定はされない。なお、本願明細書において(メタ)アクリレートと記載する場合には、アクリレート及びメタアクリレートを示すものとする。
【0016】
1.情報記録媒体
本発明の情報記録媒体は、光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層と、レーベル層とを少なくとも有するものである。
【0017】
本発明の情報記録媒体は、情報記録層とレーベル層とを有するものであれば、本発明の効果及び目的を損なわない限り、その種類に制限はない。本発明は、例えばCD−ROM、CD−R、CD+R、CD+RW、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD+RW、DVD−RW、DVD−RAM、Blu−ray等の各種ディスク状の情報記録媒体等に適用可能である。
【0018】
また、本発明の情報記録媒体の層構成についても、本発明の目的及び効果を損なわない限り、特に制限はない。例えば、CD−RやCD−RW等に代表される、基板/記録層/反射層/保護層/レーベル層がこの順に積層され、基板側から情報の記録又は再生を行なう構成であってもよく、また例えばBlu−rayディスクに代表される、保護層/記録層/反射層/基板/レーベル層がこの順に積層され、保護層側から情報の記録又は再生を行なう構成等であってもよい。また、例えばDVD−RやDVD−RW等に代表される、2枚の基板間に記録層及び反射層を有し、情報の記録又は再生を行なう光の入射面とは反対側の基板上にレーベル層が積層される貼り合わせ型の構成等であってもよい。
【0019】
(1)レーベル層
本発明の情報記録媒体におけるレーベル層は、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含み、且つ、水により消色可能なインキ(以下、「消色性インキ」ともいう。)による筆記及び前記インキによる筆記跡の水による消色のために用いられる層である。該レーベル層は、さらに目視で判別できる情報の表示のために用いられるものであってもよい。
レーベル層に表示される情報としては、情報記録媒体の種類(例えばCDやDVD等の方式、記録・書き換えが可能であるか否か、フォーマット情報等)、記録容量、情報記録媒体のブランド名、等が挙げられる。また、レーベル層が消色性インキにより筆記可能である旨や、水により筆記跡が消色可能である旨の表示がなされても良い。
【0020】
また、例えば図1の概略断面図に示すように、基板101/情報記録層102/反射層103/保護層104/レーベル層106がこの順に積層され、情報記録または再生のための光(レーザ光)107の照射が基板101側から行われる構成の情報記録媒体においては、レーベル層106は、情報記録層102及び反射層103を物理的な傷付け等から保護する役割を果たしてもよい。
【0021】
レーベル層への筆記は、通常、上記消色性インキをペン先等に含んだ筆記具によって行なわれ、筆記具の種類等は特に制限はないが、レーベル層の表面を摩耗しないように、消色性インキを塗布可能なものであることが好ましい。
また、消色性インキによる筆記跡の消色方法についても、特に制限はなく、例えば水を含ませたスポンジもしくは布等により、筆記跡を拭き取る方法や、レーベル層に流水を流す方法、レーベル層を水に浸漬する方法等が挙げられる。
【0022】
レーベル層は、1層からなるものであってもよく、また2層以上を積層したものであってもよい。レーベル層が2層以上を積層した層である場合には、最外層が消色性インキによって筆記可能な層とされる。
【0023】
また、レーベル層において、消色性インキによる筆記及び筆記跡の水による消色が行なわれる領域(以下、「筆記用領域」ともいう。)は、レーベル層全面であってもよく、またレーベル層の一部領域であってもよい。
また該筆記用領域内には、ユーザーが文字や模様等を筆記する際に、書きやすいように罫線やマス等を印刷等してもよい。罫線やマス等の印刷方法としては、後述するレーベル層の材料と同様の材料により、スクリーン印刷等により行なうことができる。これらの罫線やマス等の線の太さは、通常1mm以下、より好ましくは0.5mm以下とすることが好ましい。ただし、細くしすぎると密着性が低下する場合があるため、0.05mm以上が好ましく、更に好ましくは0.1mm以上である。
なお、罫線やマス等はレーベル層を形成する際に、スクリーンでマスクを施し、レーベル層形成用の混合物を抜く、すなわち罫線やマスとなる領域を抜いた形状でレーベル層を形成してもよい。
【0024】
またレーベル層の色相は、消色性インキの色がどのような色であっても見やすいものとするため、無彩色に近い色相であることが好ましい。具体的には、L*a*b表色系のL*値が60以上が好ましく、より好ましくは65以上である。またa*値の絶対値は15以下が好ましく、より好ましくは10以下である。またb*値の絶対値は15以下が好ましく、より好ましくは10である。
【0025】
また特に、レーベル層の色相をグレー色とすることにより、消色性インキによる筆記跡の消色後、筆記跡をより目立たないものにすることができることから好ましい。この場合に於けるL*a*b表色系のL*値は通常60以上、好ましくは65以上、且つ通常90以下、好ましくは85以下である。またこの際の、a*値及びb*値については、上記と同様とすることが好ましい。
なお、上述したように、レーベル層の一部領域のみを筆記用領域とする場合には、筆記用領域のみを、上記色相を有するものとしてもよい。
【0026】
上記色相とするためには、例えば後述するレーベル層を形成するための混合物中に、酸化チタンホワイトやカーボンブラック等の無機顔料や有色有機顔料、染料等の着色剤を含有させ、調色することで上記色相を得ることができる。なお、2層以上を積層してレーベル層とする場合には、最外層を上記色相を有するものとしてもよく、また下地となる層を上記色相を有するものとし、該下地となる層状に、可視光に対して透過性を有する層を積層してもよい。
【0027】
また、レーベル層は、下記の方法により測定される表面のスクラッチ硬度が100g以上であることが好ましく、より好ましくは150g以上である。レーベル層表面のスクラッチ硬度を、下限値以上とすることにより、消色性インキの成分がレーベル層内部に入り込み難く、筆記跡の消色性が良好となる。
(スクラッチ硬度の測定方法)
荷重が調整可能な先端半径0.2mmのサファイア製針に所定の荷重をかけた状態で前記レーベル層表面と前記針とを当接させ、前記針を速度100mm/minで移動させる。前記針のスクラッチ痕を目視にて確認し、スクラッチ痕が確認されなければ、前記荷重以上の硬度を有すると判定する。
【0028】
レーベル層の膜厚としては、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。また通常50μm以下であり、好ましくは30μm以下とされる。レーベル層の膜厚が薄すぎると筆記時の筆記圧耐性が足りない場合があり、厚すぎるとレーベル層の収縮により反りが大きくなる傾向があるため、この範囲内とすることが好ましい。なお、上述したように、レーベル層が2層以上の層からなる場合には、各層積層後の全体の膜厚が上記範囲であることが好ましい。
【0029】
また特に、レーベル層は、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含み、且つ、水により消色可能なインキ(すなわち、「消色性インキ」)によって筆記可能であり、前記インキによる筆記跡の水による消色及び前記水の乾燥後、前記筆記跡に前記インキによる再発色がないものであることが好ましい。筆記跡の水による消色及び水の乾燥後の再発色の有無の確認は、消色性インキによりレーベル層に筆記し、筆記部分を完全に乾燥させた後、水を用いて消色性インキが完全に消色するまで筆記跡を消色させる。その後、レーベル層上の水を軽く切り、該水を含んだままの状態で室温にて乾燥させた後、目視にて筆記跡とその周辺領域の色相の差を確認することにより行なわれる。
【0030】
(レーベル層の形成方法)
情報記録媒体のレーベル層の形成方法は、本発明の目的及び効果を損なわない限り特に制限はなく、例えばスクリーン印刷、バーコート法等を用いることができる。上記の中でも特に生産性が高く、また汎用性が高いことから、スクリーン印刷が好適である。
以下、レーベル層をスクリーン印刷法により形成する場合を例に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0031】
スクリーン印刷法によりレーベル層を形成する場合、後述の紫外線硬化性樹脂モノマーを含むレーベル層形成用の混合物を、レーベル層の下層となる層、例えば保護層や基板等の上に塗布し、塗布膜を形成する。次いで該塗布膜に紫外線照射することにより、紫外線硬化性樹脂モノマーを硬化させ、レーベル層を得る。なお、レーベル層が、2層以上の層からなる場合には、上記塗布及び硬化を複数回繰り返すことにより形成する。
【0032】
紫外線照射に用いられる光源としては、特に制限はなく、通常波長200nm以上、また通常波長450nm以下の光を照射可能なものが用いられる。光源の具体例としては、水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0033】
また、紫外線の照射エネルギー量としては、紫外線硬化性樹脂を硬化可能な量であればよく、通常150mJ/cm以上、好ましくは250mJ/cm以上である。また通常2000mJ/cm以下、好ましくは1000mJ/cm以下である。
【0034】
(レーベル層形成用の混合物)
レーベル層の形成に用いられる混合物としては、通常、紫外線硬化性樹脂モノマーを含有する。紫外線硬化性樹脂モノマーとしては、ラジカル重合型樹脂モノマー、及びカチオン重合型樹脂モノマーのいずれも用いることが可能であるが、一般にラジカル重合型の紫外線硬化性樹脂モノマーの反応速度が速いことから、ラジカル重合型の紫外線硬化性樹脂モノマーが好適である。
【0035】
ラジカル重合型の紫外線硬化性樹脂モノマーを用いる場合、混合物は通常、ラジカル重合型の樹脂モノマー、及びラジカル光重合開始剤を含有するものとすることができ、必要に応じてラジカル重合型の樹脂オリゴマー、その他の各種添加剤等を含有するものとしてもよい。またカチオン重合型樹脂モノマーを併用することも可能であり、この場合、混合物にカチオン系重合開始剤を併用して用いることが好ましい。
【0036】
・紫外線硬化性樹脂モノマー
本発明においては、樹脂モノマーとして、芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である単官能モノマー、及び/または芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である多官能モノマーを混合物中に1種以上含有することが好ましい。
【0037】
芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である単官能モノマー、及び/または芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である多官能モノマーを混合物中に所定量以上含有する混合物を用いてレーベル層を形成することにより、後述する消色性インキを用いてレーベル層に筆記後、筆記跡を水により消色した際の消色性を十分なものとすることができる。これは、通常消色性インキ中には電子受容性化合物(顕色剤)として、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物が含まれる。一般的に、芳香環を有する樹脂は、上記フェノール性水酸基を有する芳香族化合物と親和性を有しており、レーベル層中に芳香環を有する樹脂が多量に含まれている場合、該親和性によって、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物が水相に移行し難くなり、消色性が低下する傾向があることに基づく。また、ウレタンアクリレートモノマーを用いて形成したレーベル層は、一般に、消色性インキの成分が消色性インキ中の有機溶媒によって内部に入り込みやすく、消色性インキによる筆記跡の消色性が低下する傾向がある点にも基づく。上述の単官能及び/または多官能モノマーを用いることでインキ特性(混合物の特性)や、印刷適性、塗布膜特性(レーベル層の特性)も調整することができる。
【0038】
また混合物中には芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外の樹脂オリゴマー、及び/または芳香環を構造中に含まないエポキシ樹脂モノマーを含有することが好ましい。混合物中に含有される樹脂オリゴマーやエポキシ樹脂モノマーの種類や量によって、レーベル層の硬度やレーベル層と他の層との密着性、レーベル層の耐水性、耐湿性等を調整することができるため、これらに応じて適宜樹脂オリゴマーやエポキシ樹脂モノマーを用いることが好ましい。
【0039】
混合物中における該単官能モノマー及び/または多官能モノマーの含有量の総量は好ましくは50重量%以上であり、また好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。また、紫外線硬化性オリゴマーの混合物中の含有量の総量は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、また通常40重量%以下、好ましくは20重量%以下である。これにより、上記記載の特性を得ることができる。
【0040】
芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である単官能モノマー、及び/または芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である多官能モノマーのうち、ラジカル重合性モノマーとしては(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられ、またカチオン重合性モノマーとしては芳香環を構造中に含まないエポキシ樹脂モノマーや、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。上記の芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である単官能モノマー、及び/または芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である多官能モノマーとしては、(メタ)アクリレート系モノマーが、好ましい。
【0041】
芳香環を構造中に含まない単官能(メタ)アクリレートとしては例えばイソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)クリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、クロロヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
また芳香環を構造中に含まない多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジメチロールトリシクロデカン、ジシクロペンタジエニル等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
また、芳香環を構造中に含まないエポキシ樹脂モノマーとしては、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、等が挙げられる。上記エポキシ系樹脂モノマーの具体例としては、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレングレコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ樹脂モノマーの数平均分子量は、通常1万以下である。
【0044】
またビニルエーテル化合物系モノマーの具体例としては、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、等が挙げられる。
【0045】
上記の中でも特に、ジ(メタ)アクリレートが、消色性インキの消色性が良好であることから好適である。特に好ましいものとしては、エチレングレコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
芳香環を含まず、且つウレタン系オリゴマー以外の紫外線硬化性オリゴマーとしては、例えばアクリル系オリゴマー、エポキシ系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、エーテル系オリゴマー等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。混合物中に、芳香環を含まず、且つウレタン系オリゴマー以外の樹脂オリゴマーを含有することにより、形成されるレーベル層の、上述したモノマーの場合と同様に、筆記跡を水により消色した際の消色性を十分なものとすることができる。
【0047】
具体的に、アクリル系オリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、上記モノマーと、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸などのビニルカルボン酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジル等のグリシジル基含有ビニル化合物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸クロライド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等から選ばれた化合物との共重合体が挙げられる。
【0048】
エポキシ系オリゴマーとしては、エポキシ樹脂にアクリレートを反応させたエポキシ系オリゴマー、ポリアリレート等も樹脂オリゴマー成分として使用することが出来る。
ポリエステル系オリゴマーとしては、例えば、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオー
ルから成るポリエステルジオールとアクリル酸とのエステル、等のオリゴマーが挙げられる。
エーテル系オリゴマーとしては、例えば、ポリプロピレングリコールとアクリル酸と
のエステル等が挙げられる。
【0049】
なお、本発明でいう紫外線硬化性オリゴマーとは、数平均分子量が、通常数千から1万未満のものをいう。一般に、モノマーだけではレーベル層に求められる全ての特性に合わせられないため、オリゴマーの種類や量の適正混合により、求められる特性にあったレーベル層が得られる。すなわち、硬度、密着性、耐水性、耐湿性等の特性が良好なレーベル層が得られる。
【0050】
・非感光性樹脂
本発明の混合物には、非感光性樹脂を混合してもよい。非感光性樹脂は、芳香環を構
造中に含まないものが好ましい。芳香環を構造中に含まない非感光性樹脂としては、例えば、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ポリブタジエン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、等の高分子物質が挙げられる。
また非感光性樹脂の混合物中の含有量の総量は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、また通常40重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0051】
・ 光重合開始剤
混合物に用いられる紫外線によりラジカルを発生させるラジカル光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン又はそのエーテル;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;ベンジル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタールなどのベンジル系化合物;1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロパンなどのヒドロキシアルキルフェニルケトン系化合物;等を挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
一方、カチオン重合型樹脂を単独またはラジカル光重合型樹脂と併用して用いる場合はカチオン重合型樹脂に、紫外線によってカチオンを発生させる光酸発生剤として、トリアリールスルホニウム塩(TAS)やジアリールヨードニウム塩(DAI)などが用いることができる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができ、ラジカル光重合開始剤と併用してもよい。
【0052】
混合物中における光重合開始剤の含有量としては、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、また通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。上記範囲内とすることにより、樹脂モノマーや樹脂オリゴマー等の硬化性を十分なものとすることができる。
【0053】
また、上記光重合開始剤とともに増感剤を併用することができる。増感剤としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N、N−ジメチルベンジルアミンおよび4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0054】
・その他
また、混合物は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、各種特性を改良する目的等で添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、熱重合禁止剤;ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤;可塑剤;エポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤;等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
これらは、紫外線硬化性樹脂(樹脂モノマー、樹脂オリゴマー、樹脂等)への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものが選択して用いられる。
【0055】
なお、スクリーン印刷法によりレーベル層を形成する場合、スクリーンメッシュの跡が塗膜表面に残ることがある。このスクリーンメッシュの跡が残った場合、レーベル層の光沢感が低くなる傾向がある。また上記消色性インキで筆記した際に、消色性インキが表面凹凸の凹部内に入り込み、筆記跡を水により消色する場合に、消色性インキの消色性が低下する場合がある。そこで、レーベル層形成用組成物中に、レベリング剤として界面活性剤を含有することが好ましい。また混合物が界面活性剤を含有することにより、混合物の塗布工程での消泡作用も期待できる。
【0056】
界面活性剤としては、例えば、ポリシロキサン類、アクリル共重合物等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。界面活性剤は、混合物中に通常10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは6重量%以下である。また通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上である。
【0057】
また、レーベル層の色相を調整するために、本発明の効果及び目的を損なわない範囲において、混合物中に顔料や染料等も含有するものとすることができる。これらは、レーベル層の色相に合わせて適宜選択され、上述したように、レーベル層の筆記用領域を無彩色のグレー色とする場合には、例えば無機顔料の酸化チタンホワイトとカーボンブラック等を配合調色して用いられる。
この他、有色顔料として、例えばイソインドリン、ベンズイミダゾロン、キナクリドン、ジオキサジン、銅フタロシアニン系等の有機顔料を用いて、本願記載の無彩色に近い色相に適時配合調色して用いることができる。
【0058】
具体的には カラーインデックスからPigment White 6(酸化チタン)、Pigment Black 7(カーボンブラック)、Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 151、Pigment Red 202、Pigment Violet 37、Pigment Blue 15:3 等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0059】
また染料では、メチン、ペリノン、アンスラキノン、フタロシアニン系等の油溶性染料を用いて、本願記載の無彩色に近い色相に適時配合調色して用いることができる。具体的には カラーインデックスから、Disperse Yellow 82、Solvent Red 135、Disperse Violet 57、Solvent Blue 67 等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0060】
また、レーベル層の耐擦傷性等を向上させるために、混合物中に酸化珪素(シリカ)、タルク、酸化チタン、クレー、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、珪藻土シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等の無機微粒子を添加することができる。この無機微粒子の粒子径は通常0.01μm以上、好ましくは0.5μm以上、また通常10μm以下、好ましくは5μm以下の粒子を含有させてもよい。該粒子の含有量は、レーベル層への消色性インキの筆記後の消色性を損なわない範囲とすることが好ましい。
【0061】
(2)情報記録層
本発明の情報記録媒体における情報の書き込み(記録)及び/又は読み取り(再生)は、好ましくは1μm程度に収束したレーザー光によって行なわれることが好ましい。レーザー光としては、例えば半導体レーザー光を好適に用いることができる。また情報記録層への情報の記録は、通常、レーザー光照射部分(記録部分)の記録層の材料の、溶融、蒸発、昇華、変形、変性等によって行なわれる。また、記録された情報の再生は、レーザー光照射部分と非照射部分との反射率の差を読み取ることにより行なわれる。
上記のレーザー光としては、半導体レーザー光が好適に使用される。
【0062】
情報記録層は、レーザ光の照射により電子情報(デジタル信号で記録されている情報等、その内容を何らかの再生装置で読み取る情報)が記録可能な材料により形成され、通常、有機物質よりなる情報記録層又は無機物質よりなる情報記録層として形成される。
【0063】
情報記録層が有機物質よりなる場合、主として有機色素が使用される。有機色素としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリフィリン色素等)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。上記の中でも含金属アゾ系色素、シアニン色素、フタロシアニン色素が好ましい。また特に、含金属アゾ系色素は、耐久性及び耐光性に優れているため好ましい。
【0064】
有機物質よりなる情報記録層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式成膜法や、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている湿式成膜法が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面から湿式成膜法が好ましく、スピンコート法が特に好ましい。
【0065】
情報記録層が無機物質より形成される場合は、例えば、光磁気効果により記録が行われるTb・Te・CoやDy・Fe・Co等の希土類遷移金属合金が使用される。また、相変化するGe・Te、Ge・Sb・Teのようなカルコゲン系合金も使用し得る。これらの層は、単層であっても良く、2層以上の複層で構成されていても良い。
【0066】
無機物質よりなる情報記録層の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面からスパッタリング法が特に好ましい。
また、情報記録層の膜厚は、記録層の種類により異なるが、下限は通常5nm、好ましくは10nmであり、上限は通常500nm、好ましくは300nmである。
なお、上記情報記録層は、記録/消色が可能な相変化型記録層であっても良い。
【0067】
(3)反射層
反射層は、通常、情報記録媒体に照射される光を反射する機能を有する。反射層は、基板に記録再生用の案内溝又はピットが設けられている場合は、これと対応した凹凸形状が生じている。
反射層を形成するための材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いものが挙げられ、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。これらの中でも、Au、Al、Agは、反射率が高く反射層の材料として適している。また、Agを主成分とするものは、コストが安く、反射率が高い等の点から特に好ましい。
【0068】
反射層の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面からスパッタリング法が特に好ましい。また、反射層103の厚さの下限は通常30nm、好ましくは50nmであり、上限は通常150nm、好ましくは120nmである。
【0069】
(4)保護層
本発明の情報記録媒体には、保護層が形成されていてもよい。保護層は、通常、レーザ光透過性の材料により形成され、例えば、紫外線(UV)硬化性樹脂が挙げられる。紫外線(UV)硬化性樹脂の具体例としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料の殆どは、レーザ光透過物質であるため、好適に使用することができる。これらの紫外線(UV)硬化性樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、保護層は、一層の単層膜でも良く、2層以上の多層膜であっても良い。
【0070】
保護層を紫外線(UV)硬化性樹脂により形成する方法としては、通常、紫外線(UV)硬化性樹脂をそのまま、もしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を反射層上に塗布し、紫外線(UV)光を照射して硬化させることにより形成することができる。この場合、塗布方法としては、スピンコート法やキャスト法等を採用することができる。また、保護層は、上述した各種塗布法やスクリーン印刷法等の各種湿式成膜法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の各種乾式成膜等により形成することもでき、用いる材料に応じて適宜選択された方法で形成される。中でも湿式成膜法、特にスピンコート法が好ましく、一般的にはスピンコート法が用いられている。
また、保護層104の厚さの下限は通常1μm、好ましくは3μmであり、上限は通常15μm、好ましくは10μmである。
【0071】
(5)基板
本発明の情報記録媒体には、通常基板が用いられる。基板は、情報記録層に対する記録光及び再生光の入射方向によっては、記録光及び再生光の波長に対して透過性を有することが求められ、この場合には、該波長に対して透過性を有する材料により形成される。
【0072】
基板を形成するための材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂等の高分子材料の他、ガラス等の無機材料が使用される。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。上記の中でも特に、ポリカーボネート樹脂は、光の透過性が高く且つ光学的異方性が小さく、さらに、機械的強度が高い等の点で優れているので好ましい。また、耐薬品性、耐吸湿性、光学特性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。
【0073】
また、例えば図1の概略断面図に示すように、基板101が情報記録層102に接して形成される構成等においては、基板101上に記録再生用の案内溝又はピットが設けられてもよい。この場合、基板101は、射出成形等の成形方法によって成形されるものとすることができる。またこのような案内溝又はピットは、基板101の成形時に付与することが好ましいが、例えば、基板101上に紫外線(UV)硬化樹脂を用いて付与することもできる。
【0074】
また、基板の厚さの下限は通常1.1mm、好ましくは1.15mmであり、厚さの上限は通常1.3mm、好ましくは1.25mmである。
【0075】
2.インキ
本発明の情報記録媒体におけるレーベル層への筆記に用いられるインキとしては、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含み、且つ、水により消色可能なものであり、通常、ペン等の筆記具に収容されて用いられる。
【0076】
・電子供与性呈色性有機化合物
電子供与電子供与性呈色性有機化合物は、後述の電子受容性化合物と分子接触することにより反応し、各電子供与性呈色性有機化合物固有の色に発色する。また、水の塗布により、電子受容性化合物が水相へ溶解し離脱するため、有色状態から無色状態に変化する。
電子供与性呈色性有機化合物としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、フェノサジン系、フェノチアジン系、フルオラン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフタリド系、ジフェニルメタン系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン系、アゾメチン系、ローダミンラクタム系、ナフトラクタム系、トリアゼン系等、従来公知のものはいずれも使用できる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0077】
上記電子供与性呈色性有機化合物の具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−,スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−,スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−,スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
【0078】
上記電子供与性呈色性有機化合物は、インキ中に、通常0.5重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上含有される。また通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。これにより、インキの発色性を良好なものとすることができる。
【0079】
・電子受容性化合物
電子受容性化合物としては、水溶性顕色剤が適している。具体的には、亜鉛塩、コバルト塩、ニッケル塩等の水溶性チオシアン酸金属塩、サリチル酸亜鉛、没食子酸、ポリオキシアルキレンモノアリルモノメチルエーテル/無水マレイン酸/スチレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル化カルボン酸、ポリオキシエチレンアリールエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル、p−スルホサリチル酸、P−トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。またこのほか、水不溶性顕色剤としてビスフェノールA、ビスフェノールS等が挙げられる。中でも、サリチル酸亜鉛、没食子酸、P−トルエンスルホン酸、ビスフェノールA、ビスフェノールSが好適である。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
上記水可溶性顕色剤を用いることにより、筆記跡を消色する際、即ち水と接触させた際、上記水可溶性顕色剤がイオンとなって溶解して水相に移行し、その結果、電子供与性呈色性有機化合物であるロイコ色素が閉環し無色化する。
【0080】
上記電子受容性化合物は、インキ中に、通常0.5重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上含有される。また通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。これにより、インキの発色性及び消色性を十分なものとすることができる。
【0081】
・溶媒
インキに用いられる有機溶媒としては、任意に選定できるが、上記電子供与性呈色性化合物、及び電子受容性化合物、また必要に応じて適宜用いられる他の成分の溶解性や、インキの乾燥速度を考慮して選定することが好ましく、揮発性有機溶媒が好ましい。
揮発性有機溶媒としては、例えばアルコール系、セロソルブ系、グリコールエーテル系、エステル系等が挙げられる。具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を用いることができる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0082】
・その他
上記インキ中には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、例えば界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤は、電子供与性呈色性有機化合物及び電子受容性化合物を水に濡れ易くし、補助的に消色性を向上させるために混合することができる。
界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエチルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンラウレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等が挙げられ、1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。またこれらはインキ組成中に通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、また通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で用いることができる。
また、上記インキには、その他任意の添加剤等を1種、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【実施例】
【0083】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0084】
(1)情報記録媒体の作成(CD−RのBareDiskの作製)
射出成形により、幅0.45μm、深さ155nmのグルーブを有し、厚さ1.2mmのポリカーボネート樹脂製基板を成形した。この基板上に、含金属アゾ系色素のフッ素アルコール溶液をスピンコートにより塗布し、90℃で15分間乾燥して、厚さ70nmの情報記録層を形成した。次に、この情報記録層上に、銀(Ag)をスパッタリングして、厚さ70nmの反射層を形成した。さらにこの反射層の上に、アクリレート系モノマーを主体にした紫外線硬化性樹脂(大日本インキ株式会社製「SD―394」)をスピンコートで塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化させ、厚さ7μmの保護層を形成し、記録再生機能層を有するCD−RのBareDiskを作製した。
【0085】
(消色性インキの準備)
下記実施例及び比較例ではSUNNY社製 商標:PencleのBlue色を消色性インキとして用い、レーベル層の評価を行なった。
該インキ組成としては、電子供与性呈色性化合物(クリスタルバイオレットラクトン)、サリチル酸亜鉛、エタノール、イソプロピルアルコール、界面活性剤からなるインキである。
【0086】
[実施例1](芳香環含まない紫外線硬化性モノマーの例)
下記化学式にて示すライトアクリレート 9EG−A (共栄社化学) 90重量%
Irgacure 184 (チバスペシャリティーケミカルズ社) 10重量%
【化1】

なお、上記Irgacure 184は、ラジカル光重合開始剤であり、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを示す。以下同様である。
【0087】
上記配合割合となるUV硬化樹脂塗布液(混合液)をギャップ7μmアプリケータで100μmのポリエステルフィルム上に塗布しUV照射装置にて約300mJになるよう照射し硬化させた。
ポリエステルフィルム上に塗布硬化させた塗布膜上に上記消色性インキにて文字を記述し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ瞬時に消色し乾燥後も筆記跡が全く残らなかった。結果を表1に示す。
【0088】
[実施例2](芳香環含まない紫外線硬化性モノマーの例)
下記化学式にて示すエポキシエステル 70PA (共栄社化学) 90重量%
Irgacure 184 (チバスペシャリティーケミカルズ社) 10重量%
【化2】

【0089】
上記配合割合となるUV硬化樹脂塗布液(混合液)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルム上に塗布膜を形成した。塗布膜上に上記消色性インキにて文字を記述し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ瞬時に消色し乾燥後も記載跡が全く残らず記載跡が確認されなかった。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例3](芳香環含まない紫外線硬化性モノマーの例)
下記化学式にて示すエポキシエステル 80MFA (共栄社化学) 90重量%
Irgacure 184 (チバスペシャリティーケミカルズ社) 10重量%
【化3】

【0091】
上記配合割合となるUV硬化樹脂塗布液(混合液)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルム上に塗布膜を形成した。塗布膜上に上記消色性インキにて文字を記述し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ瞬時に消色し乾燥後も記載跡が全く残らず記載跡が確認されなかった。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例4](芳香環含まない紫外線硬化性モノマーの例)
実施例2の混合液を、上述のCD−RのBareDisk上にスクリーン印刷機にて300メッシュのスクリーンを用いて塗布し、UV照射装置にて約300mJになるよう照射し硬化させ、レーベル層を得た。
上記実施例1同様にしてCD−Rレーベル層上に消色性インキにて文字を記載し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ瞬時に消色し乾燥後も記載跡が全く残らず記載跡が確認されなかった。結果を表1に示す。
【0093】
続いてHEIDON トライボギア−TYPE:18のスクラッチ試験に用いて引掻針:0.2mmR サファイア製 移動速度:100.0mm/minでレーベル層の表面硬度(スクラッチ硬度)を試験した結果、150gまでキズが見られなかった。結果を表2に示す。
【0094】
[実施例5](芳香環含まない紫外線硬化性モノマーの例)
十条社製 白色UVインキ (RC INK VID SERIES WHITE)を、上述のCD−RのBareDiskの保護層上に、実施例4と同様の条件により白色下地レーベル層を形成した。
該下地レーベル層上に、実施例2の混合液を、実施例4と同様の条件により塗布、硬化させて最外層のレーベル層を形成した。
上記実施例1同様にしてCD−Rレーベル層上に消色性インキにて文字を記載したところ、筆記跡が非常に視認しやすく、良好な筆記品位が得られた。次に水を塗布したところ瞬時に消色し乾燥後も記載跡が全く残らず記載跡が確認されなかった。結果を表1に示す。
【0095】
[実施例6](芳香環含まない紫外線硬化性インキの例)
十条社製 DVD MITE OO CLEARを、上記CD−RのBareDiskの保護層上にスクリーン印刷機にて300メッシュのスクリーンを用いて塗布し、UV照射装置にて約300mJになるよう照射し硬化させ、レーベル層を形成した。
上記実施例1同様にしてCD−Rレーベル層上に消色性インキにて文字を記載し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ瞬時に消色し乾燥後も記載跡が少し見える程度で概ね良好な消色性が確認された。結果を表1に示す。
【0096】
続いてHEIDON トライボギア−TYPE:18のスクラッチ試験に用いて引掻針:0.2mmR サファイア製 移動速度:100.0mm/minでレーベル層の表面硬度(スクラッチ硬度)を試験した結果、150gまでキズが見られなかった。結果を表2に示す。
【0097】
[実施例7](芳香環含む紫外線硬化性モノマーの例)
下記化学式にて示すHOA−MPL (共栄社化学) 90重量%
Irgacure 184 (チバスペシャリティーケミカルズ社) 10重量%
【化4】

上記配合割合となるUV硬化樹脂塗布液(混合液)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルム上に塗布膜を形成した。塗布膜上に上記消色性インキにて文字を記述し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ消色するものの乾燥すると記載跡が淡く再発色し、筆記跡が残り完全には消色できなかった。結果を表1に示す。
【0098】
[実施例8](芳香環含む紫外線硬化性モノマーの例)
下記化学式にて示すNKエステルA−BPE−10(共栄社化学) 90重量%
Irgacure 184 (チバスペシャリティーケミカルズ社) 10重量%
【化5】

【0099】
上記配合割合となるUV硬化樹脂塗布液(混合液)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルム上に塗布膜を形成した。塗布膜上に上記消色性インキにて文字を記述し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ消色するものの乾燥すると記載跡が淡く再発色し、筆記跡が残り完全には消色できなかった。結果を表1に示す。
【0100】
[実施例9](芳香環含む紫外線硬化性モノマーの例)
下記化学式にて示すエポキシエステル 3002A(共栄社化学) 90重量%
Irgacure 184 (チバスペシャリティーケミカルズ社) 10重量%
【化6】

【0101】
上記配合割合となるUV硬化樹脂塗布液(混合液)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルム上に塗布膜を形成した。塗布膜上に上記消色性インキにて文字を記述し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ消色するものの乾燥すると記載跡が淡く再発色し、筆記跡が残り完全には消色できなかった。結果を表1に示す。
【0102】
[実施例10](ウレタンアクリレート樹脂を用いた例)
下記化学式にて示すNKオリゴ UA−W2A (新中村化学工業) 90重量%
Irgacure 184 (チバスペシャリティーケミカルズ社) 10重量%
【化7】

上記配合割合となるUV硬化樹脂塗布液(混合液)を用いた以外は、上記実施例4と同様にしてCD−Rレーベル層上に消色性インキにて文字を記載し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ消色するものの乾燥すると記載跡が淡く再発色し、はっきり筆記跡が残り完全には消色できなかった。
【0103】
[実施例11](ウレタンアクリレートを含む紫外線硬化性インキを用いた例)
十条社製 DVD OPT−L CLEARを、上記CD−RのBareDiskの保護層上にスクリーン印刷機にて300メッシュのスクリーンを用いて塗布し、UV照射装置にて約300mJになるよう照射し硬化させ、レーベル層を形成した。
上記実施例1と同様にCD−Rレーベル層上に消色性インキにて文字を記載し良好な発色を確認した。次に水を塗布したところ消色するものの乾燥すると記載跡が淡く再発色し、筆記跡が残り完全には消色できなかった。結果を表1に示す。
【0104】
続いてHEIDON トライボギア−TYPE:18のスクラッチ試験に用いて引掻針:0.2mmR サファイア製 移動速度:100.0mm/minでレーベル層の表面硬度(スクラッチ硬度)を試験した結果、100gでキズが見られた。結果を表2に示す。
【表1】


【表2】

【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、情報記録媒体のレーベル層に消色性のインキを用いて直接筆記記入でき、誤記入時の訂正や記録内容の変更を、水又は水を含んだスポンジや布等といった簡単なもので筆記跡を消色することができる。またこれらの操作は繰り返し行なうことができる。
したがって、現在市場で一般的に使用されている特に書き換え可能な情報記録媒体では、記録内容の変更等に合わせて表記内容を書き換えたり、また書き込み型の情報記録媒体等であっても、例えば誤記の修正等が容易に可能となる。したがって、情報記録媒体全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
101 基板
102 情報記録層
103 反射層
104 保護層
106 レーベル層
107 光(記録光または再生光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層と、レーベル層とを有する情報記録媒体であって、
前記レーベル層が、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含み、且つ、水により消色可能なインキによる筆記及び前記インキによる筆記跡の水による消色のために用いられる
ことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記レーベル層は、下記の方法により測定される表面のスクラッチ硬度が100g以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
(スクラッチ硬度の測定方法)
荷重が調整可能な先端半径0.2mmのサファイア製針に所定の荷重をかけた状態で前記レーベル層表面と前記針とを当接させ、前記針を速度100mm/minで移動させる。前記針のスクラッチ痕を目視にて確認し、スクラッチ痕が確認されなければ、前記荷重以上の硬度を有すると判定する。
【請求項3】
前記レーベル層が、
芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である単官能モノマー、及び/または芳香環を構造中に含まず、且つウレタンアクリレート以外である多官能モノマーを一種以上含有し、前記単官能モノマー及び/または前記多官能モノマーの含有量の総量が50重量%以上である混合物を用いて形成された
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記混合物が、芳香環を構造中に含まず、且つウレタン系オリゴマー以外の紫外線硬化性オリゴマー、及び/または芳香環を構造中に含まないエポキシ樹脂モノマーを含有する
ことを特徴とする請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記レーベル層の色相が、L*a*b*表色系のL*値が60以上であり、a*値の絶対値が15以下であり、且つb*値の絶対値が15以下である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記L*値が60以上、90以下である
ことを特徴とする請求項5に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層と、レーベル層とを有する情報記録媒体であって、
前記レーベル層は、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び溶媒を含み、且つ、水により消色可能なインキによって筆記可能であり、前記インキによる筆記跡の水による消色及び前記水の乾燥後、前記筆記跡に前記インキによる再発色がない
ことを特徴とする情報記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−205316(P2010−205316A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47324(P2009−47324)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】