説明

情報記録媒体

【課題】複雑な視覚効果を実現可能とする。
【解決手段】情報記録媒体1は、光透過性を有している第1及び第2部分を含んだ支持体層10と、支持体層10を広げた状態で第1部分と向き合うように設けられた第1直線偏光子220と、支持体層10を広げた状態で第2部分と向き合うように設けられた反射層320と、支持体層10を広げた状態で第1直線偏光子220と向き合い、支持体層10を第1面S1が内側になるように折るか又は曲げて第1及び第2部分を重ね合わせた状態で第1直線偏光子220と反射層320との間に位置するように設けられた第1位相差層210と、支持体層10を広げた状態で反射層320と向き合い、支持体層10を第2面S2が内側になるように折るか又は曲げて第1及び第2部分を重ね合わせた状態で第1直線偏光子210と反射層320との間に位置するように設けられた第2位相差層310とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止技術を適用した情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、銀行券、商品券及び小切手などの有価証券類並びにパスポートなどの証明書類には、偽造防止技術が適用されている。そのような偽造防止技術としては、例えば、目視による真偽判定が可能なオバート技術と、真偽判定に検証器が必要なコバート技術とがある。
【0003】
オバート技術は、検証器が不要であるという利点がある反面で、偽造防止技術を適用していることを悟られ易い。それ故、オバート技術は、偽造を防止する効果が必ずしも高くはない。
【0004】
コバート技術には、複屈折を利用したものがある。そのようなコバート技術では、例えば、光学軸の向きが異なる複数の領域を含んだ位相差層を形成する。これら領域は、肉眼で観察した場合には互いから識別することはできないが、偏光子を介して観察することにより互いからの識別が可能となる潜像を構成している。
【0005】
この技術は、偽造防止技術を適用していることを悟られ難いという利点がある反面で、真偽判定に検証器が必要である。それ故、検証器を所持していない状況では、真偽判定を行うことができない。
【0006】
特許文献1には、光透過性を有している可撓性支持体上に、偏光子と光学素子とを互いから離間させて貼り付けてなる情報記録媒体が記載されている。この光学素子は、透明な又は光散乱性の支持体と、その上に順次形成された、偏光子、配向膜及び位相差層とを含んでいる。位相差層は、液晶ポリマーからなり、光学軸の向きが異なる複数の領域を含んでいる。この情報記録媒体は、偏光子間に位相差層が介在するように折り曲げると、位相差層に記録された潜像が可視化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−525080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の情報記録媒体は、先に説明した視覚効果を提供する。しかしながら、高い偽造防止効果を達成するべく、より複雑な視覚効果が望まれる。
本発明の目的は、複雑な視覚効果を実現可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面は、第1面とその裏面である第2面とを有している支持体層であって、光透過性を有している第1及び第2部分を含み、前記第1面が内側になるように折るか又は曲げることにより前記第1及び第2部分を重なり合わせることと、前記第2面が内側になるように折るか又は曲げることにより前記第1及び第2部分を重なり合わせることとが可能な支持体層と、前記支持体層を広げた状態で前記第1部分と向き合うように設けられた第1直線偏光子と、前記支持体層を広げた状態で前記第2部分と向き合うように設けられた第1反射層と、前記支持体層を広げた状態で前記第1直線偏光子と向き合い、前記支持体層を前記第1面が内側になるように折るか又は曲げて前記第1及び第2部分を重ね合わせた状態で前記第1直線偏光子と前記第1反射層との間に位置するように設けられた第1位相差層と、前記支持体層を広げた状態で前記第1反射層と向き合い、前記支持体層を前記第2面が内側になるように折るか又は曲げて前記第1及び第2部分を重ね合わせた状態で前記第1直線偏光子と前記第1反射層との間に位置するように設けられた第2位相差層とを具備した情報記録媒体である。
【0010】
本発明の第2側面は、前記第1反射層にレリーフ型の回折格子又はホログラムが設けられている第1側面に係る情報記録媒体である。
【0011】
本発明の第3側面は、前記支持体層は矩形状であり、前記第1及び第2部分は、前記支持体層をその短辺に平行な折り目が形成されるように折った場合に重なり合う第1又は第2側面に係る情報記録媒体である。
【0012】
本発明の第4側面は、前記第1位相差層は、光学軸の向きが互いに異なる第1及び第2領域を含み、前記第2位相差層は、光学軸の向きが互いに異なる第3及び第4領域を含んだ第1乃至第3側面の何れかに係る情報記録媒体である。
【0013】
本発明の第5側面は、前記第1又は第2領域が形成しているパターンは、前記第3領域が形成しているパターン及び前記第4領域が形成しているパターンとは異なっている第4側面に係る情報記録媒体である。
【0014】
本発明の第6側面は、前記第1及び第2領域の一方の光学軸は、前記第1直線偏光子の透過軸に対して平行であるか又は直交しており、前記第1及び第2領域の他方の光学軸は、前記第1直線偏光子の透過軸に対して斜めである第4又は第5側面に係る情報記録媒体である。
【0015】
本発明の第7側面は、前記第3及び第4領域の一方の光学軸は、前記第1直線偏光子の透過軸に対して平行であるか又は直交しており、前記第3及び第4領域の他方の光学軸は、前記第1直線偏光子の透過軸に対して斜めである第4乃至第6側面の何れかに係る情報記録媒体である。
【0016】
本発明の第8側面は、前記第1直線偏光子と前記第1位相差層とは、前記第1部分の位置で前記第1又は第2面に支持された第1積層構造の少なくとも一部を構成し、前記第1反射層と前記第2位相差層とは、前記第2部分の位置で前記第1又は第2面に支持された第2積層構造の少なくとも一部を構成している第1乃至第7側面の何れかに係る情報記録媒体である。
【0017】
本発明の第9側面は、前記支持体層を広げた状態で前記第1反射層を間に挟んで前記第2位相差層と向き合った第2直線偏光子を更に具備した第1乃至第8側面の何れかに係る情報記録媒体である。
【0018】
本発明の第10側面は、前記支持体層を広げた状態で前記第1反射層を間に挟んで前記第2位相差層と向き合った第2直線偏光子を更に具備し、前記第1直線偏光子と前記第1位相差層とは、前記第1部分の位置で前記第1又は第2面に支持された第1積層構造の少なくとも一部を構成し、前記第1反射層と前記第2位相差層と前記第2直線偏光子とは、前記第2部分の位置で前記第1又は第2面に支持された第2積層構造の少なくとも一部を構成している第1乃至第7側面の何れかに係る情報記録媒体である。
【0019】
本発明の第11側面は、前記第1直線偏光子を間に挟んで前記第1位相差層と向き合っているか又は前記第1直線偏光子と前記第1位相差層との間に介在し、光透過性を有している第2反射層を更に具備し、前記第2反射層は回折光を射出するように構成された第1乃至第10側面の何れかに係る情報記録媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、複雑な視覚効果を実現することが可能となる。
【0021】
第1側面に係る情報記録媒体は、支持体層を広げた状態で肉眼で観察した場合、第1及び第2位相差層の各々が光学的に異方性であるか等方性であるかは分からない。しかしながら、この情報記録媒体は、第1位相差層が第1直線偏光子と反射層との間に介在するように支持体層を折るか又は曲げ、この状態で第1部分側から肉眼で観察すると、第1直線偏光子の透過軸と第1位相差層の光学軸とが成す角度などに応じて明るさが異なる第1画像を表示する。また、この情報記録媒体は、第2位相差層が第1直線偏光子と反射層との間に介在するように支持体層を折るか又は曲げ、この状態で第1部分側から肉眼で観察すると、第1直線偏光子の透過軸と第2位相差層の光学軸とが成す角度などに応じて明るさが異なる第2画像を表示する。第1及び第2画像の明るさは、それぞれ、第1及び第2位相差層の光学軸の向き、厚さ及び屈折率などに応じて変化する。即ち、第1及び第2画像の明るさは、互いから独立して設定することが可能である。それ故、例えば、第1及び第2画像の明るさを異ならしめることができる。
【0022】
第2側面に係る情報記録媒体は、上記情報記録媒体において、反射層にレリーフ型の回折格子又はホログラムを設けたものである。この回折格子又はホログラムが表示する像は、第2位相差層の存在を悟られ難くする。
【0023】
本発明の第3側面に係る情報記録媒体は、上記情報記録媒体において、支持体層を矩形状とし、第1及び第2部分を、支持体層をその短辺に平行な折り目が形成されるように折った場合に重なり合うように設けたものである。このような情報記録媒体は、第1及び第2画像を表示させるための位置合わせが容易である。
【0024】
第4側面に係る情報記録媒体は、上記情報記録媒体において、第1位相差層に、光学軸の向きが互いに異なる第1及び第2領域を設け、第2位相差層に、光学軸の向きが互いに異なる第3及び第4領域を設けたものである。即ち、第1及び第2位相差層の各々に、潜像を記録している。このような構造は、全体に亘って同一の光学特性を有している位相差層と比較して製造が難しい。また、第1又は第2領域が形成している第1パターン及び第3又は第4領域が形成している第2パターンの各々に、何らかの情報、例えば、文字、記号、模様又は図形を表示させることができる。従って、この情報記録媒体は、より高い偽造防止効果を達成し得る。
【0025】
第5側面に係る情報記録媒体では、第4側面に係る情報記録媒体において、第1又は第2領域が形成しているパターンを、第3領域が形成しているパターン及び第4領域が形成しているパターンとは異ならしめる。この場合、第1及び第2画像の相違の確認に、それらパターンの相違を利用することができる。
【0026】
第6側面に係る情報記録媒体は、第4又は第5側面に係る情報記録媒体において、第1及び第2領域の一方の光学軸を、第1直線偏光子の透過軸に対して平行とするか又は直交させ、第1及び第2領域の他方の光学軸を、第1直線偏光子の透過軸に対して斜めにしたものである。このような構造は、第1画像のコントラスト比を最大化するうえで有利である。
【0027】
第7側面に係る情報記録媒体は、第4乃至第6側面の何れかに係る情報記録媒体において、第3及び第4領域の一方の光学軸を、第1直線偏光子の透過軸に対して平行とするか又は直交させ、第3及び第4領域の他方の光学軸を、第1直線偏光子の透過軸に対して斜めにしたものである。このような構造は、例えば第3側面において規定した構造を採用した場合に、第2画像のコントラスト比を最大化するうえで有利である。
【0028】
第8側面に係る情報記録媒体は、上記情報記録媒体において、第1直線偏光子と第1位相差層とで、第1部分の位置で第1又は第2面に支持された第1積層構造の少なくとも一部を構成し、反射層と第2位相差層とで、第2部分の位置で第1又は第2面に支持された第2積層構造の少なくとも一部を構成したものである。このような情報記録媒体は、製造が容易である。
【0029】
第9側面に係る情報記録媒体は、上記情報記録媒体において、支持体層を広げた状態で反射層を間に挟んで第2位相差層と向き合った第2直線偏光子を更に具備したものである。この情報記録媒体は、第1位相差層が第1及び第2直線偏光子間に介在するように支持体層を折るか又は曲げ、この状態で透過光を観察した場合に、第2直線偏光子の透過軸と第1位相差層の光学軸とが成す角度などに応じて明るさが変化する第3画像を表示する。そして、この情報記録媒体は、第2位相差層が第1及び第2直線偏光子間に介在するように支持体層を折るか又は曲げ、この状態で透過光を観察した場合に、第1直線偏光子の透過軸と第2位相差層の光学軸とが成す角度などに応じて明るさが変化する第4画像を表示する。
【0030】
第10側面に係る情報記録媒体は、第1乃至第7側面の何れかに係る情報記録媒体において、支持体層を広げた状態で反射層を間に挟んで第2直線偏光子と向き合った第2直線偏光子を更に具備し、第1直線偏光子と第1位相差層とで、第1部分の位置で第1又は第2面に支持された第1積層構造の少なくとも一部を構成し、反射層と第2位相差層と第2直線偏光子とで、第2部分の位置で第1又は第2面に支持された第2積層構造の少なくとも一部を構成したものである。このような情報記録媒体は、製造が容易である。
【0031】
第11側面に係る情報記録媒体は、第1乃至第10側面の何れかに係る情報記録媒体において、第1直線偏光子を間に挟んで前記第1位相差層と向き合っているか又は第1直線偏光子と第1位相差層との間に介在し、光透過性を有している第2反射層を更に具備し、第2反射層は回折光を射出するように構成されたものである。第2反射層が射出する回折光は、第1位相差層の存在を悟られ難くする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す情報記録媒体をその裏面側から見た平面図。
【図3】図1に示す情報記録媒体のIII−III線に沿った断面図。
【図4】図1に示す情報記録媒体のIV−IV線に沿った断面図。
【図5】図1に示す情報記録媒体をその前面が内側になるように折り曲げた状態を概略的に示す断面図。
【図6】図1に示す情報記録媒体が、図5に示すように折り曲げた場合に表示する画像を概略的に示す平面図。
【図7】図1に示す情報記録媒体をその裏面が内側になるように折り曲げた状態を概略的に示す断面図。
【図8】図1に示す情報記録媒体が、図7に示すように折り曲げた場合に表示する画像を概略的に示す平面図。
【図9】一変形例に係る情報記録媒体において採用可能な構造を概略的に示す断面図。
【図10】他の変形例に係る情報記録媒体において採用可能な構造を概略的に示す断面図。
【図11】更に他の変形例に係る情報記録媒体において採用可能な構造を概略的に示す断面図。
【図12】更に他の変形例に係る情報記録媒体において採用可能な構造を概略的に示す断面図。
【図13】図12に示す構造を採用した情報記録媒体が、表面側から観察した場合に表示する画像の一例を概略的に示す平面図。
【図14】図12に示す構造を採用した情報記録媒体が、裏面側から観察した場合に表示する画像の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
図1は、本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す情報記録媒体をその裏面側から見た平面図である。図3は、図1に示す情報記録媒体のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図1に示す情報記録媒体のIV−IV線に沿った断面図である。
【0035】
図1乃至図4において、X方向、Y方向及びZ方向は、それぞれ、情報記録媒体の長さ方向、幅方向及び厚さ方向である。なお、ここでは、便宜上、図1に描いた面を表面とし、図2に描いた面を裏面としているが、図2に描いた面が表面であり、図1に描いた面が裏面であってもよい。
【0036】
図1乃至図4に示す情報記録媒体1は、例えば、銀行券、商品券及び小切手などの有価証券類又はパスポートなどの証明書類である。この情報記録媒体1は、支持体層10と、第1位相差層210と、第1直線偏光子220と、第2位相差層310と、第1反射層320とを含んでいる。
【0037】
支持体層10は、第1面S1と、その裏面である第2面S2とを有している。支持体層10は、光透過性を各々が有している第1及び第2部分を含んでいる。支持体層10は、第1面S1が内側になるように折るか又は曲げることにより第1及び第2部分を重なり合わせることと、第2面S2が内側になるように折るか又は曲げることにより第1及び第2部分を重なり合わせることとが可能である。ここでは、支持体層10は矩形状であり、第1及び第2部分は、支持体層10をその短辺に平行な折り目が形成されるように折った場合に重なり合う。支持体層10は、矩形以外の形状を有していてもよい。
【0038】
支持体層10は、光透過層110と、印刷層120a及び120bとを含んでいる。
【0039】
光透過層110は、X方向に延びた矩形形状を有している。光透過層110は、例えば、可視域の何れかの波長の光に対して、典型的には可視域のほぼ全ての波長の光に対して透明な樹脂フィルムである。或いは、光透過層110は、可視域の何れかの波長の光に対して、典型的には可視域のほぼ全ての波長の光に対して光透過性と光散乱性とを示す樹脂フィルムである。
【0040】
樹脂フィルムとしては、例えば、押し出し成形若しくはキャスト法によって製造した無延伸フィルム、又は、これに延伸処理を施してなる延伸フィルムを使用することができる。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルムを使用してもよく、二軸延伸フィルムを使用してもよい。なお、延伸フィルムは複屈折性を有し得るので、設計を容易にする観点では、無延伸フィルムを使用することが好ましい。
【0041】
樹脂フィルムとしては、例えば、セロハン、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリオレフィン(PO)フィルム、エチレンビニルアルコール(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム、又はトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用することができる。樹脂フィルムは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0042】
印刷層120aは、光透過層110の表面に形成されている。支持体層10の印刷層120a側の面は、上述した第1面S1である。
【0043】
印刷層120aは、光透過層110の表面を部分的に被覆している。ここでは、印刷層120aは、光透過層110の表面のうち、Y方向に平行な辺に沿った一対の縁部と、それら縁部間に位置し且つ縁部の各々から離間した中央部とを被覆している。
【0044】
印刷層120bは、光透過層110の裏面に形成されている。支持体層10の印刷層120b側の面は、上述した第2面S2である。
【0045】
印刷層120bは、光透過層110の裏面を部分的に被覆している。ここでは、印刷層120bは、光透過層110の裏面のうち、Y方向に平行な辺に沿った一対の縁部と、それら縁部間に位置し且つ縁部の各々から離間した中央部とを被覆している。
【0046】
典型的には、印刷層120a及び120bの少なくとも一方は、光学的な読み取りが可能な情報を保持している。例えば、印刷層120a及び120bの少なくとも一方には、情報が印刷パターンとして記録されている。
【0047】
印刷層120a及び120bは、光学的な読み取りが可能な情報を保持していなくてもよい。例えば、印刷層120a及び120bは、光学的に読み取り可能な情報を手書きなどの印刷以外の方法で記録するための下地として利用してもよい。
【0048】
印刷層120a及び120bの一方を省略してもよい。或いは、印刷層120a及び120bの双方を省略してもよい。
【0049】
光透過層110のうち印刷層120a又は120bが設けられていない部分は、上述した第1及び第2部分を含んでいる。ここでは、第1及び第2部分は、各々がY方向に延びた帯形状を有しており、X方向に配列している。また、ここでは、第1及び第2部分は、Y方向に平行な軸に対して互いに線対称の関係にある。この場合、第1及び第2部分は、支持体層10をその短辺に平行な折り目が形成されるように折った場合に重なり合う。
【0050】
第1及び第2部分は、帯形状以外の形状を有していてもよい。また、第1及び第2部分は、支持体層10を何れかの位置で折るか又は曲げた場合に少なくとも部分的に重なり合えば、形状及び寸法の少なくとも一方が異なっていてもよい。また、第1及び第2部分は、支持体層10を何れかの位置で折るか又は曲げた場合に少なくとも部分的に重なり合えば、何れの位置に配置してもよい。更に、第1及び第2部分は、互いから離間していてもよく、隣接していてもよい。
【0051】
第1直線偏光子220は、支持体層10を広げた状態で第1部分と向き合うように設けられている。ここでは、第1直線偏光子220は、第1面S1上であって、第1部分の位置に設けられた層である。
【0052】
第1直線偏光子220としては、例えば、吸収型偏光子を使用することができる。吸収型偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素若しくは二色性染料を含浸させ、これを延伸することによって得られる偏光子、又は、二色性染料を配向膜上で配向させてなる偏光子を使用することができる。
【0053】
第1直線偏光子220として、反射型偏光子などの他の偏光子を使用してもよい。例えば、コレステリック液晶層と四分の一波長板とを組み合わせてなる反射型偏光子を使用してもよい。或いは、第1直線偏光子220として、各界面において、第1直線偏光に対する反射率と、これとは電場ベクトルの振動方向が直交する第2直線偏光に対する反射率とを、複屈折性を利用して異ならしめた多層膜を使用してもよい。或いは、第1直線偏光子220として、第1方向に延びた形状を各々が有し、第1方向と交差する方向に配列した複数のレンズ又はプリズムを表面に設け、正面から入射した光の多くの入射角がブルースター角以上となるように各レンズ又はプリズムを設計したフィルムを使用してもよい。或いは、第1直線偏光子220として、複屈折性を有している材料からなる領域と光学的に等方性の材料からなる領域とをストライプ状に配置してなる複屈折回折型偏光子を使用してもよい。或いは、溝を深く形成した回折構造を含んだ回折偏光子を使用してもよい。この他にも、透過光として直線偏光が得られる素子であれば、第1直線偏光子220として使用することができる。
【0054】
ここでは、一例として、第1直線偏光子220は、Y方向に平行な透過軸を有している吸収型偏光子であるとする。
【0055】
第1位相差層210は、支持体層10を広げた状態で第1直線偏光子220と向き合い、支持体層10を第1面S1が内側になるように折るか又は曲げて第1及び第2部分を重ね合わせた状態で第1直線偏光子220と第1反射層320との間に位置するように設けられている。ここでは、第1位相差層210は、第1直線偏光子220を間に挟んで第1部分と向き合っている。
【0056】
第1位相差層210は、複屈折性を有している領域を含んでいる。第1位相差層210は、その全体に亘って均一な光学特性を有していてもよく、光学特性が異なる複数の領域を含んでいてもよい。後者の場合、第1位相差層210は、光学軸の向きが互いに異なる複数の領域を含んでいてもよく、屈折率異方性が異なる複数の領域を含んでいてもよい。
【0057】
例えば、第1位相差層210は、Z方向に対して略垂直な光学軸を有している一軸結晶として各々が振舞う2つ以上の領域を含んでいてもよい。また、各領域が、電場ベクトルの振動方向がその光学軸に対して平行な直線偏光と垂直な直線偏光との間に生じさせる位相差は任意である。例えば、各領域は、可視域内の何れかの波長の光に対して四分の一波長板又は二分の一波長板としての役割を果たし得る。
【0058】
ここでは、一例として、第1位相差層210は、遅相軸が第1直線偏光子220の透過軸に対して平行又は垂直である第1領域210aと、遅相軸が第1直線偏光子220の透過軸に対して+45°又は−45°の角度をなしている第2領域210bとを含んでいることとする。加えて、ここでは、第2領域210bは、可視域内の何れかの波長の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすこととする。
【0059】
第1位相差層210には、複屈折性を有し得る材料、例えば、液晶材料を使用することができる。この場合、第1位相差層210は、例えば、領域210a及び210bの遅相軸に対応してラビング処理及び光配向処理などの配向処理を施した下地を準備し、その上に液晶材料を塗布し、これを硬化させることにより得ることができる。
【0060】
ラビング処理を利用する場合には、まず、ポリイミド及びPVAなどのポリマーを含んだ溶液からなる塗膜を形成する。次いで、この塗膜を乾燥させ、更に、塗膜の表面をラビング布で擦る。このようにして得られた配向膜上に液晶材料を塗布すると、液晶分子はラビング方向に配向する。
【0061】
ここでは、遅相軸の向きが異なる領域210a及び210bを形成するので、以下に説明するように、ラビング処理を2回行う。まず、ポリマーからなる塗膜を形成し、その表面の一部をマスクで覆う。この状態で、塗膜の表面のうちマスクで覆われていない領域に対してラビング処理を行う。次いで、塗膜からマスクを取り除き、塗膜の表面のうちラビング処理を施した領域をマスクで覆い、その他の領域に対してラビング処理を施す。マスクを取り除いた後、このようにして得られた配向膜上に液晶材料を塗布し、塗膜を硬化させる。1回目のラビング処理と2回目のラビング処理とでラビング方向を異ならしめれば、遅相軸の向きが異なる領域210a及び210bが得られる。
【0062】
光配向処理では、例えば、アゾベンゼン誘導体の光異性化、桂皮酸エステル、クマリン、カルコン及びベンゾフェノン等の誘導体の光二量化若しくは光架橋、又はポリイミド等の光分解を利用する。具体的には、まず、上記の感光性材料を含んだ塗膜を形成する。次いで、この塗膜に、直線偏光を照射するか、又は、自然光を斜めから照射する。これにより、塗膜内の分子の異方的な再配列又は化学反応を誘起する。このようにして得られた配向膜上に液晶材料を塗布すると、液晶分子は、配向膜内の分子の異方的な配列等に対応して配向する。
【0063】
ここでは、遅相軸の向きが異なる領域210a及び210bを形成するので、光配向処理は、以下に説明するように行う。まず、感光性材料を含んだ塗膜を形成し、フォトマスクを介して、その一部を直線偏光で露光する。次いで、フォトマスクを介して、塗膜の他の部分を直線偏光で露光する。その後、このようにして得られた配向膜上に液晶材料を塗布し、塗膜を硬化させる。1回目の露光と2回目の露光とで直線偏光の電場ベクトルの振動方向を異ならしめれば、遅相軸の向きが異なる領域210a及び210bが得られる。
【0064】
或いは、まず、感光性材料を含んだ塗膜を形成し、フォトマスクを介して、その一部を自然光で斜め方向から露光する。次いで、フォトマスクを介して、塗膜の他の部分を自然光で斜め方向から露光する。その後、このようにして得られた配向膜上に液晶材料を塗布し、塗膜を硬化させる。1回目の露光と2回目の露光とで自然光の照射方向を異ならしめれば、遅相軸の向きが異なる領域210a及び210bが得られる。
【0065】
なお、直線偏光及び自然光を照射する方法の何れにおいても、1回目の露光は、塗膜の全体に対して行ってもよい。
【0066】
配向膜及び液晶層を形成するために行う塗布には、例えば、グラビアコーティング法又はマイクログラビアコーティング法を利用することができる。
【0067】
液晶材料としては、例えば、メソゲン基の両端にアクリル基などの反応性官能基を含んだ主鎖型モノマーと光重合開始剤とを含んだ混合物、メソゲン基の一端に重合性官能基を含んだ側鎖型モノマーと光重合開始剤とを含んだ混合物、又は、メソゲン基の一端に反応性官能基を含んだ側鎖型モノマーと反応性高分子と光重合開始剤とを含んだ混合物を使用することができる。このような液晶材料に、例えば、電子線又は紫外線を照射すると、側鎖型又は主鎖型の高分子液晶が得られる。なお、これらの液晶材料からなる塗膜を、電子線又は紫外線の照射前にネマチック相と等方相との相転移点(NI点)よりもやや低い温度で熱処理すると、メソゲン基の配向が促進され得る。
【0068】
第1反射層320は、支持体層10を広げた状態で上述した第2部分と向き合うように設けられている。ここでは、第1反射層320は、第2面S2上であって、第2部分の位置に設けられた層である。
【0069】
第1反射層320としては、例えば、単体金属又は合金からなる金属材料層を使用することができる。単体金属又は合金としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Ag、又はそれらの1つ以上を含んだ合金を使用することができる。第1反射層320は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。金属材料層を使用する場合、第1反射層320は、光透過性を有していてもよく、遮光性であってもよい。
【0070】
第1反射層320として、Z方向に伝播する光に対して比較的高い透過率を示し、Z方向に対して斜めに伝播する光に対しては比較的高い反射率を示す透明な層を使用することも可能である。そのような透明層は、単層構造を有していてもよく、屈折率が異なる層を積層してなる多層構造を有していてもよい。
【0071】
透明層又はそれが含んでいる層の材料としては、例えば、セラミックス又はポリマーを使用することができる。セラミックスとしては、例えば、Fe23、TiO2、CdS、CeO2、ZnS、PbCl2、CdO、WO3、SiO、Si23、In23、PbO、Ta23、ZnO、ZrO2、MgO、SiO2、MgF2、CeF3、CaF2、AlF3、Al23又はGaOを使用することができる。ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート又はポリスチレンを使用することができる。
【0072】
第1反射層320として上記の透明層を使用する場合、この透明層には、波長が可視域内にある1つ以上の光が繰り返し反射干渉する設計を採用してもよい。この設計を採用した場合、第1反射層320は干渉光を射出し得る。第1反射層320が表示する干渉色は、第2位相差層310の存在を悟られ難くする。
【0073】
第1反射層320は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及び化学気相堆積(CVD)法などの気相堆積法により形成することができる。また、第1反射層320は、厚さに高い精度が要求されない場合は、光反射効果を有するインキを印刷することにより形成してもよい。
【0074】
第1反射層320には、レリーフ型の回折格子又はホログラムを設けることができる。第1反射層320にレリーフ型の回折格子又はホログラムを設けると、第2位相差層310の存在が悟られ難くなる。
【0075】
レリーフ型の回折格子又はホログラムが設けられた第1反射層320は、例えば、以下の方法により形成する。まず、型を用いた転写を利用して、回折格子又はホログラムとしてのレリーフ構造が表面に設けられた回折構造形成層(図示せず)を形成する。次に、回折構造形成層上に、上述した方法により第1反射層320を形成する。第1反射層320の形成に印刷法を利用した場合には、第1反射層320の回折構造形成層と接している面に上記のレリーフ構造が転写される。また、第1反射層320の形成に気相堆積法を利用した場合には、第1反射層320の回折構造形成層と接している面に加え、その反対側の面にも上記のレリーフ構造が転写される。このようにして、レリーフ型の回折格子又はホログラムが設けられた第1反射層320を得る。
【0076】
回折構造形成層の材料としては、熱等による成形性が良好であり、プレスムラを生じ難く、明るい再生像が得られるものを使用することが好ましい。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂及びビニル樹脂等の熱可塑性樹脂;反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加し、架橋したウレタン樹脂、メラミン樹脂及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;或いは、エポキシ(メタ)アクリル及びウレタン(メタ)アクリレート等の紫外線又は電子線硬化樹脂を使用することができる。
【0077】
ここでは、一例として、第1反射層320は、レリーフ型の回折格子又はホログラムが設けられていない遮光性の金属材料層であるとする。
【0078】
第2位相差層310は、支持体層10を広げた状態で第1反射層320と向き合い、支持体層10を第2面S2が内側になるように折るか又は曲げて第1及び第2部分を重ね合わせた状態で第1直線偏光子220と第1反射層320との間に位置するように設けられている。ここでは、第2位相差層310は、第1反射層320を間に挟んで第2部分と向き合っている。
【0079】
第2位相差層310は、複屈折性を有している領域を含んでいる。第2位相差層310は、その全体に亘って均一な光学特性を有していてもよく、光学特性が異なる複数の領域を含んでいてもよい。後者の場合、第2位相差層310は、光学軸の向きが互いに異なる複数の領域を含んでいてもよく、屈折率異方性が異なる複数の領域を含んでいてもよい。
【0080】
例えば、第2位相差層310は、Z方向に対して略垂直な光学軸を有している一軸結晶として各々が振舞う2つ以上の領域を含んでいてもよい。また、各領域が、電場ベクトルの振動方向がその光学軸に対して平行な直線偏光と垂直な直線偏光との間に生じさせる位相差は任意である。例えば、各領域は、可視域内の何れかの波長の光に対して四分の一波長板又は二分の一波長板としての役割を果たし得る。
【0081】
ここでは、一例として、第2位相差層310は、支持体層10を第2面S2が内側になるように折るか又は曲げて第1及び第2部分を重ね合わせた場合に、遅相軸が第1直線偏光子220の透過軸に対して平行若しくは垂直になる第3領域310aと、遅相軸が第1直線偏光子220の透過軸に対して+45°又は−45°の角度をなす第4領域310bとを含んでいることとする。加えて、ここでは、第4領域310bは、可視域内の何れかの波長の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすこととする。
【0082】
第2位相差層310には、複屈折性を有し得る材料、例えば、液晶材料を使用することができる。この場合、第2位相差層310は、例えば、第1位相差層210について上述したのと同様の方法により得ることができる。
【0083】
この情報記録媒体1では、支持体層10の第1面S1に、第1位相差層210及び第1直線偏光子220を含んだ第1積層構造20が設けられ、支持体層10の第2面S2に、第2位相差層310及び第1反射層320を含んだ第2積層構造30が設けられている。このような構造は、例えば、支持体層10に積層構造20及び30を貼り付けることにより得られる。
【0084】
なお、参照符号20a及び20bは、それぞれ、第1積層構造20のうち領域210a及び210bに対応した部分を表している。また、参照符号30a及び30bは、それぞれ、第2積層構造30のうち領域310a及び310bに対応した部分を表している。
【0085】
次に、この情報記録媒体1が表示する像について説明する。まず、この情報記録媒体1が広げた状態において表示する像について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0086】
情報記録媒体1を図1及び図2に示すように広げた状態において、その第1積層構造20に対応した部分は透明に見える。そして、この状態において、情報記録媒体1の第2積層構造30に対応した部分は鏡面反射層の如く見える。
【0087】
次いで、この情報記録媒体1が、第1面S1が内側になるように折り曲げた状態において表示する像を、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0088】
図5は、図1に示す情報記録媒体をその前面が内側になるように折り曲げた状態を概略的に示す断面図である。図6は、図1に示す情報記録媒体が、図5に示すように折り曲げた場合に表示する画像を概略的に示す平面図である。
【0089】
図5には、第1面S1が内側になり且つ第1及び第2部分が重なり合うように情報記録媒体1を折り曲げた様子を描いている。図5において、LSは光源を表し、OBは観察者を表している。
【0090】
図5に示す情報記録媒体1を第1積層構造20側から自然光、例えば白色光で照明して反射光を観察すると、情報記録媒体1は、第1積層構造20に対応した位置で、図6に示す像I1を表示する。像I1は、領域210a及び210bに対応した明るさの分布を有している。ここでは、像I1は、黒色の背景と、星形状を有している銀白色の前景とを含んでいる。
【0091】
なお、図5に示す情報記録媒体1を第2積層構造30側から自然光、例えば白色光で照明して反射光を観察した場合、情報記録媒体1の第2積層構造30に対応した部分は、情報記録媒体1を広げた場合と同様に鏡面反射層の如く見える。
【0092】
次に、この情報記録媒体1が、第2面S2が内側になるように折り曲げた状態において表示する像を、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0093】
図7は、図1に示す情報記録媒体をその裏面が内側になるように折り曲げた状態を概略的に示す断面図である。図8は、図1に示す情報記録媒体が、図7に示すように折り曲げた場合に表示する画像を概略的に示す平面図である。
【0094】
図7には、第2面S2が内側になり且つ第1及び第2部分が重なり合うように情報記録媒体1を折り曲げた様子を描いている。図7において、LSは光源を表し、OBは観察者を表している。
【0095】
図7に示す情報記録媒体1を第1積層構造20側から自然光、例えば白色光で照明して反射光を観察すると、情報記録媒体1は、第1積層構造20に対応した位置で、図8に示す像I2を表示する。像I2は、領域310a及び310bに対応した明るさの分布を有している。ここでは、像I2は、黒色の背景と、円形状を有している銀白色の前景とを含んでいる。
【0096】
なお、図7に示す情報記録媒体1を第2積層構造30側から自然光、例えば白色光で照明して反射光を観察した場合、情報記録媒体1の第2積層構造30に対応した部分は、情報記録媒体1を広げた場合と同様に鏡面反射層の如く見える。
【0097】
このように、情報記録媒体1を折り曲げ、特定の条件のもとで観察すると、位相差層210又は310に記録されている潜像が可視化する。そして、第1面S1が内側になるように情報記録媒体1を折り曲げた場合と、第2面S2が内側になるように情報記録媒体1を折り曲げた場合とで、異なる潜像を可視化することができる。即ち、上述した構造を採用すると、複雑な視覚効果を実現することができる。
【0098】
また、偽造を試みる者にとって、この複雑な視覚効果を再現することは容易ではない。それ故、上述した構造は、高い偽造防止効果を達成する。
【0099】
更に、この複雑な視覚効果を確認するうえで、検証具は不要である。それ故、この情報記録媒体1が流通する様々な段階で、真偽判定を行うことができる。
【0100】
この情報記録媒体1には、様々な変形が可能である。
例えば、支持体層10として、光透過層110の代わりに、紙などの不透明又は半透明層に複数の窓を設け、これら窓の位置で不透明又は半透明層に光透過層を支持させてなる構造を含んだものを使用してもよい。
【0101】
第1位相差層210、第1直線偏光子220、第2位相差層310及び第1反射層320の配置にも様々な変形が可能である。
【0102】
図9は、一変形例に係る情報記録媒体において採用可能な構造を概略的に示す断面図である。図10は、他の変形例に係る情報記録媒体において採用可能な構造を概略的に示す断面図である。
【0103】
図9に示す構造では、第1積層構造20を第2面S2上に設けている。そして、この構造では、第1位相差層210は、光透過層110と第1直線偏光子220との間に介在している。図1乃至図4を参照しながら説明した情報記録媒体1には、図3に示す構造の代わりに、図9に示す構造を採用してもよい。
【0104】
図10に示す構造では、第2積層構造30を第1面S1上に設けている。そして、この構造では、第2位相差層310は、光透過層110と第1反射層320との間に介在している。図1乃至図4を参照しながら説明した情報記録媒体1には、図4に示す構造の代わりに、図10に示す構造を採用してもよい。
【0105】
また、図1乃至図4を参照しながら説明した情報記録媒体1には、図3に示す構造の代わりに、図9に示す構造を採用し、図4に示す構造の代わりに、図10に示す構造を採用してもよい。
【0106】
第1積層構造20を第1面S1又は第2面S2上に設ける代わりに、第1位相差層210及び第1直線偏光子220を、それぞれ、第1面S1及び第2面S2上に設けてもよい。同様に、第2積層構造30を第1面S1又は第2面S2上に設ける代わりに、第1反射層320及び第2位相差層310を、それぞれ、第1面S1及び第2面S2上に設けてもよい。
【0107】
図11は、更に他の変形例に係る情報記録媒体において採用可能な構造を概略的に示す断面図である。
【0108】
図11に示す構造において、第2積層構造30は、第2直線偏光子330を更に含んでいる。第2直線偏光子330は、支持体層10を広げた状態で第1反射層320を間に挟んで第2位相差層と向き合っている。第2直線偏光子330としては、例えば、第1直線偏光子220について上述したものを使用することができる。
【0109】
第2直線偏光子330の透過軸の向きは任意である。例えば、情報記録媒体1を第1及び第2部分が重なり合うように折り曲げた状態において、第1直線偏光子220の透過軸と第2直線偏光子330の透過軸とは、平行であってもよく、直交していてもよい。
【0110】
この構造を採用した情報記録媒体1は、第1位相差層210が直線偏光子220及び330間に介在するように支持体層10を折るか又は曲げ、この状態で透過光を観察すると、第2直線偏光子330の透過軸と第1位相差層210の光学軸とが成す角度などに応じて明るさが変化する第3画像を表示する。そして、この情報記録媒体1は、第2位相差層310が直線偏光子220及び330間に介在するように支持体層10を折るか又は曲げ、この状態で透過光を観察すると、第1直線偏光子220の透過軸と第2位相差層310の光学軸とが成す角度などに応じて明るさが変化する第4画像を表示する。
【0111】
即ち、この構造を採用すると、反射光を利用した表示に加え、透過光を利用した表示が可能となる。従って、この構造を採用すると、更に複雑な視覚効果を実現でき、それ故、更に高い偽造防止効果を達成することができる。
【0112】
なお、この構造は、図1乃至図4を参照しながら説明した情報記録媒体1並びに図9及び及び図10を参照しながら説明した変形例に係る情報記録媒体の何れにも採用することができる。即ち、図1乃至図4を参照しながら説明した情報記録媒体1並びに図9及び及び図10を参照しながら説明した変形例に係る情報記録媒体においては、第2積層構造30に、図11を参照しながら説明した構造を採用してもよい。
【0113】
図12は、更に他の変形例に係る情報記録媒体において採用可能な構造を概略的に示す断面図である。
【0114】
図12に示す構造において、第1積層構造20は、第2反射層230を更に含んでいる。第2反射層230は、第1直線偏光子220を間に挟んで第1位相差層210と向き合っている。第2反射層230は、第1直線偏光子220と第1位相差層210との間に介在させてもよい。
【0115】
第2反射層230は、単層構造又は多層構造を有している透明層である。この透明層としては、例えば、第1反射層320について例示したものを使用することができる。
【0116】
第2反射層230は、波長が可視域内にある1つ以上の光が繰り返し反射干渉する設計を採用している。或いは、第2反射層230には、レリーフ型の回折格子若しくはホログラムが設けられている。或いは、第2反射層230は、波長が可視域内にある1つ以上の光が繰り返し反射干渉する設計を採用するとともに、レリーフ型の回折格子若しくはホログラムが設けられている。ここでは、一例として、第2反射層230には、レリーフ型の回折格子が設けられていることとする。
【0117】
図13は、図12に示す構造を採用した情報記録媒体が、表面側から観察した場合に表示する画像の一例を概略的に示す平面図である。図14は、図12に示す構造を採用した情報記録媒体が、裏面側から観察した場合に表示する画像の一例を概略的に示す平面図である。
【0118】
図13及び図14に示す例では、第1反射層320及び第2反射層230の双方にレリーフ型の回折格子を設けている。具体的には、第1反射層320の一部には、溝の長さ方向がX方向に対して平行な回折格子を設け、第1反射層320の他の部分には、溝の長さ方向がY方向に対して平行な回折格子を設けている。また、第2反射層230の一部には、溝の長さ方向がX方向に対して平行な回折格子を設け、第2反射層230の他の部分には、溝の長さ方向がY方向に対して平行な回折格子を設けている。
【0119】
このような構造を採用した場合、例えば、X方向に垂直であり且つZ方向に対して傾いた方向から情報記録媒体1を照明して、正面から情報記録媒体1を観察すると、溝の長さ方向がX方向に対して平行な回折格子は観察者に向けて回折光を射出し、溝の長さ方向がY方向に対して平行な回折格子は観察者に向けて回折光を射出しない。従って、情報記録媒体1は、例えば、図13及び図14に示す画像を表示する。
【0120】
このように、第2反射層230に回折光を射出する構造を採用すると、第1位相差層210の存在を悟られ難くすることができる。
【実施例】
【0121】
以下に、本発明の例を記載する。
【0122】
図1乃至図4を参照しながら説明した情報記録媒体1を、以下の方法により製造した。但し、本例では、印刷層120a及び120bは省略した。
【0123】
まず、支持体層10として、矩形状の無延伸トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを準備し、この支持体層10の第1面S1上に第1直線偏光子220を貼り付けた。第1直線偏光子220としては、PVAフィルムにヨウ素を含浸させ、長さ方向に一軸延伸することによって得られた帯状のフィルムを使用した。第1直線偏光子220は、その長さ方向がY方向に対して平行になるように貼り付けた。
【0124】
次に、第1直線偏光子220上に、配向膜の材料としての樹脂を溶剤に溶解させてなる溶液をマイクログラビア法で塗布した。乾燥後、塗膜上に星形状を有しているマスクを配置し、この状態で、塗膜に対してラビング処理を施した。ここでは、ラビング方向は、Y方向に対して45°の角度をなす方向とした。星形状を有しているマスクを塗膜から取り除いた後、この塗膜上に星形状の開口が設けられたマスクを載せ、この状態で、塗膜に対してラビング処理を施した。ここでは、ラビング方向は、Y方向に対して平行とした。
【0125】
次いで、以上のようにして得られた配向膜上に、マイクログラビア法により液晶材料を塗布した。液晶材料としては、DIC株式会社製のUVキュアラブル液晶UCL−008を使用した。この塗膜を酸素雰囲気中での紫外線照射によって硬化させることにより、第1位相差層210を得た。なお、第1位相差層210は、領域210a及び210bの各々において、波長λが550nmの光に対するリターデイションがλ/4となるような厚さに形成した。
【0126】
次に、基材と転写材層とを含んだ転写箔を準備した。
具体的には、まず、基材としてPETフィルムを準備した。この基材上に、配向膜の材料としての樹脂を溶剤に溶解させてなる溶液をマイクログラビア法で塗布した。乾燥後、塗膜上に円形状を有しているマスクを配置し、この状態で、塗膜に対してラビング処理を施した。円形状を有しているマスクを塗膜から取り除いた後、この塗膜上に円形状の開口が設けられたマスクを載せ、この状態で、塗膜に対してラビング処理を施した。ここでは、これらラビングは、それらのラビング方向が45°の角度をなすように行った。
【0127】
次いで、以上のようにして得られた配向膜上に、マイクログラビア法により液晶材料を塗布した。液晶材料としては、DIC株式会社製のUVキュアラブル液晶UCL−008を使用した。この塗膜を酸素雰囲気中での紫外線照射によって硬化させることにより、位相差層を得た。なお、この位相差層は、円形状のマスクを配置した領域と、円形状の開口が設けられたマスクを載せた領域との各々において、波長λが550nmの光に対するリターデイションがλ/4となるような厚さに形成した。
【0128】
次に、この位相差層上に、グラビア印刷法により厚さが0.8μmの熱可塑性樹脂層を形成した。次いで、ロールエンボス法により、熱可塑性樹脂層の表面にレリーフ構造を転写した。このロールエンボス法では、回折格子の溝に対応したパターンが設けられたニッケル製の金型を使用し、金型は165℃に加熱した。
【0129】
続いて、このようにして得られた回折構造形成層上に、真空蒸着法によりアルミニウムを80nmの厚さに堆積させて、反射層を得た。
【0130】
更に、この反射層上に、熱可塑性樹脂からなる接着剤をマイクログラビア法により塗布して、厚さが2μmの接着剤層を得た。接着剤としては、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を含んだ樹脂を使用した。
【0131】
以上のようにして、基材側から、位相差層と、回折構造形成層と、反射層と、熱可塑性樹脂からなる接着層とを順次積層してなる転写材層を形成した。
【0132】
次に、ロール転写機を用いて、この転写箔の基材から、転写材層の一部を、支持体層10の第2面S2上へと熱転写した。具体的には、この転写箔と先の支持体層10とを、転写箔の接着層が支持体層10の第2面S2と向き合うように配置し、この状態で熱を加えながら転写箔を第2面S2に押し当て、その後、基材を支持体層10から除去した。これにより、転写材層のうち、熱及び圧力を加えた部分を、基材から支持体層10へと転写した。この転写は、転写材層が含んでいる位相差層のうち、円形状のマスクを配置した領域におけるラビング方向がY方向に対して平行になるように行った。この転写により、支持体層10の第2面S2上に、反射層320と第2位相差層310とを設けた。
【0133】
このようにして得られた情報記録媒体1は、広げた状態で第1面S1側を肉眼で観察した場合、反射層320からの回折光を知覚できたものの、領域210a及び210bにそれぞれ対応した部分20a及び20bを互いから識別することはできなかった。同様に、この情報記録媒体1は、広げた状態で第2面S2側を肉眼で観察した場合、反射層320からの回折光を知覚できたものの、領域210a及び210bにそれぞれ対応した部分20a及び20bを互いから識別することはできなかった。
【0134】
次に、この情報記録媒体1を、図5に示すように、第1面S1が内側になるように折り曲げ、第1積層構造20側から肉眼で観察した。その結果、この情報記録媒体1は、第1積層構造20の位置で、図6に示す第1画像I1を表示した。
【0135】
続いて、この情報記録媒体1を、図7に示すように、第2面S2が内側になるように折り曲げ、第1積層構造20側から肉眼で観察した。その結果、この情報記録媒体1は、第1積層構造20の位置で、図8に示す第2画像I2を表示した。
【符号の説明】
【0136】
1…情報記録媒体、10…支持体層、110…光透過層、120a…印刷層、120b…印刷層、210…第1位相差層、210a…第1領域、210b…第2領域、220…第1直線偏光子、230…第2反射層、310…第2位相差層、320…第1反射層、I1…第1画像、I2…第2画像、LS…光源、OB…観察者、S1…第1面、S2…第2面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面とその裏面である第2面とを有している支持体層であって、光透過性を有している第1及び第2部分を含み、前記第1面が内側になるように折るか又は曲げることにより前記第1及び第2部分を重なり合わせることと、前記第2面が内側になるように折るか又は曲げることにより前記第1及び第2部分を重なり合わせることとが可能な支持体層と、
前記支持体層を広げた状態で前記第1部分と向き合うように設けられた第1直線偏光子と、
前記支持体層を広げた状態で前記第2部分と向き合うように設けられた第1反射層と、
前記支持体層を広げた状態で前記第1直線偏光子と向き合い、前記支持体層を前記第1面が内側になるように折るか又は曲げて前記第1及び第2部分を重ね合わせた状態で前記第1直線偏光子と前記第1反射層との間に位置するように設けられた第1位相差層と、
前記支持体層を広げた状態で前記第1反射層と向き合い、前記支持体層を前記第2面が内側になるように折るか又は曲げて前記第1及び第2部分を重ね合わせた状態で前記第1直線偏光子と前記第1反射層との間に位置するように設けられた第2位相差層と
を具備した情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1反射層にレリーフ型の回折格子又はホログラムが設けられている請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記支持体層は矩形状であり、前記第1及び第2部分は、前記支持体層をその短辺に平行な折り目が形成されるように折った場合に重なり合う請求項1又は2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記第1位相差層は、光学軸の向きが互いに異なる第1及び第2領域を含み、前記第2位相差層は、光学軸の向きが互いに異なる第3及び第4領域を含んだ請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記第1又は第2領域が形成しているパターンは、前記第3領域が形成しているパターン及び前記第4領域が形成しているパターンとは異なっている請求項4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記第1及び第2領域の一方の光学軸は、前記第1直線偏光子の透過軸に対して平行であるか又は直交しており、前記第1及び第2領域の他方の光学軸は、前記第1直線偏光子の透過軸に対して斜めである請求項4又は5に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記第3及び第4領域の一方の光学軸は、前記第1直線偏光子の透過軸に対して平行であるか又は直交しており、前記第3及び第4領域の他方の光学軸は、前記第1直線偏光子の透過軸に対して斜めである請求項4乃至6の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記第1直線偏光子と前記第1位相差層とは、前記第1部分の位置で前記第1又は第2面に支持された第1積層構造の少なくとも一部を構成し、前記第1反射層と前記第2位相差層とは、前記第2部分の位置で前記第1又は第2面に支持された第2積層構造の少なくとも一部を構成している請求項1乃至7の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記支持体層を広げた状態で前記第1反射層を間に挟んで前記第2位相差層と向き合った第2直線偏光子を更に具備した請求項1乃至8の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記支持体層を広げた状態で前記第1反射層を間に挟んで前記第2位相差層と向き合った第2直線偏光子を更に具備し、前記第1直線偏光子と前記第1位相差層とは、前記第1部分の位置で前記第1又は第2面に支持された第1積層構造の少なくとも一部を構成し、前記第1反射層と前記第2位相差層と前記第2直線偏光子とは、前記第2部分の位置で前記第1又は第2面に支持された第2積層構造の少なくとも一部を構成している請求項1乃至7の何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項11】
前記第1直線偏光子を間に挟んで前記第1位相差層と向き合っているか又は前記第1直線偏光子と前記第1位相差層との間に介在し、光透過性を有している第2反射層を更に具備し、前記第2反射層は回折光を射出するように構成された請求項1乃至10の何れか1項に記載の情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−64882(P2013−64882A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203703(P2011−203703)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】