説明

情報記録材料

【課題】基板上に少なくとも光情報記録材料と下地層とプリンタブルレーベル層を有する情報記録媒体に関しており、詳しくはプリンタブルレーベル層の光沢と発色性に優れ、かつ情報記録時及び再生時のエラーを著しく改善することが可能な情報記録材料を提供する。
【解決手段】基板10上に、光情報記録層11、下地層14及びプリンタブルレーベル層15を少なくとも有する情報記録媒体において、プリンタブルレーベル層が無機微粒子及びポリビニルアルコールを主体に含有する多孔質層であり、かつ該プリンタブルレーベル層が水溶性硫黄化合物を含有することを特徴とする情報記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に少なくとも光情報記録材料と下地層とプリンタブルレーベル層を有する情報記録媒体に関しており、詳しくはプリンタブルレーベル層の光沢と発色性に優れ、かつ情報記録時及び再生時のエラーを著しく改善することが可能な情報記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、市場にて広く受け入れられている、光学的に情報を記録、読み込みが可能な光情報記録層を有する情報記録媒体としては、CD(コンパクトディスク)やDVD(デジタルバーサタイルディスク)がある。CD、DVDとも読み出し専用のCD−ROM、DVD−ROM、1回限りの情報記録が可能な追記型のCD−R、DVD−R、DVD+R、何回でも情報記録の書き換えが可能な書き換え可能型のCD−RW、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAMがある。
【0003】
これらの情報記録媒体は、分類や保管を容易にするため、もしくはデータ内容を容易に確認できるようにするために、記録されたデータの内容がケース内のインデックスに記載されているが、同時にスクリーン印刷等の印刷方式により、ディスクそのものにレーベル印刷されている。
【0004】
しかしながら、このような既存の印刷方式によるレーベル印刷では、大量生産では問題ないが、少量生産では、印刷用刷版の作製が必要となるためコストアップになったり、印刷デザインの変更の場合に、その都度、刷版を交換し色合わせを行う必要がある等、作業性も悪化する問題等々があった。
【0005】
このような問題に対し、情報記録層に光によって記録・読み込みがなされる面の反対面にインクジェットプリンターや昇華型熱転写プリンターで印字可能となるようにプリンタブルレーベル層を塗設した情報記録媒体が開発され市販されている。インクジェットプリンター用としては、このような印字可能な情報記録媒体の他に、特開平5−182411号公報にあるように、ラベルに印字した後、情報記録媒体に貼り付ける方式に関しても開示されているが、ラベルの位置合わせ等が非常に煩雑である。昨今、情報記録媒体に直接印字できる安価な機種が数多く発売されており、作製が非常に簡便であることから、業務用だけでなく家庭用にもこのようなインクジェット印字可能な情報記録媒体は広く普及しつつある。
【0006】
このようなインクジェット印字可能な情報記録媒体のプリンタブルレーベル層としては、例えば特開2004−234764号公報、特開2004−30716号公報、特開2004−30769号公報、特表2004−503610号公報、特開2001−6225号公報、特開平8−279179号公報、特開平9−245380号公報等の様に主成分として紫外線硬化型樹脂や、紫外線硬化型樹脂とインク膨潤性樹脂を併用した混合処方が使用されている。しかしながら、これらプリンタブルレーベル層は、主にインク膨潤性樹脂の膨潤を利用してインク吸収させている(以下、膨潤タイプという)ため、近年の微細空隙の毛細管現象でインク吸収させている(以下、空隙タイプという)写真印字対応のインクジェット用記録材料と比較して、印字後指で印字部を触った場合に画像や指が汚れてしまったり、インデックスとともにケースに保管した場合にインデックスに貼り付いて使用不可能になったり、また業務用としての複製システムでは、数十枚から数百枚を連続して印字する場合があり、印字後トレイに重ねられた時にメディア同士がブロッキングしたりする、所謂インクの乾燥性が不十分であった。また、これらの問題を回避するため、例えば特開2004−30716号公報に例示されているように顔料粒子を多く使用した場合には、基板との接着性が悪化したり、発色性や光沢性が低下したりする等の問題点があった。またこれら紫外線硬化型樹脂は皮膚刺激性や異臭等の安全性や作業性の問題点があった。
【0007】
一方、このような紫外線硬化型樹脂からなるプリンタブルレーベル層の問題点を回避するため、例えば特開2005−44478号公報には、ポリビニルアルコールやポリビニルアセタールなどの親水性樹脂を主成分とし、インク定着剤としてカチオン性ポリマーを混合したプリンタブルレーベル層が提案されているが、親水性樹脂を主成分としているため、安全性や作業性の問題はないが、膨潤タイプのため乾燥性が不十分であった。また、特開2004−276298号公報(特許文献1)、特開2004−276299号公報(特許文献2)、特開2005−96258号公報(特許文献3)、及び特開2005−116072号公報(特許文献4)には、少なくとも微粒子とポリビニルアルコールとホウ素化合物と媒染剤を含むプリンタブルレーベル層が提案されており、微粒子として気相法シリカ、擬ベーマイト及び酸化アルミニウムが好適である記載がなされている。また、特開2006−260748号公報(特許文献5)には、気相法アルミナ等の気相法無機粉末を含有した樹脂膜からなる多孔質層を有する光情報記録媒体が提案されている。
【0008】
前記の微粒子を使用した場合、安全性や作業性の問題がなく、発色性、光沢性及び乾燥性も良好である一方、分散安定性が低く塗液の高濃度化が困難であり、また経時安定性も低く、塗液の粘度が上昇するといった問題もあったため、特開2007−76007号公報(特許文献6)にはプリンタブルレーベル層が主体として平均二次粒子径500nm以下に粉砕された湿式法、及びポリビニルアルコールを含有することを特徴とする情報記録媒体が提案されている。しかしながら、シリカ微粒子のような不定形の微粒子を使用すると、水溶性バインダーの処方量が増えるため、温湿度が変化すると基材との伸縮度合いに差ができることにより発生する反りにより、例えばカーオーディオなどに多く搭載されている吸い込み方式(スロットイン方式)のCDプレーヤーではCDなどを入れられなくなったり、取り出せなくなったりするトラブルが起こることがあった。また、記録面が湾曲していることによりレーザーのヘッドにディスクが当たったり、レーザー光の焦点が記録面に合わなくなったり、レーザー光の照射位置が合わなくなったりするため情報記録時及び再生時に悪影響を及ぼすことがあった。また、表裏の乾燥収縮率に差ができることにより前記と同様に反りが発生するため、記録時、再生時に前記と同様のエラーが発生することがあった。
【0009】
また、水溶性硫黄化合物をインクジェット記録媒体に用いることが既に知られている。例えば、特開2001−260519号公報(特許文献7)、特開2006−263951号公報(特許文献8)では、染料系インクの画像保存性を改良する技術として紹介されている。
【特許文献1】特開2004−276298号公報
【特許文献2】特開2004−276299号公報
【特許文献3】特開2005−96258号公報
【特許文献4】特開2005−116072号公報
【特許文献5】特開2006−260748号公報
【特許文献6】特開2007−76007号公報
【特許文献7】特開2001−260519号公報
【特許文献8】特開2006−263951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、プリンタブルレーベル層の光沢と発色性に優れ、かつ情報記録時及び再生時のエラーを著しく改善することが可能な情報記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成される。
1)基板上に、光情報記録層、下地層及びプリンタブルレーベル層を少なくとも有する情報記録媒体において、プリンタブルレーベル層が無機微粒子及びポリビニルアルコールを主体に含有する多孔質層であり、かつ該プリンタブルレーベル層が水溶性硫黄化合物を含有することを特徴とする情報記録媒体。
2)前記水溶性硫黄化合物が、水溶性チオエーテル系化合物である前記1に記載の情報記録媒体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によりプリンタブルレーベル層の光沢と発色性に優れ、情報記録時及び再生時のエラーを著しく改善することが可能な情報記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の情報記録媒体の構成の一例を示す。図1は本発明の情報記録媒体の構成の一例を示した説明図である。本発明の情報記録媒体は、基板10とこの基板上にデータを記録する光情報記録層11、金属箔からなるレーザーを反射させる光反射層12、光反射層を保護するための保護層13、プリンタブルレーベル層との接着性を高めたり画像の発色性や光沢を向上させるための下地層14、更に最外層にプリンタブルレーベル層15を積層形成された構造を有している。
【0014】
記録及び再生時に照射されるレーザーは、プリンタブルレーベル層とは反対面の基板方向から入射される。また、インクジェット記録ヘッドを有するインクジェットプリンターによって、文字や画像がプリンタブルレーベル層上に記録される。この場合、レーザーは基板を通して光情報記録層11の記録及び再生を行うため、通称、基板面入射タイプと呼ばれる。また、基板の片側に光反射層、光情報記録層、保護層の順に設け、光情報記録層とは反対側の基板面に下地層、プリンタブルレーベル層を有する構成としてもよい。この場合、保護層側からレーザーを照射するため、通称、膜面入射タイプと呼ばれる。以下、基板面入射タイプに関して詳細に説明するが、いずれのタイプの層構成でも、本発明の効果が損なわれることはない。
【0015】
本発明に用いられる水溶性硫黄化合物について説明する。水溶性硫黄化合物は、硫黄原子を含む水溶性の有機化合物であり、かつ常温で固体または液体である。尚、ここでいう水溶性とは、水への溶解度が1質量%以上のものをいう。該化合物を添加するとプリンタブルレーベル層の弾性が増してプリンタブルレーベル層側への反りが抑えられるため、情報記録時及び再生時のエラーがない情報記録媒体が得られるものと考えられる。本発明で用いられる水溶性硫黄化合物としては、チオエーテル系化合物、ジスルフィド系化合物、チオール系化合物、スルフィン酸化合物、チオスルホン酸化合物、チオウレア系化合物等が挙げられる。これらの中で、チオエーテル系化合物が最も好ましく用いられる。
【0016】
水溶性チオエーテル系化合物は二価の硫黄が2個の有機基で置換された有機化合物で、スルフィドとも呼ばれる。中でも硫黄原子を挟んだ両側にアルキル基を有する脂肪族チオエーテル化合物等が好ましく、化合物中にヒドロキシル基が1〜2個含まれるものが特に好ましい。上記のような水溶性チオエーテル系化合物としては、2−メチルチオエタノール、4−ブチルチオエタノール、3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。
【0017】
水溶性ジスルフィド系化合物は、スルフィドが1個の硫黄を2個の有機基で挟んだものであるのに対し、2個の線形に繋がった硫黄を2個の有機基で挟んだものである。また、同様に硫黄原子が3個繋がったトリスルフィドを使用してもよい。ジスルフィドの中でも硫黄原子を挟んだ両側にアルキル基を有する脂肪族ジスルフィド化合物等が好ましく、化合物中にヒドロキシル基が1〜2個含まれるものが特に好ましい。上記のようなジスルフィド化合物としては、1−メトキシ−2−メチルジスルフィド、ビス(1−エトキシ)ジスルフィド、2,2′−ジチオエタノールなどが挙げられる。
【0018】
水溶性チオール系化合物は、アルコールのO原子をS原子に置き換えたものである。アルコールと似た性質を示すが、アルコールよりも酸性度が強い化合物である。水溶性チオール化合物としては、メタンチオール、チオリンゴ酸、2−メルカプトプロピオン酸などが挙げられる。
【0019】
水溶性スルフィン酸系化合物は、有機硫黄酸の一種であり、スルフィン酸としては強酸性を示す。化学的には不安定なため、金属塩の形で存在することが多い。上記のようなスルフィン酸化合物としては、メタンスルフィン酸、エタンスルフィン酸などが、スルフィン酸と塩を形成する金属種としてはナトリウム、カリウム、亜鉛などが挙げられる。
【0020】
水溶性スルホン酸系化合物は、有機硫黄酸の一種であり、スルホン酸としては強酸性を示す。スルホン酸化合物として、金属塩の形で存在してもよい。上記のようなスルホン酸化合物としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、タウリンなどが、スルホン酸と塩を形成する金属種としてはナトリウム、カリウム、亜鉛などが挙げられる。
【0021】
水溶性チオウレア系化合物は、尿素の酸素原子を硫黄原子で置き換えた構造を持つ。チオウレア系化合物としては、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素などが挙げられる。
【0022】
上記水溶性硫黄化合物の添加量は、無機微粒子に対して10固形分質量%以下が好ましく、0.1〜6固形分質量%がより好ましい。
【0023】
本発明のプリンタブルレーベル層は、無機微粒子及びポリビニルアルコールを主体に含有する多孔質層である。無機微粒子は、プリンタブルレーベル層の全固形分に対して50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することが更に好ましく、65質量%以上含有することが特に好ましい。上限は95質量%程度である。このように含有することによって、空隙率の高い多孔質なプリンタブルレーベル層となり、インク吸収性が向上する。
【0024】
本発明に用いられる無機微粒子としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等もしくはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、合成シリカ、アルミナあるいはアルミナ水和物が好ましく、これらの無機微粒子は高い印字濃度及び鮮明な画像が得られ、かつコスト面で有利である。本発明で更に好ましい無機微粒子は、非晶質合成シリカ、アルミナまたはアルミナ水和物である。
【0025】
本発明では平均二次粒子径500nm以下に粉砕された湿式法シリカ、あるいは気相法シリカが特に好ましく使用できる。更に好ましくは、湿式法シリカ(A)と、気相法シリカ(B)が併用されることが好ましく、特に好ましくはA/B=70/30〜30/70の質量比で含有されることである。
【0026】
このような湿式法シリカと気相法シリカを本比率で使用することにより、あらゆるレーベルプリンターで非常に高い発色性と、高い光沢及び耐傷性、高濃度塗液が作製可能でありかつ空隙率の高い塗膜が得られる。
【0027】
本発明における湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、珪酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0028】
通常の方法で製造された湿式法シリカは、1μm以上の平均凝集粒子径を有するため、本発明の湿式法シリカは、平均二次粒子径を500nm以下に粉砕して使用することが好ましい。粉砕される湿式法シリカとしては平均一次粒子径が50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、かつ平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカが好ましく、これをカチオン性化合物の存在下で平均二次粒子径が500nm以下、より好ましくは20〜200nmまで微粉砕することである。平均二次粒子径が500nmを超えた場合、発色性と光沢性が低下する場合がある。尚、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものであり、本発明でいう平均二次粒子径とは、得られた情報記録材料のプリンタブルレーベル層を電子顕微鏡で観察することにより、観察される分散された凝集粒子の粒子径の平均値を求めたものである。
【0029】
湿式法シリカの粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。この際、分散液の初期粘度上昇が抑制され、高濃度分散が可能となり、粉砕・分散効率が上昇してより微粒子に粉砕することができることから、吸油量が210ml/100g以下、平均凝集粒子径5μm以上の沈降法シリカを使用することが好ましい。高濃度分散液を使用することによって、情報記録材料の生産性も向上する。吸油量は、JIS K−5101の記載に基づき測定される。
【0030】
本発明における平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカを得る具体的な方法としては、まず、シリカ粒子とカチオン性化合物を混合した予備分散液を作製する。予備分散液は、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて、シリカ粒子とカチオン性化合物を混合・分散する。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。シリカ予備分散液の固形分濃度は高い方が好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15〜40固形分質量%、より好ましくは20〜35固形分質量%である。次に、より強い機械的手段を与えることによって平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカの分散液が得られる。機械的手段としては公知の方法が採用でき、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機及び薄膜旋回型分散機等を使用することができる。
【0031】
上記湿式法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーが好ましく使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−11389号公報、特開昭60−49990号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭60−109894号公報、特開昭62−198493号公報、特開昭63−49478号公報、特開昭63−115780号公報、特開昭63−280681号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、本発明においては塗液の経時安定性の観点よりカチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性、分散液粘度及び経時安定性の面で、これらのカチオン性ポリマーの分子量は2000〜10万程度が好ましく、特に2000〜3万程度が好ましい。カチオン性ポリマーの添加量は、シリカに対して1〜10固形分質量%の範囲が好ましい。
【0032】
本発明における気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0033】
本発明の気相法シリカは、平均二次粒子径を500nm以下に粉砕して使用することが好ましい。また、かかる気相法シリカの平均一次粒子径は10〜20nmであることが好ましい。平均一次粒子径が10nm未満であると、液の経時安定性が著しく悪くなる場合がある。また、20nmを超えると発色性が低下する場合がある。より高い発色性を得るためには平均一次粒子径が10〜15nmであることが好ましく、BET法による比表面積が150m2/g以上のものを用いることが好ましい。尚、本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0034】
本発明の気相法シリカは、カチオン性化合物の存在下で、該気相法シリカの平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmに分散したものが使用できる。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。尚、本発明でいう平均二次粒子径とは、得られた記録材料のプリンタブルレーベル層を電子顕微鏡で観察することにより、観察される分散された凝集粒子の粒子径の平均値を求めたものである。
【0035】
上記気相法シリカの分散に使用するカチオン性化合物は、前述の湿式法シリカの分散に使用するカチオン化合物と同等のものが使用可能であり、同様に、本発明においては塗液の経時安定性の観点よりカチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性、分散液粘度及び経時安定性の面で、これらのカチオン性ポリマーの分子量は2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。カチオン性ポリマーの添加量は、シリカに対して1〜10固形分質量%の範囲が好ましい。
【0036】
本発明では、無機微粒子としてアルミナ系微粒子を使用することができる。本発明に使用できるアルミナ系微粒子は、酸化アルミニウムやその含水物であり、結晶質でも非晶質でもよく、不定形や、球状、板状等の形態を有しているものが使用される。両者のいずれかを使用してもよいし、併用してもよい。
【0037】
本発明における酸化アルミニウムは、工業的にアルミナとも呼ばれており、結晶タイプとしてはγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶とγグループ結晶が好ましい。特に気相法により製造される気相法アルミナが好ましい。気相法アルミナは日本アエロジル(株)よりAEROXIDEタイプとして入手することができる。
【0038】
酸化アルミニウムの好ましい平均一次粒子径は5〜15nmであり、7〜12nmがより好ましい。酸化アルミニウムの好ましい平均二次粒子径は500nm以下であり、20〜300nmがより好ましい。酸化アルミニウムのBET法による比表面積は、80m2/g以上のものが好ましく、100m2/g以上のものがより好ましい。これら一次粒子径、二次粒子径及び比表面積の測定には、前述の気相法シリカと同様の方法で測定することができる。
【0039】
本発明に用いられる酸化アルミニウムは、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
【0040】
本発明に設けるプリンタブルレーベル層には、透明性が高く発色性が良好で、比較的室温付近で膨潤性が低く湿式法シリカ及び気相法シリカの結着能力が高いためインク吸収性が良好で、更に基板との良好な接着性が得られるという観点からポリビニルアルコールが必須であり、特に制限はないが完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールが好ましく使用できる。その含有量は、インク吸収性の観点より、好ましくは無機微粒子に対して15〜50固形分質量%であり、更に好ましくは20〜40固形分質量%である。
【0041】
カチオン変性ポリビニルアルコールとは、例えば特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0042】
ポリビニルアルコールの中でも、ケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したものが好ましい。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。プリンタブルレーベル層の塗布性やインク吸収性の観点から、平均重合度3000〜4000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0043】
本発明のプリンタブルレーベル層には、ポリビニルアルコールと共に硬膜剤を含有することができるが、特に含ホウ素化合物を含有するのが好ましい。含ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ酸塩、及びホウ砂等があり、これらを1種または2種以上組みあわせることもできる。ホウ酸塩としては、オルトホウ酸塩、メタホウ酸塩、二ホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩等が挙げられる。
【0044】
本発明のプリンタブルレーベル層には、発色性や耐水性を向上させるために、カチオン性定着剤を含有することが好ましい。本発明におけるカチオン定着剤としては、湿式法シリカの分散に使用するカチオン性化合物として前述した各種カチオン性ポリマーや、各種多価金属類が使用できるが、中でも水溶性アルミニウム化合物や水溶性ジルコニウム化合物に代表される水溶性多価金属を用いることが好ましい。これらの化合物は、無機塩や有機酸の単塩及び複塩、金属錯体などのいずれであってもよい。
【0045】
本発明に用いることができる水溶性アルミニウム化合物は、例えば、無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。更に、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られている。
【0046】
これらの水溶性アルミニウム化合物の中でも、プリンタブルレーベル層を形成する塗布液に安定に添加できるものが好ましく、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましく用いられる。この化合物は、主成分が下記の式1、2または3で示され、例えば[Al6(OH)153+、[Al8(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0047】
[Al2(OH)nCl6-nm ・・式1
[Al(OH)3nAlCl3 ・・式2
Aln(OH)mCl(3n-m) 0<m<3n ・・式3
【0048】
これらのものは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学工業(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って市販されており、各種グレードのものが容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できる。
【0049】
本発明に用いられる水溶性ジルコニウム化合物は、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウムなどが挙げられる。
【0050】
これらの水溶性ジルコニウム化合物の中でもプリンタブルレーベル層を形成する塗布液に安定に添加でき、優れた滲み耐性を示す酢酸ジルコニウム(ジルコニル)化合物は特に好ましい。
【0051】
これらのものは、第一稀元素化学工業(株)からジルコゾールZA−20、ZA−30等として市販されており、また、日本軽金属(株)からも市販されている。
【0052】
上記水溶性アルミニウム化合物及び水溶性ジルコニウム化合物の合計の添加量は、無機微粒子に対して10固形分質量%以下が好ましく、0.5〜8固形分質量%がより好ましい。
【0053】
本発明におけるプリンタブルレーベル層には、情報記録時及び再生時のエラーを更に抑えるために、平均粒子径100nm以下でガラス転移温度Tgが40℃以下のポリマーラテックスあるいは炭素数3〜5のアルカンジオールを含有することができる。これらを含有することにより、プリンタブルレーベル層の乾燥収縮率や温度・湿度変動による塗層の収縮変動を抑えることができる。
【0054】
本発明におけるポリマーラテックスは、乳化重合法で重合されたポリマーラテックスであり、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリアクリル酸エステル系ラテックス、ポリメタクリル酸エステル系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル系ラテックス等が好ましく用いられる。
【0055】
ポリマーラテックスの平均粒子径は100nm以下でガラス転移温度Tgが40℃以下であることが好ましい。ポリマーラテックスの平均粒子径が100nmを超えるとプリンタブルレーベル層の透明性が低下して発色性が悪化したり、光沢が低下する場合があり、ガラス転移温度Tgが40℃を超えると、ポリマーラテックスのプリンタブルレーベル層の可塑化効果が低くなり、プリンタブルレーベル層の乾燥収縮率や温度・湿度変化における塗層の収縮変動が抑え難くなる場合がある。
【0056】
上記ポリマーラテックスはプリンタブルレーベル層が含有する無機微粒子に対して5〜30固形分質量%使用するのが好ましく、5〜20固形分質量%が更に好ましい。5固形分質量%未満である場合には、塗層の収縮変動を抑える効果が不十分であり、また、30固形分質量%を超える場合にはインク吸収性が低下する場合がある。
【0057】
本発明に用いることができる炭素数3〜5のアルカンジオールは常温では液体であり、吸湿性が高く、揮発性が低く、水溶性である。
【0058】
炭素数3〜5のアルカンジオールとしては、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオールがあり、それらの異性体はいずれも含まれる。また、3−メチル−1,3−ブタンジオール等のような分岐のブタンジオールも含まれる。これらの中でも、炭素数が3〜4のプロパンジオールやブタンジオールが好ましく、特にプロパンジオールが好ましい。プロパンジオールとしてはプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)とトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)があり、特にプロピレングリコールが好ましい。該化合物の添加量は、無機微粒子に対して0.1〜50固形分質量%が好ましく、1〜20固形分質量%が更に好ましい。
【0059】
本発明の情報記録媒体は、プリンタブルレーベル層の上にオーバーコート層があってもよい。オーバーコート層により、表面強度を更に向上させたり、画像の保存性を向上させたりすることができる。オーバーコート層は、インクを受容するか、あるいは速やかに透過させる性質を有する必要がある。オーバーコート層の層厚としては、0.01〜1000μmが好ましく、0.1〜100μmが更に好ましい。
【0060】
本発明のプリンタブルレーベル層の塗設方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドリップ方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スクリーン印刷方式、スプレーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等を適宜使用することができるが、スクリーン印刷方式やスピンコート方式により形成することが好ましい。
【0061】
本発明におけるプリンタブルレーベル層塗設時の乾燥水分量は120g/m2以下であることが好ましい。このような範囲の乾燥水分量に調整することにより、情報記録媒体の表裏における乾燥収縮率の差を極力抑えることができる。尚、本発明における乾燥水分量とは、塗布し乾燥するプリンタブルレーベル層中の単位面積当たりの水分量のことである。
【0062】
本発明におけるプリンタブルレーベル層の乾燥塗布量は12〜28g/m2であることが好ましく、更に好ましくは12〜25g/m2であり、特に好ましくは14〜23g/m2である。乾燥塗布量が12g/m2未満であると乾燥性が低下し、28g/m2を超えると、プリンタブルレーベル層の重さによって情報記録及び再生時のエラーが発生し易くなる場合がある。
【0063】
本発明におけるプリンタブルレーベル層の乾燥温度は、好ましくは30〜60℃であり、更に好ましくは40〜60℃である。30℃未満であると乾燥時間が長くなり生産効率が悪化するため好ましくなく、60℃を超えると耐熱性の低い光情報記録層の品質が悪化し、情報記録時及び再生時のエラーが多発する場合がある。
【0064】
本発明においては、プリンタブルレーベル層15の下に、ISO白色度80%以上であり、かつ表面粗さRaが0.2μm以下である下地層14を設けることが、写真印画紙のような高い発色性と光沢を得ることができるため好ましい。また更にISO白色度90%以上であり、表面粗さRaは0.15μm以下であることが好ましい。
【0065】
本発明におけるISO白色度とは、ISO2470で規定される白色度であり、表面粗さRaとは、JIS−B0601:2001に規定されるRa(算術平均粗さ)である。Raは触針式表面粗さ計の測定値であり、基準長さが8mmで測定されたものである。Raを求める場合は、傷と見なされるような並外れた高い山や深い谷のない部分から基準長さを抜き取る。また、表面形状に方向性がある場合はRaが最も大きく現れる方向に測定する。
【0066】
このような下地層の形成手法は公知のどのような方法を用いても問わないが、生産性の観点から、公知の放射線硬化樹脂をスクリーン印刷により形成することが好ましい。放射線硬化樹脂は、紫外線、電子ビーム、X線、γ線、赤外線等の電磁波によって硬化する樹脂であり、放射線としては、中でも、紫外線、電子ビームが好ましい。
【0067】
放射線硬化樹脂をスクリーン印刷により形成させる場合、情報記録媒体の平滑性の観点より、印刷後の樹脂のレベリングのための時間が適宜必要である。
【0068】
下地層の膜厚としては、0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましく、3〜20μmが最も好ましい。
【0069】
基板10としては、従来の光記録媒体の基板材料として用いられている各種の材料を任意に選択して使用することができる。具体的には、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン、ポリエステル、アルミニウム等の金属等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。上記材料の中では、耐薬品性、寸法安定性、光透過性及び低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。また、基板の厚さは、0.5〜1.2mmとすることが好ましく、0.6〜1.1mmとすることがより好ましい。また、基板には、トラッキング用の案内溝またはアドレス信号等の情報を表す凹凸(プリグルーブ)が形成されている。プリグルーブのピッチ、深さ(溝深さ)、及び半値幅は情報記録媒体の種類により任意に設定できる。
【0070】
本発明の一例である基板面入射タイプの情報記録媒体においては、前述したように基板と下地層との間に光情報記録層、光反射層及び保護層が設けられる。本発明においては、光情報記録層と光反射層は情報記録媒体として必須であるが、保護層に関しては、保護層と下地層の双方の機能を有した下地層があれば、必ずしも設ける必要はない。
【0071】
光情報記録層11は、基板10上に設けられ、レーザー光の照射によりデジタル情報が記録可能な材料により形成される。通常は、CD−RやDVD−Rに代表されるように有機色素からなる光情報記録層、またはCD−RWやDVD−RWに代表されるように無機物質からなる光情報記録層として形成される。
【0072】
有機色素からなる光情報記録層は、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式薄膜形成法や、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の湿式薄膜形成法を用いて設けられる。中でも量産性、コスト等によりスピンコート法が特に好ましい。具体的な方法としては、記録物質である有機色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液をスピンコート法により基板のプリグルーブが形成された面に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成される。スピンコート法を適用する際の温度は、生産性と色素の耐熱性の観点から25〜60℃が好ましく、更に30〜50℃が好ましい。
【0073】
該有機色素としては、シアニン色素、オキソノール色素、金属錯体系色素、アゾ色素、フタロシアニン色素等が挙げられ、中でも、耐光性や耐久性に優れることからフタロシアニン色素が好ましい。また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、特開平11−53758号公報、特開平11−334204号公報、特開平11−334205号公報、特開平11−334206号公報、特開平11−334207号公報、特開2000−43423号公報、特開2000−108513号公報、及び特開2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0074】
有機色素からなる光情報記録層塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、2−メトキシエチルアセテート、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、メチルシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。上記溶剤は使用する記録物質の溶解性を考慮して単独で、あるいは2種以上を組合せて使用することができる。塗布液中には更にバインダー、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0075】
該バインダーの例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等を挙げることができる。光情報記録層の材料としてバインダーを併用する場合に、バインダーの使用量は、一般に有機色素100質量部に対して0.01〜50固形分質量部の範囲にあり、好ましくは0.1〜5固形分質量部の範囲である。このようにして調製される塗布液中の有機色素の濃度は、一般に0.01〜10固形分質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5固形分質量%の範囲である。
【0076】
光情報記録層には、該光情報記録層の耐光性を向上させるために、一重項酸素クエンチャーに代表される種々の褪色防止剤を含有させることができる。褪色防止剤としては一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、有機色素の量に対して通常0.1〜50固形分質量%の範囲であり、好ましくは0.5〜45固形分質量%の範囲、更に好ましくは3〜40固形分質量%の範囲である。
【0077】
無機物質からなる光情報記録層は、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等を用いて形成される。中でも量産性、コスト等の観点よりスパッタリング法が特に好ましい。
【0078】
該無機物質としては、結晶状態と非晶状態の少なくとも2つの状態をとり得る少なくともAg、Al、Te、Sbからなる相変化型の光記録材料が好ましい。尚、該光情報記録層上には、必要に応じて公知の誘電体層が形成される。
【0079】
本発明における光情報記録層は単層でも重層でもよく、その層厚は光情報記録層の種類によって異なるが一般に20〜500nmの範囲にあり、好ましくは30〜300nmの範囲であり、より好ましくは50〜100nmの範囲である。
【0080】
光反射層12は、光情報記録層11上に設けられ、通常基板10側から照射されるレーザー光を基板側へ反射させるために設ける。光情報記録層形成後、該光情報記録層上に光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングして光反射層を形成する。光反射層の形成に際しては通常マスクが使用され、これによって光反射層の形成領域を調節することができる。
【0081】
該光反射層には、レーザー光に対する反射率が十分高い光反射性物質が用いられる。当該反射率は70%以上であることが好ましい。反射率が高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、あるいは2種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。コストと反射率の観点より、特に好ましくは、Au、Ag、Alあるいはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Agあるいはこれらの合金である。
【0082】
光反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、50〜200nmの範囲とすることが好ましい。
【0083】
保護層13は、光反射層12上に、キャスト法、スピンコート法、スクリーン印刷法等により形成されるが、特にスピンコート法を適用することで、光情報記録層にダメージ(色素の溶解、色素と保護層材料との化学反応等)を与えることなく保護層を形成することができる。尚、保護層に放射線硬化樹脂(紫外線硬化樹脂)を使用した場合は、保護層を形成した後、該保護層上から紫外線照射ランプ(メタルハライドランプ)により紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂を硬化させる。また、形成する保護層の厚みムラを無くすため、樹脂を硬化させる前に一定時間放置する等の処理を適宜行ってもよい。
【0084】
保護層は、水分の侵入や傷の発生を防止する。保護層を構成する材料としては、放射線硬化樹脂、可視光硬化樹脂、熱硬化性樹脂、二酸化ケイ素等であることが好ましく、中でも放射線硬化樹脂であることが好ましい。該放射線硬化樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のSD−640等の各種紫外線硬化樹脂を使用することができる。
【0085】
保護層の厚さは、1〜200μmの範囲が好ましく、50〜150μmの範囲がより好ましい。
【0086】
以上のようにして、基板上に光情報記録層、光反射層、保護層、下地層、及びプリンタブルレーベル層が順次設けられた積層体からなる情報記録媒体が作製される。
尚、本発明の情報記録媒体は、基板に形成されるプリグルーブのトラックピッチや、光情報記録層を構成する材料等を適宜設定することで、従来のDVD等よりトラックピッチが狭く、使用されるレーザー光より小さい波長のレーザー光で情報の記録再生を行うことが可能な情報媒体にも適用することができる。
【0087】
以下、本発明を更に具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されず、特許請求の範囲において各種の応用ができるものである。尚、表記中で「部」とは特に断らない限り固形分質量部を表し、「%」とは特に断らない限り質量基準である。
【実施例1】
【0088】
−プリンタブルレーベル層塗設前情報記録媒体の作製−
射出成形により、幅0.45μm、深さ155nmのプリグルーブを有した、厚さ1.2mmのポリカーボネート樹脂製基板を作製した。この基板上に、含金属アゾ系色素のアルコール溶液をスピンコートで塗布・乾燥し、厚さ70nmの光情報記録層を形成した。続いてこの光情報記録層上に銀をスパッタリングして厚さ60nm光反射層を形成した。続いて、この光反射層上に、紫外線硬化樹脂(商品名:SD318、大日本インキ化学工業(株)製)をスピンコートで塗布し、高圧水銀灯を用い紫外線を照射させることで硬化し、厚さ5μmの保護層を形成した。その後、紫外線硬化インク(商品名:SSD F27、大日本インキ化学工業(株)製)をスクリーン印刷で印刷し、20秒後、高圧水銀灯を用い紫外線を照射させることで硬化し、厚さ10μmの白色の下地層を形成した。以上の工程により、基板、光情報記録層、光反射層、保護層及び下地層からなるプリンタブルレーベル層塗設前情報記録媒体1を作製した。本プリンタブルレーベル層塗設前情報記録媒体1のISO白色度は92%であり、表面粗さRaは0.12μmであった。
【0089】
−プリンタブルレーベル層の形成−
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と湿式法シリカ(吸油量200ml/100g、平均一次粒子径16nm、平均凝集粒子径9μm)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を調製した。次に得られた予備分散液をビーズミルで処理して、固形分濃度30%のシリカ分散液1を作製した。
【0090】
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径12nm、比表面積200m2/g)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度25%のシリカ分散液2を作製した。
【0091】
<プリンタブルレーベル層配合1>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として) 65部
シリカ分散液2 (シリカ固形分として) 35部
ポリビニルアルコール 30部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ホウ酸 5部
3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオール 2部
その後、上記配合の液を常温で混合して、固形分濃度が16%のプリンタブルレーベル層塗布液を調製し、固形分塗布量が18g/m2になるように、上記プリンタブルレーベル層塗設前情報記録媒体1にロッドバー方式により塗布し、50℃の空気を吹き付けて乾燥して、実施例1の情報記録媒体を作製した。この時の乾燥水分量は95g/m2であった。尚、無機微粒子として湿式法シリカ(シリカ分散液1)のみを100部、または気相法シリカ(シリカ分散液2)のみを100部として各々別々に配合を組み、同様に塗布・乾燥した後の電子顕微鏡観察による湿式法シリカ及び気相法シリカの平均二次粒子径は、双方とも100nmであった。
【実施例2】
【0092】
実施例1の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールを4−ブチルチオエタノールに変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の情報記録媒体を作製した。
【実施例3】
【0093】
実施例1の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールを2,2′−ジチオエタノールに変更した以外は実施例1と同様にして実施例3の情報記録媒体を作製した。
【実施例4】
【0094】
実施例1の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールを2−メルカプトプロピオン酸に変更した以外は実施例1と同様にして実施例4の情報記録媒体を作製した。
【実施例5】
【0095】
実施例1の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールをメタンスルフィン酸ナトリウムに変更した以外は実施例1と同様にして実施例5の情報記録媒体を作製した。
【実施例6】
【0096】
実施例1の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールをメタンスルホン酸ナトリウムに変更した以外は実施例1と同様にして実施例6の情報記録媒体を作製した。
【実施例7】
【0097】
実施例1の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールをチオ尿素に変更した以外は実施例1と同様にして実施例7の情報記録媒体を作製した。
【実施例8】
【0098】
<プリンタブルレーベル層配合2>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール 30部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ホウ酸 5部
3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオール 2部
上記配合の液を常温で混合して、固形分濃度が16%のプリンタブルレーベル層塗布液を調製し、固形分塗布量が18g/m2になるように、上記プリンタブルレーベル層塗設前情報記録媒体1にロッドバー方式により塗布し、50℃の空気を吹き付けて乾燥して、実施例8の情報記録媒体を作製した。この時の乾燥水分量は95g/m2であった。
【実施例9】
【0099】
実施例8のシリカ分散液1をシリカ分散液2に変更した以外は実施例8と同様にして実施例9の情報記録媒体を作製した。この時の乾燥水分量は95g/m2であった。
【実施例10】
【0100】
水に硝酸(2部)と酸化アルミニウム(気相法アルミナ、平均一次粒子径10nm、比表面積130m2/g)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を使用して、固形分濃度30%の酸化アルミニウム分散液1を調製した。
【0101】
<プリンタブルレーベル層配合3>
酸化アルミニウム分散液1(酸化アルミニウム固形分として)100部
ポリビニルアルコール 20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ホウ酸 1部
3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオール 2部
その後、上記配合の液を常温で混合して、固形分濃度が17%のプリンタブルレーベル層塗布液を調製し、固形分塗布量が20g/m2になるように、上記プリンタブルレーベル層塗設前情報記録媒体1にロッドバー方式により塗布し、50℃の空気を吹き付けて乾燥して、実施例10の情報記録媒体を作製した。この時の乾燥水分量は98g/m2であった。尚、電子顕微鏡観察による酸化アルミニウムの凝集粒子径は、220nmであった。
【0102】
(比較例1)
実施例1の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールを加えなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の情報記録媒体を作製した。
【0103】
(比較例2)
実施例1の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールを3,6−ジオキソ−1,8−オクタンジオールに変更した以外は実施例1と同様にして比較例2の情報記録媒体を作製した。
【0104】
(比較例3)
実施例3の3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールを1,8−オクタンジオールに変更した以外は実施例1と同様にして比較例3の情報記録媒体を作製した。
【0105】
得られた各々の情報記録媒体について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0106】
<記録・再生時エラー>
市販のCD−Rドライブを用いて、48倍速で音楽CDのコピー記録及び再生をA(23℃、50%RH)及びB(40℃、15%RH)の環境下で各々500枚行った。その時の記録時のエラーの発生状況及び再生時のエラー発生状況を以下の基準で評価した。
◎:A,Bの環境下とも全くエラーは発生しなかった。
○:B環境下で1回のエラーが発生したが、A環境下ではエラーは全く発生せず、実使用上は問題なかった。
△:A環境下ではエラーは発生しなかったが、B環境下で少なくとも2回以上エラーが発生した。
×:A環境下で少なくとも1回以上エラーが発生した。
【0107】
<発色性>
光ディスクレーベル印刷が可能な市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−G800)にて、プリンタブルレーベル層面に人物及び風景画像を印字し、同画像を用いて作製した銀塩写真と比較し、下記の基準で発色性を目視評価した。
◎:銀塩写真より高い発色性を有する。
○:銀塩写真並の発色性を有する。
△:銀塩写真と比較してやや発色性が劣る。
×:銀塩写真と比較して明らかに発色性が劣る。
【0108】
<光沢性>
光ディスクレーベル印刷が可能な市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−G800)にて、プリンタブルレーベル層面に人物及び風景画像を印字し、同画像を用いて作製した銀塩写真と比較し、下記の基準で光沢性を目視評価した。
◎:銀塩写真より高い光沢性を有する。
○:銀塩写真並の光沢性を有する。
△:銀塩写真と比較してやや光沢性が劣る。
×:銀塩写真と比較して明らかに光沢性が劣る。
【0109】
<乾燥性>
光ディスクレーベル印刷が可能な市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−G800)にて、プリンタブルレーベル層面にレッド、ブルー、グリーン、ブラックのベタ印字を行い、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。下記の基準で総合で評価した。
○:全く転写しない。
△:転写し実使用困難。
×:大部分が転写し実使用不可。
【0110】
【表1】

【0111】
表1の結果より明らかなように、本発明の構成(実施例1〜10)によりプリンタブルレーベル層の光沢と発色性に優れ、かつ情報記録時及び再生時のエラーを著しく改善することが可能な情報記録材料を得ることができる。比較例1〜3は、プリンタブルレーベル層に水溶性硫黄化合物を含有しなかったために、記録・再生時のエラーが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の情報記録媒体の構成の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0113】
10 基板
11 光情報記録層
12 光反射層
13 保護層
14 下地層
15 プリンタブルレーベル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、光情報記録層、下地層及びプリンタブルレーベル層を少なくとも有する情報記録媒体において、プリンタブルレーベル層が無機微粒子及びポリビニルアルコールを主体に含有する多孔質層であり、かつ該プリンタブルレーベル層が水溶性硫黄化合物を含有することを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記水溶性硫黄化合物が、水溶性チオエーテル系化合物である請求項1に記載の情報記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−226595(P2009−226595A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70967(P2008−70967)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】