説明

情報記録装置、及び情報記録方法

【課題】書き込みによる遅延を抑止する。
【解決手段】実施形態の情報記録装置は、判定手段と、記憶手段と、読出手段と、書込手段と、を備える。判定手段は、データを書き込むためのヘッドの位置と、当該ヘッドが書き込みを行っている記録媒体のトラックと、の間にオフトラックが発生したか否かを判定する。記憶手段は、ヘッドが書き込んだデータを一時的に記憶する。読出手段は、オフトラックが発生したと判定された場合に、ヘッドで書き込みを行っていたトラックに隣接するトラックのセクタのうち、オフトラックにより上書きされたとみなされるセクタに書き込まれた第1のデータを、記憶手段から読み出す。書込手段は、オフトラックが発生したと判定された場合に、第1のデータを、オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタに書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報記録装置、及び情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク装置内の磁気ディスクに格納するデータを高密度化させる傾向にある。これに伴い、近年、磁気ディスクのトラックピッチがさらに狭くなる傾向にある。
【0003】
このような磁気ディスクに対してヘッドで書き込みを行う際、すでに書き込んだ隣接トラック方向にオフトラックが生じると、当該隣接トラックのセクタに影響を与える場合がある。当該影響の例としては、当該セクタに対するリード性能の低下、場合によっては読込ができなくなる可能性もある。
【0004】
このため、隣接トラックに書き込まれたデータが読めなくなること自体を未然に防ぐ技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−331403号公報
【特許文献2】特開2007−073138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、オフトラックでリード性能が低下した隣接トラックに対して、同一のデータを再び書き込んでいたが、当該隣接トラックまでヘッドの移動等を行う必要があるため、遅延が生じることになる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オフトラックが発生した場合にデータを読み出し可能にすると共に書き込みによる遅延を抑止する情報記録装置、及び情報記録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の情報記録装置は、判定手段と、記憶手段と、読出手段と、書込手段と、を備える。判定手段は、データを書き込むためのヘッドの位置と、当該ヘッドが書き込みを行っている記録媒体のトラックと、の間にオフトラックが発生したか否かを判定する。記憶手段は、ヘッドが書き込んだデータを一時的に記憶する。読出手段は、オフトラックが発生したと判定された場合に、ヘッドで書き込みを行っていたトラックに隣接するトラックのセクタのうち、オフトラックにより上書きされたとみなされるセクタに書き込まれた第1のデータを、記憶手段から読み出す。書込手段は、オフトラックが発生したと判定された場合に、第1のデータを、オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタに書き込む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態にかかる磁気ディスク装置の電気的ハードウェア構成を示すブロック図。
【図2】図2は、第1の実施形態にかかる磁気ディスク装置のCPUによる情報記録プログラムの実行で実現されるソフトウェア構成を示したブロック図。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかる磁気ディスク装置における、磁気ディスクでオフトラックが発生した場合にデータを書き込む例を説明した図。
【図4】図4は、第1の実施形態にかかる磁気ディスク装置における、データの読み出し制御の例を示した図。
【図5】図5は、サーボによるオフトラックの検出の概念を示した図。
【図6】図6は、第1の実施形態にかかる磁気ディスク装置における、書き込み処理の手順を示すフローチャート。
【図7】図7は、第2の実施形態にかかる磁気ディスク装置のCPUによる情報記録プログラムの構成を示すブロック図。
【図8】図8は、第2の実施形態にかかる磁気ディスク装置における、磁気ディスクでオフトラックが発生した場合にデータを書き込む例を説明した図。
【図9】図9は、第2の実施形態にかかる磁気ディスク装置における、データの読み出し制御の例を示した図。
【図10】図10は、第2の実施形態にかかる磁気ディスク装置に、書き込み処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下に、情報記録装置、及び情報記録方法を適用した磁気ディスク装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。また、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
本実施形態にかかる磁気ディスク装置1の電気的ハードウェア構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1の電気的ハードウェア構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、磁気ディスク11は、スピンドルモータ12により、回転軸を中心に所定の回転速度で回転される。スピンドルモータ12の回転は、モータドライバ21により駆動される。
【0013】
磁気ヘッド22は、それに備わる記録ヘッドおよび再生ヘッドにより、磁気ディスク11に対してデータの書き込みや読み出しを行う。また、磁気ヘッド22は、アクチュエータアーム15の先端にあって、モータドライバ21によって駆動されるボイスコイルモータ(VCM)16により、磁気ディスク11の半径方向に移動される。磁気ディスク11の回転が停止しているときなどは、磁気ヘッド22は、ランプ23上に退避される。
【0014】
ヘッドアンプ24は、磁気ヘッド22が磁気ディスク11から読み取った信号を増幅して出力し、RDC(Read Write Channel)25に供給する。また、ヘッドアンプ24は、RDC25から供給された、磁気ディスク11にデータを書き込むための信号を増幅して、磁気ヘッド22に供給する。
【0015】
RDC25は、後述するHDC31から供給される、磁気ディスク11に書き込むためのデータをコード変調してヘッドアンプ24に供給する。また、RDC25は、磁気ディスク11から読み取られヘッドアンプ24から供給された信号をコード復調してディジタルデータとしてHDC31へ出力する。
【0016】
CPU26には、動作用メモリであるSRAM(Random Access Memory)27、不揮発性メモリであるFlash ROM(Read Only Memory)28および一時記憶用のバッファRAM29が接続されている。このCPU26は、Flash ROM28および磁気ディスク11に予め記憶されたファームウェア(当該ファームウェアは、初期ファームウェアおよび通常動作に用いる制御用ファームウェアである。なお、制御用ファームウェアには、後述する情報記録プログラムが含まれている)に従って、この磁気ディスク装置1の全体的な制御を行う。なお、起動時に最初に実行される初期ファームウェアは、Flash ROM28に記憶されている。また、通常動作に用いる制御用ファームウェアは、磁気ディスク11に記録されており、初期ファームウェアに従った制御により、磁気ディスク11から一旦バッファRAM29に読み出され、その後SRAM27に格納される。
【0017】
HDC(Hard Disk Controller)31は、I/Fバスを介してホストコンピュータ(Host)40との間で行われるデータの送受信の制御や、バッファRAM29の制御、ならびに、記録データに対するデータの誤り訂正処理などを行う。また、バッファRAM29は、ホストコンピュータ40との間で送受信されるデータのキャッシュとして用いられる。さらに、バッファRAM29は、磁気ディスク11から読み出されるデータ、磁気ディスク11に書き込むデータ、又は磁気ディスク11から読み出される制御用ファームウェアを、一時記憶するためなどに用いられる。
【0018】
ところで、近年、ハードディスクの容量をさらに増加させるための手法としてシングル記録方式(Shingled write recording、瓦記録方式とも称す)が注目されている。シングル記録方式では、記録ヘッドの主磁極幅より、磁気ディスク11のトラックの幅が狭いため、記録ヘッドで書き込みを行う際に、書き込み対象のトラックと、隣接するトラックと、の間で部分的な重ね書きが行われる方式とする。このシングル記録方式を適用した場合、トラックの幅を狭くできるので、媒体の高密度化が可能となる。
【0019】
このシングル記録方式では、隣接するトラック同士で部分的な重ね書きが行われるため、当該隣接トラックの片方のデータが消失する。このため、あるトラックについてデータの更新を行う場合であっても、当該トラックのみを書き換えることはできず、複数のトラックを単位として、まとめて書き換える必要がある。本実施形態では、書き換えの対象としてまとめられた複数のトラックからなる単位を、トラック群と称す。このトラック群同士の間は空き領域が設けられているため、あるトラック群に書き込みを行う際、隣接する他のトラック群に重ね書きされることは抑止される。このように、シングル記録方式は、隣接トラックのライトが1回に抑えられるため、隣接トラックノイズが低減される。
【0020】
このような従来のシングル記録方式を適用した磁気ディスク装置では、磁気ディスクに書き込みを行う場合、隣接トラックへの磁気干渉影響を抑えるために同一の物理セクタに対するディスクライトの回数は1回が原則となる。
【0021】
従来、このようなシングル記録方式を用いて、磁気ディスクに書き込みを行っているときに、すでに書き込みが終了しているトラック方向にオフトラックが発生した場合、書き込みが終了したセクタに対するリード性能が低下し、場合によっては読み出すことができなくなる可能性もある。しかしながら、当該セクタは、すでに書き込みが終了したセクタであるため、バッファ上にデータが存在していない可能性がある。このため、オフトラックでリード性能が低下した可能性のあるセクタに対して、再書き込みを行うのは難しかった。仮に、当該セクタに対して再書き込みができたとしても、同一セクタに対して2回書き込みを行うと、部分的な重ね書きが行われるため、隣接トラックでのリード性能を低下させるという問題があった。当該リード性能を低下させないようにするためには、トラック群に最初から書き込みを行えばよいが、バッファがトラック群全てのデータを常に保持しておく必要がある上、書き込み処理の時間を要するため、遅延が生じるという問題が生じていた。
【0022】
そして、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、シングル記録方式を適用した上で、これらの問題を解決するために、後述する構成を備えることとした。
【0023】
本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、磁気ヘッド22がトラック群に対して、書き込み制御を行う際に、内側から外側の順に書き込みを行う。つまり、シングル記録方式でトラック群のトラックに書き込みを行う際、書き込みが終了した隣接内側のトラックのデータが保持され、これから書き込みの対象となる隣接外側のトラックデータが消失する。
【0024】
バッファRAM29は、磁気ヘッド22が書き込んだデータを一時的に記憶する。本実施形態にかかるバッファRAM29は、書き込みを行ったトラックを構成するセクタのデータを、少なくとも当該トラックの隣接外側のトラックのセクタの書き込みが終了するまでは一時的に記憶する。これにより、隣接外側セクタの書き込みを行っている時に内側にオフトラックした場合に、上書きでリード性能が低下した可能性のあるセクタのデータが、バッファRAM29上から読み出しできることが保証される。
【0025】
図2は、磁気ディスク装置1のCPU26による情報記録プログラムの実行で実現されるソフトウェア構成を示したブロック図である。図2に示すように、磁気ディスク装置1のCPU26は、Flash ROM28に格納された制御用ファームウェアに含まれる、情報記録プログラムを起動させることで、判定部201と、読出部202と、書込部203と、削除部204と、によるブロック構成を実現する。
【0026】
本実施形態にかかる磁気ディスク装置1は、当該磁気ディスク装置1に接続されたホストコンピュータ40から、データの書き込み命令を受け付けた場合に、磁気ヘッド22を用いた磁気ディスク11に対する書き込み制御を行う。
【0027】
書込部203は、磁気ディスク11に対してデータの書き込み制御を行う。本実施形態にかかる書込部203は、書き込み制御を行う際、シングル(Shingle)記録方式を用い、書き込みを行う磁気ヘッド22の主磁極幅よりも狭いトラックに対して書き込みを行う。
【0028】
図3は、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1における、磁気ディスク11でオフトラックが発生した場合にデータを書き込む例を説明した図である。図3(A)では、磁気ヘッド22が移動軌跡301を描くように、書込部203が、トラックnのセクタA0〜A4に対して、データの書き込みを行ったものとする。
【0029】
判定部201は、データを書き込んでいる磁気ヘッド22の位置と、磁気ヘッド22が書き込みを行っている、磁気ディスク11のトラックと、の間にオフトラックが発生したか否かを判定する。
【0030】
図3(B)では、書込部203がトラックn+1の各セクタに対して書き込みを行う際に、磁気ヘッド22が移動軌跡302を描き、オフトラックが発生した状況を示している。このような状況では、判定部201は、オフトラックが発生したと判定する。
【0031】
読出部202は、バッファRAM29又は磁気ディスク11からデータを読み出す。例えば、判定部201によりオフトラックが発生したと判定された場合に、読出部202は、磁気ヘッド22で書き込みを行っていたトラックに隣接するトラックを構成するセクタのうち、オフトラックにより上書きされたとみなされるセクタに書き込まれたデータを、バッファRAM29から読み出す。
【0032】
例えば、図3(B)に示すようなオフトラックが発生した場合には、読出部202は、バッファRAM29から、トラックnのセクタA1に書き込まれたデータを読み出す。
【0033】
書込部203は、オフトラックが発生したと判定された場合に、読出部202がバッファRAM29から読み出したデータを、磁気ヘッド22がオフトラック時に書き込んでいるセクタよりも後方の位置に存在するセクタ(換言すればオフトラックが発生したセクタ以降)に書き込む。
【0034】
例えば、図3(C)に示すように、オフトラックが発生した場合、書込部203は、移動軌跡303上で、読出部202により読み出されたセクタA1のデータを、トラックn+1のセクタA1’に書き込む。このように、本実施形態では、リード性能が低下した可能性があるセクタのデータを、オフセットの発生時に書き込んでいたセクタの次のセクタに対して書き込むこととした。しかしながら、本実施形態は、データを書き込むセクタの位置を、オフトラックの発生時に書き込んでいた次のセクタに制限するものではない。つまり、バッファRAM29が当該データを保持していれば、オフトラックが発生したときに書き込んでいたトラック群内で、オフトラックの発生時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタであれば、どのセクタでも良い。
【0035】
削除部204は、バッファRAM29について、磁気ディスク11に書き込んだデータのうち、2トラック分のデータを残して、データを削除する。図3に示す例では、書込部203が、トラックn+1についてデータを書き込んだ後、トラックn+2のデータの書き込みを開始する際、削除部204は、トラックn+1及びトラックn+2のデータをバッファRAM29に残し、トラックnのデータを削除する。削除部204が、このような制御を行うことで、オフトラックが生じた場合に読み出す可能性のあるトラックn+1、及びトラックn+2のデータを保持することができる。さらに、バッファRAM29の記憶容量を削減できる。
【0036】
本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、上述した処理を行うことで、磁気ディスク11上には、オフトラックによりリード性能が低下した可能性のあるセクタA1と、セクタA1と同一のデータが書き込まれた次トラックのセクタA1’が存在することになる。
【0037】
そして、書込部203は、トラック群の書き込みが終了した後、当該トラック群でオフセットによりリード性能が低下した可能性のあるセクタを、仮の後発欠陥セクタとして、磁気ディスク11のファイルシステム領域の欠陥セクタテーブルに登録する。なお、欠陥セクタテーブルの構造は、周知の構造と同様として説明を省略する。
【0038】
さらに、書込部203は、仮の後発欠陥セクタと同一のデータの再書き込みを行ったセクタ(以下、代替先セクタと称す)の位置を、ファイルシステム領域の欠陥セクタテーブルに登録する。なお、仮の後発欠陥セクタは、オフトラックによりリード性能が低下した可能性があるにすぎず、実際にリードできなくなった後発欠陥セクタと区別する。
【0039】
従来、シングル記録方式を用いて磁気ディスクのトラック群の書き込みを行っている時に、オフトラックが発生した場合、オフトラックで部分的に上書きされたセクタについて、リード性能が低下したか否か判定するためには書き込みを停止しなければならず、書き込みの遅延が生じていた。
【0040】
これに対し、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、シングル記録方式を用いるが、オフトラックが発生した場合、当該オフトラックで部分的に上書きされたとみなされるセクタを、仮の後発欠陥セクタに設定し、当該仮の後発欠陥セクタの代替先セクタに、仮の後発欠陥セクタと同一のデータを書き込むこととした。このように、書き込みの停止を行う必要がなくなったため書き込みの遅延を抑止できる。さらに、リード性能が低下したか否かにかかわらず、仮の後発欠陥セクタと同一のデータが代替先セクタに書き込まれるため、リード性能が低下した場合であっても、仮の後発欠陥セクタに書き込まれたデータは読出可能となった。
【0041】
次に、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1における、磁気ディスク11からの読出処理について説明する。図4は、磁気ディスク装置1における、データの読み出し制御の例を示した図である。なお、セクタA1及びセクタA1’の2カ所に同一のデータが書き込まれているため、磁気ディスク装置1では、いずれか一方から読み出しができればよい。このように、仮の後発欠陥セクタからデータを読み出せる可能性があるため、本実施形態では、後述する手順で処理を行う例とする。本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、当該手順で処理を行うことで、効率的にデータを読み出すことができる。
【0042】
まず、図4(A)では、磁気ヘッド22が移動軌跡401を描くように、読出部202が、トラックnのセクタA0〜A4から、データを読み出す。つまり、磁気ヘッド22が仮の後発欠陥セクタA1に到達した際に、読出部202が継続してセクタの読み出しを行う。
【0043】
そして、判定部201が、読出部202による読み出しで仮の後発欠陥セクタA1からのデータの読み出しが成功したか否かに応じて、代替先セクタA1’の読み出しを行うか否かを判定する。つまり、仮の後発欠陥セクタA1からのデータの読み出しが成功した場合、読出部202は、代替先セクタA1’からデータの読み出しを行わず、読み出しが失敗した場合、読出部202は、代替先セクタA1’からデータを読み出す。
【0044】
図4(B)において、磁気ヘッド22が移動軌跡402を描くように、読出部202が、トラックn+1から、データを読み出す。その際、読出部202は、判定部201の判定結果に従って、代替先セクタA1’の読み出しを行ったり、代替先セクタA1’の読み出しを行わなかったりする。すなわち訂正等が行われたことで、仮の後発欠陥セクタA1から読み出しできた場合、代替先セクタA1’からデータの読み出しは実行されない。また、仮の後発欠陥セクタA1からデータの読み出しができなかった場合、読出部202は、代替先セクタA1’からデータを読み出す。
【0045】
ところで、シングル記録方式においては、一部重ね書きされたセクタからデータを読み出すための技術として、隣接トラック間干渉キャンセルが提案されている。隣接トラック間干渉キャンセルは、磁気ヘッド22から現在読み出し対象のデータに対して、隣接するトラックから既に読み込んできたデータを用いて、隣接するトラック間で生じた干渉をキャンセルする技術である。当該干渉をキャンセルすることで、リード性能の向上を図ることが可能となる。本実施形態にかかる磁気ディスク装置1においても、読出部202が、磁気ディスク11からデータを読み出す際に、隣接トラック間干渉キャンセルを用いている。
【0046】
本実施形態にかかる読出部202では、仮の後発欠陥セクタA1に記憶されたデータを使用する代わりに、代替先セクタA1’に書き込まれたデータを読み出して、トラック間の干渉を除去してもよい。その際、読出部202は、欠陥セクタテーブルにアクセスして、代替先セクタA1’の位置を読み出す。
【0047】
図4(B)に示す例では、読出部202が、セクタB1からデータを読み出す際、仮の後発欠陥セクタA1に書き込まれたデータと同一のデータを、隣接トラック間干渉キャンセルに用いてもよい。実際の手順としては、読出部202が、仮の後発欠陥セクタA1からデータが読み出しできた場合、仮の後発欠陥セクタA1から読み出したデータを、隣接トラック間干渉キャンセルに用いる。また、読出部202が、仮の後発欠陥セクタA1からデータが読み出しできなかった場合、代替先セクタA1’から読み出したデータを、隣接トラック間干渉キャンセルに用いる。
【0048】
読出部202が、仮の後発欠陥セクタA1からデータが読み出しできたため、代替先セクタA1’から読み出しが行われない場合であって、図4(C)において、磁気ヘッド22が移動軌跡403を描いた時について説明する。読出部202が、セクタC1からデータを読み出す際、セクタB1から読み出したデータを、隣接トラック間干渉キャンセルに用いる。その後、読出部202が、セクタC2からデータを読み出す際、代替先セクタA1’から読み出しを行わなかったため、仮の後発欠陥セクタA1から読み出したデータを、隣接トラック間干渉キャンセルに用いる。
【0049】
このように、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、隣接トラック間干渉キャンセルに用いることで、再生性能はトラックピッチをつめていない場合と遜色ない性能を維持できる。このように、磁気ディスク装置1は、隣接トラック間干渉キャンセルに用いない場合と比べて、リード性能を向上させることができる。
【0050】
上記では、判定部201によるオフトラックが生じたか否かの判定手法については、説明を省略していた。そこで、判定手法について説明する。本実施形態にかかる判定部201によるオフトラックの判定では、磁気ディスク11に記録されたサーボ領域(以下、サーボとも称する)を用いる。
【0051】
図5は、サーボによるオフトラックの検出の概念を示した図である。図5に示すように、トラックnには、サーボ501_0、サーボ501_1、及びサーボ501_2が設定されている。また、トラックn+1には、サーボ502_0、サーボ502_1、及びサーボ502_2が設定されている。
【0052】
そして、読出部202が、磁気ヘッド22を用いてサーボからサーボデータを読み込んだ場合に、判定部201が、読み込んだサーボデータに基づいて、磁気ヘッド22の位置が正常であるか否かを判定する。つまり、判定部201は、サーボデータから特定されたヘッド位置と、書き込んでいるトラックと、の間のオフトラック量が閾値を超えているか否かで、オフトラックが発生しているか否かを判定する。そして、判定部201は、オフトラック量が閾値未満と判定した場合、当該時点ではオフセットは生じていないと判定する。そして、当該時点までに書き込みが終了したセクタは、正常にデータが書き込まれたとみなされる。つまり、判定部201が、サーボ502_1のサーボデータでオフトラック量が閾値未満と判定すると、書き込みが完了しているセクタB0、B1、及びB2について正常に書き込みが行われたと判定される。
【0053】
一方、判定部201は、オフトラック量が閾値以上と判定した時、当該時点でオフトラックが生じたと判定する。つまり、前回の判定を行ってから現時点までに書き込みが終了したセクタに隣接する内側トラックのセクタは、仮の後発欠陥セクタと設定される。例えば、サーボ501_2のサーボデータによりヘッド位置が異常と判定されると、サーボ502_1からサーボ501_2の間で書き込みが完了しているセクタに隣接する内側トラックのセクタA2、A3、及びA4が、仮の後発欠陥セクタに設定される。なお、仮の後発欠陥セクタが設定された後の処理は、上述した処理と同様とする。
【0054】
本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、上述したトラック群で構成された磁気ディスク11に対して、シングル記録方式で記録を行う場合について説明したが、このようなシングル記録方式を用いた場合に制限するものではなく、オフトラックで隣接するトラックに対して上書きされる可能性がある記録方式であれば、上述した処理が適用可能となる。
【0055】
次に、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1における、書き込み処理について説明する。図6は、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
【0056】
書込部203が、トラック群に含まれているトラック毎に書き込み制御を行う(ステップS601)。次に、判定部201が、書き込みを行っているトラックと、磁気ヘッド22の位置と、の間にオフトラックが生じたか否かを判定する(ステップS602)。オフトラックが生じなかったと判定した場合(ステップS602:No)、ステップS606に処理が進む。
【0057】
一方、判定部201が、オフトラックが生じたと判定した場合(ステップS602:Yes)、サーボに基づいて、オフトラックでリード性能が低下した可能性があるセクタを特定する(ステップS603)。
【0058】
その後、読出部202が、バッファRAM29から、リード性能が低下した可能性のあるセクタに書き込まれたデータを読み出す(ステップS604)。
【0059】
次に、書込部203が、読み出したデータを、オフセットが発生した時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタに書き込む(ステップS605)。この書き込まれたセクタを、代替先セクタと称す。
【0060】
そして、削除部204が、トラックへの書き込みが完了したか否かを判定する(ステップS606)。トラックへの書き込みが完了していないと判定した場合(ステップS606:No)、削除部204による処理は行われず、継続してステップS601による書き込みが行われる。
【0061】
一方、削除部204がトラックへの書き込みが終了したと判定した場合(ステップS606:Yes)、削除部204は、バッファRAM29に記憶されている、既に磁気ディスク11に書き込んだデータのうち、2トラック分のデータを残して、データを削除する(ステップS607)。
【0062】
その後、書込部203が、トラック群の書き込みが終了したか否かを判定する(ステップS608)。トラック群の書き込みが終了していないと判定した場合(ステップS608:No)、継続してステップS601による書き込みが行われる。
【0063】
一方、書込部203が、トラック群の書き込みが終了したと判定した場合(ステップS608:Yes)、書込部203が、オフトラックでリード性能が低下した可能性のあるセクタを、仮の後発欠陥セクタとし、当該仮の後発欠陥セクタの位置と、同一のデータが書き込まれた代替先セクタの位置と、をファイルシステム領域の欠陥セクタテーブルに登録する(ステップS609)。なお、ステップS609にて登録する(書き込む)までは、仮の後発欠陥セクタの位置と、代替先セクタの位置と、は、バッファRAM29に一時的に記憶されているものとする。
【0064】
上述した処理手順により、磁気ディスク装置1における書き込み処理が終了する。本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、上述した書き込み処理を行うことで、トラック群への書き込みを停止することなく、オフトラックでリード性能が低下したセクタに格納されていたデータを、代替先セクタに書き込むことが可能となるので、データの読み出しが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、磁気ディスク11のトラック群に対して、内側から外側に移動するよう書き込み制御を行うこととした。しかしながら、書き込み順序を制限するものではなく、例えば、磁気ディスク11の外側から内側に移動するよう書き込み制御を行っても良い。この場合、代替先セクタへの書き込み制御が行われるのは、外側にオフトラックが発生した場合となる。
【0066】
また、第1の実施形態では、バッファRAM29に2トラック分保持し、書込部203が1トラックに対するデータの書き込みが正常に終了したことをトリガーとして、削除部204が、それより内側のトラックに書き込んだデータを削除することとしたが、このような手法に制限するものではない。例えば、2トラック分以上のデータを常に保持するようにしても良い。さらには、磁気ディスク11のサーボ領域で書き込みの位置が正常と判定される毎に、当該サーボ領域までのセクタの内側隣接トラックのセクタに書き込んだデータを、削除部204がバッファRAM29から削除しても良い。
【0067】
さらに、磁気ディスク装置1では、内側オフトラックが発生したことで、代替先セクタにデータを書き込む必要が生じた場合、バッファRAM29が、その内側隣接トラックのセクタに書き込んだデータを、代替先セクタに書き込むまで保持してもよい。この場合、書込部203が、当該データを読み出して、代替先セクタに書き込んだ時点で、削除部204が、当該データをバッファRAM29から削除する。
【0068】
また、本実施形態では、仮の後発欠陥セクタの代替処理は、オフトラック時に書き込んでいたセクタの直後としたが、同じトラック群内で、オフトラック時に書き込んでいたセクタより後ろに位置するセクタであればどこでもよい。さらには、書込部203が、同じトラック群ではなく、別途設けたデータ格納領域に対して、リード性能が低下したセクタに書き込んだデータを書き込むことにしても良い。
【0069】
(第2の実施形態)
第1の実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、オフトラックにより隣接するセクタのリード性能が低下した場合を考慮して制御を行った例について説明した。しかしながら、オフトラックによる磁気ヘッド22の位置と書き込んでいたセクタとの間のオフトラック量が大きい場合には、書き込んでいたセクタについてもリード性能が低下する可能性がある。そこで、第2の実施形態では、オフトラックが発生したときに書き込んでいたセクタについても代替先セクタに書き込む例について説明する。なお、第2の実施形態にかかる磁気ディスク装置の電気的ハードウェア構成は、第1の実施形態にかかる磁気ディスク装置1と同様として、説明を省略する。
【0070】
図7は、第2の実施形態にかかる磁気ディスク装置1のCPU26による情報記録プログラムの構成を示すブロック図である。図7に示すように、本実施形態にかかるCPU26が情報記録ブログラムを実行した場合、上述した第1の実施形態と比べて、判定部201、読出部202、及び書込部203とは処理が異なる判定部701、読出部702、及び書込部703に変更されている点で異なる。以下の説明では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。
【0071】
判定部701は、第1の実施形態の判定部201が行う処理に加えて、内側へのオフトラック量が、書き込みの失敗を判定するために予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。
【0072】
つまり、本実施形態にかかる判定部701は、内側オフトラック判定として、オフトラックが発生したか否かを判定する第1の閾値と、オフトラックにより書き込みが失敗したか否かを判定する第2の閾値と、を有する。なお、第1の閾値<第2の閾値とする。
【0073】
そして、判定部701は、第1の閾値未満の場合には、オフトラックが発生していないものと判定する。また、判定部701は、第1の閾値以上であって第2の閾値未満の場合には、現在行っている書き込みは正常であるが、オフトラックが発生したと判定する。この場合に行われる処理は、第1の実施形態と同様とする。
【0074】
また、判定部701は、第2の閾値以上の場合には、現在行っている書き込みも失敗している可能性があると判定する。
【0075】
図8は、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1における、磁気ディスク11でオフトラックが発生した場合にデータを書き込む例を説明した図である。図8(A)では、磁気ヘッド22が移動軌跡801を描くように、書込部703が、トラックnのセクタA0〜A4に対して、データの書き込みを行ったものとする。図8(B)では、書込部703がトラックn+1の各セクタに対して書き込みを行う際に、磁気ヘッド22が移動軌跡802を描き、オフトラックが発生した状況を示している。このような状況において、判定部701は、第1の閾値以上であるか否か、及び第2の閾値以上であるか否かを判定する。図8(B)に示す例では、オフトラック量が、第2の閾値以上であると判定された例とする。
【0076】
読出部702は、第1の実施形態の読出部202が行う処理に加えて、さらに判定部701で第2の閾値以上のオフトラックが発生したと判定された場合に、オフトラックが発生した時にセクタに書き込んでいたオフトラック時データを、バッファRAM29から読み出す。
【0077】
書込部703は、第1の実施形態の書込部203が行う処理に加えて、さらに判定部701で第2の閾値以上のオフトラックが発生したと判定された場合に、読出部702が読み出したオフトラック時データを、オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタに書き込む。
【0078】
例えば、図8(C)の移動軌跡803が示すように、第2の閾値以上のオフトラックが発生した場合、書込部703は、読出部702により読み出されたセクタB1のデータを、トラックn+1の次のセクタB1’に書き込む。さらにその後、第1の実施形態と同様に、書込部703は、読出部702により読み出されたセクタA1のデータを、その次のセクタA1’に書き込む。なお、本実施形態では、オフトラック時に第2の閾値以上のオフトラック量が生じたセクタB1を、仮の先発欠陥セクタと称す。
【0079】
そして、書込部703は、トラック群の書き込みが終了した後、仮の先発欠陥セクタを、磁気ディスク11のファイルシステム領域に書き込んで、登録する。さらに、書込部703は、当該ファイルシステム領域に、仮の先発欠陥セクタの代替先として、仮の先発欠陥セクタと同一のデータの再書き込みを行ったセクタの位置を、ファイルシステム領域の欠陥セクタテーブルに登録する。
【0080】
このように、本実施形態では、第2の閾値以上のオフトラックが発生した場合に、オフトラックの発生時に書き込んでいた仮の先発欠陥セクタのデータを、その次のセクタに対して書き込むこととした。しかしながら、本実施形態は、データを書き込むセクタの位置を、当該セクタに制限するものではない。つまり、バッファRAM29が当該データを保持していれば、オフトラックが発生したときに書き込んでいたトラック群内で、オフトラックの発生時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタであれば、どのセクタでも良い。
【0081】
図9は、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1における、データの読み出し制御の例を示した図である。まず、図9(A)では、磁気ヘッド22が移動軌跡901を描くよう
に、読出部702が、トラックnのセクタA0〜A4から、データを読み出す。つまり、磁気ヘッド22が仮の後発欠陥セクタA1に到達した際に、読出部702が継続してセクタの読み出しを行う。この場合の制御については、第1の実施形態と同様として説明を省略する。
【0082】
図9(B)において、磁気ヘッド22が移動軌跡902を描くように、読出部702が、トラックn+1から、データを読み出す。その際、読出部702は、仮の先発欠陥セクタB1に対する読み出しを行わず、代替先セクタB1’からデータを読み出す。なお、代替先セクタA1’は、第1の実施形態と同様、仮の後発欠陥セクタA1からデータを読み出せなかった場合に限り、読み出し制御が行われる。
【0083】
なお、第2の実施形態でも読出部702がデータの読み出しを行う際に、隣接トラック間干渉キャンセルを用いている。図9(C)に示す例では、読出部702が、移動軌跡903上のセクタC1からデータを読み出す際、代替先セクタB1’から読み出したデータを、隣接トラック間干渉キャンセルに用いる。また、読出部702が、セクタC2からデータを読み出す際、代替先セクタB1’から読み出したデータを用いる。なお、セクタC3からデータを読み出す場合は、第1の実施形態と同様とする。
【0084】
次に、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1における、書き込み処理について説明する。図10は、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
【0085】
書込部703が、トラック群に含まれているトラック毎に書き込み制御を行う(ステップS1001)。次に、判定部701が、書き込みを行っているトラックと、磁気ヘッド22の位置と、の間のオフトラック量が第1の閾値以上、換言すればオフトラックが生じたか否かを判定する(ステップS1002)。オフトラックが生じなかったと判定した場合(ステップS1002:No)、ステップS1009に処理が進む。
【0086】
一方、判定部701が、オフトラックが生じたと判定した場合(ステップS1002:Yes)、オフトラック量が第2の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS1003)。オフトラック量が第2の閾値未満であると判定した場合(ステップS1003:No)、ステップS1007に処理が進む。
【0087】
そして、判定部701が、オフトラック量が第2の閾値以上であると判定した場合(ステップS1003:Yes)、オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタを特定する(ステップS1004)。なお、セクタの特定手法は、サーボ間に格納されているセクタを特定するという、第1の実施形態と同様の手法とする。
【0088】
その後、読出部702が、バッファRAM29から、オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタのデータを読み出す(ステップS1005)。
【0089】
次に、書込部703が、読み出したデータを、オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタに書き込む(ステップS1006)。この書き込まれたセクタを、代替先セクタと称す。
【0090】
その後、読出部702が、オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタに隣接するセクタのデータを読み出す(ステップS1007)。
【0091】
それ以降の処理については、図6のステップS605〜S608と同様の処理でトラックへの書き込み、バッファRAM29からデータの削除が行われる(ステップS1008〜S1011)。
【0092】
そして、ステップS1012において、書込部703が、仮の後発欠陥セクタの位置、及び仮の後発欠陥セクタと同一のデータが書き込まれた代替先セクタの位置の他に、仮の先発欠陥セクタの位置、及び仮の先発欠陥セクタと同一のデータが書き込まれた代替先セクタの位置を、ファイルシステム領域の欠陥セクタテーブルに登録する。
【0093】
上述した処理手順により、磁気ディスク装置1における書き込み処理が終了する。本実施形態にかかる磁気ディスク装置1では、上述した書き込み処理を行うことで、オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタのデータを、代替先セクタに書き込むことが可能となるので、データの読み出しが可能となる。
【0094】
なお、本実施形態では、仮の先発欠陥セクタB1及び代替先セクタB1’のうち、代替先セクタB1’のみ読み込みを行う場合について説明した。しかしながら、このような読み込みに制限するものではなく、仮の先発欠陥セクタB1及び代替先セクタB1’の両方からデータを読み込んで、いずれか一方のみ使用しても良い。
【0095】
なお、本実施形態では、第1の閾値及び第2の閾値と言った2段階の判定を行う例について説明した。しかしながら、2段階の判定を行うことに制限するものではない。例えば、オフトラック量が第1の閾値を超えた場合に、仮の先発欠陥セクタ及び仮の後発欠陥セクタの両方を設定することにしても良い。
【0096】
以上説明したとおり、第1から第2の実施形態によれば、記録済みのトラック方向に磁気ヘッド22によるオフトラックが発生した場合に、上書きでリード性能が低下した可能性のあるセクタのデータを、別途設けた代替先セクタに書き込むため、一度書き込んだ領域について再び書き込み制御を行わずとも、データが読み出せなくなる可能性を低減させることができる。そして再び書き込み制御を行う必要がないため、書き込み制御による遅延を抑止できる。
【0097】
なお、第1及び第2の実施形態では、磁気ディスク装置1が、磁気ディスク11に書き込む際の制御として、シングル記録方式を用いた例について説明した。しかしながら、このような書き込み制御に制限するものではない。つまり、磁気ディスク11に書き込みを行う際にオフセットで隣接するセクタのリード性能を低下させる可能性のある記録方式であれば、上述した処理が適用可能となる。
【0098】
さらに、書き込み制御の対象は、磁気ディスク11に制限するものではなく、書き込み可能な光ディスクメディアに対する書き込み制御に用いてもよい。
【0099】
なお、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1のCPU26で実行される情報記録プログラムは、Flash ROM28に予め組み込まれて提供される。
【0100】
本実施形態にかかる磁気ディスク装置1のCPU26で実行される情報記録プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0101】
さらに、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1のCPU26で実行される情報記録プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態にかかる磁気ディスク装置1のCPU26で実行される情報記録プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0102】
本実施形態にかかる磁気ディスク装置1のCPU26で実行される情報記録プログラムは、上述した各部(判定部、読出部、書込部、削除部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU26が上記Flash ROM28から情報記録プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、判定部、読出部、書込部、削除部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1…磁気ディスク装置、11…磁気ディスク、12…スピンドルモータ、15…アクチュエータアーム、16…ボイスコイルモータ、21…モータドライバ、22…磁気ヘッド、23…ランプ、24…ヘッドアンプ、25…RDC、26…CPU、27…SRAM、28…Flash ROM、29…バッファRAM、31…HDC、40…ホストコンピュータ、201、701…判定部、202、702…読出部、203、703…書込部、204…削除部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを書き込むためのヘッドの位置と、当該ヘッドが書き込みを行っている記録媒体のトラックと、の間にオフトラックが発生したか否かを判定する判定手段と、
前記ヘッドが書き込んだデータを一時的に記憶する記憶手段と、
前記オフトラックが発生したと判定された場合に、前記ヘッドで書き込みを行っていたトラックに隣接するトラックのセクタのうち、前記オフトラックにより上書きされたとみなされるセクタに書き込まれた第1のデータを、前記記憶手段から読み出す読出手段と、
前記オフトラックが発生したと判定された場合に、前記第1のデータを、前記オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタに書き込む書込手段と、
を備える情報記録装置。
【請求項2】
前記記録媒体は、トラック幅が前記ヘッドの幅より狭く、前記ヘッドで書き込む際に、隣接する円周内側又は外側のトラックの一部が上書きされるよう構成された、トラック群を有し、
前記書込手段は、さらに前記オフトラックが発生したと判定された場合に、前記読出手段が読み出した前記第1のデータを、前記オフトラックが発生したときに書き込んでいた前記トラック群を構成するトラックのセクタに書き込む、
請求項1に記載の情報記録装置。
【請求項3】
前記読出手段は、さらに前記オフトラックが発生したと判定された場合に、前記オフトラックが発生した時にセクタに書き込んでいた第2のデータを、前記記憶手段から読み出し、
前記書込手段は、さらに、前記オフトラックが発生したと判定された場合に、前記第2のデータを、前記オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタに書き込む、
請求項1又は2に記載の情報記録装置。
【請求項4】
前記書込手段は、さらに、前記第1のデータを書き込んだセクタの位置を示す位置情報を、前記記録媒体上に書き込む、
請求項2に記載の情報記録装置。
【請求項5】
前記書込手段が、前記トラック群に対する書き込みが終了した後に、前記第1のデータを書き込んだセクタの位置を示す位置情報を前記記録媒体上に書き込む、
請求項4に記載の情報記録装置。
【請求項6】
前記読出手段が、前記記録媒体上のトラックからのデータの読み出しで、当該トラックに隣接するトラックから読み出したデータを用いて、トラック間の干渉を除去する際、前記オフトラックにより上書きされた可能性があるセクタの代わりに、前記位置情報で定められるセクタに書き込まれた前記第1のデータを読み出しで、トラック間の干渉を除去する、
請求項4又は5に記載の情報記録装置。
【請求項7】
情報記録装置で実行される情報記録方法であって、
前記情報記録装置は、ヘッドが書き込んだデータを一時的に記憶する記憶手段を備え、
データを書き込むためのヘッドの位置と、当該ヘッドが書き込みを行っている記録媒体のトラックと、の間にオフトラックが発生したか否かを判定する判定ステップと、
前記オフトラックが発生したと判定された場合に、前記ヘッドで書き込みを行っていたトラックに隣接するトラックのセクタのうち、前記オフトラックにより上書きされたとみなされるセクタに書き込まれた第1のデータを、前記記憶手段から読み出す読出ステップと、
前記オフトラックが発生したと判定された場合に、前記第1のデータを、前記オフトラックが発生した時に書き込んでいたセクタよりも後方に位置するセクタに書き込む書込ステップと、
を含むことを特徴とする情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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