説明

情報記録装置、情報再生装置、記録媒体製造装置、情報記録媒体、および方法、並びにプログラム

【課題】読み取り困難性と高精度な読み取りの双方を実現する情報の記録処理構成を提供する。
【解決手段】暗号鍵などの秘匿性の高い付加情報をディスクに記録されるグルーブ信号中に、読み取り困難性と高精度な読み取りの双方を実現させる重畳記録を行うことが可能となる。付加情報の記録に際してビット値に応じた位相誤差を設定したグルーブ信号を記録し、付加情報の読み取り時には、所定区間のグルーブ信号の位相誤差を積分処理して、各区間内のグルーブ信号の位相誤差方向を判別する構成とした。このような処理により読み取り困難性を高めるとともに、精度の高い読み取りを実現する付加情報の記録再生を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録装置、情報再生装置、記録媒体製造装置、情報記録媒体、および方法、並びにプログラムに関する。さらに詳細には、ディスク(情報記録媒体)の記録条件等の付加情報として記録されるグルーブ信号にコンテンツ鍵などの付加情報を重畳して記録または再生する情報記録装置、情報再生装置、記録媒体製造装置、情報記録媒体、および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクにおいて、蛇行すなわちウォブル(wobble)させたグルーブ(溝)をデータ記録トラックに対するアドレス情報および記録条件等の付加情報として利用することが知られている。このウォブリンググルーブを利用してピックアップを所望のトラック位置に設定してトラックに対するデータ記録やトラックからのデータ再生が行われる。
【0003】
一方、昨今、光ディスクに記録されたコンテンツの違法コピーが問題となっており、コンテンツの保護を目的とする堅牢なコンテンツ保護システム(CPS:Contents Protection System)が求められている。
【0004】
コンテンツ保護システム(CPS)の1つとして、ディスクに格納するコンテンツを暗号化する手法がある。暗号化コンテンツの復号に適用する鍵情報や、その他のコンテンツ利用制御情報などを前述のグルーブにアドレス情報に重畳して記録する構成が提案されている。例えば特許文献1(特開2004−213781号公報)は鍵情報をグルーブに記録して利用する構成を開示している。
【0005】
しかし、暗号化コンテンツの復号に適用する鍵情報や、その他のコンテンツ利用制御情報などの多くは秘密情報であり、漏洩防止のため容易な読み取りを防ぐ必要がある。一方、ディスクに鍵データが記録されている場合、正当なコンテンツ利用権を持つユーザの再生装置は鍵構成ビットを正確に読み取ることが必要となる。読み取り精度が低下すると、正確な鍵情報を取得できずコンテンツの復号が行えなくなるからである。
【0006】
例えばコンテンツの復号に適用する鍵情報を前述のグルーブに記録する場合、容易な読み取りを回避するとともに、正確な読み取りも実現するという相反する要求を満たすことが必要となる。
【0007】
コンテンツ保護システム(CPS)の適用データである鍵情報などのCPSデータをディスクに記録して利用する構成に求められる要件には例えば以下の要件がある。
1.CPSデータの再生信号の信頼性が高いこと。
2.CPSデータの他メディアへのコピーが困難であること。
3.CPSデータ格納媒体や、記録再生ドライブの製造コストが大幅に高くならないこと。
例えば、このような要件がある。
【0008】
前述した特許文献1(特開2004−213781号公報)は鍵情報をグルーブに記録して利用する構成を開示している。この従来技術も、上記の要件を満たすような工夫が施されている。しかしながら、一方では、秘密情報の解読技術も進んでおり、さらなる高度な秘匿性を持つ記録構成が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−213781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、グルーブ信号にディスクに記録されるコンテンツ用の暗号鍵などの付加情報を重畳して記録または再生する構成において、解読困難性を高め、かつ正確なデータ読み取りも可能とする情報記録装置、情報再生装置、記録媒体製造装置、情報記録媒体、および方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面は、
付加情報を記録するグルーブ信号を生成する記録信号生成部と、
前記記録信号生成部の生成した記録信号をマスタディスクに記録する記録部を有し、
前記記録信号生成部は、
前記付加情報を構成する各ビット値に応じた位相誤差設定態様を決定し、
前記記録信号の所定区間単位で前記付加情報を構成する各ビット値に応じた位相誤差を設定した記録信号を生成する記録媒体製造装置にある。
【0012】
さらに、本発明の記録媒体製造装置の一実施態様において、前記記録信号生成部は、前記付加情報のビット値が0の場合と1の場合に応じて、前記グルーブ信号に設定する位相誤差の方向、または方向の組み合わせを異なる態様に設定した記録信号を生成する。
【0013】
さらに、本発明の記録媒体製造装置の一実施態様において、前記付加情報は、前記ディスクに記録されるコンテンツの暗号化処理または復号処理に適用する暗号鍵を含む情報である。
【0014】
さらに、本発明の第2の側面は、
ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取る再生部と、
前記再生部の再生信号の解析を行う信号解析部を有し、
前記信号解析部は、
前記グルーブ信号に含まれる位相誤差方向を、所定信号区間単位で判別して判別結果に基づいて前記グルーブ信号に含まれる付加情報の構成ビット値の判定を行う構成である情報再生装置にある。
【0015】
さらに、本発明の情報再生装置の一実施態様において、前記信号解析部は、前記グルーブ信号のゼロクロス点の前後のサンプリング点の検出値を用いて位相誤差指標値を算出し、該位相誤差指標値を前記所定信号区間単位で積分して得られる結果と予め設定した閾値との比較により、前記所定信号区間における位相誤差の設定方向を判別する処理を行なう。
【0016】
さらに、本発明の情報再生装置の一実施態様において、前記情報再生装置は、さらに、前記信号解析部の解析した付加情報に含まれる暗号鍵を適用して、前記ディスクに記録された暗号化コンテンツの復号処理を行う復号処理部を有する。
【0017】
さらに、本発明の第3の側面は、
ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取る再生部と、
前記再生部においてディスクから読み取られたグルーブ信号に含まれる位相誤差方向を所定信号区間単位で判別し、判別結果に基づくビット値判定処理により前記グルーブ信号に重畳記録された暗号鍵を解析する信号解析部と、
前記信号解析部の解析した暗号鍵を適用してコンテンツの暗号化処理を実行する暗号処理部と、
前記暗号処理部の生成した暗号化コンテンツを前記ディスクに記録する記録部を有する情報記録装置にある。
【0018】
さらに、本発明の情報記録装置の一実施態様において、前記信号解析部は、前記グルーブ信号のゼロクロス点の前後のサンプリング点の検出値を用いて位相誤差指標値を算出し、該位相誤差指標値を前記所定信号区間単位で積分して得られる結果と予め設定した閾値との比較により、前記所定信号区間における位相誤差の設定方向を判別する処理を行なう。
【0019】
さらに、本発明の第4の側面は、
付加情報を記録するために利用されるグルーブ信号を記録した情報記録媒体であり、
前記グルーブ信号は、所定信号区間単位で付加情報の構成ビット値に応じた異なる態様の位相誤差が設定された付加情報重畳信号として記録され、
再生装置において前記位相誤差の設定態様の検出に基づいて前記付加情報を読み取ることを可能とした情報記録媒体にある。
【0020】
さらに、本発明の情報記録媒体の一実施態様において、前記グルーブ信号は、前記付加情報のビット値が0の場合と1の場合に応じて、前記グルーブ信号に設定する位相誤差の方向または方向の組み合わせを異なる態様に設定した信号である。
【0021】
さらに、本発明の情報記録媒体の一実施態様において、前記付加情報は、前記ディスクに記録されるコンテンツの暗号化処理または復号処理に適用する暗号鍵を含む情報である。
【0022】
さらに、本発明の第5の側面は、
記録媒体製造装置において実行する情報記録媒体製造方法であり、
記録信号生成部が、付加情報を記録するグルーブ信号を生成する記録信号生成ステップと、
記録部が、前記記録信号生成ステップにおいて生成した記録信号をマスタディスクに記録する記録ステップを有し、
前記記録信号生成ステップは、
前記付加情報を構成する各ビット値に応じた位相誤差設定態様を決定し、
前記記録信号の所定区間単位で、前記付加情報を構成する各ビット値に応じた位相誤差を設定した記録信号を生成するステップを有する情報記録媒体製造方法にある。
【0023】
さらに、本発明の第6の側面は、
情報再生装置において実行する情報再生方法であり、
再生部が、ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取る再生ステップと、
信号解析部が、前記再生ステップにおける再生信号の解析を行う信号解析ステップを有し、
前記信号解析ステップは、
前記グルーブ信号に含まれる位相誤差方向を、所定信号区間単位で判別して判別結果に基づいて、前記グルーブ信号に含まれる付加情報の構成ビット値の判定を行うステップを有する情報再生方法にある。
【0024】
さらに、本発明の第7の側面は、
情報記録装置において実行する情報記録方法であり、
再生部が、ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取る再生ステップと、
信号解析部が、前記再生ステップにおいてディスクから読み取られたグルーブ信号に含まれる位相誤差方向を所定信号区間単位で判別し、判別結果に基づくビット値判定処理により前記グルーブ信号に重畳記録された暗号鍵構成ビット情報を解析する信号解析ステップと、
暗号処理部が、前記信号解析ステップにおいて解析した暗号鍵を適用してコンテンツの暗号化処理を実行する暗号処理ステップと、
記録部が、前記暗号処理ステップにおいて生成した暗号化コンテンツを前記ディスクに記録する記録ステップを有する情報記録方法にある。
【0025】
さらに、本発明の第8の側面は、
情報再生装置において情報再生処理を実行させるプログラムであり、
再生部に、ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取らせる再生ステップと、
信号解析部に、前記再生ステップにおける再生信号の解析を行わせる信号解析ステップを有し、
前記信号解析ステップは、
前記グルーブ信号に含まれる位相誤差方向を、所定信号区間単位で判別して判別結果に基づいて、前記グルーブ信号に含まれる付加情報の構成ビット値の判定を行わせるステップを有するプログラムにある。
【0026】
さらに、本発明の第9の側面は、
情報記録装置において情報記録処理を実行させるプログラムであり、
再生部に、ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取らせる再生ステップと、
信号解析部に、前記再生ステップにおいてディスクから読み取られたグルーブ信号に含まれる位相誤差方向を所定信号区間単位で判別させ、判別結果に基づくビット値判定処理により前記グルーブ信号に重畳記録された暗号鍵構成ビット情報を解析させる信号解析ステップと、
暗号処理部に、前記信号解析ステップにおいて解析した暗号鍵を適用してコンテンツの暗号化処理を実行させる暗号処理ステップと、
記録部に、前記暗号処理ステップにおいて生成した暗号化コンテンツを前記ディスクに記録させる記録ステップを有するプログラムにある。
【0027】
なお、本発明のプログラムは、例えば、様々なプログラム・コードを実行可能な画像処理装置やコンピュータ・システムに対して、コンピュータ可読な形式で提供する記憶媒体、通信媒体によって提供可能なプログラムである。このようなプログラムをコンピュータ可読な形式で提供することにより、画像処理装置やコンピュータ・システム上でプログラムに応じた処理が実現される。
【0028】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施例や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。なお、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施例によれば、暗号鍵などの秘匿性の高い付加情報をディスクに記録されるグルーブ信号中に、読み取り困難性と高精度な読み取りの双方を実現させる重畳記録を行うことが可能となる。付加情報の記録に際してビット値に応じた位相誤差を設定したグルーブ信号を記録し、付加情報の読み取り時には、所定区間のグルーブ信号の位相誤差を積分処理して、各区間内のグルーブ信号の位相誤差方向を判別する構成とした。このような処理により読み取り困難性を高めるとともに、精度の高い読み取りを実現する付加情報の記録再生を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例に係る記録媒体製造装置の構成例について説明する図である。
【図2】本発明の一実施例に係る記録媒体製造装置の記録信号生成部の構成例について説明する図である。
【図3】本発明の一実施例に係る位相誤差設定グルーブ信号の例について説明する図である。
【図4】本発明の一実施例に係る位相誤差設定グルーブ信号の記録処理と再生処理例について説明する図である。
【図5】本発明の一実施例に係る情報再生装置の構成例について説明する図である。
【図6】本発明の一実施例に係る情報再生装置の信号解析部の詳細構成例について説明する図である。
【図7】本発明の一実施例に係る情報再生装置の実行するグルーブ信号に対する信号解析処理による付加情報の取得処理例について説明する図である。
【図8】本発明の一実施例に係る情報再生装置の実行するグルーブ信号に対する信号解析処理による付加情報の取得処理例について説明する図である。
【図9】本発明の一実施例に係る情報再生装置の実行するグルーブ信号に対する信号解析処理による付加情報の取得処理例について説明する図である。
【図10】本発明の一実施例に係る情報再生装置の実行するグルーブ信号に対する信号解析処理による付加情報の取得処理例について説明する図である。
【図11】本発明の一実施例に係る情報記録装置の構成例について説明する図である。
【図12】本発明の一実施例に係る位相誤差設定グルーブ信号の記録処理と再生処理例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の情報記録装置、情報再生装置、記録媒体製造装置、情報記録媒体、および方法、並びにプログラムの詳細について説明する。説明は、以下の項目に従って行う。
1.記録媒体製造装置の構成と処理、および情報記録媒体について
2.情報再生装置の構成と処理について
3.情報記録装置の構成と処理について
4.その他の実施例について
【0032】
[1.記録媒体製造装置の構成と処理、および情報記録媒体について]
まず、本発明の一実施例に係る記録媒体製造装置の構成と処理、および情報記録媒体について、図1以下を参照して説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施例に係る記録媒体製造装置の構成を示すブロック図である。記録媒体製造装置100は、ディスク原盤であるマスタディスク130の製造を行う。その後、マスタディスク130のスタンパ処理によってユーザに提供される情報記録媒体であるディスク150が大量生産される。
【0034】
マスタディスク130には、記録条件等の付加情報を記録するために利用されるグルーブ信号が記録される。グルーブ信号は、蛇行すなわちウォブル(wobble)した溝によって構成される。
【0035】
図1に示すように記録媒体製造装置100は、記録条件等の付加情報120、例えば暗号鍵などの付加情報120を入力し記録信号を生成する。この生成記録信号に従ってマスタディスク130に対するグルーブ信号の記録処理を行う。
【0036】
付加情報120は例えば64ビット、128ビットなどの暗号鍵の構成ビットを含むデータである。この付加情報120は記録信号生成部102に入力される。
【0037】
記録信号生成部102は、記録条件等の付加情報120を入力してマスタディスク130に記録する記録信号(グルーブ信号)を生成する。記録信号生成部102は、記録条件等の付加情報を示すウォブリンググルーブ信号をFM(Frequency Modulation)変調処理により生成する。記録条件等の付加情報はグルーブ信号(FM変調信号)に対する位相誤差の設定によって記録される。この処理については、後段で詳細に説明する。
【0038】
記録信号生成部102の生成した記録信号は、記録部103に出力される。記録部103はたとえばレーザ出力によりマスタディスク130に対して記録信号に応じた溝(グルーブ)を形成する。マスタディスク130に記録されるグルーブ信号は、コンテンツの記録されるデータトラックに沿ったスパイラル状の溝である。
【0039】
記録部103による記録処理によって、記録条件等の付加情報、例えば暗号鍵が重畳されたグルーブ信号を記録したマスタディスク130が製造される。このマスタディスク130のスタンパ処理によって、ユーザに提供する大量のディスク150が生産される。
【0040】
なお、ディスク150は、例えば映画などのコンテンツが記録されたディスク、あるいは、コンテンツの記録されていないディスク、いずれでもよい。コンテンツの記録されていないディスクは、ユーザによるデータ書き込みが可能なディスクである。このようなディスク150を購入したユーザは後日、映画などのコンテンツをディスク150に記録することができる。
【0041】
例えばコンテンツの記録されていないディスクを購入したユーザは、ユーザのPCなとの記録再生装置を利用してコンテンツ提供サーバにネットワークを介して接続する。サーバは、ディスク150に記録されている暗号鍵を用いて復号可能な暗号化コンテンツをユーザ装置に提供する。
【0042】
ユーザ装置は、サーバからダウンロードしたコンテンツをディスク150に記録する。その後、コンテンツ再生処理に際して、ディスク150に記録されたグルーブ信号から暗号鍵を読み取り、読み取った暗号鍵を用いてディスク150に記録された暗号化コンテンツの復号処理を実行してコンテンツ再生処理を行うことができる。
【0043】
あるいは、サーバから暗号化されていないコンテンツを取得し、ユーザ装置側でディスクのグルーブ信号から読み取った暗号鍵を適用して取得コンテンツの暗号化処理を行ってディスクに記録することも可能となる。
【0044】
いずれの態様においても、暗号化コンテンツとその復号に適用する暗号鍵は1つのディスクにまとまって格納されることになる。従って、例えば暗号化コンテンツを他のメディアに出力してコピーしても、暗号鍵が利用できないことになり、コンテンツの不正利用を効果的に防止することができる。
【0045】
次に図2を参照して、記録媒体製造装置100の記録信号生成部102の構成と処理の詳細について説明する。記録信号生成部102は前述したように、記録条件等の付加情報として暗号鍵などを含む記録信号を生成する。
【0046】
記録信号生成部102は図2に示すように、変調信号生成部122、位相誤差設定信号生成部123を有する。
【0047】
記録信号生成部102は、例えば、付加情報の構成ビットが[1]の場合には、グルーブ信号に対して+方向の位相誤差、付加情報の構成ビットが[0]の場合には、グルーブ信号に対して−方向の位相誤差を対応付けた位相誤差設定信号を生成する。
【0048】
なお、この設定は、様々な設定が可能であり、上述の逆の設定や、以下のような設定もある。
ビット[1]の場合、先行する+方向の位相誤差と後続する−方向の位相誤差の設定の組み合わせ、
ビット[0]の場合、先行する−方向の位相誤差と後続する+方向の位相誤差の設定の組み合わせ、
このような設定など、様々な設定が可能である。
【0049】
変調信号生成部122は、記録条件等の付加情報に応じてFM変調処理を行った変調信号を生成する。
位相誤差設定信号生成部123は、変調信号生成部122の生成した変調信号に対して付加情報ビットに応じた位相誤差情報に応じて、変調信号に位相誤差を設定した記録信号を生成する。
【0050】
図3にマスタディスクやディスク150に記録されるグルーブ信号の例を示す。グルーブ信号は、ディスク150に対してスパイラル状に設定された溝を再生した信号である。図2(1)(2a),(2b)には、その一部の詳細を示している。すなわち、図2に示すディスク150のAB部分のグルーブ信号の例を示している。
【0051】
図3には、以下の各信号例を示している。
(1)位相誤差設定なしのグルーブ信号
(2a)+方向位相誤差設定グルーブ信号
(2b)−方向位相誤差設定グルーブ信号
【0052】
(1),(2a),(2b)は、ディスクの平面に相当し、右方向がトラックの信号方向である。図3(1)に示す位相誤差設定なしのグルーブ信号を(2a),(2b)に点線で示している。図3(2a),(2b)に示す実線が位相誤差を持つグルーブ信号であり、点線が、位相誤差を持たない本来の記録条件等の付加情報のみからなるグルーブ信号である。
【0053】
図3(2a)に示す例では、実線で示す+方向位相誤差設定グルーブ信号が、点線で示すグルーブ信号(位相誤差なし)に比較してトラック進行方向(+方向)にわずかにずれている。このずれが+方向位相誤差である。
【0054】
また、図3(2b)に示す例では、実線で示す−方向位相誤差設定グルーブ信号が、点線で示すグルーブ信号(位相誤差なし)に比較してトラック反対方向(−方向)にわずかにずれている。このずれが−方向位相誤差である。
【0055】
マスタディスクおよびディスクに記録されるグルーブ信号は、図3(1),(2a),(2b)の異なるタイプのグルーブ信号が混在した設定となる。位相誤差により鍵情報などの付加情報の構成ビットが記録される。再生装置は、グルーブ信号の読み取りに際して、グルーブ信号から位相誤差を検出し、検出した位相誤差に基づいて付加情報のビット値を解析する。具体的な位相誤差の設定例とビットデータとの対応例について図4を参照して説明する。
【0056】
図4はグルーブ信号の記録処理と再生処理例について示した図である。図4の例は、
ビット=1の場合に、+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号、
ビット=0の場合に、−方向の位相誤差を設定したグルーブ信号、
このような設定でグルーブ信号を記録した場合の例を示している。
【0057】
グルーブ信号の記録処理に際しては、付加情報の構成ビット=1の場合には、+方向(トラック進行方向)の位相誤差を設定したグルーブ信号を所定区間記録する。付加情報の構成ビット=1の場合には、−方向(トラック反対方向)の位相誤差を設定したグルーブ信号を所定区間記録する。
【0058】
図4に示す例では、
t1〜t2:+方向位相誤差設定グルーブ信号(ビット値=1に対応)
t2〜t3:−方向位相誤差設定グルーブ信号(ビット値=0に対応)
t3〜t4:+方向位相誤差設定グルーブ信号(ビット値=1に対応)
t4〜t5:+方向位相誤差設定グルーブ信号(ビット値=1に対応)
t5〜t6:+方向位相誤差設定グルーブ信号(ビット値=0に対応)
このような設定で、グルーブ信号が生成されて記録される。
【0059】
なお、設定する位相誤差は、ごくわずかである。例えば、再生処理におけるサンプリング信号の周期Tの1〜5%程度の位相誤差が設定される。従って、一度の読み取りでは設定された位相誤差が+方向なのか−方向なのかを判定することが困難な設定である。
【0060】
グルーブ信号の記録処理に際しては、例えば付加情報の構成ビットがビット値=1の場合には、+方向の位相誤差を持つグルーブ信号を一定区間設定して記録する。またビット=0の場合には、−方向の位相誤差を持つグルーブ信号を一定区間設定して記録する。
【0061】
再生装置は、グルーブ信号の読み取りを所定のサンプリングタイム(T)間隔で実行し、各サンプリングタイムにおいて読み取られた信号の値を蓄積(積分)する。この積分処理によって、一定区間(例えばt1〜t2)において読み取られたグルーブ信号の位相誤差の方向(+,−)を判定する。
【0062】
なお、記録装置、再生装置のいずれも装置に設定されたクロックによって様々な制御のタイミングが設定され、図4に示すt1〜t2などの区間については、予め規定したクロック数によって判別することができる。
【0063】
ディスクには、図3を参照して説明したように、
(1)位相誤差設定なしグルーブ信号
(2a)+方向位相誤差設定グルーブ信号
(2b)−方向位相誤差設定グルーブ信号
これらの3パターンの信号が記録される。
一定区間単位、例えば図4に示すt1〜t2、t2〜t3などの一定区間単位で、上記3パターンのいずれかの設定でグルーブ信号を記録する。
【0064】
再生装置は、図4に示すt1〜t2、t2〜t3などの一定区間単位で、位相誤差の解析を実行する。この解析により上記3パターンに対応する異なる位相誤差蓄積信号(積分信号)を生成することが可能となる。このような位相誤差蓄積処理、すなわち検出信号の積分処理により、設定された位相誤差が+方向であるか−方向であるかを誤りなく検出することが可能となる。
【0065】
この処理が図4の下部に示す処理である。例えば、再生装置は以下のような処理を行う。
t1〜t2:読み取りグルーブ信号に基づく位相誤差判定結果を蓄積(積分)し、+方向の位相誤差が設定された区間であると判断し、ビット値=[1]と判定する。
t2〜t3:読み取りグルーブ信号に基づく位相誤差判定結果を蓄積(積分)し、−方向の位相誤差が設定された区間であると判断し、ビット値=[0]と判定する。
以下、同様の処理を実行して、ビットの値を順次、取得していく。
この処理を継続することで、例えば64ビットや128ビットの鍵を構成するビット値をすべて正確に取得することができる。
【0066】
[2.情報再生装置の構成と処理について]
次に、上述した付加情報を重畳したグルーブ信号を記録したディスクの再生処理を行う再生装置の構成と処理例について説明する。
【0067】
図5は、本発明の一実施例に係る情報再生装置の構成例を示すブロック図である。図5に示すように情報再生装置200は、再生部201、信号解析部202、復号処理部204を有する。
【0068】
再生部201はディスク150からの信号読み取りを行う。ディスク150は、先に説明した暗号鍵などの付加情報を重畳したグルーブ信号が記録されたディスクである。さらに、その暗号鍵で暗号化された暗号化コンテンツが記録されている。
【0069】
再生部201は、グルーブ信号を読み取り、信号解析部202に出力する。グルーブ信号は、先に図3等を参照して説明したように、
(1)位相誤差設定なしグルーブ信号
(2a)+方向位相誤差設定グルーブ信号
(2b)−方向位相誤差設定グルーブ信号
これらの3パターンの信号の混在したグルーブ信号である。
【0070】
信号解析部202は、再生部201から入力するグルーブ信号の復調処理および解析を実行して、位相誤差の検出を行い、検出した位相誤差に基づいてグルーブ信号中に記録された付加情報の構成ビット値を検出する。
【0071】
信号解析部202において検出された付加情報の構成ビット情報に基づいて付加情報120を得る。例えば付加情報120は暗号鍵であり、ディスク150に記録された暗号化コンテンツの復号処理に適用される。
【0072】
また、信号解析部202において復調された結果からは、グルーブ信号に含まれるその他の付加情報、例えばアドレス情報125が得られる。なお、グルーブ信号に設定された位相誤差は前述したようにわずかな位相誤差であり、取得されたアドレス情報にエラーを発生させるほどの影響はない。なお、グルーブ信号に含まれるその他の付加情報、例えばアドレス情報125を取得する処理は、一般的なグルーブ信号の読み取り処理として行われる。例えば、グルーブ信号の読み取り信号として得られるプッシュプル信号に対するFM復調処理を行い、復調処理結果に対するバンドパスフィルタ処理、2値化処理を行い、さらに必要に応じてECCデコード、デインターリーブなどの処理がなされて、グルーブ信号に含まれるその他の付加情報、例えばアドレス情報125や、そのディスクの基本情報(ディスク種別、ライトストラテジのパラメータ等)が取得される。
【0073】
なお、データトラックに記録されたコンテンツの読み取りに際しては、例えばデータ領域中のアドレス情報を適用して所定トラック位置にピックアップを設定して、暗号化コンテンツの読み取りが行われる。復号処理部204は、グルーブ信号から取得した付加情報(暗号鍵)120を適用して暗号化コンテンツの復号処理を実行してコンテンツ再生を行う。
【0074】
信号解析部202の詳細構成と処理について、図6を参照して説明する。
図6に示すように、信号解析部202は、復調部221、位相誤差検出部222、ビット値判定部223を有する。
復調部221は、FM変調信号としてディスクに記録されたグルーブ信号を再生部201から入力して復調処理を実行する。
【0075】
位相誤差検出部222は、先に図4を参照して説明したように、グルーブ信号の読み取りを所定のサンプリングタイム(T)間隔で実行し、各サンプリングタイムにおいて読み取られた信号の値を蓄積(積分)する。なお、積分処理は、例えば、グルーブ信号の読み取り信号から得られるプッシュプル信号に対する積分処理として行われる。この積分処理によって、一定区間(例えばt1〜t2)において読み取られたグルーブ信号の位相誤差の方向(+,−)を判定する。
【0076】
ディスクには、図3を参照して説明したように、
(1)位相誤差設定なしグルーブ信号
(2a)+方向位相誤差設定グルーブ信号
(2b)−方向位相誤差設定グルーブ信号
これらの3パターンの信号が記録されている。
情報再生装置の位相誤差検出部222は、例えば図4に示すt1〜t2、t2〜t3などの一定区間単位で、上記3パターンのいずれの誤差設定のグルーブ信号であるかを判別する。
【0077】
位相誤差検出部222の実行する位相誤差検出処理の具体例について、図7以下を参照して説明する。
【0078】
図7(1)は、先に図3(2a)を参照して説明したと同様のグルーブ信号の例であり、+方向(トラック進行方向)に位相誤差を設定したグルーブ信号を実線で示している。点線は位相誤差無しのグルーブ信号を参考として示している。
【0079】
再生装置によるグルーブ信号の読み取りは、一定期間のサンプリング間隔で実行される。図7(1)に示す複数の上向き矢印がサンプリングタイミングを示している。左から右に、グルーブ信号が間隔Tごとに読み取られる。
【0080】
位相誤差の検出には、グルーブ信号のゼロクロス点(ゼロクロスポイント)の前後のサンプリングデータが利用される。ゼロクロス点とは、図7に示すようにグルーブ信号ラインが中央位置(0)を横切るポイントである。
【0081】
このゼロクロス点の前後のサンプリングタイム、すなわち図7に示す時間tp,tqの2つのサンプリングデータが位相誤差検出に利用される。
この処理の詳細について図7(2),(3)を参照して説明する。
【0082】
図7(2)は、図7(1)に示すサンプリングタイムtp〜tq近傍を拡大した拡大図である。実線が+方向の位相誤差を持つグルーブ信号であり、点線が位相誤差の無いグルーブ信号を参考データとして示している。
【0083】
図7(2)に示すゼロクロス点の両側のサンプリング時間tp,tqの2つのサンプリングデータが位相誤差検出に利用される。
例えば、図7(2)に示す例では、
サンプリング時間tp:計測値X
サンプリング時間tq:計測値X
これらの計測値が取得される。
なお、計測値は、グルーブの位置に応じた相対的な電位(電圧)の値として取得される。例えば、図7(2)に示すようにグルーブ信号の端から端までを−64〜+64の相対電位値とした範囲で計測される。
【0084】
ゼロクロス点を挟む2つのサンプリング時間tp,tqにおける計測値X、Xを適用して、位相誤差指標値(Δτ)が、例えば図7(3)に示す式を適用して算出される。
すなわち、位相誤差指標値(Δτ)は下式(式1)に従って算出される。
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))・・・(式1)
ただし、
k−1はゼロクロス直前の計測値
はゼロクロス直後の計測値
k−1,Yは、
X≧0のときY=(+1)
X<0のときY=(−1)
である。
【0085】
上記式(式1)は、1つのゼロクロス点に対応する位相誤差指標値(Δτ)の算出式である。前述したようにグルーブ信号に設定される位相誤差はわずかの誤差(例えばサンプリング期間Tの数%程度)である。従って、1つのデータのみで位相誤差が+方向であるか−方向であるかを判別することは困難であり、ビット値判定に際してエラーが発生する可能性が高い。
【0086】
従って、先に図4を参照して説明したように、記録装置は、ある一定期間の連続するグルーブ信号区間(例えば図4に示すt1〜t2)に連続した同一方向の誤差を設定したグルーブ信号を記録する。再生装置は、この一定のグルーブ信号区間の誤差を順次加算する積分処理によりその区間の位相誤差の設定方向を判別する。
【0087】
再生装置は、上記式(式1)で示される位相誤差指標値(Δτ)を、ある一定期間の連続するグルーブ信号区間(例えば図4に示すt1〜t2)において積分して、図7(3)に示す判定を行う。すなわち、以下のように、位相誤差指標値(Δτ)の積分結果(ΣΔτ)と、閾値Th1,Th2との比較により、位相誤差の有無および方向の判定を実行する。
Th1<ΣΔτ<Th2 → 位相誤差なし
ΣΔτ≦Th1 → +方向位相誤差あり
ΣΔτ≧Th2 → −方向位相誤差あり
・・・・(式2)
上記判定式(式2)に従って、位相誤差の有無および方向の判定を実行する。
【0088】
図8は、位相誤差指標値(Δτ)の積分結果(ΣΔτ)と閾値との比較処理の具体例について説明する図である。
図8には、以下の3パターンの例を示している。
(1)位相誤差設定なしグルーブ信号
(2a)+方向位相誤差設定グルーブ信号
(2b)−方向位相誤差設定グルーブ信号
これらの3パターンの信号に対する信号区間t1〜t2の位相誤差指標値(Δτ)の積分結果(ΣΔτ)と閾値(Th1,Th2)との比較処理例を示している。
【0089】
図8(1)は、信号区間t1〜t2のグルーブ信号が、位相誤差の設定されていないグルーブ信号である場合の例である。この場合、各ゼロクロス点の位相誤差指標値(Δτ)は、いずれか一方に偏りが発生することなく様々な方向にほぼバランスされて発生する。この結果、信号区間t1〜t2における位相誤差指標値(Δτ)の積分結果(ΣΔτ)=V0は、予め設定された閾値Th1〜Th2の範囲となる。
【0090】
これは、例えば図7(2)に示す点線の位相誤差のないグルーブ信号に従って計測される計測値X11,X12を適用して、前述した式、すなわち、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
上記式に従って、位相誤差指標値(Δτ)を算出して、その積分結果(ΣΔτ)=V0を算出した場合に相当する。
【0091】
図8(2a)は、信号区間t1〜t2のグルーブ信号が、+方向の位相誤差の設定がなされたグルーブ信号である場合の例である。これは、図7を参照して説明した例に対応する。この場合、各ゼロクロス点の位相誤差指標値(Δτ)は、一方に偏りが発生する。この結果、信号区間t1〜t2における位相誤差指標値(Δτ)の積分結果(ΣΔτ)=V1は、予め設定された閾値Th1以下の値となる。
【0092】
図8(2b)は、信号区間t1〜t2のグルーブ信号が、−方向の位相誤差の設定がなされたグルーブ信号である場合の例である。この場合も、各ゼロクロス点の位相誤差指標値(Δτ)は、一方に偏りが発生して発生する。図8(2a)の逆の偏りが発生する。この結果、信号区間t1〜t2における位相誤差指標値(Δτ)の積分結果(ΣΔτ)=V2は、予め設定された閾値Th2以上の値となる。
【0093】
このように、位相誤差指標値(Δτ)の積分結果(ΣΔτ)と閾値との比較によって、3パターンのグルーブ信号の各々について判別することができる。すなわち、
Th1<ΣΔτ<Th2 → 位相誤差なし
ΣΔτ<Th1 → +方向位相誤差あり
ΣΔτ>Th2 → −方向位相誤差あり
上記判定式に従って、位相誤差の有無および方向の判定が可能となる。
【0094】
図7では、+方向位相誤差設定グルーブ信号のゼロクロス点が右下がりのラインである場合の位相誤差指標値(Δτ)の算出処理例について説明した。しかし、ゼロクロス点は、右下がりライン、右上がりラインの2種類のラインに対して発生する。ただし、図面上で示す右下がりライン、右上がりラインはそれぞれディスク平面におけるトラック方向からの異なる振れ方向に相当する。
【0095】
図9、図10を参照して、これらの各パターンについて、+方向位相誤差設定グルーブ信号と、−方向位相誤差設定グルーブ信号における位相誤差指標値(Δτ)の算出処理の具体例について説明する。
【0096】
図9は、+方向位相誤差設定グルーブ信号に対する位相誤差指標値(Δτ)の算出処理の具体例を説明する図である。
【0097】
図9(a1)は、+方向(トラック進行方向)に位相誤差を設定したグルーブ信号を実線で示している。点線は位相誤差無しのグルーブ信号を参考として示している。
図9(a2),(a3)は、グルーブ信号のゼロクロス点の近傍の2つのパターンの拡大図である。
(a2)右下がりライン近傍の処理例、
(a3)右上がりライン近傍の処理例、
これらを示している。
なお、点線は、参考データとして示す位相誤差のないグルーブ信号の例である。
【0098】
(a2)右下がりライン近傍の処理例において、実線で示す+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号におけるゼロクロス点前後のサンプリング点tp,tqの2つのサンプリングデータが位相誤差検出に利用される。
【0099】
図9(a2)には、+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)と、位相誤差のないグルーブ信号(点線)各々のサンプリング点tp,tqの計測値の例を示している。
【0100】
+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)の計測値は、
サンプリング時間tp:計測値c=+40、
サンプリング時間tq:計測値d=−26、
これらの計測値である。
位相誤差のないグルーブ信号(点線)の計測値は、
サンプリング時間tp:計測値a=+32、
サンプリング時間tq:計測値b=−32、
これらの計測値である。
実線、点線のラインの位置関係から、たとえば上記の計測値が取得される。
【0101】
これらの計測値に基づいて、先に説明した式(式1)を適用して、位相誤差指標値(Δτ)を算出する。
+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)の計測値、
サンプリング時間tp:計測値c=+40、
サンプリング時間tq:計測値d=−26、
これらの計測値を適用すると、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
=((−1)(+40))−((+1)(−26))=−14<0
このように0未満の値が算出される。
これは、図8(2a)に対応する。
【0102】
一方、位相誤差のないグルーブ信号(点線)の計測値、
サンプリング時間tp:計測値a=+32、
サンプリング時間tq:計測値b=−32、
これらの計測値を適用すると、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
=((−1)(+32))−((+1)(−32))=0
このように0が算出される。
これは、図8(1)に対応する。
【0103】
次に、図9(a3)右上がりライン近傍の処理例について説明する。図9(a3)には、ゼロクロス近傍のグルーブ信号ラインが右上がりである場合の例である。図9(a3)にも、+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)と、位相誤差のないグルーブ信号(点線)各々のサンプリング点tr,tsの計測値の例を示している。
【0104】
+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)の計測値は、
サンプリング時間tr:計測値g=−40、
サンプリング時間ts:計測値h=+26、
これらの計測値である。
位相誤差のないグルーブ信号(点線)の計測値は、
サンプリング時間tr:計測値e=−32、
サンプリング時間ts:計測値f=+32、
これらの計測値である。
実線、点線のラインの位置関係から、たとえば上記の計測値が取得される。
【0105】
これらの計測値に基づいて、先に説明した式(式1)を適用して、位相誤差指標値(Δτ)を算出する。
+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)の計測値、
サンプリング時間tr:計測値g=−40、
サンプリング時間ts:計測値h=+26、
これらの計測値を適用すると、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
=((+1)(−40))−((−1)(+26))=−14<0
このように0未満の値が算出される。
これは、図8(2a)に対応する。
【0106】
一方、位相誤差のないグルーブ信号(点線)の計測値、
サンプリング時間tp:計測値e=−32、
サンプリング時間tq:計測値f=+32、
これらの計測値を適用すると、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
=((+1)(−32))−((−1)(+32))=0
このように0が算出される。
これは、図8(1)に対応する。
【0107】
このように、ゼロクロス点のラインが、右上がりライン、右下がりラインいずれの場合も、+方向の位相誤差の設定されたグルーブ信号のゼロクロス点を挟む2点の計測値によって算出される位相誤差指標値(Δτ)は、位相誤差の設定されていないグルーブ信号の計測値によって算出される位相誤差指標値(Δτ)よりも小さい値となる。
【0108】
この位相誤差指標値(Δτ)を所定の計測区間において積分することで、先に説明した図8(2a)に示すような積分結果V1が得られることになる。この積分結果V1と、予め設定された閾値Th1と比較し、
V1≦Th1
上記結果が得られた場合、この計測区間における位相誤差の設定は+方向(トラック進行方向)であると判別することができる。
【0109】
図10は、−方向位相誤差設定グルーブ信号に対する位相誤差指標値(Δτ)の算出処理の具体例を説明する図である。
【0110】
図10(b1)は、−方向(トラック逆方向)に位相誤差を設定したグルーブ信号を実線で示している。点線は位相誤差無しのグルーブ信号を参考として示している。
図10(b2),(b3)は、グルーブ信号のゼロクロス点の近傍の2つのパターンの拡大図である。
(b2)右下がりライン近傍の処理例、
(b3)右上がりライン近傍の処理例、
これらを示している。
なお、点線は、参考データとして示す位相誤差のないグルーブ信号の例である。
【0111】
(b2)右下がりライン近傍の処理例において、実線で示す−方向の位相誤差を設定したグルーブ信号におけるゼロクロス点前後のサンプリング点tp,tqの2つのサンプリングデータが位相誤差検出に利用される。
【0112】
図10(b2)には、−方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)と、位相誤差のないグルーブ信号(点線)各々のサンプリング点tp,tqの計測値の例を示している。
【0113】
−方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)の計測値は、
サンプリング時間tp:計測値c=+26、
サンプリング時間tq:計測値d=−40、
これらの計測値である。
位相誤差のないグルーブ信号(点線)の計測値は、
サンプリング時間tp:計測値a=+32、
サンプリング時間tq:計測値b=−32、
これらの計測値である。
実線、点線のラインの位置関係から、たとえば上記の計測値が取得される。
【0114】
これらの計測値に基づいて、先に説明した式(式1)を適用して、位相誤差指標値(Δτ)を算出する。
−方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)の計測値、
サンプリング時間tp:計測値c=+26、
サンプリング時間tq:計測値d=−40、
これらの計測値を適用すると、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
=((−1)(+26))−((+1)(−40))=+14>0
このように0より大きい値が算出される。
これは、図8(2b)に対応する。
【0115】
一方、位相誤差のないグルーブ信号(点線)の計測値、
サンプリング時間tp:計測値a=+32、
サンプリング時間tq:計測値b=−32、
これらの計測値を適用すると、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
=((−1)(+32))−((+1)(−32))=0
このように0が算出される。
これは、図8(1)に対応する。
【0116】
次に、図10(b3)右上がりライン近傍の処理例について説明する。図10(b3)には、ゼロクロス近傍のグルーブ信号ラインが右上がりである場合の例である。図10(b3)にも、−方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)と、位相誤差のないグルーブ信号(点線)各々のサンプリング点tr,tsの計測値の例を示している。
【0117】
−方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)の計測値は、
サンプリング時間tr:計測値g=−26、
サンプリング時間ts:計測値h=+40、
これらの計測値である。
位相誤差のないグルーブ信号(点線)の計測値は、
サンプリング時間tr:計測値e=−32、
サンプリング時間ts:計測値f=+32、
これらの計測値である。
実線、点線のラインの位置関係から、たとえば上記の計測値が取得される。
【0118】
これらの計測値に基づいて、先に説明した式(式1)を適用して、位相誤差指標値(Δτ)を算出する。
+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号(実線)の計測値、
サンプリング時間tr:計測値g=−26、
サンプリング時間ts:計測値h=+40、
これらの計測値を適用すると、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
=((+1)(−26))−((−1)(+40))=+14>0
このように0より大きい値が算出される。
これは、図8(2b)に対応する。
【0119】
一方、位相誤差のないグルーブ信号(点線)の計測値、
サンプリング時間tp:計測値e=−32、
サンプリング時間tq:計測値f=+32、
これらの計測値を適用すると、
Δτ=((Y)(Xk−1))−((Yk−1)(X))
=((+1)(−32))−((−1)(+32))=0
このように0が算出される。
これは、図8(1)に対応する。
【0120】
このように、ゼロクロス点のラインが、右上がりライン、右下がりラインいずれの場合も、−方向の位相誤差の設定されたグルーブ信号のゼロクロス点を挟む2点の計測値によって算出される位相誤差指標値(Δτ)は、位相誤差の設定されていないグルーブ信号の計測値によって算出される位相誤差指標値(Δτ)よりも大きい値となる。
【0121】
この位相誤差指標値(Δτ)を所定の計測区間において積分することで、先に説明した図8(2b)に示すような積分結果V2が得られることになる。この積分結果V2と、予め設定された閾値Th2と比較し、
V2≧Th2
上記結果が得られた場合、この計測区間における位相誤差の設定は−方向(トラック逆方向)であると判別することができる。
【0122】
[3.情報記録装置の構成と処理について]
グルーブ信号に重畳された付加情報が例えば暗号鍵である場合、ユーザの情報記録再生装置は、装着したディスクに記録されたグルーブ信号読み取り、暗号鍵を取得することができる。さらに、取得した暗号鍵を適用して、たとえばサーバから取得したコンテンツの暗号化処理を実行して、ディスクに記録することができる。
【0123】
あるいはサーバがディスクに記録されたと同一の暗号鍵を適用した暗号化コンテンツをユーザ装置に提供し、ユーザ装置側でディスクに対する暗号化コンテンツの記録を実行して、その後の再生処理において、ディスクのグルーブ信号から取得した暗号鍵を適用した復号、再生処理を行うことも可能である。
【0124】
このように暗号鍵をグルーブ信号に重畳させて記録したディスクに暗号化コンテンツの記録処理を行う情報記録装置の構成と処理例について、図11を参照して説明する。
【0125】
図11は、前述したディスク150、すなわち、グルーブ信号に付加情報として暗号鍵が記録されたディスク150を装着し、ディスク150に対して暗号化コンテンツの記録処理を実行するユーザ装置としての情報記録装置300の構成例を示すブロック図である。
【0126】
情報記録装置300は、図11に示すように、記録再生部301、信号解析部302、暗号処理部304、通信部305を有する。
記録再生部301はディスク150からのグルーブ信号、記録コンテンツの読み取り、さらにコンテンツの記録処理を実行する。
【0127】
信号解析部302は、先に、図5、図6を参照して説明した情報再生装置200の信号解析部202と同様の構成を有し、同様の処理を実行する。すなわち、記録再生部301から入力するグルーブ信号の復調処理および解析を実行して、位相誤差の検出を行い、検出した位相誤差に基づいてグルーブ信号中に記録された付加情報の構成ビット値を検出する。
【0128】
信号解析部302において検出された付加情報の構成ビット情報により付加情報120を得る。例えば付加情報120は暗号鍵であり、ディスク150に記録するコンテンツの暗号化処理に適用される。また、ディスク150に記録された暗号化コンテンツの復号処理に適用される。
【0129】
さらに、信号解析部302において復調された結果からは、グルーブ信号に含まれるその他の付加情報であるアドレス情報125が得られる。アドレス情報125は、ディスク150に対するデータ記録や再生処理において利用される。
【0130】
情報記録装置300は、通信部305を介してコンテンツサーバ400と通信を実行し、コンテンツサーバ400からコンテンツを取得する。取得コンテンツは、暗号化コンテンツ、あるいは暗号化処理が施されていない平文コンテンツのいずれかである。
【0131】
暗号化コンテンツである場合、その暗号化コンテンツは、ディスク150のグルーブ信号から読み取られる暗号鍵によって復号可能な暗号化コンテンツである。このような暗号化コンテンツをサーバから受信した場合、受信した暗号化コンテンツは、記録再生部301を介してディスク150に記録される。
【0132】
また、コンテンツサーバ400から暗号化処理が施されていない平文コンテンツを受信した場合は、ディスク150のグルーブ信号から読み取った付加情報120としての暗号鍵を適用して、暗号処理部304において暗号化処理が実行される。この結果、生成された暗号化コンテンツが記録再生部301を介してディスク150に記録される。
【0133】
ディスク150に記録された暗号化コンテンツを再生する場合は、ディスク150から暗号化コンテンツを読み取るとともに、グルーブ信号から暗号鍵を読み取り、読み取った暗号鍵を適用して暗号化コンテンツを復号して再生処理を行う。この処理は、先に、図5を参照して説明した情報再生装置200の処理と同様の処理である。
【0134】
なお、図11に示す構成では、ディスクに記録するコンテンツは通信部305を介してコンテンツサーバ400から取得する構成としたが、コンテンツの取得元はサーバに限らず、放送や、他の情報処理装置、他のメディアなど様々な設定が可能である。これらの取得元に応じたコンテンツ入力部としてのインタフェースを介して入力したコンテンツをディスクに暗号化コンテンツとして記録することができる。
【0135】
図11に示す情報記録装置300においてディスクに対する暗号化コンテンツの記録を行うと、暗号化コンテンツとその復号に適用する暗号鍵は1つのディスクにまとまって格納されることになる。従って、例えば暗号化コンテンツを他のメディアに出力してコピーしても、暗号鍵が利用できないことになり、コンテンツの不正利用を効果的に防止することができる。
【0136】
[4.その他の実施例について]
グルーブ信号に対する付加情報の重畳記録におけるビット値に応じた位相誤差設定態様については、先に図4を参照して説明した構成の他、様々な設定が可能である。
【0137】
図4を参照して説明した例は、
ビット=1の場合に、+方向の位相誤差を設定したグルーブ信号、
ビット=0の場合に、−方向の位相誤差を設定したグルーブ信号、
このような設定でグルーブ信号を記録し、これらの位相誤差に基づいてビット値判別を行う例である。
【0138】
ビット値と位相誤差との対応関係は、様々な設定が可能であり、上述の逆の設定や、ビット値と、複数の位相誤差パターンとを対応付ける設定なども可能である。図12にその一例を示す。
【0139】
図12は先に説明した図4と同様、グルーブ信号の記録処理と再生処理例について示した図である。図12の例は、
ビット=1の場合に、先行する+方向位相誤差設定グルーブ信号と後続の−方向位相誤差設定グルーブ信号、
ビット=0の場合に、先行する−方向位相誤差設定グルーブ信号と後続の+方向位相誤差設定グルーブ信号、
このような設定でグルーブ信号を記録した例である。
【0140】
図12に示す例は以下のような設定例を示している。
t1〜t2:+方向位相誤差設定グルーブ信号
t2〜t3:−方向位相誤差設定グルーブ信号
このt1〜t3区間のグルーブ信号によって、ビット値=1を示している。
t3〜t4:−方向位相誤差設定グルーブ信号
t4〜t5:+方向位相誤差設定グルーブ信号
このt3〜t5区間のグルーブ信号によって、ビット値=0を示している。
【0141】
図12上段に示すように、グルーブ信号の記録処理に際しては、付加情報の構成ビットがビット値=1の場合と0の場合において、上記設定に従った移送誤差を持つグルーブ信号を生成して記録する。
【0142】
再生処理に際しては、再生装置は、グルーブ信号の読み取りを所定のサンプリングタイム(T)間隔で実行し、図12下段に示すように、各サンプリングタイムにおいて読み取られた信号の値を、順次加算する積分処理を行う。この積分処理によって、一定区間(例えばt1〜t2)において読み取られたグルーブ信号の位相誤差の方向(+,−)を判定する。
【0143】
例えば、再生装置は以下のような処理を行う。
t1〜t2:読み取りグルーブ信号に基づく位相誤差判定結果を蓄積(積分)し、+方向の位相誤差が設定された区間であると判断する。
t2〜t3:読み取りグルーブ信号に基づく位相誤差判定結果を蓄積(積分)し、−方向の位相誤差が設定された区間であると判断する。
このt1〜t3区間において、先行する+方向位相誤差設定グルーブ信号と後続の−方向位相誤差設定グルーブ信号の組み合わせが検出されたことに基づいて、ビット値[1]と判定する。
【0144】
次に、
t3〜t4:読み取りグルーブ信号に基づく位相誤差判定結果を蓄積(積分)し、−方向の位相誤差が設定された区間であると判断する。
t4〜t5:読み取りグルーブ信号に基づく位相誤差判定結果を蓄積(積分)し、+方向の位相誤差が設定された区間であると判断する。
このt3〜t5区間において、先行する+方向位相誤差設定グルーブ信号と後続の−方向位相誤差設定グルーブ信号の組み合わせが検出されたことに基づいて、ビット値[0]と判定する。
【0145】
このような処理を実行することで、例えば64ビットや128ビットの鍵を構成するビット値をすべて正確に取得することができる。
【0146】
なお、位相誤差設定方向が、[+][−][+][−][+][−]といったように設定されると先行と後続するグルーブ信号区間を判別することができなくなる可能性が発生するが、例えば、位相誤差を設定しない信号区間を利用することで、この問題は解決できる。例えば位相誤差を設定しない区間を[0]として、以下のような設定のグルーブ信号を記録する。
[+][−][0][+][−][0][+][−][0][−][+]
このような信号を記録し[0]を区切り信号として利用する。
【0147】
この設定により、再生時に、[+],[−]のペアのいずれが先行するグルーブ信号であるかを判別することが可能となり、上記信号の場合、
1110・・・・
上記ビット列であることの判別処理が可能となる。
【0148】
なお、図12に示す例は、+−の2つの異なる位相誤差設定グルーブ信号の配列でビット値(0,1)を識別する構成として説明したが、さらに、
[+][+][−]をビット値=1、
[−][−][+]をビット値=0、
とする設定など、多様な設定が可能である。
【0149】
以上、特定の実施例を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0150】
また、明細書中において説明した一連の処理はハードウェア、またはソフトウェア、あるいは両者の複合構成によって実行することが可能である。ソフトウェアによる処理を実行する場合は、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。例えば、プログラムは記録媒体に予め記録しておくことができる。記録媒体からコンピュータにインストールする他、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介してプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることができる。
【0151】
なお、明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上、説明したように、本発明の一実施例の構成によれば、暗号鍵などの秘匿性の高い付加情報をディスクに記録されるグルーブ信号中に、読み取り困難性と高精度な読み取りの双方を実現させる重畳記録を行うことが可能となる。付加情報の記録に際してビット値に応じた位相誤差を設定したグルーブ信号を記録し、付加情報の読み取り時には、所定区間のグルーブ信号の位相誤差を積分処理して、各区間内のグルーブ信号の位相誤差方向を判別する構成とした。このような処理により読み取り困難性を高めるとともに、精度の高い読み取りを実現する付加情報の記録再生を実現した。
【符号の説明】
【0153】
100 記録媒体製造装置
102 記録信号生成部
103 記録部
120 付加情報
122 変調信号生成部
123 位相誤差設定信号生成部
125 アドレス情報
130 マスタディスク
150 ディスク
201 再生部
202 信号解析部
204 復号処理部
221 復調部
222 位相誤差検出部
223 ビット値判定部
301 記録再生部
302 信号解析部
304 暗号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加情報を記録するグルーブ信号を生成する記録信号生成部と、
前記記録信号生成部の生成した記録信号をマスタディスクに記録する記録部を有し、
前記記録信号生成部は、
前記付加情報を構成する各ビット値に応じた位相誤差設定態様を決定し、
前記記録信号の所定区間単位で前記付加情報を構成する各ビット値に応じた位相誤差を設定した記録信号を生成する記録媒体製造装置。
【請求項2】
前記記録信号生成部は、
前記付加情報のビット値が0の場合と1の場合に応じて、前記グルーブ信号に設定する位相誤差の方向、または方向の組み合わせを異なる態様に設定した記録信号を生成する請求項1に記載の記録媒体製造装置。
【請求項3】
前記付加情報は、前記ディスクに記録されるコンテンツの暗号化処理または復号処理に適用する暗号鍵を含む情報である請求項1または2に記載の記録媒体製造装置。
【請求項4】
ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取る再生部と、
前記再生部の再生信号の解析を行う信号解析部を有し、
前記信号解析部は、
前記グルーブ信号に含まれる位相誤差方向を、所定信号区間単位で判別して判別結果に基づいて前記グルーブ信号に含まれる付加情報の構成ビット値の判定を行う構成である情報再生装置。
【請求項5】
前記信号解析部は、
前記グルーブ信号のゼロクロス点の前後のサンプリング点の検出値を用いて位相誤差指標値を算出し、該位相誤差指標値を前記所定信号区間単位で積分して得られる結果と予め設定した閾値との比較により、前記所定信号区間における位相誤差の設定方向を判別する処理を行なう請求項4に記載の情報再生装置。
【請求項6】
前記情報再生装置は、さらに、
前記信号解析部の解析した付加情報に含まれる暗号鍵を適用して、前記ディスクに記録された暗号化コンテンツの復号処理を行う復号処理部を有する請求項4または5に記載の情報再生装置。
【請求項7】
ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取る再生部と、
前記再生部においてディスクから読み取られたグルーブ信号に含まれる位相誤差方向を所定信号区間単位で判別し、判別結果に基づくビット値判定処理により前記グルーブ信号に重畳記録された暗号鍵を解析する信号解析部と、
前記信号解析部の解析した暗号鍵を適用してコンテンツの暗号化処理を実行する暗号処理部と、
前記暗号処理部の生成した暗号化コンテンツを前記ディスクに記録する記録部を有する情報記録装置。
【請求項8】
前記信号解析部は、
前記グルーブ信号のゼロクロス点の前後のサンプリング点の検出値を用いて位相誤差指標値を算出し、該位相誤差指標値を前記所定信号区間単位で積分して得られる結果と予め設定した閾値との比較により、前記所定信号区間における位相誤差の設定方向を判別する処理を行なう請求項7に記載の情報記録装置。
【請求項9】
付加情報を記録するために利用されるグルーブ信号を記録した情報記録媒体であり、
前記グルーブ信号は、所定信号区間単位で付加情報の構成ビット値に応じた異なる態様の位相誤差が設定された付加情報重畳信号として記録され、
再生装置において前記位相誤差の設定態様の検出に基づいて前記付加情報を読み取ることを可能とした情報記録媒体。
【請求項10】
前記グルーブ信号は、前記付加情報のビット値が0の場合と1の場合に応じて、前記グルーブ信号に設定する位相誤差の方向または方向の組み合わせを異なる態様に設定した信号である請求項9に記載の情報記録媒体。
【請求項11】
前記付加情報は、前記ディスクに記録されるコンテンツの暗号化処理または復号処理に適用する暗号鍵を含む情報である請求項9または10に記載の情報記録媒体。
【請求項12】
記録媒体製造装置において実行する情報記録媒体製造方法であり、
記録信号生成部が、付加情報を記録するグルーブ信号を生成する記録信号生成ステップと、
記録部が、前記記録信号生成ステップにおいて生成した記録信号をマスタディスクに記録する記録ステップを有し、
前記記録信号生成ステップは、
前記付加情報を構成する各ビット値に応じた位相誤差設定態様を決定し、
前記記録信号の所定区間単位で、前記付加情報を構成する各ビット値に応じた位相誤差を設定した記録信号を生成するステップを有する情報記録媒体製造方法。
【請求項13】
情報再生装置において実行する情報再生方法であり、
再生部が、ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取る再生ステップと、
信号解析部が、前記再生ステップにおける再生信号の解析を行う信号解析ステップを有し、
前記信号解析ステップは、
前記グルーブ信号に含まれる位相誤差方向を、所定信号区間単位で判別して判別結果に基づいて、前記グルーブ信号に含まれる付加情報の構成ビット値の判定を行うステップを有する情報再生方法。
【請求項14】
情報記録装置において実行する情報記録方法であり、
再生部が、ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取る再生ステップと、
信号解析部が、前記再生ステップにおいてディスクから読み取られたグルーブ信号に含まれる位相誤差方向を所定信号区間単位で判別し、判別結果に基づくビット値判定処理により前記グルーブ信号に重畳記録された暗号鍵構成ビット情報を解析する信号解析ステップと、
暗号処理部が、前記信号解析ステップにおいて解析した暗号鍵を適用してコンテンツの暗号化処理を実行する暗号処理ステップと、
記録部が、前記暗号処理ステップにおいて生成した暗号化コンテンツを前記ディスクに記録する記録ステップを有する情報記録方法。
【請求項15】
情報再生装置において情報再生処理を実行させるプログラムであり、
再生部に、ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取らせる再生ステップと、
信号解析部に、前記再生ステップにおける再生信号の解析を行わせる信号解析ステップを有し、
前記信号解析ステップは、
前記グルーブ信号に含まれる位相誤差方向を、所定信号区間単位で判別して判別結果に基づいて、前記グルーブ信号に含まれる付加情報の構成ビット値の判定を行わせるステップを有するプログラム。
【請求項16】
情報記録装置において情報記録処理を実行させるプログラムであり、
再生部に、ディスクに記録されたグルーブ信号を読み取らせる再生ステップと、
信号解析部に、前記再生ステップにおいてディスクから読み取られたグルーブ信号に含まれる位相誤差方向を所定信号区間単位で判別させ、判別結果に基づくビット値判定処理により前記グルーブ信号に重畳記録された暗号鍵構成ビット情報を解析させる信号解析ステップと、
暗号処理部に、前記信号解析ステップにおいて解析した暗号鍵を適用してコンテンツの暗号化処理を実行させる暗号処理ステップと、
記録部に、前記暗号処理ステップにおいて生成した暗号化コンテンツを前記ディスクに記録させる記録ステップを有するプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−23051(P2011−23051A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165145(P2009−165145)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】