説明

情報記録装置及び情報記録方法

【課題】瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上すること。
【解決手段】情報記録装置は、記録制御手段と、管理手段と、更新手段と、決定手段と、書き換え手段とを具備する。記録制御手段は、磁気記録媒体に対してのトラック群を単位とする瓦記録を制御する。管理手段は、互いに隣り合う複数のトラック群それぞれに対して2つ以上のカウンタを対応付けて管理する。更新手段は、第1トラック群への情報の記録に応じて、当該第1トラック群の隣の第2トラック群に対応付けられた2つ以上カウンタのうちの1つのカウンタを更新する。決定手段は、更新された1つのカウンタの値に基づいて第2トラック群の属性を決定する。書き換え手段は、決定された属性に基づいて前記第2トラック群に記録された情報を書き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記録媒体に情報を記録する情報記録装置及び情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録装置の一例である磁気ディスク装置(以下、HDDとも称する)の高記録容量化を実現するための様々な技術が開発されている。この技術の一つに“瓦記録”と称される記録技術がある。瓦記録は、磁気ディスクへの情報の記録に際して、記録トラックを隣接トラックの一部に対して重ねて記録する記録方式である。瓦記録の採用により、TPI(Track Per Inch)をより向上することが可能となる。
【0003】
瓦記録では、複数の隣接するトラックからなるトラック群(以下、バンドとも称する)が記録単位として定義される。また、情報の記録が可能なバンドがスペアバンドとして少なくとも一つ確保される。あるバンドに記録された情報を更新する(書き換える)場合、更新対象の情報は、読み出されたバンドでなくスペアバンドに書き換えられる。そして、更新対象の情報が記録されていたバンドは、新たなスペアバンドとして利用される。つまり瓦記録では、スペアバンドの位置が転々と移動することになる。
【0004】
またHDDでは、記録トラックからの磁気的干渉により、記録トラックの隣接トラックの情報保持に影響を及ぼすATI(Adjacent Track Interference)と呼ばれる問題が発生することがある。ATIにより、記憶された情報が破壊されることもある。例えば、瓦記録のようにTPIが大きくなるほど、ATIの問題が顕著になる。そこで、ATIが発生する前に、影響を受けそうなトラックに記録された情報を更新する(書き換える)ことでATIの問題を回避することが行われていた。例えば、あるトラックの隣接トラックの記録回数が所定回数を越えた場合に、当該トラックに記録された情報が更新されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−182406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし従来は、瓦記録が適用されたHDDにおいて、バンド単位で記録回数がカウントされることがあった。あるバンドについて、当該バンドの両隣のバンドへの記録回数は合算されてカウントされ、合算のカウント値が所定回数となると、当該バンドの情報が書き換えられていた。このとき、当該バンドに記録された情報の更新が本来必要なタイミングよりも前に行われることがあった。換言すると、あるバンドの両隣のバンドへの記録により、当該バンドの情報の更新が必要以上に頻繁に行われることがあった。
【0007】
前述したように、瓦記録ではバンド単位で情報の書き換えが行われるために、情報の更新が頻繁に実行されると、通常の記録方式が適用されたHDDと比較してパフォーマンスが低下する。すなわち従来は、瓦記録が適用されたHDDにおいて、情報の更新が頻繁に発生することがあるために、HDDの記録動作に係るパフォーマンスを向上することが困難であった。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上することができる情報記録装置及び情報記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の情報記録装置は、記録制御手段と、管理手段と、更新手段と、決定手段と、書き換え手段とを具備する。記録制御手段はトラックを有する磁気記録媒体に対して、隣接するトラック同士の一部を重ね、且つ、隣接する複数のトラックからなるトラック群を単位として記録する瓦記録により情報を記録するように制御する。管理手段は互いに隣り合う複数のトラック群それぞれに対して2つ以上のカウンタを対応付けて管理する。更新手段は前記複数のトラック群のうちの第1トラック群への前記情報の記録に応じて、当該第1トラック群の隣の第2トラック群に対応付けられた2つ以上カウンタのうちの1つのカウンタを更新する。決定手段は前記更新された1つのカウンタの値に基づいて、前記第2トラック群の属性を決定する。書き換え手段は前記決定された属性に基づいて、前記第2トラック群に記録された情報を書き換える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る情報記録装置としての磁気ディスク装置(HDD)を備える電子機器の構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態に係るHDDで実行される瓦記録、及び、当該瓦記録に際してのカウンタ管理の一つの態様を説明するための概念図。
【図3】本実施形態に係るコントローラに備えられ、瓦記録、及び、当該瓦記録に際してのカウンタ管理を実行するモジュールの一例を説明するためのブロック図。
【図4】本実施形態に係るHDDで実行される、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の動作を説明するためのフローチャート。
【図5】本実施形態に係るHDDで実行される、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の第1の具体例を示す概念図。
【図6】本実施形態に係るHDDで実行される、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の第2の具体例を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る情報記録装置としての磁気ディスク装置(以下、HDDとも称する)10を備える電子機器150の構成を示すブロック図である。また電子機器150はホスト装置100を備えている。HDD10は、通信媒体(ホストI/F)120を介してホスト装置100と接続され、ホスト装置100の記憶モジュールとして機能する。ホストI/F120は、ホスト装置100とHDD10とを接続し、ホスト装置100とHDD10との間のデータ及びコマンドの送受に係る通信に利用される。例えば、電子機器150は、パーソナルコンピュータであり、ホスト装置100は、パーソナルコンピュータに備えられるチップセットICである。
【0012】
本実施形態に係るHDD10は、磁気ディスク1、スライダ2、アーム3、VCM(ボイスコイルモータ)4、及びSPM(スピンドルモータ)5などの機構部を有する。またHDD10は、モータドライバ21、ヘッドIC22、NVRAM43、及びコントローラ60などの回路系ブロックを備える。コントローラ60は、リードライトチャネルIC(以下、RDCとも称する)31、CPU41、RAM42、及びHDC(Hard Disc Controller)50を含む。
【0013】
本実施形態に係るHDD10では、スライダ2に備えられたライトヘッド(不図示)により、磁気ディスク1の記録面に情報が記録される。磁気ディスク1の記録面への情報の記録には、瓦記録と称される記録方式が適用される。瓦記録は、磁気ディスク1で定義されるトラックについて、隣接するトラックの一部を重ねて記録する(一部を上書きする)記録方式である。瓦記録では、複数の隣接するトラックからなるトラック群(以下、バンドとも称する)が記録単位として定義される。バンドに係る複数のトラックのうちの途中のトラックを記録し直すことはできず、バンドを構成するトラック群全体が書き直される。
【0014】
またHDD1は、バンド毎に当該バンドの両隣のバンドに対応付けた2つのカウンタを管理する。このカウンタは、あるバンドの両隣のバンドへの記録によるATI(Adjacent Track Interference)の問題から、当該バンドに記録された情報を保護するために利用される。このバンド毎の2つのカウンタの利用により、本実施形態に係るHDD10は、瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上することができる。
【0015】
磁気ディスク1は、SPM5に固定され、SPM5が駆動することで回転する。磁気ディスク1の少なくとも一面は磁気的に情報が記録される記録面である。記録面には例えば同心円の複数のトラックが定義され、各トラックはサーボ領域とデータ領域とを有する。サーボ領域には、磁気ディスク1の記録面上での物理的なアドレス情報が記録されている。また、サーボ情報に記録されたアドレス情報に基づいて、HDD10に記録されるべき情報がデータ領域に記録される。本実施形態では、磁気ディスク1のデータ領域に対する情報の記録方式として瓦記録が適用される。磁気ディスク1の記録面には、複数のトラックからなるバンドが複数定義される。
【0016】
スライダ2は、磁気ディスク1の記録面に対応するようにアーム3の一端に備えられる。スライダ2は、リードヘッド(不図示)及びライトヘッド(不図示)を備えている。リードヘッド(不図示)は、磁気ディスク1の記録面に磁気記録された信号を読み取る。読み取られた信号は、アーム3上の導体パターンを介してヘッドIC22へ出力される。ライトヘッド(不図示)は、ヘッドIC22からアーム3上の導体パターンを介して入力されるライト信号(ライト電流)に応じて、磁気ディスク1の記録面に磁気記録する。
【0017】
アーム3は、一端にスライダ2、他端に軸受部(不図示)を備えている。アーム3は、VCM4への駆動電流の供給に応じて、軸受部(不図示)を回転中心として回転し、磁気ディスク1の記録面上でスライダ2を半径方向に移動させる。
【0018】
VCM4は、モータドライバ21から供給される駆動信号(電流)に応じて駆動し、アーム3を回転させる。
SPM5は、モータドライバ21から供給される駆動信号(電流)に応じて駆動し、磁気ディスク1を回転させる。
モータドライバ21は、コントローラ60(さらに具体的にはCPU41)からの制御信号に基づいて、VCM4を駆動するための駆動信号(電流)をVCM4へ、SPM5を駆動するための駆動信号(電流)をSPM5へ供給する。
【0019】
ヘッドIC22は、スライダ2に備えられたリードヘッド(不図示)からアーム3上の導体パターンを介して入力された信号を増幅し、増幅した信号をリード情報としてコントローラ60(さらに具体的にはRDC31)に出力する。またヘッドIC22は、コントローラ60(RDC31)から入力された記録情報に応じたライト信号(ライト電流)を、スライダ2に備えられたライトヘッド(不図示)へ、アーム3上の導体パターンを介して出力する。
【0020】
コントローラ60は、RDC31、CPU41、RAM42、及びHDC50等を含むSoC(System On Chip)として構成される。コントローラ60がRAM42を含まず、コントローラ60の外部にRAM42が接続される構成であってもよい。コントローラ60は、磁気ディスク1の記録面に定義される複数のバンドそれぞれに対して2つのカウンタを管理する。
【0021】
RDC31は、ヘッドIC22から入力されたリード情報に所定の処理を施して復号化し、復号化した情報をHDC50へ出力する。またRDC31は、HDC50から入力された記録対象の情報に所定の処理を施して符号化し、この符号化した情報を記録情報としてヘッドIC22へ出力する。RDC31は、リード情報からサーボ領域を示すサーボ区間を検出し、検出したサーボ区間での信号から位置情報を抽出する。抽出された位置情報はCPU41へ出力される。RDC31は、これらの処理のためにRAM42をワークメモリとして利用する。
【0022】
CPU41は、NVRAM43に記憶されたプログラムを実行することでHDD10に備えられた各ブロックを制御するプロセッサである。例えばCPU41は、VCM4及びSPM5の回転制御処理、及び磁気ディスク1に対する情報の記録処理を制御する。本実施形態では、CPU41は、コントローラ60がサーボコントローラ、又はリードライトコントローラとして動作するためのプログラムを実行する。コントローラ60がリードライトコントローラとして動作する場合、瓦記録にて磁気ディスク1へ情報が記録される。またコントローラ60は、情報の記録に際して、磁気ディスク1の記録面に定義される複数のバンドへの記録の実行を管理する。CPU41は、このようなプログラムの実行においてRAM42をワークメモリとして利用する。
【0023】
RAM42は、RDC31、CPU41及びHDC50のワークメモリである。RAM42には揮発性メモリであるDRAMが適用される。
NVRAM43は、CPU41が実行するプログラムを記憶する不揮発性メモリである。NVRAM43に記憶されるプログラムは更新可能である。またNVRAM43は、CPU41で実行される処理で利用されるパラメータ値を記憶する。
【0024】
HDC50は、ホスト装置100との間で情報を送信及び受信する通信処理を実行する。HDC50は、RDC31から入力された復号化した情報に所定の処理を施して符号化し、符号化した情報を送信情報としてホスト装置100へ送信する。またHDC50は、ホスト装置100から受信した受信情報に所定の処理を施して復号化し、復号化した情報を記録対象の情報としてRDC31へ出力する。例えばHDC50は、ホスト装置100との間でSATA(Serial Advanced Technology Attachment)規格に準拠した通信処理を実行する。HDC50は、ホスト装置100から、データの記録を開始する論理アドレス及び記録データ長の情報を含むライトコマンドを受信した場合、受信したライトコマンドから論理アドレス及び記録データ長の情報を抽出する。抽出された論理アドレス及び記録データ長の情報はCPU41へ出力される。
【0025】
このような構成により、本実施形態に係るHDD10に備えられた複数のブロックによって、瓦記録方式で磁気ディスク1に情報が記録される。また情報の記録に際して、磁気ディスク1の記録面に定義される複数のバンドへの記録の実行が管理される。この管理では、バンド毎に当該バンドの両隣のバンドに対応付けた2つのカウンタが利用される。このバンド毎の2つのカウンタを利用することにより、本実施形態に係るHDD10は、瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上することができる。
【0026】
次に、図2を用いて、本実施形態に係るHDD10で実行される瓦記録、及び、当該瓦記録に際してのカウンタ管理の一つの態様を説明する。
図2は、本実施形態に係るHDD10で実行される瓦記録、及び、当該瓦記録に際してのカウンタ管理の一つの態様を説明するための概念図である。
図2に示した概念図のように、記録ディスク1の記録面には、内周側と外周側とが定義される。記録面では、内周側から外周側に向かって、複数のトラックからなる複数のバンドBn−1,Bn,Bn+1,Bn+2,…が順に配置される。複数のバンドBn−1,Bn,Bn+1,Bn+2,…には管理するための識別子が付されるが、内周側から外周側に向かう昇順である必要はない。バンドBnは、複数のトラックTr1,…,Trnを含む。バンドBnでは瓦記録が適用されるので、トラックTr1の一部にはトラックTr2が重ねられるようにして記録される。このトラックTr2は、トラックTr1に隣接するトラックである。
【0027】
バンドBnには2つのカウンタが対応付けられている。1つ目のカウンタCnt(Bn,in)は、バンドBnに含まれる複数のトラックのうち内周側に位置するトラックTr1に対して対応付けられている。2つ目のカウンタCnt(Bn,out)は、バンドBnに含まれる複数のトラックのうち外周側に位置するトラックTrnに対して対応付けられている。すなわち、カウンタCnt(Bn,in)は、バンドBn−1への記録によるバンドBn(さらに詳細にはトラックTr1)へのATIが考慮されている。またCnt(Bn,out)はバンドBn+1への記録によるバンドBn(さらに詳細にはトラックTrn)へのATIが考慮されている。換言すると、バンドBnに係る2つのカウンタCnt(Bn,in)とカウンタCnt(Bn,out)とは、バンドBnの両隣のバンドBn−1,Bn+1に対応付けて管理されている。バンドBn−1,Bn+1,Bn+2,…についても、同様にそれぞれのバンドに2つのカウンタが対応付けられている。
【0028】
なお、2つのカウンタCnt(Bn,in)とカウンタCnt(Bn,out)とは、バンドBnに含まれる複数のトラックのうちの最も外側のトラックTr1とトラックTrnとに対応付けられるのでなく、これらのトラック近傍のトラックに対応付けられてもよい。また、2つのカウンタCnt(Bn,in)とカウンタCnt(Bn,out)とは、トラックでなくバンドBnの内周側及び外周側の記録領域に対して対応付けられてもよい。さらに、バンドに対して対応付けられるカウンタの数は、2つに限らず2つ以上であればよい。
【0029】
このようにして、バンド毎に2つのカウンタが対応付けられることにより、本実施形態に係るHDD10は、瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上することができる。
【0030】
次に、図3を用いて、本実施形態に係るコントローラ60に備えられ、瓦記録、及び、当該瓦記録に際してのカウンタ管理を実行するモジュールの一例を説明する。
図3は、本実施形態に係るコントローラ60に備えられ、瓦記録、及び、当該瓦記録に際してのカウンタ管理を実行するモジュールの一例を説明するためのブロック図である。
【0031】
コントローラ60は、瓦記録、及び、当該瓦記録に際してのカウンタ管理を実行するモジュールとして、記録処理モジュール301、管理モジュール302を備える。換言すると、図1を用いて説明したとおり、CPU41が所定のプログラムを実行することで、コントローラ60が、前述した複数のモジュールを備える。すなわち、記録処理モジュール301、及び管理モジュール302は、CPU41によって実行されるプログラム(ソフトウェア)と、少なくとも、RDC31とHDC50とを含むハードウェアとの協働によって実現されるモジュールである。なお前述したとおり、RAM42は、コントローラ60の外部に接続されてもよい。
【0032】
記録処理モジュール301は、瓦記録を実行するモジュールである。記録処理モジュール301は、磁気ディスク1の記録面に対して、バンド単位で瓦記録を実行する。記録処理モジュール301は、管理モジュール302が管理する情報に基づいて、瓦記録を実行する。
【0033】
管理モジュール302は、バンド毎に、当該バンドに対して実行された記録(瓦記録)に関する情報を記録関連情報として管理する。記録関連情報は、RAM42に格納されるが、所定のタイミングで磁気ディスク1の記録面の一部(例えば、管理情報記録領域)、又は、NVRAM43といった不揮発性メモリにも格納される。本実施形態では、記録関連情報がRAM42に格納される例として説明する。管理モジュール302は、バンド毎の記録回数をカウントし、カウントした記録回数を対象バンドに係る記録関連情報に対応付けて管理する。管理モジュール302は、記録処理モジュール301に対して記録関連情報を提供する。
【0034】
このようにして、バンド毎に対応付けられた2つのカウンタを利用して、バンド毎の記録回数が管理された瓦記録が実行されるので、本実施形態に係るHDD10は、瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上することができる。
【0035】
次に、図4を用いて、本実施形態に係るHDD10で実行される、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の動作を説明する。
図4は、本実施形態に係るHDD10で実行される、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の動作を説明するためのフローチャートである。
本実施形態では、バンド単位での瓦記録処理が実行されると、記録されたバンドに対応付けられたカウンタ、及び、当該バンドの両隣のバンドに対応付けられたカウンタそれぞれのカウンタ値が更新される。更新されたカウンタ値は所定の閾値と比較され、この比較結果に応じて対象となるバンドの属性が決定される。また対象バンドの属性を決定する際には、対象バンドの隣のバンドがスペアバンドであるか否かが考慮される。対象バンドの属性は、記録関連情報のうちの一つの情報として管理される。
【0036】
瓦記録では、情報の記録が可能なバンドがスペアバンドとして少なくとも一つ確保される。例えば、あるバンドの情報の書き換えが行われる場合、読み出された情報は、情報が記録されていた元のバンドに書き戻されるのではなく、スペアバンドに書き写される。その後、元のバンドは、新たなスペアバンドとして利用される。こうして瓦記録では、スペアバンドの位置が転々と移動することになる。本実施形態は、瓦記録において不可避であった、情報の書き換えに伴う記録動作に係るHDD10のパフォーマンスを向上する。
【0037】
コントローラ60がリードライトコントローラとして動作することで、バンドnへの瓦記録処理が行われる(S401)。バンドnへの瓦記録処理が行われると、バンドnに対応付けられた2つのカウンタ値がクリアされる(S402)。またコントローラ60は、バンドnの両隣のバンドn−1,n+1それぞれに対応付けられているカウンタのうち、バンドn側のカウンタについて、それぞれのカウンタ値を1つUPして更新する(S403)。そして、更新されたカウンタ値が、所定の閾値以上であるかが判定される(S404)。所定の閾値は、隣のバンドへの記録によるATIの問題が発生しない回数として設定される。
【0038】
更新されたカウンタ値が、所定の閾値以上である場合(S404のYes)、バンドn−1又はバンドn+1の隣であってバンドnとは反対側で隣り合うバンドが、スペアバンドであるか否かが判定される(S405)。この隣のバンドが、スペアバンドである場合(S405のYes)、対象のバンド(バンドn−1又はバンドn+1)は書き換え優先バンドとして管理される(S406)。書き換え優先バンドは、例えばデータリフレッシュ等による、情報の書き換え処理において、優先的に情報の書き換えが実行されるバンドである。
【0039】
一方、隣のバンドが、スペアバンドでない場合(S405のNo)、対象のバンド(バンドn−1又はバンドn+1)は書き換え非優先バンドとして管理される(S408)。書き換え非優先バンドは、情報の書き換え処理において、書き換え優先バンドの後で非優先的に情報の書き換えが実行されるバンドである。
【0040】
対象のバンドが、書き換え優先バンド、又は、書き換え非優先バンドとして管理された後、管理された優先度に基づいて、対象のバンドの情報の書き換えが実行される(S407)。この情報の書き換えにおいても、バンド毎でのカウンタ管理が実行される。その後、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理は終了する。また、更新されたカウンタ値が、所定の閾値以上であるかが判定され(S404)、更新されたカウンタ値が、所定の閾値以上でない場合(S404のNo)も、瓦記録処理は終了する。
【0041】
ここで、対象バンドの隣がスペアバンドであるか否かを判定する理由について説明する。例えば、情報の書き換えが必要であるバンドが複数あり、これらのうちのいくつかのバンドの隣にスペアバンドがある例を説明する。このような状態で、このスペアバンドに対して、情報の書き換えや新たな情報の記録が実行された場合、スペアバンドへの記録により、情報の書き換えが必要であるバンドに対応付けられたカウンタ値が、所定の閾値を越えてしまうことが発生し得る。つまり、隣のバンドがスペアバンドであるバンドに対しては、少なくとも、隣のバンドがスペアバンドでないバンドよりも優先的に情報の書き換えを実行する必要がある。
【0042】
なお、バンドnへの瓦記録処理が行われると、バンドnに対応付けられた2つのカウンタ値がクリアされる例を説明したが、バンドnに対応付けられた2つのカウンタ値がこれまでの値よりも小さな値に更新されてもよい。
【0043】
このようにして、本実施形態に係るHDD10では、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の動作が実行される。この処理では、具体的には、バンドへの記録に伴うカウンタ値の更新、更新されたカウンタ値の判定、この判定結果と対象バンドの隣がスペアバンドであるか否かに応じたバンドの属性決定、が実行される。すなわち、本実施形態に係るHDD10は、瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上することができる。
【0044】
次に、図5,6を用いて、本実施形態に係るHDD10で実行される、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の具体例を説明する。
図5は、本実施形態に係るHDD10で実行される、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の第1の具体例を示す概念図である。図6は、本実施形態に係るHDD10で実行される、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録処理の第2の具体例を示す概念図である。
【0045】
(第1の具体例)
図5(a)に示す概念図のように、バンドn−1の2つのカウンタ値は共に「1」、バンドn,n+1,n+2それぞれの2つのカウンタ値は共に「2」である状態を初期状態とする。この状態で、図5(b)に示す概念図のように、バンドnへの記録(瓦記録)が実行されると、バンドn−1,n,n+1に対応付けられたカウンタ値が更新される。具体的には、図5(c)に示す概念図のように、「2」であったバンドnの2つのカウンタ値はクリアされて「0」となる。また、バンドn−1については、対応付けられた2つのカウンタのうち外周側であって、バンドnに対応付けられたカウンタCnt(Bn−1,out)が、「1」から「2」に更新される。バンドn+1については、対応付けられた2つのカウンタのうち内周側であって、バンドnに対応付けられたカウンタCnt(Bn+1,in)が、「2」から「3」に更新される。また、バンドn+1の隣であって、バンドnとは反対側で隣り合うバンドn+2がスペアバンドでないので、バンドn+1は、書き換え非優先バンドとして管理される。
【0046】
(第2の具体例)
第2の具体例は、図6(a)〜図6(c)に示す概念図のとおり、バンドn+2がスペアバンドである点で第1の具体例とは異なる。図6(a)〜図6(c)に示す概念図は、図5(a)〜図5(c)に示す概念図と略同じであるので、詳細な説明は省略又は簡略化し、異なる点について詳細に説明する。
【0047】
図6(a)に示す概念図を初期状態とし、この状態で、図6(b)に示す概念図のように、バンドnへの記録(瓦記録)が実行されると、図6(c)に示す概念図のように、バンドn−1,n,n+1に対応付けられたカウンタ値が更新される。第2の具体例では、バンドn+1の隣であって、バンドnとは反対側で隣り合うバンドn+2がスペアバンドであるので、バンドn+1は、書き換え優先バンドとして管理される。
【0048】
このようにして、対応するカウンタ値に応じて情報の書き換えが必要と判断されたバンドの隣のバンドが、スペアバンドであるか否かにより、当該バンドの属性が決定される。従って、本実施形態に係るHDD10は、瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上することができる。
【0049】
以上説明したように本実施形態によれば、バンド毎でのカウンタ管理を伴う瓦記録によって磁気ディスク1に情報が記録される。この処理では、バンドへの記録に伴うカウンタ値の更新、更新されたカウンタ値の判定、この判定結果と対象バンドの隣がスペアバンドであるか否かに応じたバンドの属性決定、が実行される。バンド毎でのカウンタ管理を伴って瓦記録が実行されることで、情報の書き換えが本来必要とされる状態よりも早期に実行されることが回避される。従って本実施形態に係るHDD10によれば、瓦記録が適用された情報記録装置における記録動作に係るパフォーマンスを向上することができる。
【0050】
なお、少なくとも一つの実施形態を説明したが、説明した実施形態は一例として提示したものであり、発明の範囲はこの実施形態に限定されない。また、説明した実施形態は、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。さらに、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよく、さらに、異なる実施形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良い。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれ、特許請求の範囲に記載された発明と、その均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1…磁気ディスク、2…スライダ、3…アーム、4…VCM(ボイスコイルモータ)、5…SPM(スピンドルモータ)、10…磁気ディスク装置(HDD)、21…モータドライバ、22…ヘッドIC、31…リードライトチャネルIC(RDC)、41…CPU、42…RAM、43…NVRAM、50…HDC(Hard Disc Controller)、60…コントローラ、100…ホスト装置、120…通信媒体(ホストI/F)、150…電子機器、301…記録処理モジュール、302…管理モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックを有する磁気記録媒体に対して、隣接するトラック同士の一部を重ね、且つ、隣接する複数のトラックからなるトラック群を単位として記録する瓦記録により情報を記録するように制御する記録制御手段と、
互いに隣り合う複数のトラック群それぞれに対して2つ以上のカウンタを対応付けて管理する管理手段と、
前記複数のトラック群のうちの第1トラック群への前記情報の記録に応じて、当該第1トラック群の隣の第2トラック群に対応付けられた2つ以上カウンタのうちの1つのカウンタを更新する更新手段と、
前記更新された1つのカウンタの値に基づいて、前記第2トラック群の属性を決定する決定手段と、
前記決定された属性に基づいて、前記第2トラック群に記録された情報を書き換える書き換え手段と、
を具備する情報記録装置。
【請求項2】
前記更新手段は、前記第2トラック群の記録領域であって、前記第2トラック群に対応付けられた2つ以上のカウンタのうち前記第1トラック群により近い記録領域に対応付けられた1つのカウンタを更新する請求項1に記載の情報記録装置。
【請求項3】
前記更新手段は、前記第1トラック群への前記情報の記録に応じて、当該第1トラック群に対応付けられた2つ以上カウンタの値をより小さい値に更新する請求項1又は2に記載の情報記録装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記第2トラック群の隣であって第1トラック群とは反対側で隣り合う第3トラック群が、情報の記録が可能なスペアトラック群である場合、当該第2トラック群の属性として、優先的に情報の書き換えを必要とするトラック群であることを示す属性を決定する請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報記録装置。
【請求項5】
トラックを有する磁気記録媒体を具備する情報記録装置の情報記録方法であって、
前記磁気記録媒体に対して、隣接するトラック同士の一部を重ね、且つ、隣接する複数のトラックからなるトラック群を単位として記録する瓦記録により情報を記録するように制御し、
互いに隣り合う複数のトラック群それぞれに対して2つ以上のカウンタを対応付けて管理し、
前記複数のトラック群のうちの第1トラック群への前記情報の記録に応じて、当該第1トラック群の隣の第2トラック群に対応付けられた2つ以上カウンタのうちの1つのカウンタを更新し、
前記更新された1つのカウンタの値に基づいて、前記第2トラック群の属性を決定し、
前記決定された属性に基づいて、前記第2トラック群に記録された情報を書き換える情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−160232(P2012−160232A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19245(P2011−19245)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】