説明

情報記録貼付体、印刷シート及びその真偽判別方法

【課題】 高精度に真偽判別を行うことが可能な情報記録貼付体、印刷シート並びにその真偽判別方法を提供する。
【解決手段】 保護層1、中間層2、金属層3、及び接着層4を備え、保護層1は所定の誘電率をもつ材料を用いて最上層に配置し、中間層2は所定の誘電率を持つ材料を用いて、中間層と金属層とで形成するホログラム形成層のデザインに応じた凹凸を表面に形成し、金属層3は所定の導電率を持つ材料を用いて中間層の凹凸表面に配置して導電膜を構成することにより、中間層とで形成する凹凸のある鏡面がホログラム形成層の画像の主体となり、接着層4は所定の誘電率を持つ材料を用いて接着層自体に誘電体の特徴を持たせており、この情報記録貼付体を漏洩マイクロ波センサを用いて測定すると、検知電圧は、金属層の導電領域で中レベルを示し、それ以外の領域で低レベルを示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録貼付体、印刷シート及びその真偽判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂基材へ部分的に金属を付着した貼付体の一例として、デメタライズドOVDがある。近年、OVDの偽造はメタライズド技術を用いた方法が主流となっていることから、メタライズド技術では付与困難な複雑な輪郭や微小な模様をOVDに付与する技術としてデメタライズドOVDが用いられてきている。このような理由から、デメタライズドOVDは視覚的な真偽判別技術として、銀行券等セキュリティ製品に採用されるに至っている。
【0003】
また、セキュリティ製品にOVD以外の金属箔を貼付する場合も多く見られており、これらの場合においても樹脂基材へ部分的に金属を付着した構造体を作成する技術であるデメタライズド技術がセキュリティ製品に用いられている。
【0004】
しかしながら、銀行券等セキュリティ製品の真偽判別を正確に行うには、デメタライズドOVD等樹脂基材へ部分的に金属を付着した貼付体を機械的に真偽判別することが求められる。これまで、これらの貼付体を機械的に真偽判別する方法として、情報を埋め込んだホログラム等が提案されてきた(例えば、非特許文献1参照)。本技術は金属表面ヘサブミクロンの構造をレーザで直接形成し、固有情報を付与する技術である。本技術はブランド品の模造対策等において製品販売経路の識別に対して用いられている。
【0005】
回折素子やホログラム箔などを有する印刷物の検査において、例えば、セキュリティスレッドの基材に真空蒸着、化学的エッチング、レーザエッチング等の方法によって金属被膜を施し、その金属被膜を繰り返しのパターンで部分的に除去しそのセキュリティスレッドを付した紙を、マイクロ波検出器等に通した時に、セキュリティスレッドの繰り返しパターンを真正印刷物のパターンと比較して真偽判定をする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この技術は、それ以前のセキュリティスレッドが単にセキュリティスレッドが存在するか否か、あるいはセキュリティスレッド上に文字が存在するか否か、すなわち部分的に除去されているか否かを検出するものであるのに対し、一歩進んで繰り返しパターンで部分的に金属被膜を除去したセキュリティスレッドが一定のマイクロ波検出電圧の波形パターンを生じることに着目し、そのマイクロ波検出電圧の波形パターンを真正印刷物のそれと比較して真偽判別するものである。
【0007】
また、基材上に磁性層と導電層とを有するセキュリティスレッドであって、導電層に相対的にマイクロ波検知電圧が強い導電部を設け、相対的にマイクロ波検知電圧が強い導電部の位置と磁性層に記録した磁気データの位置とを一定の位置関係に配置したセキュリティスレッドと印刷物に相対的なずれによる磁気データの読取錯誤を防止するセキュリティスレッドが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この技術は、位相ずれにかかわらず機械による読み取り錯誤を防止し、磁性層はむろん、導電層にも情報伝達可能なデータを担持させられ、正逆方向の読み取り錯誤を防止できるものである。
【0009】
また、金属蒸着層の一部あるいは金属層とあらかじめ形成された感熱接着層の一部がレーザー加工によりスリット状又はメッシュ状に除去され、この除去部分が含まれる領域に擬似的な透明あるいは半透明に擬似透明ホログラムが形成されている金属密着型熱転写用ホログラムシート及びその加工方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0010】
【非特許文献1】Proceedings of SPIE Vol.4677(2002)Direct Write method to create DOVIDs in metal surfaces
【特許文献1】特許第2906352号公報(第1−5頁、第1−4図)
【特許文献2】特開2002−348799号公報(第1頁、第1図)
【特許文献3】特開2003−226085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1に記載された機械的真偽判別方法は、1枚当たりの単価が1ドルと極めて高価である。また、自動販売機等における機械処理では、搬送中における紙のばたつき等により機械的な真偽判別は困難であった。
【0012】
特許文献1に開示された技術では、繰り返しパターンで部分的に金属被膜を除去した安定スレッドが、一定のマイクロ波検出電圧の波形パターンを生じるようにしている。しかしながら、該スレッドは導電部分がある部分と除去されてない部分の2種類の領域の存在によって構成されているため、その検知電圧波形からは、導電性の有り無しに基づくアナログ電圧の変化が得られるのみである。このため、識別するために、この波形パターンをもとにして演算を行っても、正確に真偽を判別することが困難であった。さらに、波形パターンに搬送あばれやノイズが加わると、さらに不正確になるという問題があった。
【0013】
特許文献2に記載された技術では、導電層に相対的にマイクロ波検知電圧が高い導電部を設け、強いマイクロ波検知電圧を得るようにして、導電層にデータを担持させるとともに、磁気データ読み取り錯誤を防止している。
【0014】
特許文献3に開示された技術には、除去加工が施された領域は、金属蒸着型熱転写用ホログラムシートの裏が透けて見え、擬似的に透明シートとして機能し、金属蒸着層のうち除去されずに残存した部分はホログラム効果を保持するが、媒体に金属蒸着型熱転写用ホログラムを熱転写する場合、媒体上に記載された所定情報が透けて見えるように位置合わせをして転写しなければならない、という問題があった。
【0015】
しかしながら、この技術をホログラムなどの機械読み取り要素として用いる場合には、ホログラムなどが、光学変化を視認する目的から用紙の表面に貼り付けられるため、類似したアルミ箔を用紙表面に切り貼りした偽造やデータ変造が容易となるおそれがあった。
【0016】
本発明は上記事情にかんがみなされたものであり、高精度に真偽判別を行うことが可能な情報記録貼付体、印刷シート並びにその真偽判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の情報記録貼付体は、
樹脂基材の表面上に、少なくとも1つの導電体付着領域と少なくとも1つの導電体非付着領域とを有する情報記録貼付体であって、
前記導電体付着領域の少なくとも1つは長辺の長さが、所定の波長の1/2 (nは0以上の整数)であることを特徴とする。
【0018】
前記導電体付着領域が異方性形状を有することが望ましい。
【0019】
前記導電体付着領域が長方形又は楕円であってもよい。
【0020】
前記導電体付着領域を複数備え、前記導電体非付着領域を間に介在した状態で配列されたものであってもよい。
【0021】
前記導電体付着領域を複数備え、前記導電体非付着領域を間に介在した状態で、格子状に配列されたものであってもよい。
【0022】
前記導電体付着領域を複数備え、長辺の長さが前記所定の波長の1/2(nは0以上の整数) である前記導電体付着領域の周囲に、前記導電体非付着領域を間に介在した状態で、長辺の長さが前記所定の波長の1/2 (nは0以上の整数)と異なる前記導電体付着領域が少なくとも一つ配置されたものであってもよい。
【0023】
前記導電体付着領域を複数備え、長辺の長さが前記所定の波長の1/2 (nは0以上の整数)である前記導電体付着領域の周囲を囲むように、前記導電体非付着領域を間に介在した状態で、長辺の長さが前記所定の波長の1/2(nは0以上の整数) と異なる前記導電体付着領域が配置されたものであってもよい。
【0024】
前記導電体付着領域の少なくとも一つにホログラムが形成されていてもよい。
【0025】
本発明の印刷シートは、上記情報記録貼付体が貼付されたシートを備えることを特徴とする。
【0026】
本発明の情報記録貼付体の真偽判別方法は、
所定の波長を有するマイクロ波を導波管の漏えい孔から漏えいさせるステップと、
前記漏えい孔と相対するように前記情報記録貼付体を搬送させるステップと、
前記導波管中の前記マイクロ波を受信して電圧を測定することで、前記情報記録貼付体における前記導電体付着領域が有する導電特性及び前記基材及び前記導電体非付着領域が有する非導電体特性がそれぞれ与える前記マイクロ波への影響を測定するステップと、
前記受信電圧の測定結果と真正なる情報記録貼付体を測定したときの受信電圧とを比較することで、前記情報記録貼付体の真偽判別を行うステップと、
を備えることを特徴とする。
【0027】
前記所定の波長を有するマイクロ波を前記導波管の前記漏えい孔から漏えいさせるステップでは、前記マイクロ波の腹の部分を漏洩させることが望ましい。
【0028】
前記マイクロ波への影響を測定後、光学センサ、静電容量センサあるいは渦電流センサを用いて電圧波形を測定するステップを備え、
前記情報記録貼付体の真偽判別を行うステップでは、さらに前記電圧波形と、前記導波管中の前記マイクロ波を受信した電圧を比較することにより真偽判別を行ってもよい。
【0029】
前記マイクロ波への影響を測定後、前記情報記録貼付体に近赤外線光を照射して、前記情報記録貼付体を透過した前記近赤外線光の光量波形を測定するステップを備え、
前記情報記録貼付体の真偽判別を行うステップでは、さらに前記光量波形と、前記導波管中の前記マイクロ波を受信した電圧を比較することにより真偽判別を行ってもよい。
【0030】
前記マイクロ波への影響を測定後、前記情報記録貼付体に近赤外線光を照射して、前記情報記録貼付体を透過した前記近赤外線光の光量波形を測定するステップを備え、
前記情報記録貼付体の真偽判別を行うステップでは、前記光量波形から得られる光の非透過性と、前記導波管中の前記マイクロ波を受信した電圧から得られる電波のシールド性を比較することにより真偽判別を行ってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明における情報記録貼付体、印刷シート並びにその真偽判別方法によれば、高精度に真偽判別を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明の幾つかの実施の形態による情報記録貼付体、印刷シート並びにその真偽判別方法について、図面を用いて説明する。
ここで情報記録貼付体とは、ホログラム画像や回折格子画像等の光回折構造(OVD:Optical Variable Device)により光学的に画像を表現した技術及び金属箔等を含めたものを総称して、情報を担持させた情報記録媒体をいう。
【0033】
また、異方性のある形状とは、実例としては長方形や楕円が挙げられ、これらは最長部分の寸法を波長の1/2(nは0以上の整数)に設計すれば、長さ方向に沿って大きな電流が流れるため共振が得られるものである。これに対し、異方性のない形状としては、正方形や真円が挙げられ、これらは全方向に対象であるために大きな電流が流れる部分がないため共振が得にくいのである。
【0034】
本実施の形態による情報記録貼付体及び印刷シートは、樹脂基材へ部分的に金属を付着した情報記録貼付体、及びそれを紙等の印刷シートへ貼付したセキュリティ製品である。その真偽判別方法は、定在波を生成している導波管の漏えい孔からの漏えい波を用いて貼付体の金属付着領域の共振特性と遮蔽特性及び貼付体の金属非付着領域及び印刷シートの誘電特性を検知し、セキュリティ製品の真偽判別を行うものである。
【0035】
第1の実施の形態による情報記録貼付体の平面構造を図1(a)に、縦断面構造を図1(b)に示す。
【0036】
この情報記録貼付体Aは導電性のある領域と誘電体のある領域とを備え、保護層1、中間層2、金属層3、接着層4を含んでいる。中間層2にはエンボスが施されており、この中間層2とこれに積層されている金属層3とがホログラム層を形成している。ホログラムの機能としては、保護層側から入射した光が、金属層3で反射して再び保護層1を透過して視認する際に、凹凸のある中間層2の表面に金属層3を形成したため、凹凸に応じた光学的に変化する画像が得られる。
【0037】
本実施の形態においては、中間層2の凹凸の形状及び光学的変化の度合いが、機械による読み取りに影響を与えるものではないため、光学的な変化の詳細については説明を省略する。また、中間層2に凹凸を施さない場合は、中間層2と金属層3とが単に積層されているだけであるのでホログラム形成としての光学的変化の機能はない。しかし、情報記録媒体としての機能はもっているので、この場合は金属箔による情報記録貼付体として用いることができる。
【0038】
次に、本実施の形態における情報記録貼付体を構成する各層について述べる。
情報記録貼付体Aにおいて、保護層1、中間層2及び接着層4に用いる材料としては所定の誘電率を有する誘電体を用い、金属層3に用いる材料としては所定の導電率を有する導電材料を用いる。本実施の形態において、金属層3は導電領域に円形の形状で配置し、保護層1、中間層2及び接着層4は金属層3より大きな楕円形の形状で配置している。
【0039】
図1(c)に、本情報記録貼付体Aを貴重品等に接着剤層を介して貼り付け、センサを用いて情報記録貼付体を読み取った時の検知電圧を示す。
金属層3より大きな楕円形の形状で配置されている保護層1、中間層2及び接着層4の部分の誘電体領域の検知電圧は基底の0Vより低いレベルで、金属層部分の導電体領域の検知電圧は基底の0Vより高いレベルで検知される。
【0040】
よって、貴重品等に貼付された情報記録貼付体の真正を確認する際には、センサを用いて読み取りを行った結果、楕円形の誘電体領域が検知されること、楕円形の中の規定位置に円形の導電性領域が検知されること、の二つの条件が揃った場合にのみ、真正であると判別できる。
【0041】
本実施の形態においては、情報記録貼付体を形成している誘電体領域を楕円形に、導電体領域を円形としているが、これに限定されず、導電体領域が誘電体領域によって囲まれている形状であればよい。あるいは、両者が隣接していてもよい。
【0042】
第2の実施の形態による情報記録貼付体の構造を図2(a)、(b)に示す。
この情報記録貼付体Bは導電性のある領域と誘電体のある領域から構成され、保護層1、中間層2、金属層5、6、接着層4より形成されており、保護層1、中間層2及び接着層4に用いる材料としては所定の誘電率を有する誘電体を用い、金属層に用いる材料としては所定の導電率を有する導電材料を用いる。
【0043】
本実施の形態において、金属層は導電領域に第一金属層5として円形、第二金属層6として第一金属層5の両側に三日月形の2種類の形状で配置し、保護層1、中間層2及び接着層4は金属層より大きな楕円形の形状で配置している。
つまり、本実施の形態において、金属層として導電領域に一つの円形の形状及び2つの三日月形、の合計三つを配置している。
【0044】
図2(c)に、本情報記録貼付体Bを貴重品等に接着剤層を介して貼り付け、センサを用いて読み取った時の検知電圧を示す。
第1の金属層5、第2の金属層6より大きな楕円形の形状で配置されている保護層1、中間層2及び接着層4の部分の誘電体領域の検知電圧は基底の0Vより低いレベルで、第1及び第2の金属層部分の導電体領域の検知電圧は基底の0Vより高い同レベルで検知される。
【0045】
したがって、本情報記録貼付体の真正を確認する際に、センサを用いて読み取りを行った結果、楕円形の誘電体領域が検知されること、楕円形の中の規定位置に円形の導電性領域が検知されること、楕円形の中の規定位置に三日月型の導電性領域が規定位置に検知されること、の3つの条件が揃った場合のみ、真正であると判別できる。
【0046】
さらに、第3の実施の形態による情報記録貼付体の構造を図3(a)、(b)に示す。
この情報記録貼付体Cは導電性のある領域と誘電体のある領域から構成され、保護層1、中間層2、金属層5、6、接着層4より形成されており、保護層1、中間層2及び接着層4に用いる材料としては所定の誘電率を有する誘電体を用い、金属層5、6に用いる材料としては所定の導電率を有する導電材料を用いる。
【0047】
本実施の形態において、金属層は、導電領域に第一金属層5として円形、第二金属層6として第一金属層5の両側にマイクロ波センサで測定したときに所定の周波数に共振する幅及び長さを有する2種類の形状で配置し、保護層1、中間層2及び接着層4は金属層より大きな楕円形の形状で配置した。
【0048】
ここで、第二金属層6が所定の周波数に共振するためには、長辺の長さが、所定の波長の1/2(nは0以上の整数)である必要がある。
【0049】
また、共振するためには、第二金属層6が異方性形状を有することが望ましく、例えば長方形、楕円形等がある。
【0050】
このように本実施の形態では、導電領域に、一つの円形の形状と、二つの周波数に共振する幅及び長さ、の合計3つが配置されている。
【0051】
図3(c)に、本情報記録貼付体Cを、貴重品等に接着剤層を介して貼り付け、センサを用いて読み取った時の検知電圧を示す。金属層5、6より大きな楕円形の形状で配置されている保護層1、中間層2及び接着層4の部分の誘電体領域の検知電圧は基底の0Vより低いレベルで、第一金属層5の導電体領域の検知電圧は基底の0Vより高いレベルで検知され、第二金属層6の導電体領域の検知電圧は、第一金属層5より高いレベルで検知されることが分かる。
【0052】
よって、本情報記録貼付体の真正を確認する際に、センサを用いて読み取りを行った結果、楕円形の誘電体領域が検知されること、楕円形の中の規定位置に円形の導電性領域が検知されること、楕円形の中の規定位置にセンサの周波数に共振する幅及び長さを有する2種類の導電性領域が検知されること、の3つの条件が揃った場合にのみ、真正であると判別できる。
【0053】
本発明の第4の実施の形態による情報記録貼付体の構造を図4(a)、(b)に示す。この情報記録貼付体Dは、保護層1、中間層2、金属層3、接着層4より形成されており、保護層1、中間層2及び接着層4に用いる材料としては所定の誘電率を有する誘電体を用い、金属層3に用いる材料としては所定の導電率を有する導電材料を用いる。
【0054】
本実施の形態において、金属層は導電領域に、金属層3の一部分を除去して非導電領域7にした円形の形状で配置しており、保護層1、中間層2及び接着層は金属層3より大きな楕円形の形状で配置した。金属層3の非導電領域7の部分は誘電体のみとなっている。
【0055】
図4(c)に、本情報記録貼付体Dを、貴重品等に接着剤層を介して貼り付け、センサを用いて読み取った時の検知電圧を示す。
金属層3より大きな楕円形の形状で配置されている保護層1、中間層2及び接着層4の部分の誘電体領域の検知電圧は基底の0Vより低いレベルで、金属層3の検知電圧は基底の0Vより高いレベルで検知され、金属層3の非導電領域7の部分の検知電圧は、誘電体領域と同じ基底の0Vより低いレベルで検知される。
【0056】
よって、本情報記録貼付体の真正を確認する際に、センサを用いて読み取りを行った結果、楕円形の誘電体領域が規定位置に検知されること、楕円形の中の規定位置に円形の導電性領域が検知されること、円形の中の規定位置に非導電領域の誘電体領域が検知されること、の3つの条件が揃った場合にのみ、真正であると判別できる。
【0057】
また、第5の実施の形態による情報記録貼付体の構造を図5に示す。
図5(a)、(b)に示す情報記録貼付体Eは、保護層1、中間層2、金属層5、6、接着層4より形成されており、保護層1、中間層2及び接着層4に用いる材料としては所定の誘電率を有する誘電体を用い、金属層5、6に用いる材料としては所定の導電率を有する導電材料を用いる。
【0058】
本実施の形態において、金属層は導電材料を縦縞と横縞の組合せで構成し、第一金属層5は横縞、第二金属層6は縦縞の組合せで配置しており、保護層1、中間層2及び接着層4は金属層の画像より大きな楕円形の形状で配置した。縦縞と横縞は金属層から成るため導電性があり、縦縞と横縞の各縞の間は金属層がないため誘電体となっている。
【0059】
ここで第二金属層6は、長辺の長さが所定の波長の1/2である必要がある。
また、共振するためには、第二金属層6が異方性形状を有することが望ましく、ここでは長方形であるが、これに限らず楕円形等であってもよい。
【0060】
図5(c)に、本情報記録貼付体Eを、貴重品等に接着剤層を介して貼り付け、センサを用いて読み取った時の検知電圧を示す。
金属層より大きな楕円形の形状で配置されている保護層1、中間層2及び接着層4の部分の誘電体領域の検知電圧は基底の0Vより低いレベルで、横縞で形成される第一金属層5の導電体領域の検知電圧は基底の0Vより高いレベルで検知され、縦縞で形成される第二金属層6の検知電圧は、縦縞の金属層部分で第一金属層5より高いレベルで、また縞間の誘電体領域の部分で基底の0Vより低いレベルで検知される。
【0061】
よって、本情報記録貼付体の真正を確認する際に、センサを用いて読み取りを行った結果、楕円形の誘電体領域が検知されること、楕円形の中の規定位置に縦縞と横縞の形状で導電性領域が検知されること、楕円形の中の規定位置にある各縞間に誘電体領域が検知されること、の3つの条件が揃った場合にのみ真正であると判別できる。
【0062】
(情報記録媒体の形態)
上記第3、第5の実施の形態における金属層、マイクロ波センサで測定したときに周波数に共振する幅及び長さを有する金属層、保護層、中間層、接着層、導電領域を一部除去した非導電領域の6つの要素をマイクロ波センサで測定した場合、これらの6つの要素は、次の(a)〜(c)の3つのレベルに分類される。
a)誘電体レベル(低レベル):保護層、中間層、接着層、導電領域を一部除去した非導電領域
b)第1導電レベル(中レベル):金属層(導電領域)
c)第2導電レベル(高レベル):金属層(マイクロ波センサで測定して所定の波長で共振する部分)
上記第3、第5の実施の形態の情報記録貼付体は、上記した6つの要素と (a)〜(c)の3つのレベルを、(a)と(b)、(a)と(c)、(a)と(b)と(c)の組合せで適宜配置し、情報を担持させた情報記録貼付体である。
【0063】
情報記録貼付体を基材等に付与する方法としては、一例として次の3つの方法があげられる。
(a)直接付与方式
基材に保護層、中間層、接着層及び金属層を直接付与するものである。保護層、中間層、接着層を形成するのは、塗布機、コータ、各種印刷機などを用いて、基材に直接塗膜を形成する方法が取り得るが、安定した機械読み取りを行うためには、スクリーン印刷、グラビア印刷、凹版印刷のようにインキの転移量が多く得られる方法が好ましい。金属層を付与するには、蒸着装置を用いて、基材に直接形成する方法が取り得る。
(b)再転写方式
OVDのような再転写法であり、あらかじめ、転写用基材に各材料を配置しておき、熱、圧力、接着剤などによって基材に再転写する方法が取り得るが、安定した機械読み取りを行うためには、熱転写印刷、ホットスタンピングにより均一な転写膜を形成することが好ましい。
(c)ラベル方式
粘着シールであるラベルを基材ごと印刷物等に貼り付けるもので、ラベル基材に各材料を配置しておき、塗布された接着剤などによって基材に貼り付ける方法が取り得るが、安定した機械読み取りを行うためには、熱転写印刷、ホットスタンピングにより均一な転写膜を形成することが好ましい。
【0064】
導電層の膜厚は、400〜2000Åであるのが好ましい。400Åより薄い場合は機械読み取りの検知に十分な電圧を担示することが困難であり、また、2000Åより厚い場合はホログラムとしてのしなやかさに多少欠ける。
【0065】
(機械読取り方法)
次に、上記第1〜第5の実施の形態で得られた情報記録貼付体に対して真偽判別を行う際に必要な機械読み取りに関して説明する。
【0066】
(原理の説明)
上記第1〜第5の実施の形態の情報記録貼付体を読み取るためには、導電率及び誘電率を検知できる機械読取装置を用いる必要があるが、本実施の形態においては、電磁波の一帯域であるマイクロ波を利用したセンサを用いた場合について図面を用いて説明する。本実施の形態で述べる電磁波とは、電波法に規定する周波数3kHzを超え、30THz以下のものをいう。例えば、周波数1GHz〜300GHzの範囲のマイクロ波が好ましい。
【0067】
図6(a)に導電体及び誘電体の測定を同時に行うことのできるセンサの構成の例を示す。
なお、このセンサはマイクロ波を導波管8の外に漏洩して測定を行うことから、漏洩マイクロ波センサ13と呼ぶこととする。導波管8と、導波管の中に電磁波を照射する照射手段9と、受信手段10と、導波管内を伝搬する電磁波を外部に放出するための導波管の壁面に配設された漏洩孔11と、反射板14とによって構成される。
【0068】
図6(b)は、マイクロ波を導波管8の外に漏洩して測定を行う構造である漏洩マイクロ波センサ13の内部構造の一例を示すものであり、シート状の被測定物12の導電性や誘電性を検知することができる。
【0069】
次に漏洩マイクロ波センサ13の原理に関して説明する。
図7に、漏洩マイクロ波センサ13の主要な部分を示す。この部分は、機能の中心となっている部分に相当する。図7(a)に、導波管8の上側の壁面に、電磁波15を漏洩する漏洩孔11を配置して、電磁波発振源から電磁波15を導波管8の中に照射して、導波管内にTE10モードの電磁波分布を得た状態を示す。
図7(b)に導波管内の磁界及び漏洩孔11から漏洩する磁界の磁界分布16を示し、図7(c)に導波管内の電界及び漏洩孔11から漏洩する電界の電界分布17を示す。図7(d)に、漏洩孔11上に被測定物12を対向させて配置させた状態で、被測定物12を漏れ電磁界が透過するときに被測定物12の材料特性によって導波管内の磁界分布16及び電界分布17が変化する原理を示す。
【0070】
この場合に、紙や樹脂のような誘電率の大きい部分が漏洩孔11に来ると、漏洩電磁界が影響を受けて、導波管8の中を進行する電磁波と反射する電磁波の合成によってできる定在波の振幅や位相が変化し、また、金属蒸着膜や結晶膜のような導電率の高い部分が漏洩孔11にくると、導電率の高い材料で漏洩孔が塞がれるため、導波管8の中が空洞共振状態になって電磁界の振幅や位相が変化する。
【0071】
つまり、測定によって得られた検知電圧波形は、誘電率による変化と導電率による変化の2つを合わせた波形形状を示すものなので、測定したときの波形から被測定材料が導電体であるのか、誘電体であるのかを知ることができる。
【0072】
次に、装置の上に被測定物12を置いて測定する原理を説明する。
図8に、装置の上に被測定物をおいて測定する状態を示す。図8(a)に、被測定物12が漏洩孔11の上にない状態を示し、このときの検知電圧を第1の電圧とする(このレベルを検知電圧のゼロ基準と考える)。
図8(b)に、被測定物12を、漏洩孔11の上に置いた状態を示し、このときの検知電圧を第2の電圧とする。
【0073】
図9(a)、(b)、(c)は、図8(a)、(b)の順序によって各種の被測定物12を測定したときに得られる検知電圧の3つの分類を示すものである。
図9(a)に、被測定物12がPETフィルムによって構成されている場合の電圧を示し、その誘電率に基づいて第2の電圧はマイナスの電圧を示した。
このように、被測定物12が誘電体の材料である場合は、第1の電圧>第2の電圧となる。
【0074】
図9(b) に、被測定物12がPETフィルムに金属蒸着を施した金属層によって構成されたものを示す。被測定物12を相対的に移動させずに漏洩孔11の上に置いて測定したため、第2の電圧はPETの誘電率によるマイナスの電圧は示さず、導電性の大きい金属層によるプラスの電圧のみを示した。
このように、被測定物12が誘電体の材料と導電性の材料を複合した材料を搬送せずに測定を行うと、第1の電圧<第2の電圧を示す。
【0075】
図9(c)に、被測定物12がアルミ箔(一般に家庭用として用いられているもの)によって構成されたものを示す。導電率に基づいて、第2の電圧はプラスの電圧を示した。
このように、被測定物12が導電体の材料である場合は、第1の電圧<第2の電圧を示す。
【0076】
次に、漏洩マイクロ波センサの部品構成を説明する。
図10に示されたように、このセンサは、送信アンテナ18及びガンダイオードなどの送信ダイオード19により構成される照射手段9と、受信アンテナ21及びショットキーダイオードなどの受信ダイオード22により構成される受信手段10と、上壁面に漏洩孔11を設けた導波管8と、導波管8の内部をクローズさせるための反射板14とを備えている。
【0077】
送信ダイオード19から送信アンテナ18を経てTE10モードの電磁波が導波管内に照射されると、一部の電磁界が漏洩孔11から外部に漏洩し、漏洩孔11の上に被測定物12を配置すると電磁界が被測定物12を透過し、その材料特性によって導波管内の電磁波の振幅あるいは位相が変化する。これを、受信アンテナ21を経て受信ダイオード22によって検知して、その変化量から被測定物の材料を判別する。
【0078】
装置の調整は、導波管内の電磁波15を漏洩孔11から最も漏洩させるために、マイクロ波送受信部20に対して漏洩孔11及び反射板14の位置が重要である。導電率に基づく測定を可能にするために、導電体が漏洩孔11を塞いだときに、導波管内が空洞共振状態になるような位置に調整を行うことが望ましい。
【0079】
以下に説明する例では、送信アンテナ18並びにガンダイオードなどの送信ダイオード19により構成される照射手段9と、受信アンテナ21並びにショットキーダイオードなどの受信ダイオード22により構成される受信手段10とを兼ね合わせた部品として、自動ドアやスピードセンサに用いられるドップラモジュールを利用した。このドップラモジュールは、方形の導波管WR42型の中に送信ダイオード19、送信アンテナ18、受信ダイオード22、受信アンテナ21を具備し、24.15GHzの電磁波をTE10モードで送信及び受信できるモジュールである。
【0080】
なお、ここでは機械読み取りのセンサとして、漏洩マイクロ波センサ13を用いたが、導電体や誘電体を読み取ることのできるセンサであれば他のセンサでもよい。
【0081】
さらに、漏洩マイクロ波センサ13を用いて電圧波形を測定すると共に、被測定物12に光学センサ、静電容量センサあるいは渦電流センサを用いて電圧波形を測定してもよい。この場合は、前記漏洩マイクロ波センサ13から得られる導電率と誘電率の電圧波形と、光学センサ、静電容量センサあるいは渦電流センサから得られるOVDの有り無しの電圧波形を比較し、波形に相違が得られることにより真偽判別を行うことになる。
【0082】
さらに、漏洩マイクロ波センサ13を用いて電圧波形を測定すると共に、被測定物12に近赤外線光を照射して透過した近赤外線光の光量波形を測定してもよい。この場合は、前記漏洩マイクロ波センサ13から得られる電波のシールド性と、前記光量波形から得られる光の非透過性を比較し、波形に相違が得られることにより真偽判別を行うことになる。
【0083】
次に、漏洩マイクロ波センサ13を用いて、周波数に共振する長さで形成された導電体を読み取る方法について説明する。
導電体は、電気伝導度の高い材料を用いて、所望の長さ及び/又は所望の幅にすることで構成し、これを、配置して情報を表現するようにしている。
【0084】
図11は、横軸に周波数に共振する金属層の長さ、縦軸にマイクロ波検知電圧をとったグラフである。マイクロ波は電磁波であり、周波数(GHz)と波長(mm)は、下式に示すとおりである。
波長λ=c/f (c:光速、f:周波数)
電磁波に対するアンテナの共振波長は波長λの整数分の1である。マイクロ波検知電圧の値は上述したように種々の要因の影響を受けるので、実際に種々の長さの平滑な導電体を24.15 GHzのマイクロ波送受器を用いて、マイクロ波検知電圧を計測した。
【0085】
実験によると、種々の要因が加わって図11に示すように長さ約4mmの導電体において最も大きなマイクロ波検知電圧を得ることができる。なお、上記種々の要因が加わるので、実施例1、2では平滑な導電体の長さを電磁波波長の「ほぼ」整数分の1の長さということにした。また、実験によれば、一般に、検知用マイクロ波の波長のほぼ1/4の長さの平滑な導電体で検知電圧が高く、1/2,1/8,1/16,・・・というように、1/2(nは0以上の整数)の長さにおいてマイクロ波検知電圧の極大値を観測することができた。
【0086】
次に、前述した図1〜図5に示した情報記録貼付体を、漏洩マイクロ波センサ13を用いて測定した結果について述べる。
図1(c)に、図1(a)、(b)の情報記録貼付体Aを測定した結果を示す。漏洩マイクロ波センサ13による検知電圧をみると、金属層3に円形の導電領域が配置されているため、その領域において検知電圧が「中レベル」を示し、それ以外の部分は保護層1、中間層2、接着層4による「低レベル」を示した。
【0087】
図2(c)に、図2(a)、(b)の情報記録貼付体Bを測定した結果を示す。漏洩マイクロ波センサ13による検知電圧をみると、金属層5、6に円形、及び、三日月形の2種類の導電領域が配置されているため、その領域において検知電圧が「中レベル」を示し、それ以外の部分は保護層1、中間層2、接着層4による「低レベル」を示した。
【0088】
図3(c)に、図3(a)、(b)の情報記録貼付体Cを測定した結果を示す。漏洩マイクロ波センサ13による検知電圧をみると、金属層5、6に2つの導電領域が配置されており、1つに、円形の導電領域において検知電圧が「中レベル」を示し、もう1つに、周波数に共振する導電領域が配置されており、検知電圧が「高レベル」を示した。それ以外の部分は保護層1、中間層2、接着層4による「低レベル」を示した。
【0089】
図4(c)に、図4(a)、(b)の情報記録貼付体Dを測定した結果を示す。漏洩マイクロ波センサ13による検知電圧をみると、金属層3は、円形の導電領域が配置されており、検知電圧が「中レベル」を示し、さらに、金属層3の円形の中が非導電領域7となっているため、その部分が「低レベル」を示し、それ以外の部分は保護層1、中間層2、接着層4による「低レベル」を示した。
【0090】
図5(c)に、図5(a)、(b)の情報記録貼付体Eを測定した結果を示す。漏洩マイクロ波センサ13による検知電圧をみると、金属層5、6により縦縞と横縞の組み合わせを構成しているため、第二金属層6の縦縞部分は検知電圧が「高レベル」、第一金属層5の横縞部分は検知電圧が「中レベル」、縦縞と横縞間が「低レベル」となり、さらに、それ以外の部分は保護層1、中間層2、接着層4による「低レベル」を示した。ここで、第二金属層6と第一金属層5は同一の縞デザインであるのに、第二金属層6の検知電圧が高レベルである理由は、縦縞の長さが測定に用いた漏洩マイクロ波センサ13の周波数に共振したことと、該センサと縦縞が相対的に並行であったためである。
【0091】
(実施例1)
図12〜図14に、上記第1〜第5の実施の形態における実施例1として情報記録貼付体を貼付した身分証明書の一例を示す。図12に真正な身分証明書23、図13に身分証明書の偽造品24、図14に機械読み取りを行った時の検知電圧を示す。
【0092】
図12(a)に身分証明書の真正品の一例の平面を、図12(b)にその断面を示す。
基材26に印刷を施してインキ層25とし、その上に、本実施の形態による真偽判別が可能な楕円形状の情報記録貼付体を貼付したものである。
情報記録貼付体の構成は、接着層4、中間層2、第一金属層5、5’、第二金属層6及び保護層1により構成されている。
【0093】
インキ層25、基材26、接着層4、保護層1はポリエチレン樹脂を用いたため誘電体であり、第一金属層5、5’はアルミ蒸着を施したため導電体である。第二金属層6はアルミ蒸着を施した導電体であるが、第一金属層5、5’と異なる点は、測定に用いた漏洩マイクロ波センサ13の周波数(24.15GHz)に共振するような寸法にしたことである。第一金属層5’の長さ及び幅は、センサと共振する第二金属層6と異なったものとして、適宜配置する。
【0094】
図12(b)に、真正品の断面を示すが、この身分証明書23の全体は次の4種類の層構成を基本とした構成を備えている。
(1)基材、インキ層、保護層、中間層、接着層
(2)基材、インキ層、保護層、中間層、接着層、第一金属層
(3)基材、インキ層、保護層、中間層、接着層、第二金属層
(4)基材、インキ層のみ
【0095】
これらの4種類の層構成となっている身分証明書23を、漏洩マイクロ波センサを用いて、それぞれの層を構成する重層を通して測定すると、次に示す検知レベルが得られる。
(1)誘電体のみの層 →低レベル
(2)誘電体と第一金属層 →中レベル
(3)誘電体と第二金属層 →高レベル
(4)誘電体のみの層 →低レベル
【0096】
次に、身分証明書23を構成する各層の内容について説明する。
基材26は厚さ0.3mmのPETフィルムを用いたが、PET以外にも所望の導電率や誘電率の材料が取り得る。厚さは0.3〜0.75mm程度が好ましい。
インキ層25は、カード上にデザインを印刷するが、インキは所望の導電率や誘電率をもつものを用いることができ、オフセット印刷によりインキの膜厚約1μmで印刷を行なった。
【0097】
実際に、インキ層25を漏洩マイクロ波センサ13によって測定した結果、情報記録貼付体の部分と比較して非常に低いレベルであったため、無視できると考えられるので、本実施例1においては影響を受けないものとした。
【0098】
本実施例1では、中間層2は、厚さ0.1mmのPET層を用いて、ホログラム形成層の光学変化の基となる凹凸を施した。
接着層4及び保護層1は、所望の導電率や誘電率を持つものを既存の材料の中から選定することが可能である。
第一金属層5、5’及び第二金属層6は、中間層2に金属蒸着を施して形成し、漏洩マイクロ波センサ13を用いて測定すると、第一金属層5、5’が「中レベル」並びに第二金属層6が「高レベル」を示すように設計した。
【0099】
本実施例1においては、第一金属層5、5’と第二金属層6は、膜厚500Åのアルミ蒸着により形成したが、所望の導電率が得られるものであればクロムなどの材料を用いることができる。
【0100】
第二金属層6は、測定に用いた漏洩マイクロ波センサ13が周波数(24.15GHz)に共振して高レベルが得られるような寸法とすれば良い。本実施例1においては、長辺4mm及び短辺0.1mmのバー状の形状とした。
また、第二金属層6の短辺の幅を0.1mmとした理由は、入手可能なアルミ箔等を裁断して、貼り付けようとする手口の偽造に対抗するためである。幅のデザインは細いほうが好ましく、0.1mmに限定するものではない。
【0101】
図13(a)に身分証明書の偽造品24の例を示し、図13(b)に偽造品の断面を示す。図12に示した真正品を複写機で複写して、入手可能なアルミ箔等27を貼り付けて身分証明書の偽造品24としたものである。
この断面図に示されたように、真正品との大きな相違点は、本実施例1で用いた情報記録貼付体に存在する中間層2、保護層1が存在しないことにある。
【0102】
図14(a)に、被測定物12を判別する判別装置の一例を示す。この装置は、漏洩マイクロ波センサ13、オシロスコープ29、搬送装置28を備えている。
この判別装置は、被測定物としての図12(a)に示す真正な身分証明書23、及び、図13(a)に示す偽造品24を、搬送装置28により搬送して、漏洩マイクロ波センサ13により読み取るものである。
【0103】
搬送装置28は、上下に配置した搬送ベルトで身分証明書23を挟んで、搬送速度2m/secで搬送し、漏洩マイクロ波センサ13に移動し、漏洩マイクロ波センサ13は、搬送されて移動中の身分証明書23の情報記録貼付体が貼り付けられた部位を測定できる位置に搭載され、オシロスコープ29は、漏洩マイクロ波センサ13によりスキャン測定された検知電圧の波形を表示できるようになっている。身分証明書の偽造品24も同様にして測定する。
【0104】
なお、本実施例1において、漏洩マイクロ波センサ13の部分を用いて測定しているが、非導電領域、第一金属層5及び第二金属層6を読み分けることのできる測定装置であれば他のものでもよい。
【0105】
図14(b)に、真正な身分証明書23を測定した検知電圧波形を示す。
波形をみると、部分部分に、誘電体のみの低レベル、誘電体と第一金属層5、5’による中レベル及び誘電体と第二金属層6による高レベル、の3種類の検知レベルが得られたことから、前述した図12(b)により真正であることがわかる。
【0106】
一方、図14(c)に、偽造品24を測定した検知電圧波形を示す。波形をみると、部分部分に、誘電体と第一金属層5による中レベル及び誘電体と第二金属層6による高レベル、の2種類の検知レベルは得られたが、誘電体のみの部分が低レベルでなくゼロであったため、偽造品であることが分かる。このように、ホログラムの層の構成を基にして、真偽を判別することが可能となる。
【0107】
(実施例2)
図15に、実施例2による情報記録貼付体として金券に適用した例を示す。上記実施例1が、情報記録貼付体の第一金属層5と第二金属層6の長さを変えて、2つの検知レベルを得たのに対して、実施例2は、第二金属層6の長さを変えたことに加えて、漏洩マイクロ波センサ13の向きと導電性のある導電材料を縞状に配置した構成が、相対的に平行になったときに、高レベルの検知電圧を得るようにした例である。
【0108】
図15(a)の金券30は、額面等の印刷を基材にインキ層25として施し、その上に、長方形の形状をした、情報記録が可能な金属箔である判別用ラベル32を貼付したものである。金属箔の構成は、接着層4、第一金属層5、第二金属層6及び基材層26により構成されている。インキ層25、用紙31、接着層4、基材層26は誘電体であり、第一金属層5はアルミ蒸着を施したため導電体である。第二金属層6はアルミ蒸着を施した導電体であるが、第一金属層5と異なる点は、測定に用いた漏洩マイクロ波センサ13の周波数(24.15GHz)に共振するようなデザインとしていることである。
【0109】
図15(b)に断面を示すが、次の4種類の層構成を基本とした構成を備えている。
(1)用紙、インキ層、基材層、接着層
(2)用紙、インキ層、基材層、接着層、第一金属層
(3)用紙、インキ層、基材層、接着層、第二金属層
(4)用紙、インキ層のみ
【0110】
これらの4種類の層構成を、漏洩マイクロ波センサを用いて、それぞれの層を構成する重層を通して測定すると、次に示す検知レベルが得られる。
(1)誘電体のみの層 →低レベル
(2)誘電体と第一金属層 →中レベル
(3)誘電体と第二金属層 →高レベル
(4)誘電体のみの層 →低レベル
【0111】
次に、金券を構成する各層の内容について説明する。
用紙31は、厚さ0.1mmの上質紙を用いたが、これ以外にも所望の導電率や誘電率の材料が取り得る。
インキ層25は、用紙31の上に額面等の必要な印刷をするが、インキは所望の導電率や誘電率をもつものを用いることができ、本実施例2では、オフセット印刷によりインキの膜厚約1μmで印刷を行なった。印刷部分を実際に漏洩マイクロ波センサ13によって測定した結果、判別用ラベル32の部分と比較して非常に低いレベルであったため、無視できると考えられたので、本実施例2においては影響を受けないものとする。
基材層は、本実施例2においては、厚さ0.1mmのPETフィルムを用いた。
接着層4は、所望の導電率や誘電率をもつものを既存の材料の中から選定することができる。
【0112】
第一金属層5及び第二金属層6は、基材層26にアルミ蒸着を施して形成し、漏洩マイクロ波センサ13を用いて測定すると、第一金属層5が「中レベル」及び、第二金属層6が「高レベル」を示すように設計した。本実施例2においては、第一金属層5と第二金属層6は膜厚500Åのアルミ蒸着により形成したが、所望の導電率が得られるものであればクロムなどの材料を用いることができる。
【0113】
図15(a)に、第一金属層5及び第二金属層6の取り得るデザインの一例を示す。第二金属層6のデザインは、測定に用いる漏洩マイクロ波センサ13の周波数(24.15GHz)に共振するデザインにして、高レベルが得られるようにし、図15(a)におけるaに一例を示した。図中のaは、導電材料を長さ4mm・幅0.1mmのバー状形状としたものを、間隔を0.1mm離して、20本を縞状に配置した。このaの部分を、漏洩マイクロ波センサと相対的に平行にして読み取ると、高レベルの検知電圧が得られる。
【0114】
第一金属層5のデザインは、測定に用いる漏洩マイクロ波センサ13の周波数(24.15GHz)に共振しないようなデザインにして、中レベルが得られるような構成にした。図15(a)の図中のb、c、d、eの部分に第一金属層5の例を示した。
【0115】
図中のbの部分を例に取り詳細に説明する。bは、長さ4mm・幅0.1mmのバー状形状としたものを、間隔を0.1mm離して、20本を縞状に配置したが、20本の縞状配置を横切るように直交して縞状配置を重ねることにより、周波数に共振しないような構成にした。このbの部分を、漏洩マイクロ波センサで読み取ると、共振が得られず、中レベルの検知電圧となる。つまり、図中のbは、見た目は図中のaと同様に見えるが、周波数に共振しないため、中レベルしか得られない。センサと相対的に直交するバー状形状とした導電材料の本数が多いほうが中レベルを得やすくなる。つまり、dに示すようにベタに近くなるからである。
【0116】
同様に、図15(a)に示すc、d、eに関しても、見た目はaと同様であるが、cはデザインがつづら折である理由から、dはベタである理由から、eはセンサとバー状形状とした導電材料の縞状配置が直交している理由から、それぞれ、周波数に共振しないため、中レベルしか得られない。
【0117】
図15(c)に、金券30を、搬送装置28により搬送して、漏洩マイクロ波センサ13により読み取った結果を示す。読み取りにおいては、前述した図14(a)に示す装置を用いた。
【0118】
スキャン測定を行った結果、図15(c)が得られ、この波形と閾値レベル1、閾値レベル2を比較して、判別用ラベル32の部分部分を、高、中、低の3段階にレベル分けした。その結果、第二金属層6である図15(a)の図中のaの部分が高レベル、第一金属層5であるb、c、d、eの部分が中レベル、金属層5、6がない基材層26、接着層4のみの部分が低レベルであった。スキャン方向に連続してみると、「高、中、中、中、中」となり、「1」と「0」に置き換えると、「10000」が得られ、これを検知データと呼ぶこととする。
【0119】
この検知データを、あらかじめ設定しておいた検知データと券種の関係(図15(d)の表)に照らし合わせると、この金券の額が10000円であることが判別された。
【0120】
なお、実施例2は、1つは、商品券の額面を機械読み取りすることを意図して作成され、さらに入手可能なアルミ箔等を裁断して、貼り付けようとする手口の偽造に対する対策を意図して作成される。そのため、断裁幅は、より細いほうが好ましく、本実施例2に述べた線幅0.1mmに限定するものではない。
【0121】
次に、情報記録貼付体を貼付した各種貴重製品等の基本的な真偽判別方法について説明する。
【0122】
(実施例3)
図16、図17に、実施例3として、上記第1の実施の形態で説明した情報記録貼付体を貼付した身分証明書の一例を示す。図16に真正な身分証明書23、図17に会員証の偽造品24、を示す。
【0123】
図16(a)に身分証明書23の真正品の一例の平面を、図16(b)にその断面を示す。
基材26に印刷を施してインキ層25とし、その上に、第1の実施の形態による真偽判別が可能な楕円形状の情報記録貼付体Aを貼付したものである。
【0124】
情報記録貼付体の構成は、接着層4、中間層2、金属層3及び保護層1により構成されている。
インキ層25、基材26、接着層4、保護層1はポリエチレン樹脂を用いたため誘電体であり、金属層3はアルミ蒸着を施したため導電体である。
【0125】
図16(b)に、真正品の断面を示すが、この身分証明書23の全体は次の3種類の層構成を基本とした構成を備えている。
(1)基材、インキ層、保護層、中間層、接着層
(2)基材、インキ層、保護層、中間層、接着層、金属層
(3)基材、インキ層のみ
これらの3種類の層構成となっている身分証明書23を、漏洩マイクロ波センサを用いて、それぞれの層を構成する重層を通して測定すると、次に示す検知レベルが得られる。
(1)誘電体のみの層 →低レベル
(2)誘電体と金属層 →中レベル
【0126】
次に、身分証明書23を構成する各層の内容について説明する。
基材26は厚さ0.3mmのPETフィルムを用いたが、PET以外にも所望の導電率や誘電率の材料が取り得る。厚さは0.3〜0.75mm程度が好ましい。
インキ層25は、カード上にデザインを印刷するが、インキは所望の導電率や誘電率を持つものを用いることができ、オフセット印刷によりインキの膜厚約1μmで印刷を行なった。
【0127】
実際に、インキ層25を漏洩マイクロ波センサ13によって測定した結果、情報記録貼付体の部分と比較して非常に低いレベルであったため、無視できると考えられるので、本実施例3においては影響を受けないものとした。
【0128】
本実施例3では、中間層2は、厚さ0.1mmのPET層を用いて、ホログラム形成層の光学変化のもととなる凹凸を施した。
接着層4及び保護層1は、所望の導電率や誘電率をもつものを既存の材料の中から選定することが可能である。
金属層3は、中間層2に金属蒸着を施して形成し、漏洩マイクロ波センサ13を用いて測定すると、「中レベル」を示す。
【0129】
本実施例3においては、金属層3は膜厚500Åのアルミ蒸着により形成したが、所望の導電率が得られるものであればクロムなどの材料を用いたものでもよい。
【0130】
図17(a)に身分証明書の偽造品24の例を示し、図17(b)に偽造品の断面を示す。図16に示した真正品を複写機で複写して、入手可能なアルミ箔等27を貼り付けて身分証明書の偽造品24としたものである。
この断面図に示されたように、真正品との大きな相違点は、本実施例3で用いた情報記録貼付体Aに存在する中間層2、保護層1が存在しないことにある。
【0131】
図14(a)示す判別装置により、被測定物としての図16(a)に示す真正な身分証明書23及び図17(a)に示す偽造品24を、搬送装置28により搬送して、漏洩マイクロ波センサ13により読み取るものである。
【0132】
搬送装置28は、上下に配置した搬送ベルトで身分証明書を挟んで、搬送速度2m/secで搬送し、漏洩マイクロ波センサ13に移動し、漏洩マイクロ波センサ13は、搬送されて移動中の身分証明書23の情報記録貼付体が貼り付けられた部位を測定できる位置に搭載され、オシロスコープ29は、漏洩マイクロ波センサ13によりスキャン測定された検知電圧の波形を表示できるようになっている。身分証明書の偽造品24も同様にして測定する。
【0133】
なお、本実施例3において、漏洩マイクロ波センサ13の部分を用いて測定しているが、非導電領域、金属層3を読み分けることのできる測定装置であれば他のものでもよい。
【0134】
図16(c)に、真正な身分証明書23を測定した検知電圧波形a1を示す。
波形をみると、部分部分に、誘電体のみの低レベル及び誘電体と金属層3による中レベルの2種類の検知レベルが得られたことから、真正であることがわかる。
【0135】
一方、図17(c)に、偽造品24を測定した検知電圧波形a2を示す。波形をみると、部分部分に、誘電体のみの低レベル、及び、誘電体と金属層3による中レベルの2種類の検知レベルは得られたが、誘電体のみの部分が図16(c)のような低レベルでなくゼロであったため偽造品であることが分かる。すなわち、偽造品24は、保護層1、中間層2及び、接着層3がアルミ層等27の周囲に存在しないことを基にして、偽造を判別することが可能となる。
【0136】
上述したように、本発明の第1〜第5の実施の形態によれば、メタライズド技術を用いた偽造品を確実に偽造として判別することが可能であり、また搬送系を有する機械的真偽判別装置に搬送あばれやノイズが加わっても安定的な真偽判別が可能となる。
【0137】
また、情報記録貼付体にホログラム等を形成する場合であっても、導電性のある領域、誘電体のある領域及びマイクロ波センサの周波数に共振する幅及び長さにした金属付着領域を適宜配置しているため、これらすべての材料を用いて偽造・データ変造を行うことは非常に困難となる。
【0138】
次に、本発明の第6の実施の形態による情報記録貼付体について図18に示す。
ここで第一導電性領域は、マイクロ波センサの周波数に共振するような長さの長辺を有する領域であるとする。
第二導電性領域は、マイクロ波センサの周波数に共振しない寸法を有し、白抜き線で、格子状、メッシュ状、微細な点群による網目状、又は任意の形状にすることで導電率を変化させた領域であるとする。
【0139】
この情報記録貼付体Fは、保護層104、中間層105、金属層106、接着層107により構成され、金属層106を白抜き線により区切ることによって、第一導電性領域及び第二導電性領域を形成する。
【0140】
第一導電性領域101は漏洩マイクロ波センサの周波数に共振するような幅及び長さとし、図18(c)に示すように、縦の寸法が4mm、横の寸法が1mmであるエレメントを1個配置し、そのエレメントの外周は白抜き線となっており、第二導電性領域102は漏洩マイクロ波センサの周波数に共振しない寸法とし、縦1mm、横1mmの白抜き線で格子状にすることにより、真偽判別のための情報を担持させた。
【0141】
なお、第一導電性領域101及び第二導電性領域102を形成するための白抜き線は、目視したときに見えない、あるいは、見え難いような幅とする。
中間層105は凹凸を施し、この中間層105に金属層106を積層することによって、光学的に変化するホログラム画像が得られるようにしてもよく、或いは、光学的な変化の機能がいらない場合は、中間層105に凹凸を施さずに、平滑な金属箔による情報記録貼付体として用いることもできる。接着層107は、情報記録貼付体を用紙などに貼付する場合に必要となる。保護層104は、表面を保護するものなのでなくても良い。
【0142】
図18(d)に、情報記録貼付体Fを、漏洩マイクロ波センサ103を用いて読み取った時の検知電圧を示す。検知電圧波形a3において、第一導電性領域101の部分は漏洩マイクロ波センサ103の周波数に共振するため高レベルを示し、第二導電性領域102の部分は漏洩マイクロ波センサの周波数に共振しないため低レベルを示した。このように、検知電圧波形a3が固有の波形形状を示すことから、情報記録貼付体が真正であるか否かを判別することが可能となる。
【0143】
本発明の第7の実施の形態による情報記録貼付体の構造を図19に示す。
図19(a)に示す情報記録貼付体Gは、図19(b)に示す断面図より保護層104、中間層105、金属層106、接着層107により構成され、金属層106を白抜き線により区切ることによって、縦線からなる第一導電性領域101及び横線からなる第二導電性領域102を形成する。
【0144】
第一導電性領域101は、漏洩マイクロ波センサ103の周波数に共振するような形状とし、幅が0.5mm、長さが4mmである線形状のものを3本配置した。第二導電性領域102は、漏洩マイクロ波センサ103の周波数に共振しないような形状とし、幅が0.5mm、長さが4mmではない線形状のものを複数、並列に配置した。
中間層105、接着層107、保護層104は、図18に示された上記第6の実施の形態と同様である。
【0145】
図19(c)に、情報記録貼付体Gを漏洩マイクロ波センサ103を用いて読み取った時の検知電圧を示す。
検知電圧波形a2をみると、第一導電性領域101の部分は漏洩マイクロ波センサ103の周波数に共振するため高レベルを示し、第二導電性領域102の部分は漏洩マイクロ波センサ103の周波数に共振しないため低レベルを示した。検知電圧波形a4が固有の波形形状であることから、情報記録貼付体が真正であると判別できる。
【0146】
上記第6、第7の実施の形態で詳述したように、見た目には、情報記録貼付体に一様に導電性がある様にみえるが、実際は白抜き線によって細分割してあり、これを、漏洩マイクロ波センサによって読み取った際には、第一導電性領域及び第二導電性領域による固有の検知電圧波形が得られることにより、正確に真偽の判別が行えるものである。
【0147】
情報記録貼付体を形成する形態としては、一例として次の3つの方法があげられる。
(a)直接付与方式
直接付与方式は、基材に保護層、中間層及び金属層を直接付与する。保護層、中間層を形成するには、塗布器、コータ、各種印刷機などを用いて、基材に直接塗膜を形成する方法が取り得るが、安定した機械読み取りを行うためには、スクリーン印刷、グラビア印刷、凹版印刷のようにインキの転移量が多く得られる方法が好ましい。金属層に、第一導電性領域101及び第二導電性領域102を区切るための白抜き線を形成するためには、例えばマスキングフィルムを重ねた上から蒸着装置を用いて蒸着を施す方法が取り得る。
(b)再転写方式
あらかじめ、転写用基材に各材料を配置しておき、熱、圧力、(接着剤)などによって基材に再転写する方法が取り得る。安定した機械読み取りを行うためには、熱転写印刷、ホットスタンピングにより均一な転写膜を形成することが好ましい。
(c)ラベル方式
ラベル基材に各材料を配置しておき、塗布された接着剤などによって基材に貼り付ける方法が取り得るが、安定した機械読み取りを行うためには、熱転写印刷、ホットスタンピングにより均一な転写膜を形成することが好ましい。
【0148】
金属層の膜厚は、400〜2000Åであるのが好ましい。400Åより薄い場合は機械読み取りの検知に十分な電圧を担示することが困難であり、また、2000Åより厚い場合はホログラムとしてのしなやかさに多少欠ける。
【0149】
(機械読取り方法)
次に、上記第6、第7の実施の形態で得られた情報記録貼付体に対して機械読取りを行なう方法に関して説明する。
(原理の説明)
上記第6、第7の実施の形態の情報記録貼付体を読み取るためには、導電率及び波長共振を検知できる機械読取装置を用いる必要がある。第6、第7の実施の形態による情報記録貼付体を読み取るセンサは、上記第1〜第5の実施の形態による情報記録貼付体を読み取るセンサと同様であり、説明を省略する。
【0150】
以下の実施例4〜8では、図10に示した漏洩マイクロ波センサを用いて読み取ることとする。
図10に示されたように、照射手段9と受信手段10を兼ね合わせた部品として、自動ドアやスピードセンサに用いられるドップラモジュールを利用した。このドップラモジュールは、方形の導波管WR42型の中に送信ダイオード19、送信アンテナ18、受信ダイオード22、受信アンテナ21を具備し、24.15GHzの電磁波をTE10モードで送信及び受信できるモジュールである。
【0151】
なお、本実施の形態では、機械読み取りのセンサとして、漏洩マイクロ波センサを用いたが、導電体や誘電体を読み取ることのできるセンサであれば他のセンサでもよい。例えば、誘電体の読み取りには静電容量センサを用い及び導電体の読み取りには渦電流式センサを用いて、情報記録媒体の情報を読み取ることも可能である。
【0152】
次に、漏洩マイクロ波センサを用いて、周波数に共振する長さで形成された導電層を読み取る方法について説明する。導電層は、電気伝導度の高い材料を用いて、所望の長さ及び所望の幅にすることで構成し、これを、配置して情報を表現するようにしている。
【0153】
図20は、横軸に金属層の第一導電性領域のパターンの長さ、縦軸にマイクロ波検知電圧をとったグラフである。マイクロ波は電磁波であり、周波数(GHz)と波長(mm)は、下式に示すとおりである。
波長λ=c/f(c:光速、f:周波数)
電磁波に対するアンテナの共振波長は波長λの整数分の一である。マイクロ波検知電圧の値は上述したように種々の要因の影響を受けるので、実際に種々の長さの平滑な導電体を24.15GHzのマイクロ波送受器を用いて、マイクロ波検知電圧を計測した。
【0154】
実験によると、種々の要因が加わって図20に示すように長さ約4mmの導電体において最も大きなマイクロ波検知電圧を得ることができる。なお、上記種々の要因が加わるので、本実施例4〜8では導電体の長さを電磁波波長の「ほぼ」整数分の一の長さということにした。また、実験によれば、一般に、検知用マイクロ波の波長のほぼ1/4の長さの平滑な導電体で検知電圧が高く、1/2、1/8、1/16、・・・というように1/2(nは0以上の整数)の長さにおいてマイクロ波検知電圧の極大値を観測することができた。
【0155】
次に、情報記録貼付体を用いた具体的な実施例4〜8について説明する。
(実施例4)
図21に、実施例4として、情報記録貼付体を貼付した身分証明書の構造とその読み取り手法の一例を示す。図21(a)、(b)、図22(b)に真偽判別が可能な情報記録貼付体、図22(a)に読取り装置、図22(c)に情報記録貼付体を貼付した真正な身分証明書をスキャン方向に読取り装置で読み取ったときの検知電圧を示す。さらに、図23(a)、図24(a)に示された偽造品を読取り装置で読み取ったときの検知電圧を図23(b)、図22(b)にそれぞれ示す。
【0156】
図21(a)に示す情報記録貼付体131は、漏洩マイクロ波センサの周波数に共振するような幅及び長さにした第一導電性領域101と、周波数に共振しない第二導電性領域102の2つの領域から構成され、保護層104、中間層105、金属層(第一導電層101、第二導電層102)、接着層107より形成されている。
【0157】
第一導電性領域101の形状は、漏洩マイクロ波センサの周波数に共振するような幅及び長さとし、図21(b)に示すように、縦の寸法が4mm、横の寸法が1mmであるエレメントを2個配置した。第二導電性領域102の形状は、漏洩マイクロ波センサの周波数に共振しないようにするために白抜きの格子状あるいはメッシュ状とし、縦の寸法が1mm、横の寸法が1mmであるブロックを二次元的に配置した。
【0158】
中間層105は凹凸を施して、この中間層105とこれに積層されている金属層(第一導電層101、第二導電層102)とによってホログラム層を形成して光学的に変化する画像を得られるようにし、光学的変化の機能を持たせた。接着層107は、情報記録貼付体131を身分証明書に貼付するためのものである。保護層104は、表面を保護するものなのでなくてもよい。
【0159】
図22(b)に、実施例4による身分証明書123の構造を示す。この身分証明書123は、身分証明書用の基材124、インキ層125及び情報記録貼付体131を備えている。
【0160】
図22(a)に、情報記録貼付体131を貼付した身分証明書123を、搬送装置127により搬送して測定を行う状態を示す。搬送装置127には漏洩マイクロ波センサ103が取設けてあり、身分証明書123を搬送したときの漏洩マイクロ波センサ103の検知電圧がオシロスコープ112に表示されるようにしている。
【0161】
身分証明書の基材124は厚さ0.3mmのPETフィルムを用いたが、PET以外にも所望の誘電率の材料が取り得る。厚さは0.3〜0.75mm程度が好ましい。身分証明書に必要な情報やデザインを印刷したインキ層125は、所望の誘電率をもち、オフセット印刷によりインキの膜厚約1μmで印刷を行なった。保護層、中間層にはポリエチレン樹脂を用いた。本実施例4では、中間層は、厚さ0.1mmのPETフィルムを用いて、ホログラムの光学変化の基となる凹凸を施した。
【0162】
情報記録貼付体131の第一導電性領域及び第二導電性領域は、中間層にアルミ蒸着を施し、幅0.1mmの白抜き線は、エッチング法によって除去した。
本実施例3において、第一導電性領域と第二導電性領域は、アルミ蒸着により膜厚500Åに形成したが、所望の導電率が得られるものであればクロムなどの材料を用いることができる
【0163】
第一導電性領域は、白抜き線によって周波数24.15GHzに共振する寸法(縦4mm、横1mm)に区切って、左右に各1個配置した。第二導電性領域は白抜き線によって周波数24.15GHzに共振しない寸法(縦1mm、横1mmの格子状)に区切った。なお、白抜き線は、見た目に見えない、あるいは、見え難いような幅にした。
【0164】
誘電体である基材124、インキ層125、保護層104、中間層105は、漏洩マイクロ波センサ103によって測定した場合、情報記録貼付体と比較して非常に低い検知電圧であり無視できるレベルであるので、本実施例4においては考慮しないものとする。
【0165】
図22(c)に示す検知電圧波形a5は、身分証明書を図22(a)に示す装置を用いて測定した結果である。波形a5をみると、第一導電性領域で高レベル、第二導電性領域で低レベル、及び身分証明書123の情報記録貼付体のない部分で約0Vを示したことから、身分証明書123が真正であることが判別できる。
【0166】
図23に、身分証明書の偽造品128の一例を示す。断面図をみると、基材124の上に、真正な身分証明書のインキ層の代わりにカラー複写層129を施し、真正な身分証明書の情報記録貼付体の金属層の代わりに入手可能なアルミ箔130を接着層107で貼付したものである。図23(b)に、検知電圧波形a6を示す。
【0167】
真正なる身分証明書との相違は2つあり、1つは、金属層の膜厚が厚い点にある。このため、漏洩マイクロ波センサ103によって測定すると、ホログラム全域が中レベルになる。もう1つは、アルミ箔130が白抜き線によって分割されていないことから、真正な身分証明書に施されている第一導電性領域101と第二導電性領域102が存在しないため、漏洩マイクロ波センサ103を用いて測定すると、第一導電性領域の周波数(24.15GHz)に共振する領域が存在しない。これらの2つの理由から、漏洩マイクロ波センサを用いて測定すると、検知電圧波形a6を示し、身分証明書が偽造であることが判別できる。
【0168】
図24に、身分証明書の偽造品128の別の例を示す。断面図をみると、基材124の上に、真正な身分証明書のインキ層の代わりにカラー複写層129を施し、同様に、真正な身分証明書の情報記録貼付体の金属層の代わりにカラー複写機によりカラー複写層を施して偽造したものである。
【0169】
図24(b)に、検知電圧波形a7を示す。
真正品との相違は、漏洩マイクロ波センサ103によって測定すると、アルミによる金属層がないためホログラム全域が約0Vになることと、さらに、第一導電性領域101が存在しないことから、周波数(24.15GHz)に共振のレベルが得られないことにある。この2つの相違に基づき、身分証明書が偽造であることを判別することができる。
【0170】
(実施例5)
図25に、情報記録貼付体131を貼付した身分証明書123の他の例を示すが、これは身分証明書用の基材124、インキ層125及び情報記録貼付体131によって構成されている。
【0171】
実施例4における情報記録貼付体の構成は、縦方向の白抜き線を垂直、及び、横方向の白抜き線を水平に配置したメッシュ状とした。それに対して、本実施例5における情報記録貼付体の構成は、縦方向の白抜き線及び横方向の白抜き線をそれぞれ斜めに配置し、第二導電性領域102のデザインを菱形が集合した形状とすることにより、第一導電性領域101のデザインは菱形の一部分をつなげて漏洩マイクロ波センサ103に共振する長さにした。
このため、図22(b)に示された実施例4の情報記録貼付体131と比較して、第一導電性領域101の存在がより確認しづらい形状にすることが可能となった。
【0172】
図25(b)に検知電圧波形a8を示す。波形a8をみると、第一導電性領域101で高レベル、第二導電性領域102で低レベル、及び、身分証明書123の情報記録貼付体のない部分で約0Vを示したことから、身分証明書123が真正であることを判別することができる。
【0173】
(実施例6)
図26に、情報記録貼付体126の他の例を示す。この実施例6では、保護層104、中間層105及び金属層106により構成される情報記録貼付体126を、接着層107によって書類等に貼付できるようにしたものである。
【0174】
金属層106は白抜き線により区切ることによって、縦縞からなる第一導電性領域101及び横縞からなる第二導電性領域102を形成する。第一導電性領域101は、漏洩マイクロ波センサ103の周波数に共振するような形状とし、幅が0.5mm、長さが4mmである線形状のものを2箇所に3本ずつ配置した。第二導電性領域102は、漏洩マイクロ波センサの周波数に共振しないような形状とし、幅が0.5mm、長さが4mmではない線形状のものを複数、並列に配置したため、第一導電性領域1の存在が確認し難い形状にすることができた。
【0175】
図26(c)に、検知電圧波形a9を示す。波形a9をみると、2箇所の第一導電性領域101で高レベル、第二導電性領域102で低レベルを示したことから、書類等に貼付される情報記録貼付体126が真正であることがわかる。
【0176】
(実施例7)
図27〜29は、実施例7を説明する図である。漏洩マイクロセンサで読み取った後、さらに材料を検知することができる渦電流センサを用いた読み取りを行うことで、さらに真偽判別の効果を高めることができる。
【0177】
図27は、真正な情報記録媒体131を貼付した身分証明書123の構造と、身分証明書を漏洩マイクロ波センサによりスキャン方向に読み取った検知電圧と、渦電流センサによりスキャン方向に読取った検知電圧を示す。
【0178】
図28は、真正な情報記録媒体の第一導電性領域の部分に相当する個所にアルミ箔130を貼り付けることで、漏洩マイクロ波センサにより真正品と同様な検知電圧が得られるようにした偽造身分証明書の構造と、偽造身分証明書を漏洩マイクロ波センサによりスキャン方向に読取った検知電圧と、渦電流センサによりスキャン方向に読み取った検知電圧を示す。
なお、図27に示す情報記録媒体は、実施例4に示したものと同等な構成である。
【0179】
図29に漏洩マイクロ波センサ及び渦電流センサを用いた読み取り装置を示す。情報記録貼付体131を貼付した身分証明書123を、搬送装置127により搬送して測定を行う状態を示す。搬送装置127には漏洩マイクロ波センサ103及び渦電流センサ132が取設けてあり、身分証明書123を搬送したときの漏洩マイクロ波センサ103及び渦電流センサ132の検知電圧がオシロスコープ112に表示されるようにしている。
【0180】
身分証明書を判別する過程を図27を用いて説明する。図27(b)に示す検知電圧波形a10は、図29の搬送装置127で搬送される身分証明書123を、漏洩マイクロ波センサ103の部分で測定した結果である。波形a10において、第一導電性領域はマイクロ波に共振して高レベル、第二導電性領域は共振しないため低レベル及び情報記録貼付体のない部分は0Vを示した。
【0181】
一方、図27(c)に示す検知電圧波形a11は、搬送される身分証明書123を図29の搬送装置127の渦電流センサ132の部分で測定した結果である。検知電圧波形a11は、金属に反応する渦電流センサ132が、身分証明書123の情報記録媒体131の第一導電性領域101及び第二導電性領域102の両方を検知するため、情報記録媒体の部分全体が高レベルを示した。
【0182】
図28に身分証明書の偽造品128を判別する過程を説明する。図28(a)の断面図をみると、基材124の上に、真正な身分証明書のインキ層の代わりにカラー複写層129を施し、真正な情報記録貼付体の第一導電性領域金属層の代わりに入手可能なアルミ箔130を接着層107で貼付したものである。
【0183】
図28(b)に示す検知電圧波形a12は、図29に示す読み取り装置の漏洩マイクロ波センサ103の部分で偽造品128を測定した結果である。波形a12において、真正品の第一導電性領域に相当する部分はアルミ箔130が貼り付けられているため真正品のように高レベルを示し、真正品の第二導電性領域に相当する部分は何もないため約0Vを示し、及び情報記録貼付体のない部分は0Vを示した。
【0184】
一方、図28(c)に示す検知電圧波形a13は、偽造品を図29に示す読み取り装置の渦電流センサ132の部分で測定した結果である。金属に反応する渦電流センサ132が、真正品の情報記録媒体の第二導電性領域に相当するアルミ箔130を検知するが、第一導電性領域に相当する部分には何もないため0Vを示した。
【0185】
このように、情報記録貼付体を貼付した身分証明書の真偽判別方法として、読取り装置に第一のセンサとして漏洩マイクロ波センサ103を用い、さらに第二のセンサとして渦電流センサ131を用いることにより、真正品は、貼付された情報記録媒体の全体が導電性をもち、かつ部分的にマイクロ波に共振することを検知することで、身分証明書123が真正であることをより高精度に判別することが可能となる。
【0186】
(実施例8)
図30〜32は、実施例8を説明する図である。漏洩マイクロセンサで読み取った後、さらに光の透過量を検知することができる透過型赤外線センサを用いた読み取りを行うことで、さらに真偽判別の効果を高めることができる。
【0187】
図30は、真正な情報記録媒体131を貼付した身分証明書123の構造と、身分証明書を漏洩マイクロ波センサによりスキャン方向に読取った検知電圧と、透過型赤外線センサ133によりスキャン方向に読み取った検知電圧を示す。
【0188】
図31は、真正な情報記録媒体の第一導電性領域部分に相当する個所にアルミ箔130を貼り付けて、漏洩マイクロ波センサにより真正品と同様な検知電圧が得られるようにした偽造身分証明書の構造と、偽造身分証明書を漏洩マイクロ波センサによりスキャン方向に読取った検知電圧と、透過型赤外線センサ133によりスキャン方向に読取った検知電圧を示す。
なお、図30に示す情報記録媒体は、実施例4に示したものと同等な構成である。
【0189】
図32は漏洩マイクロ波センサ及び透過型赤外線センサ133を用いた読み取り装置を示す。情報記録貼付体131を貼付した身分証明書123を、搬送装置127により搬送して測定を行う状態を示す。搬送装置127には漏洩マイクロ波センサ103及び透過型赤外線センサ133が取り設けてあり、身分証明書123を搬送したときの漏洩マイクロ波センサ103及び透過型赤外線センサ132の検知電圧がオシロスコープ112に表示されるようにしている。
【0190】
身分証明書を判別する過程を図30を用いて説明する。図30(b)に示す検知電圧波形a14は、図32の搬送装置127で搬送される身分証明書123を、漏洩マイクロ波センサ103の部分で測定した結果である。波形a14において、第一導電性領域はマイクロ波に共振して高レベル、第二導電性領域は共振しないため低レベル及び情報記録貼付体のない部分は0Vを示した。
【0191】
一方、図30(c)に示す検知電圧波形a15は、搬送される身分証明書123を図32の搬送装置127の透過型赤外線センサ133の部分で測定した波形である。透過型赤外線センサ133は、身分証明書の基材124、インキ層125、保護層104、中間層105、第一導電性領域101及び第二導電性領域102の分光反射率特性に基づいて検知を行うものである。
【0192】
情報記録貼付体131のない基材層124の部分は赤外線が透過しやすいため高レベルを示し、第一導電性領域101及び第二導電性領域102は本実施例では膜厚500Åのアルミ蒸着により形成したため、蒸着膜厚と赤外線透過量の関係から中レベルを示した。なお、第一導電性領域101及び第二導電性領域102は、ネガ/ポジによる白抜き線等によって細分割されており、その線幅が狭いため透過型赤外線センサ133の分解能上、検知電圧波形a15にレベルを示さない。
【0193】
図31に身分証明書の偽造品128を判別する過程を説明する。図31(a)の断面図をみると、基材124の上に、真正な身分証明書のインキ層の代わりにカラー複写層129を施し、真正な情報記録貼付体の第一導電性領域金属層の代わりに入手可能なアルミ箔130を接着層107で貼付したものである。
【0194】
図31(b)に示す検知電圧波形a16は、図32に示す読み取り装置の漏洩マイクロ波センサ103の部分で偽造品128を測定した結果である。波形a16において、真正品の第一導電性領域に相当する部分はアルミ箔130が貼り付けられているため真正品のように高レベルを示し、真正品の第二導電性領域に相当する部分は何もないため約0Vを示し、及び情報記録貼付体のない部分は0Vを示した。
【0195】
一方、図31(c)に示す検知電圧波形a17は、偽造品を図32に示す読み取り装置の透過型赤外線センサ133の部分で測定した結果である。情報記録貼付体のない基材層124の部分は赤外線が透過しやすいため高レベルを示し、第一導電性領域に相当する部分はアルミ箔130が貼り付けられており、赤外線が透過しないため約0Vを示した。第二導電性領域に相当する部分はアルミ箔130が貼り付けられていないため、基材層124と同等な高レベルを示した。
【0196】
このように、情報記録貼付体を貼付した身分証明書の真偽判別方法として、読取り装置に第一のセンサとして漏洩マイクロ波センサ103を用い、さらに第二のセンサとして透過型赤外線センサ133を用いることにより、真正品は、貼付された情報記録媒体の全体が膜厚500Åのアルミ蒸着で形成したため中レベルを示し、かつ部分的にマイクロ波に共振することを検知することで、身分証明書123が真正であることをより高精度に判別することが可能となる。
【0197】
以上の実施例4〜8からわるように、本発明の情報記録貼付体は、箔に漏洩マイクロ波センサに共振する領域と共振しない領域とを任意の形状を用いて設けることで、情報を担持させることが可能であり、このような情報記録貼付体を身分証明書、カード、各種貴重製品等に貼付することで偽造防止を図るものである。上記実施例4〜8においては、金属蒸着層に白抜き線を施して、第一導電性領域101と第二導電性領域102を形成した例を示したが、同様な効果が得られれば、他のデザインも取り得ることは言うまでもない。
【0198】
以上説明したように、上記第6、第7の実施の形態によれば、アルミニウムなどの金属のみを配置するのではなく、樹脂基材へ部分的に金属(導電体)を付着した情報記録貼付体を貼付した紙等印刷シート及びその真偽判別方法が提供される。
【0199】
より具体的には、定在波を生じている導波管に漏えい孔を設け、漏えいする偏波であるマイクロ波を用いて、金属付着領域における共振特性と遮蔽特性及び樹脂基材上の金属非付着領域及び紙等印刷シートの誘電特性を用いて真偽判別を行うことが可能となる。これにより、メタライズド技術による偽造品との真偽判別及びフレキシブルな紙等の搬送中における真偽判別を安価でかつ確実なものとすることができる。
【0200】
さらに、情報記録貼付体に埋め込んだ情報の構造が容易に発見されないようにするために、共振特性を生じない金属付着領域を格子状に配列している。この結果、機械によって読み取った際には、共振する金属付着領域と共振しない金属付着領域それぞれ固有の検知電圧波形が得られる。
【0201】
以上のように、上記第6、第7の実施の形態による情報記録貼付体は、金属層において、マイクロ波に共振しない導電性領域に囲まれるようにマイクロ波に共振する導電性領域が配置されているので、一見した場合、情報が付与されていないようにみえる。しかし、実際は金属層の部分がネガ/ポジによる白抜き線等によって細分割されている。このため、機械によって読み取った際に、マイクロ波センサの周波数に共振する第一導電性領域と、マイクロ波センサの周波数に共振しない第二導電性領域の2つの領域による固有の検知電圧波形が得られ、正確に真偽判別を行うことができる。
【0202】
また、上記実施の形態による情報記録貼付体では、情報記録貼付体の製造時において、ネガ/ポジによる白抜き線等により細分割の加工を施しているため、偽造する際に情報が付されていることに気付きにくく、さらにこの微細な白抜き線を再現することが困難となることから、偽造やデータ変造を有効に防止することができる。
【0203】
さらに、情報記録貼付体にホログラム等を加工しておくことにより、その光学変化効果により反射光が回折されるため、ネガ/ポジによる白抜き線の視認性をさらに困難にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】本発明の第1の実施の形態による情報記録貼付体の構造及び検知電圧を示す説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態による情報記録貼付体の構造及び検知電圧を示す説明図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態による情報記録貼付体の構造及び検知電圧を示す説明図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態による情報記録貼付体の構造及び検知電圧を示す説明図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態による情報記録貼付体の構造及び検知電圧を示す説明図である。
【図6】本発明の上記第1〜第5の実施の形態において用いる導電体及び誘電体の測定を同時に行うことのできるセンサの構成を示す説明図である。
【図7】本発明の上記第1〜第5の実施の形態において用いる漏洩マイクロ波センサの主要な部分を示す説明図である。
【図8】本発明の上記第1〜第5の実施の形態においてセンサの上に被測定物をおいて測定する状態を示す説明図である。
【図9】同センサを用いて得られた検知電圧の分類を示す図である。
【図10】本発明の上記第1〜第5の実施の形態において用いるマイクロ波センサの断面構造を示す断面図である。
【図11】上記第1〜第5の実施の形態による情報記録貼付体における金属層のパターンの長さとマイクロ波検知電圧とを示すグラフである。
【図12】上記第1〜第5の実施の形態における実施例1による身分証明書を示す図である。
【図13】同身分証明書の偽造品を示す図である。
【図14】判別装置の構成の一例を示す説明図、並びに真正な身分証明書及び偽造品を判別するとき検知電圧を示すグラフである。
【図15】上記第1〜第5の実施の形態における実施例2による金券を示す図である。
【図16】第1〜第5の実施の形態における実施例3による身分証明書及び検知電圧の例を示す図である。
【図17】同実施例3による偽造品の例を示す図である。
【図18】本発明の第6の実施の形態による情報記録貼付体の構造及び検知電圧を示す説明図である。
【図19】本発明の第7の実施の形態による情報記録貼付体の構造及び検知電圧を示す説明図である。
【図20】同情報記録貼付体を検知したときの電圧を示すグラフである。
【図21】第6、第7の実施の形態における実施例4による情報記録貼付体の構造を示す説明図である。
【図22】同実施例4による身分証明書、搬送装置、検知電圧の例を示す図である。
【図23】同実施例4による偽造品の例を示す図である。
【図24】同実施例4による偽造品の例を示す図である。
【図25】第6、第7の実施の形態における実施例5による身分証明書及び検知電圧の例を示す図である。
【図26】第6、第7の実施の形態における実施例6による情報記録貼付体の例を示す図である。
【図27】第6、第7の実施の形態における実施例7による身分証明書及び検知電圧の例を示す図である。
【図28】同実施例7による偽造品の例を示す図である。
【図29】同実施例7による搬送装置の例を示す図である。
【図30】第6、第7の実施の形態における実施例8による身分証明書及び検知電圧の例を示す図である。
【図31】同実施例8による偽造品の例を示す図である。
【図32】同実施例8による搬送装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0205】
1 保護層
2 中間層
3 金属層
4 接着層
5、5’ 第一金属層
6 第二金属層
7 非導電領域
8 導波管
9 照射手段
10 受信手段
11 漏洩孔
12 被測定物
13 漏洩マイクロ波センサ
14 反射板
15 電磁波
16 磁界分布
17 電界分布
18 送信アンテナ
19 受信アンテナ
20 マイクロ波送受信部
21 受信アンテナ
22 受信ダイオード
23 身分証明書
24 身分照明書の偽造品
25 インキ層
26 基材層
27 アルミ箔など
28 搬送装置
29 オシロスコープ
30 金券
31 用紙
32 判別用ラベル
101 第一導電性領域
102 第二導電性領域
103 漏洩マイクロ波センサ
104 保護層
105 中間層
106 金属層
107 接着層
112 オシロスコープ
123 身分証明書
124 基材
125 インキ層
126、131 情報記録貼付体
127 搬送装置
128 偽造品
129 カラー複写層
130 アルミ箔
132 渦電流センサ
133 透過型赤外線センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材の表面上に、少なくとも一つの導電体付着領域と少なくとも一つの導電体非付着領域とを有する情報記録貼付体であって、
前記導電体付着領域の少なくとも一つは長辺の長さが、所定の波長の1/2 (nは0以上の整数)であることを特徴とする情報記録貼付体。
【請求項2】
前記導電体付着領域が異方性形状を有することを特徴とする請求項1記載の情報記録貼付体。
【請求項3】
前記導電体付着領域が長方形又は楕円であることを特徴とする請求項2記載の情報記録貼付体。
【請求項4】
前記導電体付着領域を複数備え、前記導電体非付着領域を間に介在した状態で配列されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の情報記録貼付体。
【請求項5】
前記導電体付着領域を複数備え、前記導電体非付着領域を間に介在した状態で、格子状に配列されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の情報記録貼付体。
【請求項6】
前記導電体付着領域を複数備え、長辺の長さが前記所定の波長の1/2(nは0以上の整数) である前記導電体付着領域の周囲に、前記導電体非付着領域を間に介在した状態で、長辺の長さが前記所定の波長の1/2(nは0以上の整数) と異なる前記導電体付着領域が少なくとも一つ配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の情報記録貼付体。
【請求項7】
前記導電体付着領域を複数備え、長辺の長さが前記所定の波長の1/2(nは0以上の整数) である前記導電体付着領域の周囲を囲むように、前記導電体非付着領域を間に介在した状態で、長辺の長さが前記所定の波長の1/2(nは0以上の整数)と異なる前記導電体付着領域が配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の情報記録貼付体。
【請求項8】
前記導電体付着領域の少なくとも一つにホログラムが形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の情報記録貼付体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一に記載された情報記録貼付体が貼付されたシートを備えることを特徴とする印刷シート。
【請求項10】
樹脂基材の表面上に、少なくとも一つの導電体付着領域と少なくとも一つの導電体非付着領域とを有する情報記録貼付体の真偽判別方法であって、
所定の波長を有するマイクロ波を導波管の漏えい孔から漏えいさせるステップと、
前記漏えい孔と相対するように前記情報記録貼付体を搬送させるステップと、
前記導波管中の前記マイクロ波を受信して電圧を測定することで、前記情報記録貼付体における前記導電体付着領域が有する導電特性、並びに前記基材及び前記導電体非付着領域が有する非導電体特性がそれぞれ与える前記マイクロ波への影響を測定するステップと、
前記受信電圧の測定結果と真正なる情報記録貼付体を測定したときの受信電圧とを比較することで、前記情報記録貼付体の真偽判別を行うステップと、
を備えることを特徴とする情報記録貼付体の真偽判別方法。
【請求項11】
前記所定の波長を有するマイクロ波を前記導波管の前記漏えい孔から漏えいさせるステップでは、前記マイクロ波の腹の部分を漏洩させることを特徴とする請求項10記載の情報記録貼付体の真偽判別方法。
【請求項12】
前記マイクロ波への影響を測定後、光学センサ、静電容量センサあるいは渦電流センサを用いて電圧波形を測定するステップを備え、
前記情報記録貼付体の真偽判別を行うステップでは、さらに前記電圧波形と、前記導波管中の前記マイクロ波を受信した電圧を比較することにより真偽判別を行うことを特徴とする請求項10記載の情報記録貼付体の真偽判別方法。
【請求項13】
前記マイクロ波への影響を測定後、前記情報記録貼付体に近赤外線光を照射して、前記情報記録貼付体を透過した前記近赤外線光の光量波形を測定するステップを備え、
前記情報記録貼付体の真偽判別を行うステップでは、さらに前記光量波形と、前記導波管中の前記マイクロ波を受信した電圧を比較することにより真偽判別を行うことを特徴とする請求項10記載の情報記録貼付体の真偽判別方法。
【請求項14】
前記マイクロ波への影響を測定後、前記情報記録貼付体に近赤外線光を照射して、前記情報記録貼付体を透過した前記近赤外線光の光量波形を測定するステップを備え、
前記情報記録貼付体の真偽判別を行うステップでは、前記光量波形から得られる光の非透過性と、前記導波管中の前記マイクロ波を受信した電圧から得られる電波のシールド性を比較することにより真偽判別を行うことを特徴とする請求項13記載の情報記録貼付体の真偽判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2007−207060(P2007−207060A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26652(P2006−26652)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】