説明

情報通信システム、及び発光装置

【課題】自動車等の移動体と当該移動体外との間において情報を伝達することができる安価な情報通信技術を提供する。
【解決手段】交通信号機10では、主目的(色信号の出力)と、当該主目的とは異なる目的(第1の送信情報の送信)の為に、第1の送信情報に応じて主目的用の可視光線を変調して出力し、車両20の受光ユニット20Pで、交通信号機10からの可視光線を受光して、当該可視光線に係る電気信号を解析して第1の送信情報を取得する。また、車両20のヘッドライト20Lでは、主目的(車両前方の照明)と、当該主目的とは異なる目的(第2の送信情報の送信)の為に、第2の送信情報に応じて主目的用の可視光線を変調して出力し、交通信号機10の受光ユニット10Pで、車両20から出力される可視光線を受光して、当該可視光線に係る電気信号を解析して第2の送信情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の移動体向けの情報通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信技術の進歩により、例えば自動車に設置された車載器にICカードを挿入し、有料道路の料金所ゲートの路側アンテナとの双方向無線通信により、自動で料金決済を行うETC(Electronic Toll Collection System)等が実現されている。このような自動車等の移動体と移動体外に設置された装置との間における通信形態としては、赤外光や電波等を用いたものが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような通信技術では、赤外光や電波等を送受信する特別な装置を新たに準備する必要性がある。つまり、例えば、人や荷物等を輸送するといった通常の移動体本来の目的を果たす上では必須でない情報送受信用の装置を、デフォルトの移動体に対して、わざわざ設置しなければならず、コスト上昇を招く。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、自動車等の移動体と当該移動体外との間において情報を伝達することができる安価な情報通信技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、情報通信システムであって、発光装置と、受光装置とを備え、前記発光装置が、第1の可視光線を出力する発光部と、前記発光部から出力される光線を所定の送信情報に応じて前記第1の可視光線から第2の可視光線に変調する変調部と、を有し、前記受光装置が、前記発光部から出力された前記第2の可視光線を受光する受光部と、前記受光部によって受光された前記第2の可視光線に応じた信号を解析することで前記送信情報を取得する情報取得部と、を有し、前記発光装置及び前記受光装置のうちの少なくとも一方が移動体に搭載されたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の情報通信システムであって、前記発光装置が、交通機関に係る可視的な色信号を前記第1の可視光線として出力する前記発光部を有する交通信号機であり、前記受光装置が、移動体に搭載されたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の情報通信システムであって、前記発光装置が、前記移動体に搭載され、前記発光部が、移動体に設けられた「ヘッドライト」、「テールライト」及び/または「ウインカー」を含む発光部であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の情報通信システムであって、前記受光装置が、前記発光装置が搭載された移動体とは別体である移動体に搭載されたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項5の発明は、発光装置であって、第1の可視光線を出力する発光部と、前記発光部から出力される光を所定の送信情報に応じて前記第1の可視光線から第2の可視光線に変調する変調部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載の発光装置であって、前記発光装置が、交通機関に係る可視的な色信号を前記第1の可視光線として出力する前記発光部を有する交通信号機であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項7の発明は、請求項5に記載の発光装置であって、前記発光装置が、前記移動体に搭載され、前記発光部が、前記移動体に設けられた「ヘッドライト」、「テールライト」及び/または「ウインカー」を含む発光部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明によれば、発光装置では、送信情報に応じて第1の可視光線を第2の可視光線に変調して出力し、受光装置では、第2の可視光線を受光して、第2の可視光線に応じた信号を解析することで送信情報を取得し、発光装置及び受光装置のうち少なくとも一方が移動体に搭載されているので、情報送信用の発光装置を改めて設置する必要性がないため、自動車等の移動体と当該移動体外との間において情報を伝達することができる安価な情報通信技術を提供することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、交通機関に係る可視的な色信号を出力する交通信号機の発光部を用いて、送信情報に応じて変調された第2の可視光線を出力させ、移動体で第2の可視光線を受光して送信情報を取得することで、交通信号機は道路沿いの至る所に存在しているため、例えば、移動中の移動体において至る所で情報を得ることができるシステムを容易に実現することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、移動体に搭載された発光装置の「ヘッドライト」、「テールライト」、「ウインカー」といった発光部を用いて、送信情報に応じて変調された第2の可視光線を出力させることで、情報送信用の発光装置を改めて移動体に設置する必要性がないため、移動体向けの情報通信システムを安価に構築することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、移動体に搭載された発光装置の「ヘッドライト」、「テールライト」、「ウインカー」といった発光部を用いて、送信情報に応じて変調された第2の可視光線を出力させる一方で、上記発光装置が搭載された移動体とは別体である移動体で第2の可視光線を受光して送信情報を取得することで、情報送信用の発光装置を改めて設置することなく、移動体同士で情報の伝達が可能な情報通信システムを安価に構築することができる。
【0016】
また、請求項5から請求項7のいずれかに記載の発明によれば、送信情報に応じて第1の可視光線を第2の可視光線に変調して出力することで、情報送信用の発光装置を改めて設置する必要性がないため、自動車等の移動体と当該移動体外との間において情報を伝達することができる安価な情報通信技術を提供することができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明によれば、交通機関に係る可視的な色信号を出力する交通信号機の発光部を用いて、送信情報に応じて変調された第2の可視光線を出力させることで、交通信号機は道路沿いの至る所に存在しているため、例えば、移動中の移動体において至る所で情報を得ることができる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明によれば、移動体に搭載された発光装置の「ヘッドライト」、「テールライト」、「ウインカー」といった発光部を用いて、送信情報に応じて変調された第2の可視光線を出力させることで、情報送信用の発光装置を改めて移動体に設置する必要性がないため、自動車等の移動体と当該移動体外との間における情報の伝達を安価に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る情報通信システムの一例である交通情報提供システム1の概要を示す図である。
【0021】
図1に示すように、交通情報提供システム1では、複数の交通信号機10と当該複数の交通信号機10を統括制御する管理サーバ200とが、ネットワーク回線100を介して各種データ信号の送受信が可能に接続されている。なお、このネットワーク回線100は、有線回線や無線回線等を適宜使用することで構築することができる。
【0022】
また、交通情報提供システム1においては、移動体の一種である自動車等の車両20と各交通信号機10との間で、可視光線を用いた各種データ信号の送受信が可能となっている。
【0023】
以下、図2から図8を参照しつつ、各交通信号機10と車両20との間におけるデータ信号の送受信について説明する。
【0024】
交通信号機10は、道路の交通をスムーズに行わしめるために、進行可能を示す青色の信号や停止を示す赤色の信号等といった可視的な所定の色の信号(以下、「色信号」とも称する)を発光によって出力する発光装置である。つまり、交通信号機10は、交通機関に係る可視的な色信号を出力することを本来の目的(以下、「主目的」とも称する)として、道路沿いの至る所(特に、交差点付近)に設けられている。
【0025】
図2は交通信号機10の外観構成を示す模式図である。図2に示すように、交通信号機10は、例えば青黄赤の三色の光線をそれぞれ出力する3つの発光部BS,YS,RSが水平方向に並設されて構成される。なお、本実施形態では、交通信号機10は、各発光部BS,YS,RSにそれぞれ青黄赤の三色の光線を出力する発光ダイオード(LED)が使用されたLED式の交通信号機であるものとして説明を行う。
【0026】
この交通信号機10では、車両20に対して送信すべき情報(以下、「第1の送信情報」とも称する)に応じて、発光部BS,YS,RSから出力される光を適宜変調して出力することができる。この第1の送信情報に応じた光の変調についてはさらに後述する。また、交通信号機10には、外部からの可視光線を受光する受光ユニット10Pが追加されており、交通信号機10は受光装置としての機能も有する。
【0027】
図3は車両20の外観構成を示す模式図である。図3に示すように、車両20は車両本体20Bにヘッドライト20L、及び受光ユニット20P等が搭載されている。
【0028】
ヘッドライト20Lは、暗所において車両前方を照明することを本来の目的(主目的)として、車両本体20Bの前方に発光部の一種として配置されている。なお、本実施形態では、ヘッドライト20Lは、例えば発光ダイオード(LED)を用いて所定の色の光を出力するLED式のヘッドライトであるものとして説明を行う。また、この車両20では、交通信号機10に対して送信すべき情報(以下「第2の送信情報」とも称する)に応じて、ヘッドライト20Lから出力される光を適宜変調して出力することができる。この第2の送信情報に応じた光の変調についてもさらに後述する。
【0029】
受光ユニット20Pは、車両20の前方からの可視光線を受光して、受光した可視光線に応じた信号を解析することで、第1の送信情報を取得する受光装置として機能する。
【0030】
図4は交通信号機10と車両20との間における通信を説明するための模式図であり、一例として、交差点に設けられた交通信号機10の発光部RSから赤信号が出力されており、車両20が交差点に進入しようとしている状態を上方から表している。
【0031】
図4に示すように、交通信号機10の発光部RSから第1の送信情報に応じて変調された赤色光RLが出力され、その赤色光RLが車両20に設けられた受光ユニット20Pで受光される。そして、車両20において受光ユニット20Pで受光した赤色光RLに応じた電気信号を解析することで第1の送信情報を取得することができる。
【0032】
また、車両20のヘッドライト20Lから第2の送信情報に応じて変調された可視光線ALが出力され、その可視光線ALが交通信号機10に設けられた受光ユニット10Pで受光される。そして、交通信号機10において受光した可視光線ALに応じた電気信号を解析することで第2の送信情報を取得することができる。
【0033】
図5は交通信号機10における第1の送信情報を送信するための機能(送信機能)を説明するための機能ブロック図である。図5に示すように、交通信号機10の送信機能は、例えば、入出力インターフェース(I/F)11、制御部12、変調回路13、駆動装置14、及び発光部BS,YS,RS等によって構成される。
【0034】
入出力I/F11は、ネットワーク回線100を介して管理サーバ200等からの各種データ信号を受信したり、制御部12からの各種データ信号をネットワーク回線100を介して管理サーバ200等に送信するものである。
【0035】
制御部12は、交通信号機10内の各部を統括制御するものであり、例えば、CPUやROMやRAM等を有するマイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略称する)によって構成され、ROM内等に格納されるプログラムをCPUに読み込んで実行することで、各種制御を実現する。例えば交通信号機10の青黄赤の色信号の切替タイミングを制御するプログラムをCPUが読み込むことで、色信号の切替を制御することができる。なお、制御部12は、管理サーバ200から送信されるデータ信号に応答して、色信号の切替タイミングを適宜変更することもできる。
【0036】
そして、制御部12によって、色信号の発光を制御する信号(以下「第1の発光制御信号」)を駆動装置14に出力することで、第1の発光制御信号によって指定された色に対応する発光部RS,YS,BSに対して駆動装置14により電流が付与され、発光部RS,YS,BSが所定の色の可視光線を出力する。例えば制御部12から駆動装置14に対して、赤色の色信号の発光を指示する第1の発光制御信号が出力されている場合には、発光部RSの発光ダイオードに所定強度の電流が付与されて、発光部RSが赤色光を出力する。このようにして、交通信号機10は、主目的にあたる交通機関に係る可視的な色信号の出力を果たすべく、発光部RS,YS,BSから可視光線を出力することができる。
【0037】
また、制御部12は、当該交通信号機10の周辺道路の交通情報(例えば渋滞情報や事故情報や工事情報等)をネットワーク回線100を介して管理サーバ200から随時取得することができる。そして、制御部12は、当該交通信号機10において色信号が切り替わるまでの時間(例えば赤信号が青信号に変わるまでの時間)や周辺道路の交通情報等に係るデータ信号を変調回路13に出力する。なお、以下では、周辺道路の交通情報や色信号が切り替わるまでの時間等といった道路交通に関する情報を合わせて「道路交通情報」と総称する。そして、本実施形態では、この道路交通情報が、交通信号機10から車両20に向けて送信すべき第1の送信情報に相当する。
【0038】
変調回路13は、制御部12から入力される道路交通情報に係るデータ信号を例えば高周波のデータ信号(以下「第1の高周波信号」とも称する)に変調するものであり、変調回路13で生成される第1の高周波信号は駆動装置14に出力される。
【0039】
駆動装置14は、発光部RS,YS,BSの発光ダイオードに対して電流を付与することで発光部RS,YS,BSを発光させるものであり、制御部12から第1の発光制御信号を受信し、変調回路13から第1の高周波信号を受信する。
【0040】
この駆動装置14では、上述したように第1の発光制御信号に応答して、第1の発光制御信号によって指定された色信号に対応する発光部RS,YS,BSを所定輝度で発光させるために、所定強度の電流を発生させる。また、駆動装置14は、変調回路13から入力される第1の高周波信号を、上記所定強度の電流に対して重畳させることで、例えば所定強度前後で細かく電流値が変化する電流を発光部RSの発光ダイオードに対して付与する。したがって、交通信号機10では、駆動装置14等により、第1の送信情報に応じて、発光部RSから出力される赤色光を、所定強度の電流に対応する可視光線から、所定強度の電流に第1の高周波信号が重畳された電流に対応する可視光線に変調する。
【0041】
このようにして、交通信号機10では、可視的な色信号を出力する際に、色信号を第1の送信情報に応じて変調して出力するため、主目的である交通機関に係る可視的な色信号の出力だけでなく、主目的とは異なる他の目的(以下「副目的」とも称する)である車両20に対する第1の送信情報の送信も時間的に並行して果たすことができる。つまり、交通信号機10では、第1の送信情報を送信するための特別な装置を新規に設けずに、他の主用途のための装置の働きに便乗して、第1の送信情報の送信といった主用途とは異なる他の用途(以下「副用途」とも称する)も実現することができる。
【0042】
図6は車両20における第1の送信情報の受信に係る機能(受信機能)を説明するための機能ブロック図である。図6に示すように、車両20の受信機能は、例えば、受光ユニット20P、制御部21、及び表示装置22等によって構成され、受光ユニット20Pは、受光素子25、周波数分解回路26、及び復調回路27等によって構成される。
【0043】
受光素子25は、可視光線すなわち光信号を電気信号に変換するフォトダイオード等で構成され、交通信号機10から出力された可視光線を受光し、受光した可視光線に応じた電気信号に変換して、周波数分解回路26に出力する。
【0044】
周波数分解回路26は、受光素子25から入力される電気信号を解析して、第1の送信情報に対応する高周波の信号を抽出して、復調回路27に出力する。なお、受光素子25から周波数分解回路26に入力される電気信号は、第1の送信情報に対応する高周波の信号と、交通信号機10からの交通機関に係る可視的な色信号の出力に対応する信号と、その他環境光(例えば車両20のヘッドライト20Lからの出力光に起因する光等)に対応する信号とが重畳した信号となっている。そこで、周波数分解回路26では、受光素子25から入力される電気信号から第1の送信情報に対応する所定の高周波成分を抽出する。
【0045】
復調回路27は、交通信号機10の変調回路13における変調方式に対応する復調方式により、周波数分解回路26から入力される高周波の信号を、第1の送信情報を示すデータ信号に復調し、制御部21に出力する。このようにして、周波数分解回路26、及び復調回路27等の協働により、第1の送信情報を取得する。
【0046】
制御部21は、車両20の各部を制御するものであり、例えば、CPUやROMやRAM等を有するマイコンによって構成され、ROM内等に格納されるプログラムをCPUに読み込んで実行することで、各種制御を実現する。この制御部21は、復調回路27から入力される第1の送信情報を示すデータ信号に基づいて、車両20の車室内に設けられた表示装置22に第1の送信情報(ここでは道路交通情報)を示す文字やグラフィックス等によって構成される各種表示を出力させる。その結果、車両20の運転者は、表示部22に表示される各種表示を視認することで、交通信号機10から送信されてきた道路交通情報を把握することができる。
【0047】
図7は車両20における第2の送信情報の送信に係る機能(送信機能)を説明するための機能ブロック図である。
【0048】
図7に示すように、車両20の送信機能は、例えば、操作部41、センサ42、制御部21、及び発光装置29によって構成され、発光装置29は、変調回路43、駆動装置44、及びヘッドライト20L等を備える。
【0049】
操作部41は、車両20の車室内に設けられた各種ボタンやスイッチ等によって構成され、運転者による各種ボタンやスイッチ等の操作に応じて、制御部21に対して電気信号を送信する。この操作部41としては、例えばヘッドライト20Lを点灯させるスイッチや目的地等を入力するボタン等が挙げられる。
【0050】
センサ42は、車両10の車速や加速度等といった走行に関する情報を検出するセンサであり、検出した情報を示す電気信号を、制御部21に送信する。なお、以下では、目的地や車速や加速度等といった車両10の走行に関する情報を合わせて「車両走行情報」と総称する。また、本実施形態では、この車両走行情報が、車両20から交通信号機10に向けて送信すべき第2の送信情報に相当する。
【0051】
制御部21は、上述したように車両20の各部を制御するものであり、例えば操作部41からのヘッドライト20Lの点灯指示に応答して、駆動装置44にヘッドライト20Lを発光させるための制御信号(以下「第2の発光制御信号」とも称する)を駆動装置44に出力する。そして、駆動装置44は、第2の発光制御信号に応答して、ヘッドライト20L内の複数の発光ダイオードによって構成される発光部20Laに対して電流を付与し、発光部20Laの発光を実現する。このようにして発光装置29は、主目的にあたる車両前方の照明を果たすべく、発光部20Laから可視光線を出力することができる。
【0052】
また、制御部21は、操作部41やセンサ42から入力された車両走行情報に係る電気信号を変調回路43に出力する。
【0053】
変調回路43は、制御部21から入力される車両走行情報に係る電気信号を例えば高周波のデータ信号(以下「第2の高周波信号」とも称する)に変調するものであり、変調回路43で生成される第2の高周波信号は駆動装置44に出力される。
【0054】
駆動装置44は、ヘッドライト20Lの発光部20Laに対して電流を付与することで発光部20Laを発光させるものであり、制御部21から第2の発光制御信号を受信し、変調回路43から第2の高周波信号を受信する。
【0055】
この駆動装置44では、上述したように第2の発光制御信号に応答して、発光部20Laを所定輝度で発光させるために、所定強度の電流を発生させる。また、駆動装置44は、変調回路43から入力される第2の高周波信号を、上記所定強度の電流に対して重畳させることで、例えば所定強度前後で細かく電流値が変化する電流を発光部20Laに対して付与する。したがって、車両20の発光装置29では、駆動装置44等により、第2の送信情報に応じて、発光部20Laから出力される光線を、所定強度の電流に対応する可視光線から、所定強度の電流に第2の高周波信号が重畳された電流に対応する可視光線に変調する。
【0056】
このようにして、車両20では、可視的な照明光を出力する際に、照明光を第2の送信情報に応じて変調して出力するため、主目的である車両前方の照明だけでなく、主目的とは異なる他の目的(副目的)である交通信号機10に対する第2の送信情報の送信も時間的に並行して果たすことができる。つまり、車両20では、第2の送信情報を送信するための特別な装置を新規に設けずに、他の主用途のための装置の働きに便乗して、第2の送信情報の送信といった主用途とは異なる他の用途(以下「副用途」とも称する)も実現することができる。
【0057】
図8は交通信号機10における第2の送信情報の受信に係る機能(受信機能)を説明するための機能ブロック図である。図8に示すように、交通信号機10の受信機能は、例えば、受光ユニット10P、制御部12、及び入出力I/F11等によって構成され、受光ユニット10Pは、受光素子15、周波数分解回路16、及び復調回路17等を備える。
【0058】
受光素子15は、受光素子25と同様に、可視光線すなわち光信号を電気信号に変換するフォトダイオード等で構成され、ヘッドライト20Lから出力された可視光線を受光し、受光した可視光線に応じた電気信号に変換して、周波数分解回路16に出力する。
【0059】
周波数分解回路16は、周波数分解回路26と同様に、受光素子15から入力される電気信号を解析して、第2の送信情報に対応する所定の高周波の信号を抽出して、復調回路17に出力する。
【0060】
復調回路17は、車両20の発光装置29の変調回路43における変調方式に対応する復調方式により、周波数分解回路16から入力される高周波の信号を、第2の送信情報を示すデータ信号に復調し、制御部12に出力する。このようにして、周波数分解回路16、及び復調回路17の協働により、第2の送信情報を取得する。
【0061】
制御部12は、復調回路17から入力される第2の送信情報を入出力I/F11とネットワーク回線100とを介して管理サーバ200に送信する。その結果、管理サーバ200では、多数の車両20に係る第2の送信情報を収集して、渋滞情報等の道路交通情報の更新等に利用することができる。なお、制御部12、及び入出力I/F11の機能については既に説明したので、ここでは省略する。
【0062】
以上のように、本発明の実施形態に係る交通情報提供システム1では、交通信号機10において、主目的(交通機関に係る可視的な色信号の出力)と、当該主目的とは異なる他の目的(第1の送信情報の送信)との双方の目的を果たすために、第1の送信情報に応じて主目的用の可視光線を変調して出力する。そして、車両20に搭載される受光ユニット20Pにおいて交通信号機10から出力される可視光線を受光して、当該受光した可視光線に係る電気信号を解析することで第1の送信情報を取得する。一方、車両20の発光装置29において、主目的(車両前方の照明)と、当該主目的とは異なる他の目的(第2の送信情報の送信)との双方の目的を果たすために、第2の送信情報に応じて主目的用の可視光線を変調して出力する。そして、交通信号機10の受光ユニット10Pにおいて車両20から出力される可視光線を受光して、当該受光した可視光線に係る電気信号を解析することで第2の送信情報を取得する。このような構成により、情報(ここでは第1及び第2の送信情報等)を送信するための発光装置を改めて設置することなく、既存の他の主用途に用いる発光装置(照明設備)を利用して、各種情報を送信することができる。その結果、自動車等の移動体と当該移動体外との間において情報を伝達することができる交通情報提供システム1を安価に構築することができる。
【0063】
また、交通機関に係る可視的な色信号を出力することを主目的とする交通信号機10の発光装置を用いて、第1の送信情報に応じて変調された可視光線を出力させ、当該可視光線を車両20で受信して第2の送信情報を取得する。このように、交通信号機10等といった道路網に沿って至る所に存在する照明・発光装置を活用することで、車両10の移動最中においても至る所で各種情報を取得することができるシステム(「ユビキタスシステム」とも称する)を容易かつ安価に実現することもできる。
【0064】
<変形例>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0065】
◎例えば、上述した実施形態では、交通信号機10の赤色光を出力する発光部RSから第1の送信情報に応じて変調された赤色光を出力したが、これに限られず、例えば、黄色光や青色光を出力する発光部YS,BSから第1の送信情報に応じて変調された可視光線を出力するようにしても良い。
【0066】
◎また、上述した実施形態では、交通信号機10から車両20に対して第1の送信情報を送信したが、これに限られず、例えば既にインフラストラクチャー(インフラ)の一部として路肩に多く設置される街灯等から車両20に対して第1の送信情報を送信しても良い。具体的には、所定の色の可視光線を出力する発光ダイオードを街灯等の発光装置に用い、その発光ダイオードから第1の送信情報に応じて変調された可視光線を出力するようにしても良い。
【0067】
◎また、上述した実施形態では、車両20のヘッドライト20Lから交通信号機10に対して第2の送信情報を送信したが、これに限られず、例えば車両20のテールライトやウインカー等といったその他の発光部を用いて、第2の送信情報に応じて変調された可視光線を出力するようにしても良い。このような構成としても、情報送信用の発光装置を改めて車両20に設置する必要性がないため、車両20等の移動体向けの情報通信システムを安価に構築することができる。
【0068】
◎また、上述した実施形態では、交通信号機10と車両20との間において情報の送受信を行ったが、これに限られず、例えば、車両20同士で情報の送受信をするようにしても良い。具体的には、ヘッドライトやテールライトやウインカー等を有する発光装置と、受光ユニット20Pとを各々別体である複数の車両20にそれぞれ搭載し、相互に各種情報の送受信を発光装置と受光ユニット20Pとを用いて行うようにしても良い。
【0069】
すなわち、車両20に搭載された発光装置のヘッドライト、テールライト、ウインカー等といった発光部を用いて、送信情報に応じて変調された可視光線を出力させる一方で、上記発光装置を備えた車両20とは別体である車両20で可視光線を受光して送信情報を取得するようにしても良い。このような構成とすることによっても、情報送信用の発光装置を車両20に対して改めて設置することなく、車両20同士で情報の伝達が可能な情報通信システムを安価に構築することができる。
【0070】
したがって、発光装置及び受光装置のうちの一方、又は双方、すなわち少なくとも一方が車両20等に搭載されていれば、上述した実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0071】
◎また、上述した実施形態では、移動体の一例として自動車等を含む車両20を例にとって説明したが、これに限られず、移動体としては、例えば自転車や自動二輪車や電車等の各種車両等であっても良いし、さらに、例えば懐中電灯等、それ自体の駆動力では移動をすることができないが、移動可能な人間や車両等によって保持されることで、移動することができるようなものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】交通情報提供システムの概要を示す図である。
【図2】交通信号機の外観構成を示す模式図である。
【図3】車両の外観構成を示す模式図である。
【図4】交通信号機と車両との間における通信を説明するための図である。
【図5】交通信号機の送信機能を説明するための機能ブロック図である。
【図6】車両の受信機能を説明するための機能ブロック図である。
【図7】車両の送信機能を説明するための機能ブロック図である。
【図8】交通信号機の受信機能を説明するための機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
1 交通情報提供システム
10 交通信号機
10P,20P 受光ユニット
12,21 制御部
13,43 変調回路
15,25 受光素子
16,26 周波数分解回路
17,27 復調回路
20 車両
20L ヘッドライト
20La,BS,YS,RS 発光部
29 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報通信システムであって、
発光装置と、受光装置とを備え、
前記発光装置が、第1の可視光線を出力する発光部と、前記発光部から出力される光線を所定の送信情報に応じて前記第1の可視光線から第2の可視光線に変調する変調部と、を有し、
前記受光装置が、前記発光部から出力された前記第2の可視光線を受光する受光部と、前記受光部によって受光された前記第2の可視光線に応じた信号を解析することで前記送信情報を取得する情報取得部と、を有し、
前記発光装置及び前記受光装置のうちの少なくとも一方が移動体に搭載されたことを特徴とする情報通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報通信システムであって、
前記発光装置が、交通機関に係る可視的な色信号を前記第1の可視光線として出力する前記発光部を有する交通信号機であり、
前記受光装置が、移動体に搭載されたことを特徴とする情報通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報通信システムであって、
前記発光装置が、前記移動体に搭載され、
前記発光部が、移動体に設けられた「ヘッドライト」、「テールライト」及び/または「ウインカー」を含む発光部であることを特徴とする情報通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の情報通信システムであって、
前記受光装置が、前記発光装置が搭載された移動体とは別体である移動体に搭載されたことを特徴とする情報通信システム。
【請求項5】
発光装置であって、
第1の可視光線を出力する発光部と、
前記発光部から出力される光を所定の送信情報に応じて前記第1の可視光線から第2の可視光線に変調する変調部と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置であって、
前記発光装置が、交通機関に係る可視的な色信号を前記第1の可視光線として出力する前記発光部を有する交通信号機であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項5に記載の発光装置であって、
前記発光装置が、前記移動体に搭載され、
前記発光部が、前記移動体に設けられた「ヘッドライト」、「テールライト」及び/または「ウインカー」を含む発光部であることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−14019(P2006−14019A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189666(P2004−189666)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】