説明

情報通信端末装置及びその制御方法

【課題】電子キー機能が情報通信の際に利用する周波数に対する各国の法規を満足させることが可能な情報通信端末装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】携帯制御部30が、携帯電話基地局3と情報通信不能、又は、RF出力部24が発信する電波の周波数が携帯電話基地局3の通信圏内で使用不能である場合、RF出力部24の電波発信を禁止する。これにより、電子キー機能が使用可能なエリア内にある時のみ電子キー機能に関係する信号の発信が許可されるので、電子キー機能が通信の際に利用する周波数に対する各国の法規を満足させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キー機能を有する情報通信端末装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両側に設けられた制御装置が、電子キー機能を有する携帯電話機と通信し、電子キー機能が有するIDコードと制御装置内に予め格納されているIDコードとが一致する場合、車両のドアの施開錠やエンジンの始動を許可する電子キーシステムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−264625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、携帯電話機が通話やデータ通信等の情報通信に利用する周波数帯域は世界各国で統一され、ユーザは1台の携帯電話機を世界各国で使用することができるようになりつつある。これに対して、電子キー機能が情報通信に利用する周波数は、各国の法規によって定められており、国毎に異なっている。このため携帯電話機に電子キー機能を搭載した場合、携帯電話機が世界各国の法規を満たさなくなり、ユーザの利便性や携帯電話機の商品性が損なわれる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電子キー機能が情報通信の際に利用する周波数に対する各国の法規を満足させることが可能な情報通信端末装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報通信端末装置及びその制御方法は、基地局と情報通信不能、又は、電子キー機能が発信する電波の周波数が基地局の通信圏内で使用不能である場合、電子キー機能の電波発信を禁止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る情報通信端末装置及びその制御方法によれば、電子キー機能が使用可能なエリア内にある時のみ電子キー機能に関係する信号の発信を許可するので、電子キー機能が通信の際に利用する周波数に対する各国の法規を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態となる電子キーシステムにおける車両の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態となる電子キーシステムにおける携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図3】携帯電話機と携帯電話基地局及び車両との間の情報通信に利用される周波数帯域を示す図である。
【図4】本発明の実施形態となる電波送信制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】(a)電子キー機能が利用可能な時、(b)携帯電話機の位置情報の取得を促す時、(c)電子キー機能が利用不能な時、及び(d)携帯電話基地局及び携帯電話機の位置情報が検知不能な時に携帯電話機の表示部に表示される表示画面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる電子キーシステムの構成を説明する。
【0010】
〔電子キーシステムの構成〕
本発明の実施形態となる電子キーシステムは、図1に示す車両1と図2に示す携帯電話機2を主な構成要素として備える。
【0011】
〔車両の構成〕
車両1は、図1に示すように、アンテナ11,スマートキースイッチ12,アンテナ13,プッシュスイッチ14,アンテナ15,及びコントロールユニット(C/U)16を含む。アンテナ11(スマートキー車外アンテナ)は、ドア等の車両1の外側に配設され、所定周波数(例えば125kHz)の電波を用いてコントロールユニット16から出力された検知信号を車外に送信する。スマートキースイッチ12は、ドア等の車両1の外側に設けられ、押下操作されるのに応じて制御信号をコントロールユニット16に出力する。アンテナ13(スマートキーアンテナ)は、所定周波数(例えば314.85MHz)の電波を受信する。プッシュスイッチ14は、車両1の車室内に設けられ、押下操作されるのに応じて制御信号をコントロールユニット16に出力する。アンテナ15(スマートキー車内アンテナ)は、車両1の車室内に設けられ、所定周波数(例えば125kHz)の電波を用いてコントロールユニット16から出力された検知信号を車室内に送信する。コントロールユニット16は、車両1のドアの施開錠動作やエンジンの始動動作を制御する。
【0012】
〔携帯電話機の構成〕
携帯電話機2は、図2に示すように、GPS(Global Positioning System)アンテナ部21,通信部22,LF(Low Frequency)入力部23,RF(Radio Frequency)出力部24,電源部25,操作部26,表示部27,スマートキー制御部28,電源制御部29,及び携帯制御部30を含む。GPSアンテナ部21は、GPS衛星から発信される電波を利用して携帯電話機2の位置情報(経度,緯度)を取得し、取得した位置情報を携帯制御部30に出力する。通信部22は、図3に示すように、携帯制御部30の制御に従って所定の周波数帯域(例えば2GHz帯/800MHz帯)を利用した音声通話やデータ通信等の携帯電話基地局3との間の情報通信を制御する。
【0013】
LF入力部23は、図3に示すように、アンテナ11,15が送信する所定周波数(例えば125kHz)の電波を受信する。RF出力部24は、図3に示すように、アンテナ13が受信する所定周波数(例えば314.85MHz)の電波を送信する。電源部25は、バッテリにより構成され、電源制御部29の制御に従って携帯電話機2内の各部に電力を供給する。操作部26は、キースイッチやダイアルスイッチ等の入力装置により構成され、ユーザ操作に応じて操作入力信号を携帯制御部30に出力する。
【0014】
表示部27は、液晶ディスプレイ等の表示装置により構成され、携帯制御部30の制御に従って各種情報を表示出力する。スマートキー制御部28は、車両1側に設けられたコントロールユニット16と情報通信することにより電子キー機能(本実施形態ではドアの施開錠動作及びエンジンの始動動作)を実現する。電源制御部29は、携帯電話機2内の各部への電力供給を制御する。携帯制御部30は、携帯電話機2全体の動作を制御する。
【0015】
〔ドアの施開錠動作〕
上記電子キーシステムにおいて車両1のドアを施開錠する場合、車両1側の装置及び携帯電話機2が以下のように動作する。始めに、携帯電話機1を所持しているユーザが車両1のスマートキースイッチ12を押下操作すると、スマートキースイッチ12はコントロールユニット16に制御信号を出力し、コントロールユニット16はアンテナ11を介して検知信号を送信する。LF入力部23がコントロールユニット16から送信された検知信号を受信すると、スマートキー制御部28がRF出力部24を介してIDコードを送信する。アンテナ13がスマートキー制御部28から送信されたIDコードを受信すると、コントロールユニット16は、受信したIDコードが予め内部に格納されているIDコードと一致するか否かを判定し、IDコードが一致する場合、ドアの施開錠動作を制御する。
【0016】
〔エンジンの始動動作〕
上記電子キーシステムにおいて車両1のエンジンを始動させる場合、車両1側の装置及び携帯電話機2が以下のように動作する。始めに、コントロールユニット16がアンテナ15を介して検知信号を送信する。LF入力部23がコントロールユニット16から送信された検知信号を受信すると、スマートキー制御部28がRF出力部24を介してIDコードを送信する。アンテナ13がスマートキー制御部28から送信されたIDコードを受信すると、コントロールユニット16は、受信したIDコードが予め内部に格納されているIDコードと一致するか否かを判定し、IDコードが一致する場合、プッシュスイッチ14が押下操作されるのに応じて車両1のエンジンを始動させる。
【0017】
なおスマートキー制御部28は、ユーザが操作部26を介してドアの施開錠動作やエンジンの始動動作を指示するのに応じてRF出力部24を介してIDコードを送信することにより、ドアの施開錠動作やエンジンの始動動作を実行させるようにしてもよい。
【0018】
〔電波送信制御処理〕
上記電子キーシステムでは、携帯制御部30が以下に示す電波送信制御処理を実行することにより電子キー機能が通信の際に利用する周波数に対する各国の法規を満足させる。以下、図4に示すフローチャートを参照して、この電波送信制御処理を実行する際の携帯制御部30の動作を説明する。
【0019】
図4に示すフローチャートは、携帯電話機2の電源がオフ状態からオン状態に切り換えられたタイミングで開始となり、電波送信制御処理はステップS1の処理に進む。なおこの電波送信制御処理は、携帯電話機2の電源がオン状態にある間は所定制御周期毎に繰り返し実行される。
【0020】
ステップS1の処理では、携帯制御部30が、通信部22を介して情報通信を行うための携帯電話基地局3を検索する。検索の結果、携帯電話基地局3が検知された場合、携帯制御部30は電波送信制御処理をステップS2の処理に進める。一方、携帯電話基地局3が検知されなかった場合には、携帯制御部30は電波送信制御処理をステップS3の処理に進める。
【0021】
ステップS2の処理では、携帯制御部30が、ステップS1の処理により検知された携帯電話基地局3から携帯電話基地局3の位置情報を受信し、受信した位置情報に基づいてステップS1の処理により検知された携帯電話基地局3が、国内基地局、換言すれば、電子キー機能を使用可能なエリア内にある携帯電話基地局3であるか否かを判別する。判別の結果、国内基地局でない場合、携帯制御部3は電波送信制御処理をステップS6の処理に進める。一方、国内基地局である場合には、携帯制御部3は電波送信制御処理をステップS3の処理に進める。
【0022】
ステップS3の処理では、携帯制御部30が、GPSアンテナ部21を介して携帯電話機2の位置情報を取得する。なお携帯制御部30は、例えば図5(b)に示すようなユーザに携帯電話機2の位置情報の取得を促す情報を表示部27に表示し、ユーザが表示画面を参照して操作部26を操作するのに応じて携帯電話機2の位置情報を取得するようにしてもよい。これにより、ステップS3の処理は完了し、電波送信制御処理はステップS4の処理に進む。
【0023】
ステップS4の処理では、携帯制御部30が、ステップS3の処理により取得した位置情報に基づいて携帯電話機2が国内に位置するか否か、換言すれば、携帯電話機2が電子キー機能を使用可能なエリア内に位置するか否かを判別する。判別の結果、国内に位置しない場合、携帯制御部3は電波送信制御処理をステップS6の処理に進める。一方、国内に位置する場合には、携帯制御部3は電波送信制御処理をステップS5の処理に進める。
【0024】
ステップS5の処理では、携帯制御部30が、RF出力部24からの電波発信を許可するRF出力許可信号をスマートキー制御部28に出力する、又は、電源制御部29を制御することによりスマートキー制御部28への電力供給を開始する、又は、スマートキー制御部28とRF出力部24を電気的に接続することにより、RF出力部24からの電波発信を許可する。そして携帯制御部30は、例えば図5(a)に示すような形態で電子キー機能が利用可能である旨の情報を表示部27に出力する。これにより、ステップS5の処理は完了し、一連の電波送信制御処理は終了する。
【0025】
ステップS6の処理では、携帯制御部30が、RF出力部24からの電波発信を禁止するRF出力禁止信号をスマートキー制御部28に出力する、又は、電源制御部29を制御することによりスマートキー制御部28への電力供給を停止する、又は、スマートキー制御部28とRF出力部24との間の電気接続を切断することにより、RF出力部24からの電波発信を禁止する。そして携帯制御部30は、例えば図5(c)に示すような形態で電子キー機能が利用不能である旨の情報を表示部27に出力する。これにより、ステップS6の処理は完了し、一連の電波送信制御処理は終了する。
【0026】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる電波送信制御処理によれば、携帯制御部30が、携帯電話基地局3と情報通信不能、又は、RF出力部24が発信する電波の周波数が携帯電話基地局3の通信圏内で使用不能である場合、RF出力部24の電波発信を禁止する。そしてこのような構成によれば、電子キー機能が使用可能なエリア内にある時のみ電子キー機能に関係する信号の発信が許可されるので、電子キー機能が通信の際に利用する周波数に対する各国の法規を満足させることができる。
【0027】
また本発明の実施形態となる電波送信制御処理によれば、携帯制御部30が、携帯電話基地局3と情報通信不能、又は、RF出力部24が発信する電波の周波数が携帯電話基地局3の通信圏内で使用不能である場合、携帯電話機2がRF出力部24が発信する電波の周波数を使用可能なエリア内に位置するか否かを判別し、携帯電話機2が電子キー機能が発信する電波の周波数を使用可能なエリア内に位置する場合、電子キー機能の電波発信を許容する。そしてこのような構成によれば、携帯電話基地局3を発見できない場合であっても携帯電話機2が電子キー機能を使用可能なエリア内に位置すれば、電子キー機能を利用することができる。
【0028】
携帯制御部30は、電子キー機能の電波発信を許容している時に、携帯電話基地局3と情報通信不能、又は、携帯電話機2の位置情報を検出不能な状態が所定時間(例えば10分〜1時間)以上継続した場合、電子キー機能の電波発信を禁止することが望ましい。このような構成によれば、地下駐車場に移動する等の理由により携帯電話基地局3と一時的に情報通信不能、又は、携帯電話機2の位置情報を一時的に検出不能になった場合に電子キー機能の電波発信が禁止されることにより、ユーザの利便性が損なわれることを抑制できる。なおこの場合、携帯制御部30は、例えば図5(d)に示すような形態で、電子キー機能が一時的に利用できなくなっている旨の情報や電子キー機能の電波発信が禁止されるまでの時間を表示部27に表示することとよい。
【0029】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1:車両
2:携帯電話機
3:スマートキーFOB
4:基地局
11:アンテナ(スマートキー車外アンテナ)
12:スマートキースイッチ
13:アンテナ(スマートキー車内アンテナ)
14:プッシュスイッチ
15:アンテナ(スマートキーアンテナ)
16:コントロールユニット(C/U)
21:GPS(Global Positioning System)アンテナ部
22:通信部
23:LF(Low Frequency)入力部
24:RF(Radio Frequency)出力部
25:電源部
26:操作部
27:表示部
28:スマートキー制御部
29:電源制御部
30:携帯制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キー機能を備える情報通信端末装置において、
基地局と情報通信可能であるか否かを判別する第1の判別手段と、
基地局と情報通信可能である場合、前記電子キー機能が発信する電波の周波数が基地局の通信圏内で使用可能であるか否かを判別する第2の判別手段と、
基地局と情報通信不能、又は、前記電子キー機能が発信する電波の周波数が基地局の通信圏内で使用不能である場合、電子キー機能の電波発信を禁止する制御手段と
を備えることを特徴とする情報通信端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報通信端末装置において、
情報通信端末装置の位置情報を検出する検出手段と、
基地局と情報通信不能、又は、前記電子キー機能が発信する電波の周波数が基地局の通信圏内で使用不能である場合、前記検出手段により検出された位置情報に基づいて、情報通信端末装置が電子キー機能が発信する電波の周波数を使用可能なエリア内に位置するか否かを判別する第3の判別手段とを備え、
前記制御手段は、情報通信端末装置が前記電子キー機能が発信する電波の周波数を使用可能なエリア内に位置する場合、電子キー機能の電波発信を許容すること
を特徴とする情報通信端末装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の情報通信端末装置において、
前記制御手段は、電子キー機能の電波発信を許容している時に、基地局と情報通信不能、又は、情報通信端末装置の位置情報を検出不能な状態が所定時間以上継続した場合、電子キー機能の電波発信を禁止することを特徴とする情報通信端末装置。
【請求項4】
電子キー機能を備える情報通信端末装置の制御方法において、
基地局と情報通信可能であるか否かを判別する処理と、
基地局と情報通信可能である場合、前記電子キー機能が発信する電波の周波数が基地局の通信圏内で使用可能であるか否かを判別する処理と、
基地局と情報通信不能、又は、前記電子キー機能が発信する電波の周波数が基地局の通信圏内で使用不能である場合、電子キー機能の電波発信を禁止する処理と
を有することを特徴とする情報通信端末装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−242304(P2010−242304A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88906(P2009−88906)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】