説明

意匠テープの貼り付け方法

【課題】本発明は、パネルに対して意匠テープを確実に位置決めできるようにして、意匠テープの貼り付け品質を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明は、帯状の意匠テープ43と、その意匠テープ43を囲む枠状部材45と、その意匠テープの表面と前記枠状部材の表面とに剥がせる状態で貼り付けられた保護シートとを準備する準備工程と、前記保護シートと枠状部材45との長手方向両側を治具50に固定して意匠テープ43を治具50上のパネル24に対して位置決めする位置決め工程と、前記保護シート上から意匠テープ43と枠状部材45とを押圧してパネル24表面に押し付け、その意匠テープ43の接着面をパネル24に貼り付ける貼着工程と、パネル24表面から枠状部材45と前記保護シートとを除去する除去工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の意匠テープをパネルの所定位置に貼り付ける意匠テープの貼り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連するテープの貼り付け方法が特許文献1に記載されている。
特許文献1のテープの貼り付け方法は、板状の外壁材と外壁材との合わせ目にテープを貼り付ける方法である。このテープの貼り付け方法に使用される外壁材には、合わせ目に沿ってガイド溝が形成されており、その合わせ目がガイド溝の底部の中央に配置されるようになっている。そして、前記ガイド溝に沿ってガイドローラ、及び押圧ローラを移動させながら、前記押圧ローラの外周面でテープをガイド溝の底部に押し付け、前記テープを外壁材と外壁材との合わせ目に貼り付ける構成である。
しかし、この方法では、テープを貼り付ける部分にガイド溝を形成する必要があるため、意匠的な制約からガイド溝を形成できない部分に前記テープを正しく位置決めして貼り付けることは難しい。
【0003】
この点を解決するために、意匠テープをパネルに対して位置決めできるようにした技術が図7に記載されている。この技術は、自動車のクラッディングパネルに帯状の意匠テープ101を貼り付ける技術であり、意匠テープ101の表面を保護する保護シート103の長手方向両側に位置決め用の基準穴105が形成されている。そして、保護シート103の長手方向両側の基準穴105に対して治具(図示省略)の基準位置に設けられた複数の位置決めピンをそれぞれ通すことで、前記治具上にセットされた前記クラッディングパネルに対して意匠テープ101が位置決めされる。次に、この状態で、保護シート103上から意匠テープ101を押圧し、前記クラッディングパネルの表面にその意匠テープ101の接着面を押し付けることで、意匠テープ101を前記クラッディングパネルの表面に貼り付けることができる。そして、意匠テープ101の貼り付け後、意匠テープ101の表面から保護シート103を剥がすことで意匠テープ101の貼り付け作業が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−140818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したように、帯状の意匠テープ101を治具上のクラッディングパネルに対して位置決めする方法では、保護シート103上から意匠テープ101をクラッディングパネルに対して押し付ける際に、図7の白矢印に示すように、保護シート103が幅方向に変形して意匠テープ101がクラッディングパネルに対して位置ずれを起こすことがある。
このため、意匠テープが若干湾曲した状態でクラッディングパネルに貼り付けられたり、意匠テープ101とクラッディングパネルとの接着部分に空気が入り込んだりして、意匠テープ101の貼り付け品質が低下する。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、パネルに対して意匠テープを確実に位置決めできるようにして、意匠テープの貼り付け品質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、帯状の意匠テープをパネルの所定位置に貼り付ける意匠テープの貼り付け方法であって、前記帯状の意匠テープと、その意匠テープを囲む枠状部材と、その意匠テープの表面と前記枠状部材の表面とに剥がせる状態で貼り付けられた保護シートとを準備する準備工程と、前記保護シートと前記枠状部材との長手方向両側を前記治具に固定して前記意匠テープを前記治具上の前記パネルに対して位置決めする位置決め工程と、前記位置決め工程後、前記保護シート上から前記意匠テープと前記枠状部材とを押圧して前記パネル表面に押し付け、その意匠テープの接着面を前記パネルに貼り付ける貼着工程と、前記貼着工程後、前記パネル表面から前記枠状部材と前記保護シートとを除去する除去工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によると、治具上のパネルに対して意匠テープを位置決めする際に、その意匠テープを囲む枠状部材の長手方向両側と、その枠状部材、及び意匠テープに貼り付けられた保護シートの長手方向両側とを前記治具に固定する。即ち、前記枠状部材と、その枠状部材に貼り付けられた保護シートとにより意匠テープをパネルに対して位置決する構成のため、従来のように保護シートのみで意匠テープをパネルに対して位置決めする構成と比較して、意匠テープを位置決めする部材の剛性が高くなる。これにより、意匠テープの接着面をパネルに貼り付ける際に、保護シート、及び枠状部材が幅方向に変形し難くなり、前記意匠テープがパネルに対して幅方向に位置ずれし難くなる。この結果、意匠テープの貼り付け品質が向上する。
【0009】
請求項2の発明によると、位置決め工程では、枠状部材と保護シートとの長手方向両側に、その枠状部材と保護シートとを貫通するように形成された基準穴に対して、前記治具に設けられた位置決めピンを通すことにより、前記意匠テープを前記治具上の前記パネルに対して位置決めすることを特徴とする。
このため、意匠テープを治具上のパネルに対して簡単に位置決めできるようになる。
【0010】
請求項3の発明によると、枠状部材は、意匠テープと同じ素材により構成されて、保護シート上から押圧されてパネル表面に押し付けられる際に、前記意匠テープと同様に厚み方向に潰れるように構成されていることを特徴とする。
このため、平板状の意匠素材から意匠テープを切り取った後の素材枠部を前記枠状部材として使用できるため、専用の部材で前記枠状部材を製作する必要がなく、コストアップにならない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、パネルに対して意匠テープを確実に位置決めできるようになり、意匠テープの貼り付け品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る意匠テープの貼り付け方法により意匠テープが貼り付けられたクラッディングパネルを表す側面図である。
【図2】前記意匠テープ、及び枠状部材を表す平面図である。
【図3】図2のIII-III矢視拡大断面図である。
【図4】意匠テープの貼り付け方法を表す模式斜視図である。
【図5】治具上のクラッディングパネルに対する意匠テープの位置決め方法を表す平面図である。
【図6】治具上のクラッディングパネルに対する意匠テープの貼り付け方法を表す側面図である。
【図7】従来の意匠テープの位置決め方法を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図6に基づいて本発明の実施形態1に係る意匠テープの貼り付け方法について説明する。本実施形態では、車両のフロントドアとスライドドアとのクラッディングパネルパネルにそれぞれ意匠テープを貼り付ける方法について説明する。
ここで、図中の前後、及び上下は前記クラッディングパネルを備える車両(乗用車)の前後、及び上下に対応している。
【0014】
<車両のクラッディングパネル22,24について>
先ず、本実施形態に係る意匠テープ33,43について説明する前にそれらの意匠テープ33、43が貼り付けられるクラッディングパネル22,24について簡単に説明する。
前部クラッディングパネル22は、図1に示すように、フロントドア12の下部側面に装着されるサイドパネルであり、その前部クラッディングパネル22の下側位置に前後方向に延びるように前部意匠テープ33が貼り付けられている。
また、後部クラッディングパネル24は、スライドドア14の下部側面に装着されるサイドパネルであり、その後部クラッディングパネル24の下側位置に後部意匠テープ43が前部意匠テープ33と連続するように貼り付けられている。
即ち、前記クラッディングパネル22,24が本発明のパネルに相当する。
【0015】
<前部意匠テープ33、後部意匠テープ43について>
前部意匠テープ33と後部意匠テープ43とは、図2に示すように、帯状の意匠テープユニット30,40の状態で後記する治具50にセットされる。
ここで、前部意匠テープ33を有する意匠テープユニット30と後部意匠テープ43を有する意匠テープユニット40とは等しい材質、構造であり、前部意匠テープ33と後部意匠テープ43との形状が異なるだけである。このため、代表して後部意匠テープ43を有する意匠テープユニット40について説明を行い、前部意匠テープ33を有する意匠テープユニット30の説明は省略する。
意匠テープユニット40は、図2の下図に示すように、後部意匠テープ43と、その後部意匠テープ43を囲む枠状部材45とを備えている。後部意匠テープ43と枠状部材45とは一枚の意匠素材40aを後部意匠テープ43の部分と枠状部材45の部分とに切り離すことにより構成される。ここで、意匠素材40aは、図3に示すように、表面側から順番に透明なクリア層C、着色層T、ビニル層Bが設けられており、そのビニル層Bの裏側に接着剤層Sが設けられている。そして、接着剤層Sに離型紙Pが貼着されている。
【0016】
また、意匠素材40aの表面には、図3に示すように、全範囲に亘って透明な保護シートであるアプリケーション47が意匠素材40aの表面から剥がせる状態で貼り付けられている。
アプリケーション47が貼り付けられた意匠素材40aから意匠テープユニット40を形成するには、先ず、アプリケーション47を除く意匠素材40aの部分が後部意匠テープ43と枠状部材45の形状に合わせてカッターにより切断される。次に、後部意匠テープ43と枠状部材45との境界部分(図示省略)が除去される。これにより、図3に示すように、後部意匠テープ43と枠状部材45とがアプリケーション47を介して連結された状態に保持される。
次に、枠状部材45とアプリケーション47の長手方向両端部の所定位置に、図2に示すように、幅方向に並ぶ2個の基準穴45hがその枠状部材45とアプリケーション47を貫通するように形成される。
この状態で、意匠テープユニット40が完成する。
【0017】
<後部意匠テープ43の貼り付け手順について>
次に、後部意匠テープ43の貼り付け手順について説明する。
先ず、図5に示すように、後部意匠テープ43が貼り付けられる後部クラッディングパネル24を治具50上の所定位置にセットする。次に、意匠テープユニット40の後部意匠テープ43の離型紙Pを剥がし、後部意匠テープ43の接着剤層Sを露出させる。この状態で、意匠テープユニット40の長手方向両側の基準穴45h(四個の基準穴45h)に、図5、図6に示すように、治具50の基準位置に形成された四本の位置決めピン52をそれぞれ通し、後部クラッディングパネル24に対して後部意匠テープ43を位置決する。次に、図4、図6に示すように、ローラ55を使用してアプリケーション47の上から後部意匠テープ43と枠状部材45とを後部クラッディングパネル24の表面に押し付け、そのローラ55を意匠テープユニット40の長手方向に転動させる。これにより、後部意匠テープ43と枠状部材45とは共に厚み方向に潰れ、その後部意匠テープ43の接着剤層S(接着面)が後部クラッディングパネル24の表面に貼り付けられる。なお、枠状部材45の接着剤層Sには離型紙Pが貼り付けられているため、枠状部材45が後部クラッディングパネル24に貼り付くことはない。
次に、後部意匠テープ43からアプリケーション47を剥がし、そのアプリケーション47と枠状部材45とを後部クラッディングパネル24の表面から除去することで、後部意匠テープ43の貼り付け作業が完了する。
ここで、前部意匠テープ33の貼り付け手順も後部意匠テープ43の場合と同様に行われる。
【0018】
<本実施形態に係る意匠テープの貼り付け方法の長所について>
本実施形態に係る意匠テープの貼り付け方法によると、治具50上の後部クラッディングパネル24に対して後部意匠テープ43を位置決めする際に、その後部意匠テープ43を囲む枠状部材45の長手方向両側と、その枠状部材45、及び後部意匠テープ43に貼り付けられたアプリケーション47(保護シート)の長手方向両側とを治具50に固定する。即ち、枠状部材45と、その枠状部材45に貼り付けられたアプリケーション47とにより後部意匠テープ43を後部クラッディングパネル24に対して位置決する構成である。このため、従来のようにアプリケーション(保護シート)のみで意匠テープをクラッディングパネルに対して位置決めする構成と比較して、後部意匠テープ43を位置決めする部材の剛性が高くなる。これにより、後部意匠テープ43の接着面を後部クラッディングパネル24に貼り付ける際に、アプリケーション47(保護シート)、及び枠状部材45が幅方向に変形し難くなり、後部意匠テープ43が後部クラッディングパネル24に対して幅方向に位置ずれし難くなる。また、後部意匠テープ43と後部クラッディングパネル24との接着部分に空気が入り込み難くなる。この結果、後部意匠テープ43の貼り付け品質が向上する。
【0019】
また、枠状部材45とアプリケーション47(保護シート)との長手方向両側に、その枠状部材45とアプリケーション47とを貫通するように形成された基準穴45hに対して、治具50に設けられた位置決めピン52を通すことにより、後部意匠テープ43を治具50上の後部クラッディングパネル24に対して位置決めする。このため、後部意匠テープ43を治具50上の後部クラッディングパネル24に対して位置決めする構成が簡単になる。
また、枠状部材45は、後部意匠テープ43と同じ素材により構成されて、アプリケーション47(保護シート)の上から押圧されて後部クラッディングパネル24の表面に押し付けられる際に、後部意匠テープ43と同様に厚み方向に潰れるように構成されている。
このように、平板状の意匠素材40aから後部意匠テープ43を切り取った後の素材枠部を前記枠状部材45として使用できるため、専用の部材で枠状部材45を製作する必要がなく、コストアップにならない。
【0020】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態に係る意匠テープの貼り付け方法では、枠状部材45として意匠素材40aから後部意匠テープ43を切り取った後の枠部を使用する例を示した。しかし、枠状部材45として、例えば、薄いプラスチック等の枠を使用することも可能である。
また、枠状部材45とアプリケーション47(保護シート)に形成された基準穴45hに治具50の位置決めピン52を通すことで、後部クラッディングパネル24に対して後部意匠テープ43を位置決めする例を示した。しかし、例えば、枠状部材45とアプリケーション47の端部をクリップ等で治具50に固定することで、後部クラッディングパネル24に対して後部意匠テープ43を位置決めする構成でも可能である。
【符号の説明】
【0021】
22・・・・前部クラッディングパネル(パネル)
24・・・・後部クラッディングパネル(パネル)
33・・・・前部意匠テープ
35・・・・枠状部材
45h・・・基準穴
43・・・・後部意匠テープ
45・・・・枠状部材
45h・・・基準穴
47・・・・アプリケーション(保護シート)
50・・・・治具
52・・・・位置決めピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の意匠テープをパネルの所定位置に貼り付ける意匠テープの貼り付け方法であって、
前記帯状の意匠テープと、その意匠テープを囲む枠状部材と、その意匠テープの表面と前記枠状部材の表面とに剥がせる状態で貼り付けられた保護シートとを準備する準備工程と、
前記保護シートと前記枠状部材との長手方向両側を前記治具に固定して前記意匠テープを前記治具上の前記パネルに対して位置決めする位置決め工程と、
前記位置決め工程後、前記保護シート上から前記意匠テープと前記枠状部材とを押圧して前記パネル表面に押し付け、その意匠テープの接着面を前記パネルに貼り付ける貼着工程と、
前記貼着工程後、前記パネル表面から前記枠状部材と前記保護シートとを除去する除去工程と、
を有することを特徴とする意匠テープの貼り付け方法。
【請求項2】
請求項1に記載された意匠テープの貼り付け方法であって、
前記位置決め工程では、前記枠状部材と保護シートとの長手方向両側に、その枠状部材と保護シートとを貫通するように形成された基準穴に対して、前記治具に設けられた位置決めピンを通すことにより、前記意匠テープを前記治具上の前記パネルに対して位置決めすることを特徴とする意匠テープの貼り付け方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された意匠テープの貼り付け方法であって、
前記枠状部材は、前記意匠テープと同じ素材により構成されて、前記保護シート上から押圧されて前記パネル表面に押し付けられる際に、前記意匠テープと同様に厚み方向に潰れるように構成されていることを特徴とする意匠テープの貼り付け方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68051(P2013−68051A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209004(P2011−209004)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)