説明

意匠性積層材及びその製造方法

【課題】表面に凹凸模様等を有する基材上に表面材を積層してなる意匠性積層材において、加熱も加圧もすることなく表面材を積層でき、その表面を平滑な鏡面状に仕上げることができるようにする。
【解決手段】凹凸模様或いは印刷模様を備え、凹凸の深さが20μm〜300μmである基材4に、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下のベース樹脂を含み、厚みが100μm〜2000μmであって且つ前記凹凸の深さの2倍以上であり、JIS
Z0237に準拠した下記40℃保持力が0.2mm〜10mmである透明粘着シート1と、透明な表面材3とを、順次積層して意匠性積層材を構成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面の意匠性・装飾性を損なうことなく、基材に表面材を積層してなる意匠性積層材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
居住空間をより快適なものとするために、窓材、壁材、扉材、床材或いは天井材等にも装飾性や意匠性が求められるようになり、木目調、大理石調、幾何学模様、抽象柄などの模様を印刷したり、或いは、レース模様、梨地模様、エンボス模様などのような三次元的な凹凸模様を施した意匠材が広く用いられている。
【0003】
また最近では、上記の如く表面に印刷模様や凹凸模様を施しただけの意匠材では、表面に汚れや傷等が付き易く除去し難くかったり、表面が劣化し易かったり、薬品などによって汚染されたり、更には、光沢感や鏡面性と言った高級感を演出することが難しかったため、上記の如く印刷模様や凹凸模様等を施した基材表面上に更に透明な表面材を積層した意匠性積層材等も用いられている。
【0004】
例えば、透明な液状接着剤を介して、装飾性や意匠性を備えた基材表面に透明な樹脂シートを積層した意匠性積層材(参照:特許文献1、特許文献2、特許文献3等)や、熱可塑性樹脂を用いて透明シートやフィルム等を表面に積層し、加熱圧着して鏡面に仕上げした意匠性積層材(参照:特許文献4等)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−38782号公報
【特許文献2】特開平7−205368号公報
【特許文献3】特開2002−347007号公報
【特許文献4】特開2000−198300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の意匠性積層材では、意匠性積層材の表面、即ち表面材の表面を綺麗に平滑に仕上げるのがなかなか困難であり、その多くは、表面の平滑性が乏しく、光沢感がなかったり、表面に映り込んだ景色やライトの反射像が歪んで見えたりして、すっきりした鏡面性が得られ難く、高級感を演出できないという課題を抱えていた。
特に、接着剤により接着した場合には、厚みが均一にでないために鏡面性を得られず、反射像の歪みが解消できないことが多い。また、加熱して接着した場合には、基材と表面材の線膨張係数が異なると、積層後に剥離が生じることが多い。また、圧力を加えて接着した場合には、圧力によって基材表面の凹凸を拾ってしまうため、表面材の表面を平滑な鏡面状に仕上げることが難しかった。
【0007】
そこで本発明は、基材表面の意匠性・装飾性を損なうことなく、表面を鏡面状に仕上げることができるように、加熱も加圧もすることなく、基材に表面材を積層することができる意匠性積層材及びその製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、凹凸模様或いは印刷模様を備えた基材に、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下のベース樹脂を含み、厚みが50μm〜2000μmで、JISZ0237に準拠した保持力が0.2mm〜10mmである透明粘着シートと、透明な表面材とを、順次積層してなる構成を備えた意匠性積層材を提案する。
【0009】
なお、上記の透明粘着シートは、それ単独で化粧用シートとして使用することができる。又、上記の透明粘着シートに透明な表面材を貼り合わせてなる構成を備えたものも、それ単独で化粧用シートとして使用することができる。
【0010】
本発明はまた、この種の意匠性積層材の製造方法として、凹凸模様或いは印刷模様を備えた基材に、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下のベース樹脂を含み、厚みが50μm〜2000μmで、JIS Z0237に準拠して求められる保持力が0.2mm〜10mmである透明粘着シートをその粘着力によって貼り合わせ、当該透明粘着シートに、当該透明粘着シートの粘着力によって透明な表面材を貼り合わせることを特徴とする意匠性積層材の製造方法を提案する。
【0011】
上記の如き意匠性積層材或いは上記の如き製造方法によって製造された意匠性積層材は、保持力が0.2mm〜10mmという程度に柔らかい粘着シートを用いて基材と表面材とを貼り合わせるため、基材表面の凹凸等によく馴染んで凹凸を埋めると同時に両者を確実に接着することができる。しかもその際、加熱することも、加圧することもなく接着することができるから、基材表面の凹凸が表面材の表面に影響することもないし、また、基材と表面材の線膨張係数が大きく異なる場合であっても反りや剥離することがない。よって、意匠性積層材の表面を綺麗に平滑に仕上げることができ、光沢感と鏡面性とを付与することができる。しかも、透明な表面層の内部に凹凸模様その他の模様が存在するから、深味感のある装飾を施すことができる。
本発明の意匠性積層材は、例えば装飾に深味感を発揮させた窓材、壁材、扉材、床材、天井材など、より具体的には、型板ガラス、カーテンブラインド等を用いた窓材、樹脂被覆鋼板、化粧板、壁紙等を用いた壁、扉材などへ応用することができる。但し、これに限定されるものではない。
【0012】
なお、本発明において「透明」とは、無色透明、着色透明、半透明を包含する意である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の意匠性積層材を製造するために使用する化粧用シートの一例を模式的に示した断面図である。
【図2】上記化粧用シートの離型フィルムを剥して基材に積層した状態の一例を模式的に示した断面図である。
【図3】図2の状態から離型フィルムを剥して表面材を積層してなる、本発明の意匠性積層材の一例を模式的に示した断面図である。
【図4】図1とは異なる化粧用シートの一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明の意匠性積層材は、基材と、基材表面に積層する透明粘着シートと、透明粘着シートの表面に積層する表面材とから構成することができる。
なお、少なくとも基材の片面側において上記の構成を備えていればよく、基材の両面側に上記の構成を備えていてもよい。さらに、表面材の外側に例えば保護層などの他の層を備えていてもよい。
【0016】
(基材)
基材の材質は、ガラス質、合成樹脂質、繊維質、紙質、木質、金属質、陶磁器質など任意である。
基材の形状は、板状体、シート状体、フィルム状体など、面を備えた形状であれば任意である。
具体的には、窓材、壁材、扉材などに使われる、ガラス板、プラスチック板乃至シート、任意の板材を樹脂(例えばPVC、メラミン、フェノール、FRP等)で被覆してなる化粧板、レース調生地、突板、壁紙、金属板、タイル板等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
基材の表面は、何らかの意匠性を備えていればよく、木目調、大理石調、幾何学模様、抽象柄などの印刷模様、或いは、木目模様、レース模様、梨地模様、エンボス模様などのような三次元的な凹凸模様などが施されていればよい。中でも、表面に三次元的な凹凸模様を備えた基材の場合に本発明は最も優れた効果を発揮する。
【0018】
(透明粘着シート)
透明粘着シートは、厚みが50μm〜2000μmで、JIS Z0237に準拠した保持力が0.2mm〜10mmであるのが好ましい。シート状であるから、液状に比べて、取り扱いや厚み精度が良い。
【0019】
透明粘着シートの厚さは、上述のように50μm〜2000μmの範囲が好ましく、この範囲内で基材表面の凹凸度合いに合わせて適宜厚さを選択するのが好ましい。ただ、厚さが50μm未満であると凹凸を吸収できなくなる可能性があり、逆に2000μmを越えると例えば紫外線架橋が困難となる。
中でも好ましくは、凹凸の深さに対して2倍以上、特に2.5倍以上の厚さにするのがよい。
【0020】
透明粘着シートの保持力(JIS Z0237準拠)は、0.2mm〜10mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5mm〜5mmの範囲である。保持力が0.5mm〜5mmの範囲内であれば、積層時に応力緩和し易く、透明な表面材が基材表面の凹凸を拾って鏡面性が得られないようなことがないばかりか、基材と表面材の線膨張係数が異なる場合であってもそのズレを吸収することができ、剥離や浮きを生じることもない。また、耐久性も充分に得ることができる。
【0021】
なお、本発明における保持力は、JIS Z0237に準拠して、シートを38μmPETフィルムで背貼りした後、JIS Z0237で規定するところのSUS板を用いて面積20mm×20mmで接着させ、40℃の環境下で500gfの荷重を2時間かけた後のズレ長さを計測した値である。
【0022】
透明粘着シートは、次のような範囲の貯蔵弾性率G´を有していれば更に好ましい。
即ち、測定温度20℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率G´(1Hz)が、2×10〜4×10Paであって、かつ基準温度20℃、周波数10−7Hzでの貯蔵弾性率G´(10−7Hz)が、5×10〜2×10Paであるのが好ましい。
G´(1Hz)が上記の範囲であれば、ハンドリングがより一層良好となる上、適度に柔らかくて基材により一層なじみ易い。また、G´(10−7Hz)が上記の範囲であれば、適当なクリープ性を有し、寸法安定性に優れるほか、基材表面の凹凸で気泡や泡が発生するようなこともない。
なお、この貯蔵弾性率G´は、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置ダイナミックアナライザーRDAIIを用いて、温度:20〜150℃、角振動数:ω=0.005〜500rad/sec、パラレルプレート:25mm径、歪み量:3%の条件で測定した値に基づき、20℃を基準温度として温度−時間換算のマスターカーブを作成し、周波数f値をf(Hz)=ω/2πにより算出し、それぞれの貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、及びG”/G’=tanδを読み取ることによって求めることができる。
【0023】
このような透明粘着シートは、ベース樹脂、架橋剤、及びその他の成分から構成することができ、主にベース樹脂と架橋剤との組合わせで求められる物性範囲に調整することができる。
【0024】
ベース樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が−20℃以下、特に−60〜−40℃が好ましく、その溶融粘度は5万(mPa・s)〜70万(mPa・s)、特に10万(mPa・s)〜50万(mPa・s)が好ましい。
溶融粘度が5万(mPa・s)未満では、シート成形時の形状安定性を得るのが難しく、又、架橋後のシートに十分な柔軟性を得ることが難しい。
また、Tgが−20℃より高いと、室温において透明粘着シートが硬くて基材表面の凹凸に馴染みにくくなる。
なお、本発明における「溶融粘度」及び「Tg」は、B型粘度計(例えばレオメトリックス社製の粘弾性測定装置ダイナミックアナライザーRDA−II)を用いて測定することができる。この際、溶融粘度は、パラレルプレート25mmφ、歪み2%、130℃、0.02Hzで測定した時の粘度を読みとればよく、Tgは、パラレルプレート25mmφ、歪み2%、周波数1Hzで測定した時のTanδの極大値を示す温度を読みとればよい。
【0025】
ベース樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、合成ゴム、天然ゴムなどの中から選択することができる。但し、これらに限定するものではない。
【0026】
架橋剤の種類は特に限定しないが、架橋後に透明粘着シートの保持力が上記範囲内になる架橋剤をベース樹脂との組合わせで選択して使用するのが好ましい。
【0027】
ベース樹脂と架橋剤との組合わせを特に限定するものではないが、中でも、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と紫外線架橋剤との組合わせが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を形成するために用いる(メタ)アクリレート、すなわち、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート成分としては、アルキル基がn−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、n−ブチル、イソブチル、メチル、エチル、イソプロピルのうちのいずれか1つであるアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの1種またはこれらから選ばれた2種以上の混合物が使用するのが好ましい。
その他の成分として、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基等の有機官能基を有するアクリレートまたはメタクリレートを共重合しても良い。
前記アルキル(メタ)アクリレート成分と有機官能基を有する(メタ)アクリレート成分を適宜に選択、組み合わせたモノマー成分を出発原料として加熱重合して得ることができる。
【0028】
ベース樹脂と架橋剤との最も好ましい組合わせの一例として、α、β不飽和カルボン酸を含有した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をベース樹脂とし、不飽和カルボン酸と反応する有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマー及び光開始剤を含有してなるものを挙げることができる。
この際、α、β不飽和カルボン酸を含有した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、例えば、イソ−オクチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等から少なくとも1種類以上と、アクリル酸とを共重合させたものである。
有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマー、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマー等の前記不飽和カルボン酸と反応する官能基を有するものを用いることができる。その含有量は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対し、0.01〜1.0重量部、特に0.02〜0.1重量部とするのが好ましい。
光開始剤としては、着色性及び臭気性の少ないものが好ましい。例えば、ベンゾフェノン、ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンのいずれか或いはこれらの二種類以上の組合わせを用いることができる。その添加量は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対し、0.05〜2.0重量部、特に0.1〜1.0重量部とするのが好ましい。
そして、このような不飽和カルボン酸と、(メタ)アクリレートモノマーの有機官能基とを反応させて(メタ)アクリロイル基をグラフトさせてシート状に成形し、得られたシート体に対して、直接或いは透明な離型フィルムを介して、高圧水銀ランプなどを用いて紫外線を照射して架橋させればよい。紫外線の照射に際し、モノマー及び光開始剤の量に応じて照射量を調節することにより好ましい弾性率を得ることができる。
【0029】
透明粘着シートは、その片面或いは両面に離型フィルムを貼着するのが好ましい。
【0030】
(表面材)
表面材は、透明であって、好ましくは表面が平滑で、更に好ましくは剛性が高いものが好ましい。
材質は特に問わないが、ガラス質や合成樹脂質などを用いるのが一般的であり、形状は板状体、シート状体或いはフィルム状体であればよい。
具体的には、ガラス系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、アクリル系、PVC系、ナイロン系、ポリオレフィン系等から選択された材料からなる板状体、シート状体或いはフィルム状体を挙げることができる。
凹凸や模様を備えた基材表面の意匠性を損なわない範囲で、表面材の表面に意匠性を備えた印刷、ハードコート、反射防止、熱線カット、紫外線カット処理が施されていてもかまわない。
【0031】
(製造方法1)
上記の基材表面に、上記の透明粘着シートをその粘着力によって貼り合わせ、当該透明粘着シートの表面に、透明粘着シートの粘着力によって上記の表面材を貼り合わせて積層して意匠性積層材を製造することができる。
【0032】
具体的には、例えば、基材、透明粘着シート、表面材を順次重ねて、ゴムロール等で挟んでラミネートして積層するようにしてもよい。
また、図1に示すように、透明粘着シート1の両面に離型フィルム2、2を貼着しておき、図2に示すように、片面の離型シート2を剥してその表面を基材4の表面に貼着した後、他方の面の離型シート2を剥してその表面に表面材3を貼着してもよい(図3参照)。
また、透明粘着シートの両面に離型シートを貼着しておき、片面の離型シートを剥してその表面に表面材を貼着した後、他方の面の離型シートを剥してその表面を基材表面に貼着してもよい。
さらにまた、図4に示すように、予め透明粘着シート1と表面材3とを貼着して一体化しておき、透明粘着シート1の表面材3とは反対側の面に離型シート2を貼着しておき、この離型シート2を剥してその表面を基材表面4に貼着するようにしてもよい(図3参照)。
【0033】
いずれにしても、貼着する際は、室温において(加熱することなく)、透明粘着シートを伸ばすためにニップロール(ゴムロール)などで軽く圧力を掛けるだけでよいから、基材及び表面材の加熱膨張率の違いによる影響も、圧力によって基材表面の凹凸が表面材に生じる影響も避けることができる。
【0034】
(製造方法2)
上記の製造方法において、表面材を透明粘着シートに貼り合わせる前に、表面材を積層した後に反応させて透明粘着シートを硬化させ得る反応性液体を、透明粘着シートの表面に塗布するなどして含浸させ、当該透明粘着シートの表面に表面材を貼り合わせた後、当該反応性液体を反応させて透明粘着シートを硬化させるようにしてもよい。
【0035】
表面材が厚い場合は、上記製造方法1のような製造方法で問題ないが、表面材が薄い場合には、たとえニップロール等による軽い加圧であっても、外部から局部的な圧力が加わると柔らかい透明粘着シートが凹んで、意匠性積層材表面の平滑性(鏡面性)が失われる可能性がある。そこで、透明粘着シートを介して基材上に表面層を積層した後に透明粘着シートを硬化させることで、たとえ積層時に凹んでもすぐに回復するように仕上げることとができ、同時に加工性、耐久性を向上させることができる。
【0036】
この際、反応性液体としては、熱、湿気、紫外線、或いは透明粘着シート中の官能基等と反応して、透明粘着シートを硬化させられるものであれば、任意に用いることができる。具体的には、イソシアネート基、エポキシ基、メラミン基、シラノール基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基等の1種類以上の官能基で構成され、2官能以上を有するもので、粘着剤に相溶するものであれば良い。中でも、アミノ基、イソシアネート基、シラノール基など湿気を吸収して硬化する官能基を有するものが好ましい。
反応性液体を含浸させる方法は、基材或いは表面材に予め反応性液体を適宜塗布しておいたり、透明粘着シートに直接塗布したり、透明粘着シートを浸漬させたりする方法を採用すればよいが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
以下、実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
表面に意匠性・装飾性を施した基材として、皮目9号柄塩化ビニルシート積層鋼板(三菱樹脂社製、商品名「ヒシメタル」)、即ち表面に深さ150〜200μmのエンボス模様を備えた塩化ビニルシート積層鋼板を用いた。
【0039】
粘着剤として、アクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、光開始剤としてのチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名イルガキュア500を0.2重量部と、架橋剤としての大阪有機化学社製、商品名「ビスコートV260」を0.05重量部とを溶融攪拌した後、厚さ75μmと100μmの離型PETに挟んで厚み500μmのシート状に成形して、高圧水銀ランプを用いて片面積算光量3600mJ/cmを離型PET越しに表裏照射させて透明粘着シートを得た。
なお、アクリル酸エステル共重合体の組成は、n−ブチルアクリレート:78.4重量%、2−エチルヘキシルアクリレート:19.6重量%、アクリル酸:2.0重量%を共重合させたもので、Tgは−40℃、130℃溶融粘度は25万(mPa・s)であった。
【0040】
透明な高剛性の表面材として、厚さ300μmのポリカーボネート(PC)シートを用いた。
【0041】
意匠性積層材の作製は、片面離型フィルムを剥がした粘着シートを、エンボス鋼板にニップロール間を通して貼った後(線圧力:1kgf/cm、速度:1m/分)、残りの離型フィルムを剥がしてニップロール間を通してPCシートを貼り(線圧力:1kgf/cm、速度:1m/分)、意匠性積層材を製造した。
【0042】
(実施例2)
表面に意匠性・装飾性を施した基材として、エンボス深さ300μmレース調のカーテン生地を表面に接着したポリエチレンテレフタレート(PET)シートを用いた。
実施例1で使用した粘着剤を用いて、これを離型フィルムに挟んで厚み1000μmのシート状に成形した後、紫外線架橋して柔らかい透明粘着シートを得た。
そして、前記レース調PETシートとこの透明粘着シートと実施例1のPC表面材とを用いて、実施例1と同様の作製方法で意匠性積層体を得た。
【0043】
(実施例3)
意匠性・装飾性を施した基材として、エンボス深さ20μmの梨地模様の化粧板を用いた。
実施例1で使用した粘着剤を用いて、これを離型フィルムに挟んで厚み100μmのシート状に成形した後、紫外線架橋して柔らかい透明粘着シートを得た。透明な高剛性の表面材として厚さ200μmのPETフィルムを用いた。
前記化粧板、前記100μmの透明粘着シートおよび前記200μmPETフィルムを用いて実施例1と同様の作製方法で意匠性積層体を得た。
【0044】
(比較例1)
実施例1と同様の装飾基材表面に2液混合型の液状ウレタン系接着剤を流し込んで、実施例1と同様の表面材を接着剤が硬化する前にラミネートして意匠性積層材を得た。
【0045】
(比較例2)
実施例2で用いた装飾基材と実施例1で用いた表面材との間に厚さ400μmのEVA系ホットメルトシートを挟んでオートクレーブで接着して意匠性積層材を得た。
【0046】
(比較例3)
実施例3と同様の装飾基材と表面材を用いて、市販の厚さ50μmの透明粘着シート(日東電工社製、商品名「HJ−9150W」)を2枚重ねたものを使用し、実施例1と同様の作製方法で意匠性積層材を得た。
【0047】
(物性値の測定)
実施例1〜3及び比較例1〜3で作製した粘着シートは、前記測定方法にて40℃保持力を測定し、意匠性積層材については表面の鏡面性について外観観察した結果を表−1に示した。
なお、鏡面性については、表面材に蛍光灯を反射させて反射像の歪みのないものを(○)と評価した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果から明らかなように、本発明の柔らかい透明粘着シートで積層した意匠性積層材は基材の装飾性を損なうことなく鏡面性付与できたのに対して、本発明の範囲外の液状接着剤やホットメルト接着剤および硬い粘着シートで積層した意匠性積層材は鏡面性を満足することができなかった。
【符号の説明】
【0050】
1 透明粘着シート
2 離型フィルム
3 基材
4 表面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸模様或いは印刷模様を備え、凹凸の深さが20μm〜300μmである基材に、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下のベース樹脂を含み、厚みが100μm〜2000μmであって且つ前記凹凸の深さの2倍以上であり、JIS Z0237に準拠した下記40℃保持力が0.2mm〜10mmである透明粘着シートと、透明な表面材とを、順次積層してなる構成を備えた意匠性積層材。
40℃保持力:JIS Z0237に準拠して、シートを38μmPETフィルムで背貼りした後、JIS Z0237で規定するところのSUS板を用いて面積20mm×20mmで接着させ、40℃の環境下で500gfの荷重を2時間かけた後のズレ長さ。
【請求項2】
基材の凹凸模様或いは印刷模様における凹凸の深さが150μm〜300μmであるのに対し、透明粘着シートの厚みが325μm〜2000μmであることを特徴とする請求項1記載の意匠性積層材。
【請求項3】
透明粘着シートは、α、β不飽和カルボン酸を含有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体からなり、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下であるベース樹脂と、前記不飽和カルボン酸と反応する有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマーと、光開始剤とを含有するものである請求項1又は2に記載の意匠性積層材。
【請求項4】
透明粘着シートに、表面材を積層した後に反応させて透明粘着シートを硬化させ得る反応性液体が含浸してなる請求項1〜3の何れかに記載の意匠性積層材。
【請求項5】
基材は、ガラス質、合成樹脂質、繊維質、紙質、木質、金属質或いは陶磁器質の材質からなる、板状体、シート状体或いはフィルム状体である請求項1〜4の何れかに記載の意匠性積層材。
【請求項6】
表面材は、ガラス質或いは合成樹脂質の材質からなる、板状体、シート状体或いはフィルム状体である請求項1〜5の何れかに記載の意匠性積層材。
【請求項7】
凹凸模様或いは印刷模様を備え、凹凸の深さが20μm〜300μmである基材に、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下のベース樹脂を含み、厚みが100μm〜2000μmであって且つ前記凹凸の深さの2倍以上であり、JIS Z0237に準拠した下記40℃保持力が0.2mm〜10mmである透明粘着シートをその粘着力によって貼り合わせ、当該透明粘着シートに、当該透明粘着シートの粘着力によって透明な表面材を貼り合わせることを特徴とする意匠性積層材の製造方法。
40℃保持力:JIS Z0237に準拠して、シートを38μmPETフィルムで背貼りした後、JIS Z0237で規定するところのSUS板を用いて面積20mm×20mmで接着させ、40℃の環境下で500gfの荷重を2時間かけた後のズレ長さ。
【請求項8】
表面材を貼り合わせる前に、表面材を貼り合わせた後に反応させて透明粘着シートを硬化させ得る反応性液体を透明粘着シートに含浸させ、当該透明粘着シートの表面に表面材を貼り合わせた後、当該反応性液体を反応させて透明粘着シートを硬化させることを特徴とする請求項7に記載の意匠性積層材の製造方法。
【請求項9】
透明粘着シートは、α、β不飽和カルボン酸を含有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体からなり、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下であるベース樹脂と、前記不飽和カルボン酸と反応する有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマーと、光開始剤とを含有するものである請求項7又は8に記載の意匠性積層材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−47020(P2010−47020A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273113(P2009−273113)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【分割の表示】特願2003−63384(P2003−63384)の分割
【原出願日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】