愛玩動物用ガムおよびその製造方法
【課題】歯磨き効果を高めることが可能な愛玩動物用ガムおよびその製造方法提供する。
【解決手段】動物の皮から作られた愛玩動物用のガムであって、動物の皮から得られる1本の紐状部材によって編まれている編み部分を有している。これにより、愛玩動物がガムを噛んだ際に、編み部分の隙間に歯が入り込み、歯磨き効果を得ることができる。さらに、1本の紐状部材によって編まれているため、咀嚼によって形が崩れた場合であっても、バラバラになりにくく、形を維持することができる。
【解決手段】動物の皮から作られた愛玩動物用のガムであって、動物の皮から得られる1本の紐状部材によって編まれている編み部分を有している。これにより、愛玩動物がガムを噛んだ際に、編み部分の隙間に歯が入り込み、歯磨き効果を得ることができる。さらに、1本の紐状部材によって編まれているため、咀嚼によって形が崩れた場合であっても、バラバラになりにくく、形を維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、愛玩動物用ガムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
愛玩動物をペットとして飼う人口は、年々増大している。このような愛玩動物は、飼い主によって、非常にかわいがられ、かつ、大切にされている。特に、近年では、愛玩動物の体調が悪くなった場合にすぐに動物病院の獣医に診てもらう等、愛玩動物の健康を重要視している飼い主が多い。
【0003】
このような愛玩動物は、自らブラッシングする等によって歯を磨くことができないため、歯石や歯垢が蓄積して歯周疾患を引き起こしてしまうこともあり、歯の健康が問題視されている。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献1(特開平9−28312号公報)に記載の動物用食餌材のように、ゼオライトを使用して歯磨き効果を持たせた食餌材が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1(特開平9−28312号公報)に記載の食餌材は、噛み応えを良好にすることで、噛む回数を増やし、歯磨き効果を高めることをねらいとしている
ところが、このような食餌材は、愛玩動物によって咀嚼される際に、歯の先端には当たるが、歯の根元には当たりにくい。このため、歯の根元や、歯の歯茎に近い部分における歯磨き効果を十分に得ることができない。
【0006】
また、従来の食餌材は、愛玩動物による咀嚼によって破壊され、小さく分解されてしまう場合がある。このように小さく分解されてしまうと、完食させるまでの間、愛玩動物の食欲や食餌材に対する関心を保てない場合があり、咀嚼による歯磨き効果を得る機会が損なわれることがある。
【0007】
また、食餌材が小さく分解されてしまうと、愛玩動物は、よく噛まずに直ぐに飲み込んでしまう場合や、咀嚼の際に用いる歯が特定の歯に偏ってしまい全体的な歯磨き効果が得られない場合がある。さらに、咀嚼しても十分な歯磨き効果が得られないほど小さく分解されてしまうこともある。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、歯磨き効果を高めることが可能な愛玩動物用ガムおよびその製造方法提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1観点に係る愛玩動物用ガムは、動物の皮から得られる1本の紐状部材によって編まれている編み部分を有する。なお、編み部分は、愛玩動物用ガムの全体の少なくとも一部を構成していればよく、愛玩動物用ガムの全体を構成していてもよい。なお、編み部分の編み方は、特に限定されるものではなく、例えば、緯編(よこあみ、Weft Knitting)であってもよいし、経編(たてあみ、Warp Knitting)であってもよい。また、編み部分は、手編みによって得られるものであってもよいし、機械によって編まれることで得られるものであってもよい。
【0010】
この愛玩動物用ガムは、動物の皮から得られる紐状部材を用いているため、愛玩動物の食欲をかき立てることができ、咀嚼させる機会をより確実に確保することができる。また、編み部分を有しているため、愛玩動物の歯が、編み部分の紐状部材同士の間から入り込む。このため、紐状部材は、歯の根元まで入り込んで、歯の根元や歯茎に近い部分に擦り付けられ、汚れを落とす。これにより、歯の根元や歯茎に近い部分についても、歯磨き効果を十分に得ることができる。なお、歯先については、従来同様に歯磨き効果を得ることができる。
【0011】
さらに、この愛玩動物用ガムが有している編み部分は、1本の紐状部材によって編まれているため、複数本の紐状部材が組まれる場合と比較して、分解されにくい。このため、完食させるまでの間、愛玩動物の食欲を保ちやすくなり、直ぐに飲み込んでしまうことを防ぎ、咀嚼による歯磨き効果を得る機会が確保しやすくなる。また、編み部分を有しているため、咀嚼の際に用いる歯の偏りを抑え、前歯や奥歯等を含む歯全体の歯磨き効果を得ることが可能になる。
【0012】
これにより、歯磨き効果を高めることが可能になる。
【0013】
本発明の第2観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、編み部分は、全体の10質量パーセント以上である。
【0014】
この愛玩動物用ガムは、全体のうち編み部分によって10質量パーセント以上が構成されている。このため、愛玩動物が咀嚼する際に、より多くの歯が、編み部分の紐状部材同士の間に入り込みやすくなる。
【0015】
本発明の第3観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点又は第2観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、紐状部材の表面の少なくとも一部に凹凸形状が形成されている。
【0016】
この愛玩動物用ガムは、愛玩動物の歯に付着している歯石や歯垢に単に接触するだけでなく、凹凸形状部分を歯に擦り付けることが可能になる。これにより、凹凸形状部分と歯との摩擦によって、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果を高めることが可能になる。
【0017】
本発明の第4観点に係る愛玩動物用ガムは、第3観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、凹凸形状が形成されている表面の断面曲線における十点平均粗さは、基準長さを25.0mmとした場合に、35μm以上400μm以下である。
【0018】
この愛玩動物用ガムは、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をよりいっそう高めることが可能になる。
【0019】
本発明の第5観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点又は第2観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、編み部分は、外形が筒形状となる部分を含むように形成されている。
【0020】
この愛玩動物用ガムは、編み部分の外形が筒形状となる部分を含んでいるため、立体的に形成されている。これにより、外形が板状の場合と比較して、外形が筒形状の場合には、周囲から内側に歯が入り込みやすくなり、歯と歯の間や歯の根元付近まで紐状部材が入り込みやすくなる。
【0021】
より具体的に説明すると、例えば、外形が板状であると、紐状部材同士の間の隙間に愛玩動物の歯が入り込もうとしても、この隙間部分で上の歯と下の歯が当たってしまった場合には、歯の根元まで紐状部材を入り込ませることが困難な場合がある。これに対して、この愛玩動物用ガムでは、外形が筒形状となるように立体的に形成された部分を含んでいるため、上の歯と下の歯とが当たってしまう前に、歯の根元まで紐状部材を入り込ませることが可能になる。
【0022】
本発明の第6観点に係る愛玩動物用ガムは、第5観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、筒形状の内側以外でかつ外側以外の周方向の表面の少なくとも一部に、凹凸形状が形成されている。
【0023】
この愛玩動物用ガムは、筒形状の紐状部材同士の間を通じて歯が入り込む時に、紐状部材同士が向き合っている面の少なくとも一部には凹凸形状が形成されているため、歯に対して凹凸形状が形成されている部分が擦り付けられる。これにより、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をより高めることが可能になる。
【0024】
本発明の第7観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点、第2観点および第5観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、紐状部材は、動物の皮を、厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断することで得られる。なお、ここでの渦巻き状の経路は、半径長さが長くなっていくように内側から外側に向けて渦巻き状に切断をしてもよいし、半径長さが短くなっていくように外側から内側に向けて渦巻き状に切断をしてもよい。
【0025】
この愛玩動物用ガムは、動物の皮を切断することによって、紐状部材を得ている。ここで、仮に、動物の皮を、単に、直線的に切断するのであれば、得られる紐状部材の長さは短いものになってしまう。なぜなら、動物の皮の大きさは個体差が小さいため、直線的に切断する場合には、切断して得られる紐状部材の長さができるだけ長くなるように切断(例えば、方形の皮であれば、対角線上に切断する等)下としても、得られる紐状部材が長さには動物の体格に由来する限度がある。
【0026】
これに対して、この愛玩動物用ガムでは、動物の皮を、直線的に切断するのではなく、厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断している。このため、得られる紐状部材の長さをより長くすることが可能になる。これにより、短い紐状部材を用いて編み部分を編む場合と比較して、長い紐状部材を用いて編み部分を編んだ場合の方が、編み部分の大きさを大きくすることができる。
【0027】
本発明の第8観点に係る愛玩動物用ガムは、第7観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、動物の皮は、表皮と皮下組織との間の真皮である。
【0028】
この愛玩動物用ガムは、真皮の部分を用いて構成されているため、乾燥させたものを咀嚼させた場合の歯磨き効果をより高めることができる。
【0029】
本発明の第9観点に係る愛玩動物用ガムは、第8観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、紐状部材には、真皮のうち表皮側の面の表面粗さおよび皮下組織側の面の表面粗さのいずれよりも表面粗さが粗い凹凸形状が形成されている。
【0030】
なお、ここで、真皮のうち表皮側の面の表面粗さおよび皮下組織側の面の表面粗さは、基準長さを2.5mmとした場合の、断面曲線における十点平均粗さとして特定される。
【0031】
商業的に入手される真皮は、表皮側の面および皮下組織側の面の両方が平滑な面を構成している。
【0032】
これに対して、この愛玩動物用ガムの紐状部材は、凹凸形状を有しており、その凹凸形状部分の表面粗さが、真皮の平滑な表皮側の面および皮下組織側の面のいずれよりも粗くなるように構成されている。このため、真皮の平滑な表皮側の面や皮下組織側の面が歯に擦り付けられた場合と比較して、凹凸形状部分が歯に擦り付けられた場合の方が、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果を高めることが可能になる。
【0033】
本発明の第10観点に係る愛玩動物用ガムは、第9観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、凹凸形状は、真皮を厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断する際の、切断用の刃先と真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される。
【0034】
この愛玩動物用ガムは、真皮から紐状部材を得ながら、凹凸形状を同時に形成することが可能になる。
【0035】
本発明の第11観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点から第10観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、少なくとも編み部分の表面には、硬化層が設けられている。
【0036】
この愛玩動物用ガムは、編み部分の表面に硬化層が形成されているため、編み部分において互いに接触している紐状部材同士を固定させることが可能になる。このため、愛玩動物によって咀嚼される際に、形状が保持されやすく、歯との摩擦を効果的に生じさせることができる。
【0037】
本発明の第12観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点から第11観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、編み部分の編み方は、平編である。
【0038】
この愛玩動物用ガムの編み部分の編み方は、平編である。このため、編み部分には、紐状部材が輪の形になっている部分が無数に存在する。このため、咀嚼される際には、複数の輪のそれぞれの内側に対して、複数の歯が入り込むことになる。この場合に、これらの複数の輪の形は、1本の糸状部材で構成され、互いに連続しているため、1つの輪が広がろうとすると他の輪に張力を掛けることができ、紐状部材が歯から逸れにくくなる。これにより、歯磨き効果をより高めることができる。
【0039】
本発明の第13観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点から第12観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、動物の皮は、牛、豚、馬、鹿、カンガルー、ダチョウ、羊、山羊、および、猪からなる群より選択される1種類又は2種以上の組合せである。
【0040】
本発明の第14観点に係る愛玩動物用ガムの製造方法は、以下の工程を有する。動物の真皮を用意する。この真皮の用意は、商業的に購入することで用意してもよい。真皮を厚み方向に切断することにより、少なくとも1本の紐状部材を得る。1本の紐状部材を編むことで編み部分を形成する。
【0041】
この愛玩動物用ガムの製造方法で得られる愛玩動物用ガムは、動物の皮から得られる紐状部材を用いているため、愛玩動物の食欲をかき立てることができ、咀嚼させる機会をより確実に確保することができる。また、編み部分を有しているため、愛玩動物の歯が、編み部分の紐状部材同士の間から入り込む。このため、紐状部材は、歯の根元まで入り込んで、歯の根元や歯茎に近い部分に擦り付けられ、汚れを落とす。これにより、歯の根元や歯茎に近い部分についても、歯磨き効果を十分に得ることができる。なお、歯先については、従来同様に歯磨き効果を得ることができる。
【0042】
さらに、この愛玩動物用ガムが有している編み部分は、1本の紐状部材によって編まれているため、複数本の紐状部材が組まれる場合と比較して、分解されにくい。このため、完食させるまでの間、愛玩動物の食欲を保ちやすくなり、直ぐに飲み込んでしまうことを防ぎ、咀嚼による歯磨き効果を得る機会が確保しやすくなる。また、編み部分を有しているため、咀嚼の際に用いる歯の偏りを抑え、前歯や奥歯等を含む歯全体の歯磨き効果を得ることが可能になる。
【0043】
これにより、歯磨き効果を高めることが可能になる。
【0044】
本発明の第15観点に係る愛玩動物用ガムの製造方法は、第14観点に係る愛玩動物用ガムの製造方法において、真皮を厚み方向に切断する際の切断経路は、厚み方向視で渦巻き状である。なお、ここでの渦巻き状の経路は、半径長さが長くなっていくように内側から外側に向けて渦巻き状に切断をしてもよいし、半径長さが短くなっていくように外側から内側に向けて渦巻き状に切断をしてもよい。
【0045】
愛玩動物用ガムは、動物の皮を切断することによって、紐状部材を得ている。ここで、仮に、動物の皮を、単に、直線的に切断するのであれば、得られる紐状部材の長さは短いものになってしまう。なぜなら、動物の皮の大きさは個体差が小さいため、直線的に切断する場合には、切断して得られる紐状部材の長さができるだけ長くなるように切断(例えば、方形の皮であれば、対角線上に切断する等)下としても、得られる紐状部材が長さには動物の体格に由来する限度がある。
【0046】
これに対して、この愛玩動物用ガムの製造方法では、動物の皮を、直線的に切断するのではなく、厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断している。このため、得られる紐状部材の長さをより長くすることが可能になる。これにより、短い紐状部材を用いて編み部分を編む場合と比較して、長い紐状部材を用いて編み部分を編んだ場合の方が、編み部分の大きさを大きくすることができる。
【0047】
本発明の第16観点に係る愛玩動物用ガムは、第14観点又は第15観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、紐状部材は、表面の少なくとも一部が凹凸形状となるように加工されている。
【0048】
この製造方法で得られる愛玩動物用ガムは、紐状部材の少なくとも一部には凹凸形状が形成されているため、愛玩動物が咀嚼する際に、紐状部材の凹凸形状部分が歯に対して擦り付けられる。これにより、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をより高めることが可能になる。
【0049】
本発明の第17観点に係る愛玩動物用ガムは、第16観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、凹凸形状は、真皮を厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断する際の、切断用の刃先と真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される。なお、「切断用の刃先と真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される」とは、特に限定されるものではなく、例えば、切断用の刃を長手方向に往復運動させながら真皮を送る場合に、切断用の刃に多少追従して動く余地を残すように真皮の固定状態を緩やかにすることに起因して形成されるものであってもよい。また、切断用の鋭利な歯を用いた部分的な切断を行いつつ、わずかに繋がっている部分を引きちぎるようにして、凹凸を形成するようにしてもよい。
【0050】
この愛玩動物用ガムの製造方法は、真皮の切断作業と同時に、紐状部材への凹凸形状の付与が可能になる。このため、切断作業と、凹凸形成作業と、の両方を別工程として行う必要がなく、生産性を向上させることができる。
【0051】
本発明の第18観点に係る愛玩動物用ガムは、第16観点又は第17観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、凹凸形状となるように加工された部分の表面粗さは、真皮のうち表皮側の面の表面粗さおよび皮下組織側の面の表面粗さのいずれよりも表面粗さが粗くなるように加工されている。
【0052】
なお、ここで、真皮のうち表皮側の面の表面粗さおよび皮下組織側の面の表面粗さは、基準長さを2.5mmとした場合の、断面曲線における十点平均粗さとして特定される。
【0053】
商業的に入手される真皮は、表皮側の面および皮下組織側の面の両方が平滑な面を構成している。
【0054】
これに対して、この製造方法によって得られる愛玩動物用ガムの紐状部材は、凹凸形状を有しており、その凹凸形状部分の表面粗さが、真皮の平滑な表皮側の面および皮下組織側の面のいずれよりも粗くなるように構成されている。このため、真皮の平滑な表皮側の面や皮下組織側の面が歯に擦り付けられた場合と比較して、凹凸形状部分が歯に擦り付けられた場合の方が、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をより高めることが可能になる。
【0055】
本発明の第19観点に係る愛玩動物用ガムは、第14観点から第18観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、編み部分は、外形が筒形状となる部分を含むように形成されている。
【0056】
この製造方法で得られた愛玩動物用ガムは、編み部分の外形が筒形状となる部分を含んでいるため、立体的に形成されている。これにより、外形が板状の場合と比較して、外形が筒形状の場合には、周囲から内側に歯が入り込みやすくなり、歯と歯の間や歯の根元付近まで紐状部材が入り込みやすくなる。
【0057】
より具体的に説明すると、例えば、外形が板状であると、紐状部材同士の間の隙間に愛玩動物の歯が入り込もうとしても、この隙間部分で上の歯と下の歯が当たってしまう場合には、歯の根元まで紐状部材を入り込ませることが困難な場合がある。
【0058】
これに対して、この愛玩動物用ガムでは、外形が筒形状となるように立体的に形成された部分を含んでいるため、上の歯と下の歯とが当たってしまう前に、歯の根元まで紐状部材を入り込ませることが可能になる。
【0059】
本発明の第20観点に係る愛玩動物用ガムは、第14観点から第19観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、少なくとも編み部分の表面に、硬化層を設ける工程をさらに有する。
【0060】
この製造方法で得られる愛玩動物用ガムは、編み部分の表面に硬化層が形成されているため、編み部分において互いに接触している紐状部材同士を固定させることが可能になる。このため、愛玩動物によって咀嚼される際に、形状が保持されやすく、歯との摩擦を効果的に生じさせることができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明の愛玩動物用ガムによると、愛玩動物の歯磨き効果を高めることができる。
【0062】
本発明の愛玩動物用ガムの製造方法によると、愛玩動物の歯磨き効果を高めることができる愛玩動物用のガムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係る愛玩動物用ガムの外観斜視図である。
【図2】表皮、真皮および皮下組織の三層状態を示す概略図である。
【図3】切断装置用の特定の形に切り取られる真皮の様子を示す図である。
【図4】真皮の切断開始状態の様子を示す図である。
【図5】真皮を渦巻き状に切断することで紐状部材を得る様子を示す図である。
【図6】径方向外側から見た切断用の刃と真皮との位置関係を示す図である。
【図7】接線方向における真皮進行方向側から見た切断用の刃と真皮との位置関係を示す図である。
【図8】切断部分の様子を上方から見た場合の平面視概略図である。
【図9】紐状部材の凹凸形状の様子を示す概略図である。
【図10】平編の表側から見た平面図である。
【図11】平編の裏面側から見た平面図である。
【図12】愛玩動物用ガムを動物が咀嚼する際の例を示す図である。
【図13】第2実施形態に係る愛玩動物用ガムの例を示す図である。
【図14】第2実施形態に係る愛玩動物用ガムの筒状体の軸方向視概略断面図を示す図である。
【図15】第3実施形態に係る愛玩動物用ガムの概観斜視図である。
【図16】第4実施形態に係る紐状部位の概観斜視図である。
【図17】第5実施形態に係る愛玩動物用ガムの概観斜視図である。
【図18】真皮から紐状部材を得る切断方法の参考例を示す図である。
【図19】複数本の紐状部材によって組まれた場合の例を示す図である。
【図20】複数本の紐状部材によって組まれたガムを食させた場合の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態としての愛玩動物用ガムおよびその製造方法を説明する。
【0065】
(1)第1実施形態
図1に、第1実施形態に係る愛玩動物用ガム10の概観斜視図を示す。
【0066】
(1−1)愛玩動物用ガム10の概要
愛玩動物用ガム10は、牛の真皮で構成される1本の紐状部材7を、外形が筒形状である筒状体となるように平編することで得られる。
【0067】
愛玩動物用ガム10は、犬等の動物に対して餌として与えられ、歯によって十分な咀嚼を行った上で飲み込まれる。この愛玩動物用ガム10が愛玩動物に咀嚼される際に、歯と愛玩動物用ガム10とが互いに擦れ合うことで、歯の汚れを落とす歯磨き効果が得られるとともに、歯に付着している歯石や歯垢等を削ぎ落とす効果が得られる。
【0068】
(1−2)愛玩動物用ガム10の製造方法
愛玩動物用ガム10は、以下の工程で製造される。
【0069】
(1−2−1)真皮6の用意
まず、真皮を用意する。
【0070】
この真皮は、通常の商業的手法により入手することができる。真皮6は、図2に示すように、動物の皮(本実施形態では、牛の皮)のうち、表皮5と、皮下組織4と、を取り除いて得られる皮である。なお、表皮5は、動物の皮膚を構成している最も体外に位置する組織である。また、皮下組織4は、内臓や脂肪が含まれる。
【0071】
真皮6は、動物の大きさに由来するものであるため、その大きさは個体差があるが、概ね、図3に示すように、縦L1が約70cmで、横L2が約120cm程度の大きさであり、厚みは2mm程度である。特に、真皮6の厚みは、1mm以上4mm以下の範囲である。
【0072】
ここで、商業的に入手される真皮6では、表皮5側の上面6eと、皮下組織4側の下面6iと、がそれぞれ洗浄されており、平滑化されている。
【0073】
(1−2−2)切断機械にセットするための形状の調整
次に、用意した真皮6を、図3に示すように、円形状に切断する(外周の直径が570mm程度)。
【0074】
なお、本実施形態では、内側から渦巻き状に切断を開始するために、内側に図3に示すような径の小さな開口6x(直径が40mm程度)を設ける。
【0075】
(1−2−3)切断による紐状部材7の作成
円形状に切断された真皮6を、図4に示すように、切断用の刃8を備えた図示しない切断装置の所定の位置にセットする。
【0076】
真皮6は、切断装置のターンテーブルによって、所定の回転方向R1に所定の回転速度でスムーズに(間欠的にならないように)回転する。ここで、所定の周期およびストロークで切断用の刃8が上下に所定ストローク幅(ここでは、14mm)で、所定の周期で駆動する。これにより、図5に示すように、内側から外側に向けて渦巻き状に真皮6が切断されていくことにより、紐状部材7が得られる。ここで、切断が進むにつれて内側の開口6xが大きくなっていくため、切断用の刃8は、開口6xの広がりに伴って径方向外側に向けて少しずつ移動する(図5の矢印参照)。なお、上記所定の回転速度および切断用の刃8の上下駆動周期は、図示しない操作部を介して入力することにより調節可能になっている。なお、本実施形態では、幅が1.7mmとなるように切断されている。
【0077】
図6に、径方向外側から見た切断用の刃8と真皮6との位置関係を示す。図7に、真皮6の円弧の接線方向における真皮進行方向側(図5における下側)から見た切断用の刃8と真皮6との位置関係を示す。図8に、切断時の様子を上方から見た場合の平面視概略図を示す。
【0078】
円形状に切り取られた真皮6は、図7に示すように、その円形外周部が、ターンテーブル91と狭持部93とによって鉛直方向から狭持されている。この真皮6は、円形外周部が狭持された状態のままで回転される。ここで、狭持部93は、真皮6の上面6eに対して、押さえレバー94によって押し付けられている。また、押さえ92は、真皮6の上面6eの上方であって、真皮6の被切断部分近傍における径方向外側に位置しており、真皮6の切断中には、真皮6の上面6eに対して押さえ付けられる。これにより、真皮6は、円形外周部がターンテーブル91と狭持部93によって狭持されているだけでなく、円形内周部の被切断部分近傍が押さえ92によって上方から押さえられているため、真皮6の内周側端部が自由端にならないようにしている(円形内周部の被切断部近傍は上方側からのみ押さえられ、下方からは押さえられていない)。なお、切断時は、押さえ92の下面は、真皮6の上面6eと擦れ合いながら、真皮6の被切断部分近傍の上方への揺れを防いでいる。これにより、切断用の刃8が上方から下方に向けて切断する際は、真皮6が押さえ92の下面から下方に向けて離れ気味の状態になり、切断用の刃8が下方から上方に向けて切断する際は、真皮6が切断用の刃8に追従するように上方に上がりつつ、押さえ92の下面によってさらなる上方への移動が規制された状態になる。
【0079】
切断用の刃8は、真皮6の回転進行方向後ろ側が鋭利になるように形成されている。具体的には、切断用の刃8は、鋭利になっている部分を除くと、真皮6の進行方向の長さが5mmであり、径方向の幅が3mmである。切断用の刃8は、後ろ側(真皮6の回転進行方向とは反対側、歯先側)が鉛直方向に伸びており、最下端から上方8mmの位置から下方に進むにつれて後ろ側(真皮6の回転進行方向とは反対側、歯先側)に向けて細くなるように形成されている。また、切断用の刃8は、径方向外側が鉛直方向に延びており、最下端から上方8mmの位置から下方に進むにつれて径方向外側に向けて細くなるように形成されている。なお、切断用の刃8の径方向外側を向いた面は平面形状であるが、この平面は、図8に示すように、上面視において、前側(真皮6の回転進行方向側、歯先とは反対側)に向かうにつれて径方向内側に向かうような、斜めの姿勢となるように(図8のθが10度程度になるように)切断用の刃8が切断装置に取り付けられている。
【0080】
このように切断されることで、図9に示すように、紐状部材7が得られる。なお、本実施形態では、幅が1.7mmとなるように切断されているため、得られる紐状部材7の全長は、約85mとなる。図9において、面Eは表皮側の面であり、面Iは皮下組織側の面であり、面Rは切断時に径方向外側に位置している面であり、面Lは切断時に径方向内側に位置している面である。ここで、面Rおよび面Lは、いずれも凹凸形状が形成されている。この凹凸形状は、上記切断用の刃8を備えた切断装置による切断時に同時に形成される。具体的には、切断用の刃8の刃先と真皮6の切断面との当たり方の変化に起因して凹凸が形成される。
【0081】
(1−2−4)紐状部材7を編む
上述のようにして得られた紐状部材7は、図示しない編み機によって、緯編(よこあみ、Weft Knitting)の一種である平編(Plain Stitch、メリヤス編、天竺編、ジャージーともいう。)によって編み部分が形成されていく。さらに、この編み部分は、外形が筒形状となるように編まれることで、筒状体を構成する。
【0082】
なお、紐状部材7は、編まれる前に、柔軟性を上げるために、グリセリンとエタノールを含有した水溶液に30分程度浸される。
【0083】
紐状部材7は、図10に示す表面、および、図11に示す裏面のように、直線状に交差させることなく、編目(loop)を形成する動作を連続的に行いながら、平編される。
【0084】
この筒状体は、紐状部材7が、編み物が形成されていく方向(図10、11における上方向)に対して、主として、直行する方向(図10、11における左右方向)に連続的に編目が形成していきながら、編まれることで得られる。
【0085】
平編みでは、まず、紐状部材7を波状にすることで、1段目が作られる。その後、図10、11のAで示す部分が、Bで示す部分まで伸びることで、筒形状を形成しつつ、筒形状の軸方向に1つ段を追加する。Bまで伸びた紐状部材7は、1段目の波状の上方に突出した部分の内側から、筒形状となった際の径方向内側から外側に向けて、1段目と同様に、上方に突出した部分を生じさせながら編んでいく。これによって、2段目が作られる。その後、図10、11のCで示す部分が、Dで示す部分まで伸びることで、1段目や2段目と同様に筒形状を形成しつつ、筒形状の軸方向にさらに1つ段を追加する(3段目)。この操作を繰り返すことにより、平編による筒状体が得られる。
【0086】
なお、本実施形態では、紐状部材7は幅が1.7mmとなるように切断されているため、得られる紐状部材7の全長が約85mとなっており、平編によって4.2m程度の長さの筒状体になる。その後、4.2mmの筒状体は、愛玩動物が一回に食す程度の長さに切断される。
【0087】
(1−2−5)平編による筒状体を硬化させる
紐状部材7が平編され、両端が切断された筒状体を、デンプンを溶かした水溶液に含浸させる。なお、この水溶液に含有させるデンプンの量は、10〜30質量パーセント程度であることが好ましく、20質量パーセント程度であることがより好ましい。なお、この水溶液には、愛玩動物用ガム10の風味と光沢を付与する目的で、カゼインが含有されていてもよい。
【0088】
上述のように水溶液に含浸させた筒状体を、熱風によって強制乾燥させることで、表層に硬化層が形成され、愛玩動物用ガム10が得られる。
【0089】
(1−3)特徴
以上のようにして得られる愛玩動物用ガム10は、平編で筒状体が形成されているため、愛玩動物が咀嚼した場合に、図12に示すように、歯Tが、筒状体の紐状部材7同士の間の隙間Pの内側に向かう際に、歯Tと紐状部材7との摩擦が生じる。これにより、歯Tに付着していた汚れが落とされ、歯磨き効果が得られる。
【0090】
なお、例えば、図18に示すように、単に、直線的に切断する場合には、得られる紐状部材907の長さが短くなってしまう。このため、仮に、得られた紐状部材907によって、上記愛玩動物用ガム10のような平編の筒状体を得ようとしても、紐状部材907が直ぐに途切れてしまうため得ることができない。これに対して、上記愛玩動物用ガム10では、真皮6を渦巻き状に切断することで、連続的に、長い紐状部材7を得ることができている(上記実施形態では85m程度)。これにより、平編によって得られた筒状体を、連続的に製造することができるようになっている(上記実施形態では4.2m程度)。
【0091】
また、例えば、直線的に切断されて得られる紐状部材907を、図19に示すように、各紐状部材907同士の間に隙間が生じるように、複数本組合せることにより、組み物910を作成することができる。ここで、組み物907の長手方向と、各紐状部材907の長手方向とは、概ね同じ方向を向いている。この紐状部材907は大きく曲げられることなく、なだらかに湾曲しながら他の紐状部材907と組まれる。このため、図18で示したように、直線的に切断することで短い紐状部材907しか得られない場合であっても、横L2(約120cm程度)よりも多少短い程度の長手方向の長さを有する組み物910を得ることはできる。ところが、このような組み物910では、図20に示すように、愛玩動物が噛み付こうとする際に、手で押さえる等によって長手方向に引っ張られると紐状部材907同士の間の隙間が閉じられてしまう。そして、愛玩動物が咀嚼した時には、紐状部材907の長手方向に対して略垂直な方向から歯によって力が付与されることになる。このため、組み物910は、歯Tの先端によって容易につぶされてしまい、紐状部材907を歯Tの根元や歯Tの歯茎G付近に対して十分に擦り合わせることができない。このため、十分な歯磨き効果を得ることができない。
【0092】
これに対して、本実施形態の愛玩動物用ガム10では、1本の紐状部材7が平編された編み部分によって筒状体が形成されている。このため、愛玩動物用ガム10が噛み付く筒状体の外側には、全体的に隙間Pが設けられており、特に隙間Pの位置に方向性も無い。さらに、紐状部材7は平編されているため、筒状体の軸方向(長手方向)に伸びるのではなく、筒状体の周りに沿うように、かつ、波打つことで網目(loop)を作りながら、伸びている。しかも、平編された紐状部材7の網目(loop)は、上段や下段の網目(loop)と絡み合っているため、筒状体は、形状保持力が向上している。さらに、形状保持力のある筒状体の中は、中空となっているため、歯Tの先端が隙間Pの内側に入り込みやすい。このため、愛玩動物用ガム10のどの方向から噛み付かれたとしても、歯Tの先端を筒状体の内部まで到達させ、紐状部材7を歯Tの根元や歯Tの歯茎G付近に対して擦り合わせることができる。以上により、上記愛玩動物用ガム10は、十分な歯磨き効果を得ることができる。なお、歯Tに擦り付けられる部分が、紐状部材7に設けられた凹凸形状部分である場合には、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果を高めることができる。また、小さく砕けた後は咀嚼することなく直ぐに飲み込んでしまう犬のような愛玩動物であっても、最初の噛み付き時歯磨き効果を得ることができる。
【0093】
さらに、上述した組み物910は、複数本の紐状部材907によって構成されているため、愛玩動物がそのうちの1本を咥えて抜き出してしまうと、組み物910の全体形状が崩れてしまい、歯磨き効果が得られにくい。これに対して、上記愛玩動物用ガム10では、1本の紐状部材7を編むことで構成されている。1本の紐状部材7が咥えて抜き取られることがなく、バラバラになりにくいため、完食させるまでの間、歯磨き効果を得ることができる。
【0094】
(2)第2実施形態
図13に、第2実施形態に係る愛玩動物用ガム20の概観斜視図を示す。
【0095】
この第2実施形態の愛玩動物用ガム20も、上記第1実施形態の愛玩動物用ガム10と同様に、紐状部材27(上記第1実施形態の紐状部材7に相当)を平編によって筒状体を形成する点は共通している。この第2実施形態の愛玩動物用ガム20では、上記第1実施形態の愛玩動物用ガム10のように軸方向の端部を切断するのではなく、軸方向に形成される最終段部分22が、紐状部材27の余り部分21によって外側から周方向に巻き付けられた構成を有している。この愛玩動物用ガム20では、平編によって構成されている部分は、全体に対して90質量パーセント以上の部分を占めている。この第2実施形態の愛玩動物用ガム20によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
なお、この愛玩動物用ガム20のW−W面で切断した断面図を図14に示す。なお、図14では、紐状部材27は、一部だけ示し、他の部分は省略している。
【0097】
ここでは、筒状体の外形と内径との差(以下、「厚みa」という。)と、筒状体の内径bと、の関係a:bが、1:1〜1:20が好ましく、1:2〜1:10がより好ましい。この範囲は、例えば愛玩動物が犬である場合には、大型犬や小型犬等の種類に応じて適宜調節することができる。
【0098】
(3)第3実施形態
図15に、第3実施形態の愛玩動物用ガム30を示す。
【0099】
この第3実施形態の愛玩動物用ガム30は、紐状部材37の最大太さが1.5mm以下であり、筒形状を観念することが困難な程度に空隙率が高く構成されている。このような愛玩動物用ガム30は、特に、小型の愛玩動物に適している。
【0100】
なお、この紐状部材37の最大太さが1.5mm以下となるように細く形成された第3実施形態の愛玩動物用ガム30は、全体の硬度を高めるために、デンプンを溶かした水溶液に含浸させることで、表層に硬化層を形成してもよい。
【0101】
(4)第4実施形態
図16に、第4実施形態の愛玩動物用ガムに用いられる紐状部材72を示す。
【0102】
愛玩動物用ガムを構成するために編まれる紐状部材は、第1〜第3実施形態に示した直線的な形状ではなく、図16に示すようなスプリング形状であってもよい。この紐状部材72は、真皮6の表皮側もしくは皮下組織側が、径方向内側もしくは径方向外側を向くように、かつ、切断部分72rが軸方向に向くように、スプリング形状が形成される。このスプリング形状は、切断された紐状部材を、水やグリセリン等によって柔軟性を付与した後で、所定の棒状部材に巻き付け、乾燥させることで得られる。
【0103】
このようにして得られた紐状部材72をさらに編むことによって、愛玩動物用ガムを作成してもよい。
【0104】
(5)第5実施形態
図17に、第5実施形態の愛玩動物用ガム40を示す。
【0105】
第5実施形態の愛玩動物用ガム40は、第1実施形態の愛玩動物用ガム10と同様に、筒状体を有しており、さらに、内部に所定硬さの食餌材9が入れられている。この食餌材9は、特に限定されるものではなく、例えば、愛玩動物の種類に応じて、好まれる材料を適宜選択することができる。また、このように、筒状体の内部に食餌材9を挿入することで、咀嚼時における筒形状部分の形状安定性を高めることができるため、歯磨き効果も向上させることができる。
【0106】
また、愛玩動物用ガム40では、筒状体の内部に所定硬さの食餌材9が入れられているため、愛玩動物が噛み付いた際に、愛玩動物用ガム40がつぶれにくい。このため、愛玩動物の歯Tが紐状部材7の間の隙間Pに入り込む際に、歯Tの先端は食餌材9の内部まで進んでいっても、紐状部材7は食餌材9の外側に残るため、紐状部材7が歯Tの根本に到達しやすい。これにより、歯磨き効果を十分に得ることができる。
【0107】
(6)他の実施形態
本発明の実施形態は、上記実施形態に限られるものではなく、例えば、以下の実施形態も本発明の実施形態に含まれる。
【0108】
(6−1)
上記実施形態では、1本の紐状部材のみを用いて構成された編み部分を有する愛玩動物用ガムを例に挙げて説明した。
【0109】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、1本の紐状部材のみを用いて構成された編み部分に対して、別の(もしくは異なる素材の)紐状部材を編み込んで得られる構成もしくは絡ませて得られる構成の愛玩動物用ガムであってもよい。
【0110】
この場合、愛玩動物用ガム全体に対する、1本の紐状部材によって構成された編み部分の質量パーセントが10質量パーセント以上であることがよく、20質量パーセント以上であることが好ましく、40質量パーセント以上であることより好ましく、80質量パーセント以上であることが最も好ましい。
【0111】
(6−2)
上記実施形態では、紐状部材を編むことで筒状体を形成する場合を例に挙げて説明した。
【0112】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、筒状体とすることなく、平面形状としてもよい。例えば、図10、11において、Aの部分からCの部分に繋げつつ、Bの部分からDの部分に繋げることで、平面形状とされた愛玩動物用ガムであってもよい。
【0113】
(6−3)
上記実施形態では、材料の動物の皮として、「牛」の真皮を用いる場合を例に挙げて説明した。
【0114】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、豚、馬、鹿、カンガルー、ダチョウ、羊、山羊、および、猪からなる群より選択される1種類又は2種以上の組合せを用いてもよい。
【0115】
(6−4)
上記実施形態では、緯編(よこあみ、Weft Knitting)の一種である平編(Plain Stitch)によって編み部分を構成する場合を例に挙げて説明した。
【0116】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、編み部分を得るための紐状部材の編み方は、特に限定されるものではなく、例えば、緯編(よこあみ、Weft Knitting)であってもよいし、経編(たてあみ、Warp Knitting)であってもよいし、緯編と経編との組合せであってもよい。
【0117】
ここでの緯編としては、ゴム編(Rib Stitch、リブ編、畦編、リブ・ニット、クチ編ともいう。)、パール編(Pearl Stitch、両頭編、ガータ編(Garter Stitch)ともいう。)、タック編(Tuck Stitch)、浮き編(Float Stitch、フロート・スティッチ、ウェルト編、沈み編ともいう。)、レース編(Lace Stitch、透孔編、透かし目編、フィレット編、ニードル・ループ目移しともいう。)、両畦編(Full Cardigan Stitch、フル・カーディガン編、ポルカ・リブ(Polka Rib)ともいう。)、片畦編(Half Cardigan Stitch、ハーフ・カーディガン編ともいう。)、ペレリン編(Pelerine Stitch、シンカ・ループ目移しともいう。)、アイレット編(Eyelet Stitch)、両面編(Interlock Stitch、スムース編(Circular Interlock Knitting)、両面スムース編、インターロック(Interlock)、 メリディアン(Meridian)、ダブル・リブ(Double Rib)、二重ゴム編(Double Rib)ともいう。)、多衝程両面編(両面出合い、ダブル・ジャージー、ダブル・ニットともいう。)、ダブル・ジャージー編(Double Jersey ゴム編出合い、ダブル・ニットともいう。)、振り編(Racked Stitch、ショッキング、ラッキングともいう。)、針抜き編(Broad Stitch)、立毛編(Plush Stitch、パイル編、プラシ編、ビロード編ともいう。)、裏毛編(Fleecy Knitting、フリース編(Fleecy Stitch)、プラシ編(Plush Stitch)ともいう。)、添え糸編(Plating Stitch、プレーティングともいう。)、からみ添え糸編(Embroidery Plating、刺繍編、エンブロイダリングともいう。)、ラーベン編(Rahben Stitch)、ひねり編(Ring Stitch、なわ編ともいう。)、アーガイル編(Argyle Design)、および、2種以上のこれらの組合せが含まれる。
【0118】
ここでの経編としては、シングル・デンビー編(Single Denbigh Stitch、デンビー編、一重トリコットともいう。)、シングル・バンダイク編(Single Vandyke Stitch、シングル・アトラス編、1重アトラス編、バンダイク編みともいう。)、シングル・コード編(Single Cord Stitch、一重コード編、プレーン・コード編ともいう。)、ベルリン編(English Leather Stitch、イングリッシュ・レザー、イギリス・レザーともいう。)、二目編(Two Needle Stitch、ダブル・スティッチ、二重編みともいう。)、シェル編(Shell Stitch)、ダブル・デンビー編(Double Dembigh Stitch、二重デンビー編、トリコット編、プレーン・トリコット編ともいう。)、アトラス編(Atlas Stitch、ダブル・アトラス、ダブル・バンダイク編、ダイヤモンド編ともいう。)、コード編(Double Cord Stitch、ダブル・コード編、ダブル・バー・コード編ともいう。)、ハーフ・トリコット編(Half Tricot Stitch、ハーフ編、シャルムーズ、変形トリコット編、ロック・ニットともいう。)、サテン編(Satin Stitch、サテン・トリコット編、変形トリコットともいう。)、シャークスキン編(Sharkskin Stitch、変化トリコットともいう。)、クイーンズ・コード編(Queen's Cord Stitch、アメリカン・シャークスキンともいう。)、ミラニーズ編(Milanese Stitch、1×1アトラス、1×2アトラス、サテン・ミラニーズともいう。)、アイドル・スイング編(Idle Swing Stitch、遊びのスイングともいう。)、エラスティック編(Elastic Stitch、ストレッチ・ニットともいう。)、パイル編(Pile Stitch、プラシ編、立毛編、ビロード編ともいう。)、タック編(Tuck Stitch、引き上げ編ともいう。)、紋編(Figured Stitch、模様編ともいう。)、パイナップル編(Pineapple Stitch、変り柄編みともいう。)、裏毛編(Fleecy Knitting、フリース編、プラシ編、裏毛経編ともいう。)、裏毛アトラス編(Lined Atlas Stitch)、裏毛コード編(Lined Cord Stitch)、レース編(Lace Work, Open Work、透孔編(Lace Stitch),透かし目編、フィレット編ともいう。)、および、2種以上のこれらの組合せが含まれる。
【0119】
(6−5)
上記実施形態では、切断用の刃8の刃先と真皮6の切断面との当たり方の変化に起因して凹凸を、紐状部材7に形成する場合を例に挙げて説明した。
【0120】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、凹凸形状が形成されないように真皮6を切断して、紐状部材を得てもよい。
【0121】
また、例えば、真皮6の切断時に凹凸形状を生じさるのではなく、ヤスリ等を用いたり、プレス加工する等の任意の手法で凹凸形状を生じさせるようにしてもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、真皮6の表皮5側と皮下組織側4との少なくともいずれか一方の表面を凹凸加工して上記実施形態のように切断面に凹凸形状を付与すると、紐状部材の凹凸形状部分の面積を増大させることができる。また、真皮6の表皮5側と皮下組織側4と両方の表面を凹凸加工した場合には、紐状部材の表面の実質的に全ての部分に凹凸形状を付与することができる。このようにして得られた凹凸形状部分の多い紐状部材を用いて編むことで編み部分を形成した場合には、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をよりいっそう高めた愛玩動物用ガムを得ることができる。
【0123】
なお、紐状部材において、凹凸形状が形成されている部分と、凹凸形状が形成されていない部分との区別は、以下の断面曲線における十点平均粗さの基準で区別することができる。十点平均粗さとは、断面曲線(フィルタ処理などを一切しない測定したままのデータ)における最高の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と、最深の谷底から深い順に5番目までの谷深さの平均と、の和をいう。なお、ここでは、基準長さ(カットオフ値)の中に5つの山頂が無い場合や、5つの谷底が無い場合には、存在している山頂の個数で除して平均値を得て、存在している谷底の個数で除して平均値を得ることとする。
【0124】
以上の条件で、紐状部材において凹凸形状が形成されている部分の断面曲線における十点平均粗さは、基準長さ(カットオフ値)を25.0mmとした場合に、35μm以上400μm以下である。また、紐状部材において凹凸形状が形成されていない部分の断面曲線における十点平均粗さは、基準長さ(カットオフ値)を2.5mmとした場合に、0μm以上30μm以下である。なお、ここでの評価は、いずれもうねりを含んでいる。
【0125】
なお、紐状部材において、凹凸形状が形成されている部分と、凹凸形状が形成されていない部分と、の断面曲線における十点平均粗さの関係が、上記各基準長さに従って求めた場合に、凹凸形状が形成されている部分の十点平均粗さが、凹凸形状が形成されていない部分の十点平均粗さの10倍以上であることが好ましい。
【0126】
紐状部材において、凹凸形状が形成されている部分と、凹凸形状が形成されていない部分との区別は、明らかに把握できる場合には、当業者の目で確認することもできる。
【0127】
また、この区別は、カゼインやデンプン等によって、愛玩動物用ガムの表層に硬化層が形成されたものも同様に行う。
【0128】
また、紐状部材において凹凸形状が形成されている部分の断面曲線を沿った平均長さは、基準長さ(カットオフ値)を10.0mmとした場合に、1200μm以上3000μm以下であることが好ましく、1300μm以上1800μm以下であることがより好ましい。紐状部材において凹凸形状が形成されていない部分の断面曲線を沿った平均長さは、基準長さ(カットオフ値)を10.0mmとした場合に、1000μm以上1100μm以下であることが好ましく、1000μm以上1010μm以下であることがより好ましい。
【0129】
(6−6)
上記実施形態では、幅が1.7mmとなるように切断された紐状部材7を例に挙げて説明した。
【0130】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られるものではない。紐状部材の幅としては、例えば、0.5mm以上15.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上10.0mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上5.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0131】
(6−7)
上記実施形態では、紐状部材7を平編することで得られる筒状体によって愛玩動物用ガム10を構成する場合を例に挙げて説明した。
【0132】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、紐状部材7の凹凸形状部分が網目(loop)の内側を向くように編み方を調整し、筒状体とした場合に紐状部材7の凹凸部分が周方向に向いて位置するように(径方向内側でもなく、径方向外側でもない向きに向いて位置するように)してもよい。この場合には、網目に歯が入り込んでいく際に、紐状部材7の凹凸形状の部分と歯の表面とを効率的に擦り合わせることができ、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果を得ることができる。
【0133】
(6−8)
上記実施形態では、愛玩動物が犬である場合を例に挙げて説明した。
【0134】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、愛玩動物として猫や他の歯を有する動物を対象としていてもよい。
【0135】
(6−9)
上記実施形態では、真皮6が切断されることで紐状部材7を得た後、編む前に、その紐状部材7をグリセリンとエタノールを含有した水溶液に浸す場合を例に挙げて説明した。
【0136】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、真皮6を切断する前に真皮6自体をグリセリンとエタノールを含有した水溶液に浸し、柔らかくなった真皮6を切断することで紐状部材7を得てもよい。
【0137】
また、グリセリンとエタノールを含有した水溶液に浸す時間については、特に限定されるものではなく、編む前の紐状部材7を浸す場合であっても、真皮6を浸す場合であっても、例えば、20分〜60分程度の時間だけ浸すようにしてもよい。
【0138】
(6−10)
上記実施形態では、デンプンを溶かした水溶液に筒状体を含浸させた後、強制乾燥させる場合を例に挙げて説明した。
【0139】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、常温下において、自然乾燥させてもよい。
【0140】
(6−11)
なお、上記各実施形態と、他の実施形態と、の組合せによって得られる実施形態についても、当然に本願発明の実施形態に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の愛玩動物用ガムおよびその製造方法は、1本の紐状部材によって編まれた部分を有していることにより、愛玩動物の歯磨き効果を高めることが可能になる点で特に有用である。
【符号の説明】
【0142】
4 皮下組織
5 表皮
6 真皮
7、27、37 紐状部材
8 切断用の刃
10、20、30 愛玩動物用ガム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0143】
【特許文献1】特開平9−28312号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、愛玩動物用ガムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
愛玩動物をペットとして飼う人口は、年々増大している。このような愛玩動物は、飼い主によって、非常にかわいがられ、かつ、大切にされている。特に、近年では、愛玩動物の体調が悪くなった場合にすぐに動物病院の獣医に診てもらう等、愛玩動物の健康を重要視している飼い主が多い。
【0003】
このような愛玩動物は、自らブラッシングする等によって歯を磨くことができないため、歯石や歯垢が蓄積して歯周疾患を引き起こしてしまうこともあり、歯の健康が問題視されている。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献1(特開平9−28312号公報)に記載の動物用食餌材のように、ゼオライトを使用して歯磨き効果を持たせた食餌材が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1(特開平9−28312号公報)に記載の食餌材は、噛み応えを良好にすることで、噛む回数を増やし、歯磨き効果を高めることをねらいとしている
ところが、このような食餌材は、愛玩動物によって咀嚼される際に、歯の先端には当たるが、歯の根元には当たりにくい。このため、歯の根元や、歯の歯茎に近い部分における歯磨き効果を十分に得ることができない。
【0006】
また、従来の食餌材は、愛玩動物による咀嚼によって破壊され、小さく分解されてしまう場合がある。このように小さく分解されてしまうと、完食させるまでの間、愛玩動物の食欲や食餌材に対する関心を保てない場合があり、咀嚼による歯磨き効果を得る機会が損なわれることがある。
【0007】
また、食餌材が小さく分解されてしまうと、愛玩動物は、よく噛まずに直ぐに飲み込んでしまう場合や、咀嚼の際に用いる歯が特定の歯に偏ってしまい全体的な歯磨き効果が得られない場合がある。さらに、咀嚼しても十分な歯磨き効果が得られないほど小さく分解されてしまうこともある。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、歯磨き効果を高めることが可能な愛玩動物用ガムおよびその製造方法提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1観点に係る愛玩動物用ガムは、動物の皮から得られる1本の紐状部材によって編まれている編み部分を有する。なお、編み部分は、愛玩動物用ガムの全体の少なくとも一部を構成していればよく、愛玩動物用ガムの全体を構成していてもよい。なお、編み部分の編み方は、特に限定されるものではなく、例えば、緯編(よこあみ、Weft Knitting)であってもよいし、経編(たてあみ、Warp Knitting)であってもよい。また、編み部分は、手編みによって得られるものであってもよいし、機械によって編まれることで得られるものであってもよい。
【0010】
この愛玩動物用ガムは、動物の皮から得られる紐状部材を用いているため、愛玩動物の食欲をかき立てることができ、咀嚼させる機会をより確実に確保することができる。また、編み部分を有しているため、愛玩動物の歯が、編み部分の紐状部材同士の間から入り込む。このため、紐状部材は、歯の根元まで入り込んで、歯の根元や歯茎に近い部分に擦り付けられ、汚れを落とす。これにより、歯の根元や歯茎に近い部分についても、歯磨き効果を十分に得ることができる。なお、歯先については、従来同様に歯磨き効果を得ることができる。
【0011】
さらに、この愛玩動物用ガムが有している編み部分は、1本の紐状部材によって編まれているため、複数本の紐状部材が組まれる場合と比較して、分解されにくい。このため、完食させるまでの間、愛玩動物の食欲を保ちやすくなり、直ぐに飲み込んでしまうことを防ぎ、咀嚼による歯磨き効果を得る機会が確保しやすくなる。また、編み部分を有しているため、咀嚼の際に用いる歯の偏りを抑え、前歯や奥歯等を含む歯全体の歯磨き効果を得ることが可能になる。
【0012】
これにより、歯磨き効果を高めることが可能になる。
【0013】
本発明の第2観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、編み部分は、全体の10質量パーセント以上である。
【0014】
この愛玩動物用ガムは、全体のうち編み部分によって10質量パーセント以上が構成されている。このため、愛玩動物が咀嚼する際に、より多くの歯が、編み部分の紐状部材同士の間に入り込みやすくなる。
【0015】
本発明の第3観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点又は第2観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、紐状部材の表面の少なくとも一部に凹凸形状が形成されている。
【0016】
この愛玩動物用ガムは、愛玩動物の歯に付着している歯石や歯垢に単に接触するだけでなく、凹凸形状部分を歯に擦り付けることが可能になる。これにより、凹凸形状部分と歯との摩擦によって、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果を高めることが可能になる。
【0017】
本発明の第4観点に係る愛玩動物用ガムは、第3観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、凹凸形状が形成されている表面の断面曲線における十点平均粗さは、基準長さを25.0mmとした場合に、35μm以上400μm以下である。
【0018】
この愛玩動物用ガムは、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をよりいっそう高めることが可能になる。
【0019】
本発明の第5観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点又は第2観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、編み部分は、外形が筒形状となる部分を含むように形成されている。
【0020】
この愛玩動物用ガムは、編み部分の外形が筒形状となる部分を含んでいるため、立体的に形成されている。これにより、外形が板状の場合と比較して、外形が筒形状の場合には、周囲から内側に歯が入り込みやすくなり、歯と歯の間や歯の根元付近まで紐状部材が入り込みやすくなる。
【0021】
より具体的に説明すると、例えば、外形が板状であると、紐状部材同士の間の隙間に愛玩動物の歯が入り込もうとしても、この隙間部分で上の歯と下の歯が当たってしまった場合には、歯の根元まで紐状部材を入り込ませることが困難な場合がある。これに対して、この愛玩動物用ガムでは、外形が筒形状となるように立体的に形成された部分を含んでいるため、上の歯と下の歯とが当たってしまう前に、歯の根元まで紐状部材を入り込ませることが可能になる。
【0022】
本発明の第6観点に係る愛玩動物用ガムは、第5観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、筒形状の内側以外でかつ外側以外の周方向の表面の少なくとも一部に、凹凸形状が形成されている。
【0023】
この愛玩動物用ガムは、筒形状の紐状部材同士の間を通じて歯が入り込む時に、紐状部材同士が向き合っている面の少なくとも一部には凹凸形状が形成されているため、歯に対して凹凸形状が形成されている部分が擦り付けられる。これにより、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をより高めることが可能になる。
【0024】
本発明の第7観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点、第2観点および第5観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、紐状部材は、動物の皮を、厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断することで得られる。なお、ここでの渦巻き状の経路は、半径長さが長くなっていくように内側から外側に向けて渦巻き状に切断をしてもよいし、半径長さが短くなっていくように外側から内側に向けて渦巻き状に切断をしてもよい。
【0025】
この愛玩動物用ガムは、動物の皮を切断することによって、紐状部材を得ている。ここで、仮に、動物の皮を、単に、直線的に切断するのであれば、得られる紐状部材の長さは短いものになってしまう。なぜなら、動物の皮の大きさは個体差が小さいため、直線的に切断する場合には、切断して得られる紐状部材の長さができるだけ長くなるように切断(例えば、方形の皮であれば、対角線上に切断する等)下としても、得られる紐状部材が長さには動物の体格に由来する限度がある。
【0026】
これに対して、この愛玩動物用ガムでは、動物の皮を、直線的に切断するのではなく、厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断している。このため、得られる紐状部材の長さをより長くすることが可能になる。これにより、短い紐状部材を用いて編み部分を編む場合と比較して、長い紐状部材を用いて編み部分を編んだ場合の方が、編み部分の大きさを大きくすることができる。
【0027】
本発明の第8観点に係る愛玩動物用ガムは、第7観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、動物の皮は、表皮と皮下組織との間の真皮である。
【0028】
この愛玩動物用ガムは、真皮の部分を用いて構成されているため、乾燥させたものを咀嚼させた場合の歯磨き効果をより高めることができる。
【0029】
本発明の第9観点に係る愛玩動物用ガムは、第8観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、紐状部材には、真皮のうち表皮側の面の表面粗さおよび皮下組織側の面の表面粗さのいずれよりも表面粗さが粗い凹凸形状が形成されている。
【0030】
なお、ここで、真皮のうち表皮側の面の表面粗さおよび皮下組織側の面の表面粗さは、基準長さを2.5mmとした場合の、断面曲線における十点平均粗さとして特定される。
【0031】
商業的に入手される真皮は、表皮側の面および皮下組織側の面の両方が平滑な面を構成している。
【0032】
これに対して、この愛玩動物用ガムの紐状部材は、凹凸形状を有しており、その凹凸形状部分の表面粗さが、真皮の平滑な表皮側の面および皮下組織側の面のいずれよりも粗くなるように構成されている。このため、真皮の平滑な表皮側の面や皮下組織側の面が歯に擦り付けられた場合と比較して、凹凸形状部分が歯に擦り付けられた場合の方が、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果を高めることが可能になる。
【0033】
本発明の第10観点に係る愛玩動物用ガムは、第9観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、凹凸形状は、真皮を厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断する際の、切断用の刃先と真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される。
【0034】
この愛玩動物用ガムは、真皮から紐状部材を得ながら、凹凸形状を同時に形成することが可能になる。
【0035】
本発明の第11観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点から第10観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、少なくとも編み部分の表面には、硬化層が設けられている。
【0036】
この愛玩動物用ガムは、編み部分の表面に硬化層が形成されているため、編み部分において互いに接触している紐状部材同士を固定させることが可能になる。このため、愛玩動物によって咀嚼される際に、形状が保持されやすく、歯との摩擦を効果的に生じさせることができる。
【0037】
本発明の第12観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点から第11観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、編み部分の編み方は、平編である。
【0038】
この愛玩動物用ガムの編み部分の編み方は、平編である。このため、編み部分には、紐状部材が輪の形になっている部分が無数に存在する。このため、咀嚼される際には、複数の輪のそれぞれの内側に対して、複数の歯が入り込むことになる。この場合に、これらの複数の輪の形は、1本の糸状部材で構成され、互いに連続しているため、1つの輪が広がろうとすると他の輪に張力を掛けることができ、紐状部材が歯から逸れにくくなる。これにより、歯磨き効果をより高めることができる。
【0039】
本発明の第13観点に係る愛玩動物用ガムは、第1観点から第12観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、動物の皮は、牛、豚、馬、鹿、カンガルー、ダチョウ、羊、山羊、および、猪からなる群より選択される1種類又は2種以上の組合せである。
【0040】
本発明の第14観点に係る愛玩動物用ガムの製造方法は、以下の工程を有する。動物の真皮を用意する。この真皮の用意は、商業的に購入することで用意してもよい。真皮を厚み方向に切断することにより、少なくとも1本の紐状部材を得る。1本の紐状部材を編むことで編み部分を形成する。
【0041】
この愛玩動物用ガムの製造方法で得られる愛玩動物用ガムは、動物の皮から得られる紐状部材を用いているため、愛玩動物の食欲をかき立てることができ、咀嚼させる機会をより確実に確保することができる。また、編み部分を有しているため、愛玩動物の歯が、編み部分の紐状部材同士の間から入り込む。このため、紐状部材は、歯の根元まで入り込んで、歯の根元や歯茎に近い部分に擦り付けられ、汚れを落とす。これにより、歯の根元や歯茎に近い部分についても、歯磨き効果を十分に得ることができる。なお、歯先については、従来同様に歯磨き効果を得ることができる。
【0042】
さらに、この愛玩動物用ガムが有している編み部分は、1本の紐状部材によって編まれているため、複数本の紐状部材が組まれる場合と比較して、分解されにくい。このため、完食させるまでの間、愛玩動物の食欲を保ちやすくなり、直ぐに飲み込んでしまうことを防ぎ、咀嚼による歯磨き効果を得る機会が確保しやすくなる。また、編み部分を有しているため、咀嚼の際に用いる歯の偏りを抑え、前歯や奥歯等を含む歯全体の歯磨き効果を得ることが可能になる。
【0043】
これにより、歯磨き効果を高めることが可能になる。
【0044】
本発明の第15観点に係る愛玩動物用ガムの製造方法は、第14観点に係る愛玩動物用ガムの製造方法において、真皮を厚み方向に切断する際の切断経路は、厚み方向視で渦巻き状である。なお、ここでの渦巻き状の経路は、半径長さが長くなっていくように内側から外側に向けて渦巻き状に切断をしてもよいし、半径長さが短くなっていくように外側から内側に向けて渦巻き状に切断をしてもよい。
【0045】
愛玩動物用ガムは、動物の皮を切断することによって、紐状部材を得ている。ここで、仮に、動物の皮を、単に、直線的に切断するのであれば、得られる紐状部材の長さは短いものになってしまう。なぜなら、動物の皮の大きさは個体差が小さいため、直線的に切断する場合には、切断して得られる紐状部材の長さができるだけ長くなるように切断(例えば、方形の皮であれば、対角線上に切断する等)下としても、得られる紐状部材が長さには動物の体格に由来する限度がある。
【0046】
これに対して、この愛玩動物用ガムの製造方法では、動物の皮を、直線的に切断するのではなく、厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断している。このため、得られる紐状部材の長さをより長くすることが可能になる。これにより、短い紐状部材を用いて編み部分を編む場合と比較して、長い紐状部材を用いて編み部分を編んだ場合の方が、編み部分の大きさを大きくすることができる。
【0047】
本発明の第16観点に係る愛玩動物用ガムは、第14観点又は第15観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、紐状部材は、表面の少なくとも一部が凹凸形状となるように加工されている。
【0048】
この製造方法で得られる愛玩動物用ガムは、紐状部材の少なくとも一部には凹凸形状が形成されているため、愛玩動物が咀嚼する際に、紐状部材の凹凸形状部分が歯に対して擦り付けられる。これにより、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をより高めることが可能になる。
【0049】
本発明の第17観点に係る愛玩動物用ガムは、第16観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、凹凸形状は、真皮を厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断する際の、切断用の刃先と真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される。なお、「切断用の刃先と真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される」とは、特に限定されるものではなく、例えば、切断用の刃を長手方向に往復運動させながら真皮を送る場合に、切断用の刃に多少追従して動く余地を残すように真皮の固定状態を緩やかにすることに起因して形成されるものであってもよい。また、切断用の鋭利な歯を用いた部分的な切断を行いつつ、わずかに繋がっている部分を引きちぎるようにして、凹凸を形成するようにしてもよい。
【0050】
この愛玩動物用ガムの製造方法は、真皮の切断作業と同時に、紐状部材への凹凸形状の付与が可能になる。このため、切断作業と、凹凸形成作業と、の両方を別工程として行う必要がなく、生産性を向上させることができる。
【0051】
本発明の第18観点に係る愛玩動物用ガムは、第16観点又は第17観点に係る愛玩動物用ガムにおいて、凹凸形状となるように加工された部分の表面粗さは、真皮のうち表皮側の面の表面粗さおよび皮下組織側の面の表面粗さのいずれよりも表面粗さが粗くなるように加工されている。
【0052】
なお、ここで、真皮のうち表皮側の面の表面粗さおよび皮下組織側の面の表面粗さは、基準長さを2.5mmとした場合の、断面曲線における十点平均粗さとして特定される。
【0053】
商業的に入手される真皮は、表皮側の面および皮下組織側の面の両方が平滑な面を構成している。
【0054】
これに対して、この製造方法によって得られる愛玩動物用ガムの紐状部材は、凹凸形状を有しており、その凹凸形状部分の表面粗さが、真皮の平滑な表皮側の面および皮下組織側の面のいずれよりも粗くなるように構成されている。このため、真皮の平滑な表皮側の面や皮下組織側の面が歯に擦り付けられた場合と比較して、凹凸形状部分が歯に擦り付けられた場合の方が、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をより高めることが可能になる。
【0055】
本発明の第19観点に係る愛玩動物用ガムは、第14観点から第18観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、編み部分は、外形が筒形状となる部分を含むように形成されている。
【0056】
この製造方法で得られた愛玩動物用ガムは、編み部分の外形が筒形状となる部分を含んでいるため、立体的に形成されている。これにより、外形が板状の場合と比較して、外形が筒形状の場合には、周囲から内側に歯が入り込みやすくなり、歯と歯の間や歯の根元付近まで紐状部材が入り込みやすくなる。
【0057】
より具体的に説明すると、例えば、外形が板状であると、紐状部材同士の間の隙間に愛玩動物の歯が入り込もうとしても、この隙間部分で上の歯と下の歯が当たってしまう場合には、歯の根元まで紐状部材を入り込ませることが困難な場合がある。
【0058】
これに対して、この愛玩動物用ガムでは、外形が筒形状となるように立体的に形成された部分を含んでいるため、上の歯と下の歯とが当たってしまう前に、歯の根元まで紐状部材を入り込ませることが可能になる。
【0059】
本発明の第20観点に係る愛玩動物用ガムは、第14観点から第19観点のいずれかに係る愛玩動物用ガムにおいて、少なくとも編み部分の表面に、硬化層を設ける工程をさらに有する。
【0060】
この製造方法で得られる愛玩動物用ガムは、編み部分の表面に硬化層が形成されているため、編み部分において互いに接触している紐状部材同士を固定させることが可能になる。このため、愛玩動物によって咀嚼される際に、形状が保持されやすく、歯との摩擦を効果的に生じさせることができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明の愛玩動物用ガムによると、愛玩動物の歯磨き効果を高めることができる。
【0062】
本発明の愛玩動物用ガムの製造方法によると、愛玩動物の歯磨き効果を高めることができる愛玩動物用のガムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係る愛玩動物用ガムの外観斜視図である。
【図2】表皮、真皮および皮下組織の三層状態を示す概略図である。
【図3】切断装置用の特定の形に切り取られる真皮の様子を示す図である。
【図4】真皮の切断開始状態の様子を示す図である。
【図5】真皮を渦巻き状に切断することで紐状部材を得る様子を示す図である。
【図6】径方向外側から見た切断用の刃と真皮との位置関係を示す図である。
【図7】接線方向における真皮進行方向側から見た切断用の刃と真皮との位置関係を示す図である。
【図8】切断部分の様子を上方から見た場合の平面視概略図である。
【図9】紐状部材の凹凸形状の様子を示す概略図である。
【図10】平編の表側から見た平面図である。
【図11】平編の裏面側から見た平面図である。
【図12】愛玩動物用ガムを動物が咀嚼する際の例を示す図である。
【図13】第2実施形態に係る愛玩動物用ガムの例を示す図である。
【図14】第2実施形態に係る愛玩動物用ガムの筒状体の軸方向視概略断面図を示す図である。
【図15】第3実施形態に係る愛玩動物用ガムの概観斜視図である。
【図16】第4実施形態に係る紐状部位の概観斜視図である。
【図17】第5実施形態に係る愛玩動物用ガムの概観斜視図である。
【図18】真皮から紐状部材を得る切断方法の参考例を示す図である。
【図19】複数本の紐状部材によって組まれた場合の例を示す図である。
【図20】複数本の紐状部材によって組まれたガムを食させた場合の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態としての愛玩動物用ガムおよびその製造方法を説明する。
【0065】
(1)第1実施形態
図1に、第1実施形態に係る愛玩動物用ガム10の概観斜視図を示す。
【0066】
(1−1)愛玩動物用ガム10の概要
愛玩動物用ガム10は、牛の真皮で構成される1本の紐状部材7を、外形が筒形状である筒状体となるように平編することで得られる。
【0067】
愛玩動物用ガム10は、犬等の動物に対して餌として与えられ、歯によって十分な咀嚼を行った上で飲み込まれる。この愛玩動物用ガム10が愛玩動物に咀嚼される際に、歯と愛玩動物用ガム10とが互いに擦れ合うことで、歯の汚れを落とす歯磨き効果が得られるとともに、歯に付着している歯石や歯垢等を削ぎ落とす効果が得られる。
【0068】
(1−2)愛玩動物用ガム10の製造方法
愛玩動物用ガム10は、以下の工程で製造される。
【0069】
(1−2−1)真皮6の用意
まず、真皮を用意する。
【0070】
この真皮は、通常の商業的手法により入手することができる。真皮6は、図2に示すように、動物の皮(本実施形態では、牛の皮)のうち、表皮5と、皮下組織4と、を取り除いて得られる皮である。なお、表皮5は、動物の皮膚を構成している最も体外に位置する組織である。また、皮下組織4は、内臓や脂肪が含まれる。
【0071】
真皮6は、動物の大きさに由来するものであるため、その大きさは個体差があるが、概ね、図3に示すように、縦L1が約70cmで、横L2が約120cm程度の大きさであり、厚みは2mm程度である。特に、真皮6の厚みは、1mm以上4mm以下の範囲である。
【0072】
ここで、商業的に入手される真皮6では、表皮5側の上面6eと、皮下組織4側の下面6iと、がそれぞれ洗浄されており、平滑化されている。
【0073】
(1−2−2)切断機械にセットするための形状の調整
次に、用意した真皮6を、図3に示すように、円形状に切断する(外周の直径が570mm程度)。
【0074】
なお、本実施形態では、内側から渦巻き状に切断を開始するために、内側に図3に示すような径の小さな開口6x(直径が40mm程度)を設ける。
【0075】
(1−2−3)切断による紐状部材7の作成
円形状に切断された真皮6を、図4に示すように、切断用の刃8を備えた図示しない切断装置の所定の位置にセットする。
【0076】
真皮6は、切断装置のターンテーブルによって、所定の回転方向R1に所定の回転速度でスムーズに(間欠的にならないように)回転する。ここで、所定の周期およびストロークで切断用の刃8が上下に所定ストローク幅(ここでは、14mm)で、所定の周期で駆動する。これにより、図5に示すように、内側から外側に向けて渦巻き状に真皮6が切断されていくことにより、紐状部材7が得られる。ここで、切断が進むにつれて内側の開口6xが大きくなっていくため、切断用の刃8は、開口6xの広がりに伴って径方向外側に向けて少しずつ移動する(図5の矢印参照)。なお、上記所定の回転速度および切断用の刃8の上下駆動周期は、図示しない操作部を介して入力することにより調節可能になっている。なお、本実施形態では、幅が1.7mmとなるように切断されている。
【0077】
図6に、径方向外側から見た切断用の刃8と真皮6との位置関係を示す。図7に、真皮6の円弧の接線方向における真皮進行方向側(図5における下側)から見た切断用の刃8と真皮6との位置関係を示す。図8に、切断時の様子を上方から見た場合の平面視概略図を示す。
【0078】
円形状に切り取られた真皮6は、図7に示すように、その円形外周部が、ターンテーブル91と狭持部93とによって鉛直方向から狭持されている。この真皮6は、円形外周部が狭持された状態のままで回転される。ここで、狭持部93は、真皮6の上面6eに対して、押さえレバー94によって押し付けられている。また、押さえ92は、真皮6の上面6eの上方であって、真皮6の被切断部分近傍における径方向外側に位置しており、真皮6の切断中には、真皮6の上面6eに対して押さえ付けられる。これにより、真皮6は、円形外周部がターンテーブル91と狭持部93によって狭持されているだけでなく、円形内周部の被切断部分近傍が押さえ92によって上方から押さえられているため、真皮6の内周側端部が自由端にならないようにしている(円形内周部の被切断部近傍は上方側からのみ押さえられ、下方からは押さえられていない)。なお、切断時は、押さえ92の下面は、真皮6の上面6eと擦れ合いながら、真皮6の被切断部分近傍の上方への揺れを防いでいる。これにより、切断用の刃8が上方から下方に向けて切断する際は、真皮6が押さえ92の下面から下方に向けて離れ気味の状態になり、切断用の刃8が下方から上方に向けて切断する際は、真皮6が切断用の刃8に追従するように上方に上がりつつ、押さえ92の下面によってさらなる上方への移動が規制された状態になる。
【0079】
切断用の刃8は、真皮6の回転進行方向後ろ側が鋭利になるように形成されている。具体的には、切断用の刃8は、鋭利になっている部分を除くと、真皮6の進行方向の長さが5mmであり、径方向の幅が3mmである。切断用の刃8は、後ろ側(真皮6の回転進行方向とは反対側、歯先側)が鉛直方向に伸びており、最下端から上方8mmの位置から下方に進むにつれて後ろ側(真皮6の回転進行方向とは反対側、歯先側)に向けて細くなるように形成されている。また、切断用の刃8は、径方向外側が鉛直方向に延びており、最下端から上方8mmの位置から下方に進むにつれて径方向外側に向けて細くなるように形成されている。なお、切断用の刃8の径方向外側を向いた面は平面形状であるが、この平面は、図8に示すように、上面視において、前側(真皮6の回転進行方向側、歯先とは反対側)に向かうにつれて径方向内側に向かうような、斜めの姿勢となるように(図8のθが10度程度になるように)切断用の刃8が切断装置に取り付けられている。
【0080】
このように切断されることで、図9に示すように、紐状部材7が得られる。なお、本実施形態では、幅が1.7mmとなるように切断されているため、得られる紐状部材7の全長は、約85mとなる。図9において、面Eは表皮側の面であり、面Iは皮下組織側の面であり、面Rは切断時に径方向外側に位置している面であり、面Lは切断時に径方向内側に位置している面である。ここで、面Rおよび面Lは、いずれも凹凸形状が形成されている。この凹凸形状は、上記切断用の刃8を備えた切断装置による切断時に同時に形成される。具体的には、切断用の刃8の刃先と真皮6の切断面との当たり方の変化に起因して凹凸が形成される。
【0081】
(1−2−4)紐状部材7を編む
上述のようにして得られた紐状部材7は、図示しない編み機によって、緯編(よこあみ、Weft Knitting)の一種である平編(Plain Stitch、メリヤス編、天竺編、ジャージーともいう。)によって編み部分が形成されていく。さらに、この編み部分は、外形が筒形状となるように編まれることで、筒状体を構成する。
【0082】
なお、紐状部材7は、編まれる前に、柔軟性を上げるために、グリセリンとエタノールを含有した水溶液に30分程度浸される。
【0083】
紐状部材7は、図10に示す表面、および、図11に示す裏面のように、直線状に交差させることなく、編目(loop)を形成する動作を連続的に行いながら、平編される。
【0084】
この筒状体は、紐状部材7が、編み物が形成されていく方向(図10、11における上方向)に対して、主として、直行する方向(図10、11における左右方向)に連続的に編目が形成していきながら、編まれることで得られる。
【0085】
平編みでは、まず、紐状部材7を波状にすることで、1段目が作られる。その後、図10、11のAで示す部分が、Bで示す部分まで伸びることで、筒形状を形成しつつ、筒形状の軸方向に1つ段を追加する。Bまで伸びた紐状部材7は、1段目の波状の上方に突出した部分の内側から、筒形状となった際の径方向内側から外側に向けて、1段目と同様に、上方に突出した部分を生じさせながら編んでいく。これによって、2段目が作られる。その後、図10、11のCで示す部分が、Dで示す部分まで伸びることで、1段目や2段目と同様に筒形状を形成しつつ、筒形状の軸方向にさらに1つ段を追加する(3段目)。この操作を繰り返すことにより、平編による筒状体が得られる。
【0086】
なお、本実施形態では、紐状部材7は幅が1.7mmとなるように切断されているため、得られる紐状部材7の全長が約85mとなっており、平編によって4.2m程度の長さの筒状体になる。その後、4.2mmの筒状体は、愛玩動物が一回に食す程度の長さに切断される。
【0087】
(1−2−5)平編による筒状体を硬化させる
紐状部材7が平編され、両端が切断された筒状体を、デンプンを溶かした水溶液に含浸させる。なお、この水溶液に含有させるデンプンの量は、10〜30質量パーセント程度であることが好ましく、20質量パーセント程度であることがより好ましい。なお、この水溶液には、愛玩動物用ガム10の風味と光沢を付与する目的で、カゼインが含有されていてもよい。
【0088】
上述のように水溶液に含浸させた筒状体を、熱風によって強制乾燥させることで、表層に硬化層が形成され、愛玩動物用ガム10が得られる。
【0089】
(1−3)特徴
以上のようにして得られる愛玩動物用ガム10は、平編で筒状体が形成されているため、愛玩動物が咀嚼した場合に、図12に示すように、歯Tが、筒状体の紐状部材7同士の間の隙間Pの内側に向かう際に、歯Tと紐状部材7との摩擦が生じる。これにより、歯Tに付着していた汚れが落とされ、歯磨き効果が得られる。
【0090】
なお、例えば、図18に示すように、単に、直線的に切断する場合には、得られる紐状部材907の長さが短くなってしまう。このため、仮に、得られた紐状部材907によって、上記愛玩動物用ガム10のような平編の筒状体を得ようとしても、紐状部材907が直ぐに途切れてしまうため得ることができない。これに対して、上記愛玩動物用ガム10では、真皮6を渦巻き状に切断することで、連続的に、長い紐状部材7を得ることができている(上記実施形態では85m程度)。これにより、平編によって得られた筒状体を、連続的に製造することができるようになっている(上記実施形態では4.2m程度)。
【0091】
また、例えば、直線的に切断されて得られる紐状部材907を、図19に示すように、各紐状部材907同士の間に隙間が生じるように、複数本組合せることにより、組み物910を作成することができる。ここで、組み物907の長手方向と、各紐状部材907の長手方向とは、概ね同じ方向を向いている。この紐状部材907は大きく曲げられることなく、なだらかに湾曲しながら他の紐状部材907と組まれる。このため、図18で示したように、直線的に切断することで短い紐状部材907しか得られない場合であっても、横L2(約120cm程度)よりも多少短い程度の長手方向の長さを有する組み物910を得ることはできる。ところが、このような組み物910では、図20に示すように、愛玩動物が噛み付こうとする際に、手で押さえる等によって長手方向に引っ張られると紐状部材907同士の間の隙間が閉じられてしまう。そして、愛玩動物が咀嚼した時には、紐状部材907の長手方向に対して略垂直な方向から歯によって力が付与されることになる。このため、組み物910は、歯Tの先端によって容易につぶされてしまい、紐状部材907を歯Tの根元や歯Tの歯茎G付近に対して十分に擦り合わせることができない。このため、十分な歯磨き効果を得ることができない。
【0092】
これに対して、本実施形態の愛玩動物用ガム10では、1本の紐状部材7が平編された編み部分によって筒状体が形成されている。このため、愛玩動物用ガム10が噛み付く筒状体の外側には、全体的に隙間Pが設けられており、特に隙間Pの位置に方向性も無い。さらに、紐状部材7は平編されているため、筒状体の軸方向(長手方向)に伸びるのではなく、筒状体の周りに沿うように、かつ、波打つことで網目(loop)を作りながら、伸びている。しかも、平編された紐状部材7の網目(loop)は、上段や下段の網目(loop)と絡み合っているため、筒状体は、形状保持力が向上している。さらに、形状保持力のある筒状体の中は、中空となっているため、歯Tの先端が隙間Pの内側に入り込みやすい。このため、愛玩動物用ガム10のどの方向から噛み付かれたとしても、歯Tの先端を筒状体の内部まで到達させ、紐状部材7を歯Tの根元や歯Tの歯茎G付近に対して擦り合わせることができる。以上により、上記愛玩動物用ガム10は、十分な歯磨き効果を得ることができる。なお、歯Tに擦り付けられる部分が、紐状部材7に設けられた凹凸形状部分である場合には、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果を高めることができる。また、小さく砕けた後は咀嚼することなく直ぐに飲み込んでしまう犬のような愛玩動物であっても、最初の噛み付き時歯磨き効果を得ることができる。
【0093】
さらに、上述した組み物910は、複数本の紐状部材907によって構成されているため、愛玩動物がそのうちの1本を咥えて抜き出してしまうと、組み物910の全体形状が崩れてしまい、歯磨き効果が得られにくい。これに対して、上記愛玩動物用ガム10では、1本の紐状部材7を編むことで構成されている。1本の紐状部材7が咥えて抜き取られることがなく、バラバラになりにくいため、完食させるまでの間、歯磨き効果を得ることができる。
【0094】
(2)第2実施形態
図13に、第2実施形態に係る愛玩動物用ガム20の概観斜視図を示す。
【0095】
この第2実施形態の愛玩動物用ガム20も、上記第1実施形態の愛玩動物用ガム10と同様に、紐状部材27(上記第1実施形態の紐状部材7に相当)を平編によって筒状体を形成する点は共通している。この第2実施形態の愛玩動物用ガム20では、上記第1実施形態の愛玩動物用ガム10のように軸方向の端部を切断するのではなく、軸方向に形成される最終段部分22が、紐状部材27の余り部分21によって外側から周方向に巻き付けられた構成を有している。この愛玩動物用ガム20では、平編によって構成されている部分は、全体に対して90質量パーセント以上の部分を占めている。この第2実施形態の愛玩動物用ガム20によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
なお、この愛玩動物用ガム20のW−W面で切断した断面図を図14に示す。なお、図14では、紐状部材27は、一部だけ示し、他の部分は省略している。
【0097】
ここでは、筒状体の外形と内径との差(以下、「厚みa」という。)と、筒状体の内径bと、の関係a:bが、1:1〜1:20が好ましく、1:2〜1:10がより好ましい。この範囲は、例えば愛玩動物が犬である場合には、大型犬や小型犬等の種類に応じて適宜調節することができる。
【0098】
(3)第3実施形態
図15に、第3実施形態の愛玩動物用ガム30を示す。
【0099】
この第3実施形態の愛玩動物用ガム30は、紐状部材37の最大太さが1.5mm以下であり、筒形状を観念することが困難な程度に空隙率が高く構成されている。このような愛玩動物用ガム30は、特に、小型の愛玩動物に適している。
【0100】
なお、この紐状部材37の最大太さが1.5mm以下となるように細く形成された第3実施形態の愛玩動物用ガム30は、全体の硬度を高めるために、デンプンを溶かした水溶液に含浸させることで、表層に硬化層を形成してもよい。
【0101】
(4)第4実施形態
図16に、第4実施形態の愛玩動物用ガムに用いられる紐状部材72を示す。
【0102】
愛玩動物用ガムを構成するために編まれる紐状部材は、第1〜第3実施形態に示した直線的な形状ではなく、図16に示すようなスプリング形状であってもよい。この紐状部材72は、真皮6の表皮側もしくは皮下組織側が、径方向内側もしくは径方向外側を向くように、かつ、切断部分72rが軸方向に向くように、スプリング形状が形成される。このスプリング形状は、切断された紐状部材を、水やグリセリン等によって柔軟性を付与した後で、所定の棒状部材に巻き付け、乾燥させることで得られる。
【0103】
このようにして得られた紐状部材72をさらに編むことによって、愛玩動物用ガムを作成してもよい。
【0104】
(5)第5実施形態
図17に、第5実施形態の愛玩動物用ガム40を示す。
【0105】
第5実施形態の愛玩動物用ガム40は、第1実施形態の愛玩動物用ガム10と同様に、筒状体を有しており、さらに、内部に所定硬さの食餌材9が入れられている。この食餌材9は、特に限定されるものではなく、例えば、愛玩動物の種類に応じて、好まれる材料を適宜選択することができる。また、このように、筒状体の内部に食餌材9を挿入することで、咀嚼時における筒形状部分の形状安定性を高めることができるため、歯磨き効果も向上させることができる。
【0106】
また、愛玩動物用ガム40では、筒状体の内部に所定硬さの食餌材9が入れられているため、愛玩動物が噛み付いた際に、愛玩動物用ガム40がつぶれにくい。このため、愛玩動物の歯Tが紐状部材7の間の隙間Pに入り込む際に、歯Tの先端は食餌材9の内部まで進んでいっても、紐状部材7は食餌材9の外側に残るため、紐状部材7が歯Tの根本に到達しやすい。これにより、歯磨き効果を十分に得ることができる。
【0107】
(6)他の実施形態
本発明の実施形態は、上記実施形態に限られるものではなく、例えば、以下の実施形態も本発明の実施形態に含まれる。
【0108】
(6−1)
上記実施形態では、1本の紐状部材のみを用いて構成された編み部分を有する愛玩動物用ガムを例に挙げて説明した。
【0109】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、1本の紐状部材のみを用いて構成された編み部分に対して、別の(もしくは異なる素材の)紐状部材を編み込んで得られる構成もしくは絡ませて得られる構成の愛玩動物用ガムであってもよい。
【0110】
この場合、愛玩動物用ガム全体に対する、1本の紐状部材によって構成された編み部分の質量パーセントが10質量パーセント以上であることがよく、20質量パーセント以上であることが好ましく、40質量パーセント以上であることより好ましく、80質量パーセント以上であることが最も好ましい。
【0111】
(6−2)
上記実施形態では、紐状部材を編むことで筒状体を形成する場合を例に挙げて説明した。
【0112】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、筒状体とすることなく、平面形状としてもよい。例えば、図10、11において、Aの部分からCの部分に繋げつつ、Bの部分からDの部分に繋げることで、平面形状とされた愛玩動物用ガムであってもよい。
【0113】
(6−3)
上記実施形態では、材料の動物の皮として、「牛」の真皮を用いる場合を例に挙げて説明した。
【0114】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、豚、馬、鹿、カンガルー、ダチョウ、羊、山羊、および、猪からなる群より選択される1種類又は2種以上の組合せを用いてもよい。
【0115】
(6−4)
上記実施形態では、緯編(よこあみ、Weft Knitting)の一種である平編(Plain Stitch)によって編み部分を構成する場合を例に挙げて説明した。
【0116】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、編み部分を得るための紐状部材の編み方は、特に限定されるものではなく、例えば、緯編(よこあみ、Weft Knitting)であってもよいし、経編(たてあみ、Warp Knitting)であってもよいし、緯編と経編との組合せであってもよい。
【0117】
ここでの緯編としては、ゴム編(Rib Stitch、リブ編、畦編、リブ・ニット、クチ編ともいう。)、パール編(Pearl Stitch、両頭編、ガータ編(Garter Stitch)ともいう。)、タック編(Tuck Stitch)、浮き編(Float Stitch、フロート・スティッチ、ウェルト編、沈み編ともいう。)、レース編(Lace Stitch、透孔編、透かし目編、フィレット編、ニードル・ループ目移しともいう。)、両畦編(Full Cardigan Stitch、フル・カーディガン編、ポルカ・リブ(Polka Rib)ともいう。)、片畦編(Half Cardigan Stitch、ハーフ・カーディガン編ともいう。)、ペレリン編(Pelerine Stitch、シンカ・ループ目移しともいう。)、アイレット編(Eyelet Stitch)、両面編(Interlock Stitch、スムース編(Circular Interlock Knitting)、両面スムース編、インターロック(Interlock)、 メリディアン(Meridian)、ダブル・リブ(Double Rib)、二重ゴム編(Double Rib)ともいう。)、多衝程両面編(両面出合い、ダブル・ジャージー、ダブル・ニットともいう。)、ダブル・ジャージー編(Double Jersey ゴム編出合い、ダブル・ニットともいう。)、振り編(Racked Stitch、ショッキング、ラッキングともいう。)、針抜き編(Broad Stitch)、立毛編(Plush Stitch、パイル編、プラシ編、ビロード編ともいう。)、裏毛編(Fleecy Knitting、フリース編(Fleecy Stitch)、プラシ編(Plush Stitch)ともいう。)、添え糸編(Plating Stitch、プレーティングともいう。)、からみ添え糸編(Embroidery Plating、刺繍編、エンブロイダリングともいう。)、ラーベン編(Rahben Stitch)、ひねり編(Ring Stitch、なわ編ともいう。)、アーガイル編(Argyle Design)、および、2種以上のこれらの組合せが含まれる。
【0118】
ここでの経編としては、シングル・デンビー編(Single Denbigh Stitch、デンビー編、一重トリコットともいう。)、シングル・バンダイク編(Single Vandyke Stitch、シングル・アトラス編、1重アトラス編、バンダイク編みともいう。)、シングル・コード編(Single Cord Stitch、一重コード編、プレーン・コード編ともいう。)、ベルリン編(English Leather Stitch、イングリッシュ・レザー、イギリス・レザーともいう。)、二目編(Two Needle Stitch、ダブル・スティッチ、二重編みともいう。)、シェル編(Shell Stitch)、ダブル・デンビー編(Double Dembigh Stitch、二重デンビー編、トリコット編、プレーン・トリコット編ともいう。)、アトラス編(Atlas Stitch、ダブル・アトラス、ダブル・バンダイク編、ダイヤモンド編ともいう。)、コード編(Double Cord Stitch、ダブル・コード編、ダブル・バー・コード編ともいう。)、ハーフ・トリコット編(Half Tricot Stitch、ハーフ編、シャルムーズ、変形トリコット編、ロック・ニットともいう。)、サテン編(Satin Stitch、サテン・トリコット編、変形トリコットともいう。)、シャークスキン編(Sharkskin Stitch、変化トリコットともいう。)、クイーンズ・コード編(Queen's Cord Stitch、アメリカン・シャークスキンともいう。)、ミラニーズ編(Milanese Stitch、1×1アトラス、1×2アトラス、サテン・ミラニーズともいう。)、アイドル・スイング編(Idle Swing Stitch、遊びのスイングともいう。)、エラスティック編(Elastic Stitch、ストレッチ・ニットともいう。)、パイル編(Pile Stitch、プラシ編、立毛編、ビロード編ともいう。)、タック編(Tuck Stitch、引き上げ編ともいう。)、紋編(Figured Stitch、模様編ともいう。)、パイナップル編(Pineapple Stitch、変り柄編みともいう。)、裏毛編(Fleecy Knitting、フリース編、プラシ編、裏毛経編ともいう。)、裏毛アトラス編(Lined Atlas Stitch)、裏毛コード編(Lined Cord Stitch)、レース編(Lace Work, Open Work、透孔編(Lace Stitch),透かし目編、フィレット編ともいう。)、および、2種以上のこれらの組合せが含まれる。
【0119】
(6−5)
上記実施形態では、切断用の刃8の刃先と真皮6の切断面との当たり方の変化に起因して凹凸を、紐状部材7に形成する場合を例に挙げて説明した。
【0120】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、凹凸形状が形成されないように真皮6を切断して、紐状部材を得てもよい。
【0121】
また、例えば、真皮6の切断時に凹凸形状を生じさるのではなく、ヤスリ等を用いたり、プレス加工する等の任意の手法で凹凸形状を生じさせるようにしてもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、真皮6の表皮5側と皮下組織側4との少なくともいずれか一方の表面を凹凸加工して上記実施形態のように切断面に凹凸形状を付与すると、紐状部材の凹凸形状部分の面積を増大させることができる。また、真皮6の表皮5側と皮下組織側4と両方の表面を凹凸加工した場合には、紐状部材の表面の実質的に全ての部分に凹凸形状を付与することができる。このようにして得られた凹凸形状部分の多い紐状部材を用いて編むことで編み部分を形成した場合には、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果をよりいっそう高めた愛玩動物用ガムを得ることができる。
【0123】
なお、紐状部材において、凹凸形状が形成されている部分と、凹凸形状が形成されていない部分との区別は、以下の断面曲線における十点平均粗さの基準で区別することができる。十点平均粗さとは、断面曲線(フィルタ処理などを一切しない測定したままのデータ)における最高の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と、最深の谷底から深い順に5番目までの谷深さの平均と、の和をいう。なお、ここでは、基準長さ(カットオフ値)の中に5つの山頂が無い場合や、5つの谷底が無い場合には、存在している山頂の個数で除して平均値を得て、存在している谷底の個数で除して平均値を得ることとする。
【0124】
以上の条件で、紐状部材において凹凸形状が形成されている部分の断面曲線における十点平均粗さは、基準長さ(カットオフ値)を25.0mmとした場合に、35μm以上400μm以下である。また、紐状部材において凹凸形状が形成されていない部分の断面曲線における十点平均粗さは、基準長さ(カットオフ値)を2.5mmとした場合に、0μm以上30μm以下である。なお、ここでの評価は、いずれもうねりを含んでいる。
【0125】
なお、紐状部材において、凹凸形状が形成されている部分と、凹凸形状が形成されていない部分と、の断面曲線における十点平均粗さの関係が、上記各基準長さに従って求めた場合に、凹凸形状が形成されている部分の十点平均粗さが、凹凸形状が形成されていない部分の十点平均粗さの10倍以上であることが好ましい。
【0126】
紐状部材において、凹凸形状が形成されている部分と、凹凸形状が形成されていない部分との区別は、明らかに把握できる場合には、当業者の目で確認することもできる。
【0127】
また、この区別は、カゼインやデンプン等によって、愛玩動物用ガムの表層に硬化層が形成されたものも同様に行う。
【0128】
また、紐状部材において凹凸形状が形成されている部分の断面曲線を沿った平均長さは、基準長さ(カットオフ値)を10.0mmとした場合に、1200μm以上3000μm以下であることが好ましく、1300μm以上1800μm以下であることがより好ましい。紐状部材において凹凸形状が形成されていない部分の断面曲線を沿った平均長さは、基準長さ(カットオフ値)を10.0mmとした場合に、1000μm以上1100μm以下であることが好ましく、1000μm以上1010μm以下であることがより好ましい。
【0129】
(6−6)
上記実施形態では、幅が1.7mmとなるように切断された紐状部材7を例に挙げて説明した。
【0130】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られるものではない。紐状部材の幅としては、例えば、0.5mm以上15.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上10.0mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上5.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0131】
(6−7)
上記実施形態では、紐状部材7を平編することで得られる筒状体によって愛玩動物用ガム10を構成する場合を例に挙げて説明した。
【0132】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、紐状部材7の凹凸形状部分が網目(loop)の内側を向くように編み方を調整し、筒状体とした場合に紐状部材7の凹凸部分が周方向に向いて位置するように(径方向内側でもなく、径方向外側でもない向きに向いて位置するように)してもよい。この場合には、網目に歯が入り込んでいく際に、紐状部材7の凹凸形状の部分と歯の表面とを効率的に擦り合わせることができ、歯石や歯垢を削ぎ落とす効果を得ることができる。
【0133】
(6−8)
上記実施形態では、愛玩動物が犬である場合を例に挙げて説明した。
【0134】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、愛玩動物として猫や他の歯を有する動物を対象としていてもよい。
【0135】
(6−9)
上記実施形態では、真皮6が切断されることで紐状部材7を得た後、編む前に、その紐状部材7をグリセリンとエタノールを含有した水溶液に浸す場合を例に挙げて説明した。
【0136】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、真皮6を切断する前に真皮6自体をグリセリンとエタノールを含有した水溶液に浸し、柔らかくなった真皮6を切断することで紐状部材7を得てもよい。
【0137】
また、グリセリンとエタノールを含有した水溶液に浸す時間については、特に限定されるものではなく、編む前の紐状部材7を浸す場合であっても、真皮6を浸す場合であっても、例えば、20分〜60分程度の時間だけ浸すようにしてもよい。
【0138】
(6−10)
上記実施形態では、デンプンを溶かした水溶液に筒状体を含浸させた後、強制乾燥させる場合を例に挙げて説明した。
【0139】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、常温下において、自然乾燥させてもよい。
【0140】
(6−11)
なお、上記各実施形態と、他の実施形態と、の組合せによって得られる実施形態についても、当然に本願発明の実施形態に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の愛玩動物用ガムおよびその製造方法は、1本の紐状部材によって編まれた部分を有していることにより、愛玩動物の歯磨き効果を高めることが可能になる点で特に有用である。
【符号の説明】
【0142】
4 皮下組織
5 表皮
6 真皮
7、27、37 紐状部材
8 切断用の刃
10、20、30 愛玩動物用ガム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0143】
【特許文献1】特開平9−28312号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の皮から得られる1本の紐状部材によって編まれている編み部分を有する、
愛玩動物用ガム。
【請求項2】
前記編み部分は、全体の10質量パーセント以上である、
請求項1に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項3】
前記紐状部材の表面の少なくとも一部に凹凸形状が形成されている、
請求項1又は2に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項4】
前記凹凸形状が形成されている表面の断面曲線における十点平均粗さは、基準長さを25.0mmとした場合に、35μm以上400μm以下である、
請求項3に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項5】
前記編み部分は、外形が筒形状となる部分を含むように形成されている、
請求項1又は2に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項6】
前記筒形状の内側以外でかつ外側以外の周方向の表面の少なくとも一部に、凹凸形状が形成されている、
請求項5に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項7】
前記紐状部材は、前記動物の皮を、厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断することで得られる、
請求項1、2および5のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項8】
前記動物の皮は、表皮と皮下組織との間の真皮である、
請求項7に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項9】
前記紐状部材には、前記真皮のうち前記表皮側の面の表面粗さおよび前記皮下組織側の面の表面粗さのいずれよりも表面粗さが粗い凹凸形状が形成されている、
請求項8に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項10】
前記凹凸形状は、前記真皮を厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断する際の、切断用の刃先と前記真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される、
請求項9に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項11】
少なくとも前記編み部分の表面には、硬化層が設けられている、
請求項1から10のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項12】
前記編み部分の編み方は、平編である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項13】
前記動物の皮は、牛、豚、馬、鹿、カンガルー、ダチョウ、羊、山羊、および、猪からなる群より選択される1種類又は2種以上の組合せである、
請求項1から12のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項14】
動物の真皮を用意する工程と、
前記真皮を厚み方向に切断することにより、少なくとも1本の紐状部材を得る工程と、
1本の前記紐状部材を編むことで編み部分を形成する工程と、
を有する愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項15】
前記真皮を厚み方向に切断する際の切断経路は、厚み方向視で渦巻き状である、
請求項14に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項16】
前記紐状部材は、表面の少なくとも一部が凹凸形状となるように加工されている、
請求項14又は15に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項17】
前記凹凸形状は、前記真皮を厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断する際の、切断用の刃先と前記真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される、
請求項16に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項18】
前記凹凸形状となるように加工された部分の表面粗さは、前記真皮のうち前記表皮側の面の表面粗さおよび前記皮下組織側の面の表面粗さのいずれよりも表面粗さが粗くなるように加工されている、
請求項16又は17に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項19】
前記編み部分は、外形が筒形状となる部分を含むように形成されている、
請求項14から18のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項20】
少なくとも前記編み部分の表面に、硬化層を設ける工程をさらに有する、
請求項14から19のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項1】
動物の皮から得られる1本の紐状部材によって編まれている編み部分を有する、
愛玩動物用ガム。
【請求項2】
前記編み部分は、全体の10質量パーセント以上である、
請求項1に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項3】
前記紐状部材の表面の少なくとも一部に凹凸形状が形成されている、
請求項1又は2に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項4】
前記凹凸形状が形成されている表面の断面曲線における十点平均粗さは、基準長さを25.0mmとした場合に、35μm以上400μm以下である、
請求項3に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項5】
前記編み部分は、外形が筒形状となる部分を含むように形成されている、
請求項1又は2に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項6】
前記筒形状の内側以外でかつ外側以外の周方向の表面の少なくとも一部に、凹凸形状が形成されている、
請求項5に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項7】
前記紐状部材は、前記動物の皮を、厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断することで得られる、
請求項1、2および5のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項8】
前記動物の皮は、表皮と皮下組織との間の真皮である、
請求項7に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項9】
前記紐状部材には、前記真皮のうち前記表皮側の面の表面粗さおよび前記皮下組織側の面の表面粗さのいずれよりも表面粗さが粗い凹凸形状が形成されている、
請求項8に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項10】
前記凹凸形状は、前記真皮を厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断する際の、切断用の刃先と前記真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される、
請求項9に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項11】
少なくとも前記編み部分の表面には、硬化層が設けられている、
請求項1から10のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項12】
前記編み部分の編み方は、平編である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項13】
前記動物の皮は、牛、豚、馬、鹿、カンガルー、ダチョウ、羊、山羊、および、猪からなる群より選択される1種類又は2種以上の組合せである、
請求項1から12のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガム。
【請求項14】
動物の真皮を用意する工程と、
前記真皮を厚み方向に切断することにより、少なくとも1本の紐状部材を得る工程と、
1本の前記紐状部材を編むことで編み部分を形成する工程と、
を有する愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項15】
前記真皮を厚み方向に切断する際の切断経路は、厚み方向視で渦巻き状である、
請求項14に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項16】
前記紐状部材は、表面の少なくとも一部が凹凸形状となるように加工されている、
請求項14又は15に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項17】
前記凹凸形状は、前記真皮を厚み方向視における渦巻き状の経路を沿うように切断する際の、切断用の刃先と前記真皮の切断面との当たり方の変化に起因して形成される、
請求項16に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項18】
前記凹凸形状となるように加工された部分の表面粗さは、前記真皮のうち前記表皮側の面の表面粗さおよび前記皮下組織側の面の表面粗さのいずれよりも表面粗さが粗くなるように加工されている、
請求項16又は17に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項19】
前記編み部分は、外形が筒形状となる部分を含むように形成されている、
請求項14から18のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【請求項20】
少なくとも前記編み部分の表面に、硬化層を設ける工程をさらに有する、
請求項14から19のいずれか1項に記載の愛玩動物用ガムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−74817(P2013−74817A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215556(P2011−215556)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【特許番号】特許第4892642号(P4892642)
【特許公報発行日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(507276036)株式会社ダイワ (1)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【特許番号】特許第4892642号(P4892642)
【特許公報発行日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(507276036)株式会社ダイワ (1)
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