説明

感光ドラムのアース装置と画像形成装置の感光ドラムユニット

【課題】ドラムシャフトの強度を低下させることなくドラムシャフトとアース部材の導通部分での異音の発生を防ぎ、かつ画像形成が良好となるような感光ドラムのアース装置を提供する。
【解決手段】導電性のあるドラムシャフト15と、このドラムシャフト15に絶縁性フランジ13を介して回転可能に取付けた感光ドラム12を、アース部材19で電気的に接続したアース装置において、前記アース部材19を導電性樹脂で形成し、前記アース部材19が、アース板19aに感光ドラム12に接触する接触片19bと、前記ドラムシャフト15に接触する弾性接触片19cを設けて形成され、ドラムシャフト15と感光ドラム12を電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真装置における感光ドラムとアース電位であるドラムシャフトを電気的に接続するアース装置と、このアース装置を組み込んだ画像形成装置の感光ドラムユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザープリンター等の電子写真装置の感光ドラムは、通常、その回転駆動及び支持のために、ギヤ付きフランジが、その感光ドラムの両端部又は片側端部に嵌着され、画像形成装置の所定部分に取り付けられる。最近では、コストの観点から、ギヤ付きフランジの材料として、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール、ポリオキシメチレン(POM)等の電気絶縁性の合成樹脂が広く使われている。
【0003】
電子写真プロセスにおいて、良好な画像を得るためには、感光ドラムの感光層はアースされなければならず、従来、感光層はドラムシャフトから複写機等の装置のフレームを介してアースされていた。このため、感光ドラムの感光層とドラムシャフトとの間に良好な電気導通を確保する必要がある。このため、コストを考慮して前記の合成樹脂製のギヤ付き絶縁性フランジを用いた場合においては、電気の導通を確保する手段として、金属製のアース部材を用い、感光ドラムと、絶縁性フランジを貫通するドラムシャフトとの間を導電可能な状態にする方法が知られている。
【0004】
そのような例として、図10(a)と(b)に示すような方法があげられる。すなわち、感光ドラム1の端部に絶縁性フランジ2を設け、この絶縁性フランジ2の中心部にドラムシャフト3を貫通させた感光ドラム装置4において、外周部を前記感光ドラム1と接触させたアース部材5を前記絶縁性フランジ2に固定し、金属板を用いて環状の円板に形成されたこのアース部材5の内周に凸状の弾性接触片6を設け、この弾性接触片6を外方に折り曲げ、ドラムシャフト3に接触させる方法をあげることができる(特許文献1、2等参照)。なお、図面では、フランジ2に歯車9が設けられている。
【0005】
ところで、前記の方法を採用した場合、ドラムシャフト3と弾性接触片6は、金属同士の直接接触となり、感光ドラム1と一体にアース部材5が回転した場合に、弾性接触片6がドラムシャフト3の外周を摺回動し、この接触部分で異音が発生したり、ドラムシャフト3の摩耗が著しくなるという問題がある。
【0006】
これに対し、図11(a)乃至(c)に示すように、感光ドラム1の端部に絶縁性フランジ2を設け、この絶縁性フランジ2の中心部にドラムシャフト3を貫通させた感光ドラム装置4において、前記感光ドラム1と外周部を接触させたアース部材5を前記絶縁性フランジ2に固定し、前記ドラムシャフト3の途中に径を細くした油溜まり7を形成し、環状の円板に形成されたこのアース部材5の内周に凸状の弾性接触片6を設け、この弾性接触片6をフランジ2と反対側に折り曲げてドラムシャフト3の油溜まり7に接触させ、かつ、この油溜まり7にグリース8を配する方法が知られている(特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−181286号公報
【特許文献2】特開平10−319783号公報
【特許文献3】特開平08−095428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ドラムシャフト3の途中に細径の油溜まり7を設けると、ドラムシャフト3の強度低下が生じるだけでなく、グリース8を用いると使用を繰り返すことにより、グリース8が油溜まり7からはみ出すおそれがあり、はみ出したグリース8が感光ドラム1の内周面に付着すると、その部分の画像形成が困難となり、画像不良が生じるおそれがある。
【0009】
そこで、この発明は、ドラムシャフトの強度を低下させることなくドラムシャフトとアース部材の電気的な導通部分での異音の発生を防ぎ、かつ、グリースの使用を省くことで、画像形成が良好となるような感光ドラムのアース装置と画像形成装置の感光ドラムユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、導電性のあるドラムシャフトと、このドラムシャフトに絶縁性フランジを介して回転可能に取付けた感光ドラムを、導電性のあるアース部材を用いて電気的に接続した電子写真装置における感光ドラムのアース装置において、前記アース部材が、感光ドラムに接触する接触片と、ドラムシャフトと電気的に接続する弾性接触片を備え、この弾性接触片のドラムシャフトに対する電気的な接続に導電性樹脂を用いた構成を採用したものである。
【0011】
請求項2の発明は、上記アース部材が、上記感光ドラム内に収まる外径と上記ドラムシャフトの外径よりも大きい内径の環状となるアース板と、このアース板の外周縁に前記感光ドラムと接するように突設した接触片と、前記アース板の内周縁から前記ドラムシャフトに向けて突設した弾性接触片とからなり、このアース部材の全体が、導電性樹脂で形成されている構成としたものである。
請求項3の発明は、上記アース部材が、金属板を用いて形成され、このアース部材に設けた弾性接触片のドラムシャフトと接触する部位に、導電性樹脂からなる摺接部材を設けたものである。
【0012】
請求項4の発明は、上記摺接部材が、上記弾性接触片のドラムシャフトに接触する接触部位に取付けることができる筒状に形成されていると共に、請求項5の発明は、上記摺接部材が、上記ドラムシャフトに接触する端部に面取りが施されている構成とし、請求項6の発明は、上記アース部材の弾性接触片が、外嵌状に取付けた摺接部材を固定化できるよう、ドラムシャフトに接触する接触部位の両側縁が摺接部材の抜け止め縁に形成されている構成とし、請求項7の発明は、上記摺接部材が、上記弾性接触片のドラムシャフトに接触する接触部位に、接着剤を用いて電気的に動通する状態で固定されている構成としたものである。
【0013】
請求項8の発明は、上記アース部材が、金属板を用いて形成され、上記ドラムシャフトの前記アース部材に設けた弾性接触片が接触する部位に、導電性樹脂からなる円筒状の導電性筒体を摺動自在となるよう取付け、前記弾性接触片を導電性筒体に接触させた構成としたものである。
【0014】
請求項9の発明は、上記弾性接触片は、上記アース板の内周縁から突出する爪部によって形成され、この弾性接触片が前記導電性筒体と接触することにより、この導電性筒体のドラムシャフト上の移動を規制する構成とし、請求項10の発明は、上記弾性接触片は、上記導電性筒体の両端面のうち、上記アース部材が配される側と反対側の端面、又は前記導電性筒体の外周面に接触している構成としたもので、請求項11の発明は、上記アース部材がステンレス製であることを特徴としたものである。
【0015】
請求項12の発明は、上記アース部材が、導電性樹脂を用いて渦巻きばね状に形成され、渦巻きの大径側の外周側に感光ドラムと接触する接触片を有し、渦巻きの小径側端部がその内径側でドラムシャフトに接する弾性接触片になっている構成を採用したものであり、請求項13の発明は、上記アース部材の弾性接触片が、上記ドラムシャフトに拡径した状態で弾力的に外接していることを特徴としたものである。
【0016】
請求項14の発明は、上記導電性樹脂は、体積抵抗率が5×10Ω・cm以下であることを特徴とし、請求項15の発明は、上記導電性樹脂は、ベース樹脂100重量部に対して導電材を17重量部以上85重量部以下配合したことを特徴とし、請求項16の発明は、上記導電材は、炭素粉末であることを特徴とし、請求項17の発明は、上記導電性樹脂のベース樹脂は、摺動特性を有することを特徴としている。
【0017】
請求項18の発明は、上記導電性樹脂のベース樹脂は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂である構成としたものである。
【0018】
請求項19の発明は、上記絶縁性フランジは、合成樹脂の射出成形体であることを特徴とし、請求項20の発明は、前記絶縁性フランジの少なくとも一方は、歯車が一体に成形された射出成形体であることを特徴とし、請求項21の発明は、上記感光ドラムと接触する、前記アース部材のアース板に設けた接触部は、前記絶縁性フランジと前記感光ドラムとの間に配され、両者間に挟まれることを特徴としている。
【0019】
また、請求項22の発明は、画像形成装置の感光ドラムユニットであり、請求項1乃至21のいずれかに記載のアース装置を感光ドラムの内部に組み込んだ構成としたものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、感光ドラムのアース装置において、ドラムシャフトとアース部材の電気的な導通に導電性樹脂を用いたので、ドラムシャフトへのアース部材の摺接部分が導電性樹脂となり、ドラムシャフトに対して感光ドラムと共にアース部材が回転しても、ドラムシャフトとアース部材の電気的な導通を確保しながら、ドラムシャフトに対するアース部材の摺接部分は樹脂の特性により摺動性がよくなり、これにより、ドラムシャフトとアース部材間での異音の発生を防ぐことができる。
【0021】
また、ドラムシャフトとアース部材の電気的な導通に導電性樹脂を用いたので、ドラムシャフトに対して金属が直接接触することがなくなり、金属同士の直接接触によるドラムシャフトの摩耗発生を防止できる。
【0022】
また、導電性樹脂に摺動特性を持たせることにより、ドラムシャフトとアース部材の摺接部分にグリースの使用が不要になり、グリースが飛散して感光ドラムに付着するようなことがなくなり、感光ドラムへの画像形成が不良となるのを防止でき、良好な画像を得ることができると共に、ドラムシャフトに対して外周面を削る油溜まりの加工が不要に成るので、ドラムシャフトの強度低下を招くことがない。
【0023】
更に、導電性樹脂に摺動特性を持たせることにより、ドラムシャフトに対するアース部材の摺接部分は摺動性が向上し、ドラムシャフトに対してアース部材が回転しても、ドラムシャフトが摩耗するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は第1の実施の形態のアース装置を組み込んだ感光ドラム装置の一部切り欠き正面図、(b)は同一部切り欠き斜視図
【図2】(a)は第1の実施の形態のアース装置に用いるアース部材とドラムシャフトの斜視図、(b)は図1(a)の矢印b−b線での拡大した縦断側面図、(c)はアース部材の弾性接触片のドラムシャフトへの接触部分を拡大した正面図
【図3】(a)は第2の実施の形態のアース装置を組み込んだ感光ドラム装置の一部切り欠き正面図、(b)は(a)の矢印b−b線での縦断側面図、(c)は同上の一部切り欠き斜視図
【図4】(a)は第2の実施の形態のアース装置において、アース部材の弾性接触片に対する摺接部材の取付け構造を示す拡大した横断平面図、(b)は摺接部材のドラムシャフトに対する圧接状態を示す拡大した正面図、(c)はアース部材の弾性接触片と摺接部材の分解斜視図、(d)はアース部材の弾性接触片に摺接部材を導電性接着剤で固定した例を示す拡大した横断平面図
【図5】(a)は第2の実施の形態のアース装置において、他の例のアース部材を組み込んだ感光ドラム装置の一部切り欠き正面図、(b)は(a)の矢印b−b線での縦断側面図、(c)は同上の一部切り欠き斜視図
【図6】(a)は第3の実施の形態のアース装置を組み込んだ感光ドラム装置の一部切り欠き斜視図、(b)はアース部材の他の例を示す一部切り欠き斜視図
【図7】(a)は第3の実施の形態のアース装置に用いるアース部材の正面図、(b)は同じくアース部材の他の例を示す正面図、(c)は導電性筒体の斜視図
【図8】(a)は第4の実施の形態のアース装置を組み込んだ感光ドラム装置の一部切り欠き正面図、(b)は同上の一部切り欠き斜視図
【図9】(a)は渦巻き形アース部材の斜視図、(b)は図8(a)の矢印b−b線での拡大した縦断側面図
【図10】(a)は従来の感光ドラム装置の例を示す一部切り欠き斜視図、(b)は同縦断側面図
【図11】(a)は従来の感光ドラム装置の他の例を示す一部切り欠き斜視図、(b)は同縦断正面図、(c)は(b)の矢印c−cに沿った縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
先ず、複写機の感光ドラム装置11は、図1(a)、(b)に示すように、感光ドラム12の両端に合成樹脂を用いた絶縁性フランジ13(以下単にフランジという)が嵌合固定され、この感光ドラム12が、複写機の機枠14に回転しないよう架設したアース電位の導電性ドラムシャフト15に、前記フランジ13を介して同軸心状の配置で回転可能に取付けられ、一方又は両方のフランジ13に設けた歯車16を回転駆動源と接続することによって回転が与えられるようになっている。
【0027】
上記フランジ13は、感光ドラム12の内径に適合する外径の円板状となり、軽量化やコスト低減の目的で、合成樹脂が用いられ、外側端面に位置する歯車16と射出成形によって一体成形され、その軸心にはドラムシャフト15に対して回転できるように貫通孔17が設けられている。
【0028】
なお、図1(a)は、感光ドラム12に対して両端に位置するフランジ13のそれぞれに歯車16を設けた例を示したが、一方のフランジは歯車を省いたものでもよい。
【0029】
この発明のアース装置18は、上記複写機の感光ドラム装置11において、導電性のあるドラムシャフト15と、このドラムシャフト15にフランジ13を介して回転可能に取付けた感光ドラム12を、導電性のあるアース部材19を用いて電気的に接続し、このアース部材19とドラムシャフト15の電気的な接続に導電性樹脂を用いたものである。
【0030】
図1と図2は、複写機の感光ドラム装置11に組み込んだ第1の実施の形態のアース装置18を示している。
【0031】
この第1の実施の形態のアース装置18は、ドラムシャフト15と感光ドラム12の電気的な接続に、導電性樹脂を用いて全体が形成されたアース部材19を用い、このアース部材19が、感光ドラム12の内部に納まる外径とドラムシャフト15に外嵌する内径のリング状となり、フランジ13の内側端面に重なるように配置するアース板19aと、このアース板19aの外周に上記感光ドラム12と接触するため突設した複数の接触片19bと、前記アース板19aの内周にドラムシャフト15と接触するよう軸心に向けて突設した弾性接触片19cとで形成されている。
【0032】
このアース部材19は、弾性接触片19cでドラムシャフト15と電気的に導通し、アース板19aから接触片19bを通じて感光ドラム12と電気的に導通するので、感光ドラム12とドラムシャフト15との導通を確保することができ、全体が導電性樹脂を用いて形成されているので、ドラムシャフト15に対するアース部材19の接触部分が導電性樹脂となり、ドラムシャフト15に対するアース部材19の電気的な接続に金属同士の接触をなくすことができる。
【0033】
上記アース部材19は、導電性樹脂を用いたシート材からの型抜きや射出成形によって形成される。その外周の接触片19bは角形の短い舌片状となり、図示の場合、アース板19aの外周三箇所の位置に等間隔の配置で突設され、アース部材19のアース板19aを感光ドラム12の内部に同軸心の配置で組み込んだとき、その先端が撓んで感光ドラム12の内周面に圧接する突出長さに形成される。
【0034】
また、弾性接触片19cは、帯板状でアース板19aの内周縁からアース板19aの中心に向けて一本が突出するよう設けられ、アース部材19をフランジ13の内側端面に重ねて配置したとき、予め屈曲又はドラムシャフト15の挿通によって湾曲させることにより、アース板19aの内周縁からドラムシャフト15の外周面に向けて斜めに延び、先端部がドラムシャフト15の外周面に圧接する長さに設定されている。図2(a)はこの状態を示す。
【0035】
図2(c)は上記弾性接触片19cとドラムシャフト15との接触部分を示す拡大図であり、上記弾性接触片19cは、ドラムシャフト15の外周面に接触する端部コーナに円弧状や斜めのカット面の面取り20を施し、ドラムシャフト15に対する接触の安定性と電気的な導通の向上を図るようにしている。また、シート材からの型抜きで形成する場合では、図11(a)に図示されている弾性接触片6のように、弾性接触片19cの先端を折り曲げて、この折り曲げた部分をドラムシャフト15の外周面に接触するようにしても良い。
【0036】
第1の実施の形態のアース装置18は、上記のような構成であり、感光ドラム12の端部にフランジ13を固定する場合に、フランジ13の内側端面にアース部材19のアース板19aを重ねて同軸心の配置とし、この状態で感光ドラム12の端部にフランジ13を挿入すると、アース部材19の外周に設けた接触片19bの先端が感光ドラム12の内周面で押されて撓むことで、アース部材19は感光ドラム12内に収まって固定化され、感光ドラム12の端部にフランジ13を嵌着すると前記接触片19bの先端が感光ドラム12の内周面に圧接し、感光ドラム12とアース部材19が電気的に接続される。
【0037】
なお、アース部材19は、外周に等間隔の配置で設けた複数の接触片19bが感光ドラム12の内部に収まることで、感光ドラム12の内部に同軸心状の配置となるが、これとは別に、固定手段を用いてフランジ13の内側端面に予め固定してもよい。また、フランジ13の内側端面で外周寄りの位置には、接触片19bの撓みを許容するために、各接触片19bと対応する位置に、切欠き21が設けてある。
【0038】
上記のように、端部にフランジ13を固定した感光ドラム12をドラムシャフト15に取付けるため、一方のフランジ13から他方のフランジ13に向けてドラムシャフト15を挿通すると、アース部材19の弾性接触片19cは先端部のドラムシャフト15に接触する接触部位がドラムシャフト15で押されることで、アース板19aに対して軸方向の外側に撓んで逃げ、ドラムシャフト15に感光ドラム12を回転可能に取付けた状態で、先端部分がドラムシャフト15の外周面に圧接し、ドラムシャフト15と弾性接触片19cが電気的に導通する。
【0039】
従って、ドラムシャフト15に感光ドラム12を回転可能に取付けると、感光ドラム12とドラムシャフト15は、アース部材19を介して電気的に接続されて感光ドラム12のユニット化が完了し、このユニット化された感光ドラム12のドラムシャフト15を複写機のアース電位となる機枠14に回転しないよう架設することにより、感光ドラム12はアース電位となる。
【0040】
上記感光ドラム12は、複写機の作動時に歯車16と連動した回転駆動源によって回転が付与され、フランジ13とアース部材19も一体に回転することになるが、アース部材19の弾性接触片19cは、ドラムシャフト15の外周面を圧接した状態で摺回動することで、ドラムシャフト15と弾性接触片19cの電気的な導通を維持することになり、従って、感光ドラム12のアース電位は保たれることになる。
【0041】
上記アース部材19は、単独でドラムシャフト15と感光ドラム12との導通を確保することができ、全体が導電性樹脂製であるので、ドラムシャフト15に対するアース部材19の接触部分は導電性樹脂となり、ドラムシャフト15に金属を接触させることがなくなり、感光ドラム12の回転時に弾性接触片19cがドラムシャフト15の外周を摺回動した場合の異音発生を防ぐことができる。なおかつ、導電性樹脂の樹脂材料に潤滑特性のあるものを用いることにより、ドラムシャフト15の摩耗発生を有効に抑え、耐久性の向上を図ることができる。
【0042】
図3と図4は、第2の実施の形態のアース装置18を組み込んだ複写機の感光ドラム装置11を示している。なお、第2の実施の形態において、感光ドラム装置11は上記した第1の実施の形態と同一であるので、同一部分に同一符号を付して説明に代える。また、アース装置のアース部材においても、第1の実施の形態と機能や形状が同一の部分については、同一符号を付して説明する。それ以降の実施の形態についても同様である。
【0043】
この第2の実施の形態のアース装置18は、形状が第1の実施の形態と同一のアース部材19を金属板から形成し、その弾性接触片19cの先端に、導電性樹脂を用いた摺接部材22を取付けた構造になっている。
【0044】
この金属板を用いたアース部材19は、アース板19aを感光ドラム12の内部で一方又は両側のフランジ13の内側端面に重なるように組み込み、前記感光ドラム12とドラムシャフト15を電気的に接続するものであり、上記摺接部材22は、弾性接触片19cのドラムシャフト15に接触する接触部位に、ドラムシャフト15の外周面に接触するように取付けられ、導電性樹脂によって、ドラムシャフト15と弾性接触片19cの電気的な導通を確保しながら金属同士の直接的な接触の発生をなくしている。
【0045】
上記アース部材19は、一枚の金属板を用い、プレス成形で打ち抜くことによって形成され、弾性接触片19cは、アース板19aの中心部を円形に打ち抜くときに一部を残すことによって、アース板19aの内周から中心に向けて突出する帯板状に形成され、アース板19aをフランジ13の内側端面に重ねて配置したとき、予め屈曲又はドラムシャフト15の挿通によって湾曲させることにより、アース板19aの内周縁からドラムシャフト15の外周面に向けて斜めに延び、その先端部に取付けた摺接部材22がドラムシャフト15の外周面に圧接する長さに設定されている。
【0046】
このアース部材19の形成に用いる金属板は、導電性と復元弾性のあるものであれば材質は限定されないが、例えば、錆の発生がないステンレスを例示することができる。
【0047】
上記弾性接触片19cの先端部に取付ける摺接部材22は、導電性樹脂を用い、上記弾性接触片19cの先端部へ外嵌状に取付けることができる筒状に形成されている。
【0048】
この摺接部材22は、図4(a)乃至(c)のように、円筒状に形成され、弾性接触片19cの先端部へ弾力的に被せて取付けたときに扁平な角形に変形するようになっており、弾性接触片19cの先端部両側縁は、外嵌状に取付けた摺接部材22が確実に固定できるよう、鋸歯形状のような抜け止め縁23に形成されている。
【0049】
図4(d)は、弾性接触片19cの先端部をフラットな板状に形成し、この弾性接触片19cの先端部に対する摺接部材22の固定に導電性の接着剤24を用いた例を示している。
【0050】
上記摺接部材22は、図示のような円筒状に限らず、弾性接触片19cの先端部に外嵌状に取付ることができるよう、予め扁平な角筒に形成されているものでもよく、また、図示省略したが、摺接部材22をフラットな板状に形成し、これを弾性接触片19cのドラムシャフト15との接触面に導電性の接着剤で貼付け固定した構造を採用することもできる。
【0051】
これら摺接部材22において、ドラムシャフト15の外周面に接触する端部に円弧状や斜めのカット面の面取り25を施し、ドラムシャフト15に対する接触の安定性と電気的な導通の向上を図るようにしている。なお、摺接部材22が筒形の場合、前記面取り25は摺接部材22の端部外周縁の全周に施すようにすれば、弾性接触片19cに対する取付け時の円周方向の方向性がなくなり、取付け作業が円滑に行える。また、前記面取り25は摺接部材22の両端に施すようにすれば、取付け時の前後の方向性がなくなり、取付け作業がさらに円滑に行える。また、前記面取り25を施すことによってドラムシャフト15との接触面積が大きくなり、導電性の向上が図られ、さらに摺接部材22の初期摩耗が抑えられる。
【0052】
上記した各摺接部材22において、弾性接触片19cとドラムシャフト15の間に位置する部分の厚みは、1mm〜5mmの範囲に設定するのが好ましい。何故ならば、厚みが1mm以下であると薄くて耐久性に劣り、5mm以上であっても特性の向上が無いため、製造コストが高くなるため好ましくない。
【0053】
次に、図5(a)乃至(c)は、第2の実施の形態におけるアース部材19の他の例を示している。このアース部材19は、金属板を用いたアース板19aの内径を、図3に示したものよりも小径に形成し、アース板19aの内周縁に突設した弾性接触片19cの短尺化を図ると共に、アース板19aの内周縁に等間隔の配置で三本の弾性接触片19cを突設し、各弾性接触片19cのドラムシャフト15に接触する接触部位に、摺接部材22を取付けた構造になっている。
【0054】
上記のように、弾性接触片19cを短尺化すると、ドラムシャフト15に接触する接触部位に取付けた摺接部材22のドラムシャフト15に対する圧接力を高めることができると共に、三本の弾性接触片19cに取付けた摺接部材22がドラムシャフト15を抱持することになり、ドラムシャフト15に対してアース部材19が回転したときも導電を確実に安定よく確保することができることになる。
【0055】
第2の実施形態のアース装置は、上記のような構成であり、感光ドラム12の端部にフランジ13を固定する場合に、フランジ13の内側端面にアース板19aを重ねて同軸心の配置とし、この状態で感光ドラム12の端部にフランジ13を挿入すると、アース部材19の外周に設けた接触片19bの先端が感光ドラム12の内周面で押されて撓むことで、アース部材19は感光ドラム12内に収まって固定化され、感光ドラム12の端部にフランジ13を嵌着すると前記接触片19bの先端が感光ドラム12の内周面に圧接し、感光ドラム12とアース部材19が電気的に接続される。
【0056】
なお、アース部材19は、外周に等間隔の配置で設けた複数の接触片19bが感光ドラム12の内部に収まることで、感光ドラム12の内部に同軸心状の配置となるが、これとは別に、固定手段を用いてフランジ13の内側端面に予め固定してもよい。
【0057】
上記のように、端部にフランジ13を固定した感光ドラム12をドラムシャフト15に取付けるため、一方のフランジ13から他方のフランジ13に向けてドラムシャフト15を挿通すると、アース部材19の弾性接触片19cは先端部等のドラムシャフト15に接触する接触部位に取付けた摺接部材22がドラムシャフト15で押されることで、ドラムシャフト15の半径方向の外側に撓んで逃げ、ドラムシャフト15に感光ドラム12を回転可能に取付けた状態で、摺接部材22がドラムシャフト15の外周面に圧接し、ドラムシャフト15と弾性接触片19cが導電性樹脂の摺接部材22を介して電気的に導通する。
【0058】
従って、ドラムシャフト15に感光ドラム12を回転可能に取付けると、感光ドラム12とドラムシャフト15は、アース部材19を介して電気的に接続されて感光ドラム12のユニット化が完了し、このユニット化された感光ドラム12のドラムシャフト15を複写機のアース電位となる機枠14に回転しないよう架設することにより、感光ドラム12はアース電位となる。
【0059】
上記感光ドラム12は、複写機の作動時に歯車16と連動した回転駆動源によって回転が付与され、フランジ13とアース部材19も一体に回転することになるが、アース部材19の弾性接触片19cに取付けた摺接部材22は、ドラムシャフト15の外周面を圧接した状態で摺回動することで、ドラムシャフト15と弾性接触片19cの電気的な導通を維持することになり、従って、感光ドラム12のアース電位は保たれることになる。
【0060】
上記摺接部材22は、導電性樹脂であるのでドラムシャフト15と弾性接触片19cの金属同士の直接的な接触を防ぐことで、感光ドラム12の回転時の異音発生を防ぐことができると同時に、摺接部材22を形成する導電性樹脂の樹脂材料に潤滑特性のあるものを用いることにより、ドラムシャフト15の摩耗発生を有効に抑え、耐久性の向上を図ることができる。
【0061】
図6と図7は、第3の実施の形態のアース装置18を組み込んだ複写機の感光ドラム装置11を示している。
【0062】
この第3の実施の形態のアース装置18は、ドラムシャフト15に摺動自在となるよう取付けた円筒状の導電性筒体26と、ステンレス等の金属板を用いたアース部材19との組み合わせからなり、アース部材19を感光ドラム12の内部で一方又は両側のフランジ13の内側端面に重なるように組み込み固定し、前記弾性接触片19cをフランジ13と反対側に付け根部分で折り曲げて起こし、その先端部を導電性筒体26と弾力的に接触させることで、導電性筒体26を介して感光ドラム12とドラムシャフト15を電気的に接続する構造になっている。
【0063】
上記アース部材19は、上記第1と第2の実施の形態で示したものと同様の形状を有し、このアース部材19の弾性接触片19cと導電性筒体26の接続は、図6(a)に示すように、弾性接触片19cの先端部を折り曲げ、その折り曲げ部を、前記導電性筒体26の両端面のうち、フランジ13と反対側の端面と接触するように係合させることが好ましい。このようにすることにより、弾性接触片19cと導電性筒体26との接触をより確実にすることができると共に、導電性筒体26がドラムシャフト15上を軸方向に移動するのを規制することができる。
【0064】
この第3の実施の形態においても、例えば、図6(b)、図7(b)に示す例のように、アース板19aの内径を小径とすることで弾性接触片19cを図6(a)で示した弾性接触片19cより短くすると共に、三本を突設したものでもよく、弾性接触片19cと導電性筒体26との電気的な接触を保持することができると共に、三本の弾性接触片19cが導電性筒体26を弾力的に保持するので、導電性筒体26がドラムシャフト15上を軸方向に移動するのを規制することができる。
【0065】
上記導電性筒体26は、図7(c)に示すような、ドラムシャフト15に外嵌する内径の円筒状である。円筒状であるので、ドラムシャフト15に挿通することができる。また、前記導電性筒体26は、導電性樹脂を用いて形成され、導電性を有すると共に、導電性樹脂の樹脂材料に潤滑特性のあるものを用いることにより、ドラムシャフト15の摩耗発生を有効に抑え、耐久性の向上を図ることができる。
【0066】
第3の実施の形態のアース装置は、上記のような構成であり、感光ドラム12が帯電した場合、その電気は、アース装置18におけるアース部材19の接触片19bを経由して、アース板19aに流れる。次いで、弾性接触片19cを介して、導電性筒体26に流れる。この導電性筒体26は、ドラムシャフト15と摺動可能に接触しているので、導電性筒体26に流れた電気は、ドラムシャフト15に流れ、このドラムシャフト15から、感光ドラム装置11の外部に流れ、接地される。
【0067】
図8と図9は、第4の実施の形態のアース装置18を組み込んだ複写機の感光ドラム装置11を示している。
【0068】
この第4の実施の形態のアース装置18は、アース部材19が、取り付け前は図9(a)に示す平面状の渦巻ばね状に巻かれた構造になっている。
【0069】
このアース部材19は、アース板19aが線状の渦巻となり、導電性樹脂を用いて射出成形により渦巻ばね状に形成され、アース板19aの最外周である大径部の外周側に、感光ドラム12と接するための接触片19bを有し、そのアース板19aの大径部から径を縮めていった最内周である小径部が弾性接触片19cとなり、弾性接触片19cの内周側がドラムシャフト15と接触するようになっている。
【0070】
アース板19aの大径部は、感光ドラム12の内径よりも少し小径となっており、その外周の接触片19bは角形の短い舌片状となり、図示の場合、アース板19aの大径部外周三箇所の位置に等間隔の配置で突設され、アース板19aを感光ドラム12の内部に略同軸心の配置で組み込んだとき、その先端が撓んで感光ドラム12の内周面に圧接する突出長さに形成される。
【0071】
また、弾性接触片19cとなる小径部は、アース板19aを感光ドラム12の内部に略同軸心の配置で組み込んだとき、フランジ13の貫通孔17に臨み、貫通孔17にドラムシャフト15を挿通したとき、弾性接触片19cの内周面が、ドラムシャフト15の外径に引っ掛かって拡径し、ドラムシャフト15の移動方向に一体に移動することで、アース板19aが伸ばされることで円錐状に変形し、アース板19aが伸びきる時点で弾性接触片19cに対してドラムシャフト15は摺動移動し、ドラムシャフト15の挿通完了状態で、アース部材19は図8(a)と(b)に示すような形態となる。
【0072】
上記弾性接触片19cは、導電性樹脂の持つ弾性力で回復して縮径しようとし、その力によってドラムシャフト15を締め付けて前進した位置を保持し、弾性接触片19cはドラムシャフト15に対して押し付けられるので、ドラムシャフト15との導通を十分に確保できる。また、ドラムシャフト15との摩擦により弾性接触片19cの先端部分が多少摩耗しても、この弾性回復しようとする力により、導通を維持することができる。
【0073】
第4の実施の形態アース装置は、上記のような構成であり、感光ドラム12の端部にフランジ13を固定する場合に、アース板19aが感光ドラム11と略同軸心の配置となるようフランジ13の内側端面にアース部材19を重ね、この状態で感光ドラム12の端部にフランジ13を挿入すると、アース部材19の最外周に設けた接触片19bの先端が感光ドラム12の内周面で押されて撓むことで、アース部材19は感光ドラム12内に収まって固定化され、感光ドラム12の端部にフランジ13を嵌着すると前記接触片19bの先端が感光ドラム12の内周面に圧接し、感光ドラム12とアース部材19が電気的に接続される。
【0074】
なお、アース部材19は、大径部に等間隔の配置で設けた複数の接触片19bが感光ドラム12の内部に収まることで、感光ドラム12の内部に同軸心状の配置となるが、これとは別に、固定手段を用いてフランジ13の内側端面に予め固定してもよい。
【0075】
上記のように、端部にフランジ13を固定した感光ドラム12をドラムシャフト15に取付けるため、一方のフランジ13から他方のフランジ13に向けてドラムシャフト15を挿通すると、小径部となる弾性接触片19cがドラムシャフト15の外径に引っ掛かり伸ばされてアース板19aは円錐状に変形し、弾性接触片19cはドラムシャフト15に接触する部位がドラムシャフト15で押されることで、ドラムシャフト15の半径方向の外側に撓んで逃げ、ドラムシャフト15に感光ドラム12を回転可能に取付けた状態で、先端部分がドラムシャフト15の外周面に圧接して弾力的に外嵌し、ドラムシャフト15と弾性接触片19cが電気的に導通する。
【0076】
従って、ドラムシャフト15に感光ドラム12を回転可能に取付けると、感光ドラム12とドラムシャフト15は、アース部材19を介して電気的に接続されて感光ドラムのユニット化が完了し、このユニット化された感光ドラム12のドラムシャフト15を複写機のアース電位となる機枠14に回転しないよう架設することにより、感光ドラム12はアース電位となる。
【0077】
上記感光ドラム12は、複写機の作動時に歯車16と連動した回転駆動源によって回転が付与され、フランジ13とアース部材19も一体に回転することになるが、アース部材19の弾性接触片19cは、弾性回復しようとする力によりドラムシャフト15の外周面を圧接した状態で周回動することで、ドラムシャフト15と弾性接触片19cの電気的な導通を維持することになり、従って、感光ドラム12のアース電位は保たれることになる。
【0078】
上記アース部材19は、単独でドラムシャフト15と感光ドラム12との導通を確保することができ、渦巻ばね状の弾性を利用してドラムシャフト15と弾性接触片19cの電気的な導通を保持するので、感光ドラム12の回転時の異音発生を抑えることができる。なおかつ、導電性樹脂の樹脂材料に潤滑特性のあるものを用いることにより、ドラムシャフト15の摩耗発生を有効に抑え、耐久性の向上を図ることができる。
【0079】
上記したアース装置18の各実施の形態において、アース部材19や摺接部材22及び導電性筒体26の形成に用いる上記導電性樹脂は、その体積抵抗率が5×10Ω・cm以下であることが好ましい。このような導電性樹脂としては、ベース樹脂である樹脂材料100重量部に対して導電材を17重量部以上85重量部以下配合した合成樹脂組成物を挙げることができる。
【0080】
この導電材としては、アース装置18の軽量化、特に導電性樹脂で形成されるアース部材19や摺接部材22及び導電性筒体26を軽量化し、ドラムシャフト15に傷をつけるのを防止する目的で、軽量な導電材を用いるのが好ましく、この例として、黒鉛粉末やカーボンブラック、アセチレンブラックなどの炭素粉末等を挙げることができる。
【0081】
なお、上記導電性樹脂の体積抵抗率が5×10Ω・cmより高いと、ドラムシャフト15と感光ドラム12との間の導電性が悪くなると共に、樹脂材料100重量部に対して導電材が17重量部未満であると、導電性に劣ることになり、また、導電材が85重量部
を超えるとベース樹脂との均一混合が困難になるばかりか、この導電性樹脂で形成されるアース部材19や摺接部材22及び導電性筒体26の成形が困難になるため好ましくない。
【0082】
さらに、上記アース部材19や摺接部材22及び導電性筒体26は、ドラムシャフト15に対して摺動自在であり、かつ、導電性を有するので、ドラムシャフト15に対して回転しても、ドラムシャフト15の摩耗を防止できる。
【0083】
上記アース部材19や摺接部材22及び導電性筒体26をドラムシャフト15に対して摺動自在とするため、このアース部材19や摺接部材22及び導電性筒体26を構成する樹脂は、摺動特性を有することが好ましい。このような樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂等を挙げることができ、これらを単用もしくは複合して用いることができる。
【0084】
上記した樹脂材料の中でも、ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、摺動特性が低く導電材によって体積抵抗率が容易に低下するため好ましい。
【0085】
また、上記導電性樹脂は、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素樹脂粉末、黒鉛などの固体潤滑剤、あるいは潤滑油などの潤滑剤を含むものであると、アース部材19や摺接部材22及び導電性筒体26は更に摺動特性が高くなり、ドラムシャフト15に対して滑らかに摺動させることができ、ドラムシャフト15の磨耗を抑えることができる。なお、固体潤滑剤の配合量は、樹脂材料100重量部に対して5重量部以上30重量部以下であり、潤滑油の場合は、樹脂材料100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下である。
【0086】
上記した各実施の形態のアース装置18を組み込んだ感光ドラム装置11は、複写機やレーザープリンター等の電子写真装置における画像形成装置の感光ドラムユニットとして用いられる。
【0087】
上記の感光ドラム装置11が、感光ドラムユニットとして用いられるとき、この感光ドラム装置11に用いられるフランジ13は、合成樹脂の射出成形体から構成されることが、感光ドラムユニットの軽量化の点で好ましい。また、このフランジ13は、感光ドラム12の両端部に取り付けられるが、その少なくとも一方は、歯車16を一体に成形した射出成形体であることが好ましい。歯車16を一体成形することで、別途に歯車を組み入れる必要性がなくなり、感光ドラムユニットの軽量化を図ることができる。
【0088】
上記の通り、この感光ドラムユニットにおいては、アース装置18のアース板19aの接触片19bは、フランジ13と感光ドラム12との間に配され、両者間に挟まれる。このため、感光ドラムユニットの構造を簡単にすることができる。
【符号の説明】
【0089】
11 感光ドラム装置
12 感光ドラム
13 フランジ
14 機枠
15 ドラムシャフト
16 歯車
17 貫通孔
18 アース装置
19 アース部材
19a アース板
19b 接触片
19c 弾性接触片
20 面取り
21 切欠き
22 摺接部材
23 抜け止め縁
24 接着剤
25 面取り
26 導電性筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のあるドラムシャフトと、このドラムシャフトに絶縁性フランジを介して回転可能に取付けた感光ドラムを、導電性のあるアース部材を用いて電気的に接続した電子写真装置における感光ドラムのアース装置において、
前記アース部材が、感光ドラムに接触する接触片と、ドラムシャフトと電気的に接続する弾性接触片を備え、この弾性接触片のドラムシャフトに対する電気的な接続に導電性樹脂を用いたことを特徴とする電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項2】
上記アース部材が、上記感光ドラム内に収まる外径と上記ドラムシャフトの外径よりも大きい内径の環状となるアース板と、このアース板の外周縁に前記感光ドラムと接するように突設した接触片と、前記アース板の内周縁から前記ドラムシャフトに向けて突設した弾性接触片とからなり、このアース部材の全体が、導電性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項3】
上記アース部材が、金属板を用いて形成され、このアース部材に設けた弾性接触片のドラムシャフトと接触する部位に、導電性樹脂からなる摺接部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項4】
上記摺接部材が、上記弾性接触片のドラムシャフトに接触する接触部位に取付けることができる筒状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項5】
上記摺接部材が、上記ドラムシャフトに接触する端部に面取りが施されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項6】
上記アース部材の弾性接触片が、外嵌状に取付けた摺接部材を固定化できるよう、ドラムシャフトに接触する接触部位の両側縁が摺接部材の抜け止め縁に形成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項7】
上記摺接部材が、上記弾性接触片のドラムシャフトに接触する接触部位に、接着剤を用いて電気的に動通する状態で固定されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項8】
上記アース部材が、金属板を用いて形成され、上記ドラムシャフトの前記アース部材に設けた弾性接触片が接触する部位に、導電性樹脂からなる円筒状の導電性筒体を摺動自在となるよう取付け、前記弾性接触片を導電性筒体に接触させたことを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項9】
上記弾性接触片は、上記アース板の内周縁から突出する爪部によって形成され、この弾性接触片が前記導電性筒体と接触することにより、この導電性筒体のドラムシャフト上の移動を規制することを特徴とする請求項8に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項10】
上記弾性接触片は、上記導電性筒体の両端面のうち、上記アース部材が配される側と反対側の端面、又は前記導電性筒体の外周面に接触していることを特徴とする請求項8に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項11】
上記アース部材は、ステンレス製であることを特徴とする請求項1と3乃至10のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項12】
上記アース部材が、導電性樹脂を用いて渦巻きばね状に形成され、渦巻きの大径側の外周側に感光ドラムと接触する接触片を有し、渦巻きの小径側端部がその内径側でドラムシャフトに接する弾性接触片になっていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項13】
上記アース部材の弾性接触片が、上記ドラムシャフトに拡径した状態で弾力的に外接していることを特徴とする請求項12に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項14】
上記導電性樹脂は、体積抵抗率が5×10Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1、2、3、8、12のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項15】
上記導電性樹脂は、ベース樹脂100重量部に対して導電材を17重量部以上85重量部以下配合したことを特徴とする請求項1、2、3、8、12、14のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項16】
上記導電材は、炭素粉末であることを特徴とする請求項15に記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項17】
上記導電性樹脂のベース樹脂は、摺動特性を有することを特徴とする請求項1、2、3、8、12、14、15のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項18】
上記導電性樹脂のベース樹脂は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂である請求項1、2、3、8、12、14、15、17のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項19】
上記絶縁性フランジは、合成樹脂の射出成形体であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項20】
前記絶縁性フランジの少なくとも一方は、歯車が一体に成形された射出成形体であることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項21】
前記感光ドラムと接触する、前記アース部材のアース板に設けた接触部は、前記絶縁性フランジと前記感光ドラムとの間に配され、両者間に挟まれることを特徴とする請求項1乃至20のいずれかに記載の電子写真装置における感光ドラムのアース装置。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれかに記載のアース装置を感光ドラムの内部に組み込んだことを特徴とする画像形成装置の感光ドラムユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−101385(P2013−101385A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−13233(P2013−13233)
【出願日】平成25年1月28日(2013.1.28)
【分割の表示】特願2008−100442(P2008−100442)の分割
【原出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】