説明

感光体ドラムの収納トレイ

【課題】 感光体ドラムを搬送又は保管する際などに、ドラム表面が傷付かないようにすると共に、感光体ドラムを配列する収納トレイ自体をコンパクトにした感光体ドラムの収納トレイを提供することにある。
【解決手段】 感光体ドラム7が配列される収納部8と、この収納部8の両側に設けられる左右の側板部6と、この側板部6の内側に沿って設けられる補強板部9と、この補強板部9と前記側板部6との間に配置されて側板部6と補強板部9とによって支持され、前記収納部8に配列された感光体ドラム7の端部を支承する発泡樹脂材13とを備える感光体ドラムの収納トレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタや複写機などの画像形成装置に用いられる感光体ドラムを搬送し、又は保管する際などに利用する収納トレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機などの画像形成装置に用いられる感光体ドラムは、アルミニウム管などの外周面に有機顔料や樹脂などを塗布し、或いはセレンやセレン合金などを蒸着して感光層を形成したものであるが、ドラム表面の感光層に傷が付き易く、微細な傷が付いただけでも画像形成装置の出力画像の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、従来から感光体ドラムを画像形成装置の組立ラインに搬送する際や保管する際などには、ドラム表面に傷が付かないように専用の収納トレイが多く利用されてきた(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された収納トレイは、ダンボール紙を組み立てて形成したものであり、左右の両側板には感光体ドラムの両端部を支承する凹部が連続して設けられている。ところで、この収納トレイでは、感光層を保護するために感光体ドラムの外周面に薄紙を巻いてから収納トレイの凹部で感光ドラムの両端部を支承しているが、搬送する際の振動や揺れなどによって、凹部と接触する両端部の感光層に傷が付いてしまうおそれがあった。
【0004】
そこで、従来にあっては感光体ドラムを直接支承しても、ドラム表面に傷を付けないように、発泡性樹脂で成形された把持部材を利用した収納トレイが提案されている(特許文献2参照)。この把持部材は細長いブロック状の発泡性樹脂からなり、その長手方向に沿って感光体ドラムの両端部を支承する凹部が複数設けられたものである。使用時には一対の把持部材を収納トレイの左右両側にそれぞれ配置し、接着剤などで収納トレイに固定した状態で感光ドラムを収納する。
【0005】
ところで、上記特許文献2に開示された収納トレイでは、把持部材が発泡性樹脂で成形されているために、感光体ドラムを直接支承してもドラム表面に傷が付きにくいという利点があるものの、感光体ドラムの左右の端面も把持部材で支持して搬送時のがたつきを防止しているため、把持部材自体が大きくなってしまい、結果的に収納トレイが大型化してしまう問題があった。また、収納トレイに把持部材を接着剤などで固定しなければならないため、コスト高になると共に接着作業が面倒なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−36887号公報
【特許文献2】特開2002−196511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、感光体ドラムを搬送又は保管する際などに、ドラム表面に傷を付けないようにすると共に、収納トレイ自体をコンパクトにした感光体ドラムの収納トレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る感光体ドラムの収納トレイは、感光体ドラムが配列される収納部と、この収納部の両側に設けられる側板部と、この側板部の内側に沿って設けられる補強板部と、この補強板部と前記側板部との間に配置され、前記収納部に配列された感光体ドラムの端部を支承する発泡樹脂材とを備える。
【0009】
また、本発明に係る感光体ドラムの収納トレイは、前記収納部、側板部及び補強板部が、型抜きされた一枚のダンボール紙を折曲げることによって組み立てられ、前記ダンボール紙を折曲げて側板部と補強板部を形成する際に、両者の間に発泡樹脂材が一緒に組み込まれる。
【0010】
また、前記発泡樹脂材は、前記側板部の一端側から側板部と補強板部との間に設けられる空隙部内に差し込むように配置してもよい。なお、前記発泡樹脂材は、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンの中から選択される薄板状の部材である。
【0011】
また、前記発泡樹脂体には感光体ドラムの外周形状に対応した凹部が複数設けられ、感光体ドラムの外周面を凹部で支承する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感光体ドラムの両端部を発泡樹脂材で支承するので、感光体ドラムの表面に傷が付きにくくなる。また、収納トレイの側板部と補強板部との間に配置した発泡樹脂体を両者で支持しているので、発泡樹脂材を薄板状に形成することができる。
【0013】
また、本発明によれば、型抜きされた一枚のダンボール紙から収納トレイを組立てる際に発泡樹脂材を組み込むことができたり、組立てられた収納トレイの空隙部に発泡樹脂材を差し込むだけで、収納トレイの所定位置に発泡樹脂材を配置することができるので、従来のように接着剤を使用して固定する必要がなく、収納トレイの製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る収納トレイの斜視図である。
【図2】本発明の収納トレイを組み立てる前のダンボール紙の斜視図である。
【図3】収納トレイに発泡樹脂材を組み込む場合の一例を示す斜視図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】収納トレイの側板部及び補強板部を発泡樹脂材と一緒に組み立てる工程を示す断面図である。
【図6】収納トレイの側板部及び補強板部に形成されるそれぞれの凹部を示す説明図である。
【図7】図1におけるB−B線断面図である。
【図8】収納トレイを外装ケースに複数段重ねた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る感光体ドラムの収納トレイを実施するための形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1乃至図7に示した収納トレイの一実施形態において、収納トレイ1は、型抜きされた一枚のダンボール紙2を各折れ線3に沿って折り曲げることによって箱型に組み立てられ、四角形の底板部4と、この底板部4の四周を囲う前後左右の側板部5,6とで感光体ドラム7を収納する収納部8を形成している。
【0016】
また、前記左右の側板部6の内側に沿って補強板部9が設けられている。この補強板部9は、図2及び図5に示したように、ダンボール紙2の左右の型抜き部分2a,2bを折れ線3に沿って外側から内側に複数回折り畳むことで、2重構造の側板部6の内側に折り曲げ形成される。補強板部9は、側板部6との間に掛け渡された複数の横木10によって連結され、側板部6を補強すると共に側板部6との間に一定幅の溝状の空隙部11を形成している。
【0017】
前記補強板部9にはその長手方向に沿って連続した複数の凹部12が設けられている。この凹部12は、収納トレイ1に配置される感光体ドラム7の一本一本に対応して設けられており、感光体ドラム7を配置した時に、感光体ドラム7の外周面が凹部12の内周縁に接触しないように、感光体ドラム7の外周より少し大きな湾曲形状となっている。なお、凹部12の形状は実施形態のような湾曲形状に限定されない。
【0018】
前記空隙部11には、細長い薄板状の発泡樹脂材13が配置されている。この発泡樹脂材13には、その上辺に沿って前記収納部8に配列された感光体ドラム7の端部を支承する凹部14が連続して複数設けられており、空隙部11内に発泡樹脂材13を配置した時に、凹部14が前記補強板部9に設けられた凹部12と重なる。また、凹部14の形状は感光体ドラム7の外周面に対応した大きさの湾曲形状に形成されており、前記補強板材9の凹部12の湾曲形状より小さい。したがって、感光体ドラム7は、その外周面が補強板部9の凹部12の内周縁に接触しない状態で、両端部が発泡樹脂材13の凹部14に支承されることになる。なお、前記発泡樹脂材13は、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンなど、感光体ドラム7の表面に直接当たっても傷が付きにくい材料の中から選択される。
【0019】
次に上記構成からなる収納トレイ1の組み立てについて説明する。図2に示したように、この実施形態に係る収納トレイ1は、型抜きされた一枚のダンボール紙2から組み立てられる。このダンボール紙2には型抜きする際に折れ線3が一緒に付けられるので、この折れ線3にしたがって、底板部4、前後左右の側板部5,6、補強板部9を組み立てることで収納トレイ1が完成する。前記発泡樹脂材13の配置に関しては、一例では図2及び図5に示したように、収納トレイ1の左右の側板部6及び補強板部9を組み立てる際に、側板部6と補強板部9との間に発泡樹脂材13を一緒に組み入れ、そうすることで側板部6と補強板部9との間に形成される空隙部11内に発泡樹脂材13を配置することができる。
【0020】
また、他の例では、図3に示したように、収納トレイ1の底板部4、左右の側板部6、補助板部9を組み立てた後、前後の側板部5を組み立てる際に前記左右の側板部6の一端側から空隙部11内に発泡樹脂材13を差し込んで配置することも可能である。いずれの場合でも空隙部11内に配置された発泡樹脂材13は側板部6と補強板部9とに挟まれて支持されるため、接着剤などで固定する必要がない。
【0021】
次に、上記のようにして組み立てられた収納トレイ1に感光体ドラム7を収納する場合を説明する。収納に際しては図1に示したように、予め感光体ドラム7の外周面に黒色の遮光性の薄紙15を巻き付け、この状態で発泡樹脂材13の凹部14に感光体ドラム7の両端部を載置する。この時に、図7に示したように、感光体ドラム7の左右の両端面7aを側板部6の内側面に当てることで、感光体ドラム7の左右方向のがたつきを防ぐことが出来る。なお、感光体ドラム7の両端にギヤなどの駆動部材を取り付けた状態で収納トレイ1に載置してもよい。
【0022】
このようにして、発泡樹脂材13の全ての凹部14に感光体ドラム7を詰め終わった収納トレイは、図8に示すような外装ケース16の中に複数段積み重ねて梱包され、トラックなどで搬送される。搬送された収納トレイ1は外装ケース16から取し出され、さらに収納トレイ1から感光体ドラム7を1本ずつ取り出し、トレイ表面の感光層に傷を付けないように細心の注意を払いながら、感光体ドラム7の両端にギヤなどの駆動部材を取り付けられる。感光体ドラム7を取り出した後の収納トレイ1はそのままの状態で保管され、再利用される。
【0023】
なお、この実施形態に係る収納トレイ1は、底板部4の裏面側に脚部17が設けられている。この脚部17は、収納トレイ1を支えるように、底板部4の両側に設けられている。そして、図8に示したように、外装ケース16内に収納トレイ1を複数段積み重ねたときに、収納トレイ1を脚部17で支えて、互いの収納トレイ1間に脚部17の高さ幅に相当するクリアランスを設けることができ、上に重ねた収納トレイ1の底板部4の裏面に下側の収納トレイ1の感光体ドラム7が接触するのを防止している。なお、この脚部17は、収納トレイ1の底板部4、側板部5,6、補強板部9などと一緒にダンボール紙2によって一体に組み立てられる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る感光体ドラムの収納トレイによれば、ドラム表面の感光層に傷を付けることなくコンパクトに収納、搬送することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 収納トレイ
2 ダンボール紙
3 折れ線
4 底板部
5 前後の側板部
6 左右の側板部
7 感光体ドラム
8 収納部
9 補強板部
10 横木
11 空隙部
12 補強板部の凹部
13 発泡樹脂材
14 発泡樹脂材の凹部
15 薄紙
16 外装ケース
17 脚部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムが配列される収納部と、
この収納部の両側に設けられる側板部と、
この側板部の内側に沿って設けられる補強板部と、
この補強板部と前記側板部との間に配置され、前記収納部に配列された感光体ドラムの端部を支承する発泡樹脂材とを備えることを特徴とする感光体ドラムの収納トレイ。
【請求項2】
前記発泡樹脂材は、前記側板部と補強板部との間に設けられた空隙部内に配置され、前記側板部と補強板部とによって支持される請求項1に記載の感光体ドラムの収納トレイ。
【請求項3】
前記収納部、側板部及び補強板部は、型抜きされた一枚のダンボール紙を折曲げることによって組み立てられ、前記ダンボール紙を折曲げて側板部と補強板部を形成する際に、両者の間に発泡樹脂材が一緒に組み込まれる請求項1に記載の感光体ドラムの収納トレイ。
【請求項4】
前記補強板部は感光体ドラムの端部を発泡樹脂材で支承した際に、感光体ドラムの外周面とは離間している請求項1に記載の感光体ドラムの収納トレイ。
【請求項5】
前記補強板部は、前記側板部との間に掛け渡された複数の横木によって連結される請求項1に記載の感光体ドラム収納トレイ。
【請求項6】
前記発泡樹脂材は、前記側板部の一端側から空隙部内に差し込むようにして配置される請求項2に記載の感光体ドラム収納トレイ。
【請求項7】
前記発泡樹脂体には感光体ドラムの外周形状に対応した凹部が複数設けられている請求項1に記載の感光体ドラムの収納トレイ。
【請求項8】
前記発泡樹脂材は、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンの中から選択される薄板状の部材である請求項1に記載の感光体ドラム収納トレイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121585(P2012−121585A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272140(P2010−272140)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000180128)山梨電子工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】