説明

感光性インク組成物および透明導体ならびにこれらの使用方法

本開示は、導電性ナノ構造体と感光性化合物を含む感光性インク組成物、及びその使用方法に関する。本発明は、複数の導電性ナノ構造体、結合材料、感光性化合物、及び極性溶媒を含むインク組成物を提供する。本発明はまた、インク組成物を基体に堆積させる工程、極性溶媒を除去することによって相互接続性ナノワイヤの薄膜を形成する工程、及び薄膜の一部をUV光源に曝露して薄膜の曝露部分の架橋性ポリマーを架橋する工程を包含する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法§119(e)の下で、2010年2月5日に出願された米国仮特許出願第61/302,013号の利益を主張する。米国仮特許出願第61/302,013号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、導電性ナノ構造体を含む感光性インク組成物、並びにそれを使用又はパターン形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
透明導体は、光学的に透明な導電膜である。それらは、ディスプレイ、タッチパネル、光起電装置(photovoltaic)(PV)、種々のタイプの電子ペーパー、静電シールド、加熱又は抗反射性コーティング(例えば、窓)などの領域で普及している。種々の技術は、金属ナノ構造体、(例えば、ゾル−ゲル手法による)透明導電性酸化物、導電性ポリマー、及び/又はカーボンナノチューブなどの1種類以上の導電媒体に基づく透明導体をもたらしてきた。
【0004】
ナノ構造体に基づく導電膜を調製するために、懸濁流体中の導電性ナノ構造体の懸濁液であるインク組成物を透明基体上に堆積させる。一般に、透明導体は、導電膜が堆積又はコートされる透明基体もさらに含む。
【0005】
最終用途に応じて、透明導体を所定の電気的及び光学的性質並びに所定のパターンで作製することができる。ナノ構造体に基づく導電膜を直接パターン形成する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(簡単な概要)
ナノ構造体に基づく導電膜の形成に適した感光性インク組成物、並びにそれを直接光パターン形成する方法を本明細書で述べる。
【0007】
一実施形態は、複数の導電性ナノ構造体、結合材料、感光性化合物、及び極性溶媒を含む、インク組成物を提供する。より具体的な実施形態においては、架橋性ポリマーはポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0008】
更なる一実施形態は、インク組成物を基体に堆積させる工程(インク組成物は、複数の導電性ナノ構造体、架橋性ポリマー、光開始剤、及び極性溶媒を含む)、極性溶媒を除去することによって相互接続性ナノワイヤの薄膜を形成する工程、及び薄膜の一部をUV光源に曝露して、薄膜の曝露部分の架橋性ポリマーを架橋する工程を包含する方法を提供する。
【0009】
別の一実施形態は、複数の相互接続性導電性ナノ構造体、結合材料(相互接続性導電性ナノ構造体は結合材料に包埋されている)、及び感光性化合物を含む、導電膜を提供する。
【0010】
更に別の一実施形態は、インク組成物を基体に堆積させることによって相互接続性導電性ナノ構造体の薄膜を基体上に形成する工程(インク組成物は、複数の導電性ナノ構造体、結合剤材料、熱活性化可能な感光性化合物、及び極性溶媒を含む)、及び極性溶媒を除去する工程、並びに薄膜上にマスクを配置する工程(マスクは、開口部を含み、薄膜をマスク(masked)領域と非マスク(unmasked)領域に画定し、非マスク領域は開口部に対応する)、薄膜をUV光源にマスクの開口部を通して第1の温度で曝露して非マスク領域の感光性化合物の光分解を引き起こす工程、及び薄膜を熱源に暗所で第2の温度で曝露してマスク領域の感光性化合物の熱分解を引き起こす工程を包含する方法を提供する。
【0011】
図面において、同一の参照番号は、類似の要素又は行為を示す。図中の要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。例えば、種々の要素の形状、及び角度は、一定の縮尺で描かれておらず、これらの要素の一部は、図を読みやすくするために、任意に拡大され、配置されている。さらに、描かれた要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関する任意の情報を伝えるようには意図されておらず、単に図中の読み取りを容易にするために選択された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、一実施形態によって調製された導電膜上に配置されたマスクを示す。
【図1B】図1Bは、直接光パターン形成後のパターン形成導電膜を示す。
【図2】図2は、熱活性化可能な感光性化合物を有する透明導体中に不可視又は低視感度パターンが形成された、本開示の一実施形態を示す。
【図3A】図3Aは、感光性化合物を含まない標準透明導体を示す。
【図3B】図3Bは、暗所における熱処理後の熱活性化可能な感光性化合物を含む透明導体中の破壊された又は損傷を受けたナノワイヤを示す。
【図3C】図3Cは、光照射後の感光性化合物を含む透明導体中の無傷のナノワイヤを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
種々の実施形態においては、本明細書に記載の透明導体は、導電性ナノ構造体の懸濁液から成形された薄膜であり、それは「インク組成物」又は「インク」とも称される。導電性ナノ構造体に加えて、インク組成物は、結合剤材料(例えば、架橋性ポリマー)、感光性化合物(例えば、光開始剤)、及び極性溶媒も含む。本明細書に更に詳細に記載されるように、インク組成物及びそれから形成される透明導体(導電膜)は、感光性化合物の存在に起因して感光性である。感光性化合物は、光子を吸収し、化学又は物理的変換を受ける。インク及び生成した透明導体中の感光性化合物のタイプに応じて、透明導体中の光像を現像する種々の手法を採用することができる。
【0014】
ナノ構造体
本明細書では「導電性ナノ構造体」又は「ナノ構造体」は、一般に、導電性ナノサイズ構造体を指し、その少なくとも1つの寸法(すなわち、幅又は直径)は500nm未満、より典型的には100nm又は50nm未満である。種々の実施形態においては、ナノ構造体の幅又は直径は、10から40nm、20から40nm、5から20nm、10から30nm、40から60nm、50から70nmの範囲である。
【0015】
長手方向的には、ナノ構造体は、長さが500nmを超え、又は1μmを超え、又は10μmを超える。種々の実施形態においては、ナノ構造体の長さは、5から30μmの範囲、又は15から50μm、25から75μm、30から60μm、40から80μm、若しくは50から100μmの範囲である。
【0016】
ナノ構造体は、任意の形状又は幾何形態のナノ構造体であってよい。所与のナノ構造体の幾何形態を定義する一方法は、ナノ構造体の長さと幅(又は直径)の比を指す、その「アスペクト比」による方法である。ある実施形態においては、ナノ構造体は、等方性形状(すなわち、アスペクト比=1)である。典型的な等方性又は実質的等方性ナノ構造体としてはナノ粒子が挙げられる。好ましい実施形態においては、ナノ構造体は異方性形状(すなわち、アスペクト比≠1)である。異方性ナノ構造体は、典型的には、その長さに沿った長軸を有する。例示的な異方性ナノ構造体としてはナノワイヤ(アスペクト比が少なくとも10、より典型的には少なくとも50の固体ナノ構造体)、ナノロッド(アスペクト比が10未満の固体ナノ構造体)及びナノチューブ(中空ナノ構造体)が挙げられる。
【0017】
ナノ構造体は、任意の導電性材料のナノ構造体であってよい。より典型的には、ナノ構造体は、元素金属(例えば、遷移金属)又は金属化合物(例えば、金属酸化物)を含めて、金属材料から形成される。金属材料は、2種類以上の金属を含むバイメタル材料又は金属アロイであってよい。適切な金属としては、銀、金、銅、ニッケル、金めっき銀、白金及びパラジウムが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0018】
種々の実施形態においては、ナノ構造体は銀ナノワイヤである。
【0019】
別の実施形態においては、ナノ構造体は金ナノチューブである。
【0020】
更なる実施形態においては、ナノ構造体は金めっき銀ナノワイヤである。
【0021】
本明細書に記載のインク組成物の形成に適したナノ構造体は、例えば、すべてがCambrios Technologies Corporationの名義で同時係属中の共同出願である米国特許出願第11/766,552号、同11/504822号及び同12/1062446号に記載の方法によって調製することができる。これらの出願を参考としてその全体を本明細書に援用する。
【0022】
更なる実施形態においては、インク組成物中のナノ構造体は、所定のサイズ分布を有し、このサイズ分布において、ナノ構造体集団全体のある割合(例えば、90%超)は、サイズ(長さ及び/又は幅)制限内にある。所与のナノ構造体集団におけるサイズ分布の制御を対象とするより詳細な説明は、Cambrios Technologies Corporationの名義で同時係属中の共同出願である米国特許出願第13/007,305号に記載されており、この出願を参考としてその全体を本明細書に援用する。
【0023】
種々の実施形態においては、ナノ構造体は、インク組成物中に約0.1〜0.5%(w/w)、0.5〜1%(w/w)、1〜5%(w/w)又は5〜10%(w/w)で存在する。好ましくは、ナノ構造体は、インク組成物中に約0.1(w/w)、1%(w/w)又は10%(w/w)で存在する。
【0024】
結合材料
ナノ構造体に加えて、インク組成物は、さらに、インク組成物の主成分である、極性溶媒に典型的には可溶性又は混和性である結合材料を含む。インク組成物から形成される導電膜においては、結合材料は、ナノ構造体同士を結合するのに役立ち、ナノ構造体と基体の接着を促進するのに役立つ。種々の実施形態においては、所与の結合材料の物理的特性は、導電膜の粘度、粘着性及び接着性に影響を及ぼし得る。ある状況(例えば、パターン形成)下では、導電膜中の(「結合剤」とも称される)結合材料は、さらに、硬化、架橋などの物理的又は化学的変換を受け得る。
【0025】
ある実施形態においては、結合材料は架橋性ポリマーである。本明細書では「架橋性ポリマー」又は「ポリマー」とは、感光性化合物(例えば、光開始剤)の存在下で、紫外(UV)領域(10〜400nm)又は可視領域(400〜750nm)の光照射に応じて、2個以上のポリマー鎖間で化学結合を形成する、実質的に線状のポリマーを指す。
【0026】
種々の実施形態によれば、架橋性ポリマーは、インク組成物に可溶性又は混和性であり、粘度調整剤としてある程度機能し、インクの粘度及びその中のナノ構造体の分散性を調節する。
【0027】
ポリマーの線状ポリマー鎖は光照射下で架橋することができる。ある実施形態においては、光照射によって、感光性化合物(例えば、光開始剤)は、高反応性種(例えば、ラジカル、陽イオン又は陰イオン)を放出する。初期の光照射から生成する反応性種は、ポリマー鎖中の反応性種の形成を誘発し、このことは、2個以上のポリマー鎖を橋架け又は架橋する化学結合の形成をもたらす。ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシ基、オレフィン基などの化学部分を含むポリマー鎖は、これらの基が遊離基反応しやすいので、又はその隣接原子(例えば、炭素)を遊離基反応しやすくすることができるので、感光性である。
【0028】
架橋性ポリマーの特定の化学構造に応じて、架橋プロセスは、少なくとも1種類の化学結合、すなわち、共有結合、イオン結合又は水素結合を形成する。架橋性ポリマーの特定の化学構造は、さらに、架橋度、すなわち、ポリマー鎖を架橋する形成結合数に影響を及ぼす。
【0029】
架橋プロセスは、典型的には、架橋性ポリマーの諸性質の改変を促進する。したがって、照射後、架橋性ポリマーは、架橋ポリマーに変換され、その諸性質は架橋性ポリマーとは異なる。特に、架橋ポリマーは、最初の線状ポリマー鎖の柔軟性のすべて又は一部を失う。さらに、架橋ポリマーは、線状架橋性ポリマーに比べて所与の溶媒への可溶性がかなり低い。線状ポリマーとは異なり得る架橋性ポリマーの別の諸性質としては、例えば、高い粘度及び接着性が挙げられる。
【0030】
ある実施形態においては、適切な架橋性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルエチルセルロースなどのヒドロキシル含有又はカルボキシ含有セルロースポリマーであり得る。
【0031】
別の実施形態においては、適切な架橋性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、陰イオン性高分子電解質及び陽イオン性高分子電解質(すなわち、ポリアクリル酸のナトリウム塩などの荷電水溶性ポリマー)、並びにポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)を含むが、ただしこれらに限定されない親水性ポリマーであり得る。
【0032】
好ましい一実施形態においては、架橋性ポリマーはPVPである。典型的には、PVPの分子量は50,000から2,000,000ダルトンの範囲である。本明細書に記載のインク組成物に適したPVPとしては、例えば、BASF(ドイツ)から市販されているLUVITEC(登録商標)Kが挙げられる。
【0033】
更なる好ましい一実施形態においては、架橋性ポリマーはHPMCである。典型的には、HPMCの分子量は120,000ダルトンの範囲である。本明細書に記載のインク組成物に適したHPMCとしては、例えば、Dow Chemicalsから市販されているMETHOCEL311(登録商標)が挙げられ、場合によっては、同時係属中の共同出願である米国特許出願第12/773,734号に記載の方法によって精製することができる。その出願を参考としてその全体を本明細書に援用する。
【0034】
架橋性ポリマーは、一条件下では架橋可能であり得るが、別の条件下では架橋できないこともあることを理解すべきである。
【0035】
種々の実施形態においては、架橋性ポリマーは、インク組成物中に約0.1〜0.5%(w/w)、0.5〜1%(w/w)、1〜5%(w/w)又は5〜10%(w/w)で存在する。好ましくは、架橋性ポリマーは、インク組成物中に約0.1(w/w)、1%(w/w)又は10%(w/w)で存在する。
【0036】
感光性化合物
本明細書では「感光性化合物」とは、(UV領域又は可視領域)の光を吸収すると、急速な光化学反応を経て、遊離基、荷電種(陽イオン又は陰イオン)などの高反応性種を生成する化学物質を指す。典型的には、感光性化合物は、1個以上の感光性結合を含む。感光性結合は、UV−VIS光に曝露されると高反応性又は不安定である。さらに、本明細書に記載のインク組成物に適した感光性化合物は、インク組成物に可溶性又は混和性であり、すなわち、本明細書に記載のように極性溶媒に可溶性である。
【0037】
ある実施形態においては、感光性化合物は、結合剤材料(例えば、架橋性ポリマー)において反応性種の更なる形成を誘発することができる反応性種を生成し、ポリマー鎖間の化学結合の形成を引き起こすので、「光開始剤」とも称される。したがって、感光性透明導体は、フォトレジストパターン形成と同様にパターン形成することができる。例えば、光照射に曝露された透明導体領域の結合剤材料(例えば、架橋性ポリマー)は、架橋ポリマーを形成するが、非曝露領域の結合剤材料は、その中に包埋されたナノワイヤと一緒に除去することができる。したがって、光照射後の透明導体中の潜像は、溶液相において現像されて、ナノ構造体が架橋ポリマーに包埋された導電性領域、及びナノ構造体のない非導電性領域を得ることができる。
【0038】
適切な光開始剤としては、例えば、参考としてその全体を本明細書に援用する国際公開第2007/044184号に記載の水溶性ベンゾイルフェニルカルボキシラート化合物が挙げられる。
【0039】
別の適切な光開始剤としては、和光純薬工業株式会社(日本)から市販されているものを含めて、アゾ型水溶性光開始剤が挙げられる。一例は4,4’−ジアジド−2,2’−スチルベンジスルホン酸二ナトリウム塩である。
【0040】
好ましい光開始剤は、IRGACURE(登録商標)754、すなわち、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル(Ciba Specialty Chemicals、NY、USA、BASFの一部)である。
【0041】
種々の実施形態においては、光開始剤は、インク組成物中に約0.005〜0.01%(w/w)、0.01〜0.05%(w/w)、0.05〜0.1%(w/w)、0.1〜0.5%(w/w)、0.5〜1%(w/w)で存在する。好ましくは、光開始剤は、インク組成物中に約0.01%(w/w)、0.1%(w/w)又は1%(w/w)で存在する。
【0042】
別の実施形態においては、感光性化合物は、結合剤材料又はナノ構造体に対して明白な効果なしに第1の温度で光分解を受ける。しかし、かかる感光性化合物は、第2のより高い温度で熱的に分解されて、腐食性の分解生成物を生成し、ナノ構造体に損傷を与え得る。
【0043】
本明細書で更に詳細に考察するように、熱活性化可能な感光性化合物を含む透明導体は、光照射及び熱に順次曝露することによってパターン形成することができる。その結果、(例えば、マスクの開口部を通して)光照射に曝露された領域の感光性化合物は、結合剤材料又はナノワイヤに影響を及ぼさずに、分解又は自然崩壊する。その後の暗所での熱処理においては、前もってマスクされた領域の感光性化合物は、熱によって活性化され、それによって熱分解生成物は、ナノワイヤを効果的にエッチングするか又は損傷を与え、マスク領域におけるより高い抵抗性をもたらす。非マスク領域の抵抗性は、他方では、初期光照射がその中の熱活性化可能な感光性化合物を破壊するので、影響されないままである。
【0044】
種々の実施形態においては、熱活性化可能な感光性化合物としては、陽イオン性感光性化合物又は陰イオン性感光性化合物が挙げられる。特に、陽イオン性感光性化合物は、化学的に増幅されたフォトレジストと一般に併用される光酸発生剤(photo acid generator)を含む。Moon S.Y.et al.,Journal of Polymer Science:Part C:Photochemistry Reviews,(8):157−173,(2007)。これらの感光性化合物は、典型的には、極性溶媒に可溶性であり、光照射によって酸(陽イオン)に分解する。生成する酸は、一般に、金属ナノ構造体に損傷を与えるほどにも、結合剤材料を架橋するほどにも十分に濃縮されない。他方、光照射の非存在下で加熱すると、本開示の光酸発生剤は、金属ナノ構造体に損傷を与え得る腐食性分解生成物に分解し、それによって個々のナノ構造体の導電率、及びナノ構造体同士の相互接続性を低下させる。
【0045】
例示的な陽イオン性感光性化合物としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾニウム塩などのオニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。参考としてその全体を援用する、Crivello J.V.,Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,(37):4241−4254,(1999)。
【0046】
ジアリールヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム陽イオンと対イオンを含む。典型的には、ジアリール部分はジフェニル、ジナフチル又はフェニルナフチルであり、フェニル又はナフチル部分は、アルキル、アリール、ハロゲン、アルコキシ、カルボキシなどで場合によっては置換することができる。対イオンは、塩化物イオン、硝酸イオン、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロアルセナート又はヘキサフルオロアンチモナートであってよい。好ましい光酸発生剤は、ジフェニルヨードニウムニトラート(DPIN)である。追加の例示的なジアリールヨードニウム塩としては、例えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホナート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホナート,ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフラート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホナート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホナート及びジフェニルヨードニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホナートが挙げられる。
【0047】
トリアリールスルホニウム塩は、トリアリールスルホニウム陽イオンと対イオンを含む。典型的には、トリアリール部分は、トリフェニル、トリナフチル、ジフェニルナフチル又はフェニル−ジナフチルであり、フェニル又はナフチル部分はアルキル、アリール、ハロゲン、アルコキシ、カルボキシなどで場合によっては置換することができる。対イオンは、塩化物イオン、硝酸イオン、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロアルセナート又はヘキサフルオロアンチモナートであってよい。例示的なトリアリールスルホニウム塩としては、例えば、(4−ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−クロロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフラート、(4−フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(tert−ブトキシカルボニルメトキシナフチル)−ジフェニルスルホニウムトリフラート、1−ナフチルジフェニルスルホニウムトリフラート、boc−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフラート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフラート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホナート及びトリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフラートが挙げられる。
【0048】
上記ジアリールヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩に加えて、別の例示的な陽イオン性感光性化合物としては、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、N−ヒドロキシナフタルイミドトリフラート及びN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドペルフルオロ−1−ブタンスルホナートが挙げられる。本明細書に記載の陽イオン性感光性化合物のすべてはSigma−Aldrich(登録商標)(St.Louis、MO)から市販されている。
【0049】
極性溶媒
インク組成物の大部分は、極性溶媒から構成される。極性溶媒は、インクの構成要素を可溶化し、ナノ構造体が凝集するのを防止する。本明細書では「極性溶媒」とは、Snyder極性指数が少なくとも4である流体を指す。Snyder極性指数は、溶媒と種々の極性試験溶質の相互作用度の相対尺度である。(参考として本明細書に援用するSnyder L.R.“Classification of the Solvent Properties of Common Liquids,”Journal of Chromatography Science,16:223,(1978)を参照されたい)。
【0050】
種々の実施形態においては、極性溶媒は、酸素、窒素などの電気陰性原子に結合した水素原子を含む化学物質である、プロトン性溶媒である。したがって、プロトン性溶媒は、典型的にはヒドロキシル基及び/又はアミノ基を含む。
【0051】
好ましい実施形態においては、極性溶媒は少なくとも1個のヒドロキシル基を含む。なお、「一価極性溶媒」とは、単一ヒドロキシル基を含む(本明細書に定義された)極性溶媒を指し、「多価極性溶媒」とは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む(本明細書に定義された)極性溶媒(例えば、グリコール)を指す。
【0052】
種々の実施形態においては、極性溶媒の沸点は、250℃以下、典型的には200℃以下、より典型的には150℃以下である。
【0053】
適切な極性溶媒としては、例えば、水、ならびにメタノール、エタノール、n−プロパノール、プロパン−2−ジオール及びグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、2−ブテン−1,4−ジオールなどのような一価及び多価アルコール、又は2種類以上のかかるグリコールの混合物が挙げられる。
【0054】
ある実施形態においては、適切な極性溶媒は、少なくとも1個のヒドロキシル基が依然として残る限り、1個以上のエーテル部分で更に修飾された多価アルコールであってもよい。これらの極性溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGME)、プロパン−1,3−ジオールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0055】
任意に選択される成分
上記成分に加えて、インク組成物は、界面活性剤、及び1種類以上の共溶媒を含めて、任意に選択される成分を更に含むことができる。
【0056】
典型的な界面活性剤は、エトキシラート、アルコキシラート、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド並びにそのコポリマー、スルホナート、スルファート、ジスルホン酸塩、スルホスクシナート、リン酸エステル、フッ素系界面活性剤(例えば、DuPontのZonyl(登録商標))などである。一実施形態においては、界面活性剤は、インク組成物の総重量の約0.01%で存在する。
【0057】
適切な界面活性剤の代表例としては、ZONYL(登録商標)FSN、ZONYL(登録商標)FSO、ZONYL(登録商標)FSA、ZONYL(登録商標)FSH(DuPont Chemicals、Wilmington、DE)を含めたZONYL(登録商標)界面活性剤、NOVEC(商標)(3M、St.Paul、MN)などのフッ素系界面活性剤が挙げられる。別の例示的な界面活性剤としては、アルキルフェノールエトキシラート系非イオン界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤としては、例えば、TRITON(商標)(X−100、X−114、X−45)などのオクチルフェノールエトキシラート、及びTERGITOL(商標)(Dow Chemical Company、Midland MI)などのノニルフェノールエトキシラートが挙げられる。更なる例示的な非イオン界面活性剤としては、DYNOL(登録商標)(604、607)(Air Products and Chemicals,Inc.、Allentown、PA)などのアセチレン系界面活性剤、及びn−ドデシルβ−D−マルトシドが挙げられる。
【0058】
共溶媒は、本明細書に記載のように、第2の極性溶媒であってもよい。例えば、種々の実施形態においては、インク組成物は、水とPGMEの両方、又はPGMEとメタノールの両方を含む。
【0059】
インク組成物
インク組成物は、本明細書に記載の成分を所定の比で組み合わせる。所定の比は、使用する基体及び堆積方法に応じて変わり得る。
【0060】
種々の実施形態においては、架橋性ポリマーとナノ構造体(例えば、金属ナノワイヤ)の比は、好ましくは約5から約0.000625の範囲、より典型的には約1であり、光開始剤と架橋性ポリマーの比は約0.01から0.1である。
【0061】
インク組成物の粘度は、典型的には、1〜1000cPの範囲である。好ましい粘度範囲は、(例えば、スピンコーティングの場合)約1から100cPである。
【0062】
別の種々の実施形態においては、インク組成物は、以下の成分を(インク組成物の総重量の重量百分率で)含む。
【0063】
金属ナノワイヤ:0.1%から1%、又は1%から10%
結合剤材料:0.1%から1%、又は1%から10%
感光性化合物:0.01%から0.1%、又は0.1%から1%
界面活性剤:0%〜0.001%、又は0.01%から0.1%
金属ナノワイヤを堆積させるための典型的なインク組成物は、重量で、界面活性剤0.0025%から0.1%(例えば、好ましい範囲は、ZONYL(登録商標)FSO−100の場合に0.0025%から0.05%であるか、又はTriton(商標)X−100の場合に0.005%から0.025%である)、架橋性ポリマー0.02%から4%(例えば、好ましい範囲は、HPMCの場合0.02%から0.5%)、金属ナノワイヤ0.01から1.5%、光開始剤0.005から0.5%、及び極性溶媒94.5%から99.0%を含む。
【0064】
ある実施形態は、上記実施形態の各々において、ナノ構造体が金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)であることを規定する。
【0065】
一実施形態は、複数のナノ構造体、HPMCを含む架橋性ポリマー、光開始剤、水、及び場合によってはPGMEを含む、インク組成物を提供する。より具体的には、ナノ構造体は銀ナノワイヤである。
【0066】
一実施形態においては、インク組成物は、IRGACURE(登録商標)754 12mg、PGME 5g、並びに銀ナノワイヤ0.38%〜0.4%、HPMC0.4%、TRITON(商標)X−100 0.0025%及び水を含む配合物5gを含む。
【0067】
更なる一実施形態は、複数のナノ構造体、PVPを含む架橋性ポリマー、光開始剤、水、及び場合によってはPGMEを含む、インク組成物を提供する。より具体的には、ナノ構造体は銀ナノワイヤである。
【0068】
一実施形態においては、インク組成物は、重量百分率で、IRGACURE(登録商標)754 0.1%、PVP(MW=1,300,000)1%、銀ナノワイヤ0.5%、PGME85%及び水14%を含む。
【0069】
別の一実施形態においては、インク組成物は、重量百分率で、ジフェニルヨードニウムニトラート0.4%、HPMC0.4%、銀ナノワイヤ0.2%、TRITON(商標)X−100 100ppm及び水を含む。
【0070】
薄膜形成
インク組成物を、例えば、同時係属中の米国特許出願第11/504,822号に記載の方法によって、基体上に堆積させることができる。
【0071】
したがって、インク組成物を基体に堆積させる工程(インク組成物は、複数のナノ構造体、架橋性ポリマー、光開始剤、及び極性溶媒を含む)、及び溶媒を乾燥させる工程を包含する方法が本明細書に記載される。
【0072】
スピンコーティングは、均一膜を基体上に堆積させる典型的な技術である。充填量、回転速度及び時間を制御することによって、種々の厚さの薄膜を形成することができる。懸濁流体の粘度及び剪断挙動、並びにナノワイヤ間の相互作用が、堆積したナノワイヤの分布及び相互接続性に影響を及ぼし得ることが理解される。
【0073】
例えば、本明細書に記載のインク組成物は、ガラス基体上に400〜2000rpmの速度で60秒間、加速度1000rpm/秒でスピンコートすることができる。薄膜は、さらに、50℃90秒及び140℃90秒の焼付けを含めて、ある後処理に供することができる。加熱を伴うか又は非加熱の圧力処理を更に利用して、最終膜仕様を調節することができる。
【0074】
当業者には理解されるように、他の堆積技術、例えば、狭い流路によって計量された沈降流動、ダイ流動、傾斜上の流動、スリットコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ビーズコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティングなどを使用することができる。印刷技術を使用して、パターンを用いても用いなくても、インク組成物を基体に直接印刷することもできる。例えば、インクジェット、フレキソ印刷及びスクリーン印刷を使用することができる。
【0075】
基体は、その上にナノワイヤが堆積する任意の材料であってよい。基体は、剛直でも柔軟でもよい。好ましくは、基体も光学的に透明であり、すなわち、材料の光透過率は可視領域(400nm〜700nm)で少なくとも80%である。
【0076】
剛直基体の例としては、ガラス、ポリカルボナート、アクリルなどが挙げられる。特に、無アルカリガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、低アルカリガラス、ゼロ膨張ガラス−セラミックなどの特殊ガラスを使用することができる。特殊ガラスは、液晶ディスプレイ(LCD)を含めた薄いパネルディスプレイシステムに特に適している。
【0077】
柔軟な基体の例としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエステルナフタラート及びポリカルボナート)、ポリオレフィン(例えば、線状、分枝及び環式ポリオレフィン)、ポリビニル(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリアクリラートなど)、セルロースエステルベース(例えば、三酢酸セルロース、酢酸セルロース)、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン、ポリイミド、シリコーン及び他の従来の高分子膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
乾燥は、風乾、窒素パージ下での乾燥、又は乾燥機での焼付けによって実施することができる。本明細書に記載の極性溶媒は、容易に除去することができるように比較的低沸点(例えば、250℃以下)である。典型的には、140℃以下の乾燥(例えば、焼付け)は、溶媒除去及び膜形成を促進するのに十分である。
【0079】
こうして形成された薄膜は導電性であり、この薄膜中で、1個以上の導電経路がナノ構造体同士の連続物理的接触によって確立される。
【0080】
導電膜の導電率は、「膜抵抗」、「抵抗率」又は「シート抵抗」によって測定されることが多く、Ω/sq(又は「Ω/□」)で表される。膜抵抗は、少なくとも表面充填密度、ナノ構造体のサイズ/形状、及びナノ構造体構成要素固有の電気的性質の関数である。本明細書では、薄膜は、10Ω/□以下のシート抵抗を有する場合に導電性とみなされる。好ましくは、シート抵抗は10Ω/□、3,000Ω/□、1,000Ω/□若しくは350Ω/□以下、又は100Ω/□以下である。典型的には、金属ナノ構造体で形成された導電性ネットワークのシート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、又は100Ω/□から250Ω/□、又は10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、又は1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0081】
光学的に、ナノ構造体に基づく透明導体は、可視領域(400〜700nm)で高い光透過率を有する。典型的には、透明導体は、光透過率が可視領域において85%を超えると光学的に透明とみなされる。より典型的には、光透過率は、90%を超え、又は93%を超え、又は95%を超える。
【0082】
曇価は、光学的透明性の別の指標である。曇価は、バルクと表面の両方の粗さ効果による光散乱及び反射/屈折に起因すると一般に認識されている。種々の実施形態においては、透明導電体の曇価は、10%以下、8%以下、5%以下又は1%以下である。
【0083】
したがって、一実施形態は、複数の相互接続性ナノ構造体、結合剤材料(例えば、架橋性ポリマー)、及び感光性化合物を含む、導電性薄膜を提供する。更なる実施形態においては、導電性薄膜は、光透過率が85%を超え、シート抵抗が1000Ω/□以下である。種々の別の実施形態は、シート抵抗が750Ω/□以下、500Ω/□以下、400Ω/□以下、200Ω/□以下、又は100Ω/□以下の導電性薄膜を対象とする。
【0084】
光パターン形成
1.溶剤現像
ある実施形態においては、本明細書に記載の感光性薄膜は、直接的に光パターン形成することができる。典型的には、薄膜は、結合剤材料(例えば、架橋性ポリマー)を光照射によって架橋することができる光開始剤を含む。より具体的には、図1Aに示すように、薄膜10の形成後、マスク20を使用して、マスクの1個以上の開口部又は孔30に従って薄膜上にパターンを画定する。したがって、薄膜10は、マスク領域と非マスク領域に画定され、それによって非マスク領域はマスクの1個以上の開口部30に対応する。その後、図1Bに示すように、薄膜をUV光源に曝露して、非マスク領域40の架橋性ポリマーのみを架橋する。ポリマーが架橋しないマスク領域50を溶解させ(例えば、膜現像)、ナノワイヤを除去することができる。したがって、膜現像によって、マスクの開口部30に対応した導電性領域40のパターンが現れる。
【0085】
したがって、一実施形態は、インク組成物を基体に堆積させることによって相互接続性導電性ナノ構造体の薄膜を基体上に形成する工程(インク組成物は、複数の導電性ナノ構造体、架橋性ポリマー、光開始剤、及び極性溶媒を含む)、及び極性溶媒を除去する工程、並びに薄膜の一部をUV光源に曝露して、薄膜の曝露部分の架橋性ポリマーを架橋する工程を包含する方法を提供する。
【0086】
更なる一実施形態においては、インク組成物を基体に堆積させることによって相互接続性導電性ナノ構造体の薄膜を基体上に形成する工程(インク組成物は、複数の導電性ナノ構造体、架橋性ポリマー、光開始剤、及び極性溶媒を含む)、及び極性溶媒を除去する工程、薄膜上にマスクを配置する工程(マスクは、開口部を含み、下にある薄膜をマスク領域と非マスク領域に画定し、非マスク領域は開口部に対応する)、薄膜をマスクの開口部を通してUV光源に曝露して、非マスク領域の架橋性ポリマーを架橋する工程、及び薄膜のマスク領域を溶解させて、マスクの開口部に対応したパターンの導電性領域を生成する工程を包含する方法が本明細書に記載される。
【0087】
種々の実施形態においては、ナノ構造体は銀ナノワイヤであり、架橋性ポリマーはPVP又はHPMCである。
【0088】
UV曝露は典型的には約3〜5秒である(例えば、Fusion UV Systems)。UV曝露後、薄膜は、極性溶媒で洗浄することによって現像することができる。極性溶媒は、典型的にはインク組成物と同じ極性溶媒(例えば、水)である。場合によっては、極性溶媒を加熱して、マスク領域の薄膜溶解を促進することができる。
【0089】
非マスク領域、すなわち、導電性領域は、相互接続された銀ナノワイヤ及び架橋ポリマー(例えば、架橋PVP)を含む。光学的及び電気的性質は、当該技術分野において公知の方法によって評価することができる。
【0090】
したがって、更なる実施形態においては、パターン形成導電膜が提供される。一実施形態は、第1の領域と第2の領域を含み、第1の領域の架橋性ポリマーが架橋し、第2の領域の架橋性ポリマーが除去された、パターン形成導電膜を提供する。更なる一実施形態においては、第1の領域は第2の領域よりも導電性である。
【0091】
2.熱現像
別の実施形態においては、本明細書に記載の感光性薄膜は、光照射及び熱に順次曝露することによって、直接的に光パターン形成することができる。典型的には、薄膜は、光分解性及び熱活性化可能な感光性化合物を含む。
【0092】
より具体的には、図2に示すように、透明導体100は、基体110上に薄膜120をスピンコーティングすることによってまず形成される。薄膜120は、相互接続性金属ナノ構造体、結合剤材料及び熱活性化可能な感光性化合物を含む。マスク130は、透明導体100上に配置され、光照射に第1の温度で曝露される。潜像が形成され、非マスク領域140とマスク領域150によって画定される。非マスク領域140においては、感光性化合物は、相互接続性金属ナノ構造体又は結合剤材料の構造上の完全性に影響を及ぼすことなく、破壊される。マスク領域150においては、感光性化合物が残る。その後、感光性化合物を暗所で第2の温度で熱的に活性化し、それによって感光性化合物が熱的に分解し、1種類以上の分解生成物がマスク領域150のナノ構造体に損傷を与え、その結果非マスク領域140よりも低導電性の領域160が生成することによって、光照射の潜像を熱的に現像する。
【0093】
熱分解した感光性化合物がナノ構造体に及ぼす損傷度は、第2の温度、第2の温度における熱活性化の継続時間、及び感光性化合物の種類を含めて、幾つかの因子に関連し得る。典型的には、第2の温度は第1の温度よりも高い。
【0094】
有利には、ナノ構造体は除去されないが単に導電性をより低くされるだけなので、導電性領域140及び低導電性領域160の光透過率及び曇価は実質的に均一である。かかる不可視又は低視感度パターンは、タッチスクリーン及びフラットパネルディスプレイを含めて、透明導体の多数の適用例において望ましい。
【0095】
したがって、一実施形態は、インク組成物を基体に堆積させることによって相互接続性導電性ナノ構造体の薄膜を基体上に形成する工程(インク組成物は、複数の導電性ナノ構造体、結合剤材料、熱活性化可能な感光性化合物、及び極性溶媒を含む)、及び極性溶媒を除去する工程、並びに薄膜上にマスクを配置する工程(マスクは、開口部を含み、薄膜をマスク領域と非マスク領域に画定し、非マスク領域は開口部に対応する)、薄膜をUV光源にマスクの開口部を通して第1の温度で曝露して非マスク領域の感光性化合物の光分解を引き起こす工程、及び薄膜を熱源に暗所で第2の温度で曝露してマスク領域の感光性化合物の熱分解を引き起こす工程を包含する方法を提供する。
【0096】
更なる実施形態においては、非マスク領域のナノ構造体は、UV照射後に同様に導電性であり、ナノ構造体に損傷を与えることなく感光性化合物が破壊されたことを示す。別の実施形態においては、熱活性化後、マスク領域のナノ構造体は、感光性化合物の熱分解生成物によって損傷を受け、その結果、マスク領域の薄膜は非マスク領域よりも低導電性である。
【0097】
更なる一実施形態においては、マスク領域と非マスク領域は、パターンが不可視又は低視感度であるように、実質的に同じ光学的外観を有する。種々の実施形態においては、それぞれの領域の光透過率の差は、10%又は8%又は5%又は3%以下である。同様に、それぞれの領域の曇価の差は、10%又は8%又は5%又は3%以下である。
【0098】
したがって、更なる実施形態においては、パターン形成導電膜が提供される。一実施形態は、第1の領域と第2の領域を含むパターン形成導電膜であって、第1の領域の熱活性化可能な感光性化合物が光分解され、第2の領域の熱活性化可能な感光性化合物が熱分解された、パターン形成導電膜を提供する。更なる一実施形態においては、第1の領域は第2の領域よりも導電性である。
【0099】
本明細書に記載の種々の実施形態を以下の非限定的例によって更に説明する。
【実施例】
【0100】
実施例1
銀ナノワイヤの標準合成
ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)の存在下でエチレングリコールに溶解させた硝酸銀の還元によって銀ナノワイヤを合成した。方法は、例えば、Y.Sun,B.Gates,B.Mayers,&Y.Xia,”Crystalline silver nanowires by soft solution processing”,Nanolett,2(2):165−168,(2002)に記載されている。均一な銀ナノワイヤは、遠心分離又は他の公知の方法によって選択的に単離することができる。
【0101】
あるいは、適切なイオン添加剤(例えば、塩化テトラブチルアンモニウム)を上記反応混合物に添加することによって、実質的に均一な銀ナノワイヤを直接合成することができる。こうして製造された銀ナノワイヤは、サイズ選択の別のステップなしに、直接使用することができる。この合成は、出願人の共同所有された同時係属中の米国特許出願第11/766,552号により詳細に記述されており、その出願を本明細書にその全体を援用する。
【0102】
合成は、窒素パージ下で、周囲光中で(標準)、又は生成した銀ナノワイヤの光分解を最小化する暗所で、実施することができる。
【0103】
実施例2
薄膜の調製−PVP
重量百分率で、IRGACURE(登録商標)754 0.1%、PVP(MW=1,300,000)1%、銀ナノワイヤ0.5%、PGME85%及び水14%を混合して、感光性インク組成物を調製した。インク組成物を2×2インチスライドガラスにスピンコートした。溶媒を風乾させた。
【0104】
実施例3
薄膜の調製−HPMC
IRGACURE(登録商標)754 12mg、PGME 5g、並びに銀ナノワイヤ0.38%〜0.4%、HPMC0.4%、TRITON(商標)X−100 0.0025%及び水を含む配合物5gを混合して、感光性インク組成物を調製した。
【0105】
インク組成物(5ml)を6×6インチスライドガラスに500rpmで60秒間スピンコートした。溶媒を38℃で60秒間風乾させた。
【0106】
実施例4
直接光パターン形成−溶剤現像
実施例3の薄膜をガラス基体上に形成した。マスクを薄膜上に配置した。マスクは下にある薄膜をマスク領域と(マスクの開口部に対応する)非マスク領域に画定した。次いで、薄膜をUV光源(Fusion UV Systems)に約3〜5秒間曝露して、薄膜の曝露領域の架橋性ポリマーを架橋した。薄膜のマスク領域では架橋は起こらない。曝露後、水で洗浄し、それによって薄膜のマスク領域を溶解させ、ナノワイヤを除去することによって、薄膜を現像した。次いで、薄膜を窒素雰囲気で乾燥させ、180℃で90秒間焼付けした。
【0107】
パターン形成薄膜においては、ナノワイヤは、4点プローブによって約150Ω/□のシート抵抗を示した非マスク導電性領域において無傷であった。マスク領域は非導電性であり、薄膜のマスク領域のナノワイヤの実質的にすべてが膜現像中に洗浄除去された。
【0108】
実施例5
感光性化合物の熱及び光分解
1.感光性化合物のない標準インク配合物
銀ナノワイヤ0.2%及びTRITON(商標)X−100 100ppmを含む水中の0.4%HPMCの標準インク配合物を調製した。HPMC結合剤中の銀ナノワイヤの透明導電性薄膜を、インク配合物を2×2ガラス基体に3000rpm/60秒でスピンコートすることによって作製した。次いで、膜を140℃で60秒間焼付けした。図3Aは、薄膜中の相互接続性銀ナノワイヤのTEM画像を示す。感光性化合物のないこの薄膜を対照膜(1)として使用した。
【0109】
2.熱活性化可能な感光性化合物による薄膜の熱分解
ジフェニルヨードニウムニトラート(DPIN)40mgを水0.5gとアセトン0.5gに溶解させて、溶液を調製した。その後、DPIN溶液0.5gを上記標準インク配合物5gに添加した。銀ナノワイヤ、HPMC及びDPINを含む生成インクを3000rpmで60秒間暗所で回転させて、感光性薄膜(2)を形成した。次いで、膜を140℃で90秒間ホットプレート上で暗所で焼付けした。
【0110】
図3B(拡大率100×、暗視野)によれば、銀ナノワイヤは所々破損して見えた。DPINの暗所熱分解が銀ナノワイヤの構造上の損傷の原因であり、導電率の低下及び曇価のわずかな増加をもたらしたと推測され得る(例えば、表1を参照されたい)。
【0111】
3.熱活性化可能な感光性化合物の光分解
ジフェニルヨードニウムニトラート(DPIN)40mgを水0.5gとアセトン0.5gに溶解させて、溶液を調製した。その後、DPIN溶液0.5gを上記標準インク配合物5gに添加した。銀ナノワイヤ、HPMC及びDPINを含む生成インクを3000rpmで60秒間暗所で回転させて、感光性薄膜(3)を形成した。次いで、膜を10フィート/分で動くFusion硬化システム上でUV照射に曝露し、続いて140℃で90秒間ホットプレート上で焼付けした。生成した膜は、銀ナノワイヤが無傷のように見えた(図3C)。したがって、DPINは、銀ナノワイヤに構造上の損傷を与えずにUV照射によって完全に破壊され、その結果、140℃における更なる焼付けは、銀ナノワイヤに損傷を与え得る熱分解生成物を生成しなかったと推測され得る。
【0112】
表1にそれぞれ図3A、3B及び3Cに対応する薄膜(1)、(2)及び(3)の光学的及び電気的性質を要約する。示したように、図3Aの対照膜に比べて、熱処理を受けた感光膜(図3B)は、1種類以上の熱分解生成物によるナノワイヤへの構造上の損傷の結果として、抵抗が著しく高かった。それに対して、熱処理前に光照射を受けた感光膜(図3C)は、対照膜に比べて抵抗の増加が極めて小さかった。これらの膜の光学的及び電気的性質は、その構造上の特性と一致していることが示された。
【0113】
【表1】

実施例6
ジフェニルヨードニウムニトラート(DPIN)40mgを水0.5gとアセトン0.5gに溶解させて、溶液を調製した。その後、DPIN溶液0.5gを実施例5に記載の標準インク配合物5gに添加した。銀ナノワイヤ、HPMC及びDPINを含む生成インクを3000rpmで60秒間暗所で回転させて、感光性薄膜(4)を形成した。次いで、薄膜を100℃で90秒間ホットプレート上で暗所で焼付けした。
【0114】
表2は、薄膜(4)の光学的及び電気的性質、並びに対照膜(1)及び薄膜(2)のそれを示す。
【0115】
【表2】

示したように、同じ感光性化合物、及び熱処理の継続時間を考慮すれば、熱処理温度は、銀ナノワイヤの構造上の損傷度と相関する。温度が高いほど、ナノワイヤの損傷が激しい。したがって、DPINの熱分解、及び銀ナノワイヤの損傷が著しい程度で起こるには、特定のしきい値温度が必要であり得る。
【0116】
実施例7
ジフェニルヨードニウムトリフラート(DPITf)40mgを水0.5gとアセトン0.5gに溶解させて、溶液を調製した。その後、DPITf溶液0.5gを実施例5に記載の標準インク配合物5gに添加した。銀ナノワイヤ、HPMC及びDPITfを含む生成インクを3000rpmで60秒間暗所で回転させて、感光性薄膜(5)を形成した。
【0117】
さらに、感光性薄膜(6)も調製し、次いで、それを10フィート/分で動くFusion硬化システム上でUV照射に3回曝露し、続いて160℃で90秒間ホットプレート上で焼付けした。
【0118】
表3は、薄膜(5)及び(6)の光学的及び電気的性質、並びに対照膜(1)及び薄膜(2)のそれを示す。
【0119】
【表3】

DPITfを含む薄膜は、DPINを含む薄膜に類似した熱及び光分解挙動を示した。すなわち、薄膜(5)の抵抗の増加によって示されるように、DPITfは暗所で熱的に分解し、ナノワイヤに損傷を与えた。しかし、DPITfは、わずかに高い温度でも熱曝露によって絶縁膜を生成することにおいてDPINよりも効率が良くないと思われた。
【0120】
さらに、DPIN同様、DPITfは光分解を受け、おそらく完全に破壊されて、その結果、ナノワイヤに損傷を与えるのに十分な熱分解生成物を後続の熱処理は生成しなかった。
【0121】
実施例8
熱現像による低視感度パターン形成
ジフェニルヨードニウムニトラートDPIN40mgを水0.5gとアセトン0.5gに溶解させて、溶液を作製した。その後、DPIN溶液0.5gを、銀ナノワイヤ0.3%、HPMC0.3%及びTRITON(商標)X−100 100ppmを含むインク配合物5gに添加した。生成した混合物を1000rpmで60秒間暗所で回転させ、40℃で30秒間暗所で短時間乾燥させて、感光性薄膜(7)を作製した。フォトマスクを薄膜(7)に適用し、そのアセンブリをFusionシステム上で3フィート/分でUV照射に曝露した。フォトマスクを除去し、次いで膜を140℃で90秒間ホットプレート上で暗所で焼付けした。生成した膜は、曝露領域と非曝露領域のわずかな曇り度の差(例えば、10%未満の差)を示した。曝露領域の導電率は約40Ω/sqであるのに対し、非曝露領域は絶縁性であり、したがって低視感度パターンが現像ステップとして熱のみを使用して生成可能であることを実証した。
【0122】
実施例9
透明導体の光学的及び電気的性質の評価
本明細書に記載の方法によって調製された透明導電膜を評価して、その光学的及び電気的性質を確定した。
【0123】
光透過率データは、ASTM D1003の方法によって得た。曇価をBYK Gardner Haze−gard Plusを用いて測定した。シート抵抗をFluke 175 True RMS Multimeter又は非接触抵抗計Delcomモデル717Bコンダクタンスモニターを使用して測定した。より典型的な装置は、(例えば、Keithley Instrumentsによる)抵抗測定用4点プローブシステムである。
【0124】
裸基体の曇価及び透過率(例えば、ガラスの場合、曇価0.04%及び透過率93.4%)は、典型的には測定値に含まれた。
【0125】
ナノワイヤの相互接続性、及び基体の面積被覆率は、光学又は走査型電子顕微鏡下で観察することもできる。
【0126】
本明細書で参照され、かつ/又は出願データシートに列挙された、上記米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物のすべてを参考としてその全体を本明細書に援用する。
【0127】
上記のことから、本発明の特定の実施形態を例示のために本明細書に記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに種々の改変を成し得ることが理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外は限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性ナノ構造体と、
結合材料と、
感光性化合物と、
極性溶媒と
を含む、インク組成物。
【請求項2】
前記結合材料が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、陰イオン性高分子電解質及び陽イオン性高分子電解質、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、並びにカルボキシメチルエチルセルロースからなる群から選択される架橋性ポリマーである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記架橋性ポリマーがポリビニルピロリドンである、請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記架橋性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項2に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記感光性化合物がIRGACURE(登録商標)754である、請求項1から4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記感光性化合物がオニウム塩である、請求項1から4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記極性溶媒が極性指数が少なくとも4のプロトン性溶媒である、請求項1から6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記極性溶媒が水、一価アルコール又は多価アルコールである、請求項7に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記極性溶媒がポリプロピレングリコールモノメチルエーテルである、請求項8に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記導電性ナノ構造体が金属ナノワイヤである、請求項1から9のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤである、請求項10に記載のインク組成物。
【請求項12】
前記金属ナノワイヤが長さ10μm超であり、直径100nm未満である、請求項11に記載のインク組成物。
【請求項13】
界面活性剤を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項14】
共溶媒を更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項15】
前記共溶媒が極性溶媒である、請求項14に記載のインク組成物。
【請求項16】
前記結合材料と前記ナノ構造体の重量比が約0.1:1から約10:1である、請求項1から15のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項17】
粘度が約1から1000cPの間である、請求項1から15のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項18】
インク組成物を基体に堆積させることによって相互接続性導電性ナノ構造体の薄膜を前記基体上に形成する工程、(前記インク組成物は、複数の導電性ナノ構造体、結合材料、感光性化合物、及び極性溶媒を含む)、及び前記極性溶媒を除去する工程、並びに
前記薄膜の一部をUV光源に曝露して、前記薄膜の曝露部分の前記架橋性ポリマーを架橋する工程
を包含する、方法。
【請求項19】
前記薄膜上にマスクを配置する工程を更に含み、前記マスクが前記UV光源に曝露される前記薄膜の前記部分に対応する開口部を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記UV光源に曝露されていない前記薄膜の一部を溶解させる工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記結合材料が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、陰イオン性高分子電解質及び陽イオン性高分子電解質、並びにポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)からなる群から選択される架橋性ポリマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記架橋性ポリマーがポリビニルピロリドンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記結合材料が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルエチルセルロースからなる群から選択される架橋性ポリマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記架橋性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記感光性化合物がIRGACURE(登録商標)754である、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記極性溶媒が、極性指数が少なくとも4のプロトン性溶媒である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記極性溶媒が水、一価アルコール又は多価アルコールである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記極性溶媒がポリプロピレングリコールモノメチルエーテルである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記導電性ナノ構造体が金属ナノワイヤである、請求項18から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記金属ナノワイヤが長さ10μm超であり、直径100nm未満である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
複数の相互接続性導電性ナノ構造体と、
結合材料と、
感光性化合物と
を含む導電膜であって、前記相互接続性導電性ナノ構造体は前記結合材料に包埋されている、導電膜。
【請求項32】
前記結合材料が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、陰イオン性高分子電解質及び陽イオン性高分子電解質、並びにポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)からなる群から選択される架橋性ポリマーである、請求項31に記載の導電膜。
【請求項33】
前記架橋性ポリマーがポリビニルピロリドンである、請求項32に記載の導電膜。
【請求項34】
前記結合材料が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルエチルセルロースからなる群から選択される架橋性ポリマーである、請求項31に記載の導電膜。
【請求項35】
前記架橋性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項34に記載の導電膜。
【請求項36】
前記感光性化合物が光開始剤である、請求項35に記載の導電膜。
【請求項37】
前記光開始剤がIRGACURE(登録商標)754である、請求項36に記載の導電膜。
【請求項38】
前記導電性ナノ構造体が金属ナノワイヤである、請求項31から37のいずれか一項に記載の導電膜。
【請求項39】
前記金属ナノワイヤが長さ10μm超であり、直径100nm未満である、請求項38に記載の導電膜。
【請求項40】
第1の領域と第2の領域を含む請求項31から39のいずれか一項に記載の導電膜であって、前記第1の領域の前記架橋性ポリマーが架橋され、前記第2の領域の前記架橋性ポリマーが除去される、導電膜。
【請求項41】
前記第1の領域が前記第2の領域よりも導電性である、請求項40に記載の導電膜。
【請求項42】
前記感光性化合物が熱活性化可能である、請求項31から39のいずれか一項に記載の導電膜。
【請求項43】
前記感光性化合物がオニウム塩である、請求項42に記載の導電膜。
【請求項44】
第1の領域と第2の領域を含む請求項42及び43のいずれか一項に記載の導電膜であって、前記第1の領域の前記感光性化合物が光分解され、前記第2の領域の前記感光性化合物が熱分解された、導電膜。
【請求項45】
前記第1の領域が前記第2の領域よりも導電性である、請求項44に記載の導電膜。
【請求項46】
前記第1の領域が第1の曇価を有し、前記第2の領域が第2の曇価を有し、前記第1の曇価と前記第2の曇価が互いと10%以下だけ異なる、請求項44に記載の導電膜。
【請求項47】
インク組成物を基体に堆積させることによって相互接続性導電性ナノ構造体の薄膜を前記基体上に形成する工程(前記インク組成物は、複数の導電性ナノ構造体、結合剤材料、熱活性化可能な感光性化合物、及び極性溶媒を含む)、及び前記極性溶媒を除去する工程、
前記薄膜上にマスクを配置する工程(前記マスクは、開口部を含み、前記薄膜をマスク領域と非マスク領域に画定し、前記非マスク領域は前記開口部に対応する)、
前記薄膜をUV光源に前記マスクの前記開口部を通して第1の温度で曝露して前記非マスク領域の前記感光性化合物の光分解を引き起こす工程、並びに
前記薄膜を熱源に暗所で第2の温度で曝露して前記マスク領域の前記感光性化合物の熱分解を引き起こす工程
を包含する、方法。
【請求項48】
前記感光性化合物の光分解が、前記非マスク領域の前記ナノ構造体に構造上の損傷を与えない、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記感光性化合物の熱分解が、前記マスク領域の前記ナノ構造体に構造上の損傷を与える、請求項47及び48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記曝露後、前記非マスク領域が前記マスク領域よりも導電性である、請求項47から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記曝露後、前記非マスク領域の曇価が前記マスク領域と10%以下だけ異なる、請求項47から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記感光性化合物が光酸発生剤である、請求項47から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記光酸発生剤がジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記光酸発生剤がジフェニルヨードニウム塩であり、前記ジフェニルヨードニウム塩の対イオンが塩化物イオン、硝酸イオン、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロアルセナート又はヘキサフルオロアンチモナートである、請求項53に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2013−518974(P2013−518974A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552105(P2012−552105)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/023732
【国際公開番号】WO2011/097470
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(510230746)カンブリオス テクノロジーズ コーポレイション (9)
【Fターム(参考)】