説明

感光性エレメント

【課題】支持フィルムの剥離性、支持フィルム剥離後の水溶性樹脂層安定性に優れ、レジストパターンのサイドウォールにガタツキがなく、レジストパターン表面の平坦性が良く、現像性に問題ない感光性エレメントの提供。
【解決手段】支持フィルムと、中間層と、感光性樹脂層とが順次積層された積層構造を有し、支持フィルムが、中間層が積層される面とは反対面側に、微粒子を含有する樹脂層を含む二軸配向ポリエステルフィルムであり、中間層が、水溶性樹脂層であることを特徴とする感光性エレメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性エレメント、等に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン又は携帯電話等の電子機器には、部品又は半導体などの実装用としてプリント配線板等が用いられる。プリント配線板等の製造用のレジストとしては、従来、支持フィルム上に感光性樹脂層を積層し、さらに該感光性樹脂層上に必要に応じて保護フィルムを積層して成る感光性エレメント、いわゆるドライフィルムレジスト(以下、「DF」と呼ぶこともある)が用いられている。
【0003】
ここで用いられる感光性樹脂層としては、現在、現像液として弱アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のものが一般的である。DFを用いてプリント配線板等を作製するためには、保護フィルムが有る場合には、まず保護フィルムを剥離した後、銅張積層板又はフレキシブル基板等の永久回路作製用基板上にラミネーター等を用いてDFをラミネートし、配線パターンマスクフィルム等を通して露光を行う。次に、必要に応じて支持フィルムを剥離し、現像液により未露光部分の感光性樹脂層を溶解させるか、又は分散除去し、基板上に硬化レジストパターン(以下、単に「レジストパターン」と呼ぶこともある)を形成させる。
【0004】
レジストパターン形成後、回路を形成させるプロセスは、大きく2つの方法に分かれる。第一の方法は、レジストパターンによって覆われていない銅張積層板等の銅面をエッチング除去した後、レジストパターン部分を現像液よりも強いアルカリ水溶液で除去する方法(エッチング法)である。第二の方法は、第一の方法と同様の銅面に銅、半田、ニッケルおよび錫等のメッキ処理を行った後、同様にレジストパターン部分を除去して、さらに現れた銅張積層板等の銅面をエッチングする方法(メッキ法)である。エッチングには塩化第二銅、塩化第二鉄、又は銅アンモニア錯体溶液等が用いられる。
【0005】
近年、DFは、プリント配線板のみならず、テープオートメイテッドボンディング(TAB)又はチップ・オン・フィルム(COF)などのフレキシブルかつ高密度な配線、又は半導体パッケージ基板などの超高密度配線の形成にも用いられつつある。高密度の配線を実現するためには当然高解像のDFが必要とされる。
【0006】
そして、解像度を向上させる試みとして、特許文献1には、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に形成した微粒子を含有する樹脂層を含む支持フィルム、及び前記支持フィルムの前記微粒子を含有する樹脂層を形成した面とは反対の面に、感光性樹脂層を積層する技術が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、支持フィルムと感光性樹脂層の間に中間層を設け、支持フィルムを剥離して中間層の上から露光する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4014872号
【特許文献2】特開2008−175957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、高密度配線を形成する場合にはレジストサイドウォールのガタツキを低減することが重要であり、上記特許文献1及び2に記載された技術はいずれも、このような観点からは、なお改良の余地を有するものであった。
【0010】
従って、本発明は、レジストパターンのサイドウォールのガタツキを低減できる感光性エレメントを提供すること、並びに該感光性エレメントを用いたレジストパターンの形成方法及び導体パターンの形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、以下の技術的手段により上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
【0012】
[1] 支持フィルムと、中間層と、感光性樹脂層とが順次積層された積層構造を有し、前記支持フィルムが、前記中間層が積層される面とは反対面側に、微粒子を含有する樹脂層を含む二軸配向ポリエステルフィルムであり、前記中間層が、水溶性樹脂層であることを特徴とする感光性エレメント。
【0013】
[2] 前記水溶性樹脂層にポリビニルアルコールを含む、[1]に記載の感光性エレメント。
【0014】
[3] 前記水溶性樹脂層は、前記水溶性樹脂層の質量を基準として、50質量%〜100質量%のポリビニルアルコールを含む、[1]又は[2]に記載の感光性エレメント。
【0015】
[4] 前記水溶性樹脂層の厚みが1μm〜8μmである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の感光性エレメント。
【0016】
[5] 前記水溶性樹脂層は、下記一般式(I):
【化1】

{式中、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、そしてAは、−CHCHO−ユニット及び/又は−CHCH(CH)O−ユニットを含む1種又は2種以上の単独又は繰り返し構造を表す。}
で表される化合物を含む、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の感光性エレメント。
【0017】
[6] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の感光性エレメントを金属板又は金属被覆絶縁体の表面にラミネートし、支持フィルムを剥離し、紫外線による露光を行なった後に、現像により未露光部を除去する工程を含む、レジストパターンの形成方法。
【0018】
[7] [6]に記載の方法によりレジストパターンが形成されている基板をエッチング又はメッキする工程を含む、導体パターンの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、レジストパターンのサイドウォールのガタツキを低減し得る感光性エレメントを提供すること、および、該感光性エレメントを用いたレジストパターンの形成方法ならびに導体パターンの形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
<感光性エレメント(感光性樹脂積層体)>
本実施形態の感光性エレメントは、支持フィルムと、中間層と、感光性樹脂層とが順次積層された積層構造を有し、前記支持フィルムが、前記中間層が積層される面とは反対面側に、微粒子を含有する樹脂層を含む二軸配向ポリエステルフィルムであり、前記中間層が、水溶性樹脂層である。
二軸配向ポリエステルフィルムの一の面に微粒子含有樹脂層を積層し、そして二軸配向ポリエステルフィルムの微粒子含有樹脂層を積層した面とは反対の面に水溶性樹脂層を積層することによって、感光性樹脂層付近での微粒子による光の散乱が起こることを回避でき、より露光マスクに忠実に光を照射できるため、レジストパターンのサイドウォールのガタツキを低減できているのではないかと推察することができる。
【0022】
<支持フィルム>
本実施形態では、支持フィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムから成り、そして二軸配向ポリエステルフィルムの一の面のみに微粒子含有樹脂層が積層されている。
【0023】
本実施形態では、微粒子含有樹脂層は、微粒子を含有する樹脂層である。また、本実施形態では、微粒子とは非常に細かい粒をいう。この微粒子の平均粒径は、0.01μm〜5.0μmであることが好ましく、0.02μm〜4.0μmであることがより好ましく、0.03μm〜3.0μmであることが特に好ましい。この平均粒径を0.01μm以上とすることは、作業性を向上させる観点から好ましく、一方、この平均粒径を5.0μm以下とすることは、解像度及び感度を向上させる観点から好ましい。
【0024】
上記微粒子としては、例えば、シリカ、カオリン、タルク、アルミナ、リン酸カルシウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、又は架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子などを挙げることができ、透明性の見地からはシリカの粒子が好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0025】
微粒子含有樹脂層を構成するベース樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、これらの混合物、これらの共重合物等が挙げられる。
【0026】
微粒子含有樹脂層の厚みは、0.01μm〜5.0μmであることが好ましく、0.05μm〜3.0μmであることがより好ましく、0.1μm〜2.0μmであることが特に好ましく、0.1μm〜1.0μmであることが極めて好ましい。この厚みを0.01μm以上とすることは、本発明の効果を好ましく奏する観点から好ましく、一方で、この厚みを5.0μm以下とすることは、二軸配向ポリエステルフィルムの透明性、感度及び解像度を向上させる観点から好ましい。
【0027】
二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、前記樹脂層を積層する方法としては、限定されるものではないが、例えば、コーティング等が挙げられる。
【0028】
一般に、二軸配向ポリエステルフィルムとは、構成単位が二軸方向に配向している部分を含むポリエステルフィルムをいう。二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ジカルボン酸類とジオール類とを構成成分とする芳香族線状ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸類とジオール類とを構成成分とする脂肪族線状ポリエステル、これらの共重合体等のポリエステルなどから主として成るポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0029】
二軸配向ポリエステルフィルムには、微粒子が含有されていてもよい。この微粒子としては、例えば、微粒子含有樹脂層に含有される微粒子と同様のものなどが挙げられる。二軸配向ポリエステルフィルム中の微粒子の含有量は、0.01〜80ppmであることが好ましく、0.01〜60ppmであることがより好ましく、0.01〜40ppmであることが特に好ましい。製造効率の観点から、0.01ppm以上であることが好ましく、ポリエステルフィルム全体の透明性、解像度及び感度の観点から80ppm以下であることが好ましい。
【0030】
二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法としては、限定されるものではないが、例えば、二軸延伸方法等を用いることができる。また、未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムの一方の面に微粒子含有樹脂層を形成した後、更に延伸して支持フィルムとしてもよい。二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることが特に好ましく、10μm〜30μmであることが極めて好ましい。この厚みが1μm以上であれば、製造容易性及び入手容易性が向上し易く、一方で、この厚みが100μm以下であれば廉価性が向上し易い。
【0031】
入手可能な支持フィルムとしては、限定されるものではないが、例えば、東洋紡績(株)製のA−1517、A2100−16、A4100−25等が挙げられる。
【0032】
前記支持フィルムの厚みは、1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましく、10〜30μmであることが極めて好ましい。この厚みを1μm以上とすることは、機械的強度を向上させ、塗工時に重合体フィルムを破れ難くする観点から好ましく、一方で、この厚みを100μm以下とすることは、解像度を向上させ、そして感光性エレメントの価格をより低くする観点から好ましい。
【0033】
<水溶性樹脂層>
本実施形態において、水溶性樹脂層は、支持フィルム中の二軸配向ポリエステルフィルムの他方の面(すなわち、微粒子含有樹脂層が形成されていない面)に積層されており、そして支持フィルムと感光性樹脂層との間の中間層としての役割を担う。この水溶性樹脂層は、アルカリ現像に供されるので、水溶性樹脂を含む任意の層でよい。
【0034】
ラジカル重合反応では、酸素と接触することでラジカルが死活し反応が進行しにくくなるため、支持フィルムを剥離して露光を行う場合には、酸素バリア性のポリビニルアルコールを中間層として用いることが好ましい。一般に、ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをアルカリけん化して製造される。ポリビニルアルコールの平均重合度は、例えば、100〜10000であり、酸素遮断性及び現像性の観点から、好ましくは300〜5000である。ポリビニルアルコールのけん化度は、現像性の観点から50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。このような平均重合度及び/又はけん化度を有するポリビニルアルコールとしては、(株)クラレ製PVA−120、(株)クラレ製PVA−203、(株)クラレ製PVA−205、(株)クラレ製PVA−220、(株)クラレ製PVA−235、(株)クラレ製PVA−403、(株)クラレ製PVA−405などが挙げられる。なお、これらのポリビニルアルコールとしては、1種を単独で使用するか、又は2種以上を併用することができる。
【0035】
ポリビニルアルコール(複数種を併用する場合にはその総量)が、水溶性樹脂層中に占める配合比率は、現像性及び酸素バリア性の観点から、50質量%〜100質量%が好ましく、より好ましくは70質量%〜100質量%、さらに好ましくは90質量%〜100質量%である。
【0036】
水溶性樹脂層の厚みは、現像性の観点から12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。また、水溶性樹脂層の厚みは、支持フィルム剥離後の水溶性樹脂層安定性の観点から0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましく、3μm以上が特に好ましく、5μm以上が最も好ましい。例えば、本実施形態では、水溶性樹脂層の厚みは、1μm〜8μmであることが好ましい。
【0037】
支持フィルムからの剥離性、現像性、及びコストの観点から、水溶性樹脂層は、上記のような少なくとも一種のポリビニルアルコールに加えて、他の水溶性高分子又は可塑剤を含むことができる。他の水溶性高分子又は可塑剤は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
このような「他の水溶性高分子または可塑剤」としては、例えば、オレフィンを1〜20モル%共重合したポリビニルアルコールから成る群より選ばれるポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンオキシドのエステル化合物、ポリアルキレンオキシドのエーテル化合物などのポリアルキレンオキシドおよびその誘導体、フタル酸ジブチルなどのフタル酸エステル類などが挙げられる。さらに、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体およびその水溶性塩類、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体およびその水溶性塩類、カルボキシアルキル澱粉水溶性塩類、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリアクリル酸水溶性塩類、ゼラチンなどが挙げられる。好ましい実施形態において、水溶性樹脂層は、可塑剤としてポリアルキレンオキシド誘導体を含む。
【0039】
ポリアルキレンオキシド誘導体は、下記一般式(I):
【化2】

{式中、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、そしてAは、−CHCHO−ユニット及び/又は−CHCH(CH)O−ユニットを含む1種又は2種以上の単独又は繰り返し構造を表す。}
で示される化合物が好ましい。
【0040】
また、ポリアルキレンオキシド誘導体としては、下記一般式(II):
【化3】

{式中、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、n1は、1〜30の整数であり、そしてn2は、0〜30の整数である。}
で示される化合物が特に好ましい。
【0041】
上記一般式(I)で示されるポリアルキレンオキシド誘導体としては、具体的に、日本油脂(株)製PEG♯2000、日本油脂(株)製ユニオックスM−550、東邦化学工業(株)製ネオスコア2326、(株)ADEKA製アデカプルロニックL−61、(株)ADEKA製アデカプルロニックL−44、(株)ADEKA製アデカポールDL−150などが挙げられる。
【0042】
上記一般式(I)及び(II)において、CHCHO及びCHCH(CH)Oの繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。なお、R及びRが共に水素原子である場合はジオール体(EO及びPO変性ジオール)となり、Rが水素原子であり、かつRがアルキル基である場合はモノエーテル体(EO及びPO変性モノエーテル)となり、そしてR及びRが共にアルキル基である場合はジエーテル体(EO及びPO変性ジエーテル)となる。
【0043】
上記一般式(II)において、ポリアルキレンオキシド誘導体のアルカリ可溶性及びポリビニルアルコールとの相溶性を向上させるために、R及びRは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、そして水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0044】
上記一般式(II)において、n1+n2は、臭気の観点から3以上が好ましく、ポリビニルアルコールとの相溶性、及び現像性の観点から60以下が好ましい。n1+n2は、より好ましくは5以上55以下であり、さらに好ましくは7以上50以下である。
【0045】
上記一般式(II)で示されるエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよいが、ブロック共重合体であることがより好ましい。
【0046】
<感光性樹脂層>
本実施形態では、感光性樹脂層とは、光の作用で化学的又は物理的変化を起こす樹脂を含む層をいう。また、感光性樹脂層は、バインダー樹脂、エチレン性不飽和結合を有する化合物、光重合開始剤、及び所望により、その他の添加剤を含む感光性樹脂組成物から調製されることができる。
【0047】
好ましくは、感光性樹脂組成物は、以下の(a)〜(c)の各成分:
(a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ重量平均分子量が5,000〜500,000であるバインダー用樹脂:20〜90質量%、
(b)エチレン性不飽和結合を有する化合物:3〜70質量%、及び
(c)光重合開始剤:0.1〜20質量%
を含む。以下、各成分を順に説明する。
【0048】
(a)バインダー用樹脂
一般に、バインダー用樹脂とは、構成成分を結合するために使用される樹脂をいう。バインダー用樹脂に含まれるカルボキシル基の量は、酸当量で100〜600が好ましく、より好ましくは250〜450である。酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有するバインダー用樹脂の質量を言う。バインダー用樹脂中のカルボキシル基は、感光性樹脂層にアルカリ水溶液に対する現像性又は剥離性を与えるために必要である。酸当量は、現像耐性、解像性および密着性の観点から100以上が好ましく、現像性および剥離性の観点から600以下が好ましい。
【0049】
バインダー用樹脂の重量平均分子量は、5,000〜500,000であることが好ましい。バインダー用樹脂の重量平均分子量は、解像性の観点から500,000以下が好ましく、エッジフューズの観点から5,000以上が好ましい。エッジフューズとは、感光性エレメントを、例えば、ロール状に巻き取った場合、保存中に感光性樹脂層がロール端面からはみ出し、層状に重ねられた一層内側の層もしくは一層外側の層からはみ出した感光性樹脂層と癒着する現象である。エッジフューズが起きると、ロールから感光性エレメントを巻出す時に癒着した端面の感光性樹脂層がチップとなって飛び散り、このチップがラミネートされたり、マスクに付着したりして歩留まりが悪化することがある。バインダー用樹脂の重量平均分子量は、5,000〜200,000であることがより好ましく、5,000〜100,000であることがさらに好ましい。
【0050】
バインダー用樹脂の分散度(分子量分布と呼ぶこともある)は1〜6程度であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
【0051】
バインダー用樹脂は、下記の2種類の単量体の中より、各々一種又はそれ以上の単量体を共重合させることにより得られる。
【0052】
第一の単量体は、分子中に重合性不飽和基を一個有するカルボン酸又は酸無水物である。例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを表す。
【0053】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ分子中に重合性不飽和基を一個有する化合物である。この化合物は、感光性樹脂層の現像性、エッチング及びメッキ工程での耐性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。この化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、ブチル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル(メタ)アクリレ−ト;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;フェニル基を有するビニル化合物(例えば、スチレン)等を用いることができる。解像性及び密着性の観点からスチレンが好ましい。また、解像性及び現像液凝集性の観点からベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
好ましくは、バインダー用樹脂は、上記第一の単量体と第二の単量体との混合物を、アセトン、メチルエチルケトン、又はイソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより合成される。また、混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行ってもよい。さらに、反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整してもよい。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0055】
感光性樹脂組成物中におけるバインダー用樹脂の含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは20〜90質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。露光及び現像によって形成される硬化レジストパターンが、レジストとしての特性、例えば、テンティング、エッチング及び各種メッキ工程において十分な耐性等を有するという観点から、この割合は20質量%以上90質量%以下が好ましい。
【0056】
(b)エチレン性不飽和結合を有する化合物
エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAの両端にそれぞれアルキレンオキサイドを付加したアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(日本触媒化学製、商品名OE−A 200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等のウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独で使用されるか、又は2種類以上併用されることができる。
【0057】
感光性樹脂組成物中におけるエチレン性不飽和結合を有する化合物の含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、3〜70質量%であることが好ましい。硬化不良及び現像時間の遅延を抑えるという観点から3質量%以上であることが好ましく、一方で、コールドフロー及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から70質量%以下であることが好ましい。
【0058】
(c)光重合開始剤
光重合開始剤としては、各種の活性光線、例えば紫外線等により活性化され、重合を開始する化合物を使用してよい。好ましい実施形態では、高解像度の観点から、光重合開始剤として2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体を用いる。イミダゾール二量体において2個のロフィン基を結合する共有結合は、1,1’−、1,2’−、1,4’−、2,2’−、2,4’−又は4,4’−位に付いているが、1,2’−位に付いている化合物が好ましい。2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス−(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(p−メトシキフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。特に、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が好ましい。
【0059】
また、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体とp−アミノフェニルケトンを併用する系が、感度及び解像度の観点から好ましい。p−アミノフェニルケトンとしては、例えば、p−アミノベンゾフェノン、p−ブチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−ビス(エチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラ−ズケトン]、p,p’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0060】
また、上記で示された化合物以外の光重合開始剤としては、例えば、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル等のベンゾインエ−テル類、9−フェニルアクリジン等のアクリジン化合物、ベンジルジメチルケタ−ル、ベンジルジエチルケタ−ル等のケタール類が挙げられる。また、例えば、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類と、ジメチルアミノ安息香酸アルキルエステル化合物等の三級アミン化合物との組み合わせも光重合開始剤として使用されることができる。
【0061】
また、上記で示された化合物以外の光重合開始剤として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類等が挙げられる。また、N−アリールα−アミノ酸化合物も用いることも可能であり、これらの中では、N−フェニルグリシンが特に好ましい。
【0062】
感光性樹脂組成物中における光重合開始剤の含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、0.1〜20質量%であることが好ましい。この含有率は、十分な感度を得る観点から0.1質量%以上であることが好ましく、一方で、露光時にフォトマスクを通した光のハレーション防止の観点から20質量%以下が好ましい。
【0063】
感光性樹脂組成物には、成分(a)〜(c)以外にも、必要に応じて下記のような変色剤、染料、可塑剤、酸化防止剤、有機ハロゲン化合物、及び安定化剤(ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類から成る群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物等)を加えることができる。
【0064】
変色剤としては、ロイコ染料又はフルオラン染料を使用することができる。ロイコ染料としては、例えばロイコクリスタルバイオレット、ロイコマラカイトグリーンなどが挙げられる。感光性樹脂組成物中における変色剤の含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、十分な着色性(発色性)が認識できる点から0.01質量%以上が好ましく、一方、色相安定性及び良好な画像特性を得るという観点から5質量%以下が好ましい。
【0065】
染料としては、例えば、ベイシックグリーン1[633−03−4](例えば、Aizen Diamond Green GH、商品名、保土谷化学工業製)、マラカイトグリーンしゅう酸塩[2437−29−8](例えばAizen Malachite Green、商品名、保土谷化学工業製)、ブリリアントグリーン[633−03−4]、フクシン[632−99−5]、メチルバイオレット[603−47−4]、メチルバイオレット2B[8004−87−3]、クリスタルバイオレット[548−62−9]、メチルグリーン[82−94−0]、ビクトリアブルーB[2580−56−5]、ベイシックブルー7[2390−60−5](例えば、Aizen VictoriaPure Blue BOH、商品名、保土谷化学工業製)、ローダミンB[81−88−9]、ローダミン6G[989−38−8]、ベイシックイエロー2[2465−27−2]などが挙げられ、中でもベイシックグリーン1、マラカイトグリーンしゅう酸塩、又はベイシックブルー7が好ましい。
【0066】
感光性樹脂組成物中における染料の含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、0.001〜0.3質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.12質量%である。染料の含有率は、充分な着色性が認識できる点から0.001質量%以上であることが好ましく、一方で、感度維持の観点から0.3質量%以下であることが好ましい。
【0067】
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル等のグリコール・エステル類、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルホン酸アミド、p−トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチルなどが挙げられる。
【0068】
感光性樹脂組成物中における可塑剤の含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。可塑剤の含有率は、現像時間の遅延を抑え、硬化膜に柔軟性を付与するという観点から5質量%以上が好ましく、一方で、硬化不足又はコールドフローを抑えるという観点から50質量%以下が好ましい。
【0069】
酸化防止剤としては、亜リン酸エステル類が好ましく用いられる。亜リン酸エステルの例としては、トリフェニルホスファイト(旭電化工業社製、商品名:TPP)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業社製、商品名2112)、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト(旭電化工業社製、商品名:1178)、ビス(モノノニルフェニル)−ジノニルフェニルホスファイト(旭電化工業社製、商品名:329K)が挙げられる。
【0070】
感光性樹脂組成物中における酸化防止剤の含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは0.01〜0.8質量%であり、より好ましくは0.01〜0.3質量%である。酸化防止剤の含有率は、0.01質量%以上であれば、感光性樹脂組成物の色相安定性に優れる効果が発現し、感光性樹脂組成物の露光時における感度が向上する傾向となって好ましく、一方で、0.8質量%以下であれば、発色性が抑えられることで色相安定性が向上し、かつ密着性も良好となる傾向となって好ましい。
【0071】
有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンジル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、クロル化トリアジン化合物が挙げられ、これらの中でも特にトリブロモメチルフェニルスルフォンが好ましく用いられる。
【0072】
感光性樹脂組成物中における有機ハロゲン化合物の含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、感度向上の観点から0.01質量%以上が好ましく、色相安定性の観点から3質量%以下が好ましい。
【0073】
感光性樹脂組成物の熱安定性及び保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物にラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類から成る群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を安定化剤として加えることができる。
【0074】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミンなどが挙げられる。
【0075】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、ビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0076】
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0077】
感光性樹脂組成物中における、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類及び/又はカルボキシベンゾトリアゾール類の合計含有率は、感光性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。この合計含有率は、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与するという観点から0.01質量%以上が好ましく、一方で、感度を維持するという観点から3質量%以下が好ましい。
【0078】
<保護フィルム>
本実施形態の感光性エレメントには、さらに保護フィルムを積層することもできる。以下、支持フィルム、水溶性樹脂層、感光性樹脂層、及び保護フィルムを順次積層した積層体を作製する方法について説明する。
【0079】
<感光性エレメントの製造方法>
例えば、まず、株式会社クラレ製のポリビニルアルコールPVA−205樹脂及び上記一般式(I)で表される化合物を、固形分比率が10質量%となるように、90℃に加温した水に徐々に加えて2時間程度撹拌して均一に溶解させて、ポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂組成物を得る。次いで、このポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂組成物の均一な水溶液を支持フィルム上にブレードコーター、バーコーター又はロールコーターを用いて塗布して乾燥して、支持フィルム上に水溶性樹脂層を積層する。なお、ポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂組成物の均一な水溶液の粘度は、10〜500mPa・sに調整するのが好ましい。
【0080】
水溶性樹脂層が積層されている支持フィルムの水溶性樹脂層上に、感光性樹脂組成物を水溶性樹脂組成物の塗布と同様にブレードコーター、バ−コーター又はロールコーターを用いて塗布して乾燥し、水溶性樹脂層上に感光性樹脂層を積層する。感光性樹脂組成物を既知の溶媒に加えて、その粘度が25℃で500〜4000mPa・sとなるように調整して塗工することにより、感光性樹脂層は得られる。用いられる好適な溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン類、並びにメタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールなどのアルコール類が挙げられる。次に、このようにして積層された感光性樹脂層上に保護フィルムをラミネートすることにより、感光性エレメントを調製することができる。
【0081】
感光性樹脂層の厚みは、用途に応じて適宜調整することが出来る。感光性樹脂層の厚みは、解像度の観点から40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、28μm以下がさらに好ましい。一方で、感光性樹脂層の厚みは、追従性の観点から2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。
【0082】
<レジストパターンの形成方法>
本実施形態の感光性エレメントを利用して、レジストパターンを形成することもできる。好ましくは、このレジストパターンを形成する方法は、本実施形態の感光性エレメントを金属板又は金属被覆絶縁体の表面にラミネートし、支持フィルムを剥離し、紫外線による露光を行なった後に、現像により未露光部を除去する工程を含む。
【0083】
<導体パターンの製造方法>
本実施形態の感光性エレメントを利用して、導体パターンを製造することもできる。好ましくは、この導体パターンを製造する方法は、上記レジストパターンを形成する方法により基板にレジストパターンを形成して、レジストパターンを有する基板を得る工程、及び該レジストパターンを有する基板をエッチング又はメッキする工程を含む。
【0084】
<プリント配線板の製造方法>
本実施形態の感光性エレメントを用いてプリント配線板を製造する方法の一例を説明する。このプリント配線板は、以下の工程(1)〜(5)を経て製造される:
【0085】
(1)ラミネート工程
感光性エレメントに保護フィルム又は保護層がある場合には保護層を剥がしながら、感光性エレメントを銅張積層板又はフレキシブル基板等の基板上にホットロールラミネーターを用いて密着させる工程。
【0086】
(2)露光工程
感光性エレメントから、支持フィルムを剥離し、所望の配線パターンを有するマスクフィルムを通し、活性光線源を用いて露光を施す工程。
【0087】
(3)現像工程
アルカリ現像液を用いて水溶性樹脂層及び感光性樹脂層の未露光部分を溶解または分散除去し、硬化レジストパターンを基板上に形成する工程。
【0088】
(4)エッチング工程又はメッキ工程
形成されたレジストパターン上からエッチング液を吹き付け、レジストパターンによって覆われていない銅面をエッチングする工程、またはレジストパターンによって覆われていない銅面に銅、半田、ニッケルおよび錫等のメッキ処理を行う工程。
【0089】
(5)剥離工程
レジストパターンをアルカリ剥離液を用いて基板から除去する工程。
【0090】
より詳細には、上記(2)露光工程において用いられる活性光線源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプなどが挙げられる。また、上記(3)現像工程で用いられるアルカリ現像液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の水溶液が挙げられる。これらのアルカリ水溶液は感光性樹脂層の特性に合わせて選択されるが、一般的に0.5質量%以上3質量%以下の炭酸ナトリウム水溶液が用いられる。上記(4)エッチング工程は、使用するDFに応じて、酸性エッチング、アルカリエッチングなどの方法で行われる。
【0091】
より詳細には、上記(5)剥離工程で用いられるアルカリ剥離液としては、一般的に現像で用いたアルカリ水溶液よりも更に強いアルカリ性の水溶液、例えば1質量%以上5質量%以下の水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの水溶液が挙げられる。
【0092】
また、セミアディティブ工法等のメッキ工程を設けた場合には、レジストパターンを剥離後に、レジストパターンの下に現れた銅面をエッチングする場合もある。
【0093】
本実施形態の感光性エレメントは、プリント配線板、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF用基板、半導体パッケージ用基板、液晶用透明電極、液晶用TFT用配線、プラズマディスプレイパネル(PDP)用電極等の導体パターンの製造に適した感光性エレメントである。
【0094】
なお、上述した各種パラメータは、特に明示しない限り、後述の実施例における測定方法に準じて測定される。
【実施例】
【0095】
実施例及び比較例を参照して本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した:
【0096】
<微粒子の平均粒径>
レーザー回折・散乱式粒径・粒度分布測定装置を用いて、微粒子の粒度分布における積算値50%での粒径を平均粒径として算出する。
【0097】
<バインダー用樹脂の酸当量>
平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM―555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定法により測定した。
【0098】
<バインダー用樹脂の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布>
日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)による検量線使用)により求めた。
【0099】
<水溶性樹脂層相溶性>
水溶性樹脂層を形成するための水溶性樹脂組成物の水溶液をよく攪拌した後、水溶性樹脂組成物が均一に相溶しているかを観察し、以下のようにランク付けをした。
○:水溶性樹脂組成物が一様に相溶しており、無色透明である。
△:水溶性樹脂組成物に白濁が生じている。
×:水溶性樹脂組成物が二層に分離している。
【0100】
<支持フィルム離型性>
露光前に支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離するときの剥離挙動について以下のようにランク付けをした。
○:支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムのみが剥がれた。
△:支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムに一部水溶性樹脂層が付着し同時に剥がれた。
×:支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムと水溶性樹脂層が一緒に剥がれた(水溶性樹脂層と感光性樹脂層との間で剥離された。)
【0101】
<現像性>
まず、35μm圧延銅箔を積層した0.4mm厚の銅張積層板の基板表面をジェットスクラブ研磨(スリーエム(株)製、スコッチブライト(登録商標)HD♯600)し、評価基板を準備した。
次に、感光性エレメントの保護フィルム又は保護層を剥がしながらホットロールラミネーター(旭化成エンジニアリーング(株)社製、AL−70)により、ロール温度105℃で上記評価基板にラミネートした。エアー圧力は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
次に、支持フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、感光性樹脂層の評価に必要なクロムガラスフォトマスクを用いて、超高圧水銀ランプ(365nm単色光、ウシオ電機(株)製、UPL−03EX)により140mJ/cmの露光量で露光した。但し、比較例7及び9においては、支持フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離せずに露光を行った。
更に、30℃の1質量%NaCO水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。この場合に、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を最小現像時間とした。実際の現像時間は最小現像時間の2倍で現像し、硬化レジストパターンを得た。
上記最小現像時間に基づき、以下のようにランク分けした:
○:最小現像時間が25秒未満
△:最小現像時間が25秒以上30秒未満
×:最小現像時間が30秒以上
【0102】
<レジスト形状>
現像性評価の手順により得られた硬化レジストパターンの10μmラインの形状を以下のようにランク付けをした。
○:形成された硬化レジストパターンが矩形である。
△:形成された硬化レジストパターンが矩形ではない。
×:形成された硬化レジストパターンが矩形ではなく、さらに膜減りしている。
【0103】
<レジストサイドウォールのガタツキ>
現像性評価の手順により得られた硬化レジストパターンの10μmラインのレジストサイドウォール形状を以下のようにランク付けをした。
◎:形成されたレジストサイドウォールにガタツキがほとんど無い。
○:形成されたレジストサイドウォールにガタツキがわずかに存在する。
△:形成されたレジストサイドウォールのところどころにガタツキが存在する。
×:形成されたレジストサイドウォールのいたるところにガタツキが存在する。
【0104】
<露光異物不良>
現像性評価の手順により得られた硬化レジストパターンの10μmラインを観察し、以下のようにランク付けをした。
○:形成されたレジストパターンに露光異物による欠点がほとんど無い。
△:形成されたレジストパターンに露光異物による欠点がわずかに存在する。
×:形成されたレジストパターンに露光異物による欠点がところどころに存在する。
【0105】
<水溶性樹脂層安定性>
基板にラミネートされた感光性エレメントの支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離し、30分経過した後にクロムガラスフォトマスクを用いて露光し、現像した。得られた硬化レジストパターンの10μmラインのレジスト表面の凹みを以下にようにランク付けをした。
○:形成されたレジスト表面に凹みがほとんど無い。
△:形成されたレジスト表面にわずかに凹みが存在する。
×:形成されたレジスト表面のところどころに凹みが存在する。
【0106】
<保存後支持フィルム剥離性>
基板に感光性エレメントをラミネートし、23℃及び湿度50%の環境下で72時間放置した。その後、支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離するときの剥離挙動について以下のようにランク付けをした。
○:支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムのみが剥がれた。
△:支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムに一部水溶性樹脂層が付着し同時に剥がれた。
×:支持フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルムと水溶性樹脂層が一緒に剥がれた(水溶性樹脂層と感光性樹脂層との間で剥離された。)
【0107】
[実施例1〜14、比較例1〜9]
表1〜6に示す水溶性樹脂層を形成するための水溶性樹脂組成物を90℃に加温した水に加えて、よく撹拌、混合し、室温まで冷却した後、支持フィルムである16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(フィルム−1、東洋紡績(株)製「A−1517」)の微粒子含有樹脂層面とは反対の面にブレードコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で10分間乾燥して支持フィルム上に均一な水溶性樹脂層を形成した。塗布時にブレードのギャップを調節して水溶性樹脂層の厚みを1μm、3μm、5μmまたは8μmとした。支持フィルムに積層された水溶性樹脂層上に、表1〜6に示す感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物をブレードコーターを用いて均一に塗布し、95℃で3分乾燥して水溶性樹脂層上に均一な感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは25μmであった。次いで、感光性樹脂層上の表面上に、保護フィルムとして19μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF−818)を張り合わせて感光性エレメントを得た。一方で、比較例については、比較例1〜7ではフィルム−1の代わりにフィルム−2(東レ(株)製「16FB40」)を用い、そして比較例6〜9では水溶性樹脂層を用いず支持フィルム上に感光性樹脂層を積層したことを除いて、上記実施例と同じように感光性エレメントを得た。
【0108】
得られた感光性エレメントにつき、各種評価を行なった。結果を表1〜6に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
【表5】

【0114】
【表6】

【0115】
表1〜6の結果から、以下の内容が読み取れる。
まず、実施例と比較例との対比により、本実施形態の感光性エレメントを用いれば、レジストサイドウォールのガタツキが低減されたレジストパターンを形成できることが分かる。
次に、実施例1〜8及び11〜14と、実施例9及び10との対比により、水溶性樹脂層に上記一般式(I)で表される化合物を含有させることで、保存後の支持フィルム剥離性を向上できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明に係る感光性樹脂組成物及び積層体は、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、リードフレームの製造又はメタルマスク製造などの金属箔精密加工、ボール・グリッド・アレイ(BGA)又はチップ・サイズ・パッケージ(CSP)等の半導体パッケージ製造、TAB又はCOFなどのテープ基板の製造、半導体バンプの製造、酸化インジウムスズ(ITO)電極又はアドレス電極、電磁波シールドなどを製造に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムと、中間層と、感光性樹脂層とが順次積層された積層構造を有し、
前記支持フィルムが、前記中間層が積層される面とは反対面側に、微粒子を含有する樹脂層を含む二軸配向ポリエステルフィルムであり、
前記中間層が、水溶性樹脂層であることを特徴とする感光性エレメント。
【請求項2】
前記水溶性樹脂層にポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載の感光性エレメント。
【請求項3】
前記水溶性樹脂層は、前記水溶性樹脂層の質量を基準として、50質量%〜100質量%のポリビニルアルコールを含む、請求項1又は2に記載の感光性エレメント。
【請求項4】
前記水溶性樹脂層の厚みが1μm〜8μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性エレメント。
【請求項5】
前記水溶性樹脂層は、下記一般式(I):
【化1】

{式中、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、そしてAは、−CHCHO−ユニット及び/又は−CHCH(CH)O−ユニットを含む1種又は2種以上の単独又は繰り返し構造を表す。}
で表される化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性エレメント。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性エレメントを金属板又は金属被覆絶縁体の表面にラミネートし、支持フィルムを剥離し、紫外線による露光を行なった後に、現像により未露光部を除去する工程を含む、レジストパターンの形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法によりレジストパターンが形成されている基板をエッチング又はメッキする工程を含む、導体パターンの製造方法。

【公開番号】特開2013−24913(P2013−24913A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156585(P2011−156585)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】