説明

感光性ネガ型樹脂組成物

【課題】本発明は、フォトリソグラフィー法を適用した場合に、ばらつきの少ない、三次元形状の再現性に優れた感光性ネガ型樹脂組成物を提供することを目的の一つとする。
【解決手段】本発明は、(a)エポキシ基を有する化合物と、(b)(b1)で表わされるカチオン部構造および(b2)で表されるアニオン部構造を含有する第1のオニウム塩と、(c)(c1)で表わされるカチオン部構造および(c2)で表されるアニオン部構造を含有する第2のオニウム塩と、を含むことを特徴とする感光性ネガ型樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性ネガ型樹脂組成物に関し、特にフォトリソグラフィー工程により微細構造体を形成するのに好適な感光性ネガ型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術の一つとして、ネガ型感光性樹脂に対して露光、現像を行い、パターン、構造物を形成するフォトリソグラフィーの技術が知られている。この技術は例えば半導体集積回路製造用途、半導体露光用マスク製造用途、各種MEMS製造用途など、広範に使用されている。MEMS製造用途の一例としては、各種小型センサー、マイクロプローブ、薄膜磁気ヘッド、インクジェット記録ヘッドなどで実用化が進んでいる。露光を行うための装置としては、i線を光源とするステッパーが広く用いられている。この技術の分野においては、近年、より複雑かつ高精細な構造を有する構造物を製造することが求められ、そのためフォトマスクを介した光源からの光に対して、高い精度を示す微細構造体を形成可能なネガ型感光性樹脂が求められている。
【0003】
ネガ型感光性樹脂の一例としては、特許文献1に、多官能エポキシ樹脂とカチオン重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
MEMS製造用途におけるインクジェットヘッドの一例として、特許文献2に、発熱抵抗体を加熱することにより生成した気泡を外気と連通させることにより、インク液滴を吐出させることを特徴とするインクジェットヘッド用ノズルを含む装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−256980号公報
【特許文献2】特開平4−10940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の組成物においては、以下の点において特性が十分ではない場合があった。一例としては、テーパ形状を有する液体吐出装置の吐出口などの複雑な形状を、i線を光源としてネガ型感光性樹脂から形成しようとした場合に、チップ内又はウエハ内等で吐出口のテーパ角度がばらつき、所望の再現性を得られない場合がある。
【0007】
本発明は上記を鑑みなされたものであって、フォトリソグラフィー法を適用した場合に、ばらつきの少ない、三次元形状の再現性に優れた感光性ネガ型樹脂組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、
(a)エポキシ基を有する化合物と、
(b)(b1)で表わされるカチオン部構造および(b2)で表されるアニオン部構造を含有する第1のオニウム塩と、
(c)(c1)で表わされるカチオン部構造および(c2)で表されるアニオン部構造を含有する第2のオニウム塩と、
を含むことを特徴とする感光性ネガ型樹脂組成物である。
【0009】
【化1】

【0010】
[R1からR3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜30の有機基を表す。但し、R1からR3の全構成原子中に、酸素原子は少なくとも2つ以上含まれる。Xは、炭素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、及びアンチモン原子から選ばれる。Yは、−S(=O)2−、フッ化アルキレン基、−O−CF2−、−C(=O)−CF2−、−O−C(=O)−CF2−、−C(=O)−O−CF2−、及び単結合から選ばれる。R4はフッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を表す。mとnは、Xが炭素原子の場合、m+n=3、且つn=0、1、2から選ばれる整数を表し、Xが窒素原子の場合、m+n=2、且つn=0、1から選ばれる整数を表し、Xがリン原子またはアンチモン原子の場合、m+n=6、且つn=0〜6から選ばれる整数を表し、Xがホウ素原子の場合、m+n=4、且つn=0〜3から選ばれる整数を表す。]
【0011】
【化2】

【0012】
[R5からR7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜15の有機基を表す。但し、R5からR7の全構成原子中に、酸素原子は1つ以下である。Zは炭素原子、及び硫黄原子から選ばれる。Zが炭素原子の場合はk=1を表し、Zが硫黄原子の場合はk=2を表す。R8はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【発明の効果】
【0013】
本発明の感光性ネガ型樹脂組成物を用いることにより、フォトリソグラフィー法を適用した場合に、ばらつきの少ない、三次元形状の再現性に優れた微細構造体を安定的に形成することが可能になる。本発明の感光性ネガ型樹脂組成物は、とくに、i線を用いたフォトリソグラフィー法を適用した場合において再現性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】液体吐出ヘッドの構成例を示す模式的斜視図である。
【図2】エネルギー発生素子を有する基板の概略図である。
【図3】本実施形態の感光性ネガ型樹脂組成物を用いた微細構造体の形成方法の一例を説明するための概略工程図である。
【図4】本実施形態の感光性ネガ型樹脂組成物を用いた微細構造体の形成方法の一例を説明するための概略工程図である。
【図5】テーパ角度を示す液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る感光性ネガ型樹脂組成物に関して詳細に説明する。
【0016】
(1)感光性ネガ型樹脂組成物
本発明の感光性ネガ型樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0017】
<(a)エポキシ基を有する化合物>
エポキシ基を有する化合物(以下、(a)成分とも略す)としては特に限定されないが、エポキシ重合が可能な化合物であって、エポキシ基を1分子中に複数有する多官能エポキシ樹脂化合物が好ましい。このような多官能エポキシ樹脂としては、例えば、多官能脂環型エポキシ樹脂、多官能フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、多官能オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能トリフェニル型ノボラック型エポキシ樹脂、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、多官能脂環型エポキシ樹脂又は多官能フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。その官能性は5官能以上が好ましく、例えば、ジャパンエポキシレジン社製「エピコート157S70」や、大日本インキ化学工業株式会社製の「エピクロンN−865」、ダイセル化学工業株式会社製「EHPE 3150」が市販品として入手でき、より好ましく用いられる。
【0018】
エポキシ基を有する化合物の軟化点は、特に限定されないが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また、180℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。
【0019】
エポキシ基を有する化合物の含有量は、感光性ネガ型樹脂組成物中、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることがさらに好ましい。また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、基板に塗布した際に、高感度で適当な硬度のレジスト層が得られる。
また、エポキシ基を有する化合物の含有量は、全固形分中、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。また、99.9質量%以下であることが好ましく、99.2質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
<(b)第1のオニウム塩>
第1のオニウム塩(以下、(b)成分とも略す)は、(b1)で表わされるカチオン部構造と、(b2)で表されるアニオン部構造との1対1の組み合わせからなる。
【0021】
【化3】

【0022】
(b1)で表わされるカチオン部構造において、R1からR3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜30の有機基を表す。但し、R1からR3の全構成原子中に、酸素原子は少なくとも2つ以上含まれる。
【0023】
(b2)で表わされるアニオン部構造において、Xは炭素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、及びアンチモン原子から選ばれる。Yは、−S(=O)2−、フッ化アルキレン基、−O−CF2−、−C(=O)−CF2−、−O−C(=O)−CF2−、−C(=O)−O−CF2−、及び単結合から選ばれる。R4はフッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を表す。mとnは、Xが炭素原子の場合、m+n=3、且つn=0、1、2から選ばれる整数を表し、Xが窒素原子の場合、m+n=2、且つn=0、1から選ばれる整数を表し、Xがリン原子またはアンチモン原子の場合、m+n=6、且つn=0〜6から選ばれる整数を表し、Xがホウ素原子の場合、m+n=4、且つn=0〜3から選ばれる整数を表す。
【0024】
(b1)と(b2)の一例を以下に挙げる。(b1)で表わされるカチオン部構造の特徴は、酸素原子を2個以上含有することに起因し、(b)成分の吸収波長の長波長化が可能となることから、i線等に高い感光性を有する点である。一方、(b2)で表されるアニオン部構造は、感光後、(b1)成分と分解し、(b2)の構造に起因する酸を発生させる。その後、発生酸の作用により、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基のカチオン重合反応を開始、促進することができる。該発生酸はエポキシ基を有する化合物を十分に硬化する酸強度を有していることがより好ましい。エポキシ基を有する化合物を十分に硬化する酸強度とは、ルイス酸においては六フッ化アンチモン酸以上の強酸であること、すなわちハメットの酸度関数−HO=18以上であることを意味する。ブレンステッド酸においては、ノナフルオロブタンスルホン酸以上の強酸であること、すなわちPKa=−3.57以上であることを意味する。
【0025】
【化4】

【0026】
(b1)で表わされるカチオン部構造の好ましい具体例を以下に挙げる。
【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
これらの中でも、高いi線感光性を有するという観点から、環状カルボニル構造を含むものが好ましく、環状カルボニル構造を含むR1からR3の例として、(b1−17)〜(b1−30)が挙げられる。また、R1からR3は、環状カルボニル構造を含む複素環基を含むことがより好ましく、環状カルボニル構造を含む複素環基を含むR1からR3の具体例として、例えば上記(b1−17)〜(b1−24)が挙げられる。R1からR3のうち少なくとも1つが環状カルボニル構造を含むものであることが好ましく、R1からR3のうち2つ以上が環状カルボニル構造を含むものであることがより好ましい。カルボニル基が共役系中にあることが、第1のオニウム塩(b)の吸収の長波長化に大きく寄与し、特に共役系が芳香族環を含むことによりi型感光性が向上する。
【0032】
(b1)で表わされるカチオン部構造において、上述のように、R1からR3の全構成原子中に酸素原子は少なくとも2つ以上含まれればよく、R1からR3のうち1つ又は2つは酸素を含まない構造を有してもよい。以下に、R1からR3の取り得る構造を例として説明する。(b1)で表されるカチオン構造において、R1からR3は、例えば、総炭素数6〜30のアリール基、総炭素数4〜30の複素環基、総炭素数1〜30のアルキル基、総炭素数2〜30のアルケニル基または総炭素数2〜30のアルキニル基を表し、これらは、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロ原子含有芳香族環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキレンオキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基の各基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。これらの置換基として、より具体的には、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基)、ヒドロキシ基、炭素数3〜6のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、炭素数2〜6のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基)、炭素数2〜6のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基)、炭素数1〜6のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基)、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基、炭素数7〜11のアリールカルボニル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基)、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基、炭素数7〜11のアリールチオカルボニル基、炭素数2〜6のアシロキシ基、炭素数6〜10のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基)、炭素数1〜6のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基)、炭素数6〜14のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基)、炭素数4〜8のヘテロ原子含有芳香族環基(例えば、フリル基、チエニル基)、炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基)、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜10のアリールスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキレンオキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基の各基およびハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)等が挙げられる。R1からR3はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。また、R1からR3中、2個以上のRが互いに直接または−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NRa−、−CO−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、炭素数1〜3のアルキレンもしくはフェニレン基を介して結合して環構造を形成してもよい。ここでRaは炭素数1〜5のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。なお、本願明細書において、アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状鎖を含む。
【0033】
(b2)で表わされるアニオン部構造の好ましい具体例を以下に挙げる。
【0034】
【化9】

【0035】
(b2)で表されるアニオン部構造において、R4は、n=0かつYが−S(=O)2−又は単結合の場合、少なくとも1つのフッ素原子を有する炭化水素基であることが好ましい。また、mが2以上の場合、一方のR4のいずれかの炭素原子と他方のR4のいずれかの炭素原子とが単結合を介して結合することにより環構造を形成していてもよい。R4としては、例えば、フッ素原子で置換されてもよいアルキル基又はアリール基である。
【0036】
(b2)で表わされるアニオン部構造において、Xがリン原子であることが好ましく、その具体例として、上記(b2−11)〜(b2−18)が挙げられる。ルイス酸系、すなわちXがアンチモン原子もしくはリン原子である場合、形成される硬化膜が耐熱性に優れる傾向にある。また、Xがリン原子の場合、アンチモン原子の場合よりも金属腐食性がより少ない。
【0037】
(b)成分は、単独又は2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0038】
(b)成分の含有量は、感光性ネガ型樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0039】
<(c)第2のオニウム塩>
第2のオニウム塩(以下、(c)成分とも略す)は、それぞれ特定の構造である(c1)で表わされるカチオン部構造と、(c2)で表されるアニオン部構造との1対1の組み合わせからなる。
【0040】
【化10】

【0041】
(c1)で表わされるカチオン部構造において、R5からR7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜15の有機基を表す。但し、R5からR7の全構成原子中、酸素原子は1つ以下である。
【0042】
(c2)で表わされるアニオン部構造において、Zは炭素原子、及び硫黄原子から選ばれる。Zが炭素原子の場合はk=1を表し、Zが硫黄原子の場合はk=2を表す。R8はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【0043】
本発明では、第1のオニウム塩(b)に加えて第2のオニウム塩(c)を含有していることが重要である。この理由は次の通りである。上述した通り、i線等による感光後、第1のオニウム塩(b)から発生した酸(b2)は強酸であり、エポキシ基のカチオン重合反応を開始、促進する為、この点では感光に適している。その一方で、酸(b2)が感光性ネガ型樹脂組成物に拡散すると、未露光部である吐出口となる部分が硬化してしまい、安定的な吐出口形状を形成することが困難な場合がある。そこで、本発明では、(c1)で表わされるカチオン部構造と、(c2)で表されるアニオン部構造からなる第2のオニウム塩(c)を用いる。特に、(c2)で表わされるアニオン部構造は、(c2)で表わされるアニオン部構造にプロトンが付与した酸を仮定すると、エポキシ重合ができない、もしくは重合を引き起こす酸性度が非常に弱い弱酸の構造となっている。したがって、第1のオニウム塩(b)から発生した酸(b2)は、第2のオニウム塩(c)と出会うと塩交換がおこり、エポキシ重合ができない又は重合を引き起こし難い弱酸に変換される。即ち、第2のオニウム塩(c)は、エポキシ重合において、エポキシ重合を促進する酸に対する良好なクエンチャーとして機能することができる。また、(c1)で表わされるカチオン部構造の特徴として、R5からR7の全構成原子中の酸素原子の個数が1つ以下であるという構造に起因し、i線等に対して感光性が低いことがある。これにより、露光時に第2のオニウム塩(c)が感光してしまうことを抑制することができる。以上の通り、本発明では第1のオニウム塩と第2のオニウム塩とが相乗的に作用することにより、ばらつきの少ない、三次元形状の再現性に優れた微細構造体を安定的に形成することが可能になる。
【0044】
(c1)と(c2)の一例を以下に挙げる。
【化11】

【0045】
(c1)で表わされるカチオン部構造において、R5からR7は、例えば、総炭素数6〜15のアリール基、または総炭素数1〜15のアルキル基を表し、これらは、例えば、アルキル基、フッ化アルキル基、ヒドロキシ基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基の各基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。これらの置換基として、より具体的には、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基)、炭素数1〜6のフッ化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基)、ヒドロキシ基、炭素数3〜6のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、炭素数1〜6のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基)、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基、炭素数7〜11のアリールカルボニル基、炭素数6〜10のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基)、炭素数1〜6のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基)の各基およびハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)等が挙げられる。R5からR7はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。また、R5からR7中、2個以上のRが互いに直接または炭素数1〜3のアルキレンもしくはフェニレン基を介して結合することにより環構造を形成してもよい。
【0046】
(c1)で表わされるカチオン部構造の好ましい具体例を以下に挙げる。
【0047】
【化12】

【0048】
(c2)で表わされるアニオン部構造において、R8は、例えば、総炭素数1〜20のアルキル基、又は総炭素数6〜20のアリール基を表し、これらは、例えば、アルキル基、オキソ基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。これらの置換基として、より具体的には、例えば、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基)、炭素数3〜6のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、炭素数1〜6のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基)、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基等が挙げられる。また、R8は、2個以上の炭素原子が互いに直接または炭素数1〜3のアルキレンを介して結合することにより環構造を形成してもよい。環構造は単環でも多環でもよい。
【0049】
(c2)で表わされるアニオン部構造の好ましい具体例を以下に挙げる。
【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
(c2)で表わされるアニオン部構造において、R8は、芳香族炭化水素又は脂環炭化水素を含有する構造であることが好ましい。芳香族炭化水素又は脂環炭化水素を含有する構造である場合、その嵩高さや炭素密度に起因し、(c2)で表わされるアニオンから発生した酸が加熱工程中に揮発して大気雰囲気中に蒸散することが抑制される。芳香族炭化水素又は脂環炭化水素を含有するR8を有するアニオン部構造の具体例としては、例えば、上記(c2−1)〜(c2−11)、(c2−17)〜(c2−25)、(c2−28)〜(c2−40)、(c2−48)〜(c2−56)が挙げられる。
【0053】
(c2)で表わされるアニオン部構造において、Zが硫黄原子であることが好ましい。Zが硫黄原子の場合、Zが炭素原子の場合に比べ、アニオンをより安定化することができる。そのため、アニオン部の求核性が抑制され、アニオン部が(c1)のカチオン部を求核攻撃することに由来して第2のオニウム塩が分解することを抑制することができる。
【0054】
(c)成分は、単独又は2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0055】
(c)成分の含有量は、感光性ネガ型樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましい。また、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましい。
【0056】
また、感光性ネガ型樹脂組成物における(b)成分と(c)成分の配合量は、以下の関係を満たすことが好ましい。
【0057】
第1のオニウム塩(b)のモル数>第2のオニウム塩(c)のモル数
【0058】
この関係を満たす場合、クエンチャーとして機能する(c)成分に対してエポキシ重合に有効な酸を発生させる(b)成分が多い状態となり、高感度化を図ることができる。
【0059】
また、以下の関係を満たすことがより好ましい。
【0060】
第1のオニウム塩(b)のモル数×0.7>第2のオニウム塩(c)のモル数>第1のオニウム塩(b)のモル数×0.02
【0061】
第2のオニウム塩の添加量を増し、第2のオニウム塩(c)のモル数を第1のオニウム塩(b)のモル数×0.02より大きくすることで、第2のオニウム塩のクエンチャーとしての効果を十分に得ることができる。
【0062】
また、本発明の感光性ネガ型樹脂組成物は、第1のオニウム塩(a)及び第2のオニウム塩(b)以外の第3のオニウム塩を含んでもよい。第3のオニウム塩としては、例えば、上記(c1)で表されるカチオン部構造及び上記(b2)で表されるアニオン部構造を含有するものが挙げられる。この際、第3のオニウム塩の含有量は、感光性ネガ型樹脂組成物100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましい。また、25質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
【0063】
以上より、本発明の感光性ネガ型樹脂組成物を用いることにより、フォトリソグラフィー法を適用した場合に、ばらつきの少ない、三次元形状の再現性に優れた微細構造体を安定的に形成することが可能になる。本発明の感光性ネガ型樹脂組成物は、特にi線を用いたフォトリソグラフィー法を適用した場合において再現性が優れている。
【0064】
また、酸のクエンチャーとして、含窒素原子有機化合物、特にアミン化合物がフォトレジストにおいて使用されることがある。しかし、本発明のようなエポキシ基を有する化合物をアミン化合物と混合した場合、アミン化合物が硬化剤として機能し、暗反応において硬化が進行する場合がある。そのため、アミン化合物は本発明のようなエポキシ基を有する化合物と混在して長期保存することが困難である。一方で、本発明の(c)成分は、エポキシ基を有する化合物と混合しても暗反応の発生が極めて低いため、エポキシ基を有する化合物と混在させた状態で長期保存することが可能である。
【0065】
<製造方法>
本発明による感光性ネガ型樹脂組成物を用いて、例えば、液体吐出ヘッドを形成することができる。液体吐出ヘッドとしては、特に限定されるものではないが、一例として、インクジェット記録ヘッドが挙げられる。
【0066】
図1にインクジェット記録ヘッドの構成例を説明する模式的斜視図を示す。図1に示すインクジェット記録ヘッドは、エネルギー発生素子2を複数有する基板上に、インク吐出口(吐出口)5と該インク吐出口5に連通するインク流路(液体流路)3cを構成する流路形成層4を有する。また、基板1には、インク(液体)をインク流路3cに供給するためのインク供給口(液体供給口)6が設けられている。図2に示すように、基板1上にエネルギー発生素子2が所定のピッチで複数個配置されている。
【0067】
以下にインクジェット記録ヘッドの製造方法について図3及び4を参照して説明する。図3及び4は、図1及び図2のA−B断面における断面図に相当する。なお、図3の製造方法を製法1と表し、図4の製造方法を製法2と表す。
【0068】
なお、エネルギー発生素子2には素子を動作させるための制御信号入力電極(不図示)が接続されている。
<製法1>
まず、図3(a)に示すように、エネルギー吐出素子2を有する基板1を用意する。
【0069】
基板1は、Si基板であることが好ましい。特に、シリコン単結晶体であることが好ましく、基板1の貫通孔の穿設を異方性エッチングにより行う場合は、結晶方位<100>のシリコン単結晶体であることが好ましい。基板1の貫通孔の穿設をドライエッチング、サンドブラスト、レーザーにより行う場合は、結晶方位<110>のシリコン単結晶体などであってもよい。
【0070】
エネルギー発生素子2は、インク液滴を吐出させるための吐出エネルギーがインクに与えられ、インク液滴がインク吐出口から吐出可能なものであれば、特に限定はされない。例えば、エネルギー発生素子2として発熱抵抗素子が用いられる場合、該発熱抵抗素子が近傍のインクを加熱することにより、インクに状態変化を生起させ吐出エネルギーを発生する。
【0071】
次に、図3(b)に示すように、基板1上に、溶解可能な樹脂組成物を塗布し、インク流路パターン用の溶解可能な樹脂層3aを形成する。
【0072】
溶解可能な樹脂層3aの形成方法としては、例えば、ポジ型感光性樹脂を適宜溶媒に溶解し、スピンコート法等により基板1上に塗布する。その後、加熱することで溶解可能な樹脂層3aを形成することができる。溶解可能な樹脂層3aの厚さとしては、所望のインク流路の高さであり、特に限定されるものではないが、例えば、2〜50μmであることが好ましい。
【0073】
次に、図3(c)に示すように、溶解可能な樹脂層3aに放射線を照射し、現像することにより、インク流路パターン3bを形成する。
【0074】
次に、インク流路パターン3b及び基板1上に、本発明の感光性ネガ型樹脂組成物を配置して流路形成層4を形成する。
【0075】
流路形成層4の厚さとしては、インク流路パターン3b上の厚みとして2μm以上であることが好ましい。また、厚さの上限は、特に制限されるものではないが、インク吐出口部の現像性を考慮して、例えば、インク流路パターン3b上の厚みとして100μm以下である。
【0076】
次に、流路形成層4にi線光を照射し、その後MIBK(メチルイソブチルケトン)、等により現像を行い、パターニング処理する。さらに、IPA等によりリンス処理を行うことで、インク吐出口5を形成する(図3(d))。
【0077】
i線の中心波長は、365nmである。
【0078】
次に、図3(e)に示すように、エッチング処理など適当な方法を用いてインク供給口6を形成する。
【0079】
次に、図3(f)に示すように、インク流路パターン3bを適当な溶媒を用いて溶解除去する。
【0080】
溶媒としては、例えばアルカリ水溶液や有機溶媒を用いることができる。
【0081】
その後、基板1をダイシングソーやドライエッチング等により切断分離、チップ化し、エネルギー発生素子2を駆動させるための電気的接合を行う。さらに、インク供給のためのチップタンク部材を接続して、インクジェット記録ヘッドを完成させる。
【0082】
なお、上記の方法は、インクジェットヘッドの製造方法に限られず、中空パターンを形成するパターン形成方法としても有効である。
【0083】
<製法2>
まず、図4(a)に示すように、基板1上に、溶解可能な樹脂組成物を塗布し、インク流路パターン3bを形成する(図4(a))。
【0084】
次に、図4(b)に示すように、インク流路パターン3b及び基板1上に、本発明の感光性ネガ型樹脂組成物からなる流路形成層4を形成する。
【0085】
次に、図4(c)に示すように、インク流路形成層4に第一のフォトマスク10を介してi線光を照射する。これに第一の露光後ベークを行うと、表面へこみ7や吐出口の潜像である、第一の吐出口パターン8aが形成される。上記第一の露光後ベークの条件は、特に制限されないが、例えば100℃で4分間の熱処理である。
【0086】
次に、再度、図4(d)に示すように、流路形成層4に第二のフォトマスク11を介してi線光を照射する。第二のフォトマスク11は第一のフォトマスク10とは異なる開口部を有する。この際、第一の露光の未露光部の少なくとも一部に第二の露光を行う。これに第二の露光後ベークを行うと、新たに、吐出口の潜像である第二の吐出口パターン8bが形成される。上記第二の露光後ベークの条件は、特に制限されないが、例えば90℃で4分間の熱処理である。
【0087】
第二のフォトマスク11は、ノズル空孔を形成するために、ノズル形に対応した円形や楕円形の遮光部が存在するものである。一方で、第一のフォトマスク10は、第二のフォトマスク11のノズル遮光部と同じ位置に遮光部が存在し、かつ、第二のフォトマスク11の遮光部を覆い、より大きな面積の遮光部を有する。
【0088】
次に、MIBK(メチルイソブチルケトン)等により現像処理を行う。さらに、IPA等によりリンス処理を行うことで、図4(e)に示すように、吐出口5を形成する。
【0089】
次に、図4(f)に示すように、エッチング処理など適当な方法を用いてインク供給口8を形成する。そして、インク流路パターン3bを適当な溶媒に溶解して除去し、インク流路3cを形成する。
【0090】
その後、基板1をダイシングソー等により切断分離、チップ化し、エネルギー発生素子2を駆動させるための電気的接合を行う。さらに、インク供給のためのチップタンク部材を接続して、インクジェット記録ヘッドを完成させる。
【0091】
なお、上記の方法は、インクジェットヘッドの製造方法に限られず、中空パターンを形成するパターン形成方法としても有効である。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0093】
<実施例1>
表1に記載の配合に従って、(a)成分、(b)成分、(c)成分を混合し、さらに、溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルを(a)成分100質量部に対して80質量部を混合し、感光性樹脂組成物を得た。表1において、単位は質量部を表す。
【0094】
これら感光性樹脂組成物を、シリコンウエハーからなる支持体上にスピンコーターで塗布した後、60℃、9分プリベーク乾燥して40μmの膜厚を有する感光性樹脂組成物層を得た。プリベーク後、上記製法1及び製法2に従い、FPA−3000 i5+(i線ステッパー:キヤノン社製)を用いて所望のパターンが描写されたマスクを介してパターン露光を行い、ホットプレートにより90℃4分の露光後ベーク処理を行った。
【0095】
なお、製法1において、感光性ネガ型樹脂組成物からなる流路形成層4の厚さは、インク流路パターン3b上の厚みとして20μmとした。また、製法2において、感光性ネガ型樹脂組成物からなる流路形成層4の厚さは、インク流路パターン3b上の厚みとして25μmとした。
【0096】
製法1においてはi線ステッパーのデフォーカス設定を適宜変更することで、例えば0.1〜10度程度の所望のテーパ角度を得ることができる。本実施例ではテーパ角度が製法1で5度、製法2で10度となるように実施した。また、その後、CDS−860R+(キヤノン社製)を用いて現像処理を行った。次いで、現像後の樹脂パターンを基板ごと、オーブンを用いて140℃で1時間のポストベークを行い、支持体上に硬化した硬化物のレジストパターンを得た。
【0097】
<評価>
図5に示すテーパ角度9を、図1や図2のA−B断面図の方向で、SEM観察することから断面写真を取得し算出した。測定は同じパターン中の5つの吐出口について1点ずつ計測した。得られた5点のテーパ角度の平均値と、該平均値から最も離れている点の値との差分を算出し、算出した差分を平均値で割り、それに100を掛けることで得られた値(%)を、テーパ角度ばらつきと定義した。
【0098】
<実施例2〜6、8>
(a)成分、(b)成分及び(c)成分を表1に記載の配合に従って用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、評価した。
【0099】
<実施例7>
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を表1に記載の配合に従って用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、評価した。(d)成分は、カチオン部構造が下記化合物で表されるc1−21であり、アニオン部構造がb−23である。
【0100】
(c1−21):
【0101】
【化15】

【0102】
<実施例9>
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び増感剤を表1に記載の配合に従って用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、評価した。増感剤e−1としては、1−ナフトールを用いた。
【0103】
<比較例1、2>
【0104】
(a)成分及び(d)成分を表1に記載の配合に従って用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、評価した。
【0105】
<比較例3>
(a)成分及び(b)成分を表1に記載の配合に従って用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、評価した。
尚、実施例1〜9、比較例3は、いずれも「第1のオニウム塩のモル数>前記第2のオニウム塩のモル数」の関係を満たす。
【0106】
【表1】

【0107】
(a−1):エピクロンN−865 (大日本インキ化学工業株式会社製 商品名)
(a−2):JER157S70 (ジャパンエポキシレジン社製 商品名)
(a−3):EHPE 3150 (ダイセル化学工業株式会社製 商品名)
【0108】
実施例1〜9では、(b)成分と(c)成分を含有する感光性ネガ型樹脂組成物を用いて吐出口のテーパ角度のばらつきを求めたところ、ばらつきが5%以下となり、高い再現性が得られた。
【0109】
一方で、比較例1〜3の感光性ネガ型樹脂組成物においては、テーパ角度ばらつきは10%〜15%と、テーパ角度の再現性は十分ではなかった。
【0110】
以上より、本発明の感光性ネガ型樹脂組成物は、テーパ角度を再現良く再現することができ、ばらつきの少ない、三次元形状の再現性に優れた微細構造体を安定的に形成することが可能になる。したがって、MEMS用等の微細加工を施した各種デバイスに好適に用いることが可能となる。
【符号の説明】
【0111】
1 基板
2 エネルギー発生素子
3a 溶解可能な樹脂層
3b インク流路パターン
3c インク流路
4 インク流路形成層
5 吐出口
6 インク供給口
7 表面へこみ
8a 第一の吐出口パターン
8b 第二の吐出口パターン
9 テーパ角度
10 第一のフォトマスク
11 第二のフォトマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ基を有する化合物と、
(b)(b1)で表わされるカチオン部構造および(b2)で表されるアニオン部構造を含有する第1のオニウム塩と、
(c)(c1)で表わされるカチオン部構造および(c2)で表されるアニオン部構造を含有する第2のオニウム塩と、
を含むことを特徴とする感光性ネガ型樹脂組成物。
【化1】

[R1からR3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜30の有機基を表す。但し、R1からR3の全構成原子中に、酸素原子は少なくとも2つ以上含まれる。Xは、炭素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、及びアンチモン原子から選ばれる。Yは、−S(=O)2−、フッ化アルキレン基、−O−CF2−、−C(=O)−CF2−、−O−C(=O)−CF2−、−C(=O)−O−CF2−、及び単結合から選ばれる。R4はフッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を表す。mとnは、Xが炭素原子の場合、m+n=3、且つn=0、1、2から選ばれる整数を表し、Xが窒素原子の場合、m+n=2、且つn=0、1から選ばれる整数を表し、Xがリン原子またはアンチモン原子の場合、m+n=6、且つn=0〜6から選ばれる整数を表し、Xがホウ素原子の場合、m+n=4、且つn=0〜3から選ばれる整数を表す。]
【化2】

[R5からR7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜15の有機基を表す。但し、R5からR7の全構成原子中に、酸素原子は1つ以下である。Zは炭素原子、及び硫黄原子から選ばれる。Zが炭素原子の場合はk=1を表し、Zが硫黄原子の場合はk=2を表す。R8はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
前記第1のオニウム塩のモル数>前記第2のオニウム塩のモル数、の関係を満たす請求項1に記載の感光性ネガ型樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b)成分は、少なくともi線に対する感光性を有する請求項1または2に記載の感光性ネガ型樹脂組成物。
【請求項4】
1からR3のうち少なくとも1つは、環状カルボニル構造を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の感光性ネガ型樹脂組成物。
【請求項5】
8は、芳香族炭化水素又は脂環炭化水素を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の感光性ネガ型樹脂組成物。
【請求項6】
Zが硫黄原子である請求項1乃至5のいずれかに記載の感光性ネガ型樹脂組成物。
【請求項7】
第1のオニウム塩のモル数×0.7>第2のオニウム塩のモル数>第1のオニウム塩のモル数×0.02の関係を満たす請求項2に記載の感光性ネガ型樹脂組成物。
【請求項8】
Xがリン原子である請求項1乃至7のいずれかに記載の感光性ネガ型樹脂組成物。
【請求項9】
基板上に形成される微細構造体であって、請求項1乃至8のいずれかに記載の感光性ネガ型樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする微細構造体。
【請求項10】
請求項9に記載の微細構造体により流路形成層が構成されている液体吐出ヘッド。
【請求項11】
(1)請求項1乃至8のいずれかに記載の感光性ネガ型樹脂組成物を基板上に配置する工程と、
(2)前記感光性ネガ型樹脂組成物をi線を用いたフォトリソグラフィーによりパターニング処理する工程と、
を含むことを特徴とする微細構造体の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−141578(P2012−141578A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234930(P2011−234930)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】