説明

感光性化合物および該化合物からなる感光性ポリマー

【課題】光配向法に適した感光性化合物および該化合物からなる感光性ポリマーの提供。
【解決手段】式(1)で表される、感光性化合物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性化合物および該化合物からなる感光性ポリマーに関する。さらには、該ポリマーからなる光配向剤、該光配向剤を用いた液晶配向膜、および該液晶配向膜を用いた光学フィルムや液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイ、テレビ等の様々な液晶表示装置に使われている。さらに、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブ等のオプトエレクトロニクス関連素子としても利用されている。従来の液晶表示素子としては、ネマチック液晶を用いた表示素子が主流であり、一方の基板近傍にある液晶の配向方向と他方の基板近傍にある液晶の配向方向とが90°の角度でねじれているTN(Twisted Nematic)モード、配向方向が通常180°以上の角度でねじれているSTN(Super Twisted Nematic)モード、薄膜トランジスタを使用した、いわゆるTFT(Thin−Film−Transistor)モードの液晶表示素子が実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの液晶表示素子は、画像を適正に認知できる視野角が狭く、斜め方向から見たときに、輝度やコントラストが低下することがあり、また中間調で輝度反転を生じることがある。近年では、この視野角の問題は、光学補償フィルムを用いたTN型液晶表示素子、垂直配向と突起構造物の技術を併用したMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード(特許文献1参照)または横電界方式のIPS(In−Plane Switching)モード(特許文献2参照)等により改良されている。
【0004】
液晶表示素子の技術の発展は、単にこれらの駆動方式や素子構造の改良のみならず、表示素子に使用される部材の改良によっても達成されている。表示素子に使用される部材のなかでも、特に液晶配向膜は、液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の一つであり、表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
【0005】
液晶配向膜は、液晶表示素子の均一な表示特性のために液晶の分子配列を均一に制御することが必要である。そのため、基板上の液晶分子を一方向に均一に配向させ、更に基板面から一定の傾斜角(プレチルト角)を発現させることが求められる。
【0006】
また、画像表示装置のコントラスト向上や視野角範囲の拡大を実現するために、光学補償フィルムや位相差フィルムとして、例えば、屈折率異方性を有する延伸フィルムや、重合性液晶性化合物を配向させた後に化合物を重合させたフィルムが用いられている。この重合性液晶性化合物を配向させるためにも液晶配向膜が用いられる。基板上の液晶分子の方向を均一に並べる液晶配向膜は、液晶表示素子の製造工程における様々な場面で利用され、その技術は重要かつ必要不可欠なものとなっている。
【0007】
液晶配向膜は、液晶配向剤を用いて調製される。現在、主として用いられている液晶配向剤は、ポリアミック酸若しくは可溶性のポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。このような溶液を基板に塗布した後、加熱等の手段により成膜してポリイミド系液晶配向膜を形成する。ポリアミック酸以外の種々の液晶配向剤も検討されているが、耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、光学特性、表示特性等の点から、ほとんど実用に至っていない。
【0008】
工業的には、簡便で大面積の高速処理が可能なラビング法が、配向処理法として広く用いられている。ラビング法は、ナイロン、レイヨン、ポリエステル等の繊維を植毛した布を用いて液晶配向膜の表面を一方向に擦る処理であり、これによって液晶分子の均一な配向を得ることが可能になる。しかし、ラビング法は発塵や静電気の発生が多く、このため配向欠陥や液晶素子への影響が心配されている。
【0009】
そこで近年、ラビング法に代わる液晶配向制御方法が開発されている。光を照射して配向処理を施す光配向法については、光分解法、光異性化法、光二量化法、光架橋法等多くの配向方法が提案されている(非特許文献1、特許文献3および特許文献4参照。)。光配向法はラビング法と異なり非接触の配向方法であり、原理的に発塵や静電気の発生がラビング処理より少ない。
【0010】
光配向法により配向処理を施された、配向性の良好な液晶配向膜を用いることにより、液晶配向膜に接している液晶単分子層の分子配向状態を制御することができる。こうして、液晶表示素子としての性能を改善することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2947350号公報
【特許文献2】特許第2940354号公報
【特許文献3】特開2005−275364号公報
【特許文献4】特開平11−15001号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】液晶 第3巻第4号、日本液晶学会編集委員会編、日本液晶学会発行、1999年、262ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、光配向法に適した感光性化合物および該化合物からなる感光性ポリマーを提供することである。そして、該ポリマーからなる光配向剤を提供することである。さらには、本光配向剤を用いた、従来のラビング法による配向処理を行わずとも配向性が良好な、光配向法に適した液晶配向膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意研究開発を進めた結果、液晶配向剤として感光性ポリマーを用いた光配向剤を使用することで、高温加熱処理やラビング処理が必要ない、光配向法に適した、配向の安定性の高い液晶配向膜の提供を実現した。すなわち本発明は以下のとおりである。
【0015】
[1] 式(1)で表される感光性化合物:



式(1)において、Yは、式(2−1)または(2−2)で表される2価の基であり;
は、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシで置き換えられてもよく;
は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CONH−、−NHCO−、−(CH−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−であり;
およびRは独立して水素、フッ素、塩素、−OH、−C≡N、−NO、トリフルオロメチル、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり;
は独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
nは0〜3であり;
式(2−1)および(2−2)において、WおよびWは独立して水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシである。
【0016】
[2] [1]に記載の式(1)において、Yが[1]に記載の式(2−1)または(2−2)で表される2価の基であり;
が、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシで置き換えられてもよく;
が単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−または−CHCH−COO−であり;
およびRが独立して水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
が独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
nが0または1であり;
式(2−1)および(2−2)において、WおよびWが独立して水素、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシである;
[1]に記載の感光性化合物。
【0017】
[3] 式(1−1)で表される感光性化合物:

式(1−1)において、WおよびWは独立して水素、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシであり;
は、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシで置き換えられてもよく;
は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−または−CHCH−COO−であり;
は水素または炭素数1〜5のアルキルであり;
は水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
は独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
nは0または1である。
【0018】
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の感光性化合物を含有する組成物。
【0019】
[5] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の感光性化合物を重合して得られるポリマー。
【0020】
[6] 式(3)で表される構成単位を有する感光性ポリマー



式(3)において、Yは、式(2−1)または(2−2)で表される2価の基であり;
は、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシで置き換えられてもよく;
は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CONH−、−NHCO−、−(CH−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−であり;
およびRは独立して水素、フッ素、塩素、−OH、−C≡N、−NO、トリフルオロメチル、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり;
は独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
nは0〜3であり;
式(2−1)および(2−2)において、WおよびWは独立して水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシである。
【0021】
[7] [6]に記載の式(3)において、Yが、[6]に記載の式(2−1)または(2−2)で表される2価の基であり;
が、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシで置き換えられてもよく;
が単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−または−CHCH−COO−であり;
およびRが独立して水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
が独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
nが0または1であり;
式(2−1)および(2−2)において、WおよびWが独立して水素、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシである[6]に記載の感光性ポリマー。
【0022】
[8] 式(3−1)で表される感光性ポリマー:

式(3−1)において、WおよびWは独立して水素、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシであり;
は、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシで置き換えられてもよく;
は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−または−CHCH−COO−であり;
は水素または炭素数1〜5のアルキルであり;
は水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
は独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
nは0または1である。
【0023】
[9] 重量平均分子量が1000〜500000である[5]〜[8]のいずれか1項に記載の感光性ポリマー。
【0024】
[10] [5]〜[8]のいずれか1項に記載の構成単位を有するホモポリマー。
【0025】
[11] [6]に記載の式(3)で表される構成単位と式(3)で表される以外の構成単位の少なくとも一つからなるコポリマー。
【0026】
[12] [5]〜[11]のいずれか1項に記載のポリマーを用いた感光性材料。
【0027】
[13] [5]〜[11]のいずれか1項に記載のポリマーを用いた液晶配向膜用の光配向剤。
【0028】
[14] [13]に記載の光配向剤を用いて製造される液晶配向膜。
【0029】
[15] [14]に記載の液晶配向膜を用いて製造される液晶表示素子。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、光反応性基を有する化合物を利用して液晶配向膜を形成するため、従来のラビング処理に見られる煩雑な処理工程やその後の発塵や静電気が発生しない。そのため配向欠陥のない光学均一性の高い液晶配向膜を作成できる。また、該液晶配向膜を用いて製造された光学フィルム、液晶表示素子は、高い配向安定性を保つことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明について詳細に説明する。
本発明において液晶配向膜は、光反応性基を有するポリマー(以下「感光性ポリマー」)の少なくとも一種を用いている。感光性ポリマーとは、例えば、平面偏光の照射により光異性化反応、光二量化反応、および光分解反応の少なくとも1つを起こす化合物である。該感光性ポリマーは、光照射により光異性化反応、光二量化反応を起こす化合物であるのが好ましく、光二量化反応を起こす化合物であるのが特に好ましい。該感光性ポリマーは、重量平均分子量が1000〜500000程度のものが好ましい。単一モノマーの重合体であっても異なる2種以上のモノマーの重合体であってもよい。また、異なる2種以上のモノマーから構成されたコポリマーの場合、複数の重合性基を有するモノマーを用いてもよい。
【0032】
感光性ポリマーのうち、光異性化反応を起こす化合物とは、光の作用で立体異性化または構造異性化を起こす化合物をいう。光異性化化合物としては、例えば桂皮酸化合物(K.Ichimura et al.,Macromolecules,30,903(1997))、アゾベンゼン化合物(K. Ichimura et al.,Mol.Cryst.Liq.Cryst .,298,221(1997))、ヒドラゾノ−β−ケトエステル化合物(S. Yamamura et al., Liquid Crystals, vol. 13, No. 2, page 189 (1993))、スチルベン化合物(J.G.Victor and J.M.Torkelson,Macromolecules,20,2241(1987))、およびスピロピラン化合物(K. Ichimura et al., Chemistry Letters, page 1063 (1992) ;K.Ichimura et al., Thin Solid Films, vol. 235, page 101 (1993) )が挙げられる。また、これらの骨格をポリマー主鎖あるいはポリマー側鎖に有する化合物も含まれる。これらの中で、−CH=CH−、または−N=N−からなる二重結合構造を含む光異性化化合物が好ましい。
【0033】
感光性ポリマーのうち、光二量化反応を起こす化合物とは、光の照射によって、二つの基の間に付加反応を起こして環化する化合物をいう。光二量化化合物としては、例えば桂皮酸誘導体(M. Schadt et al., J. Appl. Phys., vol. 31, No. 7, page 2155 (1992))、クマリン誘導体(M. Schadt et al., Nature., vol. 381, page 212 (1996))、カルコン誘導体(小川俊博他、液晶討論会講演予稿集,2AB03(1997))、ベンゾフェノン誘導体(Y. K. Jang et al., SID Int. Symposium Digest, P-53(1997))が挙げられる。また、これらの骨格を有する誘導体をポリマー主鎖又は側鎖に有する化合物も含まれる。中でも、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体骨格を側鎖に有するポリマーが好ましく、桂皮酸誘導体骨格を側鎖に有するポリマー(側鎖型ポリマー)がより好ましい。
【0034】
このような感光性ポリマーを含む材料を感光性材料とよぶ。
感光性材料は液晶配向膜の他に、フォトレジスト、ホログラフィー、光駆動材料、位相差フィルムおよび偏光発光膜などに利用できる。
【0035】
液晶配向膜に用いられる光反応性基としては、光反応感度の高さ、透明性、製造の容易さなどから桂皮酸誘導体が好まれて用いられている(特開2007−224273)。しかし、このような重合体の主鎖がポリイミドである感光性ポリマーは基板へ塗布するためにN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に溶解させる必要があり、さらに成膜の際に約180度の高温で焼成する必要がある。そのため、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に侵食されたり、150度以上の耐熱性を有しない基板(TACなどのフィルム)には用いることが難しい。
【0036】
桂皮酸誘導体骨格を側鎖に有するポリマーは、液晶配向膜として使用される(特許第4011652号公報)。この感光性ポリマーの繰り返し単位を構成する重合性基としては、例えばビニルエステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が用いられる。これは重合の容易さに起因する。しかしながら、これら重合性基を有する側鎖型ポリマーでは耐溶剤性、耐熱性、密着性、機械的強度などが低い傾向にある。このような問題を解決するために、多官能アクリレートとの共重合を行うなどの化学的な手法や、フィラーを添加するなどの物理的な手法による、耐熱性、機械的強度の向上が考えられるが、このような手法は、光反応感度の低下や、透明性の低下などの新たな問題を生じることがある。
【0037】
式(1)で表される本発明の化合物は、イタコン酸を重合性基として用いているため、アクリロイル基を有する誘導体とは異なり、重合性基と感光基の他に置換基を有する。この置換基は、耐溶剤性、耐熱性、密着性、機械的強度などの特性を向上させるのに有用である。そこで発明者らは、式(3)で表される構成単位を含む感光性ポリマーを合成し、液晶配向膜として評価した。その結果、公知の材料に比べ、少ない照射量で液晶化合物を配向させる事ができ、配向性が優れている事を見出した。さらに、基板に対する密着性、および耐溶剤性に優れ、また可視領域での高い透過率や高い膜硬度を有するなどの特性を見出し、本発明に至った。
【0038】
本願明細書において、式(1)で表わされる感光性化合物を化合物(1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても同様に略称することがある。化学式の記号について説明する際に用いる用語「任意の」は、「元素(または官能基)の位置だけでなくその数においても自由に選択できること」を意味する。そして例えば、「任意のAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよい」という表現は、1つのAはB、CおよびDのいずれか1つで置き換えられてもよく、Aの任意の2つは、B、CまたはDの2つで置き換えられてもよく、また、BとC、BとD、またはCとDで置き換えられてもよい。任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいとするとき、結果として結合基−O−O−が生じるような置き換えは含まれない。
また、重合性基を一つ有することを単官能と呼ぶことがある。また、2つ以上の重合性基を有することを多官能、または、重合性基の数に応じた呼称(例えば、2つの重合性基を有する場合を2官能)で呼ぶことがある。
また、あるA化合物に任意の官能基を導入したり、原子などの置き換えを行った化合物を、誘導体あるいはA誘導体と呼ぶことがある。
感光性ポリマーを、単にポリマーと略すことがある。また、液晶表示素子を表示素子、液晶配向膜を配向膜と略すことがある。
【0039】
本発明の感光性化合物は、式(1−1)および(1−2)で表される。好ましくは式(1−1)で表される感光性化合物である。

【0040】
式(1−1)中、W、W、A、Z、Q、R、Rおよびnは、前記式(1−1)中のW、W、A、Z、Q、R、Rおよびnと同義である。式(1−2)中の各記号の定義も、式(1−1)の記号の定義と同じである。
以下に、式(1−1)および(1−2)で表される感光性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
【0041】

【0042】

【0043】

【0044】
本発明の感光性化合物を用いて、感光性ポリマーを得る。この感光性ポリマーは、少なくとも1種の桂皮酸誘導体を含有する。
好ましくは、式(3)で表される構成単位を有する感光性ポリマーである。

【0045】
さらに好ましくは、式(3−1)で表される構成単位を有する感光性ポリマーである。


【0046】
式(3)および(3−1)中の各記号の定義は、前記式(3)および(3−1)中の記号の定義と同義である。
以下に、式(3−1)で表される構成単位を有する感光性ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
【0047】

【0048】
感光性ポリマーは、式(3)で示される構成単位を1種または2種以上含むポリマーの混合物でもよい。また、感光性ポリマーは、式(3)の構成単位以外の他の構成単位を1種または2種以上含むコポリマーでもよい。コポリマー中の式(3)の構成単位以外の他の構成単位については特に構造は制限されない。また、構成単位を2種以上含むコポリマーはランダムコポリマーであってもブロックコポリマーであってもよい。
【0049】
式(3)の構成単位以外の他の構成単位は、特に限定はないが、例えば式(M−1)および(M−2)で表される桂皮酸誘導体を含有する化合物から誘導される構成単位を用いることが出来る。

【0050】
[式(M−1)および(M−2)中、W、W、A、ZおよびQはそれぞれ前記式(3)中のW、W、A、ZおよびQと同義であり、nは0〜4であり、Rは水素、メチル、フッ素、トリフルオロメチルであり、Rは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のフルオロアルキルまたは水素であり、Rは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、水素、塩素、フッ素、−OH、−C≡N、−NO、−CFまたは−OCFである。
以下に、具体例を示す。本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
【0051】

【0052】

【0053】
以下の説明においては、化合物(M−1)および化合物(M−2)を総称して化合物(M)と表記することがある。本発明の感光性ポリマーが、化合物(1)のホモポリマーである時、高い配向性を示すが、重合度が低下するため耐溶剤性が低い傾向になる。化合物(1)と化合物(M)とのコポリマーは、所望の特性を発現させるという観点からはより好ましい。化合物(1)の割合は、化合物(1)と化合物(M)との合計重量を基準として、1〜60重量%が好ましく、1〜50重量%がさらに好ましい。感光性ポリマーは、化合物(1)から誘導される構成単位、化合物(M)とから誘導される構成単位、およびそれ以外の構成単位を含有してもよい。
【0054】
式(M−1)および(M−2)から誘導される以外のその他の構成単位としては、工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される構成単位が使用できる。
以下、他の構成単位を誘導するモノマーの具体例を挙げる。本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
【0055】
工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される構成単位を与えるモノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物として、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、およびベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸またはその誘導体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル類;
ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート化合物;
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびモノヒドロキシペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート化合物;
グリシジル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、および(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物がある。
【0056】
また、これら化合物として、市販品の単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物をそのまま用いることができる。具体的には、東亜合成化学工業(株)製のアロニックスM−5400(フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート)、同M−5700(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート)、同M−215(イソシアヌル酸エチレンオキシサイド変性ジアクリレート)、同M−220(トリプロピレングリコールジアクリレート)、同M−245{ポリエチレングリコール(n≒9)ジアクリレート}、同M−305(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、同M−309(トリメチロールプロパントリアクリレート)、同M−315(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート)、同M−400{ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(主成分)の混合物}、同M−450(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、同M−8060、および同M−8560;
大阪有機化学工業(株)製のビスコート#295(トリメチロ−ルプロパントリアクリレート)、同#300(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、同#360(トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート)、および同#400(ペンタエリスリトールテトラアクリレート);
日本化薬(株)製のKAYARAD TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)、同PET−30(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、同DPHA{ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(主成分)の混合物}、同D−310(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、同D−330、および同DPCA−60などがある。
【0057】
本発明では、上述した化合物のうち、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、東亜合成化学工業(株)製のアロニックスM−305、同#309、同M−400、同M−450、大阪有機化学工業(株)製のビスコート#295、同#300、同#400、日本化薬(株)製のKAYARADTMPTA、同DPHA、同D−310、同PET−30などの3官能以上の多官能アクリレートが好ましく用いることができる。なお、これらの化合物は単独または2種類以上を混合して使用することができる
【0058】
本願の感光性ポリマーは、単独でなく基板上に形成して用いるため、液晶配向膜用の材料としての良好な配向性や基板との密着性、塗布均一性、耐薬品性、耐熱性、透過度、ガスバリア性といった、光学フィルムや光学表示素子に必要な特性が要求される。そのような特性を付与するために、添加剤を用いることができる。
【0059】
各種の添加剤の添加量は、要求される特性に応じて決定されるが、好ましくは、本願ポリマーの100重量部に対し0.01〜10重量部である。
添加剤としては、アクリル系、スチレン系、ポリエチレンイミン系又はウレタン系の高分子分散剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又はフッ素系の界面活性剤、シリコーン樹脂等の塗布性向上剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、オキシラン化合物、メラミン化合物又はビスアジド化合物等の熱架橋剤、有機カルボン酸等のアルカリ溶解性促進剤等がある。
【0060】
添加剤として、光増感剤を用いることもできる。無色増感剤および三重項増感剤が好ましい。
【0061】
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン(7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ4−メチルクマリン)、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、芳香族2−ヒドロキシケトン、およびアミノ置換された、芳香族2−ヒドロキシケトン(2−ヒドロキシベンゾフェノン、モノ−もしくはジ−p−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン(2−ベンゾイルメチレン−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(α−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(p−フルオロベンゾイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン)、オキサゾリン(2−ベンゾイルメチレン−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(α−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(p−フルオロベンゾイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m−もしくはp−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン)またはニトロアセナフテン(5−ニトロアセナフテン)、(2−[(m−ヒドロキシ−p−メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N−アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2−ジメトキシフェニルエタノン)、ナフタレン、アントラセン(2−ナフタレンメタノール、2−ナフタレンカルボン酸、9−アントラセンメタノール、および9−アントラセンカルボン酸)、ベンゾピラン、アゾインドリジン、メロクマリン等がある。
好ましくは、芳香族2−ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、およびアセトフェノンケタールである。
【0062】
重合性基を有する光増感剤を構成単位として含むことも出来る。重合性基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、マレイミド基およびイタコン酸などがあげられる。
以下に、具体例を示すが本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
【0063】

【0064】
これらの化合物において、QおよびRは前記の式(M−1)および(M−2)中のQおよびRと同義である。
【0065】
添加剤として、基板との密着性を向上させるためにカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系およびチタネート系の化合物が用いられる。具体的には、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン系、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなどのチタネート系化合物を挙げることができる。
【0066】
添加剤として、下地基板への濡れ性、レベリング性、塗布性を向上させるために界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などが用いられる。具体的には、ビック・ケミー(株)製のByk−300、同306、同335、同310、同341、同344、同370などのシリコン系界面活性剤、同354、同358、同361などのアクリル系界面活性剤、旭硝子(株)製のSC−101、(株)トーケムプロダクツ製のEF−351、同352などのフッソ系界面活性剤を挙げることができる。
【0067】
式(3)で表される構成単位を有する感光性ポリマーの重量平均分子量は、1000以上500,000以下であるのが好ましく、1000以上100,000以下であるのがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
【0068】
式(3)で表される構成単位を有する感光性ポリマーの製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、式(1)で表される化合物を与えるモノマーのビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0069】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができる。
【0070】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類 (ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシ シクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸−tert−ブチルエステル、 パーオキシピバリン酸−tert−ブチルエステル、パーオキシ 2−エチルシクロヘキサン酸−tert−アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2′−ジ(2−ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0071】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−(3−メチル−3H−ベンゾチアゾール−2−イリデン)−1−ナフタレン−2−イル−エタノン、又は2−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)−1−(2−ベンゾイル)エタノン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することもできる。
【0072】
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。他の重合法についても同様であり、その詳細は「高分子の合成(上)」(遠藤剛著 講談社 2010年発行)等に記載されている。一般的なラジカル重合法である溶液重合について以下に概要を説明する。
【0073】
溶液重合法とは油溶性の重合触媒を用いて溶媒中で重合を行う反応である。これらの有機溶媒は発明の目的、効果に適した範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内である有機化合物であり、モノマーや重合過程成分等を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。
【0074】
上記有機溶媒は、ラジカル重合に対する阻害作用がなければよく、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼンなどの芳香族化合物;
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、およびシクロヘプタンなどの脂肪族化合物;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、およびエチレングリコール等のアルコール類;
ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサン等のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルおよびγ−ブチロラクトン等のエステル類;
などが挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0075】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜20時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、窒素などの不活性ガスパージを行うことが好ましい。
【0076】
式(3)で表される構成単位を有する感光性ポリマーの分子量の制御や分子量分布の均一化あるいは重合を促進するために、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。これにより好ましい分子量範囲でより均一な分子量分布の重合体を得ることができる。
【0077】
連鎖移動剤としては、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸メチルエステル、イソプロピルメルカプタン、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノールおよびp−ノニルチオフェノール、チオサリシル酸、メルカプト酢酸、およびメルカプト等のメルカプタン類;
四塩化炭素、クロロホルム、塩化ブチル、1,1,1−トリクロロエタンおよび1,1,1−トリブロモオクタン等のポリハロゲン化アルキル;
α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等の低活性モノマー類;
を用いることができる。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、溶剤や温度やその他の重合条件等により決められる。通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01モル%〜50モル%程度である。
【0078】
本発明の光配向剤は、感光性ポリマーを有機溶剤に溶解させた塗布液として使用する。そして、本発明の液晶配向膜は、光配向剤を既知の方法(例えば、スピンコーティング、グラビアコーター、リバースグラビア、メイヤーバーコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、ファンテンリバースロールコーター、キスロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、リップコーター、レジストコーター法)により基板に塗布し、有機溶媒を除去した後、得られる塗膜を偏光照射により配向処理し得ることができる。
【0079】
また、本発明の液晶配向膜は、配向機能を付与するため、膜に対して単一な方向から光を照射する。光照射によって膜中の感光性ポリマーが配向し、それによって液晶配向膜に、配向機能が発現する。この際、照射光としてはX線、電子線、紫外線、可視光線または赤外線(熱線)が用いられ、紫外線を用いることが特に好ましい。紫外線の波長は400nm以下であることが好ましく、180〜360nmであることがさらに好ましい。光源としては低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、高圧放電ランプ、あるいはショートアーク放電ランプが好ましく用いられる。一般には直線偏光を照射するが、非偏光の光照射によっても配向機能を付与できる場合がある。直線偏光を用いることが特に好ましい。照射量は10mJ/cm〜20000mJ/cmが好ましく、20mJ/cm〜5000mJ/cmであることが最も好ましい。
【0080】
本発明の液晶配向膜は、感光性ポリマー及びその他必要に応じて添加する各種化合物を含有する光配向剤を、透明な基板上に塗布し、光照射し、感光性ポリマーを配向させることにより得られる。本発明の液晶配向膜は、感光性ポリマーの配向によって発現された光学異方性を示す。
【0081】
本発明の液晶配向膜を用いて、光学フィルムを得ることができる。本発明の光学フィルムは、液晶表示素子のコントラスト向上や視野角範囲の拡大を実現するための光学補償フィルムや位相差フィルムを意味する。一般的に基板と、配向膜と、光学異方性層とを有する。光学異方性層は、重合性液晶性化合物、及びその他必要に応じて添加する各種化合物を含有する重合性液晶組成物を、前記配向膜上に塗布し、液晶性化合物の分子を配向させたのち重合させることにより得られる。前記光学異方性層は、液晶性化合物の分子の配向によって発現された光学異方性を示す。
【実施例】
【0082】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。化合物の構造は、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル、質量スペクトルで確認した。相転移温度の単位は℃であり、Cは結晶を、Iは等方性液体相を示す。以下に、物性値の測定法を示す。
【0083】
<重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)>
島津製作所製の島津LC−9A型ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、および昭和電工製のカラムShodex(商標登録) GF−7M HQ(展開溶媒はDMFあるいはTHF、標準物質は分子量既知のポリスチレン)を用いた。
【0084】
<液晶分子の配向>
以下に示す方法により確認した。
(1)目視による観察方法
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に液晶配向膜上に異方性ポリマーを形成した基板を挟持して観察し、基板を水平面内で回転させ、明暗の状態を確認した。液晶配向膜上に異方性ポリマーを形成した基板を偏光顕微鏡観察し、配向欠陥の有無を確認した。
(2)偏光解析装置による測定
シンテック(株)製のOPTIPRO偏光解析装置を用い、液晶配向膜上に異方性ポリマーを形成した基板に波長が550nmの光を照射した。この光の入射角度をフィルム面に対して90°から減少させながらレタデーションを測定した。レタデーション(retardation;位相遅れ)はΔn×dで表される。記号Δnは光学異方性値であり、記号dは重合体フィルムの厚さである。
【0085】
<膜厚測定>
液晶配向膜上に異方性ポリマーを形成した基板から液晶配向膜と異方性ポリマーの2つの層を削りだして、その段差を微細形状測定装置(KLA TENCOR(株)製 アルファステップIQ)を用いて測定した。
【0086】
<光学異方性値(Δn)の評価>
ホモジニアス配向を誘起する液晶配向膜と、異方性ポリマーの2層からなる複合層について求めたレタデーションと膜厚値から、Δn=レタデーション/膜厚として算出した。
【0087】
<基板との密着性の評価>
粘着テープ剥離試験は、JIS規格「JIS−5400 8.5 付着性 (8.5.2 碁盤目テープ法)」の試験法、すなわち100ます中の残存したます目により評価した。基板には鹸化処理を施した富士フイルム社製のTACフィルム(以後 鹸化処理TAC)を用いた。
【0088】
<重合性液晶組成物の光重合条件>
窒素雰囲気下または大気中において、室温で500Wの超高圧水銀灯(ウシオ電機社製)を用いて90mW/cm(365nm)の強度の光を30秒間照射した。
【0089】
[実施例1]
化合物(1−1−4)を以下のようにして合成した。

【0090】
(第1段階)
trans−p−クマル酸400gをメタノール1200mlに加え、濃硫酸10gを滴下し、加熱還流下で5時間攪拌した。室温まで冷却した後、減圧下でメタノールを留去した。得られた残渣を氷水2000mlに注ぎ込み、酢酸エチル2000mlを加え、有機層を分離した。得られた有機層を飽和重曹水および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、得られた残渣をエタノールで再結晶することにより、化合物(ex−1)280gを得た。
【0091】
(第2段階)
無水イタコン酸250gをイソプロピルアルコ−ル150mlに加え、窒素雰囲気下100℃で6時間加熱攪拌した。室温まで冷却した後、蒸留により、化合物(ex−2)200gを得た。
【0092】
(最終段階)
化合物(ex−1)20g、化合物(ex−2)19gおよび4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)2.7gを、ジクロロメタン200mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)24gのジクロロメタン溶液50mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=8/1))で精製し、メタノールで再結晶することにより、化合物(1−1−4)28gを得た。
得られた化合物(1−1−4)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 64 I
H−NMR(CDCl;δppm):7.68(d,1H),7.55(d,2H),7.16(d,2H),6.55(s,1H),6.41(d,1H),5.90(s,1H),5.08−5.01(m,1H),3.81(s,3H),3.42(s,2H),1.25(s,3H),1.24(s,3H).
【0093】
[実施例2]
化合物(1−1−1)を以下のようにして合成した。

【0094】
化合物(ex−1)31g、モノメチルイタコン酸25gおよびDMAP4.2gを、ジクロロメタン200mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC37.6gのジクロロメタン溶液80mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=8/1))で精製し、メタノールで再結晶することにより、化合物(1−1−1)42gを得た。
得られた化合物(1−1−1)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 80 I
H−NMR(CDCl;δppm):7.69(d,1H),7.55(d,2H),7.17(d,2H),6.58(s,1H),6.41(d,1H),5.93(s,1H),3.81(s,3H),3.73(s,3H),3.48(s,2H).
【0095】
[実施例3]
化合物(1−1−7)を以下のようにして合成した。

【0096】
化合物(ex−1)27.4g、イタコン酸10gおよびDMAP3.8gを、ジクロロメタン200mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC33.3gのジクロロメタン溶液70mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=4/1))で精製し、トルエンで再結晶することにより、化合物(1−1−7)7gを得た。
得られた化合物(1−1−7)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 131 I
H−NMR(CDCl;δppm):7.69(d,1H),7.66(d,1H),7.57(d,2H),7.53(d,2H),7.18(d,2H),7.13(d,2H),6.66(s,1H),6.43(d,1H),6.39(d,1H),6.05(s,1H),3.81(m,6H),3.71(s,2H).
【0097】
[実施例4]
化合物(1−1−11)を以下のようにして合成した。

【0098】
(第1段階)
化合物(ex−1)40gおよび水酸化ナトリウム9.9gを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)400mlに加え、窒素雰囲気下60℃で加熱撹拌した。そこへ、2−ブロモエタノール30.9gを滴下した。滴下後、80℃で8時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、酢酸エチル800mlおよび水800mlを加え有機層を抽出した。得られた有機層を飽和重曹水、次いで水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=4/1))で精製し、トルエンで再結晶することにより、化合物(ex−2)31.9gを得た。
【0099】
(最終段階)
化合物(ex−2)15g、モノメチルイタコン酸9.7gおよびDMAP1.7gを、ジクロロメタン100mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC14.6gのジクロロメタン溶液50mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=6/1))で精製し、メタノールで再結晶することにより、化合物(1−1−11)16.7gを得た。
得られた化合物(1−1−11)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 50 I
H−NMR(CDCl;δppm):7.65(d,1H),7.48(d,2H),6.92(d,2H),6.38(s,1H),6.33(d,1H),5.76(s,1H),4.53(t,2H),4.24(t,2H),3.80(s,3H),3.67(s,3H),3.36(s,2H).
【0100】
[実施例5]
化合物(1−2−2)を以下のようにして合成した。

【0101】
(第1段階)
モノエチルイタコン酸40gおよび1,4−ブタンジオール68.4gをトルエン160mlに加え、濃硫酸を3滴滴下し、Dean-Starkを用い加熱還流下脱水しながら16時間攪拌した。反応液に水を加え有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でトルエンを留去した。蒸留により、化合物(ex−3)29.7gを得た。
【0102】
(最終段階)
化合物(ex−3)10g、3,4−ジメトキシ桂皮酸9gおよびDMAP1.1gを、ジクロロメタン100mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC9.4gのジクロロメタン溶液30mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=8/1))で精製し、メタノールで再結晶することにより、化合物(1−2−2)11.4gを得た。
得られた化合物(1−2−2)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 39 I
H−NMR(CDCl;δppm):7.51(d,1H),7.48(s,1H),7.41(d,1H),7.22(d,1H),6.38(s,1H),5.98(s,1H),5.32(s,1H),4.34−4.30(m,2H),4.11(t,2H),4.07(t,2H),3.78(s,6H),3.29(s,2H),1.58−1.49(m,4H),1.31(t,3H).
[実施例6]
化合物(1−1−13)を以下のようにして合成した。

【0103】
(第1段階)
無水イタコン酸100gをt−ブタノール200mlに加え、窒素雰囲気下100℃で6時間加熱攪拌した。室温まで冷却した後、蒸留により、化合物(ex−4)128gを得た。
【0104】
(第2段階)
化合物(ex−1)20g、化合物(ex−4)21gおよびDMAP2.3gを、ジクロロメタン200mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC14.4gのジクロロメタン溶液50mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=4/1))で精製し、メタノールで再結晶することにより、化合物(ex−5)24.7gを得た。
【0105】
(最終段階)
化合物(ex−5)24.7gを酢酸500mlに加え、窒素雰囲気下100℃で撹拌した。そこへ、47%臭化水素酸25mlを滴下した。滴下後、還流下4時間撹拌した。酢酸エチル1000mlおよび水1000mlを加え有機層を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、エタノールで再結晶することにより、化合物(1−1−13)11.8gを得た。
得られた化合物(1−1−13)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 127 I
H−NMR(DMSO;δppm):12.1(s,1H),7.78(d,1H),7.57(d,2H),7.17(d,2H),6.59(s,1H),6.51(d,1H),5.93(s,1H),3.82(s,3H),3.47(s,2H).
[実施例7]
化合物(1−1−14)を以下のようにして合成した。

【0106】
(第1段階)
trans−p−クマル酸100gおよびピリジン60gをテトラヒドロフラン(THF)1000mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら攪拌した。そこへ、無水酢酸75gを滴下した。滴下後、室温で4時間撹拌した。析出物をろ別し、トルエンで洗浄することにより、化合物(ex−6)68gを得た。
【0107】
(第2段階)
化合物(ex−6)30g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン15gおよびピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)3.6gをジクロロメタン600mlに加え、窒素雰囲気下室温で8時間攪拌した。飽和重曹水を加え有機層を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、減圧乾燥することにより、無色液体の化合物(ex−7)39gを得た。
【0108】
(第3段階)
化合物(ex−7)39gをTHF300mlおよびメタノール300mlの混合溶液に加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、28%アンモニア水溶液18mlを滴下した。滴下後、室温で8時間撹拌した。減圧下でTHFおよびメタノールを留去し、酢酸エチル500mlおよび水500mlを加え有機層を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、残渣をヘプタンで再結晶することにより、化合物(ex−8)18.7gを得た。
【0109】
(第4段階)
化合物(ex−8)18.7gおよび水酸化ナトリウム3.3gをDMF200mlに加え、窒素雰囲気下60℃で加熱撹拌した。そこへ、2−ブロモエタノール11.3gを滴下した。滴下後、80℃で8時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、酢酸エチル800mlおよび水800mlを加え有機層を抽出した。得られた有機層を飽和重曹水、次いで水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、残渣をヘプタンで再結晶することにより、化合物(ex−9)15.6gを得た。
【0110】
(第5段階)
化合物(ex−9)15.6g、モノメチルイタコン酸8.5gおよびDMAP0.7gを、ジクロロメタン160mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC11.6gのジクロロメタン溶液30mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をメタノールで再結晶することにより、化合物(ex−9)13.6gを得た。
【0111】
(最終段階)
化合物(ex−9)13.6gをTHF150mlおよびメタノール150mlの混合溶液に加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、6N塩酸水20mlを滴下した。滴下後、室温で4時間撹拌した。酢酸エチル500mlおよび水500mlを加え有機層を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、エタノールで再結晶することにより、化合物(1−1−14)8gを得た。
得られた化合物(1−1−14)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 138 I
H−NMR(DMSO;δppm):13.0(s,1H),7.71(d,1H),7.48(d,2H),6.87(d,2H),6.51(s,1H),6.32(d,1H),5.74(s,1H),4.53(t,2H),4.24(t,2H),3.80(s,3H),3.35(s,2H).
【0112】
[実施例8]
化合物(1−1−4)と化合物(M−1−2)の共重合ポリマーを以下のようにして合成した。
【0113】
化合物(1−1−4)2.5g、化合物(M−1−2)2.5gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3gをTHF40mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応液をメタノールへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−1)4.3gを得た。
【0114】
得られたポリマーは、Mwが6400、Mw/Mnが2.3であった。
【0115】
化合物(M−1−2)は特許第4011652号公報に記載の方法に従い合成した。
【0116】
[実施例9]
化合物(1−1−11)と化合物(M−1−2)の共重合ポリマーを以下のようにして合成した。
【0117】
化合物(1−1−11)0.5g、化合物(M−1−2)4.5gおよびAIBN0.04gをTHF40mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応液をメタノールへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−2)4.7gを得た。
【0118】
得られたポリマーは、Mwが57200、Mw/Mnが2.9であった。
【0119】
[実施例10]
化合物(1−1−7)、化合物(M−1−1)および化合物(S−5−1)の共重合ポリマーを以下のようにして合成した。
【0120】
化合物(1−1−7)2.5g、化合物(M−1−1)2.5g、化合物(S−5−1)0.2gおよびAIBN0.1gをTHF40mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応液をメタノールへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−3)3.2gを得た。
【0121】
得られたポリマーは、Mwが22800、Mw/Mnが2.5であった。
【0122】
化合物(M−1−1)は特許第4011652号公報に記載の方法に従い合成した。
【0123】
化合物(S−5−1)は特開2002−226429号公報に記載の方法に従い合成した。

【0124】
[実施例11]
化合物(1−2−2)、化合物(M−2−1)および4-ヒドロキシブチルメタクリレートの共重合ポリマーを以下のようにして合成した。
【0125】
化合物(1−2−2)4.0g、化合物(M−2−1)1.0g、4-ヒドロキシブチルメタクリレート0.5gおよびAIBN0.6gをTHF40mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応液をメタノールへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−4)2.8gを得た。
【0126】
得られたポリマーは、Mwが4700、Mw/Mnが3.5であった。
【0127】
[実施例12]
実施例8および実施例9と同様の手法で以下の共重合ポリマー(P−5)〜(P−10)を合成した。

【0128】
化合物(M−1−11)は特表2005−528486号公報に記載の方法に従い合成した。
化合物(M−1−12)はMakromolekulare Chemie, 1989, 190(6), 1369-77.に記載の方法に従い合成した。
【0129】
[比較例1]
化合物(M−1−2)5.0gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1gをTHF40mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応液をメタノールへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−11)4.2gを得た。このポリマーは、Mwが25000、Mw/Mnが2.8であった。
【0130】
[比較例2]
化合物(M−1−11)5.0gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1gをTHF40mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応液をメタノールへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−12)4.0gを得た。このポリマーは、Mwが23000、Mw/Mnが2.9であった。
【0131】
[実施例13]
ポリマー(P−1)をシクロペンタノン:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=7:3(重量比)の混合溶剤に溶解させ、固形分濃度7重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.45μmのフィルターで濾過することにより、光配向剤(H−1)を調製した。
【0132】
[実施例14]
ポリマー(P−1)をポリマー(P−2)に置き換えた以外は、実施例13と同様のスキームで光配向剤(H−2)を調製した。
【0133】
[実施例15]
ポリマー(P−1)をポリマー(P−3)に置き換えた以外は、実施例13と同様のスキームで光配向剤(H−3)を調製した。
【0134】
[実施例16]
実施例13と同様の手法でポリマー(P−1)をポリマー(P−4)〜(P−10)にそれぞれ置き換え、それぞれ光配向剤(H−4)〜(H−10)を調製した。
【0135】
[比較例3]
ポリマー(P−1)をポリマー(P−11)に置き換えた以外は、実施例13と同様のスキームで光配向剤(H−11)を調製した。
【0136】
[比較例4]
ポリマー(P−1)をポリマー(P−12)に置き換えた以外は、実施例13と同様のスキームで光配向剤(H−12)を調製した。
【0137】
[実施例17]
<液晶配向膜F−1の作製>
光配向剤(H−1)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で3分間加熱し、混合溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を1.0J/cm照射することで、光配向処理した液晶配向膜F−1を得た。
【0138】
次に、2枚の光配向膜F−1で低分子液晶JC−5100XX(チッソ社/JNC社製)を挟み、110℃のホットプレートで30秒加熱し、室温に静置した。クロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向であることを確認した。
液晶配向膜F−1を重ねるときは塗布面が液晶に接するようにし、直線偏光の向きが同じ向き(ほぼ平行)になるようにした。
【0139】
[実施例18]
光配向剤(H−1)を光配向剤(H−2)に置き換えた以外は、実施例17と同様のスキームで液晶配向膜F−2を得た。
【0140】
[実施例19]
光配向剤(H−1)を光配向剤(H−3)に置き換えた以外は、実施例17と同様のスキームで液晶配向膜F−3を得た。
【0141】
[実施例20]
光配向剤(H−1)を光配向剤(H−4)〜(H−10)にそれぞれ置き換えた以外は、実施例17と同様のスキームでそれぞれ液晶配向膜(F−4)〜(F−10)を得た。
【0142】
[実施例21]
光配向剤(H−1)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で3分間加熱し、混合溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプより、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を0.03J/cm照射することで、光配向処理した液晶配向膜F−1Aを得た。
【0143】
[実施例22]
光配向剤(H−1)を光配向剤(H−2)、(H−5)〜(H−10)にそれぞれ置き換えた以外は、実施例21と同様のスキームでそれぞれ液晶配向膜(F−2A)、(F−5A)〜(F−10A)を得た。
【0144】
[比較例5]
光配向剤(H−1)を光配向剤(H−11)に置き換えた以外は、実施例17と同様のスキームで液晶配向膜F−11を得た。
【0145】
[比較例6]
光配向剤(H−1)を光配向剤(H−11)に置き換えた以外は、実施例21と同様のスキームで液晶配向膜F−11Aを得た。
【0146】
[比較例7]
光配向剤(H−1)を光配向剤(H−12)に置き換えた以外は、実施例17と同様のスキームで液晶配向膜F−12を得た。
【0147】
[実施例23]
<重合性液晶組成物(1)の調製>
化合物(LC−1):化合物(LC−2)=50:50(重量比)で2つの化合物を混合した。この組成物をMIX1とする。このMIX1の全重量を基準として、重量比0.002の非イオン性のフッ素系界面活性剤(ネオス(株)製、商品名フタージェント(商標登録) FTX−218)、および重量比0.06の重合開始剤irgacure907(BASF社製、商標登録)を添加した。この組成物にシクロペンタノン:PGMEA=1:1(重量比)の混合溶剤を加えて、この混合溶剤の割合が80重量%である重合性液晶組成物(1)とした。

【0148】
上記記載の化合物(LC−1)および化合物(LC−2)の具体的製造法について説明する。化合物(LC−1)は特開2006−307150号公報に記載の方法に従い合成した。化合物(LC−2)は特開昭63−64029号公報に記載された方法に従い合成した。
【0149】
[実施例24]
<光学フィルムの形成>
実施例15で得られた液晶配向膜F−1に、重合性液晶組成物(1)をスピンコートにより塗布した。この基板を80℃で3分間加熱してから、室温で3分間冷却し、溶剤が除去された塗膜を紫外線により大気中で重合させて、液晶の配向状態を固定させた光学フィルムを得た。この光学フィルムを偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥はなく、均一な配向を有していることが確認できた。この光学フィルムのレタデーションを測定したところ、ホモジニアス配向であることが確認できた。
【0150】
[実施例25]
液晶配向膜F−1を液晶配向膜F−2に置き換えた以外は、実施例24と同様のスキームで光学フィルムを得た。
この光学フィルムを偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥はなく、均一な配向を有していることが確認できた。この光学フィルムのレタデーションを測定したところ、ホモジニアス配向であることが確認できた。
【0151】
[実施例26]
液晶配向膜F−1を液晶配向膜F−3に置き換えた以外は、実施例24と同様のスキームで光学フィルムを得た。
この光学フィルムを偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥はなく、均一な配向を有していることが確認できた。この光学フィルムのレタデーションを測定したところ、ホモジニアス配向であることが確認できた。
【0152】
[実施例27]
実施例24と同様のスキームで液晶配向膜(F−3)〜(F−10)および(F−1A)、(F−2A)、(F−5A)〜(F−10A)を用いた光学フィルムを得た。これらの光学フィルムを偏光顕微鏡で観察した。これらの結果は後述する表1に示す。
【0153】
[比較例8]
実施例24と同様のスキームで液晶配向膜(F−11)、(F−11A)および(F−12)を用いた光学フィルムを得た。これらの光学フィルムを偏光顕微鏡で観察した。これらの結果は後述する表1に示す。
【0154】
表1

【0155】
実施例27および比較例5との比較により、本発明光配向膜は高感度で高い液晶配向性を有する事が分かる。
【0156】
[実施例28]
<液晶配向膜FA−1の作製>
光配向剤(H−6)を、鹸化処理TACフィルム上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。このフィルムを80℃で1分間加熱し、混合溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプより、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を0.3J/cm照射することで、光配向処理した液晶配向膜FA−1を得た。
【0157】
[実施例29]
光配向剤(H−6)をそれぞれ光配向剤(H−7)〜(H−9)に置き換えた以外は、実施例28と同様のスキームでそれぞれ液晶配向膜(FA−2)〜(FA−4)を得た。
【0158】
[比較例9]
光配向剤(H−6)を光配向剤(H−11)に置き換えた以外は、実施例28と同様のスキームで液晶配向膜(FA−5)を得た。
【0159】
得られた光配向剤(FA−1)〜(FA−5)の粘着テープ剥離試験の評価結果を表2に示す。
【0160】
表2

【0161】
実施例28および実施例29と比較例9とを比較すると、本発明光配向膜は鹸化処理TACフィルムに対する密着性に優れている事が分かる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の光配向剤は、感光性ポリマーからなり、光配向法に適した配向剤である。また、本発明の光配向剤を用いて得られた液晶配向膜は、ラビング処理の必要性がないため、配向欠陥がない、液晶分子の配向が均一な液晶配向膜である。よって、光学フィルムや液晶表示素子用途への使用に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される感光性化合物:



式(1)において、Yは、式(2−1)または(2−2)で表される2価の基であり;
は、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシで置き換えられてもよく;
は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CONH−、−NHCO−、−(CH−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−であり;
およびRは独立して水素、フッ素、塩素、−OH、−C≡N、−NO、トリフルオロメチル、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり;
は独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
nは0〜3であり;
式(2−1)および(2−2)において、WおよびWは独立して水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシである。
【請求項2】
請求項1に記載の式(1)において、Yが、請求項1に記載の式(2−1)または(2−2)で表される2価の基であり;
が、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシで置き換えられてもよく;
が単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−または−CHCH−COO−であり;
およびRが独立して水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
が独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
nが0または1であり;
式(2−1)および(2−2)において、WおよびWが独立して水素、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシである;
請求項1に記載の感光性化合物
【請求項3】
式(1−1)で表される感光性化合物:

式(1−1)において、WおよびWは独立して水素、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシであり;
は、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシで置き換えられてもよく;
は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−または−CHCH−COO−であり;
は水素または炭素数1〜5のアルキルであり;
は水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
は独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
nは0または1である。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性化合物を含有する組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性化合物を重合して得られる感光性ポリマー。
【請求項6】
式(3)で表される構成単位を有する感光性ポリマー



式(3)において、Yは、式(2−1)または(2−2)で表される2価の基であり;
は、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシで置き換えられてもよく;
は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CONH−、−NHCO−、−(CH−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−であり;
およびRは独立して水素、フッ素、塩素、−OH、−C≡N、−NO、トリフルオロメチル、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり;
は独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
nは0〜3であり;
式(2−1)および(2−2)において、WおよびWは独立して水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシである。
【請求項7】
請求項6に記載の式(3)において、Yが、請求項6に記載の式(2−1)または(2−2)で表される2価の基であり;
が、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシで置き換えられてもよく;
が単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−または−CHCH−COO−であり;
およびRが独立して水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
が独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
nが0または1であり;
式(2−1)および(2−2)において、WおよびWが独立して水素、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシである;
請求項6に記載の感光性ポリマー。
【請求項8】
式(3−1)で表される感光性ポリマー:

式(3−1)において、WおよびWは独立して水素、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシであり;
は、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;この1,4−フェニレンにおいて、任意の水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のアルコキシで置き換えられてもよく;
は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−または−CHCH−COO−であり;
は水素または炭素数1〜5のアルキルであり;
は水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
は独立して単結合または炭素数1〜12のアルキレンであり、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
nは0または1である。
【請求項9】
重量平均分子量が1000〜500000である請求項5〜8のいずれか1項に記載の感光性ポリマー。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の構成単位を有するホモポリマー。
【請求項11】
請求項6に記載の式(3)で表される構成単位と式(3)で表される以外の構成単位の少なくとも一つからなるコポリマー。
【請求項12】
請求項5〜11のいずれか1項に記載のポリマーを用いた感光性材料。
【請求項13】
請求項5〜11のいずれか1項に記載のポリマーを用いた液晶配向膜用の光配向剤。
【請求項14】
請求項13に記載の光配向剤を用いて製造される液晶配向膜。
【請求項15】
請求項14に記載の液晶配向膜を用いて製造される液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−87286(P2012−87286A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172582(P2011−172582)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)JNC石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】