説明

感光性導電ペースト及びその焼成物から形成された導電体パターン

【課題】 ピンホール等がなく緻密で基板との密着性も高く、エッチカールの問題のない導電体パターンを形成可能な感光性導電組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)導電性粉末、(B)有機バインダー、(C)光重合性モノマー、(D)光重合開始剤、及び(E)ガラスフリットを含有する感光性導電ペーストにおいて、ガラスフリット(E)の含有率がペーストの全質量に対し5.1〜10質量%であることを特徴とする感光性導電ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称する。)の導電体パターンの形成に有用なガラス成分の配合率の高い感光性導電ペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、PDPやCCDセンサ、イメージセンサ等の部品において、無アルカリガラスやその他の各種ガラス基板上の電極は、蒸着法によって形成されていた。しかしながら、この蒸着法は、真空容器内に電極形成部材を収納して金膜を蒸着するものであり、装置が大がかりで高価であるばかりでなく、部材の出し入れがわずらわしく、真空引きに時間を要するなど作業性が悪いという欠点があった。
【0003】
これに対し、基板上に導電体のパターン層を形成する他の方法として、非感光性の有機バインダーに金属粉末を混合したペースト材料、例えば乾燥型や熱硬化型の導電性ペーストを、スクリーン印刷等の印刷技術を用いて基板上にパターン化させる方法がある。しかしながら、かかる印刷技術を用いてパターン化させる方法では、低コストで作業性は良くなるものの工業的に安定して100μm以下の線幅を有する導電体パターンを形成することは困難であった。
【0004】
そのため最近では、感光性導電ペーストを用いフォトリソグラフィー技術を利用した導電体パターンの形成方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、かかる方法に用いる感光性導電ペーストにおいて、導電性を確保するためには導電性粉末を高濃度に配合する必要があり、そのため基板との密着性が悪くなったり、光透過性が悪く、高精細なパターンを得るには依然として難しかった。一方、かかる感光性導電ペーストには、基板との密着性を向上させ、かつ、導電性パターン自体の機械的強度を維持させる目的でガラスフリットが配合される。導電性組成物中でのガラスフリットの含有率が低いと緻密性が悪く、不均一な収縮によるピンホールの発生やエッチカールなどの欠損につながりやすい一方、導電性組成物中での含有率が高くなると、脱バインダー性が悪化し気泡やフクレが発生するという問題が生じる。
【特許文献1】特開平10−269848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術が抱える課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ピンホール等がなく緻密で基板との密着性も高く、エッチカールの問題のない導電体パターンを形成可能な感光性導電組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、(A)導電性粉末、(B)有機バインダー、(C)光重合性モノマー、(D)光重合開始剤、及び(E)ガラスフリットを含有する感光性導電ペーストにおいて、ガラスフリット(E)の含有率がペーストの全質量に対し5.1〜10質量%であることを特徴とする感光性導電ペーストが提供される。
【0007】
本発明において、前記ガラスフリット(E)は、ガラス転移点が470〜530℃であり得、またガラス軟化点が550〜600℃であり得る。また、ガラスフリット(E)は、平均粒径(D50)値が0.2〜1.2μm、最大粒径(Dmax)値が1.0〜4.5μmの微細粉末であり得る。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、前記感光性導電ペーストの焼成物から形成された電極パターンが提供される。
【0009】
更に、本発明の他の態様によれば、前記感光性導電ペーストの焼成物から形成された電極パターンを具備するプラズマディスプレイパネルが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性導電ペーストを用いピンホールやフクレのない塗膜を形成することで、電極の欠損や形状不良のないパネルを安定して作れることから、PDPの量産性、低コスト化にとって極めて有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に係る感光性導電ペーストを構成する導電性粉末(A)は、ペーストに導電性を付与するものであり、このような導電性粉末としては、AgやAu、Pt、Pd、Ni、Cu、Al、Sn、Pb、Zn、Fe、Ir、Os、Rh、W、Mo、Ru等の単体とその合金の他、その酸化物、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いることができる。導電性粒子の形状としては、球状、フレーク状、デントライト状など種々のものを用いることができ、特に光特性や分散性を考慮すると球状のものを用いることが好ましい。
【0012】
この導電性粉末の配合率は、感光性導電ペースト100質量部に対して50〜90質量部が適当である。導電性粉末の配合量が上記範囲よりも少ない場合、かかるペーストから得られる導電体パターンの充分な導電性が得られず、一方、上記範囲を超えて多量になると、基材との密着性が悪くなるので好ましくない。
【0013】
次に、有機バインダー(B)について説明する。本発明において有機バインダー(B)は、焼成前における各成分の結合材、または組成物の光硬化性や現像性の付与として機能するものである。この有機バインダーとしては、カルボキシル基を有する樹脂、具体的にはそれ自体がエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。好適に使用できる樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)としては、以下のようなものが挙げられる。
【0014】
(1)(a)不飽和カルボン酸と(b)不飽和二重結合を有する化合物を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)(a)不飽和カルボン酸と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体にエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)(c)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(a)飽和又は不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(4)(e)不飽和二重結合を有する酸無水物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(f)水酸基を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(5)(e)不飽和二重結合を有する酸無水物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(f)水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)(g)エポキシ化合物と(h)不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(7)(b)不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、(i)1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(8)(j)水酸基含有ポリマーに(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂(9)(j)水酸基含有ポリマーに(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、(c)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0015】
前記したようなカルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂は、単独で又は混合して用いてもよいが、いずれの場合でもこれらは合計で組成物全量の10〜80質量%の割合で配合することが好ましい。これらの樹脂の配合量が上記範囲よりも少な過ぎる場合、形成する塗膜中の上記樹脂の分布が不均一になり易く、充分な光硬化性及び光硬化深度が得られ難く、選択的露光、現像によるパターニングが困難となる。一方、上記範囲よりも多過ぎると、焼成時のパターンのよれや線幅収縮を生じ易くなるので好ましくない。
【0016】
また、上記カルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂としては、それぞれ重量平均分子量1,000〜100,000、好ましくは5,000〜70,000、及び酸価30〜250mgKOH/g、かつ、カルボキシル基含有感光性樹脂の場合、その二重結合当量が350〜2,000、好ましくは400〜1,500のものを好適に用いることができる。上記樹脂の分子量が1,000より低い場合、現像時の皮膜の密着性に悪影響を与え、一方、100,000よりも高い場合、現像不良を生じ易いので好ましくない。また、酸価が50mgKOH/gより低い場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分で現像不良を生じ易く、一方、250mgKOH/gより高い場合、現像時に皮膜の密着性の劣化や光硬化部(露光部)の溶解が生じるので好ましくない。さらに、カルボキシル基含有感光性樹脂の場合、感光性樹脂の二重結合当量が350よりも小さいと、焼成時に残渣が残り易くなり、一方、2,000よりも大きいと、現像時の作業余裕度が狭く、また光硬化時に高露光量を必要とするので好ましくない。
【0017】
本発明の感光性導電性ペーストを構成する光重合性モノマー(C)は、組成物の光硬化性の付与促進及び現像性を向上させるために用いられる。このような光重合性モノマー(C)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどが挙げられるが、特定のものに限定されるものではなく、またこれらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合性モノマーの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0018】
この光重合性モノマー(C)の配合量は、前記有機バインダー(B)100質量部当り20〜100質量部が適当である。光重合性モノマーの配合量が上記範囲よりも少ない場合、組成物の充分な光硬化性が得られ難くなり、一方、上記範囲を超えて多量になると、皮膜の深部に比べて表層部の光硬化が早くなるため硬化むらを生じ易くなる。
【0019】
本発明の感光性導電性ペーストを構成する光重合開始剤(D)の具体的なものとしては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
次に、本発明に係る感光性導電ペーストに含有されるガラスフリット(E)について説明する。本発明においてガラスフリット(E)は特に重要な役割を担う成分であり、本発明に係る感光性導電ペーストは、ガラスフリット(E)をペースト全質量に対し5.1〜10質量%と高配合率において含有する。かかる配合率においてガラスフリットを含有することにより該ペーストを用いて形成される電極膜の緻密性が高くなり、欠損の発生を抑制することができ、更にエッチカールが低減することにより誘電体の絶縁信頼性を高めることができる。このような高配合率において使用されるガラスフリット(E)として、ガラス転移点(TG)が470℃以上であり、且つ好ましくはガラス軟化点(SP)が550℃以上であるガラスフリット、またはガラス軟化点が600℃以下であり、且つ好ましくはガラス転移点が530℃以下であるガラスフリットが好適に用いられる。
【0021】
ガラス転移点が470℃以上であり、且つ好ましくはガラス軟化点が550℃以上である場合に、ガラスフリットが高配合率においても気泡、フクレ等の発生が効果的に抑えられる。更に、昇温レートの高い焼成プロファイルでも気泡、フクレ等の発生が抑えられ高速焼成性に優れる。ガラス転移点が470℃未満では、特に10℃/分〜45℃/分の昇温レートの高い焼成プロファイルにおいて気泡、あるいはフクレ等の不具合が発生し易い。
【0022】
また、ガラス軟化点が600℃以下であり、且つ好ましくはガラス転移点が530℃以下である場合に、ガラスフリットが高配合率においても基板との密着性に優れ、ピンホールの発生やエッチカール等の形状不良が効果的に抑えられる。また、上記と同様の優れた高速焼成性が得られる。ガラス軟化点が600℃を超えると、密着性或いはエッチカール等の形状不良が発生し易い。
【0023】
本発明においてガラスフリット(E)は、その粒子径が、最大粒径(Dmax)1.0〜4.5μm、平均粒径(D50)0.2〜1.2μmの範囲にある微細粉末であることが、ピンホールのない焼成パターンとするために有意である。また、ガラスフリットの300℃における熱膨張係数α300は、60×10−7〜110×10−7であることが好ましい。かかる範囲は、基板であるガラス板の熱膨張係数に近く、焼成後における冷却の際に電極パターンと基板との密着性の保持に効果的であるため好ましい。
【0024】
本発明においてガラスフリットの組成としては、上記要件を満たす限りにおいて特に制限されるものではないが、例えば、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化リチウム、又はアルカリホウケイ酸塩を主成分とするガラスが好適に用いられ、これらはB、BaO、TiO、KO等の添加成分を含有し得る。
【0025】
はガラス組成物の軟化点を下げるために添加される成分であり、ガラス転移点・ガラス軟化点が上述した範囲内となるよう添加量を適宜調整して添加され得る。特に酸化ビスマスまたは酸化鉛を主成分とするガラスでは酸化物基準の質量%で15〜82質量%の範囲で配合することが好ましい。15質量%未満では、導電性ペーストをガラス基板上に焼き付けする際の基板に対する導電膜の接着強度が十分でなく、一方82質量%を超えるとガラスフリットの軟化点が低くなりすぎ、ペーストの脱バインダ性が悪化するため導電膜の焼結性が低下し、また基板との接着強度が低下する場合がある。また、BaOは焼成後の内部における気泡の発生を抑制するのに効果的である。また、TiO、Alは、フリットの耐薬品性を向上させるために添加され得る。但し、添加によりガラス転移点、ガラス軟移点が高くなるため、両温度が上述した範囲内となるよう適宜調整して添加される。なお、ガラス組成物中の配合比が各々12質量%を超えると、ガラスが結晶化しやすくなり不安定になる。また、ZnOはKO等含有のアルカリ系ガラスでは必須成分である。ガラス転移点、ガラス軟移点を下げる効果を有するため、両温度が上述した範囲内となるよう適宜調整して添加される。酸化ビスマス、又は酸化鉛を主成分とするガラスでは、ZnOの配合比が15質量%を超えるとガラスが結晶化しやすくなり不安定になる。
【0026】
具体的には、酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、Bi:15〜50%、B:14〜30%、SiO:5〜20%、BaO:10〜30%、ZnO:5〜20%、Al:0〜5%である非結晶性フリットが挙げられる。
【0027】
また、酸化鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、PbO:48〜82%、B:0.5〜22%、SiO:3〜32%、Al:0〜12%、BaO:0〜10%、ZnO:0〜15%、TiO:0〜2.5%である非結晶性フリットが挙げられる。
【0028】
また、酸化亜鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、ZnO:25〜60%、KO:2〜15%、B:25〜45%、SiO:1〜7%、Al:0〜10%、BaO:0〜20%、MgO:0〜10%である非結晶性フリットが挙げられる。
【0029】
本発明に係る感光性導電ペーストは、上記成分以外に、必要に応じて、シリコーン系、アクリル系等の消泡・レベリング剤、皮膜の密着性向上のためのシランカップリング剤、等の他の添加剤を配合することもできる。さらにまた、必要に応じて、導電性金属粉の酸化を防止するための公知慣用の酸化防止剤や、保存時の熱的安定性を向上させるための熱重合禁止剤、焼成時における基板との結合成分としての金属酸化物、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、低融点ガラスなどの微粒子を添加することもできる。また、焼成収縮を調整する目的でシリカ、酸化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粉末、有機金属化合物、金属有機酸塩、金属アルコキシド等を添加することもできる。また、色調を調整する目的で、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Alの1種又は2種類以上を主成分として含む金属酸化物又は複合金属酸化物からなる黒色顔料、四三酸化コバルト(Co)、酸化ルテニウム、ランタン複合酸化物等の黒色材料を添加することもできる。
【0030】
本発明の感光性導電ペーストは、上述したような必須成分と任意成分を所定の割合で配合し、三本ロールやブレンダー等の混練機にて均一分散して得られる。こうして得られた本発明の感光性導電ペーストは、例えば、以下のような工程を経て基材上の導電体パターンとして形成される。
【0031】
(1)まず、本発明の感光性導電ペーストは、スクリーン印刷法、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の塗布方法にて、基材、例えばプラズマディスプレイパネル(PDP)の前面基板となるガラス基板等に塗布し、次いで指触乾燥性を得るために、熱風循環式乾燥炉や遠赤外線乾燥炉などで例えば約60〜120℃で5〜40分程度乾燥させて有機溶剤を蒸発させ、タックフリーの塗膜を得る。ここで、基材としては、特定のものに限定されるものではないが、例えば、ガラス基板やセラミック基板などの耐熱性基板を用いることができる。なお、ペーストを予めフィルム状に成膜することもでき、この場合には基材上にフィルムをラミネートすればよい。
【0032】
(2)次に、基材上に形成した乾燥塗膜をパターン露光して現像する。露光工程としては、所定の露光パターンを有するネガマスクを用いた接触露光又は非接触露光が可能である。露光光源としては、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー光、メタルハライドランプ、ブラックランプ、無電極ランプなどが使用される。露光量としては50〜1000mJ/cm2程度が好ましい。
【0033】
現像工程としてはスプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液、特に約1.5重量%以下の濃度の希アルカリ水溶液が好適に用いられるが、組成物中のカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基がケン化され、未硬化部(未露光部)が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行うことが好ましい。
【0034】
(3)そして、得られた感光性導電ペーストのパターンを焼成してペースト中に含まれる有機分を脱バインダーすることにより、所定の導電体パターンを形成する。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、「部」及び「%」とあるのは、特に断りがない限りすべて質量基準である。
【0036】
(実施例1)
(ガラスフリット)
ガラスフリットとして酸化ビスマスを主成分とするガラス(Bi:15〜50%、B:14〜30%、SiO:5〜20%、BaO:10〜30%、ZnO:5〜20%、Al:0〜5%)A〜Eを用いた。各ガラスのガラス転移点(TG)、ガラス軟化点(SP)、熱膨張係数(α300)を後掲の表1に示す。これらを粗粉砕化した後、300メッシュのスクリーンにてフィルタリングを行い、得られたガラスフリット70質量部と2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレートを29.16部、BYK−410及びBYK−182(いずれもビック・ケミー社製)を各々0.14部、0.7部加えて、ビーズミルにて湿式粉砕し、D50:0.9〜1.0μm、Dmax:2.9〜3.0μmのガラス微粉砕スラリーを得た。ここで、ビーズミルの粉砕は、三井鉱山株式会社製SC50を用い、粒度測定は、堀場レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を使用した。
【0037】
(有機バインダーAの合成)
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルをいれ、窒素雰囲気下、80℃に加熱し、メタクリル酸及びメチルメタアクリレートおw、メタクリル酸:0.4モル、メチルメタアクリレート:0.6モルのモル比で混合したモノマーを約2時間かけて滴下し、更に1時間攪拌後、温度を115℃まで上げて失活させ樹脂溶液を得た。
【0038】
この樹脂溶液を冷却後、触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用い、95〜105℃、30時間の条件で、ブチルグリシジルエーテル:0.4モルを、得られた樹脂のカルボキシル基の等量と付加反応させ、冷却した。
【0039】
さらに得られた樹脂のOH基に対して、95〜105℃、8時間の条件で、無水テトラヒドロフタル酸0.26モルを付加反応させ、冷却後取り出して固形分55%の有機バインダーAを得た。
【0040】
(銀粉)
銀粉は、平均粒径(D50)2.2μm、最大粒径(Dmax)6.3μm、比表面積0.43m/gのものを使用した。ここで、平均粒径(D50)及び最大粒径(Dmax)は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置:マイクロトラックHRAにて測定した。また、比表面積はBET1点法により測定した。
【0041】
[組成物例1]
以下に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉してペースト化を行ない、ペースト(組成物例1)を得た。
【0042】
本発明例1;
有機バインダーA 180.0部
トリメチロールプロパントリアクリレート 37.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1 8.0部
ソルベッソ#200 8.0部
(芳香族炭化水素;サーフェス・スペシャリティ・ジャパン(株)社製)
銀粉 450.0部
ガラスフリットA 44.0部
リン酸エステル 1.0部
消泡剤(モダフロー;日本モンサント(株)) 1.0部
[組成物例2〜4、比較組成物例1〜3]
組成物例1に対し、ガラスフリットの種類並びに添加量を後掲の表1に示すように変える以外は同様にして組成物例2〜4及び比較組成物例1〜3を調製した。
【0043】
試験片の作製
ガラス基板上に、評価用の各感光性銀ペーストを180メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布し、次いで、熱風循環式乾燥炉にて90℃で20分間乾燥することにより指触乾燥性の良好な塗膜を形成した。次に、光源としてショートアークランプを用い、100μmのストライプパターンのあるネガマスクを介して、乾燥塗膜上の積算光量が100mJ/cmとなるようにパターン露光した後、液温30℃の0.4質量%NaCO水溶液を用いて20秒間現像を行い、水洗した。このようにして塗膜パターンが形成された基板を、空気雰囲気下にて20℃/60分で600℃まで昇温し、600℃で30分間焼成することにより、導電体パターンがガラス基板上に形成された試験片を作製した。
【0044】
性能評価
各試験片についてエッチカール、フクレ、緻密性、密着性について評価を行った。結果を表1に示す。なお、性能評価は以下のようにして行った。
【0045】
(エッチカール/EC)
上記方法に従い作製した試験片を、表面粗さ計(小坂製作所製)にてラインを測定し、ラインの中心部とエッチ部の高さの差を算出した。
【0046】
(フクレ)
上記方法に従い作製した試験片のライン部のフクレを観察した。
【0047】
(緻密性)
上記方法に従い作製した試験片のライン部について、光学顕微鏡で透過光によりピンホールの有無を確認し、緻密性の優劣とした。評価基準は以下の通りである。
【0048】
○・・・5μm以上のピンホール無し
△・・・5〜10μm未満のピンホール有り
×・・・10μm以上のピンホール有り
(密着性)
上記方法に従い作製した試験片について、粘着テープピーリングを行い、パターンの剥離がないかどうかで評価した。評価基準は以下の通りである。
【0049】
○・・・パターンの剥離なし
△・・・一部パターンの剥離(欠け)あり
×・・・パターンの剥離あり
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示す結果から明らかなように、本発明の感光性導電ペーストを用いることにより、基板との密着性が良く、緻密でピンホールやフクレ等の欠損、形状不良のない導電性パターンが得られることがわかった。また、20℃/60分という昇温レートの高い焼成プロファイルにおいても気泡、フクレ等の発生が抑えられていることから、本発明の感光性導電ペーストは高速焼成性にも優れることが確認された。
【0052】
(実施例2)
[組成物例5〜6、比較組成物例4]
組成物例1に対し、ガラスフリットの種類をガラスフリットAからガラスフリットBに替え、更にガラスフリットの添加量を表2に示すように変える以外は同様にして組成物例5〜6及び比較組成物例4を調製した。
【0053】
試験片の作製
ガラス基板上に、評価用の各感光性銀ペーストを150メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布し、次いで、熱風循環式乾燥炉にて90℃で30分間乾燥することにより指触乾燥性の良好な塗膜を形成した。次に、光源としてショートアークランプを用い、100μmのストライプパターンのあるネガマスクを介して、乾燥塗膜上の積算光量が100mJ/cmとなるようにパターン露光した後、液温30℃の0.4質量%NaCO水溶液を用いて20秒間又は30秒間現像を行い、水洗した。このようにして塗膜パターンが形成された基板を、空気雰囲気下にて20℃/60分で600℃まで昇温し、600℃で30分間焼成することにより、導電体パターンがガラス基板上に形成された試験片を作製した。
【0054】
性能評価
各試験片についての評価結果を表2に示す。エッチカール/ECの評価方法は実施例1と同じである。
【0055】
【表2】

【0056】
表2にから、ガラスフリットの含有率が5.0質量%に対し5.1質量%になると、エッチカールが低減されることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)導電性粉末、(B)有機バインダー、(C)光重合性モノマー、(D)光重合開始剤、及び(E)ガラスフリットを含有する感光性導電ペーストにおいて、ガラスフリット(E)の含有率がペーストの全質量に対し5.1〜10質量%であることを特徴とする感光性導電ペースト。
【請求項2】
ガラスフリット(E)のガラス転移点が470〜530℃であることを特徴とする、請求項1に記載の感光性導電ペースト。
【請求項3】
ガラスフリット(E)のガラス軟化点が550〜600℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の感光性導電ペースト。
【請求項4】
ガラスフリット(E)が、平均粒径(D50)値が0.2〜1.2μm、最大粒径(Dmax)値が1.0〜4.5μmの微細粉末であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性導電ペースト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性導電ペーストの焼成物から形成された導電体パターン。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性導電ペーストの焼成物から形成された導電体パターンを有するプラズマディスプレイパネル。

【公開番号】特開2008−108724(P2008−108724A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256546(P2007−256546)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】