説明

感光性導電ペースト

【課題】 熱処理温度の範囲を広くすることができ、金属粒子を十分に接触させて信頼性の向上を図ることのできる感光性導電ペーストを提供する。
【解決手段】 紫外線の照射により現像液に対して不溶化するバインダー1と、バインダー1の熱分解温度よりも50℃以上熱分解温度が高いバインダー2と、熱機械分析の融着開始温度が300℃以下の金属粒子とを必須成分とする。そして、金属粒子を銀粒子とし、銀粒子の平均粒径を0.05〜0.5μmとするとともに、銀粒子の平均粒径±0.05μmの範囲に含まれる全銀粒子の割合を30質量%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス基板、ガラス基板、耐熱性樹脂基板に微細の配線パターン等を形成する際に使用される感光性導電ペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電気電子機器、特にその回路基板には、小型化、高密度化、高精細化、高信頼性が求められているが、これに伴い、厚膜で微細加工可能な感光性導電ペーストが要求されてきている。
そこで、感光性の有機成分と金属粉末とを必須成分とし、金属粉末全量中10〜100質量%の範囲で粒径0.4μm以下の金属微粒子を含有する感光性導電ペーストが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−54085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の感光性導電ペーストは、ある程度の厚膜化と微細加工が可能になるものの、熱処理温度の範囲を広くすることができず、製法の自由度を高めることができないという問題がある。また、金属微粒子が十分に接触しないおそれがあるので、信頼性の向上を図ることができないという大きな問題もある。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、熱処理温度の範囲を広くすることができ、金属粒子を十分に接触させて信頼性の向上を図ることのできる感光性導電ペーストを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、紫外線と電子線のいずれか一方の照射により現像液に対して不溶化する第一のバインダーと、この第一のバインダーの熱分解温度よりも50℃以上熱分解温度が高い第二のバインダーと、平均粒径が0.05〜0.5μmの金属粒子とを含み、
平均粒径±0.05μmの範囲に含まれる金属粒子の割合を30質量%以上としたことを特徴としている。
【0006】
なお、第一のバインダーの分解温度、第二のバインダーの分解温度、及び熱処理温度の関係を、第一のバインダーの分解温度<熱処理温度<第二のバインダーの分解温度とすることが好ましい。
また、第二のバインダーの配合比を金属粒子のタップ空隙率以下とすることが好ましい。
【0007】
また、金属粒子の融着開始温度と熱処理温度の関係を、金属粒子の融着開始温度<熱処理温度とすることが好ましい。
さらに、金属粒子の少なくとも一部を銀粒子とし、この銀粒子の熱機械分析の融着開始温度を300℃以下とすると良い。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における第一のバインダーは、紫外線(UV)の照射により硬化して現像液に対して不溶化するものでも良いし、電子線(EB)の照射により硬化して現像液に対して不溶化するものでも良い。タップ空隙率とは、金属粒子のタップ密度を金属の真密度で除した値を1から減算した値をいう。感光性導電ペーストは、少なくともコンピュータ、PCカード、携帯電話、携帯端末、カラーテレビのセラミックス基板、ガラス基板、耐熱性樹脂基板、回路基板等に使用される。この感光性導電ペーストには、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、分散剤、増粘剤、沈殿防止剤等が必要に応じて添加される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱処理温度の設定範囲を広くすることができ、しかも、金属粒子を十分に接触させて信頼性を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における感光性導電ペーストは、紫外線の照射により現像液に対して不溶化する光硬化性のバインダー1(第一のバインダー)と、このバインダー1の熱分解温度よりも50℃以上熱分解温度が高い耐熱性のバインダー2(第二のバインダー)と、熱機械分析(TMA)の融着開始温度が300℃以下の金属粒子とを必須成分とし、微細の配線パターン形成の際に焼成等の熱処理が施される。
【0011】
バインダー1の分解温度、バインダー2の分解温度、及び熱処理温度は、バインダー1の分解温度<熱処理温度<バインダー2の分解温度の関係に設定される。
【0012】
バインダー1は、水、アルカリ性水溶液、溶剤等により現像することができる紫外線硬化型の樹脂組成物、好ましくは解像度や作業性の観点からアルカリ性水溶液により現像可能な樹脂組成物からなり、焼成等の熱処理時に除去される。このような樹脂組成物からなるバインダー1は、アルカリ可溶性樹脂、不飽和二重結合を有する架橋性モノマー又はオリゴマー、光重合開始剤により調製される。
【0013】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えばカルボン酸のような酸性基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体が最適である。酸性基の成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸2−メタクリロイルオキシエチル、コハク酸2−アクリロイルオキシエチル、フタル酸2−メタクリロイルオキシエチル、フタル酸2−アクリロイルオキシエチル等があげられる。
【0014】
エチレン性不飽和成分としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等があげられる。
【0015】
なお、アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像性を損なわない範囲で上記成分と他のモノマーとの種々の共重合体を使用することができる。
【0016】
不飽和二重結合を有する架橋性モノマーは、少なくとも1のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、光照射により光重合開始剤から発生したラジカルで反応し、アルカリ現像液に対する溶解性を低下させてパターンを形成する。
【0017】
具体的には、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ルジアクリレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートをメタクリレートに置き換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシプラン、1−ビニル−2−ピロドリン等があげられる。なお、上記架橋性モノマーを2種以上組み合わせても良い。
【0018】
光重合剤は、通常のネガタイプのフォトリソグラフに使用することができるのであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノアセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、フルオレソン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロロアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジトベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラ−ケトン、2メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルフォニルクロライド、N−フェニルチオアクドリン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールスルフィド、トリフェニルフォスフィン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、カンファーキノン等であるが、2種以上併用することも可能である。
【0019】
なお、紫外線の透過が阻害されるおそれがある場合には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、あるいは2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オンを使用することが好ましい。さらにこれらに、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、又は2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを併用すると良い。
【0020】
バインダー1は、熱質量分析における5%質量減少温度が200〜350℃の範囲とされる。これは、200℃未満の場合には、金属粒子の融着に基づく高い導電性を得ることが困難になるからである。逆に、350℃を超える場合には、バインダー2の使用範囲が狭くなり、本実施形態の製造方法の実施範囲が狭まるからである。
【0021】
バインダー2は、バインダー1との関係で選択され、配合比(容量)が金属粒子のタップ空隙率以下とされる。このバインダー2は、質量減少温度の差が大きいほど好ましく、この観点からするとポリイミド樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びこれらの前駆体が使用される。タップ空隙率とは、金属粒子のタップ密度をその金属の真密度で除した値を1から減算した値をいう。例えば、タップ密度が6.0g/cm3の銀粒子の場合、銀の真密度は10.5g/cm3であるから、タップ空隙率は0.429(=42.9%)となる。
【0022】
金属粒子は、高い導電率を有する金や銀の粒子が使用され、特に入手の容易性、導電性、耐酸化性に優れる低コストの銀粒子が好適に使用される。この金属粒子は、各種の分散剤により表面処理され、二次凝集の生じないことが好ましい。分散剤は、熱処理工程で分解、揮発するタイプが好ましい。
【0023】
金属粒子が銀粒子の場合、この銀粒子は、樹脂等の選択範囲が狭まらないよう平均粒径がレーザ回析法に基づく測定で0.05〜0.5μmの範囲に調整されるとともに、アスペクト比(aspect ratio)が1.0〜1.5の略球形に形成され、平均粒径±0.05μmの範囲に含まれる割合が30質量%以上に設定される。
【0024】
金属粒子の平均粒径が0.05〜0.5μmの範囲なのは、平均粒径が0.05μm未満の場合には、導電性を確保するために添加量を増加する必要があるからである。逆に、平均粒径が0.5μmを超える場合には、光透過率に悪影響を与え、微細なパターンを得ることができなくなるからである。また、金属粒子同士の融着による導通を得るために高温を要するからである。
【0025】
金属粒子のアスペクト比が1.0〜1.5なのは、この範囲からアスペクト比が逸脱すると、光透過率が悪化し、微細なパターンを形成することが困難になるという理由に基づく。このアスペクト比の測定に際しては、金属粒子を適当な分散媒に分散させて顕微鏡等により拡大観察し、個々の粒子の長径と短径を計測し、アスペクト比=長径/短径により算出した値の平均値とする。
【0026】
金属粒子の粒径バラツキは、平均粒径±0.5μmの範囲に含まれる割合が30質量%以下であるのが好ましい。これは、金属粒子の粒径バラツキが係る範囲を超える場合には、大きな金属粒子間に小さな金属粒子が侵入し、良好な光透過率を得ることが困難になるという理由に基づく。金属粒子の融着開始温度と熱処理温度は、金属粒子の融着開始温度<熱処理温度の関係に設定される。
【0027】
このような感光性導電ペーストを使用してガラス基板の表面に微細の配線パターンを形成する場合には、先ず、ガラス基板の表面に感光性導電ペーストをスクリーン印刷法等により塗布し、所定の時間加熱して乾燥させ、ネガタイプのマスクを介して露光し、アルカリ水溶液等を現像液として現像する。こうして現像液による現像が終了してパターン形成したら、水洗いを施して乾燥させ、プログラマブルオーブン、電気炉、ベルト炉により焼成して所定の時間保持し、その後、冷却すれば、ガラス基板の表面に完全な微細の配線パターンを形成することができる。
【0028】
上記によれば、バインダー1、2の熱分解温度差を50℃以上とするので、熱処理温度の設定範囲を広くすることができ、バインダー1のみを除去する条件をきわめて容易に得ることができる。また、紫外線の照射により硬化させるので、露光現像により線幅20μm以下のファインパターンを得ることができる。また、感光性導電ペーストに耐熱性のバインダー2を配合し、熱処理後も残留させるので、高い信頼性を得ることが可能になる。また、バインダー2の容量を金属粒子のタップ空隙率以下として金属粒子を確実に接触させるので、低抵抗化が可能になる。
【0029】
さらに、金属粒子を銀粒子とし、この銀粒子の平均粒径を0.05〜0.5μmとするので、従来の500℃〜800℃のような高温ではなく、300℃以下の低温の熱処理で銀粒子が融着して導通し、1×105Ω・cm以下の低抵抗を得ることが可能になる。この際、バインダー1が分解除去され、体積減少するので、銀粒子の接触の機会を著しく増加させることができ、これにより高信頼性が大いに期待できる。さらにまた、300℃以下の低温で銀粒子が融着するので、大型かつ高価な加熱装置を何ら必要とせず、昇温や冷却に長時間を要することもない。
【実施例】
【0030】
以下、本発明に係る感光性導電ペーストの実施例を比較例と共に説明する。
実施例と比較例の感光性導電ペーストをそれぞれ製造するとともに、これらを使用して実施例1〜7のテストパターンと比較例1〜6のテストパターンをそれぞれ作製し、これらに関する解像度、抵抗値、耐剥離性を評価して表1にまとめた。
【0031】
実施例1
先ず、表1に示すバインダー1、バインダー2、銀粒子を溶剤であるメトキシブチルアセテートと共に同表記載の容量比で混合して感光性導電ペーストを調製し、この調製した感光性導電ペーストを厚さ1.1mmのソーダライムガラスにバーコータを用いて塗布し、50℃の熱風乾燥機で30分乾燥させ、厚さ20μmの乾燥塗膜を形成した。
【0032】
表1の「UV」は、スチレン−無水マレイン酸共重合体系のアルカリ可溶性樹脂、架橋性モノマーであるポリエチレングリコールジメタクリレート、光重合開始剤であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを、アルカリ可溶性樹脂と架橋性モノマーの合計100質量部に対し、各5質量部添加したものである。また、同表の「PI」は、ポリイミド樹脂〔丸善石油製:商品名BANI−H〕である。
【0033】
次いで、ライン/スペースが10μm/10μm、15μm/15μm、20μm/20μm、30μm/30μm、40μm/40μm、50μm/50μmの領域がそれぞれ20mm□中に形成されたパターン部と、20mm×50mmの透過部を有するガラス製のフォトマスクを乾燥塗膜に密着させ、メタルハライドランプを備えたフレネルレンズ方式の平行光露光機により8000mJ/cm2の積算光量になるようUV露光した。こうしてUV露光したら、1.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液で現像し、パターンを形成して中間体を得た。
【0034】
次いで、熱処理を行うべく、プログラマブルオーブンに中間体をセットして室温から昇温スピード10℃/分で昇温し、表1記載の熱処理温度に到達後、その温度で60分間保持した。60分間保持したら、冷却スピード10℃/分で180℃まで冷却してプログラマブルオーブンから取り出し、室温で放冷してテストパターンを作製した。
なお、表1の「硬化深さ」は、配線パターンであるテストパターンの表面から内部への深さをいい、現像後熱処理前のテストパターン断面の、現像液による侵食が殆どない表層部の厚さを光学顕微鏡で観察等して測定することにより求めることができる。
【0035】
実施例2〜7
基本的には実施例1と同様であるが、感光性導電ペーストの銀粒子の平均粒径やアスペクト比を変更したり、UVから光開始剤を除去したり、あるいは5%質量減少温度を変更した。
【0036】
但し、実施例6においては、厚さ25μmのニッケル箔をエッチング加工して上記パターン部と透過部を有するマスクを作製し、加速電圧200kVのEB照射装置を使用し、照射量を500kGyとして照射した。
また、表1における実施例6の「EB」は、「UV」から光開始剤を除去したものである。同表における実施例7の「UV(2)」は、酸価100(mg・KOH/g)のトリスフェノールメタン型エポキシアクリレートオリゴマーに「UV」と同様の光重合開始剤を添加したものである。
【0037】
比較例1〜6
基本的には実施例1と同様であるが、銀粒子の平均粒径、熱処理温度、融着開始温度、アスペクト比を変更したり、5%質量減少温度を変更した。
表1の「UV(3)」は、酸価100(mg・KOH/g)のフェノールノボラック型エポキシアクリレートオリゴマーに「UV」と同様の光重合開始剤を添加したものである。
【0038】
解像度、抵抗値、耐剥離性の評価
(1)解像度の評価
同一のライン/スペースを有するパターン領域において、断線や短絡のない最小のものとした。
(2)抵抗値の評価
20mm×50mmの透過部により形成されたベタ領域を用い、ロレスタHP〔ダイヤインスルメンツ製:商品名〕により4端針法にて体積抵抗率を測定した。
【0039】
(3)耐剥離性の評価
ベタ領域にカッターナイフにより1mmピッチで縦横それぞれ11本の線を引いて格子模様を形成し、この格子模様に粘着テープを貼り付けて剥離し、100個に分断された領域中、粘着テープに粘着した分断片の個数を計測した。この耐剥離性は、初期及び60℃95%RHに1000時間放置後に評価した。
【0040】
【表1】

【0041】
結 果
実施例1のテストパターンについては、きわめて良好な解像度、抵抗値、耐剥離性を得ることができた。
実施例2のテストパターンについては、融着開始温度が高く平均粒径が大きい銀粒子を使用したため、抵抗値が僅かに高くなったが、実用上問題になることはなく、良好な解像度、抵抗値、耐剥離性を得ることができた。
実施例3のテストパターンについては、融着開始温度が低く平均粒径が小さい銀粒子を使用したため、抵抗値が低くなり、解像度や耐剥離性も良好であった。
【0042】
実施例4のテストパターンについては、アスペクト比が大きい銀粒子を使用したため、硬化深さが減少し、解像度が20μmになったが、用途によっては十分な値であり、良好な解像度、抵抗値、耐剥離性が得られた。
実施例5のテストパターンについては、平均粒径が小さい銀粒子を使用したため、硬化深さが減少し、解像度が15μmになったが、用途によっては十分な値であり、良好な解像度、抵抗値、耐剥離性が得られた。
【0043】
実施例6のテストパターンについては、平均粒径が小さい銀粒子を使用したが、EB照射により全厚さ分の硬さとなり、良好な解像度、抵抗値、耐剥離性が得られた。
実施例7のテストパターンについては、バインダー2として5%質量減少温度が低めのものを使用したが、特に問題はなく、きわめて良好な解像度、抵抗値、耐剥離性を得ることができた。
【0044】
これに対し、比較例1のテストパターンについては、融着開始温度が320℃で平均粒径の大きい銀粒子を使用したため、280℃の熱処理では十分な導通性を得ることができなかった。
比較例2のテストパターンについては、比較例1と同様の材料を使用し、熱処理温度を350℃と高く設定することにより、実用レベルの抵抗値を得た。しかしながら、係る熱処理温度では樹脂基材の使用、他部品、絶縁膜等との併用は略不可能であり、用途が非常に限定されるという問題が生じた。
【0045】
比較例3のテストパターンについては、融着開始温度が非常に高い銀粒子を使用したため、280℃の熱処理では十分な導通性を得ることができなかった。
比較例4のテストパターンについては、比較例3と同様の材料を使用し、熱処理温度を450℃と高く設定することにより、実用レベルの抵抗値を得た。しかしながら、係る熱処理温度では樹脂基材の使用、他部品、絶縁膜等との併用は略不可能であり、用途が非常に限定されるという問題が生じ、しかも、きわめて劣悪な耐剥離性しか得られなかった。
【0046】
比較例5のテストパターンについては、アスペクト比が本発明の範囲を超える大きい銀粒子を使用したため、解像度が悪化し、融着開始温度も高く、さらには十分な導電性を得ることができなかった。
比較例6のテストパターンについては、バインダー2として5%質量減少温度が本発明の範囲を下回るものを使用した。この結果、初期特性こそ良好であったが、高温高湿後に耐剥離性が非常に悪化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線と電子線のいずれか一方の照射により現像液に対して不溶化する第一のバインダーと、この第一のバインダーの熱分解温度よりも50℃以上熱分解温度が高い第二のバインダーと、平均粒径が0.05〜0.5μmの金属粒子とを含み、
平均粒径±0.05μmの範囲に含まれる金属粒子の割合を30質量%以上としたことを特徴とする感光性導電ペースト。
【請求項2】
第一のバインダーの分解温度、第二のバインダーの分解温度、及び熱処理温度の関係を、第一のバインダーの分解温度<熱処理温度<第二のバインダーの分解温度とした請求項1記載の感光性導電ペースト。
【請求項3】
第二のバインダーの配合比を金属粒子のタップ空隙率以下とした請求項1又は2記載の感光性導電ペースト。
【請求項4】
金属粒子の融着開始温度と熱処理温度の関係を、金属粒子の融着開始温度<熱処理温度とした請求項1、2、又は3記載の感光性導電ペースト。
【請求項5】
金属粒子の少なくとも一部を銀粒子とし、この銀粒子の熱機械分析の融着開始温度を300℃以下とした請求項1ないし4いずれかに記載の感光性導電ペースト。

【公開番号】特開2006−30385(P2006−30385A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206116(P2004−206116)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】