説明

感光性導電性樹脂組成物、感光性導電性ペーストおよび導電体パターン

【課題】解像性および粘性に優れた感光性導電性樹脂組成物、感光性導電性ペーストおよび該ペーストを用いた導電体パターンを提供する。
【解決手段】本発明の感光性導電性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)オキシムエステル系光重合開始剤、(D)セルロース樹脂、および、(E)導電粉を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性導電性樹脂組成物、感光性導電性ペーストおよび導電体パターンに関し、詳しくは、解像性および粘性に優れた感光性導電性ペーストを得ることのできる感光性導電性樹脂組成物、該組成物からなる感光性導電性ペーストおよび該ペーストを用いた導電体パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ用の基板やプリント配線板等に形成する電極等の導電体のパターンの形成方法の一つとして、フォトリソグラフィ技術を利用した形成方法が用いられている。例えば、導電材料を含有した感光性のアルカリ現像型の樹脂組成物からなるペーストを基板上に塗布乾燥し、パターンマスクを通して露光した後、アルカリ現像することによって導電体パターンを形成することができる。
【0003】
上記のフォトリソグラフィ技術を利用した形成方法は、スクリーン印刷によるパターンの形成方法と比べて、一般的に解像性に優れた方法であるが、より高密度・高精細の導電体パターンの形成を目的として、解像性の向上が求められてきた。解像性の高い導電体パターンが得られる樹脂組成物として、特許文献1には、主鎖に特定の連結基を有する特定の重量平均分子量の重合体と、活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物とを含有する感光性導電性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、オキシムエステル系光重合開始剤と特定の硫黄化合物とを含有する感光性導電性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−298344号公報
【特許文献2】特開2008−146042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の軽薄短小化や、高精細のフルスペックハイビジョンのプラズマディスプレイが主流となりつつあることから、導電体パターンの高密度・高精細化が従来よりも求められているところ、導電体パターンの解像性には未だ改良の余地があった。また、印刷時に生じるダレを防止すべく、導電性ペーストの粘性の改良も求められていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、解像性および粘性に優れた感光性導電性樹脂組成物、感光性導電性ペーストおよび該ペーストを用いた導電体パターンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、光重合開始剤としてオキシムエステル系光重合開始剤を使用し、さらにセルロース樹脂を添加することで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
<1>本発明の感光性導電性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)オキシムエステル系光重合開始剤、(D)セルロース樹脂、および、(E)導電粉を含有することを特徴とする。
<2>本発明は、固形分換算で、前記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、前記(D)セルロース樹脂1〜25質量部を含有することが好ましい。
<3>本発明は、前記(D)セルロース樹脂として、エチルセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロースおよびアセチルプロピルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
<4>本発明は、固形分換算で、前記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、前記(C)オキシムエステル系光重合開始剤0.005〜5質量部を含有することが好ましい。
<5>本発明は、さらに、前記(E)導電粉100質量部に対して、(F)ガラスフリット1〜30質量部を含有することが好ましい。
<6>本発明は、前記(E)導電粉として、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
<7>本発明は、さらに、前記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、(G)安定剤0.05〜10質量部を含有することが好ましい。
<8>本発明は、前記(G)安定剤として、リン酸エステルおよび/または有機酸を含有することが好ましい。
<9>本発明の感光性導電性ペーストは、上記感光性導電性樹脂組成物からなることを特徴とする。
<10>本発明の導電体パターンは、上記感光性導電性ペーストを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、解像性および粘性に優れた、感光性導電性樹脂組成物、感光性導電性ペーストおよび該感光性導電性ペーストを用いた導電体パターンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の感光性導電性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)オキシムエステル系光重合開始剤、(D)セルロース樹脂、および、(E)導電粉を含有する。
以下、各成分について具体的に説明する。
【0011】
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
本発明の感光性導電性樹脂組成物において、(A)アルカリ可溶性樹脂として、公知のカルボキシル基を含む樹脂を用いることができる。カルボキシル基の存在により、樹脂組成物をアルカリ現像性とすることができる。また、光硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有していてもよい。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸又はそれらの誘導体由来のものが挙げられる。
【0012】
本発明の感光性導電性樹脂組成物に用いることができるカルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0013】
(1)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する化合物を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂。
(2)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する化合物の共重合体にエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(3)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(4)不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(5)エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(6)不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
(7)水酸基含有ポリマーに多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
(8)水酸基含有ポリマーに多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0014】
なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、(メタ)アクリル酸等の他の類似の表現についても同様である。
【0015】
上記のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂として、公知のカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを含む樹脂を用いることができる。カルボキシル基の存在により、樹脂組成物をアルカリ現像性とすることができる。また、エチレン性不飽和二重結合の存在により、光重合性モノマーを含有せずとも光重合をすることができるが、必要に応じて、光重合性モノマーを併用してもよい。本発明の他の感光性導電性樹脂組成物に用いることができるエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂の具体例としては、前記(A)アルカリ可溶性樹脂で例示した(2)〜(5)、(8)等のカルボキシル基含有感光性樹脂が挙げられる。
【0016】
また、前記(A)アルカリ可溶性樹脂としては、重量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、さらに好ましくは5,000〜70,000、また、好ましくは酸価50〜250mgKOH/gである。前記樹脂の分子量が1,000より低いと、現像時の皮膜の密着性に悪影響を与える場合があり、一方、100,000よりも高いと、現像不良を生じる場合があるので好ましくない。また、酸価が50mgKOH/gより低いと、アルカリ水溶液に対する溶解性が不十分で現像不良を生じる場合があり、一方、250mgKOH/gより高いと、現像時に皮膜の密着性の劣化や光硬化部(露光部)の溶解が生じる場合があるため好ましくない。
【0017】
上記(A)アルカリ可溶性樹脂は、通常の量的割合において用いることができるが、感光性導電性樹脂組成物の固形分換算で10〜40質量%の割合で配合することが好ましい。
【0018】
<(B)光重合性モノマー>
本発明において、(B)光重合性モノマーとして、感光性導電性樹脂組成物に用いる公知の光重合性モノマーを使用することができる。光重合性モノマーは分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であり、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどが挙げられる。これらの中でも、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。上記光重合性モノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
(B)光重合性モノマーの配合量は固形分換算で、上記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、30〜100質量部が好ましい。100質量部を超えると、塗膜のタック性が悪くなる場合があり、ごみが付着しやすく、ごみ付着部分でパターニング不良が発生することがある。一方、30質量部未満であると、モノマー成分が少なくパターン形成が難しくなる場合がある。
【0020】
<(C)オキシムエステル系光重合開始剤>
本発明においては、(C)オキシムエステル系光重合開始剤を光重合開始剤として使用し、さらに(D)セルロース樹脂を添加することにより、解像性および粘性に優れた感光性導電性ペーストを得ることのできる感光性導電性樹脂組成物を提供することができる。
上記(C)オキシムエステル系光重合開始剤として、感光性のペースト組成物に用いる公知のオキシムエステル系光重合開始剤を使用することができる。例えば、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オンなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のCGI−325、OXE−02、OXE−01や、ADEKA社製のNCI−831、N−1919等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の中でも、BASFジャパン社製のOXE−02やADEKA社製のNCI−831などが好ましい。
【0021】
(C)オキシムエステル系光重合開始剤の配合量は固形分換算で、上記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.005〜5質量部、より好ましくは0.01〜4質量部、更に好ましくは0.02〜2質量部である。オキシムエステル系光重合開始剤の配合量が0.005質量部未満では、十分な光硬化性が得られない場合や、解像性が向上しない場合があり、一方、5質量部を超えると、厚膜硬化性が低下する場合がある。また、オキシムエステル系光重合開始剤は比較的高価であるため、多すぎるとコストアップにつながる。
【0022】
また、オキシムエステル系光重合開始剤の配合量が少ないと解像性が低下する場合があるが、本発明においては、(D)セルロース樹脂を添加することによって、オキシムエステル系光重合開始剤の配合量を減らしても、解像性に優れた感光性導電性樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
<(D)セルロース樹脂>
本発明において、(D)セルロース樹脂として、セルロースエーテル、カルボキシルメチルセルロース、セルロースエステルなどを使用することができる。
【0024】
セルロースエーテルとしてはエチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどが挙げられ、エチルセルロースの市販品としては、エトセル4、エトセル7、エトセル10、エトセル14、エトセル20、エトセル45、エトセル70、エトセル100、エトセル200、エトセル300(以上、ダウ・ケミカル社製)、ヒドロキシアルキルセルロースの市販品としては、メトローズSM、メトローズ60SH、メトローズ65SH、メトローズ90SH、メトローズSEB、メトローズSNB(以上、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0025】
カルボキシメチルセルロースの市販品としては、CMCAB−641−0.2(イーストマン社製)、サンローズF、サンローズA、サンローズP、サンローズS、サンローズB(以上、日本製紙ケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0026】
また、セルロースエステルは、セルロースの持つヒドロキシル基を有機酸によりエステル化した化合物であり、具体的には、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
【0027】

(式中、Rは同一でも異なっていてもよく、水素又は有機酸エステル基を表し、水素及び有機酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種以上から構成される。nは1以上の整数であり、その上限は後述する分子量から規制される。)
上記一般式で示されるセルロースエステルにおいて、セルロース樹脂に対するヒドロキシル基含有量は0〜6wt%、有機酸エステルとして、アセチル基含有量は0〜40wt%、プロピオニル基及び/又はブチリル基含有量は0〜55wt%の範囲が好ましい。ここでいう「wt%」とは、セルロースの重量に対する水素又は有機酸エステルの重量%である。
【0028】
このようなセルロースエステルの市販品としては、アセチルセルロースとして、CA−398−3、CA−398−6、CA−398−10、CA−398−30、CA−394−60Sなど、アセチルブチルセルロースとして、CAB−551−0.01、CAB−551−0.2、CAB−553−0.4、CAB−531−1、CAB−500−5、CAB−381−0.1、CAB−381−0.5、CAB−381−2、CAB−381−20、CAB−381−20BP、CAB−321−0.1、CAB−171−15など、アセチルプロピルセルロースとして、CAP−504−0.2、CAP−482−0.5、CAP−482−20(以上、イーストマン・ケミカル社製)などが挙げられる。
【0029】
上記セルロース樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、セルロース樹脂の中でも、セルロースエーテル、セルロースエステルが好ましく、エチルセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルプロピルセルロースがより好ましく、エチルセルロース、アセチルプロピルセルロースが更に好ましく、アセチルプロピルセルロースが特に好ましい。
【0030】
セルロース樹脂の数平均分子量は特に制限は無いが、好ましくは5,000〜500,000、さらに好ましくは10,000〜100,000である。分子量が5,000未満では、乾燥後の塗膜のタックフリー性を得られ難く、一方、500,000を超えると、溶剤への溶解性、相溶性が悪くなる場合があるので好ましくない。
【0031】
また、セルロース樹脂のガラス転移温度Tgは、70℃以上、200℃未満であることが好ましく、さらに好ましくは100℃以上、180℃未満である。ガラス転移温度が70℃未満である場合、十分なタックフリー性を得ることが困難であり、一方、200℃以上である場合、硬化塗膜の耐折性を損なう恐れがある。尚、本発明書でいうガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定装置(DSC)によりJIS C6481:1996の「5.17.5DSC法」に記載される方法に準じて測定したガラス転移温度をいう。
【0032】
本発明で使用するセルロース樹脂は、天然物由来であることが、化石燃料枯渇の側面から好ましい。さらに、本発明のセルロース樹脂に用いる出発原料は、再生パルプなどリサイクル品からの製造も可能であり、CO削減の環境側面からも好ましい組成物を提供できる。
【0033】
(D)セルロース樹脂の配合量は固形分換算で、上記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜25質量部、より好ましくは2〜20質量部、更に好ましくは4〜15質量部である。セルロース樹脂の配合量が1質量部未満では、解像性および粘性が十分に向上しない場合があるのに対し、25質量部を超えると、機械的特性が低下する場合がある。
【0034】
<(E)導電粉>
本発明において、(E)導電粉として、導電性ペーストに使用されるものであれば公知のものをいずれも使用可能である。導電粉としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム合金、アルミニウムなどの金属粉、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、カーボンブラックとグラファイトの混合物、カーボンナノチューブなどの炭素粉が挙げられ、金属粉が好ましく、銀、銅およびアルミニウムがより好ましい。上記導電粉は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、球状やフレーク状の導電粉を用いることができるが、光特性、分散性を考慮すると球状の導電粉を用いることが好ましい。平均粒径としては、解像度の点から0.5〜3.0μmのものを用いることが好ましい。導電粉は用途に応じて適宜選択でき、例えばアドレス電極用としては、抵抗値とコストの兼ね合いから銀粉が好適に用いられる。この銀粉は、酸化防止、組成物内での分散性向上、現像性の安定化のため、脂肪酸による処理を行うことが好ましい。脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0035】
(E)導電粉の配合量は固形分換算で、上記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、金属粉の場合、好ましくは350〜700質量部、より好ましくは300〜650質量部であり、炭素粉の場合、好ましくは150〜500質量部、より好ましくは120〜450質量部である。配合量が、金属粉の場合は350質量部、炭素粉の場合は150質量部より少ない場合、十分な導電性が得られない場合があるのに対し、金属粉の場合は700質量部、炭素粉の場合は500質量部より多い場合は、光透過性が低減し、十分な光硬化性が得られない場合がある。
【0036】
<(F)ガラスフリット>
本発明において、(F)ガラスフリットは、ガラス軟化点が420〜580℃であることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点が360〜500℃である。また、平均粒径が0.2〜1.0μmのものであることが好ましい。ガラスフリットの平均粒径が1.0μm以下であると、焼成時の収縮が均一に起こり、電極のライン形状がシャープになり緻密な膜の電極が形成できる。また、ガラスフリットの熱膨張係数α300は、60〜110×10−7のものが好ましい。
【0037】
このようなガラスフリットとしては、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リチウム、又はアルカリホウケイ酸塩を主成分とするものが好適に用いられる。
【0038】
酸化鉛を主成分とするガラスフリットとしては、酸化物基準の質量%で、PbOが48〜82%、Bが0.5〜22%、SiOが3〜32%、Alが0〜12%、BaOが0〜15%、TiOが0〜2.5%、Biが0〜25%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0039】
酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、Biが6〜88%、Bが5〜30%、SiOが5〜25%、Alが0〜5%、BaOが0〜20%、ZnOが1〜20%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0040】
酸化亜鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、ZnOが25〜60%、KOが2〜15%、Bが25〜45%、SiOが1〜7%、Alが0〜10%、BaOが0〜20%、MgOが0〜10%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0041】
このようなガラスフリットの配合量は、焼成後の密着性向上及び抵抗値低減の観点から、導電粉100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
【0042】
更に、ガラスフリットをペーストに均一に分散するために、分散剤を添加してもよい。分散剤は、ガラスフリットを均一にペーストに分散できるものであれば特に限定されるものではない。分散剤としては、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、変性アクリル系ブロック共重合体、顔料親和性基を有するアクリル共重合物、塩基性あるいは酸性の顔料吸着基を有するブロック共重合物、顔料親和性基を有する変性ポリアルコキシレート、ポリアミノアマイド塩とポリエステルの組合せ、又は極性酸エステルと高分子アルコールの組合せ、酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩、顔料親和性基を有する高分子量ブロック共重合体、特殊変性ウレア等が挙げられる。上記分散剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
市販されている分散剤(沈降を防止するためのレオロジーコントロール剤も含む)で特に好適に用いることができるものとしては、モダフロー(モンサント社製)、Disperbyk−101、−103、−110、−111、−160、−171、−174、−182、−184、−190、−300、BYK−P105、−P104、−P104S、−240、−410(以上、ビック・ケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0044】
ガラスフリットを微粒子化しペーストに均一に分散させるために、予め有機溶剤や分散剤などと混合してガラススラリーを調製した後に、他の成分と混合することが好ましい。
【0045】
<(G)安定剤>
本発明において、組成物の保存安定性を向上させ、ゲル化や流動性の低下による塗布作業性の悪化を抑制するために(G)安定剤を添加することが好ましい。
【0046】
このような安定剤としては、感光性導電性ペースト中の導電粉やガラスフリットなどの無機粉末の成分である金属あるいは酸化物との錯体化あるいは塩形成などの効果のある化合物を用いることができる。
【0047】
具体的には、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等の各種無機酸;ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、ステアリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸等の各種有機酸;リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジフェニル、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の各種リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などの酸が挙げられ、リン酸エステル、有機酸が好ましい。市販品としては、ライトエステルP−1M(共栄社化学社製)等が挙げられる。上記安定剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
(G)安定剤の配合量は(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0049】
なお、安定剤として、ホウ酸を配合する場合、25℃の水100gに対する溶解度が20g以下の疎水性溶媒を用いることが好ましい。水に対する溶解度の高い有機溶媒を用いると、有機溶媒中に溶け込んだ水が、ガラスフリット中に含まれる金属をイオン化させ、ゲル化の原因となる。
【0050】
<その他の成分>
上記各成分以外に、感光性導電性樹脂組成物に通常用いられるその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、シリコーン系、アクリル系等の消泡・レベリング剤、塗膜の密着性向上のためのシランカップリング剤、溶剤、チキソトロピー剤、酸化防止剤等が挙げられ、公知のものをいずれも使用可能である。さらに、必要に応じて、公知の酸化防止剤や保存時の熱的安定性を向上させるための熱重合禁止剤、焼成時における基板との結合成分としての金属酸化物、珪素酸化物、ホウ素酸化物等の微粒子等を添加することもできる。
【0051】
また、(C)オキシムエステル系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤、増感剤等を配合することができる。
他の光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネイト等のホスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、上記他の光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
また、増感剤としては、例えばN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤が挙げられる。上記増感剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
<感光性導電性ペースト>
本発明の感光性導電性ペーストは、本発明の感光性導電性樹脂組成物からなるものである。本発明の感光性導電性樹脂組成物を3本ロールミルなどにより練肉してペースト化することができる。
【0054】
<導電体パターン>
本発明の導電体パターンは、本発明の感光性導電性ペーストを用いて形成されたものである。導電体パターンの形成方法の例を下記する。但し、これに限られない。
【0055】
本発明の感光性導電性樹脂組成物からなる感光性導電性ペーストを、スクリーン印刷法、バーコーダー、ブレードコーターなど適宜の塗布方法で、例えばPDPの前面基板となるガラス基板などの基板に塗布し、塗膜を形成する。
【0056】
次いで、得られた塗膜を、指触乾燥性を得るために、熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉等で例えば約70〜120℃で5〜40分程度乾燥させ、有機溶剤を蒸発させ、タックフリーの塗膜(乾燥塗膜)を形成する。このとき、予め感光性導電ペーストをフィルム上に塗布、乾燥して、ドライフィルムを形成した場合には、ドライフィルムを基板上にラミネートしてもよい。
【0057】
そして、得られた乾燥塗膜をパターン露光する。露光方法としては、所定の露光パターンを有するネガマスクを用いた接触露光および非接触露光が可能である。露光光源としては、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー光、メタルハライドランプ、ブラックランプ、無電極ランプなどが使用される。露光量としては100〜800mJ/cm程度が好ましい。また、最大波長が350〜420nmのレーザー発振光源を用いた直接描画装置も用いて露光することもできる。
【0058】
さらに、所定パターンに露光された塗膜を現像する。現像方法としてはスプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液としては、感光性導電性ペーストのアルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基がケン化され、未硬化部(未露光部)を除去することができればよい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液、特に約1.5wt%以下の濃度の希アルカリ水溶液が好適に用いられる。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行うことが好ましい。
【0059】
そして、パターンが現像された基板を焼成し、導電体パターンを形成する。焼成条件は、例えば、空気雰囲気下または窒素雰囲気下で、約500〜600℃とすることができる。このとき、昇温速度は、20℃/分以下に設定することが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0061】
<合成例:アルカリ可溶性樹脂の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却機を備えたフラスコに、メチルメタクリレートとメタクリル酸を0.87:0.13のモル比で仕込み、溶媒としてジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下80℃で7時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液を得た。このアルカリ可溶性樹脂溶液は、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が約10,000、酸価が95mgKOH/gであった。なお、得られたアルカリ可溶性樹脂(共重合樹脂)の重量平均分子量の測定は、島津製作所製ポンプLC−6ADと昭和電工製カラムShodex KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0062】
<実施例1〜3および比較例1〜3>
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。表1に示した実施例1〜3および比較例1〜3の成分を含有する感光性導電性樹脂組成物を三本ロールミルで練肉して、感光性導電性ペーストを作製した。表中の配合量の単位は質量部である。
【0063】
【表1】

※1:上記合成例で得たアルカリ可溶性樹脂(固形分の値)
※2:ダウ・ケミカル社製 エトセルSTD−4
※3:イーストマン・ケミカル社製 CAP−482−20
※4:神港有機化学工業社製 ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
※5:共栄社化学社製 ライトアクリレート1.9ND−A(1.9−ノナンジオールジアクリレート)
※6:BASFジャパン社製 イルガキュア379
※7:BASFジャパン社製 イルガキュアOXE02
※8:平均粒径(D50)2.2μm、最大粒径(Dmax)11μm、表面積0.73m/g
※9:Bi 50%、B 16%、ZnO 14%、SiO 2%、BaO 18%、熱膨張係数α300=86×10−7/℃、ガラス軟化点501℃
※10:共栄化学社製 ポリフローNo.90 (表面調製剤)
※11:共栄化学社製 ライトエステルP−1M (リン酸エステル)
【0064】
<評価基板の作成>
表1に示す実施例1〜3および比較例1〜3の感光性導電性ペーストをそれぞれガラス基板上に、それぞれ200メッシュポリエステルスクリーンにて全面印刷し、IR式乾燥炉にて105℃で10分間乾燥することで基板上に塗膜を形成し、これらを評価基板とした。
【0065】
<評価試験>
これらの感光性導電性ペーストおよび評価基板を使用して、下記の評価試験法により、粘性および解像性の評価試験を行った。結果を下記表2に示す。
【0066】
(1)粘性
上記感光性導電性ペーストの粘度を、コーンプレート形回転式粘度計を用いて25℃における5回転値を測定した。粘度が60dPa・s以上のものを○、40dPa・s以上60dPa・s未満のものを△、40dPa・s未満のものを×で評価した。
【0067】
(2)解像性
上記評価基板に対し、光源にメタルハライドランプを用いて、ライン幅40μmおよび100μmのネガマスクを用いて、組成物上の積算光量が300mJ/cmとなるように露光した後、液温30℃の0.4wt%NaCO水溶液を用いて現像時間を10秒または20秒で現像を行い、水洗を経て、エアーナイフで乾燥した。乾燥後の基板を用いて、40μmラインおよび100μmラインの形成の可否を観察し、形成できたものを○、軽微な欠損があったが形成できたものを△、形成できなかったものを×で評価した。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例1と比較例1〜3を比較すると、オキシムエステル系光重合開始剤とセルロース樹脂を併用することによって、良好な粘性が得られ、解像性が向上していることがわかる。また、実施例1〜3を比較すると、セルロース樹脂としてアセチルプロピルセルロースを用いると、より優れた解像性が得られることがわかる。これらの結果は、本発明の感光性導電性樹脂組成物を用いることによって、プラズマディスプレイ用の基板やプリント配線板等に形成する電極等の高密度・高精細の導電体パターンを製造できることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)オキシムエステル系光重合開始剤、(D)セルロース樹脂、および、(E)導電粉を含有することを特徴とする感光性導電性樹脂組成物。
【請求項2】
固形分換算で、前記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、前記(D)セルロース樹脂1〜25質量部を含有する請求項1記載の感光性導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)セルロース樹脂として、エチルセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロースおよびアセチルプロピルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1又は2に記載の感光性導電性樹脂組成物。
【請求項4】
固形分換算で、前記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、前記(C)オキシムエステル系光重合開始剤0.005〜5質量部を含有する請求項1〜3のいずれか一項記載の感光性導電性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、前記(E)導電粉100質量部に対して、(F)ガラスフリット1〜30質量部を含有する請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性導電性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(E)導電粉として、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれか一項記載の感光性導電性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、前記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、(G)安定剤0.05〜10質量部を含有する請求項1〜6のいずれか一項記載の感光性導電性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(G)安定剤として、リン酸エステルおよび/または有機酸を含有する請求項7記載の感光性導電性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載の感光性導電性樹脂組成物からなることを特徴とする感光性導電性ペースト。
【請求項10】
請求項9記載の感光性導電性ペーストを用いることを特徴とする導電体パターン。

【公開番号】特開2013−80020(P2013−80020A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218737(P2011−218737)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】