説明

感光性平版印刷版材料および現像処理方法

【課題】高感度であり、pHが9未満の中性現像液もしくはpHが9〜12の範囲にあるアルカリ水溶液で現像処理が可能な、優れた現像性と高耐刷性を両立した感光性平版印刷版材料を与えること。
【解決手段】バインダーポリマー、光重合開始剤およびこれを増感する化合物と、下記一般式Iで示される分子内に、重合性二重結合基が結合した1,3,4−チアジアゾール基を2個以上有する多官能性モノマーを含んでなる感光層を有する感光性平版印刷版材料を用いる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,4−チアジアゾール基を有する新規な多官能性モノマーを利用した感光性平版印刷版材料と現像処理方法に関する。特に現像処理に際してpHが9未満の中性現像液もしくはpHが9〜12の範囲にあるアルカリ水溶液で現像処理が可能である感光性平版印刷版材料に関する。さらに、400〜430nmもしくは750〜1100nmの範囲のレーザーに対応できる高感度なネガ型感光性平版印刷版材料とその現像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューター上で作製したデジタルデータをもとにフィルム上に出力せずに直接印刷版上に出力するコンピューター・トゥー・プレート(CTP)技術が開発され、出力機として種々のレーザーを搭載した各種プレートセッターとこれらに適合する感光性平版印刷版の開発が盛んに行われている。この場合の出力レーザーとしては、現在のところ、近赤外光半導体レーザーとして830nm付近に発光するレーザーを利用する系と、405nm付近の青紫色半導体レーザーを利用する系の2つが主流であり、これらのレーザーに適合するCTP技術が盛んに検討されてきている。CTP方式の普及とともにクローズアップされてきた重要な問題点あるいは要望として、現像処理に関わる諸点が挙げられる。通常方式のCTPでは、印刷版材料をレーザー画像露光した後、アルカリ性現像液により非画像部を溶出し、水洗およびガム引き工程を経て印刷に供される。特に、特開2001−290271号公報、特開2002−278066号公報、特開2003−43687号公報等には、側鎖に重合性二重結合基を有するポリマーを感光層に使用することで、高感度でかつ耐刷性に優れたCTPに適合する印刷版の例が開示されているが、これらに使用される現像液としては、特開2002−278083号公報、特開2002−278084号公報、特開2002−278085号公報等に記載されるpHが12を超える高アルカリ性の現像液を使用することが行われてきた。
【0003】
こうした高アルカリ性の現像液を使用した場合、大気中の二酸化炭素の吸収によるpHの低下が問題となり、pHの低下とともに次第に現像性が低下するため、これを補うために現像液の補充を頻繁に行う必要があり、結果的に高アルカリ性の現像液の使用量が増大し、また結果として生じる高アルカリ性の現像廃液の保管および処理に大きな負担が生じる問題があった。
【0004】
現像液のpHを12以下に設定した系で処理が可能である感光性平版印刷版の例としては、例えば特開2006−39177号公報(特許文献1)、特開2006−64952号公報(特許文献2)等が挙げられる。これらはpHが12以下であるアルカリ性現像液を使用した場合に問題になる現像不良などにより引き起こされる地汚れの回避を主として意図したものである。こうした地汚れを回避するためには感光性平版印刷版の現像性を高めることが必須であるが、このことは逆に現像液が該印刷版の感光層に浸透しやすくなることを意味し、該感光層が現像液の浸透により被膜強度が低下することが生じるため耐刷性の低下が大きな問題であった。特開2006−64952号公報および特開2007−264497号公報(特許文献3)等では特定のチアジアゾール基を有する一官能性モノマーを含む感光性平版印刷版材料で、現像性が良好でかつ耐刷性の良好な系が開示されているが、種々の印刷条件においては耐刷性が十分でない場合があり、未だ十分な性能を有するものではなかった。
【0005】
さらには、アルカリ性現像液は基本的に人体に有害であり、その取り扱いおよび保管には十分な注意と管理が必要とされる。さらにその購入コストおよび廃液処理に関わるコストはユーザーに多大の負担を強いるものであり、加えてアルカリ性現像液の液性としてpH、温度等の管理を細心の注意を以て管理しなければならず、極めて取り扱いが煩雑でかつ製版工程で再現性のある結果を常に得ることが困難であった。
【0006】
上記のようなアルカリ性現像液を用いない試みとして、例えば特開2008−265297号公報(特許文献4)では、pHが9未満の中性現像液により現像が可能である感光性平版印刷版材料の例が開示されており、これによると特定の親水性層を設けた支持体上に、スルホン酸基とヘテロ環を介してビニル基が結合したフェニル基の両方を側鎖に有する重合体を含む感光性平版印刷版材料の例が開示されている。さらには、特開2003−215801号公報や特開2008−250195号公報等には、カチオン型のポリマーを含んでなるpHが9未満の中性現像液により現像が可能である感光性平版印刷版材料の例が示されている。
【0007】
しかしながら、こうしたpHが9未満の中性現像液により現像が可能である感光性平版印刷版材料では、印刷時においても絶えず給湿液が供給されており、版面上の硬化した感光層は現像処理後においても印刷時には絶えず現像条件下に晒されていることになるため、印刷中に該感光層が版面上から剥離し欠落することによる耐刷不良の問題が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−39177号公報
【特許文献2】特開2006−64952号公報
【特許文献3】特開2007−264497号公報
【特許文献4】特開2008−265297号公報
【特許文献5】特開2003−215801号公報
【特許文献6】特開2008−250195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、400〜430nmもしくは750〜1100nmの範囲のレーザー光に高感度であり、pHが9未満の中性現像液、もしくはpHが9〜12の範囲であるアルカリ水溶液で現像処理が可能な優れた現像性と、高耐刷性を両立した感光性平版印刷版材料を与えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、支持体上に、バインダーポリマー、光重合開始剤および下記一般式Iで示される分子内に重合性二重結合基が結合した1,3,4−チアジアゾール基を2個以上有する多官能性モノマーを含んでなる光硬化性感光層を有する感光性平版印刷版材料を用いることで解決される。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式IにおいてRは水素原子またはメチル基を表し、連結基Lは、アリーレン基、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、−C(=O)−、−CH−、−CH(−)−,−CH(OH)−および−CHO−基から選ばれる基、あるいはこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Zは炭素数が3以上のアルキレン基、アルキレンオキシ基、アリーレン基または下記から選ばれる任意の基を3個以上組み合わせて得られる基を表す。nは2以上の整数を表す。
【0013】
【化2】

【発明の効果】
【0014】
高感度であり、pHが9未満の中性現像液、もしくはpHが9〜12の範囲であるアルカリ水溶液で現像処理が可能な、優れた現像性と高耐刷性を両立した感光性平版印刷版材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、上記一般式Iで示される多官能性モノマーについて詳細に説明を行う。一般式Iで示される多官能性モノマーの構造単位として重合に寄与する部分(CH=C(R)−L−)の好ましい例を下記化学式で例示する。
【0016】
【化3】

【0017】
上記化学式から選ばれる任意の重合性基が一般式Iで示される構造式中の1,3,4−チアジアゾール基に結合した一方の硫黄原子に結合する。チアジアゾール基に結合している他方の硫黄原子は水酸基を有するアルキレンオキシ基を介して基Zに結合していることが特徴である。このことは、一般式Iで示される多官能性モノマーが、原料として基Zに2個以上のエポキシ基が結合した多官能性エポキシ化合物を用いて合成されることによる。
【0018】
一般式Iで示される多官能性モノマーの合成方法としては、2通りのルートが挙げられる。一つ目のルートは、最初に下記スキームIで得られる化合物を合成した後、これを用いて後述する一般式IIで表される多官能性エポキシ化合物との間でスキームIIに示すような反応で一般式Iの多官能性モノマーを合成するルートである。
【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
もう一つのルートは、下記スキームIIIに示すように、基Zに2個以上のエポキシ基が結合した多官能性エポキシ化合物(一般式II)を原料に用いて、これと2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールの間の反応で下記スキームIIIの化合物を合成した後に、スキームIVに示す反応で目的とする一般式Iの多官能性モノマーを合成するルートである。
【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
上記いずれの合成ルートに従っても目的とする一般式Iの多官能性モノマーが合成できるが、両者で共通するのは下記一般式IIで示される多官能性エポキシ化合物を原料に使用する点である。
【0025】
【化8】

【0026】
上記一般式IIにおけるZおよびnは一般式Iにおける各々Zおよびnと同一である。
【0027】
上記一般式IIで示される多官能性エポキシ化合物はその構造から対称性の低い構造であり、骨格中にフレキシビリティを与えるオキシメチレン基が存在することから常温で液体であることが特徴である。従って、一般式IIの多官能性エポキシ化合物を原料にして一般式Iの多官能性モノマーを合成することから、本発明の該多官能性モノマーは常温で基本的には液体であることが特徴である。加えて構造中に水酸基を有しているため親水性が高く、従って、後述する感光性平版印刷版材料を構成する感光層中に該多官能性モノマーを導入した場合に、pHが9未満の中性現像液もしくはpHが9〜12の範囲であるアルカリ現像液に対する親和性が高く、良好な現像性を付与することが特徴である。しかも、この構造中の水酸基の存在は、様々な基材に対する接着性を向上させる特徴を有するため、本発明の多官能性モノマーを利用した感光性平版印刷版材料は、後述する実施例に示すように高い耐刷性を具現することが特徴である。加えて、該多官能性モノマーを含む該感光層は高い光重合反応性を示し、高感度である感光性平版印刷版を与えることが特徴である。このことは、重合に寄与する部分である基(CH=C(R1)−L1−)がチアジアゾール基に直結しており、前述した特開2007−264497号公報に示されているように、こうしたチアジアゾール基に基づく高い重合反応性とともに、多官能性モノマーであるが故に架橋密度が高くなり、後述する実施例において示すように良好な耐刷性を示すことが特徴である。
【0028】
上記一般式IIで示される多官能性エポキシ化合物としては市販される種々のエポキシ化合物を用いることができる。市販品の例として、ナガセケムテックス株式会社から入手可能なデナコールEXシリーズなどを好ましく使用することができる。好ましい化合物の例として下記化学式で示される多官能性エポキシ化合物が使用できる。
【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
E−22におけるnは0〜20の整数を表す。
【0035】
本発明の一般式Iで表される多官能性モノマーを合成するためには一般式IIの多官能性エポキシ化合物とチアジアゾール基に結合したメルカプト基との間で付加反応を行う必要がある。この場合の反応条件として最も好ましいのは、溶媒としてメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を使用し、また、反応温度に関しては、10℃から75℃までの温度で反応を行うことが好ましく、これ以下の温度では反応の進行が遅く、またこの範囲を超えて高温で反応を行うと、副反応が生じ、目的とする化合物の収率が低下するため好ましくない。
【0036】
反応溶媒として上記のようなアルコール類を使用した場合、アルコール中に含まれる水分量は質量比で50質量%以下であることが好ましく、これを超えて水分が含まれる場合にはエポキシ基の加水分解が生じる場合があり、さらに、原料に用いるメルカプト基の結合したチアジアゾール誘導体が十分に溶解しないため反応が満足に進行しない場合があるため好ましくない。反応が完結した後、反応系を冷却することで生成物は反応系から分離して粘稠な液体状に沈降する。これを分離することで純度の高い中間体もしくは目的とする一般式Iの多官能性モノマーを高い収率で回収することができるため好ましい。反応条件の詳細は後述する合成例の中で説明を行う。
【0037】
本発明で得られる一般式Iの多官能性モノマーの好ましい例を以下に挙げる。好ましい例の最初のケースとしてスチレン誘導体の場合を挙げることができる。
【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
【化19】

【0044】
【化20】

【0045】
上式においてnは0〜20の整数を表す。
【0046】
一般式Iの多官能性モノマーの別の好ましい例として、下記で示す様々な構造のメタクリル酸エステル誘導体を挙げることができる。
【0047】
【化21】

【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
【化24】

【0051】
【化25】

【0052】
【化26】

【0053】
【化27】

【0054】
一般式Iの多官能性モノマーの別の好ましい例として、下記で示す様々な構造のアクリル酸エステル誘導体を挙げることができる。
【0055】
【化28】

【0056】
【化29】

【0057】
【化30】

【0058】
【化31】

【0059】
【化32】

【0060】
【化33】

【0061】
一般式Iの多官能性モノマーのさらに別の好ましい例として、下記で示す様々な構造の酢酸ビニル誘導体を挙げることができる。
【0062】
【化34】

【0063】
【化35】

【0064】
【化36】

【0065】
【化37】

【0066】
【化38】

【0067】
【化39】

【0068】
本発明の感光性平版印刷版材料の光硬化性感光層中には上記の多官能性モノマーとともにバインダーポリマーが含まれる。基本的には任意のポリマーをバインダーポリマーとして使用することができるが、用いることのできるバインダーとしてのポリマーの例を挙げると、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩ビ樹脂、ポリカーボネート樹脂等の種々の疎水性樹脂や、あるいは、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシルメチルセルロース等セルロース誘導体、各種変性澱粉その他の水溶性ポリマーを加えて使用することも可能である。
【0069】
さらに好ましいバインダーポリマーの例としては、側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ水溶液に可溶性であるポリマーを挙げることができる。例えば特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭54−92723号公報、特開昭59−53836号公報、特開昭59−71048号公報等に記載されている各種カルボキシル基含有ポリマー、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらのポリマーは本発明が目的の一つとするpHが12以下のアルカリ水溶液に可溶性であることから好ましく用いることができる。
【0070】
側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ水溶液に可溶性であるポリマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む共重合体であることが特に好ましい。こうした共重合体を形成するための共重合モノマーとして、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの種々のアルキル(メタ)アクリレート、あるいは4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、あるいは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、あるいはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することができる。
【0071】
この場合、共重合体組成におけるカルボキシル基含有モノマーの割合として、全組成100質量%中においてカルボキシル基含有モノマーは20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、これ未満の割合では共重合体がpHが12以下であるアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。さらに、共重合体中におけるカルボキシル基含有モノマーの割合が60質量%を超えて含まれる場合には、本発明の感光性平版印刷版材料を用いて印刷を行う場合に十分な耐刷力が得られない場合がある。
【0072】
上記の種々の共重合体モノマーの中でも特に好ましい例が挙げられる。本発明に使用できるカルボキシル基を有するアルカリ水溶液に可溶性であるバインダーポリマーがある程度疎水性である構造を有している場合において、該バインダーポリマーを含んでなる感光性平版印刷版材料のインキ乗り性が向上することが好ましい効果として挙げられる。即ち、該バインダーポリマーに疎水性構造を与えるための共重合モノマーの例として、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、c−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの種々の(メタ)アクリル酸エステルが極めて好ましく使用することができる。さらに好ましい該バインダーポリマーの例として、側鎖に重合性二重結合基を併せて有するポリマーを挙げることができる。この場合、該バインダーポリマーを含んでなる感光性平版印刷版材料において、画像部(露光部)において効率的に光重合による架橋構造の形成が生じるため、耐刷性に極めて優れた印刷版を与えることから極めて好ましく使用することができる。これらの側鎖に導入した重合性二重結合基の共重合体ポリマー中に占める割合としては、カルボキシル基含有モノマーの全体に対する質量比が20質量%以上である範囲であれば任意の割合で導入することができる。
【0073】
本発明において極めて好ましく使用することのできる側鎖に重合性二重結合基を併せて有するカルボキシル基を有するアルカリ可溶性バインダーポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
【0074】
【化40】

【0075】
側鎖に重合性二重結合基を併せて有するカルボキシル基を有するアルカリ可溶性バインダーポリマーの最も好ましい例として、例えば特開2001−290271号公報に記載される、カルボキシル基と、ヘテロ環を介してビニル基が結合したフェニル基の両方を側鎖に有するポリマーが挙げられる。こうした最も好ましい該バインダーポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
【0076】
【化41】

【0077】
本発明の感光性平版印刷版材料に使用されるバインダーポリマーとしては、上記のカルボキシル基を有するアルカリ可溶性バインダーポリマーに換えて、以下に述べるスルホン酸塩基を有するバインダーポリマーも極めて好ましく使用することができ、この場合、得られる感光性平版印刷版材料は中性付近の水により現像が可能であることが特徴である。
【0078】
こうした目的で使用できるバインダーポリマーとしては、スルホン酸塩基を有する任意のポリマーが使用可能であるが、本発明において好ましく使用できるスルホン酸塩基を有するバインダーポリマーとしては、下記一般式IIIで示される構造のスルホン酸塩基を有するモノマーを重合して得られるポリマーである。
【0079】
【化42】

【0080】
式中、Lは無くても良い任意の原子または基からなる連結基を表し、酸素原子、硫黄原子、置換していても良い直鎖あるいは分岐のアルキレン基、アリーレン基、−NH−、−COO−、−CONH−、−CO−、およびこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Rは、水素原子、またはメチル基を表す。Aはカチオンを表す。
【0081】
こうしたスルホン酸塩基を有するモノマーの例として、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、アリルスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、メタリルスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、メタクリル酸3−スルホプルピルエステルのアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩等が好ましい例として挙げられる。ここでいうアルカリ金属塩とはナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩であり、アミン塩とはアミンとしてアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、n−ブチルジエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン等のアミン類、あるいは4級アンモニウム塩とは、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、コリン、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロキサイドを用いて形成される塩を意味する。
【0082】
本発明において好ましく使用できるスルホン酸塩基を有するバインダーポリマーとしては、上記の種々のスルホン酸塩基を有するモノマーを各々単独もしくは数種を組み合わせて重合して得られるポリマーを使用しても良いが、さらに好ましくは、上記のスルホン酸塩基を有するモノマーとともに、以下の各種共重合モノマーとの組み合わせで得られる共重合体ポリマーである場合がさらに好ましい。
【0083】
上記の目的で使用することのできる共重合モノマーの例としては、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの種々のアルキル(メタ)アクリレート、あるいは4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、あるいは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、あるいはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することができる。これらの共重合モノマーの共重合体ポリマー中に占める割合としては、スルホン酸塩基を有するモノマーの全体に対する質量比が10質量%以上である範囲であれば任意の割合で導入することができる。但し、スルホン酸塩基を有するモノマーの全体に対する質量比が30質量%以上である場合においては、該バインダーポリマーの水に対する溶解性が良好であり、前記の該光重合性組成物の水系分散液の安定性が良好であることから好ましい。
【0084】
上記の共重合体モノマーの中でも特に好ましい例が挙げられる。本発明に使用できるスルホン酸塩基を有するバインダーポリマーがある程度疎水性である構造を有している場合において、該バインダーポリマーを含んでなる感光性平版印刷版材料のインキ乗り性が向上することが好ましい効果として挙げられる。即ち、該スルホン酸塩基を有するバインダーポリマーに疎水性構造を与えるための共重合モノマーの例として、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、c−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの種々の(メタ)アクリル酸エステルが極めて好ましく使用することができる。
【0085】
本発明において好ましく使用することのできる該スルホン酸塩基を有するバインダーポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
【0086】
【化43】

【0087】
さらに好ましい該スルホン酸塩基を有するバインダーポリマーの例として、側鎖に重合性二重結合基を併せて有するポリマーを挙げることができる。この場合、該バインダーポリマーを含んでなる感光性平版印刷版材料において、画像部(露光部)において効率的に光重合による架橋構造の形成が生じるため、耐刷性に極めて優れた印刷版を与えることから極めて好ましく使用することができる。これらの側鎖に導入した重合性二重結合基の共重合体ポリマー中に占める割合としては、スルホン酸塩基を有するモノマーの全体に対する質量比が10質量%以上である範囲であれば任意の割合で導入することができる。
【0088】
本発明において好ましく使用することのできる側鎖に重合性二重結合基を併せて有する該スルホン酸塩基を有するバインダーポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
【0089】
【化44】

【0090】
側鎖に重合性二重結合基を併せて有する該スルホン酸塩基を有するバインダーポリマーの最も好ましい例として、例えば特開2008−265297号公報(特許文献6)に記載される、スルホン酸塩基と、ヘテロ環を介してビニル基が結合したフェニル基の両方を側鎖に有するポリマーが挙げられる。こうした最も好ましい該バインダーポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
【0091】
【化45】

【0092】
【化46】

【0093】
前記の本発明の多官能性モノマーとともに用いるバインダーポリマーの本発明における光硬化性感光層中における両者の量的な割合には最適な範囲が存在する。即ち、バインダーポリマーを100質量部とした場合に、本発明の多官能性モノマーは10質量部から100質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0094】
本発明で得られる一般式Iの多官能性モノマーを使用して感光性平版印刷版材料を形成するためには、該多官能性モノマーと併せて本発明の光硬化性感光層中には光重合開始剤を含有することが必要である。本発明に用いられる光重合開始剤としては、光または電子線の照射によりラジカルを発生し得る化合物であれば任意の化合物を用いることができる。
【0095】
本発明の光硬化性感光層中に用いることのできる光重合開始剤の例としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)アジニウム化合物、(g)活性エステル化合物、(h)メタロセン化合物、(i)トリハロアルキル置換化合物、および(j)有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0096】
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、“RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY”J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、P.77〜P.177に記載のベンゾフェノン骨格、あるいはチオキサントン骨格を有する化合物、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン類、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報に記載のベンゾインエーテル類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン類、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類を挙げることができる。
【0097】
(b)芳香族オニウム塩の例としては、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、TeまたはIの芳香族オニウム塩が含まれる。このような芳香族オニウム塩は、特公昭52−14277号公報、特公昭52−14278号公報、特公昭52−14279号公報等に例示されている化合物を挙げることができる。
【0098】
(c)有機過酸化物の例としては、分子中に酸素−酸素結合を一個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルジパーオキシイソフタレート等の過酸化エステル系が好ましい。
【0099】
(d)ヘキサアリールビイミダゾールの例としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0100】
(e)ケトオキシムエステルの例としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0101】
(f)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報、特公昭46−42363号公報等に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0102】
(g)活性エステル化合物の例としては特公昭62−6223号公報等に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号公報、特開昭59−174831号公報等に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0103】
(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報等に記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報等に記載の鉄−アレーン錯体等を挙げることができる。具体的なチタノセン化合物としては、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等を挙げることができる。
【0104】
(i)トリハロアルキル置換化合物の例としては、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、米国特許第3,954,475号明細書、米国特許第3,987,037号明細書、米国特許第4,189,323号明細書、特開昭61−151644号公報、特開昭63−298339号公報、特開平4−69661号公報、特開平11−153859号公報等に記載のトリハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭54−74728号公報、特開昭55−77742号公報、特開昭60−138539号公報、特開昭61−143748号公報、特開平4−362644号公報、特開平11−84649号公報等に記載の2−トリハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合した、特開2001−290271号公報等に記載のトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0105】
(j)有機ホウ素塩化合物の例としては、特開平8−217813号公報、特開平9−106242号公報、特開平9−188685号公報、特開平9−188686号公報、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素アンモニウム化合物、特開平6−175561号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−157623号公報等に記載の有機ホウ素スルホニウム化合物および有機ホウ素オキソスルホニウム化合物、特開平6−175553号公報、特開平6−175554号公報等に記載の有機ホウ素ヨードニウム化合物、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素ホスホニウム化合物、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−292014号公報、特開平7−306527号公報等に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体化合物等が挙げられる。また、特開昭62−143044号公報、特開平5−194619号公報等に記載の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有するカチオン性色素が挙げられる。
【0106】
上記光重合開始剤は単独で用いても良いし、任意の2種以上の組み合わせで用いても良い。特に、(i)トリハロアルキル置換化合物と(j)有機ホウ素塩化合物を組み合わせて用いた場合には、感度が大幅に向上するために好ましい。
【0107】
本発明に関わる光重合開始剤については特に有機ホウ素塩が好ましく用いられる。さらに好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物およびオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)を組み合わせて用いることである。
【0108】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式IVで表される。
【0109】
【化47】

【0110】
式中、R、R、RおよびRは各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R、R、RおよびRの内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0111】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオンおよびカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびホスホニウム化合物が挙げられる。
【0112】
本発明において光重合開始剤として好ましく用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した一般式IVで表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0113】
【化48】

【0114】
【化49】

【0115】
本発明において、有機ホウ素塩とともに用いることでさらに高感度化および高い耐薬品性が具現される光重合開始剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、あるいは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0116】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を下記に示す。
【0117】
【化50】

【0118】
【化51】

【0119】
上記のような種々の光重合開始剤を本発明の一般式Iの多官能性モノマーとともに用いる場合には両者の割合には好ましい範囲が存在する。本発明の多官能性モノマーあるいはこれとともに下記に示すこれ以外の各種モノマーと混合して使用する場合には、全てのモノマーの総量100質量部に対して、光重合開始剤の好ましい使用量は0.5質量部から50質量部の範囲である。
【0120】
本発明の一般式Iの多官能性モノマーは単独で前記のバインダーポリマーおよび光重合開始剤とともに使用しても良いが、あるいはこれとともに公知の各種モノマーと併用して用いることも可能である。併用して用いるモノマーは特に反応性希釈剤として機能し、光重合速度を高めたり、光重合率を高める上で効果がある場合がある。反応性希釈剤として用いることのできるモノマーとしては、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステルあるいはアルキルアリールエステル類、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、あるいは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、あるいは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、あるいは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、あるいは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、あるいはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、あるいは多官能性モノマーとして、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールグリセロールトリアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性アクリル系モノマー、あるいは、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種重合体としてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等各種モノマーを適宜反応性希釈剤として本発明の多官能性モノマーとともに使用することができる。
【0121】
本発明の多官能性モノマーを、これとともに上記の反応性希釈剤としての各種モノマーと併用して用いる場合には、両者の総和を100質量%とした場合に、本発明の多官能性モノマーは20質量%以上の割合で含まれていることが必要であり、これ未満の割合では、本発明の効果が認められない場合がある。
【0122】
本発明に関わる感光性平版印刷版材料の光硬化性感光層中には、光波長域が400〜430nmもしくは750nm〜1100nmに感度のピークを有し、この波長領域に吸収を有し、前述の光重合開始剤を増感する化合物を併せて含有することが好ましい。400〜430nmの波長域の感度を増大される化合物としてシアニン系色素、特開平7−271284号公報、特開平8−29973号公報等に記載されるクマリン系化合物、特開平9−230913号公報、特開2001−42524号公報等に記載されるカルバゾール系化合物や、特開平8−262715号公報、特開平8−272096号公報、特開平9−328505号公報等に記載されるカルボメロシアニン系色素、特開平4−194857号公報、特開平6−295061号公報、特開平7−84863号公報、特開平8−220755号公報、特開平9−80750号公報、特開平9−236913号公報等に記載されるアミノベンジリデンケトン系色素、特開平4−184344号公報、特開平6−301208号公報、特開平7−225474号公報、特開平7−5685号公報、特開平7−281434号公報、特開平8−6245号公報などに記載されるピロメチン系色素、特開平9−80751号公報などに記載されるスチリル系色素、あるいは(チオ)ピリリウム系化合物等が挙げられる。これらの内、シアニン系色素またはクマリン系化合物あるいは(チオ)ピリリウム系化合物が好ましい。好ましく用いることのできるシアニン系色素の例を下記に示す。
【0123】
【化52】

【0124】
【化53】

【0125】
400〜430nmの波長域の感度を増大されるために用いることのできる好ましいクマリン系化合物としての例を下記に示す。
【0126】
【化54】

【0127】
【化55】

【0128】
【化56】

【0129】
400〜430nmの波長域の感度を増大されるために用いることのできる好ましい(チオ)ピリリウム系化合物としての例を下記に示す。
【0130】
【化57】

【0131】
750〜1100nmの波長域における増感色素として、シアニン系色素、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ系化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム系化合物、(チオ)ピリリウム系化合物が挙げられ、さらに、欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、米国特許第5,227,227号明細書に記載の化合物も用いることができる。
【0132】
750〜1100nmの波長域の近赤外光に対応する好ましい増感色素の例を下記に示す。
【0133】
【化58】

【0134】
【化59】

【0135】
本発明の感光性平版印刷版材料の光硬化性感光層を構成するその他の要素として、画像の視認性を高める目的で種々の染料、顔料を添加することや、感光性組成物のブロッキングを防止する目的等で無機物微粒子あるいは有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0136】
本発明の感光性平版印刷版材料の光硬化性感光層を構成するその他の要素として、長期にわたる保存に関して、熱重合による暗所での硬化反応を防止するために重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で好ましく使用される重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、本発明の光重合性組成物の総固形分質量100質量部に対して0.01質量部から10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0137】
本発明に関わる光硬化性感光層を用いて感光性平版印刷版材料を形成するための支持体としては各種プラスチックフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。プラスチックフィルム支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロースなどが代表的に挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。これらのフィルムは表面に本発明に関わる光重合性組成物を用いた層を設ける前にフィルム表面に親水化加工が施されていることが好ましい。
【0138】
こうした親水化加工としては、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。更なる親水化加工としてフィルム上に種々の水溶性ポリマーを含む層を設けることも好ましく行うことができる。例えば、特開2008−265297号公報(特許文献6)等に記載される水溶性ポリマー、コロイダルシリカおよび架橋剤から構成される親水性層を上記フィルム上に形成することが好ましく行われる。さらには、設ける親水性層との接着性を高めるためフィルム上にあらかじめ下引き層を設けても良い。下引き層としては、親水性樹脂を主成分とする層が有効である。親水性樹脂としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体(例えば、フタル化ゼラチン)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、キサンタン、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の親水性樹脂が好ましい。特に好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコールが挙げられる。こうした下引き層を介してフィルム支持体と親水性層を形成することで、多部数にわたるロングラン印刷条件での耐刷性が向上するため好ましく利用される。
【0139】
支持体としてアルミニウム板を使用する場合には、粗面化処理され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板が好ましく用いられる。さらに、表面をシリケート処理したアルミニウム板も好ましく用いることができる。あるいは、さらに表面に上記の親水性層を形成したアルミニウム板を用いることもできる。
【0140】
上記のような支持体を用いて本発明の感光性平版印刷版材料を作製するためには、本発明に関わる光重合性組成物を溶解した塗布液を支持体上に塗布、乾燥を行うことで光硬化性感光層を形成することが必要である。この光硬化性感光層は支持体表面あるいは上記の親水性層を介して支持体表面に形成することが好ましい。この場合の光硬化性感光層自体の乾燥固形分塗布量に関しては、乾燥質量で1平方メートルあたり0.3gから10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、さらに0.5gから3gの範囲であることが良好な解像度を発揮し、かつ細線画像や微小網点画像の耐刷性を確保し、同時にインキ乗り性を大幅に向上させるために極めて好ましい。光硬化性感光層は上述の種々の要素を混合した光重合性組成物の水系分散液を作製し、公知の種々の塗布方式を用いて支持体表面あるいは親水性層上に塗布、乾燥される。
【0141】
本発明の感光性平版印刷版材料においては、本発明に関わる光重合性組成物からなる光硬化性感光層の上に、さらに保護層を設けることも好ましく行われる。保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光感度をさらに向上させる好ましい効果を有する。さらには感光層表面を傷から防止する効果も併せて期待される。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低く力学的強度に優れ、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。本発明のpHが9未満の中性現像液もしくはpHが9〜12の範囲にあるアルカリ水溶液で現像処理が可能である感光性平版印刷版材料においては、現像の過程においてこうした保護層と光硬化性感光層の未露光部の除去が同時に行うことも可能であるため、特に保護層の除去工程を設ける必要がないことが特徴である。さらに、大気中の水分を吸湿しブロッキングを発生したり、保存中に感度変化等の問題を生じる場合があるが、保護層を光硬化性感光層の上部に設けることでこうしたブロッキングや感度変化の問題を解消することが可能である。加えて、特に400〜430nmの波長域の青紫色半導体レーザーを使用して記録を行う場合、一般的にはレーザー出力が近赤外半導体レーザーと比較して低いため、特に高感度である感光層が要求される。こうした場合に、保護層を設けることでさらに感度が上昇するため特に好ましく適用することができる。
【0142】
この様な、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報等に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが良く、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。こうした保護層を適用する際の乾燥固形分塗布量に関しては好ましい範囲が存在し、感光層上に乾燥質量で1平方メートルあたり0.1gから10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、さらには0.2gから2gの範囲が好ましい。保護層は、公知の種々の塗布方式を用いて光硬化性感光層上に塗布、乾燥される。
【0143】
上記のようにして支持体上に形成された光硬化性感光層を有する材料を印刷版として使用するためには、これに密着露光あるいはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することでpHが9未満の中性現像液もしくはpHが9〜12の範囲にあるアルカリ水溶液に対する溶解性が低下することから、pHが9未満の中性現像液もしくはpHが9〜12の範囲にあるアルカリ水溶液により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
【0144】
本発明において、pHが9未満の中性現像液に使用される現像液とは、他に添加剤を含まない純水もしくはこれに各種無機、有機イオン性化合物が含まれている現像液でも良く、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムイオンなどが含まれる水であっても良い。あるいは水中に公知である各種界面活性剤などが含まれていても良い。また、水には各種アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メトキシエタノール、ポリエチレングリコールなどの溶剤が含まれていても良い。あるいは、水現像の際に、市販される各種ガム液を添加して現像することも、版面を指紋汚れ等から保護する目的で好ましく用いることができる。
【0145】
本発明の感光性平版印刷版材料は上記のpHが9未満の中性現像液以外にもpHが9〜12の範囲であるアルカリ性現像液を使用しても印刷版としての良好な性能を発揮できる。こうした現像液には、界面活性剤とアルカリを含有することができる。現像液には、さらに有機溶剤、緩衝剤、キレート剤等を含有することができる。適当なアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等の無機アルカリ剤、あるいは、トリメチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリエタノールアミン類などの有機アミン化合物などが挙げられ、これらは単独もしくは組み合わせて使用できる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能である。アルカリ現像液のpHは通常9〜12の範囲であることが好ましく、さらには9〜10.8である場合がより好ましい。また、有機溶剤としては例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等を必要により含有させることが可能である。
【0146】
さらには、特開2006−39177号公報や特開2006−64952号公報等に記載されるような水酸化テトラアルキルアンモニウムを含有するpH10〜12の現像液を用いることも好ましく行うことができる。この場合の水酸化テトラアルキルアンモニウムのアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特に炭素数が1〜4のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基はさらにヒドロキシ基、メトキシ基のようなアルコキシ基等で置換されていても良い。
【0147】
現像方法としては特に限定されないが、現像液に浸積する方法や物理的にブラシなどで現像液により溶解しかかった非画像部を除去する方法や、現像液をスプレー状に吹き付けて非画線部を除く方法などが挙げられる。現像時間は、上記現像方法に応じて未露光部が十分に除去できる時間を選定すれば良く5秒〜10分の範囲から適宜選ばれる。現像後は、特に印刷版に置いて必要に応じてアラビアガムなどの親水化処理などを適宜行っても良い。また、必要に応じて現像前にあらかじめ酸素遮断層を水洗しても良い。
【実施例】
【0148】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0149】
(合成例1)多官能性モノマーTD−7の合成例(スキームI/IIのルートによる)
特開2001−290271号公報に記載される方法により2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールと4−クロロメチルスチレン(AGCセイミケミカル株式会社製CMS−14)から、チアジアゾール基にメルカプト基とスチレン誘導体基を併せて有する下記多官能性モノマーM−1を合成した。
【0150】
【化60】

【0151】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた1リットルフラスコ内に、上記M−1を133グラム秤取し、メタノール500グラムを加えて攪拌した。トリエチルアミンを5グラム加え、次いで水浴の温度を60℃に上昇し、懸濁した溶液にE−7(ナガセケムテックス株式会社製デナコールEX−821;エポキシ当量185)0.5エポキシ当量(92.5グラム)を少しずつ滴下した。滴下終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、メタノールにより洗浄を行った後、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた粘稠液体である生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMRによる構造解析の結果、TD−7の化学式で表される多官能性モノマーであることを示す結果を得た。収率は71%であった。さらに、生成物を東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相としてGPCにより解析を行った。出発原料であるE−7はこのGPC測定による解析では単一物質ではなく、エチレンオキシ基の繰り返し数等の異なる複数の同族化合物の混合物であることが分かった。反応生成物のGPC測定において、使用した示差屈折率計検出器および紫外可視分光光度計検出器(290nmの波長を使用することで生成物組成中のチアジアゾール基の存在を選択的に検出した)の両方において得られた溶出曲線は完全に一致しており、未反応の原料であるE−7の残存は認められず、平均分子量は出発原料より約300程度増加していることから代表構造としてTD−7の構造の多官能性モノマーが得られていることを確認した。
【0152】
(合成例2)多官能性モノマーTD−7の合成例(スキームIII/IVのルートによる)
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた1リットルフラスコ内に、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを155グラム秤取り、メタノール500グラムを加えて攪拌した。水浴の温度を60℃に上昇し、懸濁した溶液にE−7(ナガセケムテックス株式会社製デナコールEX−821;エポキシ当量185)1エポキシ当量(185グラム)を内温の上昇が急激に起こらないよう注意しながら少しずつ滴下した。滴下終了後、均一に溶解した溶液をさらに60℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行った。氷冷後分離した液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。収量290グラムで生成物を回収した。生成物は、プロトンNMRによる構造解析でほぼ下記構造に間違いない結果を得た。
【0153】
【化61】

【0154】
さらに詳細に解析を行うため、先の合成例1と同様にして以下のようにして高速液体クロマトグラフィーを使用して解析を行った。即ち、東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相として生成物のGPC解析を行った。反応生成物のGPC測定において、使用した示差屈折率計検出器および紫外可視分光光度計検出器(290nmの波長を使用することで生成物組成中のチアジアゾール基の存在を選択的に検出した)の両方において得られた溶出曲線は完全に一致しており、未反応の原料であるE−7の残存は認められず、平均分子量は出発原料より約300程度増加していることから代表構造として上記の構造の化合物が得られていることを確認した。
【0155】
1リットルのフラスコ内に上記で得た化合物を150グラム投入した。エタノール400グラムおよび2−ジメチルアミノエタノール44.5グラム(0.5モル)を加えて溶解し、4−クロロメチルスチレン(AGCセイミケミカル株式会社製CMS−14)76.3グラム(0.5モル)を加えて40℃の水浴上で5時間加熱攪拌を行った。その後、反応混合物を氷冷し、析出した粘稠液体をデカンテーションで分離した。氷冷メタノールで数回洗浄を行い、真空乾燥機内で乾燥させ、淡黄色液体を得た。プロトンNMRおよびGPCによる構造解析の結果から目的とする多官能性モノマーTD−7の生成を確認した。収率は76%であった。
【0156】
(合成例3)多官能性モノマーTD−20の合成例(スキームI/IIのルートによる)
合成例1で合成した化合物M−1を使用して以下のように合成を行った。水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた1リットルフラスコ内に、上記M−1を133グラム秤取し、メタノール500グラムを加えて攪拌した。トリエチルアミンを5グラム加え、次いで水浴の温度を60℃に上昇し、懸濁した溶液に多官能性エポキシ化合物(E−20)(ナガセケムテックス株式会社製デナコールEX−521;エポキシ当量183)92グラムをエタノール100グラムに溶解した溶液を少しずつ滴下した。滴下終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した粘稠な淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行い、氷冷後分離した粘稠液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMRによる構造解析の結果、TD−20の化学式で表される多官能性モノマーであることを確認した。収率は75%であった。さらに出発物質であるEX−521と生成物の両方について、東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相としてGPC解析を行った。出発原料であるEX−521(E−20)はこのGPC測定による解析では単一物質ではなく、分子量、構造等の異なる複数の同族化合物の混合物であることが分かった。反応生成物のGPC測定において、使用した示差屈折率計検出器および紫外可視分光光度計検出器(290nmの波長を使用することで生成物組成中のチアジアゾール基の存在を選択的に検出した)の両方において得られた溶出曲線は完全に一致しており、未反応の原料であるE−20の残存は認められず、平均分子量は出発原料より約700程度増加して約2300である結果となり、これより代表構造としてTD−20の構造の多官能性モノマーが得られていることを確認した。
【0157】
さらに合成例3と同様にして、上記以外の多官能性モノマーTD−1〜TD−6、TD−8〜TD−19およびTD−21の合成を行い、同様にして構造解析を行った結果、それぞれの化合物が収率良く得られることを見出した。
【0158】
(合成例4)多官能性モノマーMA−7の合成例(スキームI/IIのルートによる)
1リットルのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを150グラム(1モル)投入した。メタノール400グラムを加えて攪拌を行い、水浴上に移した。懸濁した溶液中にグリシジルメタクリレート142グラム(1モル)を徐々に添加することで内温が上昇し、約15分間をかけて滴下を終了した。内温は室温から上昇して滴下終了時には55℃付近まで上昇した。その後水浴の温度を上昇させ、反応混合物の温度を65℃まで上昇させると均一に溶解した溶液を得た。この状態で1時間攪拌を行った後、室温まで冷却し、さらに氷冷することで結晶が析出した。グラスフィルター上で吸引濾過を行い、水/メタノール(1/1)混合溶媒で数回洗浄を行い、乾燥させた。プロトンNMRによる構造解析の結果、下記化合物M−2が得られていることを確認した。
【0159】
【化62】

【0160】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた1リットルフラスコ内に、上記M−2を146グラム(0.5モル)秤取し、メタノール500グラムを加えて溶解した。水浴の温度を60℃に上昇し、溶液にE−7(ナガセケムテックス株式会社製デナコールEX−821;エポキシ当量185)を0.5エポキシ当量(92.5グラム)少しずつ滴下した。滴下終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行い、氷冷後分離した液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMRによる構造解析および先と同様なGPC解析、IR解析の結果、MA−7の化学式で表される多官能性モノマーであることを確認した。収率は76%であった。
【0161】
さらに合成例4と同様にして、MA−7以外の多官能性モノマーMA−1〜MA−21の合成を行い、同様にして構造解析を行った結果、それぞれの多官能性モノマーが収率良く得られることを見出した。
【0162】
(合成例5)多官能性モノマーBA−7の合成例(スキームI/IIのルートによる)
1リットルのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを150グラム(1モル)投入した。メタノール400グラムを加えて攪拌を行い、50℃に調節した水浴上に移した。懸濁した溶液中に4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成株式会社製4HBAGE)200グラム(1モル)を約15分間をかけて徐々に滴下した。内温は僅かに上昇して滴下終了時には55℃付近まで上昇した。その後水浴の温度を上昇させ、反応混合物の温度を65℃まで上昇させて均一に溶解した溶液を得た。この状態で1時間攪拌を行った後、室温まで冷却し、さらに氷冷することで粘稠な液体が析出した。デカンテーションによる分離を行い、水/メタノール(1/1)混合溶媒で数回洗浄を行い、乾燥させた。プロトンNMRによる構造解析の結果、下記化合物M−3が得られていることを確認した。
【0163】
【化63】

【0164】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた1リットルフラスコ内に、上記M−3を175グラム(0.5モル)秤取し、メタノール400グラムを加えて溶解した。水浴の温度を60℃に上昇し、溶液にE−7(ナガセケムテックス株式会社製デナコールEX−821;エポキシ当量185)を0.5エポキシ当量(92.5グラム)少しずつ滴下した。滴下終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行い、氷冷後分離した液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMRによる構造解析および先と同様なGPC解析、IR解析の結果、BA−7の化学式で表される多官能性モノマーであることを確認した。収率は80%であった。
【0165】
さらに合成例5と同様にして、BA−7以外の多官能性モノマーBA−1〜BA−21の合成を行い、同様にして構造解析を行った結果、それぞれの化合物が収率良く得られることを見出した。
【0166】
(合成例6)多官能性モノマーVA−7の合成例(スキームI/IIのルートによる)
1リットルのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを300グラム(1モル)投入した。氷冷しながらメタノール450グラムを加え、攪拌を行いながらジメチルアミノエタノール198グラムを徐々に加え溶解した。50℃に調節した水浴上に移し、溶液中にクロロ酢酸ビニル(東京化成工業株式会社製)241グラム(1モル)を約15分間かけて徐々に滴下した。その後水浴の温度を上昇させ、反応混合物の温度を65℃まで上昇させて3時間攪拌を行った後、蒸留水100グラムを加えて室温まで冷却し、さらに氷冷することで無色結晶が析出した。濾過による分離を行い、水で数回洗浄を行い、乾燥させた。ジイソプロピルエーテル/ヘキサン混合溶媒から再結晶を行い、プロトンNMRによる構造解析の結果、下記化合物M−4が得られていることを確認した。
【0167】
【化64】

【0168】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた1リットルフラスコ内に、上記M−4を167グラム(0.5モル)秤取し、メタノール400グラムを加えて溶解した。水浴の温度を60℃に上昇し、溶液にE−7(ナガセケムテックス株式会社製デナコールEX−821;エポキシ当量185)を0.5エポキシ当量(92.5グラム)少しずつ滴下した。滴下終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行い、氷冷後分離した液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMRによる構造解析および先と同様なGPC解析、IR解析の結果、VA−7の化学式で表される多官能性モノマーであることを確認した。収率は80%であった。
【0169】
さらに合成例6と同様にして、VA−7以外の多官能性モノマーVA−1〜VA−21の合成を行い、同様にして構造解析を行った結果、それぞれの多官能性モノマーが収率良く得られることを見出した。
【0170】
(合成例7)多官能性モノマーTD−22の合成例(スキームI/IIのルートによる)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(東京化成工業株式会社製試薬)114グラムをエピクロルヒドリン(東京化成工業株式会社製試薬)925グラムに溶解し、これにベンジルトリメチルアンモニウムクロライド0.1グラムを加えて70℃に加熱した。減圧下で水酸化ナトリウム40グラムを溶解した水溶液100グラムを3時間にわたり滴下を行った。その際、生成する水をエピクロルヒドリンとの共沸で溜去し、分離したエピクロルヒドリンは再び反応系に戻した。滴下終了後さらに1時間加熱を続けた後、濾過により生成した塩を除き、減圧下にエピクロルヒドリンを溜去して、残渣をヘキサン中に移し、析出した生成物をデカンテーションにより回収した。真空乾燥器内で1昼夜乾燥した後、プロトンNMRで構造解析を行った結果、下記構造の化合物であることを示唆する結果を得た。
【0171】
【化65】

【0172】
さらに生成物のGPC解析を行うため、東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相としてGPC解析を行った。その結果、生成物は上記の化学式においてn=0の成分が約90質量%含まれ、n=1以上の成分が残りを占める分子量の混合物であることが判明した。数平均分子量から計算した生成物のエポキシ当量は190であった。
【0173】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた1リットルフラスコ内に、合成例1で得たM−1を133グラム秤取し、メタノール500グラムを加えて攪拌した。トリエチルアミンを5グラム加え、次いで水浴の温度を60℃に上昇し、懸濁した溶液に上記で得た一般式IIの化合物95グラムを少しずつ添加した。添加終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色固体である生成物を濾過により分離し、メタノールにより洗浄を行った後、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMRによる構造解析およびGPC解析の結果、TD−22の化学式で表される樹脂(n=0の成分が約90質量%含まれ、n=1以上の成分が残りを占める)であることを確認した。収率は78%であった。
【0174】
(比較合成例1)比較化合物R−1の合成例
本発明の比較に使用するため、下記構造の比較化合物R−1を以下のようにして合成した。即ち、1リットルのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを75グラム(0.5モル)投入した。メタノール450グラムを加え、氷冷しながら攪拌下ジメチルアミノエタノール89グラム(1モル)を徐々に加え溶解した。40℃に調節した水浴上に移し、溶液中に4−クロロメチルスチレン(AGCセイミケミカル株式会社製CMS−14)152.6グラム(1モル)を約15分間かけて徐々に滴下した。その後水浴の温度を上昇させ、反応混合物の温度を65℃まで上昇させて3時間攪拌を行った後、室温まで冷却し、析出した固体を濾過により回収した。メタノールにより洗浄を行った後、真空乾燥器内で乾燥を行い目的とする比較化合物R−1を得た。
【0175】
【化66】

【0176】
(実施例1〜8および比較例1〜3)感光性平版印刷版材料の実施例と比較例
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板に、さらに珪酸ナトリウムを使用してシリケート処理を行ったアルミニウム板を支持体として使用した。多官能性モノマーとして、本発明に関わる一般式Iで表される多官能性モノマーを下記表1に示すように使用し、さらにAP−2で示される構造を有するバインダーポリマーを用いて下記光硬化性感光層処方の塗布液を作製し、該アルミニウム板の上に、塗布、乾燥することで、感光性平版印刷版材料の実施例1〜8を作製した。比較例1〜3では多官能性モノマーとして一般式Iの多官能性モノマーに換えて、下記化学式に示すそれぞれDM−851、DA−314および上記のR−1を使用して同様に光硬化性感光層処方の塗布液を作製し、該アルミニウム板の上に、塗布、乾燥して比較感光性平版印刷版材料比較例1〜3を作製した。光硬化性感光層の塗布量は乾燥質量で1平方メートル当たり1.8gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して乾燥を行った。さらに、これらの光硬化性感光層の上に保護層としてポリビニルアルコール(クラレ株式会社製PVA−105)を使用して乾燥塗布質量で1平方メートル当たり1.8gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して乾燥を行った。
【0177】
(光硬化性感光層処方)
バインダーポリマー(AP−2) 1.50部
トリメチロールプロパントリアクリレート 0.10部
多官能性モノマー(表1) 0.50部
有機ホウ素塩化合物(BC−6) 0.20部
トリハロアルキル置換化合物(T−16) 0.10部
増感色素(S−3) 0.04部
フタロシアニンブルー(着色用顔料) 0.05部
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩 0.02部
ジオキサン 20部
エタノール 5部
【0178】
【表1】

【0179】
【化67】

【0180】
【化68】

【0181】
(露光試験)
上記のようにして作製した光重合性組成物を使用した感光性平版印刷版材料を用いて以下のようにして露光試験を行った。露光は波長が405nmの半導体レーザーを搭載したCTP用イメージセッターVIPLAS(三菱製紙株式会社製)を使用し、この装置を用いて版面上の露光エネルギーが60μJ/cmになるように設定し、走査露光方式により描画を行った。テスト用画像として、2400dpi、175線相当の1%から97%までの網点面積率を示す網点階調パターンと10〜100μmの細線を出力した。露光された感光性平版印刷版材料を下記の構成で作製した現像液を用いて現像を行った。
【0182】
(現像液処方)
ジメチルアミノエタノール 30部
水酸化テトラメチルアンモニウム 15部
ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム 10部
水を加えて全量を1000部に調整し、さらに85%リン酸を加えてpHを10.5に調整した。
【0183】
(現像性評価)
上記の現像液を用いて処理を行った場合の現像性評価として、以下のようにして試験を行った。現像は三菱製紙株式会社製自動現像装置P−1310Tを使用して処理を行った。現像温度を28℃および30℃の条件に設定し、各々の温度で処理時間を10秒、12秒および15秒の条件で処理を行い、非画像部の溶出性(完全に残膜が無くなる場合を○とし、僅かに残膜が認められる場合を△、明確に残膜が発生し、溶出不良である場合を×とした)を評価した。結果を表2に纏めた。
【0184】
【表2】

【0185】
(解像性評価)
上記の現像液を用いて処理を行った場合の解像性評価として、10μm細線および1%網点が明瞭に再現されている場合を○とし、これらが部分的に欠落しているが、20μm以上の細線および2%以上の網点が明瞭に再現されている場合を△、これ以下の再現性である場合を×とした。結果を表3に纏めた。
【0186】
【表3】

【0187】
(印刷性評価)
先の現像処理後の試料の内、各々30℃10秒の条件で現像された試料を用い、通常のオフセット印刷を行うため、印刷機はリョービ560を使用し、印刷インキはオフセット印刷用墨インキを使用し、吸湿液は東洋インキ株式会社製オフセット印刷用吸湿液アクワユニティWKKの1%水溶液を使用した。印刷性評価として、耐刷性について印刷開始から5万枚まで通して20μm細線および網点面積率が2%の微小網点部分が印刷物上で再現されている場合を○とし、部分的にかけている場合を△とし、ほぼ完全に欠落した場合を×とした。結果を表4に纏めた。
【0188】
【表4】

【0189】
(実施例9〜13および比較例4〜6)感光性平版印刷版材料の実施例と比較例
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板に、さらに珪酸ナトリウムを使用してシリケート処理を行ったアルミニウム板を支持体として使用した。多官能性モノマーとして、本発明に関わる一般式Iで表される多官能性モノマーを下記表5に示すように使用し、さらにAP−5示される構造を有するバインダーポリマーを用いて下記光硬化性感光層処方の塗布液を作製し、該アルミニウム板の上に、塗布、乾燥することで、感光性平版印刷版材料の実施例9〜13を作製した。比較例4〜6では多官能性モノマーとして一般式Iの多官能性モノマーに換えて、下記化学式に示すそれぞれDM−851、DA−314および上記のR−1を使用して同様に光硬化性感光層処方の塗布液を作製し、該アルミニウム板の上に、塗布、乾燥して比較感光性平版印刷版材料比較例4〜6を作製した。光硬化性感光層の塗布量は乾燥質量で1平方メートル当たり1.8gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して乾燥を行った。さらに、これらの光硬化性感光層の上に保護層としてポリビニルアルコール(クラレ株式会社製PVA−105)を使用して乾燥塗布質量で1平方メートル当たり1.8gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して乾燥を行った。
【0190】
(光硬化性感光層処方)
バインダーポリマー(AP−5) 1.50部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.20部
多官能性モノマー(表1) 0.40部
有機ホウ素塩化合物(BC−6) 0.20部
トリハロアルキル置換化合物(T−8) 0.10部
増感色素(S−7) 0.04部
フタロシアニンブルー(着色用顔料) 0.05部
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩 0.02部
ジオキサン 20部
エタノール 5部
【0191】
【表5】

【0192】
上記のようにして作製した感光性平版印刷版材料を用いて先の実施例と同様にして露光を行った後、実施例1〜8および比較例1〜3で使用したものと同一の現像液および自動現像装置を使用して、同様に現像性評価および解像性評価を実施し、それぞれ表6および表7に示す結果を得た。
【0193】
【表6】

【0194】
【表7】

【0195】
(印刷性評価)
上記の現像性試験で得られた実施例の試料の内、30℃、15秒の現像処理条件で得られた試料を用いて下記の条件でオフセット印刷評価を行った。比較試料として同じく30℃、15秒処理で得られた試料を使用して同時に印刷試験を行った。印刷機は三菱重工業株式会社製オフセット輪転機リソピアを使用し、印刷インキは東京インキ株式会社製新聞オフ輪用紅インキを使用し、吸湿液は東洋インキ株式会社製オフセット印刷用吸湿液アクワユニティWKKの1%水溶液を使用した。印刷評価項目として、耐刷性について刷版上のテスト画像中のベタ部の反射濃度を測定し、印刷前と15万インプレッションの印刷後での反射濃度を測定することで耐刷性を評価した。刷版上のベタ部分の反射濃度が約0.6程度になった時点でインキの着肉性が悪くなり、部分的にインキが乗らなくなることを別途確認した。結果を表8に纏めた。
【0196】
【表8】

【0197】
全ての本発明の感光性平版印刷版を使用した場合(実施例9〜13)には、耐刷性に関しては15万インプレッションの印刷においても良好な印刷物が得られ、刷版上の画像部の膜減りも軽微であった。また、地汚れの発生もなく良好な結果が得られた。比較例4〜6では印刷開始から約7万インプレッションの印刷で部分的なインキ乗り不良および画像の欠落が発生し、15万インプレッションの時点では印刷物上で顕著な画像かすれが発生し耐刷不良であった。
【0198】
(実施例14〜18および比較例7〜9)感光性平版印刷版材料の実施例と比較例
厚みが0.3mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板に、さらに珪酸ナトリウムを使用してシリケート処理を行ったアルミニウム板を支持体として使用した。多官能性モノマーとして、本発明に関わる一般式Iで表される多官能性モノマーを下記表9に示すように使用し、さらにAP−4で示される構造を有するバインダーポリマーを用いて下記光硬化性感光層処方の塗布液を作製し、該アルミニウム板の上に、塗布、乾燥することで、感光性平版印刷版材料の実施例14〜18を作製した。比較例7〜9では多官能性モノマーとして一般式Iの多官能性モノマーに換えて、下記化学式に示すそれぞれDM−851、DA−314および上記のR−1を使用して同様に光硬化性感光層処方の塗布液を作製し、該アルミニウム板の上に、塗布、乾燥して比較感光性平版印刷版材料比較例1〜3を作製した。光硬化性感光層の塗布量は乾燥質量で1平方メートル当たり1.5gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して乾燥を行った。先の実施例および比較例とは異なり、これらの光硬化性感光層の上部には保護層は設けなかった。
【0199】
(光硬化性感光層処方)
バインダーポリマー(AP−4) 1.50部
トリメチロールプロパントリアクリレート 0.10部
多官能性モノマー(表9) 0.50部
有機ホウ素塩化合物(BC−6) 0.20部
トリハロアルキル置換化合物(T−4) 0.10部
増感色素(S−38) 0.04部
フタロシアニンブルー(着色用顔料) 0.05部
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩 0.02部
ジオキサン 20部
エタノール 5部
【0200】
【表9】

【0201】
得られた感光材料を大日本スクリーン製造株式会社製サーマルプレート用イメージセッターPT−R4000(830nmのレーザーを搭載した描画装置)を使用して、版面に照射される露光量を100mJ/cmに合わせて露光を行った。露光に際しては、テストパターンとして、2400dpi、175線/インチで面積率1〜97%の網点パターンと、直径10〜100μmのドットパターンおよび線幅が10〜100μmである細線画像を有するテストパターンを用いて露光を行った。露光された感光性平版印刷版材料を下記の構成で作成された現像液を用いて種々の条件で現像を行った。
【0202】
(現像液処方)
モノエチルアミノエタノール 30部
水酸化テトラメチルアンモニウム 5部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 5部
水を加えて全量を1000部に調整した後、85%リン酸を添加して現像液のpHを10.3に調整した。
【0203】
(現像性試験)
上記の様にして露光した試料を用いて、以下のようにして現像性試験を行った。現像は三菱製紙株式会社製自動現像装置P−1310Tを使用して処理を行った。現像温度を28℃および30℃の2条件に設定し、各々の温度で処理時間を10秒、12秒および15秒の3条件で処理を行い、非画像部の溶出性(完全に残膜が無くなる場合を○とし、僅かに残膜が認められる場合を△、明確に残膜が発生し、溶出不良である場合を×とした)を評価した。結果を表10に纏めた。
【0204】
【表10】

【0205】
(解像性評価)
上記の現像液を用いて処理を行った場合の解像性評価として、10μm細線および1%網点が明瞭に再現されている場合を○とし、これらが部分的に欠落しているが、20μm以上の細線および2%以上の網点が明瞭に再現されている場合を△、これ以下の再現性である場合を×とした。結果を表11に纏めた。
【0206】
【表11】

【0207】
(印刷性試験)
上記の現像性試験で得られた実施例の試料の内、30℃、15秒の現像処理条件で得られた試料を用いて下記の条件でオフセット印刷評価を行った。比較試料として同じく30℃、15秒処理で得られた試料を使用して同時に印刷試験を行った。印刷機は三菱重工業株式会社製オフセット輪転機リソピアを使用し、印刷インキは東京インキ株式会社製新聞オフ輪用紅インキを使用し、吸湿液は東洋インキ株式会社製オフセット印刷用吸湿液アクワユニティWKKの1%水溶液を使用した。印刷評価項目として、耐刷性について刷版上のテスト画像中のベタ部の反射濃度を測定し、印刷前と15万インプレッションの印刷後での反射濃度を測定することで耐刷性を評価した。刷版上のベタ部分の反射濃度が約0.6程度になった時点でインキの着肉性が悪くなり、部分的にインキが乗らなくなることを別途確認した。結果を表12に纏めた。
【0208】
【表12】

【0209】
全ての本発明の感光性平版印刷版を使用した場合(実施例14〜18)には、耐刷性に関しては15万インプレッションの印刷においても良好な印刷物が得られ、刷版上の画像部の膜減りも軽微であった。また、地汚れの発生もなく良好な結果が得られた。比較例7〜9では印刷開始から約6万インプレッションの印刷で部分的なインキ乗り不良および画像の欠落が発生し、15万インプレッションの時点では印刷物上で顕著な画像かすれが発生し耐刷不良であった。
【0210】
(実施例19〜23および比較例10〜12)感光性平版印刷版材料の実施例と比較例
バインダーポリマーとして上記した実施例で使用したAP−4に換えてSP−13を使用した以外は実施例14〜18および比較例7〜9と同様にして感光性平版印刷版材料の実施例19〜23および比較例10〜12を作製した。
【0211】
得られた感光材料を大日本スクリーン製造株式会社製サーマルプレート用イメージセッターPT−R4000(830nmのレーザーを搭載した描画装置)を使用して、版面に照射される露光量を100mJ/cmに合わせて露光を行った。露光に際しては、テストパターンとして、2400dpi、175線/インチで面積率1〜97%の網点パターンと、直径10〜100μmのドットパターンおよび線幅が10〜100μmである細線画像を有するテストパターンを用いて露光を行った。露光された感光性平版印刷版材料を下記の構成で作成された蒸留水にアニオン性界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのみを添加したpH7である現像液を用いて種々の条件で現像を行った。
【0212】
(現像液処方)
蒸留水 995部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 5部
【0213】
(現像性試験)
上記の様にして露光した試料を用いて、以下のようにして現像性試験を行った。現像は三菱製紙株式会社製自動現像装置P−1310Tを使用して処理を行った。現像温度を28℃および30℃の2条件に設定し、各々の温度で処理時間を10秒、12秒および15秒の3条件で処理を行い、非画像部の溶出性(完全に残膜が無くなる場合を○とし、僅かに残膜が認められる場合を△、明確に残膜が発生し、溶出不良である場合を×とした)を評価した。結果を表13に纏めた。
【0214】
【表13】

【0215】
(解像性評価)
上記の現像液を用いて処理を行った場合の解像性評価として、10μm細線および1%網点が明瞭に再現されている場合を○とし、これらが部分的に欠落しているが、20μm以上の細線および2%以上の網点が明瞭に再現されている場合を△、これ以下の再現性である場合を×とした。結果を表14に纏めた。
【0216】
【表14】

【0217】
(印刷性試験)
上記の現像性試験で得られた実施例の試料の内、30℃、15秒の現像処理条件で得られた試料を用いて下記の条件でオフセット印刷評価を行った。比較試料として同じく30℃、15秒処理で得られた試料を使用して同時に印刷試験を行った。印刷機は三菱重工業株式会社製オフセット輪転機リソピアを使用し、印刷インキは東京インキ株式会社製新聞オフ輪用紅インキを使用し、吸湿液は東洋インキ株式会社製オフセット印刷用吸湿液アクワユニティWKKの1%水溶液を使用した。印刷評価項目として、耐刷性について刷版上のテスト画像中のベタ部の反射濃度を測定し、印刷前と15万インプレッションの印刷後での反射濃度を測定することで耐刷性を評価した。刷版上のベタ部分の反射濃度が約0.6程度になった時点でインキの着肉性が悪くなり、部分的にインキが乗らなくなることを別途確認した。結果を表15に纏めた。
【0218】
【表15】

【0219】
全ての本発明の感光性平版印刷版を使用した場合(実施例19〜23)には、耐刷性に関しては15万インプレッションの印刷においても良好な印刷物が得られ、刷版上の画像部の膜減りも軽微であった。また、地汚れの発生もなく良好な結果が得られた。比較例10〜12では印刷開始から約5万インプレッションの印刷で部分的なインキ乗り不良および画像の欠落が発生し、15万インプレッションの時点では印刷物上で顕著な画像かすれが発生し耐刷不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明で与えられる感光性平版印刷版材料は、近赤外領域(750〜1100nm)もしくは、400〜430nmの波長域に発光するレーザーを用いて露光しても画像形成が可能な高い感度を有しており、pHが9未満の中性現像液もしくはpHが9〜12の範囲にあるアルカリ水溶液で現像可能であるため、これを利用したCTP用印刷版のみならずプリント配線基板作製用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、バインダーポリマー、光重合開始剤および下記一般式Iで示される分子内に重合性二重結合基が結合した1,3,4−チアジアゾール基を2個以上有する多官能性モノマーを含んでなる光硬化性感光層を有する感光性平版印刷版材料。
【化1】

(一般式IにおいてRは水素原子またはメチル基を表し、連結基Lは、アリーレン基、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、−C(=O)−、−CH−、−CH(−)−,−CH(OH)−および−CHO−基から選ばれる基、あるいはこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Zは炭素数が3以上のアルキレン基、アルキレンオキシ基、アリーレン基または下記から選ばれる任意の基を3個以上組み合わせて得られる基を表す。nは2以上の整数を表す。)
【化2】

【請求項2】
前記光硬化性感光層中に、さらに光波長域が400〜430nmもしくは750nm〜1100nmの波長領域に吸収を有し、該光重合開始剤を増感する化合物を併せて含有する請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項3】
前記バインダーポリマーが、側鎖にカルボキシル基を有するバインダーポリマーである請求項1または請求項2に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項4】
前記バインダーポリマーが、側鎖にカルボキシル基と重合性二重結合基を有するバインダーポリマーである請求項1または請求項2に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項5】
前記バインダーポリマーが、側鎖にスルホン酸塩基と重合性二重結合基を有するバインダーポリマーである請求項1または請求項2に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の感光性平版印刷版材料を、pHが9〜12の範囲であるアルカリ性現像液で現像を行うことを特徴とする感光性平版印刷版の現像処理方法。
【請求項7】
請求項1、2、5のいずれかに記載の感光性平版印刷版材料を、pHが9未満の中性現像液で現像を行うことを特徴とする感光性平版印刷版の現像処理方法。

【公開番号】特開2011−95365(P2011−95365A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247446(P2009−247446)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】