説明

感光性平版印刷版材料

【課題】増感色素を用いることによる発光波長が350〜450nmのレーザー光での露光に適し、高感度で保存性に優れ、現像時のスラッジが発生し難く、非画像部のインキ汚れが少ない感光性平版印刷版材料を提供する。
【解決手段】支持体上に、重合開始剤、重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、増感色素及び高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料において、該増感色素として下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性組成物を用いてコンピューター・トゥ・プレートシステム(以下、CTPと言う)に使用される感光性平版印刷版材料に関し、特に波長350〜450nmのレーザー光での露光に適した感光性平版印刷版材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷版の取扱い性の面から、セーフライト性を高めた、波長390〜430nmのレーザーで画像露光可能な感光性平版印刷版材料が知られている。そして、高出力かつ小型の波長390〜430nmの青紫色レーザーが容易に入手できるようになり、このレーザー波長に適した感光性平版印刷版を開発することにより明室化が図られて来ている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
又、黄色灯下でのセーフライト性を改良した、例えば感光層にビイミダゾール化合物を含む印刷版材料が知られており(例えば特許文献2参照)、更に、高感度で低昇華性の光重合性組成物として、例えばアルキル基等の置換基を有するアリール基を含むヘキサアリールビイミダゾール化合物を含む光重合性組成物が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0004】
一方、発光波長が350〜450nmのレーザー光での露光に対応する重合型の感光層に用いられる増感色素として、ジスチリルベンゼン、クマリン、ベンゾオキサゾール、オキサゾール、イミダゾール等が知られている(例えば特許文献4、5参照)。しかしながら、これらの感光性平版印刷版材料には、感度が不十分、経時による感度変動が大きいという問題があった。更に、高感度化のためにチアゾールを増感色素として用いた報告があるが(例えば特許文献6参照)、例示されるチアゾール色素は有機溶剤等に対する溶解性が悪く、又、現像時にスラッジが発生して非画像部のインキ汚れが発生してしまう等の問題があった。
【特許文献1】特開2000−35673号公報
【特許文献2】特開2001−194782号公報
【特許文献3】特開2004−137152号公報
【特許文献4】特開2003−295426号公報
【特許文献5】国際公開04/74930号パンフレット
【特許文献6】特開2002−116540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に鑑み為されたものであり、その目的は、発光波長が350〜450nmのレーザー光での露光に適し、高感度で高い保存性を有し、有機溶剤に対する溶解性に優れ、現像時のスラッジが発生し難く、非画像部のインキ汚れが少ない感光性平版印刷版材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.
支持体上に、重合開始剤、重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、増感色素及び高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料において、該増感色素として下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、X1及びX2は各々、NR2(R2は水素原子又は置換基を表す)、硫黄原子又は酸素原子を表す。R1はn−プロピル基、i−プロピル基、炭素数4以上の脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。Q1及びQ2は各々、NR3(R3は水素原子又は置換基を表す)、硫黄原子又は酸素原子を表す。W1はX2と共に環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。〕
2.
前記一般式(1)において、X2がNR2(R2は水素原子又は置換基を表す)であることを特徴とする前記1項に記載の感光性平版印刷版材料。
3.
前記一般式(1)において、Q1が酸素原子、Q2が硫黄原子であることを特徴とする前記1又は2項に記載の感光性平版印刷版材料。
4.
前記重合開始剤がヘキサアリールビイミダゾール化合物であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
5.
前記重合可能なエチレン性二重結合含有化合物が、下記(C1)〜(C3)の化合物の反応生成物であることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
(C1)分子内に、それぞれ少なくとも1個のエチレン性二重結合と1個のヒドロキシル基を含有する化合物
(C2)ジイソシアネート化合物
(C3)分子内に3級アミン構造を有するジオール化合物、又は分子内に2級アミン構造とヒドロキシル基を1個ずつ有する化合物。
6.
前記重合可能なエチレン性二重結合含有化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0009】
【化2】

【0010】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は2価の脂肪族基を表し、X2は芳香環を有する2価の炭化水素基を表し、X3は3級アミン構造を有する2価の置換基を表す。〕
7.
感光層中にチオール化合物を含有することを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記構成により、発光波長が350〜450nmのレーザー光での露光に適し、高感度で高い保存性を有し、溶解性に優れ、現像時のスラッジが発生し難く、非画像部のインキ汚れが少ない感光性平版印刷版材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0013】
本発明者は鋭意検討の結果、支持体上に、重合開始剤、重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、増感色素及び高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料に、増感色素として上記一般式(1)で表される化合物を用いることにより、発光波長が350〜450nmのレーザー光での露光に適し、高感度で保存性に優れ、現像時のスラッジが発生し難く、非画像部のインキ汚れが少ない感光性平版印刷版材料が得られることを見い出した。
【0014】
以下、本発明の感光性平版印刷版材料(以下、平版印刷版材料と記す)に関わる素材、層構成等について詳細に説明する。
【0015】
〈一般式(1)で表される増感色素〉
一般に、分子中に分岐した置換基や、嵩高い置換基が導入された化合物は、有機溶媒に対する溶解性が向上する効果が見られる。本発明では、塗布溶媒に対する溶解性を向上することで、塗布後の色素の析出や凝集を防ぐことが可能となり、保存性に優れた平版印刷版材料が提供できる。
【0016】
本発明においては、R1にn−プロピル基、i−プロピル基、炭素数4以上の脂肪族基、芳香族基又は複素環基を導入することにより、有機溶剤に対する一般式(1)で表される増感色素の溶解性が向上する。尚、本明細書における「脂肪族基」とは、それぞれ置換又は無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アラルキル基を意味する。
【0017】
1で表される炭素数4以上の脂肪族基の具体例としては、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、ペンタデシル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプチニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、シクロノナニル、シクロノネニル、シクロノナジエニル、シクロノナトリエニル、シクロデカニル、シクロデケニル、シクロデカジエニル、シクロデカトリエニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ヘキセニル、ベンジル、1−フェニルエチル等の各基を挙げることができる。これらの基は更に置換基又はハロゲン原子を有してもよく、該置換基としては、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボオキシ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。又、直鎖のアルキル基よりも、分岐のアルキル基や環状化合物(環状アルキル基等)のような嵩高い基を有することが、塗布後の凝集を防ぎ、有機溶媒への溶解性を向上する上で好ましい。
【0018】
1で表される芳香族基は単環でも縮合環でもよく、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、トリフェニレニル等の環を挙げることができる。これらの環は任意の個所に種々の置換基を有していてもよく、好ましい置換基として、直鎖、分岐のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜20のメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ドデシル等)、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜20のメトキシ、エトキシ、プロポキシ、i−プロポキシ、ドデシルオキシ等)、アミノ基、脂肪族アシルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜21のアルキル基を持つアセチルアミノ、ヘプチルアミノ等)、芳香族アシルアミノ基等が挙げられる。
【0019】
1で表される複素環基の具体例としては、ピロール、インドール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、インドリジン、キノリン、カルバゾール、フェノチアジン、インドリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、チアジアジン、ピラン、チオピラン、オキサジアゾール、ベンゾキノリン、チアジアゾール、ピロロチアゾール、ピロロピリダジン、テトラゾール、オキサゾール、クマリン及びクロマン等を挙げることができる。これらの複素環は単環でも、他の環と縮合環を形成してもよい。更に種々の置換基を有してもよく、置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0020】
1としては、直鎖のアルキル鎖よりも、分岐のアルキル鎖や環状化合物等のような嵩高い基を有することが、溶媒への溶解性を向上する上で好ましい。従って、R1として好ましくは、i−プロピル基、炭素数4〜20の脂肪族基、芳香族基、更に好ましくは、i−プロピル基、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基、フェニル基である。
【0021】
前記X1及びX2は各々NR2(R2は水素原子又は置換基を表す)、硫黄原子又は酸素原子を表すが、R2で表される置換基の具体例としては、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロペンチル等)、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基(プロパルギル等)、芳香族基(フェニル、ナフチル、アントラセニル等)、複素環基(ピリジル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、フリル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、セレナゾリル、スリホラニル、ピペリジニル、ピラゾリル、テトラゾリル等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル等)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、ピリジノイル等)、カルバモイル基(アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル、シクロヘキシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル等)、スルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、フェニルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等)等を挙げることができる。又、これらの基は、更にこれらの基で置換されてもよい。
【0022】
2として好ましくは水素原子又はアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
【0023】
1として好ましくは硫黄原子又は酸素原子、更に好ましくは硫黄原子である。X2として好ましくは、NR2又は硫黄原子、より好ましくはNR2である。
【0024】
1及びQ2は各々NR3(R3は水素原子又は置換基を表す)、硫黄原子又は酸素原子を表す。R3で表される置換基の具体例は、前記R2で表される置換基の例として挙げたものと同様である。
【0025】
1及びQ2として好ましくは硫黄原子又は酸素原子、より好ましくはQ1が硫黄原子又は酸素原子、Q2が硫黄原子である。
【0026】
1はX2と共に環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。X2及びW1から形成される環の具体例を以下に挙げるが、これらには限定されない。
【0027】
【化3】

【0028】
式中、Ra、Rb及びRcは各々、水素原子又は置換基を表す。Ra、Rb及びRcで表される置換基の具体例としては、前記一般式(1)におけるR2で表される置換基として挙げた例が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシル基などである。nは0〜4の整数を表す。
【0029】
以下に本発明の増感色素の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
【化9】

【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
一般式(1)で表される化合物は公知の手法により合成することができる。例えばF.M.ヘイマーら著「ザ・シアニン・ダイズ・アンド・リレィテッド・コンパウンズ」(F.M.Hamer et al.,“The Cyanine Dyes and Related Compounds”)511〜611頁(1964年)に記載された方法、KAI ARNE JENSEN及びLARS HENRIKSEN等のACTA CHEMICA SCANDINAVICA 22巻,1107〜1128頁(1968年)、又は特許2552550号に記載の方法を参照して合成することができる。
【0041】
本発明の増感色素の含有量は、感光層全固形分の0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましい。
【0042】
上記増感色素の他に、例えば特開2000−98605号、同2000−147763号、同2000−206690号、同2000−258910号、同2000−309724号、同2001−042524号、同2002−202598号、同2000−221790号に記載の増感色素を併用してもよい。
【0043】
〈重合開始剤〉
重合開始剤は、画像露光により、重合可能なエチレン性二重結合含有化合物の重合を開始し得るものであり、重合開始剤としては、チタノセン化合物、モノアルキルトリアリールボレート化合物、鉄アレーン錯体化合物、ポリハロゲン化合物、ビイミダゾール化合物等が好ましく用いられる。これらの内でも、特にビイミダゾール化合物を用いた時に本発明の効果が大きく好ましい。
【0044】
(ビイミダゾール化合物)
ビイミダゾール化合物はビイミダゾールの誘導体であり、例えば特開2003−295426号に記載される化合物等が挙げられる。本発明においては、ビイミダゾール化合物として、ヘキサアリールビイミダゾール(HABIと略記:トリアリール−イミダゾールの2量体)類を好ましく用いることができる。
【0045】
HABI類の製造工程はドイツ特許1,470,154号に記載され、光重合可能な組成物中での、それらの使用は、欧州特許24,629号、同107,792号、米国特許4,410,621号、欧州特許215,453号及びドイツ特許3,211,312号に記述されている。
【0046】
好ましい誘導体は、例えば2,4,5,2′,4′,5′−ヘキサフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,5,2′,5′−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4′−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ジ−o−トリル−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール及び2,2′−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾールである。
【0047】
(チタノセン化合物)
チタノセン化合物としては、特開昭63−41483号、特開平2−291号に記載される化合物等が挙げられる。更に好ましい具体例として、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ジ−クロライド、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−フェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル(IRUGACURE727L:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(2−5−ジメチルピリ−1−イル)フェニル)チタニウム等が挙げられる。
【0048】
(モノアルキルトリアリールボレート化合物)
モノアルキルトリアリールボレート化合物としては、特開昭62−150242号、同62−143044号に記載される化合物等が挙げられる。更に好ましい具体例としては、テトラブチルアンモニウム−ブチル−トリナフタレン−1−イル−ボレート、テトラブチルアンモニウム−ブチル−トリフェニル−ボレート、テトラブチルアンモニウム−ブチル−トリ(4−t−ブチルフェニル)−ボレート、テトラブチルアンモニウム−ヘキシル−トリ(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボレート、テトラブチルアンモニウム−ヘキシル−トリ(3−フルオロフェニル)−ボレート等が挙げられる。
【0049】
(鉄アレーン錯体化合物)
鉄アレーン錯体化合物としては、特開昭59−219307号に記載される化合物等が挙げられる。更に好ましい具体例としては、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−クメン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−フルオレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ナフタレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−キシレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0050】
(ポリハロゲン化合物)
ポリハロゲン化合物としては、トリハロゲンメチル基、ジハロゲンメチル基又はジハロゲンメチレン基を有する化合物が好ましく用いられる。特に下記一般式(5)又は(6)で表されるハロゲン化合物及び上記基がオキサジアゾール環に置換した化合物が好ましく用いられる。この中でも、下記一般式(3)又は(4)で表されるハロゲン化合物が特に好ましい。
【0051】
一般式(3) R11−C(Y)2−CO−R12
式中、R11は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノスルホニル基又はシアノ基を表し、R12は1価の置換基を表す。R11とR12が互いに結合して環を形成してもよい。Yはハロゲン原子を表す。
【0052】
一般式(4) C(Y)3−CO−X−R13
式中、R13は1価の置換基を表す。Xは−O−又は−NR14−を表す。R14は水素原子又はアルキル基を表す。R13とR14が互いに結合して環を形成してもよい。Yはハロゲン原子を表す。これらの中でも、特にポリハロゲンアセチルアミド基を有するものが好ましく用いられる。
【0053】
更に、特開平5−34904号、同8−240909号に記載の、ポリハロゲンメチル基がオキサジアゾール環に置換した化合物も好ましく用いられる。
【0054】
〈併用可能な重合開始剤〉
その他に任意の重合開始剤の併用が可能である。例えばJ.コーサー(J.Kosar)著「ライト−センシテイブ−システムズ」第5章に記載されるようなカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ並びにジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられる。更に、具体的な化合物は英国特許1,459,563号に開示される。
【0055】
併用可能な重合開始剤としては、次のような化合物が挙げられる。
【0056】
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−i−プロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−i−プロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号、同61−9621号ならびに特開昭60−60104号記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号、同61−243807号記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号、同47−1604号ならびに米国特許3,567,453号記載のジアゾニウム化合物;米国特許2,848,328号、同2,852,379号ならびに同2,940,853号記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062b号、同37−13109号、同38−18015号ならびに同45−9610号記載のo−キノンジアジド類;特公昭55−39162号、特開昭59−14023号ならびに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」10巻,1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号記載のアゾ化合物;特開平1−54440号、ヨーロッパ特許109,851号、同126,712号ならびに「ジャーナル−オブ−イメージング−サイエンス(J.Imag.Sci.)」30巻,174頁(1986年)記載の金属アレン錯体;特開平5−213861号及び同5−255347号記載の(オキソ)スルホニウム有機硼素錯体;「コーディネーション ケミストリー レビュー(Coordination Chemistry Review)」84巻,85〜277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素、特開昭59−107344号記載の有機ハロゲン化合物等。
【0057】
重合開始剤の含有量(重合開始剤の総量)は、重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0058】
〈重合可能なエチレン性二重結合含有化合物〉
本発明に係る重合可能なエチレン性二重結合含有化合物は、画像露光された感光層中の重合開始剤により重合し得るエチレン性二重結合を有する化合物である。重合可能なエチレン性二重結合含有化合物として、本発明では特に下記(C1)〜(C3)の化合物の反応生成物が好ましく用いられる。
【0059】
(C1)分子内に少なくとも1個のエチレン性二重結合と、1個のヒドロキシル基を含有する化合物
(C2)ジイソシアネート化合物
(C3)分子内に3級アミンの構造を有するジオール化合物、又は分子内に2級アミン構造とヒドロキシル基を1個ずつ有する化合物
上記(C1)としては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート;(C2)としては、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ジイソシアナトベンゼン、1,3−ジイソシアナト−4−メチルベンゼン、1,3−ジ(イソシアナトメチル)ベンゼン;(C3)としては、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0060】
〈一般式(2)で表される化合物〉
上記反応生成物として、特に前記一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。式中、R1は水素原子又はメチル基を、X1は2価の脂肪族基を、X2は芳香環を有する2価の炭化水素基を、X3は3級アミン構造を有する2価の置換基を表す。
【0061】
1としては、例えば−CH2CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−が挙げられるが、−CH2CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2−が好ましい。
【0062】
2としては、例えば下記X2−1〜X2−10の構造が挙げられるが、X2−3、X2−4、X2−7、X2−9、X2−10が好ましい。
【0063】
【化14】

【0064】
3としては、X3−1〜X3−10の構造が挙げられるが、X3−1、X3−2、X3−5、X3−9が好ましい。
【0065】
【化15】

【0066】
一般式(2)で表される化合物としては、下記の化合物が挙げられる。
【0067】
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
【化18】

【0070】
【化19】

【0071】
【化20】

【0072】
【化21】

【0073】
【化22】

【0074】
【化23】

【0075】
〈併用可能なエチレン性二重結合含有化合物〉
重合可能なエチレン性二重結合含有化合物として、一般的なラジカル重合性モノマー類、紫外線硬化樹脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なエチレン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や、多官能オリゴマー類を更に併用することができる。
【0076】
これらの化合物に限定はないが、好ましいものとして、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル;例えばエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル;例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸−ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸−ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0077】
又、プレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述するような化合物等を挙げることができ、又、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸又はメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述のモノマー及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0078】
プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、琥珀酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類;例えばビスフェノールA−エピクロルヒドリン−(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック−エピクロルヒドリン−(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類;例えばエチレングリコール−アジピン酸−トリレンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール−トリレンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート−キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール−トリレンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン−プロピレングリコール−トリレンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート;例えばポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン−ジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類;その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等のプレポリマーが挙げられる。
【0079】
本発明に係る感光層には、ホスファゼンモノマー、トリエチレングリコール、イソシアヌール酸EO(エチレンオキシド)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性、ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを含有することができる。
【0080】
更に、本発明に併用可能なエチレン性単量体として、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有する燐酸エステル化合物が挙げられる。該化合物は、燐酸のヒドロキシル基の少なくとも一部がエステル化された化合物であり、しかも、(メタ)アクリロイル基を有する限り特に限定はされない。
【0081】
その他、特開昭58−212994号、同61−6649号、同62−46688号、同62−48589号、同62−173295号、同62−187092号、同63−67189号、特開平1−244891号等に記載の化合物等を挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社,286〜294頁に記載の化合物、「UV−EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会,11〜65頁に記載の化合物等も好適に用いることができる。これらの中で、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。
【0082】
この他にも、特開平1−105238号、同2−127404号に記載のアクリレート又はアルキルアクリレートを用いることができる。
【0083】
重合可能なエチレン性二重結合含有化合物の感光層中における含有量は、感光層に対して20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
【0084】
〈高分子結合材〉
本発明に係る高分子結合材は、感光層に含まれる成分を支持体上に担持し得るものであり、高分子結合材としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等が使用できる。又、これらを2種以上併用しても構わない。好ましくはアクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合である。更に、高分子結合材の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0085】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。その他、フタル酸と2−ヒドロキシメタクリレートのハーフエステル等のカルボン酸も好ましい。
【0086】
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等の無置換アルキルエステルの他、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキルエステルや、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の置換アルキルエステルも挙げられる。
【0087】
更に、高分子結合材は、共重合モノマーとして、下記(1)〜(14)に記載のモノマー等を用いることができる。
【0088】
(1)芳香族ヒドロキシル基を有するモノマー、例えばo−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等、
(2)脂肪族ヒドロキシル基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等、
(3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等、
(4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等、
(5)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等、
(6)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等、
(7)ビニルエーテル類、例えばエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等、
(8)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等、
(9)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等、
(10)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等、
(11)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等、
(12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等、
(13)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等、
(14)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0089】
更に、これらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを共重合してもよい。
【0090】
高分子結合材は、側鎖にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するビニル系重合体であることが好ましい。例えば、上記ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させることによって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。
【0091】
分子内に不飽和結合とエポキシ基を共に含有する化合物としては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、特開平11−271969号に記載のあるエポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられる。又、上記ビニル系重合体の分子内に存在するヒドロキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアナト基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。
【0092】
分子内に不飽和結合とイソシアナト基を共に有する化合物としては、ビニルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−又はp−i−プロペニル−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネートが好ましく、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0093】
側鎖にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するビニル系重合体は、全高分子結合剤の50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0094】
感光層中における高分子結合材の含有量は10〜90質量%が好ましく、15〜70質量%が更に好ましく、20〜50質量%が感度の面から特に好ましい。
【0095】
〈チオール化合物〉
本発明に使用されるチオール化合物は特に限定されないが、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等、複素環に連結したメルカプト基を含有する化合物が好ましい。
【0096】
〈各種添加剤〉
感光層には、上記した成分の他に、平版印刷版材料の製造中あるいは保存中に、重合可能なエチレン性二重結合単量体の不要な重合を阻止するために、重合防止剤を添加することが望ましい。
【0097】
(重合防止剤)
適当な重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0098】
重合防止剤の添加量は、感光層の全固形分に対して約0.01〜約5質量%が好ましい。又、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加したり、塗布後の乾燥過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5〜10質量%が好ましい。
【0099】
(着色剤)
又、着色剤も使用することができ、着色剤としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば改訂新版「顔料便覧」,日本顔料技術協会編(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。
【0100】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、ならびに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。
【0101】
これらの中でも、使用する露光レーザーに対応した分光増感色素の吸収波長域に実質的に吸収を持たない顔料を選択して使用することが好ましく、この場合、使用するレーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。又、顔料の添加量としては、上記組成物の固形分に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0102】
上記の感光波長領域での顔料吸収及び現像後の可視画性の観点から、紫色顔料、青色顔料を用いるのが好ましい。このようなものとしては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、フォナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーフアーストスカイブルー、インダンスレンブルー、インジコ、ジオキサンバイオレット、イソビオランスロンバイオレット、インダンスロンブルー、インダンスロンBC等を挙げることができる。これらの中で、より好ましくはフタロシアニンブルー、ジオキサンバイオレットである。
【0103】
(界面活性剤)
感光層には、本発明の性能を損なわない範囲で、界面活性剤を塗布性改良剤として含有することができる。その中でも好ましいのは弗素系界面活性剤である。
【0104】
又、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は、感光層全固形分の10質量%以下が好ましい。
【0105】
〈溶剤〉
感光層塗布液を調製する際に使用する溶剤としては、例えばアルコール、多価アルコールの誘導体類では、sec−ブタノール、i−ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール;エーテル類として、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル;ケトン類、アルデヒド類としてジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン;エステル類として乳酸エチル、乳酸ブチル、蓚酸ジエチル、安息香酸メチル等が好ましく挙げられる。
【0106】
以上、感光層塗布液について説明したが、本発明に係る感光層は、これを用いて支持体上に塗設することにより構成される。感光層の支持体上の付量としては0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
【0107】
〈保護層〉
感光層の上側には、必要に応じ保護層を設けることができる。この保護層(酸素遮断層)は、後述の現像液(一般にはアルカリ水溶液)への溶解性が高いことが好ましく、具体的にはポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドン(PVP)を挙げることができる。PVAは酸素の透過を抑制する効果を有し、PVPは隣接する感光層との接着性を確保する効果を有する。
【0108】
上記2種のポリマーの他に、必要に応じてポリサッカライド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等の水溶性ポリマーを併用することもできる。
【0109】
平版印刷版材料に保護層を設ける場合、感光層と保護層間の剥離力が35mN/mm以上であることが好ましく、より好ましくは50mN/mm以上、更に好ましくは75mN/mm以上である。好ましい保護層の組成としては、特開平10−10742号に記載されるものが挙げられる。本発明における剥離力は、保護層上に十分大きい粘着力を有する所定幅の粘着テープを貼り、それを感光性平版印刷版材料の平面に対して90度の角度で保護層と共に剥離する時の力を測定することにより求めることができる。
【0110】
保護層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができる。上記保護層組成物を適当な溶剤に溶解し感光層上に塗布・乾燥して保護層を形成する。塗布溶剤の主成分は水あるいはメタノール、エタノール、i−プロパノール等のアルコール類であることが特に好ましい。
【0111】
保護層を設ける場合、その厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0112】
〈支持体〉
支持体は、感光層を担持可能な板状体又はフィルム体であり、感光層が設けられる側に親水性表面を有するのが好ましい。
【0113】
本発明に係る支持体として、例えばアルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等の金属板、又、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムに前述の金属薄膜をラミネート又は蒸着したもの等が挙げられる。
【0114】
又、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム等の表面に親水化処理を施したもの等が使用できるが、アルミニウム支持体が好ましく使用される。
【0115】
アルミニウム支持体の場合、純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。又、アルミニウム支持体は、保水性付与のため、表面を粗面化したものが用いられる。
【0116】
アルミニウム支持体を用いる場合、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、水酸化ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0117】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。
【0118】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。
【0119】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0120】
表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸あるいは、それらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0121】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法は、それぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0122】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。
【0123】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ナトリウム処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等、公知の方法を用いて行うことができる。
【0124】
更に、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体及び共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平5−304358号に開示されるような、ラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0125】
〈平版印刷版材料の作製〉
前述の感光層塗布液を従来公知の方法で支持体上に塗布・乾燥し、平版印刷版材料を作製することができる。塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤーバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押出しコータ法等を挙げることができる。
【0126】
感光層の乾燥温度は60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは90〜120℃の範囲で乾燥することが好ましい。
【0127】
〈平版印刷版の作製〉
平版印刷版材料は、以下のような処理によって平版印刷版を作製し、該平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられる。
【0128】
(画像露光)
本発明の平版印刷版材料に画像記録する光源としては、発光波長が370〜440nmのレーザー光の使用が好ましい。
【0129】
露光光源としては、例えばHe−Cdレーザー(441nm)、固体レーザーとしてCr:LiSAFとSHG結晶の組合せ(430nm)、半導体レーザー系として、KNbO3、リング共振器(430nm)、AlGaInN(350〜450nm)、AlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm)等を挙げることができる。
【0130】
レーザー露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。又、レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0131】
レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査等がある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0132】
尚、本発明においては、10mJ/cm2以上の版面エネルギー(版材上でのエネルギー)で画像露光されることが好ましく、その上限は500mJ/cm2である。より好ましくは10〜300mJ/cm2である。このエネルギー測定には、例えばOphir Optronics社製のレーザーパワーメーターPDGDO−3Wを用いることができる。
【0133】
(現像液)
画像露光した感光層は露光部が硬化する。これをアルカリ性現像液で現像処理することにより、未露光部を除去して画像形成することが好ましい。このような現像液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば珪酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;第二燐酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム及び同リチウム等の無機アルカリ剤を使用するアルカリ現像液が挙げられる。
【0134】
又、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−i−プロパノールアミン、ジ−i−プロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いることができる。
【0135】
これらのアルカリ剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いられる。又、この現像液には、必要に応じてアニオン性界面活性剤、両性活性剤やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0136】
アルカリ性現像液は、顆粒状、錠剤等の現像液濃縮物から調製することもできる。
【0137】
現像液濃縮物は、一旦、現像液にしてから蒸発乾固してもよいが、好ましくは複数の素材を混ぜ合わせる際に水を加えず、又は少量の水を加える方法で素材を混ぜ合わせることで濃縮状態とする方法が好ましい。又、この現像液濃縮物は、特開昭51−61837号、特開平2−109042号、同2−109043号、同3−39735号、同5−142786号、同6−266062号、同7−13341号等に記載される従来よく知られた方法にて、顆粒状、錠剤とすることができる。又、現像液の濃縮物は、素材種や素材配合比等の異なる複数のパートに分けてもよい。
【0138】
アルカリ性現像液及びその補充液には、更に必要に応じて防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤及び硬水軟化剤等を含有させることもできる。
【0139】
(自動現像機)
感光性平版印刷版材料の現像には自動現像機を用いるのが有利である。自動現像機として好ましくは現像浴に自動的に現像補充液を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは一定量を超える現像液は、排出する機構が付与されており、好ましくは現像浴に自動的に水を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは通版を検知する機構が付与されており、好ましくは通版の検知を基に版の処理面積を推定する機構が付与されており、好ましくは通版の検知及び/又は処理面積の推定を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されており、好ましくは現像液の温度を制御する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を検知する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されている。又、現像液濃縮物を一旦、水で希釈−撹拌する機能を有することが好ましい。現像工程後に水洗工程がある場合、使用後の水洗水を現像濃縮物の濃縮液の希釈水として用いることができる。
【0140】
自動現像機は、現像工程の前に前処理液に版を浸漬させる前処理部を有してもよい。この前処理部は、好ましくは版面に前処理液をスプレーする機構が付与されており、好ましくは前処理液の温度を25〜55℃の任意の温度に制御する機構が付与されており、好ましくは版面をローラ状のブラシにより擦る機構が付与されている。この前処理液としては、水等が用いられる。
【0141】
(後処理)
アルカリ性現像液で現像処理された平版印刷版材料は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。これらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば現像→水洗→界面活性剤を含有するリンス液処理や、現像→水洗→フィニッシャー液による処理が、リンス液やフィニッシャー液の疲労が少なく好ましい。更にリンス液やフィニッシャー液を用いた向流多段処理も、好ましい態様である。
【0142】
これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とから成る自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を浸漬搬送する方法が用いられる。又、現像後、一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて、それぞれの補充液を補充しながら処理することができる。又、実質的に未使用の後処理液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0143】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。尚、実施例における「%」、「部」は、特に断りない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を表す。
【0144】
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。
【0145】
次いで、このアルミニウム板を、0.3%の硝酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。
【0146】
デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、更に1%ポリビニルホスホン酸で75℃で親水化処理を行って支持体を作製した。
【0147】
この支持体表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.65μmであった。
【0148】
〔平版印刷版材料の作製〕
上記支持体上に、下記組成の感光層塗工液1を乾燥時1.5g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥し、続いて下記組成の酸素遮断層塗工液1を乾燥時1.5g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、75℃で1.5分間乾燥し平版印刷版材料(試料No.101〜126)を作製した。
(感光層塗工液1)
N−ブチルジエタノールアミン/1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1/2/2モル比)の反応生成物
42.0部
トリエチレングリコールジメタクリレート 6.0部
メタクリル酸/メチルメタクリレート(25/75質量比)共重合体(分子量36,000) 35.0部
増感色素(表1に記載) 1.0部
2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール 3.0部
2−メルカプトベンゾチアゾール 0.3部
N−フェニルグリシンベンジルエステル 4.0部
フタロシアニン顔料(MHI#454:御国色素社製) 3.5部
2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(スミライザーGS:住友3M社製) 0.2部
2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール 1.0部
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート 0.1部
弗素系界面活性剤(F−178K:大日本インキ社製) 0.5部
シロキサン系界面活性剤(BYK337:ビックケミー社製) 0.9部
メチルエチルケトン 80部
プロピレングリコールメチルエーテル 820部。
(酸素遮断層塗工液1)
PVA(セルボール103:Celaneas社製) 85.0部
ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(ルビテックVA64W:BASF社製)
15.0部
サーフィノール465(エアープロダクツ社製) 0.2部
水 900部。
【0149】
上記試料109、115の作製において、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾールをη−クメン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェートに代えた以外は同様にして、試料121、122を作製した。
【0150】
上記試料109、115の作製において、N−ブチルジエタノールアミン/1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1/2/2モル比)反応生成物をM2−15に代えた以外は同様にして、試料123、124を作製した。
【0151】
上記試料109、115の作製において、2−メルカプトベンゾチアゾールを除く以外は同様にして、試料125、126を作製した。
【0152】
〔平版印刷版の作製〕
作製した各平版印刷版材料に、405nm、60mWの光源を備えたプレートセッター(NewsCTP:ECRM社製)を用いて、2,400dpi(dpiとは、1インチ即ち2.54cm当たりのドット数を表す解像度)で露光を行った。
【0153】
露光パターンは、100%画像部、及びTimes New Romanフォント、3〜10ポイントサイズ、アルファベット大文字と小文字の抜き文字の、原稿画像データを使用した。
【0154】
次いで、105℃に設定されたプレヒート部、酸素遮断層を除去するためのプレ水洗部、下記組成の現像液を充填し、30℃に温度調節された現像部、版面に付着した現像液を取り除く水洗部、画線部保護のためのガム液(GW−3:三菱化学社製を2倍希釈したもの)処理部を備えたCTP自動現像機(Raptor Polymer:Glunz&Jesen社製)で現像処理を行い、平版印刷版を得た。
(現像液組成…下記添加剤を含有する水溶液)
A珪酸カリウム 8.0部
ニューコールB−13SN(日本乳化剤社製) 3.0部
水 89.0部
水酸化カリウム pH=12.3となる添加量。
【0155】
〔平版印刷版材料の評価〕
各平版印刷版材料について以下の評価を行った。
【0156】
《感度》
平版印刷版の版面に記録された100%画像部において、膜減りが観察されない最低量の露光エネルギー量を記録エネルギー(μJ/cm2)とし、感度の指標とした。記録エネルギーが小さいほど高感度であることを示す。
【0157】
《保存性》
平版印刷版材料を55℃の恒温槽で3日間保管した後、上記と同様の方法で感度を測定し、保存前の感度の何パーセントに当たるかを算出し、保存時の感動変動を求め、保存性の指標とした。100%に近いほど変動が少なく、保存性が良好であることを示す。
【0158】
《スラッジ量》
前記自動現像機を使用し、現像補充液を1m2当たり50ml補充して平板印刷版材料を1日当たり25m2処理する処理条件下で、1ヶ月間(30日)現像処理したランニング液を、ADVANTEC No.2(アドバンテック東洋社製)で1L濾過し、残留物を十分に乾燥させた後に質量を測定した。
【0159】
《非画像部のインキ汚れ》
現像補充液を1m2当たり50ml補充して平版印刷版材料を1日当たり25m2処理する処理条件下で、1ヶ月間(30日)現像処理した。その後、平板印刷版を印刷機(三菱重工業社製:DAIYA1F−1)でコート紙、印刷インキ(大日本インキ化学工業社製の大豆油インキ“ナチュラリス100”)及び湿し水(東京インク社製:H液SG−51,濃度1.5%)を用いて印刷を行った。刷出しから100枚目の印刷物の非画像部におけるインキ汚れを目視及びルーペで観察し、下記の5段階基準で評価した。
【0160】
◎:汚れなし
○:ルーペで観察すると微小なインキ汚れが幽かに認められる
△:ルーペで観察すると微小なインキ汚れが僅かに確認できるが、印刷物として使用可能
×:ルーペで観察すると小さなインキ汚れが確認できる。印刷物として使用不可
××:目視で非画像部にインキ汚れが確認できる。印刷物として使用不可。
【0161】
《色素の溶解性》
前記の感光層塗工液を撹拌調液後、室温で1時間静置し、溶解せずに沈殿した増感色素の有無を目視で観測し、沈殿物の質量を測定した。
【0162】
A:全ての増感色素が完全に溶解した
B:10質量%未満の増感色素が沈殿、残留した
C:10質量%以上の増感色素が沈殿、残留した
評価結果を纏めて表1に示す。
【0163】
【表1】

【0164】
【化24】

【0165】
表1から明らかなように、比較試料101〜103に比べて本発明の試料104〜126は高感度であり、保存時の感度の変動が少なく、現像液のスラッジが少なく、非画像部のインキ汚れも良好であり、更に、増感色素の溶解性にも優れていることが判る。特に、試料121、122に対してヘキサアリールビイミダゾール化合物を用いた試料109、115がより良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、重合開始剤、重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、増感色素及び高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料において、該増感色素として下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【化1】

〔式中、X1及びX2は各々、NR2(R2は水素原子又は置換基を表す)、硫黄原子又は酸素原子を表す。R1はn−プロピル基、i−プロピル基、炭素数4以上の脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。Q1及びQ2は各々、NR3(R3は水素原子又は置換基を表す)、硫黄原子又は酸素原子を表す。W1はX2と共に環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)において、X2がNR2(R2は水素原子又は置換基を表す)であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Q1が酸素原子、Q2が硫黄原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項4】
前記重合開始剤がヘキサアリールビイミダゾール化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項5】
前記重合可能なエチレン性二重結合含有化合物が、下記(C1)〜(C3)の化合物の反応生成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
(C1)分子内に、それぞれ少なくとも1個のエチレン性二重結合と1個のヒドロキシル基を含有する化合物
(C2)ジイソシアネート化合物
(C3)分子内に3級アミン構造を有するジオール化合物、又は分子内に2級アミン構造とヒドロキシル基を1個ずつ有する化合物。
【請求項6】
前記重合可能なエチレン性二重結合含有化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【化2】

〔式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は2価の脂肪族基を表し、X2は芳香環を有する2価の炭化水素基を表し、X3は3級アミン構造を有する2価の置換基を表す。〕
【請求項7】
感光層中にチオール化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。

【公開番号】特開2009−47796(P2009−47796A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212172(P2007−212172)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】