感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法
【課題】パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性に優れ、フィルム状に形成した場合には低温貼付性にも優れた感光性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】
(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有し、(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂が、ポリイミド樹脂を含み、(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含み、(C)放射線重合性化合物が、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、(D)光開始剤が特定の化合物を含み、当該感光性接着剤組成物の3%重量減少温度が275℃以上である、感光性接着剤組成物。
【解決手段】
(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有し、(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂が、ポリイミド樹脂を含み、(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含み、(C)放射線重合性化合物が、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、(D)光開始剤が特定の化合物を含み、当該感光性接着剤組成物の3%重量減少温度が275℃以上である、感光性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージなどの半導体装置の製造において、半導体素子と半導体素子搭載用支持基材との接合には接着剤が従来より使用されている。この接着剤には、半導体装置の信頼性の点から、耐はんだリフロー性を十分確保するための耐熱性や耐湿信頼性が要求される。また、半導体ウエハなどにフィルム状の接着剤を貼付ける工程を経て接合を行う方法があり、この場合には、被着体への熱的ダメージを少なくするために低温貼付性が要求される。近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されるようになり、半導体装置の機能、形態及び組み立てプロセスの簡略化の手法によっては、上記の特性に加えてパターン形成能を備えた接着剤が求められている。接着剤パターンを形成できるものとして、感光性の機能を備えた感光性接着剤が知られている。感光性とは光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。この感光性を有する感光性接着剤を用いると、フォトマスクを介して露光し、現像液によってパターン形成させることにより、高精細な接着剤パターンを形成することが可能となる。
【0003】
このようなパターン形成機能を持つ感光性接着剤を構成する材料としては、これまで、耐熱性を考慮して、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)あるいはポリイミド樹脂をベースとした材料が使用されていた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の材料は耐熱性の点で優れているが、前者のポリアミド酸を用いた場合は熱閉環イミド化時に、後者のポリイミド樹脂を用いた場合は加工時に、それぞれ300℃以上の高温を要するため、周辺材料への熱的ダメージが大きく、また、熱応力が発生しやすいなどの問題があった。
【0006】
なお、ポリイミド樹脂などを含む接着剤に熱硬化性樹脂を配合して架橋することにより、低温加工性及びはんだ耐熱性を改良することが試みられている。しかし、このような方法では、アルカリ現像液によるパターン形成性及び被着体への低温貼付性の両方について同時に高いレベルを達成することは困難であった。また、上記従来の材料は、パターン形成後の再熱圧着性及び硬化後に十分に高い接着力を達成することが困難であった。また、パターニング性についても、感度が低いために露光量を多くする必要があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性に優れ、フィルム状に形成した場合には低温貼付性にも優れた感光性接着剤組成物、これを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有し、組成物中の全光開始剤混合物の3%重量減少温度が200℃以上である、感光性接着剤組成物を提供する。
【0009】
ここで、3%重量減少温度とは、熱重量分析による初期状態からの重量減少率が3%となる温度を意味しており、光開始剤を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの3%重量減少温度である。
【0010】
本発明の感光性接着剤組成物によれば、上記構成を有することにより、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、及び、フィルム状に形成した場合には低温貼付性のすべてを満足することができる。
【0011】
なお、本発明の感光性接着剤組成物により上記の効果が奏される理由としては、保存安定性がよく、接着後の熱処理によるアウトガスが少ないため、並びに、フィルム状に形成した場合には、塗工乾燥温度によって反応が進行しないためであると本発明者らは考えている。
【0012】
また、本発明によれば、上記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の組み合わせにより、上記の効果を奏しつつ室温での貯蔵安定性にも優れた感光性接着剤組成物を実現することができる。以下、室温とは、特に断りがない限り25℃である。
【0013】
本発明の感光性接着剤組成物においては、パターン形成性の感度向上等の観点から、(D)光開始剤が、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上である化合物を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の感光性接着剤組成物においては、耐熱性向上等の観点から、(D)光開始剤が、カルバゾール基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の感光性接着剤組成物においては、耐熱性向上等の観点から、(D)光開始剤が、オキシムエステル基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の感光性接着剤組成物において、放射線照射に対して少量で効率よく反応し、また光分解した後のフラグメントが昇華、分解しにくいため、(D)光開始剤が、下記構造式(1)で表わされる化合物を含むことが特に好ましい。
【化1】
【0017】
また、保存安定性、高温接着性及び耐熱性の点から、(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0018】
(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂のガラス転移温度が150℃以下であり、重量平均分子量が5000〜300000であることが好ましい。また、前記樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。更に、前記樹脂は、ポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0019】
ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。また、ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、下記構造式(2)で表わされる芳香族ジアミン及び/又は下記構造式(3)で表される芳香族ジアミンと、を反応させて得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。
【化2】
【化3】
【0020】
また、ジアミン成分が、更に、下記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン成分全体の10〜90モル%含むことが好ましい。これにより、ポリイミド樹脂のガラス転移温度を低下させることができ、またアルカリ可溶性、溶剤可溶性及び他の配合成分との相溶性を付与することができる。
【化4】
[式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは1〜80の整数を示す。]
【0021】
また、良好な接着性を付与できる点で、ジアミン成分が、更に、下記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンをジアミン成分全体の1〜20モル%含むことが好ましい。
【化5】
[式中、Q4及びQ9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7及びQ8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【0022】
また、光透過性及び低温貼付性の点で、ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分とを反応させて得られるポリイミド樹脂であり、テトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物をテトラカルボン酸二無水物全体の40モル%以上含むことが好ましい。
【化6】
【0023】
本発明の接着フィルムは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる。本発明のフィルム状接着剤によれば、本発明の感光性接着剤組成物からなることにより、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、及び、低温貼付性のすべてを満足することができ、半導体装置の組み立てプロセスの効率化及び半導体装置の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0024】
本発明の接着シートは、基材と、これの一面上に設けられた本発明に係る感光性接着剤組成物からなる接着剤層とを備える。本発明の接着シートによれば、本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を有することにより、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、及び、低温貼付性のすべてを満足することができ、半導体装置の組み立てプロセスの効率化及び半導体装置の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0025】
本発明の接着シートは、本発明のフィルム状接着剤とダイシングシートとを有し、フィルム状接着剤とダイシングシートとが積層されていてもよい。前記の接着シートによれば、上記構造を有することにより、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、及び、低温貼付性のすべてを満足することができるダイボンディングダイシングシートが実現可能となる。これにより、半導体装置の組み立てプロセスの効率化及び半導体装置の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0026】
本発明の接着剤パターンは、本発明の上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものである。また、本発明の接着剤パターンは、本発明の上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層に直接描画露光技術を用いて直接パターンを描画露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものでもよい。上記本発明の感光性接着剤組成物がパターン形成性に優れているため、本発明の接着剤パターンは、本発明の感光性接着剤組成物から形成されることにより高精細なパターンを有することが可能であり、また、露光後の再接着性に優れる。本発明の接着剤パターンは、更に、接着後においては優れた耐熱性を得ることができる。
【0027】
本発明の接着剤層付半導体ウェハは、半導体ウェハと、該半導体ウェハの一面上に設けられた本発明の上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える。本発明の接着剤層付半導体ウェハによれば、本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を備えることにより、接着剤層のパターン形成が可能であるとともに、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性に優れることから、半導体装置の組み立てプロセスの効率化及び半導体装置の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0028】
発明に係る半導体装置は、支持部材と、該支持部材に搭載された半導体素子と、支持部材と半導体素子との間に介在する接着剤層と、を備え、接着剤層が上記本発明の感光性接着剤組成物によって形成されている。本発明の半導体装置は、半導体素子と支持部材とが、パターン形成性、パターン形成後の接着性及び接着後の耐熱性(すなわち、高温接着性)に優れる本発明の感光性接着剤組成物により接合されていることから、製造プロセスの簡略化にも十分対応可能であり、且つ優れた信頼性を具備することができる。
【0029】
本発明の半導体装置の製造方法は、本発明の上記感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する。本発明の半導体装置の製造方法によれば、本発明の感光性接着剤組成物を用いているため、優れた信頼性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、種々の機能、形態を有する半導体装置を信頼性よく製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、パターン形成性、感度、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、耐湿信頼性に優れ、フィルム状に形成した場合には低温貼付性にも優れた感光性接着剤組成物、これを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法を提供することができる。更に、パターン形成後の基板、ガラス、半導体素子等の被着体との再熱圧着性を有すると共に、熱硬化後の優れた耐熱性を有するため、半導体素子、光学素子、又は個体撮像素子等の保護の用途、又は微細な接着領域が求められる接着剤及び/又はバッファーコート用途に好適に使用でき、さらにこれらを有する装置の信頼性を向上できる樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った端面図である。
【図7】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った端面図である。
【図9】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図10】図9のX−X線に沿った端面図である。
【図11】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図13】ピール強度測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0033】
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有する。
【0034】
本発明に係る感光性接着剤組成物を構成する(A)成分としては、熱可塑性樹脂が好ましい。(A)成分としては、以下の樹脂単体もしくはこれらの樹脂側鎖にカルボキシル基及び/又は水酸基を付与した樹脂が挙げられる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、又はそれらの共重合体、それらの前駆体(ポリアミド酸)の他、ポリウレタン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエ−テルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエ−テル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
(A)成分としては、良好な現像性が得られる点で、カルボキシル基を有する樹脂が好ましく、その樹脂がアルカリ可溶性であることが好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ可溶性基が水酸基である場合、フェノール性水酸基が好ましい。
【0036】
後述する本発明のフィルム状接着剤のウェハ裏面への貼り付け温度は、半導体ウェハの反りを抑えるという観点から、20℃以上であることが好ましく、20〜150℃であることがより好ましく、25〜100℃であることが特に好ましい。上記温度での貼り付けを可能にするためには、(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、150℃以下であることが好ましい。(A)成分のTgが150℃を超えると、ウェハ裏面への貼り付け温度が150℃を超える可能性が高くなり、ウェハ裏面への貼合せ後の反りが発生し易くなる傾向にあり、Tgが−20℃未満であると、Bステージ状態でのフィルム表面のタック性が強くなり過ぎて、取り扱い性が悪くなる傾向にある。後述するポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましい。
【0037】
また、(A)成分の重量平均分子量は、5000〜300000の範囲内で制御されていることが好ましく、5000〜150000であることがより好ましく、10000〜100000であることが更に好ましく、10000〜80000であることが最も好ましい。重量平均分子量が5000〜300000の範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が良好なものとなり、また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差への良好な埋込性を確保することが可能となる。なお、上記重量平均分子量が5000未満であると、フィルム形成性が悪くなる傾向があり、300000を超えると、熱時の流動性が悪くなり、基板上の凹凸に対する埋め込み性が低下する傾向があり、また、樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。
【0038】
(A)成分のTg及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、ウェハ裏面への貼り付け温度を低く抑えることができるとともに、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制することができる。また、本発明の特徴であるダイボンディング時の流動性や現像性を有効に付与することができる。
【0039】
なお、上記のTgとは、(A)成分をフィルム化したときの主分散ピーク温度であり、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」(商品名)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近のtanδピーク温度を測定し、これを主分散温度とした。また、上記の重量平均分子量とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量である。
【0040】
また、(A)成分は、耐熱性、接着性の点で、ポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを等モルで、又は、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミン成分の合計を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、接着剤組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0041】
なお、上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミン成分の合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂中に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が低下する傾向がある。一方、ジアミン成分の合計が0.5mol未満であると、酸末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が低下する傾向がある。
【0042】
ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0043】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0044】
【化7】
[式中、aは2〜20の整数を示す。]
【0045】
上記一般式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0046】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿信頼性、365nm光に対する透明性を付与する観点から、下記一般式(6)又は(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物全体の40モル%以上含まれることが好ましい。
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミン成分としては、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンを含むことが好ましく、下記一般式(2)、(3)、(9)又は(10)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。これら下記一般式(2)、(3)、(9)又は(10)で表されるジアミンは、全ジアミン成分の1〜100モル%とすることが好ましく、3〜80モル%とすることが更に好ましく、5〜50モル%とすることが最も好ましい。
【0051】
【化10】
【0052】
【化11】
【0053】
【化12】
【0054】
【化13】
【0055】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミン成分としては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(11)で表される脂肪族ジアミン、下記一般式(5)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0056】
【化14】
[式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは1〜80の整数を示す。]
【0057】
【化15】
[式中、cは5〜20の整数を示す。]
【0058】
【化16】
[式中、Q4及びQ9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7及びQ8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【0059】
上記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、下記一般式;
【化17】
で表される脂肪族ジアミンの他、下記一般式(12)で表される脂肪族エーテルジアミンが挙げられる。
【0060】
【化18】
[式中、eは0〜80の整数を示す。]
【0061】
上記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンは、ジアミン成分全体の10〜90モル%含まれることが好ましい。
【0062】
また、上述したように、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミン成分として、上記一般式(12)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが好ましい。上記一般式(12)で表される脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−0,D−4000,ED−600,ED−900,ED−0,EDR−148、BASF(製)ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−0等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミン成分の1〜80モル%であることが好ましく、5〜60モル%であることがより好ましい。この量が1モル%未満であると、低温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、フィルムの自己支持性が損なわれる傾向にある。
【0063】
上記一般式(11)で表される脂肪族ジアミンとして具体的には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0064】
上記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(5)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0065】
上記一般式(5)で表される脂肪族エーテルジアミンは、ジアミン成分全体の1〜20モル%含まれることが好ましい。
【0066】
上述したジアミン成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
また、上記ポリイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0068】
本発明の感光性接着剤組成物において、(A)成分の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として5〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。この含有量が5質量%未満であると、パターン形成性が損なわれる傾向があり、90質量%を超えると、パターン形成性及び接着性が低下する傾向がある。
【0069】
(A)成分のアルカリへの溶解性が乏しいもしくは溶解しない場合、溶解助剤として、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂もしくは化合物を添加しても良い。
【0070】
本発明に用いられる(B)成分は、熱硬化性樹脂(但し、(A)成分を除く)である。(B)成分としては、エポキシ樹脂が好ましい。(B)成分としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、硬化性や硬化物特性の点からフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
また、(B)成分は、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0072】
本発明の感光性接着剤組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が100質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が0.1質量部未満であると、高温接着性が低くなる傾向がある。
【0073】
本発明の感光性接着剤組成物には、必要に応じて、熱硬化性樹脂の硬化剤を含有させることができる。この硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜4000の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。
【0074】
更に、本発明の感光性接着剤組成物には、必要に応じて、硬化促進剤を含有させることができる。この硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート、また加熱によって塩基を生成するウレタン系塩基発生剤等が挙げられる。感光性接着剤組成物における硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。
【0075】
また、本発明の感光性接着剤組成物に含まれる(C)放射線重合性化合物としては、アクリレート及び/又はメタクリレート化合物が好ましい。アクリレート及び/又はメタクリレート化合物としては、特に制限はしないが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(13)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【0076】
【化19】
[式中、R41及びR42は各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、f及びgは各々独立に、1以上の整数を示す。]
【0077】
以上のような化合物の他、(C)成分には、官能基を含むビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、及びカルボキシル基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体等を使用することができる。
【0078】
これらの放射線重合性化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、上記一般式(13)で示されるグリコール骨格を有する放射線重合性化合物は、アルカリ可溶性、硬化後の耐溶剤性を十分に付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、イソシアヌル酸変性ジ/トリアクリレート及びメタクリレートは硬化後の高接着性を十分に付与できる点で好ましい。
【0079】
本発明の感光性接着剤組成物において、(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して20〜200質量部であることが好ましく、30〜100質量部であることがより好ましい。この含有量が200質量部を超えると、重合により熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向にある。一方、20質量部未満であると、露光による光硬化後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる傾向にある。
【0080】
また、(C)成分は、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を1000ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0081】
(D)光開始剤は、感度向上といった点で、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上の化合物を含むことが好ましく、2000ml/g・cm以上の化合物を含むことがより好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。
【0082】
更に、感光性接着剤組成物中の全光開始剤混合物の3%重量減少温度は、200℃以上である。これを満たすには、(D1)3%重量減少温度が200℃以上の光開始剤を添加する必要がある。(D1)成分の配合量は、全光開始剤混合物の3%重量減少温度が200℃以上であることを満たせば特に限定はしないが、アウトガス低減及び高温接着性向上の点で、全光開始剤混合物の20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。光開始剤の3%重量減少温度は、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの3%重量減少温度である。
【0083】
このような光開始剤としては、特に限定はしないが、例えば、上記構造式(1)で表わされる化合物の他、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2ジメチルアミノー2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モリフォリンー4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、2,4―ジメトキシー1,2−ジフェニルエタンー1−オン、等が挙げられる。
【0084】
(D)成分は、カルバゾール基を有する化合物を含むことが好ましい。カルバゾール基を有する化合物としては、例えば、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム) 、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−ベンゾイルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ブチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、2−(N−n−ブチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(N−n−オクチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(N−2”−フェノキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0085】
(D)成分は、オキシムエステル基を有する化合物を含むことが好ましい。オキシムエステル基を有する化合物としては、例えば、2,4―ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、1−フェニルー1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、及び1−フェニルー1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。
【0086】
なお、(D)成分は、感光性接着剤組成物中の全光開始剤混合物の3%重量減少温度が200℃以上であれば、他の光開始剤を併用してもよい。他の光開始剤としては、特に限定はしないが、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0087】
感光性接着剤組成物を膜厚30μm以上の接着剤層とする場合には、上記他の光開始剤としては、感度向上、内部硬化性向上の観点から、光照射によってブリーチングするものがより好ましい。このような光開始剤としては、特に限定はしないが、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドなどのうちUV照射によって退色する化合物が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
本発明の感光性接着剤組成物において、(B)成分としてエポキシ樹脂を用いた場合、放射線の照射により前記エポキシ樹脂の重合を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。放射線照射により前記エポキシ樹脂の重合を促進する機能を発現する光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤などが挙げられる。
【0089】
本発明の感光性接着剤組成物においては、更に光塩基発生剤を用いることが好ましい。この場合、感光性接着剤組成物の被着体への高温接着性及び耐湿信頼性を更に向上させることができる。この理由としては、上記化合物から生成した塩基がエポキシ樹脂の硬化触媒として効率よく作用することにより、架橋密度をより一層高めることができるため、また生成した硬化触媒が基板などを腐食することが少ないためと考えられる。
【0090】
また、感光性接着剤組成物に光塩基発生剤を含有させることにより、架橋密度を向上させることができ、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。また、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができると考えられる。
【0091】
また、感光性接着剤組成物に含有される(A)成分のカルボキシル基及び/又は水酸基の含有割合が高くなると、硬化後の吸湿率の上昇及び吸湿後の接着力が低下する場合がある。これに対して、上記の感光性接着剤組成物によれば、放射線の照射により塩基を発生する化合物が配合されることにより、上記のカルボキシル基及び/又は水酸基とエポキシ樹脂との反応後に残存するカルボキシル基及び/又は水酸基を低減させることができ、耐湿信頼性及び接着性とパターン形成性とをより高水準で両立することが可能となる。
【0092】
また、光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、更に8以上の塩基がより好ましい。
【0093】
このような放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基またはアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体、モルホリン誘導体、1級アルキルアミン等が挙げられる。
【0094】
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314項(1999年)やChemistry of Materials 11巻、170〜176項(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0095】
また、光塩基発生剤としては、Journal of American ChemicalSociety 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体、ジメトキシベンジルウレタン系化合物、ベンゾイン系化合物、オルトニトロベンジルウレタン化合物を用いることができる。
【0096】
また、活性光線の照射により1級のアミノ基を発生するオキシム誘導体、光ラジカル発生剤として市販されている2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ スペシャリティ ケミカルズ社製、イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ スペシャリティ ケミカルズ社製、イルガキュア369)、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール(ADEKA社製、オプトマーN―1414)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0097】
光塩基発生剤は、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いても良い。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性の観点から重量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0098】
上記の光塩基発生剤は、室温で放射線を照射しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性は非常に優れているという特徴を持つ。
【0099】
更に、これらの光塩基発生剤を使用する場合、波長365nmの光に対する分子吸光係数が100ml/g・cm以上、且つ、3%重量減少温度が120℃以上の化合物であることがより好ましく、波長365nmの光に対する分子吸光係数が300ml/g・cm以上、且つ、3%重量減少温度が150℃以上の化合物であることが更に好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。光開始剤の3%重量減少温度は、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの3%重量減少温度である。
【0100】
これらの光塩基発生剤を使用する場合の光開始剤の含有量は、特に制限はないが、(B)成分100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましい。
【0101】
本発明の感光性接着剤組成物は、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上併用して使用することができる。
【0102】
更に、本発明の感光性接着剤組成物においては、低吸湿性、低透湿性を付与するために、フィラーを使用することもできる。上記フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0103】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、感光性接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー、又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好でかつ、フィルム形成時のチキソ性、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラー及び/又はアルミナフィラーがより好ましい。
【0104】
上記フィラーは、平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、かつ最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が得られ難い傾向がある。下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.001μmである。
【0105】
上記フィラーは、平均粒子径10μm以下、最大粒子径は30μm以下の両方を満たすことが好ましい。最大粒子径が30μm以下であるが平均粒子径が10μmを超えるフィラーを使用すると、高い接着強度が得られ難くなる傾向がある。また、平均粒子径は10μm以下であるが最大粒子径が30μmを超えるフィラーを使用すると、粒径分布が広くなり接着強度にばらつきが出やすくなる傾向があるとともに、感光性接着剤組成物を薄膜フィルム状に加工して使用する際、表面が粗くなり接着力が低下する傾向がある。
【0106】
上記フィラーの平均粒子径及び最大粒子径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、個程度のフィラーの粒径を測定する方法等が挙げられる。SEMを用いた測定方法としては、例えば、接着剤層を用いて半導体素子と半導体搭載用支持部材とを接着した後、加熱硬化(好ましくは150〜180℃で1〜10時間)させたサンプルを作製し、このサンプルの中心部分を切断して、その断面をSEMで観察する方法等が挙げられる。このとき、粒子径30μm以下のフィラーの存在確率が全フィラーの80%以上であることが好ましい。
【0107】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記フィラーの含有量は、付与する特性、又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーとの合計に対して1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。フィラーを増量させることにより、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上できる。フィラーを必要以上に増量させると、熱圧着性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0108】
本発明の感光性接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましい。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、使用する(A)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0109】
本発明の感光性接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、スズ系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。具体例としては、特に限定はしないが東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤、商品名、IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0110】
本発明の感光性接着剤組成物には、保存安定性やエレクトロマイグレーション防止、金属導体回路の腐食防止のために、酸化防止剤を添加することもできる。このような酸化防止剤としては、特に制限はなく、例えばベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ヒンダートアミン系、ベンゾトリアゾール系、フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。上記酸化防止剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0111】
図1は、本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すフィルム状接着剤(接着フィルム)1は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形したものである。図2は、本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す接着シート100は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤1からなる接着剤層とから構成される。図3は、本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示す接着シート110は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤1からなる接着剤層とカバーフィルム2とから構成される。
【0112】
フィルム状接着剤1は、(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂、(B)熱硬化性樹脂、(C)放射線重合性化合物、及び(D)光開始剤、並びに、必要に応じて添加される他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート100、110の状態で保存及び使用することもできる。
【0113】
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。なお、乾燥中に(B)熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。乾燥前の上記ワニス層の好ましい厚みは1〜100μmである。この厚みが1μm未満であると、接着固定機能が損なわれる傾向にあり、100μmを超えると、後述する残存揮発分が多くなる傾向にある。
【0114】
得られたワニス層の好ましい残存揮発分は10質量%以下である。この残存揮発分が10質量%を超えると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因で、接着剤層内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が損なわれる傾向にあり、また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料、あるいは部材を汚染する可能性も高くなる傾向がある。なお、上記の残存揮発成分の測定条件は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断したフィルム状接着剤について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、〔(M2−M1)/M1〕×100=残存揮発分(%)とした時の値である。
【0115】
また、上記の熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
【0116】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0117】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0118】
また、本発明のフィルム状接着剤1とダイシングシートとを積層し、接着シートとすることもできる。上記ダイシングシートは、基材上に粘着剤層を設けたシートであり、上記の粘着剤層は、感圧型又は放射線硬化型のどちらでも良い。また、上記の基材はエキスパンド可能な基材が好ましい。このような接着シートとすることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能を併せ持つダイシング・ダイボンド一体型接着シートが得られる。
【0119】
上記のダイシング・ダイボンド一体型接着シートとして具体的には、図4に示すように、基材フィルム7、粘着剤層6及び本発明のフィルム状接着剤1がこの順に形成されてなる接着シート120が挙げられる。
【0120】
図5は、本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿った端面図である。図5、6に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8と、これの一方面上に設けられた上記感光性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤(接着剤層)1と、を備える。
【0121】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8上に、フィルム状接着剤1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。フィルム状接着剤1は、上記感光性接着剤組成物からなるフィルムであるため、例えば、室温(25℃)〜150℃程度の低温で半導体ウェハ8に貼付けることが可能である。
【0122】
図7、図9は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のVIII−VIII線に沿った端面図であり、図10は図9のX―X線に沿った端面図である。図7、8、9、10に示す接着剤パターン1a及び1bは、被着体としての半導体ウェハ8上において、略正方形の辺に沿ったパターン又は正方形のパターンを有するように形成されている。
【0123】
接着剤パターン1a及び1bは、感光性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤1を被着体としての半導体ウェハ8上に形成して接着剤層付半導体ウェハ20を得、フィルム状接着剤1をフォトマスクを介して露光し、露光後のフィルム状接着剤1をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される。また、これにより、接着剤パターン1a,1bが形成された接着剤層付半導体ウェハ20a,20bが得られる。
【0124】
本発明のフィルム状接着剤の用途として、フィルム状接着剤を備える半導体装置について図面を用いて具体的に説明する。なお、近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明のフィルム状接着剤の用途は、以下に説明する構造の半導体装置に限定されるものではない。
【0125】
図11は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図11に示す半導体装置200において、半導体素子12は本発明のフィルム状接着剤1を介して半導体素子搭載用支持部材13に接着され、半導体素子12の接続端子(図示せず)はワイヤ14を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。
【0126】
また、図12は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。図12に示す半導体装置210において、一段目の半導体素子12aは本発明のフィルム状接着剤1を介して、端子16が形成された半導体素子搭載用支持部材13に接着され、一段目の半導体素子12aの上に更に本発明のフィルム状接着剤1を介して二段目の半導体素子12bが接着されている。一段目の半導体素子12a及び二段目の半導体素子12bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ14を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。このように、本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0127】
図11及び図12に示す半導体装置(半導体パッケージ)200,210は、例えば、図9に示す接着剤層付半導体ウェハ20bを破線Dに沿ってダイシングし、ダイシング後のフィルム状接着剤付き半導体素子を半導体素子搭載用支持部材13に加熱圧着して両者を接着させ、その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経ることにより得ることができる。上記加熱圧着における加熱温度は、通常、20〜250℃であり、荷重は、通常、0.01〜20kgfであり、加熱時間は、通常、0.1〜300秒間である。
【実施例】
【0128】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
(ポリイミドPI−1の合成)
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,5−ジアミノ安息香酸(分子量152.2、以下「DABA」と略す)1.89g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「D−400」(商品名)、分子量452.4)15.21g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)、分子量248.5)0.39g、及び、N−メチル−2−ピロリジノン(以下「NMP」と略す)116gを仕込んだ。
【0130】
次いで、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量326.3、以下「ODPA」と略す)16.88gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温(25℃)で5時間攪拌した。
【0131】
次に、上記フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン70gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥し、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−1」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=33000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは55℃であった。
【0132】
(ポリイミドPI―2の合成)
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(分子量286.3、以下「MBAA」と略す)2.16g、脂肪族エーテルジアミン(「D−400」)15.13g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(「LP−7100」)1.63g、及び、NMP115gを仕込んだ。
【0133】
次いで、ODPA16.51gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−2」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=30000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは31℃であった。
【0134】
(ポリイミドPI−3の合成)
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(分子量410.5、以下「BAPP」と略す)20.5g、及び、NMP101gを仕込んだ。
【0135】
次いで、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)(分子量410.3、以下「EBTA」と略す。)20.5gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン67gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−3」という。)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=98000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは180℃であった。
【0136】
上記のポリイミドPI−1〜3をそれぞれ用い、下記表1,2に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を得た。
【0137】
なお、表1,2中の各成分の記号は下記のものを意味する。
BPE−100:新中村化学工業社製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート。
M―313:東亜合成社製、イソシアヌル酸EO変性トリ/ジアクリレート。
VG−3101:プリンテック、3官能エポキシ樹脂。
BEO−60E:新日本理化社製、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)。
TrisP−PA:本州化学社製、トリスフェノール化合物(α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)。
R972:日本アエロジル社製、疎水性フュームドシリカ(平均粒径:約16nm)。
I−OXE01:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、オキシムエステル基含有化合物(3%重量減少温度:210℃、365nmでの分子吸光係数:7000ml/g・cm)。
I−OXE02:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム) 、カルバゾール基及びオキシムエステル基含有化合物(3%重量減少温度:365℃、365nmでの分子吸光係数:7700ml/g・cm)。
N−1919:ADEKA社製、構造未開示、オキシムエステル基含有化合物(3%重量減少温度:270℃、365nmでの分子吸光係数:4500ml/g・cm)。
N−1414:ADEKA社製、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール、カルバゾール基含有化合物、(3%重量減少温度:370℃、365nmでの分子吸光係数:2000ml/g・cm)
D−1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(3%重量減少温度:90℃、365nmでの分子吸光係数:50ml/g・cm)。
I―651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(3%重量減少温度:140℃、365nmでの分子吸光係数:350ml/g・cm)。
I−819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(3%重量減少温度:190℃、365nmでの分子吸光係数:2300ml/g・cm)。
D―TPO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(3%重量減少温度:230℃、365nmでの分子吸光係数:400ml/g・cm)。
I―379EG:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(3%重量減少温度:230℃、365nmでの分子吸光係数:7000ml/g・cm)。
NMP:関東化学社製、N−メチル−2−ピロリジノン。
【0138】
なお、3%重量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、「TG/DTA 6300」(商品名))を用いて、窒素フロー:400ml/minの条件下で測定した値である。
【0139】
得られた接着剤層形成用ワニスを、乾燥後の膜厚が40μmとなるように、それぞれ基材(剥離剤処理PETフィルム)上に塗布し、オーブン中にて80℃で20分間、続いて、120℃で20分間加熱し、基材上に接着剤層が形成されてなる実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例1〜5の接着シートを得た。
【0140】
<低温貼付性の評価>
支持台上に載せたシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例1〜5で得られた接着シートを、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロール(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。次いで、基材(PETフィルム)を剥がし、接着剤層上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、「ユーピレックス」(商品名))を上記と同様の条件でロールにより加圧して積層した。このようにして準備したサンプルについて、レオメータ(東洋製機製作所社製、「ストログラフE−S」(商品名))を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着剤層−ユーピレックス間のピール強度を測定した。その測定結果に基づいて、ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをBとして評価した。その結果を表1,2に示す。
【0141】
<パターン形成性の評価>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例2〜5の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0142】
次いで、基材(PETフィルム)上にネガ型パターン用マスク(日立化成社製、「No.G−2」(商品名))を載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0143】
その後、基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液とし、温度28℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度23℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で水洗した。現像後、ライン幅/スペース幅=400μm/400μmのパターンが形成されているかを目視にて確認し、パターン形成されていた場合をA、パターン形成されていなかった場合をBとして評価した。その結果を表1,2に示す。
【0144】
<感度の評価>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例2〜5の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0145】
次いで、基材(PETフィルム)上に、ネガ型パターン用フォトマスクとして段階的に光透過量が減少していく通称ステップタブレットと呼ばれるフォトマスク(日立化成工業社製、「フォテック 41ステップデンシティタブレット」(商品名)を載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0146】
その後、基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液とし、温度28℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度23℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で水洗した。現像後、そして、シリコンウェハ上に形成された硬化膜のステップタブレットの段数を測定することにより、接着シートの光感度を評価した。その測定結果に基づいて残存段数を評価した。その結果を表1,2に示す。
【0147】
<260℃ピール強度の測定(高温時の接着性の評価)>
シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)を、5mm×5mmの大きさで深さ180μmまでハーフカットした。その後、接着シートを、ハーフカット処理したシリコンウェハ上に、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例2〜5の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。そして、得られたサンプルを高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。その後、基材(PETフィルム)を除去し、サンプルを5mm×5mmに個片化した。
【0148】
個片化した接着剤層付きシリコンウェハを、ガラス基板(10mm×10mm×0.55mm)上に、接着剤層をガラス基板側にして載せ、2kgfで加圧しながら、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例2〜5の接着シートは温度150℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で10秒間圧着した。こうして得られた試験片を、オーブン中で120℃、3時間の条件で加熱硬化した。比較例1については180℃で1時間硬化した。その後、試験片を260℃の熱盤上で10秒間加熱し、図13に示すピール強度測定装置を用いて、測定速度:0.5mm/secの条件で260℃でのシリコンウェハの引き剥がし強度を測定し、このときの値を260℃ピール強度とした。それらの結果を表1、2に示す。
【0149】
なお、図13に示すピール強度測定装置300においては、プッシュプルゲージ31に取り付けられたロッドの先端に、取っ手32が支点33の周りで角度可変に設けられている。そして、260℃ピール強度の測定は、突起部を有するシリコンウェハ34とガラス基板35とがフィルム状接着剤1を介して接着された試験片を260℃の熱盤36上に載置し、シリコンウェハ34の突起部に取っ手32を引っ掛けた状態で、取っ手32を0.5mm/秒で移動させたときの剥離応力をプッシュプルゲージ31で測定することにより行った。
【0150】
<接着剤層の3%重量減少温度の測定>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5,7〜8、参考例6、比較例2〜5の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0151】
そして、得られたサンプルを高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名「EXM−1172−B−∞」)で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。その後、基材(PETフィルム)を除去し、オーブン中で120℃、3時間の条件で加熱硬化した後、シリコンウェハ上の接着剤層を削り取り、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、窒素フロー(400ml/分)下で3%重量減少温度を測定した。その結果を表1,2に示す。
【0152】
【表1】
【表2】
*塗工時の加熱乾燥により、光開始剤が分解し、アクリレートが重合したため低温貼付性、パターン形成性はBとした。
【符号の説明】
【0153】
1…フィルム状接着剤(接着剤層)、1a,1b…接着剤パターン、2…カバーフィルム、3…基材フィルム(基材)、6…粘着剤層、7…基材フィルム、8…半導体ウェハ、12,12a,12b…半導体素子、13…半導体素子搭載用支持部材、14…ワイヤ、15…封止材、16…端子、20,20a,20b…接着剤層付半導体ウェハ、100,110,120…接着シート、210…半導体装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージなどの半導体装置の製造において、半導体素子と半導体素子搭載用支持基材との接合には接着剤が従来より使用されている。この接着剤には、半導体装置の信頼性の点から、耐はんだリフロー性を十分確保するための耐熱性や耐湿信頼性が要求される。また、半導体ウエハなどにフィルム状の接着剤を貼付ける工程を経て接合を行う方法があり、この場合には、被着体への熱的ダメージを少なくするために低温貼付性が要求される。近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されるようになり、半導体装置の機能、形態及び組み立てプロセスの簡略化の手法によっては、上記の特性に加えてパターン形成能を備えた接着剤が求められている。接着剤パターンを形成できるものとして、感光性の機能を備えた感光性接着剤が知られている。感光性とは光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。この感光性を有する感光性接着剤を用いると、フォトマスクを介して露光し、現像液によってパターン形成させることにより、高精細な接着剤パターンを形成することが可能となる。
【0003】
このようなパターン形成機能を持つ感光性接着剤を構成する材料としては、これまで、耐熱性を考慮して、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)あるいはポリイミド樹脂をベースとした材料が使用されていた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の材料は耐熱性の点で優れているが、前者のポリアミド酸を用いた場合は熱閉環イミド化時に、後者のポリイミド樹脂を用いた場合は加工時に、それぞれ300℃以上の高温を要するため、周辺材料への熱的ダメージが大きく、また、熱応力が発生しやすいなどの問題があった。
【0006】
なお、ポリイミド樹脂などを含む接着剤に熱硬化性樹脂を配合して架橋することにより、低温加工性及びはんだ耐熱性を改良することが試みられている。しかし、このような方法では、アルカリ現像液によるパターン形成性及び被着体への低温貼付性の両方について同時に高いレベルを達成することは困難であった。また、上記従来の材料は、パターン形成後の再熱圧着性及び硬化後に十分に高い接着力を達成することが困難であった。また、パターニング性についても、感度が低いために露光量を多くする必要があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性に優れ、フィルム状に形成した場合には低温貼付性にも優れた感光性接着剤組成物、これを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有し、組成物中の全光開始剤混合物の3%重量減少温度が200℃以上である、感光性接着剤組成物を提供する。
【0009】
ここで、3%重量減少温度とは、熱重量分析による初期状態からの重量減少率が3%となる温度を意味しており、光開始剤を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの3%重量減少温度である。
【0010】
本発明の感光性接着剤組成物によれば、上記構成を有することにより、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、及び、フィルム状に形成した場合には低温貼付性のすべてを満足することができる。
【0011】
なお、本発明の感光性接着剤組成物により上記の効果が奏される理由としては、保存安定性がよく、接着後の熱処理によるアウトガスが少ないため、並びに、フィルム状に形成した場合には、塗工乾燥温度によって反応が進行しないためであると本発明者らは考えている。
【0012】
また、本発明によれば、上記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の組み合わせにより、上記の効果を奏しつつ室温での貯蔵安定性にも優れた感光性接着剤組成物を実現することができる。以下、室温とは、特に断りがない限り25℃である。
【0013】
本発明の感光性接着剤組成物においては、パターン形成性の感度向上等の観点から、(D)光開始剤が、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上である化合物を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の感光性接着剤組成物においては、耐熱性向上等の観点から、(D)光開始剤が、カルバゾール基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の感光性接着剤組成物においては、耐熱性向上等の観点から、(D)光開始剤が、オキシムエステル基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の感光性接着剤組成物において、放射線照射に対して少量で効率よく反応し、また光分解した後のフラグメントが昇華、分解しにくいため、(D)光開始剤が、下記構造式(1)で表わされる化合物を含むことが特に好ましい。
【化1】
【0017】
また、保存安定性、高温接着性及び耐熱性の点から、(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0018】
(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂のガラス転移温度が150℃以下であり、重量平均分子量が5000〜300000であることが好ましい。また、前記樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。更に、前記樹脂は、ポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0019】
ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。また、ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、下記構造式(2)で表わされる芳香族ジアミン及び/又は下記構造式(3)で表される芳香族ジアミンと、を反応させて得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。
【化2】
【化3】
【0020】
また、ジアミン成分が、更に、下記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン成分全体の10〜90モル%含むことが好ましい。これにより、ポリイミド樹脂のガラス転移温度を低下させることができ、またアルカリ可溶性、溶剤可溶性及び他の配合成分との相溶性を付与することができる。
【化4】
[式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは1〜80の整数を示す。]
【0021】
また、良好な接着性を付与できる点で、ジアミン成分が、更に、下記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンをジアミン成分全体の1〜20モル%含むことが好ましい。
【化5】
[式中、Q4及びQ9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7及びQ8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【0022】
また、光透過性及び低温貼付性の点で、ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分とを反応させて得られるポリイミド樹脂であり、テトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物をテトラカルボン酸二無水物全体の40モル%以上含むことが好ましい。
【化6】
【0023】
本発明の接着フィルムは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる。本発明のフィルム状接着剤によれば、本発明の感光性接着剤組成物からなることにより、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、及び、低温貼付性のすべてを満足することができ、半導体装置の組み立てプロセスの効率化及び半導体装置の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0024】
本発明の接着シートは、基材と、これの一面上に設けられた本発明に係る感光性接着剤組成物からなる接着剤層とを備える。本発明の接着シートによれば、本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を有することにより、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、及び、低温貼付性のすべてを満足することができ、半導体装置の組み立てプロセスの効率化及び半導体装置の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0025】
本発明の接着シートは、本発明のフィルム状接着剤とダイシングシートとを有し、フィルム状接着剤とダイシングシートとが積層されていてもよい。前記の接着シートによれば、上記構造を有することにより、パターン形成性、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、及び、低温貼付性のすべてを満足することができるダイボンディングダイシングシートが実現可能となる。これにより、半導体装置の組み立てプロセスの効率化及び半導体装置の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0026】
本発明の接着剤パターンは、本発明の上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものである。また、本発明の接着剤パターンは、本発明の上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層に直接描画露光技術を用いて直接パターンを描画露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものでもよい。上記本発明の感光性接着剤組成物がパターン形成性に優れているため、本発明の接着剤パターンは、本発明の感光性接着剤組成物から形成されることにより高精細なパターンを有することが可能であり、また、露光後の再接着性に優れる。本発明の接着剤パターンは、更に、接着後においては優れた耐熱性を得ることができる。
【0027】
本発明の接着剤層付半導体ウェハは、半導体ウェハと、該半導体ウェハの一面上に設けられた本発明の上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える。本発明の接着剤層付半導体ウェハによれば、本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を備えることにより、接着剤層のパターン形成が可能であるとともに、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性に優れることから、半導体装置の組み立てプロセスの効率化及び半導体装置の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0028】
発明に係る半導体装置は、支持部材と、該支持部材に搭載された半導体素子と、支持部材と半導体素子との間に介在する接着剤層と、を備え、接着剤層が上記本発明の感光性接着剤組成物によって形成されている。本発明の半導体装置は、半導体素子と支持部材とが、パターン形成性、パターン形成後の接着性及び接着後の耐熱性(すなわち、高温接着性)に優れる本発明の感光性接着剤組成物により接合されていることから、製造プロセスの簡略化にも十分対応可能であり、且つ優れた信頼性を具備することができる。
【0029】
本発明の半導体装置の製造方法は、本発明の上記感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する。本発明の半導体装置の製造方法によれば、本発明の感光性接着剤組成物を用いているため、優れた信頼性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、種々の機能、形態を有する半導体装置を信頼性よく製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、パターン形成性、感度、パターン形成後の接着性、接着後の耐熱性、耐湿信頼性に優れ、フィルム状に形成した場合には低温貼付性にも優れた感光性接着剤組成物、これを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法を提供することができる。更に、パターン形成後の基板、ガラス、半導体素子等の被着体との再熱圧着性を有すると共に、熱硬化後の優れた耐熱性を有するため、半導体素子、光学素子、又は個体撮像素子等の保護の用途、又は微細な接着領域が求められる接着剤及び/又はバッファーコート用途に好適に使用でき、さらにこれらを有する装置の信頼性を向上できる樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った端面図である。
【図7】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った端面図である。
【図9】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図10】図9のX−X線に沿った端面図である。
【図11】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図13】ピール強度測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0033】
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有する。
【0034】
本発明に係る感光性接着剤組成物を構成する(A)成分としては、熱可塑性樹脂が好ましい。(A)成分としては、以下の樹脂単体もしくはこれらの樹脂側鎖にカルボキシル基及び/又は水酸基を付与した樹脂が挙げられる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、又はそれらの共重合体、それらの前駆体(ポリアミド酸)の他、ポリウレタン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエ−テルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエ−テル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
(A)成分としては、良好な現像性が得られる点で、カルボキシル基を有する樹脂が好ましく、その樹脂がアルカリ可溶性であることが好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ可溶性基が水酸基である場合、フェノール性水酸基が好ましい。
【0036】
後述する本発明のフィルム状接着剤のウェハ裏面への貼り付け温度は、半導体ウェハの反りを抑えるという観点から、20℃以上であることが好ましく、20〜150℃であることがより好ましく、25〜100℃であることが特に好ましい。上記温度での貼り付けを可能にするためには、(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、150℃以下であることが好ましい。(A)成分のTgが150℃を超えると、ウェハ裏面への貼り付け温度が150℃を超える可能性が高くなり、ウェハ裏面への貼合せ後の反りが発生し易くなる傾向にあり、Tgが−20℃未満であると、Bステージ状態でのフィルム表面のタック性が強くなり過ぎて、取り扱い性が悪くなる傾向にある。後述するポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましい。
【0037】
また、(A)成分の重量平均分子量は、5000〜300000の範囲内で制御されていることが好ましく、5000〜150000であることがより好ましく、10000〜100000であることが更に好ましく、10000〜80000であることが最も好ましい。重量平均分子量が5000〜300000の範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が良好なものとなり、また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差への良好な埋込性を確保することが可能となる。なお、上記重量平均分子量が5000未満であると、フィルム形成性が悪くなる傾向があり、300000を超えると、熱時の流動性が悪くなり、基板上の凹凸に対する埋め込み性が低下する傾向があり、また、樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。
【0038】
(A)成分のTg及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、ウェハ裏面への貼り付け温度を低く抑えることができるとともに、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制することができる。また、本発明の特徴であるダイボンディング時の流動性や現像性を有効に付与することができる。
【0039】
なお、上記のTgとは、(A)成分をフィルム化したときの主分散ピーク温度であり、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」(商品名)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近のtanδピーク温度を測定し、これを主分散温度とした。また、上記の重量平均分子量とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量である。
【0040】
また、(A)成分は、耐熱性、接着性の点で、ポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを等モルで、又は、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミン成分の合計を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、接着剤組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0041】
なお、上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミン成分の合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂中に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が低下する傾向がある。一方、ジアミン成分の合計が0.5mol未満であると、酸末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が低下する傾向がある。
【0042】
ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0043】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0044】
【化7】
[式中、aは2〜20の整数を示す。]
【0045】
上記一般式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0046】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿信頼性、365nm光に対する透明性を付与する観点から、下記一般式(6)又は(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物全体の40モル%以上含まれることが好ましい。
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミン成分としては、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンを含むことが好ましく、下記一般式(2)、(3)、(9)又は(10)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。これら下記一般式(2)、(3)、(9)又は(10)で表されるジアミンは、全ジアミン成分の1〜100モル%とすることが好ましく、3〜80モル%とすることが更に好ましく、5〜50モル%とすることが最も好ましい。
【0051】
【化10】
【0052】
【化11】
【0053】
【化12】
【0054】
【化13】
【0055】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミン成分としては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(11)で表される脂肪族ジアミン、下記一般式(5)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0056】
【化14】
[式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは1〜80の整数を示す。]
【0057】
【化15】
[式中、cは5〜20の整数を示す。]
【0058】
【化16】
[式中、Q4及びQ9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7及びQ8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【0059】
上記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、下記一般式;
【化17】
で表される脂肪族ジアミンの他、下記一般式(12)で表される脂肪族エーテルジアミンが挙げられる。
【0060】
【化18】
[式中、eは0〜80の整数を示す。]
【0061】
上記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンは、ジアミン成分全体の10〜90モル%含まれることが好ましい。
【0062】
また、上述したように、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミン成分として、上記一般式(12)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが好ましい。上記一般式(12)で表される脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−0,D−4000,ED−600,ED−900,ED−0,EDR−148、BASF(製)ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−0等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミン成分の1〜80モル%であることが好ましく、5〜60モル%であることがより好ましい。この量が1モル%未満であると、低温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、フィルムの自己支持性が損なわれる傾向にある。
【0063】
上記一般式(11)で表される脂肪族ジアミンとして具体的には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0064】
上記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(5)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0065】
上記一般式(5)で表される脂肪族エーテルジアミンは、ジアミン成分全体の1〜20モル%含まれることが好ましい。
【0066】
上述したジアミン成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
また、上記ポリイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0068】
本発明の感光性接着剤組成物において、(A)成分の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として5〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。この含有量が5質量%未満であると、パターン形成性が損なわれる傾向があり、90質量%を超えると、パターン形成性及び接着性が低下する傾向がある。
【0069】
(A)成分のアルカリへの溶解性が乏しいもしくは溶解しない場合、溶解助剤として、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂もしくは化合物を添加しても良い。
【0070】
本発明に用いられる(B)成分は、熱硬化性樹脂(但し、(A)成分を除く)である。(B)成分としては、エポキシ樹脂が好ましい。(B)成分としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、硬化性や硬化物特性の点からフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
また、(B)成分は、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0072】
本発明の感光性接着剤組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が100質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が0.1質量部未満であると、高温接着性が低くなる傾向がある。
【0073】
本発明の感光性接着剤組成物には、必要に応じて、熱硬化性樹脂の硬化剤を含有させることができる。この硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜4000の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。
【0074】
更に、本発明の感光性接着剤組成物には、必要に応じて、硬化促進剤を含有させることができる。この硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート、また加熱によって塩基を生成するウレタン系塩基発生剤等が挙げられる。感光性接着剤組成物における硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。
【0075】
また、本発明の感光性接着剤組成物に含まれる(C)放射線重合性化合物としては、アクリレート及び/又はメタクリレート化合物が好ましい。アクリレート及び/又はメタクリレート化合物としては、特に制限はしないが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(13)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【0076】
【化19】
[式中、R41及びR42は各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、f及びgは各々独立に、1以上の整数を示す。]
【0077】
以上のような化合物の他、(C)成分には、官能基を含むビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、及びカルボキシル基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体等を使用することができる。
【0078】
これらの放射線重合性化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、上記一般式(13)で示されるグリコール骨格を有する放射線重合性化合物は、アルカリ可溶性、硬化後の耐溶剤性を十分に付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、イソシアヌル酸変性ジ/トリアクリレート及びメタクリレートは硬化後の高接着性を十分に付与できる点で好ましい。
【0079】
本発明の感光性接着剤組成物において、(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して20〜200質量部であることが好ましく、30〜100質量部であることがより好ましい。この含有量が200質量部を超えると、重合により熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向にある。一方、20質量部未満であると、露光による光硬化後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる傾向にある。
【0080】
また、(C)成分は、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を1000ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0081】
(D)光開始剤は、感度向上といった点で、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上の化合物を含むことが好ましく、2000ml/g・cm以上の化合物を含むことがより好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。
【0082】
更に、感光性接着剤組成物中の全光開始剤混合物の3%重量減少温度は、200℃以上である。これを満たすには、(D1)3%重量減少温度が200℃以上の光開始剤を添加する必要がある。(D1)成分の配合量は、全光開始剤混合物の3%重量減少温度が200℃以上であることを満たせば特に限定はしないが、アウトガス低減及び高温接着性向上の点で、全光開始剤混合物の20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。光開始剤の3%重量減少温度は、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの3%重量減少温度である。
【0083】
このような光開始剤としては、特に限定はしないが、例えば、上記構造式(1)で表わされる化合物の他、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2ジメチルアミノー2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モリフォリンー4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、2,4―ジメトキシー1,2−ジフェニルエタンー1−オン、等が挙げられる。
【0084】
(D)成分は、カルバゾール基を有する化合物を含むことが好ましい。カルバゾール基を有する化合物としては、例えば、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム) 、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−ベンゾイルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ブチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、2−(N−n−ブチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(N−n−オクチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(N−2”−フェノキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0085】
(D)成分は、オキシムエステル基を有する化合物を含むことが好ましい。オキシムエステル基を有する化合物としては、例えば、2,4―ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、1−フェニルー1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、及び1−フェニルー1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。
【0086】
なお、(D)成分は、感光性接着剤組成物中の全光開始剤混合物の3%重量減少温度が200℃以上であれば、他の光開始剤を併用してもよい。他の光開始剤としては、特に限定はしないが、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0087】
感光性接着剤組成物を膜厚30μm以上の接着剤層とする場合には、上記他の光開始剤としては、感度向上、内部硬化性向上の観点から、光照射によってブリーチングするものがより好ましい。このような光開始剤としては、特に限定はしないが、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドなどのうちUV照射によって退色する化合物が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
本発明の感光性接着剤組成物において、(B)成分としてエポキシ樹脂を用いた場合、放射線の照射により前記エポキシ樹脂の重合を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。放射線照射により前記エポキシ樹脂の重合を促進する機能を発現する光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤などが挙げられる。
【0089】
本発明の感光性接着剤組成物においては、更に光塩基発生剤を用いることが好ましい。この場合、感光性接着剤組成物の被着体への高温接着性及び耐湿信頼性を更に向上させることができる。この理由としては、上記化合物から生成した塩基がエポキシ樹脂の硬化触媒として効率よく作用することにより、架橋密度をより一層高めることができるため、また生成した硬化触媒が基板などを腐食することが少ないためと考えられる。
【0090】
また、感光性接着剤組成物に光塩基発生剤を含有させることにより、架橋密度を向上させることができ、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。また、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができると考えられる。
【0091】
また、感光性接着剤組成物に含有される(A)成分のカルボキシル基及び/又は水酸基の含有割合が高くなると、硬化後の吸湿率の上昇及び吸湿後の接着力が低下する場合がある。これに対して、上記の感光性接着剤組成物によれば、放射線の照射により塩基を発生する化合物が配合されることにより、上記のカルボキシル基及び/又は水酸基とエポキシ樹脂との反応後に残存するカルボキシル基及び/又は水酸基を低減させることができ、耐湿信頼性及び接着性とパターン形成性とをより高水準で両立することが可能となる。
【0092】
また、光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、更に8以上の塩基がより好ましい。
【0093】
このような放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基またはアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体、モルホリン誘導体、1級アルキルアミン等が挙げられる。
【0094】
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314項(1999年)やChemistry of Materials 11巻、170〜176項(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0095】
また、光塩基発生剤としては、Journal of American ChemicalSociety 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体、ジメトキシベンジルウレタン系化合物、ベンゾイン系化合物、オルトニトロベンジルウレタン化合物を用いることができる。
【0096】
また、活性光線の照射により1級のアミノ基を発生するオキシム誘導体、光ラジカル発生剤として市販されている2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ スペシャリティ ケミカルズ社製、イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ スペシャリティ ケミカルズ社製、イルガキュア369)、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール(ADEKA社製、オプトマーN―1414)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0097】
光塩基発生剤は、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いても良い。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性の観点から重量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0098】
上記の光塩基発生剤は、室温で放射線を照射しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性は非常に優れているという特徴を持つ。
【0099】
更に、これらの光塩基発生剤を使用する場合、波長365nmの光に対する分子吸光係数が100ml/g・cm以上、且つ、3%重量減少温度が120℃以上の化合物であることがより好ましく、波長365nmの光に対する分子吸光係数が300ml/g・cm以上、且つ、3%重量減少温度が150℃以上の化合物であることが更に好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。光開始剤の3%重量減少温度は、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの3%重量減少温度である。
【0100】
これらの光塩基発生剤を使用する場合の光開始剤の含有量は、特に制限はないが、(B)成分100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましい。
【0101】
本発明の感光性接着剤組成物は、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上併用して使用することができる。
【0102】
更に、本発明の感光性接着剤組成物においては、低吸湿性、低透湿性を付与するために、フィラーを使用することもできる。上記フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0103】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、感光性接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー、又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好でかつ、フィルム形成時のチキソ性、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラー及び/又はアルミナフィラーがより好ましい。
【0104】
上記フィラーは、平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、かつ最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が得られ難い傾向がある。下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.001μmである。
【0105】
上記フィラーは、平均粒子径10μm以下、最大粒子径は30μm以下の両方を満たすことが好ましい。最大粒子径が30μm以下であるが平均粒子径が10μmを超えるフィラーを使用すると、高い接着強度が得られ難くなる傾向がある。また、平均粒子径は10μm以下であるが最大粒子径が30μmを超えるフィラーを使用すると、粒径分布が広くなり接着強度にばらつきが出やすくなる傾向があるとともに、感光性接着剤組成物を薄膜フィルム状に加工して使用する際、表面が粗くなり接着力が低下する傾向がある。
【0106】
上記フィラーの平均粒子径及び最大粒子径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、個程度のフィラーの粒径を測定する方法等が挙げられる。SEMを用いた測定方法としては、例えば、接着剤層を用いて半導体素子と半導体搭載用支持部材とを接着した後、加熱硬化(好ましくは150〜180℃で1〜10時間)させたサンプルを作製し、このサンプルの中心部分を切断して、その断面をSEMで観察する方法等が挙げられる。このとき、粒子径30μm以下のフィラーの存在確率が全フィラーの80%以上であることが好ましい。
【0107】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記フィラーの含有量は、付与する特性、又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーとの合計に対して1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。フィラーを増量させることにより、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上できる。フィラーを必要以上に増量させると、熱圧着性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0108】
本発明の感光性接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましい。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、使用する(A)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0109】
本発明の感光性接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、スズ系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。具体例としては、特に限定はしないが東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤、商品名、IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0110】
本発明の感光性接着剤組成物には、保存安定性やエレクトロマイグレーション防止、金属導体回路の腐食防止のために、酸化防止剤を添加することもできる。このような酸化防止剤としては、特に制限はなく、例えばベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ヒンダートアミン系、ベンゾトリアゾール系、フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。上記酸化防止剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0111】
図1は、本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すフィルム状接着剤(接着フィルム)1は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形したものである。図2は、本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す接着シート100は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤1からなる接着剤層とから構成される。図3は、本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示す接着シート110は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤1からなる接着剤層とカバーフィルム2とから構成される。
【0112】
フィルム状接着剤1は、(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂、(B)熱硬化性樹脂、(C)放射線重合性化合物、及び(D)光開始剤、並びに、必要に応じて添加される他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート100、110の状態で保存及び使用することもできる。
【0113】
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。なお、乾燥中に(B)熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。乾燥前の上記ワニス層の好ましい厚みは1〜100μmである。この厚みが1μm未満であると、接着固定機能が損なわれる傾向にあり、100μmを超えると、後述する残存揮発分が多くなる傾向にある。
【0114】
得られたワニス層の好ましい残存揮発分は10質量%以下である。この残存揮発分が10質量%を超えると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因で、接着剤層内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が損なわれる傾向にあり、また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料、あるいは部材を汚染する可能性も高くなる傾向がある。なお、上記の残存揮発成分の測定条件は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断したフィルム状接着剤について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、〔(M2−M1)/M1〕×100=残存揮発分(%)とした時の値である。
【0115】
また、上記の熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
【0116】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0117】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0118】
また、本発明のフィルム状接着剤1とダイシングシートとを積層し、接着シートとすることもできる。上記ダイシングシートは、基材上に粘着剤層を設けたシートであり、上記の粘着剤層は、感圧型又は放射線硬化型のどちらでも良い。また、上記の基材はエキスパンド可能な基材が好ましい。このような接着シートとすることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能を併せ持つダイシング・ダイボンド一体型接着シートが得られる。
【0119】
上記のダイシング・ダイボンド一体型接着シートとして具体的には、図4に示すように、基材フィルム7、粘着剤層6及び本発明のフィルム状接着剤1がこの順に形成されてなる接着シート120が挙げられる。
【0120】
図5は、本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿った端面図である。図5、6に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8と、これの一方面上に設けられた上記感光性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤(接着剤層)1と、を備える。
【0121】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8上に、フィルム状接着剤1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。フィルム状接着剤1は、上記感光性接着剤組成物からなるフィルムであるため、例えば、室温(25℃)〜150℃程度の低温で半導体ウェハ8に貼付けることが可能である。
【0122】
図7、図9は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のVIII−VIII線に沿った端面図であり、図10は図9のX―X線に沿った端面図である。図7、8、9、10に示す接着剤パターン1a及び1bは、被着体としての半導体ウェハ8上において、略正方形の辺に沿ったパターン又は正方形のパターンを有するように形成されている。
【0123】
接着剤パターン1a及び1bは、感光性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤1を被着体としての半導体ウェハ8上に形成して接着剤層付半導体ウェハ20を得、フィルム状接着剤1をフォトマスクを介して露光し、露光後のフィルム状接着剤1をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される。また、これにより、接着剤パターン1a,1bが形成された接着剤層付半導体ウェハ20a,20bが得られる。
【0124】
本発明のフィルム状接着剤の用途として、フィルム状接着剤を備える半導体装置について図面を用いて具体的に説明する。なお、近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明のフィルム状接着剤の用途は、以下に説明する構造の半導体装置に限定されるものではない。
【0125】
図11は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図11に示す半導体装置200において、半導体素子12は本発明のフィルム状接着剤1を介して半導体素子搭載用支持部材13に接着され、半導体素子12の接続端子(図示せず)はワイヤ14を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。
【0126】
また、図12は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。図12に示す半導体装置210において、一段目の半導体素子12aは本発明のフィルム状接着剤1を介して、端子16が形成された半導体素子搭載用支持部材13に接着され、一段目の半導体素子12aの上に更に本発明のフィルム状接着剤1を介して二段目の半導体素子12bが接着されている。一段目の半導体素子12a及び二段目の半導体素子12bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ14を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。このように、本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0127】
図11及び図12に示す半導体装置(半導体パッケージ)200,210は、例えば、図9に示す接着剤層付半導体ウェハ20bを破線Dに沿ってダイシングし、ダイシング後のフィルム状接着剤付き半導体素子を半導体素子搭載用支持部材13に加熱圧着して両者を接着させ、その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経ることにより得ることができる。上記加熱圧着における加熱温度は、通常、20〜250℃であり、荷重は、通常、0.01〜20kgfであり、加熱時間は、通常、0.1〜300秒間である。
【実施例】
【0128】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
(ポリイミドPI−1の合成)
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,5−ジアミノ安息香酸(分子量152.2、以下「DABA」と略す)1.89g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「D−400」(商品名)、分子量452.4)15.21g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)、分子量248.5)0.39g、及び、N−メチル−2−ピロリジノン(以下「NMP」と略す)116gを仕込んだ。
【0130】
次いで、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量326.3、以下「ODPA」と略す)16.88gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温(25℃)で5時間攪拌した。
【0131】
次に、上記フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン70gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥し、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−1」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=33000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは55℃であった。
【0132】
(ポリイミドPI―2の合成)
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(分子量286.3、以下「MBAA」と略す)2.16g、脂肪族エーテルジアミン(「D−400」)15.13g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(「LP−7100」)1.63g、及び、NMP115gを仕込んだ。
【0133】
次いで、ODPA16.51gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−2」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=30000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは31℃であった。
【0134】
(ポリイミドPI−3の合成)
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(分子量410.5、以下「BAPP」と略す)20.5g、及び、NMP101gを仕込んだ。
【0135】
次いで、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)(分子量410.3、以下「EBTA」と略す。)20.5gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン67gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−3」という。)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=98000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは180℃であった。
【0136】
上記のポリイミドPI−1〜3をそれぞれ用い、下記表1,2に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を得た。
【0137】
なお、表1,2中の各成分の記号は下記のものを意味する。
BPE−100:新中村化学工業社製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート。
M―313:東亜合成社製、イソシアヌル酸EO変性トリ/ジアクリレート。
VG−3101:プリンテック、3官能エポキシ樹脂。
BEO−60E:新日本理化社製、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)。
TrisP−PA:本州化学社製、トリスフェノール化合物(α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)。
R972:日本アエロジル社製、疎水性フュームドシリカ(平均粒径:約16nm)。
I−OXE01:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、オキシムエステル基含有化合物(3%重量減少温度:210℃、365nmでの分子吸光係数:7000ml/g・cm)。
I−OXE02:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム) 、カルバゾール基及びオキシムエステル基含有化合物(3%重量減少温度:365℃、365nmでの分子吸光係数:7700ml/g・cm)。
N−1919:ADEKA社製、構造未開示、オキシムエステル基含有化合物(3%重量減少温度:270℃、365nmでの分子吸光係数:4500ml/g・cm)。
N−1414:ADEKA社製、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール、カルバゾール基含有化合物、(3%重量減少温度:370℃、365nmでの分子吸光係数:2000ml/g・cm)
D−1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(3%重量減少温度:90℃、365nmでの分子吸光係数:50ml/g・cm)。
I―651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(3%重量減少温度:140℃、365nmでの分子吸光係数:350ml/g・cm)。
I−819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(3%重量減少温度:190℃、365nmでの分子吸光係数:2300ml/g・cm)。
D―TPO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(3%重量減少温度:230℃、365nmでの分子吸光係数:400ml/g・cm)。
I―379EG:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(3%重量減少温度:230℃、365nmでの分子吸光係数:7000ml/g・cm)。
NMP:関東化学社製、N−メチル−2−ピロリジノン。
【0138】
なお、3%重量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、「TG/DTA 6300」(商品名))を用いて、窒素フロー:400ml/minの条件下で測定した値である。
【0139】
得られた接着剤層形成用ワニスを、乾燥後の膜厚が40μmとなるように、それぞれ基材(剥離剤処理PETフィルム)上に塗布し、オーブン中にて80℃で20分間、続いて、120℃で20分間加熱し、基材上に接着剤層が形成されてなる実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例1〜5の接着シートを得た。
【0140】
<低温貼付性の評価>
支持台上に載せたシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例1〜5で得られた接着シートを、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロール(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。次いで、基材(PETフィルム)を剥がし、接着剤層上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、「ユーピレックス」(商品名))を上記と同様の条件でロールにより加圧して積層した。このようにして準備したサンプルについて、レオメータ(東洋製機製作所社製、「ストログラフE−S」(商品名))を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着剤層−ユーピレックス間のピール強度を測定した。その測定結果に基づいて、ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをBとして評価した。その結果を表1,2に示す。
【0141】
<パターン形成性の評価>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例2〜5の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0142】
次いで、基材(PETフィルム)上にネガ型パターン用マスク(日立化成社製、「No.G−2」(商品名))を載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0143】
その後、基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液とし、温度28℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度23℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で水洗した。現像後、ライン幅/スペース幅=400μm/400μmのパターンが形成されているかを目視にて確認し、パターン形成されていた場合をA、パターン形成されていなかった場合をBとして評価した。その結果を表1,2に示す。
【0144】
<感度の評価>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例2〜5の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0145】
次いで、基材(PETフィルム)上に、ネガ型パターン用フォトマスクとして段階的に光透過量が減少していく通称ステップタブレットと呼ばれるフォトマスク(日立化成工業社製、「フォテック 41ステップデンシティタブレット」(商品名)を載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0146】
その後、基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液とし、温度28℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度23℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で水洗した。現像後、そして、シリコンウェハ上に形成された硬化膜のステップタブレットの段数を測定することにより、接着シートの光感度を評価した。その測定結果に基づいて残存段数を評価した。その結果を表1,2に示す。
【0147】
<260℃ピール強度の測定(高温時の接着性の評価)>
シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)を、5mm×5mmの大きさで深さ180μmまでハーフカットした。その後、接着シートを、ハーフカット処理したシリコンウェハ上に、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例2〜5の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。そして、得られたサンプルを高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。その後、基材(PETフィルム)を除去し、サンプルを5mm×5mmに個片化した。
【0148】
個片化した接着剤層付きシリコンウェハを、ガラス基板(10mm×10mm×0.55mm)上に、接着剤層をガラス基板側にして載せ、2kgfで加圧しながら、実施例1〜5,7〜8、参考例6及び比較例2〜5の接着シートは温度150℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で10秒間圧着した。こうして得られた試験片を、オーブン中で120℃、3時間の条件で加熱硬化した。比較例1については180℃で1時間硬化した。その後、試験片を260℃の熱盤上で10秒間加熱し、図13に示すピール強度測定装置を用いて、測定速度:0.5mm/secの条件で260℃でのシリコンウェハの引き剥がし強度を測定し、このときの値を260℃ピール強度とした。それらの結果を表1、2に示す。
【0149】
なお、図13に示すピール強度測定装置300においては、プッシュプルゲージ31に取り付けられたロッドの先端に、取っ手32が支点33の周りで角度可変に設けられている。そして、260℃ピール強度の測定は、突起部を有するシリコンウェハ34とガラス基板35とがフィルム状接着剤1を介して接着された試験片を260℃の熱盤36上に載置し、シリコンウェハ34の突起部に取っ手32を引っ掛けた状態で、取っ手32を0.5mm/秒で移動させたときの剥離応力をプッシュプルゲージ31で測定することにより行った。
【0150】
<接着剤層の3%重量減少温度の測定>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5,7〜8、参考例6、比較例2〜5の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0151】
そして、得られたサンプルを高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名「EXM−1172−B−∞」)で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。その後、基材(PETフィルム)を除去し、オーブン中で120℃、3時間の条件で加熱硬化した後、シリコンウェハ上の接着剤層を削り取り、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、窒素フロー(400ml/分)下で3%重量減少温度を測定した。その結果を表1,2に示す。
【0152】
【表1】
【表2】
*塗工時の加熱乾燥により、光開始剤が分解し、アクリレートが重合したため低温貼付性、パターン形成性はBとした。
【符号の説明】
【0153】
1…フィルム状接着剤(接着剤層)、1a,1b…接着剤パターン、2…カバーフィルム、3…基材フィルム(基材)、6…粘着剤層、7…基材フィルム、8…半導体ウェハ、12,12a,12b…半導体素子、13…半導体素子搭載用支持部材、14…ワイヤ、15…封止材、16…端子、20,20a,20b…接着剤層付半導体ウェハ、100,110,120…接着シート、210…半導体装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂と、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)放射線重合性化合物と、
(D)光開始剤と、を含有し、
前記(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂が、ポリイミド樹脂を含み、
前記(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含み、
前記(C)放射線重合性化合物が、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
前記(D)光開始剤が、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、3,6−ビス−(2−メチル−2−モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、及び、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
当該感光性接着剤組成物の3%重量減少温度が275℃以上である、感光性接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂のガラス転移温度が150℃以下であり、重量平均分子量が5000〜300000である、請求項1に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂が、アルカリ可溶性樹脂である、請求項1又は2に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られるポリイミド樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、下記構造式(2)で表わされる芳香族ジアミン及び/又は下記構造式(3)で表される芳香族ジアミンと、を反応させて得られるポリイミド樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【化1】
【化2】
【請求項6】
前記ジアミン成分が、更に、下記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン成分全体の10〜90モル%含む、請求項4に記載の感光性接着剤組成物。
【化3】
[式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは1〜80の整数を示す。]
【請求項7】
前記ジアミン成分が、更に、下記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンをジアミン成分全体の1〜20モル%含む、請求項4に記載の感光性接着剤組成物。
【化4】
[式中、Q4及びQ9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7及びQ8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【請求項8】
前記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分とを反応させて得られるポリイミド樹脂であり、
前記テトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物を前記テトラカルボン酸二無水物全体の40モル%以上含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【化5】
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる、フィルム状接着剤。
【請求項10】
基材と、該基材の一面上に設けられた請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着シート。
【請求項11】
請求項9に記載のフィルム状接着剤とダイシングシートとを有し、
前記フィルム状接着剤と前記ダイシングシートとが積層されている、接着シート。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の前記接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターン。
【請求項13】
半導体ウェハと、該半導体ウェハの一面上に設けられた請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項14】
支持部材と、該支持部材に搭載された半導体素子と、前記支持部材と前記半導体素子との間に介在する接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物によって形成されている、半導体装置。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項1】
(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂と、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)放射線重合性化合物と、
(D)光開始剤と、を含有し、
前記(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂が、ポリイミド樹脂を含み、
前記(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含み、
前記(C)放射線重合性化合物が、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
前記(D)光開始剤が、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、3,6−ビス−(2−メチル−2−モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、及び、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
当該感光性接着剤組成物の3%重量減少温度が275℃以上である、感光性接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂のガラス転移温度が150℃以下であり、重量平均分子量が5000〜300000である、請求項1に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂が、アルカリ可溶性樹脂である、請求項1又は2に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られるポリイミド樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、下記構造式(2)で表わされる芳香族ジアミン及び/又は下記構造式(3)で表される芳香族ジアミンと、を反応させて得られるポリイミド樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【化1】
【化2】
【請求項6】
前記ジアミン成分が、更に、下記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン成分全体の10〜90モル%含む、請求項4に記載の感光性接着剤組成物。
【化3】
[式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは1〜80の整数を示す。]
【請求項7】
前記ジアミン成分が、更に、下記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンをジアミン成分全体の1〜20モル%含む、請求項4に記載の感光性接着剤組成物。
【化4】
[式中、Q4及びQ9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7及びQ8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【請求項8】
前記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分とを反応させて得られるポリイミド樹脂であり、
前記テトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物を前記テトラカルボン酸二無水物全体の40モル%以上含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【化5】
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる、フィルム状接着剤。
【請求項10】
基材と、該基材の一面上に設けられた請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着シート。
【請求項11】
請求項9に記載のフィルム状接着剤とダイシングシートとを有し、
前記フィルム状接着剤と前記ダイシングシートとが積層されている、接着シート。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の前記接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターン。
【請求項13】
半導体ウェハと、該半導体ウェハの一面上に設けられた請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項14】
支持部材と、該支持部材に搭載された半導体素子と、前記支持部材と前記半導体素子との間に介在する接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物によって形成されている、半導体装置。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−79389(P2013−79389A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272557(P2012−272557)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2009−550008(P2009−550008)の分割
【原出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2009−550008(P2009−550008)の分割
【原出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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