説明

感光性樹脂、感光性樹脂組成物およびその硬化物

【課題】 希アルカリ水溶液での現像性、光硬化性に優れており、可撓性、低反り性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂、並びにそれを含む硬化性樹脂組成物および硬化物を提供すること。
【解決手段】 本発明は、多価フェノール類と、アルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートと、ラクトンモノマーとの反応物に、さらに多塩基酸無水物及び不飽和基含有のイソシアネートモノマーを反応させて得られる感光性樹脂、それを含む硬化性樹脂組成物および硬化物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂及び硬化性樹脂組成物,およびアルカリ現像型感光性樹脂組成物に関する。本発明の硬化性樹脂組成物は、希アルカリ溶液で現像可能なので、特にフレキシブルプリント配線板の製造用ソルダーレジストインキに好適に使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
最近のプリント配線板の進歩はめざましく、特に表面実装技術の向上によりプリント配線板の高集積化は加速度的に進んでおり、さらに高密度、高信頼性に加え、量産性や経済性を兼ね備えたレジストパターンの形成方法が求められている。このため、ソルダーレジストインキの高密度化に対する要求も一層厳しく、従来用いられてきたスクリーン印刷によるプリント配線板のレジストパターン形成法では解像度が低く、この要求に対応できなくなってきており、そのため解像度の高い写真法を利用した写真現像に使用できる、アルカリ現像可能なソルダーレジストインキが使用されるようになっている。
【0003】
また、近年フレキシブルプリント配線板が広く用いられており、その結果、フレキシブルプリント配線板に適用し得るような可撓性を有し、かつ、解像度の高い写真現像に使用できる、アルカリ現像可能なソルダーレジストインキの要求が高まっている。しかしながら、優れた可撓性を付与するため、架橋点距離の延長をする従来のアプローチでは反りは軽減されるものの、官能基密度の低下により光硬化性や耐薬品性の低下が問題となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、希アルカリ水溶液での現像性、光硬化性に優れており、可撓性、低反り性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂、およびそれを含む感光性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多価フェノール類と、アルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートと、ラクトンモノマーとの反応物に、さらに多塩基酸無水物及び不飽和基含有のイソシアネートモノマーを反応させて得られる感光性樹脂を提供する。
【0006】
本発明は、また前記した感光性樹脂の製造方法を提供する。
【0007】
本発明は、前記した感光性樹脂と光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0008】
本発明は、前記した光硬化性樹脂組成物に加えて、エポキシ樹脂を含有する光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0009】
本発明は、前記した硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線の照射や熱処理により硬化させた硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、希アルカリ水溶液での現像性、光硬化性に優れた感光性樹脂および感光性樹脂組成物が提供される。
本発明により、上記感光性樹脂を含む硬化性が良好な樹脂組成物が提供される。
本発明により提供される硬化性樹脂組成物から、可撓性、低反り性に優れた硬化物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の感光性樹脂は、多価フェノール類と、アルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートと、ラクトンモノマーとの反応物に、さらに多塩基酸無水物及び不飽和基含有のイソシアネートモノマーを反応させることによって得ることができる。
【0012】
ベースとして用いる多価フェノール類としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビフェノール、ビキシレノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。
【0013】
多価フェノール類とアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートとの反応について説明する。
【0014】
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが挙げられ、環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。多価フェノール類に、反応性の高い1級のアルコール性水酸基を導入できることからエチレンオキシド、エチレンカーボネートが好ましい。アルキレンオキシド類と環状カーボネート類は単独もしくは混合で使用しても良い。
多価フェノール類と反応させるアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートの使用量は、多価フェノール類の水酸基当量に対して0.5〜10.0モルであり、好ましくは1.0〜5.0モルである。
【0015】
また、必要に応じて、有機溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。使用量としては、原料重量の0.1倍〜20倍の範囲で使用できる。
【0016】
反応触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどの有機リン系、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール系、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5, 4, 0)ウンデセン−7などの3級アミン系などが挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることが好ましい。添加量としては、原料全重量に対して10ppm〜5wt%の範囲で使用することができる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いると、反応速度が速く、反応後に中和水洗にて除去することができる。
【0017】
反応温度は、通常50〜200℃、好ましくは90〜150℃である。反応時間は、通常1〜36時間、好ましくは2〜18時間である。
【0018】
次に、多価フェノール類のアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネート付加物とラクトンモノマーとの反応について説明する。
【0019】
ラクトンモノマーは、環状エステル化合物であり、5員環のγ−ブチロラクトン誘導体、6員環のδ−バレロラクトン誘導体、7員環のε−カプロラクトン誘導体、8員環のζ−エナントラクトン誘導体などが挙げられ、特に好ましいものとしては、ε−カプロラクトンが挙げられる。
【0020】
ラクトンモノマーの使用量は、多価フェノール類とアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートの反応物の水酸基当量に対して、0.1〜10.0モルが好ましい。耐熱性と可撓性のバランスを考慮するのであれば0.5モル〜5.0モルがより好ましい。
【0021】
上記反応に用いられる触媒としては、ハロゲン化第一スズやモノブチルスズトリス−2−エチルヘキサネート、オクタン酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート等を挙げることができる。中でも好ましいのは、ジブチルスズジラウレートである。この触媒を用いる場合の添加量としては、原料全重量の1〜5000ppmが好ましく、より好ましくは10〜1000ppmである。
上記反応の反応温度は、通常80〜180℃、好ましくは100〜150℃である。反応時間は、通常1〜8時間、好ましくは2〜6時間である。
【0022】
多価フェノール類のアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネート付加物とラクトンモノマーとの反応物と、多塩基酸無水物との反応について説明する。
【0023】
反応に用いる多塩基酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族又は芳香族二塩基酸無水物が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、脂環式二塩基酸無水物が特に好ましい。多塩基酸無水物は、固形分酸価が30〜150mgKOH/gになるように使用することが好ましく、50〜120mgKOH/gの固形分酸価になるように使用するのがより好ましい。
【0024】
反応触媒としては特に限定はされないが、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどの有機リン系、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール系、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5, 4, 0)ウンデセン−7などの3級アミン系などが挙げられ、有機リン系触媒を用いることが好ましい。添加量としては、原料全重量に対して10ppm〜2wt%の範囲で使用することができる。
【0025】
反応温度としては、通常50〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度範囲で行うことができる。反応時間は、通常1〜24時間、好ましくは2〜12時間である。
【0026】
前記した多塩基酸無水物を反応させた生成物に、続いて不飽和基含有のイソシアネートモノマーを反応させることについて説明する。
【0027】
不飽和基含有のイソシアネートモノマーの具体的な例としては、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート、1,1−ビス(アクリロイロキシメチル)エチルイソシアネート、イソホロンジイソシアネートと不飽和基含有アルコール類との反応から得られる化合物などが挙げられ、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレートを用いることが好ましい。
【0028】
不飽和基含有のイソシアネートモノマーの使用量は、多価フェノール類のアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネート付加物とラクトンモノマーとの反応物の水酸基当量に対して0.2〜0.8モルであり、好ましくは0.3〜0.7モルである。
【0029】
反応は無触媒でも進行するが、触媒を添加してより反応を円滑に進行させることもできる。反応触媒としては、ハロゲン化第一スズやモノブチルスズトリス−2−エチルヘキサネート、オクタン酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート等のスズ系触媒が好ましい。添加量としては1ppm〜5%が好ましく、着色を抑制する観点から50ppm〜1000ppmがより好ましい。
【0030】
重合抑制剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン、フェノチアジン等を1ppm〜1wt%、好ましくは50ppm〜0.5wt%の範囲で用いることができる。
【0031】
反応温度は、通常20〜120℃、好ましくは40〜100℃である。反応時間は、通常1〜16時間、好ましくは4〜12時間である。
【0032】
本発明の感光性樹脂は、同一分子内に一般式(1)、(2)の構造を有する樹脂であると考えられる。
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
(式(1)及び(2)中のR、R、R、R、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは不飽和基含有イソシアネート残基、Yは酸無水物残基を表す。n=0.5〜10、m=3〜6、l=0.1〜10である。)
【0036】
本発明は、前記した感光性樹脂と光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物を提供する。
光重合開始剤としては、具体的には光ラジカル重合開始剤であり2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。光重合開始剤の使用量としては、感光性樹脂ワニスの不揮発分重量の0.1〜30%が好ましく、より好ましくは1%〜20%である。
【0037】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、さらにエポキシ樹脂を含有していてもよい。
含有していてよいエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限はなく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル−フェノール類縮合型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン・フェノール重縮合型エポキシ樹脂、フェノール・アラルキル重縮合型エポキシ樹脂、アミノフェノールのトリグリシジル化物などを挙げることができるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でもフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル−フェノール類縮合型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0038】
本発明は、前記した硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線の照射や熱処理により硬化させた硬化物を提供する。硬化性樹脂組成物を硬化させる手段及び条件については、特に制限はなく、従来公知のものから適宜選択して使用することができる。
【0039】
活性エネルギー線照射の手段としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプの使用などが挙げられる。ランプの種類は硬化速度や組成物の吸収波長などにより任意に選択できる。熱硬化させる手段としては、オーブンや温風乾燥機などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例、比較例によって本発明をより具体的に説明をするが、これらの例により本発明は何ら制限されるものではない。
【0041】
本発明において使用した測定方法および原料は下記のとおりである。
測定方法
(a)水酸基当量
試料をピリジンと過剰の無水酢酸でアセチル化し、試料中に存在する水酸基に消費される無水酢酸から生成する酢酸を、水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することで求めた。
(b)酸価
JIS K0070 に準拠して測定を行った。
【0042】
原料
(1)光重合開始剤1:2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン
(2)感光性モノマー1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(3)エポキシ樹脂1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製 YDCN-704)
(4)エポキシ樹脂2:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製 RE306 )
(5)熱硬化触媒1:2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール
(6)溶剤1:カルビトールアセテート
(7)顔料1:フタロシアニングリーン
【0043】
(合成例1)
500mlフラスコに、オルソクレゾールノボラック(昭和高分子(株)製 ショーノールCRG951 OH基当量119g/eq) 119.0g、エチレンカーボネート92.5g、メチルイソブチルケトン120.0gを仕込み、110℃まで昇温して溶解した。次に、48%水酸化カリウム水溶液3.45gを突沸に注意しながら徐々に加え、100〜115℃の温度で16時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、85%リン酸2.18g加えて中和した。さらに、100.0gの水で3回洗浄し、オルソクレゾールノボラック樹脂のヒドロキシエチル化物溶液を得た。
【0044】
次にメチルイソブチルケトンを80〜100℃の温度で減圧留去しつつ、徐々にε‐カプロラクトン114.1gを加えて置換した。さらに、130℃まで昇温して、ジブチルスズジラウレート0.17gを添加し、3時間反応させ、カプロラクトン開環付加物を279.3g得た。
【0045】
100mlフラスコに、得られたカプロラクトン開環付加物35.0g、テトラヒドロフタル酸無水物9.5g、トリフェニルホスフィン0.17g、フェノチアジン0.04g、カルビトールアセテート29.2 gを仕込み80℃まで昇温、溶解した後、その温度で6時間反応させた。次に60℃まで冷却して、2‐イソシアナトエチルメタクリレート9.8gを滴下し3時間反応させた。さらに80℃に昇温して3時間反応させた後、室温まで冷却して感光性樹脂78.0gを得た。固形分66%、固形分酸価71mgKOH/gであった。
【0046】
(実施例1)
合成例1の樹脂溶液7.58g、光重合開始剤1 0.75g、感光性モノマー1 0.75g、エポキシ樹脂1 1.27g、エポキシ樹脂2 0.59g、顔料1 0.05g、熱硬化触媒1 0.05gを攪拌混合し、感光性樹脂組成物を得た。実施例1の感光性樹脂組成物の組成を表1に示した。
【0047】
(比較例1)
実施例1において、合成例1の樹脂溶液に代えて市販品の酸ペンダントクレゾールノボラック型エポキシアクリレート(DIC(株)製DICLITE UE-9210 固形分 61.4% 固形分酸価 82.7mgKOH/g) 8.14gを用い、エポキシ樹脂1の量を1.48gに、エポキシ樹脂2の量を0.68gに変えるほかは同様にして感光性樹脂組成物を得た。比較例1の感光性樹脂組成物の組成を表1に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
(感光性樹脂組成物の評価1)
実施例1および比較例1で得られた感光性樹脂組成物について(A)光硬化性及び(B)アルカリ現像性を評価した。各評価方法は下記のとおりである。評価の結果を表2にまとめて示した。
【0050】
[評価試験方法]
(A)光硬化性:
感光性樹脂組成物を、厚み50μのPETフィルムに、ウェット約50μmの厚みになるよう自動塗工機により塗布し、80℃で30分間乾燥させた後、ステップタブレットNo.2(コダック株式会社製)を塗布面に密着させ、オーク製作所製小型高圧水銀ランプ装置を用いて400mJ/cm2露光した。次に1%炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー圧0.2MPaで60秒間現像を行い、ステップタブレット法で評価を行った。評価数値は差段残存段数を示し、数値が大きいほど光硬化性が優れていることを示す。
【0051】
(B)アルカリ現像性:
感光性樹脂組成物を、厚み50μのPETフィルムに、塗布面がウェット約50μmの厚みになるよう自動塗工機により塗布した。次いで80℃の温度で30、40、50、60分の時間それぞれ乾燥し、室温冷却後に1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.2MPaで60秒間現像を行い、純水で洗浄後に塗布面の溶け残りの有無を目視にて確認し、下記の基準で評価した。
○:全く溶け残りがなかったもの
△:かすかに溶け残りが認められるもの
×:溶けなかったもの
【0052】
【表2】

【0053】
(感光性樹脂組成物の評価2)
実施例1および比較例1で得られた感光性樹脂組成物の硬化物について(C)耐酸性、(D)反り及び(E)可撓性(耐折り曲げ)を評価した。各評価方法は下記のとおりである。評価の結果を表3にまとめて示した。
【0054】
(C)耐酸性:
銅箔上に感光性樹脂組成物を、塗布面がウェット約50μmの厚みになるよう自動塗工機により塗布し、80℃の温度で30分間乾燥した。さらに、オーク製作所製小型高圧水銀ランプ装置で1000mJ/cm2露光し、室温冷却後に1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.2MPaで60秒間現像を行い、銅箔上にレジスト膜を作成した。次に、10wt%硫酸水溶液に室温で30分浸漬し、液の染み込みや溶け出し、テープピールにより剥がれを確認し下記の基準で評価した。
○:染み込み、溶け出し剥がれ無し。
△:染み込み、溶け出し、もしくは剥がれが少し確認される。
×:染み込み、溶け出し、もしくは剥がれが大きく確認される。
【0055】
(D)反り:
感光性樹脂組成物を、厚み50μのPETフィルムに、塗布面がウェット約100μmの厚みになるよう自動塗工機により塗布し、80℃の温度で30分間乾燥した。さらに、オーク製作所製小型高圧水銀ランプ装置で1000mJ/cm2露光し、オーブンにて150℃の温度で1時間加熱処理した後室温に冷却して50μmの硬化物を得た。次にPETフィルム状に作成した厚み硬化物を50mm×50mmに切り取り、4隅の水平面からの反り量を測定し、その平均値を反り量とした。カールして測定不能の場合を測定不能と表記した。
【0056】
(E)可撓性(耐折り曲げ):
感光性樹脂組成物を、PETフィルムにウェット約250μmの厚みになるように自動塗工機で塗布し、80℃の温度で60分間乾燥した。さらに、オーク製作所製小型高圧水銀ランプ装置で1000mJ/cm2露光し、オーブンにて150℃の温度で1時間加熱処理した後室温に冷却して硬化物をPETフィルムから剥がすと約100μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜を180°に折り曲げ、クラック発生の有無を目視によって観察し下記の基準で可撓性を評価した。
○:全くクラックが発生しなかったもの
△:わずかにクラックが発生したもの
×:クラックが発生し、完全に折れたもの
【0057】
【表3】

【0058】
表2の結果から本発明の樹脂を含有した感光性樹脂組成物は比較例に比べ、光硬化性、アルカリ現像性のバランスに優れている。また表3の結果から本発明の樹脂を用いた硬化物は比較例に比べ、低反りで可撓性に優れたものが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により、希アルカリ水溶液での現像性、光硬化性に優れた感光性樹脂および感光性樹脂組成物が提供される。
本発明により、上記感光性樹脂を含む硬化性が良好な樹脂組成物が提供される。
本発明により提供される感光性樹脂を含む樹脂組成物は、優れた光硬化性とアルカリ現像性を有するので、特にフレキシブルプリント配線板の製造用ソルダーレジストインキに好適に使用することができる。
本発明により提供される硬化性樹脂組成物から、可撓性、低反り性に優れた硬化物を得ることができる。本発明により提供される硬化物は低反りで著しく優れた可撓性を有するので、高い生産性でフレキシブルプリント配線板の製造を行うことができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記のような優れた性能を有するので、プリント配線板のオーバーコート、アンダーコート、絶縁コートなどの永久保護膜、ソルダーレジストインキ,ビルドアップ基板の相関絶縁材料、プリント配線板などに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価フェノール類と、アルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートと、ラクトンモノマーとの反応物に、さらに多塩基酸無水物及び不飽和基含有のイソシアネートモノマーを反応させて得られる感光性樹脂。
【請求項2】
前記アルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートの使用量が、多価フェノール類の水酸基当量に対して0.5〜10.0モルである請求項1に記載の感光性樹脂。
【請求項3】
前記ラクトンモノマーの使用量が、多価フェノール類のアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネート付加物の水酸基当量に対して、0.1〜10.0モルである請求項1に記載の感光性樹脂。
【請求項4】
前記多塩基酸無水物を、固形分酸価が30〜150mgKOH/gになるように使用する請求項1に記載の感光性樹脂。
【請求項5】
前記不飽和基含有のイソシアネートモノマーの使用量が、多価フェノール類のアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネート及びラクトンモノマー反応物の水酸基当量に対して0.2〜0.8モルである請求項1に記載の感光性樹脂。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5いずれかに記載の感光性樹脂と光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の光硬化性樹脂組成物に加えて、エポキシ樹脂を含有する光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7または8に記載の硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線の照射や熱処理により硬化させた硬化物。

【公開番号】特開2010−285532(P2010−285532A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139931(P2009−139931)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】