説明

感光性樹脂組成物、これを用いた感光性樹脂フィルム、並びにこれらを用いた電子部品

【課題】厚膜においても微細パターンの形成が可能であり、優れた可視光透過率を有し、かつ、高温で長時間の熱履歴においても樹脂着色が少ない優れた耐熱性を有する感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルム、並びにこれらを用いた電子部品を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール系構造を有する化合物(C)を含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分が、(メタ)アクリレート化合物を含む、感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、これを用いた感光性樹脂フィルム、並びにこれらを用いて発光素子の上部を封止してなる電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDディスプレイの小型化・高画質化に伴い、LED素子等の発光素子にも小型化・高密度実装が求められている。例えば、携帯電話等に用いられるLEDディスプレイは、高精細・少消費電力であることが必要とされる。また、民生機器や車載用途等への展開に伴い、過酷な環境に耐え得るための耐熱性も要求されている。このことから、LED素子等の発光素子の上部を覆う封止部材に対しても、微細パターンの加工性や光透過率が優れているだけではなく、高耐熱性が求められている。
例えば、特許文献1には、透明封止樹脂について開示されているが、樹脂ポッティングによる封止のため、微細加工に向かない欠点がある。
また、特許文献2、3に開示された材料のような、高い透過率を有する感光性樹脂組成物を封止樹脂として用いることも考えられるが、熱履歴により樹脂が着色する問題があり、LED等の発光素子の色相変化や輝度低下に影響を与える恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−308695号公報
【特許文献2】特開2010−32991号公報
【特許文献3】特開2004−35821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、厚膜においても微細パターンの形成が可能であり、優れた可視光透過率を有し、かつ、高温で長時間の熱履歴においても樹脂着色が少ない優れた耐熱性を有する感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルム、並びにこれらを用いた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討した結果、光重合性化合物として、(メタ)アクリレート化合物を用いることに着目すると共に、該(メタ)アクリレート化合物から得られる樹脂硬化物の物性や特性を向上できるように、光重合開始剤と共に、特定構造を有する化合物を添加剤として併用することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記〔1〕〜〔3〕を提供する。
〔1〕少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール系構造を有する化合物(C)を含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分が、(メタ)アクリレート化合物を含む、感光性樹脂組成物。
〔2〕上記〔1〕に記載の感光性樹脂組成物をフィルム状に成形してなる、感光性樹脂フィルム。
〔3〕上記〔1〕に記載の感光性樹脂組成物又は上記〔2〕に記載の感光性樹脂フィルムを用いて、発光素子の上部を封止してなる、電子部品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の感光性樹脂組成物は、厚膜においても微細パターンの形成が可能であり、優れた可視光透過率を有し、かつ、高温で長時間の熱履歴後においても樹脂着色が少ない優れた耐熱性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔感光性樹脂組成物〕
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール系構造を有する化合物(C)を含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分が(メタ)アクリレート化合物を含む。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート化合物」とは、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物を示す語として、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を示す語として使用される。また、他の類似する語についても同様である。
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を含有するため、厚膜においても微細パターンの形成が可能であり、優れた可視光透過率を有し、高温で長時間の熱履歴後における波長450〜740nmの光透過性に優れ樹脂着色が少ない優れた耐熱性を有する。
この理由として、以下のように考えられる。
すなわち、(A)成分として配合する(メタ)アクリレート化合物は、透明性が高く、可視光透過性に優れる。また、光、熱により重合し、3次元架橋することにより、優れた耐熱性を発揮する。他に、(A)成分は、相溶性に優れ、(B)成分や(C)成分と十分に溶解することができる。
また、(A)成分と(B)成分の光重合開始剤とを併用することで、厚膜においても深部硬化性が良好であるため、高解像度のパターン形成が可能となる。
さらに、(A)成分と(C)成分のヒンダードフェノール系構造を有する化合物とを併用することで、空気雰囲気下にて高温長時間晒された場合でも、樹脂の着色、黄変を抑制でき、耐熱性を向上させ、高い透過性を維持することができる。
【0010】
(光重合性化合物(A))
光重合性化合物(A)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有するものであり、(メタ)アクリレート化合物を含む。
(A)成分中の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、(A)成分全体に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体でエチレン性不飽和基が導入された化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0011】
<アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物>
アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、解像度と密着性の観点から、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
上記式(1)中、R31、R32及びR33は、各々独立に、2価の有機基を示し、R34は水素原子又はメチル基を示し、R35及びR36は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
2価の有機基としては、置換基を有してもよいフェニレン基、置換基を有してもよいピリジレン基、炭素数1〜10の枝分かれしていてもよいアルキレン基、炭素数1〜10の置換基を有してもよい脂環構造含有基等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(1)で表される重合性化合物は、オキサゾリン基含有化合物とカルボキシ基含有化合物及び/又はフェノール性水酸基含有化合物とを反応させて得られる、アミド結合を有するジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。この化合物を用いることにより、高弾性高耐熱性の樹脂硬化物が得やすくなる。
かかる上記一般式(1)で表される重合性化合物は、例えば、下記一般式(2)で表されるビスオキサゾリンと、1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物と、(メタ)アクリル酸とを反応させることにより得ることができる。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式(2)中、Y4は2価の有機基を示すが、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいピリジレン基、又は炭素数1〜10の枝分かれしていてもよいアルキレン基、炭素数1〜10の置換基を有してもよい脂環構造含有基であることが好ましい。また、R45及びR46は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
【0017】
一般式(2)で表されるビスオキサゾリンとしては、例えば、2,2’−(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2−2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2−2’−イソプロピリデンビス(4−ターシャリーブチル−2−オキサゾリン)等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物としては、例えば、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジメチルナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンが好ましい。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
オキサゾリン基含有化合物とカルボキシ基含有化合物及び/又はフェノール性水酸基含有化合物との反応は、反応温度50〜200℃で行うことが好ましい。反応温度が50℃以上であれば、反応を効率良く進行させることができ、200℃以下であれば、副反応を十分に抑えることができる。また、必要に応じて、当該反応は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤中で行ってもよい。
【0020】
<ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物>
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のβ位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物;EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート;EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート;ジオール化合物、分子内に2つの水酸基と2つの少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する2官能エポキシ(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの反応物等が挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0021】
さらに、耐熱性・剛性と高密着性を両立できる樹脂構造を決める観点から、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の官能基数((メタ)アクリロイル基の数)及び重量平均分子量を最適化することが好ましい。そのようなウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することで、低粘度の材料として選択幅が広くなるため、LED封止部分を形成する際に基板上に塗布する感光性樹脂組成物の粘度を任意に調整することが容易である。塗布する感光性樹脂組成物の低粘度化は溶剤を用いても可能であるが、少なくとも当該化合物を使用する場合、硬化後の樹脂組成物の特性や信頼性に悪影響を与える溶剤の量を低減することができる。
【0022】
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の官能基数((メタ)アクリロイル基の数)は、一分子中に、耐熱性、密着性、塗工性、及びパターン形成性の観点から、好ましくは2〜15個であり、得られる硬化物の物性や特性を安定化させる観点から、より好ましくは2〜12個、更に好ましくは2〜10個である。
当該官能基数が2個以上であれば、耐熱性を向上させ、高温における硬化物の剛性を高めることができる。
一方、当該官能基数が15個以下であれば、硬化物が脆くなることを抑制でき、良好な密着性を保持することができる。また、化合物の重量平均分子量も大きくなり過ぎないため、適当な粘度を有する樹脂組成物とすることができ、塗工性を良好とすることができる。さらに、塗工後の樹脂組成物に対して光照射を行った場合に、表面部分だけが急速に光硬化しやすく内部は光硬化が十分に進行しないといった現象を抑制でき、優れた解像度を発現させ、パターン形成性を良好にすることができる。また、光硬化及び/又は熱硬化後、未反応の(メタ)アクリロイル基が多く残存することにより、得られる硬化物の物性や特性の変動が起こりやすいという問題も抑制することができる。
【0023】
また、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは950〜25000、塗布性と解像度向上の観点から、より好ましくは950〜15000、現像性や相溶性の観点から、更に好ましくは950〜11000である。なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトクラフ(GPC)法によって、テトラヒドロフラン又はトルエン等の展開溶媒を用いて測定した値を意味する。
当該重量平均分子量が950以上であれば、得られる樹脂組成物の粘度が低くなり過ぎず、基板上に塗布した際に、塗布した組成物がだれてしまうこともない。また、厚膜の形成を行うことが困難になったり、硬化収縮による樹脂の応力が大きくなって信頼性が低下するという問題も抑えることができる。
一方、当該重量平均分子量が25000以下であれば、得られる樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎず、塗工性を良好とすることができ、厚膜形成も可能となる。また、現像液に対する溶解性も良好となるため、優れた解像度を発現させることができる。さらに、分子量の増加に伴う硬化物である樹脂の着色を抑えることができ、透明材料として要求される優れた透過率を有する硬化物を得ることができる。
【0024】
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、ウレタン結合を有するアクリレート化合物(アクリロイル基を有する化合物)として、例えば、UN−904(官能基数:10、Mw:4900)、UN−952(官能基数:10、Mw:6500〜11000)、UN−333(官能基数:2、Mw:5000)、UN−1255(官能基数:2、Mw:8000)、UN−2600(官能基数:2、Mw:2500)、UN−6200(官能基数:2、Mw:6500)、UN−3320HA(官能基数:6、Mw:1500)、UN−3320HC(官能基数:6、Mw:1500)、UN−9000PEP(官能基数:2、Mw:5000)、UN−9200A(官能基数:2、Mw:15000)、UN−3320HS(官能基数:15、Mw:4900)、UN−6301(官能基数:2、Mw:33000)(以上はいずれも商品名、根上工業株式会社製)、TMCH−5R(商品名、日立化成工業社製)、KRM8452(官能基数=10、Mw=1200)、EBECRYL8405(ウレタンアクリレート/1,6−ヘキサンジオールジアクリレート=80/20の付加反応物、官能基数=4、Mw=2700)(以上はいずれも商品名、ダイセル・サイテック株式会社製)等が挙げられる。
ウレタン結合を有するメタクリレート化合物(メタクリロイル基を有する化合物)としては、例えば、UN−6060PTM(官能基数:2、Mw:6000、商品名、根上工業株式会社製)、JTX−0309(商品名、日立化成工業社製)、UA−21(商品名、新中村化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
<多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物>
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO及びPO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0026】
<ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物>
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0027】
<グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物>
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸と、を反応させて得られるエポキシアクリレート化合物等が挙げられる。
また、上記エポキシアクリレート化合物のOH基に、テトラヒドロフタル酸無水物等の酸無水物を反応させて得られる酸変性エポキシアクリレート化合物を用いることもできる。このような酸変性エポキシアクリレート化合物としては、例えば、下記一般式(3)で表されるEA−6340(新中村化学製、商品名)が商業的に入手可能である。
【0028】
【化3】

[式中、mとnとの比は、100/0〜0/100である。]
【0029】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体でエチレン性不飽和基が導入された化合物>
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体でエチレン性不飽和基が導入された化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等の共重合体でエチレン性不飽和基が導入された化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0030】
以上の(A)成分として含まれる(メタ)アクリレートの中でも、耐熱性及び密着性の向上の観点から、炭素−窒素結合を含有する(メタ)アクリレートが好ましく、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物及び/又はウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
【0031】
また、架橋密度を向上させ密着性を向上させる観点、及び透明性、解像度、耐熱性のバランスの観点から、(A)成分として、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物とウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。
上記化合物を併用する場合、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物とウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物との含有割合〔アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物/ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物〕としては、好ましくは10/90〜60/40、より好ましくは15/85〜50/50、更に好ましくは20/80〜40/60である。
【0032】
(光重合開始剤(B))
本発明で用いる光重合開始剤(B)としては、活性光線により遊離ラジカルを生成するものであれば特に制限されない。
光重合開始剤(B)としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル類、芳香族ケトン、キノン類、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、クマリン系化合物、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体等が挙げられる。なお、本発明で用いる光重合開始剤(B)は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。
これらの中でも、光硬化性の向上や高感度化、硬化膜の透明性の観点から、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル類が好ましい。
なお、光重合開始剤(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
<アシルフォスフィンオキサイド>
アシルフォスフィンオキサイドとしては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(市販品:「IRGACURE 819(BASF社製)」、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(市販品:「LUCIRIN TPO(BASF社製)」等が挙げられる。
【0034】
<オキシムエステル類>
オキシムエステル類としては、例えば、下記式(4)で示される1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル−2−(O−ベンゾイルオキシム)(市販品:「IRGACURE OXE01(BASF社製)」、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチルオキシム)(市販品:「IRGACURE OXE02(BASF社製)」、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−[o−(エトキシカルボニル)オキシム](市販品:「Quantacure−PDO(日本化薬社製)」等が挙げられる。
【0035】
【化4】

【0036】
<芳香族ケトン>
芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン、N,N'−テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン(即ち、ミヒラーケトン)、N,N'−テトラエチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(市販品:「IRGACURE 651(BASF社製)」、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(市販品:「IRGACURE 369(BASF社製)」、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン(市販品:「IRGACURE 907(BASF社製)」等が挙げられる。
【0037】
<キノン類>
キノン類としては、例えば、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等が挙げられる。
【0038】
<ベンゾインエーテル化合物>
ベンゾインエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
<ベンジル誘導体>
ベンジル誘導体としては、例えば、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0040】
<2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体>
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(2−クロロフェニル)−1−〔2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル〕−4,5−ジフェニルイミダゾール等の2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。
【0041】
<アクリジン誘導体>
アクリジン誘導体としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9'−アクリジニル)ヘプタン等が挙げられる。
【0042】
<クマリン系化合物>
クマリン系化合物としては、例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−メチルアミノ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、7−アミノシクロペンタ[c]クマリン、7−ジエチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−ジエチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−ジメチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−ジメチルアミノクマリン、2,3,6,7,10,11−ヘキサンヒドロ−1H,5H−シクロペンタ[3,4][1]ベンゾピラノ−[6,7,8−ij]キノリジン12(9H)−オン、7−ジエチルアミノ−5',7'−ジメトキシ−3,3'−カルボニルビスクマリン、3,3'−カルボニルビス[7−(ジエチルアミノ)クマリン]、7−ジエチルアミノ−3−チエノキシルクマリン等が挙げられる。
【0043】
光重合開始剤(B)の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは0.75〜5質量部である。当該配合量を上記範囲とすることで、感光性樹脂組成物の感度と光硬化性を向上させ、レジスト形状の悪化を防ぐと共に、パターンの形状を良好とすることができる。
【0044】
(ヒンダードフェノール系構造を有する化合物(C))
本発明で用いるヒンダードフェノール系構造を有する化合物(C)(以下、「ヒンダードフェノール系化合物(C)」ともいう)は、1分子中に下記式(5)で表される基(ヒンダードフェノール基)を少なくとも1つ有する化合物である。
【0045】
【化5】

【0046】
上記式(5)中、R2、R3は、各々、水素原子、直鎖状アルキル基、又は分枝状アルキル基を表す。なお、直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。分枝状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。1分子中に式(5)で表わされる基が複数あるとき、R2及びR3は、複数の基において、同一であっても異なっていてもよい。また、式(5)中の芳香族環において、フェノール基、R2、R3以外に、低アルキル等の基を有していてもよい。
【0047】
本発明で用いるヒンダードフェノール系化合物(C)としては、上記式(5)中のR2及び/又はR3が分枝状アルキル基である化合物が好ましく、R2及び/又はR3がt−ブチル基である化合物がより好ましく、R2及びR3がt−ブチル基である化合物が更に好ましい。
【0048】
なお、このようなヒンダードフェノール系化合物(C)は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。
本発明で用いるヒンダードフェノール系化合物(C)としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパノアート](市販品:「IRGANOX1010(BASF社製)」)、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)(市販品:「IRGANOX245(BASF社製)」)、4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(市販品:「IRGANOX565(BASF社製)」)、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸オクタデシル(市販品:「IRGANOX1076(BASF社製)」)、N,N’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド](市販品:「IRGANOX1098(BASF社製)」)、トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸(市販品:「CYANOX1790(アメリカンシアナミド社製)」)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール(市販品:「スミライザーGP(住友化学社製)」)、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(市販品:「アデカスタブAO80(ADEKA社製)」)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(市販品:「ヨシノックス425(エーピーアイコーポレーション社製)」)等が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、特に分子量と溶解性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパノアート(市販品:IRGANOX1010)が好ましい。
なお、これらの(C)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
ヒンダードフェノール系構造を有する化合物(C)の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは0.75〜5質量部である。当該配合量を上記範囲とすることで、感光性樹脂組成物の膜物性の脆化やパターン形状の悪化を防ぐと共に、高温における樹脂着色を抑制することができる。
【0051】
(その他の添加剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに熱ラジカル発生剤を添加することが好ましい。
熱ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルクミルパーオキサイド(市販品:「パーブチルC(商品名、日油株式会社製)」)、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート(市販品:「パーヘキサV(商品名、日油株式会社製)」)、ジクミルパーオキサイド(市販品:「パークミルD(商品名、日油株式会社製)」)等の過酸化物等が挙げられる。
熱ラジカル発生剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.2〜20質量部、更に好ましくは0.5〜10質量部である。
【0052】
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じて、感光性樹脂組成物と基板との接着性を向上させるために、接着助剤を添加してもよい。接着助剤としては、例えば、γ−グリシドキシシラン、アミノシラン、γ−ウレイドシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
接着助剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜5質量部、更に好ましくは0.5〜2質量部である。
【0053】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、フィルムや支持基板上に塗布する場合、作業性の観点から、溶媒を加えて、上述の各成分を溶解させた溶液の形態とすることが好ましい。
用いる溶媒としては、特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を主成分とする極性溶媒や、γ−ブチロラクトン等の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上の混合物として用いてもよい。
溶液の形態とした場合の感光性樹脂組成物溶液の固形分濃度は、好ましくは20〜85質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
【0054】
〔感光性樹脂組成物の特性〕
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物(後述の感光性樹脂フィルムも含む)は、優れた可視光透過率を有する。
感光性樹脂組成物の膜厚30μmの硬化物について、450nmの光透過率としては、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上、更に好ましくは89%以上である。
また、365nmの光透過率としては、好ましくは70%以上、より好ましくは72%以上、更に好ましくは75%以上であり、740nmの光透過率としては、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
なお、これらの波長の光透過率の値は、実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0055】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、高温で長時間の熱履歴においても樹脂着色が少ない優れた耐熱性を有する。
該組成物の耐熱性を示す、膜厚30nmの硬化物を130℃で500時間の熱履歴後の450nmの光透過率としては、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上である。
また、365nmの光透過率としては、好ましくは60%以上、より好ましくは64%以上、更に好ましくは68%以上であり、740nmの光透過率としては、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上、更に好ましくは90%以上である。
なお、上記の熱履歴の諸条件、光透過率の値については、実施例の記載に基づくものである。
【0056】
〔感光性樹脂フィルム〕
本発明の感光性樹脂組成物は、上記の溶媒に溶解した後、ポリエチレンテレフタレート等の有機フィルムを支持フィルム上に、公知の種々の方法により塗布し、乾燥して溶媒を除去することにより、本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を形成した2層の感光性樹脂フィルム(ドライフィルムレジスト)とすることができる。
また、さらに、この感光性樹脂層の上に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等の保護フィルムを積層して、3層の感光性樹脂フィルムとしてもよい。
他に、本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層に自己支持性があれば、支持フィルムを剥がして、支持フィルム無しの1層の感光性樹脂フィルムとすることも可能である。
【0057】
感光性樹脂フィルムとする場合、その厚みに特に制限はないが、支持フィルム等の支持用薄板の厚みとしては10μm〜3mmが好ましく、感光性樹脂層の厚みとしては1〜500μmが好ましく、保護フィルムの厚みとしては10〜200μmが好ましい。なお、支持フィルム等の支持用薄板は、中空構造デバイスの形状と厚さ及び製造の点からそれらの厚さが適宜決められるため、使用できる範囲は広くなっている。
【0058】
〔パターン形成方法〕
本発明の感光性樹脂組成物、及び感光性樹脂フィルムは、以下の方法により、所望のパターン形成をすることができる。パターン形成方法としては、上述の感光性樹脂組成物又は感光性樹脂フィルムを用いて形成される感光性樹脂層(感光性樹脂膜)を基板上に積層する積層工程と、該感光性樹脂層の所定部分にマスクを通して活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、感光性樹脂層の前記露光部以外の部分を、現像液を用いて除去する除去工程と、感光性樹脂層の前記露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する熱硬化工程とを経て、所望のパターンを形成することができる。
【0059】
(積層工程)
本積層工程においては、上述の感光性樹脂組成物又は感光性樹脂フィルムを支持基板上に塗布及び乾燥、又は、積層することにより、感光性樹脂膜を形成することができる。
支持基板としては、例えば、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2等)、窒化ケイ素、セラミック圧電基板等が挙げられる。
感光性樹脂組成物を塗布する場合、上述の溶媒に溶解して溶液の形態とすることが好ましい。そして、感光性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、浸漬塗布、ロールコーティング等の方法が挙げられる。また、感光性樹脂フィルムを用いる場合は、ラミネーター等を用いて積層することができる。
【0060】
感光性樹脂組成物の塗布膜厚は、塗布手段、感光性樹脂組成物の固形分濃度及び粘度等によって異なるが、乾燥後の被膜(感光性樹脂層)の膜厚が、通常1〜500μm、好ましくは1〜300μm、より好ましくは1〜250μmとなるように塗布される。
得られる被膜の膜厚が、特に300μm以下であると、解像度が良好である。感光性樹脂フィルムを使用する場合は、感光性樹脂層の膜厚を予め上記の膜厚となるように形成しておくことができる。
また、乾燥後の被膜の膜厚が上記範囲となるようにするためには、上述の感光性樹脂組成物を上述の溶媒で溶解させ、溶液の形態とすることが好ましいが、この溶液の粘度としては、好ましくは0.5〜20Pa・s、より好ましくは1〜10Pa・sである。
【0061】
その後、ホットプレート、オーブン等を用いて、60〜120℃の温度範囲で、1分〜1時間加熱乾燥することにより、支持基板上に感光性樹脂膜を形成することができる。
【0062】
(露光工程)
露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、必要に応じて所望のパターンを有するネガマスクを介して所定部分に活性光線を照射し、露光部を光硬化せしめる。
【0063】
ここで、露光に用いられる活性光線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられる。これらの中でも特に、紫外線、可視光線が好ましい。
本発明では、露光工程時に、支持基板上の感光性樹脂組成物からなる被膜(感光性樹脂層)の温度を上げて、露光を行ってもよい。
被膜(感光性樹脂層)の温度としては、被膜の物性変化を抑制できる温度であればよく、加熱方法や加熱装置に応じて100℃以下に設定することができる。その際、温度調整は、被膜を有する支持基板の温度を上げてもよいし、被膜の上方から温風等による加熱や、露光雰囲気全体の温度を上げる方法を使用してもよい。それによって、本発明は、光照射部の重合反応による硬化が光ラジカル発生剤を含まない場合よりも進行するため、後に述べる現像工程においてパターンのダレや欠け等の発生が抑制され、パターン形成性と解像度の向上がみられる。
【0064】
(除去工程)
除去工程として、感光性樹脂層の露光部以外の部分(未露光部)を有機溶剤系若しくはアルカリ水溶液の現像液を用いて除去することによりパターンを形成した後、感光性樹脂層の露光部を熱硬化させ、樹脂硬化物からなるパターンを形成する。
【0065】
現像液としては、有機溶剤若しくはアルカリ水溶液が使用できる。
有機溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、エタノール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液が挙げられる。
これらの中でも、現像速度の観点から、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを用いることが好ましい。
【0066】
また、本除去工程後、必要に応じて、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、n−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート等で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0067】
さらに、前記感光性樹脂層の前記露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する熱硬化工程を行うことが好ましい。現像後の熱硬化(キュア)は、温度を選択して段階的に昇温しながら、1〜2時間実施することが好ましい。熱硬化工程での温度は、好ましくは120〜240℃であり、段階的に昇温する場合は、好ましくは、120℃前後及び160℃前後で各10〜50分(好ましくは20〜40分)熱処理した後、220℃前後で30〜100分(好ましくは50〜70分)熱処理を行うことが好ましい。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、厚膜においても微細パターンの形成が可能であり、優れた可視光透過率を有し、かつ、高温で長時間の熱履歴後においても樹脂着色が少ない優れた耐熱性を有する。そのため、本発明の感光性樹脂組成物又は感光性樹脂フィルムは、小型化・高密度実装が求められ、高温環境下で長時間使用されるLED素子等の発光素子の封止部材として好適である。つまり、これらの本発明の感光性樹脂組成物又は感光性樹脂フィルムを用いて、LED素子等の発光素子の上部を封止してなる電子部品は、携帯電話等に用いられるLEDディスプレイの部品として適用し得る。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
製造例1
[アミドメタクリレートの合成]
温度計、撹拌装置の付いた1リットルの反応容器に、1,3−フェニレンビスオキサゾリンを380.0g(2.0mol)、ビスフェノールAを228.0g(1.0mol)入れ、150℃で10時間撹拌した。その後、メトキノン500ppmと、メタクリル酸172.0g(2.0mol)を加えて100℃で6時間撹拌し、ジメチルアセトアミド190gを滴下し、さらに100℃で6時間撹拌し、酸価が1.1mgKOH/gになったところで撹拌を止めて、下記式(6)で表されるアミドメタクリレートの溶液を得た。得られた溶液の固形分は80質量%であった。
【0071】
【化6】

【0072】
製造例2
[ウレタンアクリレートの合成]
温度計、撹拌装置の付いた1リットルの反応容器に、1,4−シクロヘキサンジメタノールを72.0g、m−キシリレンジイソシアネートを193.0g、シクロヘキサノンを380g入れ、窒素ガス気流下で撹拌しながら90℃〜100℃に加熱して、1時間反応させた。次いで、ペンタエリスリトールトリアクリレート306.0gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、下記式(7)で表されるウレタンアクリレートの溶液を得た。得られた溶液の固形分は60質量%であった。
【0073】
【化7】

【0074】
[実施例1〜15、比較例1〜5]
(A)〜(C)成分を、それぞれ下記第1表、及び第2表に示した配合割合(質量部、固形分比)で混合し、実施例1〜15、比較例1〜5の感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0075】
第1表、第2表中の各成分は、以下に示すものである。
<(A)成分>
・アミドメタクリレート(上記製造例1で得た、上記式(6)で表される化合物)
・ウレタンアクリレート(上記製造例2で得た、上記式(7)で表される化合物)
・UN−952(商品名、アクリロイル基を有するウレタン系化合物、官能基数=10、Mw=6500〜11000、根上工業株式会社製)
・UN−2600(商品名、アクリロイル基を有するウレタン系化合物、官能基数=2、Mw=2500、根上工業株式会社製)
・UN−9200A(商品名、アクリロイル基を有するウレタン系化合物、官能基数=2、Mw=15000、根上工業株式会社製)
・EA−6340(商品名、テトラヒドロ無水フタル酸変性ビニル基含有フェノール型エポキシ樹脂、中村化学工業株式会社製)
・A−BPEF(商品名、フルオレン骨格含有ジアクリレート、新中村化学工業株式会社)
・A−DPH(商品名、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・BPE−100(商品名、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、新中村化学工業株式会社)
・感光性ポリイミド樹脂:フォトニースPW−1000(商品名、東レ(株)製)
・感光性エポキシ樹脂:SU−8(商品名、化薬マイクロケム(株)製)
【0076】
<(B)成分>
・IRGACURE−OXE−01(商品名、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、BASF社製)
・IRGACURE−819(商品名、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、BASF社製)
【0077】
<(C)成分>
・IRGANOX565、IRGANOX1010、IRGANOX1076、IRGAMOD295(いずれも商品名、ヒンダードフェノール系化合物、BASF社製)
・CYANOX1790(商品名、ヒンダードフェノール系化合物、アメリカンシアナミド社製)
・スミライザーGP(商品名、ヒンダードフェノール系化合物、住友化学社製)
・ヨシノックス425(商品名、ヒンダードフェノール系化合物、エーピーアイコーポレーション社製)
・IRGANOX PS800(商品名、イオウ系化合物:3,3’−チオジプロピオン酸ジドデシル、BASF社製)
・IRGASTAB FS301(商品名、アミン系化合物:ビスオクタデシルヒドロキシルアミン、BASF社製)
・IRGAFOS168(商品名、リン系化合物:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、BASF社製)
【0078】
<その他の成分>
・熱ラジカル発生剤:パークミルD(商品名、ジクミルパーオキサイド、日油株式会社製)
・シランカップリング剤:AY43−031(商品名、東レ・ダウコーニング製)
【0079】
<解像度の評価>
実施例及び比較例で得た感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚30μmの感光性樹脂層を形成した。この感光性樹脂層を形成した基板について、ホール径60μmφの開口パターンを有するネガマスクを介して、プロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM、ウシオ電機社製)を用いて露光量100mJ/cm2で感光性樹脂層の露光を行った。露光後、この試験基板を、有機溶剤系現像液であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に3分間浸漬し、現像を行った。現像後のレジストパターンをn−ブチルアセテートで洗浄し、乾燥後に観察を行い、下記の基準に基づいて解像度(微細パターン形成性)を評価した。その結果を第3表に示す。
A:ホール径60μmφが開口しており、開口部は矩形である。
B:ホール径60μmφは開口しているが、開口部がテーパ形状である。
C:ホール径60μmφが開口しておらず、ビア埋まりとなっている。
【0080】
<初期光透過率の測定>
実施例及び比較例で得た感光性樹脂組成物の溶液を、薄ガラス基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚30μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、プロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM、ウシオ電機社製)を用いて露光量100mJ/cm2で感光性樹脂組成物層の露光を行い、光硬化させた。その後、感光性樹脂組成物層を、150℃で60分間、及び200℃で60分加熱して硬化させた。
この樹脂付ガラスの透過率を、ガラス単体の透過率をリファレンスとして、紫外可視分光光度計「U−3310 Spectrophotometer(日立ハイテク製)」を用いて、波長345nm、450nm、740nmの光透過率を測定した。その結果を第3表に示す。
【0081】
<130℃/500時間後の光透過率の測定>
初期光透過率の測定で用いた上記試験基板を、空気雰囲気下にて、130℃、500時間の環境下に放置した後、初期光透過率と同様の測定方法にて、波長345nm、450nm、740nmの光透過率を測定した。その結果を第3表に示す。
【0082】
<密着性の評価>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、SiO2膜が形成されたシリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚30μmの感光性樹脂層を形成した。この感光性樹脂層を形成した試験基板について、プロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM、ウシオ電機社製)を用いて、露光量100mJ/cm2で感光性樹脂組成物層の露光を行い、光硬化させた。
その後、この試験基板を150℃で60分間、及び200℃で60分間加熱して硬化させた。そして、この試験基板を、121℃、100%RH(相対湿度)、2気圧の環境下に100時間放置した後、碁盤目試験にて密着性を評価した。評価基準は以下の通りである。
A:剥離が見られない
B:僅かでも剥離が見られる
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
第3表に示された結果により、実施例1〜15の本発明の感光性樹脂組成物は、厚膜においても微細パターンの形成が可能であり、優れた可視光透過率を有し、かつ、高温で長時間の熱履歴後においても樹脂着色が少ない優れた耐熱性を有する。
一方、ヒンダードフェノール系構造を有する化合物を含まない組成物である比較例1及び2では、耐熱性が劣る結果となった。また、比較例3及び4では、(C)成分として配合した化合物と(A)成分との相溶性が悪く、溶液に濁りが発生したため、光透過率の測定を行わなかった。
更に、比較例5の感光性ポリイミド樹脂を用いた組成物は、可視光透過率が非常に低く、LED素子等の発光素子の封止用途としては使用できない結果となった。
そして、比較例6の感光性エポキシ樹脂を用いた組成物は、高温で長時間放置後の樹脂着色が大きく、初期透過率からの光透過率の劣化が著しく、耐熱性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物は、厚膜においても微細パターンの形成が可能であり、優れた可視光透過率を有し、かつ、高温で長時間の熱履歴後においても樹脂着色が少ない優れた耐熱性を有する。そのため、小型化・高密度実装が求められ、高温環境下で長時間使用されるLED素子等の発光素子の封止部材として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール系構造を有する化合物(C)を含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分が、(メタ)アクリレート化合物を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート化合物が、炭素−窒素結合を有する(メタ)アクリレート化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート化合物が、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、R31、R32、及びR33は、各々独立に、2価の有機基を示し、R34は水素原子又はメチル基を示し、R35及びR36は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。]
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート化合物が、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分として、アミド結合を含有する(メタ)アクリレート化合物とウレタン結合を含有する(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(A)成分として、前記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物とウレタン結合を含有する(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記感光性樹脂組成物の硬化物が、膜厚30μmにおける450nmの透過率が85%以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記感光性樹脂組成物の硬化物が、130℃で500時間の熱履歴後の膜厚30μmにおける450nmの透過率が80%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物をフィルム状に成形してなる、感光性樹脂フィルム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又は請求項10に記載の感光性樹脂フィルムを用いて、発光素子の上部を封止してなる、電子部品。
【請求項12】
前記発光素子がLED素子である、請求項11に記載の電子部品。

【公開番号】特開2013−109235(P2013−109235A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255441(P2011−255441)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】