説明

感光性樹脂組成物、カラーフィルタ、保護膜、フォトスペーサー、液晶表示装置用基板、液晶表示装置および固体撮像素子

【課題】 露光時の重合硬化性に優れ、露光感度が高く、短い加熱処理時間でもプロファイル特性に優れる着色パターン、断面形状の均一性および高さ均一性に優れるフォトスペーサー、均一性や硬度に優れる保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも側鎖に、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、重合性化合物(B)、ならびに、光重合開始剤(C)を含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。また、該感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタ、保護膜、フォトスペーサーおよび液晶表示装置用基板に関する。さらには、該カラーフィルタ等を用いた液晶表示装置および固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、高画質画像を表示する表示装置に広く利用されている。表示装置用基板(例えば、カラーフィルタ基板、アクティブマトリクス基板、等)は、基板上に着色パターンや保護膜等の構造物が形成された構成となっている。これらの構造物のうち、着色パターンや保護膜、フォトスペーサーの形成方法としては、感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーにより形成する方法が主流となっている。
【0003】
感光性樹脂組成物に関しては、従来より種々の検討がなされており、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸等とエチレン性不飽和化合物との共重合体および特定の光重合開始剤を用いた感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、特定構造の脂肪族環状炭化水素基を有する構成単位と酸性官能基を有する構成単位とラジカル重合性基を有する構成単位とが連結した分子構造の脂肪族環状炭化水素基含有共重合体からなる硬化性樹脂が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルタを作製する方法の1つとして、顔料分散法が広く利用されている。顔料分散法としては、顔料を種々の感光性樹脂組成物に分散させた感光性樹脂組成物を用い、フォトリソ法によってカラーフィルタを作製する方法がある。この方法は、顔料を含有するために光や熱に対して安定であると共に、フォトリソ法によってパターニングするため、位置精度が充分に確保され、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタのなどの作製に好適な方法とされている。
【0005】
カラーフィルタの作製に用いられる着色剤としては、顔料だけでなく、染料などの顔料以外の色素化合物も広く検討されている。そのうち、染料としては、トリアリールメタン染料、ピロメテン系染料、ピリミジンアゾ系染料、ピラゾールアゾ系染料、キサンテン系染料、フタロシアニン染料など、多種多様な色素母体を持つ化合物が知られている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【0006】
着色剤として染料を使用すると、染料自体の色純度やその色相の鮮やかさにより、画像表示させたときの表示画像の色相や輝度を高めることができる点で有用とされている。
また、染料として特定のアントラキノン化合物を用いると、コントラスト等に優れたカラーフィルタが得られることが開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0007】
一方、染料等の着色剤と不飽和基を有する特定構造の樹脂バインダーを用いた感光性樹脂組成物は、耐溶剤性が向上すること(例えば、特許文献7参照)なども知られており、特定構造の樹脂バインダーはフォトリソ性や諸耐性の付与などの性能向上に大きく寄与しているが、十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−86565号公報
【特許文献2】特開2002−293837号公報
【特許文献3】特開2008−292970号公報
【特許文献4】特開2007−039478号公報
【特許文献5】特許第3387541号
【特許文献6】特開2001−108815号公報
【特許文献7】特開2009−169231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の感光性樹脂組成物を用いて基板上にパターン構造物(例えば、フォトスペーサー、着色パターン、等。以下同じ)や保護膜を形成する場合、露光のみでは重合硬化が不十分となる場合があり、露光・現像後に高温の加熱処理を施す必要を生ずる場合がある。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、露光時の重合硬化性に優れ、いわゆる露光感度が高く、分光特性に優れ、密着性が高く、液晶の比抵抗に優れた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
さらに、例えば、断面形状の均一性及び高さ均一性に優れるフォトスペーサー、均一性や硬度に優れる保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、液晶表示装置に用いた際に表示ムラを抑制できる液晶表示装置用基板、及び表示ムラが抑制された液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂に、2種以上の異なる重合性不飽和基を有するものを採用することにより、フォトリソグラフィ法によるパターニング時の光架橋と現像処理後の高温での加熱処理時の熱架橋が、逐次進行することで架橋構造が緻密となり、上記課題を解決しうることを見出した。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
(1)少なくとも側鎖に、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、重合性化合物(B)、ならびに、光重合開始剤(C)を含む感光性樹脂組成物。
(2)さらに、着色剤を含む、(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3)前記アルカリ可溶性樹脂が下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有する、(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物。
一般式(A)
【化1】

(一般式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基である。)
(4)前記アルカリ可溶性樹脂が、下記一般式(A)で表される繰り返し単位および下記一般式(B)で表される繰り返し単位を有する、(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物。
一般式(A)
【化2】

(一般式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(B)
【化3】

(一般式(B)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
(5)前記アルカリ可溶性樹脂が、下記一般式(A)で表される繰り返し単位、下記一般式(B)で表される繰り返し単位および下記一般式(C)で表される繰り返し単位を有する、(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物。
一般式(A)
【化4】

(一般式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(B)
【化5】

(一般式(B)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
一般式(C)
【化6】

(一般式(C)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは2価の連結基を表し、Acは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。)
(6)前記一般式(A)で表される繰り返し単位、前記一般式(B)で表される繰り返し単位および前記一般式(C)で表される繰り返し単位のいずれかにおいて、Rがメチル基である、(3)〜(5)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
(7)前記一般式(A)で表される繰り返し単位において、Rがメチル基であり、R1〜R5がいずれも水素原子である、(3)〜(6)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いてなるカラーフィルタ、保護膜、フォトスペーサーまたは液晶表示装置用基板。
(9)(2)〜(7)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を、支持体に適用し着色層を形成する着色層形成工程と、該着色層に対してパターン様の露光をして、潜像を形成する露光工程と、前記潜像が形成された着色層を現像してパターンを形成する現像工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。
(10)(8)に記載のカラーフィルタ、(9)に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されたカラーフィルタ、保護膜、または、フォトスペーサーを具備してなる液晶表示装置または固体撮像素子。
(11)下記一般式(1−1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2−1)で表される繰り返し単位および下記一般式(3−1)で表される繰り返し単位を有する樹脂。
一般式(1−1)
【化7】

一般式(2−1)
【化8】

一般式(3−1)
【化9】

(一般式(3−1)中、Xは2価の連結基を表し、Acは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。)
(12)前記樹脂を構成する繰り返し単位の90モル%以上が、前記一般式(1−1)で表される繰り返し単位、前記一般式(2−1)で表される繰り返し単位および前記一般式(3−1)で表される繰り返し単位のいずれかである、(11)に記載の樹脂。
(13)前記樹脂は、前記一般式(1−1)で表される繰り返し単位を40〜80モル%、前記一般式(2−1)で表される繰り返し単位15〜30モル%を、前記一般式(3−1)で表される繰り返し単位を1〜30モル%含む、(11)または(12)に記載の樹脂。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、露光時の重合硬化性に優れ、いわゆる露光感度が高く、短い加熱処理時間でもプロファイル特性に優れる着色パターン、断面形状の均一性及び高さ均一性に優れるフォトスペーサー、均一性や硬度に優れる保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することが可能になった。
また、本発明は、表示装置に用いた際に表示ムラを抑制できる表示装置用基板、及び表示ムラが抑制された表示装置を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について詳細に説明すると共に、これを用いた本発明のカラーフィルタ、保護膜、フォトスペーサー、表示装置用基板、および液晶表示装置について詳細に説明する。
尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含む意味で使用される。
【0013】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、重合性化合物(B)、ならびに、光重合開始剤(C)を含むことを特徴とする。本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じてさらに着色剤、有機溶剤、および各種添加剤を用いて構成することができる。
【0014】
なお、以下において、本発明の感光性樹脂組成物を単に「本発明の組成物」または「組成物」と称することがある。
また、アルキル基とは、特に断りのない限り、置換基を有するアルキル基および置換基を有しないアルキル基であり、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基の総称である。
【0015】
<アルカリ可溶性樹脂(A)>
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂は、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有することを特徴とする。
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)を、溶剤を除く成分の10〜50質量%の割合で含むことが好ましく、15〜45質量%の割合で含むことがより好ましい。
酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシ酸基、サリチル酸基、酸ウレイド基などが例示され、カルボキシル基がより好ましい。酸性基は、1種類のみであってもよいし、2種類以上含まれていても良い。
酸性基は、好ましくは、酸性基を含む繰り返し単位として、アルカリ可溶性樹脂の中に組み込まれる。酸性基を含む繰り返し単位は、アルカリ可能性樹脂の3〜50モル%の割合で含まれることが好ましく、10〜40モル%の割合で含まれることがより好ましく、15〜35モル%の割合で含まれることがさらに好ましい。
2種類以上の互いに異なる重合性不飽和基としては、((メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、環状不飽和基など)が例示され、少なくとも、(メタ)アクリロイルオキシ基およびビニル基を含むことが好ましい。重合性不飽和基は、3種類以上でもよい。
2種類以上の互いに異なる重合性不飽和基は、好ましくは、それぞれ、重合性不飽和基を含む繰り返し単位として、アルカリ可溶性樹脂の中に組み込まれる。重合性不飽和基を含む繰り返し単位は、重合性不飽和基を含む繰り返し単位の合計で、アルカリ可溶性樹脂の40〜97モル%であることが好ましく、50〜90モル%であることがより好ましい。
さらに、2種類以上の互いに異なる重合性不飽和基として、少なくとも、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む繰り返し単位およびビニル基を含む繰り返し単位を含む場合、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む繰り返し単位が1〜30モル%で、ビニル基を含む繰り返し単位が40〜80モル%であることが好ましい。
【0016】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するを有することが好ましく、下記一般式(A)で表される繰り返し単位および下記一般式(B)で表される繰り返し単位を有することがより好ましく、下記一般式(A)で表される繰り返し単位、下記一般式(B)で表される繰り返し単位および下記一般式(C)で表される繰り返し単位を有することがさらに好ましい。
一般式(A)
【化10】

(一般式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(B)
【化11】

(一般式(B)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
一般式(C)
【化12】

(一般式(C)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは2価の連結基を表し、Acは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。)
【0017】
一般式(A)〜一般式(C)におけるRは、メチル基が好ましい。
【0018】
1、R2、R3、R4およびR5におけるハロゲン原子、アルキル基及びアリール基としては、具体的には下記のものが挙げられる。
【0019】
ハロゲン原子の具体例としては、Cl、Br、Iなどが挙げられる。アルキル基としては、直鎖、分岐、又は環状であってもよく、メチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基などが挙げられ、炭素数1〜7のものが好ましい。アリール基としては、フェニル基、フリル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0020】
1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ、水素原子が好ましく、全てが水素原子であることがより好ましい。
【0021】
一般式(C)におけるXは2価の連結基を示し、直鎖、分岐または環状の、置換または無置換のアルキレン基または、該アルキレン基と、−O−、−C(=O)−および−NH−の少なくとも1種以上との組み合わせからなる基が好ましい。アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜15が好ましい。
一般式(C)におけるAcは、メタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0022】
アルカリ可溶性樹脂は、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を好ましくは20〜90モル%、より好ましくは40〜80モル%、前記一般式(B)で表される繰り返し単位を好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%を、前記一般式(C)で表される繰り返し単位を好ましくは1〜30モル%含む。
【0023】
前記一般式(A)で表される繰り返し単位は、下記一般式(A−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(A−1)
【化13】

【0024】
前記一般式(B)で表される繰り返し単位は、下記一般式(B−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(B−1)
【化14】

【0025】
前記一般式(C)で表される繰り返し単位は、下記一般式(C−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化15】

(一般式(3−1)中、Xは2価の連結基を表し、Acは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。)
一般式(3−1)におけるXは、直鎖、分岐または環状の、置換または無置換のアルキレン基または、該アルキレン基と、−O−、−C(=O)−および−NH−の少なくとも1種以上との組み合わせからなる基が好ましい。アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜15が好ましい。
一般式(3−1)におけるAcは、メタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0026】
さらに、本発明で用いるアルカリ可溶性ポリマーは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の繰り返し単位を含んでいても良い。他の繰り返し単位は、アルカリ可溶性ポリマーの0〜30モル%であることが好ましく、0〜20モル%であることがより好ましく、0〜10モル%であることがさらに好ましい。
かかる他の繰り返し単位としては、下記一般式(D)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(D)
【化16】

(一般式(D)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは有機基を表す。)
Rはメチル基が好ましい。
Aは、直鎖、分岐または環状の、置換または無置換のアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、炭素数1〜20が好ましい。また、置換基としては水酸基が好ましい。
【0027】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂は、前記一般式(A)〜(D)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、不純物等を意味し、通常は、1モル%以下である。
【0028】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂の分子量は、特に定めるものではないが、重量平均分子量で、1000〜2x105であることが好ましく、2000〜1x105であることがより好ましく、5000〜x104であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂は、好ましくは、少なくとも、下記一般式Iで表されるモノマーを重合させて合成されることが好ましい。
一般式I
【化17】

(一般式I中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基である。)
【0030】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂は、また、下記一般式IIまたは一般式IIIを経由して合成されることが好ましく、一般式IIを経由して合成されることがより好ましい。
一般式II
【化18】

(一般式II中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基である。)
一般式III
【化19】

(一般式II中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基を表し、R6は、炭素数2〜8のアルキレン基を表す。)
【0031】
上記一般式I〜IIIにおけるR、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、ぞれぞれ、上記一般式(A)〜(C)におけるものと同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0032】
一般式Iで示されるモノマーは、下記不飽和基を有するアルコールとアクリル基またはメタクリル基とをエステル化反応させることにより合成される。
【0033】
代表的な化合物は、アリルアルコール、2−メチルアリルアルコール、クロチルアルコール、3−クロル−2−プロペン−1−オール、3−フェニル−2−プロペン−1−オール、3,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール、3−ブロム−3−フェニル−2−プロペン−1−オール、2−メチル−3−フェニル−2−プロペン−1−オール、2−メチル−3,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール、2−エチル−1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール、2,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール、1,2,3−トリフェニル−2−プロペン−1−オール、2,3,3−トリフェニル−2−プロペン−1−オール、1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール、1,1,3−トリフェニル−2−プロペン−1−オール、1,1,3,3−テトラフェニル−2−プロペン−1−オール、1−フェニル−2−プロペン−1−オール、1,2−ジフェニル−2−プロペン−1−オール、1−フェニル−2−メチル−2−プロペン−1−オール、1−シクロヘキシル−2−プロペン−1−オール、2−ベンジル−2−プロペン−1−オール、1−カルボキシ−2−プロペン−1−オール、1−シアノ−2−プロペン−1−オール、3−シクロペンチル−2−プロペン−1−オール、3−ブロム−2−プロペン−1−オール、2−メチル−3−クロル−2−プロペン−1−オール、2−メチル−3−ブロム−2−プロペン−1−オール、2−クロル−3−フェニル−2−プロペン−1−オール(2−クロルシンナミルアルコール)、2−ブロム−3−フェニル−2−プロペン−1−オール(2−ブロムシンナミルアルコール)、2−フルオロ−3−フェニル−2−プロペン−1−オール(2−フルオロシンナミルアルコール)、2−シアノ−3−フェニル−2−プロペン−1−オール(2−シアノシンナミルアルコール)、2−クロル−2−プロペン−1−オール(2−クロルアリルアルコール)、2−ブロム−2−プロペン−1−オール(2−ブロムアリルアルコール)、2−ブロム−3,3−ジフルオロ−2−プロペン−1−オール、2−クロル−3,3−ジフルオロ−2−プロペン−1−オール、2−フルオロ−3−クロル−2−プロペン−1−オール、2,3−ジブロム−2−プロペン−1−オール、2−クロル−3−メチル−2−プロペン−1−オール等が挙げられる。
【0034】
酸性基としては、一般式Iで示される不飽和基を有するモノマーと共重合し得る酸性基を含有するビニル系化合物であればいずれでもよく、例えば、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック〔基礎編〕」培風館(1986年)等に記載されている。具体的には、アクリル酸、α及び/又はβ置換アクリル酸(例えば、α−アセトキシ体、α−アセトキシメチル体、α−(2−アミノ)メチル体、α−クロロ体、α−ブロモ体、α−フロロ体、α−トリブチルシリル体、α−シアノ体、β−クロロ体、β−ブロモ体、α−クロロ−β−メトキシ体、α,β−ジクロロ体等)、メタクリル酸、イタコン酸、イタコン酸半エステル類、イタコン酸半アミド類、クロトン酸、2−アルケニルカルボン酸(例えば、2−ペンテン酸、2−メチル−2−ヘキセン酸、2−オクテン酸、4−メチル−2−ヘキセン酸、4−エチル−2−オクテン酸等)、マレイン酸、マレイン酸半エステル、マレイン酸半アミド類、ビニルベンゼンカルボン酸類、ビニルベンゼンスルホン酸類、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、ジカルボン酸類のビニル基又はアリル基の半エステル誘導体、及びこれらのカルボン酸又はスルホン酸のエステル誘導体、アミド誘導体の置換基中に該酸性基を含有する化合物が挙げられる。
【0035】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂は、前記の一般式II、IIIに示したように、少なくとも一般Iで表されるモノマーと少なくとも酸性基を有するモノマー、さらに、必要に応じ、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを共重合させることにより該不飽和基を有する共重合体を得ることができる。
【0036】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等である。この構造単位を導入するために使用される単量体としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が例示される。
【0037】
前記酸性基及び又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシ基と反応する(メタ)アクリレート含有化合物が、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート又は置換基を有していてもよい(メタ)アクリロイルアルキルイソシアネート、(メタ)アクリル酸クロライドなどである。
【0038】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記構造式(1)で表される化合物及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【0039】
【化20】

【0040】
ただし、前記構造式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。L1は有機基を表す。L1は、直鎖、分岐または環状の、置換または無置換のアルキレン基または、該アルキレン基と、−O−、−C(=O)−および−NH−の少なくとも1種以上との組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜15が好ましく、1〜4がより好ましい。
【0041】
【化21】

【0042】
ただし、前記構造式(2)中、R2は水素原子又はメチル基を表す。L2は有機基を表す。Wは4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。L2は、直鎖、分岐または環状の、置換または無置換のアルキレン基または、該アルキレン基と、−O−、−C(=O)−および−NH−の少なくとも1種以上との組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜15が好ましく、1〜4がより好ましい。
【0043】
前記構造式(1)で表される化合物及び構造式(2)で表される化合物の中でも、構造式(1)で表される化合物がより好ましい。前記構造式(1)及び(2)においては、L1及びL2がそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基のものがより好ましい。
【0044】
前記構造式(1)で表される化合物又は構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の例示化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【0045】
【化22】

【0046】
置換基を有していてもよい(メタ)アクリロイルアルキルイソシアネート化合物としては、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基(−NCO)と結合したもので、具体的には2−アクリロイルエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等が例示される。2−メタクリロイルエチルイソシアネートは、昭和電工(株)製「カレンズMOI」等で市販されている。
【0047】
(メタ)アクリル酸クロライド化合物としてのアクリル酸クロライドやメタアクリル酸クロライドは、東京化成工業株式会社製として市販されている。
【0048】
本発明のアルカリ可溶性樹脂には更にその他の単量体を共重合させてもよい。
【0049】
―その他の単量体―
前記その他の単量体としては、特に制限はなく、例えば分岐および/または脂環構造を有する基を含有する単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。単量体の具体例としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ−2,2,1−ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸−1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸−3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4,1,0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,5−トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、メタクリル酸フエンチル、メタクリル酸1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシルなどが好ましく、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチルが特に好ましい。
【0050】
又、分岐および/または脂環構造を有もたない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエーテル、二塩基酸無水物基、ビニルエステル基、炭化水素アルケニル基等を有する単量体なども使用できる。
前記ビニルエーテル基としては、特に制限はなく、例えば、ブチルビニルエーテル基などが挙げられる。
【0051】
前記二塩基酸無水物基としては、特に制限はなく、例えば、無水マレイン酸基、無水イタコン酸基などが挙げられる。
前記ビニルエステル基としては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル基などが挙げられる。前記炭化水素アルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン基、イソプレン基などが挙げられる。
【0052】
前記樹脂におけるその他の単量体の含有率としては、モル組成比が、0〜30モル%であることが好ましく、0〜20モル%であることがより好ましく、0〜10モル%であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂の具体例としては、例えば、下記化合物P−1〜P−18で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化23】

【0055】
【化24】

【0056】
【化25】

【0057】
【化26】

【0058】
【化27】

【0059】
【化28】

【0060】
【化29】

【0061】
<(B)重合性化合物>
重合性化合物としては、例えば少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、公知の組成物を構成する成分から選択して用いることができ、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0020]に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号[0027]〜[0053]に記載の成分を挙げることができる。
【0062】
また、イソシアネートと水酸基との付加反応を用いて製造されるウレタン付加の重合性化合物も好適であり、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0063】
具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートEO変性体などが、並びに、市販品としては、NKエステル A−TMMT、NKエステル A−TMM−3、NKオリゴUA−32P、NKオリゴUA−7200(以上、新中村化学工業(株)製)、アロニックス M−305、アロニックス M−306、アロニックス M−309、アロニックス M−450、アロニックス M−402、TO−1382(以上、東亞合成(株)製)、V#802(大阪有機化学工業(株)製)を好ましい例として挙げることができる。
これらの重合性化合物は単独で、或いは2種以上の併用で用いることができる。
【0064】
感光性樹脂組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量(2種以上の場合は総含有量)としては、10質量%〜80質量%が好ましく、15質量%〜75質量%がより好ましく、20質量%〜60質量%が特に好ましい。
【0065】
<(C)光重合開始剤>
光重合開始剤は、前記重合性化合物を重合させ得るものであれば、特に制限はなく、特性、開始効率、吸収波長、入手性、コスト等の観点で選ばれるのが好ましい。
光重合開始剤は、露光光により感光し、重合性化合物の重合を開始、促進する化合物である。波長300nm以上の活性光線に感応し、重合性化合物の重合を開始、促進する化合物が好ましい。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光重合開始剤についても、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
【0066】
具体的には例えば、オキシムエステル化合物、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物およびその誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、感度の点から、オキシムエステル化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましい。
【0067】
オキシムエステル化合物としては、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特表2004−534797号公報、国際公開第2005/080337号、国際公開第2006/018973号明細書、特開2007−210991号公報、特開2007−231000号公報、特開2007−269779号公報、特開2009−191061号公報、国際公開第2009/131189号明細書に記載の化合物を使用できる。
【0068】
具体的な例としては、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ペンタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘキサンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘプタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(エチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(ブチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−メチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−プロピル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−ブチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンなどが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0069】
また、本発明においては、感度、経時安定性、後加熱時の着色の観点から、光重合開始剤であるオキシムエステル化合物として、下記一般式(III)で表される化合物も好適である。
【0070】
【化30】

【0071】
一般式(III)中、X1、X2、およびX3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表し、R1は−R、−OR、−COR、−SR、−CONRR’、または−CNを表し、R2およびR3はそれぞれ独立に、−R、−OR、−COR、−SR、または−NRR’を表す。RおよびR’は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、または、複素環基を表し、これらの基は、ハロゲン原子および複素環基からなる群より選択される1以上で置換されていてもよく、該アルキル基、およびアラルキル基におけるアルキル鎖を構成する炭素原子の1以上が、不飽和結合、エーテル結合、またはエステル結合に置き換わっていてもよく、RおよびR’は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0072】
上記一般式(III)中、X1、X2、およびX3がハロゲン原子を表す場合のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、X1、X2、およびX3がアルキル基を表す場合のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ビニル、アリル、ブテニル、エチニル、プロピニル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロピロキシエチル、メトキシエトキシエチル、エトキシエトキシエチル、プロピロキシエトキシエチル、メトキシプロピル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、2−(ベンゾオキサゾール−2’−イル)エテニル等が挙げられる。
なかでも、X1、X2、およびX3がいずれも、水素原子を表すか、或いは、X1がアルキル基を表し、X2、およびX3がいずれも水素原子を表すことが好ましい。
【0073】
上記一般式(III)中、RおよびR’で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ビニル、アリル、ブテニル、エチニル、プロピニル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロピロキシエチル、メトキシエトキシエチル、エトキシエトキシエチル、プロピロキシエトキシエチル、メトキシプロピル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、2−(ベンゾオキサゾール−2’−イル)エテニル等が挙げられる。
RおよびR’で表されるアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、クロロフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスレニル等が挙げられる。
RおよびR’で表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル、クロロベンジル、α−メチルベンジル、α、α−ジメチルベンジル、フェニルエチル、フェニルエテニル等が挙げられる。
RおよびR’で表される複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、フリル、チオフェニル等が挙げられる。
また、RおよびR’は互いに結合して形成される環としては、例えば、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0074】
上記RおよびR’を含んで構成されるR2およびR3としては、それぞれ独立に、メチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、−S−Ph、−S−Ph−Cl、および−S−Ph−Brが特に好ましい様態である。
【0075】
(C)光重合開始剤の中でも、上記一般式(III)において、X1、X2、およびX3がいずれも、水素原子であるもの;R1がアルキル基、特にメチル基であるもの;R2がアルキル基、特にメチル基であるもの;R3がアルキル基、特にエチル基であるものは、光重合開始剤として特に好適である。
【0076】
従って、上記一般式(III)で表される光重合開始剤の好ましい具体例としては、以下に例示する化合物A〜化合物Fが挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0077】
【化31】

【0078】
【化32】

【0079】
【化33】

【0080】
上記一般式(III)で表される光重合開始剤は、例えば、特開2005−220097号公報に記載の方法により合成することができる。
【0081】
本発明に用いる一般式(III)で表される化合物は、250nm〜500nmの波長領域に吸収波長を有するものである。より好ましくは、300nm〜380nmの波長領域に吸収波長を有するものを挙げることができる。特に、308nmおよび355nmの吸光度が高いものが好ましい。
【0082】
また、本発明においては、感度、経時安定性、後加熱時の着色の観点から、光重合開始剤であるオキシムエステル化合物として、下記一般式(II)で表される化合物も好適である。
【0083】
【化34】

【0084】
一般式(II)中、R22は1価の置換基を表す。A22は2価の連結基を表し、Arは、アリール基を表す。nは、0〜5の整数である。X22は1価の置換基を表し、nが2〜4の整数である場合複数存在するX22は、同一であっても異なってもよい。
【0085】
前記R22で表される一価の置換基としては、以下に示す一価の非金属原子団であることが好ましい。
22で表される一価の非金属原子団としては、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよい複素環基、等が挙げられる。
【0086】
置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、等が挙げられる。
【0087】
置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
【0088】
置換基を有してもよいアルキルスルホニル基としては、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基が好ましく、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等が挙げられる。
【0089】
置換基を有してもよいアリールスルホニル基としては、炭素数6〜30のアリールスルホニル基が好ましく、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基等が挙げられる。
【0090】
置換基を有してもよいアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等が挙げられる。
【0091】
置換基を有してもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、芳香族或いは脂肪族の複素環が好ましい。例えば、チエニル基、フリル基、ピラニル基、等が挙げられる。
【0092】
前記R22としては、高感度化の点から、無置換のまたは置換基を有するアシル基がより好ましく、具体的には、無置換のまたは置換基を有するアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましい。
前記置換基としては、例えば、下記の構造式で表される基が挙げられ、中でも、(d−1)(d−4)および(d−5)のいずれかが好ましい。
【0093】
【化35】

【0094】
前記A22で表される二価の連結基としては、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキレン、置換基を有してもよいシクロヘキシレン、置換基を有してもよいアルキニレンが挙げられる。
これらの基に導入しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0095】
中でも、前記A22としては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0096】
前記Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、また、置換基を有していてもよい。
具体的にはArは、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、o−、m−、およびp−クメニル基、メシチル基等が挙げられる。中でも、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換または無置換のフェニル基が好ましい。
【0097】
上記フェニル基が置換基を有している場合、その置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、等が挙げられる。
【0098】
一般式(III)においては、前記Arと隣接するSとで形成される「SAr」の構造が以下に示す構造であると、感度の点で好ましい。
【0099】
【化36】

【0100】
前記X22で表される一価の置換基としては、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0101】
置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、等が挙げられる。
【0102】
置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、等がある。
【0103】
置換基を有してもよいアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基等が挙げられる。
【0104】
置換基を有してもよいアルキニル基としては、炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
【0105】
置換基を有してもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0106】
置換基を有してもよいアリールオキシ基としては、炭素数6〜30のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−クロロフェニルオキシ基、2−メチルフェニルオキシ基、2−メトキシフェニルオキシ基、等が挙げられる。
【0107】
置換基を有してもよいアルキルチオオキシ基としては、炭素数1〜30のチオアルコキシ基が好ましく、例えば、メチルチオオキシ基、エチルチオオキシ基、プロピルチオオキシ基、イソプロピルチオオキシ基、ブチルチオオキシ基、イソブチルチオオキシ基、sec−ブチルチオオキシ基、tert−ブチルチオオキシ基、ペンチルチオオキシ基、イソペンチルチオオキシ基、ヘキシルチオオキシ基、ヘプチルチオオキシ基、オクチルチオオキシ基、2−エチルヘキシルチオオキシ基、デシルチオオキシ基、ドデシルチオオキシ基、オクタデシルチオオキシ基、ベンジルチオオキシ基等が挙げられる。
【0108】
置換基を有してもよいアリールチオオキシ基としては、炭素数6〜30のアリールチオオキシ基が好ましく、例えば、フェニルチオオキシ基、1−ナフチルチオオキシ基、2−ナフチルチオオキシ基、2−クロロフェニルチオオキシ基、2−メチルフェニルチオオキシ基、2−メトキシフェニルチオオキシ基、2−ブトキシフェニルチオオキシ基、3−クロロフェニルチオオキシ基、3−トリフルオロメチルフェニルチオオキシ基、3−シアノフェニルチオオキシ基、3−ニトロフェニルチオオキシ基、4−フルオロフェニルチオオキシ基、4−シアノフェニルチオオキシ基、4−メトキシフェニルチオオキシ基、4−ジメチルアミノフェニルチオオキシ基、4−メチルスルファニルフェニルチオオキシ基、4−フェニルスルファニルフェニルチオオキシ基等がある。
【0109】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等がある。
【0110】
置換基を有してもよいハロゲン化アルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロメチル基、モノブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基等が挙げられる。
【0111】
N上に置換基を有してもよいアミド基としては、N,N−ジメチルアミド基、N,N−ジエチルアミド基等が挙げられる。
【0112】
これらの中でも、X22としては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオオキシ基、置換基を有してもよいハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよいアミノ基、またはN上に置換基を有してもよいアミド基が好ましく、中でも置換基を有してもよいアルキル基がより好ましい。
【0113】
また、一般式(III)におけるnは0〜5の整数を表すが、合成の容易さの観点で0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましい。
一般式(III)において、X22が複数存在する場合、複数のX22は同じであっても、異なっていてもよい。
【0114】
上記した一般式(III)で表されるオキシム光重合開始剤の具体例を以下に示す。
【0115】
【化37】

【0116】
【化38】

【0117】
本発明に用いる一般式(III)で表される化合物は、250nm〜500nmの波長領域に吸収波長を有するものである。より好ましくは、300nm〜380nmの波長領域に吸収波長を有するものを挙げることができる。特に、308nmおよび355nmの吸光度が高いものが好ましい。
【0118】
有機ハロゲン化化合物の例としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc.Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭55−32070号公報、特開昭60−239736号公報、特開昭61−169835号公報、特開昭61−169837号公報、特開昭62−58241号公報、特開昭62−212401号公報、特開昭63−70243号公報、特開昭63−298339号公報、M.P.Hutt“Journal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0119】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物の例としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0120】
光重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上用いる場合には、一般式(III)で表される化合物を複数種を使用してもよいし、一般式(II)で表される化合物を、複数種を使用してもよい。また、一般式(II)、および(III)で表される化合物からそれぞれ少なくとも1種を用いてもよい。また、一般式(II)、および(III)で表される化合物をそれぞれ少なくとも1種と一般式(II)、および(III)で表される化合物以外のオキシム化合物あるいはオキシム化合物以外の光重合開始剤を用いてもよい。また、増感剤を併用してもよい。
【0121】
光重合開始剤の総含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましく、1質量%〜5質量%が最も好ましい。この範囲内であると、露光時の感度が高く、また色特性も良好である。
【0122】
<増感剤>
本発明の感光性樹脂組成物には増感剤を加えることもできる。本発明に用いる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、ベンゾフェノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。増感剤は、光重合開始剤に対し、50〜200質量%の割合で添加することが好ましい。
【0123】
<多官能チオール化合物>
本発明の感光性樹脂組成物は、多官能チオール化合物を含んでも良い。
本発明の感光性樹脂組成物は、多官能チオール化合物を含むことで、感度を高め、染料等の色材起因のイオン溶出等が抑制され、液晶表示装置のカラーフィルタ作製に本発明の感光性樹脂組成物を用いたとき、クロストーク等の画質の劣化を防止することができ、鮮明な高画質の表示が可能となる。且つ、本発明の感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタは、パターン形状が適当なテーパを有することができるので、透明電極を付与しても透明電極の断線がなく、しかもパターン現像における着色画素の突起などが生じず、パターンの直線性が良好である。本発明の感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタを備えることによって、高画質の液晶表示装置を得ることができる。
【0124】
本発明において「多官能チオール化合物」とは、チオール基を分子内に2個以上有する化合物を意味する。上記多官能チオール化合物としては、分子量100以上の低分子化合物が好ましく、具体的には、分子量100〜1500であることが好ましく、150〜1000がさらに好ましい。上記多官能チオール化合物はチオール基を分子内に2〜10個有することが好ましく、2〜6個有することがさらに好ましい。また、これら化合物は上記ラジカル重合性モノマーが重合する際に補助的に用いられる系とされることが好ましい。具体的には、多官能チオール化合物の添加量を組成物の全固形分に対して1〜20質量%であるようにするか、若しくは、同時に含有する上記ラジカル重合性モノマーの添加量よりも少ない添加量とすることが好ましい。
【0125】
本発明において、(B)多官能チオール化合物としては、下記一般式(2)で表される基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0126】
【化39】

(一般式(2)中、Rは水素原子、またはアルキル基を表し、Aは−CO−、または−CH2−を表す。)
【0127】
(B)多官能チオール化合物としては、一般式(2)で表される基を2〜6有する化合物が好ましく、2〜4有する化合物がさらに好ましい。
一般式(2)中のRにおけるアルキル基としては、直鎖、分岐、および環状のアルキル基であり、炭素数の範囲としては1〜16が好ましく、1〜10の範囲であることがより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、2−エチルへキシル基等であり、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基が好ましい。
Rとしては、特に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基が最も好ましい。
【0128】
本発明において、(B)多官能チオール化合物としては、前記一般式(2)を複数個有する下記一般式(1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0129】
【化40】

(一般式(1)中、Rは水素原子、またはアルキル基を表し、Aは−CO−、または−CH2−を表す。Lはn価の連結基を表し、nは2〜6の整数を表す。)
【0130】
一般式(1)中のRにおけるアルキル基は、前記一般式(1)中のRと同義であり、好ましい範囲も同様である。nは2〜4が好ましい。
一般式(1)中のn価の連結基であるLとしては、例えば−(CH2)m−(mは2〜6)などの2価の連結基、トリメチロールプロパン残基、−(CH2)p−(pは2〜6)を3個有するイソシアヌール環などの3価の連結基、ペンタエリスリトール残基などの4価の連結基などの5価の連結基、ジペンタエリスリトール残基などの6価の連結基が挙げられる。
【0131】
(B)多官能チオール化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、等が好適な多官能チオール化合物として挙げられる。
【0132】
多官能チオール化合物の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがさらに好ましい。多官能チオール化合物の含有量がこの範囲内にあると、感光性樹脂組成物の感度が良好で、保存安定性が良好で、得られたカラーフィルタにおける画素の密着性が良好でパターン欠陥がなく、液晶表示装置に用いた場合に電気特性が良好な感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0133】
(着色剤)
着色剤としては、顔料、染料、または顔料と染料の混合系などのいずれでも良い。
【0134】
<顔料>
顔料としては、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を用いることができるが、信頼性の観点で有機顔料を用いることが好ましい。本発明において有機顔料として、例えば、特開2009−256572号公報の段落〔0093〕に記載の有機顔料が挙げられる。
また特に、
C.I.Pigment Red 177、224、242、254、255、264、
C.I.Pigment Yellow 138、139、150、180、185、
C.I.Pigment Orange 36、38、71、
C.I.Pigment Green 7、36、58、
C.I.Pigment Blue 15:6、
C.I.Pigment Violet 23
が色再現性の観点で好適であるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。これら有機顔料は、単独で、または、色純度を上げるため種々組合せて用いることもできる。
顔料としては平均一次粒子サイズが10nm〜30nmの顔料が好ましい。上記態様であると、色相とコントラストに優れる感光性樹脂組成物が得られる。
【0135】
顔料を用いる場合、本発明の感光性樹脂組成物中における顔料の含有量は、該組成物の全固形分に対して、0.5〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%がより好ましい。顔料の含有量が前記範囲内であると、優れた色特性を確保するのに有効である。
【0136】
(染料)
本発明の感光性樹脂組成物に含んでもよい染料としては、メチン系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ジピロメテン金属錯体化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、スクアリリウム系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系等の染料である。
【0137】
本発明の感光性樹脂組成物に含んでもよい染料の具体例としては、例えば、特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特登2592207号、米国特許第4,808,501号明細書、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、特開平6−194828号公報、特開平8−211599号公報、特開平4−249549号公報、特開平10−123316号公報、特開平11−302283号公報、特開平7−286107号公報、特開2001−4823号公報、特開平8−15522号公報、特開平8−29771号公報、特開平8−146215号公報、特開平11−343437号公報、特開平8−62416号公報、特開2002−14220号公報、特開2002−14221号公報、特開2002−14222号公報、特開2002−14223号公報、特開平8−302224号公報、特開平8−73758号公報、特開平8−179120号公報、特開平8−151531号公報、特開平6−230210号公報等に記載の染料である。
【0138】
本発明の感光性樹脂組成物に含んでもよい好適な染料としては以下のものが挙げられる。
【0139】
(メチン系)
【化41】

【0140】
(ジピロメテン系金属錯体化合物)
一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位したジピロメテン系金属錯体化合物について詳細に説明する。
【0141】
【化42】

(一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、各々独立に、水素原子、または1価の置換基を表し、R7は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)
【0142】
1価の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、また、シクロアルキルオキシ基であれば、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、また、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基であれば、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−エチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ基)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)を表す。
【0143】
上述した1価の基がさらに置換可能な基である場合には、上述した各基のいずれかによってさらに置換されていてもよい。なお、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0144】
一般式(I)において、R1とR2、R2とR3、R4とR5、およびR5とR6は、各々独立に、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。なお、形成される環としては、飽和環、または不飽和環がある。この5員、6員、または7員の飽和環、または不飽和環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。
なお、形成される5員、6員、および7員の環が、さらに置換可能な基である場合には、前記置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
また、一般式(I)において、R7がハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である場合、これらの好ましい範囲は、前述のR1〜R6としてのハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基の好ましい範囲と同様である。
【0145】
一般式(I)において、前記R1およびR6としては、上記の中でも、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基が好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基がより好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基がさらに好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基が特に好ましい。
【0146】
一般式(I)において、前記R2およびR5としては、上記の中でも、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基がより好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基がさらに好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基が特に好ましい。
一般式(I)において、前記R3およびR4としては、上記の中でも、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基が好ましく、さらに好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基である。
【0147】
一般式(I)において、R3およびR4がアルキル基を表す場合の、該アルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状の置換または無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、および、ベンジル基が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜12の分岐鎖、または環状の置換または無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、イソプロピル基、シクロプロピル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1〜12の2級または3級の置換または無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、イソプロピル基、シクロプロピル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0148】
一般式(I)において、R3およびR4がアリール基を表す場合の、該アリール基としては、好ましくは、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のナフチル基が挙げられ、より好ましくは置換または無置換のフェニル基である。
3およびR4がヘテロ環基を表す場合の、該ヘテロ環基としては、好ましくは、置換または無置換の2−チエニル基、置換または無置換の4−ピリジル基、置換または無置換の3−ピリジル基、置換または無置換の2−ピリジル基、置換または無置換の2−フリル基、置換または無置換の2−ピリミジニル基、置換または無置換の2−ベンゾチアゾリル基、置換または無置換の1−イミダゾリル基、置換または無置換の1−ピラゾリル基、置換または無置換のベンゾトリアゾール−1−イル基が挙げられ、より好ましくは置換または無置換の2−チエニル基、置換または無置換の4−ピリジル基、置換または無置換の2−フリル基、置換または無置換の2−ピリミジニル基、置換または無置換の1−ピリジル基が挙げられる。
【0149】
次に、ジピロメテン系金属錯体化合物を形成する金属原子または金属化合物について説明する。
金属または金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子または金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、または2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、B等の他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl2、SnCl2、SiCl2、GeCl2などの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)2等の金属水酸化物も含まれる。
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、および製造適性等の観点から、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、B、またはVOが好ましく、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、B、またはVOがさらに好ましく、Fe、Zn、Cu、Co、B、またはVO(V=O)が最も好ましい。これらの中でも、特にZnが好ましい。
【0150】
前記一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位したジピロメテン系金属錯体化合物において、好ましい態様を以下に示す。すなわち、一般式(I)において、R1およびR6が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはホスフィノイルアミノ基で表され、R2およびR5が、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基で表され、R3およびR4が、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはホスフィノイルアミノ基で表され、R7が、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で表され、金属原子または金属化合物が、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、B、またはVOで表される態様が挙げられる。
【0151】
ジピロメテン系金属錯体化合物のより好ましい態様を以下に示す。すなわち、前記一般式(I)において、R1およびR6が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはホスフィノイルアミノ基で表され、R2およびR5が、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基で表され、R3およびR4が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基で表され、R7が、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で表され、金属原子または金属化合物が、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、BまたはVOで表される態様が挙げられる。
【0152】
前記一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位したジピロメテン系金属錯体化合物の好ましい態様は、下記一般式(I−1)、(I−2)および(I−3)で表される錯体化合物である。
【0153】
【化43】

(一般式(I−1)において、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、各々独立に、水素原子、または置換基を表す。R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表し、X1は、Maに結合可能な基を表し、X2は、Maの電荷を中和するために必要な基を表す。なお、X1とX2とは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。)
【0154】
一般式(I−1)中のR1〜R6は、一般式(I)中のR1〜R6と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(I−1)中のMaは、金属原子または金属化合物を表し、前記「一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位した錯体」における金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
一般式(I−1)中のR7は、一般式(I)中のR7と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0155】
一般式(I−1)におけるX1は、Maに結合可能な基であればいずれであってもよく、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)等、さらに「金属キレート」[1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、同[2](1996年)、同[3](1997年)等、に記載の化合物に由来する基が挙げられる。中でも、製造の点で、水、カルボン酸化合物、アルコール類、アミン化合物、アミド化合物が好ましく、水、カルボン酸化合物、アミド化合物がより好ましい。
【0156】
一般式(I−1)に置けるX2は、Maの電荷を中和するために必要な基を表し、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、水酸基、脂肪族イミド(例えば、コハク酸イミド、マレイミド、グルタルイミド、ジアセトアミドなどが挙げられ、好ましくはコハク酸イミド、マレイミドが挙げられる)由来の一価の基、芳香族イミド基または複素環イミド(例えば、フタルイミド、ナフタルイミド、4−ブロモフタルイミド、4−メチルフタルイミド、4−ニトロフタルイミド、ナフタレンカルボキシイミド、テトラブロモフタルイミドなどが挙げられ、好ましくはフタルイミド、4−ブロモフタルイミド、4−メチルフタルイミドが挙げられる)由来の一価の基、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、2−メトキシ安息香酸、3−メトキシ安息香酸、4−メトキシ安息香酸、4−クロロ安息香酸、2−ナフトエ酸、サリチル酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、4−ヘプチルオキシ安息香酸、4−tert−ブチル安息香酸などが挙げられ、好ましくは安息香酸、4−メトキシ安息香酸、サリチル酸などが挙げられる)由来の一価の基、脂肪族カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、エタン酸、プロパン酸、乳酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、2−ヘキサデシルオクタデカン酸、2−ヘキシルデカン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、1−アダマンタンカルボン酸などが挙げられ、好ましくは酢酸、メタクリル酸、乳酸、ピバリン酸、2−エチルヘキサン酸、ステアリル酸などが挙げられる)由来の一価の基、ジチオカルバミン酸(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸が挙げられる。)由来の一価の基、スルホンアミド(例えば、ベンゼンスルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−メトキシベンゼンスルホンアミド、4−メチルベンゼンスルホンアミド、2−メチルベンゼンスルホンアミド、メタンスルホンアミドが挙げられ、好ましくはベンゼンスルホンアミド、メタンスルホンアミドが挙げられる。)由来の一価の基、ヒドロキサム酸(例えば、アセトヒドロキサム酸、オクタノヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸が挙げられる)由来の一価の基、含窒素環化合物(ヒダントイン、1−ベンジル−5−エトキシヒダントイン、1−アリルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン、5,5−ジメチル−2,4−オキサゾリジンジオン、バルビツール酸、イミダゾール、ピラゾール、4,5−ジシアノイミダゾール、4,5−ジメチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、1H−イミダゾール−4,5−ジカルボン酸ジエチルなどが挙げられ、好ましくは1−ベンジル−5−エトキシヒダントイン、5,5−ジメチル−2,4−オキサゾリジンジオン、4,5−ジシアノイミダゾール、1H−イミダゾール−4,5−ジカルボン酸ジエチルが挙げられる)由来の一価の基を表す。
中でも、製造の点で、ハロゲン原子、脂肪族カルボン酸基、芳香族カルボン酸基、脂肪族イミド基、芳香族イミド基、スルホン酸基、含窒素環化合物が好ましく、水酸基、脂肪族カルボン酸基、芳香族イミド基、含窒素環化合物がより好ましい。
【0157】
一般式(I−1)におけるX1とX2とは互いに結合してMaと共に5員、6員、または7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員、および7員の環は、炭素原子および水素原子のみで構成されていてもよい、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環であってもよい。
【0158】
【化44】

【0159】
前記一般式(I−2)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R12、およびR13は、各々独立に、水素原子、または置換基を表す。R7およびR14は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。
【0160】
一般式(I−2)中のR1〜R6は、一般式(I)中のR1〜R6と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(I−2)中のR8〜R13で表される置換基は、一般式(I)で表される化合物のR1〜R6で表される置換基と同義であり、その好ましい態様も同様である。一般式(I−2)で表される化合物のR8〜R13で表される置換基がさらに置換可能な基である場合には、前述した置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0161】
一般式(I−2)中のR7は、一般式(I)中のR7と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(I−2)中のR14は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R14の好ましい範囲は、前記R7の好ましい範囲と同様である。R14がさらに置換可能な基である場合には、前述した置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0162】
一般式(I−2)中のMaは、金属または金属化合物を表し、前記「一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位した錯体」における金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0163】
一般式(I−2)中のR8とR9、R9とR10、R11とR12、R12とR13は、各々独立に、互いに結合して5員、6員、または7員の飽和環、或いは不飽和環を形成していてもよい。形成される飽和環、または不飽和環としては、R1とR2、R2とR3、R4とR5、およびR5とR6で形成される飽和環、または不飽和環と同義であり、好ましい例も同様である。
【0164】
【化45】

【0165】
前記一般式(I−3)において、R2、R3、R4、およびR5は、各々独立に、水素原子、または置換基を表し、R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R8およびR9は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。X3およびX4は、各々独立にNRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、または硫黄原子を表す。Y1およびY2は、各々独立に、NRb(Rbは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、硫黄原子、または炭素原子を表す。X5は、Maと結合可能な基を表し、aは0、1、または2を表す。R8とY1とは互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよく、R9とY2とは互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。
【0166】
一般式(I−3)中のR2〜R5、およびR7は、一般式(I)中のR2〜R5、およびR7と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(I−3)中のMaは、金属または金属化合物を表し、前記一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位した錯体における金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0167】
一般式(I−3)中、R8およびR9は、各々独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、tert−オクチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基)、またはヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール基、3−アミノピラゾール基、2−アミノピリジン基、3−アミノピリジン基)を表す。
【0168】
一般式(I−3)中、R8およびR9表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基が、さらに置換可能な基である場合には、前記置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0169】
一般式(I−3)中、X3およびX4は、各々独立に、NRa、酸素原子、または硫黄原子を表す。Raは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは2〜18のアシル基で、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−エチルヘキシル基、ベンゾイル基、シクロヘキサノイル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基)を表す。また、Raが置換可能な場合ははさらに置換基で置換されていてもよく、複数の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
3およびX4として好ましくは、各々独立に、酸素原子、または硫黄原子であり、X3およびX4として特に好ましくは、ともに酸素原子である。
【0170】
一般式(I−3)中、Y1およびY2は、各々独立にNRb、硫黄原子、または炭素原子を表し、Rbは、前記X3におけるRaと同義である。
1およびY2として好ましくは、各々独立に、NRb(Rbは水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基)であり、Y1およびY2として特に好ましくは、ともにNHである。
【0171】
一般式(I−3)中、R8とY1とが互いに結合して、R8、Y1、および炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、または7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
【0172】
一般式(I−3)中、R9とY2とが互いに結合して、R9、Y2、および炭素原子と共に5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、前記のR8とY1および炭素原子で形成される環中の1個の結合が二重結合に変化した環が挙げられる。
【0173】
一般式(I−3)中、R8とY1、およびR9とY2が結合して形成される5員、6員、および7員の環が、さらに置換可能な環である場合には、前記置換基Rのいずれかで説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0174】
一般式(I−3)中、X5はMaと結合可能な基を表し、前記一般式(I−1)におけるX2と同様な基が挙げられる。aは0、1、または2を表す。
【0175】
一般式(I−3)で表される化合物の好ましい態様を以下に示す。即ち、R2〜R5、R7、およびMaは、それぞれ、一般式(I)で表される化合物と金属原子または金属化合物とを含む錯体の好ましい態様であり、X3およびX4は、各々独立にNRa(Raは水素原子、アルキル基、ヘテロ環基)、または酸素原子であり、Y1およびY2は、各々独立にNRb(Rbは水素原子、またはアルキル基)、窒素原子、または炭素原子であり、X5は酸素原子、または窒素原子を介して結合する基であり、R8およびR9は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、またはアルキルアミノ基を表すか、R8とY1とが互いに結合して5員または6員環を形成し、R9とY2とが互いに結合して5員、6員環を形成する、aは0または1で表される態様である。
【0176】
一般式(I−3)で表される化合物のより好ましい態様を以下に示す。即ち、R2〜R5、R7、Maはそれぞれ、一般式(I)で表される化合物と金属原子または金属化合物とを含む錯体の好ましい態様であり、X3およびX4は、酸素原子であり、Y1はNHであり、Y2は窒素原子であり、X5は酸素原子、または窒素原子を介して結合する基であり、R8およびR9は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、またはアルキルアミノ基を表すか、R8とY1とが互いに結合して5員または6員環を形成し、R9とY2とが互いに結合して5員、6員環を形成する、aは0または1で表される態様である。
【0177】
前記一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位したジピロメテン系金属錯体化合物の好ましい態様である、前記一般式(I−1)、(I−2)および(I−3)で表される錯体化合物のうち、前記一般式(I−3)で表される錯体化合物が、特に好ましい様態である。
【0178】
以下、本発明に用いる前記一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位したジピロメテン系金属錯体化合物の具体例を示す。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0179】
【化46】

【0180】
【化47】

【0181】
【化48】

【0182】
【化49】

【0183】
【化50】

【0184】
【化51】

【0185】
これら一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位したジピロメテン系金属錯体化合物の例示化合物のうち、例示化合物(40)〜(44)は一般式(I−1)の例示化合物でもあり、例示化合物(45)は一般式(I−2)の例示化合物でもあり、例示化合物(1)〜(39)は一般式(I−3)の例示化合物でもある。
【0186】
また、上記例示化合物以外にも、特開2008−292970号公報に記載の例示化合物(Ia−3)〜(Ia−83)、(Ia−1)〜(IIa−20)、(I−1)〜(I−36)(II−1)〜(II−11)、および(III−1)〜(III−103)、特許第3324279号記載の例示化合物(I−1)〜(I−35)、特許第3279035号記載の例示化合物(I−1)〜(I−13)、特開平11−256057号公報に記載の例示化合物(2−1)〜(2−32)、(3−1)〜(3−32)、(4−1)〜(4−26)、および(5−1)〜(5−26)、特開2005−77953号公報に記載の例示化合物(I−1)〜(I−6)、および(VII−1)〜(VII−8)、特開平11−352686号公報に記載の例示化合物(1−1)〜(1−45)、特開2000−19729号公報に記載の例示化合物(1−1)〜(1−50)、および特開平11−352685号公報に記載の例示化合物(1−1)〜(1−45)なども一般式(I)で表される化合物が金属原子または金属化合物に配位したジピロメテン系金属錯体化合物の例として挙げられる。
【0187】
【化52】

【0188】
【化53】

【0189】
(トリアリールメタン系)
【化54】

【化55】

【0190】
【化56】

【0191】
(キサンテン系)
【化57】

【0192】
(フタロシアニン系)
【化58】

【0193】
下記の化合物の略称において、Pcはフタロシアニン核を表わし、Znは中心金属を表し、Pcのすぐ後にα位に置換する置換基を表し、そのα位に置換する置換基の後にβ位に置換する置換基を表わし、置換位置に依らない置換基を表す。x、yは置換基数が0以上の正数となる正数である。
【化59】

【0194】
(アントラキノン系)
【化60】

【0195】
(有機溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含有することができる。
有機溶剤は、並存する各成分の溶解性や感光性樹脂組成物としたときの塗布性を満足できるものであれば、基本的には特に制限はなく、特に、固形分の溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
【0196】
有機溶剤としては、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキルエステル類(例:オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(具体的には、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等が挙げられる。))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
【0197】
また、エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。
【0198】
これらの有機溶剤は、前述の各成分の溶解性、およびアルカリ可溶性バインダーを含む場合はその溶解性、塗布面状の改良などの観点から、2種以上を混合することも好ましい。この場合、特に好ましくは、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0199】
有機溶剤の感光性樹脂組成物中における含有量としては、感光性樹脂組成物中の全固形分濃度が10質量%〜80質量%になる量が好ましく、15質量%〜60質量%になる量がより好ましい。
【0200】
(界面活性剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、または、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。具体的には、特開2009−098616号公報の段落番号0058に記載のノニオン系界面活性剤が挙げられ、中でもフッ素系界面活性剤が好ましい。
本発明に用いることができるこの他の界面活性剤としては、例えば、市販品である、メガファックF142D、同F172、同F173、同F176、同F177、同F183、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781、同F781−F、同R30、同R08、同F−472SF、同BL20、同R−61、同R−90(DIC(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431、Novec FC−4430(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG7105,7000,950,7600、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子(株)製)、エフトップEF351、同352、同801、同802(三菱マテリアル電子化成(株)製)、フタージェント250(ネオス(株)製)などが挙げられる。
また、界面活性剤として、下記式(W)で表される構成単位Aおよび構成単位Bを含み、テトラヒドロフランを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000〜10,000である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【0201】
【化61】

(式(W)中、R1およびR3はそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数1〜4の直鎖アルキレン基を表し、R4は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Lは炭素数3〜6のアルキレン基を表し、pおよびqは重合比を表す重量百分率であり、pは10重量%〜80重量%の数値を表し、qは20重量%〜90重量%の数値を表し、rは1〜18の整数を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【0202】
前記Lは、下記式(W−2)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(W−2)におけるR5は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する
濡れ性の点で、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素数2または3のアルキル基がより好ましい。
式(W)におけるpとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100質量%であることが好ましい。
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500〜5,000がより好ましい。
【0203】
【化62】

【0204】
これら界面活性剤は、1種単独でまたは2種以上を使用することができる。
本発明の感光性樹脂組成物における界面活性剤の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分中0.01〜2.0質量%が好ましく、0.02〜1.0質量%が特に好ましい。この範囲であると、塗布性および硬化膜の均一性が良好となる。
【0205】
(密着改良剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、密着改良剤を含有してもよい。
密着改良剤は、支持体となる無機物、例えば、ガラス、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコン化合物、金、銅、アルミニウム等と感光性樹脂組成物層の硬化膜との密着性を向上させる化合物である。具体的には、シランカップリング剤等が挙げられる。密着改良剤としてのシランカップリング剤は、界面の改質を目的とするものであり、特に限定することなく、公知のものを使用することができる。
シランカップリング剤としては、特開2009−98616号公報の段落0048に記載のシランカップリング剤が好ましく、中でもγ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましい。これらは1種単独または2種以上を併用できる。
本発明の感光性樹脂組成物における密着改良剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
【0206】
(架橋剤)
本発明の感光性樹脂組成物に補足的に架橋剤を用い、感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化層の硬度をより高めることもできる。
架橋剤としては、架橋反応により膜硬化を行なえるものであれば、特に限定はなく、例えば、(a)エポキシ樹脂、(b)メチロール基、アルコキシメチル基、およびアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物またはウレア化合物、(c)メチロール基、アルコキシメチル基、およびアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、フェノール化合物、ナフトール化合物またはヒドロキシアントラセン化合物、が挙げられる。中でも、多官能エポキシ樹脂が好ましい。
架橋剤の具体例などの詳細については、特開2004−295116号公報の段落番号〔0134〕〜〔0147〕の記載を参照することができる。
【0207】
(現像促進剤)
感光性樹脂組成物層を露光した場合の非露光領域のアルカリ溶解性を促進し、感光性樹脂組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、現像促進剤を添加することもできる。現像促進剤は好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸化合物、分子量1000以下の低分子量フェノール化合物である。
具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等が挙げられる。
【0208】
(その他の添加物)
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、上記以外の高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を配合することができる。これらの添加物としては、特開2004−295116号公報の段落番号〔0155〕〜〔0156〕に記載のものを挙げることができる。
本発明の感光性樹脂組成物においては、特開2004−295116号公報の段落番号〔0078〕に記載の光安定剤、同公報の段落番号〔0081〕に記載の熱重合防止剤(重合禁止剤)を含有することができる。
【0209】
(感光性樹脂組成物の調製方法)
本発明の感光性樹脂組成物は、前述の各成分と必要に応じて任意成分とを混合することで調製される。着色剤としては顔料、染料、または顔料と染料の混合系などのいずれでもよい。
なお、感光性樹脂組成物の調製に際しては、感光性樹脂組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解・分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解・分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜2つ以上の溶液・分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して感光性樹脂組成物として調製してもよい。
上記のようにして調製された感光性樹脂組成物は、好ましくは、孔径0.01μm〜3.0μm程度のフィルタなどを用いて濾別した後、使用に供することができる。
【0210】
本発明の感光性樹脂組成物は、色相およびコントラストに優れた着色硬化膜を形成することができるため、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタなどの着色画素形成用として、また、印刷インキ、インクジェットインキ、および塗料などの作製用途として好適に用いることができる。
【0211】
(カラーフィルタおよびその製造方法)
本発明のカラーフィルタは、基板と、該基板上に本発明の感光性樹脂組成物からなる着色領域と、を設けて構成されたものである。基板上の着色領域は、カラーフィルタの各画素をなす例えば赤(R)、緑(G)、青(B)等の着色層で構成されている。
【0212】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、既述の感光性樹脂組成物を支持体上に適用して着色層(感光性樹脂組成物層)を形成する着色層形成工程(A)と、工程(A)にて形成された着色層に対してパターン様の露光をして潜像を形成する露光工程(B)と、前記潜像が形成された着色層を現像してパターンを形成する現像工程(C)と、を有する。
また、本発明のカラーフィルタの製造方法では、特に、工程(C)で得られた着色パターンに対して加熱処理を行なう工程(D)をさらに設けた態様が好ましい。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について、より具体的に説明する。
【0213】
−工程(A)−
本発明のカラーフィルタの製造方法では、まず、支持体上に、既述の本発明の感光性樹脂組成物を回転塗布、スリット塗布、流延塗布、ロール塗布、バー塗布、インクジェット等の塗布方法により適用して着色層を形成し、その後、該着色層を加熱(プリベーク)または真空乾燥などで乾燥させる。
【0214】
支持体としては、例えば、液晶表示装置に用いられるソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、シリコン基板、樹脂基板などが挙げられる。また、これらの支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止、或いは表面の平坦化のために、下塗り層を設けてもよい。
【0215】
プリベークの条件としては、ホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜130℃で、0.5分間〜15分間程度加熱する条件が挙げられる。
また、感光性樹脂組成物により形成される着色層の厚みは、目的に応じて適宜選択される。液晶表示装置用カラーフィルタにおいては、0.2μm〜5.0μmの範囲が好ましく、1.0μm〜4.0μmの範囲がさらに好ましい。なお、着色層の厚みは、乾燥後の膜厚である。
【0216】
−工程(B)−
続いて、本発明のカラーフィルタの製造方法では、支持体上に形成された着色層に対して、パターン様の露光が行なわれる。露光に適用し得る光もしくは放射線としては、g線、h線、i線、各種レーザー光が好ましく、特にi線が好ましい。照射光にi線を用いる場合、5mJ/cm2〜500mJ/cm2の露光量で照射することが好ましい。
【0217】
また、その他の露光光源としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、各種レーザー光源、等が使用できる。
【0218】
〜レーザー光源を用いた露光工程〜
レーザー光源を用いた露光方式では照射光は、波長が300nm〜410nmの範囲である波長の範囲の紫外光レーザーが好ましく、さらに好ましくは300nm〜360nmの範囲の波長である。具体的には、特に出力が大きく、比較的安価な固体レーザーのNd:YAGレーザーの第三高調波(355nm)や、エキシマレーザーのXeCl(308nm)、XeF(353nm)を好適に用いることができる。パターン露光量としては、生産性の観点から、1mJ/cm2〜100mJ/cm2の範囲が好ましく、1mJ/cm2〜50mJ/cm2の範囲がより好ましい。
【0219】
露光装置としては、特に制限はないが市販されているものとしては、Callisto(ブイテクノロジー株式会社製)やEGIS(ブイテクノロジー株式会社製)やDF2200G(大日本スクリーン株式会社製などが使用可能である。また上記以外の装置も好適に用いられる。
【0220】
−工程(C)−
続いて、露光後の着色層に対して、現像液にて現像が行なわれる。これにより、着色パターンを形成することができる。現像液は、着色層の未硬化部を溶解し、硬化部を溶解しないものであれば、種々の有機溶剤の組み合わせやアルカリ性水溶液を用いることができる。現像液がアルカリ性水溶液である場合、アルカリ濃度が好ましくはpH10〜13となるように調整するのがよい。前記アルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。
現像時間は、30秒〜300秒が好ましく、さらに好ましくは30秒〜120秒である。現像温度は、20℃〜40℃が好ましく、さらに好ましくは23℃である。
現像は、パドル方式、シャワー方式、スプレー方式等で行なうことができる。
また、アルカリ性水溶液を用いて現像した後は、水で洗浄することが好ましい。
【0221】
本発明のカラーフィルタの製造方法では、特に、感光性樹脂組成物を用いて形成された着色パターン(画素)に対して、紫外線照射による後露光を行なうことも好ましい。
【0222】
−工程(D)−
現像後の着色パターンに対して、あるいは上記のような紫外線照射による後露光が行なわれた着色パターンに対して、さらに加熱処理を行なうことが好ましい。形成された着色パターンを加熱処理(いわゆるポストベーク処理)することにより、着色パターンをさらに硬化させることができる。この加熱処理は、例えば、ホットプレート、各種ヒーター、オーブンなどにより行なうことができる。
加熱処理の際の温度としては、100℃〜300℃であることが好ましく、さらに好ましくは、150℃〜250℃である。また、加熱時間は、10分〜120分程度が好ましい。
【0223】
このようにして得られた着色パターンは、カラーフィルタにおける画素を構成する。複数の色相の画素を有するカラーフィルタの作製においては、上記の工程(A)、工程(B)、工程(C)、および工程(D)を所望の色数に合わせて繰り返せばよい。
なお、単色の着色層の形成、露光、現像が終了する毎に(1色毎に)、前記工程(D)を行なってもよいし、所望の色数の全ての着色層の形成、露光、現像が終了した後に、一括して前記工程(D)を行なってもよい。
【0224】
本発明のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタ(本発明のカラーフィルタ)は、本発明の感光性樹脂組成物を用いていることから、色相およびコントラストに優れている。液晶表示装置等に用いた場合、良好な色相を達成しながら、分光特性およびコントラストに優れた画像の表示が可能になる。
【0225】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、既述の本発明のカラーフィルタを備えたものである。液晶表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0226】
本発明のカラーフィルタは、中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに、本発明はIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN、TN、VA、OCS、FFS、およびR−OCB等にも適用できる。また、本発明のカラーフィルタは、COA(Color−filter On Array)方式にも供することが可能である。
【0227】
本発明のカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、従来公知の冷陰極管の三波長管と組み合わせたときに高いコントラストを実現できるが、さらに、赤、緑、青のLED光源(RGB−LED)をバックライトとすることによって輝度が高く、また、色純度の高い色再現性の良好な液晶表示装置を提供することができる。
【0228】
≪フォトスペーサーおよびその形成方法≫
本発明のフォトスペーサーは、既述の本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されたものである。感光性樹脂組成物の詳細および好ましい態様については、既述した通りである。
本発明のフォトスペーサーは、本発明の感光性樹脂組成物を用いて構成されるので、断面形状の均一性および高さの均一性に優れる(即ち、断面形状のバラツキや高さのバラツキ)。
さらに、本発明の感光性樹脂組成物を含有する場合には、フォトスペーサーとして必要とされる高い圧縮弾性率、変形回復性を持つフォトスペーサーが得られる。
【0229】
本発明において、フォトスペーサー等のパターン構造物が「断面形状の均一性に優れる」状態としては、基板内の複数箇所(好ましくは3箇所以上)において、パターン構造物の断面形状が矩形に近い形状となっている状態が好ましい。
前記矩形に近い形状としては、パターン構造物の断面において、パターン構造物側面に相当する線とパターン構造物下面に相当する線とのなす角(以下、「テーパー角度」ともいう)が40°〜100°である形状がより好ましい。
ここで、前記パターン構造物下面とは、パターン構造物の面のうち、該パターン構造物が形成された下地との接触面をいう。また、前記パターン構造物側面とは、パターン構造物の面のうち、前記パターン構造物下面にもパターン構造物上面(前記パターン構造物下面と平行な面であって、前記下地と接触しない面)にも該当しない面をいう。
【0230】
本発明のフォトスペーサーは、本発明の感光性樹脂組成物を用いた方法であれば、いずれの方法で形成されてもよいが、以下に示す工程(イ)〜(ハ)を含む方法を用いることによって最も好適に形成することができる。
本発明のフォトスペーサーの形成方法は、(イ)既述の本発明の感光性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程(以下、「被膜形成工程」ともいう。)と、(ロ)前記被膜の少なくとも一部を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、(ハ)露光後の前記被膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう。)と、を設けて構成されており、必要に応じて、(ニ)現像後の前記被膜を加熱する工程(以下、「被膜加熱工程」ともいう。)や、さらに他の工程を設けて構成されてもよい。
【0231】
(イ)被膜形成工程
被膜形成工程は、既述の本発明の感光性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する。被膜として感光性樹脂層を形成することができ、この感光性樹脂層は、後述の露光工程や現像工程等の他工程を経ることにより、セル厚を均一に保持し得るフォトスペーサーを構成する。本発明のフォトスペーサーを用いることにより、特にセル厚の変動で表示ムラが生じやすい表示装置(特に液晶表示装置)における画像中の表示ムラが効果的に解消される。
【0232】
基板上に感光性樹脂層を形成する方法としては、(a)既述の樹脂、重合性化合物、および光重合開始剤を少なくとも含む感光性樹脂組成物を塗布する塗布法、および(b)前記感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用い、加熱および/または加圧により感光性樹脂層をラミネート、転写する転写法が好適に挙げられる。
【0233】
(a)塗布法
感光性樹脂組成物の塗布は、公知の塗布法、例えば、スピンコート法、カーテンコート法、スリットコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法等により行なうことができる。中でも、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリットノズルあるいはスリットコーターによる方法が好適である。
【0234】
(b)転写法
転写は、感光性転写材料を用いて、仮支持体上に膜状に形成された感光性樹脂層を所望の基板面に例えば加熱および/または加圧したローラーまたは平板を用いて圧着または加熱圧着することによって貼り合せた後、仮支持体の剥離により感光性樹脂層を基板上に転写する。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネーターおよびラミネート方法が挙げられ、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
【0235】
感光性樹脂層を形成する場合、感光性樹脂層と仮支持体との間にはさらに酸素遮断層(以下、「酸素遮断膜」または「中間層」ともいう。)を設けることができる。これにより、露光感度をアップすることができる。また、転写性を向上させるために、クッション性を有する熱可塑性樹脂層を設けてもよい。
感光性転写材料を構成する仮支持体、酸素遮断層、熱可塑性樹脂層、その他の層や該感光性転写材料の作製方法については、特開2006−23696号公報の段落番号[0024]〜[0030]に記載の構成、作製方法を適用することができる。
【0236】
(a)塗布法、(b)転写法ともに感光性樹脂層を形成する場合、その層厚は0.5〜10.0μmが好ましく、1〜6μmがより好ましい。層厚が前記範囲であると、製造時における塗布形成の際のピンホールの発生が防止され、未露光部の現像除去に長時間を要することなく行なうことができる。
【0237】
感光性樹脂層を形成する基板としては、例えば、透明基板(例えばガラス基板やプラスチックス基板)、透明導電膜(例えばITO膜)付基板、カラーフィルタ付きの基板(カラーフィルタ基板ともいう。)、駆動素子(例えば、薄膜トランジスタ[TFT])付駆動基板、などが挙げられる。基板の厚みとしては、700〜1200μmが一般に好ましい。
【0238】
(ロ)露光工程・(ハ)現像工程
露光工程では、前記被膜形成工程で形成された被膜の少なくとも一部を露光し、潜像を形成する。その後の現像工程では、前記露光工程で露光された被膜を現像し、所望の形状のスペーサーパターンを形成することができる。
【0239】
これらの工程の具体例としては、特開2006−64921号公報の段落番号[0071]〜[0077]に記載の形成例や、特開2006−23696号公報の段落番号[0040]〜[0051]に記載の工程などが、本発明において好適な例として挙げることができる。
【0240】
本発明のフォトスペーサーの形成方法は、後述の(ニ)被膜加熱工程を設けてもよいが、前記露光における露光量を増加させることなどにより、被膜加熱工程を設けることなく(以下、「加熱工程無し」ともいう)、優れた断面形状均一性および優れた高さ均一性を有するフォトスペーサーを形成することもできる。
「加熱工程無し」とすることで、形成しようとするフォトスペーサーの劣化や、既に形成されているパターン構造物(着色パターン等)や保護膜の劣化を、より効果的に抑制できる。
「加熱工程無し」とする場合の露光量としては、1〜500mJ/cm2が好ましく、10〜300mJ/cm2が好ましい。
【0241】
(ニ)被膜加熱工程
本発明のフォトスペーサーの形成方法は、前記現像工程における現像後の被膜を加熱する被膜加熱工程を設けることもできる。加熱により、被膜の硬化がより促進され、高強度を有するフォトスペーサーが得られる。また、感光性樹脂組成物が前記樹脂Aを含む場合には、圧縮弾性率、弾性回復性の良好なフォトスペーサーが得られる。
【0242】
上記のようにして、基板上にフォトスペーサーを備えた表示装置用基板を作製することができる。フォトスペーサーは、基板上に形成されたブラックマトリクス等の黒色遮光部の上やTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の黒色遮光部やTFT等の駆動素子とフォトスペーサーとの間にITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の配向膜が存在していてもよい。
【0243】
例えば、フォトスペーサーが黒色遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、該基板に予め配設された黒色遮光部(ブラックマトリクスなど)や駆動素子を覆うようにして、例えば、感光性転写材料の感光性樹脂層を支持体面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂層を形成した後、これに露光、現像、加熱処理等を施してフォトスペーサーを形成することによって、表示装置用基板を作製することができる。
前記表示装置用基板にはさらに、必要に応じて赤色(R)、青色(B)、緑色(G)3色等の着色画素が設けられてもよい。
【0244】
本発明のフォトスペーサーは、ブラックマトリクス等の黒色遮蔽部および着色画素等の着色部を含むカラーフィルタを形成した後に形成することができる。
前記黒色遮蔽部および着色部とフォトスペーサーとは、感光性樹脂組成物を塗布する塗布法と感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を有する転写材料を用いる転写法と、を任意に組合せて形成することが可能である。
前記黒色遮蔽部および着色部並びに前記フォトスペーサーはそれぞれ感光性樹脂組成物から形成でき、具体的には、例えば、基板に液体の前記感光性樹脂組成物を直接塗布することにより感光性樹脂層を形成した後に、露光・現像を行ない、前記黒色遮蔽部および着色部をパターン状に形成し、その後、別の液体の前記感光性樹脂組成物を前記基板とは異なる別の基板(仮支持体)上に設置して感光性樹脂層を形成することにより作製された転写材料を用い、この転写材料を前記黒色遮蔽部および着色部が形成された前記基板に密着させて感光性樹脂層を転写した後に、露光・現像を行うことによりフォトスペーサーをパターン状に形成することができる。
このようにして、フォトスペーサーが設けられたカラーフィルタを作製することができる。
【0245】
≪保護膜≫
本発明の保護膜は、本発明の感光性樹脂組成物を用いた方法であれば、いずれの方法で形成されてもよいが、前述の本発明のフォトスペーサーの形成方法と同様の方法により形成できる。ここで、保護膜にパターニングを施さない場合、即ち、保護膜をいわゆるベタ膜として形成する場合には、前記(ロ)露光工程において、被膜を全面露光する方法が好適である。
【実施例】
【0246】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0247】
<ポリマーP−1の合成例−一般式IIを経由する化合物>
攪拌棒および攪拌羽根、還流冷却器、滴下漏斗および温度計を設置した3リットルの4つ口フラスコに反応溶媒として2−メトキシプロパノール(500g)を入れ窒素置換しながら70℃に加熱した。滴下漏斗にメタクリル酸アリル(82.3g)、メタクリル酸(17.7g)および重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(0.74g)を500gの2−メトキシプロパノールに溶解して入れておき、2時間かけてこの混合溶液をフラスコ中に攪拌しながら滴下した。反応終了後、さらに反応温度70℃で2時間攪拌し、加熱終了後、冷却した。蒸留水5リットルを攪拌しているところに、上記反応液を滴下し、析出した固体をろ取した。この固体を50℃にて乾燥し、白色粉体ポリマー(88g)(一般式IIの化合物)を得た。酸価測定より、メタクリル酸/メタクリル酸アリル=24/76(単位:モル%)であった。
1リットルの三つ口フラスコに、上記で得られたポリマー(50g)、2−メトキシプロパノール(82g)を投入し、攪拌しながら110℃に加熱した。重合禁止剤として、メトキシフェノール(0.6g)を投入し、溶解させた。この溶液を酸素雰囲気下にて、攪拌しているところに、メタクリル酸グリシジル(2.44g)を滴下し、そのまま6時間反応させた。反応終了後、蒸留水(820g)を攪拌しているところに、反応液を滴下し、再沈させた。このポリマーをろ取し、50℃にて乾燥し、白色粉体A(46g)を得た。再度、酸価測定した結果、メタクリル酸/メタクリル酸アリル/グリシジル付加体=20/76/4(単位:モル%)であった。GPCでの重量平均分子量は、3.0万であった。
【0248】
<ポリマーP−2〜P−4の合成例−一般式IIを経由する化合物>
上記ポリマーP−1の合成例においてポリ(メタクリル酸/メタクリル酸アリル/メタクリル酸グリシジル)を次のように置き換えてそれぞれポリマーP−2〜P−4を合成した。
ポリマーP―2:ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸アリル/メタクリル酸グリシジル)(共重合モル比24/70/6、重量平均分子量:3.2万)
ポリマーP―3:ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸アリル/メタクリル酸グリシジル)(共重合モル比24/60/16、重量平均分子量:3.5万)
ポリマーP―4:ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸アリル/メタクリル酸グリシジル)(共重合モル比24/50/26、重量平均分子量:3.3万)
【0249】
<ポリマーP−5〜P−8の合成例−一般式IIを経由する化合物>
上記ポリマーP−1の合成例において、メタクリル酸グリシジルをサイクロマー(CYCLOMERA−200:ダイセル化学工業(株)製)に変更した以外は、ポリマーP−1の合成例と同様の方法により合成し、アルカリ可溶性樹脂ポリマーP−5〜P−8を合成した。
【0250】
<ポリマーP−9〜P−12の合成例−一般式IIIを経由する化合物>
ポリマーP−9〜P−12は、前記一般式IIIを経由して合成した。具体的には、一般IIの化合物合成時に更に2-エチルヘキシルメタアクリレートモノマーを共重合させた以外は一般IIの化合物合成と同様の方法により、一般式IIIのR6がエチル基である一般式IIIの化合物を合成した。
得られたポリマーに、2−メトキシプロパノール(82g)を投入し、攪拌しながら50℃に加熱した。重合禁止剤として、メトキシフェノール(0.6g)を投入し、溶解させた。この溶液を酸素雰囲気下にて、攪拌しているところに、2−メタクリロイルエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を反応させて合成した。
【0251】
<ポリマーP−13〜P−16の合成例>
上記ポリマーP−1の合成例において、上記白色粉体ポリマーを合成する際に、メタクリル酸およびメタクリル酸アリルに加えて、ヘキシルメタクリレート又はジシクロペンテニルメタアクリレートを共重合させた以外は、ポリマーP−1の合成例と同様の方法により合成し、アルカリ可溶性樹脂ポリマーP−13〜P−16を合成した。
【0252】
<ポリマーP−17〜P−18の合成例−一般式IIIを経由する化合物>
上記ポリマーP−9の合成例において、一般式IIIの化合物を合成する際に、さらに、ジシクロペンテニルメタアクリレートを共重合させた以外は、ポリマーP−9の合成例と同様の方法により合成し、ポリマーP−17、P−18を合成した。
【0253】
<ポリマーP−19〜P−20の合成例−一般式IIIを経由する化合物>
ポリマーP−19〜P−20は、前記一般式IIIを経由して合成した。更に一般式IIIにポリマーP−1の合成例と同じようにメタクリル酸グリシジルを滴下反応させて、ポリマーP−19〜P−20を合成した。
【0254】
<合成例1> フタロニトリル化合物[α−{(4−COOC24OCH3)C64O}a,β−{(4−COOC24OCH3)C64O}1-aCl3フタロニトリル](0≦a<1)(中間体1)の合成
150mlフラスコに、テトラクロロフタロニトリル(以下、TCPNと略す)7.98g(0.030モル)とp−ヒドロキシ安息香酸メチルセルソルブ5.95g(0.030モル)、アセトニトリル31.91gを投入し、マグネチックスターラーを用いて、内温が40℃に安定するまで約30分攪拌した後、炭酸カリウム4.56g(0.033モル)を投入して約3時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液を約110℃×1時間の条件にてエバポレーション処理により溶剤を溜去した。さらに、約110℃で一晩真空乾燥し、約13.1g(TCPNに対する収率102.4モル%)が得られた。
【0255】
<合成例2> フタロシアニン化合物(以下、Pc−1と略す)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}3.8-x0.8Cl11.4](0≦x<3.8)の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1、10.21g(0.024モル)、フタロニトリル0.16g(0.001モル)、ベンゾニトリル(BN)3.46gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、マグネチックスターラーを用いて内温160℃に安定するまで約1時間攪拌した後、ヨウ化亜鉛2.22g(0.007モル)を投入して約12時間反応させた。冷却後、反応溶液を140℃×1hrの条件にてエバポレーション処理して溶媒を溜去した後、得られた固形物に、フタロシアニン化反応に使用した中間体1およびフタロニトリル重量の和(10.37g)からBNの重量(3.46g)を差し引いた重量に相当するメチルセルソルブ(6.9g)を加え、攪拌・溶解することで晶析溶液を調製した。次に、調製した晶析溶液をフタロシアニン化反応に使用した中間体1およびフタロニトリル重量の和の10倍量に相当するメタノール(103.8g)中に滴下し、30分攪拌した。その後、中間体重量の和の7倍量に相当する蒸留水(72.6g)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに30分攪拌して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再び晶析時の1/2倍量のメタノール(51.9g)を加えて30分攪拌した後、晶析時の1/2倍量の蒸留水(36.3g)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに30分攪拌することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約10.7g(中間体1およびフタロニトリルに対する収率99.2モル%)が得られた。
【0256】
〔実施例1〕
−着色感光性樹脂組成物の調製−
下記の各成分を混合、溶解し、着色感光性樹脂組成物を調製した。
・有機溶剤1(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 33.1g
・有機溶剤2(3−エトキシプロピオン酸エチル) 25.2g
・アルカリ可溶性バインダーP−2 ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸アリル/メタクリル酸グリシジル)(共重合モル比24/70/6、重量平均分子量:3.2万)
6.9g
・重合性化合物1 日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA 2.8g
・重合性化合物2 東亜合成(株)製、アロニックス TO−2349 2.8g
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.003g
・光重合開始剤1 CGI−242:チバスペシャリティ ケミカルズ製 0.39g
・密着改良剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 0.2g
・フッ素系界面活性剤 (Megafac F554、DIC社製) 0.01g
・青色顔料分散液 (Pigment Blue 15:6分散液(固形分濃度16.8%、顔料濃 度9.9%))
28.5g
【0257】
なお、前記青色顔料分散液は以下のようにして調製した。
C.I.ピグメントブルー15:6を12.8部と分散剤(日本ルーブリゾール社製ソルスパース5500)7.2部とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80.0部と混合し、ビーズミルを用いて顔料を十分に分散させて、青色顔料分散液を調整した。
【0258】
−着色感光性樹脂組成物層(着色層)の形成−
ガラス(#1737;コーニング社製)基板上に、上記で調製した着色感光性樹脂組成物をスピンコート法で塗布した後、室温で30分間乾燥させることにより揮発成分を揮発させて、着色層Aを形成した。この着色層Aにi線(波長365nm)を照射し、潜像を形成させた。i線の光源には超高圧水銀ランプを用い、平行光としてから照射するようにした。このとき、照射光量を40mJ/cm2とした。次いで、この潜像が形成された着色層Aに対して、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウムの水溶液(濃度2.4%)を用いて26℃で45秒間現像し、次いで、流水で20秒間リンスした後、スプレーで乾燥して、細線パターン画像を得た。得られた細線パターン画像を230℃で20分間、ポストベーク処理を行ない、膜厚2μmの着色層Bを得た。
【0259】
−評価−
上記で得られた着色層の感度、液晶の比抵抗、分光特性、コントラスト、および密着性について、以下に示す方法で評価した。評価結果は、下記表2に示す。
【0260】
(1)感度
上記で得た塗布乾燥後の着色層Aに、i線縮小投影露光装置を使用して、365nmの波長で線幅20μmのマスクを通して、照射光量を40mJ/cm2で照射した。照射後、現像液(炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウムの水溶液(濃度2.4%))を使用して、26℃で45秒間現像した。次いで、流水で20秒間リンスした後、スプレーで乾燥して、細線パターン画像を得た。得られた画像を光学顕微鏡により200倍の倍率で細線パターンの画像を撮影した。
この際、得られた画像より細線の幅を測定した。感度が高いほど、細線の幅は太くなるため、マスク幅からの細線幅の太り幅を線幅感度とした。数字が大きい方が高感度となり好ましい。
【0261】
(2)液晶の比抵抗
上記で得た着色層Bを基板から掻き取り、掻き取った物9.0mgを液晶材料ZLI−4792(メルク社製)2.00gに加えて120℃で5時間加熱した。その後、濾過し、液晶材料の比抵抗を液晶比抵抗測定装置(型番ADVANTEST R8340 ULTRA HIGHT RESISTANCE ME(株)アドバンテスト製)により測定した。金属イオンの溶出により液晶材料の比抵抗は低下するため、その比抵抗の程度で金属イオンの溶出を評価できる。
<評価基準>
○:比抵抗≧1.0×1011MΩであり、液晶表示装置に組み込んでパネルとした際に焼付き故障がみられなかった。
×:比抵抗<1.0×1011MΩであり、液晶表示装置に組み込んでパネルとした際の焼付き故障が生じた。
【0262】
(3)分光特性
上記で得た着色層Bの透過スペクトルを、オリンパス(株)製の顕微分光測定装置OSP−SP200(商品名)を用いて測定した。得られた透過スペクトルより、CIE1931表色系における色座標x値、y値、Y値を求めた。
分光特性は、(x、y)=(0.138、0.085)におけるY値が高い場合、優れた分光特性を有しているといえる。Y値が大きいほど分光特性に優れているといえる。
【0263】
(4)コントラスト
得られた各着色層Bを有する基板を2枚の偏光フィルムの間に挟み、2枚の偏光フィルムの偏光軸が平行な場合、及び垂直な場合の輝度の値を色彩輝度計(トプコン(株)製、型番:BM−5A)を使用して測定し、2枚の偏光フィルムの偏光軸が平行な場合の輝度を垂直な場合の輝度で除して、得られた値をコントラストとして求めた。コントラストが高いほど、液晶表示装置用のカラーフィルタとして良好な性能を示す。
【0264】
(5)密着性
上記で得た着色層Aについて、i線縮小投影露光装置を使用して、着色層Aに365nmの波長で、5、10、15、20、および25μmのマスク幅を有するマスクを通して露光量40mJ/cm2で照射した。照射後、前記現像液を使用して、23℃で60秒間現像した。次いで、流水で20秒間リンスした後、スプレーで乾燥して、細線パターン画像を得た。画像形成は光学顕微鏡およびSEM写真観察により通常の方法で観察した。そして、基板に残っている最も細い細線パターンのパターン寸法を密着性の評価とした。
より細い細線が残っているほうが密着性に優れているとすることができる。
【0265】
〔実施例2〕
−着色感光性樹脂組成物の調製−
下記の各成分を混合、溶解し、着色感光性樹脂組成物を調製した。
・有機溶剤1(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 33.1g
・有機溶剤2(3−エトキシプロピオン酸エチル) 25.2g
・アルカリ可溶性バインダーP−2 ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸アリル/メタクリル酸グリシジル)(共重合モル比24/70/6、重量平均分子量 3.2万)
6.9g
・重合性化合物1 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA 2.8g
・重合性化合物2
東亜合成(株)製、アロニックス TO−2349 2.8g
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.003g
・光重合開始剤1(1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(チオフェノイル)− 9H−カルバゾール−3−イル]エタノン): 0.39g
・多官能チオール化合物1 0.2g
・密着改良剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 0.2g
・フッ素系界面活性剤 (Megafac F554、DIC社製) 0.01g
・青色顔料分散液 (Pigment Blue 15:6分散液(固形分濃度16.8%、顔料濃 度9.9%))
27.0g
・染料(A−1) 1.1g
・染料(B−1) 0.4g
【0266】
上記で用いた多官能チオール化合物は1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンである。
上記において、染料(A−1)はジピロメテン金属錯体化合物である染料であり、染料(B−1)はアントラキノン化合物(アントラセン−9,10−ジオン骨格を有する化合物)である。
上記着色感光性樹脂組成物を調整し、実施例1と同様に評価した。
【0267】
【化63】

【0268】
【化64】

【0269】
〔実施例3〜8〕
実施例2において、アルカリ可溶性バインダーを、下記表に記載のようにそれぞれ変更し、それ以外は、実施例2と同様にして、着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に、評価を行なった。
【0270】
〔実施例9〕
実施例2において、染料(A−1/B−1)を染料(A−3)(0.6g)に変更した以外は、実施例2と同様にして、着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に評価を行なった。
染料(A−3)はキサンテン系染料である。
【0271】
【化65】

【0272】
〔実施例10〕
実施例1において、青色顔料分散液 (Pigment Blue 15:6分散液(固形分濃度16.8%、顔料濃度9.9%))を黄色顔料分散液(Pigment Yellow150分散液)(9.0g)、緑色顔料分散液(Pigment Green58分散液)(21.0g)に変更した以外は、実施例1と同様にして、着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に、評価を行なった。
【0273】
〔実施例11〕
実施例11は実施例10において、顔料を黄色顔料分散液(Pigment Yellow150分散液)のみに変更し、更に染料(TA−1)(0.6g)を使用することに変更した以外は、実施例10と同様にして、着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に評価を行なった。
TA−1はトリアリールメタン系染料である。
【0274】
TA−1
【化66】

【0275】
〔実施例12〕
・フタロシアニン化合物 Pc−1 10部
・黄色着色材 YG−1 30部
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(=70/30[モル比])共重合体(Mw:30,000)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分50%)
12部
・DPHA(日本化薬社製) 12部
・2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体(光重合開始剤)
3部
・2−メルカプトベンゾチアゾール(水素供与性化合物) 2部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.001部
・フッソ系界面活性剤(商品名:メガファックF475 大日本インキ製) 0.5部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 129部
【0276】
<顔料分散組成物YG−1の調製>
下記組成の成分を混合し、ホモジナイザーを用いて回転数3,000r.p.m.で3時間撹拌して混合し、顔料を含む混合溶液を調製した。
〔組成〕
・Pigment Yellow 138 130部
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(=70/30[モル比])共重合体(Mw:5,000)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分50%) 15部
・分散剤(Disperbyk−161、ビックケミー・ジャパン(株)製) 60部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 795部
【0277】
続いて、上記より得られた混合溶液を、更に0.3mmφジルコニアビーズを用いたビーズ分散機ディスパーマット(GETZMANN社製)にて12時間分散処理を行ない、その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散組成物YG−1を得た。
【0278】
〔実施例13〕〜〔実施例17〕
実施例12で用いた黄色着色剤YG−1をD−1〜D−5の成分に変更した以外は、実施例12と同様に調整した。
【0279】
(D−1):下記構造式で表される染料化合物(B-1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分13%)
【0280】
【化67】

【0281】
(D−2):下記構造式で表される染料化合物(B-10)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分13%)
【0282】
【化68】

【0283】
(D−3):下記構造式で表される染料化合物(B-9)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分13%)
【0284】
【化69】

【0285】
(D−4):下記構造式で表される染料化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分13%)
【0286】
【化70】

【0287】
(D−5):特開2011−197669号公報の実施例[アゾ色素(3)の合成例]に記載のあるアゾ色素のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分13%)
【0288】
【化71】

【0289】
〔比較例1〕
実施例1において、P−2に変えて下記構造のアルカリ可溶性樹脂ポリマーQ−1を使用した以外は、実施例1と同様にして着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に、評価を行なった。評価結果は下記表2に示す。
【0290】
アルカリ可溶性ポリマー:Q−1
【化72】

【0291】
〔比較例2〕
実施例2において、P−2に変えて特開2002−293837号公報の実施例に記載の共重合樹脂(1’)を使用した以外は、実施例2と同様にして、着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に、評価を行なった。
【0292】
〔比較例3〕
実施例2において、P−2に変えてアルカリ可溶性樹脂ポリマーQ−1を使用し、さらに、染料を染料(A−3)(0.6g)に変更した以外は、実施例2と同様にして着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に、評価を行なった。
【0293】
〔比較例4〕
実施例10において、P−2に変えて下記構造のアルカリ可溶性樹脂ポリマーQ−1を使用した以外は、実施例10と同様にして着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に、評価を行なった。
【0294】
〔比較例5〕
実施例11において、P−2に変えて下記構造のアルカリ可溶性樹脂ポリマーQ−1を使用した以外は、実施例11と同様にして着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に、評価を行なった。
【0295】
〔比較例6〕
実施例13において、P−2に変えて下記構造のアルカリ可溶性樹脂ポリマーQ−1を使用した以外は、実施例13と同様にして着色感光性樹脂組成物を調製し、着色層を形成すると共に、評価を行なった。
【0296】
【表1】

【0297】
【表2】

【0298】
表2から以下のことがわかる。
実施例1〜17の本発明のアルカリ可溶性樹脂を用いた着色感光性樹脂組成物は、感度、分光特性(Y値)に優れ、コントラストが高く、密着性に優れ、液晶の比抵抗値が大きく、実施例1〜17の着色感光性樹脂組成物を用いて得られた液晶表示装置は焼きつきが生じなかった。これに対し本発明のアルカリ可溶性樹脂を用いない比較例1〜6では感度、密着性が低く、また、比較例2、3、5、6の液晶の比抵抗値も低かった。
【0299】
〔実施例18〜20、比較例7、8〕
<カラーフィルタ基板の作製>
特開2005−3861号公報の段落番号[0084]〜[0095]に記載の方法により、ブラックマトリクス、R(赤色)画素、G(緑色)画素、B(青色)画素を有するカラーフィルタを作製した(以下、これをカラーフィルタ基板と称する。)。ここで、カラーフィルタ基板の基板サイズは、550mm×650mmとした。
次いで、得られたカラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びにブラックマトリクスの上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0300】
<フォトスペーサーの形成>
上記で作製したITO透明電極がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO透明電極上に、スピンナーにて、下記表3に示す処方からなる感光性樹脂層用塗布液をスリット塗布した。引き続き、真空乾燥機VCD(東京応化社製)を用いて30秒間溶媒の一部を乾燥させて塗布膜の流動性をなくした後、90℃のホットプレート上で3分間プリベークし、膜厚5.2μmの感光性樹脂層を形成した(被膜形成工程)。
【0301】
続いて、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(直径15μmの円形パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと感光性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板と、を略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の表面との間の距離を100μmとし、該マスクを介して、365nmにおける強度250W/m2で紫外透過フィルタ
(UV−35、東芝ガラス(株)製)を透過させた紫外線を露光した(露光工程、露光量200mJ/cm2)。
【0302】
次に、炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フィルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し、パターン像を形成した(現像工程)。引き続いて、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フィルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液)を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaにてシャワーで吹きかけ、形成されたパターン像の周辺の残渣除去を行ない、円柱状のスペーサーパターンを300μm×300μmに1本のスペーサー間隔となるように形成した。
【0303】
次に、スペーサーパターンが設けられたカラーフィルタ基板を130℃下で60分間、加熱処理を行なう(加熱工程)ことにより、カラーフィルタ基板上にフォトスペーサーを作製した。
ここで、得られたフォトスペーサー1000個について、三次元表面構造解析顕微鏡(メーカー:ZYGO Corporation、型式:New View 5022)を用い、ITO透明電極上面(基板に平行な2つの面のうち、基板から遠い側の面)からフォトスペーサーの最も高い位置までの距離(以下、この距離を「フォトスペーサーの高さ」ともいう)を測定し、フォトスペーサー1000個についての平均値をフォトスペーサーの平均高さとした。
また、得られたフォトスペーサーの底面積の計測は、SEM写真を用いて行なった。その結果、直径15.1μm、平均高さ4.7μmの円柱形状であった。
【0304】
【表3】

【0305】
<液晶表示装置の作製>
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、上記で得られたカラーフィルタ基板の透明電極上及び対向基板上にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
【0306】
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
【0307】
次いで、赤色(R)LEDとしてFR1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、緑色(G)LEDとしてDG1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、青色(B)LEDとしてDB1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)を用いてサイドライト方式のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
【0308】
<評価>
得られたフォトスペーサー、液晶表示装置について、下記の評価を行なった。測定評価の結果は下記表4に示す。
【0309】
(フォトスペーサーの断面形状)
上記<フォトスペーサーの形成>で得られた加熱処理後のフォトスペーサーの断面形状を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。観察は、基板周辺部4箇所(4隅)及び基板中央部1箇所の計5箇所について行った。
更に、下記基準に従ってフォトスペーサーの断面形状を評価した。
【0310】
〜評価基準〜
A:5箇所の全てにおいて、テーパー角度45°以上90°以下の断面形状を有するフォトスペーサーが形成されていた。
B:5箇所の全てにおいて、テーパー角度45°以上95°以下の断面形状を有するフォトスペーサーが形成されていたが、上記Aには該当しなかった。
C:5箇所の全てにおいて、テーパー角度40°以上100°以下の断面形状を有するフォトスペーサーが形成されていたが、上記A及びBのいずれにも該当しなかった。
D:5箇所中1〜4箇所について、テーパー角度40°以上100°以下の範囲を外れるフォトスペーサーが形成されていた。
E:5箇所の全てにおいて、テーパー角度40°以上100°以下の範囲を外れるフォトスペーサーが形成されていた。
【0311】
(フォトスペーサーの高さ均一性)
上記<フォトスペーサーの形成>で測定されたフォトスペーサー1000個分の高さの結果から、最大値と最小値との差を算出し、下記基準に従って評価した。
差が小さい程、均一性に優れている。
【0312】
〜評価基準〜
A:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.2μm未満であった。
B:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.2μm以上0.3μm未満であった。
C:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.3μm以上0.4μm未満であった。
D:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.4μm以上0.5μm未満であった。
E:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.5μm以上であった。
【0313】
(変形回復率)
得られたフォトスペーサーに対して、微小硬度計(DUH−W201、(株)島津製作所製)により次のようにして測定を行ない、評価した。測定は、50μmφの円錘台圧子を採用し、最大荷重50mN、保持時間5秒として、負荷−除荷試験法により行なった。この測定値から下記式により変形回復率〔%〕を求め、下記評価基準にしたがって評価した。測定は、22±1℃、50%RHの環境下で行なった。
変形回復率(%)
=(荷重開放後の回復量[μm]/荷重時の変形量[μm])×100
【0314】
〜評価基準〜
A:変形回復率が90%以上であった。
B:変形回復率が87%以上90%未満であった。
C:変形回復率が85%以上87%未満であった。
D:変形回復率が80%以上85%未満であった。
E:変形回復率が75%以上80%未満であった。
F:変形回復率が75%未満であった。
【0315】
(液晶表示装置の表示ムラ)
上記で作製した液晶表示装置について、グレイのテスト信号を入力させたときのグレイ表示を目視にて観察し、表示ムラの発生の有無を下記評価基準にしたがって評価した。
【0316】
〜評価基準〜
A:表示ムラはなく、非常に良好な表示画像が得られた。
B:ガラス基板のふち部分に微かにムラがあったものの、表示部への影響はなく表示画像は良好であった。
C:表示部に微かにムラがみられたが、実用上許容範囲内であった。
D:表示部にムラがみられた。
【0317】
評価結果を下記表4に示す。
【0318】
【表4】

【0319】
表4に示すように、実施例のフォトスペーサーは断面形状が均一で、高さバラツキが抑制されていた。また、フォトスペーサーを備えた液晶表示装置では表示ムラが抑制されていた。
【0320】
〔実施例24〕
<保護膜の形成>
カラーフィルタ基板の作製において、ブラックマトリクス、R画素、G画素、及びB画素形成後、ブラックマトリクス及び各画素上に、更に、前記実施例21の感光性樹脂組成物を塗布し、マスクを介さずに露光し(全面露光)、加熱処理して保護膜を形成した。ここで、塗布、露光、加熱処理の条件は、マスクを介さずに露光する以外は実施例21のフォトスペーサーの形成における塗布、露光、加熱処理の条件と同様である。
次いで、得られた保護層上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0321】
<フォトスペーサーの形成>
上記で形成されたITO透明電極上に、感光性樹脂組成物として実施例21で用いた感光性樹脂組成物を用いた以外は実施例21と同様の方法によりフォトスペーサーを形成した。
【0322】
<液晶表示装置の作製及び評価>
次に、前記フォトスペーサーが形成されたカラーフィルタ基板を用い、実施例12と同様の方法により液晶表示装置を作製した。
得られた保護膜及び液晶表示装置について、実施例21と同様の方法により評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0323】
【表5】

【0324】
表5に示すように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて保護膜を形成した場合においても、フォトスペーサーを形成した場合と同様に良好な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも側鎖に、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、重合性化合物(B)、ならびに、光重合開始剤(C)を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、着色剤を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルカリ可溶性樹脂が下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有する、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
一般式(A)
【化1】

(一般式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基である。)
【請求項4】
前記アルカリ可溶性樹脂が、下記一般式(A)で表される繰り返し単位および下記一般式(B)で表される繰り返し単位を有する、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
一般式(A)
【化2】

(一般式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(B)
【化3】

(一般式(B)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項5】
前記アルカリ可溶性樹脂が、下記一般式(A)で表される繰り返し単位、下記一般式(B)で表される繰り返し単位および下記一般式(C)で表される繰り返し単位を有する、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
一般式(A)
【化4】

(一般式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(B)
【化5】

(一般式(B)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
一般式(C)
【化6】

(一般式(C)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは2価の連結基を表し、Acは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(A)で表される繰り返し単位、前記一般式(B)で表される繰り返し単位および前記一般式(C)で表される繰り返し単位のいずれかにおいて、Rがメチル基である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(A)で表される繰り返し単位において、Rがメチル基であり、R1〜R5がいずれも水素原子である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いてなるカラーフィルタ、保護膜、フォトスペーサーまたは液晶表示装置用基板。
【請求項9】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を、支持体に適用し着色層を形成する着色層形成工程と、該着色層に対してパターン様の露光をして、潜像を形成する露光工程と、前記潜像が形成された着色層を現像してパターンを形成する現像工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載のカラーフィルタ、請求項9に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されたカラーフィルタ、保護膜、または、フォトスペーサーを具備してなる液晶表示装置または固体撮像素子。
【請求項11】
下記一般式(1−1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2−1)で表される繰り返し単位および下記一般式(3−1)で表される繰り返し単位を有する樹脂。
一般式(1−1)
【化7】

一般式(2−1)
【化8】

一般式(3−1)
【化9】

(一般式(3−1)中、Xは2価の連結基を表し、Acは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。)
【請求項12】
前記樹脂を構成する繰り返し単位の90モル%以上が、前記一般式(1−1)で表される繰り返し単位、前記一般式(2−1)で表される繰り返し単位および前記一般式(3−1)で表される繰り返し単位のいずれかである、請求項11に記載の樹脂。
【請求項13】
前記樹脂は、前記一般式(1−1)で表される繰り返し単位を40〜80モル%、前記一般式(2−1)で表される繰り返し単位15〜30モル%を、前記一般式(3−1)で表される繰り返し単位を1〜30モル%含む、請求項11または12に記載の樹脂。

【公開番号】特開2012−237985(P2012−237985A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95942(P2012−95942)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】