説明

感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント及び永久レジスト

【課題】 感光層のベタツキを抑え、埋め込み性、表面平坦性に優れた感光性樹脂組成物、及びドライフィルムタイプのアルカリ現像可能な感光性エレメント、永久レジストを提供する。
【解決手段】 (a)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂と、(b)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とトリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマーと、(c)光重合開始剤と、(d)エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(a)成分が、重量平均分子量の異なる2種以上の化合物を含む感光性樹脂組成物。前記(a)成分の重量平均分子量の異なる2種以上の化合物の重量平均分子量が、3000〜8000と、9000〜18000であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用の感光性ソルダーレジストに関し、感光性ソルダーレジストに好適で特に感光層のベタツキを抑え、埋め込み性、表面平坦性に優れた感光性樹脂組成物と、これを用いた感光性エレメント、永久レジストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル機器の小型軽量化に伴い、プリント配線板、半導体パッケージ基板、フレキシブル配線板に形成する回路の微細化、高密度化が進んでいる。微細な開口パターンを形成する目的で感光性を有したソルダーレジストが用いられており、表面平坦性、高解像性、絶縁信頼性及びはんだ耐熱性、金めっき耐性等が要求されている。
【0003】
ソルダーレジスト用の感光性樹脂組成物は、特にプリント配線板の分野では、通常液状の感光性樹脂組成物が用いられている。そして、熱硬化性のエポキシ樹脂と、アルカリ現像性を付与するためのカルボン酸基を含有する感光性プレポリマーとを別々に分けた2液型の感光性樹脂組成物からソルダーレジストを形成するのが一般的である。感光性プレポリマーとしては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂にアクリル酸を付加した後、酸無水物等で酸変性したアルカリ現像可能な感光性プレポリマーが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記2液型の感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と感光性プレポリマーのカルボン酸基の反応が室温でも進行するため、2液を混合した後の保存安定性(ポットライフ)が数時間から一日と短く、使用直前に混合しなければならない等、使用条件に制限が生じる。こうした問題を避けるために、近年では、熱硬化剤としてエポキシ樹脂の代わりにブロック型イソシアネート化合物を用いて保存安定性を向上させた1液型の感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、近年、ソルダーレジストの膜厚均一性、表面平滑性、薄膜形成性、取り扱い性を良好にする観点から、ドライフィルムタイプのソルダーレジスト用感光性樹脂組成物が強く望まれている。このような感光性樹脂組成物によれば、上記の特性の他、ソルダーレジスト形成のための工程の簡略化やソルダーレジスト形成時の溶剤排出量の低減といった効果が得られる。これまでにも種々のドライフィルムタイプのソルダーレジスト用の感光性樹脂組成物が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献3では、カルボキシル基を有するポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤及びビスマレイミド化合物を含有する感光性フィルムが、特許文献4では、無水マレイン酸共重合体の無水物基に対して0.1〜1.2当量の1級アミン化合物を反応させて得られた共重合体、重合性化合物及び光重合開始剤を含有する感光性フィルムが開示されている。
【0007】
一方で配線の狭ピッチ化に伴って、回路間のソルダーレジスト埋め込み性が非常に重要な項目となっている。この埋め込み性が不十分であると、回路間に気泡が入り絶縁信頼性や熱衝撃信頼性といった各種信頼性の低下を招く可能性がある。半導体パッケージの薄肉化に伴って、接続端子間も狭ピッチ化し、ソルダーレジストの薄膜化、及び接続信頼性確保の為にソルダーレジストの表面平滑性が求められている。この表面平滑性を満足し、気泡無く微細配線間やスルーホール部分にソルダーレジストを埋め込む為には、ラミネート時に樹脂成分が十分に流動する必要がある。つまり、樹脂成分の分子量やラミネート温度の制御が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開2001−305726号公報
【特許文献3】特開2004−287267号公報
【特許文献4】特開2005−316431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は感光層のベタツキを抑え、埋め込み性、表面平坦性に優れた感光性樹脂組成物、及びドライフィルムタイプのアルカリ現像可能な感光性エレメント、永久レジストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、感光層のベタツキを抑え、埋め込み性、表面平坦性に優れた感光性樹脂組成物を鋭意検討した結果、(a)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂と、(b)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とトリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマーと、(c)光重合開始剤と、(d)エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(a)成分が、重量平均分子量の異なる2種以上の化合物を含む感光性樹脂組成物が上記課題を達成できることを見出した。
【0011】
本発明は、[1](a)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂と、(b)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とトリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマーと、(c)光重合開始剤と、(d)エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(a)成分が、重量平均分子量の異なる2種以上の化合物を含む感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[2]前記(a)成分の重量平均分子量の異なる2種以上の化合物の重量平均分子量が、3000〜8000と、9000〜18000である上記[1]に記載の感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[3]前記(b)成分が、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジオールジアクリレート及びトリシクロデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される1種以上である上記[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[4]前記(b)成分が、下記一般式(1)又は一般式(2)で示される部分構造を有する上記[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

[一般式(1)又は一般式(2)中、R、Rは、直接結合、アルキレン、又はアリーレン基を示す。]
【0014】
また、本発明は、[5]前記一般式(1)又は一般式(2)で示される部分構造を有する化合物が、トリシクロデカン構造を含むジオール化合物と、ジイソシアネート化合物と、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン化合物である前記[4]に記載の感光性樹脂組成物に関する。
さらに、本発明は、[6]支持体と、該支持体上に形成された上記[1]〜[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える感光性エレメントに関する。
また、本発明は、[7]プリント配線板用の基板上に形成された上記[1]〜[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物、または上記[5]に記載の感光性エレメントの感光性樹脂組成物層の硬化物からなる永久レジストに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、感光性ソルダーレジスト(永久レジスト)のベタツキ、解像性、めっき耐性、表面平滑性、埋め込み性に優れた、プリント配線板、半導体パッケージ基板、フレキシブル配線板に最適なソルダーレジストを形成できる感光性エレメント、それらを用いた永久レジストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)重量平均分子量の異なる2種以上の、分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂と、(b)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とトリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマーと、(c)光重合開始剤と、(d)エポキシ樹脂を含む。
【0018】
本発明の大きな特徴となすところは、上記(a)成分において、重量平均分子量の異なる樹脂を混合する事により、感光層の流動性を最適化し課題を達成する事にある。
【0019】
<(a)成分>
本発明の(a)成分である分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂としては、例えば、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)のエステル化物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(a3)を付加した付加反応物等を用いることができる。これらは、例えば、次の二段階の反応によって得ることができる。最初の反応(以下、便宜的に「第一の反応」という。)では、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)とが反応する。次の反応(以下、便宜的に「第二の反応」という。)では、第一の反応で生成したエステル化物と、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(a3)とが反応する。
【0020】
上記エポキシ化合物(a1)としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、及び多官能エポキシ化合物等が挙げられる。
【0021】
ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型とエピクロルヒドリンを反応させて得られるものが適しており、チバガイギー社製GY−260、GY−255、XB−2615、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828、1007、807等のビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、アミノ基含有、脂環式あるいはポリブタジエン変性等のエポキシ化合物が好適に用いられる。
【0022】
ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール及びアルキルフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるものが適しており、東都化成株式会社製YDCN−701、704、YDPN−638、602、ダウ・ケミカル社製DEN−431、439、チバガイギー社製EPN−1299、大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製N−730、770、865、665、673、VH−4150,4240、日本化薬社製EOCN−120、BREN等が挙げられる。
【0023】
また、その他の構造のエポキシ化合物としては、例えば、サリチルアルデヒド−フェノール又はクレゾール型エポキシ化合物(日本化薬株式会社製EPPN502H、FAE2500等)、大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製エピクロン840、860、3050、ダウ・ケミカル社製DER−330、337、361、ダイセル化学工業株式会社製セロキサイド2021、三菱ガス化学株式会社製TETRAD−X、C、日本曹達株式会社製EPB−13、27等も使用することができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用され、混合物あるいはブロック共重合物を用いてもよい。
【0024】
上記不飽和モノカルボン酸(a2)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸や、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類又は飽和若しくは不飽和二塩基酸と不飽和モノグリシジル化合物との半エステル化合物類との反応物が挙げられる。この反応物としては、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸などと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどとを常法により等モル比で反応させて得られる反応物などが挙げられる。これらの不飽和モノカルボン酸は単独又は混合して用いることができる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
【0025】
飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸及び無水トリメリット酸等が挙げられる。
【0026】
第一の反応では、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸(a2)のカルボキシル基との付加反応により水酸基が生成する。第一の反応における、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)との比率は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1当量に対して、不飽和モノカルボン酸(a2)が0.7〜1.05当量となる比率であることが好ましく、0.8〜1.0当量となる比率であることがより好ましい。
【0027】
エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)とは有機溶剤に溶解させて反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等を用いることができる。
【0028】
第一の反応では、反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、及びトリフェニルホスフィン等を用いることができる。触媒の使用量は、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。
【0029】
第一の反応において、エポキシ化合物(a1)同士又は不飽和モノカルボン酸(a2)同士、あるいはエポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)との重合を防止するため、重合防止剤を使用することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、及びピロガロール等を用いることができる。重合防止剤の使用量は、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.01〜1質量部とすることが好ましい。第一の反応の反応温度は、60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
【0030】
第一の反応では、必要に応じて不飽和モノカルボン酸(a2)と、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物とを併用することができる。
【0031】
第二の反応では、第一の反応で生成した水酸基及びエポキシ化合物(a1)中に元来ある水酸基が、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物(a3)の酸無水物基と半エステル反応すると推察される。ここでは、第一の反応によって得られる樹脂中の水酸基1当量に対して、0.1〜1.0当量の多塩基酸無水物(a3)を反応させることができる。多塩基酸無水物(a3)の量をこの範囲内で調製することによって、(a)成分の酸価を調整することができる。
【0032】
分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂としては、CCR−1218H、CCR−1159H、CCR−1222H、PCR−1050、TCR−1335H、ZAR−1035、ZAR−2001H、ZFR−1185及びZCR−1569H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0033】
また、本発明の(a)成分である分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂は、分子内に2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物と、を反応させて得られるポリウレタン化合物を用いることも好ましい。
【0034】
ポリウレタン化合物は、上記のように、2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物(以下、「原料エポキシアクリレート」という)、ジイソシアネート化合物(以下、「原料ジイソシアネート」という)、並びにカルボキシル基を有するジオール化合物(以下、「原料ジオール」という)を原料成分として得られる化合物である。まず、これらの原料成分について説明する。
【0035】
原料エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、及びフルオレン骨格を有するエポキシ化合物等に(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0036】
原料ジイソシアネートとしては、イソシアナト基を2つ有する化合物であれば特に制限なく適用できる。例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、N−アシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、及びノルボルナン−ジイソシアネートメチル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0037】
上記原料ジオールは、分子内に、アルコール性水酸基及び/又はフェノール性水酸基等の水酸基を2つ有するとともに、カルボキシル基を有する化合物である。水酸基としては、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性を良好にする観点から、アルコール性水酸基を有していることが好ましい。このようなジオール化合物としては、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸等が例示できる。
【0038】
次に、上述した原料成分を用いてポリウレタン化合物を製造する工程の例について説明する。
【0039】
ポリウレタン化合物の製造工程では、まず、原料エポキシアクリレート及び原料ジオールを、原料ジイソシアネートと反応させる。かかる反応においては、主に、原料エポキシアクリレートにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアナト基との間、及び、原料ジオールにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアナト基との間で、いわゆるウレタン化反応が生じる。この反応により、例えば、原料エポキシアクリレートに由来する構造単位と、原料ジオールに由来する構造単位とが、原料ジイソシアネートに由来する構造単位を介して交互に又はブロック的に重合されたポリウレタン化合物が生じる。
【0040】
このようなポリウレタン化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が例示できる。
【0041】
【化3】


【0042】
ここで、一般式(3)中、Rはエポキシアクリレートの残基、Rはジイソシアネートの残基、Rは炭素数1〜5のアルキル基、R10は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。また、式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なってもいてもよい。また、上記ポリウレタン化合物が有する末端の水酸基は、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物で処理されていてもよい。
【0043】
上述したポリウレタン化合物の製造工程では、原料エポキシアクリレート、原料ジオール及び原料ジイソシアネート以外に、これらとは異なるジオール化合物を更に添加してもよい。これにより、得られるポリウレタン化合物の主鎖構造を変えることが可能となり、後述する酸価等の特性を所望の範囲に調整できる。また、上述した各工程では、適宜、触媒等を用いてもよい。
【0044】
また、上述したポリウレタン化合物と原料エポキシとを更に反応させてもよい。この反応では、主に上記ポリウレタン化合物におけるジオール化合物に由来するカルボキシル基と、原料エポキシの有するエポキシ基との間でいわゆるエポキシカルボキシレート化反応が生じる。このようにして得られる化合物は、例えば、上述したポリウレタン化合物から形成される主鎖と、原料エポキシアクリレートや原料エポキシに由来するエチレン性不飽和基を含む側鎖とを備えるものとなる。
【0045】
本実施形態のポリウレタン化合物としては、一般式(3)で表される化合物の中でも、ポリウレタンの主骨格の一つとなる原料エポキシアクリレートのハードセグメント部、すなわちRがビスフェノールA型構造のものが好ましい。このようなポリウレタン化合物は、UXE−3011、UXE−3012、UXE−3024(日本化薬株式会社製)等として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0046】
また、かかるポリウレタン化合物を含む感光性樹脂組成物は、強靭且つ伸びに優れた硬化膜を形成できるため、硬化後の耐クラック性及びHAST耐性(Highly Accelerated Stress Test (高度加速ストレス試験))を向上させることができる。
【0047】
これまでに例示した(a)成分のカルボキシル基を有する樹脂は、その酸価が、20〜180mgKOH/gであることが好ましく、30〜150mgKOH/gであることがより好ましく、40〜120mgKOH/gであることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性が良好となり、優れた解像度が得られるようになる。
【0048】
ここで、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、次式により酸価を算出する。
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
なお、式中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定樹脂溶液質量(g)を示し、Iは測定樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0049】
(a)成分の重量平均分子量の設定は本発明の重要な点である。感光層厚、ラミネート条件、基板の残銅率等によって最適設定値は異なってくるが、流動性の観点から、重量平均分子量は3000〜8000と9000〜18000を混合することが好ましい。更にその比率は重量平均分子量が低い樹脂が多いほうが好ましい。
【0050】
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値から求めることができる。
【0051】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマーである。
【0052】
(b)成分としては、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジオールジアクリレート及びトリシクロデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される1種以上であると好ましい。これらは商業的には、NKエステルDCP、NKエステルA−DCP(いずれも新中村化学工業株式会社製)として入手可能である。
【0053】
さらに、上記(b)成分としてウレタン結合を有するものを使用する場合は、下記の一般式(1)又は一般式(2)で示される部分構造を有する(b)成分を使用することも好ましい。
【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
「一般式(1)及び一般式(2)中、R、Rは、直接結合、アルキレン、又はアリーレン基を示す」
上記アルキレン基としては、炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0057】
炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられるが、解像度、耐めっき性の点からエチレン基又はイソプロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0058】
上記アリーレン基としては、炭素数は6〜14のアリーレン基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリーレン基であることがより好ましい。このようなアリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン等が挙げられる。
【0059】
上記(b)成分として、上記の一般式(1)又は一般式(2)で示される部分構造を有する化合物を使用する場合、(b1)トリシクロデカン構造を含むジオール化合物と、(b2)ジイソシアネート化合物と、(b3)分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン化合物であることが好ましい。
【0060】
上記(b2)ジイソシアネートとしては、特に制限はないが、環構造を有する化合物が好ましい。中でも、イソホロンジイソシアネートのような剛直な構造を有しているものが、耐クラック(耐熱性)の観点からより好ましい。
【0061】
また、上記(b3)分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物は、架橋密度の観点から、エチレン性不飽和基を2個有しているものが好ましく、3個有しているものが、特に好ましい。
【0062】
上記エチレン性不飽和基を3個有している化合物としては、下記一般式(4)で示される化合物を含有することが好ましい。
【0063】
【化6】

【0064】
[一般式(4)中、RとRは同一でも異なっていてもよく、それぞれRは炭素数1から10のアルキレン基又はアリーレン基を示し、Rは水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又はアリール基を示し、l、m、nは1〜10の整数を示す。]
【0065】
これらの中でも、上記ジイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートであり、加えて、上記分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物が、上記一般式(4)で示す化合物であると、さらに好ましい。そのような化合物としては、商業的には、UX−5002D−M20(日本化薬株式会社製)等がある。これらは、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
<(c)成分:光重合開始剤>
本発明で用いる(c)光重合開始剤としては、使用する露光機の光波長にあわせたものであれば特に制限はなく、公知のものを利用することができる。具体的には例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラアルキル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン系化合物、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物などが挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
レジスト形状をより良好にする観点から、ホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いることが好ましい。そのような化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイドのものとしては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドがあり、ビスアシルホスフィンオキサイドのものとしては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、が挙げられる。それぞれ、DAROCURE−TPO、IRGACURE−819(いずれもチバ・ジャパン社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0068】
また、感度向上を目的にオキシムエステルを有する化合物をさらに含有することが好ましい。上記オキシムエステルを有する化合物としては、例えば、(2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン)、(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム))が挙げられる。市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0069】
また、(c)光重合開始剤の増感剤として、さらにレジスト形状をより良好にする観点から、チオキサントン系化合物を含んでも良い。チオキサントン系化合物としては、例えば、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられ、中でも2,4−ジエチルチオキサントンを含むことがより好ましい。2,4−ジエチルチオキサントンは、KAYACURE−DETX(日本化薬株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0070】
<(d)成分>
本発明の感光性樹脂組成物で用いることのできる(d)エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、それらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
これらの化合物としては市販品を用いることができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとしては、エピコート828、エピコート1001及びエピコート1002(いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)等を挙げることができる。ビスフェノールFジグリシジルエーテルとしては、エピコート807(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ビスフェノールSジグリシジルエーテルとしてはEBPS−200(日本化薬株式会社製、商品名)及びエピクロンEXA−1514(大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製、商品名)等を挙げることができる。また、ビフェノールジグリシジルエーテルとしてはYL−6121(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ビキシレノールジグリシジルエーテルとしてはYX−4000(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)等を挙げることができる。さらに、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルとしてはST−2004及びST−2007(いずれも東都化成株式会社製、商品名)等を挙げることができ、上記した二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてはST−5100及びST−5080(いずれも東都化成株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0072】
尚、感光性樹脂組成物は、上記した(a)〜(d)成分に加えて所望の特性に応じて、その他の成分を更に含んでもよい。
【0073】
その他の成分としては、(b)成分とは異なる、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーが挙げられる。要求される特性によって、これらの光重合性モノマーを適宜選択し、(b)成分に加えて使用することができる。
【0074】
そのような化合物としては、具体的に例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマー等が挙げられる。また、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β′−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びEO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0075】
アルカリ現像性を良好にするためには、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を(b)成分と組み合わせて使用することが好ましい。ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは、1種類以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも、感度及び解像度を良好にするためには、上記のなかでも2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンを、(b)成分と組み合わせて使用することが好ましい。
【0076】
上記化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、FA−321M(日立化成工業株式会社製、商品名)又はBPE−500(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0077】
密着性、解像度及び耐電食性のバランスを良好にするためには、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物を、(b)成分と組み合わせて使用することが好ましい。
【0078】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH−CH−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH−CH−CH−O−)又はイソプロピレンオキシドユニット(−CH−CH(CH)−O−、−CH(CH)−CH−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0080】
また、上記グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が挙げられる。なお、上記したような化合物を得るためのα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0081】
また、上記分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマー等としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物や、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びEO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物は、特に銅等の金属との密着が必要とされる場合、密着性向上剤として、メラミン、ジシアンジアミド、トリアジン化合物及びその誘導体、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の添加剤類を用いることができる。例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン−フェノール−ホルマリン樹脂、ジシアンジアミド、四国化成工業株式会社製;2MZ−AZINE、2E4MZ−AZINE、C11Z−AZINE、2MA−OK等が挙げられる。あるいはエチルジアミノ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−s−トリアジン等のトリアジン誘導体類が挙げられる。これらの化合物は銅回路との密着性を上げ耐PCT性を向上させ、HAST耐性にも効果がある。これらは(a)成分と(b)成分の総量100質量部に対して0.1〜10質量%で使用されるのが好ましい。
【0083】
また、本発明では、密着性、硬度等の特性を向上する目的で必要に応じて無機フィラーを用いることが好ましい。例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、粉状酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の無機充填剤が使用できる。その使用量は、好ましくは0〜70質量%である。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、感光性樹脂組成物と完全に相溶しないエラストマを更に加えることが有効である。感光性樹脂組成物中にエラストマを含有させることにより、導体層との密着性をより良好にすることができ、更に、感光性樹脂組成物の硬化後の耐熱性、柔軟性及び強靭性を向上させることが可能となる。エラストマとしては、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、シリコーン系エラストマ等が例示できる。スチレン系エラストマとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマ、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマ、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマ、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマが例示できる。スチレン系エラストマにおけるスチレン成分としては、スチレンの他に、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体を用いることができる。
【0085】
スチレン系エラストマは、商業的には、タフプレン、ソルプレンT、アサプレンT、タフテック(以上、旭化成工業株式会社製)、エラストマAR(アロン化成株式会社製)、クレイトンG、カリフレックス(以上、シェルジャパン株式会社製)、JSR−TR、TSR−SIS、ダイナロン(以上、JSR株式会社製)、デンカSTR(電気化学工業株式会社製)、クインタック(日本ゼオン株式会社製)、TPE−SBシリーズ(住友化学株式会社製)、ラバロン(三菱化学株式会社製)、セプトン、ハイブラー(以上、クラレ株式会社製)、スミフレックス(住友ベークライト株式会社製)、レオストマ、アクティマー(以上、理研ビニル工業株式会社製)等として入手可能である。
【0086】
オレフィン系エラストマとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンの単独又は共重合体;エチレン−プロピレン共重合体(EPR);エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM);ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2〜20のジエンとα−オレフィンとの共重合体;ブタジエン−アクニロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性NBR;エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム;エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム;プロピレン−α−オレフィン共重合体ゴム、ブテン−α−オレフィン共重合体ゴム等が例示できる。オレフィン系エラストマは、商業的には、ミラストマ(三井石油化学工業株式会社製)、EXACT(エクソンモービル社製)、ENGAGE(ダウケミカル社製)、水添スチレン−ブタジエン共重合体であるDYNABON HSBR、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体であるNBRシリーズ、架橋点を有する両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクニロニトリル共重合体であるXERシリーズ(以上、JSR株式会社製)等として入手可能である。
【0087】
ウレタン系エラストマは、短鎖ジオール及びジイソシアネートからなるハードセグメントと、長鎖ジオール及びジイソシアネートからなるソフトセグメントと、から構成される。長鎖ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン−1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6−ヘキシレン−ネオペンチレンアジペート)等が例示でき、長鎖ジオールの数平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。
【0088】
短鎖ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA等が例示でき、短鎖ジオールの数平均分子量は、48〜500であることが好ましい。上記ウレタン系エラストマは、商業的にはPANDEX T−2185、T−2983N(以上、大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製)等として入手可能である。ポリエステル系エラストマは、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られるエラストマである。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらの芳香環がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが例示でき、これらの化合物の1種又は2種以上を用いることができる。
【0089】
ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族又は脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、レゾルシン等が例示でき、これらの化合物の1種又は2種以上を用いることができる。
【0090】
また、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)をハードセグメント成分、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)をソフトセグメント成分としたマルチブロック共重合体を用いることができる。上記のポリエステル系エラストマは、商業的には、ハイトレル(デュポン−東レ株式会社製)、ペルプレン(東洋紡績株式会社製)、エスペル(日立化成工業株式会社製)等として入手可能である。ポリアミド系エラストマは、ポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエーテル又はポリエステルからなるソフトセグメントと、から構成されるエラストマであり、ポリエーテルブロックアミド型とポリエーテルエステルブロックアミド型との2種類に大別される。
【0091】
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等が例示でき、ポリエーテルとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリテトラメチレングリコール等が例示できる。上記ポリアミド系エラストマは、商業的には、UBEポリアミドエラストマ(宇部興産株式会社製)、ダイアミド(ダイセルヒュルス株式会社(ダイセル・エボニック株式会社)製)、PEBAX(東レ株式会社製)、グリロンELY(エムスジャパン社製)、ノバミッド(三菱化学株式会社製)、グリラックス(大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製)等として入手可能である。アクリル系エラストマは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する単量体及び/又はアクリロニトリルやエチレン等のビニル系単量体とを共重合して得られるエラストマである。
【0092】
アクリル系エラストマとしては、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体等が例示できる。シリコーン系エラストマは、オルガノポリシロキサンを主成分したエラストマーであり、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系又はポリジフェニルシロキサン系のシリコーン系エラストマが例示できる。オルガノポリシロキサンをビニル基、アルコキシ基等で変性したエラストマーを用いてもよい。シリコーンエラストマは、商業的には、KEシリーズ(信越化学株式会社製)SEシリーズ、CYシリーズ、SHシリーズ(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)等として入手可能である。また、上記したエラストマ以外に、ゴム変性したエポキシ樹脂やエポキシ樹脂に上記したエラストマーの粒状物を混錬したもの等を用いることができる。ゴム変性したエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部を、両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性してなるものである。さらに、エラストマとしては、両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体や、ポリエステル系エラストマーであるエスペル(エスペル1108、エスペル1612、エスペル1620、日立化成工業株式会社製)を用いることもできる。
【0093】
また、本発明では、必要に応じて希釈溶剤を用いることが望ましい。希釈剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類、ベンジルアルコール、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジアセトンアルコール、3−メトキシ−1−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルブチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテル類及びそのアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類及びそのアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、トリエチレングリコールアルキルエーテル類、プロピレングリコールアルキルエーテル類及びそのアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテル類、また、トルエン、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ若しくはソルベントナフサ等の石油系溶剤、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル等のカルボン酸エステル類、アミン、アミド類の例えば、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等や、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン等の溶剤を単独、或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
また、必要に応じてフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、ジスアゾイエロー、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック、アゾ系の有機顔料などの着色剤、染料等を用いることができる。更にハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト、エアロジル、アミドワックス等のチキソ性付与剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤を用いることができる。
【0095】
本発明に用いる希釈剤の含有量は、支持体に塗布し感光性エレメント(感光性フィルム)として使用する場合には、塗布前のワニス状態では、全質量中の30〜70%含有させる。その後、フィルムとした後はフィルム作製時の乾燥工程において揮発させるため、2%以下となる。
【0096】
次に、本発明の感光性エレメントについて説明する。
本発明の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に形成された本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備えるものである。感光性樹脂組成物層上には、該感光性樹脂組成物層を被覆する保護フィルムを更に備えていてもよい。
【0097】
感光性樹脂組成物層は、本発明の感光性樹脂組成物を上記溶剤又は混合溶剤に溶解・分散して固形分30〜80質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体上に塗布して形成することが好ましい。感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、5〜200μmであることが好ましく、15〜60μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では工業的に塗工困難な傾向があり、200μmを超えると本発明により奏される上述の効果が小さくなりやすく、特に、物理特性及び解像度が低下する傾向がある。
【0098】
感光性エレメントが備える支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。
【0099】
支持体の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では現像前に支持体を剥離する際に当該支持体が破れやすくなる傾向があり、また、100μmを超えると解像度及び可撓性が低下する傾向がある。本発明においては、上述したような変性エポキシ樹脂を用いて感光性樹脂組成物層を形成するので、支持体の厚みが従来のものと比較してより厚い場合、例えば25μm超、100μm以下の場合であっても、その可撓性及び解像度を維持することができる。
【0100】
上述したような支持体と感光性樹脂組成物層との2層からなる感光性エレメント又は支持体と感光性樹脂組成物層と保護フィルムとの3層からなる感光性エレメントは、例えば、そのまま貯蔵してもよく、又は保護フィルムを介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
【0101】
本発明の感光性樹脂組成物又は感光性エレメントを用いたレジストパターンの形成方法は、初めに、其々、公知のスクリーン印刷、ロールコータにより塗布する工程、又はラミネート等により貼り付ける工程により、レジストを形成する基板上に積層する。次いで、必要に応じて上述した感光性エレメントから保護フィルムを除去する除去工程を行い、活性光線を、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に照射して、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。照射部以外の感光性樹脂組成物層は、次の現像工程により除去される。なお、レジストを形成する基板とは、プリント配線板、半導体パッケージ用基板、フレキシブル配線板を指す。
【0102】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。
更に直接描画方式のダイレクトレーザ露光を用いても良い。其々のレーザ光源、露光方式に対応する成分(c)を用いることにより優れたパターンを形成することが可能となる。
【0103】
現像工程では、現像液として、例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5質量%水溶液)等のアルカリ現像液が用いられ、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。
【0104】
上記現像工程終了後、はんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.2〜10J/cm程度の照射量で照射を行うこともできる。また、レジストパターンを加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。さらに紫外線照射と加熱とを同時に行うこともでき、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。紫外線の照射と加熱とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
【0105】
この感光性樹脂組成物層は、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ね、良好なラミネート温度安定性、優れた解像性、優れた平坦性、耐クラック性、HAST耐性、金めっき性を有するので、プリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用のソルダーレジスト(永久レジスト)として有効である。
【0106】
このようにしてレジストパターンを備えられた基板は、その後、半導体素子などの実装(例えば、ワイヤーボンディング、はんだ接続)がなされ、そして、パソコン等の電子機器へ装着される。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
(感光性樹脂組成物溶液の作製)
まず、表1〜2に示す各成分を同表に示す配合量(質量部)で混合することにより、感光性樹脂組成物溶液を得た。表1及び表2に示す各成分は、下記のものを使用した。
【0109】
<(a)成分>
「EXP−2810(重量平均分子量;10000)」:酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(DIC株式会社製)。
「EXP−2810低分子量品(重量平均分子量;7000)」:酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(DIC株式会社製)。
「EXP−2810高分子量品(重量平均分子量;15000)」:酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(DIC株式会社製)。
「UXE−3024(重量平均分子量;10000)」:ウレタン変性エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製)。
【0110】
<(b)成分>
「NKエスペルDCP」:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製)
「UX−5002D−M20」:トリシクロデカン構造含有ウレタンアクリレート(日本化薬株式会社製)
【0111】
<(c)成分(光重合開始剤)>
「DAROCURE−TPO」:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
「IRGACURE−OXE02」:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
「IRGACURE−907」:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
【0112】
<(d)成分>
「NC−3000H」:ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂((日本化薬株式会社製)
「BL−3175」:ブロック型イソシアネート(住友バイエルウレタン株式会社製)
【0113】
<その他成分>
「FA−321M」:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成工業株式会社製)。
「ベンゾグアナミン」:2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン(株式会社日本触媒製、商品名)。
「ジシアンジアミド」:「エピキュアDICY7」(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)。
「エスペル1108」:ポリエステル系エラストマ(日立化成工業株式会社製、商品名)。
「フタロシアニンブルー」(東洋インキ株式会社製、商品名)
「バリエースB−30」:硫酸バリウム「バリエースB−30」(堺化学工業株式会社製、商品名)を使用し、以下の方法で調製した硫酸バリウム分散液。
【0114】
(b)成分20質量部(固形分)、上記硫酸バリウム25質量部、及びメチルエチルケトン40質量部を、スターミルLMZ(アシザワファインテック株式会社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速12m/sにて3時間分散して、硫酸バリウム分散液を得た。硫酸バリウムは上記で調製した分散液を配合することで、感光性樹脂組成物に含有させた。
【0115】
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物溶液には、希釈剤としてメチルエチルケトン、及びN、N‐ジメチルホルムアミドの質量比=1:1の混合溶液を、樹脂組成物溶液の固形分が60質量%となるように加えた。
【0116】
【表1】

【0117】
(感光性エレメントの作製)
次いで、上記で得られた感光性樹脂組成物溶液を、支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2−16、帝人株式会社製、商品名)上に均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成し、それを、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、20μmであった。
【0118】
続いて、感光性樹脂組成物層の支持体と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(NF−15、タマポリ株式会社製、商品名)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性エレメント(感光性フィルム)を得た。
【0119】
(感光性エレメントの特性評価)
実施例1〜5及び比較例1〜5の感光性エレメントをそれぞれ用いて以下の各試験を行い、各感光性エレメントを用いた場合の、感光層ベタツキ、解像性、金めっき耐性、表面平滑性、埋め込み性について評価した。得られた結果を纏めて表2に示した。
【0120】
(感光層ベタツキの評価)
得られた感光性エレメントの感光性樹脂組成物層のベタツキを以下の判定基準により判定した。
「A」:指に対する貼り付きが認められない、または殆ど認められないもの。
「B」:指に対する貼り付きが認められるもの。
「C」:指に付着するほどの強い貼り付きが認められるもの。
【0121】
(解像性の評価)
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板上にプレス式真空ラミネータ(MVLP−500、株式会社名機製作所製、商品名)を用いて、圧着圧力0.4MPa、プレス熱板温度80℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下でラミネートを行い、前記感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。
【0122】
評価用積層体上に、ネガとして直径が30〜100μmの範囲で10μm刻みのビア径パターンを有するフォトツールを密着させ、株式会社オーク製作所製EXM−1201型露光機を使用して、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が16.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温(25℃)で1時間静置した後、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、60秒間スプレー現像を行い、未露光部を除去し、レジストパターンを形成した。
【0123】
形成されたレジストパターンを実体顕微鏡で観察し、以下の判定基準により解像性を判定した。
「A」:ビア径50μmが解像できているもの。
「B」:ビア径50μmが解像できていないもの。
「C」:ビアにレジスト残渣が観察できるもの。
【0124】
(無電解Ni/Auめっき耐性の評価)
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板上にプレス式真空ラミネータ(MVLP−500、株式会社名機製作所製、商品名)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、前記感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。
【0125】
評価用積層体上に、ネガとして直径が200μmのビアパターンを有するフォトツールを密着させ、株式会社オーク製作所製EXM−1201型露光機を使用して、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が16.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、60秒間スプレー現像を行い、パターンを形成した。
【0126】
続いて、株式会社オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、直径が200μmのビア開口部を有するソルダーレジストを形成した評価用積層体基板を得た。
【0127】
上記で得られた評価用積層体基板に対し、無電解ニッケルめっき(上村工業株式会社製、商品名ニムデンNPR−4)を施し(15分間処理)、更に無電解金めっき(上村工業株式会社製、商品名オーリカルTKK−511)を施した(15分間処理)。
【0128】
このようにしてめっきが施された評価用積層体基板に対し、ソルダーレジスト底部へのめっき液の染み込み、並びに、基板からのソルダーレジストの浮き及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察し、以下の判定基準により、無電解Ni/Auめっき耐性を評価した。
「A」:ソルダーレジスト底部への染み込みが認められないもの。
「B」:ソルダーレジスト底部への染み込みが1〜10μmまでのもの。
「C」:上記以外のもの。
【0129】
(表面平滑性(平坦性)の評価)
12μm厚の銅箔を0.06mm厚のガラスエポキシ基材に積層した100×100mm角のプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)に、半径0.2mmのスルーホールを1mm間隔にて作製し、これを表面平坦性評価基板とした。この基板の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板両面にプレス式真空ラミネータ(MVLP−500、株式会社名機製作所製、商品名)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、前記感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。
【0130】
評価用積層体に株式会社オーク製作所製EXM‐1201型露光機を使用して、21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が19.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温(25℃)で1時間静置した後、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像を行い、パターンを形成した。
【0131】
続いて、株式会社オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、ソルダーレジストを形成した表面平坦性評価用積層体基板を得た。
【0132】
このようにして得られた評価基板を、超深度形状測定顕微鏡(VK−8510、株式会社キーエンス製)を用いて、ソルダーレジストのスルーホール部分における凹みを測定し、以下の判定基準により評価した。
「A」:スルーホール部分の凹みが0〜3μmのもの。
「B」:スルーホール部分の凹みが4〜7μmのもの。
「C」:7μm以上のもの。
【0133】
(埋め込み性の評価)
12μm厚の銅箔を0.40mm厚のガラスエポキシ基材に積層した100×100mm角のプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)に、半径0.3mmのスルーホールを2mm間隔にて作製し、これを埋め込み性評価基板とした。この基板の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板両面にプレス式真空ラミネータ(MVLP−500、株式会社名機製作所製、商品名)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、前記感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥離して両面積層し、評価用積層体を得た。
【0134】
評価用積層体に株式会社オーク製作所製EXM‐1201型露光機を使用して、21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が19.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像を行い、パターンを形成した。
【0135】
続いて、株式会社オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、ソルダーレジストを形成した埋め込み性評価用積層体基板を得た。
【0136】
このようにして得られた評価基板において、金属顕微鏡を用いてスルーホール部分100箇所観察し、次の判定基準で評価した。
「A」:気泡・クラックが全く観察されないもの。
「B」:気泡・クラックが1〜10個観察されるもの。
「C」:気泡・クラックが11個以上観察されるもの。
【0137】
【表2】

【0138】
(a)成分の分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂として、1種類を用いた比較例1では、表面平滑性や埋め込み性に劣る。そして、比較例1の(a)成分に用いた樹脂より、重量平均分子量(Mw)の低い樹脂を用いた比較例2では、表面平滑性や埋め込み性は、良好となるが、ベタツキや解像性に劣ってしまう。反対にMwの高い樹脂を用いた比較例3では、ベタツキや解像性は良好であるが、表面平滑性や埋め込み性は、一段と劣る。
これに対し、(a)成分の分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂として、重量平均分子量の異なる2種以上の化合物を含む実施例では、感光性エレメントのベタツキ、解像性、Ni/Auめっき耐性、表面平滑性、埋め込み性に優れた、プリント配線板、半導体パッケージ基板、フレキシブル配線板に最適なソルダーレジスト(永久レジスト)を形成できる感光性樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂と、(b)分子内に1個以上のエチレン性不飽和基とトリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマーと、(c)光重合開始剤と、(d)エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(a)成分が、重量平均分子量の異なる2種以上の化合物を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)成分の重量平均分子量の異なる2種以上の化合物の重量平均分子量が、3000〜8000と、9000〜18000である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b)成分が、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジオールジアクリレート及びトリシクロデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される1種以上である請求項1または請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b)成分が、下記一般式(1)又は一般式(2)で示される部分構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

[一般式(1)又は一般式(2)中、R、Rは、直接結合、アルキレン、又はアリーレン基を示す。]
【請求項5】
前記一般式(1)又は一般式(2)で示される部分構造を有する化合物が、トリシクロデカン構造を含むジオール化合物と、ジイソシアネート化合物と、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン化合物である請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える感光性エレメント。
【請求項7】
プリント配線板用の基板上に形成された請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物、または請求項5に記載の感光性エレメントの感光性樹脂組成物層の硬化物からなる永久レジスト。

【公開番号】特開2012−255925(P2012−255925A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129104(P2011−129104)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】