説明

感光性樹脂組成物、並びにそれを用いた感光性インクジェットインク、感光性接着剤、感光性コーティング剤、及び半導体封止材

【課題】速い硬化速度と高い保存安定性を両立し、さらにその硬化物が高い硬度を有する、感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)1〜40質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)5〜90質量%と、を含む、感光性樹脂組成物とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、それを用いた感光性インクジェットインク、感光性接着剤、感光性コーティング剤、及び半導体封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等のエネルギー線を用いた光硬化システムは、生産性の向上や近年の環境問題を解決する上で有力な方法である。現在の光硬化システムの主流は、(メタ)アクリレート系材料を使用したラジカル硬化材料である。しかし、酸素による硬化阻害を受けやすく、また硬化収縮が大きいため基材への密着性が低いという課題を有する。
【0003】
そこで、近年、これらの課題を解決するため、カチオン硬化材料に注目が集まっている。カチオン硬化材料は、(a)酸素による硬化阻害を受け難いため、微小液滴及び薄膜硬化性に優れること、(b)硬化収縮が小さく、幅広い基材に対し良好な密着性を有すること、(c)活性種の寿命が長く光照射後も硬化が徐々に進むことから(暗反応)、残モノマー量を低く抑えることが可能であること等、ラジカル硬化材料に比べ優れた特長を有する。そのため、カチオン硬化材料を、塗料、接着剤、ディスプレイ用シール剤、印刷インキ、立体造形、シリコーン系剥離紙、フォトレジスト、電子部品用封止剤等へ応用することが検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
光カチオン硬化材料では主としてエポキシ化合物が用いられる。中でも比較的反応性に富む脂環式エポキシ化合物が多用される(特許文献1参照)。その他にも、エポキシ化合物を用いた光カチオン硬化材料について種々の試みがなされている。
【0005】
例えば、脂環式エポキシ化合物にビニルエーテル化合物を併用することにより、エポキシ化合物の反応性を高める試みが数多くなされている(例えば、特許文献2及び3参照)。また、多官能のビニルエーテル化合物を用いる試みがなされている(特許文献4及び5参照)。
【0006】
一方、エポキシ化合物の反応性を高める目的で、水酸基含有化合物として脂肪族系多価アルコール(特許文献6及び7参照)や、フェノール化合物(特許文献8及び9参照)を任意の成分として用いる試みがなされている。
【0007】
さらに、エポキシ化合物とビニルエーテル化合物を併用した材料に、特定のフェノール樹脂を用いることで、反応性の向上と硬化物の機械特性を制御する試みがなされている(特許文献10参照)。さらにまた、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、水酸基含有化合物を全て併用する試みもなされている(特許文献11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3794576号明細書
【特許文献2】特開平6−298911号公報
【特許文献3】特開平9−328634号公報
【特許文献4】特許第2667934号公報
【特許文献5】特開平4−120182号公報
【特許文献6】特許第1266325号公報
【特許文献7】特表2001−527143号公報
【特許文献8】特表2002−509982号公報
【特許文献9】特許第3251188号公報
【特許文献10】特許第4235698号公報
【特許文献11】特表2008−521962号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】角岡正弘、他著「カチオン硬化技術の工業展開」MATERIAL STAGE、技術情報協会、2002年5月10日、第2巻、第2号、p.39−p.92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、一般的なカチオン硬化材料は、ラジカル硬化材料と比較して反応速度が遅い。そこで、反応速度を速める工夫がなされているが、保存時の安定性が低下してしまうという問題がある。保存時の安定性が低く粘度増加が大きい材料は、特にインクジェット用インクとして用いた場合に、安定した吐出性能を得ることが困難になる。
【0011】
特許文献1に開示された技術では、大気中においても酸素による硬化阻害を生じないことから、ラジカル硬化材料に比べて優れた表面硬化性を有するが、内部の反応性が不十分であり、十分な機械特性が得られないという問題がある。
【0012】
特許文献2及び3に開示された技術では、柔軟性の高いビニルエーテル化合物の共重合により、硬化物の硬度が極端に低下してしまい、十分な機械特性を得ることができないという問題がある。特許文献4及び5に開示された技術はこの問題を改良する目的でなされたものであるが、その効果は不十分である。
【0013】
特許文献6〜9に開示された技術では、エポキシ化合物の反応性は向上するものの、硬化物の硬度が低下するという課題がある。また、レゾール型フェノール樹脂を用いた場合、硬化物の硬度が時間の経過に伴い徐々に低下するという問題がある。
【0014】
特許文献10に開示された技術では、反応性が高く、良好な機械特性を有する硬化物を得ることができるものの、フェノール樹脂の酸性成分により徐々に反応が進行するため、保存時の安定性が低下してしまうという問題がある。
【0015】
特許文献11に開示された技術では、エポキシ化合物の反応性は向上するものの、オキセタン化合物の反応性は向上せず、未反応成分が残留してしまう。その結果、十分な機械特性を有する硬化物を得ることはできず、さらには用途も限定されてしまう。そこで、反応性を向上する目的で水酸基の含有量を増加すると、硬化物の硬度が低下してしまうため、十分な機械特性を有する硬化物を得ることはできないという問題がある。
【0016】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、速い硬化速度と高い保存安定性を両立し、さらにその硬化物が高い硬度を有する、感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、1分子中2つ以上の水酸基を有する樹枝状化合物と、反応性有機ケイ素化合物と、を含む感光性樹脂組成物がその目的を達成することを見出し、本発明をなすに至った。
【0018】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ重量平均分子量1000以上の樹枝状化合物(a)1〜40質量%と、
反応性有機ケイ素化合物(b)5〜90質量%と、を含む、感光性樹脂組成物。
[2]
前記樹枝状化合物(a)は、ポリエステルポリオールデンドリマーである、[1]の感光性樹脂組成物。
[3]
前記樹枝状化合物(a)は、下記式(1)で表される化合物である、[1]又は[2]の感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)又は下記式(3)で表される置換基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【化2】

【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
[4]
前記反応性有機ケイ素化合物(b)は、下記式(4)で表されるアルコキシシラン、又は下記式(5)で表されるシランカップリング剤である、[1]〜[3]のいずれか一つの感光性樹脂組成物。
【化4】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、nは2以下の整数を表す。)
【化5】

(式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、Yは有機官能基を表し、Zは加水分解性基を表し、nは0〜1の整数である。)
[5]
カチオン重合性化合物30〜90質量%を、さらに含む、[1]〜[4]のいずれか一つの感光性樹脂組成物。
[6]
前記カチオン重合性化合物は、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)である、[1]〜[5]のいずれか一つの感光性樹脂組成物。
[7]
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)及び/又はエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(e)0.1〜10質量%をさらに含む、[1]〜[6]のいずれか一つの感光性樹脂組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれか一つの感光性樹脂組成物と、着色剤と、を含む、感光性インクジェットインク。
[9]
[1]〜[7]のいずれか一つのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性接着剤。
[10]
[1]〜[7]のいずれか一つの感光性樹脂組成物を含む、感光性コーティング剤。
[11]
[1]〜[7]のいずれか一つの感光性樹脂組成物を含む、半導体封止材。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、速い硬化速度と高い保存安定性を両立し、さらにその硬化物が高い硬度を有する感光性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】樹枝状化合物(a)が生成する反応の一例を示した模式図である。
【図2】樹枝状化合物(a)が生成する反応において連鎖延長剤と連鎖停止剤を用いた一例を示した図である。
【図3】本実施形態の半導体封止材を用いたOLEDディスプレイ素子の一態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0022】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)1〜40質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)5〜90質量%と、を含むものである。
【0023】
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)について説明する。
【0024】
ここで、「樹枝状化合物」とは、分子鎖が幾多に分岐した形状を有する化合物をいう。かかる構造により、良好な性能特性を有し、かつ、溶媒なしで又は非常に少量の溶媒を添加するだけで使用可能となるほど粘度の低い組成物を得ることができる。かかる樹脂状化合物としては、例えば、デンドリマーが挙げられる。
【0025】
樹枝状化合物(a)の構造としては、1又はそれ以上の反応基(A)を有する開始剤が樹枝状化合物(a)の中央に位置し、2以上の反応基(A)と反応基(B)を有する連鎖延長剤の反応基(B)が、前記開始剤の反応基(A)と結合し、前記連鎖延長剤の反応基(A)が、別なる連鎖延長剤の反応基(B)と結合している、樹枝状構造が挙げられる。かかる構造を有する樹枝状化合物(a)の樹枝状構造は伸長の可能性を有する。連鎖延長剤の反応基(A)と、別なる連鎖延長剤の反応基(B)が次々と反応することで連鎖が起こり、上記樹枝状構造をさらに枝分かれさせることができる。
【0026】
このような樹枝状化合物(a)としては、例えば、図1の構造を有するデンドリマーが挙げられる。図1は、樹枝状化合物(a)が生成する反応の一例を示した模式図である。図1は、4つの反応基(A)を有する開始剤分子(I)と、2つの反応基(A)と1つの反応基(B)を有する連鎖延長剤(II)とを反応させて2段階デンドリマーを得る反応を示している。まず、開始剤分子(I)の反応基(A)と、連鎖延長剤(II)の反応基(B)とが反応する。それによって第1段階デンドリマー(「第1世代」という場合もある。)が形成される。続いて、第1段階デンドリマーの末端の反応基(A)と、さらに別の連鎖延長剤(III)の反応基(B)が反応する。それによって第2段階デンドリマー(「第2世代」という場合もある。)が形成される。この連鎖反応を繰り返し行うことで、より樹枝化(枝分かれ)が進んだデンドリマーとすることができる。
【0027】
ここで、反応基(A)は、反応基(B)と反応することにより結合を生成するものであればよく、その種類は限定されない。反応基(A)としては、例えば、水酸基が挙げられる。反応基(B)は、反応基(A)と反応することにより結合を生成するものであればよく、その種類は限定されない。例えば、反応基(A)が水酸基である場合、反応基(B)としては、反応基(A)と反応してエステル結合を形成できるものが挙げられる。具体的には、反応基(A)が水酸基である場合、反応基(B)としては、例えば、カルボキシル基が挙げられる。この場合、水酸基とカルボキシル基が反応してエステル結合を形成できる。
【0028】
開始剤として用いる化合物は特に限定されないが、例えば、ジオール、トリオール、テトラオール等が挙げられる。開始剤は低分子のものでもよいし、高分子のものでもよい。
【0029】
ジオールとしては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオールを用いることができ、異なる種類のものを併用してもよい。
【0030】
脂肪族ジオールとしては、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0031】
直鎖状の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びポリテトラヒドロフラン等が挙げられる。直鎖状の脂肪族ジオールの炭素数は、特に限定されないが、炭素数2〜18であることが好ましい。
【0032】
分枝状の脂肪族ジオールとしては、例えば、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2−プロピル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、トリメチルヘキサン−1,6−ジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。分枝状の脂肪族ジオールの場合、炭素数は特に限定されず、ポリプロピレングリコール等のようなポリマーであってもよい。
【0033】
脂環式ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールや、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノールのようなペンタエリトリトールの環状ホルマール等が挙げられる。
【0034】
芳香族ジオールとしては、例えば、1,4−キシリレングリコールや1−フェニル−1,2−エタンジオール等が挙げられる。それ以外にも、多官能性のフェノール類化合物と、アルキレンオキシド又はその誘導体と、の反応生成物も使用できる。好ましいフェノール類化合物としては、ビスフェノールA、ヒドロキノン及びレソルシノールが挙げられる。また、ネオペンチル−ヒドロキシピバレート(ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸エステル)のようなエステル型のジオールも好ましい。
【0035】
1,2−ジオールに替わる物質として、対応する1,2−エポキシドやα−オレフィンオキシドを使用することができる。このような化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド及びスチレンオキシド等が挙げられる。
【0036】
トリオールは、脂環式トリオール、芳香族トリオールのいずれであってもよい。トリオールの具体例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、3,5,5−トリメチル−2,2−ジヒドロキシメチルヘキサン−1−オール等が挙げられる。また、グリセロールや1,2,6−ヘキサントリオールのような、第一級水酸基と第二級水酸基を併せ持つトリオール等も挙げられる。
【0037】
さらに、脂環式トリオールや芳香族トリオール以外にも、アルキレンオキシドやその誘導体と対応するアダクト(付加反応による生成物)を使用することもできる。
【0038】
テトラオールとしては、脂環式テトラオールであってもよいし、芳香族テトラオールであってもよい。例えば、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロール、ジトリメチロールエタン等が挙げられる。また、脂環式テトラオールや芳香族テトラオール以外にも、アルキレンオキシドやその誘導体と対応するアダクトを使用することもできる。
【0039】
連鎖延長剤は、上記した開始剤の反応基(A)と反応し、連鎖反応が進んでいくものであればよく、その種類は限定されない。反応基(A)が水酸基である場合の連鎖延長剤としては、例えば、2つ以上の水酸基を有する一価カルボン酸;1又はそれ以上の水酸基がヒドロキシアルキル置換されている、2つ以上の水酸基を有する一価カルボン酸等が挙げられる。
【0040】
連鎖延長剤の具体例としては、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−プロピオン酸(ジメチロールプロピオン酸)、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)−酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)−吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシ)−プロピオン酸、フェノール性水酸基を少なくとも2つ有しているα−フェニルカルボン酸(例えば、3,5−ジヒドロキシ安息香酸)等が挙げられる。また、上記した連鎖延長剤の水酸基の1又は2つ以上がヒドロキシアルキル置換されているものも用いることができる。
【0041】
さらに、樹枝状化合物(a)の末端に結合された連鎖延長剤に連鎖停止剤を反応させることもできる。連鎖停止剤は、連鎖延長剤等の反応基(A)と反応して結合を形成できるが、それ以上連鎖しない化合物であればよい。例えば、反応基(A)が水酸基である場合、水酸基と反応してエステルを形成することができるカルボキシル基含有化合物が挙げられ、その種類は限定されない。連鎖停止剤としては、例えば、一価の飽和カルボン酸又は飽和脂肪酸、又はその無水物;不飽和脂肪酸;一価の不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0042】
このように樹枝状化合物(a)の高分子鎖末端の水酸基は、連鎖停止剤と反応することができる。連鎖停止剤の選択は、樹枝状化合物(a)の特性の調整において重要である。従って、本実施形態の感光性樹脂組成物の用途等に基づいて、連鎖停止剤の種類を選択することができる。
【0043】
上記一価の飽和カルボン酸又は飽和脂肪酸は、直鎖状でもよいし分枝状であってもよい。また、無水物であってもよい。かかる一価の飽和カルボン酸又は飽和脂肪酸は、例えば、次式で表される。
2y+1−COOH(式中、yは1〜32の整数を表す。)
【0044】
上記一価の飽和カルボン酸又は飽和脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ酪酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、カプリル酸、ヘプタン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、イソステアリン酸、イソノナン酸、2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0045】
不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、大豆脂肪酸、アマニ脂肪酸、脱水ヒマシ脂肪酸、タル油脂肪酸、キリ油脂肪酸、ひまわり脂肪酸、サフラワ脂肪酸等が挙げられる。
【0046】
一価の不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等が挙げられる。
【0047】
樹枝状化合物(a)の生成プロセスとしては、開始剤を、0〜300℃の温度、例えば50〜280℃、好ましくは100〜250℃の温度で、連鎖延長剤と反応させる方法が挙げられる。その後、得られた反応生成物を、連鎖停止剤と反応させることもできる。
【0048】
開始剤の水酸基と連鎖延長剤のモル比(開始剤の水酸基:連鎖延長剤)は、副生物の生成を抑制しつつ、連鎖を延長させる反応を進行させるという観点から、1:1〜2000:1の範囲であることが好ましく、1:1〜1100:1の範囲であることがより好ましい。
【0049】
そして、上記反応中では水が副生するが、この水は連続的に除去することが好ましい。水を連続的に除去する方法としては、例えば、反応容器への不活性ガスの注入、減圧蒸留、共沸蒸留等が挙げられる。
【0050】
上記反応は、触媒を使用せずに行うことができるが、通常のエステル化触媒を用いてもよい。具体的には、ナフタレンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、燐酸等のブレンステッド酸;BF3、AlCl3、SnCl4等のルイス酸;テトラブチルチタネートのようなチタネート;亜鉛粉又は有機亜鉛化合物;錫粉末又は有機錫化合物、等が挙げられる。この最初のステップは、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。その場合、必要であれば得られた生成物を、連鎖停止剤と反応させる前に中和してもよい。
【0051】
樹枝状化合物(a)としては、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物が好ましく、その中でも、下記式(1)で表される化合物であることがより好ましい。特に、開始剤としてペンタエリトリトールを用い、連鎖延長剤としてジメチロールプロピオン酸を用い、連鎖停止剤としてラウリン酸を用いて得られるポリエステルポリオールデンドリマー化合物が好ましい(後述する図2)。かかる構造のデンドリマーを用いることで、他の成分との相溶性が良好で、かつ優れた硬化物の物性を有する感光性樹脂組成物を得ることができるため好ましい。
【0052】
【化6】

【0053】
(式中、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)又は下記式(3)で表される置換基を表し、nは1〜10の整数である)
【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

(式中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
【0056】
樹枝状化合物(a)が上記構造を有することで、末端に多数存在する水酸基と活性種が連鎖移動反応を起こし、その反応の結果生成する遊離の酸がモノマー転化率を向上できるため好ましい。
【0057】
図2は、樹枝状化合物(a)が生成する反応において連鎖延長剤と連鎖停止剤を用いた一例を示した図である。まず、開始剤分子であるペンタエリトリト−ルと、連鎖延長剤であるジメチロールプロピオン酸とを反応させて1.5段階デンドリマーが生成される。このステップでは、触媒としてメタンスルホン酸を使用する。続いて、最終反応ステップにとして、ラウリン酸からなる連鎖停止剤を上記デンドリマーと反応させることができる。
【0058】
樹枝状化合物(a)は、重量平均分子量が1000以上である。1000以上の分子量とすることにより、硬化物の表面タック性の低減と硬度の向上を両立させることができる。重量平均分子量が大きい場合、各種物性は向上する傾向にあり、重量平均分子量が小さくすると他の成分との相溶性が良好となり、粘性が低下する傾向にある。かかる観点から、所望する用途や特性に応じて樹枝状化合物(a)の重量平均分子量を制御することができる。移動相としてテトラヒドロフランを用い、標準物質としてポリスチレンを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0059】
枝状化合物(a)として用いられるポリエステルポリオールデンドリマー化合物は市販のものを用いることもできる。例えば、開始剤としてペンタエリトリトールを用い、連鎖延長剤としてジメチロールプロピオン酸を用い、連鎖停止剤としてラウリン酸を用いて得られるポリエステルポリオールデンドリマー化合物(図2参照)は、例えば、「BOLTORN H20」、「BOLTORN H30」、「BOLTORNH40」、「BOLTORN H2003」、 「BOLTORNH2004」、「BOLTORN P1000」(いずれも商品名、ペルストルプ アー・ベー社製)等として入手可能である。また、特許第2574201号公報に記載されているデンドリマーも好適に用いることができる。
【0060】
反応性有機ケイ素化合物(b)としては、式(4)で表されるアルコキシシラン又は下記式(5)で表されるシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0061】
【化9】

【0062】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、nは2以下の整数を表す。)
【0063】
上記式(4)のnは2以下である。nが2を越えると光照射により得られる硬化膜の透明性や基材への接着性が悪くなる。具体的には、式(4)で表される化合物中、nが1である化合物が50モル%以上含まれることが好ましく、80モル%以上含まれることがより好ましく、90モル%以上含まれることがさらに好ましい。
【0064】
このようなアルコキシシラン化合物としては上記要件を満足するものであれば特に制限はないが、具体的には、例えば、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
【化10】

【0066】
(式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、Yは有機官能基を表し、Zは加水分解性基を表し、nは0〜1の整数を表す。)
【0067】
Yは、有機官能基であればよく、その種類は限定されず、例えば、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、イソシアネート基、メルカプト基、ウレイド基、エポキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0068】
Zは、加水分解性基であればよく、その種類は限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0069】
式(5)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、アミノシラン等が挙げられる。
【0070】
ビニルシランとして、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
アクリルシランとしては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0072】
エポキシシランとしては、β−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
アミノシランとしては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシシラン等が挙げられる。
【0075】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、カチオン重合性化合物をさらに含むことが好ましい。これにより、水酸基と活性種が連鎖移動反応を起こし、その反応の結果生成する遊離の酸がモノマー転化率を向上できること、及び反応性有機ケイ素化合物の加水分解反応を促進することができる。カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
【0076】
カチオン重合性化合物としては、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)であることが好ましい。エポキシ化合物(c)を含むことで、硬化物の硬度と各基材に対する密着性を向上させることができるため、好ましい。エポキシ化合物(c)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等を挙げることができる。
【0077】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ及び/又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ及び/又はテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタ及び/又はヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0078】
脂環エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。
【0079】
2官能脂環式エポキシ化合物としては、「セロキサイド2021」、「セロキサイド2080」、「セロキサイド3000」(商品名、ダイセル化学工業社製)、「UVR−6110」、「UVR−6105」、「UVR−6128」、「ERLX−4360」(商品名、ダウ・ケミカル日本社製)等を用いることができる。
【0080】
3官能以上の多官能脂環式エポキシ化合物としては「エポリードGT300」、「エポリードGT400」(商品名、ダイセル化学工業社製)等を用いることができる。
【0081】
これらのうち、カチオン重合反応性に優れるため、脂環式エポキシ化合物が好ましい。これらエポキシ基を有する化合物は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)及び/又はエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(e)をさらに含むことが好ましい。
【0083】
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物をいう。好ましいものとしては照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩が挙げられる。
【0084】
このようなオニウム塩としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF、PF、SbF、[BX(ここで、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)等により構成されたオニウム塩が挙げられる。
【0085】
具体的には、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体等が挙げられる。
【0086】
また、市販品として、「CD−1012」(商品名、SARTOMER社製)、「PCI−019、PCI−021」(商品名、日本化薬社製)、「オプトマーSP−150」、「オプトマーSP−170」(商品名、旭電化社製)、「UVI−6990」(商品名、ダウ・ケミカル社製)、「CPI−100P」、「CPI−100A」(商品名、サンアプロ社製)、「TEPBI−S」(商品名、日本触媒社製)、「RHODORSIL PHOTOINITIATOR2074」(商品名、Rhodia社製)等を用いることができる。エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)は、上述したものを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(e)とは、エネルギー線照射によりラジカル重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物をいう。具体的には、特公昭59−1281号公報、特公昭61−9621号公報、及び特開昭60−60104号公報等に記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号公報及び特開昭61−243807号公報等に記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号公報、特公昭44−6413号公報、特公昭44−6413号公報及び特公昭47−1604号公報等、米国特許第3,567,453号明細書に記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号明細書、米国特許第2,852,379号明細書及び米国特許2,940,853号各明細書に記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号公報、特公昭37−13109号公報、特公昭38−18015号公報、特公昭45−9610号公報等に記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号公報、特開昭59−14023号公報等の各公報及び「マクロモレキュルス(Macromolecules)、第10巻、第1307頁(1977年)」に記載の各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号明細書、ヨーロッパ特許第126,712号明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)、第30巻、第174頁(1986年)」等に記載の金属アレン錯体、特開平6−213861号公報及び特開平6−255347号公報に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(CoordinationChemistry Review)、第84巻、第85・第277頁(1988年)」及び特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素や、特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0088】
本実施形態では、ビニルエーテル化合物を併用することも可能である。その中でも水酸基含有ビニルエーテル化合物がより好ましい。
【0089】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0090】
水酸基含有ビニルエーテル化合物としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0091】
本実施形態では、オキセタン化合物を併用することも可能である。このようなオキセタンとしては、1,4−ビス([(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル)ベンゼン、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等を挙げることができる。また、本実施形態では水酸基を有するオキセタン化合物を用いることもでき、下記式(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0092】
【化11】

【0093】
(式中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数1〜6のアルキレン基にエーテルが結合したオキシアルキレン基を表す。)
【0094】
式(11)において、Rは、低級アルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。Rは、メチレン基が好ましい。
【0095】
本実施形態の感光性樹脂組成物には、加熱によりカチオン重合を開始させる物質を発生させる、他の重合開始剤を、重合開始剤(d)や(e)と併用することもできる。他の重合開始剤の具体的な例としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン等が挙げられる。
【0096】
この他、硬化性や硬化時の膜物性に悪影響を及ぼさない程度にカチオン重合性を示す他の化合物を添加することができる。これらの化合物としては、例えば、希釈剤として、前記以外の低分子量のエポキシ化合物を用いることができる。また、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物等を用いることもできる。
【0097】
本実施形態の感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じてエネルギー線に対する硬化性を促進する(感度の向上)目的で、(メタ)アクリレートモノマー類やオリゴマー類及びビニル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性化合物及び光ラジカル開始剤等を添加してもよい。このうち特に、1分子中にビニル基とアクリレート基の双方を有するビニルアクリレート化合物は、低粘度で且つカチオン重合性もあるため、高い感度を維持しながら低粘度化が可能であることから、インクジェット用途に用いる場合に有効な希釈剤である。この他、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。このうち特に透湿性を低下させる場合、微粒子無機フィラー及びの添加が有効である。
【0098】
微粒子無機フィラーとしては、一次粒子の平均径が0.005〜10μmの無機フィラーであり、具体的にはシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、雲母等が挙げられる。
【0099】
微粒子無機フィラーは、表面未処理のもの、及び表面処理したもの共に使用できる。表面処理した微粒子無機フィラーとしては、例えば、メトキシ化、トリメチルシリル化、オクチルシリル化、又はシリコーンオイルで表面処理したものが挙げられる。これらの1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
次に、本実施形態において用いられる感光性樹脂組成物中の各成分の組成割合について説明する。なお、以下に示される「部」は特に断りがない限り全て質量部である。
【0101】
感光性樹脂組成物における、1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)の含有量は、1〜40質量%であり、好ましくは2.0〜20質量%である。1質量%より少ない場合、反応速度の向上効果が不足してしまう。また、40質量%より多い場合、感光性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になる。
【0102】
感光性樹脂組成物における、反応性有機ケイ素化合物(b)の含有量は、5〜90質量%であり、好ましくは10質量%〜60質量%である。5質量%より少ない場合、硬化物の硬度が低下してしまい、90質量%より多い場合、硬化物の柔軟性が低下してクラックが入りやすくなってしまう。
【0103】
感光性樹脂組成物における、カチオン重合性化合物の含有量は、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは50〜70質量%である。30質量%以上とすることにより、硬化物の硬度が良好となり、硬化物の機械特性を充分なものにできる。また、90質量%以下とすることにより、樹枝状化合物(a)の含有量を適量にできるためエポキシ基の転化率向上効果に優れ、未反応のエポキシ基の残留を低減できる。
【0104】
感光性樹脂組成物におけるエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)及びエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(e)の含有量は、合計して0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜8質量%である。0.1質量%以上とすることにより、エネルギー線照射により発生する活性物質の量が十分な量となり、十分な硬化性を得ることができる。また、10質量%以下とすることにより、経済的に望ましく、光線透過率が低下せず膜底部の硬化も十分に行うことができるため好ましい。
【0105】
微粒子無機フィラーの含有量は、感光性樹脂組成物において、好ましくは0〜70質量%であり、より好ましくは0.1〜60質量%である。
【0106】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物に着色剤を添加することにより、感光性インクジェットインクとすることができる。本実施形態の感光性樹脂組成物は、比較的低粘度化が容易であるという特徴も有しており、優れた光硬化性とあいまって、着色剤と混合することにより感光性のインクジェットインクとしても好適に用いることが可能である。
【0107】
本実施形態において用いられる着色剤としては、有機顔料、無機顔料の種々のものが使用可能である。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン及び酸化アンチモン等の白色顔料;アニリンブラック、鉄黒、及びカーボンブラック等の黒色顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエロー(100、50、30等)、チタンイエロー、ベンジンイエロー、及びパーマネントイエロー等の黄色顔料;クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ、及びインダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料;酸化鉄、パーマネントブラウン、及びパラブラウン等の褐色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトフェーストレッド、及びキナクリドン系赤色顔料等の赤色顔料;コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー及びインジゴ等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、及びポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料;その他各種蛍光顔料、金属紛顔料、体質顔料等が挙げられる。本実施形態の感光性樹脂組成物中における、これらの顔料の含有量は、好ましくは1〜50質量%であり、好ましくは5〜25質量%である。
【0108】
上記顔料には必要に応じて顔料分散剤を用いてもよく、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の活性剤;スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれる2種以上の単量体からなるブロック共重合体又はランダム共重合体、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0109】
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離機やフィルターを用いてもよい。
【0110】
顔料インク中の顔料粒子の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性等を考慮して選択するが、光沢向上、質感向上の観点からも粒径は適宜選択することが好ましい。
【0111】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物を含む感光性コーティング剤とすることができる。本実施形態の感光性樹脂組成物は、空気中において薄膜を高速に硬化することが出来ることから、非加熱で高速に硬化することが要求される樹脂フィルム、基板等へのコーティング材としても好適に使用される。このような例としては、フラットパネルディスプレイ(FPD)等に用いられる反射防止膜形成用コーティング材が挙げられ、基材上に塗布、硬化した後、1.4以下の屈折率を持った被膜を形成させるために、本実施形態の感光性樹脂組成物に空隙を有した多孔質微粒子を含有させることにより得られる。
【0112】
このような多孔質微粒子としては、平均粒径が5nm〜1μmであるシリカ粒子が挙げられ、樹脂の透明性の観点から、5〜100nmの平均粒径を有するシリカ粒子が好ましい。具体的な市販品としては、親水性又は表面を疎水化処理したフュームドシリカである「アエロジル」(商品名、日本アエロジル社製)や、シリカ粒子が直鎖状に連結したパールネックレス状シルカゾルである「スノーテックスPS」(商品名、日産化学社製)等が挙げられる。これらの多孔質微粒子は、感光性樹脂組成物100質量部に対し、多孔質微粒子の合計が10〜70質量部の範囲で添加して用いることが好ましく、ホモジナイザー等を用いて感光性樹脂組成物内に均一に分散させることが好ましい。
【0113】
このようにして得られる感光性コーティング剤を、透明な基材(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂基材や、ガラス等の無機材料)の表面上に、反射防止膜や傷防止膜等として厚さ10nm〜1μmの範囲で形成させることができる。基材上への塗布に当たっては、比較的薄膜を高い精度で形成する必要があることから、マイクログラビア法、ロールコート法、フローコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、スプレーコート法等が用いられる。
【0114】
また、本実施形態の感光性樹脂組成物は、基材等に塗布して薄膜とし、この薄膜にエネルギー線照射や加熱を行うことで、短時間で硬化させることができる。感光性樹脂組成物の硬化は、エネルギー線照射と加熱を併用してもよいし、いずれか一方のみを用いてもよい。本実施形態の感光性樹脂組成物は、溶剤等を含まなくても十分に実用できるが、粘度調整のために溶剤等を用いて希釈してもよいし、多孔質微粒子等を含んだゾルの形態としてもよい。溶剤等を用いて希釈した場合、及び多孔質微粒子等を含んだゾルの形態で用いた場合には、事前に溶剤成分を揮散させるために、光照射前に、50〜150℃で数分程度の加熱を行ってもよい。また、露光後に同様に加熱をすることにより硬化をさらに促進させることもできる。またさらに、本実施形態の感光性樹脂組成物は光照射により硬化するため、感光性接着剤として用いることができる。本実施形態の感光性樹脂組成物を含む感光性接着剤は、上記した形態等にして用いることができ、湿度による硬化阻害がなく優れた接着性を発揮できる。
【0115】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物を含む半導体封止材とすることができる。本実施形態における半導体封止材は、OLEDディスプレイ素子等の封止材として用いることができる。図3は、本実施形態の半導体封止材を用いたOLEDディスプレイ素子の一態様の断面図である。OLEDディスプレイ素子Aは、基材1上に正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4及び電子注入電極5を順次形成した後、本実施形態の半導体封止材6により封止し、その後基材7を張り合わせる方法で形成することができる。このような固体膜による全面封止は、基材1及び7としてフレキシブルな材質のものを用いる場合、特に有効な方法である。
【0116】
基材1上に、正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4、電子注入電極5を順次積層した多層構造を形成する方法としては、公知の方法である抵抗加熱蒸着法、イオンビームスパッタ法、常圧で形成できるインクジェット法、印刷法等を用いることができる。次いで、本実施形態の半導体封止材を多層構造上に塗布する方法としては、半導体封止材を均一に塗布できる方法であれば特に制約はないが、例えば、スクリーン印刷やフレキソ印刷等の印刷法によるものや、ディスペンサーを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0117】
本実施形態の半導体封止材6に基材7を張り合わせた後、基材7側又は基材1側から光等のエネルギー線を照射することにより、半導体封止材6を硬化させることができる。エネルギー線としては、半導体封止材6を硬化させるものであればよく、光や放射線等が挙げられる。また、ここで使用できる光源としては、所定の作業時間内で半導体封止材6を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、紫外線や可視光線の波長の光を照射できるものを用いることができる。具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯、無電極放電ランプ等が挙げられる。このように本実施形態の半導体封止材は、OLEDディスプレイ素子をはじめとする種々の半導体素子の封止に用いることができる。特に、本実施形態の半導体封止材は、硬化物とする際に常温で硬化物を作成できるため、従来の熱硬化性樹脂で見られる基材や素子の熱劣化や熱による変形を防ぐことができる。さらに、基材や素子に対する高い密着性を有するため、FPD等のような精密機器の半導体素子の封止に好ましく用いることができ、特にOLEDディスプレイ素子の封止により好ましく用いることができる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明の実施形態の例を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0119】
1.感光性樹脂組成物の作製
感光性樹脂組成物の作製は以下の方法で行った。
【0120】
[実施例1]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプ アー・ベー社製;1分子中の水酸基数12、重量平均分子量2500)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0121】
[実施例2]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT−221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0122】
[実施例3]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)75質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0123】
[実施例4]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン「A−186」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0124】
[実施例5]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン「A−186」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT−221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0125】
[実施例6]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン「A−186」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)75質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0126】
[実施例7]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)40質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン「A−186」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)5質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)50質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0127】
[実施例8]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)2質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン「A−186」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)83質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)10質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0128】
[実施例9]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2004」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製;1分子中の水酸基数6、重量平均分子量3200)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0129】
[比較例1]
1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物として、プロピレングリコール5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0130】
[比較例2]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、重量平均分子量が890の化合物として、フェノール3〜5核体の含有率が50質量%のp−tert−ブチル−フェノールノボラック樹脂「PAPS−PTBPN」(商品名、旭有機材工業株式会社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0131】
[比較例3]
反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)65質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0132】
[比較例4]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)75質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0133】
[比較例5]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT−221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%のCPI−100P(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0134】
2.評価方法
感光性樹脂組成物の光硬化性及び硬化物の機械特性の評価は以下の方法で行った。
<硬化速度>
動的粘弾性装置(アントンパール社製)のガラス基板上に、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ100μmで塗布し、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、光量10mW/cmとなるように上記ガラス基板を露光しながら、硬化挙動を測定した。本測定において、最初の液体状態(G´(貯蔵弾性率)<G´´(損失弾性率);tanδ>1)から、ゲル化点(G´=G´´;tanδ=1)を迎え、固体状態(G´> G´´;tanδ<1)に変化する様子が、詳細に解析できる。硬化速度は露光開始からゲル化点を迎えるまでの時間で測定した。また、硬化時の環境は、温度:23℃、湿度:60%RHであった。
◎:ゲル化点に到達した時間が露光開始150秒以内
○:ゲル化点に到達した時間が露光開始150秒以上200秒未満
×:ゲル化点に到達した時間が露光開始200秒以上
【0135】
<保存安定性>
各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を作成直後、及び60℃のオーブンに10日間静置後のそれぞれの状態について、回転式E形粘度計(東機産業株式会社製、「TV−22形」)を用いて25℃における粘度を測定した。そして、作成直後から10日静置後までにおける感光性樹脂組成物の粘度増加量を求め、以下の基準で評価した。
○:粘度増加量が1.0mPa・s未満
×:粘度増加量が1.0mPa・s以上
【0136】
<硬度>
ガラス基板上に、バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ12μmで均一に塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、積算光量40mJ/cmとなるように上記ガラス基板を露光した。硬化時の環境は、温度:23℃、湿度:60%RHで行った。その後、室温23℃、湿度50質量%の雰囲気の下、一昼夜静置し、JIS 5600−5−4に準拠した方法にて鉛筆硬度測定を行った。
◎:2H以上
○:H以上2H未満
×:H未満
【0137】
3.評価結果
実施例及び比較例の評価結果を表1及び表2に示す。また、表1及び表2において略号で表わした感光性樹脂組成物中の成分を表3に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
【表2】

【0140】
【表3】

【0141】
表1及び表2に示すように、実施例1〜8の感光性樹脂組成物は、硬化速度、保存安定性、及び硬度のいずれも優れていることが確認された。一方、比較例1〜5の感光性樹脂組成物は、硬化速度、保存安定性、及び硬度の少なくともいずれかが不良であることが確認された。
以上より、本実施形態の感光性樹脂組成物は、優れた光硬化性(表面硬化性、内部硬化性)と高い保存安定性を有し、その硬化物は優れた機械特性を有し、さらに高い密着性と基材カールの抑制を両立した優れた膜物性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の感光性樹脂組成物は、速い硬化速度と高い保存安定性を両立し、さらにその硬化物が高い硬度を有することから、塗料、接着剤、インキ、フィルムコーティング、より具体的には、インクジェット用UVインク、液晶や有機EL等のディスプレイパネル用シール材、光ディスクの貼り合わせ用接着剤、CD、DVD、さらには次世代光ディスクであるブルーレイディスク(Blu−ray(登録商標) Disc)の表面保護層形成材、反射防止膜形成用コーティング材、ハードコーティング材等として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0143】
1,7 基材
2 正孔注入電極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子注入電極
6 半導体封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ重量平均分子量1000以上の樹枝状化合物(a)1〜40質量%と、
反応性有機ケイ素化合物(b)5〜90質量%と、を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹枝状化合物(a)は、ポリエステルポリオールデンドリマーである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹枝状化合物(a)は、下記式(1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)又は下記式(3)で表される置換基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【化2】

【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
【請求項4】
前記反応性有機ケイ素化合物(b)は、下記式(4)で表されるアルコキシシラン、又は下記式(5)で表されるシランカップリング剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、nは2以下の整数を表す。)
【化5】

(式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、Yは有機官能基を表し、Zは加水分解性基を表し、nは0〜1の整数である。)
【請求項5】
カチオン重合性化合物30〜90質量%を、さらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記カチオン重合性化合物は、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)及び/又はエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(e)0.1〜10質量%をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物と、着色剤と、を含む、感光性インクジェットインク。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性接着剤。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性コーティング剤。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む、半導体封止材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−1421(P2011−1421A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144140(P2009−144140)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】