説明

感光性樹脂組成物、及びパターン形成方法

【課題】低コストで製造が可能でありパターン形状に優れた主鎖開裂型でありながら、金属などの腐食がないことから幅広い用途への適用が可能な感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】塩基性物質の作用によって開裂する、ヘミアセタールエステル結合、ヘミアセタール結合、及びカルバメート結合よりなる群から選択される1種以上の結合を主鎖に有する高分子と、光塩基発生剤とを含有する、感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波によるパターニング工程を経て形成される製品又は部材の材料(例えば、電子部品、光学製品、光学部品の成形材料、層形成材料又は接着剤など)や、それらの加工の際に用いるレジスト材料として好適に利用することが出来る、感光性樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁波の照射の有無によって、その性質が変化する感光性樹脂は、その加工特性を利用し身の回りのさまざまな製品に用いられている。たとえば、電磁波の照射により溶解性が変化する感光性樹脂は、レジストと呼ばれ、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して、露光を行うことにより、フォトマスク上のパターンに対応した形状で選択的に溶解性の差を創出できる特性を利用し、半導体素子の加工や電子部品の配線などの加工に用いられている。また、最近では加工を行った後に剥離されてしまう前述の剥離レジストと並んで、パターンを形成した感光性樹脂そのものを、絶縁膜やカラーフィルターなどの機能膜として利用する永久レジストとしての利用も盛んに行われている。
【0003】
これらレジスト材料は、現像後に露光部がパターンとして残存するネガ型と未露光部がパターンとして残存するポジ型に分類される。
ネガ型の感光性樹脂は、露光によって引き起こされる硬化反応によって、パターンが形成されるため、パターンの強度や各種特性を利用する用途に用いられる場合が多い。例えば、電子部品などの配線加工用のドライフィルムレジストなどの剥離レジストや、液晶ディスプレイのカラーフィルター、半導体素子、又は電子部品などの絶縁材料として用いられるソルダーレジストや、感光性ポリイミドなどの永久レジストとして用いられることが多い。
【0004】
一方、ポジ型の感光性樹脂は、一般に微細パターンの形成に有利だとされており、半導体素子の加工や電子部品の配線の加工などに多く用いられている。一般的なポジ型感光性樹脂は、露光部の現像液に対する溶解性が向上することでパターンを得るものが多い。
ポジ型感光性樹脂組成物としては、(1)アルカリ可溶性樹脂に、ナフトキノンジアジド化合物に代表される露光によってカルボキシル基を発生させるような化合物を添加したもの(特許文献1)、(2)露光によって光酸発生剤から発生した酸を利用し、アルカリ可溶性側鎖の保護基を分解することにより、塩基性水溶液で現像可能としたもの(特許文献2)などが知られている。
上記(1)は、解像度はそれほど高くないものの、塩基性水溶液で現像可能で、操作性が良好であることから古くから利用されている。上記(2)は、加工時の環境の影響を受けやすいものの、高い感度と解像度を示すことから、より微細なパターンを要求される分野で主に用いられている。
【0005】
これらの感光性樹脂は、高分子を主体としており、側鎖の分解や添加剤の構造変化を利用して、溶解性の差を創出しているものであるので、露光前後において基本的に高分子の主鎖の長さは変化せず高分子のままである。
その為、原理的にその高分子のサイズよりも小さいパターンの形成は不可能であり、ナノメートルオーダーの高い解像度を要求される場合には、パターン幅のばらつきの原因となる。パターン幅のバラツキを低減させる為に高分子の分子量を小さくし、サイズを小さくすることで改善を図る検討がされているが、分子量を小さくしすぎると膜強度が低下したり、ガラス転移温度が低下するなど、別の課題が発生する。その為、パターン形状を改善する為に、分子量を低下させるには限界があり、高分子の側鎖の分解などを利用する場合、パターン形成の前後で分子量が同じであることからパターン形状の改善には限界があった。
【0006】
これらの課題に対して、感光性樹脂組成物の主成分である高分子を分解し分子量を低下させることで、現像液に対する溶解速度を制御しパターン形成を可能とした電子線レジストが提案されている(特許文献3)。これは、電子線によって高分子の主鎖骨格を分解することにより、電子線が照射された部分のみ低分子量化させてパターン形成を行うものである。低感度であるという課題はあるものの、露光部のみ低分子量化する為、パターン形状は基本的に高分子の分子量に依存せずパターン形状が良好となる。しかし、現像工程である生成した低分子量成分の除去にはキシレンを用いており、環境への負荷が大きく廃液処理などの課題が残る有機溶媒現像であるという課題があった。
【0007】
また、露光によって光酸発生剤から発生した酸によって分解する結合を主鎖中に組み込んだ高分子を用いた主鎖開裂型感光性樹脂も提案されている(特許文献4)。これは、塩基性水溶液による現像が可能であるという利点を有するものの、光酸発生剤を含有する為、金属などの酸によって腐食、酸化される物質の微粒子を含有したり、それら物質と密着する場合に、それらを腐食させてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−107755号公報
【特許文献2】特開2005−300820号公報
【特許文献3】特開昭63−137227号公報
【特許文献4】特開2000−298344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、低コストで製造が可能でありパターン形状に優れた主鎖開裂型でありながら、金属などの腐食がないことから幅広い用途への適用が可能な感光性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、塩基性物質の作用によって開裂する、ヘミアセタールエステル結合、ヘミアセタール結合、及びカルバメート結合よりなる群から選択される1種以上の結合を主鎖に有する高分子と、光塩基発生剤とを含有する。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる、塩基性物質の作用によって開裂する結合を主鎖に有する高分子とは、側鎖ではなく高分子主鎖中に分解性の結合を有していることが特徴であり、電磁波の照射により光塩基発生剤から発生した塩基性物質の作用により、その結合が切断され、低分子量化する。低分子量化することにより、溶解性などの特性が変化し、パターン形成が可能となる。特に、分子量が大幅に小さくなった場合には、分解生成物が液体となったり、揮発しやすくなる場合がある。その場合には、通常行われる露光部、未露光部の溶解性の差を利用した液体による湿式現像ではなく、加熱や減圧を行うことにより乾式現像が可能となる。乾式現像は現像廃液が出ない為、廃液処理費用が削減でき、環境負荷も小さくなると言う利点を有する。
さらには、主鎖切断型の感光性樹脂組成物であるため、パターン形状が感光性樹脂組成物に含有されている高分子の分子量に依存せず、nmオーダーの微細な領域に対しても良好な形状のパターンを得ることができる。
【0012】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤から発生した塩基性物質によって、主鎖の開裂を行う為、金属に対する腐食性のない信頼性の高いパターンを得ることが可能となる。
また、塩基性物質は触媒的に結合の分解を促進するので、少量の塩基でもパターンを得ることが可能である。つまり、塩基性物質の作用によって開裂する結合を主鎖に有する高分子と光塩基発生剤を組み合わせた本発明の感光性樹脂組成物は、単位重量あたりのコストが高い光塩基発生剤の添加量を抑制できコスト削減になるばかりでなく、高い感度を示す。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記高分子において、塩基性物質の作用によって主鎖が開裂した後に生成する置換基のうち少なくとも一つが、カルボキシル基、フェノール性水酸基、又は、ヘキサフルオロイソプロパノール基であることが好ましい。このような置換基を有すると塩基性水溶液に対して可溶となるため、塩基性水溶液による湿式現像が可能になり、有機溶媒による現像に比べ、廃液処理コストが低減でき、環境負荷が少ないという利点がある。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記高分子が、下記式(1)又は下記式(2)で表わされる繰り返し単位を少なくとも1つ以上有していることが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

(式(1)および式(2)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素、ハロゲン原子、または1価の有機基であり、X、XおよびYはそれぞれ独立に2価の有機基である。R、R、及びRはそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。nは1以上の自然数である。)
【0017】
上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子は、例えば、カルボキシル基やフェノール性水酸基を2つ有する化合物とビニロキシ基を2つ有する化合物との重付加反応などによって合成することが可能である。特に芳香族カルボン酸とビニロキシ基との反応は、無触媒で室温で攪拌するのみで進行するので簡便に合成が可能であると言う利点がある。
また、上記式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子は、例えば、カルボキシル基またはフェノール性水酸基のいずれかと、ビニロキシ基の両方を有する化合物から合成することが可能である。この場合、分解生成物に必ずカルボキシル基やフェノール性水酸基が含まれる為、現像残渣の低減など現像特性が向上する。
この両者において、ビニロキシ基は、脂肪族炭素原子と結合していると、アセタール結合の安定性が向上する。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記高分子において、前記式(1)中の、Xが下記式(3)で表わされ、Yが下記式(4)で表わされることが、前記高分子を得る際の反応が容易であり、さらに、その反応により形成された前記高分子が塩基性物質存在下での分解性が良好であるという点から好ましい。
【0019】
【化3】

(式(3)中、Aは2価の有機基であり、Bはそれぞれ独立にカルボニル結合、または単結合である。式(4)中、Aは2価の有機基、または単結合であり、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素または、1価の有機基であり、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。繰り返されるA、B、A、R、R、R、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記高分子において、前記式(2)中の、Xが下記式(5)で表わされることが、前記高分子を得る際の反応が容易であり、さらに、その反応により形成された前記高分子が塩基性物質存在下での分解性が良好であるという点から好ましい。
【0021】
【化4】

(式(5)中、Aは2価の有機基であり、Bはカルボニル結合、または単結合であり、R、及びRはそれぞれ独立に水素または、1価の有機基であり、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。繰り返されるA、B、R、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記高分子において、前記式(1)におけるX及び/又はY、或いは前記式(2)におけるXが、芳香環を含有していることが、当該感光性樹脂組成物が剥離レジスト等のように他の材料の加工に用いられる際のドライエッチング耐性が高くなり、また前記高分子のガラス転位温度が高くなる点から好ましい。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記高分子において、前記式(3)、前記式(4)、及び下記式(5)中のA、A、及びAの少なくとも1つが芳香環を含有し、芳香環によってB、炭素原子、及び/又はBと結合していることが、塩基に対する分解性に優れ、塩基性度が低い塩基や、少量の塩基によっても効率的に分解反応を進行させる事ができる点から好ましい。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物においては、更に、ビニルエーテル化合物を含むことが、保存安定性を向上させる点から好ましい。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物においては、更に塩基増殖剤を含むことが、感度や現像特性を向上させる観点から好ましい。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の形成材料、及び、その加工工程で用いる材料として好適に用いられる。
【0027】
また、本発明は、上記本発明の感光性樹脂組成物からなる膜又は成形体の表面に、所定のパターン状に電磁波を照射する露光工程と、現像工程を有する、パターン形成方法を提供する。本発明のパターン形成方法においては、前記露光工程後前記現像工程前に、加熱処理を行って、前記高分子の分解反応を促進させても良い。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、低コストで製造が可能でありパターン形状に優れた主鎖開裂型でありながら、金属などの腐食がないことから幅広い用途への適用が可能な感光性樹脂組成物を提供することができる。
本発明の感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤から発生した塩基性物質によって、主鎖の開裂を行う為、金属に対する腐食性のない信頼性の高いパターンを得ることが可能である。また、本発明の感光性樹脂組成物は、現像液も特に限定されず、高分子に合わせて適宜、有機溶剤、塩基性水溶液、酸性水溶液、中性水溶液等を用いることができる。特に、環境汚染性が低く、安価な塩基性水溶液を利用可能なので、産業上利用価値が高い。さらには、十分に分解反応を促進させることで、減圧や、さらに加熱をすることによって、現像が可能である。
また、本発明のパターン形成方法は、パターン形成のプロセスが簡素であるというメリットを有する。中でも現像工程において塩基性水溶液を用いる場合には、自然環境に対する負荷や労働衛生上の悪影響が小さい。また、本発明のパターン形成方法は、主鎖開裂型の反応機構である為、解像度に優れパターン形状が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明において、電磁波とは、化合物の分子内解裂反応を引き起こすことが可能なものであればよく、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明に係る感光性樹脂組成物は、塩基性物質の作用によって開裂する、ヘミアセタールエステル結合、ヘミアセタール結合、及びカルバメート結合よりなる群から選択される1種以上の結合を主鎖に有する高分子と、光塩基発生剤とを含有する。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる、塩基性物質の作用によって開裂する結合を主鎖に有する高分子とは、側鎖ではなく高分子主鎖中に分解性の結合を有していることが特徴であり、電磁波の照射により光塩基発生剤から発生した塩基性物質の作用により、その結合が切断され、低分子量化する。低分子量化することにより、露光部、未露光部に溶解速度差を創出することができ、パターン形成が可能となる。特に、分子量が大幅に小さくなった場合には、分解生成物が液体となったり、揮発しやすくなる場合がある。その場合には、通常行われる露光部、未露光部の溶解性の差を利用した液体による湿式現像ではなく、加熱や減圧を行うことにより乾式現像が可能となる。乾式現像は現像廃液が出ない為、廃液処理費用が削減でき、環境負荷も環境負荷も低減できると言うメリットがある。
さらには、主鎖切断型の感光性樹脂組成物であるため、パターン形状が感光性樹脂組成物に含有されている高分子の分子量に依存せず、nmオーダーの微細な領域に対しても良好な形状のパターンを得ることができる。
【0031】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤から発生した塩基性物質によって、主鎖の開裂を行う為、金属に対する腐食性のない信頼性の高いパターンを得ることが可能となる。
また、塩基性物質は触媒的に結合の分解を促進するので、少量の塩基でもパターンを得ることが可能である。つまり、塩基性物質の作用によって開裂する結合を主鎖に有する高分子と光塩基発生剤を組み合わせた本発明の感光性樹脂組成物は、単位重量あたりのコストが高い光塩基発生剤の添加量を抑制できコスト削減になるばかりでなく、高い感度を示す。
【0032】
分解反応は、塩基性物質の存在だけでも進行するが、適宜加熱することでその進行を促進することができる。ただし、主鎖の熱分解温度とのバランスをとる必要がある。また、100nm以下の微細パターンを形成したい場合には、加熱する際の温度を高くしすぎると塩基性物質が未露光部にまで拡散し、良好なパターンを得られない場合がある。
【0033】
上記塩基性物質の作用によって開裂する結合を主鎖に有する高分子と光塩基発生剤とを含有する感光性樹脂組成物は、例えば、下記のようにパターンを得ることができる。
所望の形状のパターンが描かれたマスクを介して露光を行うことにより、露光部のみに塩基を発生させることができる。その後、必要に応じて加熱を行うことにより露光部でのみ、塩基の作用により、高分子の塩基性物質の作用によって開裂する結合が解裂する。これら結合が分解されて低分子量化すると、有機溶媒や各種水溶液に対する溶解性が向上する。特に、分解によりカルボキシル基やフェノール性水酸基が生成する場合は、塩基性水溶液に対して溶解性が飛躍的に向上する。一方、未露光部においては、高分子の塩基性物質の作用によって開裂する結合が分解せず、高分子のままであり、さらに、親水性の置換基がない場合、上記高分子は有機溶媒に可溶であるが水性溶液には難溶である。
このようにして、露光部、未露光部において各種溶液に対する溶解性が変化するため、露光やその後の必要に応じた加熱の後に、露光部が溶解し未露光部が溶解しない溶液で処理すればポジ型のパターンを得ることが出来る。
【0034】
次に、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる各成分を説明する。
本発明で用いられる感光性樹脂組成物中に含有される高分子は、塩基性物質の作用によって開裂する、ヘミアセタールエステル結合、ヘミアセタール結合、及びカルバメート結合よりなる群から選択される1種以上の結合を主鎖に有する高分子である。
塩基性物質の作用によって開裂する結合としては、ヘミアセタール結合、ヘミアセタールエステル結合、9−フルオレニルメチルカルバメート結合、1,1−ジメチル−2−シアノメチルカルバメート結合((CN)CH2C(CH3)OC(O)NR2)、パラニトロベンジルカルバメート結合、2,4−ジクロロベンジルカルバメート結合などが挙げられる。
これらの結合は、塩基性化合物の作用により容易に分解する為、これらの結合を、単独、または2種以上の組み合わせで主鎖に含んでいる高分子を用いた場合、光塩基発生剤から発生した塩基によって主鎖が分解し、低分子量化することで露光部、未露光部に溶解速度差を創出することができる。
【0035】
中でも、本発明に用いられる高分子が主鎖に有する、塩基性物質の作用によって開裂する結合としては、ヘミアセタール結合、及び/又は、ヘミアセタールエステル結合であることが好ましい。分解される結合が、ヘミアセタール結合、及びヘミアセタールエステル結合の場合、分解反応により、低分子量のアルデヒド化合物や、親水性の置換基である水酸基や塩基性溶液に溶解するカルボキシル基が生成するため、分解反応後の現像特性が非常に良好となる。
【0036】
ヘミアセタール結合は、塩基性物質の作用により、加水分解されアルデヒド基を有する化合物、水酸基を有する化合物に分解される。また、ヘミアセタール結合は、ある一定以上の温度による加熱で、水酸基を有する化合物とビニロキシ基を有する化合物に熱分解したり、アルデヒド基を有する化合物、水酸基を有する化合物に加水分解される。
これらの場合、生成する水酸基がフェノール性水酸基やヘキサフルオロイソプロパノールであると塩基性水溶液で現像が可能となり、作業性が向上する。
【0037】
ヘミアセタールエステル結合は、塩基性物質の作用により、加水分解されカルボキシル基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、水酸基を有する化合物に分解される。また、ヘミアセタールエステル結合は、ある一定以上の温度による加熱でカルボキシル基を有する化合物とビニロキシ基を有する化合物に熱分解したり、カルボキシル基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、水酸基を有する化合物に加水分解される。その為、塩基性水溶液での現像が可能となる。
【0038】
また、ヘミアセタール結合、及び、ヘミアセタールエステル結合は加熱によってのみでも分解する為、本発明の感光性樹脂組成物を除去したい場合に、露光と加熱の組み合わせや加熱を行うのみで、主鎖が分解し除去が可能である。
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物によって形成されたパターンを除去する際に、ヘミアセタールエステル結合の分解温度が、分解生成物の分解温度以下の場合、加熱や、それに加えて減圧を行うことで、乾式のパターン除去が可能であるという利点がある。
【0039】
ヘミアセタール結合、及び/又は、ヘミアセタールエステル結合を主鎖に有する前記高分子は、ジカルボン酸、ビスフェノール又はジオールと、ジビニルエーテル化合物とから合成することが可能である。また、1分子中にビニロキシ基とカルボキシル基、ビニロキシ基とフェノール性水酸基、或いは、ビニロキシ基と水酸基を含む化合物からも合成することが可能である。さらには、アセタール結合やヘミアセタール結合を骨格中に含む分子をアセタール結合やヘミアセタール結合が主鎖骨格中に含むように重合しても良い。
【0040】
カルボキシル基(カルボン酸)とビニルエーテル、水酸基とビニルエーテルは、一般的には、触媒を用いて反応させることができる。また、活性エステルを用いたエステル交換反応などによっても合成が可能である。
カルボン酸が芳香族カルボン酸の場合は、酸触媒を用いず室温で攪拌するのみで反応が進行する場合もあり、その場合は、低コストで非常に簡便に入手することが可能である。すなわち、芳香族カルボン酸とビニルエーテルの反応は、脂肪族カルボン酸との場合と挙動が若干異なる。脂肪族カルボン酸とビニルエーテルとの反応は加熱や酸触媒が必要な場合が多いが、発明者は、鋭意検討の結果、芳香族カルボン酸とビニルエーテルは室温で攪拌するのみで得られることを見出した。さらに、その際に窒素原子を含有しない溶媒を用いることで劇的に芳香族カルボン酸とビニルエーテルの反応収率を向上させることに成功した。
【0041】
芳香族カルボキシル基とビニロキシ基を反応させて得られる高分子は、熱や酸の作用によって分解することは知られていた。発明者は鋭意検討を行うことで、芳香族カルボキシル基とビニロキシ基を反応させて得られる高分子が塩基によっても分解反応が起こり、さらに、その分解が酸による分解よりも低温で進行することを見出した。塩基の作用によって前記高分子の分解を行うことで、より低温での分解プロセスが可能となり、構造によっては、加熱をせずに室温で分解反応を進行させる事ができる。
【0042】
ヘミアセタール結合、及び/又は、ヘミアセタールエステル結合を主鎖に有する高分子の熱分解の分解温度は、ヘミアセタール結合やヘミアセタールエステル結合に直接結合する骨格の構造に由来し、芳香族カルボン酸やフェノール性水酸基から誘導されたヘミアセタール結合やヘミアセタールエステル結合が、より低温で開裂する傾向がある。また、ビニロキシ基の酸素に結合する炭素原子が、1級、2級、3級となるにつれて分解温度が上昇する傾向がある。
これら分解温度は、塩基による分解の反応性とほぼ同じ傾向を示し、熱分解温度が低いほど、ヘミアセタール結合やヘミアセタールエステル結合の塩基に対する反応活性が高い場合が多い。
特に、フェノール性水酸基の酸解離定数は11より小さい方が現像性、分解性の点で有利である。また、芳香族カルボン酸の酸解離定数は一般に5より小さく(安息香酸はpKa=4)、酸解離定数が小さいほど、安定性が低下する反面、塩基に対する反応活性が高い傾向がある。
【0043】
また、本発明の感光性樹脂組成物中に含まれる結合がヘミアセタールエステル結合の場合、結合が分解されて発生したカルボキシル基により塩基が中和され塩を形成する場合がある。この場合、加熱を行うことで塩基によるヘミアセタールエステル結合の分解を促進することができる。一方で、塩形成により、発生した塩基の拡散が抑制されることで、より微細なパターンの形成が可能となったり、パターン形状の向上(パターン幅のばらつきの抑制)が可能となる。ただし、この場合感度が低下したり、より多くの光塩基発生剤の添加が必要になる場合もある。
一方、水酸基やフェノール性水酸基が分解によって発生する場合には、塩形成は見受けられず、光塩基発生剤の量を抑制することができる。つまり、単位重量あたりのコストが高い光塩基発生剤の添加量を抑制できコスト削減になるばかりでなく、高い感度を示す。
【0044】
また、カルバメート結合を主鎖に有する高分子は、ジイソシアネートとジオールとの付加反応や、水酸基とイソシアナト基を両方有する化合物同士の付加反応によって合成が可能である。
カルバメート結合は、塩基性物質の作用により、脱炭酸を伴い、水酸基を有する化合物と、アミノ基を有する化合物に分解される。この場合、主鎖の分解に伴って塩基性のアミノ基が生成する為、分解反応が加速的に進行し、良好な感度を示す。
また、製造時に用いられるイソシアナト基を有する化合物は、種々の構造が市販されており構造選択の幅が広く、目的の特性に応じて構造を選択しやすいという特徴を有する。
【0045】
このように、本発明に用いられる塩基性物質の作用によって開裂する、ヘミアセタールエステル結合、ヘミアセタール結合、及びカルバメート結合よりなる群から選択される1種以上の結合を主鎖に有する高分子は、簡便な合成手法で得られることから非常に安価に入手が可能である。さらに、この高分子と光塩基発生剤を混合するという簡便な手法で感光性樹脂組成物を調整することが可能である。
さらには、高分子の骨格は種々選択可能なため、適用できる高分子の化学構造の選択範囲が広く、その感光性樹脂組成物の特性を生かすことの出来る分野に広く応用される。さらには、目的応じて、多くの種類の光塩基発生剤を選択することが可能であり、感光性樹脂組成物としての構造の選択肢が多い。
【0046】
本発明で用いられる感光性樹脂組成物中に含有される上記高分子は、塩基性物質の作用によって主鎖が開裂した後に生成する置換基のうち少なくとも一つが、カルボキシル基、フェノール性水酸基、または、ヘキサフルオロイソプロパノール基であることが好ましい。
これらの置換基は、pKaが小さく、これらの置換基を含有する化合物は塩基性水溶液に溶解しやすい。その為、塩基性化合物によって主鎖が分解された後に、これらの置換基が生成すると、分解生成物の塩基性溶液に対する溶解性が向上し、塩基性溶液に対する現像特性が向上する。
一般に、分子量変化だけで現像液に対する溶解速度差を付与しようとすると、大きな分子量変化が必要となり、感光剤の添加量が多くなったり、感度が低下するといった課題があったが、露光部に上記のような置換基が生成する場合には、分子量の変化だけでなく、塩基性水溶液に対する親和性の差も創出することができることから塩基性水溶液で現像する際の現像特性が向上する。
【0047】
本発明で用いられる塩基性物質の作用によって開裂する結合を主鎖に有する高分子は、下記式(1)又は下記式(2)で表わされる繰り返し単位を少なくとも1つ以上有していることが好ましい。
【0048】
【化5】

【0049】
【化6】

(式(1)および式(2)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素、ハロゲン原子、または1価の有機基であり、X、XおよびYはそれぞれ独立に2価の有機基である。R、R、及びRはそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。nは1以上の自然数である。)
【0050】
式(1)において、Xが下記式(3)で表わされ、Yが下記式(4)で表わされることが好ましい。
【0051】
【化7】

(式(3)中、Aは2価の有機基であり、Bはそれぞれ独立にカルボニル結合、または単結合である。式(4)中、Aは2価の有機基、または単結合であり、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素または、1価の有機基であり、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。繰り返されるA、B、A、R、R、R、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0052】
式(1)において、Xが下記式(3)で表わされ、Yが下記式(4)で表わされる構造としては、Xが、ジカルボン酸、ジオール、又はビスフェノール由来の構造であり、Yがジビニルエーテル化合物由来の構造であることが好ましい。本発明における高分子において、ジカルボン酸、ジオール、ビスフェノール、又はジビニルエーテル化合物は一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の高分子に適用可能なジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸としては、テトラリンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸シュウ酸、マロン酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
【0054】
また、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、テレフタル酸、フタル酸、テトラクロロフタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0055】
脂肪族のジカルボン酸とビニルエーテルとの反応は、加熱して攪拌することで進行するが、反応温度を下げる為に触媒を用いてもよい。また、芳香族ジカルボン酸を用いると、ビニルエーテルとの反応温度を低下させることができ、室温でも反応が進行する。
脂肪族ジカルボン酸由来のヘミアセタールエステル結合を有する高分子の方が、耐熱性が高く安定である。一方、芳香族ジカルボン酸由来のヘミアセタールエステル結合を有する高分子は、安定性には劣るものの、塩基に対する分解性に優れ、塩基性度が低い塩基や、少量の塩基によっても効率的に分解反応を進行させる事ができる。
【0056】
本発明の高分子に適用可能なジオールとしては、例えば、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、キシリレングリコール、2−メチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノールなどが挙げられる。
【0057】
また、ビスフェノール化合物として好ましいものは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4'−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフルオレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4'−[1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)]、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4'−ジヒドロキシフェニルエーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4'−メチレンビスフェノール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジsec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(3ーフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−(p−フルオロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェノール、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ビフェノール、3,3',5,5'−テトラtert−ブチル−4,4'−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3'−ジフルオロ−4,4'−ビフェノール、3,3',5,5'−テトラフルオロ−4,4'−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、イサチンビスフェノール、イサチンビスクレゾール、2,2',3,3',5,5'−ヘキサメチル−4,4'−ビフェノール、ビス(2ーヒドロキシフェニル)メタン、2,4'−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2ーヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3',5,5'−テトラtert−ブチル−2,2'−ビフェノール、2,2'−ジアリル−4,4'−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9、9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,4−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどが挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、組み合わせて用いて用いても良い。
【0058】
また、上記のビスフェノール化合物の中でも、工業的に入手しやすく、耐熱性や溶剤溶解性に優れている点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールC〕、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔TMBPA〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン〔ビスフェノールAP〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔ビスフェノールZ〕および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン〔ビスフェノールAF〕が好ましく、さらには溶液のハンドリング性の観点からは、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールC〕、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔TMBPA〕が特に好ましく、透明性の観点からは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン〔ビスフェノールAF〕が特に好ましい。
本発明の高分子に適用可能なヘキサフルオロイソプロパノール基を2つ有する化合物としては、1,4−ビス(ヘキサフルオロ−α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(ヘキサフルオロ−α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0059】
一方、本発明の高分子に用いられるジビニルエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、などが挙げられる。また、ジシクロペンタンジオールジビニルエーテル、ジシクロペンタンジメタノールなどのジシクロペンタン誘導体を骨格に有するジビニルエーテルなどが挙げられる。
脂環式骨格を有するジビニルエーテルに誘導される高分子を用いると、本発明の感光性樹脂組成物の膜強度が向上する。さらに、酸素やハロゲン化物のプラズマに対するドライエッチング耐性が向上するため好ましい。
【0060】
また、本発明の高分子に用いられるジビニルエーテルにおいて、ビニロキシ基の酸素に直接結合する炭素が、1級の炭素の場合、熱安定性に優れた高分子が得られることからプロセス適正や保存安定性に優れる。3級の炭素の場合、塩基性化合物に対する分解性に優れた高分子が得られることから、感度のよい感光性樹脂組成物となる。2級の炭素となった場合、その2種の特性のバランスの取れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0061】
次に、上記式(2)においては、Xが下記式(5)で表わされることが好ましい。
【0062】
【化8】

(式(5)中、Aは2価の有機基であり、Bはカルボニル結合、または単結合であり、R、及びRはそれぞれ独立に水素または、1価の有機基であり、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。繰り返されるA、B、R、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0063】
上記式(2)においては、Xが下記式(5)で表わされる構造としては、Xが、カルボキシル基、フェノール性水酸基、又はヘキサフルオロイソプロパノール基のいずれかと、ビニロキシ基の両方を有する化合物に由来する2価の有機基であることが好ましい。
上記式(2)で表わされる繰り返し単位を有する場合、分解生成物に必ずカルボキシル基、フェノール性水酸基、又はヘキサフルオロイソプロパノール基が含まれる為、現像残渣の低減など現像特性が向上する。
上記式(2)は、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、又はヘキサフルオロイソプロパノール基のいずれかと、ビニロキシ基の両方を有する化合物を重付加反応させることにより得られる。
【0064】
カルボキシル基と、ビニロキシ基の両方を有する化合物としては、2−ビニロキシプロピオン酸、3−ビニロキシ酪酸、4−ビニロキシ吉草酸、4−ビニロキシクロヘキサンカルボン酸などの、脂肪族カルボン酸と脂肪族ビニルエーテルからなる化合物、p−ビニロキシメチル安息香酸、m−ビニロキシメチル安息香酸、4’−ビニロキシメチルビフェニル−4−カルボン酸などの、芳香族カルボン酸と脂肪族ビニルエーテルからなる化合物などが挙げられる。
【0065】
フェノール性水酸基と、ビニロキシ基の両方を有する化合物としては、p−ビニロキシメチルフェノール、m−ビニロキシメチルフェノール、4’−ビニロキシメチルビフェニル−4−オールなどが挙げられる。
また、ヘキサフルオロイソプロパノール基と、ビニロキシ基の両方を有する化合物としては、1-ビニロキシメチル−4−(ヘキサフルオロ−α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,1’−ジテトラフルオロメチル−2−ビニロキシエタノールなどが挙げられる。
【0066】
材料入手の容易性などから、ヘミアセタール結合は、フェノール性水酸基とビニロキシ基とから誘導されることが好ましく、ヘミアセタールエステル結合は、カルボキシル基とビニロキシ基から誘導されるのが好ましい。これらの場合のビニロキシ基は置換基が導入されていても良い。
【0067】
上記式(1)および(2)のR、R、及びRはそれぞれ独立に水素、ハロゲン原子、または1価の有機基であるが、これらはビニロキシ基の構造により決まる。R、R、及びRは水素、または、置換または無置換のアルキル基、アリル基、アリール基であることが、原料入手の容易性から好ましい。最も一般的なビニルエーテル化合物は、ビニル結合を形成する2つの炭素に結合する4つの原子のうち1つが酸素原子で、残りの3つが水素原子である、無置換のビニロキシ基である。無置換のビニロキシ基を有する化合物を用いると、前記式(1)または(2)中のR、R、及びRが水素となる。
無置換のビニロキシ基を有する化合物は、入手が容易であり、構造の選択の幅が広いといった優位性を有すると共に、コストも低減できる。
上記式(1)および(2)のR、R、及びRはそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。例えば、1,2−ジ(シクロヘキセン−1−オキシ)−エタンを用いるような場合が該当する。
【0068】
前記高分子において、前記式(1)におけるX及び/又はY、或いは前記式(2)におけるXが、芳香環を含有していることが、当該感光性樹脂組成物が剥離レジスト等のように他の材料の加工に用いられる際のドライエッチング耐性が高くなり、また前記高分子のガラス転位温度が高くなる点から好ましい。
【0069】
また、前記高分子において、前記式(3)、前記式(4)、及び下記式(5)中のA、A、及びAの少なくとも1つが芳香環を含有し、芳香環によってB、炭素原子、及び/又はBと結合していることが、塩基に対する分解性に優れ、塩基性度が低い塩基や、少量の塩基によっても効率的に分解反応を進行させる事ができる点から好ましい。
【0070】
主鎖骨格中にヘミアセタール結合、及び/またはヘミアセタールエステル結合を含む高分子を合成する際の反応溶媒としては、窒素原子を含有しない溶媒の中でもラクトン類、スルホキシド類を用いることが好ましい。ラクトン類としては、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、δ−ヘキサノラクトンなどが挙げられ、スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどが挙げられる。ジメチルスルホキシドは、高い溶解性を有する一方で、酸化され難く変異原性も確認されており、溶媒としての安定性や安全性に課題があるため、中でもラクトン類が特に好ましい。
【0071】
また、本発明の高分子において、芳香族カルボン酸由来のヘミアセタールエステル結合を形成する際は、触媒を用いなくても反応が進行し、反応時の温度としては、5〜35℃が好ましく、更に10〜30℃が好ましい。これよりも反応温度が高い場合には、芳香族カルボン酸由来のヘミアセタールエステル結合の分解等の副反応が進行することから、100%へミアセタールエステル結合とした高分子を得られない傾向がある。
【0072】
脂肪族カルボン酸由来のヘミアセタールエステル結合を形成する際には、燐酸エチルヘキシルなどの触媒を用いても、無触媒でも反応は進行し、触媒を用いると反応温度を低くできる。反応温度は25〜150℃が好ましく、更に50〜140℃が好ましい。これよりも反応温度が高い場合には、ヘミアセタールエステル結合の分解等の副反応が進行し、温度が低いと反応時間が長くなる。
【0073】
フェノール性水酸基由来のヘミアセタール結合を形成する際には、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩などを触媒として用いることが好ましく、その反応時の温度としては25〜150℃が好ましく、更に50〜140℃が好ましい。これよりも反応温度が高い場合には、ヘミアセタール結合の分解等の副反応が進行する傾向がある。
【0074】
また、塩基性物質の作用によって開裂するカルバメート結合を主鎖に有する高分子は、主鎖に9−フルオレニルメチルカルバメート結合、1,1−ジメチル−2−シアノメチルカルバメート結合((CN)CH2C(CH3)OC(O)NR2)、パラニトロベンジルカルバメート結合、2,4−ジクロロベンジルカルバメート結合等のカルバメート結合を有するものが挙げられる。上記カルバメート結合を主鎖に有する高分子は、例えば、上記のカルバメート結合を有するように適宜選択されたジオールとジイソシアネートの付加反応や、上記のカルバメート結合を有するように適宜選択された水酸基とイソシアナト基を両方有する化合物同士の付加反応によって合成できる。本発明のカルバメート結合を主鎖に有する高分子に用いられるジイソシアネートとしては、脂肪族系、芳香族系、脂環式系のいずれのジイソシアネートでもよく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニレンジイソシアネート、4,4'−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、またはメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4,−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、などの脂肪族、脂環族系ポリイソシアネートが挙げられる。また、本発明のカルバメート結合を主鎖に有する高分子に用いられるジオールとしては、特に限定されないが、例えば、9−フルオレニルメタノール構造を2つ有する化合物、1,1−ジメチル−2−シアノメタノール構造を2つ有する化合物、パラニトロベンジルアルコール構造を2つ有する化合物、2,4−ジクロロベンジルアルコール構造を2つ有する化合物などが挙げられる。
【0075】
更に、本発明のカルバメート結合を主鎖に有する高分子に用いられる水酸基とイソシアナト基を両方有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、9−フルオレニルメタノール構造とイソシアナト基を有する化合物、1,1−ジメチル−2−シアノメタノール構造とイソシアナト基を有する化合物、パラニトロベンジルアルコール構造とイソシアナト基を有する化合物、2,4−ジクロロベンジルアルコール構造とイソシアナト基を有する化合物等が挙げられる。
【0076】
また、本発明に用いられる高分子においては、ヘミアセタールエステル結合、ヘミアセタール結合、及びカルバメート結合よりなる群から選択される1種以上の結合を有する繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を含んでいても良い。例えば前記式(1)又は式(2)で表わされる繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいても良い。
露光部と未露光部において溶解性の差が創出されるためには、前記高分子において、ヘミアセタールエステル結合、ヘミアセタール結合、及びカルバメート結合よりなる群から選択される1種以上の結合を有する繰り返し単位が、多ければ多いほど分解性が向上するが、全繰り返し単位中に50モル%以上含まれることが好ましく、更に70モル%以上含まれることが好ましい。前記高分子において前記式(1)及び/又は式(2)で表わされる繰り返し単位が、多ければ多いほど分解性が向上するが、全繰り返し単位中に 50モル%以上含まれることが好ましく、更に70モル%以上含まれることが好ましい。
【0077】
本発明に用いられる高分子においては、活性水素を実質的に含まないことが好ましい。
この場合の活性水素を有する置換基とは、ヘミアセタールエステル結合と交換反応可能な置換基を示し、具体的には水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる(化学辞典 東京化学同人)。
これらの置換基は、ヘミアセタールエステル結合と交換反応を起こし、主鎖の開裂を誘発する。その為、本発明の感光性樹脂組成物が活性水素を含む場合、保存安定性を低下させる。ヘミアセタールエステル結合に比べ、ヘミアセタール結合は比較的安定である為、活性水素を含む場合でも、実用上十分な安定性を示す場合もある。
【0078】
また、本発明に用いられる高分子においては、ポリマーの末端が、活性水素を含まない構造で末端封止されていることが、保存安定性の点から好ましい。
酸無水物基、または活性水素を含まない構造で末端封止する方法としては、例えば、末端の数に想定している量の、分子内に一つだけカルボン酸や、水酸基、ビニロキシ基を含む化合物を用いて、末端を不活性な置換基とする方法などが挙げられる。
【0079】
本発明に用いられる高分子は、感光性樹脂組成物とした際の感度を高め、マスクパターンを正確に再現するパターン形状を得るために、1μmの膜厚のときに、露光波長のいずれかに対して少なくとも5%以上の透過率を示すことが好ましく、15%以上の透過率を示すことが更に好ましい。
露光波長に対して透過率が高いということは、それだけ、照射光のロスが少ないということであり、高感度の感光性樹脂組成物を得ることができる。
また、一般的な露光光源である高圧水銀灯を用いて露光を行う場合には、少なくとも436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時で好ましくは5%以上、さらに好ましくは15%、さらに好ましくは50%以上である。
【0080】
本発明に用いられる高分子の重量平均分子量または、数平均分子量のいずれかは、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、3,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、3,000〜100,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量または、数平均分子量のいずれかが3,000未満であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。一方、重量平均分子量または、数平均分子量のいずれかが1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている重量平均分子量とは、公知の手法により得られる分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値が例示され、数平均分子量は1H-NMRスペクトルから求めた末端部の繰り返し単位由来のピークと非末端部の繰り返し単位由来のピークの積分比から求める方法などが例示される。
【0081】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、上記高分子は、別々に合成した2種以上の高分子をブレンドしてもよい。その目的に応じて、2種以上の異なる構造を有する高分子をを適宜混合して用いても良い。
【0082】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、上記高分子の固形分は、得られるパターンの膜物性、特に膜強度の点から、溶剤を含む感光性樹脂組成物全体中に、0.1重量%〜80重量%であることが好ましく、0.5重量%〜50重量%であることがさらに好ましい。固形分濃度が0.1重量%よりも小さい場合は、得られる塗膜の膜厚が薄く、表面に凹凸のある基板に対しての追従性が低下し、塗布むらが発生しやすい。一方、固形分濃度が80重量%より大きい場合は、粘度が大きくなり塗布途中での溶媒の揮発等による膜厚むらが発生しやすくなる。
また、本発明に係る感光性樹脂組成物において、上記高分子の固形分は、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、感光性樹脂組成物中の溶剤と後述するビニルエーテル化合物を除いた固形分全体に対し、30重量%以上、50重量%以上含有することが好ましい。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物は、必須の成分として光塩基発生剤を含む。本発明における光塩基発生剤としては、電磁波を吸収することにより分解して塩基を発生するものであれば、公知のものを特に制限なく使用することができる。本発明に用いられる光塩基発生剤としては、それ自体が電磁波の照射によって分解、または分子内転移等の反応がおこり、中性から塩基性へ変化する化合物、一般には1級、2級、3級のアミンを発生させる化合物が好適に用いられる。光塩基発生剤は、単独で使用しても2種以上混合して用いても良い。
【0084】
光塩基発生剤の例としては、非イオン性のものとして、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−ジイソプロピルアミン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−ビス(3−ペンチル)アミン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−ビス(4−ヘプチル)アミン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−ジシクロプロピルアミン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−ジシクロブチルアミン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−ジシクロペンチルアミン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−ジシクロヘキシルアミン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルピペリジン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルピロリジン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチル−4−メチル−ピペラジン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルモルホリン、N−{[(4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルチオモルホリン、N−{[(3、4−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルピペリジン、N−{[(3、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルピペリジン、N−{[(3、6−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルピペリジン、N−{[(4、6−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルピペリジン、N−{[(5、6−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2、6−ジメチルピペリジン等のニトロベンジルウレタン系化合物、アセトフェノンオキシム安息香酸エステル、アセトフェノンオキシム吉草酸エステル、アセトフェノンオキシムフェニル酢酸エステル、ベンゾフェノンオキシム安息香酸エステル、ベンゾフェノンオキシム吉草酸エステル、ベンゾフェノンオキシム安息香酸エステルなどのアシロキシイミノエステル系化合物、クマル酸アミドやその誘導体などが挙げられる。
イオン系としてはハロゲンイオンとの四級アンモニウム塩や、チオシアン酸イオンやテトラフェニルボレートイオンなど他のアニオンとの4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0085】
光塩基発生剤は、溶剤を含む感光性樹脂組成物全体中に、0.005重量%〜20重量%であることが、感度の観点から好ましい。また、本発明に係る感光性樹脂組成物において、光塩基発生剤は、感光性樹脂組成物中の溶剤と後述するビニルエーテル化合物を除いた固形分全体に対し、0.01〜30重量%含まれることが感度の観点から好ましく、0.1重量%〜10重量%含まれることが、パターン除去の際に光塩基発生剤由来の除去不良を抑制する観点からより好ましい。
【0086】
本発明に用いられる光塩基発生剤としては、436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち少なくとも1つの波長に吸収を有することが好ましい。
上記感光性樹脂組成物に含まれる光塩基発生剤は、高分子が透過しやすい波長領域の光の作用によって、塩基を発生することが好ましく、330nm以上の波長領域に吸収を有することが好ましい。さらには、一般に露光に用いられる光源である高圧水銀灯の発光波長のうち、強度が大きい、436nm、405nm、365nmの波長の光のうち、少なくとも1つの波長の光に吸収を有していることが好ましく、その中でも、436nm、405nmの波長に吸収を有することが特に好ましい。
本発明に用いられる光塩基発生剤としては、具体的には少なくとも365nm以上のいずれかの波長におけるモル吸光係数が1以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、50以上であることがより好ましい。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物には、活性水素を含まないことが好ましく、活性水素を含有する化合物を含まないことが好ましい。特に、水を含まないことが好ましい。これらを含むと、ヘミアセタール結合及びヘミアセタールエステル結合が徐々に分解し、保存安定性が低下する。特にヘミアセタールエステル結合の場合、保存安定性の低下が顕著となる。
ヘミアセタールエステル結合は、水酸基などの活性水素を有する化合物と共存するとそれらとの交換反応が起こる場合がある。通常ヘミアセタール結合はヘミアセタールエステル結合よりも安定であるため、上記高分子と水酸基含有化合物が共存すると、ヘミアセタールエステル結合が水酸基により分解される。つまり、上記高分子は水酸基など活性な水素を有する化合物と共存させると安定性が低下する。ヘミアセタールエステル結合の分解反応の速度は、その化学構造により異なり、ヘミアセタールエステル結合を生成する反応の速度が速いほど、分解の速度も速い傾向がある。
保存安定性を良好にする観点から、感光性樹脂組成物中の水分含有量は1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。さらには、実質的に水分を含まないことがもっとも好ましい。なおここで”実質的に水を含まない”とは、水による保存安定性の低下が観察されないほど組成物中の水の含有量が少ないことをいう。具体的には、組成物中の含水率が0.005重量%未満程度、更に0.001重量%未満である状態をいう。
【0088】
さらに、アセタール結合は酸や塩基の存在下、加水分解が触媒的に進行する。その為、感光性樹脂組成物中に酸性物質や塩基を実質的に含まないことで保存安定性を向上させることが出来る。なおここで”酸性物質や塩基を実質的に含まない”とは、酸性物質や塩基による保存安定性の低下が観察されないほど組成物中の酸性物質や塩基の含有量が少ないことをいう。具体的には、組成物中の酸性物質又は塩基含有率が0.005重量%未満程度、更に0.001重量%未満である状態をいう。
【0089】
感光性樹脂組成物を溶解、分散又は希釈する溶剤としては各種の汎用溶剤を用いることが出来る。これらは単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。ただ、感光性樹脂組成物の保存安定性を高めるためには、活性水素を含まない溶媒を用いることが好ましい。さらに、同様の目的から骨格中にアミド結合など窒素原子を含有しない溶媒であることが好ましい。また、窒素原子を含有する溶媒を含まないことが好ましい。
また、前記高分子の合成反応により得られた溶液をそのまま用い、そこに光塩基発生剤や、必要に応じて他の成分を混合しても良い。
【0090】
使用可能な汎用溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
この中でも、溶解性に優れ高濃度の溶液を調製できる観点から、ラクトン類、スルホキシド類を用いることが好ましい。
【0091】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記高分子がヘミアセタール結合又はヘミアセタールエステル結合を主鎖に有する場合には、ビニルエーテル化合物を含有することが、保存安定性が飛躍的に向上する点から好ましい。
ヘミアセタール結合又はヘミアセタールエステル結合を主鎖に有する高分子は、保存の過程で時間の経過とともに空気中の水分等の作用により加水分解され、徐々に切断される場合がある。特に、比較的安定な脂肪族カルボン酸とビニルエーテル化合物からなる脂肪族ヘミアセタールエステル結合と異なり、芳香族カルボン酸とビニルエーテル化合物の反応などから得られる芳香族ヘミアセタールエステル結合は、両者を混合するだけで室温で反応が進行する反面、単体で存在すると空気中の水分などと反応し加水分解される場合が多い。
しかし、高分子の合成に用いられたビニルエーテル化合物を高分子と共存させることで、切断されたヘミアセタール結合が、再度、ヘミアセタールエステル化される。その為、上記ヘミアセタール結合又はヘミアセタールエステル結合を主鎖に有する高分子は高分子の合成に用いられたビニルエーテル化合物と共存させることにより樹脂組成物としての保存安定性が良好となる。
【0092】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記高分子と、光塩基発生剤と、必要に応じて溶媒だけの単純な混合物であってもよいが、さらに適宜、塩基増殖剤や増感剤等のその他の成分を配合して、感光性樹脂組成物を調製してもよい。
【0093】
光塩基発生剤から発生した少量の塩基の作用によって分解や転位反応し塩基を発生させる塩基増殖剤を用いても良い。この場合、感度の低い光塩基発生剤を用いても、少量の塩基が発生さえすれば、増殖反応によって塩基の数を増やせるので、十分実用的な感度を示す感光性樹脂組成物とすることが出来る。
塩基増殖剤としては、例えば、9−フルオレニルメチルカルバメート結合を有する化合物、1,1−ジメチル−2−シアノメチルカルバメート結合((CN)CH2C(CH3)OC(O)NR2)を有する化合物、パラニトロベンジルカルバメート結合を有する化合物、2,4−ジクロロベンジルカルバメート結合を有する化合物、その他にも特開2000−330270号公報の段落0010〜段落0032に記載されているウレタン系化合物や、特開2008−250111号公報の段落0033〜段落0060に記載されているウレタン系化合物等を挙げることができる。
【0094】
また、上記高分子を透過する波長の電磁波のエネルギーを光塩基発生剤が充分利用できる様にし、感度を向上させたい場合に、増感剤の添加が効果を発揮する場合がある。
特に、上記高分子の吸収が360nm以上の波長にもある場合には、増感剤の添加による効果が大きい。増感剤と呼ばれる化合物の具体例としては、チオキサントン及び、ジエチルチオキサントンなどのその誘導体、クマリン系及び、その誘導体、ケトクマリン及び、その誘導体、ケトビスクマリン、及びその誘導体、シクロペンタノン及び、その誘導体、シクロヘキサノン及び、その誘導体、チオピリリウム塩及び、その誘導体、チオキサンテン系、キサンテン系及び、その誘導体などが挙げられる。しかし、これらには活性水素基を持たないことが感光性樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。
【0095】
クマリン、ケトクマリン及び、その誘導体の具体例としては、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。
チオキサントン及び、その誘導体の具体例としては、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0096】
さらに他にはベンゾフェノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、1,2−ナフトキノン、などが挙げられる。
これらは、光塩基発生剤との組み合わせによって、特に優れた効果を発揮する為、光塩基発生剤の構造によって最適な増感作用を示す増感剤が適宜選択される。
【0097】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物には、本発明の目的と効果を妨げない限り、加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0098】
その他の任意成分の配合割合は、任意成分の性質により適宜選択され特に限定されないが、感光性樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜30重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、30重量%を超えると、最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくい。
【0099】
以上に述べたように、本発明によれば、簡便に合成が可能な主鎖に塩基の作用により分解する結合を有する高分子と光塩基発生剤を混合するだけで、大きな溶解性コントラストが得られ、結果的に、十分なプロセスマージンを保ちつつ、形状が良好なパターンを得ることができ、しかも安価で高感度の感光性樹脂組成物を得ることができる。
本発明に係る感光性樹脂組成物は、さまざまなコーティングプロセスや成形プロセスに用いられて、膜(フィルム)や3次元的形状の成形体を作製することができる。
【0100】
中でも主鎖にヘミアセタールエステル結合を有する高分子を含む場合には、本発明の感光性樹脂組成物は、その高分子の感光性付与成分である主鎖骨格中に導入されたヘミアセタールエステル化部位の分解性が優れるため、解像度が高いパターンを得ることができる。
【0101】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法について、説明する。
本発明のパターン形成方法は、前記本発明に係る感光性樹脂組成物からなる膜又は成形体の表面に、所定のパターン状に電磁波を照射する露光工程と、現像工程を有する。
上記高分子と光塩基発生剤を含有する本発明の感光性樹脂組成物は、光の作用によって光塩基発生剤から発生した塩基の作用により、上記高分子の主鎖に有するヘミアセタール結合、ヘミアセタールエステル結合、又はカルバメート結合が分解されることにより、水溶液、または、有機溶媒に対する溶解性が変化する。この溶解性の変化を利用し、所望のパターンに露光を行うことによって、可溶部を良溶媒で溶出させることによりパターンを得ることができる。通常、露光部を選択的に易溶化させてポジ型パターン形成が可能である。特に、高分子の分解による分解生成物の分子量が大幅に小さくなった場合には、分解生成物が液体となったり、揮発しやすくなる場合がある。その場合には、通常行われる露光部、未露光部の溶解性の差を利用した液体による湿式現像ではなく、加熱や減圧を行うことにより乾式現像が可能となる。
本発明のパターン形成方法は、パターン形成のプロセスが簡素であるというメリットを有する。中でも現像工程において塩基性水溶液を用いる場合には、自然環境に対する負荷や労働衛生上の悪影響が小さい点から好ましい。また、本発明のパターン形成方法は、主鎖開裂型の反応機構である為、解像度に優れパターン形状が良好であると言う特徴を有する。
【0102】
本発明に係る感光性樹脂組成物からなる膜又は成形体は、公知の方法により作製することができる。例えば膜は、本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥させて得ることができる。このとき、基板とは感光性樹脂組成物の膜を形成したい対象物であり、銅やステンレス等の金属や、シリコンや金属酸化物、金属窒化物などの無機物、ポリイミドや、ポリベンゾオキサゾールなどの有機物などが例示されるが、本発明においては基板によって密着性等が若干変化するものの、パターン形成や得られる膜の特性については、本質的には変化しないので基板は特に限定されない。
塗布方法についても、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法などの手法が挙げられるが、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。本発明のパターン形成方法は、どの塗布方法で得られた膜においても用いることが出来る。
乾燥は、ホットプレートやオーブンなど、適宜、公知の加熱手法を用いることが出来る。
【0103】
露光工程においては、そのようにして得られた膜又は成形体について、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して、または、直接、パターン状に電磁波を照射する。
露光の光源は、特に限定されず公知のものであれば、どれを使ってもよいが、上記高分子の吸収による光量の低下を防ぐ為、高感度の感光性樹脂組成物として用いるには、360nm以上の波長の光で露光を行うのがよい。これらの条件と入手の容易性、メンテナンスコストなどの観点から、高圧水銀灯やそれに類する光源を用いるのが好ましい。
露光工程に用いられる露光方法や露光装置は特に限定されることなく、密着露光でも間接露光でも良くステッパー、スキャナー、アライナー、密着プリンター、レーザー、電子線描画等、公知のあらゆる手段を用いることができる。
【0104】
露光工程後現像工程前に、必要に応じて、加熱を行っても良い。適宜加熱を行うことにより、前記膜又は成形体の露光部においては、露光により発生した塩基によるアセタール結合、ヘミアセタールエステル結合、又はカルバメート結合の分解が促進される。
【0105】
加熱する温度は、室温(23℃)から150℃の範囲が好ましい。この温度は、高分子の構造に依存する。例えば、式(1)において、Xの電子吸引性が強いか又はYの電子供与性が強いと、より低温でヘミアセタールエステル結合の分解が進行する。逆に、式(1)において、Xの電子吸引性が弱いか又はYの電子供与性が弱いと、分解促進のためにはより高温での加熱が必要である場合が多い。加熱温度が高すぎると、未露光部の分解まで進行するため、露光部と未露光部の分解の差が大きくなる温度を適宜選択する。
加熱温度は、高分子の構造により適宜選択されるが、加熱時間は、5秒〜120分、生産性の観点から好ましくは30秒〜30分を目安とすることができる。
加熱方法は公知の手法であれば、どの手法でもよい。
【0106】
露光部において高分子の主鎖に含まれるヘミアセタール結合、ヘミアセタールエステル結合、又はカルバメート結合が分解された後、現像工程を行う。
本発明の感光性樹脂組成物は、塩基の作用により、ヘミアセタール結合、ヘミアセタールエステル結合、又はカルバメート結合が切れることで、未露光部に対して露光部の溶媒に対する溶解性等を変化させることが出来る。
【0107】
高分子の主鎖にヘミアセタール結合、ヘミアセタールエステル結合が含まれる場合、本発明の感光性樹脂組成物の未露光部は、塩基性水溶液に難溶性であり、有機(極性)溶媒に可溶である。一方、露光部は、発生した塩基の作用により上記高分子のアセタール結合やヘミアセタールエステル結合が加水分解により切断され、水酸基やカルボキシル基等の親水性基が生成する。
ヘミアセタールエステル結合が、カルボン酸に分解した場合、塩基性水溶液で現像すれば、ポジ型パターンが得られる。同様に、ヘミアセタール結合が、フェノール化合物に分解した場合、塩基性水溶液で現像すれば、ポジ型パターンが得られる。
【0108】
一方、高分子の主鎖にカルバメート結合が含まれる場合には、例えば、本発明の感光性樹脂組成物の露光部は、発生した塩基の作用により上記高分子のカルバメート結合が加水分解により切断され、分子量が低下し、水酸基やアミノ基等が生成する。
分子量が低下することで、上記高分子の貧溶媒に対しても溶解性が向上することから、分解生成物が溶解し、上記高分子が溶解しない溶媒で現像すれば、ポジ型パターンが得られる。
【0109】
現像工程に用いられる現像液としては、特に限定されず、塩基性水溶液、有機溶剤、酸性水溶液、中性水溶液など、それぞれ単独や、混合、組み合わせるなどして、用いられる高分子に合わせて適宜選択することが可能である。
塩基性水溶液としては、特に限定されないが、例えば、濃度が、0.01重量%〜30重量%、好ましくは、0.05重量%〜10重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、その他、1級、2級、3級アミンの水溶液、水酸化物イオンとアンモニウムイオンの塩の水溶液等が挙げられる。
溶質は、1種類でも2種類以上でも良く、全体の重量の50%以上、さらに好ましくは70%以上、水が含まれていれば有機溶媒等を含んでいても良い。
【0110】
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、シュウ酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独もしくは組み合わせて用いられる。また、パターン形状を良くするためにこれら有機溶媒と水や、塩基性、酸性水溶液を組み合わせて、混合溶媒として用いても良い。
【0111】
現像液自体のコストや廃液処理、さらには、生産設備のコストの観点からは、塩基性水溶液による現像が好ましい。特に、本発明の感光性樹脂組成物が用いられる最終的製品に対して高い信頼性を求められている場合には、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物ではなく、有機系塩基であることが好ましい。特に入手の容易さやコストの観点からテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)であることが好ましい。
【0112】
現像は、スプレー現像やディップ現像、パドル現像など公知の現像方法で行うことが出来る。現像時の温度は、好ましくは1℃〜80℃、より好ましくは、4℃〜60℃である。
現像の後に、必要に応じてリンスを行ってもよい。リンスは、水や水と上記有機溶媒の混合物、塩基性水溶液など適宜選択できる。
【0113】
また本発明において、現像工程は、減圧下、露光部に生成した分解生成物を揮発させて除去することにより行っても良い。このような乾式現像は現像廃液が出ない為、廃液処理費用が削減でき、環境負荷も小さくなるという利点を有する。
減圧下、分解生成物を揮発させて除去する方法としては、例えば、耐圧容器中で100mgHg以下の圧力に減圧しつつ、ホットプレートなどで加熱を行う方法などが挙げられる。
【0114】
本発明の感光性樹脂組成物が剥離レジストに用いられる場合など、他の材料の加工に用いられるような使用方法においては、現像工程の後に、適宜処理を行い、本発明の感光性樹脂組成物により形成されたパターンを除去しても良い。このパターンを剥離する際に加熱する温度は、室温(23℃)から200℃の範囲が好ましい。この加熱により、主鎖中のヘミアセタール結合、ヘミアセタールエステル結合、又はカルバメート結合を熱分解し、低分子量化した後に現像液等でパターンを除去する。
また、この加熱温度を低下させる為に、前面に露光を行い、塩基性物質を発生させた後に加熱を行ってもよい。
【0115】
本発明の感光性樹脂組成物において、芳香族カルボン酸由来のヘミアセタールエステル結合を用いる場合には、150℃程度でほぼ完全に分解することから、150℃以下の温度での加熱時間を長くすることで、主鎖骨格の完全な分解を促進することが出来る。加熱時間は長ければ長いほど主鎖の分解が進行し、パターン除去の観点からは好ましいが、生産性とのバランスをとる上で40℃以上150℃以下の範囲の温度で通算1分〜180分で加熱されることが好ましく、5分〜120分の加熱が行われることが、より好ましい。
【0116】
以上に述べたように、本発明に係る感光性樹脂組成物は、簡便に安価な原料で合成することが可能であり、塩基性化合物によって分解するアセタール結合やヘミアセタールエステル結合等を有する高分子を含むことで、より安価に、高い感度を示す。さらに金属を腐食しない塩基によってパターニングを行うため高信頼性という特徴を有する。
【0117】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、印刷インキ、接着剤、電子材料、光回路部品、成形材料、レジスト材料、建築材料、3次元造形、光学部材等、樹脂材料が用いられる公知の全ての分野・製品に利用できる。
【0118】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、解像度、信頼性等の特性が有効とされる広範な分野・製品、例えば、塗料又は印刷インキ、或いは、表示装置、半導体装置、電子部品、微小電気機械システム(MEMS)、光学部材又は建築材料の形成材料として好適に用いられる。例えば具体的には、表示装置の形成材料としては、層形成材料や画像形成材料として、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料、配向膜等に用いることができる。また、半導体装置の形成材料としては、レジスト材料、バッファーコート膜のような層形成材料等に用いることができる。また、電子部品の形成材料としては、封止材料、層形成材料として、プリント配線基板、層間絶縁膜、配線被覆膜等に用いることができる。また、光学部品の形成材料としては、光学材料や層形成材料として、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等に用いることができる。また、建築材料としては、塗料、コーティング剤等に用いることができる。また、光造形物の材料としても用いることができる。
【0119】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、解像度、信頼性等の特性が有効とされる広範な分野・製品、例えば、表示装置、半導体装置、電子部品、微小電気機械システム(MEMS)、光学部材又は建築材料の形成材料を加工するために用いられる剥離レジストとして好適に用いられる。
【実施例】
【0120】
(製造例1)
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、4,4’−ジフェニルジカルボン酸 2.4g(10mmol)とシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル 2.0g(10mmol)と乾燥させたγ−ブチロラクトン5mlを投入した。乾燥させた窒素気流下室温で、112時間マグネティックスターラーによって撹拌した。その後、反応液を乾燥させたジエチルエーテルで再沈殿し、下記式で表されるポリヘミアセタールエステル(高分子1)の白色固体を定量的に得た。GPCによって測定した重量平均分子量は32000であった。1H−NMRによって解析を行い6.2ppm付近のヘミアセタールエステル結合の酸素と酸素の間の炭素に結合する水素のピークの積分値とビフェニルの芳香環の水素のピークの積分比よりヘミアセタールエステル結合の生成を確認した。
【0121】
【化9】

【0122】
(製造例2)
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 1.9g(10mmol)とシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル 2.0g(10mmol)と乾燥させたγ−ブチロラクトン5mlを投入した。そこへ、触媒量のp−トルエンスルホン酸ピリジン塩を添加し、乾燥させた窒素気流下室温で、72時間マグネティックスターラーによって撹拌した。その後、反応液を乾燥させたジエチルエーテルで再沈殿し、下記式で表されるポリヘミアセタール(高分子2)の白色固体をほぼ定量的に得た。GPCによって測定した重量平均分子量は54000であった。1H−NMRによって解析を行い5.2ppm付近のヘミアセタール結合の酸素と酸素の間の炭素に結合する水素のピークの積分値とビフェニルの芳香環の水素のピークの積分比よりヘミアセタール結合の生成を確認した。
【0123】
【化10】

【0124】
(実施例1及び2)
前記製造例1及び2で得られた高分子1及び高分子2をそれぞれ利用して、下記のような割合で各材料を混合し感光性樹脂組成物1及び2を調製した。
<感光性樹脂組成物の配合割合>
・高分子1または高分子2(固形分):15重量部
・γ−ブチロラクトン:82重量部
・光塩基発生剤(DNCDP):3重量部(高分子の20wt%)
【0125】
なお、DNCDPは、下記構造を有するものであり、Macromolecules A.Mochizuki,Vol.28、No.1、1995 に記載の方法で合成した。
【0126】
【化11】

【0127】
次に、感光性樹脂組成物1及び2を用いてパターン形成を以下の条件で試みた。
<パターン形成条件>
初期膜厚: 4μm(基板:クロムめっきされたガラス)
乾燥: 80℃ 10分
露光量: 500mJ/cm2
露光後加熱: 120℃ 10分
現像: 2.38wt%TMAH水溶液 10分(23℃)
リンス: 水:イソプロパノール=97:3 15秒(23℃)
【0128】
パターンを形成した結果、感光性樹脂組成物1、及び、感光性樹脂組成物2のそれぞれでラインアンドスペース30μm/30μmの良好なパターンが得られた。
その後、そのパターンに紫外線を1J/m2露光し、140℃で10分加熱した後、2.38wt%TMAH水溶液により10分(23℃)処理したところ、パターンが除去された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性物質の作用によって開裂する、ヘミアセタールエステル結合、ヘミアセタール結合、及びカルバメート結合よりなる群から選択される1種以上の結合を主鎖に有する高分子と、光塩基発生剤とを含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記高分子において、塩基性物質の作用によって主鎖が開裂した後に生成する置換基のうち少なくとも一つが、カルボキシル基、フェノール性水酸基、又は、ヘキサフルオロイソプロパノール基である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記高分子が、下記式(1)又は下記式(2)で表わされる繰り返し単位を少なくとも1つ以上有している、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(式(1)および式(2)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素、ハロゲン原子、または1価の有機基であり、X、XおよびYはそれぞれ独立に2価の有機基である。R、R、及びRはそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。nは1以上の自然数である。)
【請求項4】
前記高分子において、前記式(1)中の、Xが下記式(3)で表わされ、Yが下記式(4)で表わされる、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】

(式(3)中、Aは2価の有機基であり、Bはそれぞれ独立にカルボニル結合、または単結合である。式(4)中、Aは2価の有機基、または単結合であり、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素または、1価の有機基であり、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。繰り返されるA、B、A、R、R、R、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記高分子において、前記式(2)中の、Xが下記式(5)で表わされる、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

(式(5)中、Aは2価の有機基であり、Bはカルボニル結合、または単結合であり、R、及びRはそれぞれ独立に水素または、1価の有機基であり、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。繰り返されるA、B、R、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記高分子において、前記式(1)におけるX及び/又はY、或いは前記式(2)におけるXが、芳香環を含有していることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記高分子において、前記式(3)、前記式(4)、及び下記式(5)中のA、A、及びAの少なくとも1つが芳香環を含有し、芳香環によってB、炭素原子、及び/又はBと結合していることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、ビニルエーテル化合物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
更に、塩基増殖剤を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の形成材料として用いられる、請求項1〜9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の加工に用いられる、請求項1〜10のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる膜又は成形体の表面に、所定のパターン状に電磁波を照射する露光工程と、現像工程を有する、パターン形成方法。
【請求項13】
前記露光工程後前記現像工程前に、加熱処理を行う、請求項12に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−237413(P2010−237413A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84765(P2009−84765)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】