説明

感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】解像度及びレジスト剥離特性の向上に十分効果のある感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、(A)スチレン又はスチレン誘導体に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジル又は(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有し、分散度が1.0〜2.0であるバインダーポリマー、(B)光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造分野においては、エッチングやめっきなどに用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物や、この感光性樹脂組成物を含有する層(以下、「感光性樹脂組成物層」という)を支持フィルム上に形成し、感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを配置させた構造を有する感光性エレメント(積層体)が広く用いられている。
【0003】
従来、プリント配線板は、上記感光性エレメントを用いて、例えば以下の手順で製造されている。すなわち、まず、感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を銅張積層板などの回路形成用基板上にラミネートする。このとき、感光性樹脂組成物層の支持フィルムに接触している面(以下、感光性樹脂組成物層の「下面」という)と反対側の面(以下、感光性樹脂組成物層の「上面」という)が、回路形成用基板の回路を形成する面に密着するようにする。そのため、保護フィルムを感光性樹脂組成物層の上面に配置している場合、このラミネートの作業を保護フィルムを剥がしながら行う。また、ラミネートは、感光性樹脂組成物層を下地の回路形成用基板に加熱圧着することにより行う(常圧ラミネート法)。
【0004】
次に、マスクフィルムなどを通して感光性樹脂組成物層をパターン露光する。このとき、露光前又は露光後の何れかのタイミングで支持フィルムを剥離する。その後、感光性樹脂組成物層の未露光部を現像液で溶解又は分散除去する。次に、エッチング処理又はめっき処理を施してパターンを形成させ、最終的に硬化部分を剥離除去する。
【0005】
ここでエッチング処理とは、現像後に形成した硬化レジストによって被覆されていない回路形成用基板の金属面をエッチング除去した後、硬化レジストを剥離する方法である。一方、めっき処理とは、現像後に形成した硬化レジストによって被覆されていない回路形成用基板の金属面に銅及び半田などのめっき処理を行った後、硬化レジストを除去しこのレジストによって被覆されていた金属面をエッチングする方法である。
【0006】
ところで、上述のパターン露光の手法としては、従来、水銀灯を光源として用いてフォトマスクを介して露光する手法が用いられている。また、近年、新露光技術としてDLP(Digital Light Processing)という、パターンのデジタルデータを直接、感光性樹脂組成物層に描画する直接描画露光法が提案されている。この直接描画露光法はフォトマスクを介した露光方法よりも位置合わせ精度が良好であり、かつファインパターンが得られることから、高密度パッケージ基板作製のために導入されつつある。
【0007】
パターン露光では、生産のスループット向上のために、なるべく露光時間を短縮する必要がある。上述の直接描画露光法では、従来のフォトマスクを介した露光方法に用いる感光性樹脂組成物と同程度の感度の組成物を使用すると、一般的には多くの露光時間が必要となる。そのため、露光装置側の照度を上げることや感光性樹脂組成物の感度を上げることが必要となる。
【0008】
また、感光性樹脂組成物は、上述の感度に加えて解像度及びレジストの剥離特性にも優れていることが重要である。感光性樹脂組成物が解像度に優れたレジストパターンを提供できれば、回路間の短絡や断線を十分に低減することが可能となる。また、感光性樹脂組成物が、剥離特性に優れたレジストを形成可能であると、レジストの剥離時間を短縮化することによりレジストパターンの形成効率が向上し、また、レジストの剥離片の大きさを小さくすることによりレジストの剥離残りが少なくなり、回路形成の歩留まりが向上する。このような要求に対して特定のバインダーポリマー、光重合開始剤などを用いた、優れた感度、解像度及びレジスト剥離特性の感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−234995号公報
【特許文献2】特開2005−122123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の感光性樹脂組成物は、解像度及びレジスト剥離特性がまだ十分ではなかった。
【0011】
そこで、本発明は、解像度及びレジスト剥離特性の向上に十分効果のある感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため、バインダーポリマーの組成に着目して鋭意検討を行った。その結果、特定構造のバインダーポリマーを用いることにより、解像度及びレジスト剥離特性の向上に十分効果のある感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(A)下記一般式(I)で表される2価の基と、下記一般式(II)で表される2価の基と、下記一般式(III)で表される2価の基と、下記一般式(IV)で表される2価の基と、を有し、重量平均分子量が20000〜50000であるバインダーポリマー、(B)光重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物である。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


ここで、式(I)、式(II)、式(III)、及び式(IV)中、R,R,R,及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、OH基、又はハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、m又はnはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、m又はnが2〜5のとき、複数のR又はRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)成分のような特定構造のバインダーポリマーを用いることによって、上述のような解像度及びレジスト剥離特性の向上に十分効果が得られると本発明者らは考えている。また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を含有することにより、優れた感度を有している。
【0015】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマーは、その総量100質量部に対して、一般式(I)で表される2価の基を10〜60質量部、一般式(II)で表される2価の基を10〜60質量部、一般式(III)で表される2価の基を10〜60質量部、一般式(IV)で表される2価の基を1質量部以上15質量部未満有する。これにより、感光性樹脂組成物の解像度及びレジスト剥離特性がさらに向上する。
【0016】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(C)光重合開始剤がヘキサアリールビイミダゾール化合物を有することが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の感度及びレジストの密着性が向上する。
【0017】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(D)増感色素をさらに含有することが好ましい。これにより、特定の波長範囲内にピークを有する光で露光する場合において、その特定の波長範囲付近に極大吸収をもたせることができ、感光性樹脂組成物の感度が高められる。
【0018】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(E)アミン系化合物をさらに含有することが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の感度がさらに高められる。
【0019】
また、本発明は、支持フィルムと、当該支持フィルム上に形成された上記感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントである。この支持フィルムによれば、上記感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層を備えているので、直接描画露光法によりレジストパターンを形成する場合でも、十分な解像度で行うことが可能である。また、レジストの剥離特性の向上にも十分効果がある。
【0020】
また、本発明は、回路形成用基板上に、上記感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層を積層する積層工程、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程、及び感光性樹脂組成物層が積層された回路形成用基板から感光性樹脂組成物層の露光部以外の部分を除去する現像工程を有するレジストパターンの形成方法である。このレジストパターンの形成方法によれば、上記感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層を用いてレジストパターンを形成しているので、露光時間の短い直接描画露光法によっても、十分な解像度のレジストパターンを形成することができる。また、レジストの剥離特性の向上にも十分効果がある。
【0021】
また、本発明は、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板をエッチング又はめっきして導電パターンを形成する工程を有するプリント配線板の製造方法である。このプリント配線板の製造方法によれば、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板を用いているので、高密度な配線を形成できると共に、断線及び短絡の十分抑制されたプリント配線板を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、解像度及びレジスト剥離特性の向上に十分効果のある感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)上記一般式(I)で表される2価の基(以下、「構造単位」ともいう)と、上記一般式(II)で表される2価の基と、上記一般式(III)で表される2価の基と、上記一般式(IV)で表される2価の基と、を有するバインダーポリマー、(B)光重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含有する。
【0026】
まず、(A)成分であるバインダーポリマーについて説明する。
【0027】
(A)バインダーポリマーは、上記一般式(I)中、Rが水素原子又はメチル基を示し、Rが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、OH基又はハロゲン原子を示し、mが0〜5の整数を示すものである。一般式(I)で表される構造単位を与える重合性単量体としては、スチレン又はスチレン誘導体が挙げられる。なお、本発明において、「スチレン誘導体」とは、スチレンにおける水素原子が置換基(アルキル基などの有機基やハロゲン原子など)で置換されたものをいう。スチレン誘導体としては、例えば、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0028】
また、上記一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、OH基又はハロゲン原子を示し、mは0〜5の整数を示す。一般式(II)で表される構造単位を与える重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸ベンジル又は(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体が挙げられる。(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸4−メチルベンジルなどが挙げられる。
【0029】
また、上記一般式(III)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。一般式(III)で表される構造単位を与える重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0030】
また、上記一般式(IV)中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、m又はnはそれぞれ独立に炭素数0〜5の整数を示す。剥離時間を短くできる及び解像度を向上できる観点から、Rは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1のアルキル基(メチル基)がより好ましい。一般式(IV)で表される構造単位を与える重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(V)で表される化合物などが挙げられる。
CH=C(R)−COOR (V)
【0032】
ここで、上記一般式(V)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示す。また、Rで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。上記一般式(V)で表される重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステルなどが挙げられる。これらの重合性単量体は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0033】
(A)成分であるバインダーポリマーにおいて、上記一般式(I)で表される構造単位の含有割合は、(A)成分の総量100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、15〜55質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましく、20〜40質量部であることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層の回路形成用基板に対する密着性及びレジスト剥離特性を共に良好にすることができる。
【0034】
また、上記一般式(II)で表される構造単位の含有割合は、(A)成分の総量100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、15〜55質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましく、25〜45質量部であることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層の回路形成用基板に対する密着性及びレジスト剥離特性を共に良好にすることができる。
【0035】
また、上記一般式(III)で表される構造単位の含有割合は、(A)成分の総量100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、15〜50質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることがさらに好ましく、25〜35質量部であることが特に好ましい。これにより、レジスト剥離特性及び現像性を共に良好にすることができる。
【0036】
また、上記一般式(IV)で表される構造単位の含有割合は、(A)成分の総量100質量部に対して、1質量部以上15質量部未満であることが好ましく、2〜13質量部であることがより好ましく、4〜12質量部であることがさらに好ましく、5〜10質量部であることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層の回路形成用基板に対する密着性及びレジスト剥離特性を共に良好にすることができる。
【0037】
また、(A)成分であるバインダーポリマーにおいて、上記一般式(I)で表される構造単位及び上記一般式(II)で表される構造単位の含有割合が、それぞれ10質量部未満では解像性が劣る傾向があり、それぞれ60質量部を超えると剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向がある。また、上記一般式(III)で表される構造単位の含有割合が、10質量部未満ではアルカリ溶解性が劣ると共に、剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向があり、60質量部を超えると解像性が低下する傾向がある。また、上記一般式(IV)で表される構造単位の含有割合が、1質量部未満では剥離性が低下する傾向があり、15質量部以上では解像性が低下する傾向がある。
【0038】
このバインダーポリマーを用いて感光性樹脂組成物を調製する場合、1種類のバインダーポリマーを単独で使用してもよく、2種類以上のバインダーポリマーを任意に組み合わせて使用してもよい。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上の(異なる繰り返し単位を構成成分として含む)バインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーなどが挙げられる。また、特開平11−327137号公報に記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
【0039】
(A)バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(標準ポリスチレンを用いた検量線による換算)。この測定法によれば、バインダーポリマーのMwは、5000〜150000であることが好ましく、10000〜100000であることがより好ましく、20000〜50000であることが特に好ましい。Mwが5000未満では耐現像液性が低下する傾向があり、150000を超えると現像時間が長くなる傾向がある。
【0040】
また、(A)バインダーポリマーの分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。分散度が3.0を超えると密着性及び解像度が低下する傾向がある。
【0041】
また、(A)バインダーポリマーには、例えば、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂などを併用することができる。また、これらの樹脂は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0042】
本発明のバインダーポリマーは、例えば、重合性単量体を常法によりラジカル重合させることにより製造することができる。
【0043】
上述の(A)バインダーポリマーは、上記一般式(I)〜(IV)で表される構造単位以外の構造単位を含んでいてもよい。上述の(A)バインダーポリマーは、上記一般式(I)〜(IV)で表される構造単位のみを有していることが最も好ましいが、本発明の目的を阻害しない程度において、それ以外の構造単位を、(A)成分の総量に対して1〜10質量部程度有していてもよい。この場合、上記一般式(I)〜(IV)で表される構造単位以外の構造単位を与える重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテルなどのビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピルなどのマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
本発明における(A)バインダーポリマーは、アルカリ溶液を用いてアルカリ現像を行う場合の現像性の見地から、カルボキシル基を有するポリマーの1種又は2種以上からなることが好ましい。このような(A)バインダーポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸その他のカルボキシル基を有する重合性単量体と、それ以外の重合性単量体とを常法によりラジカル重合させることにより製造することができる。
【0045】
(A)バインダーポリマーの酸価は、80〜250mgKOH/gであることが好ましく、100〜220mgKOH/gであることがより好ましく、150〜210mgKOH/gであることが特に好ましい。この酸価が80mgKOH/g未満では現像時間が長くなる傾向があり、250mgKOH/gを超えると光硬化したレジストの耐現像液性が低下する傾向がある。また、現像工程として溶剤現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体を少量に調製することが好ましい。
【0046】
また、(A)バインダーポリマーは必要に応じて感光性を有する特性基をその分子内に有していてもよい。
【0047】
(A)成分のバインダーポリマーの配合量としては、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、35〜65質量部であることがより好ましく、40〜60質量部であることが特に好ましい。この配合量が30質量部未満では良好な形状が得られない傾向があり、70質量部を超えると良好な感度や解像性を得られない傾向がある。(A)成分であるバインダーポリマーは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
次に、(B)成分である光重合性化合物について説明する。
【0049】
(B)成分である光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物などのウレタンモノマー、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート(「ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート」ともいう)、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0050】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。ここで、「EO」とはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。また、「PO」とはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。
【0051】
上記ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンなどが挙げられる。上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシナノエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0052】
2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業(株)製、商品名)又はFA−321M(日立化成工業(株)製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンの1分子内のエチレンオキサイド基の数は4〜20であることが好ましく、8〜15であることがより好ましい。これらの化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位に
OH基を有する(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなど)との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、UA−11(新中村化学工業(株)製、商品名)が挙げられる。また、上記EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、UA−13(新中村化学工業(株)製、商品名)が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレートが挙げられる。ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、M−114(東亞合成(株)製、商品名)が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0055】
上記フタル酸系化合物としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロルオキシアルキル−o−フタレートなどが挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0056】
さらに、本発明の(B)成分には、硬化膜の可とう性を向上できる観点から、分子内にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。この(メタ)アクリレートは、分子内のアルキレングリコール鎖として、エチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖(n−プロピレングリコール鎖又はイソプロピレングリコール鎖)の双方を有していれば特に制限はない。また、この(メタ)アクリレートは、さらにn−ブチレングリコール鎖、イソブチレングリコール鎖、n−ペンチレングリコール鎖、ヘキシレングリコール鎖、これらの構造異性体などである炭素数4〜6程度のアルキレングリコール鎖を有していてもよい。
【0057】
上記エチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖が複数である場合、複数のエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖は各々連続してブロック的に存在してもよく、ランダムに存在してもよい。また、上記イソプロピレングリコール鎖において、プロピレン基の2級炭素が酸素原子に結合していてもよく、1級炭素が酸素原子に結合していてもよい。
【0058】
これら(B)成分中の、少なくとも一つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、分子内にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、例えば、下記一般式(VI):
【化5】


で表される化合物、下記一般式(VII):
【化6】


で表される化合物、及び下記一般式(VIII):
【化7】


で表される化合物などが挙げられる。ここで、式(VI)、式(VII)及び式(VIII)中、R10,R11,R12,R13,R14,及びR15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、EOはエチレングリコール鎖を示し、POはプロピレングリコール鎖を示し、m〜m及びn〜nはそれぞれ独立に1〜30の整
数を示す。これらの化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0059】
上記一般式(VI)〜(VIII)における炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が挙げられる。
【0060】
また、上記一般式(VI)〜(VIII)におけるエチレングリコール鎖の繰り返し数の総数(m+m、m及びm)は1〜30の整数であり、1〜10の整数であることが好ましく、4〜9の整数であることがより好ましく、5〜8の整数であることが特に好ましい。この繰り返し数が30を超えるとテント信頼性及びレジスト形状が悪化する傾向がある。
【0061】
また、上記一般式(VI)〜(VIII)におけるプロピレングリコール鎖の繰り返し数の総数(n、n+n及びn)は1〜30の整数であり、5〜20の整数であることが好ましく、8〜16の整数であることがより好ましく、10〜14の整数であることが特に好ましい。この繰り返し数が30を超えると解像度が悪化し、スラッジが発生する傾向がある。
【0062】
上記一般式(VI)で表される化合物の具体例としては、例えば、R10=R11=メチル基、m+m=4(平均値)、n=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業(株)製、商品名:FA−023M)などが挙げられる。また、上記一般式(VII)で表される化合物の具体例としては、例えば、R12=R13=メチル基、m=6(平均値)、n+n=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業(株)製、商品名:FA−024M)などが挙げられる。さらに、上記一般式(VIII)で表される化合物の具体例としては、例えば、R14=R15=水素原子、m=1(平均値)、n=9(平均値)であるビニル化合物(新中村化学工業(株)製、サンプル名:NKエステルHEMA−9P)などが挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
(B)成分の光重合性化合物の配合量としては、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して30〜70質量部であることが好ましく、35〜65質量部であることがより好ましく、40〜60質量部であるのが特に好ましい。この配合量が30質量部未満では良好な感度や解像性が得られない傾向があり、70質量部を超えると良好な形状を得られない傾向がある。
【0064】
(B)成分である光重合性化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。この光重合性化合物は、耐めっき性及び密着性を向上する観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物又は分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。また、感度及び解像度を向上する観点からは、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0065】
また、(B)成分である光重合性化合物は、レジストの剥離片の大きさを小さくし、剥離時間を短縮する観点から、分子内に一つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物を含むことが好ましく、分子内に一つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物と、分子内に二つ以上の重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物とを組み合わせて用いることがより好ましい。この場合、例えば、分子内に一つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物としては、フェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレンオキシ−ポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート、オクチルフェノキシヘキサエチレンオキシ(メタ)アクリレート、オクチルフェノキシヘプタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、オクチルフェノキシオクタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、オクチルフェノキシノナエチレンオキシ(メタ)アクリレート、オクチルフェノキシデカエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ−ポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基を有するフタル酸誘導体などが挙げられる。また、分子内に二つ以上の重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、上記一般式(VI)〜(VIII)のポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート、分子内にウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート、ビス(アクリルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸グリシジルエステルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。
【0066】
また、解像度、剥離時間及び露光裕度をバランスよく向上できる観点から分子内に一つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物を1種類と、分子内に二つ以上の重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物を2種類と、を組み合わせて用いることが特に好ましい。この場合、分子内に一つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物としては、例えば、フェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基を有するフタル酸誘導体のいずれか1種類を用いることができる。また、分子内に二つ以上の重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性不飽和化合物としては、例えば、上記一般式(VI)〜(VIII)のポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート及びEO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種類の化合物と、ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物と、を組み合わせて用いることができる。
【0067】
次に(C)成分である光重合開始剤について説明する。
【0068】
(C)成分である光重合開始剤は、例えば、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1などの芳香族ケトン、アルキルアントラキノンなどのキノン類、ベンゾインアルキルエーテルなどのベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾインなどのベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタールなどのベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体などの2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンなどのアクリジン誘導体などが挙げられる。
【0069】
また、上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体では、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、光重合開始剤は、密着性及び感度の見地から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体であるヘキサアリールビイミダゾール化合物を用いることが好ましい。これら光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0070】
また、(C)成分である光重合開始剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、2〜6質量部であることがより好ましく、3.5〜5質量部であることが特に好ましい。この配合量が0.1質量部未満では良好な感度や解像性が得られ難くなる傾向があり、10質量部を超えると所望通りの良好な形状のレジストパターンを得られない傾向がある。(C)成分である光重合開始剤は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述の(A)〜(C)成分に加えて、(D)増感色素及び/又は(E)アミン系化合物を含有すると好ましい。
【0072】
本発明における(D)成分である増感色素は、露光に用いる活性光線の吸収波長を有効に利用できるものであり、極大吸収波長が370〜420nmである化合物が好ましい。本発明では、このような増感色素を用いることにより、直接描画露光法の露光光に対して十分高い感度を有することが可能となる。増感色素の極大吸収波長が370nm未満であると、直接描画露光光に対する感度が低下する傾向があり、420nmを超えると、イエロー光環境下でも安定性が低下する傾向がある。
【0073】
増感色素としては、例えば、ピラゾリン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、トリアゾール類、スチルベン類、トリアジン類、チオフェン類、ナフタルイミド類などが挙げられる。増感色素は、解像度、密着性及び感度を向上できる観点から、アントラセン類を含むことが好ましい。また、増感色素の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜2質量部であることが特に好ましい。この配合量が0.01質量部未満では良好な感度や解像性が得られない傾向があり、10質量部を超えると所望通りの良好な形状のレジストパターンを得られない傾向がある。(D)成分である増感色素は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0074】
(E)成分であるアミン系化合物としては、感光性樹脂組成物の感度を高めることが可能な、分子内にアミノ基を有する物であれば特に限定されない。その具体例としては、例えば、ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]メタン、ロイコクリスタルバイオレットなどが挙げられる。アミン系化合物の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜2質量部であることが特に好ましい。この配合量が0.01質量部未満では良好な感度が得られない傾向があり、10質量部を超えるとフィルム形成後、(E)成分が異物として析出しやすくなる傾向がある。(E)成分であるアミン系化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物など)、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーンなどの染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレットなどの光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミドなどの可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対してそれぞれ0.01〜20質量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0076】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液としてもよい。この溶液を感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を形成するための塗布液として使用することができる。
【0077】
また、上記塗布液は、感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を形成させるために用いる他に、例えば、金属板の表面上に、液状レジストとして塗布して乾燥後、保護フィルムを被覆して用いてもよい。金属板の材質としては、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレスなどの鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金などが挙げられる。
【0078】
次に、本発明の感光性エレメントについて説明する。図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される感光性エレメント1は、支持フィルム2と、支持フィルム2上に形成された上記感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層3と、感光性樹脂組成物層3上に積層された保護フィルム4とで構成される。
【0079】
支持フィルム2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとして、例えば、王子製紙(株)製アルファンMA−410、E−200C(以上、商品名)、信越フィルム(株)製などのポリプロピレンフィルム、帝人(株)製PSシリーズ(例えば、商品名:PS−25)などのポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられるがこれに限られない。
【0080】
また、支持フィルム2は、厚さが1〜100μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましい。この厚さが1μm未満では現像前の支持フィルム剥離の際に支持フィルムが破れやすくなる傾向があり、100μmを超えると解像度が低下する傾向がある。なお、支持フィルム2は、一つを感光性樹脂組成物層の支持体として、他の一つを感光性樹脂組成物の保護フィルムとして感光性樹脂組成物層の両面に積層して使用してもよい。
【0081】
感光性樹脂組成物層3は、上記感光性樹脂組成物を上述したような溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液(塗布液)とした後に、この溶液を支持フィルム2上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータなどを用いた公知の方法で行うことができる。乾燥は70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。また、感光性樹脂組成物中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0082】
また、感光性樹脂組成物層3の厚さは、感光性エレメントの用途により異なるが、乾燥後の厚さで1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。この厚さが1μm未満では工業的に塗工困難な傾向があり、100μmを超えると本発明の効果が小さくなり、接着力、解像度が低下する傾向がある。
【0083】
また、感光性樹脂組成物層3は、波長405nmの光に対する透過率が5〜75%であることが好ましく、7〜60%であることがより好ましく、10〜40%であることが特に好ましい。この透過率が5%未満では密着性が劣る傾向があり、75%を超えると解像度が劣る傾向がある。上記透過率は、UV分光計により測定することができ、上記UV分光計としては、(株)日立製作所製228A型Wビーム分光光度計(商品名)などが挙げられる。
【0084】
保護フィルム4は、感光性樹脂組成物層3及び支持フィルム2間の接着力よりも、感光性樹脂組成物層3及び保護フィルム4間の接着力の方が小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。なお、「フィッシュアイ」とは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法などによりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物などがフィルム中に取り込まれたものである。
【0085】
保護フィルム4としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとして、例えば、王子製紙(株)製アルファンMA−410、E−200C(以上、商品名)、信越フィルム(株)製などのポリプロピレンフィルム、帝人(株)製PSシリーズ(例えば、商品名:PS−25)などのポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられるがこれに限られたものではない。
【0086】
保護フィルム4は、厚さが1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。この厚さが1μm未満ではラミネートの際、保護フィルムが破れる傾向があり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0087】
また、本発明の感光性エレメント1は、さらにクッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層などの中間層などを有していてもよい。また、得られた感光性エレメント1は、シート状、又は巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。なお、この際支持フィルム1が最も外側になるように巻き取られることが好ましい。上記ロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。上記巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)などのプラスチックなどが挙げられる。
【0088】
次に、本発明のレジストパターンの形成方法について説明する。
【0089】
本発明のレジストパターンの形成方法は、回路形成用基板上に、上記感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、回路形成用基板から露光部以外の部分における感光性樹脂組成物を除去する現像工程とを少なくとも含んでいる。なお、「回路形成用基板」とは、絶縁層と、絶縁層上に形成された導体層とを備えた基板をいう。また、回路形成用基板は、多層化され内部に配線が形成されていてもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0090】
積層工程における回路形成用基板上への感光性樹脂組成物層の積層方法としては、以下の方法が挙げられる。まず、保護フィルムを感光性樹脂組成物層から徐々に剥離させ、これと同時に徐々に露出してくる感光性樹脂組成物層の面の部分を回路形成用基板の回路を形成する面に密着させる。そして、感光性樹脂組成物層を加熱しながら感光性樹脂組成物層を回路形成用基板に圧着することにより積層する。なお、この作業は、密着性及び追従性向上の見地から減圧下で積層することが好ましい。感光性エレメントの積層は、感光性樹脂組成物層及び/又は回路形成用基板を70〜130℃に加熱することが好ましく、圧着圧力は、0.1〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm程度)とすることが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光性樹脂組成物層を上述のように70〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ないが、積層性をさらに向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0091】
露光工程における露光部を形成する方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像上に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。この際、感光性樹脂組成物層上に存在する支持フィルムが活性光線を透過する場合には、支持フィルムを通して活性光線を照射することができ、支持フィルムが遮光性である場合には、支持フィルムを除去した後に感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する。また、レーザ直接描画露光法やDLP(Digital Light Processing)露光法などの直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0092】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザなどのガスレーザ、YAGレーザなどの固体レーザ、半導体レーザなどの紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。
【0093】
現像工程における露光部以外の部分を除去する方法としては、まず、感光性樹脂組成物層上に支持フィルムが存在している場合には、支持フィルムを除去し、その後、ウェット現像、ドライ現像などで露光部以外の部分を除去して現像する方法が挙げられる。これによりレジストパターンが形成される。
【0094】
例えば、ウェット現像の場合は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液などの感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、例えば、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピングなどの公知の方法により現像する。現象方式は、解像度向上のためには高圧スプレー方式が最も適している。また、必要に応じて2種以上の現像方法を併用してもよい。
【0095】
現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なアルカリ性水溶液などが用いられる。上記アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物などの水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩などの炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどのアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムなどのアルカリ金属ピロリン酸塩、ホウ砂などが用いられる。
【0096】
また、現像に用いる上記アルカリ性水溶液としては、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)の希薄溶液などが好ましい。また、このアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調整される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤などを添加してもよい。
【0097】
上記水系現像液としては、水又はアルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる現像液が挙げられる。ここでアルカリ性水溶液の塩基としては、先に述べた物質以外に、例えば、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2ーアミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオール、1、3−ジアミノプロパノール−2、モルホリンなどが挙げられる。現像液のpHは、レジストの現像が十分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。
【0098】
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。有機溶剤の濃度は、通常、2〜90質量%であることが好ましく、その温度は、現像性にあわせて調整することができる。また、水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤などを少量添加することもできる。
【0099】
また、有機溶剤を単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらの有機溶剤系現像液は、引火防止のため、1〜20質量%の範囲で水を添加することが好ましい。
【0100】
現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10J/cm程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化して用いてもよい。
【0101】
次に、本発明のプリント配線板の製造方法について説明する。
【0102】
本発明のプリント配線板の製造方法は、上記本発明のレジストパターンの形成方法により、レジストパターンの形成された回路形成用基板をエッチング又はめっきして導体パターンを形成するものである。
【0103】
回路形成用基板のエッチング及びめっきは、形成されたレジストパターンをマスクとして、回路形成用基板の導体層などに対して行われる。エッチングを行う場合のエッチング液としては、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素エッチング液が挙げられ、これらの中では、エッチファクタが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが好ましい。また、めっきを行う場合のめっき方法としては、例えば、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっきなどの銅めっき、ハイスローはんだめっきなどのはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケルなどのニッケルめっき、ハード金めっき、ソフト金めっきなどの金めっきなどが挙げられる。
【0104】
エッチング又はめっきの終了後、レジストパターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液などが用いられる。剥離方式としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式などが挙げられ、浸漬方式、スプレー方式を単独で使用してもよいし、併用してもよい。以上によりプリント配線板が得られる。
【0105】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0106】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0107】
(バインダーポリマー((A)成分)の合成)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比3:2のメチルセロソルブ及びトルエンの配合物450gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、80℃まで加熱した。一方、共重合単量体としてメタクリル酸150g、メタクリル酸メチル25g、メタクリル酸ベンジル125g及びスチレン200gと、アゾビスイソブチロニトリル9.0gとを混合した溶液(以下、「溶液a」という)を用意し、予め用意した質量比3:2のメチルセロソルブ及びトルエンの配合物に、溶液aを4時間かけて滴下した後、80℃で撹拌しながら2時間保温した。さらに、質量比3:2のメチルセロソルブ及びトルエンの配合物100gに、アゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解した溶液を10分かけて滴下した。滴下後の溶液を撹拌しながら80℃で3時間保温した後、30分間かけて90℃に加温した。90℃で2時間保温した後、冷却してバインダーポリマー(A−1)を得た。
【0108】
バインダーポリマー(A−1)の不揮発分(固形分)は47.8質量%であり、重量平均分子量は30,000であった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
ポンプ:日立L−6000型((株)日立製作所製、商品名)
カラム:Gelpack GL−R420 + Gelpack GL−R430 + Gelpack GL−R440(計3本)(以上、日立化成工業(株)製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立L−3300型RI((株)日立製作所製、商品名)
【0109】
また、上述したバインダーポリマー(A−1)の合成方法と同様の方法で、下記表1に示される組成となるように、バインダーポリマー(A−2)〜(A−10)を合成した。
【表1】

【0110】
(感光性樹脂組成物の調製)
上記バインダーポリマー(A−1)〜(A−10)と、以下の材料とを表2に示される質量比で配合し、実施例1〜6及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物の溶液を調製した。<光重合性化合物((B)成分)>
B−1:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成工業(株)製、商品名:FA−321M)
B−2:上記一般式(VII)で表される化合物であって、R12及びR13がそれぞれメチル基、m=6(平均値)、n+n=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業(株)製、商品名:FA−024M)
B−3:4−ノルマルノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−114)
<光重合開始剤((C)成分)>
C−1:2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾール(Hampford社製、商品名:BCIM)
<増感色素((D)成分)>
D−1:9,10−ジブトキシアントラセン(川崎化成工業(株)製、商品名:DBA、吸収極大を示す波長[λn]=368nm,388nm,410nm)
<(E)発色剤(アミン化合物)>
E−1:ロイコクリスタルバイオレット(山田化学(株)製)
<染料>
マラカイトグリーン(大阪有機化学工業(株)製)
<溶剤>
アセトン
トルエン
メタノール
【表2】

【0111】
(感光性エレメントの作製)
得られた各感光性樹脂組成物の溶液を、支持フィルムとなる16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布した。その後、70℃及び110℃の熱風対流式乾燥機を用いて乾燥して、乾燥後の膜厚が25μmの感光性樹脂組成物層を形成した。続いて、感光性樹脂組成物層上に保護フィルムをロール加圧により積層し、各実施例1〜6及び比較例1〜5に係る感光性エレメントを得た。
【0112】
(試験片の作製)
続いて、銅箔(厚さ35mm)を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(日立化成工業(株)製、商品名:MCL−E−67)の銅表面を#600相当のブラシを持つ研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥させ、銅張積層板(基板)を得た。その後、銅張積層板を80℃に加温した後、銅張積層板上に上記各感光性エレメントの保護フィルムを除去しながら、各感光性樹脂組成物層が銅張積層板の表面上に密着するようにして、120℃で4kgf/cmの圧力下でラミネート(積層)し、試験片を作製した。
【0113】
(特性評価)
<光感度>
各感光性エレメントが積層された銅張積層板を冷却し23℃になった時点で、支持フィルムに、濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレットの大きさ20mm×187mm、各ステップの大きさが3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツールを密着させた。405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする日立ビアメカニクス(株)製直描機DE−1AH(商品名)を使用して、50mJ/cmの露光量でフォトツール及び支持フィルムを介して感光性樹脂組成物層に露光(描画)した。なお、照度の測定は405nm対応プローブを適用した紫外線照度計(ウシオ電機(株)製、商品名:UIT−150)を用いて行った。
【0114】
続いて、支持フィルムを剥離し、30℃で1質量%炭酸ナトリウム水溶液を24秒間スプレーし、感光性樹脂組成物層の未露光部分を除去し現像した。その後、銅張積層板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数を測定することにより、感光性樹脂組成物の光感度を評価した。光感度の評価は、ステップタブレットの段数で示され、このステップタブレットの段数が高いほど、光感度が高いことを示す。得られた結果を表4に示す。
【0115】
<解像度>
解像度は、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅6/6〜30/30(単位:mm)の配線パターンを有するフォトツールを使用し露光した。ここで、解像度は、露光後の現像によって形成されたレジストパターンにおいて、未露光部がきれいに除去された部分におけるライン幅間のスペース幅のうち最も小さい値(単位:μm)を解像度の指標とした。解像度の評価は数値が小さいほど良好な値である。得られた結果を表4に示す。
【0116】
<レジスト形状>
現像後のレジスト形状は、走査型電子顕微鏡(商品名:日立走査型電子顕微鏡S−500A)を用いて観察した。レジスト形状は矩形に近いことが望ましい。
【0117】
<剥離性>
剥離性は、以下の方法で評価した。まず、各実施例及び比較例に係る感光性樹脂組成物層を銅張積層板上に形成し、各感光性樹脂組成物層を露光し現象して、40mm×50mmの大きさの光硬化膜を作製した。そして、3%水酸化ナトリウム水溶液を用いて剥離を行った。剥離性の評価は、光硬化膜が銅張積層板上から剥離し終えるときの時間を剥離時間とした。また、剥離完了後の剥離片のサイズを目視にて観察した。表3に剥離プロセスの条件及び剥離片のサイズの指標について示す。得られた結果を表4に示す。
【表3】


【表4】

【0118】
<評価結果>
表4に示されるように、各実施例1〜6は、解像度が10μmと高解像度であり、剥離時間が適度に短く、また、剥離片サイズも小さく、解像度と剥離性のバランスが取れていた。一方、比較例1,2,5では剥離性が良好であるものの解像度が低かった。また、比較例3,4では高解像度であるものの剥離時間が長く、剥離片サイズが大きかった。以上のように、本発明に係る感光性樹脂組成物の効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、解像度及びレジスト剥離特性の向上に十分効果のある感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0120】
1…感光性エレメント、2…支持フィルム、3…感光性樹脂組成物層、4…保護フィルム。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表される2価の基と、下記一般式(II)で表される2価の基と、下記一般式(III)で表される2価の基と、下記一般式(IV)で表される2価の基と、を有し、重量平均分子量が20000〜50000であるバインダーポリマー、
(B)光重合性化合物、及び
(C)光重合開始剤、
を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】



【化2】



【化3】



【化4】



[式(I)、式(II)、式(III)、及び式(IV)中、R,R,R,及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、OH基、又はハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、m又はnはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、m又はnが2〜5のとき、複数のR又はRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(A)バインダーポリマーは、その総量100質量部に対して、前記一般式(I)で表される2価の基を10〜60質量部、前記一般式(II)で表される2価の基を10〜60質量部、前記一般式(III)で表される2価の基を10〜60質量部、前記一般式(IV)で表される2価の基を1質量部以上15質量部未満有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)光重合開始剤がヘキサアリールビイミダゾール化合物を有する請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(D)増感色素をさらに含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(E)アミン系化合物をさらに含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
支持フィルムと、当該支持フィルム上に形成された請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。
【請求項7】
回路形成用基板上に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂組成物層を積層する積層工程、前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程、及び前記感光性樹脂組成物層が積層された回路形成用基板から前記感光性樹脂組成物層の前記露光部以外の部分を除去する現像工程を有するレジストパターンの形成方法。
【請求項8】
請求項7記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板をエッチング又はめっきして導体パターンを形成する工程を有するプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−198573(P2012−198573A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142488(P2012−142488)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2008−550999(P2008−550999)の分割
【原出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】