説明

感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造方法、並びに、プリント配線板及びその製造方法

【課題】直接描画露光法に用いられる両波長に対応可能で、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像度を向上させることが可能な感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】感光性樹脂組成物をバインダーポリマー、ペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤及び下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるピラゾリン化合物の少なくとも1種を含んで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造方法、並びに、プリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の製造分野においては、エッチングやめっき等に用いられるレジスト材料としての感光性樹脂組成物や、この感光性樹脂組成物を含有する層(以下、「感光性樹脂層」という)を支持フィルム上に形成し、感光性樹脂層上に保護フィルムを配置させた構造を有する感光性エレメント(積層体)が広く用いられている。
【0003】
プリント配線板は、上記感光性エレメントを用いて、例えば以下の手順で製造されている。すなわち、まず感光性エレメントの感光性樹脂層を銅張り積層板などの回路形成用基板上にラミネートする。このとき、感光性樹脂層の支持フィルムに接触している面(以下、感光性樹脂層の「下面」という)とは反対側の面(以下、感光性樹脂層の「上面」という)が、回路形成用基板の回路を形成する面に密着するようにする。そのため、保護フィルムを感光性樹脂層の上面に配置している場合、このラミネートの作業を保護フィルムを剥がしながら行われる。また、ラミネートは、感光性樹脂層を下地の回路形成用基板に加熱圧着することにより行われる(常圧ラミネート法)。
【0004】
次に、マスクフィルムなどを通して感光性樹脂層をパターン露光して光硬化部を形成する。このとき、露光前又は露光後の何れかのタイミングで支持フィルムを剥離する。その後、感光性樹脂層の未露光部を現像液で溶解又は分散除去する。次に、光硬化部をマスクとしてエッチング処理又はめっき処理を施してパターンを形成させ、最終的に光硬化部分を剥離除去する。
【0005】
ところで、上述のパターン露光の手法として、マスクフィルムを通さずにデジタルデータを用いて活性光線を画像状に直接照射するレーザ直接描画法が実用化されている。直接描画法に用いられる光源としては、安全性や取扱い性等の面から、YAGレーザ及び半導体レーザ等が使用され、最近では、長寿命で高出力な窒化ガリウム系青色レーザ等を使用した技術が提案されている。
【0006】
さらにプリント配線板における高精細化、高密度化に伴い、従来よりもファインパターンが形成可能なDLP(Digital Light Processing)露光法と呼ばれる直接描画法が取り入れられている。一般的に、DLP露光法では青紫色半導体レーザを光源とした波長390〜430nmの活性光線が使用される。
【0007】
また、主に汎用のプリント配線板において少量多品種に対応可能な、YAGレーザを光源とした波長355nmのポリゴンマルチビームを使用した露光法も用いられている。
【0008】
このような各種のパターン露光方法の開発に伴い、各露光波長に対応するため、感光性樹脂組成物には様々な増感剤の適用が検討されている。
【0009】
例えば増感剤として特定のアミン化合物を添加することで感度を高める手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また青紫色レーザによる直接描画に用いるのに好適で、黄色灯下でのセーフライト性に優れた青紫色レーザ感光性画像形成材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
さらに特開平4−223470号公報等に記載のピラゾリン化合物の問題点(溶解性)を改善した特定のピラゾリン化合物(1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(p−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン)を含む感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
さらに405±10nmの波長を有する露光光源に対する感度、解像度に優れ、テンティング性の良好な感光性樹脂組成物として、上記のピラゾリン化合物と、ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレートを併用する感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0013】
さらに現像後解像性が良好で、現像液分散安定性に優れ凝集物を発生せず、硬化膜柔軟性に優れテンティング性、良好なエッチング液耐性を有する感光性樹脂組成物として、共重合成分にベンジル(メタ)アクリレートを導入したバインダーポリマーと、特定の置換基を有するピラゾリン化合物を用いた感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0014】
ところで、直接描画法の光源としては、大きく分けて、i線(365nm)付近の波長を用いたものと、h線(405nm)付近の波長を用いたものに分けることができる。近年の直接描画用感光性樹脂組成物においては、これら両波長に対して使用可能であるという要求が高まっている。
【0015】
上述した特許文献1〜5は、i線またはh線のどちらか一方の波長に対しては良好な特性を有する感光性樹脂組成物を開示しているが、両波長に対応した感光性樹脂組成物という点においては改善が要求されていた。
【0016】
これに関して365nm、405nmのどちらの光源であっても、感度及び解像度に優れた感光性樹脂組成物として、特定の置換基(炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基)を有するピラゾリン化合物を含む感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−301996号公報
【特許文献1】特開2005−107191号公報
【特許文献2】特開2005−215142号公報
【特許文献4】特開2007−101940号公報
【特許文献5】特開2007−101941号公報
【特許文献6】特開2007−279381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献3及び特許文献4に記載の感光性樹脂組成物では、感度、解像度、密着性、及びテント信頼性において改善の余地があった。
さらに特許文献6に記載の感光性樹脂組成物においては、感度、解像度、密着性、及びテント信頼性において改善の余地があった。
【0019】
一方、レジストパターンにおいては、近年ますます微細化が進むなか、特にエッチング工程において十分なテント信頼性を有すると共に、L/S(ライン幅/スペース幅)=20/20(単位:μm)以下のパターン形成という高解像性を同時に満足することが要求されている。
ここでテント信頼性とは、スルーホールをレジスト膜で覆ったときに、現像処理などのレジスト剥離工程前までの段階においてレジスト膜が破断し難い性能をいう。
【0020】
また、レジストパターンを形成するための感光性樹脂層については密着性も要求されている。密着性の向上には感光性樹脂層を柔軟化することが有効であり、これにより基材の凹凸への追従性が向上する。しかしながらその結果、剥離工程でのレジストの剥離に長く時間を要することになり生産効率が低下する場合がある。また、感光性樹脂層の柔軟化は、感光性エレメントを巻き取った製品ロールの端部から感光性樹脂層が染み出す現象(エッジフュージョン)を発生させることにもなり、ラミネートロールの汚染が懸念される。
【0021】
また、感光性樹脂層の解像度を向上させるためには、感光性樹脂層の薄膜化が有効である。しかしながら、プリント配線板形成時にある程度の回路厚(銅厚等)が必要な場合、エッチング工法では、エッチング時のテント信頼性が不足しやすくなる傾向にあるため、スルーホールを被覆する部分のレジスト膜が欠落しやすくなる。よって、感光性樹脂層を薄くすることによってレジストパターンの幅を狭くし解像度を高める方法には限界がある。
【0022】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、直接描画露光法に用いられる両波長に対応可能で、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像度を向上させることが可能な感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、レジストパターンの製造方法、及びプリント配線板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第一の態様は、バインダーポリマーと、ペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤と、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるピラゾリン化合物の少なくとも1種と、を含む感光性樹脂組成物である。
【0024】
【化1】



【0025】
[式中、Rはそれぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を示す。a、b及びcはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、かつ、a、b及びcの総和は1〜6であり、a、b及びcの総和が2以上のとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0026】
本発明の第二の態様は、支持体と、前記支持体上に形成された前記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層と、を有する感光性エレメントである。
【0027】
本発明の第三の態様は、回路形成用基板上に、前記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、前記感光性樹脂層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射して、露光部を光硬化させて光硬化部を形成する露光工程と、前記感光性樹脂層の未露光部を前記回路形成用基板上から現像により除去する現像工程と、を有するレジストパターンの製造方法である。
【0028】
本発明の第四の態様は、前記レジストパターンの製造方法により光硬化部が形成された回路形成用基板を、エッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0029】
本発明の第五の態様は、前記プリント配線板の製造方法により製造されたプリント配線板である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、直接描画露光法に用いられる両波長に対応可能で、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像度を向上させることが可能な感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、レジストパターンの製造方法、及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0032】
また本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
さらに本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0033】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、バインダーポリマーと、ペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレート化合物を含むエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、光重合開始剤と、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるピラゾリン化合物の少なくとも1種を含む増感色素とを含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
【0034】
【化2】



【0035】
式中、Rはそれぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を示す。a、b及びcはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、かつ、a、b及びcの総和は1〜6であり、a、b及びcの総和が2以上のとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物は、特定のピラゾリン化合物と、ペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレートとを併用することで、i線及びh線による直接描画露光法に対応可能で、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像度を向上させることが可能となる。
【0037】
[増感色素:D成分]
感光性樹脂組成物は、上記一般式(1)又は一般式(2)で表されるピラゾリン化合物の少なくとも1種を増感色素として含む。増感色素として一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるピラゾリン化合物(以下、「特定増感剤」ともいう)と、特定の重合性化合物を組み合わせて用いることで、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像性に優れる感光性樹脂組成物を構成することができる。
【0038】
【化3】



【0039】
一般式(1)及び一般式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を示す。一般式(1)又は一般式(2)で表されるピラゾリン化合物において、Rが複数存在する場合、それぞれのRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0040】
一般式(1)中、Rのうち少なくとも1つは、炭素数3又は4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基であることが好ましく、t−ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基及びエトキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0041】
また、一般式(2)中、Rのうち少なくとも1つは、炭素数3又は4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基であることが好ましく、tert−ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基及びエトキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0042】
また、a、b及びcはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、かつ、a、b及びcの総和は1〜6である。a、b及びcはそれぞれ独立に0〜3の整数であり、かつ、a、b及びcの総和は1〜5であることが好ましく、a、b及びcはそれぞれ独立に0〜1の整数であり、かつ、a、b及びcの総和は1〜3であることがより好ましい。
【0043】
一般式(1)で表されるピラゾリン化合物としては、具体的には、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、及びこれらの位置異性体等が挙げられる。
【0044】
また、上記に限らず、1−(4−メトキシフェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン等の相異なる置換基を有する化合物、及びその位置異性体等、1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン等の一つの芳香環に同一の置換基を2種以上有する化合物、及びその位置異性体などが挙げられる。
【0045】
また一般式(2)で表されるピラゾリン化合物としては、1−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3,5−ジフェニル−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、及びこれらの位置異性体等が挙げられる。
【0046】
一般式(1)又は一般式(2)で表されるピラゾリン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ピラゾリン化合物は、市販品として例えば、日本化学工業所から入手可能である。また、特許2931693号明細書、特許2757528号明細書、特許2972373号明細書、特許3215718号明細書、特許3312756号明細書等に記載の方法で合成することができる。
【0047】
上記一般式(1)で表される化合物のなかでも、合成の容易さ及び光感度を向上させる観点からは、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリンが好ましく、合成の容易さ及び溶媒への溶解性を向上させる観点からは、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリンが好ましい。
【0048】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表されるピラゾリン化合物以外の増感色素を併せて含むことができる。
【0049】
上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表されるピラゾリン化合物以外の増感色素としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、トリアゾール類、スチルベン類、トリアジン類、チオフェン類、ナフタルイミド類、トリアリールアミン類などが挙げられる。
これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
増感色素中における、上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表されるピラゾリン化合物の含有量は、増感色素成分の総量100質量部中に、10質量部〜100質量部であることが好ましく、30質量部〜100質量部であることがより好ましく、50質量部〜100質量部であることが特に好ましい。この含有量が10質量部以上であると、より高感度化及び高解像度化しやすい傾向がある。
【0051】
増感色素の含有量は、後述するバインダーポリマー(A成分)及び重合性化合物(B成分)の総量100質量部に対して0.01質量部〜10質量部とすることが好ましく、0.05質量部〜5質量部とすることがより好ましく、0.1質量部〜3質量部とすることがさらに好ましい。この含有量が0.01質量部以上であると、光感度及び解像度がより得られやすい傾向があり、10質量部以下であると、十分に良好なレジスト形状が得られやすい傾向がある。
【0052】
[重合性化合物:B成分]
本発明の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として、ペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレート(以下、「特定重合性化合物」ともいう)の少なくとも1種を含む。ここでペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレートとは、ペンタエリスリトールに少なくとも1つのアルキレンオキシ基を付加し、更に(メタ)アクリル酸エステルとした化合物を意味する。ペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレートとしては、具体的には下記一般式(3)で表わされる化合物が好ましい。
【0053】
【化4】

【0054】
一般式(3)中、R、R、R、及びRは水素原子又はメチル基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。また、Xは炭素数が2〜4のアルキレン基であり、m+m+m+mは、1〜40である。なお、複数存在するXは、同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
上記一般式(3)で表わされる化合物は、感度及びテント信頼性に優れる点で、Xとして、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる少なくとも一方を含むことが好ましく、エチレン基のみを含有することがより好ましい。
【0056】
+m+m+mは、レジストの細線密着性、及びテント信頼性を向上させる見地から、2以上の整数であることが好ましく、4以上の整数であることがより好ましい。また、単位質量当たりの光反応性部位の濃度を高くし、感度を下げず、レジストの剥離時間を調整し、現像時におけるスラッジの低減を図る点で、38以下の整数であることが好ましく、35以下の整数であることがより好ましい。
【0057】
また、上記一般式(3)で表される化合物の含有量は、テント信頼性及び解像性のバランスの見地から、バインダーポリマー(A成分)及び重合性化合物(B成分)の総量100質量部中に、2質量部〜40質量部であることが好ましく、5質量部〜30質量部であることがより好しく、5質量部〜15質量部であることがさらに好ましい
【0058】
感光性樹脂組成物は、重合性化合物として、ペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレート以外のその他の重合性化合物を含んでいてもよい。
【0059】
その他の重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、ノニルフェノキシブタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。なかでも解像性及び剥離特性をさらに向上させる観点から、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンが好ましい。これらは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレンオキシ基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシ基の数が2〜14であり、プロピレンオキシ基の数が2〜14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ化トリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、密着性に優れる点で、トリメチロールプロパンエチレンオキシ化トリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。より具体的には、エチレンオキシド鎖が3〜25含まれるトリメチロールプロパンエチレンオキシ化トリ(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
エチレンオキシ基を3〜25個有するトリメチロールプロパンエチレンオキシ化トリ(メタ)アクリレートを含有する場合、その含有量は、密着性及び解像性のバランスの見地から、バインダーポリマー(A成分)及び重合性化合物(B成分)の総量100質量部に対して2〜25質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好しく、5〜15質量部であることがさらに好ましい。
【0063】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位に水酸基を有する(メタ)アクリル酸モノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネートヘキサメチレン)イソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
なお、EOはエチレンオキシ基を示し、EO変性された化合物は(ポリ)エチレンオキシ基のブロック構造を有する。また、POはプロピレンオキシ基を示し、PO変性された化合物は(ポリ)プロピレンオキシ基のブロック構造を有する。
【0065】
EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業(株)製、製品名UA−11等が挙げられる。また、EO、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業(株)製、製品名UA−13等が挙げられる。また、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレートとしては、例えば、新中村化学工業(株)製、製品名UA−21等が挙げられる。
【0066】
なかでもテント信頼性をより向上させる見地から、トリス(メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールイソシアネートヘキサメチレン)イソシアヌレートであるUA−21(新中村化学工業(株)製、製品名)が好ましい。
UA−21の含有率は、(バインダーポリマー(A成分)及び重合性化合物(B成分)の総量に対して、5〜25質量%であることが好ましく、7〜15質量%であることがより好ましい。
【0067】
感光性樹脂組成物における重合性化合物(B成分)の含有量は、バインダーポリマー(A成分)及び重合性化合物(B成分)の総量100質量部中に、20質量部〜60質量部とすることが好ましく、30質量部〜55質量部とすることがより好ましく、35質量部〜50質量部とすることが特に好ましい。(B)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の光感度及び塗膜性がより良好となる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、光感度、テント信頼性、密着性及び解像度の観点から、重合性化合物として一般式(3)で表される化合物をバインダーポリマー及び重合性化合物の総量100質量部中に5質量部〜30質量部含み、増感色素として一般式(1)又は一般式(2)で表されるピラゾリン化合物をバインダーポリマー及び重合性化合物の総量100質量部に対して0.05質量部〜5質量部含むことが好ましく、重合性化合物として一般式(3)で表される化合物のうちm+m+m+mが2〜38である化合物をバインダーポリマー及び重合性化合物の総量100質量部中に5質量部〜15質量部含み、増感色素として1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン及びこれらの位置異性体、並びに1−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3,5−ジフェニル−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン及びこれらの位置異性体からなる群から選ばれるピラゾリン化合物をバインダーポリマー及び重合性化合物の総量100質量部に対して0.1質量部〜3質量部含むことがより好ましい。
【0069】
[バインダーポリマー:A成分]
感光性樹脂組成物はバインダーポリマーの少なくとも1種を含む。
本発明で用いることのできるバインダーポリマー(A成分)としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、及びフェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。
バインダーポリマーは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のα−位若しくは芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル及びビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモアクリル酸、α−クロルアクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
本発明におけるバインダーポリマー(A成分)は、アルカリ現像性の見地から、カルボキシ基を含むことが好ましい。カルボキシ基を含むバインダーポリマーは、例えば、カルボキシ基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシ基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸が好ましく、中でもメタクリル酸がより好ましい。
【0072】
上記バインダーポリマーのカルボキシ基含有率は、使用する全重合性単量体に対するカルボキシ基を有する重合性単量体の含有率として、アルカリ現像性とアルカリ耐性のバランスの見地から、12質量%〜50質量%であることが好ましく、12質量%〜40質量%であることがより好ましく、15質量%〜30質量%であることが更に好ましく、15質量%〜25質量%であることが特に好ましい。
このカルボキシ基含有率が12質量%以上であるとアルカリ現像性が向上する傾向がある。また50質量%以下であるとアルカリ耐性に優れる傾向がある。
【0073】
また、本発明におけるバインダーポリマー(A成分)は、密着性及び耐薬品性の見地からスチレン又はスチレン誘導体を含む重合性単量体をラジカル重合させて得られるものであることが好ましい。
上記スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分とした場合のその含有率(使用する全重合性単量体に対するスチレン又はスチレン誘導体の含有率)は、密着性及び耐薬品性を良好にする見地から、バインダーポリマー全体の固形分に対して0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜28質量%であることがより好ましく、1.5質量%〜27質量%であることが特に好ましい。この含有率が0.1質量%以上であると、密着性が向上する傾向にある。また30質量%以下であると剥離片が大きくなることによる剥離に要する長時間化が抑えられる傾向にある。
なお、バインダーポリマーの固形分とは不揮発性成分を除いた残分を意味する。
【0074】
これらのバインダーポリマーは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、互いに異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、互いに異なる重量平均分子量を示す2種類以上のバインダーポリマー、互いに異なる分散度を示す2種類以上のバインダーポリマーなどが挙げられる。
【0075】
上記バインダーポリマーは、通常の方法によって製造することができる。具体的には例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、スチレン等とをラジカル重合させることにより製造することができる。
【0076】
上記バインダーポリマーの重量平均分子量は、機械強度及びアルカリ現像性のバランスの見地から、20,000〜300,000であることが好ましく、40,000〜150,000であることがより好ましく、50,000〜120,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が、20,000以上であると耐現像液性に優れる傾向がある。300,000以下であると現像時間が長くなるのが抑えられる傾向がある。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。
【0077】
感光性樹脂組成物における上記バインダーポリマーの含有量は、バインダーポリマー(A)成分)及び重合性化合物(B成分)の総量100質量部中に、30質量部〜80質量部とすることが好ましく、40質量部〜75質量部とすることがより好ましく、50質量部〜70質量部とすることが更に好ましい。
バインダーポリマー(A成分)の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の塗膜性及び光硬化物の強度がより良好となる。
【0078】
[光重合開始剤:(C成分)]
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1などの芳香族ケトン、アルキルアントラキノンなどのキノン類、ベンゾインアルキルエーテルなどのベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾインなどのベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタールなどのベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−(9,9’−アクリジニル)ヘプタンなどのアクリジン誘導体が挙げられる。これらは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス−(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。中でも、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体であることが好ましい。
【0080】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾールは,B−CIM(保土ヶ谷化学製、製品名)として、商業的に入手可能である。
【0081】
感光性樹脂組成物における光重合開始剤(C成分)の含有量は、バインダーポリマー(A成分)及び重合性化合物(B成分)の総量100質量部に対して0.01質量部〜30質量部であることが好ましく、0.1質量部〜10質量部であることが好ましく、1質量部〜7質量部であることがより好ましく、0.1質量部〜20質量部であることがより好ましく、2質量部〜6質量部であることがさらに好ましく、3質量部〜5質量部であることが特に好ましい。
この含有量が0.1質量部以上であると、光感度、解像度又は密着性が向上する傾向がある。また10質量部以下であると、レジスト形状に優れる傾向がある。
【0082】
[その他の成分]
また本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、既述の必須成分に加えてその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、マラカイトグリーン、ビクトリアピュアブルー、ブリリアントグリーン、及びメチルバイオレット等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット、ジフェニルアミン、ベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、o−クロロアニリン及びターシャリブチルカテコール等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤、重合禁止剤などを挙げることができる。
感光性樹脂組成物におけるその他の成分の含有量は、バインダーポリマー(A成分)及び重合性化合物(B成分)の総量100質量部に対して各々0.01質量部〜20質量部程度含有することができる。これらは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物が、その他の成分としてターシャリブチルカテコールを含む場合、その含有量は、解像度をより良好にする見地から、バインダーポリマー(A成分)及び重合性化合物(B成分)の総量100質量部に対して0.001質量部〜0.05質量部であることが好ましく、0.002質量部〜0.01質量部であることがより好ましい。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。上記有機溶剤としては通常用いられる有機溶剤を特に制限はなく用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、上記バインダーポリマーと、特定重合性化合物を含む重合性化合物と、光重合開始剤と、特定増感色素を含む増感色素とを上記有機溶剤に溶解して固形分30質量%〜60質量%程度の溶液(以下、「塗布液」ともいう)として用いることができる。
尚、固形分とは、上記溶液(感光性樹脂組成物)から揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。
【0086】
上記塗布液は、例えば以下のようにして感光性樹脂層の形成に用いることができる。上記塗布液を後述する支持フィルム、金属板などの支持体の表面上に塗布し、乾燥させることにより、上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層を支持体上に形成することができる。
【0087】
金属板としては、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金などが挙げられる。
【0088】
形成される感光性樹脂層の厚みは、その用途により適宜選択できる。例えば乾燥後の厚みで1μm〜100μm程度であることが好ましい。
感光性樹脂層の支持体に対向する面とは反対側の面(表面)は、保護フィルムで被覆されていてもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどが挙げられる。
【0089】
<感光性エレメント>
本発明の感光性エレメントは、支持体と、上記支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層とを備え、必要に応じて感光性樹脂層上に設けられる保護フィルム等のその他の層を備えて構成される。
【0090】
[支持体]
上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。
【0091】
上記支持体(以下、「支持フィルム」ともいう)の厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることが更に好ましい。支持体の厚みが1μm以上であることで、支持フィルムを剥離する際に支持フィルムが破れることを抑制できる。また100μm以下であることで解像度の低下が抑制される。
【0092】
[保護フィルム]
前上記感光性エレメントは、必要に応じて、感光性樹脂層の支持体に対向する面とは反対側の面(表面)を被覆する保護フィルムをさらに備えてもよい。
【0093】
前記保護フィルムとしては、感光性樹脂層に対する接着力が、支持フィルムの感光性樹脂層に対する接着力よりも小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。
【0094】
ここで、「フィッシュアイ」とは、保護フィルムを構成する材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものを意味する。すなわち、「低フィッシュアイ」とは、フィルム中の上記異物等が少ないことを意味する。
【0095】
具体的に、保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとしては、王子製紙社製アルファンMA‐410、E−200C、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製PS−25等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。なお、保護フィルムは上記支持体と同一のものでもよい。
【0096】
保護フィルムの厚みは、1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが更に好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。保護フィルムの厚みが1μm以上であることで、保護フィルムを剥がしながら、感光性樹脂層及び支持フィルムを基板上にラミネートする際、保護フィルムが破れることを抑制できる。また100μm以下であることで生産性が向上する。
【0097】
[製造方法]
本発明の感光性エレメントは、例えば以下のようにして製造することができる。少なくともバインダーポリマーと、特定重合性化合物を含む重合性化合物と、光重合開始剤と、特定増感色素を含む増感色素とを有機溶剤に溶解した塗布液を準備する工程と、上記塗布液を支持体上に塗布して塗布層を形成する工程と、上記塗布層を乾燥して感光性樹脂層を形成する工程と、を含む製造方法で製造することができる。
【0098】
上記塗布液の支持体上への塗布は、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ、スプレーコータ等の公知の方法で行うことができる。
【0099】
また、上記塗布層の乾燥は、塗布層から有機溶剤の少なくとも一部を除去することができれば特に制限はない。例えば、70℃〜150℃、5分〜30分程度で行うことができる。乾燥後、感光性樹脂層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0100】
感光性エレメントにおける感光性樹脂層の厚みは、用途により適宜選択することができるが、乾燥後の厚みで1μm〜200μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましく、10μm〜50μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm以上であると、工業的な塗工が容易になり、生産性が向上する。200μm以下であると、本発明の効果が充分に得られ、さらに光感度が高く、レジスト底部の光硬化性に優れる傾向がある。
【0101】
本発明の感光性エレメントは、必要に応じて、更にクッション層、接着層、光吸収層、又はガスバリア層等の中間層などを有していてもよい。
【0102】
本発明の感光性エレメントの形態は特に制限されない。例えば、シート状であってもよく、又は巻芯にロール状に巻き取った形状であってもよい。
【0103】
ロール状に巻き取る場合、支持フィルムが外側になるように巻き取ることが好ましい。巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、又はABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。
【0104】
このようにして得られたロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法としては、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0105】
本発明の感光性エレメントは、例えば、後述するレジストパターンの製造方法に好適に用いることができる。
【0106】
<レジストパターンの製造方法>
本発明のレジストパターンの製造方法は、(i)回路形成用基板上に上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、(ii)上記感光性樹脂層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射して、露光部を光硬化させて光硬化部を形成する露光工程と、(iii)上記感光性樹脂層の未露光部を回路形成用基板上から現像により除去する現像工程と、を有し、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
【0107】
(i)感光性樹脂層形成工程
感光性樹脂層形成工程においては、回路形成用基板(以下「基板」と略称する場合がある)上に上記感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層が形成される。回路形成用基板は、通常、絶縁層と絶縁層上に形成された導体層とを備える。感光性樹脂層が接する回路形成用基板の表面は、通常導体層(金属面)となるが、材質については特に制限はない。
【0108】
基板上に感光性樹脂層を形成する方法としては、例えば、上記感光性エレメントが保護フィルムを有している場合には、保護フィルムを除去した後、感光性エレメントの感光性樹脂層を、必要に応じて加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより行うことができる。これにより、回路形成用基板と感光性樹脂層と支持体とをこの順に備える積層体が得られる。
【0109】
この感光性樹脂層形成工程は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の加熱は、70℃〜130℃の温度で行うことが好ましい。また圧着は、0.1MPa〜1.0MPa程度(1kgf/cm〜10kgf/cm程度)の圧力で行うことが好ましいが、これらの条件には必要に応じて適宜選択される。なお、感光性樹脂層を70℃〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ではないが、密着性及び追従性をさらに向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0110】
(ii)露光工程
露光工程においては、回路形成用基板上に形成された感光性樹脂層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射することで、活性光線が照射された露光部が光硬化して、潜像(光硬化部)が形成される。
【0111】
この際、感光性樹脂層上に存在する支持体(支持フィルム)が活性光線に対して透過性である場合には、支持フィルムを通して活性光線を照射することができるが、支持フィルムが遮光性である場合には、支持フィルムを除去した後に感光性樹脂層に活性光線を照射する。
【0112】
露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを介して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、LDI(Laser Direct Imaging)露光法や、DLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
本発明においては、直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法であることが好ましく、i線及びh線の少なくとも一方を用いる直接描画露光法であることがより好ましい。
【0113】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ及び窒化ガリウム系青紫色レーザ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いてもよい。
【0114】
(iii)現像工程
現像工程においては、上記感光性樹脂層の未露光部である未硬化部分が回路形成用基板上から現像により除去されることで、上記感光性樹脂層が光硬化した硬化物からなるレジストパターンが回路形成用基板上に形成される。
【0115】
感光性樹脂層上に支持フィルムが存在している場合には、支持フィルムを除去してから、上記光硬化部分以外の未露光部の除去(現像)を行う。現像方法には、ウエット現像とドライ現像とがある。
【0116】
ウエット現像の場合は、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法としては、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッピング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像度向上の観点からは、高圧スプレー方式が最も適している。これら2種以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0117】
現像液の構成は上記感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等が挙げられる。
【0118】
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1質量%〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0119】
本発明では、現像工程において未露光部分を除去した後、必要に応じて60℃〜250℃程度の加熱又は0.2J/cm〜10J/cm程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化して用いてもよい。
【0120】
<プリント配線板の製造方法>
本発明のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターンの製造方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板をエッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を含み、必要に応じてレジスト除去工程等のその他の工程を含んで構成される。
【0121】
エッチング処理では、回路形成用基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層をエッチング除去し、導体パターンを形成する。
【0122】
エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、エッチング液としては、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素系エッチング液が挙げられ、エッチファクターが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが望ましい。
【0123】
一方、めっき処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層上に銅及び半田などをめっきする。めっき処理の後、硬化レジストを除去し、更にこのレジストによって被覆されていた導体層をエッチングして、導体パターンを形成する。
【0124】
めっき処理の方法としては、電解めっき処理であっても、無電解めっき処理であってもよいが、無電解めっき処理が好ましい。無電解めっき処理としては、例えば、硫酸銅めっき及びピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき及びスルファミン酸ニッケルめっき等のニッケルめっき、ハード金めっき及びソフト金めっき等の金めっきなどが挙げられる。
【0125】
上記エッチング処理及びめっき処理の後、基板上のレジストパターンは除去される。レジストパターンの除去は、例えば、上記現像工程に用いたアルカリ性水溶液よりも更に強アルカリ性の水溶液により剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1質量%〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。なかでも、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることが好ましく、1質量%〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
【0126】
レジストパターンの剥離方式としては、例えば、浸漬方式及びスプレー方式等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0127】
めっき処理を施してからレジストパターンを除去した場合、さらにエッチング処理によってレジストで被覆されていた導体層をエッチングし、導体パターンを形成することで所望のプリント配線板を製造することができる。エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、上述のエッチング液を適用することができる。
【0128】
本発明のプリント配線板の製造方法によって製造されるプリント配線板は、単層プリント配線板のみならず多層プリント配線板の製造にも適用可能であり、また小径スルーホールを有するプリント配線板等の製造にも適用可能である。
【0129】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0131】
<合成例1>
バインダーポリマー(A−1)を以下のようにして合成した。
共重合単量体としてメタクリル酸125g、メタクリル酸メチル275g及びスチレン100gと、アゾビスイソブチロニトリル1.0gとを混合して、溶液aを調製した。また、メチルセロソルブ60g及びトルエン40gの配合液(質量比6:4)100gに、アゾビスイソブチロニトリル1.0gを溶解して、溶液bを調製した。
【0132】
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比6:4であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物400gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、80℃まで加熱した。
ここに上記溶液aを4時間かけて滴下した後、撹拌しながら80℃で2時間保温した。次いで、このフラスコ内の溶液に、上記溶液bを10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら80℃にて3時間保温した。さらに、フラスコ内の溶液を30分間かけて90℃に昇温させ、90℃にて2時間保温した後、冷却してバインダーポリマー(A−1)の溶液を得た。このバインダーポリマー(A−1)の溶液に、アセトンを加えて不揮発成分(固形分)が50質量%になるように調製した。
【0133】
バインダーポリマー(A−1)の重量平均分子量は60,000であり、酸価は163mgKOH/gであった。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件は、以下に示す。
【0134】
−GPC条件−
ポンプ:日立 L−6000型[(株)日立製作所製]
カラム:Gelpack GL−R420+Gelpack GL−R430+Gelpack GL−R440(計3本)[以上、日立化成工業(株)製、製品名]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI[(株)日立製作所製、製品名]
【0135】
[実施例1〜8、比較例1〜4]
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1、表2に示す組成となるように各材料を配合し、感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。
尚、表中の数値は配合部数(質量基準)を示す。また、(A)成分および(B)成分は、固形分での質量を表す。
【0136】
【表1】

【0137】
【表2】

【0138】
上表における各成分は、以下の通りである。
−(A)成分:バインダーポリマー−
*1:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=25/55/20(重量比)、重量平均分子量=60,000、50質量%メチルセルソルブ/トルエン=6/4(重量比)溶液
【0139】
−(B)成分:光重合性化合物−
*2:(B−1)
一般式(3)においてm+m+m+m=4、R〜Rがメチル基である化合物。
*3:(B−2)
一般式(3)においてm+m+m+m=35、R〜Rがメチル基である化合物。
*4:TMPT [新中村化学(株)製、製品名]
トリメチロールプロパントリアクリレート
*5:FA−321M [日立化成工業(株)製、製品名]
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエチレンオキシ)フェニル)プロパン
*6:TMPT−21 [日立化成工業(株)製、製品名]
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート
*7:UA−21 [新中村化学(株)製、製品名]
トリス(メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールイソシアネートヘキサメチレン)イソシアヌレート
【0140】
−(C)成分:光重合開始剤−
*8:B−CIM [保土ヶ谷化学製、製品名]
2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾール
【0141】
−(D)成分:増感色素−
*9:(D−1)[一般式(1)で表されるピラゾリン化合物]
1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリン
*10:(D−2)[一般式(1)で表されるピラゾリン化合物]
1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)ピラゾリン
*11:(D−3)[一般式(1)で表されるピラゾリン化合物]
1−フェニル−3−(4−tert−ブチルスチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン
*12:(D−4)[一般式(2)で表されるピラゾリン化合物]
1−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン
*13:EAB [保土ヶ谷化学製、製品名]
4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0142】
<感光性エレメントの調製>
上記で得られた感光性樹脂組成物を、それぞれ厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製、製品名「HTF01」)上に、均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して、乾燥後の膜厚が10μmである感光性樹脂層を形成した。
【0143】
この感光性樹脂層上に、ポリプロピレン製の保護フィルム(王子製紙(株)製、製品名「E200C」)を貼り合わせ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持フィルム)と、感光性樹脂層と、保護フィルムとがこの順に積層された感光性エレメントを得た。
【0144】
<積層体の作製>
厚み12μmの銅箔を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(回路形成用基板、日立化成工業(株)製、製品名「MCL−E−67」)の銅表面を、#600相当のブラシを備える研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥した。研磨後の銅張積層板を80℃に加温し、保護フィルムを剥がしながら、感光性樹脂層が銅表面に接するように、上記で得られた感光性エレメントをそれぞれラミネートした。ラミネートは110℃のヒートロールを用いて、0.40MPaの圧着圧力、1.5m/分のロール速度で行った。
【0145】
こうして、銅張積層板、感光性樹脂層、支持フィルムの順に積層された積層体をそれぞれ得た。得られた積層体は、以下に示す試験における試験片として用いた。
【0146】
<評価>
(光感度の測定試験)
上記で得られた試験片の支持フィルム上に、日立41段ステップタブレットを置いて、波長355nm又は405nm半導体レーザを光源とする直接描画露光装置(日本オルボテック(株)製、商品名Paragon−9000m)を用いて、所定のエネルギー量で露光した。 次に、支持フィルムを剥離し、30℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を45秒間スプレーし、未露光部分を除去して現像処理を行った。
【0147】
現像処理後、銅張積層板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数を測定し、現像後の残存ステップ段数が17.0段となるエネルギー量(mJ/cm)を求めた。感光性樹脂組成物の光感度は、上記エネルギー量(mJ/cm)が少ないほど、光感度が高いことを示す。結果を表3に示す。
【0148】
(密着性及び解像度の評価)
上記で得られた試験片の支持体フィルム上に、解像度評価用パターンとしてライン幅/スペース幅が5/5〜50/50(単位:μm)の配線パターンを有する描画データを使用し、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、上記光感度の測定試験と同様の現像処理を行った。
【0149】
現像処理後、光学顕微鏡を用いてレジストパターンを観察した。レジストパターンのスペース部分(未露光部)が完全に除去され、且つライン部分(露光部)が蛇行、カケを生じることなく形成されたレジストパターンのうち、ライン幅間のスペース幅が最小となるものを決定し、密着性(μm)及び解像度(μm)として評価した。この数値が小さいほど密着性及び解像度が良好であることを示す。結果を表3に示す。
【0150】
(テント信頼性の評価)
0.4mm厚の銅張積層板に直径1mmの丸穴が7mm間隔で空いている銅張積層板上に、上記で得られた感光性エレメントを両面にラミネートし、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、光感度の測定試験と同様の現像液を用い、30秒間スプレーして現像処理を行った。
【0151】
現像後、合計320個の丸穴における感光性エレメントの破れ数(個)を測定し、下記数式によってテント破れ率を算出し、これをテント信頼性とした。結果を表3に示す。
テント破れ率=(穴破れ数(個)/320個)×100
【0152】
【表3】

【0153】
表3から、本発明の感光性樹脂組成物は、直接描画露光法に用いられる両波長に対応可能であり、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び解像度に優れることができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーポリマーと、
ペンタエリスリトールアルキレンオキシ化(メタ)アクリレート化合物と、
光重合開始剤と、
下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるピラゾリン化合物の少なくとも1種と、
を含む感光性樹脂組成物。
【化1】



[式中、Rはそれぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を示す。a、b及びcはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、かつ、a、b及びcの総和は1〜6であり、a、b及びcの総和が2以上のとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
支持体と、前記支持体上に形成された請求項1に記載の感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層と、を有する感光性エレメント。
【請求項3】
回路形成用基板上に、請求項1に記載の感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、
前記感光性樹脂層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射して、露光部を光硬化させて光硬化部を形成する露光工程と、
前記感光性樹脂層の未露光部を前記回路形成用基板上から現像により除去する現像工程と、を有するレジストパターンの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレジストパターンの製造方法により光硬化部が形成された回路形成用基板を、エッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により製造されたプリント配線板。

【公開番号】特開2012−215787(P2012−215787A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82273(P2011−82273)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】