説明

感光性樹脂組成物、感光性フィルム、永久マスクレジスト及び永久マスクレジストの製造方法

【課題】優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性を有する永久マスクレジストを形成できるとともに、基板上に積層された状態で保管されたときの安定性も優れる感光性樹脂組成物及び感光性フィルムを提供すること。
【解決手段】(A)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する重合性プレポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)ジシアンジアミド又はその誘導体、及び(E)両性界面活性剤を含有する、感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性フィルム、永久マスクレジスト及び永久マスクレジストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の一種として、フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit;以下、「FPC」という。)と呼ばれるフィルム状のプリント配線板が、特にカメラ、磁気ヘッド、携帯電話などの小型機器に用いられている。これは、FPCが、それ自体を折り曲げてもその機能を維持できることから、小型機器に収容するプリント配線板として最適であるためである。
【0003】
特に最近では、各種電子機器の更なる小型化及び軽量化の要請が増えてきており、FPCの採用によって、該小型機器の更なる小型化、軽量化、製品コストの低減並びに設計の簡素化等が徐々に進められている。
【0004】
FPCに用いられるソルダーレジスト(永久マスクレジスト)には、通常のプリント配線板に用いられるソルダーレジストと同様に、耐めっき性、耐薬品性、高密着性、高解像性、電気絶縁性及びはんだ耐熱性等の特性に加えて、FPCを折り曲げた際に破壊されないという、いわゆる可とう性が要求される。また、FPCを部分的に厚くしたり硬くしたりするために、FPCに補強板を貼り付ける場合があるが、かかる補強板は高圧、高温条件下で熱プレス機を用いて貼り付けられるため、FPC用のソルダーレジストには熱プレス耐性も要求される。
【0005】
現在のところ、ポリイミドフィルムが上記各種特性をある程度満足することから、FPC用のソルダーレジストとして、接着剤付きのポリイミドフィルムを打ち抜いて形成されるカバーレイが広く用いられている。
【0006】
しかしながら、ポリイミドフィルムのカバーレイは、型抜きに用いられる金型が非常に高価である上、型抜きしたカバーレイの人手による位置合わせ作業、及び貼り合わせ作業が必要となることから製造コストが高いという問題がある。
【0007】
更には、FPCが電子機器の小型化の要請に応えるべく採用されているにも関わらず、そのFPCに型抜きされたカバーレイを設けようとすると、微細パターンの形成が困難になってしまうという問題もある。
【0008】
これらの問題点を改善するために、フォトレジスト法によるレジスト形成が採用されつつある。このフォトレジスト法によれば、基板上に感光層を形成し、この感光層を部分露光により硬化した後、未露光部を現像により除去してレジストが形成される。フォトレジスト法によれば、微細なパターンを有するレジストを形成することができる。
【0009】
フォトレジスト法の採用に伴い、種々の感光性樹脂組成物が開発されている。例えば、特定のエポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との付加生成物を無水コハク酸等と反応させることによって得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含有する液状のFPC用感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0010】
ところで、ソルダーレジストは、ソルダーマスクとして用いられる他、無電解ニッケルめっき及び/又は金めっき処理におけるレジストとしても用いられる。めっき処理の際、基板は80〜90℃程度の酸性(pH約4〜5)のめっき浴で処理されるため、レジストの浮きや剥がれ、レジスト底部にめっき液が入り込むことによってめっきが析出するめっきもぐり等の不良が発生する場合がある。
【0011】
そこで、はんだ耐熱性及び耐めっき性の向上を目的として、ベンゾイミダゾール系化合物又はトリアジンチオール系化合物を含む液状の感光性樹脂組成物(例えば、特許文献3及び4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平07−207211号公報
【特許文献2】特開平08−134390号公報
【特許文献3】特開1999−177218号公報
【特許文献4】特開2002−293815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物によれば、良好なはんだ耐熱性及び耐めっき性を有するレジスト膜は形成し得るものの、銅箔を有する基板上に感光性樹脂組成物を塗布またはラミネートした後、露光による硬化膜形成を行う前に2、3日以上の長期間放置した場合、銅箔の赤色変色または現像残渣が発生するなどの問題が発生するときがあり、保管安定性の点で改善の余地があることが明らかとなった。
【0014】
そこで、本発明の主な目的は、優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性を有する永久マスクレジストを形成できるとともに、基板上に積層された状態で保管されたときの安定性も優れる感光性樹脂組成物及び感光性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、(A)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する重合性プレポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)ジシアンジアミド又はその誘導体、及び(E)両性界面活性剤を含有する、感光性樹脂組成物に関する。
【0016】
この感光性樹脂組成物によれば、優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性を有する永久マスクレジストを形成できるとともに、基板上に積層された状態で保管されたときの安定性も優れる。
【0017】
(A)成分の重合性プレポリマーは、好ましくは、エポキシ樹脂(a1)とエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(a2)とを反応させて得られる樹脂の水酸基に、多塩基酸無水物(a3)を反応させて得られる化合物である。あるいは、(A)成分の重合性プレポリマーは、好ましくは、2つ以上の水酸基及び2つ以上のエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物(a4)と、ジイソシアネート化合物(a5)と、カルボキシル基を有するジオール化合物(a6)と、を反応させて得られる化合物である。
【0018】
これら化合物を用いることにより、永久マスクレジストの耐めっき性、可とう性及び密着性が一層優れる感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
(E)両性界面活性剤は、好ましくは、イミダゾリン型界面活性剤を含む。これにより、本発明の効果がより一層顕著に奏される。
【0020】
上記感光性樹脂組成物は、支持体と、該支持体上に設けられた感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える感光性フィルムを構成してもよい。
【0021】
本発明はまた、本発明に係る感光性樹脂組成物の硬化物からなる永久マスクレジストに関する。本発明に係る永久マスクレジストは、優れた耐熱性及び耐めっき性を有し、安定して形成されることができる。
【0022】
本発明はまた、基板上に、感光性樹脂組成物からなる感光層を設ける工程と、感光層に活性光線をパターン照射する工程と、感光層を現像して永久マスクレジストを形成させる工程と、を備える、永久マスクレジストの製造方法に関する。
【0023】
かかる製造方法によれば、優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性を有する永久マスクレジストを製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性を有する永久マスクレジストを形成できるとともに、基板上に積層された状態で保管されたときの安定性も優れる感光性樹脂組成物及び感光性フィルムが提供される。例えば、基板上に積層された状態で長期保管された後の露光及び現像により、現像残渣の発生を充分に抑制しつつ永久マスクレジスを形成することができる。また、はんだ処理による導体層の変色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】感光性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルを意味する。
【0028】
図1は、感光性フィルムの一実施形態を示す断面図である。感光性フィルム1は、支持体10と、支持体10上に設けられた感光層20と、感光層20上に設けられた保護フィルム30とを備える。
【0029】
感光層20は、感光性樹脂組成物から形成される。感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する重合性プレポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)ジシアンジアミド又はその誘導体、及び(E)両性界面活性剤を含有する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0030】
(A)成分
(A)成分の重合性プレポリマーは、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を分子内に有する。感光層が硬化して形成される永久マスクレジストの耐めっき性、可とう性及び密着性を一層向上させる観点から、重合性ポリマーは、好ましくは、エポキシ樹脂(a1)とエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(a2)との反応(第一の反応)と、この反応で生成する樹脂と多塩基酸無水物(a3)との反応(第二の反応)との二段階の反応により得ることのできるエポキシアクリレート化合物である。
【0031】
第一の反応では、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基と、モノカルボン酸(a2)のカルボキシル基との付加反応により、エチレン性不飽和基及び水酸基を有する樹脂が生成する。
【0032】
エポキシ樹脂(a1)は、1又は2以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂から選ばれる。
【0033】
エポキシ樹脂(a1)は、永久マスクレジストの耐めっき性、可とう性及び密着性を一層向上させる観点から、好ましくは、下記式(1)で示されるノボラック型エポキシ樹脂である。
【0034】
【化1】

【0035】
式(1)中、Xは水素原子又はグリシジル基を示し、rは0〜3の整数を示し、nは1以上の整数を示す。同一分子中の複数のXは同一でも異なっていてもよく、同一分子中のX全体における水素原子/グリシジル基のモル比は0/100〜70/30である。
【0036】
式(1)のノボラック型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂がある。その中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、クレゾールノボラック樹脂又はフェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させる方法により得ることができる。
【0037】
エチレン性不飽和基(例えばビニル基)を有するモノカルボン酸(a2)は、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸、及びソルビン酸から選ばれる。モノカルボン酸(a2)は、水酸基を有するアクリレートと飽和若しくは不飽和炭化水素基を有する二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、又は、ビニル基を有するモノグリシジルエーテル若しくはビニル基を有するモノグリシジルエステルと飽和若しくは不飽和炭化水素基の二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物であってもよい。半エステル化合物とは、例えば、2個のカルボキシル基を有する化合物のカルボキシ基の一方だけがエステル化された化合物をいう。これらモノカルボン酸は、単独で、又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
半エステル化合物は、水酸基を有するアクリレート、ビニル基を有するモノグリシジルエーテル若しくはビニル基を有するモノグリシジルエステルと、飽和若しくは不飽和炭化水素基を有する二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることによって得ることができる。
【0039】
水酸基を有するアクリレートは、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートから選ばれる。
【0040】
ビニル基を有するモノグリシジルエーテル又はビニル基を有するモノグリシジルエステルは、グリシジル(メタ)アクリレート等から選ばれる。
【0041】
飽和又は不飽和の炭化水素基を有する二塩基酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸から選ばれる。
【0042】
第一の反応において、モノカルボン酸(a2)の比率は、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.05当量であることが好ましく、0.8〜1.0当量であることがより好ましい。
【0043】
第一の反応は、エポキシ樹脂(a1)及びモノカルボン酸(a2)の双方を有機溶剤に溶解させた反応液中で行うことができる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤を用いることができる。
【0044】
第一の反応は、反応を促進させるための触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、及びトリフェニルホスフィンを用いることができる。触媒の量は、エポキシ樹脂(a1)とモノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。
【0045】
第一の反応は、エポキシ樹脂(a1)同士、モノカルボン酸(a2)同士、又はエポキシ樹脂(a1)とモノカルボン酸(a2)との重合を防止するため、重合防止剤の存在下で行うことが好ましい。
【0046】
重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、又はピロガロールを用いることができる。重合防止剤の量は、好ましくは、エポキシ樹脂(a1)とモノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.01〜1質量部である。第一の反応の反応温度は、60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
【0047】
第一の反応では、エポキシ樹脂(a1)及びモノカルボン酸(a2)の他に、必要に応じて、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物及びフェノール誘導体等を反応液中に含ませることができる。
【0048】
第二の反応では、第一の反応で生成した水酸基、及び/又はエポキシ樹脂(a1)が元来有する水酸基と、多塩基酸無水物(a3)の酸無水物基との反応により、酸無水物基が半エステル化して形成されたカルボキシル基を有する化合物が生成すると推察される。
【0049】
多塩基酸無水物(a3)は、飽和又は不飽和炭化水素基を有する。多塩基酸無水物(a3)は、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸から選ばれる。
【0050】
第二の反応では、第一の反応によって生成する樹脂中の水酸基1当量に対して、0.1〜1.0当量の多塩基酸無水物(a3)を反応させることができる。多塩基酸無水物(a3)の量をこの範囲内で調製することによって、(A)成分の酸価を調整することができる。
【0051】
以上のような第一の反応及び第二の反応により得られるエポキシアクリレート化合物として、CCR−1218H、CCR−1159H、CCR−1222H、PCR−1191H、TCR−1335H、ZAR−2001H、及びZCR−1569H等(以上、日本化薬株式会社製、商品名)などの市販品が入手可能である。
【0052】
(A)成分の重合性プレポリマー、感光性樹脂組成物の感度を向上させ、さらに硬化させて得られる永久マスクレジストの耐めっき性、可とう性及び密着性を一層向上させる観点から、(A)成分の重合性プレポリマーは、2つ以上の水酸基及び2つ以上のエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物(a4)と、ジイソシアネート化合物(a5)と、カルボキシル基を有するジオール化合物(a6)と、を反応させて得ることのできるポリウレタン化合物(ウレタン変性エポキシアクリレート化合物)であってもよい。
【0053】
エポキシアクリレート化合物(a4)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、及びフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂から選ばれるエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応生成物である。
【0054】
ジイソシアネート化合物(a5)は、イソシアネート基を2つ有する。イソシアネート化合物(a5)は、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、N−アシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、及びノルボルナン−ジイソシアネートメチルから選ばれる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0055】
カルボキシル基を有するジオール化合物(a6)は、アルコール性水酸基及び/又はフェノール性水酸基等の2以上の水酸基と、カルボキシル基とを有する化合物である。ジオール化合物(a6)が有する水酸基は、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性を良好にする観点から、アルコール性水酸基であることが好ましい。ジオール化合物(a6)は、例えば、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸から選ばれる。
【0056】
一実施形態に係るポリウレタン化合物の製造方法においては、先ず、エポキシアクリレート化合物(a4)及びジオール化合物(a6)を、ジイソシアネート化合物(a5)と反応させる。かかる反応により、主に、エポキシアクリレート化合物(a4)の水酸基、及びジオール化合物(a6)の水酸基と、ジイソシアネート化合物(a5)のイソシアート基との間で、いわゆるウレタン化反応が生じる。この反応により、例えば、エポキシアクリレート化合物(a4)に由来する構成単位(エポキシアクリレート化合物の残基)と、ジオール化合物(a6)に由来する構成単位(ジオール化合物の残基)と、ジイソシアネート化合物(a5)に由来する構成単位(ジイソシアネート化合物の残基)とを有し、エポキシアクリレート化合物の残基及びジオール化合物の残基がジイソシアネート化合物の残基を介して交互に又はブロック的に重合されたポリウレタン化合物が生じる。
【0057】
このようなポリウレタン化合物は、例えば、下記式(2)で表される構造を有する。
【0058】
【化2】

【0059】
式(2)中、Rはエポキシアクリレート化合物の残基、Rはジイソシアネート化合物の残基、Rは炭素数1〜5のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なってもいてもよい。
【0060】
残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。ポリウレタン化合物の末端の水酸基は、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物との反応により封鎖されていてもよい。
【0061】
ポリウレタン化合物の製造の際、カルボキシル基を有するジオール化合物(a6)とは異なるジオール化合物を更に反応系中に加えてもよい。これにより、得られるポリウレタン化合物の主鎖構造を変えることが可能となり、後述する酸価等の特性を所望の範囲に調整できる。また、各工程では、適宜、触媒等を用いてもよい。
【0062】
ポリウレタン化合物とエポキシ樹脂とを更に反応させてもよい。この反応では、主に上記ポリウレタン化合物におけるジオール化合物に由来するカルボキシル基と、出発物質のエポキシ樹脂の有するエポキシ基との間で、いわゆるエポキシカルボキシレート化反応が生じる。このようにして得られる化合物は、例えば、上述したポリウレタン化合物から形成される主鎖と、原料エポキシアクリレートや原料エポキシに由来するエチレン性不飽和基を含む側鎖とを備える。
【0063】
ポリウレタン化合物としては、式(2)で表される化合物の中でも、ポリウレタンの主骨格の一つとなるエポキシアクリレート化合物(a4)のハードセグメント部、すなわちRがビスフェノールAの水酸基から水素原子を除いた基が好ましい。このようなポリウレタン化合物は、UXE−3011、UXE−3012、UXE−3024(製品名、日本化薬株式会社製)等として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0064】
(A)成分の酸価は、感光性樹脂組成物の希アルカリ溶液への溶解性及び硬化後の基材等への密着性を共に良好にする観点から、30〜180mgKOH/gであることが好ましく、50〜150mgKOH/gであることがより好ましく、60〜120mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0065】
(A)成分の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、感光層20と支持体10との粘着性、すなわちタック性と、(B)成分との相溶性とを共に良好にする観点から、3000〜50000であることが好ましく、5000〜40000であることがより好ましく、7000〜35000であることがさらに好ましく、10000〜30000であることが特に好ましい。
【0066】
感光性樹脂組成物を作製する場合、(A)成分の含有割合は、形成されるカバーレイ等の永久マスクレジストの耐めっき性及び可とう性を共に良好にする観点から、感光性樹脂組成物の総量(溶媒を除いた量)を基準として、10〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0067】
(A)成分は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、以上説明したエポキシアクリレート化合物及びポリウレタン化合物以外の重合性プレポリマーを含有していてもよい。
【0068】
(B)成分
(B)成分の光重合性化合物は、分子内に少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有する。(B)光重合性化合物は、例えば、多価アルコールとα,β−不飽和カルボン酸との反応生成物、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;グリシジル基を有する化合物とα、β−不飽和カルボン酸との反応生成物;ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー;ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート及びβ−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選らばれる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0069】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業株式会社製、製品名)又はFA−321M(日立化成工業株式会社、製品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0070】
多価アルコールとα,β−不飽和カルボン酸との反応生成物としては、例えば、2〜14のエチレン基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2〜14のプロピレン基を有するポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2〜14のエチレン基及び2〜14のプロピレン基を有するポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、並びに、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0071】
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートは、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−11として商業的に入手可能である。EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートは、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−13として商業的に入手可能である。
【0072】
EOはエチレンオキサイドを示す。EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。POはプロピレンオキサイドを示す。PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0073】
ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、及びノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレートが挙げられる。
【0074】
(B)光重合性化合物は、感光性樹脂組成物の感度及び解像度と永久マスクレジストの可とう性を一層向上させる観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、中でも2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンを含むことがより好ましい。
【0075】
感光性樹脂組成物を作製する場合、(B)成分の含有割合は、感光性樹脂組成物のフィルム形成性、感度及び永久マスクレジストの耐めっき性を良好にする観点から、感光性樹脂組成物の総量(溶媒を除いた量)を基準として、10〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0076】
(C)成分
(C)成分の光重合開始剤は、例えば、置換又は非置換の多核キノン類(2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等)、α−ケタルドニルアルコール類(ベンゾイン、ピバロン等)、エーテル類、α−炭化水素置換芳香族アシロイン類(α−フェニル−ベンゾイン、α,α−ジエトキシアセトフェノン等)、芳香族ケトン類(ベンゾフェノン、4,4'−ビスジアルキルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン等)、チオキサントン類(2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等)、アシルフォスフィンオキサイド類(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等)及びα−アミノアルキルフェノン類(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等)を用いることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
(C)成分は、感光性樹脂組成物の感度及び形成される永久マスクレジストの耐めっき性の観点から、α−アミノアルキルフェノン類を含むことが好ましく、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を含むことがより好ましい。2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1は、Irgacure369(BASFジャパン株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0078】
感光性樹脂組成物の感度を一層向上させる観点から、(C)成分は4,4'−ビスジアルキルアミノベンゾフェノンをさらに含むことが好ましい。
【0079】
感光性樹脂組成物を作製する場合、(C)成分の含有割合は、感光性樹脂組成物の感度及び永久マスクレジストのはんだ耐熱性を共に良好にする観点から、感光性樹脂組成物の総量(溶媒を除いた量)を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜7質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0080】
(D)成分
感光性樹脂組成物が、(D)成分のジシアンジアミド又はその誘導体を含有することにより、永久マスクレジストと、基板の導体層(銅箔等)との密着性がより向上するとともに、はんだ耐熱性、耐めっき性に優れた永久マスクレジストを形成することができる。(D)成分と、(E)成分との組み合わせにより、これら特性を特に向上させることができる。
【0081】
(D)成分は、例えば、ジシアンジアミド、アクリロイルジシアンジアミド、メタクリロイルジシアンジアミド及びこれらの有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0082】
これらのなかでも、耐薬品性及び耐めっき性をより高水準に達成する観点からジシアンジアミドが好ましい。これらの特性を高水準に達成できる主因は、基板に設けられた表面の金属部分の表面とジシアンジアミドが有するグアニジン骨格との強い相互作用によって、該金属部分と光硬化物との密着性が向上するためと考えられる。
【0083】
(D)成分は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な(D)成分としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社製のジシアンジアミド(DICY)が挙げられる。ジシアンジアミドはシアナミドとカルボジイミドとの反応により生成する。
【0084】
(D)成分の含有割合は、感光性樹脂組成物の総量(溶媒を除いた量)を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらに好ましい。この含有割合が、0.01質量%未満では、はんだ耐熱性、耐めっき性が低下する傾向があり、10質量%を超えると、ラミネート後の安定性が低下して、現像残渣が発生を抑制する効果が小さくなる傾向がある。
【0085】
(E)成分
(E)両性界面活性剤を用いることにより、アルカリ現像液に対する溶解性が増し、ラミネート後の安定性に優れ、現像残渣が発生しにくい感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0086】
両性界面活性剤は、例えば、N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ステアリル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ラウリル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ラウリル−N,N,N−トリス(カルボキシメチル)アンモニウム等のベタイン型界面活性剤、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム塩型界面活性剤、イミダゾリン−N−ナトリウムエチルスルホネート及びイミダゾリン−N−ナトリウムエチルスルフェート等のイミダゾリン型界面活性剤、アミノカルボン酸、並びに、アミノ硫酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であり得る。
【0087】
これらの中でも特に、イミダゾリン環を有するイミダゾリン型界面活性剤が好ましい。これにより、はんだ耐熱性及び耐めっき性を低下させずに、より一層優れた保存安定性を有する感光性樹脂組成物を得ることができる。イミダゾリン型界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン環と、イミダゾリン環の2位の炭素原子に結合した炭素数6〜20の直鎖状飽和又は不飽和炭化水素基と、イミダゾリン環の3位の窒素原子に結合したヒドロキシエチル基とを有するイミダゾリン誘導体が挙げられる。そのようなイミダゾリン型の両性界面活性剤の好適な市販品として、ホモゲノールL−95(花王株式会社製、製品名)がある。
【0088】
両性界面活性剤を用いることによる効果の発現機構は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように推察する。
(1)ジシアンジアミドのような密着剤を添加した組成を有する感光性樹脂組成物の場合、ラミネート後に数日放置すると基板の銅表面が赤やけしたり、現像残渣が発生したりすることがある。両性界面活性剤を添加すると、現像性がよくなるため、ラミネート後の安定性が良くなっていると推察される。両性界面活性剤のアニオン部は、アルカリ性で機能を発揮するため、これを添加した場合、アルカリ現像液に対する溶解性が増し、ラミネート後に数日放置しても現像残渣の発生がなく、良好な現像性が得られるものと考える。なお、アルカリ中では、アニオン>ノニオン>カチオンの順で効果が発揮されると考えられる。
(2)両性界面活性剤のカチオン部(例えばイミダゾリン環)が銅にキレートするため、耐めっき性を悪化させることなく良好な特性が得られるものと考えられる。界面活性剤を添加すると、めっき工程でレジストと銅との界面に水分を呼び込みやすくなることが考えられるため、耐めっき性の悪化が考えられる。しかしながら、イミダゾリン環のような銅にキレート可能なカチオン部であれば、耐めっき性の悪化を防ぐことができると推察できる。
【0089】
(E)成分の含有割合は、感光性樹脂組成物の総量(溶媒を除いた量)を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらに好ましい。この含有割合が、0.01質量%未満では、ラミネート後の安定性が低下して、現像残渣抑制の効果が小さくなる傾向があり、10質量%を超えると、現像後の密着性が低下し、はんだ耐熱性及び、耐めっき性が相対的に低下する可能性がある。
【0090】
感光性樹脂組成物は、(A)〜(E)成分の他に、メラミン樹脂、ブロック化イソシアネート化合物等の熱硬化成分、染料、顔料、可塑剤、安定剤、有機フィラー及び無機フィラーなどを必要に応じて更に含んでいてもよい。
【0091】
感光性フィルム1は、支持体10上に、感光性樹脂組成物の膜を感光層20として形成させることにより製造することができる。
【0092】
支持体としては、重合体フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるフィルムが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。支持体は多層構造を有していてもよく、表面にエンボスなどの処理を施してあってもよい。
【0093】
支持体10の厚さは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚さが、5μm未満では、回路被覆性が低下する傾向があり、100μmを超えると、パターン形成が困難となる傾向がある。
【0094】
保護フィルム30は、支持体10と同一又は異なる重合体フィルムであってもよい。
【0095】
感光層20は、例えば、感光性樹脂組成物及び溶剤を含む溶液を、支持体10に塗布し、塗布された溶液から、熱風吹き付け等の加熱により溶剤を除去する方法により、形成させることができる。
【0096】
感光層を形成するための溶液は、(A)成分、(B)成分(C)成分、(D)成分および(E)成分を含む感光性樹脂組成物を、溶剤に均一に溶解ないし分散して調整される。
【0097】
溶剤は、感光性樹脂組成物を溶解又は分散する溶剤であればよく、例えば、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル系溶剤(メチルソロソルブ、エチルセロソルブ等)、塩素化炭化水素系溶剤(ジクロルメタン、クロロホルム等)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール等)から選ばれる。これらの溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0098】
乾燥後の感光層の厚さは、特に制限はないが、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましく、30〜50μmであすることがさらに好ましい。
【0099】
感光層20を形成した後、そのまま、又は感光層20の支持体10とは反対側の面に保護フィルム30をさらに積層してから、感光性フィルム1をロール状に巻き取って貯蔵することができる。
【0100】
永久マスクレジストとして用いられるレジストパターンは、例えば、基板上に感光層20を設ける工程と、感光層20に活性光線をパターン照射する工程と、感光層20を現像してレジストパターン(永久マスクレジスト)を形成させる工程と、を備える方法により、製造することができる。
【0101】
感光層20は、例えば、感光性フィルム1から保護フィルム30を除去してから、必要により加熱しながら、感光層20を基板に圧着させることにより、基板上に積層することができる。このときの感光層の加熱温度は、特に制限はなく、90〜130℃であることが好ましい。圧着圧力は、特に制限はなく、2.94×10Pa(3kgf/cm)であすることが好ましく、4000Pa(30mmHg)以下の減圧下で圧着が行われることが好ましい。
【0102】
感光層20が積層される基板は、特に制限はないが、エッチング等により配線の形成された銅張り積層板又はFPCであることが好ましく、FPCであることがより好ましい。
【0103】
感光性フィルムを使用する場合には、感光層を上記のように加熱しながら基板に圧着させるため、予め基板を予熱処理することは必要でないが、積層性を更に向上させるために、基板の予熱処理を行うこともできる。
【0104】
基板上に積層された感光層20は、ネガフィルム又はポジフィルムを用いて、活性光線に画像的に露光される。露光の際、支持体10は感光層20上に残っていてもよいし、除去されていてもよい。
【0105】
感光層の粉塵や傷からの保護及び空気中の酸素による感度低下を防止する観点から、支持体が透明で、支持体を残した状態で支持体を通して感光層を露光することが好ましい。
【0106】
活性光線としては、通常の活性光源が使用できる。例えば、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、キセノンアーク、その他から発生する光等が挙げられる。感光層に含まれる光開始剤の感受性は、通常、紫外線領域において最大であるため、活性光源は、紫外線を有効に放射するものが好ましい。
【0107】
露光後、感光層上に支持体が残っている場合はこれを除去した後、アルカリ水溶液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知方法により未露光部を除去して、感光層を現像することができる。
【0108】
アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが挙げられ、中でも、炭酸ナトリウムの水溶液が好ましい。
【0109】
現像に用いるアルカリ水溶液のpHは、9〜11であることが好ましく、現像温度は、感光層の現像性に合わせて調整することができる。アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を含ませることができる。
【0110】
現像後、FPCの永久マスクレジスト(カバーレイ)としてのはんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことができる。紫外線の照射量は、好ましくは0.2〜10J/cmである。また、加熱温度は、好ましくは100〜170℃であり、加熱時間は、好ましくは15〜90分間である。これら紫外線の照射と加熱は、どちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。紫外線の照射と加熱を同時に行う場合、60〜150℃の熱を伴うことが好ましい。
【0111】
FPC等のプリント配線板は。このようにして永久マスクレジストの特性を付与された後、LSI等の部品の実装(はんだ付け)、カメラ等機器へ装着される。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0113】
(実施例1〜2及び比較例1〜4)
感光性樹脂組成物の作製
表1及び表2に示す材料を配合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0114】
【表1】

【0115】
1:クレゾールノボラック型エポキシアクリレート化合物(日本化薬株式会社製、商品名、クレゾールノボラック型ポキシ樹脂とアクリル酸とを反応させて得られる樹脂の水酸基に、多塩基酸無水物を反応させて得られるエポキシアクリレート化合物)
2:ウレタン変性エポキシアクリレート化合物(日本化薬株式会社製、商品名、)
3:2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成工業株式会社製、商品名)
4:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASFジャパン株式会社製、商品名)
5:イミダゾリン型両面界面活性剤(花王株式会社製、商品名)
6:ノニオン性界面活性剤(東レ・ダウ・コーニング株式会社製、商品名)
7:ブロックイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名)
【0116】
2.感光性フィルムの作製
感光性樹脂組成物の溶液を、25μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製、商品名「G2」)上に均一に塗布し、100℃の熱風循環式乾燥器で、5分間乾燥して溶剤を除去した。乾燥により形成された感光層の厚さは、40μmであった。次いで、感光層の上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名「NF−13」)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性フィルムを得た。
【0117】
3.評価用積層体の作製
ポリイミド基材及びポリイミド基材上に積層された35μm厚の銅箔を有するFPC用基板(ニッカン工株式会社業製、商品名「F30VC125RC11」)の銅箔表面を、砥粒ブラシで研磨してから水洗し、乾燥した。このFPC基板に、保護フィルムを剥離した感光性フィルムを、真空加圧式ラミネータ(株式会社名機製作所製、型式MVLP−500)を用いて、FPC用基板に感光層が基板側となる向きでラミネートし、評価用積層体を得た。ラミネータの成形温度は60℃、成形圧力は0.4MPa(4kgf/cm)、真空時間及び加圧時間をそれぞれ20秒とした。
【0118】
4.評価
解像度
ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてのライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを評価用積層体上に密着させ、超高圧水銀灯ランプを有する散乱光露光機(株式会社オーク製作所製、HMW−201GX)を用いて、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後の評価用積層体を常温で一時間静置した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を50秒間スプレーして現像を行い、現像後のレジストパターンを80℃で10分間の加熱により乾燥した。解像度は、矩形の断面を有するレジストパターンが形成された部分のライン幅間のスペース幅の最も小さい値(単位:μm)により評価した。この値が小さいほど、解像度に優れていることを示す。結果を表2に示す。
【0119】
現像残渣
評価用積層体を23℃、60%RH、遮光下で7日間放置した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1重量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で60秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。未露光部分の銅箔表面に残った感光性樹脂組成物の残渣の有無を目視で観察し、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
A:現像残渣が見られない。
B:薄い有機残渣が散見される。
C:明瞭な有機残渣が確認される。
【0120】
はんだ耐熱性
感光性フィルムをラミネートして得られた評価用積層体を23℃まで冷却し、1時間以上放置した。次いで、評価用積層体上に、1mm×1mm四方の開口部を有する格子状パターンを有するフォトツールを密着させ、高圧水銀灯ランプを有する散乱光露光機(株式会社オーク製作所製、HMW−201GX)を用いて所定のエネルギー量で露光した。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1重量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で60秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。次いで、160℃で60分間の加熱処理を行い、永久マスクレジスト層(カバーレイ)を備えたFPC基板を得た。該FPC基板を260℃のはんだ浴中に10秒間浸漬してはんだ処理を行った後、永久マスクレジスト層及び導体層(銅箔)の変色具合を目視で観察し、下記の基準ではんだ耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
A:レジストの浮き及び剥がれが見られない。
B:レジストの浮き及び/又は剥がれが見られる。
【0121】
耐めっき性
耐めっき性として、無電解ニッケル/金めっきに対するレジストの耐性を評価した。「はんだ耐熱性」と同様の手順で作製した、永久マスクレジスト層を備えたFPC基板に対して、脱脂(5分浸漬)、水洗、ソフトエッチング(2分浸漬)、水洗、酸洗(3分浸漬)、水洗、プレディップ(90秒浸漬)、無電解ニッケルめっき(23分処理)、水洗、無電解金めっき(15分処理)、水洗、及び乾燥の順で処理を施した。各工程に用いた材料は以下の通りである。
脱脂:PC−455(メルテックス株式会社製)25重量%の水溶液
ソフトエッチング:過硫酸アンモニウム150g/Lの水溶液
酸洗:5体積%硫酸水溶液
無電解ニッケルめっき:ニムデンNPR−4(上村工業株式会社製)
無電解金めっき:ゴブライトTIG−10(上村工業株式会社製)
【0122】
乾燥後、耐金めっき性を評価する為に、レジストに直ちにセロハンテープを貼り、これを垂直方向に引き剥がした(90°ピールオフ試験)。このときのレジストの剥れの有無を光学顕微鏡により観察した。また、金めっきのもぐりの有無を光学顕微鏡により観察し、下記の基準で評価を行った。結果を表2に示す。
A:レジストの剥がれ、金めっきもぐりが見られない、
B:レジストの剥がれ、金めっきもぐりが見られる。
【0123】
【表2】

【0124】
表2に示されるように、(D)ジシアンジアミド及び(E)両性界面活性剤を含む実施例の感光性樹脂組成物によれば、現像残渣が発生せず、形成されるレジストのはんだ耐熱性及び耐めっき性が優れているのに対し、(D)ジシアンジアミドを含まない比較例3及び4の場合、レジストのはんだ耐熱性及び耐めっき性が劣り、また(E)両性界面活性剤を含まない比較例1、2及び、4は、現像残渣が発生しやすい傾向にある。比較例1、2については、有機残渣が多く発生したことから、はんだ耐熱性及び耐めっき性の評価を行うことができなかった。
【0125】
以上の実験結果からも、(A)〜(D)成分と特定の(E)成分との組み合わせを採用した本発明によれば、はんだ耐熱性及び耐めっき性に優れるとともに、ラミネート後の安定性にも優れた感光性樹脂組成物及び感光性フィルムが提供されることが確認された。
【符号の説明】
【0126】
1…感光性フィルム
10…支持体
20…感光層
30…保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する重合性プレポリマー、
(B)光重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)ジシアンジアミド又はその誘導体、及び
(E)両性界面活性剤
を含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する重合性プレポリマーが、
エポキシ樹脂(a1)とエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(a2)とを反応させて得られる樹脂の水酸基に、多塩基酸無水物(a3)を反応させて得られる化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する重合性プレポリマーが、
2つ以上の水酸基及び2つ以上のエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物(a4)と、ジイソシアネート化合物(a5)と、カルボキシル基を有するジオール化合物(a6)と、を反応させて得られる化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)両性界面活性剤が、イミダゾリン型界面活性剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
支持体と、該支持体上に設けられた請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える感光性フィルム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる永久マスクレジスト。
【請求項7】
基板上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層を設ける工程と、
前記感光層に活性光線をパターン照射する工程と、
前記感光層を現像して永久マスクレジストを形成させる工程と、
を備える、永久マスクレジストの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−11665(P2013−11665A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143021(P2011−143021)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】