説明

感光性樹脂組成物、感光性樹脂硬化膜および遮光性画像形成方法

【課題】 ナノインプリントリソグラフィを用い、パターン精度、硬さに優れたブラックマトリックスが得られる感光性組成物を提供する。
【解決手段】 少なくとも着色剤および重合性単量体を含み、かつ、バインダーの含有率が全固形分中の10質量%以下であり、乾燥後の実質的に溶剤を含まない状態において、その粘度が3〜50mPa・sである組成物であって、該組成物を硬化させた厚さ1μmの硬化膜の光学濃度が3.5以上であることを特徴とする、感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物および感光性樹脂硬化膜、ならびに、遮光性画像形成方法に関する。特に、液晶表示装置用部材、さらには、液晶表示装置用ブラックマトリックスに適した感光性樹脂組成物および感光性樹脂硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示ディスプレイ(以下、「LCD」ということがある)は、その表示品位の向上やさらならコストダウンのため様々な取り組みがなされている。特に、LCDパネルの構成部材の中でコストの高いカラーフィルター(以下、「CF」ということがある)のコストダウンについて様々な手法が検討されている。特にブラックマトリックス(以下、「BM」ということがある)は環境やコストの観点などから従来のCr膜から樹脂BMへ転換されつつある。その樹脂BMは、通常、黒色顔料、アルカリ可溶性バインダー、重合性モノマーからなる黒色感光性樹脂組成物を用い、フォトリソ工程で形成される。その樹脂BMの現状の課題は、Cr膜のBMとは膜厚が厚くなり、完成したCFの平坦性が悪く、Cr膜BMでは実施していなかった表面研磨による平坦化工程が必要なこと、またその遮光性ゆえ、パターン形成やプロファイルに問題がまだある。黒色顔料の見直しなどから、さらなる薄層化など検討されているが、パターニング性の観点から膜厚には限界がある。特に膜厚1μm以下にすることは、固形文中に含有するカーボン等の遮光性成分の比率が多くなり、密着、現像性などの問題があり、実現困難であるのが現状である。
【0003】
一方、光ディスク製作で良く知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的に、モールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術(ナノインプリント法)が開発されつつある。ナノインプリント法は、モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0004】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱式ナノインプリント方式(非特許文献1)と、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物を用いる光ナノインプリント方式(非特許文献2)の2通りが提案されている。熱式ナノインプリント方式の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールド(型)をプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写する。多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1、特許文献2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリント法が開示されている。
【0005】
一方、透明モールドを通して光を照射し、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント方式では、室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント方法などの新しい展開も報告されている。このようなナノインプリント法においては、以下のような応用が考えられている。一つ目は、成型した形状そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合で、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。二つ目は、マイクロ構造とナノ構造の同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、μ−TASやバイオチップの作製に応用しようとするものである。三つ目は、高精度な位置合わせと高集積化により、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作成等に適用しようとするものである。近年、これら応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが活発化しており、例えば、特許文献1、特許文献3にはシリコーンウェハをスタンパとして用い、25ナノメートル以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。また、特許文献4には、半導体マイクロリソグラフィ分野に適用されるナノインプリントを使ったコンポジット組成物が開示されている。一方、微細モールド作製技術やモールドの耐久性、モールドの作製コスト、モールドの樹脂からの剥離性、インプリント均一性やアライメント精度、検査技術など半導体集積回路作製にナノインプリントリソグラフィを適用するための検討が活発化し始めた。これらは、主に、ナノスケールのパターニングへの展開であり、BMパターン形成に関しての取り組みはこれまでに開示されていない。
このように光ナノインプリントで用いられる組成物に関し、粘度に関する要望の記載はあるものの、黒色顔料を有するものの報告例は、これまでになかった。
【0006】
ブラックマトリックスとしての主要技術課題は、薄層化、パターン精度、密着性、耐溶剤性など、多くの課題がある。特に薄層化に関しては、カーボンブラックなどの黒色顔料を高濃度で含有することが必要で、従来のフォトリソ用黒色感光性樹脂組成物では、カーボンブラック等の着色顔料成分以外に、密着や、製膜性の観点でポリマー成分や感光性成分を添加する必要があり、薄膜化には限界があった。また、従来のフォトリソ法によるブラックマトリックス形成にはその現像適性からバインダー種の限定やその添加量を少なくできない制約があった。さらにその光学濃度ゆえ光硬化性に問題があり、現像時にアンダーエッチが発生し、パターンの欠け発生や矩形形状が得られない問題が、高光学濃度になればなるほど発生しやすい傾向にあった。また、最近検討されているカラーフィルタの製造方法であるインクジェット方式においてインクの隔壁となるブラックマトリックスでは、そのパターン形状が画素の形状を支配するため、断面が台形形状であるブラックマトリックスを安定に形成する必要があった。さらに、特許文献5にはインプリント法方式でブラックマトリックス表面に微細な凹凸を形成し、撥インク性を発現させる方式が開示されているが、ブラックマトリックス自身を形成することは開示されていない。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】米国特許第5,259,926号公報
【特許文献4】特表2005−527110号公報
【特許文献5】特開2007−183587号公開公報
【0008】
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み成し遂げられたものであり、液晶表示装置用部材、さらには、液晶表示装置用ブラックマトリックスに適した感光性樹脂組成物および感光性樹脂硬化膜を提供することを目的とする。特に、薄膜で高光学濃度を有し、かつ、パターン精度、剥離性、硬さ、欠け欠陥、耐溶剤性に総合的に優れた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
鋭意検討した結果、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)少なくとも着色剤および重合性単量体を含み、かつ、バインダーの含有率が全固形分中の10質量%以下であり、乾燥後の実質的に溶剤を含まない状態において、その粘度が3〜50mPa・sである組成物であって、該組成物を硬化させた厚さ1μmの硬化膜の光学濃度が3.5以上であることを特徴とする、感光性樹脂組成物。
(2)着色剤が黒色着色剤であることを特徴とする、(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3)着色剤が、銀または銀を含む黒色着色剤であることを特徴とする、(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(4)重合性単量体の少なくとも1種が下記一般式(1)で表されることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1は水素原子、または、ヒドロキシメチル基を表し、Xは有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。Yは、炭素−炭素不飽和結合を有する硬化性官能基、炭素−窒素不飽和結合を有する硬化性官能基、酸素原子を含む環状基を有する硬化性官能基または下記一般式(2)で表される基を表す。)
【化2】

(R2はそれぞれアルキル基またはアリール基を表す。)
(5)一般式(1)中のYの少なくとも1つが、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペニテニル基、スチリル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミド基、アクリルアミド基、ビニルシラン基、N−ビニル複素環基およびマレイミド基からなる群より選ばれる、(4)に記載の感光性樹脂組成物。
(6)一般式(1)中のYの少なくとも1つが、イソシアネート基またはニトリル基である、(4)に記載の感光性樹脂組成物。
(7)一般式(1)中のYの少なくとも1つが、オキセタン環、オキシラン環および炭酸エチレン基からなる群より選ばれる、(4)に記載の感光性樹脂組成物。
(8)前記感光性組成物の表面張力が18〜30mN/mの範囲にある、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
(9)少なくとも着色剤および重合性単量体を含み、かつ、バインダーの含有率が全固形分中の10質量%以下であり、乾燥後の実質的に溶剤を含まない状態において、その粘度が3〜50mPa・sである組成物を硬化させてなる、光学濃度が3.5以上で、厚さ1μm以下の感光性樹脂硬化膜。
(10)着色剤が黒色着色剤であることを特徴とする、(9)に記載の感光性樹脂硬化膜。
(11)着色剤が、銀または銀を含む黒色着色剤であることを特徴とする、(9)に記載の感光性樹脂硬化膜。
(12)重合性単量体の少なくとも1種が下記一般式(1)で表されることを特徴とする、(9)〜(11)のいずれか1項に記載の感光性樹脂硬化膜。
【化3】

(一般式(1)中、R1は水素原子、または、ヒドロキシメチル基を表し、Xは有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。Yは、炭素−炭素不飽和結合を有する硬化性官能基、炭素−窒素不飽和結合を有する硬化性官能基、酸素原子を含む環状基を有する硬化性官能基または下記一般式(2)で表される基を表す。)
【化4】

(R2はそれぞれアルキル基またはアリール基を表す。)
(13)一般式(1)中のYの少なくとも1つが、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペニテニル基、スチリル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミド基、アクリルアミド基、ビニルシラン基、N−ビニル複素環基およびマレイミド基からなる群より選ばれる、(12)に記載の感光性樹脂硬化膜。
(14)一般式(1)中のYの少なくとも1つが、イソシアネート基またはニトリル基である、(12)に記載の感光性樹脂硬化膜。
(15)一般式(1)中のYの少なくとも1つが、オキセタン環、オキシラン環および炭酸エチレン基からなる群より選ばれる、(12)に記載の感光性樹脂硬化膜。
(16)前記感光性組成物の表面張力が18〜30mN/mの範囲にある、(9)〜(15)のいずれか1項に記載の感光性樹脂硬化膜。
(17)下記の工程を含む、遮光性画像形成方法。
(1)基板上に、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を設ける工程
(2)必要に応じ50〜150℃の熱処理を実施し、感光性樹脂層の溶剤を除去する工程
(3)凹凸表面を有する型と前記感光性樹脂層とを、前記凹凸表面が接するように圧着させる工程
(4)少なくとも、凹凸表面を有する型を通して光照射する工程
(5)前記凹凸表面を有する型を剥離する工程
(5)必要に応じ、感光性樹脂層を、160〜250℃で熱処理をする工程
(18)(17)に記載の遮光性画像形成方法を用いて形成した感光性樹脂硬化膜。
(19)前記感光性樹脂硬化膜が、液晶表示装置用部材である、(9)〜(16)および(18)のいずれか1項に記載の感光性樹脂硬化膜。
(20)前記感光性樹脂硬化膜が、液晶表示装置用ブラックマトリックスである、(9)〜(16)および(18)のいずれか1項に記載の感光性樹脂硬化膜。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、液晶表示装置用部材、さらには、液晶表示装置用ブラックマトリックスに適した感光性樹脂組成物および感光性樹脂硬化膜を得ることが可能になった。特に、本発明では、薄膜でも高光学濃度を有し、かつ、パターン精度、剥離性、硬さ、欠け欠陥、耐溶剤性に総合的に優れた感光性樹脂硬化膜が得られる。特に、従来の感光性樹脂組成物では溶剤除去後の組成物の粘度が1000mPa・sを越えているのでインプリント方式では十分な画像形成ができなかったが、粘度を3〜50mPa・sとすることで所望のパターンがインプリント方式で形成可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書中において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートを表し、(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。さらに、本明細書中における単量体とモノマーは同義である。本明細書における単量体は、オリゴマー、ポリマーと区別し、質量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、官能基は重合に関与する基をいう。
さらに、本発明で言うナノインプリントとは、およそ数十μmから数十nmのサイズのパターン転写をいい、必ずしも、ナノオーダーのものに限られない。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある)は、硬化前においては透過性が高く、微細凹凸パターンの形成能に優れており、さらには、塗布適性およびその他の加工適性に優れたものとすることができる。また、硬化後においては硬さに優れており、さらには、他の諸点において総合的に優れた塗膜物性とすることができる。そのため、本発明の組成物は、光ナノインプリントリソグラフィに広く用いることができる。
【0014】
即ち、本発明の組成物は、光ナノインプリントリソグラフィに用いる場合、以下のような特徴を有するものとすることができる。
(1)室温での溶液流動性に優れるため、モールド凹部のキャビティ内に該組成物が流れ込みやすく、大気が取り込まれにくいためバブル欠陥を引き起こすことがなく、モールド凸部、凹部のいずれにおいても光硬化後に残渣が残りにくい。
(2)硬化後の硬化膜は機械的性質に優れ、塗膜と基板の密着性に優れ、塗膜とモールドの剥離性に優れるため、モールドを引き剥がす際にパターン崩れや塗膜表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こすことがないため良好なパターンを形成できる。
(3)塗布均一性に優れるため、大型基板への塗布・微細加工分野などに適する。
(4)残膜性、耐擦傷性などの機械特性、耐溶剤性が高いので、ブラックマトリックスとしてとして好適に用いることができる。
【0015】
例えば、本発明の組成物は、これまで展開が難しかった半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイ用の遮光膜その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用遮光膜、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルター、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用できるようになる。
【0016】
本発明の組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。本発明の組成物は、25℃における粘度が、乾燥後の実質的に溶剤を含まない状態において3〜50mPa・sであり、好ましくは3〜30mPa・sであり、より好ましくは3〜20mPa・sである。
本発明の組成物の粘度を3mPa・s以上とすることにより、基板塗布適性の問題や膜の機械的強度の低下が生じにくい傾向にある。具体的には、粘度を3mPa・s以上とすることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするのを抑止できる傾向にあり、好ましい。一方、本発明の組成物の粘度を50mPa・s以下とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなり好ましい。
【0017】
本発明の組成物は、硬化後の膜厚が5μm以下となるように用いることが好ましい。特に好ましくは0.5〜3.0μmである。本発明の組成物は、このように薄膜化しても、高光学濃度を有し、かつ、パターン精度、剥離性、硬さ、欠け欠陥および耐溶剤性に総合的に優れた硬化膜とすることができる。特に、着色剤の顔料として、銀または銀を含む黒色着色剤を用いる場合に、このような薄膜化できる点で本発明は極めて有意である。
本発明の組成物は、該組成物を硬化させた厚さ1μmの硬化膜の光学濃度が3.5以上であり、4.0以上であることが好ましい。
【0018】
ここで、本発明の組成物における、「乾燥後の実質的に溶剤を含まない状態において」とは、例えば、残留溶剤量が0.1重量%以下であり、溶剤を全く含まない状態であることが最も好ましい。
また、本発明の組成物は、予め公知の有機溶剤を含んでいてもよい。乾燥前の状態で、実質的に溶剤を含む場合は、固形分濃度で10〜99質量%となるように溶剤量を選択する。本発明の組成物に好ましく使用できる有機溶剤の種類としては、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物やフォトレジストで一般的に用いられている溶剤であり、本発明で用いる化合物を溶解および均一分散させるものであれば良く、かつこれらの成分と反応しないものであれば特に限定されない。
【0019】
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソフチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類等のエステル類などが挙げられる。
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。
これらの溶媒は、1種の単独使用でも、2種類以上の併用でも構わない。
これらの溶媒の中でも、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンが特に好ましい。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)は、少なくとも着色剤および重合性単量体を含み、かつ、バインダーの含有率が全固形分中の10質量%以下である。さらに、本発明の組成物には、その他の重合性単量体、光重合開始剤等を含んでいてもよい。以下、これらの内容を詳細に説明する。
【0021】
重合性単量体
本発明の組成物に含まれる単量体(以下、「本発明における単量体」ということがある)について説明する。本発明における単量体は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。本発明の組成物は、本発明における単量体を、好ましくは組成物の全固形分の10〜99質量%、より好ましくは、20〜80質量%の範囲で含む。
本発明における単量体は、好ましくは、一般式(1)で表される単量体である。
【化5】

(一般式(1)中、R1は水素原子、または、ヒドロキシメチル基を表し、Xは有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。Yは、炭素−炭素不飽和結合を有する硬化性官能基、炭素−窒素不飽和結合を有する硬化性官能基、酸素原子を含む環状基を有する硬化性官能基または下記一般式(2)で表される基を表す。)
【化6】

(R2はそれぞれアルキル基またはアリール基を表す。)
【0022】
Xで表される有機基は、好ましくは2〜7価の有機基を表し、脂肪族、芳香族のどちらでも良く、その総炭素数は2〜20が好ましい。さらにその有機基は、酸素原子、硫黄原子、エステル基、ウレタン基で遮断されていても良い。具体的には、プロパントリオール骨格、ペンタエリスリトール骨格、脂肪族環状骨格が挙げられる。
Yで表される炭素−炭素不飽和結合を有する硬化性官能基は、2重結合および3重結合のどちらでも良く、不飽和結合に置換基を有しても良く、鎖状、環状の何れであっても良い。その総炭素数は2〜18が好ましい。具体的には、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペニテニル基、スチリル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミド基、アクリルアミド基、ビニルシラン基、N−ビニル複素環基およびマレイミド基が挙げられる。
Yで表される炭素−窒素不飽和結合を有する硬化性官能基は、例えば、イソシアネート基、ニトリル基が挙げられる。
Yで表される酸素原子を含む環状基を含む硬化性官能基としては、オキシラン環、オキセタン環、炭酸エチレン基が挙げられる。さらに好ましくはオキシラン環、オキセタン環が挙げられる。
2で表されるアルキル基としては炭素数1〜8のアルキル基がこのましい。その様なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ベンジル基が挙げられる。 アリール基としては炭素数6〜12のアリール基が好ましい。その様なアリール基としては、フェニル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基があげられる。
mは、好ましくは、1または2であり、nは、好ましくは、1〜3である。mが2以上のとき、複数のR1は同一であってもよいし、それぞれ異なっていても良い。また、nが2以上のとき、複数のYは同一であってもよいし、それぞれ異なっていても良い。
【0023】
ここで、本発明における単量体の好ましい例を示すが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
他の重合性単量体
本発明の組成物は、さらに、組成物粘度、膜硬度、可とう性等の改良を目的に、他の重合性単量体を含んでいてもよく、該他の重合性単量体は、2官能以上の重合性官能基を有する重合性単量体であることが好ましい。特に、本発明の組成物に含まれる他の重合性単量体の50重量%以上が、2官能以上の重合性官能基を有する重合性単量体であることが好ましい。以下、本発明で用いる他の重合性単量体について詳細に説明する。
本発明の他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を挙げることができる。具体的には、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールが例示される。
【0026】
さらに他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個以上有する多官能重合性不飽和単量体を用いることがより好ましい。
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(ジ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0027】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0028】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0030】
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、上記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーやポリマーを本発明の目的を達成する範囲で配合することができる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0031】
本発明で用いる他の重合性単量体として、オキシラン環を有する化合物も採用できる。オキシラン環を有する化合物としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0032】
好ましく使用することのできるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0033】
これらの成分の中、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0034】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0036】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は、適宜選択すれば良く、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0037】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、本発明で用いる他の重合性単量体として、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0039】
その他、本発明の1官能重合体と併用できるスチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができ、ビニルナフタレン誘導体としては、例えば、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0040】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッソ原子を有する化合物も併用することができる。
【0041】
本発明で用いる他の重合性単量体として、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを配合できる。例えば、1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0042】
他の重合性単量体は、本発明の組成物中に、10〜90質量%の範囲で含むことが好ましく、20〜80質量%の範囲で含むことがより好ましい。特に上述したとおり、2官能以上の重合性官能基を有する重合性単量体が、該他の重合性単量体の50重量%以上を占めることが好ましい。
【0043】
次に、本発明における単量体および他の重合性単量体(以下、これらを併せて「重合性不飽和単量体」ということがある)の好ましいブレンド形態について説明する。本発明の組成物は、反応性の異なる2種類以上の硬化性官能基を同一分子内に有し、かつ、該硬化性官能基の少なくとも1つがα,β−不飽和エステル基である単量体を必須成分とし、他の重合性単量体を含んでいることが好ましい。
1官能の重合性単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明の組成物の粘度を下げるのに有効である。しかし、硬化膜の機械強度を低下する原因となる為、その使用量は組成物粘度と硬化膜の機械強度のバランスを勘案しながら調節される。1官能の重合性単量体の使用比率は組成物の低粘度化を抑制するためには、全重合性不飽和単量体の15質量%以上とすることが好ましい。一方、硬化膜の機械強度の低下をより小さくするには、全重合性不飽和単量体の30質量%以下とすることが好ましい。
硬化膜の機械強度を向上させるために、2官能および3官能の重合性単量体を用いることが好ましく、特に、3官能の重合性単量体を用いることにより、機械強度を向上させることができる。
不飽和結合含有基を2個有する単量体(2官能重合性不飽和単量体)は、全重合性不飽和単量体の好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下の範囲で添加される。1官能および2官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは1〜95質量%、より好ましくは3〜95質量%、特に好ましくは5〜90質量%の範囲で添加される。不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
【0044】
着色剤
本発明の組成物に含まれる着色剤(以下、「本発明における着色剤」ということがある)について説明する。
本発明における着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等を好適に用いることができ、具体的には、特開2005−17716号公報の段落番号0038〜0054に記載の顔料および染料や、特開2004−361447号公報の段落番号0068〜0072に記載の顔料や、特開2005−17521号公報の段落番号0080〜0088に記載の着色剤を好適に用いることができる。有機顔料としては、C.I.Pigment Yellow 11, 24, 31, 53, 83, 99, 108, 109, 110, 138, 139,151, 154, 167、C.I.Pigment Orange 36, 38, 43、C.I.Pigment Red 105, 122, 149, 150, 155, 171, 175, 176, 177, 209、C.I.Pigment Violet 19, 23, 32, 39、C.I.Pigment Blue 1, 2, 15, 16, 22, 60, 66、C.I.Pigment Green 7, 36, 37、C.I.Pigment Brown 25, 28、C.I.Pigment Black 1, 7および、カーボンブラックを例示できる。本発明の組成物の固形分中の着色剤の含量は、光遮蔽性観点から、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることがさらに好ましい。20質量%未満では、遮蔽性が十分でなく、80質量%を超える場合は、パターン硬度が不足する問題がある。
【0045】
本発明では、黒色着色剤を用いる場合、顔料の少なくとも1種を用いることが好ましい。顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、本発明において好適に使用される顔料の例としては、特開2005−17716号公報の段落番号0038〜0040に記載の色剤や、特開2005−361447号公報の段落番号0068〜0072に記載の顔料や、特開2005−17521号公報の段落番号0080〜0088に記載の着色剤を挙げることができる。
【0046】
前記顔料の中でも、カーボンブラック、チタンブラックまたは黒鉛が好適なものとして挙げられる。
中でも、本発明においては、遮光性およびコストの観点から、着色剤の少なくとも1種がカーボンブラックであることが好ましい。
カーボンブラックの例としては、Pigment Black(ピグメント・ブラック)7(カーボンブラック C.I.No.77266)が好ましい。市販品として、三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、三菱カーボンブラック #5(三菱化学(株)製)が挙げられる。
【0047】
チタンブラックの例としては、TiO2、TiO、TiNやこれらの混合物が好ましい。市販品として、三菱マテリアルズ(株)製の(商品名)12Sや13Mが挙げられる。チタンブラックの平均粒子サイズは40〜100nmが好ましい。
黒鉛の例としては、粒子サイズがストークス径で3μm以下のものが好ましい。3μm以下の黒鉛を用いることで、遮光パターンの輪郭形状が均一になり、シャープネスが良好になる。また、0.1μ以下の粒子サイズを有する粒子の存在比率が黒鉛中の70質量%以上であることが好ましい。
【0048】
前記顔料は、下記の金属系微粒子と併用して用いる場合、色相と補色関係にあるものを用いることが好ましい。また、顔料は1種でも2種以上を組み合せて用いてもよい。好ましい顔料の組合せとしては、赤色系および青色系の互いに補色関係にある顔料混合物と黄色系および紫色系の互いに補色関係にある顔料混合物との組合せや、前記の混合物にさらに黒色の顔料を加えた組合せや、青色系と紫色系と黒色系との顔料の組合せを挙げることができる。
顔料の球相当直径は、5nm〜5μmが好ましく、10nm〜1μmがより好ましく、特に、カラーフィルター用としては、20nm〜0.5μmが好ましい。
【0049】
金属粒子または金属を有する粒子
本発明の組成物は、黒色着色剤の少なくとも1種として、金属粒子または金属を含む着色剤(以下、「本発明における金属系微粒子」ということがある。)を含むこともまた好ましい。これにより、薄膜で高い光学濃度が得られる表示装置用部材を形成することができる。
金属粒子、金属を有する粒子における金属としては、特に限定されず、いかなるものを用いてもよい。金属粒子は、2種以上の金属を組合せてなるものであってもよく、合金からなるものであってもよい。また、金属を有する粒子は、少なくとも1種の金属を有する金属化合物粒子であればよく、金属と金属化合物との複合粒子でもよい。
【0050】
金属粒子
金属粒子としては、特に長周期律表(IUPAC 1991)の第4周期、第5周期、および第6周期からなる群から選ばれる金属を主成分(60質量%以上)として含むことが好ましい。また、第2〜14族からなる群から選ばれる金属を含有することが好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族および第14族からなる群から選ばれる金属を主成分として含むことがより好ましい。これらの金属のうち、金属粒子としては、第4周期、第5周期または第6周期の金属であって、第2族、第10族、第11族、第12族、または第14族の金属の粒子がさらに好ましい。
【0051】
前記金属粒子を構成する好ましい金属の例としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、カルシウム、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。さらに好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、カルシウム、イリジウム、およびこれらの合金、より好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、錫、カルシウム、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましい金属は、銅、銀、金、白金、錫、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種である。とりわけ銀またはその合金が好ましく(銀としてはコロイド銀が好ましい)、銀錫合金部を有する粒子が最も好ましい。銀錫合金部を有する粒子については後述する。
【0052】
金属化合物粒子
「金属化合物」とは、前記金属と金属以外の他の元素との化合物である。金属と他の元素との化合物としては、金属の酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩などが挙げられ、金属化合物粒子としてはこれらの粒子が好適である。中でも、色調や微粒子形成のしやすさから、硫化物の粒子が好ましい。
金属化合物の例としては、酸化銅(II)、硫化鉄、硫化銀、硫化銅(II)、チタンブラックなどがあるが、色調、微粒子形成のしやすさや安定性の観点から、硫化銀が特に好ましい。
【0053】
複合粒子
複合粒子は、金属と金属化合物とが結合して1つの粒子になったものをいう。例えば、粒子の内部と表面で組成の異なるもの、2種の粒子が合一したもの等を挙げることができる。また、金属化合物と金属とはそれぞれ1種でも2種以上であってもよい。
【0054】
金属化合物と金属との複合微粒子の具体例としては、銀と硫化銀の複合微粒子、銀と酸化銅(II)の複合微粒子などが好適に挙げられる。
本発明における金属微粒子は、コア・シェル型の複合粒子(コアシェル粒子)であってもよい。コア・シェル型の複合粒子(コアシェル粒子)とは、コア材料の表面をシェル材料でコートしたものであり、その具体例として、特開2006−18210号公報の段落番号0024〜0027に記載のコア・シェル微粒子が挙げられる。
【0055】
銀錫合金部を有する粒子
本発明における金属系微粒子の少なくとも1種は、銀錫合金部を有する粒子であることが好ましい。銀錫合金部を有する粒子としては、銀錫合金からなるもの、銀錫合金部分とその他の金属部分からなるもの、および銀錫合金部分と他の合金部分からなるものを含む。
【0056】
銀錫合金部を有する粒子において、少なくとも一部が銀錫合金で構成されていることは、例えば、(株)日立製作所製のHD−2300とノーラン(Noran)社製のEDS(エネルギー分散型X線分析装置)とを用いて、加速電圧200kVによる各々の粒子の中心15nm□エリアのスペクトル測定により確認することができる。
【0057】
銀錫合金部を有する粒子は、黒濃度が高く、少量であるいは薄膜で優れた遮光性能を発現し得ると共に、高い熱安定性を有するので、黒濃度を損なうことなく高温(例えば、200度以上)での熱処理が可能であり、安定的に高度の遮光性を確保することができる。例えば、高度の遮光性が要求され、一般にベーク処理が施されるカラーフィルター用の遮光膜(いわゆるブラックマトリクス)などに好適である。
【0058】
銀錫合金部を有する粒子は、錫(Sn)に対する銀(Ag)の割合を30〜80モル%としてAgと錫(Sn)とを複合化(例えば、合金化)して得られるものが好ましい。Agの割合を特に前記範囲とすることで、高温域での熱安定性が高く、光の反射率を抑えた高い黒濃度を得ることができる。特に、Agの割合が75モル%である粒子、すなわちAgSn合金粒子は作製が容易であり、得られた粒子も安定で好ましい。
【0059】
銀錫合金部を有する粒子は、坩堝などの中で加熱、溶融混合して形成する等の一般的方法で合金化する等して形成することが可能であるが、Agの融点は900℃付近で、Snの融点は200℃付近であって両者の融点に大きな差があるうえ、複合化(例えば合金化)後の微粒子化工程が余分に必要になることから、粒子還元法によるのが好ましい。すなわち、Ag化合物とSn化合物とを混合し、これを還元するものであり、金属Agと金属Snを同時に接近した位置で析出させ、複合化(例えば合金化)と微粒子化とを同時に達成する方法である。Agは還元されやすく、Snよりも先に析出する傾向にあるため、Agおよび/またはSnを錯塩にすることにより析出タイミングをコントロールすることが好適である。
【0060】
前記Ag化合物としては、硝酸銀(AgNO3)、酢酸銀(Ag(CH3COO))、過塩素酸銀(AgClO4・H2O)等が好適に挙げられる。中でも特に、酢酸銀が好ましい。前記Sn化合物としては、塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl4)、酢酸第一錫(Sn(CH3COO)2)、等が好適に挙げられる。中でも特に、酢酸第一錫が好ましい。
【0061】
還元は、還元剤を用いる方法、電解により還元する方法等を好ましい還元方法として挙げることができる。中でも、還元剤を用いた前者による方法が、微細な粒子が得られる点で好ましい。前記還元剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、アスコルビン酸、ハイドロキノン、カテコール、パラアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。中でも、揮発しやすく、表示装置に悪影響を与えにくい点で、ヒドロキシアセトンが特に好ましい。
【0062】
本発明における金属系微粒子は、市販のものを用いることができるほか、金属イオンの化学的還元法、無電解メッキ法、金属の蒸発法等により調製することが可能である。
例えば、棒状の銀微粒子は、球形銀微粒子を種粒子としてその後、銀塩をさらに添加し、CTAB等の界面活性剤の存在下でアスコルビン酸など比較的還元力の弱い還元剤を用いることにより、銀棒やワイヤーが得られる。これは、Advanced Materials 2002,14,80-82に記載がある。また、同様の記載が、Materials Chemistry and Physics 2004,84,197-204、Advanced Functional Materials 2004,14,183-189になされている。
【0063】
また、電気分解を用いた方法として、Materials Letters 2001,49,91-95やマイクロ波を照射することにより銀棒を生成する方法がJournal of Materials Research 2004,19,469-473に記載されている。逆ミセルと超音波の併用した例として、Journal of Physical Chemistry B 2003,107,3679-3683が挙げられる。
金に関しても同様に、Journal of Physical Chemistry B 1999,103、3073-3077およびLangmuir1999,15,701-709、Journal of American Chemical Society 2002,124,14316-14317に記載されている。
棒状の粒子の形成方法は、前記記載の方法を改良(添加量調整、pH制御)しても調製できる。
【0064】
本発明における金属系微粒子は、より無彩色に近づけるために、色々な種類の粒子を組み合わせることにより得ることができる。例えば、粒子形状を球形や立方体から平板状(六角形、三角形)、棒状へ変化させたものを組み合わせることにより、より高い透過濃度を得ることができろ。このような金属系微粒子を用いることで遮光層を形成した際に薄膜化を図ることができる。
【0065】
前記金属系微粒子の粒度分布としては、粒子の分布を正規分布近似し、その数平均粒子サイズの粒度分布幅D90/D10が、1.2以上50未満であることが好ましい。ここで、粒子サイズは長軸長さLを粒子直径としたものであり、D90は平均粒子サイズに近い粒子の90%が見出される粒子直径であり、D10は平均粒子サイズに近い粒子の10%が見出される粒子直径である。粒度分布幅は色調の観点から、好ましくは2〜30であり、さらに好ましくは4〜25である。分布幅が1.2未満であると色調が単色に近くなる場合があり、50以上であると粗大粒子による散乱によって濁りが生じる場合がある。
【0066】
なお、前記粒度分布幅D90/D10の測定は、具体的には、膜中の金属粒子を後述する三軸径を測定する方法にてランダムに100個測定し、長軸長さLを粒子直径とし、粒径分布を正規分布近似し、平均粒子サイズに近い粒子の数で90%の範囲となる粒子直径をD90とし、平均粒子サイズから数で10%の範囲となる粒子直径をD10とすることで、D90/D10を算出することができる。
【0067】
三軸径
本発明における金属系微粒子は、下記の方法によって直方体として捉えられ、各寸法が測定される。すなわち、1個の金属系微粒子がちょうど(きっちりと)収まるような三軸径の直方体の箱を考え、この箱の長さの一番長いものを長軸長さLとし、厚みt、幅bをもってこの金属系微粒子の寸法と定義する。前記寸法には、L>b≧tの関係を持たせ、同一の場合以外はbとtの大きい方を幅bと定義する。具体的には、まず、平面上に金属系微粒子を、最も重心が低くて安定に静止するように置く。次に、平面に対し直角に立てた2枚の平行な平板により金属系微粒子を挟み、その平板間隔が最も短くなる位置の平板間隔を保つ。次に、前記平板間隔を決する2枚の平板に対し直角で前記平面に対しても直角の2枚の平行な平板により金属系微粒子を挟み、この2枚の平板間隔を保つ。最後に金属系微粒子の最も高い位置に接触するように天板を前記平面に平行に載せる。この方法により平面、2対の平板および天板によって画される直方体が形成される。
なお、コイル状やループ状のものはその形状を伸ばした状態で前記測定を行なった場合の値と定義する。
【0068】
・長軸長さL
棒状の金属系微粒子の場合など、前記長軸長さLは、10nm〜1000nmであることが好ましく、10nm〜800nmであることがより好ましく、20nm〜400nmである(可視光の波長より短い。)ことが最も好ましい。Lが10nm以上であることにより、製造上調製が簡便で、かつ耐熱性や色味も良好になる利点があり、1000nm以下であることにより、面状欠陥が少ないという利点がある。
【0069】
・幅bと厚みtとの比
棒状の金属系微粒子の場合など、幅bと厚みtとの比は、100個の棒状金属微粒子について測定した値の平均値と定義する。棒状の金属系微粒子の幅bと厚みtとの比(b/t)は2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。b/t比が2.0を超えると平板状に近くなり、耐熱性が低下することがある。
【0070】
・長軸長さLと幅bおよび厚みtとの関係
長軸長さLは、幅bの1.2倍〜100倍であることが好ましく、1.3倍〜50倍であることがより好ましく、1.4倍〜20倍であることが特に好ましい。長軸長さLが幅bの1.2倍未満となると平板の特徴が現れて耐熱性が悪化することがある。また、長軸長さLが幅bの100倍を超えると黒色濃度が低くなって薄層高濃度化ができないことがある。
【0071】
・長さLと幅bおよび厚みtとの測定
長さL、幅bおよび厚みtの測定は、電子顕微鏡による表面観察図(×500000)と、原子間力顕微鏡(AFM)によってすることができ、100個の棒状の金属系微粒子について測定した値の平均値とする。原子間力顕微鏡(AFM)には、いくつかの動作モードがあり、用途によって使い分けている。
大別すると以下の3つになる。
(1)接触方式:プローブを試料表面に接触させ、カンチレバーの変位から表面形状を測定する方式
(2)タッピング方式:プローブを試料表面に周期的に接触させ、カンチレバーの振動振幅の変化から表面形状を測定する方式
(3)非接触方式:プローブを試料表面に接触させずに、カンチレバーの振動周波数の変化から表面形状を測定する方式
【0072】
一方、前記非接触方式は、極めて弱い引力を高感度に検出する必要がある。そのため、カンチレバーの変位を直接測定する静的な力の検出では難しく、カンチレバーの機械的共振を応用している。 前記の3つの方法を挙げることができるが、試料に合わせいずれかの方法を選択することが可能である。
【0073】
なお、本発明において、前記電子顕微鏡としては、日本電子社製の電子顕微鏡JEM2010を用いて、加速電圧200kVで測定を行なうことができる。また、原子間力顕微鏡(AFM)は、セイコーインスツルメンツ株式会社製のSPA−400が挙げられる。原子間力顕微鏡(AFM)での測定では、比較にポリスチレンビーズを入れておくことにより測定が容易になる。
【0074】
本発明においては、金属粒子または金属を有する粒子として、金属粒子、合金を含む粒子または金属化合物粒子が好ましく、銀粒子、銀合金を含む粒子または銀化合物粒子がより好ましく、銀錫合金部を有する粒子が最も好ましい。
【0075】
本発明において、金属粒子または金属を有する粒子の数平均粒子サイズは0.1μm以下が好ましく0.08μm以下がさらに好ましく、0.05μm以下が特に好ましい。粒子の数平均粒子サイズが0.1μm以下であると、表面平滑性が良好で、且つ、粗大粒子によるブツ故障も少なくなる。
【0076】
−本発明における金属系微粒子の分散−
本発明における金属系微粒子は、安定な分散状態で存在していることが好ましく、例えば、コロイド状態であることがより好ましい。コロイド状態の場合には、例えば、金属微粒子が実質的に微粒子状態で分散されていることが好ましい。ここで、実質的に分散しているとは、一次粒子が凝集または軟凝集せず個々に独立に分散している状態をいう。
【0077】
分散を行なう際の分散剤や、本発明の組成物に配合してもよい添加剤としては、特開2005−17322号公報の段落番号0027〜0031に記載の分散剤や添加剤が、本発明においても好適なものとして挙げられる。
【0078】
本発明の感光性組成物における金属系微粒子(および必要に応じて顔料)の含有量としては、例えば、カラーフィルターの作製時など、ポストベークの際に金属系微粒子(および必要に応じて顔料)が融着するのを防止することを考慮すると、形成された遮光層の質量に対して10〜90質量%程度、好ましくは10〜80質量%になるように調節することが好ましい。また、金属系微粒子(および必要に応じて顔料)の含有量は、平均粒子サイズによる光学濃度の変動を考慮して行なうことが好ましい。
【0079】
上記顔料は分散液として使用することが望ましい。この分散液は、前記顔料と顔料分散剤とを予め混合して得られる組成物を、有機溶媒(またはビヒクル)に添加して分散させることによって調製することができる。前記ビビクルとは、塗料が液体状態にある時に顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。前記顔料を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、朝倉邦造著、「顔料の事典」、第一版、朝倉書店、2000年、438項に記載されているニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の公知の分散機が挙げられる。さらに該文献310項記載の機械的摩砕により、摩擦力を利用し微粉砕してもよい。有機溶剤を含まない分散体を調製するには予め高揮発性(低沸点)溶剤を含んだ系において分散処理を実施し、その後溶剤を揮発させるあるいは、溶剤揮発と同時に上記単量体を徐々に添加して最終的に溶剤を除去することができる。さらに上記単量体を希釈媒体として利用し分散することもできる。
また、本発明では、分散体の調製にあたり、分散助剤を併用してもよい。
本発明で用いる着色剤(顔料)は、分散安定性の観点から、数平均粒子サイズ0.001〜1μmのものが好ましく、0.01〜0.5μmのものがより好ましく、0.01〜0.1μmのものがさらに好ましく、0.02〜0.08のものが特に好ましい。また、顔料数平均粒子サイズが0.1μmを超えると、遮光性が低下し、好ましくない。尚、ここで言う「粒子サイズ」とは粒子の電子顕微鏡写真画像を同面積の円とした時の直径を言い、また「数平均粒子サイズ」とは多数の粒子について上記の粒子サイズを求め、この100個の平均値をいう。
【0080】
本発明の組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させることができる。
【0081】
光重合開始剤
本発明の組成物には、光重合開始剤が含まれることが好ましい。本発明に用いられる光重合開始剤は、全組成物中、例えば、0.1〜15質量%含有し、好ましくは0.2〜12質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となることが好ましい。
光重合開始剤の割合を0.1質量%以上とすることにより、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0082】
本発明で用いる光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。
【0083】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としてはCiba社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)907(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Darocur(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174および1020、CGI242(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、BASF社から入手可能なLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L(2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド)、ESACUR日本シイベルヘグナー社から入手可能なESACURE 1001M(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、N−1414旭電化社から入手可能なアデカオプトマー(登録商標)N−1414(カルバゾール・フェノン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1717(アクリジン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1606(トリアジン系)、三和ケミカル製のTFE−トリアジン(2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のTME−トリアジン(2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のMP−トリアジン(2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−113(2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−108(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ベンゾフェノン、4,4‘−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイル ビフェニル、4−ベンゾイル ジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4‘,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2‘−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート等が挙げられる。
【0084】
さらに本発明の組成物には、光重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0085】
界面活性剤
本発明の組成物には、界面活性剤を添加してもよく、本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001未満では、塗布の均一性の効果が不十分な場合があり、一方、5質量%を越えると、モールド転写特性を悪化させる場合がある。
界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。
ここで、フッ素・シリコーン系界面活性剤とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることにより、本発明の組成物を、半導体素子製造用のシリコーンウェハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成されるなど基板上の塗布時に起こるストリエーションや鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決する目的、およびモールド凹部のキャビティ内への組成物の流動性を良くし、モールドとレジスト間の剥離性を良くし、レジストと基板間の密着性を良くする、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明の組成物において、上記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。さらにインクジェット用ブラックマトリックスに応用した場合、パターン表面が撥インク性となり好都合である。
【0086】
本発明で用いる非イオン性フッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム社製)、商品名サーフロン「S−382」(旭硝子社製)、EFTOP「EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100」(トーケムプロダクツ社製)、商品名PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA社)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18(いずれも(株)ネオス社製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451(いずれもダイキン工業(株)社製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられ、非イオン性ケイ素系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業社製)、KP−341(信越化学工業社製)が挙げられる。
本発明で用いる、フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも信越化学工業社製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0087】
酸化防止剤
さらに、本発明の組成物には、公知の酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤を含めることにより、膜厚減少をより低減することができる。本発明に用いられる酸化防止剤は、全組成物中、例えば、0.01〜10質量%含有し、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
酸化防止剤は、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中では、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0088】
酸化防止剤の市販品としては、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業製)、アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0089】
バインダー
本発明の組成物は、バインダーを含んでいてもよい。バインダーとしては、種々の公知のポリマーが使用できる。本発明によれば、従来のフォトリソ用ではその現像性の観点から用いられるバインダーには酸基などアルカリ可溶性が必要であったが、本発明に用いられるバインダーはその制約がない。具体的には、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニルまたはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステルまたはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルまたはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステルまたはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子などが挙げられる。用いるバインダーの重量平均分子量は1,000〜100,000であり、1000以下では、バインダーとしての効果が得られず、100000を超えると、本発明の組成物の粘度が高くなりすぎる。バインダーの添加量は、好ましくは全固形分に対し10重量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。10重量%より多いと、相対的に顔料添加量の減少および単量体添加量の減少を招く傾向にあり、硬化物強度の低下、光学濃度の低下をきたす場合がある。特に、本発明の組成物では、バインダーを含まないものとすることができ、これまでにない高顔料濃度の実現が可能になるという点から極めて有意である。
【0090】
その他の成分
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0091】
剥離性をさらに向上する目的で、本発明の組成物には、離型剤を任意に配合することができる。具体的には、本発明の組成物からなる感光性樹脂層に押し付けたモールドを、該感光性樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離できるようにする目的で添加される。離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、シリコーン系離型剤、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系化合物等が何れも使用可能である。また、これらの離型剤をモールドに付着させておくこともできる。
【0092】
シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる上記光硬化性樹脂と組み合わせた時にモールドからの剥離性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなる。シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とする離型剤であり、例えば、未変性または変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等が該当し、一般的にハードコート用組成物で用いられているシリコーン系レベリング剤の適用も可能である。
【0093】
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性したものであり、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
【0094】
変性シリコーンオイルは組成物成分との適度な相溶性があることが好ましい。特に、組成物中に必要に応じて配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、本発明の組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の光硬化性を有する官能基で変性されたシリコーンの場合は、本発明の組成物と架橋するため、硬化後の特性に優れる。
【0095】
トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサンは表面にブリードアウトし易く剥離性に優れており、表面にブリードアウトしても密着性に優れ、金属蒸着やオーバーコート層との密着性にも優れている点で好ましい。
上記離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0096】
離型剤を本発明の組成物に添加する場合、組成物全量中に0.001〜10質量%の割合で配合することが好ましく、0.01〜5質量%の範囲で添加することがより好ましい。離型剤の割合が上記範囲未満では、モールドと本発明の組成物からなる感光性樹脂層の剥離性向上効果が不充分となりやすい。一方、離型剤の割合が上記範囲を超えると組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身および近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こす等の点で好ましくない。
離型剤の割合が0.01質量%以上とすることにより、モールドと光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物層の剥離性向上効果が充分となる。一方、離型剤の割合が上記範囲を10質量%以内だと、組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じにくく、製品において基材自身および近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害しにくく、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こしにくい等の点で好ましい。
【0097】
本発明の組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0098】
本発明の組成物に用いるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;および、その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0099】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0100】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0101】
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0102】
上記有機金属カップリング剤は、本発明の組成物の固形分全量中に0.001〜10質量%の割合で任意に配合できる。有機金属カップリング剤の割合を0.001質量%以上とすることにより、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与の向上についてより効果的な傾向にある。一方、有機金属カップリング剤の割合を10質量%以下とすることにより、本発明の組成物の安定性、成膜性の欠損を抑止できる傾向にあり好ましい。
【0103】
本発明の組成物には、貯蔵安定性等を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、本発明の組成物の全量に対して任意に0.001〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0104】
紫外線吸収剤の市販品としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物の全量に対して任意に0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0105】
光安定剤の市販品としては、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられる。光安定剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0106】
老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。老化防止剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0107】
本発明の組成物には基板との接着性や膜の柔軟性、硬度等を調整するために可塑剤を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジ(n−ブチル)アジペート、ジメチルスベレート、ジエチルスベレート、ジ(n−ブチル)スベレート等があり、可塑剤は組成物中の30質量%以下で任意に添加することができる。好ましくは20質量%以下で、より好ましくは10質量%以下である。可塑剤の添加効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0108】
本発明の組成物には基板との接着性等を調整するために密着促進剤を添加しても良い。密着促進剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2'−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。密着促進剤は、組成物中の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。密着促進剤の添加は効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0109】
本発明の組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も添加することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0110】
本発明の組成物は、パターン形状、感度等を調整する目的で、必要に応じて光塩基発生剤を添加してもよい。例えば、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2'−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2',4'−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が好ましいものとして挙げられる。
【0111】
また、本発明の組成物では、機械的強度、柔軟性等を向上するなどの目的で、任意成分としてエラストマー粒子を添加してもよい。
本発明の組成物に任意成分として添加できるエラストマー粒子は、平均粒子サイズが好ましくは10nm〜700nm、より好ましくは30〜300nmである。例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などのエラストマーの粒子である。またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を用いることができる。エラストマー粒子は架橋構造をとっていてもよい。
【0112】
エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0113】
これらエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明の組成物におけるエラストマー成分の含有割合は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。
【0114】
本発明の組成物には、硬化収縮の抑制、熱安定性を向上するなどの目的で、塩基性化合物を任意に添加してもよい。塩基性化合物としては、アミンならびに、キノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0115】
本発明の組成物には、光硬化性向上のために、連鎖移動剤を添加しても良い。具体的には、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を挙げることができる。
【0116】
本発明の組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。本発明の組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0117】
本発明の組成物を、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)に用いる場合、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属または有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが好ましい。本発明の組成物では、特に、NaおよびK元素の含量が、1000ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。
【0118】
次に、本発明の組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明では、以下の工程により、遮光性画像(パターン)を設けることが好ましい。
(1)基板上に、本発明の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を設ける工程
(2)必要に応じ50〜150℃の熱処理を実施し、感光性樹脂層の溶剤を除去する工程
(3)凹凸表面を有する型と前記感光性樹脂層とを、前記凹凸表面が接するように圧着させる工程
(4)少なくとも、凹凸表面を有する型を通して光照射する工程
(5)前記凹凸表面を有する型を剥離する工程
(5)必要に応じ、感光性樹脂層を、160〜250℃で熱処理をする工程
【0119】
(1)基板上に感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を設ける工程
本発明の組成物を用いて感光性樹脂層を設けるにあたり、組成物の塗布は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、塗布することにより形成することができる。本発明の組成物は、多重層塗布してもよい。
本発明の組成物からなる層の膜厚は、1μm以下であり、LCDなどに用いられるブラックマトリックスにおいては、0.5〜1.0μmであることが好ましい。
【0120】
本発明の組成物を用いた遮光性画像形成方法においては、凹凸表面を有する型の材料(モールド材)は、光透過性の材料を選択する必要がある。本発明の組成物を塗布するための基板は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、プラズマディスプレイ(PDP)の電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0121】
(2)必要に応じ、50〜150℃の熱処理を実施し、感光性樹脂層の溶剤を除去する工程
本発明では、用いる感光性樹脂組成物に溶剤が含まれる場合は、乾燥工程により、その溶剤を除去する。乾燥工程は50〜150℃の温度で、公知の方式、コンベクションオーブン、ホットプレート、赤外線ヒータなどを用いた方式によって行うことができる。また、乾燥は、必要に応じて減圧下、500〜10-6Torrにて行ってもよい。
【0122】
(3)凹凸表面を有する型と感光性樹脂層とを、凹凸表面が接するように圧着させる工程
本発明では、凹凸表面を有する型(モールド)を感光性樹脂層と凹凸表面(モールドパターン)とが接するように圧着させる。
モールドの圧力は、通常、10kN以下で行うのが好ましい。モールド圧力を、10kN以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凸部の組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0123】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドを広く採用することができる。モールドは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成したり、目指すべき完成品からレプリカをとることできるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
【0124】
本発明において用いられる光透過性のモールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0125】
上記本発明で用いられるモールドは、本発明の組成物とモールドとの剥離性を向上するために離型処理を行ったものを用いてもよい。シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業製、オプツールDSXや住友スリーエム製、Novec EGC−1720等の市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0126】
(4)少なくとも凹凸表面を有する型を通して光照射する工程
本発明では、少なくとも凹凸表面を有する型を通して、光照射を行い、本発明の組成物を硬化させる。光照射は、モールドを付着させた状態で行う。さらに、露光は基板側とモールド側の両者から同時に、あるいは逐次に実施することが遮光性画像形成には好ましい。
本発明の組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利かつ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えば、マイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いても良いし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でも良い。
【0127】
本発明において、光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが好ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが好ましい。5mJ/cm2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御しても良い。
【0128】
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温であるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射しても良い。本発明において、好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0129】
(5)凹凸表面を有する型を感光性樹脂層から剥離する工程
本発明では、凹凸表面を有する型を、感光性樹脂層から剥離する。
【0130】
(6)必要に応じ、感光性樹脂層を160〜250℃で熱処理する工程
本発明の組成物は、必要に応じ、160〜250℃で熱処理してもよい。このような手段を採用することにより、より硬化を促進させることができる。熱処理は、上記剥離の前に行ってもよいし、剥離の後に行ってもよい。
硬化させるための熱としては、160〜250℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分が好ましく、15〜45分がより好ましい。熱処理の方法としては、公知の方式、コンベクションオーブン、ホットプレート、赤外線ヒータなどを用いた方式が用いられる。また、必要に応じて減圧下、例えば、500〜10-6Torrにて行ってもよい。
【0131】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でも良いが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。もちろん、反応が進行しないレベルで遮光する必要がある。
【0132】
本発明の組成物は、また、半導体集積回路、記録材料、あるいはフラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することも可能である。
【実施例】
【0133】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0134】
表1〜4の組成となるように、黒色顔料分散体および光重合開始剤、界面活性剤、重合禁止剤、必要に応じて、溶剤を配合して実施例および比較例の組成物を調製した。
【0135】
<黒色顔料分散体の調製>
表1〜4において溶剤を含まない顔料分散体は、予めプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、顔料または顔料分散液と、下記化合物1の分散助剤とを添加して予め分散させた。分散は、アイガーミル(アイガーミルM−50型、メディア:直径0.65mm、ジルコニアビーズ130g、アイガー・ジャパン(株)製)を用いて6時間分散)を用いて行った。その後、各種重合性不飽和単量体を添加し、60℃、減圧下でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去した。溶剤を含む場合は、分散後、加熱減圧処理を行わずに用いた。
【0136】
【化9】

【0137】
<分散液A1の調製>
分散液A1(調製銀錫合金部を有する粒子の分散液)は以下の方法により調製した。
純水1000mlに、酢酸銀(I)23.1g、酢酸スズ(II)65.1g、グルコン酸54g、ピロリン酸ナトリウム45g、ポリエチレングリコール(分子量3,000)2g、およびPVP−K30(アイエスピー・ジャパン(株)製;ポリビニルピロリドンポリマー)5gを溶解し、溶液1を得た。
別途、純水500mlにヒドロキシアセトン46.1gを溶解して、溶液2を得た。
上記溶液1を25℃に保ちつつ激しく攪拌しながら、これに上記溶液2を2分間かけて添加し、緩やかに6時間攪拌を継続した。混合液が黒色に変化し、銀錫合金部を有する金属粒子(以下、「銀錫合金部含有粒子」ということがある。)が得られた。次いで、この混合液を遠心分離して銀錫合金部含有粒子を沈殿させた。遠心分離は、150mlの液量に小分けして、卓上遠心分離機H−103n((株)コクサン製)を用いて回転数2,000rpmで30分間行なった。上澄みを捨てて全液量を150mlとし、これに純水1350mlを加え、15分間攪拌して銀錫合金部含有粒子を再び分散させた。この再分散液を上記と同様にして遠心分離して銀錫合金部含有粒子を沈澱させた。この操作(純水の添加と遠心分離)を2回繰り返して銀錫合金部含有粒子を洗浄した。
【0138】
上記で得られた銀錫合金部含有粒子を再び分散液とし、この分散液に対してさらに遠心分離を行ない、銀錫合金部含有粒子を再び沈殿させた。遠心分離は前記と同様の条件にて行なった。遠心分離した後、前記と同様に上澄みを捨てて全液量を150mlにし、これに純水850mlおよびノルマルプロピルアルコール500mlを加え、さらに15分間攪拌して銀錫合金部含有粒子を再び分散させた。
再び前記と同様にして遠心分離を行ない、銀錫合金部含有粒子を沈殿させた後、前記と同様に上澄みを捨てて液量を150mlにし、これに純水150mlおよびノルマルプロピルアルコール1200mlを加えてさらに15分間攪拌し、銀錫合金部含有粒子を再び分散させた。そして再び、遠心分離を行なった。このときの遠心分離の条件は、時間を90分に延ばした以外は前記と同様である。その後、上澄みを捨てて全液量を70mlにし、これにノルマルプロピルアルコール30mlを加えた。これをアイガーミル(アイガーミルM−50型、メディア:直径0.65mmジルコニアビーズ130g、アイガー・ジャパン(株)製)を用いて6時間分散し、銀錫合金部含有粒子(銀錫粒子濃度25質量%、PVP−K30残量1.0質量%)の分散液(分散液A1)を調製した。
【0139】
上記で得られた銀錫合金部含有粒子を、(株)日立製作所製のHD−2300とノーラン(Noran)社製のEDS(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて分析したところ、AgSn合金(2θ=39.5°)とSn金属(2θ=30.5°)とからなる複合体であることがX線散乱により確認された。ここで、カッコ内の数字はそれぞれの(III)面の散乱角である。また、この分散液A1中の銀錫合金部含有粒子の数平均粒子サイズは約40nmであった。
前記数平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子(株)製、倍率10万倍、加速電圧200kV)により得た写真を用いて以下のようにして行なった。
粒子100個を選び、それぞれの粒子像と同じ面積の円の直径を粒子サイズとし、100個の粒子の粒子サイズの平均値を数平均粒子サイズとした。
【0140】
<分散液B1の調製>
分散液B1(銀微粒子分散液)の調製は以下の手順により行った。
1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを12.0に調整した水溶液2.5Lに、下記化合物T−4を3.0g加え、完全に溶解するまで45℃で30分攪拌した。
【0141】
【化10】

【0142】
この溶液を45℃に温度制御し、アスコルビン酸8.5gを含む水溶液700mLと、ハイドロキノン5gおよび亜硫酸ナトリウム1.5gを含む水溶液700mLと、硝酸銀30gを含む水溶液500mLと、を同時に添加して、黒色の銀ナノ粒子含有液を調製した。
得られた銀ナノ粒子は、算術平均粒子サイズ:16.1nm、平均アスペクト比2.2を有する球状粒子がランダムに連結した連結状の粒子であった。調製した銀ナノ粒子含有液に遠心分離処理(12,000rpm・30min)を行い、上澄み液を捨てて、蒸留水を加える水洗処理を3度繰り返した。得られた銀ナノ粒子含有液にアセトンを加え、スターラーで攪拌後、遠心分離処理(12000rpm・30min)を行った。その後、上澄み液を除去して、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、ブランソン社製「ソニファー(Sonifier)II型」超音波ホモジナイザーを用いて20kHzの超音波を5分間照射した。その後、ブランソン社製、モデル(Model)200bdc−h 40、0.8型超音波ホモジナイザーで40kHzの超音波を10分間照射した。これにより得られた銀ナノ粒子分散液は、粒子形成後と同様の形状、色味を有していた(銀粒子濃度25質量%)。また、TG−DTA(セイコー(株)製)を用いて、乾燥減量から得られた高分子化合物T−4の溶剤分散物中の濃度は1.1質量%であった。この銀ナノ粒子分散液を金属含有分散液B1とした。
【0143】
<硬化物の作製>
各組成物を、それぞれ、乾燥後の膜厚が表5に記載の塗布膜厚となるようにガラス基板上にスピンコート法により塗布した。実施例12〜14では、溶媒を除去するために、塗布後、100℃で2分間乾燥を行った。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットし、モールド加圧力0.8kN、露光中の真空度は10Torrで、凹部直径20μm、および凹部深さ3.5μmの円柱状凹部をピッチ900μmで2次元的配置したパターンと、線幅20μm、ピッチ300μにm、深さ1μm、断面形状蒲鉾状のパターンを有するポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製、SILPOT184を80℃60分で硬化させたもの)を材質とするモールドの表面から240mJ/cm2の条件で露光し、露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱することにより完全に硬化させた。
下記に示す評価を行った。この結果を表5に示した。
【0144】
<粘度測定>
硬化前の組成物の実質的に溶剤を含まない状態における粘度の測定は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。
測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpm、10mPa・s以上は30mPa・s未満は20rpm、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpm、60mPa・s以上120mPa・s未満は5rpm、120mPa・s以上は1rpmもしくは0.5rpmで、それぞれ、行った。
【0145】
<膜厚測定>
膜の膜厚を、接触式表面粗さ計P−10(ケーエルエー・テンコール(株)製)を用いて測定した。
【0146】
<光学濃度の評価>
上記より得られた画像の色度を、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100)を用い、ピンホール径5μmにて測定し、F10光源視野2度の結果として計算し、Y値の対数(−Log(Y/100))を算出した。
【0147】
<パターン精度の観察>
転写後のパターン形状を走査型電子顕微鏡または光学顕微鏡にて観察し、パターン形状を以下のように評価した。
A:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとほぼ同一である
B:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%未満の範囲)がある
C:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%以上20%未満の範囲)がある
D:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとはっきりと異なる、あるいはパターンの膜厚が原版のパターンと20%以上異なる
【0148】
<剥離性の評価>
パターン精度観察に用いた同じサンプルを用いて、パターン形成に使用したモールドに組成物成分が付着しているか否かを走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡にて観察し、剥離性を以下のように評価した。
A:モールドに硬化性組成物の付着がまったく認められなかった。
B:モールドにわずかな硬化性組成物の付着が認められた。
C:モールドの硬化性組成物の付着が明らかに認められた。
【0149】
<硬さの評価>
各組成物を膜厚が3〜10μmの範囲となるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cm2で露光し、その後オーブンで230℃、30分間加熱して硬化させた膜を島津社製、微小硬度計試験機によりダイナミック硬さを測定した。測定条件は三角錐圧子、負荷1mN、保持時間1秒とした。
ダイナミック硬さ
A:32以上
B:28以上、32未満
C:25以上、28未満
D:25未満
【0150】
<欠け欠陥の評価>
上記実施例および比較例で得られたブラックマトリクス付き基版を光学顕微鏡(微分干渉モード、200倍)で全面観察し、欠け(細線幅の20%以上が欠損した部分が存在した箇所)の発生数を観察した。欠けの発生数を下記の基準に従って評価した。
◎…20個/m2未満
○…20個/m2以上40個/m2未満、
△…40個/m2以上80個/m2未満、
×…80個/m2以上120個/m2未満
××…120個/m2以上
【0151】
<耐溶剤性試験>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cm2で露光し、その後オーブンで230℃、30分間加熱して硬化させた膜を25℃のN−メチルピロリドン溶媒に30分間浸漬させ、浸漬前後での硬化膜の変化を下記のように評価した。
A:膜厚変化 2%以下
B:膜厚変化 2%を超えて10%以下
C:面状荒れが発生
【0152】
<液晶表示装置の作製>
実施例および比較例の材料を用い、予め作製したカラーフィルター基板のR画素、G画素およびB画素並びにブラックマトリクスの上にさらに、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。次いで、上記<硬化物の作製>に記載の方法に従って、BM上に円柱状パターンが、RGB各画素上に蒲鉾状パターンが形成されるように、スペーサーおよびリブ体を形成した。
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、カラーフィルター基板の透明電極上および対向基板上にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上にさらにポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルターの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、赤色(R)LEDとしてFR1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、緑色(G)LEDとしてDG1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、青色(B)LEDとしてDB1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)を用いてサイドライト方式のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
【0153】
<表示ムラ>
液晶表示装置の各々について、グレイのテスト信号を入力させたときのグレイ表示を目視にて観察し、表示ムラの発生の有無を下記評価基準にしたがって評価した。
<評価基準1>
A:まったくムラがみられない(非常に良い)
B:ガラス基板の縁部分にかすかにムラが見られるが、表示部に問題なし(良い)
C:表示部にかすかにムラが見られるが実用レベル(普通)
D:表示部にムラがある(やや悪い)
E:表示部に強いムラがある(非常に悪い)
【0154】
<反応性の異なる2種類以上の硬化性官能基を同一分子内有する単量体において、硬化性官能基の少なくとも1つがα、β−不飽和エステル基である単量体>
Q−1:化合物(M−12) ジシクロペンテニルアクリレート(FA−511AS:日立化成社製)
Q−2:化合物(M−13) ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(FA−512AS:日立化成社製)
Q−3:化合物(M−32) 3−シクロヘキセニルメチルアクリレート
Q−4:化合物(M−22) アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI:昭和電工社製)
Q−5:化合物(M−24) (3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート(ビスコートOXE10:大阪有機化学工業社製)
Q−6:化合物(M−29) 3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート(KBM−5103:信越化学工業社製)
Q−7:化合物(M−30) アリルアクリレート(Aldrich社製試薬)
【0155】
<その他の1官能単量体>
R−1:ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学社製)
R−4:イソボルニルアクリレート(和光純薬社試薬)
【0156】
<その他の2官能単量体>
S−01:ネオペンチルグリコールジアクリレート
<その他の3官能以上の単量体>
S−10:トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM−309:東亞合成社製)
【0157】
<光重合開始剤>
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO−L:BASF社製)
【0158】
<バインダー>
F−1:ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体(重量平均分子量30000、ベンジルメタクレート/メタクリル酸比=73/27)
【0159】
<界面活性剤>
W−1:フッ素系界面活性剤(トーケムプロダクツ社製:フッ素系界面活性剤)
W−2:シリコーン系界面活性剤(大日本インキ化学工業社製:メガファックペインタッド31)
【0160】
【表1】

【0161】
【表2】

表2中、MFGACは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表す。
【0162】
【表3】

【0163】
【表4】

【0164】
【表5】

【0165】
表5中、膜厚は、乾燥後の膜厚(単位:μm)を示している。
本発明の組成物を薄膜化した場合、膜厚が0.9μmでも、4.0という高い光学濃度を有し、かつ。パターン精度、剥離性、硬さ、欠け欠陥、耐溶剤性および液晶表示装置での表示ムラのいずれについても優れた組成物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の組成物は、厚さ1μm以下としても、高い光学濃度を有し、インプリント方式でブラックマトリックスとして使用すると、パターン精度、剥離性、硬さ、欠け欠陥、耐溶剤性および液晶表示装置での表示ムラのいずれについても優れたものを提供することが可能になった。また、ブラックマトリックスとして使用した際、優れた残膜性、耐擦傷性などの機械特性等を有する組成物を提供することが可能になる。
さらに、本発明により、パターニングのための感光性樹脂組成物にバインダーの添加量を少なくする、さらには、添加不要とすることが可能になった。この結果、これまでにない高顔料濃度の実現が可能になる。さらに、硬化前の状態は液体状態なので基板との濡れもよく、より高い密着性を確保することが可能になる。特に、従来の感光性樹脂組成物では溶剤除去後の組成物の粘度が1000mPa・sを越えているのでインプリント方式では十分な画像形成ができなかったが、本発明の粘度3〜50mPa・sとすることで所望のパターンがインプリント方式で形成可能となった。
さらに、高光学濃度でも従来のフォトリソ工程ではその光学濃度ゆえ、パターンの形状が矩形することは困難であったが、使用するモールドの形状で自由に設計できるメリットを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤および重合性単量体を含み、かつ、バインダーの含有率が全固形分中の10質量%以下であり、乾燥後の実質的に溶剤を含まない状態において、その粘度が3〜50mPa・sである組成物であって、該組成物を硬化させた厚さ1μmの硬化膜の光学濃度が3.5以上であることを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
着色剤が黒色着色剤であることを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
着色剤が、銀または銀を含む黒色着色剤であることを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
重合性単量体の少なくとも1種が下記一般式(1)で表されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1は水素原子、または、ヒドロキシメチル基を表し、Xは有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。Yは、炭素−炭素不飽和結合を有する硬化性官能基、炭素−窒素不飽和結合を有する硬化性官能基、酸素原子を含む環状基を有する硬化性官能基または下記一般式(2)で表される基を表す。)
【化2】

(R2はそれぞれアルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項5】
一般式(1)中のYの少なくとも1つが、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペニテニル基、スチリル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミド基、アクリルアミド基、ビニルシラン基、N−ビニル複素環基およびマレイミド基からなる群より選ばれる、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
一般式(1)中のYの少なくとも1つが、イソシアネート基またはニトリル基である、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
一般式(1)中のYの少なくとも1つが、オキセタン環、オキシラン環および炭酸エチレン基からなる群より選ばれる、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記感光性組成物の表面張力が18〜30mN/mの範囲にある、請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
少なくとも着色剤および重合性単量体を含み、かつ、バインダーの含有率が全固形分中の10質量%以下であり、乾燥後の実質的に溶剤を含まない状態において、その粘度が3〜50mPa・sである組成物を硬化させてなる、光学濃度が3.5以上で、厚さ1μm以下の感光性樹脂硬化膜。
【請求項10】
着色剤が黒色着色剤であることを特徴とする、請求項9に記載の感光性樹脂硬化膜。
【請求項11】
着色剤が、銀または銀を含む黒色着色剤であることを特徴とする、請求項9に記載の感光性樹脂硬化膜。
【請求項12】
重合性単量体の少なくとも1種が下記一般式(1)で表されることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の感光性樹脂硬化膜。
【化3】

(一般式(1)中、R1は水素原子、または、ヒドロキシメチル基を表し、Xは有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。Yは、炭素−炭素不飽和結合を有する硬化性官能基、炭素−窒素不飽和結合を有する硬化性官能基、酸素原子を含む環状基を有する硬化性官能基または下記一般式(2)で表される基を表す。)
【化4】

(R2はそれぞれアルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項13】
一般式(1)中のYの少なくとも1つが、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペニテニル基、スチリル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミド基、アクリルアミド基、ビニルシラン基、N−ビニル複素環基およびマレイミド基からなる群より選ばれる、請求項12に記載の感光性樹脂硬化膜。
【請求項14】
一般式(1)中のYの少なくとも1つが、イソシアネート基またはニトリル基である、請求項12に記載の感光性樹脂硬化膜。
【請求項15】
一般式(1)中のYの少なくとも1つが、オキセタン環、オキシラン環および炭酸エチレン基からなる群より選ばれる、請求項12に記載の感光性樹脂硬化膜。
【請求項16】
前記感光性組成物の表面張力が18〜30mN/mの範囲にある、請求項9〜15のいずれか1項に記載の感光性樹脂硬化膜。
【請求項17】
下記の工程を含む、遮光性画像形成方法。
(1)基板上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を設ける工程
(2)必要に応じ50〜150℃の熱処理を実施し、感光性樹脂層の溶剤を除去する工程
(3)凹凸表面を有する型と前記感光性樹脂層とを、前記凹凸表面が接するように圧着させる工程
(4)少なくとも、凹凸表面を有する型を通して光照射する工程
(5)前記凹凸表面を有する型を剥離する工程
(5)必要に応じ、感光性樹脂層を、160〜250℃で熱処理をする工程
【請求項18】
請求項17に記載の遮光性画像形成方法を用いて形成した感光性樹脂硬化膜。
【請求項19】
前記感光性樹脂硬化膜が、液晶表示装置用部材である、請求項9〜16および18のいずれか1項に記載の感光性樹脂硬化膜。
【請求項20】
前記感光性樹脂硬化膜が、液晶表示装置用ブラックマトリックスである、請求項9〜16および18のいずれか1項に記載の感光性樹脂硬化膜。

【公開番号】特開2009−222791(P2009−222791A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64535(P2008−64535)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】