説明

感光性樹脂組成物、感光性樹脂転写フイルム及びフォトスペーサーの製造方法、並びに液晶表示装置用基板及び液晶表示装置

【課題】柔軟性を持ち、かつ局所的な荷重に対して塑性変形を起こし難く、弾性回復性に優れた感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】架橋性バインダーと置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物又はトポロジカルゲルを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置を構成するカラーフィルタ、スペーサー等に好適な感光性樹脂組成物、特に、液晶セルのセル厚の変動が表示ムラとなりやすい表示装置を構成するスペーサーの作製に好適な感光性樹脂組成物、感光性樹脂転写フイルム及びフォトスペーサーの製造方法、並びにこの方法により作製されたフォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は2枚の基板を対向して貼り合わせ、その間隙に液晶化合物を封入することにより作製される。液晶表示装置においては、電圧により液晶の配列を制御することにより、液晶層内を透過する光の量を変化させて、表示を行う。液晶層内を透過する光の量は、2枚の基板間の距離(セルギャップ)によって変化するため、セルギャップを一定かつ均一に維持することは、色ムラ等の表示ムラを防止し、良好な表示を行うために非常に重要な技術である。
【0003】
セルギャップを一定かつ均一に維持する方法としては液晶層内にガラス、アルミナ等からなる一定サイズの球状粒子をスペーサーとして多数撒布する方法がある。しかしながら、球状粒子を用いる方法では、球状粒子が表示領域にも存在してしまうため、球状粒子周囲の液晶配向を乱してしまう等の支障をきたし、コントラスト比等の表示性能を低下させる問題があった。
【0004】
これら球状粒子をスペーサーとして用いる場合の問題点を解消する方法として、基板上のブラックマトリックス層が形成されている位置、すなわち非表示領域に、セルギャップに対応する高さを有する柱状スペーサーを形成することが行われるようになってきた(例えば、特許文献1参照。)。柱状スペーサーは、例えば基板上に感放射線性樹脂を均一に塗布し、パターン露光し、その後アルカリ現像するフォトリソグラフィーによって形成される。ここで柱状スペーサーは非表示領域であれば、2枚の基板のどちらに形成しても良い。
柱状スペーサーは大きな加重を受けたり、長時間の加重を受けると組成変形を起こし、セルギャップが変化してしまうという問題があった。
たとえば、液晶表示装置が低温環境で長時間使用されると、液晶が熱収縮を起こすため、セル内部の体積より小さくなる。この時、柱状スペーサーには、大きな圧縮力がかかることになる。
また、液晶表示装置の前面のガラス基板を指等で押した場合にも、局所的に柱状スペーサーに非常に大きな荷重がかかることになる。
【特許文献1】特開平11−174464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、液晶表示装置において、柔軟性を持ち、かつ局所的な荷重に対して塑性変形を起こし難いものを得るための感光性樹脂組成物、特にスペーサー形成用感光性樹脂組成物、及び感光性樹脂転写フイルムを提供することである。
また、本発明は、液晶表示装置において、柔軟性を持ち、かつ局所的な荷重に対して塑性変形を起こし難いスペーサーを得るためのフォトスペーサーの製造方法を提供することである。
更に、本発明は、柔軟性を持ち、かつ局所的な荷重に対して塑性変形を起こし難いフォトスペーサーを備えた液晶表装置用基板及びそれを備えた液晶表装置用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> 架橋性バインダーと置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
<2> 架橋性バインダーとトポロジカルゲルを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0007】
<3> 前記トポロジカルゲルは、置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物を少なくとも2分子有するゲルであって、前記化合物が前記環状分子の置換基のうち少なくとも一つが重合性基であり、且つ、前記直鎖状分子の両末端に封鎖基を有することを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物。
<4> 前記化合物の前記環状分子が有する置換基のうち少なくとも一つが重合性基であり、且つ、前記直鎖状分子の両末端に封鎖基を有することを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<5> 前記重合性基が、熱または光により重合が進行する基であることを特徴とする上記<4>に記載の感光性樹脂組成物。
<6> 前記重合性基が、付加重合反応または縮合重合反応が可能な基であることを特徴とする上記<4>または<5>に記載の感光性樹脂組成物。
<7> 前記重合性基が下記一般式P1〜P4で表されることを特徴とする上記<4>〜<6>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【0008】
【化1】

(式中、R511、R512、R513、R521、R522、R523、R531、R532、R533、R541、R542、R543、R544、またはR545はそれぞれ各々独立に水素原子またはアルキル基を表す。nは0または1を表す。)
【0009】
<8> 前記置換基を有する環状分子(A)がシクロデキストリンであることを特徴とする上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<9> 仮支持体上に、少なくとも感光性樹脂層を有する感光性樹脂転写フイルムであって、該感光性樹脂層が、上記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とする感光性樹脂転写フイルム。
【0010】
<10> 前記感光性樹脂組成物がスペーサー形成用であることを特徴とする上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<11> 上記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基材上に塗布する工程を有することを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
<12> 上記<9>に記載の感光性樹脂転写フイルムの感光性樹脂層を基材上に転写する工程を有することを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
<13> 上記<11>又は<12>に記載のフォトスペーサーの製造方法により製造したフォトスペーサーを備えたことを特徴とする液晶表示装置用基板。
<14> 上記<13>に記載の液晶表示装置用基板を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液晶表示装置において、柔軟性を持ち、かつ局所的な荷重に対して塑性変形を起こし難いものを得るための感光性樹脂組成物、特にスペーサー形成用感光性樹脂組成物、及び感光性樹脂転写フイルムを提供することができる。
また、本発明によれば、液晶表示装置において、柔軟性を持ち、かつ局所的な荷重に対して塑性変形を起こし難いスペーサーを得るためのフォトスペーサーの製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、柔軟性を持ち、かつ局所的な荷重に対して塑性変形を起こし難いフォトスペーサーを備えた液晶表装置用基板及びそれを備えた液晶表装置用装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の感光性樹脂組成物は、架橋性バインダー(架橋性基を有する高分子化合物、「樹脂(A)」ともいう。)と置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物(B)を含有することを特徴とする。
前記化合物(B)は、光、熱などの外部刺激により架橋点が可動である構造を構成しうる機能を有する化合物(いわゆる、トポロジカルゲルの形成材料)であることが好ましい。
また、必要に応じて、溶剤(C)、重合性化合物(D)、光重合開始剤(E)、着色剤、界面活性剤などのその他の成分を用いて構成することができる。前記感光性樹脂組成物は、特にフォトスペーサー形成用であることがその組成物特性の観点から好ましい。
前記感光性樹脂組成物を前記構成とすることにより、該組成物を用いて得られたものは(例えば、フォトスペーサー)、局所的な加重に対して塑性変形を起こし難い効果を奏する。
【0013】
ここで、局所的な加重に対して塑性変形を起こし難い効果(弾性回復性)は、サンプルの弾性回復率を測定することにより評価でき、その数値が100%に近いほど好ましい。
前記弾性回復率は、「サンプル(例えば、フォトスペーサー等)に加重がかかった時にどの程度塑性変形しにくいか」を示す指標である。
具体的には、微小硬度計DUH−W201(島津製作所(株)製)を用いて下記測定条件でサンプル(例えば、フォトスペーサー)の変形量を求めて、式1による弾性回復率を計算することにより求める。
・テスト:負荷−除荷試験
・最大荷重:35mN
・保持時間:5秒
・式1 弾性回復率(%)={1−(加重が除去された後でのサンプルの変形量)/(最大荷重がかかった時のサンプルの変形量)}×100
【0014】
以下、感光性樹脂組成物の構成成分等について、フォトスペーサー形成用として用いる場合を主として説明するが、表示装置に用いられるカラーフィルタ、ブラックマトリクス等にも用いることができる。
【0015】
(置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物)
本発明における前記置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物(以下、化合物(B)ともいう。)は、いわゆる「ポリロタキサン」といわれる化合物であり、置換基を有する環状分子とその空洞部を貫通した直線状分子とからなる分子骨格を有する化合物である。
前記化合物(B)は、環状分子が有する置換基のうち少なくとも一つが重合性基であり、且つ、前記直鎖状分子の両末端に封鎖基を有することが好ましい。この重合性基の重合反応が進行すると、環状分子(A)間及び/又は環状分子(A)内に架橋構造が形成される。この架橋構造体はトポロジカルゲルと呼ばれるゲルである。前記化合物(B)は、重合する前は架橋構造を含んでいないので、種々の溶剤に可溶であり、取り扱い性に優れる。また、前記化合物(B)の重合反応は、光や熱といった外部刺激によってはじめて進行するので、保管時及び使用時において予期せずゲル化してしまうという問題がなく、その点でも、取り扱い性に優れている。
本発明における感光性樹脂組成物は、前記架橋性バインダー及び前記化合物(B)の重合性基が重合して生成したトポロジゲルを含む形態も好ましい態様である。
【0016】
本発明における化合物中、環状分子は上記直鎖状分子と包接可能で、上記直鎖状分子上で移動可能であれば、特に限定されない。本明細書において、「環状分子」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で移動可能であれば、環状分子は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
【0017】
環状分子の例としては、環状であれば特に制限は無く、公知のものを用いることができる。例えば環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン等の環状ポリマー、あるいは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく、特にα−シクロデキストリン分子であるのがよい。
これらの環状分子は、2種以上混合されていてもよい。
【0018】
環状分子が有する置換基の例としては下記のものが適用できる。
【0019】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、
【0020】
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、
【0021】
シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、
【0022】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
【0023】
アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、
【0024】
メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、
【0025】
アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、
【0026】
ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
【0027】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。これらの炭素数は前記対応する置換基と同様であり、好ましい例も同様である。
【0028】
環状分子が有する置換基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、シリル基であり、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シリル基であり、さらに好ましくは、アルキル基、アルケニル基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基ある。
【0029】
環状分子は複数の種類の置換基を有しても良く、そのうち少なくとも一つが重合性基であることが好ましい。環状分子に複数存在する置換基の組み合わせの例としては、アセチル基/重合性基、アルキル基/重合性基、シリルオキシ基/重合性基などが挙げることができる。この二つの置換基は、同一の環状分子上に存在していても良いし、同一のポリロタキサン分子(本発明における化合物)に結合された同一でない環状分子上に存在していても良い。
【0030】
環状分子の有する重合性基の例としては、熱又は光により重合が進行する基であることが好ましく、さらに付加重合反応または縮合重合反応が可能な基が好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0031】
さらに好ましくは、下記P1、P2、P3、P4で表される基である。
【0032】
【化2】

【0033】
上記式P1〜P4中、R511、R512、R513、R521、R522、R523、R531、R532、R533、R541、R542、R543、R544、およびR545はそれぞれ各々独立に水素原子またはアルキル基を表す。nは0または1を表す。
【0034】
重合性基P1、P2、P3またはP4は環状分子と直接結合していても、連結基を介して結合してもよい。連結基として好ましくはアルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニルオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基である。これらの具体的な例を下記に示す。
【0035】
アルキレンオキシ基(例えばエチレンオキシ、プロピレンオキシ、ブチレンオキシ、ペンチレンオキシ、ヘキシレンオキシ、ヘプチレンオキシなどのアルキレンオキシ基、またエチレンオキシエトキシなどのエーテル結合を含む置換アルキレンオキシ基)、アルキレンオキシカルボニルオキシ基(例えばエチレンオキシカルボニルオキシ、プロピレンオキシカルボニルオキシ、ブチレンオキシカルボニルオキシ、ペンチレンオキシカルボニルオキシ、ヘキシレンオキシカルボニルオキシ、ヘプチレンオキシカルボニルオキシなどのアルキレンオキシカルボニルオキシ基、またエチレンオキシエトキシカルボニルオキシなどのエーテル結合を含む置換アルキレンオキシカルボニルオキシ基)、アルキレンオキシカルボニル基(例えばエチレンオキシカルボニル基、プロピレンオキシカルボニル基、ブチレンオキシカルボニル基、ペンチレンオキシカルボニル基、ヘキシレンオキシカルボニル基、ヘプチレンオキシカルボニル基などのアルキレンオキシカルボニル基、またはエチレンオキシエトキシカルボニル基などのエーテル結合を含む置換アルキレンオキシカルボニル基)が挙げられる。
【0036】
重合性基P1中、nは0まはた1の整数を表し、nが1であることが好ましく、nが1の時はP1は置換又は無置換のビニルエーテル基を表す。重合性基P1の置換基R511、R513は、各々独立に水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表すが、R511がメチル基でR513が水素原子、またはR511、R513が共に水素原子の組み合わせが好ましい。
【0037】
置換基R512は水素原子、置換または無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチルが挙げられ、メチル、エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基(メチル、エチルなど)が好ましく、さらに水素原子が好ましい。従って、重合性基P1としては、一般には重合活性の高い官能基である無置換のビニルオキシ基が好ましく用いられる。
【0038】
重合性基P2は置換または無置換のオキシラン基を表す。重合性基P2の置換基R521、R522は、各々独立に水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、R521、R522がともに水素原子が好ましい。
【0039】
置換基R523は水素原子、置換または無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチルが挙げられ、メチル、エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、水素原子またはメチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0040】
重合性基P3は置換または無置換のアクリル基を表す。重合性基P3の置換基R531、R533は、各々独立に水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、R531がメチル基でR533が水素原子、またはR531、R533が共に水素原子の組み合わせが好ましい。
【0041】
置換基R532は水素原子、置換または無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチルが挙げられ、メチル、エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、水素原子が好ましい。従って、重合性基P3としては、無置換のアクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、クロトニルオキシ基などの重合活性の高い官能基が好ましく用いられる。
【0042】
重合性基P4は、置換または無置換のオキセタン基を表す。R542、R543、R544およびR545は各々独立に水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、R542、R543、R544およびR545が共に水素原子が好ましい。
【0043】
541は水素原子、置換または無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチルが挙げられ、メチル、エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、水素原子またはメチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0044】
環状分子のもつ置換基数は、置換基導入可能な結合が形成される数により変化する。例えば環状分子がα―シクロデキストリンである場合、環状分子1分子あたりの水酸基数は18個であることから、置換基の導入可能数は18であり、平均9個の置換基が導入された場合は導入量は50%と示す。
【0045】
上記環状分子の有する置換基の導入率は特に制限はないが、5〜95%であることが好ましい。
【0046】
直鎖状分子は、環状分子に包接され、共有結合等の化学結合でなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。
なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよく、また置換基を有してもよい。有しても良い置換基の例としては、上記環状分子が有する置換基が挙げられる。
【0047】
前記直鎖状分子としては、公知のものを用いることができる。例えば、ポリエーテル類(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフランなど)、ポリオレフィン類(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンなど)、セルロース類(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、シロキサン類(ポリジメチルシロキサン)、を挙げることができる。好ましくはポリエーテル類(特にポリエチレングリコールであるのがよい。)である。これらの直鎖状分子は、単独でも、2種以上混在していてもよい。
直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3.5万以上であるのがよい。
【0048】
前記トポロジカルゲルについて下記に説明する。
【0049】
−トポロジカルゲル−
一般に、高分子ゲルとは「三次元網目構造を持つ高分子、およびこの膨潤体」を言う。高分子ゲルは通常、高分子間に架橋構造が形成されることにより生成する。架橋構造としては共有結合によるものと、水素結合のような2次結合によるものがある。一般に、前者によるゲルを化学ゲル、後者によるゲルを物理ゲルと呼ぶ。架橋構造の部分をゲルの架橋点と呼ぶが、これらのゲルはいずれも架橋点が高分子鎖上に固定されている。
これらの高分子ゲルの一般的な定義についてはたとえば「高分子辞典 高分子学会編、朝倉書店 2005年発行」に記載されている。
【0050】
上記の化学ゲル及び物理ゲルに対して、本発明における「トポロジカルゲル」は「環動ゲル」とも呼ばれるゲルで、架橋点が高分子鎖に沿って移動できるゲルである。
トポロジカルゲルの例としては、たとえば次のようなものがあるが、特に限定せずに用いることができる。
ポリエチレングリコールを用いα−シクロデキストリンとの包接錯体(α−シクロデキストリンにポリエチレングリコールが貫通したネックレス構造をとっている)を形成させる。この後、ポリエチレングリコールの両末端に嵩高い分子を結合させて、α−シクロデキストリンが抜け落ちることを防止する。いわゆる、「ロタキサン構造」が形成される。さらに、α−シクロデキストリンどうしを化学結合させると、ポリエチレングリコール分子鎖が網目構造を形成してトポロジカルゲルが得られる。
2つのα−シクロデキストリンが結合したものは8字型をした架橋点であるが、この架橋点は高分子鎖に沿って移動することができる。
【0051】
本発明において、前記トポロジカルゲルは、置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通して形成された化合物を少なくとも2分子有するゲルであって、前記化合物の前記環状分子の置換基のうち少なくとも一つが重合性基であり、且つ、前記直鎖状分子の両末端に封鎖基を有することが好ましい。
即ち、前記トポロジカルゲルは、環状分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接され且つ該環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両末端に封鎖基が配置されるポリロタキサン(以下、「本発明における化合物」ともいう。)を少なくとも2分子有し、該少なくとも2分子のポリロタキサンの環状分子同士が化学結合を介して結合してなる架橋ポリロタキサンを有するゲルであることが好ましい。
前記トポロジカルゲルは、少なくとも2分子のポリロタキサンの環状分子同士が、架橋基を2つ以上有する2架橋基含有化合物により、化学結合を介して結合してなる架橋ポリロタキサンを有するゲルであることが好ましい。
【0052】
前記2架橋基含有化合物は、架橋基を2つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。したがって、2架橋基含有化合物は、架橋基を3つ以上有してもよい。2架橋基含有化合物として、例えば、塩化シアヌル、エチレングリコールグリシジルエーテル及びグルタルアルデヒド、並びにこれらの誘導体などを挙げることができ、これらからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。特に、2架橋基含有化合物は、塩化シアヌル又はその誘導体であるのがよい。2架橋基含有化合物が塩化シアヌル又はその誘導体である場合、該2架橋基含有化合物が環状分子と結合している状態は、次の式Iで表すことができる。ここで、Lは環状分子と結合する一価の基又は単結合を示し、X及びYのいずれか一方又は双方はイオン性基を有する基を示す。
【0053】
【化3】

【0054】
本発明において、架橋基反応性イオン性基含有化合物は、2架橋基含有化合物が有する架橋基と反応する性質を有すると共に、反応した後、イオン性基を有する。架橋基反応性イオン性基含有化合物として、官能基を2以上有する化合物を挙げることができ、例えば、アミノ酸又はその誘導体などを挙げることができる。
【0055】
前記イオン性基は、イオン性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、イオン性基は、−COOX基(Xは、水素(H)、アルカリ金属その他1価の金属を示す)、−SOX基(Xは前述と同じ定義である)、−NH基、−NHX’基(X’は1価のハロゲンイオンを表す)、−PO基、及び−HPO基などを挙げることができ、これらからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
【0056】
トポロジカルゲルは、架橋ポリロタキサンの絶対乾燥状態1gあたり溶媒を5g以上、好ましくは10g以上、より好ましくは20g以上吸収するのがよい。

【0057】
前記トポロジカルゲルは、前記環状分子に直鎖状分子を串刺し状に包接させたものを少なくとも2分子有するが、環状分子に直鎖状分子を串刺しに包接させる方法は特に限定はなく、公知の方法が適用できる。
【0058】
本発明において、前記直鎖状分子の両末端に置換基を有することが好ましい。両末端の置換基は包接させた環状分子が直鎖状分子から離脱できないようにするための末端封鎖基であり、該目的を達成できる置換基であれば特に制限されない。
【0059】
前記封鎖基は、好ましくは嵩高さ及び/又はイオン性を有するものであり、嵩高い置換基とは、環状分子の開口部の大きさにより選択され、イオン性を有する置換基とは、環状分子の開口部の電子状態により選択される。
【0060】
前記封鎖基としては、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類、あるいは、数平均分子量1,000〜1,000,000の高分子の主鎖または側鎖が挙げられる。これらの封鎖基は同一直鎖状分子において同種類が2種混在していてもよく、異種が2混在してもよい。
【0061】
上記の数平均分子量1,000〜1,000,000の高分子としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0062】
前記封鎖基は前記環状分子であってもよい。該環状分子は、同一分子内であっても、同一分子内でなくてもよい。
【0063】
直鎖状分子の両末端を置換基で置換する方法は特に限定はなく、公知の方法が適用できる。
【0064】
トポロジカルゲルにおいて、環状分子の包接量は、次の量であるのがよい。即ち、環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量(個数ベース)を1とした場合、前記環状分子が0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
前記環状分子の包接量は、直鎖状分子1分子(1本)に対して、シクロデキストリン環が平均何分子(何個)、包接しているかを意味する。
環状分子の包接量が最大値に近い状態であると、直鎖状分子上の環状分子の移動距離が制限される傾向が生じる。移動距離が制限されると、トポロジカルゲルの体積変化の度合いが制限される傾向が生じるため、好ましくない。
なお、環状分子の最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子との厚さにより、決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα−シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められている値が、「Macromolecules1993,26,5698−5703」に記載されている。
本発明においては、上記文献に記載された方法を用いて求めた値を採用する。
【0065】
トポロジカルゲルにおいて、少なくとも2分子のポリロタキサンは、架橋剤により化学結合されているのがよい。該架橋剤として、上述の2架橋基含有化合物を用いることができる。
架橋剤は、その分子量が2000未満、好ましくは1000未満、より好ましくは600未満、最も好ましくは400未満であるのがよい。
架橋剤は、2架橋基含有化合物として記載した塩化シアヌル、エチレングリコールグリシジルエーテル及びグルタルアルデヒド、並びにこれらの誘導体の他、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール、及びアルコキシシラン類からなる群から選ばれるのがよい。
トポロジカルゲルにおいて、少なくとも2分子のポリロタキサンは、各ポリロタキサンの少なくとも1つの環状分子の少なくとも1つのOH基が架橋に関与するのがよい。
【0066】
本発明の架橋ポリロタキサンを有するトポロジカルゲルは、例えば次のように調製することができる。即ち、1)環状分子と直鎖状分子とを混合して環状分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接する擬ポリロタキサンを調製する擬ポリロタキサン調製工程;2)前記環状分子が串刺し状態から脱離しないように、擬ポリロタキサンの両末端を封鎖基で封鎖してポリロタキサンを調製するポリロタキサン調製工程;及び3)少なくとも2分子のポリロタキサンの各々の環状分子同士を、化学結合を介して結合させて該少なくとも2分子のポリロタキサンを架橋する架橋工程;を有し、4)架橋基を2つ以上有する2架橋基含有化合物を用いて前記架橋工程を行い、該架橋工程後又は該架橋工程中、2架橋基含有化合物の少なくとも1つの架橋基と、該架橋基と反応する基及びイオン性基を有する架橋基反応性イオン性基含有化合物とを、反応させて、環状分子が架橋基反応性イオン性基含有化合物由来の基を有し且つイオン性基を有する工程を有することにより、調製することができる。なお、2架橋基含有化合物として塩化シアヌル、エチレングリコールグリシジルエーテル及びグルタルアルデヒド、並びにこれらの誘導体などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0067】
また、次のように調製することもできる。即ち、1)環状分子と直鎖状分子とを混合して環状分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接する擬ポリロタキサンを調製する擬ポリロタキサン調製工程;2)前記環状分子が串刺し状態から脱離しないように、擬ポリロタキサンの両末端を封鎖基で封鎖してポリロタキサンを調製するポリロタキサン調製工程;及び3)少なくとも2分子のポリロタキサンの各々の環状分子同士を、化学結合を介して結合させて該少なくとも2分子のポリロタキサンを架橋する架橋工程;を有し、4)架橋工程後、環状分子が有する基と反応する基及びイオン性基を有する環状分子反応性イオン性基含有化合物を、架橋ポリロタキサンと反応させて、環状分子が環状分子反応性イオン性基含有化合物由来の基を有し且つイオン性基を有する工程を有することにより調製することができる。
【0068】
ここで、環状分子反応性イオン性基含有化合物として、次のものを挙げることができる。即ち、環状分子がα−シクロデキストリンなどの−OH基を有する場合、環状分子反応性イオン性基含有化合物は、該−OH基と反応する基及びイオン性基を有するのがよい。
より具体的には、環状分子反応性イオン性基含有化合物として、以下の式で表される化合物(ProcionBlueMX−R)を挙げることができるが、これに限定されない。
【0069】
【化4】

【0070】
より具体的には、次のように調製することができる。即ち、1)環状分子と直鎖状分子とを混合して環状分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接する擬ポリロタキサンを調製する擬ポリロタキサン調製工程;2)前記環状分子が串刺し状態から脱離しないように、擬ポリロタキサンの両末端を封鎖基で封鎖してポリロタキサンを調製するポリロタキサン調製工程;3)少なくとも2分子のポリロタキサンの各々の環状分子同士を、塩化シアヌルを用いることにより、化学結合を介して結合させて該少なくとも2分子のポリロタキサンを架橋する架橋工程;及び4)得られた架橋ポリロタキサンに、塩化シアヌルのCl基と反応する基及びイオン性基を有する化合物を反応させて、シクロデキストリン分子が上記式Iで表される基(式I中、Lは環状分子と結合する一価の基又は単結合を示し、X及びYのいずれか一方又は双方はイオン性基を有する基を示す)を有する工程を有することにより調製することができる。
【0071】
なお、上記調製方法において、用いる環状分子、直鎖状分子、封鎖基等は、上記したものを用いることができる。
【0072】
架橋基反応性イオン性基含有化合物と、2架橋基含有化合物との反応、即ち架橋基反応性イオン性基含有化合物の架橋基反応性の基と、2架橋基含有化合物の1つの架橋基との反応に用いられる条件は、反応に用いられる基に依存するが、特に限定されず、種々の反応方法、反応条件を用いることができる。例えば、酸クロライド反応、シランカップリング反応などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明において、感光性樹脂組成物中の前記置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物またはトポロジカルゲルの含有量は、0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。
前記含有量が0.01質量%以上であると充分な効果が得られ易くなり、また、30質量%以下であるとコスト上不利にならない点で好ましい。
【0074】
本発明において、感光性樹脂組成物中にトポロジカルゲルとして存在した場合におけるトポロジカルゲルの含有量は、0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。
前記含有量が0.01質量%以上であると充分な効果が得られ易くなり、また、30質量%以下であるとコスト上不利にならない傾向となり好ましい。
【0075】
―架橋性バインダー―
本発明の感光性樹脂組成物において、架橋性バインダー(樹脂(A))は、スペーサーや着色画素等の積層体を形成した場合に架橋性のバインダー成分としての機能を有するものである。
例えば、それ自体架橋性・重合性を有する、特開2003−131379の段落番号[0031]〜[0054]に記載の光により重合可能なアリル基を有する高分子樹脂(高分子物質)が好ましい例として挙げられる。
また、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの架橋性の極性基を有するポリマーが挙げられる。
【0076】
高分子物質は、目的に応じて適宜選択した単量体の単独重合体、複数の単量体からなる共重合体のいずれであってもよく、1種単独で用いる以外に、2種以上を併用するようにしてもよい。
側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーの例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
また、側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、また、この他にも水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく用いることができる。また、特に好ましい例としては、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や,ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。
【0077】
アリル基を有する高分子物質の単量体としては、アリル基を有する単量体、アリル基となり得る単量体、及びその他の単量体が挙げられる。特に制限はなく、目的に応じてその他の単量体を適宜選択することができる。これらには、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニル化合物、アリル基含有(メタ)アクリレート、等が挙げられる。尚、本明細書中において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを表す。
これら単量体は、1種単独で用いる以外に2種以上を併用してもよい。
【0078】
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、トリルアクリレート、ナフチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、等が好適に挙げられる。
【0079】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn−プロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn−ブチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0080】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、等が好適に挙げられる。
【0081】
前記アリル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、2−メチルアリルアクリレート、クロチルアクリレート、クロルアリルアクリレート、フェニルアリルアクリレート、シアノアリルアクリレート、等が挙げられ、中でもアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0082】
上記した高分子物質の中でも、アリル基含有(メタ)アクリレートをモノマーユニットとして少なくとも有する樹脂が好ましく、アリル基含有(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸及びアリル基非含有(メタ)アクリレートから選択されるモノマーとをモノマーユニットとして有する樹脂がより好ましい。
【0083】
前記高分子物質の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸(M)とアリル(メタ)アクリレート(M)との二元共重合樹脂〔好適な共重合比[モル比]はM:M=2〜90:10〜98〕や、(メタ)アクリル酸(M)とアリル(メタ)アクリレート(M)とベンジル(メタ)アクリレート(M)との三元共重合樹脂〔好適な共重合比[モル比]はM:M:M=5〜40:20〜90:5〜70〕などが挙げられる。
【0084】
前記高分子物質がアリル基を有する場合のアリル基含有モノマーの含有率としては、10モル%以上が好ましく、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは15〜90モル%、更に好ましくは20〜85モル%である。
【0085】
前記高分子物質の重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定値のポリスチレン換算値で5,000〜100,000が好ましく、8,000〜50,000がより好ましい。該重量平均分子量を5,000〜100,000の範囲内とすることで、膜強度を良化することができる。
【0086】
さらに、樹脂(A)は側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基:X(xモル%)と、酸性基を有する基:Y(yモル%)と、エチレン性不飽和基を有する基:Z(zモル%)を含有してなり、必要に応じてその他の基(L)(lモル%)を有していてもよい。
また、樹脂(A)中のひとつの基の中にX,Y,及びZが複数組み合わされていてもよい。
【0087】
―側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基:X―
前記「側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基」について説明する。
まず、側鎖に分岐を有する基としては、炭素原子数3〜12個の分岐状のアルキル基を示し、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、i−アミル基、t−アミル基、3−オクチル、t−オクチル等が挙げられる。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基等が好ましく、さらにi−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
【0088】
次に側鎖に脂環構造を有する基としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を示し、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等が好ましく、更にシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等が好ましい。
【0089】
前記側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基を含有する単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0090】
前記側鎖に分岐構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸sec−iso−アミル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸3−オクチル、(メタ)アクリル酸t−オクチル等が挙げられ、その中でも、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等が好ましく、さらに好ましくは、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸t−ブチル等である。
【0091】
次に、前記側鎖に脂環構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ−2,2,1−ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸−1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸−3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4,1,0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,5−トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、メタクリル酸フエンチル、メタクリル酸1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシルなどが好ましく、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチルが特に好ましい。
【0092】
―側鎖に酸性基を有する基:Y―
前記酸性基としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホニル基、スルホンアミド基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。これらの中でも、現像性、及び硬化膜の耐水性が優れる点から、カルボキシ基、フェノール性水酸基であることが好ましい。
【0093】
前記側鎖に酸性基を有する基の単量体としては、特に制限はなく、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0094】
前記側鎖に酸性基を有する基の単量体の具体例としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0095】
前記水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物に用いられる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記環状酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0096】
前記市販品としては、東亜合成化学工業(株)製:アロニックスM−5300、アロニックスM−5400、アロニックスM−5500、アロニックスM−5600、新中村化学工業(株)製:NKエステルCB−1、NKエステルCBX−1、共栄社油脂化学工業(株)製:HOA−MP、HOA−MS、大阪有機化学工業(株)製:ビスコート#2100等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、低コストである点で(メタ)アクリル酸等が好ましい。
【0097】
―側鎖にエチレン性不飽和基を有する基:Z―
前記「側鎖にエチレン性不飽和基」としては、特に制限はなく、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、エチレン性不飽和基と単量体との連結はエステル基、アミド基、カルバモイル基などの2価の連結基であれば特に制限はない。側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法は公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸性基を持つ基にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、ヒドロキシル基を持つ基にイソシアネート基を持つ(メタ)アクリレートを付加した付加する方法、イソシアネート基を持つ基にヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法などが挙げられる。
その中でも、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で好ましい。
【0098】
前記エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、これらを有すれば特に制限はないが、例えば、下記構造式(1)で表される化合物及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【0099】
【化5】

【0100】
ただし、前記構造式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。
【0101】
【化6】



【0102】
ただし、前記構造式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。Wは4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
【0103】
前記構造式(1)で表される化合物及び構造式(2)で表される化合物の中でも、構造式(1)で表される化合物が好ましく、前記構造式(1)及び(2)において、L及びLが炭素数1〜4のアルキレン基のものがより好ましい。
【0104】
前記構造式(1)で表される化合物又は構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の例示化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【0105】
【化7】

【0106】
―その他の単量体―
その他の単量体としては、特に制限はなく、例えば分岐および/または脂環構造をもたない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエーテル、二塩基酸無水物基、ビニルエステル基、炭化水素アルケニル基等を有する単量体などが挙げられる。
前記ビニルエーテル基としては、特に制限はなく、例えば、ブチルビニルエーテル基などが挙げられる。
【0107】
前記二塩基酸無水物基としては、特に制限はなく、例えば、無水マレイン酸基、無水イタコン酸基などが挙げられる。
前記ビニルエステル基としては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル基などが挙げられる。
前記炭化水素アルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン基、イソプレン基などが挙げられる。
【0108】
前記樹脂(A)におけるその他の単量体の含有率としては、モル組成比が、0〜30mol%であることが好ましく、0〜20mol%であることがより好ましい。
【0109】
樹脂(A)の具体例としては、例えば、下記化合物P−1〜P−28で表される化合物が挙げられる。
【0110】
【化8】

【0111】
【化9】

【0112】
【化10】

【0113】
【化11】

【0114】
【化12】

【0115】
―製造法について―
前記樹脂(A)は、モノマーの(共)重合反応の工程とエチレン性不飽和基を導入する工程の二段階の工程から作られる。
まず、(共)重合反応は種々のモノマーの(共)重合反応によって作られ、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などを適宜選択することができる。これらの中でも合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを適宜選択することができる。これらの中でも、溶液重合法であることがより望ましい。
【0116】
−分子量−
樹脂(A)として好適な前記共重合体の重量平均分子量は、7,000〜10万が好ましく、8,000〜8万が更に好ましく、9,000〜5万が特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、共重合体の製造適性、現像性の点で望ましい。
【0117】
−ガラス転移温度−
樹脂(A)として好適なガラス転移温度(Tg)は、40〜180℃であることが好ましく、45〜140℃であることはより好ましく、50〜130℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
【0118】
―酸 価−
樹脂(A)として好適な酸価はとりうる分子構造により好ましい範囲は変動するが、一般には20mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることはより好ましく、70〜130mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
【0119】
前記樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が40〜180℃であり、かつ重量平均分子量が7,000〜100,000であることが良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる点で好ましい。
更に、前記樹脂(A)の好ましい例は、好ましい前記分子量、ガラス転移温度(Tg)、及び酸価のそれぞれの組合せがより好ましい。
【0120】
前記樹脂(A)の前記各成分の共重合組成比については、ガラス転移温度と酸価を勘案して決定され、一概に言えないが、「側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基」は10〜70モル%が好ましく、15〜65モル%が更に好ましく、20〜60モル%が特に好ましい。側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基が前記範囲内であると、良好な現像性が得られると共に、画像部の現像液耐性も良好である。
また、「側鎖に酸性基を有する基」は5〜70モル%が好ましく、10〜60モル%が更に好ましく、20〜50モル%が特に好ましい。側鎖に酸性基を有する基が前記範囲内であると、良好な硬化性、現像性が得られる。
また、「側鎖にエチレン性不飽和基を有する基」は10〜70モル%が好ましく、20〜70モル%が更に好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。側鎖にエチレン性不飽和基を有する基が前記範囲内であると、顔料分散性に優れると共に、現像性及び硬化性も良好である。
【0121】
前記樹脂(A)の含有量としては、前記感光性樹脂組成物全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。樹脂(A)は後述のその他の樹脂を含有することができるが、樹脂(A)のみが好ましい。
【0122】
−その他の樹脂−
前記樹脂(A)と併用することができる樹脂としては、アルカリ性水溶液に対して膨潤性を示す化合物が好ましく、アルカリ性水溶液に対して可溶性である化合物がより好ましい。
アルカリ性水溶液に対して膨潤性又は溶解性を示す樹脂としては、例えば、酸性基を有するものが好適に挙げられ、具体的には、エポキシ化合物にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物(エポキシアクリレート化合物)、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体、エポキシアクリレート化合物と、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体との混合物、マレアミド酸系共重合体、などが好ましい。
前記酸性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、などが挙げられ、これらの中でも、原料の入手性などの観点から、カルボキシル基が好ましく挙げられる。
【0123】
−樹脂(A)とその他の樹脂の比率―
前記樹脂(A)と併用することができる樹脂との合計の含有量としては、前記感光性樹脂組成物全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。該固形分含有量が、5質量%未満であると、後述する感光層の膜強度が弱くなりやすく、該感光層の表面のタック性が悪化することがあり、70質量%を超えると、露光感度が低下することがある。なお、前記含有量は、固形分含有量のことを示している。
【0124】
−溶剤(C)−
前記感光性樹脂組成物において、構成成分を溶解又は分散するため溶剤を含有することが好ましい。
前記溶剤は、構成成分を溶解或いは分散可能であり、かつ構成成分と反応しないものであれば特に限定されない。
【0125】
このような溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。これらの中では、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエステル類;エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジエチレングリコール類を好適に用いることができる。
【0126】
更に、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。
【0127】
これらの中では、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエステル類、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジエチレングリコール類を、各成分の溶解性および塗膜の形成のしやすさの点で好適に用いることができる。これらの有機溶剤は、単独で若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、本組成物の溶液は、例えば孔径0.2μmのミクロ濾過フィルター等を用いて濾過した後、使用に供することもできる。
【0128】
前記感光性樹脂組成物は、溶剤を60〜98質量%含有することが好ましく、65〜90質量%がより好ましい。60質量%以上含有することにより、粘度が高すぎて取り扱い性が悪くなる場合がなくなる傾向となり、98質量%以下含有することにより、コスト上不利とならない傾向となることから好ましい。
【0129】
―重合性化合物(D)、光重合開始剤(E)、その他の成分―
本発明において、重合性化合物(D)、光重合開始剤(E)、その他の成分として公知の感光性樹脂組成物を構成する成分を用いることができ、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0020]に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号[0027]〜[0053]に記載の成分が挙げられる。
前記重合性化合物(D)としては、上記の中でも、良好な現像性、力学強度が得られるという観点からジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
光重合開始剤(E)としては、上記の中でも、良好な現像性、力学強度が得られるという観点から、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン等が好ましい。
【0130】
前記樹脂(A)との関係において、重合性化合物(D)の樹脂(A)に対する質量比率((D)/(A)比)が0.3〜1.5であることが好ましく、0.4〜1.4であることはより好ましく、0.5〜1.2であることが特に好ましい。(D)/(A)比が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
前記光重合開始剤(E)の含有量としては、樹脂(A)に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0131】
前記感光性樹脂組成物において、その他の成分として微粒子を添加することが好ましい。前記微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特開2003−302639号公報[0035]〜[0041]に記載の体質顔料が好ましく、中でも良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点からコロイダルシリカが好ましい。
【0132】
前記微粒子の平均粒子径は、高い力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点から、5〜50nmであることが好ましく、10〜40nmであることがより好ましく、15〜30nmであることが特に好ましい。
【0133】
また、前記微粒子の含有量は、高い力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点から、本発明における感光性組成物中の全固形分に対する質量比率が5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。
【0134】
本発明の感光性樹脂組成物の構成成分の好ましい組み合わせの例としては、架橋性バインダーがアルカリ可溶性の架橋性バインダーから選択される1種以上であり、トポロジカルゲルがポリエチレングリコールとシクロデキストリンの組み合わせで得られる1種以上である感光性樹脂組成物を挙げることができる。また、溶剤を用いる場合、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコ−ル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選択される1種以上を含む感光性樹脂組成物を挙げることができる。
【0135】
<感光性樹脂転写フイルム>
本発明の感光性樹脂転写フイルムは、仮支持体上に、少なくとも感光性樹脂層を有する感光性樹脂転写フイルムであって、該感光性樹脂層が、前記感光性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とする。
また、前記感光性樹脂転写フイルムは、必要に応じて、熱可塑性樹脂層、及び該熱可塑性樹脂と前記感光性樹脂層との間に中間層等の他の層を有してもよい。
【0136】
−感光性樹脂層−
仮支持体上に少なくとも有する感光性樹脂層は、フォトスペーサー、隔壁、カラーフィルタの着色画素等の樹脂構造物を形成する場合に該樹脂構造物を構成する層であり、前記感光性樹脂組成物の中でも、スペーサー形成用の感光性樹脂組成物を用いることが好ましい態様である。
【0137】
感光性樹脂層の100℃における溶融粘度(ηCu)は、η/ηCu>2の関係を満たす範囲で選択することができる。その中でも、ηは、2000Pa・s〜1000000Pa・sが好ましく、より好ましくは4000Pa・s〜20000Pa・sであり、最も好ましくは10000Pa・s〜20000Pa・sである。
ηが前記範囲内であると、ラミネートにより形成される隔壁の欠け欠陥の発生が効果的に抑えられると共に、永久支持体への密着を確保できる。
【0138】
感光性樹脂層の溶融粘度ηを上記の範囲に調整する手段としては、(1)モノマー/バインダーポリマーの比率を調節する、(2)感光性樹脂層の固形分中の顔料割合を調整する、(3)バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)を調整する、等の方法が挙げられる。
特に、感光性樹脂層を硬くする硬化方法としては、(1’)モノマー(M)/バインダーポリマー(B’)の比率(M/B’)を小さく(好ましくは0.8≦M/B’≦0.5)する、(2’)感光性樹脂層に顔料を添加して固形分中の顔料割合を高める、(3)Tgの高い(好ましくはTg≧80)バインダーポリマーを選択する、等が挙げられる。
【0139】
前記感光性樹脂転写フイルムをスペーサー形成用として用いる際に感光性樹脂層は、スペーサーを形成した際にスペーサーとしての機能を持つように構成されることが好ましい。
【0140】
−熱可塑性樹脂層−
本発明の感光性樹脂転写フイルムは、熱可塑性樹脂層を有してもよい。
熱可塑性樹脂層は、アルカリ現像を可能とし、転写時にはみ出した熱可塑性樹脂層自身による被転写体の汚染防止を可能とする点から、アルカリ可溶性であることが好ましい。また、後述する感光性樹脂層を被転写体上に転写する際に、被転写体上に存在する凹凸に起因して発生する転写不良を効果的に防止するクッション材としての機能を有し、感光性樹脂転写フイルムを被転写体上に加熱密着させた際の被転写体上の凹凸に対応して変形可能な層である。
【0141】
熱可塑性樹脂層の層厚は、2〜50μmであることが転写性の観点から好ましい。層厚が前記範囲内であると、転写時の仮支持体からの剥離を剥離面を損なうことがなく良好に行なえ、厚み変動による露光不良に伴なって精細なパターン形成が可能となる。層厚は、より好ましくは5〜40μmである、特に好ましくは10〜30μmである。
【0142】
熱可塑性樹脂層は、少なくとも熱可塑性樹脂を用いて構成することができ、必要に応じて更に適宜他の成分を用いて構成することができる。
【0143】
熱可塑性樹脂は、特に制限はなく適宜選択することができ、例えば、エチレンとアクリル酸エステル共重合体とのケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等との(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のケン化物、等より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0144】
上記以外に更に、「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会発行、1968年10月25日発行)による有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することもできる。
熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂としては、実質的な軟化点が80℃以下であるものが好ましい。
【0145】
これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称し、その誘導体の場合も同様である。
【0146】
熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の中でも、重量平均分子量が5万〜50万(Tg=0〜140℃)の範囲である樹脂、更に好ましくは重量平均分子量が6万〜20万(Tg=30〜110℃)の範囲である樹脂が好ましい。これらの樹脂の具体例としては、特公昭54−34327号、特公昭55−38961号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭61−134756号、特公昭59一44615号、特開昭54−92723号、特開昭54−99418号、特開昭54−137085号、特開昭57−20732号、特開昭58−93046号、特開昭59−97135号、特開昭60−159743号、特開昭60−247638号、特開昭60−208748号、特開昭60−214354号、特開昭60−230135号、特開昭60−258539号、特開昭61−169829号、特開昭61−213213号、特開昭63−147159号、特開昭63−213837号、特開昭63−266448号、特開昭64−55551号、特開昭64一55550号、特開平2−191955号、特開平2−199403号、特開平2−199404号、特開平2−208602号、特開平5−241340号の各公報に記載の、アルカリ水溶液に可溶な樹脂を挙げることができる。
特に好ましいのは、特開昭63−147159号公報に記載の、メタクリル酸/2一エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体である。
【0147】
また、前記熱可塑性樹脂層は、上記樹脂以外に、更に低分子量の樹脂を添加することが好ましい。
好ましくは、上記した種々の熱可塑性樹脂のうち、重量平均分子量が3千〜3万(Tg=30〜170℃)の範囲である樹脂、更に好ましくは、重量平均分子量が4千〜2万(Tg=60〜140℃)の範囲である樹脂である。これらの好ましい具体例としては、上記の公報に記載されているものの中から選ぶことができるが、特に好ましくは、特公昭55−38961号、特開平5−241340号の各公報に記載のスチレン/(メタ)アクリル酸共重合体である。
【0148】
熱可塑性樹脂層には、前記熱可塑性樹脂以外に他の成分として、仮支持体との接着力を調節する目的で、実質的に軟化点が80℃を超えない範囲内で各種ポリマー(有機高分子化合物)、過冷却物質、密着改良剤、界面活性剤、離型剤等を添加することができる。これらによるTgの調整も可能である。また、軟化点が80℃以上の有機高分子化合物も、その有機高分子化合物中に該高分子物質と相溶性のある各種可塑剤を添加することで、実質的な軟化点を80℃以下に下げて用いることもできる。
【0149】
好ましい可塑剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂とポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアネートとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアネートとポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、ビスフェノールAとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの縮合反応生成物を挙げることができる。
【0150】
可塑剤の熱可塑性樹脂層中における量は、熱可塑性樹脂に対して、200質量%以下が一般的であり、熱可塑性樹脂層の軟化を容易に制御できる点で、20〜100質量%の範囲が好ましい。
【0151】
前記界面活性剤としては、熱可塑性樹脂と混ざり合うものであれば使用可能である。
好ましい界面活性剤としては、特開2003−337424号公報の段落[0015]〜[0024]、特開2003−177522号公報の段落[0012]〜[0017]、特開2003−177523号公報の段落[0012]〜[0015]、特開2003−177521号公報の段落[0010]〜[0013]、特開2003−177519号公報の段落[0010]〜[0013]、特開2003−177520号公報の段落[0012]〜[0015]、特開平11−133600号公報の段落[0034]〜[0035]、特開平6−16684号公報に記載の界面活性剤が好適に挙げられる。
【0152】
仮支持体との接着性をより高めるためには、フッ素系界面活性剤及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいはこれらの2種以上を含有することが好ましく、フッ素系界面活性剤が最も好ましい。
【0153】
また、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。使用できる市販の界面活性剤として、例えば、エフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF780F、F171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤を挙げることができる。また、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0154】
熱可塑性樹脂層の溶融粘度ηCuを上記の範囲に調整する手段としては、熱可塑性樹脂層を構成するポリマーの中の低分子量ポリマーの含有率と可塑剤の含有率とを調整する方法等がある。熱可塑性樹脂層を柔らかく軟化する場合には、(1)可塑剤を添加量を高める、(2)低分子量ポリマーの含有率を高めて高分子量成分の割合を低くする、等の方法により調整できる。
【0155】
熱可塑性樹脂層を構成するポリマーの中の高分子量ポリマーPと低分子量ポリマーPとの含有比(P/P)としては、10/90以上50/50未満が好ましく、12/88以上40/60未満がより好ましく、15/85以上38/62未満が最も好ましい。これらの含有比が前記範囲内であると、ラミネートにより形成される隔壁の欠け欠陥の発生防止に有効であると共に、剥離性とクッション性を確保することができる。
なお、低分子量ポリマーとは、重量平均分子量が3,000以上12000未満のポリマーであり、高分子量ポリマーは重量平均分子量が12000以上のポリマーである。
【0156】
可塑剤を添加する場合の添加量としては、熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂成分及び可塑剤の固形分量に対して、28〜43質量%が好ましく、より好ましくは30〜40質量%であり、32〜38質量%が特に好ましい。可塑剤の含有量が前記範囲内であると、ラミネートして転写形成される隔壁の欠け欠陥の発生を防止し得る程度に熱可塑性樹脂層の粘度を低減するのに有効であると共に、クッション性を確保でき、転写時の熱可塑性樹脂層のはみ出し及びこれによるラミネートのヒートロールの汚染を防止することができる。
【0157】
−その他−
感光性樹脂転写フイルムは、前記の熱可塑性樹脂層や感光性樹脂層以外に、必要に応じて中間層や保護フィルムを有してもよい。
前記中間層(「酸素遮断膜」とも言う。)は、露光感度をアップすることができる。また、前記熱可塑性樹脂層は、転写性を向上させるためにクッション性を有する。
前記感光性樹脂転写フイルムを構成する仮支持体、中間層、及び保護フィルム、並びに転写フイルムの作製方法の詳細については、特開2005−3861号公報の段落番号[0023]〜[0066]、特開2006−23696号公報の段落番号[0024]〜[0030]に記載のものを好適なものとして適用することができる。
【0158】
感光性樹脂転写フイルムは、特開平5−72724号公報に記載の感光性樹脂転写材料、すなわち一体型に構成されたフィルムに構成されることが好ましい。一体型フィルムの構成例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層/保護フィルムの順に積層された構成が挙げられる。
【0159】
−フォトスペーサーの製造方法−
本発明のフォトスペーサーの製造方法は、基材上に感光性樹脂層を形成する工程(以下、「層形成工程」ともいう。)を有する。該感光性樹脂層を基材上に形成する方法としては、(a)前記感光性樹脂組成物を含む溶液を公知の塗布法により塗布する方法、及び(b)感光性樹脂転写フイルムを用いた転写法によりラミネートする方法の態様がある。
本発明のフォトスペーサーの製造方法は、好ましくは、基材上に形成された前記感光性樹脂層を露光し、現像する工程(以下、「パターニング工程」ともいう。)を更に有して構成される。以下、各々について述べる。
【0160】
[層形成工程]
(a)塗布法
本発明のフォトスペーサーの製造方法は、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布する工程を有する方法である。
前記感光性樹脂組成物の塗布は、公知の塗布法、例えば、スピンコート法、カーテンコート法、スリットコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法等により行なうことができる。中でも、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリットノズルあるいはスリットコーターによる方法が好適である。
【0161】
(b)転写法
本発明のフォトスペーサーの製造方法は、感光性樹脂転写フイルムの感光性樹脂層を基材上に転写する工程を有することを特徴とする。
転写による場合、感光性樹脂転写フイルムを用いて、仮支持体上に膜状に形成された感光性樹脂層を基板上に加熱及び/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着することによって貼り合せた後、仮支持体の剥離により感光性樹脂層を基板上に転写する方法である。
具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネーター及びラミネート方法が挙げられ、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
【0162】
(a)塗布法、(b)転写法共に感光性樹脂層を塗布形成する場合、その層厚は0.5〜10.0μmが好ましく、1〜6μmがより好ましい。層厚が前記範囲であると、製造時における塗布形成の際のピンホールの発生が防止され、未露光部の現像除去を長時間を要することなく行なうことができる。また、良好な力学強度を有する層とすることができる点で好ましい。
【0163】
感光性樹脂層を形成する基板としては、例えば、透明基板(例えばガラス基板やプラスチックス基板)、透明導電膜(例えばITO膜)付基板、カラーフィルタ付きの基板(カラーフィルタ基板ともいう。)、駆動素子(例えば薄膜トランジスタ[TFT])付駆動基板、などが挙げられる。基板の厚みとしては、700〜1200μmが一般に好ましい
【0164】
[パターニング工程]
前記パターニング工程は、基板上に形成された感光性樹脂層を露光及び現像してパターニングする工程である。
パターニング工程の具体例としては、特開2006−64921号公報の段落番号[0071]〜[0077]に記載の形成例や、特開2006−23696号公報の段落番号[0040]〜[0051]に記載のパターン状に行う露光、現像、ポスト露光やポストベークなどの工程などが、本発明においても好適な例として挙げられる。
【0165】
<液晶表示装置用基板>
本発明の液晶表示装置用基板は、前記本発明のフォトスペーサーの製造方法により得られたフォトスペーサーを備えたものである。フォトスペーサーは、基板上に形成されたブラックマトリクス等の表示用遮光部の上やTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の表示用遮光部やTFT等の駆動素子とフォトスペーサーとの間にITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の液晶配向膜が存在していてもよい。
【0166】
例えば、フォトスペーサーが表示用遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、該基板に予め配設された表示用遮光部(ブラックマトリクスなど)や駆動素子を覆うようにして、例えば感光性樹脂転写フイルムの感光性樹脂層を基板面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂層を形成した後、これに露光、現像、加熱処理等を施してフォトスペーサーを形成することによって、本発明の液晶表示装置用基板を作製することができる。
本発明の液晶表示装置用基板には更に、必要に応じて赤色(R)、青色(B)、緑色(G)3色等の着色画素が設けられていてもよい。
【0167】
<液晶表示素子>
前記本発明の液晶表示装置用基板を設けて液晶表示素子を構成することができる。液晶表示素子の1つとして、少なくとも一方が光透過性の一対の基板(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)を少なくとも備えたものが挙げられる。
【0168】
この場合、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されているカラーフィルタ基板として構成できる。
このカラーフィルタ基板には、高さ均一で柔軟性に持ち、かつ局所的な加重に対して塑性変形を起こし難く、弾性回復性に優れたフォトスペーサーが設けられるため、該カラーフィルタ基板を備えた液晶表示素子は、カラーフィルタ基板と対向基板との間にセルギャップムラ(セル厚変動)の発生が抑えられ、色ムラ等の表示ムラの発生を効果的に防止することができる。これにより、作製された液晶表示素子は鮮やかな画像を表示できる。
【0169】
また、液晶表示素子の別の態様として、少なくとも一方が光透過性の一対の基板(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段とを少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ一対の基板間が高さ均一で柔軟性に持ち、かつ局所的な加重に対して塑性変形を起こし難く、弾性回復性に優れたフォトスペーサーにより所定幅に規制して構成されたものである。
この場合も、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されたカラーフィルタ基板として構成されている。
【0170】
本発明において使用可能な液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶が挙げられる。
また、前記カラーフィルタ基板の前記画素群は、互いに異なる色を呈する2色の画素からなるものでも、3色の画素、4色以上の画素からなるものであってもよい。例えば3色の場合、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相で構成される。RGB3色の画素群を配置する場合には、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4色以上の画素群を配置する場合にはどのような配置であってもよい。カラーフィルタ基板の作製は、例えば2色以上の画素群を形成した後既述のようにブラックマトリックスを形成してもよいし、逆にブラックマトリックスを形成した後に画素群を形成するようにしてもよい。RGB画素の形成については、特開2004−347831号公報等を参考にすることができる。
【0171】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示装置用基板を設けて構成されたものである。また、本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示素子を設けて構成されたものである。すなわち、互いに向き合うように対向配置された一対の基板間を既述のように、本発明のフォトスペーサーの製造方法により作製されたフォトスペーサーで所定幅に規制し、規制された間隙に液晶材料を封入(封入部位を液晶層と称する。)して構成されており、液晶層の厚さ(セル厚)が所望の均一厚に保持されるようになっている。
【0172】
液晶表示装置における液晶表示モードとしては、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、IPS型、OCB型、ASM型、その他種々のものが好適に挙げられる。中でも、本発明の液晶表示装置においては、最も効果的に本発明の効果を奏する観点から、液晶セルのセル厚の変動により表示ムラを起こし易い表示モードが望ましく、セル厚が2〜4μmであるVA型表示モード、IPS型表示モード、OCB型表示モードに構成されるのが好ましい。
【0173】
本発明の液晶表示装置の基本的な構成態様としては、(a)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、(b)駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、等が挙げられ、本発明の液晶表示装置は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0174】
液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、側工業調査会、1994年発行)」に記載がある。本発明の液晶表示装置には、本発明の液晶表示素子を備える以外に特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載された種々の方式の液晶表示装置に構成することができる。中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置を構成するのに有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載がある。
【0175】
本発明の液晶表示装置は、既述の本発明の液晶表示素子を備える以外は、電極基板、偏光フイルム、位相差フイルム、バックライト、スペーサー.視野角補償フイルム、反射防止フイルム、光拡散フイルム、防眩フイルムなどの様々な部材を用いて一般的に構成できる。これら部材については、例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉、(株)富士キメラ総研、2003等発行)」に記載されている。
【実施例】
【0176】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0177】
(合成例1)
〔トポロジカルゲルの作成〕
塩化シアヌル0.18gをアセトン20gに溶かした溶液を、激しく攪拌されている氷水80gの中にゆっくり滴下した。こうして塩化シアヌルの分散液(液A)を得た。
別途、α−シクロデキストリン2.4gと炭酸ナトリウム0.53gを水200gに溶解した溶液(液B)を作成した。
上記液Aを、ゆっくり攪拌されている液Bに、滴下した。
この後、液の温度を50℃に上げて、6時間攪拌を続けた。この後液温を25℃まで下げて溶液(液C)を得た。
ポリエチレングリコール(平均分子量20000)10gを水700gに溶かした溶液に、液Cを混合して25℃で24時間ゆっくり攪拌し続けた。さらに、エバポレータを用いて、この液を全体が500gになるまで濃縮して溶液(液D)を得た。
1−アミノドデカン0.46gをテトラヒドロフラン500gに溶解した溶液(液E)を、上記液Dと混合して、80℃で6時間攪拌を続けた。
さらにこの液に炭酸ナトリウム0.21gを溶解させて溶液(液F)を得た。
メタクリル酸クロライド0.21gをテトラヒドロフラン20gに溶解したものを液Fに添加して、攪拌しながら50℃で6時間反応させた。こうして溶液(液G)を得た。
反応終了後、エバポレータを用いて全体が13.4gになるまで液Gの溶媒を除去して反応物(トポロジカルゲル)を得た。
以上の手順で、トポロジカルゲルを作成した。
【0178】
(合成例2)
〔置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物の作成〕
<末端封止したポリロタキサンの調製>
数平均分子量2万のポリエチレングリコールビスアミン4.5gとα−シクロデキストリン18.0gとを水150mLに加え、80℃に加熱して溶解させた。その溶液を冷却し5℃で16時間静置した。生成した白いペースト状の沈殿を分取、乾燥した。
【0179】
前記乾燥物に、2,4−ジニトロフルオロベンゼン12.0gとジメチルホルムアミド50gの混合溶液に加えて室温で5時間攪拌した。その反応混合物にジメチルスルホキシド(DMSO)200mLを加えて溶解した後、水3750mLに注いで析出物を分取した。析出物を250mLのDMSOに再溶解した後、再び3500mLの0.1%食塩水へ注いで析出物を分取した。その析出物を水とメタノールで各3回ずつ洗浄後、50℃で12時間真空乾燥することで、ポリエチレングリコールビスアミンがα−シクロデキストリンに串刺し状に包接され、かつ両末端アミノ基に2,4−ジニトロフェニル基が結合した包接化合物2.0gを得た。
【0180】
得られた包接化合物(末端封止されたブロック化ポリロタキサン)の紫外光吸収測定及びH−NMR測定を行い、α−シクロデキストリンの包接量を算出したところ、包接量は72個であった。
包接量は、紫外光吸収測定およびH−NMR測定から算出できるが、具体的には紫外光吸収測定では、合成した包接化合物および2,4-ジニトロアニリンそれぞれの360nmにおけるモル吸光係数を測定することで、シクロデキストリンの包接量を算出した。また、H−NMR測定では、ポリエチレン部の水素原子とシクロデキストリン部の水素原子の積分比から算出した。
【0181】
<末端封止されたブロック化ポリロタキサンのアセチル修飾>
上記で合成した包接化合物(末端封止されたブロック化ポリロタキサン)1gを塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド8%溶液50gに溶解させた。そこに無水酢酸6.7g、ピリジン5.2g、N,N−ジメチルアミノピリジン100mgを加え、室温にて一晩攪拌した。反応溶液をメタノールに流し込み、析出した固体を遠心分離にて分離した。分離した固体を乾燥した後、アセトンに溶解させた。溶液を水に流し込み、析出した固体を遠心分離にて分離し乾燥させることで、1.2gのアセチル修飾したポリロタキサンが得られた。
【0182】
得られたアセチル修飾したポリロタキサンのH−NMR測定を行い、アセチル導入量を算出したところ、導入量は75%であった。
【0183】
<重合性基の導入>
上記で合成したアセチル修飾したポリロタキサン1gを塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド8%溶液50gに溶解させた。そこにアクリル酸クロライド5.9g、ピリジン5.2g、N,N−ジメチルアミノピリジン100mgを加え、室温にて二晩攪拌した。反応溶液をメタノールに流し込み、析出した固体を遠心分離にて分離した。分離した固体を乾燥した後、アセトンに溶解させた。溶液を水に流し込み、析出した固体を遠心分離にて分離し乾燥させることで、0.8gのアクリロイル及びアセチルで修飾したポリロタキサンが得られた。
【0184】
得られたアクリロイル及びアセチルで修飾したポリロタキサンのH−NMR測定を行い、アクリロイル及びアセチル導入量を算出したところ、導入量は87%であった。
【0185】
(合成例3)
<末端封止したポリロタキサンのアセチル修飾>
合成例2で合成した末端封止したポリロタキサン1gを塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド8%溶液50gに溶解させた。そこに無水酢酸6.7g、ピリジン5.2g、N,N−ジメチルアミノピリジン100mgを加え、室温にて三晩攪拌した。反応溶液をメタノールに流し込み、析出した固体を遠心分離にて分離した。分離した固体を乾燥した後、アセトンに溶解させた。溶液を水に流し込み、析出した固体を遠心分離にて分離し乾燥させることで、1.1gのアセチル修飾したポリロタキサンが得られた。
【0186】
得られたアセチル修飾したポリロタキサンのH−NMR測定を行い、アセチル基導入量を算出したところ、導入量は88%であった。
【0187】
<重合性基の導入>
上記で合成したアセチル修飾したポリロタキサン1gを塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド8%溶液50gに溶解させた。そこにアクリル酸クロライド5.9g、ピリジン5.2g、N,N−ジメチルアミノピリジン100mgを加え、室温にて二晩攪拌した。反応溶液をメタノールに流し込み、析出した固体を遠心分離にて分離した。分離した固体を乾燥した後、アセトンに溶解させた。溶液を水に流し込み、析出した固体を遠心分離にて分離し乾燥させることで、0.6gのアクリロイル及びアセチル修飾したポリロタキサンが得られた。
【0188】
得られたアクリロイル及びアセチル修飾したポリロタキサンのH−NMR測定を行い、アクリロイル基及びアセチル基導入量を算出したところ、導入量は90%であった。
【0189】
(実施例1):塗布法
〔カラーフィルタ基板の作製〕
特開2005−3861号公報の段落番号[0084]〜[0095]に記載の方法でブラックマトリクス、R画素、G画素、B画素を有するカラーフィルタ基板を作製した。
次いで、カラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びにブラックマトリクスの上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0190】
〔フォトスペーサーの作成〕
作製したカラーフィルタ基板のITO膜上に、スリット状ノズルを有するガラス基板用コーターMH−1600(エフ・エー・エス・アジア社製)にて下記に示す処方1からなる感光性樹脂組成物層用塗布液を塗布した。引き続き、真空乾燥機VCD(東京応化社製)を用いて30秒間溶媒の一部を乾燥させて塗布膜の流動性をなくした後、120℃で3分間プリベークして膜厚3.9μmの感光性樹脂組成物層を形成した(層形成工程)。
【0191】
〔感光性樹脂組成物層用塗布液処方1〕
・1−メトキシ−2−プロパノール 37.2質量部
・メチルエチルケトン 30質量部
・MIBK−ST (日産化学(株)製コロイダルシリカのメチルイソブチルケトン分散液) 14質量部
・ソルスパース20000(ゼネカ(株)製) 0.42質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 6.8質量部
・ポリマーA(メタクリル酸/アリルメタクリレート=20/80(モル比)、重量平均分子量3.6万) 9.2質量部
・2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン 0.23質量部
・トポロジカルゲル(合成例1) 0.92質量部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.0036質量部
・メガファックF780F(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤) 0.03質量部
・ビクトリアピュアブルーBOHM(保土ヶ谷化学(株)製)の5%メタノール溶液 2.0質量部
【0192】
次に、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと感光性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板とを略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の表面との間の距離を40μmとし、マスクを介して感光性樹脂層側から露光量100mJ/cmにてプロキシミティー露光した。
【0193】
引き続き炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5質量%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士フイルム株式会社製を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃で30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像して感光性樹脂層を現像し、パターニング画像を得た。
【0194】
引き続き洗浄剤(商品名:T−SD3 富士フイルム株式会社製)を純水で10倍に希釈して用い、33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーで吹きかけ、更にナイロン毛を有す回転ブラシにより、形成された画像を擦って残渣除去を行い、スペーサーパターンを得た(パターニング工程)。
【0195】
次いで、マスクを用いないで前記パターン露光に用いた露光機でHgランプにより、フォトスペーサーを形成した面(感光性樹脂層の形成された面;表)から300mJ/cmでポスト露光を行った。このとき、フォトスペーサーを形成した面とは反対の面(感光性樹脂層の形成された面とは反対の面;裏)の露光量は0mJ/cmであった。
次に、スペーサーパターンが設けられたカラーフィルタ基板を、230℃下で44分間加熱処理を行ない(熱処理工程)、直径24μm、平均高さ3.7μmの円柱状のフォトスペーサーを作製した。
【0196】
〔評価〕
微小硬度計DUH−W201(島津製作所(株)製)を用いて下記測定条件でフォトスペーサの変形量を求めて、式1による弾性回復率を計算した。
テスト:負荷−除荷試験
最大荷重:35mN
保持時間:5秒
式1 弾性回復率(%)={1−(加重が除去された後でのフォトスペーサの変形量)/(最大荷重がかかった時のフォトスペーサの変形量)}×100
【0197】
弾性回復率は「フォトスペーサに加重がかかった時にどの程度塑性変形しにくいか」を示す指標であり、100%に近いほど好ましい。結果を表1に示す。
【0198】
(実施例2)
〔スペーサー用感光性転写フイルムの作製〕
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に、下記処方Aからなる熱可塑性樹脂層用塗布液をスリット状ノズルを有するガラス基板用コーターMH−1600(エフ・エー・エス・アジア社製)にて塗布、乾燥させ、乾燥層厚6.0μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0199】
〔熱可塑性樹脂層用塗布液の処方A〕
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(=55/11.7/4.5/28.8(モル比)、重量平均分子量90000) 25.0質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(=63/37[モル比]、重量平均分子量8,000) 58.4質量部
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン 39.0質量部
・メガファックF780F(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤) 10.0質量部
・メタノール 90.0質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール 51.0質量部
・メチルエチルケトン 700質量部
【0200】
次に、形成した熱可塑性樹脂層上に、下記処方Bからなる中間層用塗布液をスリット状ノズルを有するガラス基板用コーターMH−1600(エフ・エー・エス・アジア社製)にて塗布、乾燥させて、乾燥層厚1.5μmの中間層を積層した。
【0201】
〔中間層用塗布液の処方B〕
・PVA−205((株)クラレ製ポリビニルアルコール、鹸化率80%) 3.22質量部
・PVP K−30(アイエスピー・ジャパン(株)製ポリビニルピロリドン) 1.49質量部
・メタノール 42.3質量部
・蒸留水 52.4質量部
【0202】
次に、形成した中間層上に更に、実施例1と同じ感光性樹脂層用塗布液をスリット状ノズルを有するガラス基板用コーターMH−1600(エフ・エー・エス・アジア社製)にて塗布、乾燥させて、乾燥層厚3.9μmの感光性樹脂層を積層した。
【0203】
以上のようにして、PET仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層の積層構造(3層の合計層厚は11.6μm)に構成した後、感光性樹脂層の表面に更に、カバーフィルムとして厚み12μmのポリプロピレン製フィルムを加熱・加圧して貼り付け、スペーサー用感光性転写フイルム(1)を得た。
【0204】
〔フォトスペーサーの作製〕
得られたスペーサー用感光性転写フイルムのカバーフィルムを剥離し、露出した感光性樹脂層の表面を、上記で作製したITO膜がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO膜上に重ね合わせ、ラミネーターLamicII型〔(株)日立インダストリイズ製〕を用いて、線圧100N/cm、130℃の加圧・加熱条件下で搬送速度2m/分にて貼り合わせた。その後、PET仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離除去し、感光性樹脂層を熱可塑性樹脂層及び中間層と共に転写した(樹脂層形成工程)。
【0205】
次に、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと熱可塑性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板とを略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の中間層に接する側の表面との間の距離を40μmとし、マスクを介して熱可塑性樹脂層側から露光量100mJ/cmにてプロキシミティー露光した。
【0206】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30質量%含有、商品名:T−PD2、富士フイルム株式会社製を、純水で12倍(T−PD2を1質量部と純水を11質量部の割合で混合)に希釈した液)を30℃で50秒間、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層を除去した。引き続き、この基板上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基板上の液だまりを減らした。
【0207】
引き続き炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5質量%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士フイルム株式会社製を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像して感光性樹脂層を現像し、パターニング画像を得た。
【0208】
引き続き洗浄剤(商品名:T−SD3 富士フイルム株式会社製)を純水で10倍に希釈して用い、33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーで吹きかけ、更にナイロン毛を有す回転ブラシにより、形成された画像を擦って残渣除去を行い、スペーサーパターンを得た(パターニング工程)。
【0209】
次いで、マスクを用いないで以外は前記パターン露光に用いた露光機でHgランプにより、フォトスペーサーを形成した面(感光性樹脂層の形成された面;表)から300mJ/cmでポスト露光を行った。このとき、フォトスペーサーを形成した面とは反対の面(感光性樹脂層の形成された面とは反対の面;裏)の露光量は0mJ/cmであった。
【0210】
次に、スペーサーパターンが設けられたカラーフィルタ基板を、230℃下で44分間加熱処理を行ない(熱処理工程)、直径24μm、平均高さ3.7μmの円柱状のフォトスペーサーを作製した。
【0211】
〔評価〕
得られたフォトスペーサについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0212】
(比較例1)
実施例1において、感光性樹脂組成物層用塗布液として下記処方2を用いる以外は実施例1と同様にして比較例1を実施した。そして同様に評価した。
【0213】
〔感光性樹脂組成物層用塗布液処方2〕
・1−メトキシ−2−プロパノール 37.2質量部
・メチルエチルケトン 30質量部
・MIBK−ST (日産化学(株)製コロイダルシリカのメチルイソブチルケトン分散液) 14質量部
・ソルスパース20000(ゼネカ(株)製) 0.42質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 6.8質量部
・ポリマー A(メタクリル酸/アリルメタクリレート=20/80(モル比)、重量平均分子量3.6万) 9.2質量部
・2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン 0.23質量部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.0036質量部
・メガファックF780F(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤) 0.03質量部
・ビクトリアピュアブルーBOHM(保土ヶ谷化学(株)製)の5%メタノール溶液 2.0質量部
【0214】
(比較例2)
実施例2において、感光性樹脂組成物層用塗布液として前記処方2を用いる以外は実施例2と同様にして比較例2を実施した。そして同様に評価した。
【0215】
(実施例3〜6)
実施例2において、感光性樹脂組成物層用塗布液のトポロジカルゲルの添加量を表1のように変更する以外は実施例2と同様にして実施した。そして同様に評価した。
ただし、表1におけるトポロジカルゲルの添加量はポリマーAに対するトポロジカルゲル量の割合である。
【0216】
【表1】

【0217】
表1から明らかな通り、トポロジカルゲルを添加しない比較例は、いずれも70%台の弾性回復率であったが、トポロジカルゲルを添加した本発明は極めて高い弾性回復率を示した。
【0218】
(実施例7、8、比較例7、8)
〔液晶表示装置の作製〕
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、実施例1、2と比較例1、2で得られたカラーフィルタ基板(フォトスペーサが設けられたカラーフィルタ基板)の透明電極上及び対向基板上にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、VAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
次いで、赤色(R)LEDとしてFR1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、緑色(G)LEDとしてDG1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、青色(B)LEDとしてDB1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)を用いてサイドライト方式のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
こうして、4種類の液晶表示装置を作成した。
【0219】
〔評価〕
上記液晶表示装置の各々について、表面に断面積1cm×1cmの直方体(5kgwの荷重)を5秒間押し当てた。加重を取り除いた後、30秒後にその部分の表示ムラがどの程度残るかを目視にて観察して評価した。
実施例7と8の液晶表示装置の場合、ガラス基板の縁部分にかすかにムラが見られたが、表示部には問題はなかった。これに対して、比較例7と8の場合は表示部分にも若干のムラが見られた。
【0220】
(実施例9〜10)(塗布法)
実施例1において、感光性樹脂組成物層用塗布液のトポロジカルゲルを表2のように変更する以外は実施例1と同様にして実施した。そして同様に評価した。
【0221】
(実施例11〜12)(転写法)
実施例2において、感光性樹脂組成物層用塗布液のトポロジカルゲルを表2のように変更する以外は実施例2と同様にして実施した。そして同様に評価した。
【0222】
【表2】

【0223】
表2から明らかな通り、合成例2、3から得られた置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物を用いた実施例は、いずれも極めて高い弾性回復率を示した。
【0224】
(実施例13〜16)
実施例7の〔液晶表示装置の作製〕において、実施例1で得られたカラーフィルタ基板(フォトスペーサが設けられたカラーフィルタ基板)の代わりに、実施例9〜12で得られたカラーフィルタ基板(フォトスペーサが設けられたカラーフィルタ基板)を用いた以外は、実施例7と同様に行い液晶表示装置を作成した。そして、実施例7と同様に評価した。
【0225】
〔評価〕
実施例13から16の液晶表示装置の場合、ガラス基板の縁部分にかすかにムラが見られたが、表示部には問題はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性バインダーと置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
架橋性バインダーとトポロジカルゲルを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記トポロジカルゲルは、置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通した化合物を少なくとも2分子有するゲルであって、前記化合物が前記環状分子の置換基のうち少なくとも一つが重合性基であり、且つ、前記直鎖状分子の両末端に封鎖基を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物の前記環状分子が有する置換基のうち少なくとも一つが重合性基であり、且つ、前記直鎖状分子の両末端に封鎖基を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合性基が、熱または光により重合が進行する基であることを特徴とする請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合性基が、付加重合反応または縮合重合反応が可能な基であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合性基が下記一般式P1〜P4で表されることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、R511、R512、R513、R521、R522、R523、R531、R532、R533、R541、R542、R543、R544、またはR545はそれぞれ各々独立に水素原子またはアルキル基を表す。nは0または1を表す。)
【請求項8】
前記置換基を有する環状分子(A)がシクロデキストリンであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
仮支持体上に、少なくとも感光性樹脂層を有する感光性樹脂転写フイルムであって、該感光性樹脂層が、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とする感光性樹脂転写フイルム。
【請求項10】
前記感光性樹脂組成物がスペーサー形成用であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基材上に塗布する工程を有することを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の感光性樹脂転写フイルムの感光性樹脂層を基材上に転写する工程を有することを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載のフォトスペーサーの製造方法により製造したフォトスペーサーを備えたことを特徴とする液晶表示装置用基板。
【請求項14】
請求項13に記載の液晶表示装置用基板を備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−291208(P2008−291208A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339046(P2007−339046)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】